平成13(行ウ)7 行政文書不開示決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年10月1日 岡山地方裁判所 情報公開
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判決文本文13,869 文字)

主文 1 被告が原告に対して平成13年4月20日付けでした,別紙1記載の行政文書の不開示決定処分のうち,別紙1の番号1ないし15,18,19,22,23の文書を不開示とした部分(ただし,同番号1,5,6,8の漁業種類別・魚種別の漁獲量欄,11ないし15,19,23の養殖種類欄,魚種名欄,経営体数欄を除く。)を取り消す。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告が原告に対して平成13年4月20日付けでした,別紙1記載の行政文書の不開示決定処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき,被告に対し,岡山市内の漁業協同組合別の漁獲量又は収獲量を明らかにする文書の開示請求を行ったところ,被告が当該文書には同法5条6号に該当する情報が記載されていること等を理由に不開示決定処分をしたのは違法であるとして,その取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実(1) 原告は,民事訴訟法29条所定の「法人でない社団」である。 (2) 原告は,平成13年4月2日,情報公開法に基づき,被告に対し,岡山市内の漁業協同組合別の平成12年度における漁獲量又は収獲量を明らかにする文書の開示請求をした。 (3)ア原告が開示を請求した文書は,別紙1の行政文書名欄記載のとおりである(以下,これら行政文書を併せて「本件文書」といい,本件文書は,それぞれ別紙1の番号により,「本件文書1」などと表記する。)。 本件文書は,海面漁業生産統計調査規則に基づき,平成11年1月1日から同年12月31日までの期間に,農林水産大臣が全国の海面漁業経営体及び水揚機関を対象と より,「本件文書1」などと表記する。)。 本件文書は,海面漁業生産統計調査規則に基づき,平成11年1月1日から同年12月31日までの期間に,農林水産大臣が全国の海面漁業経営体及び水揚機関を対象として行った海面漁業生産統計を作成するための調査(以下「本件統計調査」という。海面漁業漁獲統計調査と海面養殖業収獲統計調査からなる。)において,漁獲量(海面漁業により採捕したすべての水産動植物の採捕時の原形重量)又は収獲量(海面養殖業により収獲したすべての水産動植物のすべての重量)を,被告の岡山統計情報出張所職員が同出張所の段階で漁業協同組合別に整理,作成した文書である。 イ本件文書1ないし9は,本件統計調査により徴集した海面漁業漁獲統計調査に係る調査票に基づき,漁業地区別に集計する前に,漁業協同組合別に別紙2の形式で集計したものである。 本件文書16,17,20,21は,海面養殖業収獲統計調査に係る調査票そのものであり,本件文書10ないし15,18,19,22,23は,同調査票の内容を「農林水産統計情報処理システム」に電算入力する際に,入力ミスを防止するため,別紙3及び4の形式に転記したものである。 ウなお,本件統計調査は,農林水産大臣が統計法2条の規定による指定統計を作成するための指定統計調査である。 (4) 被告は,平成13年4月20日,原告の前記請求に対し,本件文書に係る情報は,公にすることにより統計調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条6号に該当する情報と解されること,統計法において,統計調査の結果知られた人又はその他の団体の秘密は保護されなければならないことをもって,本件文書を不開示とする決定をした(以下「本件処分」という。)。 (5) 原告は,同年7月4日,本件訴えを提起した。 2 主たる争点(1) 本件処分 団体の秘密は保護されなければならないことをもって,本件文書を不開示とする決定をした(以下「本件処分」という。)。 (5) 原告は,同年7月4日,本件訴えを提起した。 2 主たる争点(1) 本件処分の適法性ア被告の主張以下のとおり,本件処分は適法である。 (ア) 情報公開法5条6号該当性1(本件文書すべてについて)統計法は,被調査者の真実の申告を確保して,統計の真実性を確保するため,被調査者の申告義務,統計調査員等の実地調査権及び虚偽申告等に対する罰則を規定しているが(同法5条,13条,19条),回答事項が被調査者にとって他人に知られたくないものであることが多いため,前記規定にもかかわらず虚偽申告等の事例が存在する。そこで,調査者に,統計調査の秘密が守られるという調査実施者に対する信頼を築くことが必要となり,このため,統計法は,統計調査員等の守秘義務違反に対する罰則,調査票の目的外使用の禁止を規定している(同法14条,15条1項,19条の2)。しかも,本件統計調査に当たっては,調査票に調査結果が守秘義務の対象となることや調査票の使用目的を明示し,個々の調査票が徴税その他直接申告者に利害関係を生ずるような目的には使用されない旨記載するなどして(乙12の4,乙25,乙28),被調査者との信頼関係を築いている。 したがって,このようにして作成された本件文書に記載される漁業協同組合別の漁獲量又は収獲量が明らかになる情報は,同法14条の「秘密に属する事項」であるから,本件文書を公開することは,同条に反することになり,また,同法15条1項の目的外使用に該当し,かつ,同条2項の目的外使用禁止の例外に該当せず,さらに,被調査者の信頼を破壊して,調査への協力が得られない事態となるから,統計調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条 用に該当し,かつ,同条2項の目的外使用禁止の例外に該当せず,さらに,被調査者の信頼を破壊して,調査への協力が得られない事態となるから,統計調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条6号に該当する。 (イ) 情報公開法5条6号該当性2(本件文書1,5,6,8,11ないし15,17,19ないし21,23について)1経営体のみが特定の漁業種類又は養殖種類を営んでいること,その漁獲量又は収獲量及びその経営体が誰であるかは,別紙3又は4の形式の本件文書11ないし15,19ないし21,23自体,本件文書1と「岡山県漁業の動き」(甲1,乙14)の照合,又は漁船設備や養殖設備に関する文献(乙17ないし19)に基づき各漁業協同組合に係る所属漁船が寄港する漁港や内水面の漁業設備を見分することなどにより,知り得る蓋然性が高い。また,2経営体のみが特定の漁業種類又は養殖種類を営んでいること及びその漁獲量又は収獲量の合計,並びにその各経営体が誰であるかも,同様に知り得る蓋然性が高く,特に当該経営体の一方は,自己の漁獲量又は収獲量を差し引くことで,他方の漁獲量又は収獲量を知ることができる。 よって,特定の経営体の特定の漁業種類又は養殖種類の漁獲量又は収獲量が明らかになる情報が記載された本件文書1,5,6,8,11ないし15,17,19ないし21,23は,統計法14条の「秘密に属する事項」であるから,前記各文書を公開することは,同法14条に反することになり,また,同法15条1項の目的外使用に該当し,かつ同条2項の目的外使用禁止の例外に該当せず,さらに,調査者の信頼を破壊して,調査への協力が得られない事態となるから,統計調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条6号に該当する。 (ウ) 情報公開法5条2号イ該当性(本件文書1,6, 調査者の信頼を破壊して,調査への協力が得られない事態となるから,統計調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,情報公開法5条6号に該当する。 (ウ) 情報公開法5条2号イ該当性(本件文書1,6,17について)前記(イ)のとおり,本件文書1,6,17には,2経営体のみが営む特定の漁業種類又は養殖種類の漁獲量又は収獲量の合計が明らかになる情報が記載されており,当該経営体の一方が,他方の漁獲量又は収獲量を知ることができるから,生産規模の大きい方の経営体は,更なるシェアの獲得や独占を企図して,競合経営体の生産状況をもとにダンピング等の手段に訴えた競争を仕掛け,競合経営体を当該事業からの撤退に追い込むことなどが可能となる。 したがって,前記各文書を公開することは,競合経営体の公正な競争上の地位を害するおそれがあるから,情報公開法5条2号イに該当する。 イ原告の主張以下のとおり,本件処分は違法である。 (ア)a(a) 本件文書の漁業協同組合別の漁獲量又は収獲量は,重量で表示されたものにすぎず,統計法14条の「秘密に属する事項」に該当する性質のものではない。 (b) 統計法14条の「秘密に関する事項」の意義の解釈は,情報公開法5条2号イの定義が準用されるべきであるが,漁業協同組合別の漁獲量又は収獲量の公表は,「権利,競争上の地位」や「その他正当な利益」を害するおそれがあるものとはいえず,統計法14条の「秘密に属する事項とはいえない。 (c) 「岡山県漁業の動き」(甲1,乙14)によれば,市町村別の主とする漁業種類別経営体数,漁業種類別漁獲量,養殖業種類別収獲量,魚種別漁獲量等が公表され,邑久町,牛窓町,寄島町の各漁業協同組合は,いずれも町内唯一の漁業協同組合であるから,これら3漁業協同組合については,漁業協同組合別の各数値が公表されている。 類別収獲量,魚種別漁獲量等が公表され,邑久町,牛窓町,寄島町の各漁業協同組合は,いずれも町内唯一の漁業協同組合であるから,これら3漁業協同組合については,漁業協同組合別の各数値が公表されている。 また,朝日,幸島,九蟠,津田,光政,西大寺,小串の各漁業協同組合は,それぞれ別の町村に所在していたものが,市町村合併によって岡山市に所在することになったものであり(甲2),いずれも町内唯一の漁業協同組合であったところ(甲3),「昭和29年1月1日調査第二次漁業センサス」(甲4)には,邑久郡αすなわち朝日漁業協同組合(当時朝日村漁業協同組合)の漁獲量等が,「昭和24年1月1日調査日第一次漁業センサス」には,幸島,九蟠,津田,光政,西大寺,小串の各町村すなわち各漁業協同組合の各漁獲量等が記載されている。 以上のとおり,たまたま所在市町村内に他に漁業協同組合が存在するというだけで,漁業協同組合別の漁獲量又は収獲量が統計法14条の「秘密に属する事項」に該当することはありえないし,朝日,幸島,九蟠,津田,光政,西大寺,小串の各漁業協同組合の漁獲高等が統計として公表されなくなったのは,同漁業協同組合の存在した町村が合併したことと統計数値が市町村単位で公表されていることの反射的効果にすぎないから,統計法上の「秘密に属する事項」と関係がない。 また,統計数値を市区町村単位で公表するのは,統計処理上の便宜にすぎず,その区分方法が唯一のものとはいえず,漁業地区単位,漁業集落単位(乙10)で公表することも市区町村単位で公表することと同等に近い合理性があるから,統計法14条の「秘密に属する事項」とは関係がない。 b 原告が開示を求めているのは,「指定統計を作成するために集められた調査票」そのものではないから,統計法15条1項に該当しない。 また,「指定統計を 14条の「秘密に属する事項」とは関係がない。 b 原告が開示を求めているのは,「指定統計を作成するために集められた調査票」そのものではないから,統計法15条1項に該当しない。 また,「指定統計を作成するために集められた調査票」そのものが含まれるとしても,情報公開法は,統計法との関係で後法に当たるので,当該調査票に情報公開法5条各号に該当する情報が記載されている場合以外には,当該調査票は情報公開法に基づき公開されるべきである。 c 指定統計調査に当たっての信頼関係は,統計法14条の「秘密に属する事項」が保護されることの信頼関係であるから,それ以外の事項について信頼関係が仮に存在したとしても,法的保護に値しない。 被告が主張する調査非協力のおそれは,極めて抽象的である。 (イ) 1経営体が特定の漁業種類又は養殖種類を営んでいる場合について,本件文書は中間資料であるから,本件文書の開示だけで,その事実及び漁獲量又は収獲量が明らかになるか疑問である。 そもそも,情報公開法に基づく開示の可否を検討する場合には,専門的知識を有しない一般人を基準とするべきであり(甲5),養殖設備状況や漁船装備の照合など,漁業又は養殖業について専門的知識を有する者でなければできないことを基準として,開示の可否を検討するべきではない。 (2) 部分開示義務の存否(本件文書1,5,8,11ないし15,16,19ないし21,23について)ア被告の主張(ア) 情報公開法6条1項本文非該当性a そもそも,被告が情報公開法5条各号の不開示情報該当性を主張立証すれば,当該文書について不開示という法律効果が生じるので,原告が同法6条1項による部分開示を求める場合には,一部再抗弁として,同項本文の要件事実である当該文書に複数の情報が記録され,不開示情報に該当するのがその一部にす て不開示という法律効果が生じるので,原告が同法6条1項による部分開示を求める場合には,一部再抗弁として,同項本文の要件事実である当該文書に複数の情報が記録され,不開示情報に該当するのがその一部にすぎないこと,不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができることを主張立証すべきである。 b ところで,情報は,多数の文字・符号等の構成要素によって成立しているが,各構成要素だけでは通常多義的であり,社会生活上の特定の意味を持たないため,社会通念上ひとまとまりの事柄の知らせと評価されるものが,1個の情報といえる。 そして,情報公開法6条1項は,開示請求に係る行政「文書」の一部に不開示「情報」が記録されている場合に,当該部分を除いた部分の開示義務を,同条2項は,同法5条1項の不開示「情報」が記録されている場合に,当該「情報」のうち,特定の個人を識別できる「記述等」の部分を除いた部分を,同条項の「情報」に含まれないものと「みなして」開示する義務を定めているから,文理上,同法6条1項の規定は,1文書に記載された複数の情報のうちの1個が不開示情報に該当する場合に,他の情報を開示する義務を定めたものであって,1情報を構成する個々の記述等の部分の一部が同法5条各号所定の事由に該当する場合に,残りの記述等の部分を開示すべき義務を定めたものではない。 また,同法6条2項が,同法5条1号についてのみ同法6条1項の特則を設けたのは,同法5条1号前段が,同条2号ないし6号と異なり,権利利益を害するおそれの有無といった実質的判断をせずに,形式的に個人識別性のある情報であれば広く不開示情報とした反面として,情報を細分化した部分開示の規定を置くこととしたものと解される。 よって,同法5条2号ないし6号の不開示情報については,1個の「独立した一体的な情 ある情報であれば広く不開示情報とした反面として,情報を細分化した部分開示の規定を置くこととしたものと解される。 よって,同法5条2号ないし6号の不開示情報については,1個の「独立した一体的な情報」を細分化して,同条2号ないし6号に該当する記述部分だけを不開示情報として除き,その余の部分だけを上記各号に該当する不開示情報ではないものとみなして開示するという義務はない。 c 本件統計調査においては,市区町村の区域内において,共通の自然的及び社会経済的条件のもとに漁業が行われると認められ,各種水産統計調査の調査結果を統一的に表章する最小の地域的範囲である漁業地区が統計の地域的な単位となる。そして,漁業地区別に海面漁業生産の動向・概況を統一的に把握するために調査・集計段階の文書に記載された数値等は,全体が,統計上の最小単位における数値を算出するための基礎資料ないし補助資料になり,統計としての社会的意味を有するのであり個々の数値や記載事項だけでは,統計の単位ごとの海面漁業の生産に関する実態を十分反映するものとはいえず,統計調査に関する情報として独自の意味がない。 よって,本件文書においては,各文書の記載事項全体が,海面漁業生産統計調査の実施に関する社会通念上独立した一体的な情報をなし,1文書に複数の独立した一体的な情報が記録されているわけではないから,「開示請求に係る行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合」には該当せず,これを更に細分化して,例えば経営体数や事業者名以外の部分のみを情報公開法6条1項に基づいて開示する義務はない。 d なお,そもそも前記(1)アのとおり,上記以外の記載事項についても不開示情報該当性が認められるから,本件文書に不開示情報以外の情報が記録されていることにはならない。 (イ) 情報公開法6条1項ただし書き該 そもそも前記(1)アのとおり,上記以外の記載事項についても不開示情報該当性が認められるから,本件文書に不開示情報以外の情報が記録されていることにはならない。 (イ) 情報公開法6条1項ただし書き該当性政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするという情報公開制度の趣旨からすると,情報公開法6条1項ただし書きの有意性の判断は,開示請求者が知りたいと考える事柄との関連によるのではなく,客観的に決めるべきものであり,開示請求者の利害・関心は,開示請求者にとっての客観的な利益という限度でのみ考慮されるべきである。 海面漁業の生産に関する地域的傾向・性質を統一的に明らかにし得る最小単位が漁業地区であることからすれば,それより小さい集計単位における数値を記載した文書は,収獲量の情報と,養殖方法,投餌量,施設数・施設面積等に係る情報とが併せ開示されて初めて,海面漁業の生産に関する実態を明らかにし水産行政の基礎資料を整備するという海面漁業生産統計調査の目的に沿った調査が行われているか否かについて,説明責務が全うされる。 また,本件開示請求の趣旨が平成11年の本件統計調査に係る岡山市内の漁業協同組合の漁獲量又は収獲量の開示を求めるというものであったことや,収獲量と養殖方法等の細目的事項との関係に照らすと,開示請求者にとっての客観的利益という観点からみても,漁業協同組合別の収獲量の情報とそれ以外の情報とを併せ開示しなくては,社会通念上意味がない。 したがって,本件文書中の海面養殖業収獲統計調査に係る文書のうち,養殖種類別の収獲量の記載部分を除いた部分は「有意の情報が記録されていないと認められるとき」に該当し,開示すべき義務はない。 イ原告の主張(ア) 1漁業協同組合の1経営体のみが特定の漁業種類又は養殖種類を営んでいる場合に 分を除いた部分は「有意の情報が記録されていないと認められるとき」に該当し,開示すべき義務はない。 イ原告の主張(ア) 1漁業協同組合の1経営体のみが特定の漁業種類又は養殖種類を営んでいる場合について,その事実とその漁獲量又は収獲量が公になることが不開示事由になる場合でも,その部分は,極一部であり,他と区分することが容易であることは資料の性格上明らかであるから,被告は,情報公開法6条1項に基づき,当該部分を除いた部分につき,開示義務を負う。 (イ) 被告は,情報公開法6条1項本文による部分開示義務の主張立証責任は原告にあると主張するが,開示請求者は当該文書を入手していないため,当該文書に複数の情報が記載されていることや,当該部分を容易に区分して除くことができることの証明を要求することは,不可能を強いるに等しい。また,情報公開法は開示が原則である。よって,被告が,当該文書の全部にわたり不開示情報が記載されていること,又は当該行政文書の一部に不開示情報が記録されている場合にこれを容易に区分して除くことができないことを立証しなければならない。 また,被告は,それ以上細分化できない情報の単位を観念するが,情報とは性質上,細分化が可能なものであって,情報公開法上「情報の単位」という概念はない。そもそも,同法6条1項の部分開示義務の判断基準は残存部分に「有意の情報」が記録されているか否かだけで,情報の単位という概念は観念されず,同法8条は文書の存否自体さえ「情報」として扱っているし,行政機関も,現実には,情報の単位なるものを観念せず,細分化して開示したりしなかったりしている。 仮に,情報の単位という概念を観念できるとしても,本件文書に記載された漁獲量又は収獲量等の各数値の情報は,それぞれが1個の独立した情報であるから,各文書が独立した一体的な情 しなかったりしている。 仮に,情報の単位という概念を観念できるとしても,本件文書に記載された漁獲量又は収獲量等の各数値の情報は,それぞれが1個の独立した情報であるから,各文書が独立した一体的な情報とはいえない。 そして,情報の有意性は狭義に解釈されてはならず,客観的に意味のある情報が含まれているか否かによって決まるもので,統計調査の目的や説明義務といった観念の解釈によって決まらない。 第3 当裁判所の判断 1 前記第2,1の争いのない事実のとおり,本件統計調査は,統計法所定の指定統計調査であり,本件文書は,国の機関が行う事務に関する情報(情報公開法5条6号)に該当する。 ところで,統計法は,指定統計調査の結果知られた法人等の秘密に属する事項は保護されなければならないとし(同法14条),集められた調査票を統計上の目的以外に使用してはならないとして(同法15条1項),情報の公開を禁じる旨定めているが,情報公開法はこのような統計法との関係を定めていない。 そして,統計法が,被調査者の申告義務及び罰則(同法5条,19条の2)に加えて,調査者に前記秘密保護義務を課し,調査票の目的外使用を禁じるのは,被調査者との信頼関係を築き,真実の申告を確保し,もって統計の真実性を確保するためであり,他方,情報公開法は,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。 このような統計法の趣旨及び情報公開法の趣旨に鑑みれば,一方が他方を排除すると解するべきではなく,まず,一定の明確な基準に基づいて情報の開示を禁止している統計法15条1項は,それ自体が情報公開法5条6号の該当性判断の一基準となる定めであり に鑑みれば,一方が他方を排除すると解するべきではなく,まず,一定の明確な基準に基づいて情報の開示を禁止している統計法15条1項は,それ自体が情報公開法5条6号の該当性判断の一基準となる定めであり,その他の情報は,公にすることにより申告者の調査者に対する信頼を失い,真実の申告を確保できなくなるおそれがある場合に初めて,統計調査事務の適正な遂行に支障があるとして,情報公開法5条6号に該当すると解するのが相当である。 2 そこで,以下,具体的に本件文書の開示の可否について検討する。 (1) まず,本件文書16,17,20,21は,本件統計調査によって集められた調査票そのものであり,これらを公開することは統計法15条1項に反することになるから,情報公開法5条6号により開示されるべきでない情報といえる。 (2)ア次に,当該情報を公開するだけでは情報公開法5条6号に該当するとはいえない場合でも,他の情報と組み合わせることによって該当することになる場合には,それを公開すべきであるとすると前記統計法の趣旨に反し,ひいては国の機関が行う事務の適正な遂行を確保しようとする情報公開法5条6号の趣旨にも反することになる。したがって,このような場合も情報公開法5条6号に該当すると解するべきである。なお,当該他の情報に,特殊な情報も含むと解すると,前記情報公開法の趣旨を没却することになるため,他の情報とは,一般人が通常入手し得る関連情報に限ると解するのが相当である。 これを本件についてみると,まず,本件文書中別紙2の形式のものは,当該文書により,漁業協同組合別に漁業種類別の魚種別漁獲量が明らかになり,本件文書とは別に被告が一般に公表している「岡山県漁業の動き」(甲1,乙14。なお,証拠〔乙13〕によれば,「×」との記載は,2以下の数値を示すものと認められる。) 別の魚種別漁獲量が明らかになり,本件文書とは別に被告が一般に公表している「岡山県漁業の動き」(甲1,乙14。なお,証拠〔乙13〕によれば,「×」との記載は,2以下の数値を示すものと認められる。)によれば,岡山市の漁業種類別の経営体数及び魚種別の経営体数(経営体数が2以下のものは,その旨)が明らかになるので,上記のような形式の本件文書に上記のような資料を合わせれば,1又は2経営体のみが特定の漁業種類又は魚種を扱っている場合,それがどの漁業協同組合に属するか判明することになる。そして,当該経営体数が1又は2の場合は,一般に当該漁業協同組合が属する地域を見分することによって,当該経営体を特定することが容易にできるといえるから,上記のような形式の本件文書を公開することにより,特定の経営体の特定の漁業種類又は魚種の漁獲量が明らかになる。 また,別紙3及び4の形式の本件文書からは,漁業共同組合別かつ養殖種類別に経営体数及び魚種別収獲量が明らかになるところ,経営体数が1の場合は,一般に当該漁業協同組合が活動している地域で見分することにより,当該経営体を特定することが容易にできるといえるから,当該文書の公開により特定の経営体の特定の養殖種類の魚種別収獲量が明らかになる。 そして,弁論の全趣旨によれば,本件文書中,特定の経営体の特定の漁業種類又は魚種の漁獲量もしくは特定の養殖種類の魚種別収獲量が明らかになるものは,本件文書1,5,6,8,11ないし16,19ないし21,23であるといえる。 以上をもとに検討すると,本件文書1,5,6,8,11ないし15,19,23を公開することは,特定の経営体の特定の漁業種類又は魚種の漁獲量もしくは特定の養殖種類の魚種別収獲量を明らかにすることとなり,これは,本件統計調査に係る調査票の一部を明らかにすることに等しい ,23を公開することは,特定の経営体の特定の漁業種類又は魚種の漁獲量もしくは特定の養殖種類の魚種別収獲量を明らかにすることとなり,これは,本件統計調査に係る調査票の一部を明らかにすることに等しい。 よって,前記各文書を公開することは,統計法15条1項に反することになるから,情報公開法5条6号により開示されるべきではない情報といえる。 イところで,本件文書1,5,6,8,11ないし15,19,23について,原告は,情報公開法6条1項に基づき,被告が部分開示義務を負う旨主張するので,以下検討する。 前記アのとおり,前記各文書を公開することにより,特定の経営体の特定の漁業種類又は魚種の漁獲量もしくは特定の養殖種類の魚種別収獲量が明らかになることを防ぐためには,別紙2の形式のものについては,漁業種類別の魚種別漁獲量を,別紙3及び4の形式のものについては,養殖種類,魚種名及び経営体数を不開示としなければならないところ,当該部分は,別紙2ないし4のとおり,その形式上,容易に区分して除くことができる。 そして,前記各文書から,前記不開示部分を除いて得られる情報は,漁業協同組合別の総漁獲量又は総収獲量であり,それ自体有意の情報といえる。 この点,被告は,本件文書には1個の情報しか記載されておらず,情報公開法6条1項は,1個の情報を細分化して,同法5条6号に該当する記述部分のみを除き,その余の部分を公開することは予定していないとして,本件文書について部分開示義務がない旨主張するが,漁業協同組合別の総漁獲量又は総収獲量はそれ自体1個の情報といえるから,被告の主張は採用できない。 また,後記(3)のとおり,各漁業協同組合の総漁獲量又は総収獲量は情報公開法5条6号に該当しない。 ウしたがって,本件文書1,5,6,8については,漁業種類別の魚種別漁獲量 の主張は採用できない。 また,後記(3)のとおり,各漁業協同組合の総漁獲量又は総収獲量は情報公開法5条6号に該当しない。 ウしたがって,本件文書1,5,6,8については,漁業種類別の魚種別漁獲量の記載部分を,本件文書11,12ないし15,19,23については,養殖種類欄,魚種名欄及び経営体数の記載部分を除いて,開示するべきである。 (3) さらに,本件文書2ないし4,7,9,10,18,23について検討する。 これら文書については,これら文書を開示することが,直接統計法15条1項に反するものとはいえない。 そこで,情報公開法5条6号に該当するか否かを判断するに当たっては,文書を公にすることにより申告者の調査者に対する信頼を失い,真実の申告を確保できなくなるおそれがあるか否かを判断することになる。 ところで,国の機関が行う事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ(情報公開法5条6号)の有無は,前記情報公開法の趣旨に鑑み,単に実施機関が自らの立場で主観的に判断したところに従うべきではなく,そのおそれが客観的,具体的に存在していることを要すると解するべきであるから,公にすることにより,申告者の調査者に対する信頼を失い,真実の申告を確保できなくなるおそれも同様に解するべきである。 本件についてみると,被告が主張する本件文書の公開により失う被調査者との信頼は,市町村が統計の単位である慣行に基づくものにすぎず,統計の単位を市町村とし,それ以外の単位による公表を行わない旨明示して本件統計調査を行ったと認めるに足りる証拠はない。また,前記各文書は,調査票を被告が漁業地区又は漁業協同組合ごとに集計したものであり,いわば漁業協同組合という単位別の統計といえる。 これらの事実からすれば,市町村ではなく漁業協同組合を単位とする本件文書を公にすることによ 被告が漁業地区又は漁業協同組合ごとに集計したものであり,いわば漁業協同組合という単位別の統計といえる。 これらの事実からすれば,市町村ではなく漁業協同組合を単位とする本件文書を公にすることにより,申告者の調査者に対する信頼が失われるおそれ,更に真実の申告を確保できなくなるおそれは,具体的に存在しているとはいえない。 なお,被告が,岡山市内の漁業協同組合から聴取したところでは,各漁業協同組合は,本件文書の公開後に不快感・調査へ非協力の旨を示しているが(乙16の1ないし9),当該意見聴取票の質問事項は,統計及び統計以外等の意義について不明確であり,前記認定を覆すに足りない。 したがって,前記各文書は,情報公開法5条6号に該当しない。 (4) 以上より,本件処分のうち,本件文書1ないし15,18,19,22,23の文書を不開示とした部分(ただし,本件文書1,5,6,8の漁業種類別・魚種別の漁獲量欄,本件文書11,12ないし15,19,23の養殖種類欄,魚種名欄,経営体数欄を除いく。)を不開示としたのは違法であり,その余は適法である。 3 したがって,原告の請求は,本件処分のうち,本件文書1ないし15,18,19,22,23の文書を不開示とした部分(ただし,本件文書1,5,6,8の漁業種類別・魚種別の漁獲量欄,本件文書11ないし15,19,23の養殖種類欄,魚種名欄,経営体数欄を除く。)について取消しを求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないから,いずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第2民事部裁判長裁判官小野木等裁判官政岡克俊裁判官永野公規別紙1別紙番号|文書分類 主文 64条,61条を適用して,主文のとおり判決する。 理由 岡山地方裁判所第2民事部裁判長裁判官小野木等裁判官政岡克俊裁判官永野公規 事実 別紙1別紙番号|文書分類|行政文書名|大分類|小分類| 1|海面漁業漁獲統計調査|朝日漁業地区|朝日漁業地区計 2||西大寺漁業地区|辛島漁業協同組合 3|||西大寺漁業協同組合 4|||九幡漁業協同組合|||光政漁業協同組合 6|||津田漁業協同組合 7||岡山漁業地区|岡山市漁業協同組合 8|||岡山市海岸漁業協同組合 9||小串漁業地区|小串漁業地区計|海面養殖業収穫統計調査|朝日漁業地区|朝日漁業地区電算入力整理表 11|||朝日漁業地区電算入力整理表 12||西大寺漁業地区|漁業地区別一括調査補助票 13|||漁業地区別一括調査補助票 14|||漁業地区別一括調査補助票|||漁業地区別一括調査補助票 16|||九幡漁業協同組合海面養殖業調査票 17|||津田漁協海面養殖業調査票 18|||西大寺漁業地区電算入力整理表(九幡漁業協同組合のもの) 19|||漁業地区部地一括調査補助票||岡山漁業地区|岡山市漁協海面養殖業調査票 21|| 整理表(九幡漁業協同組合のもの) 漁業地区部地一括調査補助票|岡山漁業地区|岡山市漁協海面養殖業調査票 岡山市海岸漁協海面養殖業調査票 小串漁業地区|小串漁業地区電算入力整理票 小串漁業地区電算入力整理票

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