令和3(行ケ)10094 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年1月26日 知的財産高等裁判所 4部 判決 審決取消
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判決文本文110,531 文字)

令和5年1月26日判決言渡 令和3年(行ケ)第10094号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和4年11月7日判決 原告 リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士三村量一 同東崎賢治 同中島慧 同浜崎翔多 同訴訟代理人弁理士南条雅裕 同瀬田あや子 同伊波興一朗 被告 アムジエン・インコーポレーテツド 同訴訟代理人弁護士大野聖二 同山口裕司 同多田宏文 同盛田真智子 同訴訟代理人弁理士森田裕 主文 1 特許庁が無効2020-800012号事件について令和3年4月7日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由 第1 請求主 にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を3 0日と定める。 事実 及び理由第1 請求主文第1項と同旨。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 被告は、平成20年8月22日(優先日平成19年8月23日、同年12月21日、平成20年1月9日及び同年8月4日(以下「本件優先日」という。)、優先権主張国米国)を国際出願日とする特許出願(特願2010-522084号)の一部を分割して、平成27年2月23日、発明の名称を「プ ロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)に対する抗原結合タンパク質」とする発明について特許出願(以下「本件出願」という。)をし、平成28年3月25日、特許権の設定登録(特許番号第5906333号。請求項の数5。以下、この特許を「本件特許」という。)を受けた。 サノフィ(フランス法人)は、平成28年5月31日、本件特許について特許無効審判(無効2016-800066号事件。以下「別件無効審判」という。)を請求した。 被告は、平成29年3月9日付けの審決の予告を受けたため、同年5月8日付けで、特許請求の範囲の請求項1、2及び5からなる一群の請求項のう ち、請求項1及び5を訂正し、請求項2を削除し、請求項3及び4からなる 一群の請求項を削除する旨の訂正請求(以下「本件訂正」という。)をした。 その後、特許庁は、平成29年8月2日、本件訂正を認めた上、「本件特許の請求項1、5に係る発明についての審判請求は成り立たない。請求項2ないし4に係る発明についての審判請求を却下する。」との審決(以下「別件審決」という。)をした。 サ を認めた上、「本件特許の請求項1、5に係る発明についての審判請求は成り立たない。請求項2ないし4に係る発明についての審判請求を却下する。」との審決(以下「別件審決」という。)をした。 サノフィは、平成29年12月8日、別件審決のうち、本件特許の請求項1及び5に係る部分について取消しを求める訴訟(以下「別件審決取消訴訟」という。)を提起した(知的財産高等裁判所平成29年(行ケ)第10226号)が、知的財産高等裁判所は、平成30年12月27日、サノフィの請求を棄却した(サノフィが主張する取消事由(進歩性の判断の誤り、サポート 要件の判断の誤り、実施可能要件の判断の誤り)の存在をいずれも否定した。)。 サノフィは、同判決を不服として上告受理申立てをしたが、最高裁判所は、令和2年4月24日、上告不受理決定をし、同判決は確定した。 原告は、令和2年2月12日、本件特許の請求項1及び5に係る部分について特許無効審判(無効2020-800012号事件)を請求した。 特許庁は、令和3年4月7日付けで、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月16日、原告に送達された(附加期間90日)。 原告は、令和3年8月13日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び5の記載は、以下のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項5に係る発明を「本件発明5」といい、本件発明1と本件発明5を合わせて「本件発明」という。また、「配列番号67のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番 号12のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体」を「3 明5を合わせて「本件発明」という。また、「配列番号67のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番 号12のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体」を「3 1H4抗体」といい、「参照抗体」ともいう。)。 【請求項1】 PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ、PCSK9との結合に関して、配列番号67のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体と競合する、単離されたモノクローナル抗体。 【請求項5】 請求項1に記載の単離されたモノクローナル抗体を含む、医薬組成物。 3 本件審決の要旨 無効理由1(サポート要件違反)本件発明は、「PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することが でき」るという特性と、「PCSK9との結合に関して31H4抗体と競合する」という特性との両方を兼ね備えた「単離されたモノクローナル抗体」及びこれ「を含む医薬組成物」であるところ、本件出願の願書に添付した明細書(以下、図面を含めて、「本件明細書」という。)の【0002】、【0003】、【0066】、【0071】、【0155】、【0270】、【0271】、【0 276】の各記載によれば、本件発明の課題は、このような新規な抗体を提供し、これを含む医薬組成物を作製することで、PCSK9とLDLRとの結合を中和し、LDLRの量を増加させることにより、対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し、高コレステロール血症等の上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、又は予防し、疾患のリスク を低減することにあると理解することができる。 そして、本件明細書には、抗PCSK コレステロール血症等の上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、又は予防し、疾患のリスク を低減することにあると理解することができる。 そして、本件明細書には、抗PCSK9モノクローナル抗体の作製方法(免疫化マウスの作製、免疫化マウスを使用したハイブリドーマ(抗体産生細胞)の作製)、PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体をスクリーニングする方法、31H4抗体と競合する抗体をスクリーニングする方法が具体的 に記載されており(【0138】、【0312】、【0313】、【0320】、【0 322】ないし【0328】、【0332】ないし【0334】、【0336】、【0377】、【0378】、表1ないし表3)、また、実施例には、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有する二つのグループのマウスにヒトPCSK9抗原を注射して得たハイブリドーマから、PCSK9とLDLRとの結合を強く中和する抗体を産生するものを選択し、それらの抗体のエピトープビニング を行った2つの独立した実験の結果が示されており(実施例10、実施例37)、抗PCSK9モノクローナル抗体に対して「PCSK9とLDLRとの結合を中和することができ」るものを選択するスクリーニング、「31H4抗体と競合する」ものを選択するスクリーニングの2回のスクリーニングをすることで十分に高い確率で本件発明の抗体をいくつも繰り返し同定すること ができることが具体的に示されている。そして、本件明細書には、PCSK9とLDLRとの結合を中和することにより、LDLRの量を増加させ、対象中の血清コレステロールの低下をもたらすという作用機序が記載されている(【0066】、【0155】、【0270】、【0271】、【0276】)から、「PCSK9とLDLRタンパク質の 増加させ、対象中の血清コレステロールの低下をもたらすという作用機序が記載されている(【0066】、【0155】、【0270】、【0271】、【0276】)から、「PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ」るという 特性を有する本件発明の抗体が、対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し、高コレステロール血症等の、上昇したコレステロールのレベルが関連する疾患を治療し、予防し、疾患のリスクを低減するという課題を解決できるものであることを合理的に認識できる。 したがって、当業者であれば、本件明細書の記載から、本件発明の抗体は 上記の課題を解決できることを認識できるものであり、本件発明は、明細書に記載されたものといえるから、本件特許は、サポート要件に適合する。 無効理由2(実施可能要件違反)前記のとおり、本件明細書には、抗PCSK9モノクローナル抗体の作製方法(免疫化マウスの作製、免疫化マウスを使用したハイブリドーマの作 製)、PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体をスクリーニングする 方法及び31H4抗体と競合する抗体をスクリーニングする方法といった、本件発明の抗体を作成するための方法が具体的に記載されるとともに、抗PCSK9モノクローナル抗体に対してPCSK9とLDLRとの結合を中和することができること、31H4抗体と競合することの2つのスクリーニングを施すことにより、十分に高い確率で本件発明の抗体をいくつも繰り返し 同定することができることが具体的データにより示されているから、当業者は、本件明細書のこれらの具体的な記載に基づいて、十分に高い確率で本件発明の抗体を製造することができるといえる。 そして、抗体の結合領域の構造(アミノ酸配列)は、免疫 により示されているから、当業者は、本件明細書のこれらの具体的な記載に基づいて、十分に高い確率で本件発明の抗体を製造することができるといえる。 そして、抗体の結合領域の構造(アミノ酸配列)は、免疫化された動物の免疫細胞における抗体遺伝子の再構成の結果物であるから、当業者であれば、 本件明細書の記載を手掛かりに免疫化される動物の種類や免疫化プログラムを変更することにより、本件発明に含まれる実施例以外の多種多様な抗体を無数に製造することができると合理的に理解するものと認められる。 したがって、本件明細書は、当業者に過度な負担を強いることなく本件発明の抗体を取得することができる程度に記載されているといえるから、本件 特許は、実施可能要件に適合する。 無効理由3(進歩性欠如)ア本件審決が認定したNatureStructural & MolecularBiology、 vol.14(5)、pp.413-419 (2007)(甲1。以下「甲1文献」という。別紙2参照。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。) 「LDLRと結合するPCSK9である、機能獲得型PCSK9突然変異体F216L、S127R、D374Y、又は野生型PCSK9。」イ本件審決が認定した一致点及び相違点本件発明1の「モノクローナル抗体」及び甲1発明の「PCSK9」はともにタンパク質であるから、両者は、タンパク質である点で一致し、次 の点で相違する。 (相違点)本件発明1は、「PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ、PCSK9との結合に関して、31H4抗体と競合する、単離されたモノクローナル抗体」であるのに対して、甲1発明は、「LDLRと結合するPCSK9である LDLRタンパク質の結合を中和することができ、PCSK9との結合に関して、31H4抗体と競合する、単離されたモノクローナル抗体」であるのに対して、甲1発明は、「LDLRと結合するPCSK9である、機能獲得型PCSK9突然変異体F216L、 S127R、D374Y、又は野生型PCSK9」である点。 ウ相違点に関する判断別紙2の甲1-11(以下、単に「甲1-11」などという。)、甲1-12の記載から、動物免疫法やファージディスプレイ法といったモノクローナル抗体を得る手法を用いてPCSK9全長を抗原として抗PCSK 9抗体を得て、その中からPCSK9とLDLRとの結合を中和するものをスクリーニングすることによって、PCSK9とLDLRとの結合を中和する、何らかの抗PCSK9モノクローナル抗体を得ることができる可能性までは認めることができるが、抗原としてPCSK9全長を用いて得られた抗PCSK9モノクローナル抗体の中から結合中和アッセイによ りスクリーニングして得られたPCSK9とLDLRとの結合を中和する抗PCSK9モノクローナル抗体には、結合面や結合面周辺に存在する様々なエピトープに結合する相当多種多様のモノクローナル抗体が包含されると考えられるから、PCSK9とLDLRとの結合を中和することができる抗PCSK9モノクローナル抗体の中から21B12抗体と競 合するものを取得するためには、31H4抗体との競合アッセイを行って選択することが不可欠であって、そのためには31H4抗体が得られていることが前提となる。 しかしながら、甲1文献には、31H4抗体について記載も示唆もなく、PCSK9とLDLR抗体との結合を阻害することができる抗PCSK 9モノクローナル抗体の中から31H4抗 なる。 しかしながら、甲1文献には、31H4抗体について記載も示唆もなく、PCSK9とLDLR抗体との結合を阻害することができる抗PCSK 9モノクローナル抗体の中から31H4抗体や、PCSK9との結合に関 して31H4抗体と競合するモノクローナル抗体を得るための手がかりとなるような情報は何ら記載されておらず、また、31H4抗体が本件優先日前に広く知られていたものであったとも認めることができない。 したがって、当業者といえども31H4抗体と競合するモノクローナル抗体の取得に至ることはできないから、「31H4抗体と競合する」ことを 発明特定事項に含む本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえず、本件発明1の抗体を含む医薬組成物である本件発明5についても同様である。 無効理由4(明確性要件違反)本件発明において「競合」とは、当業者における常識的な程度の競合を意 味すると解するべきであって、本件明細書においても、【0140】のとおり、「競合」が常識的な意味で用いられており、その試験方法が具体的文献とともに記載され、常識的な程度の結合阻害を意味することが記載されているから、「31H4抗体と競合する」の外延が不明確であるということはできない。 無効理由5(発明該当性要件違反) 本件発明1及び5は、いずれも、課題を解決するための具体的手段を提示するものであり、自然法則を利用した技術的思想の創作であるといえるから、特許法上の「発明」に該当する。 4 取消事由 甲1発明に基づく進歩性の判断の誤り(取消事由1) ア本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1-1) 特許法上の「発明」に該当する。 4 取消事由 甲1発明に基づく進歩性の判断の誤り(取消事由1) ア本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由1-1)イ本件発明の容易想到性の判断の誤り(取消事由1-2) サポート要件違反の判断の誤り(取消事由2) 実施可能要件違反の判断の誤り(取消事由3) 明確性要件違反の判断の誤り(取消事由4) 発明該当性要件違反の判断の誤り(取消事由5)第3 当事者の主張 1 取消事由1-1(本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点の判断の誤り) 原告の主張本件審決は、前記第2の3イのとおり、本件発明1と甲1発明との対比 において、両者の一致点は単に「タンパク質」であると認定し、本件発明の発明特定事項はすべて相違点であると認定したが、以下のとおり誤りである。 ア甲1文献の記載事項 甲1文献は、冒頭で多くの文献を引用しつつ、PCSK9が脂質異常症の治療のための魅力的なターゲットであることを述べた上で(別紙2 の甲1-2)、後記の実験結果と従来の知見を踏まえた分析を示した上で、結論部分において、PCSK9を標的として、心血管疾患の治療に用いるための結合を中和する抗体を具体的に提案しており(甲1-12)、甲1文献は、「PCSK9に結合して、PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体」を治療に用いるという技術的思想を開示している。 甲1文献は、①LDLが細胞表面のLDLRと結合し、続いて、LDLと結合したLDLRがエンドソーム内に移行し、エンドソームの酸性条件(低pH条件)によってLDLRはLDLを放出し、LDLRは細胞表面へとリサイクル 細胞表面のLDLRと結合し、続いて、LDLと結合したLDLRがエンドソーム内に移行し、エンドソームの酸性条件(低pH条件)によってLDLRはLDLを放出し、LDLRは細胞表面へとリサイクルされること(甲1-8)、②エンドソームにおいて、PCSK9がLDLRと共に局在化すること、このこと は、LDLRと結合したPCSK9が、LDLRと結合したLDLと同様に、LDLRと共に、エンドソームに取り込まれることを示唆すること、しかしながら、LDLのLDLRへの結合がエンドソームにおいて弱まるのに対して、PCSK9のLDLRへの結合はエンドソームにおいて強まり得ること、PCSK9のLDLRへの結合はエンドソー ムにおいて強まり得ることによって、LDLRはPCSK9を放出でき ないため、LDLRが細胞表面に戻るリサイクル機構が働かず、細胞表面のLDLRが減少し得ること、(機能獲得型変異である)PCSK9のD374変異体が野生型PCSK9よりもより強固にLDLRと結合することは、PCSK9のD374変異体が、野生型PCSK9よりもLDLRを減少させる活性がより強いことを説明し得ること(甲1 -10)、③②の記載事項と整合する実験結果として、野生型PCSK9とLDLRの結合は、エンドソームの酸性条件(低pH条件)において血漿中に相当する中性条件におけるよりも170倍強くなることを実験的に示し(甲1-5)、また、PCSK9のD374変異体は、血漿中に相当する中性条件(pH7.5)において、野生型PCSK9よりも 約25倍強くLDLRに結合する実験結果(甲1-7、1-10)の記載がある。 このように、甲1文献は、実験結果と従来の知見を踏まえた分析として、PCSK9とLDLRとの直接結合が細胞 約25倍強くLDLRに結合する実験結果(甲1-7、1-10)の記載がある。 このように、甲1文献は、実験結果と従来の知見を踏まえた分析として、PCSK9とLDLRとの直接結合が細胞表面へのLDLRのリサイクルの阻害をもたらすメカニズムが記載されており、これに基づいて、 前記のとおり、PCSK9に結合して、PCSK9とLDLRの結合を中和する抗体を治療に用いることが開示されているといえる。 イ本件発明1と甲1発明との対比 前記アのとおり、甲1文献は、PCSK9の作用・機能により生じる高コレステロール血症や心血管の治療のために、PCSK9の阻害剤と して「PCSK9に結合して、PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体」を用いるという技術的思想を開示している。 他方で、甲1文献には、「モノクローナル抗体」の文言はなく、また、本件発明は「参照抗体(31H4抗体)と競合する」抗体である旨を規定するが、甲1文献にはその点に関する記載はない。 そうすると、甲1発明と本件発明1は、高コレステロール血症や心血 管疾患の治療のために「PCSK9に結合して、PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体」を用いる点において一致するが、甲1発明の抗体が「モノクローナル抗体」であるか不明であること、「参照抗体(31H4抗体)と競合する」抗体であるか不明である点で相違する。 本件審決は、前記第2の3イのとおり、甲1発明と本件発明1は、 単に「タンパク質」である点で一致し、その他の本件発明1の発明特定事項はすべて相違点であると認定するが、前記アの甲1文献の開示事項からすると、一致点及び相違点の認定に誤りがある。そして、本件優先日当時の技術常識や周知技術を踏まえれば、治療に用いるこ 1の発明特定事項はすべて相違点であると認定するが、前記アの甲1文献の開示事項からすると、一致点及び相違点の認定に誤りがある。そして、本件優先日当時の技術常識や周知技術を踏まえれば、治療に用いることを意図した抗体は、当然に「モノクローナル抗体」を意味するものであり、この 点は実質的な相違点ではなく、一応の相違点である。 そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点に関し、両者の相違点は実質的に「31H4抗体と競合する」ことのみであることを明らかにすれば、本件発明の進歩性判断の本質は、甲1文献の記載から取得可能な結合中和抗体と本件発明1の「31H4抗体と競合する」 結合中和抗体とがどのように相違するものであるのか、「31H4抗体と競合する」ことは実質的な相違点たり得るのか(優先日当時に取得可能な結合中和抗体の多くが事実上有する性質にすぎないのではないか)が明らかになるため、本件審決の一致点及び相違点の認定の誤りは、進歩性の判断に影響を与えるものである。 被告の主張本件発明1は、「PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ、PCSK9との結合に関して、配列番号67のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体と競合する、単離されたモノクローナル抗体。」 との発明特定事項を有する。これに対して、甲1文献は、抗体が作製された ことについては何ら開示するものではない。 すなわち、甲1文献には、「理論の上では、PCSK9の自己プロセシング及び分泌を阻害し、PCSK9の機能喪失型変異と同様の効果を奏する細胞透過性のプロテアーゼ阻害剤によってPCSK9を標的とすることができるのかもしれない。」 論の上では、PCSK9の自己プロセシング及び分泌を阻害し、PCSK9の機能喪失型変異と同様の効果を奏する細胞透過性のプロテアーゼ阻害剤によってPCSK9を標的とすることができるのかもしれない。」、「血漿中のPCSK9に結合し、そのLDLRとの結合を 阻害する抗体や低分子もPCSK9の機能の効果的な阻害剤となり得る。」(甲1-12)との記載があるが、この記載は、PCSK9がLDLRを低下させたから、単に抽象的な候補として、治療薬として実用の可能性が低いものも含め、理論の上でのあらゆる候補を羅列したにすぎない。 むしろ、甲1文献は、PCSK9が細胞外(血漿中)ではなく、細胞内で LDLRに作用する可能性を示唆しており、抗体(通常、細胞内に入ることができない)による治療も有効ではないと思わせる内容であった。しかも、本件優先日当時、PCSK9がLDLRにどのように作用しているのか解明されておらず、甲1文献は、PCSK9の結晶構造を明らかにしたものの、当時、PCSK9は他の転換酵素と同様にタンパク質分解活性を持ち、プロ テアーゼとして働き、LDLRを低下させるのではないかとも考えられていたし、標的とすべきPCSK9とLDLRの結合部位である特定のドメインも未だ不明であった。 このように、本件優先日当時、PCSK9のLDLRに対する作用は不明な点が多く、甲1文献はこれらの点を明らかにする内容ではなかったから、 この段階で甲1文献が結合中和抗体による治療を具体的に開示しているとはいえず、甲1文献と本件発明1には一致点はない。 したがって、本件発明1と甲1発明との間には一致点はなく、相違点は、本件審決が認定したとおりである。 2 取消事由1-2(本件発明の容易想到性の判断の誤り) 原告の主 ない。 したがって、本件発明1と甲1発明との間には一致点はなく、相違点は、本件審決が認定したとおりである。 2 取消事由1-2(本件発明の容易想到性の判断の誤り) 原告の主張 ア容易想到性の判断基準 進歩性要件の趣旨は、特許の付与がなくて生み出される技術に対する独占権が生じるのを防ぎ、技術の自由な利用を不当に制約しないことにあるから、出願時において引用発明に基づいて当業者が容易に作成することができるものが請求項に係る発明の技術的範囲に属している場合 には、当該発明は進歩性を欠くものというべきである。 一般的な特許審査実務では、発明の進歩性の判断基準として、引用発明との一致点及び相違点を認定し、相違点である発明特定事項の容易想到性を検討するが、前記の進歩性要件の趣旨に鑑みると、発明特定事項が容易想到ではなかったとしても、当業者が容易に想到し得るものが請 求項に係る発明の技術的範囲に含まれている場合には、当該発明は進歩性を欠くと判断されるべきである。 したがって、本件発明の進歩性の判断においては、本件発明に含まれる何らかの抗体を本件優先日当時に当業者が容易に取得できる限り、本件発明は進歩性を欠くと判断されるべきである。 本件審決は、前記第2の3ウのとおり、本件優先日当時、31H4抗体が容易に取得可能でなかったから、本件発明1は当業者が容易に発明をすることができたものということはできない旨判断した。 しかし、本件発明1の「31H4抗体と競合する」との発明特定事項は、31H4抗体自体が本件優先日当時公知ではなく、本件発明1は、 本件優先日当時において特許権者以外には知る者がいない事項によって特定されたものであり、こうし 体と競合する」との発明特定事項は、31H4抗体自体が本件優先日当時公知ではなく、本件発明1は、 本件優先日当時において特許権者以外には知る者がいない事項によって特定されたものであり、こうした事項によって特定された発明の進歩性の判断において、31H4抗体が本件優先日当時に公知でも入手可能でもないことのみを理由に進歩性欠如を否定することは、「出願日ないし優先日当時に公知公用又は取得可能なものが、その要件に該当するか 否かは分からないが、少なくともその発明は新たな要件によって特定さ れているから、新規性・進歩性がある」と判断することと同じであって、誤りである。 イ本件発明1の容易想到性の判断の誤り 甲1文献及び周知技術に基づきPCSK9全長を抗原として結合中和モノクローナル抗体を取得するだけで本件発明1に含まれる抗体を 容易に取得することができることa 31H4抗体は、PCSK9とLDLRとの結合部位に部分的に結合するため、PCSK9とLDLRとの結合を阻害する結合中和抗体には、当然ながら31H4抗体と競合する抗体が少なからず含まれる。 したがって、甲1文献及び周知技術に基づき、PCSK9全長を抗 原として結合中和モノクローナル抗体をいくつか取得するだけで、当業者は、31H4抗体と競合する抗体、すなわち、本件発明1に含まれる抗体を容易に取得することができるのであって、この際、当業者は、本件発明1に含まれる抗体を取得する上で、31H4抗体を何ら知っている必要はない。 b 上記の事実を裏付けるために、PCSK9とLDLRとの結合を阻害する結合中和抗体には、31H4抗体と競合する抗体が少なからず含まれることを示す実証実験の結果(甲2の1、2)を示す。 すな b 上記の事実を裏付けるために、PCSK9とLDLRとの結合を阻害する結合中和抗体には、31H4抗体と競合する抗体が少なからず含まれることを示す実証実験の結果(甲2の1、2)を示す。 すなわち、【A】博士(以下「【A】博士」という。)の供述書(甲2の1)は、本件優先日当時の周知技術を用いてPCSK9全長を抗 原として得られた抗PCSK9モノクローナル抗体(結合中和するかどうかを問わずPCSK9に特異的に結合する抗体)についての実証実験結果であり、これによると、本件優先日当時の周知技術を用いてPCSK9全長を抗原として結合中和モノクローナル抗体を得たところ、そのうち約8割が31H4抗体と競合したことを示した。また、 【B】(【B】)博士(以下「【B】博士」という。)の供述書(甲2の 2)は、【A】博士の実験結果に基づいて検討した結果について、2007年当時の平均的スキルを持つ科学者であれば、標準的技術を用いて、PCSK9-LDLR結合中和抗体を得られたであろうこと、そして、それらのうちの多くが31H4抗体とも競合したであろうことは明らかであると述べており、【B】博士も、当業者が、本件優先日当 時の周知技術を用いてPCSK9全長を抗原としてPCSK9とLDLRの結合中和試験を行って結合中和抗体を取得すれば、その中には31H4抗体と競合する抗体が多く含まれていることを指摘している。 c また、本件発明1には、結合中和活性の程度については何らの限定もなく、本件明細書でも、「中和抗体」の説明として、少なくとも約1 ~20%の中和能しか有しない抗体も中和抗体に含まれるものとしている(【0138】)から、31H4抗体自体の結合中和活性の程度は高いものであっても、本件発明1には結合中和活性の程度が低いも ~20%の中和能しか有しない抗体も中和抗体に含まれるものとしている(【0138】)から、31H4抗体自体の結合中和活性の程度は高いものであっても、本件発明1には結合中和活性の程度が低いものも含まれており、本件発明が顕著な効果を有するといえるものに限定されているわけではない。加えて、本件発明1は、31H4抗体との 競合についても何ら限定はなく、競合の程度が高いものもあれば、低いものも含まれる。 このように、結合中和活性の程度も競合の程度も無限定である以上、周知技術に基づき結合中和抗体のいくつかを取得し、そのような抗体を結合中和の程度や31H4抗体との競合の程度で分類すれば、その 際には、31H4抗体と何らかの程度において競合するものが含まれることになる。 したがって、周知技術に基づき取得される結合中和抗体の1つ1つが常に31H4抗体と競合するとはいえないとしても、低くない合理的な割合で本件発明1に含まれる抗体を取得できるのであれば、進歩 性を否定すべきところ、本件発明1には結合中和の程度も31H4抗 体の競合において何らの限定もないから、当業者は、本件発明1に含まれる抗体を容易に取得できたものといえる。 甲1文献及び周知技術に基づきPCSK9の374位周辺ペプチドを抗原として結合中和モノクローナル抗体を取得するだけで本件発明1に含まれる抗体を容易に取得することができること a 甲1文献には、①PCSK9の機能獲得型変異は、LDLR(LDL-Cの受容体)を減少させ、血漿中のLDL-Cを増やし、高コレステロールとなること、②PCSK9の機能喪失型変異は、LDLR(LDL-Cの受容体)を増大させ、血漿中のLDL-Cを減少させ、低コレステロールとなる旨の記載がある( 中のLDL-Cを増やし、高コレステロールとなること、②PCSK9の機能喪失型変異は、LDLR(LDL-Cの受容体)を増大させ、血漿中のLDL-Cを減少させ、低コレステロールとなる旨の記載がある(甲1-2)。 そして、甲1文献には、PCSK9のD374変異体が機能獲得型変異であり、高コレステロール血症と結び付けられると要約されている(甲1-1)。ここで、PCSK9のD374変異体とは、PCSK9の374位のアミノ酸が野生型アスパラギン酸(D)ではなくチロシン(Y)に置換されている機能獲得型変異を意味するものである。 そして、甲1文献は、PCSK9のD374変異体は、血漿中に相当する中性条件(pH7.5)において、野生型PCSK9よりも約25倍強くLDLRに結合する旨を実験結果と共に示すとともに、D374変異体によるLDLRを低下させる効果の増大がLDLRの細胞外ドメイン(ECD)への結合が強化されることにより生じるもので あることを試験結果は強く示唆している旨の記載がある(甲1-6、1-7)。 このように、甲1文献には、PCSK9とLDLRとの結合において、PCSK9の374位が重要であることが示されている。 また、甲1文献には、PCSK9の374位がPCSK9の表面を 形成することが立体構造とともに示されており(甲1-4。図4)、P CSK9の374位が図4のPCSK9の頂点部分(一番上の部分)に位置していることが理解することができる。このように、甲1文献の図4には、PCSK9の374位がPCSK9の表面に存することが開示されている。 b 前記1アのとおり、甲1文献は、PCSK9-LDLR結合中 和抗体が有効な治療薬になることを開示しており、PCSK 9の374位がPCSK9の表面に存することが開示されている。 b 前記1アのとおり、甲1文献は、PCSK9-LDLR結合中 和抗体が有効な治療薬になることを開示しており、PCSK9-LDLR結合中和抗体の取得を動機付ける。また、前記aのとおり、甲1文献には、特にPCSK9の374位がPCSK9とLDLRの結合において重要であり、また、PCSK9の374位がPCSK9の表面を形成することが立体構造モデルと共に示されている。そうする と、当業者は、PCSK9の374位周辺ペプチドを抗原として結合中和抗体モノクローナル抗体を取得することが動機付けられるといえる。 本件優先日当時、特定の抗原に対して結合する抗体を作成する方法としては、タンパク質の全長を抗原として用いて取得する方法だけで はなく、例えば、ファージディスプレイ法でペプチドを抗原として抗体を取得する方法や、抗原としてのペプチドを、直接ではなく、ビオチン化して間接的にマイクロビーズに固相化することによって、ペプチドを抗原として結合するファージ抗体をより効果的に選抜するといったように、タンパク質の特定部位のペプチドを用いて取得する方法 も周知であったから、甲1文献の記載により動機付けられた当業者は、「PCSK9に結合して、PCSK9とLDLRとの結合を阻害する抗体」を、PCSK9の374位周辺ペプチドを抗原としてモノクローナル抗体として取得することはできた。 そして、PCSK9の374位周辺ペプチドを抗原として抗PCS K9抗体を取得した場合には、PCSK9上の374位周辺ペプチド をエピトープとする抗体が得られ、そのような抗体は、結合中和抗体であり、31H4抗体とも競合するもの(本件明細書の実施例31、表12参照)であっ には、PCSK9上の374位周辺ペプチド をエピトープとする抗体が得られ、そのような抗体は、結合中和抗体であり、31H4抗体とも競合するもの(本件明細書の実施例31、表12参照)であって、得られた結合中和抗体のうち31H4抗体と競合する抗体を選択する必要はない。 このように、PCSK9の374位に結合する抗体であれば、LD LRの結合を中和し、31H4抗体とも競合するから、当業者は、本件発明1に含まれる抗体を容易に取得し得たといえる。 c 甲1文献及び周知技術に基づき、PCSK9の374位周辺ペプチドを抗原として結合中和モノクローナル抗体を取得するだけで、本件発明1に含まれる抗体を容易に取得できることは、以下の実験結果か らも明らかである。 すなわち、【A】博士の供述書(甲5の1)は、本件優先日当時の周知技術を用いてPCSK9の374位周辺ペプチドを抗原として得られた抗PCSK9モノクローナル抗体(結合中和するかどうかを問わず、PCSK9に特異的に結合する抗体)について、結合中和試験 及び31H4抗体との競合試験を行った結果であり、これによると、本件優先日当時の周知技術を用いてPCSK9の374位周辺ペプチドを抗原として結合中和モノクローナル抗体を得たところ、全て31H4抗体と競合したことを示した。また、【B】博士の供述書(甲5の2)は、【A】博士の実験結果に基づいて検討し、2007年当時の 当業者であれば、標準的技術、プロトコル、及び広く利用可能であった試薬を用いて、PCSK9-LDLR結合を中和し、かつ、hPCSK9(ヒト由来のPCSK9)との結合に際し、31H4抗体と競合するヒト抗体を作成できたであろうことは明らかであると述べており、【B】博士も、当業者が、本件優先日当時の周知技 中和し、かつ、hPCSK9(ヒト由来のPCSK9)との結合に際し、31H4抗体と競合するヒト抗体を作成できたであろうことは明らかであると述べており、【B】博士も、当業者が、本件優先日当時の周知技術を用いてPC SK9の374位周辺ペプチドを抗原としてPCSK9に結合するモ ノクローナル抗体を作成し、PCSK9とLDLRとの結合中和試験を行って結合中和抗体を取得すれば、その中には、31H4抗体と競合する抗体が多く含まれていることを指摘している。 d なお、本件発明1には、結合中和活性の程度や31H4抗体との競合の程度については何らの限定もないことは、前記cのとおりであ る。周知技術に基づき取得される結合中和抗体の1つ1つが常に31H4抗体と競合するとはいえないとしても、低くない合理的な割合で本件発明1に含まれる抗体を取得できるのであれば、進歩性を否定すべきところ、本件発明1には結合中和の程度も31H4抗体の競合において何らの限定もないから、当業者は、本件発明1に含まれる抗体 を容易に取得できたものといえる。 ウ本件発明5の容易想到性の判断の誤り本件審決は、前記第2の3ウのとおり、本件発明5は、本件発明1の抗体を含む医薬組成物であるから、本件発明1と同様である旨判断するが、前記イのとおり、本件発明1についての容易想到性の判断に誤りがあるか ら、本件発明5についての判断も誤りである。 被告の主張ア原告が主張する容易想到性の判断基準の誤り原告は、前記アのとおり、本件発明に含まれる何らかの抗体を当業者が容易に取得することができる限り、本件発明は進歩性を欠くと判断され なければならない旨主張するが、特許法29条2項は、「特許出願前にその発明の属する 、本件発明に含まれる何らかの抗体を当業者が容易に取得することができる限り、本件発明は進歩性を欠くと判断され なければならない旨主張するが、特許法29条2項は、「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない」と規定し、容易想到性の対象は、技術思想である「発明」であって、「発明」に含まれ る個々の物ではないことを明確に規定している。本件発明は、PCSK9 とLDLRとの結合を中和し、参照抗体と競合するという構成要件によって規定された単離されたモノクローナル抗体であって、個々の抗体ではない。 仮に、結合中和抗体のプールの中に参照抗体と競合する抗体が含まれているとしても、本件優先日当時はその抗体が参照抗体と競合するという特 性を認識することができないことは当事者間に争いがない。そうであれば、抗体分野の技術常識で競合抗体が得られたというものではなく、原告が主張する進歩性基準を前提としても、本件発明は進歩性を有する。 イ本件発明1の容易想到性の判断の誤りについて 本件優先日当時、参照抗体が知られていない以上、PCSK9とLD LRとの結合中和抗体の中に31H4抗体が含まれているかどうか当業者は認識することができないし、また、そのようにして得られるPCSK9とLDLRとの結合中和抗体のプールには事後的に見ても、参照抗体と競合する抗体と参照抗体と競合しない抗体が含まれるから、PCSK9とLDLRとの結合中和抗体の中から所定の割合でしか含まれ ない31H4抗体と競合する抗体を選択する必要があるが、PCSK9とLDLRとの結合中和 体と競合しない抗体が含まれるから、PCSK9とLDLRとの結合中和抗体の中から所定の割合でしか含まれ ない31H4抗体と競合する抗体を選択する必要があるが、PCSK9とLDLRとの結合中和抗体の中から所定の割合でしか含まれない31H4抗体と競合する抗体を選択する動機付けは先行技術にはない。モノクローナル抗体は、実質的には1種類の抗体からなるものであり、医薬には通常1種類のモノクローナル抗体が含まれるから、何を指標にし て選択するかについて試行錯誤がされる。競合するかどうか分からないありとあらゆるPCSK9とLDLRとの結合中和抗体を入手できたからといって、そこから競合する1つの抗体を選択する指標がなければモノクローナル抗体を作製、取得することができないのであって、選んだ抗体を含む医薬を得ることもできないから、参照抗体と競合する抗体 を選択する動機付け及び選択する技術的手段はない以上、本件発明1は 甲1発明から容易に想到し得たものではない。 また、PCSK9に結合する抗体を得る際には、単なる周知慣用技術では足りず、固相化方法を適切に選択する必要がある。本件発明の発明者は、PCSK9をビオチン標識し、ビオチン-ニュートラビジンリンカーを介して固相化する方法(ビオチン化PCSK9法又はb-PCS K9法)を採用した(【0325】ないし【0327】)。 このように、PCSK9とLDLRの中和抗体(特に、LDLRのうちPCSK9に結合する領域である「EGFaドメイン」と相互作用するPCSK9上の領域に直接結合し、PCSK9とLDLRの結合を効果的に中和するのに適した抗体)を得るためには、PCSK9を特定の 方法で固定化しなければならないが、甲1文献にはこうした開示はなく、甲1文献 領域に直接結合し、PCSK9とLDLRの結合を効果的に中和するのに適した抗体)を得るためには、PCSK9を特定の 方法で固定化しなければならないが、甲1文献にはこうした開示はなく、甲1文献は、PCSK9とLDLRの結合中和抗体を得ることが可能となるような記載も示唆もない。 本件発明は、PCSK9に反応する3000のハイブリドーマを最初の大規模セットとしてPCSK9とLDLRとの相互作用を中和する 能力でスクリーニングを実施し、特に野生型PCSK9よりもLDLRに対して強く結合する変異型PCSK9とLDLRとの結合を90%以上阻害することができる抗体を選別したことで、LDLRのEGFaドメインと相互作用し、PCSK9とLDLRとの相互作用を遮断するのに有効なPCSK9上の重要領域に結合する多くの抗体を得ること ができたのであり、こうした遮断抗体のスクリーニングが、甲1文献には記載も示唆もない。 以上のとおり、甲1文献及び周知技術に基づいてPCSK9とLDLRの結合を中和する抗体のプールは容易に得られたものではなく、その抗体の中から参照抗体の競合という結合特性を指標にして1つの抗体 を選択することなしには、参照抗体と同様のメカニズムでPCSK9と LDLRの結合を中和する本件発明1のモノクローナル抗体を得ることはできないから、甲1文献及び周知技術から本件発明1の抗体を選択する動機付けはない。 ウ原告の主張について 原告は、前記イbのとおり、甲1文献及び周知技術に基づいて結 合中和抗体を得ることは実証実験により示されている旨主張するが、【A】博士の供述書(甲2の1)の実証実験は偽陽性を含むものであり、誤りである。 すなわち、技術分野の専門家 いて結 合中和抗体を得ることは実証実験により示されている旨主張するが、【A】博士の供述書(甲2の1)の実証実験は偽陽性を含むものであり、誤りである。 すなわち、技術分野の専門家である【C】教授(以下「【C】教授」という。)による専門家意見書(乙24)によれば、①本件明細書の実施例 10では「プレミックス」法(PCSK9と参照抗体をあらかじめ混ぜて十分に結合させ、この混合物をプレート上に固定化された試験対象の抗体に加える方法)を用いているところ、【A】博士はこの方法を用いておらず、【A】博士の用いた、プレート上の被験抗体にまずPCSK9を加えて結合させ、次いで参照抗体を加える方法では、被験抗体がプレー トに固定化された向きによってはPCSK9上の参照抗体結合部位が閉塞してしまうため、参照抗体がPCSK9+被験抗体複合体と結合することができなくなり、見かけ上競合しているかのような結果を示している、②【A】博士は、実施例10よりはるかに高い濃度のPCSK9と、実施例10より高い濃度の被験抗体を使用し、それにもかかわらず 実施例10よりわずかに少ない濃度のブロッキング緩衝液を使用した(使用する抗体及び抗原の濃度が高いと、抗体と抗原間、抗体とプレート間での非特異的な結合が増加し、こうした非特異的な結合を防止するためにはより強力なブロッキング緩衝液を使用する必要があることが知られている。)ために、PCSK9が参照抗体の結合部位を閉塞するよ うな形で被験抗体に非特異的に結合し、参照抗体がPCSK9と結合で きなくなるなどの現象が防げないため、見かけ上競合しているかのような結果になっていることが指摘されている。そして、【A】博士の実験の問題点に基づいてPepscanがより強力なブロッキング緩衝 きなくなるなどの現象が防げないため、見かけ上競合しているかのような結果になっていることが指摘されている。そして、【A】博士の実験の問題点に基づいてPepscanがより強力なブロッキング緩衝液を使用して実験したところ、【A】博士が「競合する」と結論付けた081006A、081006B、190515-41の各抗体は、参照抗体 と競合しないことが示されており、このことは、【A】博士の実験の問題点を明らかに示すものである。 原告は、前記イのとおり、PCSK9の374位周辺ペプチドを抗原とする動機付けがあり、そのような抗体を取得すれば31H4抗体と競合する抗体が得られる旨主張する。 しかし、甲1文献及び甲第8号証には、D374Yの機能獲得型変異があるPCSK9がLDLRと強固に結合することは示されているものの、この部位が結合面であることは全く示唆されておらず、むしろ、甲1文献には、3つのドメイン(N末端のプロドメイン(S127が存在)、スブチリシン様触媒ドメイン(D374が存在)及びC末端ドメイ ン)が全て結合に関与し、触媒ドメインのみでは結合に不十分であり、プロドメインが結合に関与しているとの記載があり、また、D374Yだけでなく、S127もLDLRと強固に結合することも示唆されているから(甲1-11)、甲1文献により374位周辺ペプチドを抗原として抗PCSK9抗体を取得することが動機付けられるとはいえない。 また、【A】博士の供述書(甲5-1)及び【B】博士の供述書(甲5-2)は、ヒトPCSK9のアミノ酸368ないし383位のアミノ酸配列と同一の配列を有するペプチドを用いて抗体を得たとするが、LDLRのEGFaドメインとの結合に374位のアミノ酸が関与すること( -2)は、ヒトPCSK9のアミノ酸368ないし383位のアミノ酸配列と同一の配列を有するペプチドを用いて抗体を得たとするが、LDLRのEGFaドメインとの結合に374位のアミノ酸が関与すること(【0429】)、参照抗体が374位のアミノ酸の周辺に結合する (図19A参照)という本件明細書の記載に基づいて組み立てた後知恵 の実験系によるものであって、本件優先日当時の技術水準を反映したものではない。 エ小括以上によれば、甲1文献及び周知技術によって当業者は本件発明1のモノクローナル抗体を容易に取得することはできないことは明らかであっ て、これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由2(サポート要件違反の判断の誤り)について 原告の主張アサポート要件の判断基準サポート要件の判断基準は、請求項に係る発明が、発明の詳細な説明に おいて「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであるか否かにより判断されるべきである。そうでなければ、公開されていない発明について独占的、排他的な権利が発生することになり、一般公衆からその自由利用の利益を奪い、ひいては産業の発達を阻害するおそれを生じ、特許制度の趣旨に反することになるから である。 本件発明が解決すべき課題は、「結合中和抗体を提供すること」であり、この課題は、甲1文献にも記載のある周知の課題である。そして、本件発明は、「31H4抗体と競合する(単離されたモノクローナル)抗体」であり、「31H4抗体」との競合の程度については何ら特定されていないから、 こうした発明において特許請求の範囲がサポート要件に適合するというためには、「31H4抗体と競合する(単離された 」であり、「31H4抗体」との競合の程度については何ら特定されていないから、 こうした発明において特許請求の範囲がサポート要件に適合するというためには、「31H4抗体と競合する(単離されたモノクローナル)抗体」であれば、高い蓋然性をもって「PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体」であると当業者が理解できるように明細書に記載されていなければならないといえる。 なお、「結合中和抗体であること」は、本件発明の発明特定事項に記載さ れているが、備えるべき性質、作用効果が発明特定事項に含まれているからといって、サポート要件を充足すると判断されてはならず、「解決すべき課題」を記載(クレームアップ)したにすぎない発明特定事項以外の発明特定事項によって、高い蓋然性をもって当該課題が解決できると認識できる必要があるというべきである。 イ本件発明は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであること本件発明は、「結合中和抗体の提供」という本件発明が解決すべき課題と、「参照抗体(31H4抗体)と競合する(単離されたモノクローナル)抗体」という課題解決手段のみによって特定されているから、本件発明 に含まれる抗体の数は、少なくとも何百万もの抗体が含まれるのみならず、本件明細書の実施例抗体とは全く異なる種々の性質・構造・結合部位を有する抗体が含まれることになる。 本件明細書に開示されている「31H4抗体と競合する抗体」は、結合中和する抗体をスクリーニングにより先に選別した上で、次に「31 H4抗体との競合の有無」により分類した結果得られた抗体にすぎないから、本件明細書に開示のある31H4抗体と競合する抗体は、全て結 する抗体をスクリーニングにより先に選別した上で、次に「31 H4抗体との競合の有無」により分類した結果得られた抗体にすぎないから、本件明細書に開示のある31H4抗体と競合する抗体は、全て結合中和抗体ということになるにすぎない。本件明細書の実施例の記載は、論理関係からして、31H4抗体と競合する抗体であれば結合中和抗体であることを示すものではなく、また、結合中和抗体であれば31H4 抗体と競合する抗体であることを示すものでもない。 したがって、本件明細書には、「31H4抗体と競合する(単離されたモノクローナル)抗体」であれば、高い蓋然性をもって「PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体」であると理解できる記載は存在しない。 科学的事実としても、以下のとおり、「31H4抗体と競合する(単離 されたモノクローナル)抗体」であれば、高い蓋然性をもって「PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体」であるとはいえない。 a 31H4抗体は、LDLRのEGFaドメインが結合するPSCK9表面上の部位のごく末端において、PCSK9に結合するにすぎず、LDLRのEGFaドメインが結合するPCSK9表面上の部位とは 無関係な部位であって31H4抗体と競合し得る部位において、PCSK9上に結合する抗体は無数に存在する。 被告は、後記イのとおり、本件発明に係る抗体は、参照抗体との競合によってPCSK9上の複数の結合面のうち特定の領域内の特定の位置(LDLRのEGFaドメインが相互作用する部位と重複する 位置(又は同様の位置))に結合する抗体であるかのように主張するが、結合中和抗体であるからといってLDLRのEGFaドメインが相互作用する部位と重複する位置(又は同様の位 する部位と重複する 位置(又は同様の位置))に結合する抗体であるかのように主張するが、結合中和抗体であるからといってLDLRのEGFaドメインが相互作用する部位と重複する位置(又は同様の位置)に結合する抗体に限られるものではない。抗体がPCSK9に対するLDLRの結合を中和する(阻害する)ことは、PCSK9の表面上においてLDLRと 抗体とが立体障害を生じることと同じである。本件明細書上も、抗体とLDLRがその結合部位(エピトープを構成するPCSK9上のアミノ酸)において何ら重複せず、結合部位自体が離間したものであっても立体障害があれば競合を生じる(【0140】)。しかも、本件発明は、結合中和性の程度や参照抗体との競合の程度については極めて広 範な結合中和抗体を含むものであって、結合中和抗体であるからといって、LDLRのEGFaドメインと相互作用するPCSK9上の部位と重複する位置(又は同様の位置)に結合する抗体に限られない。 b この事実を裏付けるための実証実験結果は、次のとおりである。 すなわち、【A】博士の供述書(甲2の1)は、本件優先日当時の 周知技術を用いて得られたPCSK9に結合するモノクローナル抗体 を多数取得し、31H4抗体との競合試験、PCSK9-LDLR結合中和試験を行った結果であるが、これによると、31H4抗体と競合する抗体であっても、その大部分といえる約8割(34個中28個)の抗体は、結合中和することができない抗体であったことが示されている。 また、【B】博士の供述書(甲2の2)は、【A】博士の実証実験結果は、31H4と競合する抗体の大部分がhPCSK9とLDLRとの結合を中和することができないことを示していること、本件特許によれば、31H4の結合部 供述書(甲2の2)は、【A】博士の実証実験結果は、31H4と競合する抗体の大部分がhPCSK9とLDLRとの結合を中和することができないことを示していること、本件特許によれば、31H4の結合部位は、hPCSK9上のLDLR結合部位とわずかに部分的に重複するにすぎず、別の抗体の結合部位は、L DLRの結合部位と重複することなく31H4の結合部位と重複し得るのであり、このようにして、別の抗体は、hPCSK9-LDLR結合を中和することなく、31H4と競合し得ることを指摘した上で、この結果は、31H4抗体と競合する抗体はLDLRとの結合を中和するであろうという考えは科学的に誤りであることを示すとともに、 31H4抗体と競合する抗体は必ず31H4抗体と同様の親和性又は結合部位を共有するという考えには同意しない旨述べる。 c 実証実験において示された31H4抗体と競合する抗体の大部分の抗体は、結合中和することができない抗体であったという事実は、【D】(【D】)教授(以下「【D】教授」という。)の供述書(甲17)によ る構造解析によっても、科学的に裏付けられている。 すなわち、下記の図のとおり、PCSK9の表面上における、①LDLRの結合領域、②31H4抗体の結合領域、③31H4抗体と競合する抗体の結合領域を図示したところ、PCSK9の表面上において、①LDLRの結合領域(表面積の約3%)に比べ、③31H4抗 体と競合する抗体の結合領域(表面積の約31%)が広大である(エ ピトープ(結合領域)が重複する範囲として控え目に見積もったものであり、エピトープが重複しなくても立体障害により競合することを考慮すると、31H4抗体と競合する抗体の結合領域は31%よりも更に広い)ことを示しており、この構造解析は として控え目に見積もったものであり、エピトープが重複しなくても立体障害により競合することを考慮すると、31H4抗体と競合する抗体の結合領域は31%よりも更に広い)ことを示しており、この構造解析は、実証実験において示された、31H4抗体と競合する抗体の大部分(8割よりも多く)の 抗体は結合中和することのできない抗体であったという事実を科学的に裏付けるものである。 本件発明の特許請求の範囲には、「EGFaミミック抗体」が含まれるが、本件明細書には、「EGFaミミック抗体」の記載はない。 a 請求項1に含まれる膨大な数の種々の結合中和抗体の中には、LDLRのうちPCSK9が結合する領域であるEGFaドメインと相互作用するPCSK9の表面上におけるアミノ酸の大部分を認識する結 合中和抗体(「EGFaミミック抗体」と呼ばれる抗体で、現時点においてアリロクマブとして発見されているもの)が存在するから、請求項1に含まれる膨大な数の種々の結合中和抗体の中には、この結合中 和抗体も含まれるところ、本件明細書においては、LDLRのEGFaドメインと相互作用する、PCSK9の表面におけるアミノ酸が15個開示されており(【0430】)、21B12抗体はそのうち4ないし6個、31H4抗体はそのうち3個を認識するにすぎない(【0430】、【0440】)、実施例28ないし30、図20A等)のに対して、 アリロクマブはそのうち12個を認識するのであるから、21B12抗体及び31H4抗体は、EGFaミミック抗体ではない(以上につき、下記の表参照)。また、本件明細書のその他の実施例の抗体も、EGFaミミック抗体とはいえない。 のみならず、被告は、本件優先日から約5 はない(以上につき、下記の表参照)。また、本件明細書のその他の実施例の抗体も、EGFaミミック抗体とはいえない。 のみならず、被告は、本件優先日から約5年後の2012年においても、「(我々は)現在、EGFaミミック抗体を取得できていない」、「EGFaミミック抗体は、我々が現在有する抗体の2つの一部重複 するエピトープのちょうど中間に位置することから、EGFaミミック抗体を見つけることは一筋縄ではいかないだろう」と述べているように(甲4の1)、本件明細書に記載された方法では、EGFaミミッ ク抗体を取得できていない。 なお、本件審決は、サポート要件は明細書の記載及び出願時の技術常識から判断されるべきものであるからその後の事情は考慮しないと判断したが、その後の事情は考慮しないとしても、本件優先日及び本件出願時の技術常識や技術水準によれば、不連続なアミノ酸により構 成される特定の立体構造的エピトープ(LDLR結合部位)の大部分を認識する抗体を取得するための方法論は存在せず、また、本件明細書にはEGFaミミック抗体を取得できるような記載はないのであるから、いずれにしても本件審決の判断は誤りである。 b 被告は、後記エのとおり、①当業者は、本件優先日又は本件出 願時においてEGFaミミック抗体という概念や同抗体を取得するといった課題は存在していないから、こうした課題を解決する必要はなかった、②EGFaミミック抗体は、21B12抗体に基づいて開発されたエボロクマブと同等の作用効果しか示しておらず、EGFaミミック抗体は参照抗体を超える何らかの技術的意義はなく、③本件明 細書には、9C9抗体という「EGFaドメインを十分にミミックする抗体」が開 クマブと同等の作用効果しか示しておらず、EGFaミミック抗体は参照抗体を超える何らかの技術的意義はなく、③本件明 細書には、9C9抗体という「EGFaドメインを十分にミミックする抗体」が開示されている旨主張する。 しかし、PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和する抗体が高コレステロール血症の治療薬として有用であることは、本件優先日当時既に公知であり、また、本件優先日当時、モノクローナル抗体の 作製技術や結合中和抗体アッセイの技術は、既に周知技術であったから、当業者は、これらを用いて何らかの中和抗体を取得することができたことは、前記2のとおりである。「EGFaミミック抗体」という用語が本件優先日当時に周知でなかったとしても、PCSK9とその天然のリガンド(生体分子と複合体を形成して生物学的な目的を果 たす物質のこと)であるLDLRとの天然において生じる相互作用を 忠実に模倣する抗体という概念は当業者が認識し得たことであり、また、そうした抗体であれば、LDL-Cのレベルを減少させるのに好適であるということも当業者が認識し得たことであって、①は理由がない。 また、EGFaミミック抗体は、請求項1には本件明細書に開示さ れた内容を超えて本件明細書にサポートされていない抗体まで広範囲に含まれることの端的な例証であるにすぎないから、EGFaミミック抗体の技術的意義を論じる実益はなく、②の点は議論のすり替えである。さらに、被告がLDLR結合部位の中央に結合すると主張する9C9抗体は、「弱い結合中和抗体」であり(【0138】)、出願後に 開示された情報を考慮しても、LDLR結合部位の15アミノ酸のうち5アミノ酸と相互作用を有する抗体であるにすぎず、「EGFaドメインを十分 い結合中和抗体」であり(【0138】)、出願後に 開示された情報を考慮しても、LDLR結合部位の15アミノ酸のうち5アミノ酸と相互作用を有する抗体であるにすぎず、「EGFaドメインを十分にミミックする抗体」なるものではないから、③も理由がない。 前記アのとおり、本件発明の解決すべき課題は、PCSK9抗体に結 合し、PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体の提供であるところ、本件発明には「競合」及び「中和」についての限定はないから、31H4抗体との競合の程度が低い(例えば5%)抗体でも、何らかの結合中和をする限り、本件発明に含まれることになる。 ところが、31H4抗体と競合すれば結合中和抗体であるとの蓋然性 があるといえないことは前記のとおりであり、仮に、31H4抗体との競合が結合中和の指標であるとしても、31H4抗体とわずかにしか競合しない抗体(低競合抗体)について、類型的に、全てあるいは大部分が結合中和抗体であるとはいえないことは明らかである。もとより、本件明細書には、31H4抗体との低競合抗体について類型的にPCS K9とLDLRとの結合を中和する抗体である蓋然性が高いといった 記載はなく、そうした技術常識もない。 サポート要件は、特許請求の範囲全体において当業者が課題を解決できると認識することができるものでなければならないところ、こうした低競合抗体については、PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体の提供という本件発明の課題を解決できる蓋然性が高いと当業者が認 識することができるものではない。 ウ取消事由2の主張が特許法167条に反するとの点について被告は、後記アのとおり、サポート要件違反は法条単位で考えるべきであ と当業者が認 識することができるものではない。 ウ取消事由2の主張が特許法167条に反するとの点について被告は、後記アのとおり、サポート要件違反は法条単位で考えるべきであるから、別件審決取消訴訟の判決確定後に取消事由2を主張することは、特許法167条に反するものである旨主張する。 しかし、特許法167条は、「同一の事実及び同一の証拠」に関して規定するものであるから、サポート要件違反は「法条単位」で適用すべきであるとの上記主張は、明文に反する独自の見解である。本件無効審判では、別件無効審判では判断されていない【A】博士の供述書(甲2の1)や【B】博士の供述書(甲2の2)に記載された実証実験、EGFaミミ ック抗体の存在(甲4の1、2)に基づいて主張するものである以上、取消事由2は、「同一の事実及び同一の証拠」に基づく無効理由ではなく、同条に反するものではないから、被告の上記主張は失当である。 エ小括以上のとおり、①31H4抗体と競合する単離されたモノクローナル抗 体であれば、高い蓋然性をもってPCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体であると当業者が理解できる記載は本件明細書にはなく、科学的にもこうした事実はないから、本件発明は、発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものであること、②本件発明のうち、少なくともEGFaミミッ ク抗体に関する部分については、本件明細書に記載されているとはいえな いこと、③本件発明には、31H4抗体とわずかにしか競合しない抗体も含まれるが、そのような低競合抗体は、なおさらPCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体の提供という本件発明の課題を解決できる蓋 いこと、③本件発明には、31H4抗体とわずかにしか競合しない抗体も含まれるが、そのような低競合抗体は、なおさらPCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体の提供という本件発明の課題を解決できる蓋然性が高いと当業者が認識することができないことからすれば、本件発明は、サポート要件に反するものである。 被告の主張ア原告の主張する取消事由2は特許法167条に反すること特許法167条は、「特許無効審判・・・の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない」と規定するところ、同条の「当事者」は、利害関係を 同一とする者を含むものと解するべきである。また、同条の「同一の事実及び同一の証拠」の範囲は、記載要件に関しては、新規性等の要件とは異なり、法条単位で考えるべきである。 これを前提にして本件についてみると、サノフィは、本件とほぼ同じ主張と重複する証拠に基づいて、前記第2の1のとおり、本件特許につい ての無効審判請求(別件無効審判)をし、特許庁で不成立審決がされた後、知的財産高等裁判所にこの審決の取消訴訟を提起したが、同社の請求は棄却され、最高裁判所に上告受理を申し立てたが、上告不受理決定で同判決は確定した。さらに、被告は、サノフィ株式会社に対して、本件特許に係る特許権に基づいて、サノフィ及びサノフィ株式会社が製品化した製剤等 につき販売等の差止を求める訴訟を提起し、請求が認容されて確定したところ、原告は、サノフィ及びサノフィ株式会社と共同で上記製剤等の製品化、販売をしており、サノフィと利害関係を共通にしている。原告は、形式的に無効審判請求人を変更して、別件無効審判で排斥されたサポート要件違反の主張を行うものであるから、 会社と共同で上記製剤等の製品化、販売をしており、サノフィと利害関係を共通にしている。原告は、形式的に無効審判請求人を変更して、別件無効審判で排斥されたサポート要件違反の主張を行うものであるから、特許法167条に反するものである。 イ抗体の分野における技術常識について サポート要件の判断は、明細書の記載と出願当時の技術常識を考慮してされるものであるところ、本件特許の出願当時の技術常識として、以下の点が挙げられる(乙2)。①低分子化合物では、いくつかの化合物間で、ある共通の性質を有していたとしても、化学構造は必然的に様々であり、化合物間で他の性質まで共通していることはほとんど無く、仮に、同じ特定 の特徴を有していたとしても、ある化合物は別の作用を有し、別の化合物は更に別の作用を有することとなり、同じ性質を有するというだけでは化合物の一面を記述したにすぎず、化合物の全体像を記述することにはならないのに対して、抗体は、相手の分子と特異的に結合するという能力に特化した生体分子であって、抗原への結合に関与する部位以外は抗体として の共通した構造と性質を共有しており、また、抗原に結合する部位に関しても、抗原に結合する以外の特定の能力が期待されるものではなく、抗原への結合特性を記述すれば抗体の全体像を記述したこととなる。②化合物は、構造を参照し、その具体的構造に基づいて合成法を検討し、得なければならないのに対して、抗体分野の特徴として、免疫により優れた結合特 性を有する抗体が、動物の体内で生み出され得て、その産生過程で発明に適したアミノ酸配列が決定されていくことから、特定の結合特性を有する抗体を得るときに、そのアミノ酸配列を設計しておく必要はなく、抗体をその特性を試験してスクリーニングすることに その産生過程で発明に適したアミノ酸配列が決定されていくことから、特定の結合特性を有する抗体を得るときに、そのアミノ酸配列を設計しておく必要はなく、抗体をその特性を試験してスクリーニングすることにより所望の特性を有する抗体を得ることができる。 ウ本件発明は、発明の詳細な説明において記載されたものであること本件明細書の発明の詳細な説明には、以下のとおりの記載があり、当業者は、出願時の技術常識に照らし、参照抗体との競合によってPCSK9上の複数の結合面のうち特定の領域内の特定の位置(LDLRのEGFaドメインと結合する部位と重複する位置(又は同様の位置))に結合する抗 体は、PCSK9とLRLRのタンパク質の結合を中和することができる と理解するものであり、発明の技術的範囲の全体にわたって発明の課題を解決できると認識することができたといえる。 なお、31H4抗体(参照抗体)と競合するが、PCSK9とLDLRとの結合を中和できない抗体が仮に存在したとしても、そのような抗体は、本件発明1の技術的範囲から文言上除外されているし、そのような抗体は、 本件明細書の記載に基づいて、PCSK9とLDLRとの相互作用を確認することにより技術的にも困難なく取り除くことができることから、本件発明がサポート要件に反する理由とはならない。 本件明細書の【0325】ないし【0336】には、PCSK9とLDLRの結合を中和する能力を有する抗体が取得されたことが記載さ れており、本件明細書に記載のあるスクリーニング方法により取得された384個の抗PCSK9モノクローナル抗体がPCSK9とLDLRとの結合を遮断することが示され、また、前記結合を90%以上遮断することができる顕著な遮断能力を有する抗 リーニング方法により取得された384個の抗PCSK9モノクローナル抗体がPCSK9とLDLRとの結合を遮断することが示され、また、前記結合を90%以上遮断することができる顕著な遮断能力を有する抗体が100個得られたことも開示されている(【0332】)。 21B12抗体及び31H4抗体は、実施例3において取得された抗体であり、共にPCSK9に結合するが、PCSK9上ではLDLRのEGFaドメインと相互作用する領域にまたがる、隣接するが異なる領域に結合することが示されている(図20A)。そして、このPCSK9上の結合位置によって、21B12抗体及び31H4抗体(更にこれら と競合する抗体)は、PCSK9とLDLRとの結合を極めて顕著に遮断することが示されている(実施例11)。 また、KinExA(R)親和性測定の結果、21B12抗体はヒトPCSK9に対して15pMのKD値(平衡解離定数)を示し(表8.2)、31H4抗体はヒトPCSK9に対して3pMのKD値を示し(表8. 1)、ヒトPCSK9に対して強い結合親和性を有しており、特に、LD LRとの結合が強い変異体D374YPCSK9を用いた遮断実験において、21B12抗体及び31H4抗体は、サブナノモーラーレベルのIC50という非常に強い結合遮断作用を有したこと(【0378】)や、21B12抗体及び31H4抗体は、LDLRへの野生型PCSK9の結合も遮断したこと(【0379】)が開示されている。 本件明細書には、実施例14及び図9に示されるように、PCSK9とLDLRとの結合を中和(遮断)する抗体の一例として示される31H4抗体が、LDLRレベルを増加させることが開示されている。また、本件明細書には、21B12抗体 び図9に示されるように、PCSK9とLDLRとの結合を中和(遮断)する抗体の一例として示される31H4抗体が、LDLRレベルを増加させることが開示されている。また、本件明細書には、21B12抗体及び31H4抗体が、25A7.1ABP(非中和物質)より、スタチンの存在下でさえ、LDLRレベルの より大きな増加をもたらしたこと(実施例24、図12A、B、D)、21B12抗体及び31H4抗体がPCSK9によるLDLRコレステロール細胞取込み作用を極めて効果的に阻害すること(実施例12、図7AないしD)、ヒトPCSK9を発現する遺伝子組換えマウスにおいて21B12抗体及び31H4抗体がいずれも効果的に血清コレステ ロールを低下させること(実施例26、図14)がそれぞれ示されている。 こうした記載から、当業者は、本件発明の抗PCSK9抗体は、PCSK9とLDLRのEGFaドメインとの結合を細胞外において阻害(中和)することによって、血清LDL-コレステロールを効果的に低 下させることを理解できる。 本件明細書には、競合ELISAという実験方法により得られた抗PCSK9抗体をビニング(binning)した結果、ビン1(21B12抗体と競合する)又はビン3(31H4抗体と競合する)に分類される多数の抗体が得られたこと(【0373】以下の実施例10、【表11】(表8. 3))が開示されている。 本件明細書には、LDLRのEGFaドメイン、21B12抗体及び31H4抗体のPCSK9上での結合部位が結晶構造解析のデータにより示されている(図17、図19A、B、図20AないしF)。具体的には、実施例30の結晶構造解析データにおいて、31H4抗体は、21B12抗体とPCSK9に同 での結合部位が結晶構造解析のデータにより示されている(図17、図19A、B、図20AないしF)。具体的には、実施例30の結晶構造解析データにおいて、31H4抗体は、21B12抗体とPCSK9に同時に結合できることが記載されている (図19A)。図19Aに示されるとおり、31H4抗体は、21B12抗体と隣接するが、異なるPCSK9上の触媒ドメイン上のエピトープに結合する。そして、実施例31及び32において、21B12抗体及び31H4抗体のPCSK9への結合部位が示され、LDLRがPCSK9に結合するのに対する構造的障害となることが示されている(図2 0DないしF)。図20DないしFにおいて、LDLRは立体的障害により、21B12抗体又は31H4抗体とは同時にPCSK9に結合することがないことが示されている。このように、本件明細書には、①21B12抗体のPCSK9上での結合領域がLDLRのEGFaドメインとの結合領域と重複していること、②31H4抗体の結合領域が21 B12抗体の結合領域と隣接していること、③31H4抗体のPCSK9上での結合領域がLDLRのEGFaドメインとの結合領域と重複していることが開示されている。 また、実施例10及び表8.3において31H4抗体と競合する(同じビンに属する)モノクローナル抗体として16F12抗体が開示され ているが、16F12抗体は、動物実験である実施例15及び実施例26において、参照抗体と競合する抗体の代表例として実験され、コレステロールを低下させるのに非常に有効な抗体であることが確認された(図10C、14A、14B)。 これらの開示事項から、当業者であれば、21B12抗体と競合する 抗体又は31H4抗体と競合する抗体は、それぞれPCSK9とLDL 抗体であることが確認された(図10C、14A、14B)。 これらの開示事項から、当業者であれば、21B12抗体と競合する 抗体又は31H4抗体と競合する抗体は、それぞれPCSK9とLDL RのEGFaドメインとの結合を抑制できるであろうことを十分に認識できる。 エ原告の主張について 原告は、前記アのとおり、特許請求の範囲がサポート要件に適合するというためには、「31H4抗体と競合する(単離されたモノクローナ ル)抗体」であれば、高い蓋然性をもって「PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体」であると当業者が理解できるように明細書に記載されていなければならない旨主張するが、本件明細書で開示されている抗体は、PCSK9とLDLRとの結合を中和することができ、かつ、31H4抗体とPCSK9との結合に関して競合する抗体であり(【0 332】、【0336】、表2、表8.3)、「31H4抗体と競合する」との要件のみを満たす抗体ではないから、論理関係からして、「31H4抗体と競合する」との要件のみを満たす抗体が高い蓋然性をもって「PCSK9とLDLRとの結合を中和することができる」必要はない。 また、原告は、前記アのとおり、結合中和抗体であることが本件発 明の「解決すべき課題」であると主張するが、本件発明は、31H4抗体と同様のメカニズムによってPCSK9とLDLRとの結合を中和することによって血中コレステロール濃度を低下させることができる抗体に向けられているのであって、課題はPCSK9とLDLRとの結合を中和することではない。 原告は、前記イbの【A】博士供述書(甲2の1)記載の実証実験結果と、この結果に基づいた【B】博士の供述書(甲2の2)を論拠 とLDLRとの結合を中和することではない。 原告は、前記イbの【A】博士供述書(甲2の1)記載の実証実験結果と、この結果に基づいた【B】博士の供述書(甲2の2)を論拠とした主張をするが、【A】博士の実証実験結果に問題点があることは、前記2ウのとおりである。 また、原告は、前記イcのとおり、実証実験を裏付けるものとし て【D】教授の供述書(甲17)による構造解析を論拠とするが、この 構造解析は、【E】教授の見解書(乙2)で指摘されているとおり、エピトープの端の2アミノ酸が共通するだけで抗体が競合するとの技術常識は存在しない点、PCSK9の表面の三次元的な形状が無視されている点で問題があり、抗体工学の技術常識に反する誤った見解である。本件明細書で開示されたPCSK9の構造と抗体工学の技術常識を踏ま えると、PCSK9の立体形状が平坦でないことから、21B12抗体や31H4抗体と競合する抗体の結合位置は限られると考えられる。 原告は、前記イのとおり、本件発明1には「EGFaミミック抗体」なる抗体が含まれることを指摘し、本件明細書にはEGFaミミック抗体が記載されていないことや同抗体が得られなかったことを挙げ て、サポート要件に違反する旨主張するが、これらの指摘は同要件違反とは関係がない。 すなわち、前記のとおり、本件特許に係る抗体は、LDLRのEGFaドメインと重複する位置(又は同様の位置)に結合してLDLRとPCSK9の触媒ドメインとの結合を中和できる抗体であり、本件明細書 で初めて開示された新しいクラスの抗体である。本件特許の出願までは、PCSK9の触媒ドメインの31H4と同じ部位と結合するような抗体が、PCSK9とLDLRのE できる抗体であり、本件明細書 で初めて開示された新しいクラスの抗体である。本件特許の出願までは、PCSK9の触媒ドメインの31H4と同じ部位と結合するような抗体が、PCSK9とLDLRのEGFaドメインとの結合を中和し、最終的に体内のLDL-Cレベルを低下させる上で有効であろうとの知見は当業者に知られておらず、そもそも、本件発明の出願時においてさ え、PCSK9の触媒ドメインの15アミノ酸(前記イaの表の「PCSK9結合部位」)の小さな領域とLDLRのEGFaドメインとの結合が、PCSK9とLDLRとの結合において重要であることは知られていなかったから、当業者は、本件優先日又は本件出願時点において、EGFaミミック抗体と称する抗体を得るという課題を認識すること もなく、当該課題を解決する必要はなかった。特許法上、出願後に生じ 得る課題についてまで解決手段を提供することは要件とされていないから、本件明細書にEGFaミミック抗体について記載がないことやそうした解決手段が記載されてないことはサポート要件とは関係がなく、出願後にEGFaミミック抗体が見出されたとしても、サポート要件に反するものではない。 また、原告がミミック抗体と称するアリロクマブは、被告が21B12抗体に基づいて開発したエボロクマブと同等の作用効果しか示しておらず、EGFaミミック抗体が参照抗体を超える何らかの技術的意義はない。原告は、「EGFaミミック抗体」を「PCSK9の表面上におけるLDLR結合部位の大部分のアミノ酸を認識するような結合中和抗体」 とする独自の定義を作り出して、EGFaミミック抗体が「大部分のアミノ酸を認識」する点を強調するが、抗体が「大部分のアミノ酸」を認識するかどうかは、本件発明の課題の解決にお な結合中和抗体」 とする独自の定義を作り出して、EGFaミミック抗体が「大部分のアミノ酸を認識」する点を強調するが、抗体が「大部分のアミノ酸」を認識するかどうかは、本件発明の課題の解決において何らの技術的意義も有するものではなく、課題の解決に関係しない技術事項がサポート要件と関係するものではない。 なお、本件明細書に開示されている9C9抗体は、PCSK9上のLDLRのEGFa結合領域の正に中心部分に結合するものであり、程度はともかくとして、EGFaドメインを模倣(ミミック)する抗体である。上記のとおり、「LDLR結合部位の大部分を認識」するかどうかは、本件発明の課題の解決において何らの技術的意義も有しないから、本件 明細書には、EGFaドメインを模倣(ミミック)する抗体が開示されているといえる。 原告は、前記イのとおり、本件発明の解決すべき課題は、PCSK9に結合し、PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体の提供であるとの誤解に基づいて、「31H4抗体と競合する」抗体には、低競合 抗体も含まれるから、なおさら本件発明の課題を解決できない旨を主張 する。 しかし、本件発明1は、PCSK9とLDLRとの結合を中和することができるという要件と31H4抗体と競合するという要件の2つを満たすものとして規定されており、当然のことながら、PCSK9とLDLRとの結合を中和することができるというのは、技術的に有意にPC SK9とLDLRとの結合を中和することができることを意味するものである。そうとすれば、本件発明は、当業者が、本件明細書と本件出願日当時の技術常識に基づいて、発明の効果を有意に奏すると理解することができるものであるから、原告の主張は失当である。 オ小 のである。そうとすれば、本件発明は、当業者が、本件明細書と本件出願日当時の技術常識に基づいて、発明の効果を有意に奏すると理解することができるものであるから、原告の主張は失当である。 オ小括 以上によれば、原告主張の取消事由2は特許法167条に反するものであり、その点を措くとしても、本件発明1は、サポート要件に適合する発明であり、これを引用する本件発明5も、サポート要件に適合する発明であるから、原告主張の取消事由2は理由がない。 4 取消事由3(実施可能要件違反の判断の誤り)について 原告の主張ア本件明細書の記載は当業者に過度の試行錯誤を要すること実施可能要件を充足するためには、特許請求の範囲に含まれる発明全体について、明細書の発明の詳細な説明において、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の負 担や試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に記載されていることを要する。 本件発明に含まれる抗体は、アミノ酸配列によって特定されておらず(アミノ酸配列で特定されているのは参照抗体である。)、また、本件明細書の実施例抗体とは全く異なる種々の性質・構造・結合部位を有する 抗体を含むものであるため、結合中和し、参照抗体と競合するあらゆる 抗体が含まれることになる。本件明細書において実際に得られた実施例抗体は、本件発明に含まれる膨大な数の抗体のうちのわずか一部でしかすぎないため、本件明細書において開示されていない多種多様な結合中和抗体を取得するには、モノクローナル抗体作製技術、結合中和アッセイ技術が周知であったとしても、当業者は、無数の抗体を無作為に製造 し、本件発明で規定される活性を有する抗体で い多種多様な結合中和抗体を取得するには、モノクローナル抗体作製技術、結合中和アッセイ技術が周知であったとしても、当業者は、無数の抗体を無作為に製造 し、本件発明で規定される活性を有する抗体であるか否かを判別するための2つのアッセイ(結合中和アッセイ、競合アッセイ)を行うことによって本件発明に規定される活性を有する抗体を発見しなければならず、その工程は過度の試行錯誤や負担を強いるものである。 本件審決は、前記第2の3のとおり、当業者は、本件明細書の実施 例の記載に基づき、「十分に高い確率で本件特許発明の抗体をいくつも繰り返し同定することができることが具体的に示されている」旨判断するが、本件明細書においては、3000超ものハイブリドーマを調製し、幾度ものスクリーニングを経て結果的に得られた「31H4抗体と競合する結合中和抗体」は実施例10及び37に記載の7個である(0.2% 程度)から、十分に高い確率といえるものではなく、しかも、本件明細書では、本件明細書で開示されている一連の抗体作製・スクリーニング工程は、1回しか行われていないから、高い再現性があるか実証されていない。 のみならず、本件発明に含まれる抗体のうち、本件明細書の実施例に 開示されていない追加の抗体を取得するためには、本件明細書に記載されている一連の抗体作製、スクリーニング工程を経る必要があるが、無数の抗体を取得するためには、これらの工程を繰り返す回数が膨大となることは明らかである。 イ EGFaミミック抗体を得るために当業者に過度の試行錯誤を要する こと 前記3イのとおり、本件発明には、EGFaミミック抗体が含まれるところ、本件明細書にはEGFaミミック抗体の記載はなく、被告は、本件優先日から約5年後に 錯誤を要する こと 前記3イのとおり、本件発明には、EGFaミミック抗体が含まれるところ、本件明細書にはEGFaミミック抗体の記載はなく、被告は、本件優先日から約5年後においてもEGFaミミック抗体を取得することはできておらず、このことは、本件明細書に記載の方法では、当業者が過度の試行錯誤や実験を強いられることなく、EGFaミミック抗体を取 得、製造し得たといえないことを裏付けるものである。 なお、本件審決は、実施可能要件は明細書の記載及び出願時の技術常識により判断されるべきものであるからその後の事情は考慮しないとして、原告の主張を排斥したが、前記3イのとおり、本件優先日当時の技術常識として、EGFaミミック抗体を取得する特定の方法は存在しなかっ たのであるから、当時の技術常識の検討を怠った本件審決の判断は誤りである。 ウ 31H4抗体との低競合体を得るために当業者に過度の試行錯誤を強いられること前記3イのとおり、本件発明には「競合」及び「中和」についての 限定はないから、31H4抗体との競合の程度が低い(例えば5%)抗体でも、何らかの結合中和をする限り、本件発明に含まれることになるところ、当業者が、低競合抗体であってPCSK9とLDLRとの結合を中和する抗体を、本件明細書に記載の方法により過度の試行錯誤及び実験を強いられることなく製造し得たとは到底いえないし、また、こうした抗体全 体の数や多様性は更に膨大となるため、当業者は、本件明細書の記載の方法により過度の試行錯誤及び実験を強いられることなく製造し得たとはいえない。 エ小括以上のとおり、本件発明に含まれる多種多様な膨大な数の抗体を当業者 が取得するには当業者に過度の試行錯誤を強いるものであり、また、本件 強いられることなく製造し得たとはいえない。 エ小括以上のとおり、本件発明に含まれる多種多様な膨大な数の抗体を当業者 が取得するには当業者に過度の試行錯誤を強いるものであり、また、本件 発明にはEGFaミミック抗体が含まれるが、本件明細書の記載からは当業者が過度の試行錯誤や実験を強いられることなくこの抗体を取得し得たとはいえないから、本件発明は、実施可能要件に反するものである。 なお、被告は、後記アのとおり、取消事由3の主張が特許法167条に反する旨主張するが、前記3ウのとおり、実施可能要件は「法条単位」 で検討されるべきであるとの主張は独自の見解であり、本件無効審判事件では、EGFaミミック抗体(甲4の1、2)に関する証拠等に基づいて、実施可能要件違反の主張をするものであって、「同一の事実及び同一の証拠」に基づくものではないから、特許法167条に反するものではない。 被告の主張 ア原告の主張する取消事由3は特許法167条に反すること前記3アのとおり、サノフィが申し立てた別件無効審判における実施可能要件違反が成り立たないとの審決が確定しているところ、原告は、サノフィと利害関係が実質的には同一であり、特許法167条の「同一の事実及び同一の証拠」については、サポート要件と同じく実施可能要件につ いても法条単位で考えるべきであるから、原告が主張する取消事由3は、同条に反するものである。 イ実施可能要件を充足すること実施可能要件を満たすかどうかについては、当業者が期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等を必要とするか否かを判断基準とすべ きである。 特許・実用新案審査ハンドブック附属書B(乙1)「第2章生物関連発明」の「〔事例29 業者が期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等を必要とするか否かを判断基準とすべ きである。 特許・実用新案審査ハンドブック附属書B(乙1)「第2章生物関連発明」の「〔事例29〕実施可能要件に関する事例」は、実施可能要件に関する事例として特許庁の判断が示されたものであり、抗原Pに対して解離定数:10-11M以上、10-10M以下で反応する抗体を産生するハイブリド ーマを3株確認したにとどまる状況が説明されており、しかも、得られた 3種類の抗体のアミノ酸配列が明細書に開示されているとの前提にすらなっていない事例について拒絶理由なしと説明するものである。このように、抗体の技術分野では、抗体のアミノ酸配列そのものは抗体を特定するために必須であると考えられていないことが特許庁の実務である。 本件発明1は、「PCSK9とLDLRとの結合を中和することができ る」という特性と「31H4抗体と競合する」という特性を有する抗体を規定するが、このような抗体は、表8.3のビン3として複数の抗体が記載されていることから分かるように、再現性をもって取得できる抗体である。 したがって、本件発明は、実施可能要件を満たす。 ウ原告の主張について 原告は、前記アのとおり、本件発明に含まれる全ての抗体を発見するためには、膨大の数の抗体を作製し、膨大な回数の実験をして結合中和及び参照抗体との競合について確認することを余儀なくされるから、本件発明は実施可能要件に反する旨主張する。 しかし、実施可能要件を充足するためには、当業者が明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて抗体を作製することができると理解できるように明細書に記載されていれば足り、全ての抗体が明細書に記載されている し、実施可能要件を充足するためには、当業者が明細書の記載及び出願時の技術常識に基づいて抗体を作製することができると理解できるように明細書に記載されていれば足り、全ての抗体が明細書に記載されている必要はない。本件発明の抗体は、そのアミノ酸配列等の構造を参照しなくても作製することができ、かつ、そのアミノ酸配列等の構造 によって区別することなく使用することができるものであり、アミノ酸配列を明らかにするまで実施できない発明ではないから、当業者は、本件明細書及び出願時の技術常識に基づいて再現性をもって本件発明の抗体を取得することができるし、また、多種多様な抗体を無数に製造する必要性もない。仮に、多種多様な抗体を製造するとしても、そのときの 試験量はその抗体の数に応じたものとなり、当業者の期待し得る程度の ものとなるのであって、当業者の期待し得る程度を超えるものとはならない。 したがって、いずれにせよ、原告の主張は失当である。 原告は、前記イのとおり、本件発明は、EGFaミミック抗体をその範囲に含むものであるが、EGFaミミック抗体を取得することがで きるように本件明細書には記載されていないから、実施可能要件を満たさない旨主張するが、前記3エのとおり、EGFaミミック抗体なる概念は本件出願時には存在しなかった概念であり、こうした抗体を取得するという課題はなく、特許法は、出願時に存在しなかった課題を解決することは求めていないこと、EGFaミミック抗体における「大部 分のアミノ酸を認識する」という技術事項は本件明細書で開示した抗体を超える技術的意義を有するものではなく、課題解決の観点で何ら技術的意義を有しない抗体を多数取得し続けることは、実施可能要件では求められないことからすると、EGFaミミ 項は本件明細書で開示した抗体を超える技術的意義を有するものではなく、課題解決の観点で何ら技術的意義を有しない抗体を多数取得し続けることは、実施可能要件では求められないことからすると、EGFaミミック抗体が本件明細書に記載されていないことは、実施可能要件とは関係がない。 原告は、前記ウのとおり、本件発明には31H4との競合の程度が低い抗体も含まれるから、本件発明は実施可能要件を満たさない旨主張するが、当業者は、31H4との競合の程度が低い抗体についても、本件明細書の記載と出願当時の技術常識に基づいて再現性をもって取得することができることを理解できるから、原告の主張は失当である。 5 取消事由4(明確性要件違反の判断の誤り)について 原告の主張本件審決は、前記第2の3のとおり、本件発明において「競合」とは、当業者における常識的な程度の競合を意味すると解するべきであるとして、本件明細書の【0140】を引用し、「31H4抗体と競合する」の外延が不 明確であるとはいえない旨判断した。 しかし、本件発明は、「競合」の程度に関して何らの限定もなく、「中和」の程度に関しても何らの限定もないため、発明の外延は明確ではない。 また、PCSK9との結合に関し、ある抗体が参照抗体と競合するか否かを判断するに際しては、ある抗体を最初に抗原(PCSK9)に結合させて参照抗体をその後に加える場合と、参照抗体を最初に抗原に結合してある抗 体をその後に加える場合とで、「競合」について異なる結果が生じ得るが、これらの結果が異なる場合に「競合」するといえるのかは不明である。本件明細書においても、片方のパターンで競合するからといって他方のパターンで競合するとは限らず、競合試験において抗体が使用 じ得るが、これらの結果が異なる場合に「競合」するといえるのかは不明である。本件明細書においても、片方のパターンで競合するからといって他方のパターンで競合するとは限らず、競合試験において抗体が使用される順序が重要であることが開示されている(【0495】)。 のみならず、本件発明においては、いかなる試験方法で「競合」の程度を評価するのかも特定されておらず、この点でも、本件発明の外延は不明確である。 以上のとおり、本件発明の「31H4抗体と競合する」との発明特定事項は、その外延が不明確であるから、本件発明は、明確性要件に違反する。 被告の主張本件明細書には、「競合」は、「検査されている抗原結合タンパク質(例えば、抗体又は免疫学的に機能的なその断片)が共通の抗原(例えば、PCSK9又はその断片)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンド又は参照抗体)の特異的結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)アッセ イによって測定された抗原結合タンパク質間の競合を意味する」(【0140】)と規定されている。当業者であれば、この記載と出願当時の技術常識に基づいて適切に実施された競合アッセイにより、有意な競合を検出できることを理解し、PCSK9との結合に関して競合する抗体を得ることができる。競合する抗体を得る試験では、例えば、適切な対照実験を行うのに使われる、 競合しないことが知られている抗体又は競合することが知られている抗体と の比較により、有意な競合を示す抗体を取得できたであろうと当業者であれば理解できる。 原告は、ある抗体と参照抗体のどちらを最初に抗原に結合させるかによって結果が異なる場合に「競合」するといえるのかが不明であると主張するが、本件明細書の記載からも明らかで れば理解できる。 原告は、ある抗体と参照抗体のどちらを最初に抗原に結合させるかによって結果が異なる場合に「競合」するといえるのかが不明であると主張するが、本件明細書の記載からも明らかであるように、PCSK9とLDLRとの結 合を中和し、かつ「競合」するならば、当該ある抗体が参照抗体と重複する位置に結合して、PCSK9とLDLRとの結合を中和すると考えられるから、ある適切な条件下で競合を示す抗体であれば、本件発明の効果を奏することとなる。原告が指摘する本件明細書の記載(【0495】)は、競合の順序によっては、重複するエピトープに結合する抗体であっても競合しないよ うに見える場合があることを述べたものであり、いずれかの順番で競合試験をした場合に、「競合」することが示されれば権利範囲であることを明確にしたものである。本件明細書では、順番によらずに競合することを「互いに競合する」と区別している(例えば、【0308】、【0489】、【0492】)ことからも、「競合する」は「互いに競合する」場合と「互いに競合しない」 場合を含むことは明らかなのであって、不明確ではない。 原告は、いかなる試験方法によって、「競合」の程度を評価するのかについても、何ら特定されておらず、本件発明の外延は不明確であると主張するが、本件明細書は、当業者が、本件出願日当時の技術常識と本件明細書の記載に基づいて適切に設定した条件下で、適切に競合アッセイをすることにより、 有意に「競合」するか否かを判定することが理解できるように本件発明を記載しているから、本件発明は明確であり、第三者に不測の不利益をもたらすことはない。 したがって、原告主張の取消事由4は理由がない。 6 取消事由5(発明該当性要件違反の判断の誤り)について しているから、本件発明は明確であり、第三者に不測の不利益をもたらすことはない。 したがって、原告主張の取消事由4は理由がない。 6 取消事由5(発明該当性要件違反の判断の誤り)について 原告の主張 本件審決は、前記第2の3のとおり、本件発明は、31H4抗体と競合する結合中和抗体に関する発明であり、この抗体は、「31H4抗体と競合する」様式で、「PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和すること」によって、対象中のLDLRの量を増加させ、それによりLDLの量を低下させ、血清コレステロールの低下をもたらすことで、高コレステロール血症などの 上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、又は予防し、疾患のリスクを低減するという技術効果を奏するものであるから、本件発明は、課題を解決するための具体的手段を提示するものであり、発明に該当する旨判断した。 しかし、本件発明が課題を解決することができるのは、「結合を中和するこ とにより、LDLRの量を増加させ、対象中の血清コレステロールの低下をもたらす」という公知の作用機序によるものである。そして、前記1のとおり、結合中和抗体を選別すれば、およそ、PCSK9の表面上においてLDLRが結合する部位周辺に結合する抗体が選別されるのであり、結合中和抗体同士は、抗原上の同じ結合部位に結合しようとして互いに競合すること も当然に生じることからすると、「31H4抗体と競合する」ことは、結合中和抗体の多くが有する性質にすぎず、「31H4抗体と競合する」様式であるか否かによって「結合を中和することによりLDLRの量を増加させ、対象中の血清コレステロールの低下をもたらす」という作用機序に影響が出るわけではないから、「31H4抗体と競合する」様 る」様式であるか否かによって「結合を中和することによりLDLRの量を増加させ、対象中の血清コレステロールの低下をもたらす」という作用機序に影響が出るわけではないから、「31H4抗体と競合する」様式であることには何らの技術 的意義はない。 したがって、本件発明は、従来技術に対し、課題を解決するための具体的手段を新たに見出して提示するものではないから、「技術的思想の創作」ということはできず、「発明」に該当しない。 被告の主張 本件発明1は、PCSK9とLDLRとの結合を中和することができると いう発明特定事項とPCSK9との結合に関して31H4抗体と競合するという発明特定事項との両方を兼ね備えた単離されたモノクローナル抗体という物の発明である。この「単離されたモノクローナル抗体」は、PCSK9との結合に関して「31H4抗体と競合する」様式で、「PCSK9とLDLRとの結合を中和すること」によって、対象中のLDLRの量を増加させ、 それにより血清LDLコレステロール濃度を低下させるという技術的効果を奏するものであることが、本件明細書の記載から理解される。 このように、本件発明は、血清LDLコレステロール濃度を低下させるという課題を解決するために、PCSK9とLDLRとの結合を中和することができるという特性とPCSK9との結合に関して31H4抗体と競合する という特性を有する抗体を具体的手段として提示するものであり、自然法則を利用した技術的思想の創作であるといえるから、特許法上の「発明」に該当するといえる。 したがって、原告主張の取消事由5は理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書(甲201)等の記載事項についてア本件明細書の【発明の詳細 明」に該当するといえる。 したがって、原告主張の取消事由5は理由がない。 第4 当裁判所の判断 1 本件明細書(甲201)等の記載事項についてア本件明細書の【発明の詳細な説明】には、別紙1のとおりの記載があり、これらの記載によれば、本件発明に関し、次のような事項が開示されている。 PCSK9(プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型)は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質のレベルの制御 に関与するセリンプロテアーゼであり、LDLRタンパク質と直接相互作用し、LDLRとともに肝臓の細胞内に取り込まれ、肝臓中のLDLRタンパク質のレベルを減少させ、さらには、細胞表面(細胞外)でLDLへの結合に利用可能なLDLRタンパク質の量を減少させることにより、対象中のLDLの量を増加させる(【0002】、【0003】、【0071】)。 配列番号67のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号12の アミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む抗体(「31H4抗体」)(参照抗体)は、PCSK9とLDLRタンパク質との結合を強く遮断する中和抗体である(実施例11、【0377】ないし【0379】。【0138】、表2)。参照抗体は、結晶構造上、LDLRのEGFaドメインの位置と部分的に重複し、PCSK9へのその結合を立体的に妨害する(実施例31、 【0444】、図20A)。 LDLRのEGFaドメインは、PCSK9の触媒ドメインに結合するものであり、結晶構造上、EGFaドメインの5オングストローム以内に存在するPCSK9のアミノ酸残基は、LDLRのEGFaドメインとの相互作用界面の特異的コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)であり、 EGFaドメインの5オングス の5オングストローム以内に存在するPCSK9のアミノ酸残基は、LDLRのEGFaドメインとの相互作用界面の特異的コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)であり、 EGFaドメインの5オングストロームから8オングストロームに存在するPCSK9残基は、LDLRのEGFaドメインとの相互作用界面の境界PCSK9アミノ酸残基であり、これらのアミノ酸残基のいずれかと相互作用し、又は遮断する抗体は、PCSK9とLDLRのEGFaドメイン(及び/又はLDLR一般)との間の相互作用を阻害する抗体として 有用であり得る(実施例28、【0428】ないし【0432】)。 参照抗体と「競合」するモノクローナル抗体は、PCSK9への参照抗体の結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)抗体である(【0138】、【0140】、【0262】、【0269】)。 PCSK9に対する中和ABP(抗体)は、PCSK9とLDLRとの 結合を中和し、LDLRの量を増加させることにより、対象中のLDLの量を低下させ、対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し、また、この効果により、高コレステロール血症等の上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、又は予防し、疾患のリスクを低減することができるので、治療的に有用であり得る(【0155】、【0270】、 【0271】、【0276】)。 イ前記アで摘記した本件明細書の開示事項によれば、本件発明は、LDLRタンパク質の量を増加させることにより、対象中のLDLの量を低下させ、対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し、また、この効果により、高コレステロール血症などの上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、又は予防し、疾患のリスクを低減すること、そのた 中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し、また、この効果により、高コレステロール血症などの上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し、又は予防し、疾患のリスクを低減すること、そのために、 LDLRタンパク質と結合することにより、対象中のLDLRタンパク質の量を減少させ、LDLの量を増加させるPCSK9とLDLRタンパク質との結合を中和する抗体又はこれを含む医薬組成物を提供することを課題とした上で、PCSK9は、LDLRのEGFaドメインに結合すること、及び、参照抗体は、結晶構造上、LDLRのEGFaドメインの位置と部分的に重 複する位置でPCSK9とLDLRタンパク質の結合を立体的に妨害し、その結合を強く遮断する中和抗体であり、参照抗体と「競合」するモノクローナル抗体は、PCSK9への参照抗体の結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)抗体であることを明らかにするものである。 甲1文献の記載事項について ア本件優先日前に頒布された刊行物である甲1文献には、別紙2のとおりの記載があり(ただし、訳文による。)、これらの記載によれば、甲1文献には、次のような開示があることが認められる。 家族性高コレステロール血症は、血漿中のLDLコレステロールレベルの上昇等に起因するものである。プロタンパク質コンベルターゼスブ チリシンケクシン9型(PCSK9)は、細胞表面に存在する低密度リポタンパク質受容体(LDLR)の存在量を低下させるものであり、PCSK9の機能獲得型変異は、LDLRの数のより激しい減少とそれに伴う高コレステロール血症を引き起こす。(以上、甲1-2)分泌されたPCSK9は、ヒト肝細胞表面と相互作用してLDLRと 共免疫沈降し得るものであり、エンドソームのpH り激しい減少とそれに伴う高コレステロール血症を引き起こす。(以上、甲1-2)分泌されたPCSK9は、ヒト肝細胞表面と相互作用してLDLRと 共免疫沈降し得るものであり、エンドソームのpHにおいて、PCSK 9がLDLRに170倍ものより大きく増大した親和性で結合することが研究の成果として示されている(甲1-5)。 ヒトPCSK9の機能獲得型変異は、家族性高コレステロール血症に関連するものであり、特に、D374Y変異体は、LDLR数の減少において野生型PCSK9よりも約10倍活性が高く、D374Y変異体 の増大したLDLR低減効果は、細胞表面LDLRへの強化された結合により生じる可能性がある(甲1-6、1-9)。 遺伝的証拠は、PCSK9が心血管疾患の治療のための魅力的な標的であることを示唆しており、血漿中でのLDLRタンパク質との結合及び受容体依存性の細胞内への取り込みが、ほぼPCSK9の機能の速度 決定ステップであるため、血漿中のPCSK9に結合し、そのLDLRとの結合を阻害する抗体や低分子はPCSK9の機能の効果的な阻害剤となり得るものであり、特に、PCSK9-LDLR複合体の構造は、新たな治療のデザインのために有用なものである(甲1-12)。 イ前記で摘記した各記載からすると、甲1文献には、家族性高コレステロ ール血症は、血漿中のLDLコレステロールレベルの上昇に起因するものであるところ、プロタンパク質コベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)は、細胞表面に存在する低密度リポタンパク質受容体(LDLR)の存在量を低下させるものであるため、PCSK9が治療のための魅力的な標的であり、血漿中のPCSK9に結合し、そのLDLRとの 結合を阻害する抗体等が効果的な阻害剤 ンパク質受容体(LDLR)の存在量を低下させるものであるため、PCSK9が治療のための魅力的な標的であり、血漿中のPCSK9に結合し、そのLDLRとの 結合を阻害する抗体等が効果的な阻害剤となり得ることが開示されていたものと認められる。 【A】博士の供述書(甲2の1)記載の実証実験結果とその評価ア【A】博士の供述書(甲2の1)の抄訳によれば、別紙3のとおりの実験結果が記載されている。 【B】博士の供述書(甲2の2)の抄訳によれば、以下の記載があ る。 a 「4.私はまた、hPCSK9に対する抗体のパネル(一群の抗体)に関してYumabGmbH(以降、「Yumab」)によって行われた実験の詳細、および、Yumabからの「【A】(【A】)博士の供述書」(以降、「D1」)の写しも提供されていて、その供述書は、こ れらの実験の全体的な説明を示すものである。私は、これらの結果に関してレビューおよびコメントをするように求められ、・・・」(2頁19行~24行(該当箇所は原文を指す。以下同じ。))b 「C. 競合および中和の分析14. リジェネロン抗体に関するデータは、「21B12または31 H4抗体の結合における50%以上の減少」という競合に関する基準を用いて、表1に要約される。 表1:競合に関して50%閾値を用いた、21B12/31H4と競合するリジェネロン抗体の中和特性 15.表1が示すように、21B12抗体と競合するものとして分類されるリジェネロン抗体の約80%は、hPCSK9-LDLR相互作用を中和することができない。さらに、表1が示すように、31H4抗体と競合するもの 示すように、21B12抗体と競合するものとして分類されるリジェネロン抗体の約80%は、hPCSK9-LDLR相互作用を中和することができない。さらに、表1が示すように、31H4抗体と競合するものとして分類されるリジェネロン抗体の80%よりも多くが、hPCSK9-LDLR相互作用を中和することができ ない。 16.・・・同様に、要するに、これらの結果は、結合に関して31H4と競合する抗体の大部分が、hPCSK9とLDLRとの結合を中和することができないことを示している。・・・本件特許によれば、321B12と競合する31H4と競合する中和する 中和しない 合計 中和しない(%)76.90%82.40% 1H4抗体の結合部位はhPCSK9上のLDLRの結合部位と部分的にしか重複しないからである。したがって、別の抗体の結合部位は、LDLRの結合部位と重複することなく31H4結合部位と重複し得るのであり、このようにして、別の抗体は、hPCSK9-LDLR相互作用を中和することなく、31H4と競合し得る。また、2つの 抗体は、必ずしも同一部位に結合しなくても互いと競合し得るのであり(例えば、ある抗体が、近くの結合部位に対する他の抗体の結合を立体的に妨げる場合)、したがって、競合が見られるために、結合部位の重複は必要とされない。」(5頁8行~6頁11行)c 「D.結論 19.・・・同様に、これらの結果を考慮すると、31H4抗体と競合する抗体が「LDLRに対する結合を中和」するだろうと言うのは、科学的に誤りである。・・・31H4抗体と競合する抗体が、hPCSK9-LDLRの結合を強力に中和する効果を有さないことはいうまでもなく、この相互作用 LRに対する結合を中和」するだろうと言うのは、科学的に誤りである。・・・31H4抗体と競合する抗体が、hPCSK9-LDLRの結合を強力に中和する効果を有さないことはいうまでもなく、この相互作用に対していかなる効果も有さないことを示す。 20.21B12抗体と競合する抗体が、21B12抗体と同様の親和性および/または結合部位を必ず有するだろうということについても、私は同意しない。・・・21.したがって、21B12と競合する抗体は、当該具体の21B12抗体と同様の活性を有するに違いないという考えは、私の科学的 見解として受け入れられるものではない。したがって、同様に、31H4と競合する抗体は、当該具体の31H4抗体と同様の活性を有するに違いないという考えは、私の科学的見解として、受け入れられるものではない。そのような抗体の全てが結合を中和する効果を有するだろうというのは確実に誤りである。実際にそのような抗体の非常に 多くがhPCSK9-LDLRの結合を阻害することができないとい う事実は、この考えが非現実的であることを示している。いずれにせよ、これらの非中和抗体の任意の生物学的効果は、21B12および31H4とは異なるメカニズムを介して生じ得るものであり、本件特許の請求項における中和の定義(すなわち、生体外(invitro)での競合アッセイで検証されたようにhPCSK9およびLDL Rが互いと相互作用するのを妨げることによる阻害)には入らない。」(6頁19行~7頁15行)イ被告は、前記第3の2ウのとおり、【A】博士の供述書(甲2の1)記載の実証実験について、【C】教授による専門家意見書(乙24)に依拠して、①実施例10では「プレミックス」法を用いてい イ被告は、前記第3の2ウのとおり、【A】博士の供述書(甲2の1)記載の実証実験について、【C】教授による専門家意見書(乙24)に依拠して、①実施例10では「プレミックス」法を用いているところ、 【A】博士はこの方法を用いておらず、プレート上の被験抗体にまずPCSK9を加えて結合させ、次いで参照抗体を加えるという【A】博士の用いた方法では、被験抗体がプレートに固定化された向きによってはPCSK9上の参照抗体結合部位が閉塞してしまうため、参照抗体がPCSK9+被験抗体複合体と結合することができなくなり、見かけ上競 合しているかのような結果を示している、②実施例10よりはるかに高い濃度のPCSK9と、実施例10より高い濃度の被験抗体を使用し、それにもかかわらず実施例10よりわずかに少ない濃度のブロッキング緩衝液を使用したために、PCSK9が参照抗体の結合部位を閉塞するような形で被験抗体に非特異的に結合し、参照抗体がPCSK9と結合 できなくなる等の現象が防げないため、見かけ上競合しているかのような結果になっている、③強力なブロッキング緩衝液を使用して実験したところ、【A】博士が「競合する」と結論付けた081006A、081006B、190515-41抗体は、参照抗体と競合しないことが示されたと指摘し、【A】博士の実証実験の結果は偽陽性を含むものであっ て誤りである旨主張する。 しかし、上記主張は、【A】博士の上記実証実験と本件明細書の実施例10の実験条件を比較するものであるが、例えば、本件明細書の実施例37は、プレミックス法ではなく、ブロッキング緩衝液は上記実証実験で用いられた2%BSA(0.05%のTween20含有)よりも更に濃度が低い1%BSAを加えたリン酸緩衝化生理 、本件明細書の実施例37は、プレミックス法ではなく、ブロッキング緩衝液は上記実証実験で用いられた2%BSA(0.05%のTween20含有)よりも更に濃度が低い1%BSAを加えたリン酸緩衝化生理食塩水であるから、 実施例10との実験条件の比較をもって上記実証実験の条件が不適切であるということはできないし、もとより、本件発明では、PCSK9とLDLRとの結合中和に関するモノクローナル抗体の競合や中和に関する測定方法や測定条件は規定されていない。 また、上記実証実験では、リジェネロン抗体63個のうち、5種類の 抗体(081211B、190515-35、190515-7、190515-8、190515-9)は、PCSK9と結合しないことが確認されており(別紙3の資料B1参照)、この点からも、上記実証実験がPCSK9の非特異的結合が偽陽性の結果を生じる条件下で行われたとはいえないのみならず、上記実証実験は、本件明細書で開示されてい る抗体(9C9、3B6、27B2)をコントロールとして用いて、結合特異性、両立性及び中和特性を検証するものであり、別紙3の資料B1のとおり、9C9、3B6はPCSK9に結合し、21B12抗体と競合し、中和特性を有することが確認されており、この実証実験結果は本件明細書で開示されている結果と同じであることが確認されている (【0374】、【0493】参照)。 そうすると、上記実証実験の結果は、不適切な実験結果であるとはいえず(仮に、不適切な実験結果であるというのであれば、被告は、原告が指摘するように、実施例10と同一の条件で行った実験結果を示すべきであろうが、そのようなことはせずに、上記実験結果を弾劾すること に終始している。)、また、この実証実験を踏まえた【B】博士の供述書 に、実施例10と同一の条件で行った実験結果を示すべきであろうが、そのようなことはせずに、上記実験結果を弾劾すること に終始している。)、また、この実証実験を踏まえた【B】博士の供述書 (甲2の2)も不適切な意見とはいえない。 なお、弁論準備手続期日(専門委員3名の関与の下で当事者双方が本件発明に係る技術説明を行った。)終結後、当事者双方は同期日における説明を補足することがあれば、その限度で主張書面を提出することとされたところ(第1回弁論準備手続調書参照)、それにもかかわらず、被告 は、第1回口頭弁論期日の直前になって、新たな【C】教授の専門家意見書(乙48)を提出の上、【A】博士による実証実験について、①用いられたリジェネロン抗体63個のうち25個は、原告の米国仮出願(No.61/122.482)において開示されているところ、そのうち081211Bと190515-35は、それぞれ原告の仮出願におい て開示された抗体H1H314P及びH1H317Pと同一であり、原告の仮出願ではこれらの抗体はいずれもPCSK9に結合するとされているが、上記実証実験ではPCSK9に全く結合しないと結論付けられている点、②190515-36と190515-37は、それぞれ原告の仮出願において開示された抗体H1H320P及びH1H321P と同一であり(乙48)、仮出願ではPCSK9とLDLRの結合の遮断活性が確認されているのに、上記実証実験結果では、非中和と記載されている点、③081008Bと190515-43は、アミノ酸配列が同じであるため競合試験の結果は同じでなければならないにもかかわらず、上記実証実験結果では、190515-43は31H4抗体と競合 するとする一方で、08100Bは31H4抗体と競 ノ酸配列が同じであるため競合試験の結果は同じでなければならないにもかかわらず、上記実証実験結果では、190515-43は31H4抗体と競合 するとする一方で、08100Bは31H4抗体と競合しないと結論付けている点を挙げて、これらの点は、上記実証実験の結果の信頼性を低下させるものであるなどと主張する。 上記主張は、弁論準備手続期日における上記実証実験結果の信頼性に関する被告の説明を補足する限度を超えるものであって、時機に後れた 攻撃防御方法に当たるものであり、却下は免れないところである。もっ とも、これに対する反論として口頭弁論終結日に原告第9準備書面が提出されたことから、念のため付言すると、以下の指摘をすることができる。①の点については、仮出願で開示されているH1H314P及びH1H317Pは、いずれも結合活性が他の抗体よりも低いことは明らかである(甲222の表4参照)から、仮出願と異なる実験アッセイにお いて結合しないと評価されるからといって、上記実証実験の結果の信頼性を損なうものではない。②については、仮出願(甲222)の段落[0076]には、H1H320P(190515-36)、H1H321P(190515-37)は、hPCSK9とhLDLR-EGF-Aドメインとの結合を遮断することが開示されているが、PCSK9との明 確な結合遮断性を有する抗体の例として作成された表6にはH1H320P、H1H321Pの記載はないし(段落[0077])、また、①と同様に仮出願と異なる実験アッセイにおいて異なる評価がされているからといって、上記実証実験の全体的な信頼性を損なうものではない。③については、原告の仮出願では、甲222及び乙10の配列表から、1 90515-43(仮出願ではH1 て異なる評価がされているからといって、上記実証実験の全体的な信頼性を損なうものではない。③については、原告の仮出願では、甲222及び乙10の配列表から、1 90515-43(仮出願ではH1M505(配列番号266/274))、081008B(仮出願ではH1HM504(配列番号242/250))として別の抗体として記載されているものと認められ、表7においてPCSK9のキメラタンパク質やD374Y変異体に対する結合特異性において異なる記載がされていることから、【A】博士の実証実験で異なる 評価がされているからといって同実証実験の結果の信頼性を左右するものではない。 以上によれば、【A】博士の供述書(甲2の1)記載の実証実験結果は、信頼性を有するものというべきである。 2 取消事由2(サポート要件違反の判断の誤り)について 事案に応じて、まず取消事由2(サポート要件違反の判断の誤り)について 判断する。 被告は、前記第3の3アのとおり、原告とサノフィが実質的に利害関係を共通していることを前提として、本件特許がサポート要件違反等を理由とした別件無効審判に係る別件審決が確定していること等をもって、原告が取消事由2を主張することは特許法167条に反する旨主張する。 しかし、特許法167条は、「特許無効審判・・・の審決が確定したときは、当事者及び参加人は、同一の事実及び同一の証拠に基づいてその審判を請求することができない。」と定めるところ、原告とサノフィ又はサノフィ株式会社が本件特許に関する係争に係る製剤等を共同で製品化する関係にあるからといって、原告は、サノフィと別法人であって、サノフィと親会社と子会社 の関係であるとか、日本法人と外国法人の関係にあるといった、実質 許に関する係争に係る製剤等を共同で製品化する関係にあるからといって、原告は、サノフィと別法人であって、サノフィと親会社と子会社 の関係であるとか、日本法人と外国法人の関係にあるといった、実質的にみれば同一当事者であると評価すべき特段の事情があると認められないから(もとより原告は別件無効審判の参加人でもない。)、そもそも同条の適用はないというべきである。 特許法36条6項1号は、特許請求の範囲の記載に際し、発明の詳細な説 明に記載した発明の範囲を超えて記載してはならない旨を規定したものであり、その趣旨は、発明の詳細な説明に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば、公開されていない発明について独占的、排他的な権利を請求することになって妥当でないため、これを防止することにあるものと解される。 そうすると、特許請求の範囲の記載が同号所定の要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも 当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識でき る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであると解するのが相当である。 そこで、本件発明に係る特許請求の範囲の記載について見ると、本件発明の請求項1は、①「PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ」、②PCSK9との結合に関して、「配列番号67のアミノ酸配列か らなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽 Rタンパク質の結合を中和することができ」、②PCSK9との結合に関して、「配列番号67のアミノ酸配列か らなる重鎖可変領域を含む重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体」(31H4抗体)(参照抗体)と「競合する」、③「単離されたモノクローナル抗体」との発明特定事項を有するものであり、①と②の発明特定事項は、③のモノクローナル抗体の性質を決定するものと解される。 ア ①の「PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ」との発明特定事項における「中和」の技術的意義を解釈するために本件明細書の記載をみると、「『中和抗原結合タンパク質』又は『中和抗体』という用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を妨げ、又は低下させる、それぞれ、抗原結合タンパク質又は抗体を表す。これは、例 えば、リガンド上の結合部位を直接封鎖することによって、又はリガンドに結合し、間接的な手段(リガンド中の構造的又はエネルギー的変化など)を通じて、リガンドの結合能を変化させることによって行うことができる。」(【0138】)、「本明細書中に提供されている抗原結合タンパク質は、PCSK9とLDLR間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調 節することができる。このような抗原結合タンパク質は、『中和』と表される。・・・中和ABPは、PCSK9がLDLRに結合するのを妨げる位置及び/又は様式で、PCSK9に結合する。このようなABPは、『競合的に中和する』ABPと特に記載することができる。」(【0155】)との記載がある。これらの記載からすると、本件発明における「中和」とは、P CSK9とLDLRタンパク質の間の相互作用を妨害し、遮断し、低下さ せ、又は調節することであり、 55】)との記載がある。これらの記載からすると、本件発明における「中和」とは、P CSK9とLDLRタンパク質の間の相互作用を妨害し、遮断し、低下さ せ、又は調節することであり、PCSK9とLDLRタンパク質結合部位を直接封鎖するものに限らず、間接的な手段(リガンド中の構造的又はエネルギー変化等)を通じてLDLRタンパク質に対するPCSK9の結合能を変化させる態様を含むものである。 イ次に、②の「PCSK9との結合に関して、参照抗体と『競合する』」と の発明特定事項の技術的意義を解釈するために本件明細書の記載を見ると、本件明細書には、「競合アッセイによって同定される抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)には、基準抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質及び立体的妨害が生じるのに、基準抗原結合タンパク質によって結合されるエピトープに十分に近接した隣接エ ピトープに結合する抗原結合タンパク質が含まれる。・・・」(【0140】)、「競合する抗原結合タンパク質・・・PCSK9への特異的結合に関して、本明細書中に記載されているエピトープに結合する例示された抗体又は機能的断片の1つと競合する抗原結合タンパク質が提供される。このような抗原結合タンパク質は、本明細書中に例示されている抗原結合タンパ ク質の1つと同じエピトープ又は重複するエピトープにも結合し得る」(【0269】)、「同じエピトープに対して競合する抗原タンパク質(例えば・・・中和抗体)という文脈において使用される場合の「競合する」という用語は、検査されている抗原結合タンパク質(例えば、抗体又は免疫学的に機能的なその断片)が共通の抗原(例えば、PCSK9又はその断 片)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガン する」という用語は、検査されている抗原結合タンパク質(例えば、抗体又は免疫学的に機能的なその断片)が共通の抗原(例えば、PCSK9又はその断 片)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンド又は参照抗体)の特異的結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)アッセイによって測定された抗原結合タンパク質間の競合を意味する。」(【0140】)との記載がある。これらの記載からすると、本件発明における参照抗体と「競合する」とは、参照抗体がPCSK9と結合する部位と同一の又は重複す るPCSK9上の部位に結合して、参照抗体の特異的結合を妨げ、又は阻 害する(例えば、低下させる)ことや、参照抗体とPCSK9との結合を立体的に妨害して、参照抗体の特異的結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)ことをも意味するものと解され、抗体がPCSK9への参照抗体の特異的結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)ことがアッセイにより測定されれば抗体間の「競合」と評価されるものであり、本 件発明では「競合」の程度は特定されていない。 そうすると、参照抗体と競合する、本件発明のモノクローナル抗体は、様々な程度で、参照抗体の特異的結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)ものであって、必ずしも参照抗体がPCSK9と結合する同一のPCSK9上の部位に結合し、参照抗体の特異的結合を妨げ、又は阻害 (例えば、低下させる)する特性を有するモノクローナル抗体に限らず、参照抗体がPCSK9と結合するPCSK9上の部位と重複する部位に結合し、参照抗体の特異的結合を妨げ、又は阻害(例えば、低下させる)する特性を有するモノクローナル抗体や、参照抗体とPCSK9との結合を立体的に妨害する態様でPCSK9に結合し、参照抗体のPCSK9へ 、参照抗体の特異的結合を妨げ、又は阻害(例えば、低下させる)する特性を有するモノクローナル抗体や、参照抗体とPCSK9との結合を立体的に妨害する態様でPCSK9に結合し、参照抗体のPCSK9へ の特異的結合を妨げ、又は阻害(例えば、低下させる)する特性を有するモノクローナル抗体を含むものであると認められる。 ア次に、本件明細書の記載について更に具体的に検討すると、本件明細書には、前記1アに加えて、以下のとおりの記載がある。 PCSK9に対する抗体を作製するためにXenoMouse(R) マウスの2つのグループを使用し、表3の免疫化プログラムのスケジュールに従って免疫化マウスを作製し、PCSK9に対して特異的な抗体を産生するマウス(10匹)を選択し、脾臓及びリンパ節から脾細胞及びリンパ球を単離した(実施例1。【0312】ないし【0314】、【0320】、【0321】)。 で選択したマウスのリンパ系組織からB細胞を解離させ、非分泌性 骨髄腫P3X63Ag8.653細胞と混合し、融合された細胞を遠心沈降させる等の手順を経て、PCSK9に対する抗原結合タンパク質を産生するハイブリドーマを作製した(実施例2。【0322】ないし【0324】)。 ニュートラビジンで被覆したプレートに結合させたV5タグを持た ないビオチン化されたPCSK9を捕捉試料とするELISAによる一次スクリーニングを行い、これによって合計3104の抗原(野生型PCSK9)特異的ハイブリドーマを得た(実施例3。【0325】ないし【0328】)。 安定なハイブリドーマが確立されたことを確認するために、野生型P CSK9の結合に関して上記の合計3000の陽性を再スクリーニング (実施例3。【0325】ないし【0328】)。 安定なハイブリドーマが確立されたことを確認するために、野生型P CSK9の結合に関して上記の合計3000の陽性を再スクリーニングして合計2441の陽性を第2のスクリーニング(確認用スクリーニング)で反復し、次いで、抗体がヒト及びマウスの両方に結合することを確認するために「マウス交叉反応スクリーニング」を行い、579抗体がマウスPCSK9と交叉反応することを確認した(【0329】、【0 330】)。 捕捉試料としてLDLRを結合させたプレートに、ハイブリドーマ枯渇上清と、LDLRに対して高い結合親和性を有するビオチン化されたD374YPCSK9変異体を移し、LDLRに結合されたビオチン化されたD374Y変異体をストレプトアビジンHRPを用いて検出す るスクリーニング(大規模受容体リガンド遮断スクリーニング)を行い、PCSK9とLDLRウェル間での相互作用を遮断する384の抗体を同定し、うち100の抗体は、PCSK9とLDLRの結合相互作用を90%超阻害することを確認した(【0332】)。 次いで、第1の大規模受容体リガンド遮断スクリーニングにおいて同 定された中和物質384に対してD374Y変異体を用いて受容体リガ ンドアッセイを反復し、90%を超えてD374Y変異体とLDLR間の相互作用を遮断する85の抗体を同定した(【0333】、【0334】)。 これらのアッセイ(スクリーニング)に基づいて同定されたPCSK9との所望の相互作用を有する抗体を産生するハイブリドーマから産生される31H4抗体(参照抗体)は、PCSK9とLDLRとの結合 を強く遮断する中和抗体である(実施例11、【0377】ないし【03 の所望の相互作用を有する抗体を産生するハイブリドーマから産生される31H4抗体(参照抗体)は、PCSK9とLDLRとの結合 を強く遮断する中和抗体である(実施例11、【0377】ないし【0379】、【0138】、表2)。 LDLRのEGFaドメインは、PCSK9の触媒ドメインに結合するものであり、結晶構造上、EGFaドメインの5オングストローム以内に存在するPCSK9のアミノ酸残基は、LDLRのEGFaドメイ ンとの相互作用界面の特異的コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)であり、EGFaドメインの5オングストロームから8オングストロームに存在するPCSK9残基は、LDLRのEGFaドメインとの相互作用界面の境界PCSK9アミノ酸残基であり、これらのアミノ酸残基のいずれかと相互作用し、又は遮断する抗体は、PCSK9とLDLR のEGFaドメイン(及び/又はLDLR一般)との間の相互作用を阻害する抗体として有用であり得る(実施例28、【0428】ないし【0432】、図17)。 図19B、図19Aに図示されるように、31H4抗体は、PCSK9の触媒ドメインに結合し、21B12抗体と異なる結合部位を有し、 21B12と同時にPCSK9に結合する。結晶構造上、31H4抗体の5オングストローム以内に存在するPCSK9のアミノ酸残基は、31H4抗体との相互作用界面の特異的コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)である。LDLRのEGFaドメインとの相互作用界面の特異的コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)又はLDLRのEGFaド メインとの相互作用界面の境界PCSK9アミノ酸残基のいずれかの 残基と相互作用し、または遮断する抗体は、PCSK9/LDLR相互作用の阻害のために有用であり LDLRのEGFaド メインとの相互作用界面の境界PCSK9アミノ酸残基のいずれかの 残基と相互作用し、または遮断する抗体は、PCSK9/LDLR相互作用の阻害のために有用であり得る(実施例29、【0433】、【0434】、【0437】、図18B、実施例30、【0438】ないし【0440】、【0443】、図19A)。 実施例30から得られた三次複合体(PCSK9/31H4/21B 12)(図19A)の構造をPCSK9/EGFaドメイン構造(実施例28、図17A)上に重ね合わせた結果が図20Aであるが、21B12抗体及び31H4抗体のいずれも、LDLRのEGFaドメインの位置と部分的に重複し、PCSK9へのその結合を立体的に妨害する(実施例31、【0444】、図20A)。LDLRのEGFaドメインとの相 互作用界面の15個の特異的コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)と、31H4抗体との相互作用界面の32個の特異的コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)は、3アミノ酸残基が共通している。また、EGFaドメインへの結合に関与し、かつ、抗原結合タンパク質(21B12抗体又は31H4抗体)が結合する領域に近い残基は、LDLRへ のPCSK9の結合を操作するのに有用であり得る(【0446】、【0447】、表12)。 第1の抗体を含む抗体(各2μg/mL)で被覆し、3%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックしたELISAプレート上にビオチン化されたヒトPCSK9(30ng/mL)を第2の抗体と共に適用して洗浄後、同じ結合特性を有する抗体を同じエピトープビンにグループ分けした結果は、表8.3のとおりであり、21B12抗体はビン1に、 31H4抗体はビン3にグループ L)を第2の抗体と共に適用して洗浄後、同じ結合特性を有する抗体を同じエピトープビンにグループ分けした結果は、表8.3のとおりであり、21B12抗体はビン1に、 31H4抗体はビン3にグループ分けされた(実施例10、【0373】、【0374】、表8.3)。 次いで、ヒトIgG捕捉抗体で被覆されたビーズコートを1%BSAを加えたリン酸緩衝化生理食塩水(PBSA)で3回洗浄して2μg/mLの抗PCSK9抗体を加えPBSAで3回洗浄した後に2μg/m LのPCSK9を添加し、さらに2μg/mLの抗PCSK9抗体を添加してビニングを行って、競合する抗体を同定した結果が表37.1のとおりであり、ビン1(21B12抗体と競合する)及びビン3(31H4抗体と競合する)は互いに排他的であり、ビン2はビン1及びビン3と競合し、ビン4はビン1及びビン3と競合しない。ビンのそれぞれ の中の抗体は、PCSK9上のエピトープ位置の異なる種類の代表であり、それらの幾つかは互いに重複する(実施例37、【0489】ないし【0495】、表37.1、図23A~D)。 図27Dは、31H4及び21B12抗体とのPCSK9の結晶構造上にマッピングされた、12H11エピトープヒットを図示するものであり、12H11は、ビニングアッセイにおいて21B12抗体及び31H4抗体と競合する(【0523】、【0526】、図27D)。 ヒトPCSK9を発現する遺伝子組み換えマウスに21B12抗体及び31H4抗体の10mg/kg又は30m/kgのいずれかの単回大量瞬時注射を行った結果、対照マウスと比較して、31H4及び21B12はいずれも投与後最大48時間(48時間を含む)著しいLDL-コレステロール低 の10mg/kg又は30m/kgのいずれかの単回大量瞬時注射を行った結果、対照マウスと比較して、31H4及び21B12はいずれも投与後最大48時間(48時間を含む)著しいLDL-コレステロール低下を示した(実施例26、【0422】、【0423】、 図14A、図14B)。 イ前記アで摘記した本件明細書の開示事項によれば、①PCSK9に特異的な抗体を産生する3104のハイブリドーマを得て、このハイブリドーマが産生する抗体についてPCSK9とLDLRタンパク質の結合相互作用に関するアッセイ(スクリーニング)を行い、PCSK9とL DLRタンパク質の結合を中和する活性を有する抗体を同定したこと、②同定されたハイブリドーマから31H4抗体を作製し、当該抗体は、 PCSK9とLDLRタンパク質との結合を強く遮断する中和抗体であること、③結晶構造で21B12抗体のPCSK9上の結合領域を特定し、31H4抗体がLDLRのEGFaドメインの位置と部分的に重複し、PCSK9へのその結合を立体的に妨害するメカニズムを解明したこと、④EGFaドメイン結合に関与し、かつ、抗原結合タンパク質(2 1B12抗体又は31H4抗体)が結合する領域に近いPCSK9上の位置に存在するアミノ酸残基は、LDLRタンパク質へのPCSK9の結合を操作するのに有用であり得ること、⑤実施例で結合中和性が高いことが確認された抗体についてエピトープビニングを行い、31H4抗体と競合するグループの抗体をグループ分けしたことが開示されている。 こうした開示事項によれば、当業者は、PCSK9とLDLRタンパク質の結合中和性が高い抗体のうち31H4抗体(参照抗体)と競合する抗体が選別されることや、31H4抗体が、結晶構造上、LDLRのEGFaド た開示事項によれば、当業者は、PCSK9とLDLRタンパク質の結合中和性が高い抗体のうち31H4抗体(参照抗体)と競合する抗体が選別されることや、31H4抗体が、結晶構造上、LDLRのEGFaドメインの位置と部分的に重複し、PCSK9へのその結合を立体的に妨害するものであることについては理解できるといえる。 次に、本件明細書の表37.1は、図23AないしDのデータに基づきグルーピングされた表である(表8.3に記載のクローンを一部含むことが認められるが、表8.3のグルーピングの元となるデータの記載は、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面にはない。表8.3でNDとされた27B2に関連して、表37.1には27B2.6がビン1に、 27B2.1及び27B2.5がビン2に含まれること、表8.3でビン1に含まれるとされた30A4に関して、表37.1には30A4. 1がビン5に含まれること等、両者の関係には不明な点が散見される。)。 31H4抗体と競合するとされる表37.1のビン3に含まれる31H4抗体以外の19の抗体、ビン3と競合することからみて31H4抗体 と競合する抗体を含むと言い得るビン2の3つの抗体には、以下の事項 が確認される。 すなわち、16F12.1、22E2.1、27A6.1、28B12.1、28D6.1及び31G1.1の各抗体のアミノ酸配列は同一性が高いが、31H4抗体のアミノ酸配列との同一性は高くないこと、08A1.2、08A.3.1及び11F1.1の各抗体のアミノ酸配 列は同一性が高いが、これらの抗体は中和抗体であるとの記載はなく、12A11.1の抗体についても中和抗体であるとの記載はない。さらに、27B2.1及び27B2.5の各抗体は、非中和抗体である(【0138】)。 が、これらの抗体は中和抗体であるとの記載はなく、12A11.1の抗体についても中和抗体であるとの記載はない。さらに、27B2.1及び27B2.5の各抗体は、非中和抗体である(【0138】)。 これらの開示事項を踏まえると、本件明細書の発明の詳細な説明には、 31H4抗体と競合するものであり、かつ、PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和する抗体として、31H4抗体とアミノ酸配列が異なる互いにアミノ酸配列の同一性が高いグループの抗体が開示されていることが認められる。 ア以上を前提に検討すると、前記において説示したとおり、サポート要 件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決で きると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであると解するのが相当であるところ、前記1において示したとおり、本件発明は、LDLRタンパク質の量を増加させることにより、対象中のLDLの量を低下させ、対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し、また、この効果により、高コレステロール血症などの上昇したコレ ステロールレベルが関連する疾患を治療し、又は予防し、疾患のリスクを 低減すること、そのために、LDLRタンパク質と結合することにより、対象中のLDLRタンパク質の量を減少させ、LDLの量を増加させるPCSK9とLDLRタンパク質との結合を中和する抗体又はこれを含む医薬組成物を提供することを課題とするもので と結合することにより、対象中のLDLRタンパク質の量を減少させ、LDLの量を増加させるPCSK9とLDLRタンパク質との結合を中和する抗体又はこれを含む医薬組成物を提供することを課題とするものであり、PCSK9とLDLRタンパク質との結合を強く遮断する中和抗体である参照抗体と競合する抗 体は、PCSK9への参照抗体の結合を妨げ、又は阻害する単離されたモノクローナル抗体であることを明らかにするものであると理解される。 そして、前記によれば、本件発明における「中和」とは、タンパク質結合部位を直接封鎖してPCSK9とLDLRタンパク質の間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調節する以外に、間接的な手段(リ ガンド中の構造的又はエネルギー変化等)を通じてLDLRタンパク質に対するPCSK9の結合能を変化させる態様を含むものであるが、前記1のとおり、参照抗体自体が、結晶構造上、LDLRのEGFaドメイン(PCSK9の触媒ドメインに結合するものであり、その領域内に存在するPCSK9残基のいずれかと相互作用し、又は遮断する抗体は、PCS K9とLDLRとの間の相互作用を阻害する抗体として有用であり得るとされるもの)の位置と部分的に重複する位置でPCSK9とLDLRタンパク質の結合を立体的に妨害し、その結合を強く遮断する中和抗体であると認められることを踏まえると、本件発明における「PCSK9との結合に関して、31H4抗体と競合する」との発明特定事項も、31H4抗 体と競合する抗体であれば、31H4抗体と同様のメカニズムにより、LDLRタンパク質の結合部位を直接封鎖して(具体的には、抗体が結晶構造上、LDLRのEGFaドメインの位置と重複する位置でPCSK9に結合して)、PCSK9とLDLRタンパク質の間の相 ムにより、LDLRタンパク質の結合部位を直接封鎖して(具体的には、抗体が結晶構造上、LDLRのEGFaドメインの位置と重複する位置でPCSK9に結合して)、PCSK9とLDLRタンパク質の間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調節することを明らかにする点に技術的意義がある ものというべきであり、逆に言えば、参照抗体と競合する抗体は、このよ うな位置で結合するからこそ、中和が可能になるということもできる。この点は、被告自身が、前記第3の3ウにおいて、本件明細書の発明の詳細な説明によれば、当業者は、出願時の技術常識に照らし、参照抗体との競合によってPCSK9上の複数の結合面のうち特定の領域内の特定の位置(LDLRのEGFaドメインと結合する部位と重複する位置(又は 同様の位置))に結合する抗体は、PCSK9とLRLRタンパク質の結合を中和することができると理解するものであり、発明の技術的範囲の全体にわたって発明の課題を解決できると認識することができたといえる旨主張していることからも裏付けられるところである。 また、前記1において認定した甲1文献の開示事項によれば、家族性 高コレステロール血症は、血漿中のLDLコレステロールレベルの上昇に起因するものであるところ、PCSK9は、細胞表面に存在するLDLRタンパク質の存在量を低下させるものであるため、PCSK9が治療のための魅力的な標的であり、血漿中のPCSK9に結合し、そのLDLRタンパク質との結合を阻害する抗体等が効果的な阻害剤となり得ることが 既に示されていたものと認められるのであるから、このような観点から見ても、本件発明の技術的意義は、31H4抗体と競合する抗体であれば、31H4抗体と同様のメカニズムにより、上記のようなLDLRタンパク 示されていたものと認められるのであるから、このような観点から見ても、本件発明の技術的意義は、31H4抗体と競合する抗体であれば、31H4抗体と同様のメカニズムにより、上記のようなLDLRタンパク質との結合を阻害する抗体、すなわち結合中和抗体としての機能的特性を有することを特定した点にあるということもできる。そもそも本件発明の 課題は、前記1イにおいて認定したとおり、LDLRタンパク質と結合することにより、対象中のLDLRタンパク質の量を減少させ、LDLの量を増加させるPCSK9とLDLRタンパク質との結合を中和する抗体又はこれを含む医薬組成物を提供することであり、このような課題の解決との関係では、参照抗体と競合すること自体に独自の意味を見出すこと はできないから、このような観点からも、上記のとおり、本件発明の技術 的意義は、31H4抗体と競合する抗体であれば、31H4抗体と同様のメカニズムにより、結合中和抗体としての機能的特性を有することを特定した点にあるというべきである。 イさらに検討すると、前記イのとおり、本件明細書の発明の詳細な説明には、エピトープビニングを行った結果、31H4抗体と同一性が高い とはいえないアミノ酸配列を有するグループの抗体が31H4抗体と競合するものとして同定されたことが開示されている。本件明細書には、上記競合する抗体として同定された抗体の中で中和活性を有すると記載される抗体がPCSK9上へ結合する位置についての具体的な記載はなされておらず、31H4抗体とアミノ酸配列が異なるグループの抗体につい ては、エピトープビニングのようなアッセイで競合すると評価されたことをもって、抗体がPCSK9上に結合する位置が明らかになるといった技術常識は認められない以上、PCSK9上 ープの抗体につい ては、エピトープビニングのようなアッセイで競合すると評価されたことをもって、抗体がPCSK9上に結合する位置が明らかになるといった技術常識は認められない以上、PCSK9上で結合する位置が明らかとはいえない。 また、本件発明の「PCSK9との結合に関して、参照抗体と競合する」 との性質を有する抗体には、上記本件明細書の発明の詳細な説明に具体的に記載される数グループの抗体以外に非常に多種、多様な抗体が包含されることは自明であり、また、前記2イのとおり、このような抗体には、被告が主張するように、31H4抗体がPCSK9と結合するPCSK9上の部位と重複する部位に結合し、参照抗体の特異的結合を妨げ、又は阻 害する(例えば、低下させる)抗体にとどまらず、参照抗体とPCSK9との結合を立体的に妨害する態様でPCSK9に結合し、様々な程度で参照抗体のPCSK9への特異的結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)抗体をも包含するものである。そうすると、その中には、例えば、31H4抗体がPCSK9と結合する部位と異なり、かつ、結晶構造上、 抗体がLDLRのEGFaドメインの位置とも異なる部位に結合し、31 H4抗体に軽微な立体的障害をもたらして、31H4抗体のPCSK9への特異的結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)もの等も含まれ得るところ、このような抗体がPCSK9に結合する部位は、抗体が結晶構造上、LDLRのEGFaドメインの位置と重複する位置ではないのであるから、LDLRタンパク質の結合部位を直接封鎖して、PCSK9 とLDLRタンパク質の間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調節するものとはいえない。 なお、本件明細書には「例示された抗原結合タンパク質と同じエピ 結合部位を直接封鎖して、PCSK9 とLDLRタンパク質の間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調節するものとはいえない。 なお、本件明細書には「例示された抗原結合タンパク質と同じエピトープと競合し、又は結合する抗原結合タンパク質及び断片は、類似の機能的特性を示すと予想される。」(【0269】)との記載があるが、上記のとお り、「PCSK9との結合に関して31H4抗体と競合する」とは、31H4抗体と同じ位置でPCSK9と結合することを特定するものではないから、31H4抗体と競合する抗体であれば、31H4抗体と同じエピトープと競合し、又は結合する抗原結合タンパク質(抗体)であるとはいえず、このような抗体全般が31H4抗体と類似の機能的特性を示すことを 裏付けるメカニズムにつき特段の説明が見当たらない以上、本件発明の「PCSK9との結合に関して、31H4抗体と競合する抗体」が31H4抗体と「類似の機能的特性を示す」ということはできない。 前述のとおり、本件発明の技術的意義は、31H4抗体と競合する抗体であれば、31H4抗体と同様のメカニズムにより、PCSK9とLDL Rタンパク質との結合を中和する抗体としての特性を有することを特定する点にあるというべきところ、前記のとおり、31H4抗体と競合する抗体であれば、LDLRのEGFaドメインと相互作用する部位(本件明細書の記載からは、EGFaドメインの5オングストローム以内に存在するPCSK9残基として定義されるLDLRのEGFaドメインとの相 互作用界面の特異的コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)、EGFaド メインの5オングストロームから8オングストロームに存在するPCSK9残基として定義されるLDLRのEGFaドメインとの相互作用界面の コアPCSK9アミノ酸残基(コア残基)、EGFaド メインの5オングストロームから8オングストロームに存在するPCSK9残基として定義されるLDLRのEGFaドメインとの相互作用界面の境界PCSK9アミノ酸残基と理解され得る。)に結合してPCSK9とLDLRタンパク質の結合部位を直接封鎖するとはいえず、他には、31H4抗体と競合する抗体であれば、どのようなものであっても、PC SK9とLDLRのEGFaドメイン(及び/又はLDLR一般)との間の相互作用(結合)を阻害する抗体となるメカニズムについての開示がない以上、当業者において、31H4抗体と競合する抗体が結合中和抗体であるとの理解に至ることは困難というほかない。 ウ以上のとおり、「PCSK9との結合に関して、31H4抗体と競合する 抗体」であれば、31H4抗体と同様に、LDLRタンパク質の結合部位を直接封鎖して(具体的には、抗体が結晶構造上、LDLRのEGFaドメインの位置と重複する位置でPCSK9に結合して)、PCSK9とLDLRタンパク質の間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調節するものであるとはいえないから、「PCSK9との結合に関して、31H 4抗体と競合する抗体」であれば、結合中和抗体としての機能的特性を有すると認めることもできない。なお、前記アのとおり、本件発明における「中和」とは、PCSK9とLDLRタンパク質結合部位を直接封鎖するものに限らず、間接的な手段(リガンド中の構造的又はエネルギー変化等)を通じてLDLRタンパク質に対するPCSK9の結合能を変化させ る態様を含むものではあるが、「PCSK9との結合に関して、31H4抗体と競合する抗体」であれば、上記間接的な手段を通じてLDLRタンパク質に対するPCSK9の結 CSK9の結合能を変化させ る態様を含むものではあるが、「PCSK9との結合に関して、31H4抗体と競合する抗体」であれば、上記間接的な手段を通じてLDLRタンパク質に対するPCSK9の結合能を変化させる抗体となることが、本件出願時の技術常識であったとはいえないし、本件明細書の発明の詳細な説明に開示されていたということもできない。 エこうした点は、前記1においてその信頼性を認定した【A】博士の実 証実験の結果及び同実証実験を踏まえた【B】博士の供述書からも裏付けられる。すなわち、この実証実験は、リジェネロンの63の抗体について参照抗体との競合及び結合中和性を実験したものであるが、競合に関して50%の閾値を用いた結果、34の抗体が参照抗体と競合するが、うち28の抗体(80%よりも多く)は結合中和性を有しないことが確認され ており(別紙3の資料B1及び前記1アb)、参照抗体と競合する抗体であれば結合中和性を有するものとはいえないことが具体的な実験結果として示されている。さらに、この実験結果に加え、「本件特許によれば、31H4抗体の結合部位はhPCSK9上のLDLRの結合部位と部分的にしか重複しないから・・別の抗体の結合部位は、LDLRの結合部位 と重複することなく31H4結合部位と重複し得るのであり、このようにして、別の抗体は、hPCSK9-LDLRの結合部位と重複することなく31H4結合部位と重複し得」る(前記1アb)として、【B】博士が、「31H4抗体と競合する抗体・・・の全てが結合を中和する効果を有するだろうというのは確実に誤りである。」旨の意見を述べているところ である(前記1アc)。 オ被告は、前記第3の3ウにおいて、31H4抗体(参照抗体)と競合 中和する効果を有するだろうというのは確実に誤りである。」旨の意見を述べているところ である(前記1アc)。 オ被告は、前記第3の3ウにおいて、31H4抗体(参照抗体)と競合するが、PCSK9とLDLRタンパク質との結合を中和できない抗体が仮に存在したとしても、そのような抗体は、本件発明1の技術的範囲から文言上除外されているなどとして、本件発明がサポート要件に反する理由 とはならない旨主張する。しかし、既に説示したとおり、31H4抗体と競合する抗体であれば、31H4抗体と同様のメカニズムにより、PCSK9とLDLRタンパク質との結合中和抗体としての機能的特性を有することを特定した点に本件発明の技術的意義があるというべきであって、31H4抗体と競合する抗体に結合中和性がないものが含まれるとする と、その技術的意義の前提が崩れることは明らかである(本件のような事 例において、結合中和性のないものを文言上除けば足りると解すれば、抗体がPCSK9と結合する位置について、例えば、PCSK9の大部分などといった極めて広範な指定を行うことも許されることになり、特許請求の範囲を正当な根拠なく広範なものとすることを認めることになるから、相当でない。)。なお、被告が主張するように、本件発明1の特許請求の範 囲は、PCSK9との結合に関して、参照抗体と競合する抗体のうち、「PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ」る抗体のみを対象としたものであると解したとしても、前示のとおり、本件発明のPCSK9との競合に関して、参照抗体と競合するとの発明特定事項は、被告が主張するような、参照抗体が結合する位置と同一又は重複する位置に 結合する抗体にとどまるものではなく、PCSK9とLDLRタンパク質 の競合に関して、参照抗体と競合するとの発明特定事項は、被告が主張するような、参照抗体が結合する位置と同一又は重複する位置に 結合する抗体にとどまるものではなく、PCSK9とLDLRタンパク質の結合に立体的妨害が生じる位置に結合する様式で競合する抗体をも含むものであるから、このような抗体についても結合中和抗体であることがサポートされる必要があるところ、参照抗体が結合する位置と同一又は重複する位置に結合する抗体の場合とは異なり、PCSK9とLDLRタン パク質の結合に立体的妨害が生じる位置に結合する様式で競合する抗体が結合を中和するメカニズムについては本件明細書には何らの記載はなく、また、ビニングによる実験結果(前記イ)に基づく結合中和抗体は、いずれも結合中和に係るメカニズムが開示されている、参照抗体が結合する位置と同一又は重複する位置に結合する抗体である可能性が高く、 その点を措くとしても、少なくともこれらが立体的に妨害する抗体であることを示唆する記載はない。そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、参照抗体と競合する抗体のうちPCSK9とLDLRタンパク質との結合に立体的妨害が生じる位置に結合する様式で競合する抗体が結合中和活性を有することについて何らの開示がないというほかなく、この点 からも、本件発明はサポート要件を満たさない。 また、前記第2の3のとおり、本件審決は、本件明細書には、本件明細書記載の免疫プログラムの手順及びスケジュールに従った免疫化マウスの作製及び選択、選択された免疫化マウスを使用したハイブリドーマの作製、本件明細書記載のPCSK9とLDLRとの結合相互作用を強く遮断する抗体を同定するためのスクリーニング及びエピトープビニングア ッセイを最初から繰り返し行うこ スを使用したハイブリドーマの作製、本件明細書記載のPCSK9とLDLRとの結合相互作用を強く遮断する抗体を同定するためのスクリーニング及びエピトープビニングア ッセイを最初から繰り返し行うことによって、十分に高い確率で本件発明の抗体をいくつも繰り返し同定することが具体的に示される旨判断するが、【F】(【F】)教授(【F】教授という。)の第2鑑定書(甲230)に「特定のマウスが特定の抗体を生成するかどうかは運に支配されるため、候補となり得る抗体を全て生成しスクリーニングすることは不可能であ る」と記載されているように、本件明細書に記載された抗体の作製過程を経たとしても、免疫化されたマウスの中でPCSK9上のどのような位置に結合する抗体が得られるかは「運に支配される」ものであって、抗体の抗原タンパク質への結合を立体的に妨害する態様で抗原タンパク質に結合する抗体を製造する方法が本件出願時における技術常識であったとも いえないことからすると、本件明細書に記載された抗体の作製方法に関する記載をもって、本件発明に含まれる多様な抗体が本件明細書の発明の詳細な説明に記載されていたとはいえない。 カそして、本件発明1のモノクローナル抗体を含む医薬組成物に係る発明である本件発明5も、上記同様の理由から、サポート要件を満たすもので はない。 以上によれば、本件発明1及び5は、いずれもサポート要件に適合するものと認められないから、これと異なる本件審決の判断は誤りである(なお、原告の主張のうち前記第3の3イの「EGFaミミック抗体」に係る点は首肯するに値するものを含み、サポート要件が満たされているとする被告 の主張に疑義を生じさせるものと考えるが、この点に関する判断をするまで もなく、 EGFaミミック抗体」に係る点は首肯するに値するものを含み、サポート要件が満たされているとする被告 の主張に疑義を生じさせるものと考えるが、この点に関する判断をするまで もなく、上記のとおり、本件発明1及び5は、いずれもサポート要件に適合するものとは認められないから、更なる判断を加えることは差し控えることとする。)。 以下、念のために付言する。 ア本件発明を巡る国際的状況について、原告は、欧州では、異議申立抗告 審において、令和2年に、本件発明と実質的に同じ対応欧州特許について、進歩性欠如により無効であると判断されており、また、米国では、合衆国連邦巡回区控訴裁判所において、令和3年2月11日に、本件発明より限定された対応米国特許につき、実施可能要件違反により無効であると判断されており、現在、我が国は、本件特許の有効性が裁判所により維持され ている世界で唯一の国である旨主張し、他方、被告は、上記連邦巡回区控訴裁判所の判断につき、連邦最高裁判所は、令和4年11月4日に、裁量上告受理申立てを認めたので、上記判断が覆される可能性が極めて高い旨主張するが、もとより、他国における判断が本件判断に直ちに影響を与えるものではないことは明らかである(なお、米国については、仮に、連邦 巡回区控訴裁判所の無効判断が覆されたとしても、対応米国特許は、参照抗体との「競合」を発明特定事項とするものではないと認められるから(例えば、米国特許8829165特許の請求項1は、「PCSK9に結合するとき、次の残基:配列番号3のS153、I154、P155、R194、D238、A239、I369、S372、D374、C375、T37 7、C378、F379、V380、又はS381の少なくとも1つに結合し、PCS のS153、I154、P155、R194、D238、A239、I369、S372、D374、C375、T37 7、C378、F379、V380、又はS381の少なくとも1つに結合し、PCSK9がLDLRに結合するのを阻害する、単離されたモノクローナル抗体」との発明特定事項である(甲19)。)、いずれにしても本件発明に係る判断に直接関係しない。)。 イ本件発明に係る別件審決取消訴訟においては、前記第2の1のとおり、 サノフィによるサポート要件違反に関する主張は退けられている。しかし、 これは、当時の主張や立証の状況に鑑み、31H4抗体と競合する抗体は、31H4抗体とほぼ同一のPCSK9上の位置に結合し31H4抗体と同様の機能を有するものであることを当然の前提としたことによるものと理解することも可能である。これに対し、本訴においては、【A】博士や【B】博士の各供述書、【F】教授の鑑定書等(甲18、230)による構 造解析、「EGFaミミック抗体」に係る関係書証(甲4の1及び2)等の新証拠に基づく新主張により、上記前提に疑義が生じたにもかかわらず、この前提を支える判断材料が見当たらないのであるから、別件判決の結論と本件判断が異なることには相応の理由があるというべきである。 3 結論 以上によれば、原告主張の取消事由2は理由があるから、その余の取消事由について判断するまでもなく、本件審決は取り消されるべきである。 よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官中 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官中村恭 裁判官 岡山忠広 (別紙1)【発明の詳細な説明】【技術分野】【0002】発明の分野 本発明は、プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)に結合する抗原結合タンパク質並びに該抗原結合タンパク質を使用及び作製する方法に関する。 【背景技術】【0003】 プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質のレベルの制御に関与するセリンプロテアーゼである(Horton et al., 2007;Seidah and Prat, 2007)。インビトロ実験は、HepG2細胞へのPCSK9の添加は細胞表面LDLRのレベルを低下させることを示している(Benjanne t et al., 2004;Lagace et al., 2006;Maxwell et al., 2005;Park et al., 2004)。マウスを用いた実験は、PCSK9タンパク質レベルを増加させることが肝臓中のLDLRタンパク質のレベルを減少させる(Benjannet et al., 2004; Lagace et al., 2006; Maxwell et al., 2005; P ark et al., 2004 nnet et al., 2004; Lagace et al., 2006; Maxwell et al., 2005; P ark et al., 2004)が、PCSK9ノックアウトマウスは肝臓中のLDLRの増加したレベルを有する(Rashid et al., 2005)ことを示した。さらに、血漿LDLの増加又は減少したレベルの何れかをもたらす様々なヒトPCSK9変異が同定されている (Kotowski et al., 2006;Zhao et al., 2006)。PCSK9は、LDLRタンパク質と直接 相互作用し、LDLRとともに細胞内に取り込まれ、エンドソーム経路全体を通じ てLDLRと同時に免疫蛍光を発する(Lagace et al., 2006)ことが示されている。PCSK9によるLDLRの分解は観察されておらず、細胞外LDLRタンパク質レベルを低下させる機序は不明である。 【発明を実施するための形態】【0066】 当業者によって理解されるように、本発明の開示に照らせば、PCSK9とLDLRの間の相互作用を変化させることは、LDLへの結合に利用可能なLDLRの量を増加させ、続いて、これは、対象中の血清LDLの量を減少させ、対象の血清コレステロールレベルの低下をもたらす。従って、PCSK9に対する抗原結合タンパク質は、上昇した血清コレステロールレベルを有する対象、上昇した血清コレス テロールレベルのリスクを有する対象又は血清コレステロールレベルの低下が有益であり得る対象を治療するための様々な方法及び組成物において使用することができる。従って、血清コレステロールの増加を低下させ、維持し、又は妨げるための様々な方法及び技術も、本 ールレベルの低下が有益であり得る対象を治療するための様々な方法及び組成物において使用することができる。従って、血清コレステロールの増加を低下させ、維持し、又は妨げるための様々な方法及び技術も、本明細書中に記載されている。幾つかの実施形態において、抗原結合タンパク質はPCSK9とLDLRの間の結合を可能とするが、抗原結合 タンパク質はLDLRに対するPCSK9の有害な活性を妨げ、又は低下させる。 幾つかの実施形態において、抗原結合タンパク質は、LDLRへのPCSK9の結合を妨げ、又は低下させる。 【0071】「PCSK9活性」という用語は、PCSK9のあらゆる生物学的効果を含む。あ る種の実施形態において、PCSK9活性は、基質若しくは受容体と相互作用し、又は基質若しくは受容体に結合するPCSK9の能力を含む。幾つかの実施形態において、PCSK9活性は、LDL受容体(LDLR)に結合するPCSK9の能力によって表される。幾つかの実施形態において、PCSK9は、LDLRを含む反応に結合し、触媒する。幾つかの実施形態において、PCSK9活性は、LDL Rの利用可能性を変化させる(例えば、低下させる)PCSK9の能力を含む。幾 つかの実施形態において、PCSK9活性は、対象中のLDLの量を増加させるPCSK9の能力を含む。幾つかの実施形態において、PCSK9活性は、LDLへの結合に利用可能なLDLRの量を減少させるPCSK9の能力を含む。幾つかの実施形態において、「PCSK9活性」は、PCSK9シグナル伝達から生じるあらゆる生物活性を含む。典型的な活性には、LDLRへのPCSK9の結合、LDL R又は他のタンパク質を切断するPCSK9酵素活性・・・が含まれるが、これらに限定されない。 【0109】 あらゆる生物活性を含む。典型的な活性には、LDLRへのPCSK9の結合、LDL R又は他のタンパク質を切断するPCSK9酵素活性・・・が含まれるが、これらに限定されない。 【0109】本明細書において使用される「抗原結合タンパク質」(「ABP」)は、特定された標的抗原を結合するあらゆるタンパク質を意味する。本願において、特定された標 的抗原は、PCSK9タンパク質又はその断片である。 「抗原結合タンパク質」には、抗体及びその結合部分(免疫学的に機能的な断片など)が含まれるが、これらに限定されない。ペプチボディは、抗原結合タンパク質の別の例である。本明細書において使用される抗体又は免疫グロブリン鎖(重鎖又は軽鎖)抗原結合タンパク質の「免疫学的に機能的な断片」(又は単に「断片」)という用語は、完全長の鎖中に存 在するアミノ酸の少なくとも幾つかを欠如するが、抗原になお特異的に結合することができる抗体の部分(当該部分がどのようにして取得され、又は合成されたかを問わない。)を含む抗原結合タンパク質の種である。このような断片は、標的抗原に結合し、あるエピトープへの結合に関して、完全な状態の抗体を含む他の抗原結合タンパク質と競合し得るという点で生物学的に活性を有する。幾つかの実施形態に おいて、断片は、中和断片である。幾つかの実施形態において、断片は、LDLRとPCSK9の間の相互作用の可能性を遮断し、又は低下させることができる。一態様において、このような断片は、完全長の軽鎖又は重鎖中に存在する少なくとも1つのCDRを保持し、幾つかの実施形態において、単一の重鎖及び/又は軽鎖又はその一部を含む。・・・ 【0123】 「抗原結合領域」は、特定の抗原(例えば、パラトープ)を特異的に結合するタン 、幾つかの実施形態において、単一の重鎖及び/又は軽鎖又はその一部を含む。・・・ 【0123】 「抗原結合領域」は、特定の抗原(例えば、パラトープ)を特異的に結合するタンパク質又はタンパク質の一部を意味する。例えば、抗原と相互作用し、抗原に対するその特異性及び親和性を抗原結合タンパク質に対して付与するアミノ酸残基を含有する抗原結合タンパク質のその部分は、「抗原結合領域」と称される。抗原結合領域は、通例、1つ又はそれ以上の「相補性結合領域」(「CDR」)を含む。ある種の 抗原結合領域は、1つ又はそれ以上の「フレームワーク」領域も含む。「CDR」は、抗原結合特異性及び親和性に寄与するアミノ酸配列である。「フレームワーク」領域は、CDRの適切な立体構造の維持を補助して、抗原結合領域と抗原の間の結合を促進することができる。構造的には、フレームワーク領域は、抗体中においてCDR間に位置することができる。フレームワーク及びCDR領域の例は、図2Aから 3D、3CCC-JJJ及び15Aから15Dに示されている。・・・【0127】可変領域は、3つの超可変領域(相補性決定領域又はCDRとも称される。)によって連結された、相対的に保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般的構造を典型的に呈する。各対の2つの鎖から得られるCDRは、フレームワーク領域 によって通例並列され、これにより、特異的なエピトープへの結合が可能となり得る。N末端からC末端へ、軽鎖及び重鎖可変領域は何れも、通例、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、通例、免疫学的に関心が持たれるタンパク質のKabat配列の定義(National Institutes o R2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、通例、免疫学的に関心が持たれるタンパク質のKabat配列の定義(National Institutes of Health, B ethesda, Md.(1987 and 1991))、又は「Chothia & Lesk, J.Mol.Biol.,196:901-917 (1987); Chothia et al., Nature, 342:878-883 (1989)」に従う。 【0132】 「軽鎖」という用語は、完全長の軽鎖及び結合特異性を付与するのに十分な可変領 域配列を有するその断片を含む。完全長軽鎖は、可変領域ドメイン、VL及び定常領域ドメイン、CLを含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端に位置する。軽鎖は、κ 鎖及びλ 鎖を含む。 【0133】「重鎖」という用語は、完全長の重鎖及び結合特異性を付与するのに十分な可変領 域配列を有するその断片を含む。完全長の重鎖は、可変領域ドメインVH及び3つの定常領域ドメインCH1、CH2及びCH3を含む。VHドメインはポリペプチドのアミノ末端に、及びCHドメインはカルボキシル末端に位置し、CH3がポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サブタイプを含む。)、IgA(IgA1及びIgA2サブタイプを含む。)、 IgM及びIgEなどのあらゆるイソタイプのものであり得る。 【0138】「中和抗原結合タンパク質」又は「中和抗体」という用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を妨げ、又は低下させる、それぞれ、抗原結合タンパク質又は抗体を表 り得る。 【0138】「中和抗原結合タンパク質」又は「中和抗体」という用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を妨げ、又は低下させる、それぞれ、抗原結合タンパク質又は抗体を表す。これは、例えば、リガンド上の結合部位を直接封鎖すること によって、又はリガンドに結合し、間接的な手段(リガンド中の構造的又はエネルギー的変化など)を通じて、リガンドの結合能を変化させることによって行うことができる。幾つかの実施形態において、この用語は、それが結合しているタンパク質が生物学的機能を発揮するのを妨げる抗原結合タンパク質も表し得る。抗原結合タンパク質(例えば、抗体又は免疫学的に機能的なその断片)の結合及び/又は特 異性を評価する際に、抗体の過剰が(インビトロ競合的結合アッセイで使用された場合に)少なくとも約1から20、20から30%、30から40%、40から50%、50から60%、60から70%、70から80%、80から85%、85から90%、90から95%、95から97%、97から98%、98から99%又はそれ以上、リガンドに結合された結合対の量を低下させるときに、抗体又は断 片はその結合対へのリガンドの結合を大幅に阻害することができる。・・・幾つかの 実施形態において、PCSK9抗原結合タンパク質の場合には、このような中和分子は、PCSK9がLDLRを結合する能力を低減させることができる。幾つかの実施形態において、競合アッセイを介して、中和能力を性質決定し、及び/又は記載する。・・・幾つかの実施形態において、ABP27B2、13H1、13B5及び3C4は、非中和ABPであり、3B6、9C9及び31A4は弱い中和物質で あり、表2中の残りのABPは強い中和物質である。幾つかの実施形態において、抗 、ABP27B2、13H1、13B5及び3C4は、非中和ABPであり、3B6、9C9及び31A4は弱い中和物質で あり、表2中の残りのABPは強い中和物質である。幾つかの実施形態において、抗体又は抗原結合タンパク質は、PCSK9へ結合し、PCSK9がLDLRに結合するのを妨げる(又はPCSK9がLDLRに結合する能力を低下させる)ことによって中和する。幾つかの実施形態において、抗体又はABPは、PCSK9に結合し、PCSK9をLDLRへ結合させながら、LDLRのPCSK9媒介性分 解を妨げ、又は低下させることによって中和する。・・・【0140】同じエピトープに対して競合する抗原結合タンパク質(例えば、中和抗原結合タンパク質又は中和抗体)という文脈において使用される場合の「競合する」という用語は、検査されている抗原結合タンパク質(例えば、抗体又は免疫学的に機能的な その断片)が共通の抗原(例えば、PCSK9又はその断片)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンド又は参照抗体)の特異的結合を妨げ、又は阻害する(例えば、低下させる)アッセイによって測定された抗原結合タンパク質間の競合を意味する。ある抗原結合タンパク質が別の抗原結合タンパク質と競合するかどうかを決定するために、競合的結合アッセイの多数の種類、例えば、固相直接又は間接ラ ジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接又は間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al, 1983, Methods in Enzymology 9:242-253参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al, 1986, J. Immunol.137:3614-3619参照) Enzymology 9:242-253参照);固相直接ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al, 1986, J. Immunol.137:3614-3619参照)、・・・固相直接ビオチン-ア ビジンEIA(例えば、Cheung, et al., 1990, Virolo gy 176:546-552参照)・・・を使用することができる。典型的には、このようなアッセイは、これらの何れかを有する固体表面又はセルに結合された精製抗原、標識されていない検査抗原結合タンパク質及び標識された基準抗原結合タンパク質を使用することを含む。競合的阻害は、検査抗原結合タンパク質の存在下で、固体表面又はセルに結合された標識の量を測定することによって測定される。 通常、検査抗原結合タンパク質は過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)には、基準抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質及び立体的妨害が生じるのに、基準抗原結合タンパク質によって結合されるエピトープに十分に近接した隣接エピトープに結合する抗原結合タンパク質が含まれる。・・・ 【0142】「エピトープ」という用語は、抗体又はT細胞受容体などの抗原結合タンパク質によって結合され得るあらゆる決定基を含む。エピトープは、その抗原を標的とする抗原結合タンパク質によって結合される抗原の領域であり、抗原がタンパク質である場合、抗原結合タンパク質に直接接触する特定のアミノ酸を含む。最も頻繁には、 エピトープはタンパク質上に存在するが、幾つかの事例では、核酸などの分子の他の種類上に存在することができる。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニル む。最も頻繁には、 エピトープはタンパク質上に存在するが、幾つかの事例では、核酸などの分子の他の種類上に存在することができる。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基を含むことができ、特異的な三次元構造の特徴及び/又は特異的な電荷的特長を有することができる。一般に、特定の標的抗原に対して特異的な抗体は、タンパク質及び/又は高分子の複 雑な混合物中において、標的抗原上のエピトープを優先的に認識する。 【0154】PCSK9に対する抗原結合タンパク質プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)タンパク質のレベルの制御に関与しているセ リンプロテアーゼである(Horton et al, 2007; Seidah a nd Prat, 2007)。PCSK9は、セリンプロテアーゼのスブチリシン(S8)ファミリーのプロホルモン-プロタンパク質コンベルターゼである(Seidah et al.,2003)。・・・PCSK9タンパク質の構造は、2つのグループによって最近解決された・・・。PCSK9は、シグナル配列、N末端プロドメイン、スブチリシン様触媒ドメイン及びC末端ドメインを含む。 【0155】ヒトPCSK9を含むPCSK9を結合する抗原結合タンパク質(ABP)は、本明細書中に記載されている。幾つかの実施形態において、提供される抗原結合タンパク質は、本明細書に記載されているように、1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)を含むポリペプチドである。同じ抗原結合タンパク質において、CDR は、CDRの適切な抗原結合特性が達成されるようにCDRを方向付け されているように、1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)を含むポリペプチドである。同じ抗原結合タンパク質において、CDR は、CDRの適切な抗原結合特性が達成されるようにCDRを方向付ける「フレームワーク」領域中に包埋されている。幾つかの実施形態において、本明細書中に提供されている抗原結合タンパク質は、PCSK9とLDLR間の相互作用を妨害し、遮断し、低下させ、又は調節することができる。このような抗原結合タンパク質は、「中和」と表される。幾つかの実施形態において、抗原結合タンパク質が中和性で あり、PCSK9に結合されている場合でさえ、PCSK9とLDLR間の結合はなお起こり得る。例えば、幾つかの実施形態において、ABPは、PCSK9上のLDLR結合部位を封鎖することなく、LDLRに対するPCSK9の悪影響を妨げ、又は低下させる。従って、幾つかの実施形態において、ABPは、PCSK9とLDLR間の結合相互作用を抑制する必要なしに、LDLRの分解をもたらすP CSK9の能力を調節し、又は変化させる。このようなABPは、「非競合的に中和する」ABPと特に記載することができる。幾つかの実施形態において、中和ABPは、PCSK9がLDLRに結合するのを妨げる位置及び/又は様式で、PCSK9に結合する。このようなABPは、「競合的に中和する」ABPと特に記載することができる。上記中和物質は何れも、対象中に存在している遊離のLDLRのよ り大きな量をもたらすことができ、これにより、LDLに結合しているより多くの LDLRがもたらされる(これにより、対象中のLDLの量を低下させる。)。続いて、これは、対象中に存在する血清コレステロールの量の低下をもたらす。 【0170】提供されている抗体の軽鎖及び重鎖の LRがもたらされる(これにより、対象中のLDLの量を低下させる。)。続いて、これは、対象中に存在する血清コレステロールの量の低下をもたらす。 【0170】提供されている抗体の軽鎖及び重鎖の可変領域の幾つかの具体例及びそれらの対応するアミノ酸配列は表2中に要約されている。 【0171】【表2】 【0172】同じく、表2に列記されている典型的な可変重鎖の各々は、抗体を形成するため に、表2に示されている典型的な可変軽鎖の何れとも組み合わせることができる。 表2は、本明細書中に開示されている抗体の幾つかの中に見出される典型的な軽鎖及び重鎖の対を示している。・・・ 【0262】・・・幾つかの実施形態において、ABPはABP31H4と競合する。 【0268】幾つかの実施形態において、ABP21B12は、残基162から167(例えば、配列番号1の残基D162-E167)を含むエピトープに結合する。・・・ 【0269】競合する抗原結合タンパク質別の態様において、PCSK9への特異的結合に関して、本明細書中に記載されているエピトープに結合する例示された抗体又は機能的断片の1つと競合する抗原結合タンパク質が提供される。このような抗原結合タンパク質は、本明細書中に例示 されている抗原結合タンパク質の1つと同じエピトープ又は重複するエピトープにも結合し得る。例示された抗原結合タンパク質と同じエピトープと競合し、又は結合する抗原結合タンパク質及び断片は、類似の機能的特性を示すと予想される。例示された抗原結合タンパク質及び断片は、重鎖及び軽鎖可変領域ドメイン並びに表2及び/又は図2から3及び15に含まれるCDRを有するものなど、上述されて いるものを含む。従って、具 想される。例示された抗原結合タンパク質及び断片は、重鎖及び軽鎖可変領域ドメイン並びに表2及び/又は図2から3及び15に含まれるCDRを有するものなど、上述されて いるものを含む。従って、具体例として、提供される抗原結合タンパク質には、(a)図2から3及び15に列記されている抗体に対して列記されているCDRの6つ全て;(b)表2中に列記されている抗体に対して列記されているVH及びVL;又は(c)表2に列記されている抗体に対して明記されている2つの軽鎖及び2つの重 鎖を有する抗体又は抗原結合タンパク質と競合するものが含まれる。 【0270】ある種の治療的用途及び医薬組成物ある種の事例において、PCSK9活性は、多数のヒトの病状と相関する。例えば、 ある種の事例において、高すぎる又は低すぎるPCSK9活性は、高コレステロー ル血症などのある種の症状と相関する。従って、ある種の事例において、PCSK9活性を調節することは治療的に有用であり得る。ある種の実施形態において、PCSK9に対する中和的抗原結合タンパク質は、少なくとも1つのPCSK9活性(例えば、LDLRへの結合)を調節するために使用される。このような方法は、上昇した血清コレステロールレベルと関連する、又は上昇したコレステロールレベ ルが関連する疾患を治療し、及び/又は予防し、及び/又は疾患のリスクを低減することができる。 【0271】当業者によって理解されるように、本開示に照らして、変動したコレステロール、LDL又はLDLRレベルと関連し、変動したコレステロール、LDL又はLDL Rレベルを伴い、又は変動したコレステロール、LDL又はLDLRレベルによって影響を受け得る疾患は、抗原結合タンパク質の様々 はLDLRレベルと関連し、変動したコレステロール、LDL又はLDL Rレベルを伴い、又は変動したコレステロール、LDL又はLDLRレベルによって影響を受け得る疾患は、抗原結合タンパク質の様々な実施形態によって対処することができる。幾つかの実施形態において、(「血清コレステロール関連疾患」を含む)「コレステロール関連疾患」には、例えば、上昇した総血清コレステロール、上昇したLDL、上昇したトリグリセリド、上昇したVLDL及び/又は低HDLを 呈し得る以下のもの:高コレステロール血症、心臓病、メタボリックシンドローム、糖尿病、冠状動脈性心臓病、卒中、心血管疾患、アルツハイマー病及び脂質異常症全般の何れか1つ又はそれ以上が含まれる。・・・【0276】幾つかの実施形態において、PCSK9に対する抗原結合タンパク質は、異常に高 いレベル又は正常なレベルからPCSK9活性の量を減少させるために使用される。 幾つかの実施形態において、PCSK9に対する抗原結合タンパク質は、高コレステロール血症を治療若しくは予防するために、並びに/又は高コレステロール血症及び/若しくは他のコレステロール関連疾患(本明細書中に記載されているものなど)に対する医薬の調製において使用される。ある種の実施形態において、PCS K9に対する抗原結合タンパク質は、PCSK9活性が正常である高コレステロー ル血症などの症状を治療又は予防するために使用される。このような症状において、例えば、正常を下回るPCSK9活性の低下は、治療効果を提供することができる。 【0312】(実施例1)免疫化及び力価測定 抗PCKS9抗体及びハイブリドーマの作製PCSK9の成熟形態に対する抗体(図1A中の配列として図示されており できる。 【0312】(実施例1)免疫化及び力価測定 抗PCKS9抗体及びハイブリドーマの作製PCSK9の成熟形態に対する抗体(図1A中の配列として図示されており、プロドメインに下線が付されている。)を、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するマウスであるXenoMouse(R)マウス(Abgenix, Fremont, CA)中で作製した。PCSK9に対する抗体を作製するために、XenoMouse(R) マウスの2つのグループ(グループ1及び2)を使用した。グループ1は、完全ヒトIgG2κ 及びIgG2λ 抗体を産生するXenoMouse(R)系統XMG2-KLのマウスを含んだ。グループ1のマウスを、ヒトPCSK9で免疫化した。GenBank配列を参照として(NM 174936)を使用する標準的組換え技術を用いて、PCSK9を調製した。グループ2は、完全ヒトIgG4κ 及びIgG4 λ 抗体を産生するXenoMouse(R)系統XMG4-KLのマウスを含んだ。グループ2のマウスも、ヒトPCSK9で免疫化した。 【0313】表3中のスケジュールに従って、両グループのマウスに抗原を11回注射した。最初の免疫化において、腹部中に腹腔内送達された抗原計10μgを各マウスに注射 した。その後の強化免疫は5μgの用量であり、注射法は、腹部内への腹腔内注射と尾の基部への皮下注射間でずらされる。腹腔内注射のために、TiterMax(R)Gold(Sigma, Cat # T2684)を加えたエマルジョンとして抗原を調製し、皮下注射のために、抗原をAlum(リン酸アルミニウム)及びCpGオリゴと混合する。注射2から8及び10において、アジュバントalumゲル 中の抗原計5μgを各 マルジョンとして抗原を調製し、皮下注射のために、抗原をAlum(リン酸アルミニウム)及びCpGオリゴと混合する。注射2から8及び10において、アジュバントalumゲル 中の抗原計5μgを各マウスに注射した。マウス当り抗原5μgの最終注射をリン酸 緩衝化された生理的食塩水中に送達し、2つの部位に送達する(腹部内へ50%腹腔内及び尾の基部に50%皮下)。免疫化プログラムは、以下に示されている表3中に要約されている。 【0314】【表3】 【0320】ヒトPCSK9に対する抗体の力価は、記載されている可溶性抗原を用いて免疫化されたマウスに対するELISAアッセイによって検査した。表4は、ELIS Aデータを要約し、PCSK9に対して特異的であるように見受けられる幾つかのマウスが存在したことを示す。例えば、表4を参照されたい。従って、免疫化プログラムの終わりに、10匹のマウス(表4中の太字)を採集のために選択し、本明細書中に記載されているように、それぞれ、脾臓及びリンパ節から脾細胞及びリンパ球を単離した。 【0321】【表4】 【0322】(実施例2) リンパ球の回収、B細胞の単離、融合及びハイブリドーマの作製この実施例は、免疫細胞がどのようにして回収され、ハイブリドーマがどのようにして作製されたかについて概説する。選択された免疫化マウスを頚椎脱臼によって屠殺し、各コホートから流入領域リンパ節を採集し、プールした。細胞を組織から放出させるために、DMEM中で磨り潰すことによって、リンパ系組織からB細胞 を解離させ、細胞をDMEM中に懸濁した。細胞を計数し、穏やかに、但し、完全に細胞を再懸濁させるために、1億のリンパ球当りDMEM0.9 DMEM中で磨り潰すことによって、リンパ系組織からB細胞 を解離させ、細胞をDMEM中に懸濁した。細胞を計数し、穏やかに、但し、完全に細胞を再懸濁させるために、1億のリンパ球当りDMEM0.9mLを細胞沈降物に添加した。 【0323】1:4の比で、リンパ球をATCC、cat.#CR11580から購入した非分 泌性骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(Kearney et al.,(1979)J.Immunol.123,1548-1550)と混合した。400×gで、4分の遠心によって、細胞混合物を穏やかに沈降させた。容器を傾けて上清を除去した後、1mLピペットを用いて、細胞を穏やかに混合した。1分にわたって、穏やかに撹拌しながら、Sigma(cat#P7306)から得た事前加熱された PEG/DMSO溶液(B細胞100万個当り1mL)をゆっくり添加した後、1分間混合した。次いで、穏やかに撹拌しながら、2分にわたって、事前加熱されたIDMEM(B細胞100万個当り2mL)(グルタミン、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、MEM非必須アミノ酸なしのDMEM)(全て、Invitrogenから得た)を添加した。最後に、3分にわたって、事前加熱された IDMEM(106個のB細胞当り8mL)を添加した。 【0324】400×gで6分、融合された細胞を遠心沈降させ、100万個のB細胞当り選択培地20mL(L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、MEM非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール(全て、Invit rogenから入手)、HA-アザセリンヒポキサンチン及びOPI(オキサロアセ タート、ピルバート、ウシインシュリン)(何れも、Sigmaから入手) プトエタノール(全て、Invit rogenから入手)、HA-アザセリンヒポキサンチン及びOPI(オキサロアセ タート、ピルバート、ウシインシュリン)(何れも、Sigmaから入手)及びIL-6(Boeringer Mannheim)が補充された、DMEM(Invitrogen)、15%FBS(Hyclone)中に再懸濁した。37℃で20から30分間、細胞を温置し、次いで、選択培地200mL中に再懸濁し、96ウェルへの播種の前に、T175フラスコ中で3から4日間培養した。このようにして、 PCSK9に対する抗原結合タンパク質を産生するハイブリドーマを作製した。 【0325】(実施例3)PCSK9抗体の選択本実施例は、様々なPCSK9抗原結合タンパク質をどのようにして性質決定し、 選択したかについて概説する。(実施例1及び2で産生されたハイブリドーマから産生された)分泌された抗体のPCSK9への結合を評価した。抗体の選択は、結合データ及びLDLRへのPCSK9の結合の阻害及び親和性を基礎とした。以下に記載されているように、ELISAによって、可溶性PCSK9への結合を分析した。結合親和性を定量するために、BIAcore(R)(表面プラズモン共鳴)を 使用した。 【0326】一次スクリーニング野生型PCSK9に結合する抗体に対する一次スクリーニングを行った。2つの採集物に対して、一次スクリーニングを行った。一次スクリーニングは、ELIS Aアッセイを含み、以下のプロトコールを用いて行った。 【0327】Costar37-2培地結合384ウェルプレート(Corning Life Sciences)を使用した。40μL/ウェルの容量で、1×PBS/0. ルを用いて行った。 【0327】Costar37-2培地結合384ウェルプレート(Corning Life Sciences)を使用した。40μL/ウェルの容量で、1×PBS/0. 05%アジ化物中、4μg/mLの濃度のニュートラビジンでプレートを被覆した。 4℃で一晩、プレートを温置した。次いで、Titertekプレート洗浄装置(T itertek,Huntsville,AL)を用いて、プレートを洗浄した。 3サイクルの洗浄を行った。1×PBS/1%ミルク90μLでプレートをブロックし、室温で約30分間温置した。次いで、プレートを洗浄した。再度、3サイクルの洗浄を行った。捕捉試料は、V5タグを持たないビオチン化合されたPCSK9であり、40μL/ウェルの容量で、1×PBS/1%ミルク/10mMCa2+中に 0.9μg/mLで添加した。次いで、プレートを室温で1時間温置した。次に、3サイクル洗浄を用いて作動されるTitertekプレート洗浄装置を用いて、プレートを洗浄した。1×PBS/1%ミルク/10mMCa2+40μL中に、上清10μLを移し、室温で1.5時間温置した。再度、3サイクル洗浄を用いて作動されるTitertekプレート洗浄装置を用いて、プレートを洗浄した。1×PBS/ 1%ミルク/10mMCa2+中、100ng/mL(1:4000)の濃度のヤギ抗ヒトIgGFcPOD40μL/ウェルをプレートに添加し、室温で1時間温置した。3サイクル洗浄を用いて、プレートをもう一度洗浄した。最後に、1工程TMB(Neogen, Lexington, Kentucky)の40μL/ウェルをプレートに添加し、室温で30分後に、1N塩酸の40μL/ウェルを用いて 消光を行った。Titertekプレート Neogen, Lexington, Kentucky)の40μL/ウェルをプレートに添加し、室温で30分後に、1N塩酸の40μL/ウェルを用いて 消光を行った。Titertekプレートリーダーを用いて、450nmでODを直ちに読み取った。 【0328】一次スクリーニングによって、2つの採集物から同定された合計3104の抗原特異的ハイブリドーマが得られた。最高のELISAODに基づいて、合計300 0の陽性に対して、採集物当り1500のハイブリドーマをさらなる操作に用いた。 【0329】確認用スクリーニング次いで、安定なハイブリドーマが確立されたことを確認するために、野生型PCSK9への結合に関して、3000の陽性を再スクリーニングした。・・・合計244 1の陽性を、第二のスクリーニングで反復した。次いで、その後のスクリーニング において、これらの抗体を使用した。 【0330】マウス交叉反応スクリーニング次いで、抗体がヒト及びマウスPCSK9の両方に結合できることを確認するために、マウスPCSK9に対する交叉反応性に関して、ハイブリドーマのパネルを スクリーニングした。・・・579抗体は、マウスPCSK9と交叉反応することが観察された。次いで、その後のスクリーニングにおいて、これらの抗体を使用した。 【0331】D374Y変異体結合スクリーニングPCSK9中のD374Y変異は、ヒト集団中において文献に記載されている(例 えば、Timms KM et al, “A mutation in PCSK9 causing autosomal-dominant hypercholesterolemia in a Utah p t al, “A mutation in PCSK9 causing autosomal-dominant hypercholesterolemia in a Utah pedigree”, Hum.Genet. 114:349-353, 2004)。抗体が野生型に対して特異的であり、又はPCSK9のD374Y形態に結合されているかどうかを測定するために、次いで、 変異D374Yを含む変異体PCSK9配列への結合に関して、試料をスクリーニングした。・・・野生型PCSK9に対する陽性ヒットの96%以上が、変異体PCSK9も結合した。 【0332】大規模受容体リガンド遮断スクリーニング LDLRへのPCSK9結合を遮断する抗体をスクリーニングするために、D374YPCSK9変異体を用いたアッセイを開発した。LDLRに対してより高い結合親和性を有するので、このアッセイに対して変異体を使用し、より感度が高い受容体リガンド遮断アッセイの開発を可能とした。受容体リガンド遮断スクリーニングでは、以下のプロトコールを使用した。スクリーニングでは、Costar3 702培地結合384ウェルプレート(Corning Life Science s)を使用した。40μL/ウェルの容量で、1×PBS/0.05%アジ化物中、2μg/mLのヤギ抗LDLR(R&DCat#AF2148)でプレートを被覆した。4℃で一晩、プレートを温置した。次いで、Titertekプレート洗浄装置(Titertek,Huntsville,AL)を用いて、プレートを洗浄した。3サイクルの洗浄を行った。1×PBS/1%ミルク90μLでプレートをブ ロックし、室温で約30分間温置した。次いで、Titertekプレー ntsville,AL)を用いて、プレートを洗浄した。3サイクルの洗浄を行った。1×PBS/1%ミルク90μLでプレートをブ ロックし、室温で約30分間温置した。次いで、Titertekプレート洗浄装置を用いてプレートを洗浄した。3サイクルの洗浄を行った。捕捉試料は、LDLR(R&D、Cat#2148LD/CF)であり、40μL/ウェルの容量で、1×PBS/1%ミルク/10mMCa2+中に0.4μg/mLで添加した。次いで、プレートを室温で1時間10分間温置した。同時に、Nuncポリプロピレンプレ ート中のハイブリドーマ枯渇上清15μLとともに、ビオチン化されたヒトD374YPCSK9の20ng/mLを温置し、枯渇上清濃度を1:5希釈した。次いで、プレートを室温で約1時間30分間事前温置した。次に、3サイクル洗浄を用いて作動されるTitertekプレート洗浄装置を用いて、プレートを洗浄した。 事前温置された混合物50μL/ウェルを、LDLRで被覆されたELISAプレ ート上に移し、室温で1時間温置した。LDLRに結合されたb-PCSK9を検出するために、アッセイ希釈液中の500ng/mLのストレプトアビジンHRP40μL/ウェルをプレートに添加した。プレートを室温で1時間温置した。再度、Titertekプレート洗浄装置を用いてプレートを洗浄した。3サイクルの洗浄を行った。最後に、1工程TMB(Neogen, Lexington, Ke ntucky)の40μL/ウェルをプレートに添加し、室温で30分後に、1N塩酸の40μL/ウェルを用いて消光した。Titertekプレートリーダーを用いて、450nmでODを直ちに読み取った。スクリーニングによって、PCSK9とLDLRウェル間での相互作用を遮断する384の抗体が μL/ウェルを用いて消光した。Titertekプレートリーダーを用いて、450nmでODを直ちに読み取った。スクリーニングによって、PCSK9とLDLRウェル間での相互作用を遮断する384の抗体が同定され、100の抗体は相互作用を強く遮断した(OD<0.3)。これらの抗体は、PCSK9とL DLRの結合相互作用を90%超阻害した(90%超の阻害)。 【0333】遮断物質のサブセットに対する受容体リガンド結合アッセイ次いで、第一の大規模受容体リガンド阻害アッセイにおいて同定された中和物質の384にサブセットに対して、変異体酵素を用いて受容体リガンドアッセイを反復した。384の遮断物質サブセットアッセイのスクリーニングでは、大規模受容 体リガンド遮断スクリーニングにおいて行われたものと同じプロトコールを使用した。この反復スクリーニングによって、最初のスクリーニングデータが確認された。 【0334】この384メンバーのサブセットのスクリーニングによって、90%を超えて、PCSK9変異体酵素とLDLR間の相互作用を遮断する85の抗体が同定された。 【0335】野生型PCSK9を結合するが、D374Y変異体を結合しない遮断物質の受容体リガンド結合アッセイ3000の上清の当初パネル中には、野生型PCSK9に特異的に結合するが、huPCSK9(D374Y)変異体に結合しないことが示された86の抗体が存在していた。LDLR受容体への野生型PCSK9の結合を 遮断する能力に関して、これらの86の上清を検査した。・・・【0336】スクリーニングの結果記載されているアッセイの結果に基づいて、PCSK9との所望の相互作用を有する抗体を産生するとして、幾つかのハイブリドーマ株が 上清を検査した。・・・【0336】スクリーニングの結果記載されているアッセイの結果に基づいて、PCSK9との所望の相互作用を有する抗体を産生するとして、幾つかのハイブリドーマ株が同定された。各株からク ローンの管理可能な数を単離するために、限外希釈を使用した。ハイブリドーマ株の数字(例えば、21B12)及びクローン数(例えば、21B12.1)によって、クローンを表記した。一般に、特定の株の異なるクローン間の差は、本明細書中に記載されている機能的アッセイによって検出された。2、3の事例では、機能的アッセイにおいて異なる挙動を示した特定の株からクローンが同定された。例え ば、25A7.1はPCSK9/LDLRを遮断しないが、25A7.3(本明細 書において、25A7と称される。)は中和性であることが見出された。単離されたクローンを、ハイブリドーマ溶媒50から100mL中でそれぞれ増殖させ、枯渇するまで増殖させた(すなわち、約10%未満の細胞生存率)。これらの培養物の上清中でのPCSK9に対する抗体の濃度及び効力を、本明細書中に記載されているようなELISAによって、及びインビトロ機能的検査によって測定した。本明細 書に記載されているスクリーニングの結果として、PCSK9に対する抗体の最も高い力価を有するハイブリドーマを同定した。図2Aから3D及び表2中に、選択されたハイブリドーマが示されている。 【0373】(実施例10) エピトープビニング抗PCSK9抗体のビニングのために、競合ELISAを使用した。要約すれば、2つの抗体が同じエピトープのビンに属するかどうかを決定するために、一晩の温置によって、2μg/mLで、ELISAプレート(NUNC)上に、まず抗体(mA に、競合ELISAを使用した。要約すれば、2つの抗体が同じエピトープのビンに属するかどうかを決定するために、一晩の温置によって、2μg/mLで、ELISAプレート(NUNC)上に、まず抗体(mAb1)の1つを被覆した。次いで、プレートを洗浄し、3%BSAでブロックし た。一方、ビオチン化されたhPCSK9の30ng/mLを、室温で2時間、第二の抗体(mAb2)とともに温置した。混合物を被覆されたmAb1に適用し、室温で1時間温置した。次いで、ELISAプレートを洗浄し、1:5000の希釈で1時間、Neutravidin-HRP(Pierce)とともに温置した。 さらなる洗浄後、TMB基質とともにプレートを温置し、Titertekプレー トリーダーを用いて、シグナルを650nmで検出した。同じ結合特性を有する抗体を、同じエピトープビンの中にグループ分けした。抗体ビニング研究の結果が、表8.3に示されている。 【0374】【表11】 【0377】(実施例11)D374YPCSK9/LDLR結合を遮断する31H4及び21B12の効果本実施例は、PCSK9D374YがLDLRに結合する能力を遮断する上での、 抗体の2つに対するIC50値を提供する。緩衝液A(100mMカコジル酸ナトリウム、pH7.4)中に希釈されたヤギ抗LDL受容体抗体(R&D Systems)2μg/mLで、透明な384ウェルプレート(Costar)を被覆した。 緩衝液Aでプレートを完全に洗浄した後、緩衝液B(緩衝液A中の1%ミルク)で2時間ブロックした。洗浄後、緩衝液C(10mMCaCl2が補充された緩衝液B) 中に希釈されたLDL受容体(R&DSystems)0.4μg/mLとともに、 A中の1%ミルク)で2時間ブロックした。洗浄後、緩衝液C(10mMCaCl2が補充された緩衝液B) 中に希釈されたLDL受容体(R&DSystems)0.4μg/mLとともに、プレートを1.5時間温置した。この温置と同時に、緩衝液A中に希釈された31H4IgG2、31H4IgG4、21B12IgG2又は21B12IgG4抗体の様々な濃度又は緩衝液Aのみ(対照)とともに、ビオチン化されたD374YPCSK9の20ng/mLを温置した。LDL受容体を含有するプレートを洗浄 し、ビオチン化されたD374YPCSK9/抗体混合物をプレートに移し、室温で1時間温置した。LDL受容体へのビオチン化されたD374Yの結合は、緩衝液C中の500ng/mLのストレプトアビジン-HRP(Biosource)とともに、次いで、TMB基質(KPL)とともに温置することによって検出した。 1NHClを用いてシグナルを消光し、450nmで吸光度を読み取った。 【0378】この結合研究の結果が、図6Aから6Dに示されている。要約すると、各抗体に対してIC50値を測定し、31H4IgG2に対して199pM(図6A)、31H4IgG4に対して156pM(図6B)、21B12IgG2に対して170pM(図6C)及び21B12IgG4に対して169pM(図6D)であることが見 出された。 【0379】抗体は、このアッセイにおいて、LDLRへの野生型PCSK9の結合も遮断した。 【0380】 (実施例12)細胞LDL取り込みアッセイ本実施例は、様々な抗原結合タンパク質が細胞によるLDLの取り込みを低下させ得ることを示す。・・・【0381】 細胞取り込みアッセイの結果が、図7A 細胞LDL取り込みアッセイ本実施例は、様々な抗原結合タンパク質が細胞によるLDLの取り込みを低下させ得ることを示す。・・・【0381】 細胞取り込みアッセイの結果が、図7Aから7Dに示されている。要約すると、各 抗体に対してIC50値を測定し、31H4IgG2に対して16.7nM(図7A)、31H4IgG4に対して13.3nM(図7B)、21B12IgG2に対して13.3nM(図7C)及び21B12IgG4に対して18nM(図7D)であることが見出された。これらの結果は、適用された抗原結合タンパク質がPCSK9(D374Y)の効果を低下させて、細胞によるLDLの取り込みを遮断できるこ とを示している。抗体は、このアッセイにおいて、野生型PCSK9の効果も遮断した。 【0382】(実施例13)6日の研究における31H4抗体の血清コレステロール低下効果 PCSK9タンパク質に対する抗体治療を介した野生型(WT)マウスにおける総血清コレステロール(TC)低下を評価するために、以下の手順を行った。 【0383】Jackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から得られた雄のWTマウス(C57BL/6系統、9から10週齢、17-27g)には、 実験の期間を通じて、通常の食餌(Harland-Teklad, Diet2918)を与えた。t=0において、マウスの尾静脈を通じて、10mg/kgのレベルで、抗PCSK9抗体31H4(PBS中の2mg/mL)又は対照IgG(PBS中2mg/mL)の何れかをマウスに投与した。ナイーブマウスも、ナイーブ対照群として別に分けた。投薬群及び屠殺の時間が、表9に示されている。 【0384】【表12】 は対照IgG(PBS中2mg/mL)の何れかをマウスに投与した。ナイーブマウスも、ナイーブ対照群として別に分けた。投薬群及び屠殺の時間が、表9に示されている。 【0384】【表12】 【0385】表9に示されている所定の時点でのCO2窒息を用いて、マウスを屠殺した。大静脈を介して、エッペンドルフチューブの中に血液を集め、室温で30分間凝固させた。次いで、血清を分離するために、10分間、12,000×gでの卓上遠心機中 で、試料を遠心沈降させた。Hitachi912臨床分析装置及びRoche/HitachiTC及びHDL-Cキットを用いて、血清総コレステロール及びHDL-Cを測定した。 【0386】実験の結果が、図8Aから8Dに示されている。要約すると、抗体31H4が投与 されたマウスは、実験の間にわたって、減少した血清コレステロールレベルを示した(図8A及び図8B)。さらに、マウスは減少したHDLレベルを示すことも注目される(図8C及び図8D)。図8A及び図8Cに関して、%変化は、同じ時点での対照IgGに対する(*P<0.01、#P<0.05)。図8B及び8Dに関して、%変化は、t=0時間で、ナイーブ動物中において測定された総血清コレステロール 及びHDLレベルに対する(*P<0.01、#P<0.05)。 【0387】低下したHDLレベルに関して、マウス中でのHDLの減少はHDLの減少がヒ トで起きることを示唆せず、この生物中での血清コレステロールが減少したことをさらに反映するに過ぎないことが当業者に理解されることが注目される。マウスは高密度リポタンパク質(HDL)粒子中に血清コレステロールの大半を輸送し、これはLDL粒子上に殆どの血清コレステロールを をさらに反映するに過ぎないことが当業者に理解されることが注目される。マウスは高密度リポタンパク質(HDL)粒子中に血清コレステロールの大半を輸送し、これはLDL粒子上に殆どの血清コレステロールを有するヒトとは異なることが注目される。マウスでは、総血清コレステロールの測定は、血清HDL-Cのレベルを 最も近似する。マウスHDLは、LDL受容体(LDLR)に対するリガンドであるアポリポタンパク質E(apoE)を含有しており、LDLRによるHDLの排除を可能とする。従って、HDLを調べることは、マウスにおける、本実施例での適切な指標である(HDLの減少は、ヒトに対しては予測されないことが理解される。)。これに対して、例えば、ヒトHDLは、apoEを含有しておらず、LDL Rに対するリガンドではない。PCSK9抗体はマウス中でのLDLR発現を増加させるので、肝臓はより多くのHDLを排除させることができ、従って、血清HDL-Cレベルを低下させる。 【0388】(実施例14) 6日の研究における、LDLRレベルに対する抗体31H4の効果本実施例は、予想されたように、抗原結合タンパク質が、経時的に、対象中のLDLRのレベルを変化させることを示す。LDLRレベルに対する抗体31H4の効果を確認するために、ウェスタンブロット分析を行った。実施例13で記載した屠殺されたマウスから得られた肝臓組織50から100mgを、完全なプロテアーゼ 阻害剤(Roche)を含有するRIPA緩衝液(Santa Cruz Biotechnology Inc.)0.3mL中において均質化した。ホモゲネートを氷上で30分間温置し、細胞破砕物を沈降させるために遠心した。BioRadタンパク質アッセイ試薬(Bio Rad la chnology Inc.)0.3mL中において均質化した。ホモゲネートを氷上で30分間温置し、細胞破砕物を沈降させるために遠心した。BioRadタンパク質アッセイ試薬(Bio Rad laboratories)を用いて、上清中のタンパク質濃度を測定した。70℃で10分間、タンパク質100μgを変性 させ、4から12%Bis-TrisSDS勾配ゲル(Invitrogen)上 で分離した。0.45μmPVDF膜(Invitrogen)にタンパク質を移し、室温で1時間、5%無脂肪ミルクを含有する洗浄緩衝液(50mMTris PH7.5, 150mMNaCl, 2mMCaCl2及び0.05%Tween20)中でブロックした。次いで、室温で1時間、ヤギ抗マウスLDLR抗体(R&Dsystem)1:2000又は抗β アクチン(sigma)1:2000を用いて、 ブロットのプローブ検査を行った。ブロットを短時間洗浄し、ウシ抗ヤギIgG-HRP(Santa Cruz Biotechnology Inc.)1:2000又はヤギ抗マウスIgG-HRP(Upstate)1:2000とともに温置した。室温で1時間の温置後、ブロットを完全に洗浄し、ECLplusキット(Amersham biosciences)を用いて、免疫反応性バンドを検出し た。ウェスタンブロットは、図9に図示されているように、抗体31H4の存在下でのLDLRタンパク質レベルの増加を示した。 【0389】(実施例15)13日の研究における抗体31H4の血清コレステロール低下効果 13日の研究において、PCSK9タンパク質に対する抗体治療を介した野生型(WT)マウスにおける総血清コレステロール(TC)低下を評価するた ける抗体31H4の血清コレステロール低下効果 13日の研究において、PCSK9タンパク質に対する抗体治療を介した野生型(WT)マウスにおける総血清コレステロール(TC)低下を評価するために、以下の手順を行った。 【0390】Jackson Laboratory(BarHarbor,ME)から得られ た雄のWTマウス(C57BL/6系統、9から10週齢、17-27g)には、実験の期間を通じて、通常の食餌(Harland-Teklad, Diet918)を与えた。t=0において、マウスの尾静脈を通じて、10mg/kgのレベルで、抗PCSK9抗体31H4(PBS中の2mg/mL)又は対照IgG(PBS中2mg/mL)の何れかをマウスに投与した。ナイーブマウスも、ナイ ーブ対照群として別に分けた。 【0391】投薬群及び屠殺の時間が、表10に示されている。動物を屠殺し、肝臓を摘出し、実施例13のとおりに調製した。 【0392】【表13】 【0393】6日の実験を13日の研究に延長すると、6日の研究において観察された同じ血清コレステロール低下効果が、13日の研究においても観察された。より具体的には、10mg/kgで投薬された動物は、3日目に、血清コレステロールの31% の減少を示し、13日までに、投薬前レベルまで徐々に戻った。図10Aは、この実験の結果を図示する。図10Cは、31H4の10mg/kg用量を用いた、及び同じく10mg/kgの別の抗体16F12を用いた上記手順を反復した結果を図示している。投薬群及び屠殺の時間が、表11に示されている。 【0395】 図10Cに示されているように、16F12及び31H4は何れも、単回投薬のみ いた上記手順を反復した結果を図示している。投薬群及び屠殺の時間が、表11に示されている。 【0395】 図10Cに示されているように、16F12及び31H4は何れも、単回投薬のみ の後に、総血清コレステロールの著しく、大幅な減少をもたらし、1週以上にわたって(10日又はそれ以上)有益であった。反復された13日の研究の結果は最初の13日の研究の結果と合致しており、3日目における26%の血清コレステロールレベルの減少が観察される。図10A及び図10Bに関して、%変化は、同じ時点での対照IgGに対する(*P<0.01)。図10Cに関して、%変化は、同じ 時点での対照IgGに対する(*P<0.05)。 【0422】(実施例26)インビボでLDLを低下させるPCSK9及びABPの能力に対するマウスモデル ヒトPCSK9を過剰発現するマウスを作製するために、マウス中のLDL-コレステロールの測定可能な増加を与える正しい力価を測定するためにヒトPCSK9を発現するように組換え的に修飾されたアデノ随伴ウイルス(AAV)の様々な濃度を、尾静脈投与を介して3週齢WTC57B1/6マウスに注射した。ヒトPCSK9を発現するこのウイルスを用いて、ウイルスの4.5×10E12pfuは 循環血液中の約40mg/dLのLDL-コレステロールレベル(WTマウス中のLDLの正常レベルは、約10mg/dLである。)をもたらすことが決定された。 これらの動物中のヒトPCSK9レベルは、約13μg/mLであることが見出された。この注射基準を用いて、マウスのコロニーを作製した。 【0423】 注射から1週後に、LDL-コレステロールレベルに関してマウスを評価し、異なる処理群へ無作為に振り分けた。次い れた。この注射基準を用いて、マウスのコロニーを作製した。 【0423】 注射から1週後に、LDL-コレステロールレベルに関してマウスを評価し、異なる処理群へ無作為に振り分けた。次いで、尾静脈注射を介して、16F12、21B12又は31H4抗原結合タンパク質の10mg/kg又は30m/kgの何れかの単回大量瞬時注射を動物に投与した。投薬対照として、動物の別個の群にIgG2ABPを投与した。次いで、ABP動物から24及び48時間後に、動物のサ ブグループ(n=6から7)を安楽死させた。何れの投薬量でも、IgG2投与後 に、LDL-コレステロールレベルに対する影響は存在しなかった。31H4及び21B12は何れも、IgG2対照(2つの異なる投薬量で図14A及び14Bに示されている。)と比べて、投与後最大48時間まで(48時間を含む。)著しいLDL-コレステロール低下を示した。16F12は、48時間の時点までに、約40mg/dLのベースラインに復帰するレベルで、中間のLDL-コレステロール 低下応答を示す。このデータは、31H4と21B12の間でヒトPCSK9に対してほぼ等しい結合親和性を示し、PCSK9に対して16F12のより低い親和性を示すインビトロ結合データ(Biacore及びKinexa)と合致している。 【0426】 (実施例27)31H4及び21B12は、PCSK9のProCat領域に結合する本実施例は、様々な抗体がPCSK9のどこに結合するかを決定するための1つの方法を記載する。 【0427】 PCSK9タンパク質のProCat(配列番号3の31から449)又はVドメイン(配列番号3の450から692)を、抗体31H4又は21B12の何れかと組み合わ する。 【0427】 PCSK9タンパク質のProCat(配列番号3の31から449)又はVドメイン(配列番号3の450から692)を、抗体31H4又は21B12の何れかと組み合わせた。複合体の形成に関して、非変性PAGEによって、試料を分析した。図16A及び図16Bから明らかなように、ProCat/31H4及びProCat/21B12試料に関してゲルシフトが存在し、抗体がProCatドメ インに結合したことを示す。 【0428】(実施例28)LDLREGFaドメインは、PCSK9の触媒ドメインに結合する本実施例は、2.9オングストロームの分解能で(以下の実施例に記載されている条件)、LDL REGFaドメイン(293から334)に結合されたPCSK9ProCat(配 列番号3の31から454)の解明された結晶構造を表す。 【0429】EGFaに結合されたPCSK9の構造の図解が、図17に示されている。結晶構造(及び図17中のその図解)は、LDLRのEGFaドメインがPCSK9の触媒ドメインに結合することを明らかにする。さらに、PSCK9とEGFaの相互 作用は、図17に図示されている構造中の残基D374とS153の間にあるPCSK9の表面を横切って起こるようである。 【0430】LDLREGFaドメインとの相互作用界面の特異的コアPCSK9アミノ酸残基が、EGFaドメインの5オングストローム以内に存在するPCSK9残基とし て定義された。コア残基は、以下のとおりである。S153、I154、P155、R194、D238、A239、I369、S372、D374、C375、T377、C378、F379、V380及びS381。 【0431】LDLREGFa る。S153、I154、P155、R194、D238、A239、I369、S372、D374、C375、T377、C378、F379、V380及びS381。 【0431】LDLREGFaドメインとの相互作用界面の境界PCSK9アミノ酸残基は、 EGFaドメインの5オングストロームから8オングストロームに存在するPCSK9残基として定義された。境界残基は、以下のとおりである。W156、N157、L158、E159、H193、E195、H229、R237、G240、K243、D367、I368、G370、A371、S373、S376及びQ382。下線が付された残基は、PCSK9内にほぼ埋没し、又は完全に埋没して いる。 【0432】当業者に理解されるように、本実施例から得られた結果は、PCSK9とEGFaが相互作用することを示している。従って、これらの残基の何れかと相互作用し、又は遮断する抗体は、PCSK9とLDLRのEGFaドメイン(及び/又はLD LR一般)との間の相互作用を阻害する抗体として有用であり得る。幾つかの実施 形態において、PCSK9に結合された場合に、上記残基の何れかと相互作用し若しくは遮断する抗体、又は上記残基の15から8、8、8から5若しくは5オングストロームにある抗体は、LDLRへのPCSK9結合の有用な阻害を与えるものと想定される。 【0438】 (実施例30)21B12は、PCSK9の触媒ドメインに結合し、31H4と異なる結合部位を有し、31H4と同時にPCSK9に結合することができる。 【0439】本実施例は、2.8オングストロームの分解能で測定された(以下の実施例に記載 されている条件)、31H4及び21B12のFab断片に結 にPCSK9に結合することができる。 【0439】本実施例は、2.8オングストロームの分解能で測定された(以下の実施例に記載 されている条件)、31H4及び21B12のFab断片に結合されたPCSK9ProCat(配列番号3の31から449)の結晶構造を表す。図19A及び19Bに図示されているこの結晶構造は、31H4及び21B12がPCSK9上に異なる結合部位を有すること、両抗原結合タンパク質はPCSK9に同時に結合できることを示す。構造は、21B12はPCSK9の触媒ドメイン由来のアミノ酸 残基と相互作用することを示す。この構造において、PCSK9と31H4の間の相互作用は上に観察されたものと類似している。 【0440】21B12との相互作用界面の特異的コアPCSK9アミノ酸残基が、21B12タンパク質の5オングストローム以内に存在するPCSK9残基として定義され た。コア残基は、以下のとおりである。S153、S188、I189、Q190、S191、D192、R194、E197、G198、R199、V200、D224、R237、D238、K243、S373、D374、S376、T377及びF379。 【0443】 当業者によって理解されるように、実施例30から得られる結果は、PCSK9に 対する抗体結合タンパク質のどこがPCSK9に対して相互作用できるか、及びEGFaとの(従って、LDLRとの)相互作用からPCSK9をなお遮断できることを示す。従って、これらのPCSK9残基の何れかと相互作用し、又はこれらの残基の何れかを遮断する抗原結合タンパク質は、PCSK9とEGFa(従って、LDLR)の相互作用を阻害する抗体として有用であり得る。従って、幾つかの実 施形態において と相互作用し、又はこれらの残基の何れかを遮断する抗原結合タンパク質は、PCSK9とEGFa(従って、LDLR)の相互作用を阻害する抗体として有用であり得る。従って、幾つかの実 施形態において、上記残基の何れかと相互作用し、又は上記残基の5オングストローム以内の残基と相互作用する抗体は、LDLRへのPCSK9結合の有用な阻害を提供するものと想定される。同様に、上記残基の何れかを遮断する抗原結合タンパク質(例えば、競合アッセイを介して測定することができる。)は、PCSK9/LDLR相互作用の阻害のためにも有用であり得る。 【0444】(実施例31)EGFa、PCSK9及び抗体の間の相互作用上例から得られた三次複合体(PCSK9/31H4/21B12)の構造をPCSK9/EGFa構造(実施例28に記載されているとおりに決定された。)上に重 ね合わせ、この組み合わせの結果が図20Aに図示されている。この図は、EGFaとのPCSK9相互作用を阻害するように有用に標的化することができるPCSK9上の領域を示す。図は、31H4及び21B12が何れも、LDLRのEGFaドメインの位置と部分的に重複し、PCSK9へのその結合を立体的に妨害することを示している。さらに、構造から明らかなように、21B12は、LDLRE GFaドメインへの結合に特異的に関与しているアミノ酸残基のサブセットと直接相互作用する。 【0445】上述のように、結晶構造の分析によって、PCSK9と対タンパク質(コア及びPCSK9表面上の界面の境界領域)間の相互作用に関与している特異的アミノ酸及 びこれらの対タンパク質がPCSK9と相互作用する空間的必要条件が同定された。 この構造は、PCSK9とLDLR間の相互 界面の境界領域)間の相互作用に関与している特異的アミノ酸及 びこれらの対タンパク質がPCSK9と相互作用する空間的必要条件が同定された。 この構造は、PCSK9とLDLR間の相互作用を阻害する方法を示唆する。第一に、上述のように、LDLRのEGFaドメインの結合部位と共通する残基を共有しているPCSK9への因子の結合は、PCSK9とLDLR間の相互作用を阻害する。第二に、共通の残基の外側に結合する因子は、EGFaドメインに対してN末端又はC末端にあるLDLRのEGFaドメイン又は領域を立体的に妨害して、 PCSK9とLDLR間の相互作用を妨害することができる。 【0446】幾つかの実施形態において、EGFa結合に関与し、且つ上記抗原結合タンパク質が結合する領域に近い残基は、LDLRへのPCSK9の結合を操作するのに特に有用である。例えば、異なる結合対に対してコア領域と境界領域の両領域中の共通 する界面由来のアミノ酸残基が、下表12に列記されている。PCSK9タンパク質内に完全に埋没されているアミノ酸残基に、下線が付されている。 【0447】【表15】 【0448】当業者によって理解されるように、幾つかの実施形態において、抗原結合タンパク 質は、上記残基の少なくとも1つに結合し、及び/又は遮断する。 【0489】(実施例37)エピトープマッピング-ビニング実施例10中の組に加えて、ビニング実験の別の組を実施した。実施例10におけ ると同様に、互いに競合するABPは、標的上の同じ部位に結合するものと考えることができ、一般的な語法では、互いに「ビン」を形成していると言われる。 【0490】Jia他(J. Immunological 競合するABPは、標的上の同じ部位に結合するものと考えることができ、一般的な語法では、互いに「ビン」を形成していると言われる。 【0490】Jia他(J. Immunological Methods, 288 (2004) 91-98)によって記載された多重化ビニング法の改変を使用した。室温 で1時間、暗所にて、0.5μg/mLビオチン化一価マウス抗ヒトIgG捕捉抗体(BD Pharmingen,#555785)100μL中で、ストレプトアビジンによって被覆されたLuminexビーズの各ビーズコードを温置し、次いで、PBSA(1%ウシ血清アルブミン(BSA)を加えたリン酸緩衝化生理的食塩水(PBS))で3回洗浄した。2μg/mL抗PCSK9抗体(CoatingAn tibody)100μLとともに、各ビーズコードを別々に1時間温置した後、PBSAで3回洗浄した。ビーズをプールした後、96ウェルフィルタープレート(Millipore,#MSBVN1250)に分配した。2μg/mLの精製されたPCSK9タンパク質100μLをウェルの半分に添加した。緩衝液を対照として他の半分に添加した。反応を1時間温置した後、洗浄した。2μg/mL抗PCSK 9抗体(DetectionAb)100μLを全てのウェルに添加し、1時間温置し、次いで、洗浄した。別の対象として、無関係のヒトIgG(Jackson,#009-000-003)を走行させた。各ウェルに、PE連結された一価マウス抗ヒトIgG(BD Pharmingen,#555787)20μLを添加し、1時間温置し、次いで、洗浄した。PBSA100μL中にビーズを再懸濁し、最低 100事象/ビーズコードをBioPlex装置(BioRad)上で収集した。 55787)20μLを添加し、1時間温置し、次いで、洗浄した。PBSA100μL中にビーズを再懸濁し、最低 100事象/ビーズコードをBioPlex装置(BioRad)上で収集した。 【0491】PCSK9を含有する対応する反応のシグナルから、PCSK9なしでの抗体対の中央値蛍光強度(MFI)を差し引いた。抗体対が同時に(従って、異なるビンに)結合したと考えられるためには、差し引かれたシグナルは、それ自身と競合する抗体のシグナルより3倍大きく、且つ無関係の抗体と競合する抗体のシグナルよ り3倍大きくなければならなかった。 【0492】上記から得られたデータは、図23Aから23Dに図示されている。ABPは、5つのビンに属した。影が付いた枠は、PCSK9へ同時に結合することができるABPを示している。影が付いていない枠は、結合に関して互いに競合するABPを 示している。結果の要約が、表37.1に示されている。 【0493】【表17】 【0494】 ビン1(ABP21B12と競合する。)及び3(31H4と競合する)は、互いに排他的であり、ビン2はビン1及び3と競合し、並びにビン4はビン1及び3と競合しない。この実施例において、ビン5は、他のビンに適合するABPを記載するために、「キャッチオール」ビンとして表される。従って、ビンのそれぞれの中の上記ABPは、PCSK9上のエピトープ位置の異なる種類の代表であり、それらの 幾つかは互いに重複する。 【0495】当業者によって理解されるように、基準ABPがプローブABPの結合を妨げるのであれば、抗体は同じビン中にあると称される。ABPが使用される順序が重要であり得る。ABPAが基準ABPとして使用され、AB 業者によって理解されるように、基準ABPがプローブABPの結合を妨げるのであれば、抗体は同じビン中にあると称される。ABPが使用される順序が重要であり得る。ABPAが基準ABPとして使用され、ABPBの結合を遮断すれば、 逆は必ずしも真ではない。基準ABPとして使用されるABPBは必ずしもABPAを遮断しない。ここで役割を果たしている多数の因子が存在する。ABPの結合は、標的中の立体構造の変化を引き起こすことができ、これは、第二のABPの結合を妨げ、又は互いに重複するが、互いを完全に封鎖しないエピトープは、結合を可能とするのに十分な標的との高親和性相互作用を第二のABPがなお有すること を可能にし得る。ずっと高い親和性を有するABPは、遮断するABPを押し出すより大きな能力を有し得る。一般に、何れの順序においても競合が観察されれば、ABPは互いにビンであると称され、両ABPが互いに遮断することができれば、エピトープはより完全に重複する可能性がある。 【0521】 表39.5は、様々な抗体に対するヒットの全ての要約を示している。 【0522】【表22】 【0523】これらの残基が関連するエピトープの一部又は全部をどのようにして形成するかをさらに調べるために、上記位置を様々な結晶構造モデル上にマッピングし、結果が図27Aから27Eに示されている。・・・ 【0526】図27Dは、31H4及び21B12抗体とのPCSK9の結晶構造上にマッピングされた、12H11エピトープヒットを図示する。構造は、PCSK9残基を以下のように同定する。薄い灰色は、変異を受けていない残基を示し(構造上に明示されている残基を除く。)、より濃い灰色は変異を受けた残基を示す(それらの一 部は 示する。構造は、PCSK9残基を以下のように同定する。薄い灰色は、変異を受けていない残基を示し(構造上に明示されている残基を除く。)、より濃い灰色は変異を受けた残基を示す(それらの一 部は発現できなかった。)。(図の上に示されている影に関わらず)明示されている残基を検査し、EC50及び/又はBmaxの有意な変化を得た。12H11は、上に記載されているビニングアッセイにおいて、21B12及び31H4と競合する。 (別紙2)※ 以下の甲1の該当箇所(ページ数・行数は原文による)を摘記するときは、例えば、「甲1-1」と略記する。 1 第413頁要約 「 プロタンパク質コンベルターゼサブチリシンケキシンタイプ9(PCSK9)は、定義づけされてはいない機序を通じて、表面低密度リポタンパク質(LDL)受容体の数を低下させる。・・・バイオセンサーの研究は、PCSK9 が、LDL 受容体の細胞外ドメインと、血漿の中性pH ではKd=170nM で、エンドソームの酸性pH では1nM 程度の低さのKd で結合することを示す。D374Y 機能獲得型変異体は、高コ レストロール血症及び心血管疾患の早期発症と結び付けられ、中性pH において野生型PCSK9 よりも25倍強く受容体に結合し、酸性pH においてもっぱら高親和性複合体であり続ける。PCSK9 は、直接的結合を必要とするが、必ずしも受容体タンパク質分解を必要としない機序によってLDL 受容体を減少させ得る。」 2 第413頁左欄1~21行 親和性複合体であり続ける。PCSK9 は、直接的結合を必要とするが、必ずしも受容体タンパク質分解を必要としない機序によってLDL 受容体を減少させ得る。」 2 第413頁左欄1~21行 「 家族性高コレステロール血症は、肝臓コレステロール除去における欠陥、血漿LDL コレステロール(LDL-C)の上昇したレベル、及び、心血管疾患の早期発症を引き起こす変異の結果を生じる。・・・近年、家族性高コレステロール血症に関連する第3の遺伝子座が見出された:それは、セリンプロテアーゼであるPCSK9をコードする遺伝子であった。そのタンパク質は、肝臓において主に発現され、未 詳の機序によって細胞表面LDLR の数を低下させる。PCSK9 の機能獲得型変異は、複数の個体群における臨床試験を通じて特徴づけられ、LDLR の数のより激しい減少とそれに伴う高コレステロール血症を引き起こす。機能喪失型変異は、増大した受容体の数を導き、循環血中からのLDL-C の除去が増え、心血管疾患のリスクが減少する。このように、PCSK9 は、脂質異常症の治療的な介入のための魅力的な新 しいターゲットとみなされている。そして、この魅力は次の証拠によってさらに高 められている。すなわち、PCSK9 によってもたらされる脂質低下効果は、コレステロールの生合成阻害薬として広く用いられているスタチンによってもたらされる脂質低下効果と相乗効果がある。このことは、PCSK9 の阻害剤は、それら既存の治療を向上させる利点があることを示唆する。」 3 第413頁左欄22~25行 「 PCSK9(又はNARC-1、文献11)は、プロタンパク質コンベルターゼファミリーの9番目の既知のメンバーである。コンベルターゼチモーゲンは常に、N-末プロドメイン 左欄22~25行 「 PCSK9(又はNARC-1、文献11)は、プロタンパク質コンベルターゼファミリーの9番目の既知のメンバーである。コンベルターゼチモーゲンは常に、N-末プロドメイン、サブシチリン様触媒ドメイン及びC-末ドメインを有する。」 4 416頁図4「 図4 C-末ドメインの構造及び配向。・・・(d)触媒ドメインとともに重ね合 わせられたPCSK9 及びフリンのステレオビュー。グレイ、フリン;赤、PCSK9 P’ペプチド;黄色、PCSK9 の触媒ドメイン(449 で終わる);シアン、PCSK9 C-末ドメイン(453 から始まる);マゼンタ、空間充填、セリン386.いくつかの他のPCSK9 残基が表示されている。」 5 417頁左欄1~20行 「 LDLR のPCSK9 結合の生物物理学的分析分泌されたPCSK9 は、ヒト肝細胞表面と相互作用し、LDLR とともに免疫沈降され得る。非変性条件下でSDS-PAGE に供したLDLR の組換え細胞外ドメイ ン(ECD)のリガンドブロッティングはまた、LDLRECD がPCSK9 に直接結合することを示した。・・・最も重要なことに、これらの研究は、エンドソームのpHにおいて、PCSK9 がLDLR に(170倍もの)より大きく増大した親和性で結合することを示す。」 6 417頁左欄28~41行 「 機能獲得型変異ヒトPCSK9 における機能獲得型変異は、家族性高コレステロール血症と関連する。特に、D374Y 変異体は、LDLR 数の減少において野生型PCSK9 よりも約10倍活性が高い。我々は、D374Y 及び2つの他の機能獲得型変異体を過剰発現させ、精製し、SPR によってLDLRECD へのそれらの結合を試験 LR 数の減少において野生型PCSK9 よりも約10倍活性が高い。我々は、D374Y 及び2つの他の機能獲得型変異体を過剰発現させ、精製し、SPR によってLDLRECD へのそれらの結合を試験した(表1)。pH 7.5においてD374Y はLDLR の細胞外ドメイン(ECD)に対して、野生型PCSK9よりも25倍大きい親和性(Kd=6nM)を示した。さらに、pH5.4では、D374Yは、1.6nM のKd を有する単一の結合様式を有した(表1)。野生型PCSK9 のうちの50%が酸性pH において42nM のKd を有したことから、結合のこの部分は、D374Y 変異体の場合に25倍強められる。D374Y 変異体によるLDLR を低下 させる効果の増大は、そのLDLRECD への結合が強化されることにより生じるものであることを、この結果は強く示唆する。」 7 417頁表1 「表1 固定化されたLDLRECD に結合するPCSK9 及び変異体の親和性 それぞれの値は、3~4回の決定の平均を表し、標準偏差とともに示す。a2つ の値は、データが、モデルを結合部位又は立体構造の2つの集団とフィットすることを示す;各集団の割合は、括弧の中に示される。」 8 418頁左欄1~17行「 PCSK9 によるLDLR 低下LDLR の細胞外ドメインは、7つのLDLR タイプA モジュール(LA1~LA7)、 続いて、2個の上皮増殖因子(EGF)反復、YWTD β-プロペラドメイン、別のEGF反復及び高度にグリコシル化された58残基のセグメントを含む。中性pH では、LDL 粒子は、LA3~LA5 モジュールに主に結合する。LA モジュールはしばしば、3つの保存されたCa2+結合酸性残 反復及び高度にグリコシル化された58残基のセグメントを含む。中性pH では、LDL 粒子は、LA3~LA5 モジュールに主に結合する。LA モジュールはしばしば、3つの保存されたCa2+結合酸性残基をタンパク質-タンパク質相互作用のために使用する。細胞表面のLDLR へのLDL の結合は、LDL と結合した受容体のエンドソ ーム区画内への細胞内取り込みへと続き、そこで、酸性pH が立体構造変化を促し、それがLDLR のLA3-LA5 モジュールとβ-プロドメインの間の自己会合を導く。 この再編成は、結合したLDL の放出、及び、リガンドが結合していないLDLR の細胞表面へのリサイクリングに助力し、そこで、エンドソームにおいて遊離されたLDL は、リソームにおいて分解される。通常は、LDLR は、細胞内取り込み及びリ サイクリングの迅速なプロセスを受けるが、エンドソーム中で結合したリガンドを放出しないいくつかのLDLR 変異体は、細胞表面へとリサイクルされない。」 9 418頁左欄18~28行「 リガンド-ブロッティング実験は、PCSK9 が、LDLR の細胞外ドメインに直接結合することを示している。・・・従って、D374Y の増大したLDLR 低減効果は、 細胞表面LDLR への強化された結合により実際に生じ得る。」 10 418頁左欄29~右欄6行「 PCSK9 は、LDLR とともにエンドソームに移動し、このことは、LDLR と結合したPCSK9 が、LDL のように、受容体をこの酸性区画へとともに移動することを示唆する;しかしながら、LDL とLDLR との結合が弱まるのとは対照的に、 PCSK9 とLDLR との親和性はエンドソームにおいて増大し得る。PCSK9 を放出 しそこなうこと 唆する;しかしながら、LDL とLDLR との結合が弱まるのとは対照的に、 PCSK9 とLDLR との親和性はエンドソームにおいて増大し得る。PCSK9 を放出 しそこなうことが、受容体がリサイクルすることを妨げ、LDLR の細胞表面の数を減少させ得る。D374Y 変異体は、LDLR に、PCSK9 の野生型よりも強くさえ結合するのであり、このことは、LDLR の減少における増大した活性を説明し得る。」 11 418頁右欄10~17行「 PCSK9が未同定のパートナーと相互作用して、プロドメインの放出を促し、 LDLR 低下のためのプロテアーゼとしてPCSK9 を活性化するかどうかは未解決の問題である。組換え及び血漿PCSK9 におけるプロドメインの保持は、プロドメインS127R 変異体の増強したLDLR 結合を併せると、プロドメインがLDLR 結合に貢献することを示唆する。プロドメインと触媒ドメインでは、活性に不十分であり、これは、全3個のドメインが、LDLR に対する広範な結合表面を形成することに関 与することを示唆する。」 12 418右欄23~32行「 遺伝的証拠は、PCSK9 が心血管疾患の治療のための魅力的な標的であることを示唆する。理論の上では、PCSK9 の自己プロセシング及び分泌を阻害し、PCSK9の機能喪失型変異と同様の効果を奏する細胞透過性のプロテアーゼ阻害剤によって PCSK9 を標的とすることができるのかもしれない。血漿中でのLDLR との結合、及び、受容体依存性の細胞内への取り込みが、ほぼPCSK9 の機能の速度決定ステップであるため、血漿中のPCSK9 に結合し、そのLDLR との結合を阻害する抗体や低分子もPCSK9 の機能の効果的な阻害剤となり得る。ここで報 の取り込みが、ほぼPCSK9 の機能の速度決定ステップであるため、血漿中のPCSK9 に結合し、そのLDLR との結合を阻害する抗体や低分子もPCSK9 の機能の効果的な阻害剤となり得る。ここで報告した我々の構造、特にPCSK9-LDLR 複合体の構造は、最終的には、新たな治療のデザインのた めに有用となるであろう。」 (別紙3) 1 「3. 私は、hPCSK9に特異的に結合する様々な抗体が2つの参照抗体(それぞれ、21B12抗体および31H4抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)領域を含む)と競合する能力を試験するように、リジェネロンの代理人から求められた。」(1頁28~32行) 2 「4.1 リジェネロン抗体我々は、リジェネロンの【G】(【G】)博士から、以下の名称によって命名された63個の異なるモノクローナル抗体を受領した・・・4.2 アムジェン抗体私は、InSCREENeXの【H】(【H】)博士から、9C9、3B6、 27B2、21B12、および31H4と命名された5つのモノクローナル抗体を受領した。・・・」(2頁1行~3頁19行) 3 「5.1 PCSK9へのMAb(訳注:モノクローナル抗体)の結合・・・リジェネロンおよびアムジェン由来の抗体をPBSで希釈して384ウェル ELISAプレート上に室温にて1時間コーティングした(グライナー(Greiner#781061、>5μg/ml、30μl/ウェル)。プレート上のコーティングされていない(抗体なしの)ウェルをネガティブコントロールとして用いた。H2O(0.05%のTween20含有)でプレートを洗浄することによってコーティングしていない抗体を除去した後に、2%のBS グされていない(抗体なしの)ウェルをネガティブコントロールとして用いた。H2O(0.05%のTween20含有)でプレートを洗浄することによってコーティングしていない抗体を除去した後に、2%のBSA溶 液(0.05%のTween20含有)を用いてELISAプレートのブロッキングを室温で30分間行なった(80μl/ウェル)。ブロッキング溶液が除去された時点で、PCSK9(InSCREENeXから受領)を、2連で(induplicate)それぞれの固定化抗体に加えた(30μl/ウェル、0.05%のTween20を含む2%のBSA溶液中、5μg/ml)。ネガ ティブコントロールとして、2%のBSA溶液(0.05%のTween20 含有)を2連で(induplicate)それぞれの固定化抗体に加えた。 溶液を室温にて45分間インキュベートした。H2O(0.05%のTween20含有)を用いたプレートの洗浄後、捕捉された抗原(Myc-タグ付き-PCSK9)を、HRPが結合した抗-Myc抗体(2%のBSA溶液(0. 05%のTween20含有)中に1:10、0000希釈、30μl/ウェ ル)を用いて室温にて1.5時間検出した。さらなる洗浄ステップの後に、TMB(30μl/ウェル)を添加して、30μlのH2SO4(0.5M)でHRP反応を止める前に室温にて20分間インキュベートした。吸光度を450nm(基準波長620nm)で測定した。 吸光度の値に基づいて、同一の測定値の算術平均値および標準偏差を計算し た。 この実験結果を、資料B1として添付した表の2列目に示す。PCSK9あり/なしの結合シグナルを比較した場合に<10のシグナル・ノイズ比が検出された場合は、当該MAb(訳注:モノクローナル抗体)は この実験結果を、資料B1として添付した表の2列目に示す。PCSK9あり/なしの結合シグナルを比較した場合に<10のシグナル・ノイズ比が検出された場合は、当該MAb(訳注:モノクローナル抗体)は、「可溶性PCSK9に結合しない」と考えられ、赤で強調した。PCSK9あり/なしの結合シ グナルを比較した場合に>10のシグナル・ノイズ比が検出された場合は、当該MAbは「可溶性PCSK9に結合する」と考えられ、陰影で強調した。」(4頁8行~5頁10行) 4 「5.2 PCSK9への結合に関する31H4または21B12との競合・・・ リジェネロンおよびアムジェン由来の抗体をPBSで希釈して、384ウェルELISAプレート上に室温にて1時間コーティングした(グライナー(Greiner)#781061、>5μg/ml、30μl/ウェル)。プレート上のコーティングされていない(抗体なしの)ウェルをネガティブコントロールとして用いた。H2O(0.05%のTween20含有)でプレートを洗 浄することによってコーティングしていない抗体を除去した後に、2%のBS A溶液(0.05%のTween20含有)を用いてELISAプレートのブロッキングを室温にて30分間行なった(80μl/ウェル)。ブロッキング溶液が除去された時点で、PCSK9(InSCREENeXから受領)を、2連で(induplicate)それぞれの固定化抗体に加えた(30μl/ウェル、0.05%のTween20を含む2%のBSA溶液中、5μg/ ml)。ネガティブコントロールとして、2%のBSA溶液(0.05%のTween20含有)を2連で(induplicate)それぞれの固定化抗体に添加した。溶液を室温にて45分間インキュ / ml)。ネガティブコントロールとして、2%のBSA溶液(0.05%のTween20含有)を2連で(induplicate)それぞれの固定化抗体に添加した。溶液を室温にて45分間インキュベートした。H2O(0.05%のTween20含有)を用いたプレートの洗浄後、捕捉された抗原を、ビオチン化21B12またはビオチン化31H4抗体(30μl/ウェル、0. 05%のTween20含む2%のBSA溶液中、1.25μg/ml)の添加により、室温にて45分間検出した。さらなる洗浄ステップの後に、ストレプトアビジン-HRP試薬を添加して(30μl/ウェル、0.05%のTween20含む2%のBSA溶液中に1:5000希釈)、室温にて45分間インキュベートした。プレートを再度洗浄して、TMBを添加して(30μl/ ウェル)、30μlのH2SO4(0.5M)でHRP反応を止める前に室温にて20分間インキュベートした。吸光度を450nm(基準波長620nm)で測定した。 吸光度の値に基づいて同一の測定値の算術平均値および標準偏差を計算した。 21B12抗体の固定化抗体の両立性を、それぞれの個々の結合シグナルを2 1B12抗体と固定化31H4抗体の結合シグナル(100%)に標準化することによって定量化した。31H4抗体と固定化抗体の両立性を、それぞれの個々の結合シグナルを31H4抗体と固定化21B12抗体の結合シグナル(100%)に標準化することによって定量化した。 この実験結果を、資料B1として添付した表の左から3列目(21B12抗 体について)および左から4列目(31H4抗体について)に示す。 私は、本件特許1の請求項1および本件特許2の請求項1が、他の抗体が参照抗体の一方と“競合す 21B12抗 体について)および左から4列目(31H4抗体について)に示す。 私は、本件特許1の請求項1および本件特許2の請求項1が、他の抗体が参照抗体の一方と“競合する抗体”であると考えられるために達成すべき、クレームされた抗体と参照抗体の結合の阻害、すなわち競合、に関する特定の値を示していないことに、注意が必要であると考える。上述したとおり、31H4抗体と固定化抗体の両立性は、それぞれの個々の結合シグナルを、31H4抗 体と固定化21B12抗体の結合シグナル(100%)に標準化することによって定量化された。しかしながら、添付した資料B1から明らかなように、PCSK9抗体の代わりにBSAが固定化された場合、残っている蛍光(バックグランドコントロール)は、それぞれ3%および4%のシグナルの21B12結合両立性または31H4結合両立性となった。したがって、シグナルが約3% に減少した場合は完全な競合が達成される。そのような根拠から、私は、21B12または31H4のいずれかと<50%の結合両立性を有するMAb(訳注:モノクローナル抗体)を競合抗体とすることが合理的であると考えた。資料B1として添付した表の左から3列目(21B12抗体について)および左から4列目(31H4について)において、競合抗体を陰影によって強調する。」 (5頁11行~7頁2行)。 5 「5.3 PCSK9へのLDLRの結合の中和・・・LDL-RをPBSで希釈して、384ウェルELISAプレート上に4℃にて16時間コーティングした(グライナー(Greiner)#781061、 1μg/ml、30μl/ウェル)。プレート上のコーティングされなかった(抗原なしの)ウェルをネガティブコントロールとして 6時間コーティングした(グライナー(Greiner)#781061、 1μg/ml、30μl/ウェル)。プレート上のコーティングされなかった(抗原なしの)ウェルをネガティブコントロールとして用いた。コーティングしなかった抗原の除去後、ELISAプレートのブロッキングを、2%のBSA溶液(0.05%のTween20含有)を用いて室温にて2時間行なった(80μl/ウェル)。それから、プレートを2%のBSA溶液(0.05%の Tween20含有)で洗浄した。 その間に、リジェネロンおよびアムジェン抗体の希釈系列を調製した(2%のBSA溶液(0.05%のTween20含有)中、20μg/ml、2μg/ml、0.2μg/ml、および0μg/ml)。50μlのそれぞれの抗体希釈を、96ウェルプレートにおいて、50μlのPCSK9(リジェネロン由来)に添加して(2%のBSA溶液(0.05%のTween20含有) 中、1μg/ml)、室温にて1時間、プレインキュベートした。プレインキュベーション後、それぞれの抗体:抗原混合物を、洗浄したELISAプレート(30μl/ウェル)へ移し、室温にて1時間インキュベートした。H2O(0. 05%のTween20含有)を用いたプレートの洗浄後、抗-Myc抗体(30μl/受ける、2%のBSA溶液(0.05%のTween20含有)中に 1:1000希釈)を用いて、PCSK9を室温にて1時間検出した。プレートを再洗浄して、TMBを添加して(30μl/ウェル)、30μlのH2SO4(0.5M)でHRP反応を止める前に室温にて20分間インキュベートした。 吸光度を450nm(基準波長620nm)で測定した。 抗体の不存在下でのPCSK9結合シグナルを100%に標準化した。抗体 5M)でHRP反応を止める前に室温にて20分間インキュベートした。 吸光度を450nm(基準波長620nm)で測定した。 抗体の不存在下でのPCSK9結合シグナルを100%に標準化した。抗体 の存在下での残っているPCSK9結合シグナルをそれに従って計算した。最も高い抗体濃度でのPCSK9結合活性が≦60%ならば、抗体は中和すると考えられた。 これらの実験において観察される「LDL-Rに対するPCSK9活性」の数値は、10μg/mlのMab、1μg/mlのMab、0.1μg/ml のMabおよび0μg/mlのMabに関して、それぞれ、資料B1の表の6~9列目に示される。私は、本件特許1の請求項1および本件特許2の請求項1には、PCSK9へのLDLRの結合の減少に関して観測される必要のある特定の値が示されていないことに注意するべきであると考える。しかしながら、結果を分類する目的のために、中和または非中和として抗体を定義するための 閾値を選択する必要があった。私は、10μg/mlの濃度でLDL-Rへの PCSK9の結合を少なくとも40%減少させるMAb(すなわち、LDLRへ結合している残りのPCSK9が60%よりの高いMAb)を「中和」と呼ぶことが合理的であると考えた。同様に、10μg/mlのMAbで、LDLRへ結合する残りのPCSK9が最大レベルの60%より高い場合(すなわち、PCSK9-LDLR結合の減少が40%未満である)、MAbを非中和と呼 ぶこととした。資料B1の表の左から5列目のカラムにおいて、中和MAbを陰影で強調する。」(7頁3行から8頁20行) (資料B1) て、中和MAbを陰影で強調する。 (資料B1)

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