【DRY-RUN】主 文 本件上告は之を棄却する。 理 由 本件上告趣旨は末尾添付辯護人上村進名義上告趣意書と題する書面に記載された 通りである。之に對する當裁判所の判断を開陳
主 文 本件上告は之を棄却する。 理 由 本件上告趣旨は末尾添付辯護人上村進名義上告趣意書と題する書面に記載された 通りである。之に對する當裁判所の判断を開陳する。 <要旨第一>論旨第一點に對する判断。米穀の生産者にして食糧管理法第三條第一 項によりその生産した米穀を所定の時期</要旨第一>に於て政府に賣渡すべき義務あ る者(所謂供出義務者)その賣渡を怠つた行爲は刑法第六十五條第一項の所謂犯人 の身分により構成すべき犯罪行爲に該當する。従つて右所謂供出義務者に非ざるも のが義務者と共謀して所定の時期に所定の米穀を政府に賣渡さなかつたときは共同 正犯を以て論すべきである。原判決の認定したところによれば被告人は米穀生産者 Aの長男であつて被告人方では昭和二十一年度政府に賣渡すべき同判示米穀数量の 決定所謂割當を受け之を新潟縣知事の指定した同判示日時迄に政府に賣渡し得たに 拘らずその供出義務者である父Aと共謀の上その内三十二石一斗二升を賣渡したに 止り残餘を右期日迄に政府に賣渡さなかつたのであるから被告人の右所爲は父Aの 罪の共同正犯を以て問擬するを相當とする。原判決が右被告人の所爲に對し食糧管 理法第三十二條第三條第一項同施行規則第一條第一條の三昭和二十一年十二月二十 七日新潟縣告示第八百八十一號昭和二十二年三月十一日同縣告示第百六十七號刑法 第六十條第六十五條を適用したのは相當である。原判決に所論の違法はなく論旨は 理由がない。 <要旨第二>論旨第二點に對する判断。食糧管理法、同施行令及同施行規則を通覧 するに米穀の生産者が政府に賣渡すべ</要旨第二>き米穀の数量の決定即ち所謂割當 を受けた時は地方長官の指定する時期に之を政府に賣渡すべき義務を有するのであ つて所謂保有米の制度は右法令の言及しないものであることを知り得る。又右保有 すべ</要旨第二>き米穀の数量の決定即ち所謂割當 を受けた時は地方長官の指定する時期に之を政府に賣渡すべき義務を有するのであ つて所謂保有米の制度は右法令の言及しないものであることを知り得る。又右保有 米の制度はその他の法律に根據を有するものでもない。米穀等主要食糧の生産者及 その家族の食糧を確保しその生活を擁護するの要あること勿論であつて之なければ 米穀等の生産を阻害し延いては食糧管理法の目的である國民食糧の確保及國民経済 の安定を期し得ざるに到るは必至である。されば所謂保有米の制度を設け生産物の 内一定数量即ち保有量をその生産者及その家族のために確保し實収高から之を差引 き残餘を政府に賣渡さしむるのが通例であるが右は結局米穀等の所謂割當を適切な 基礎の上に決定せんとする行政的措置である。故に政府に賣渡ずべき米穀の割當が あつた場合縦令實質上は實収高から所謂保有量を控除するとしても右保有量なるも のは當該生産者が法律上の權利として主張し得るものではなく斯く割當てられた米 穀は所謂供出義務者に於て之を政府に賣渡す義務を有すると解すべきである。實収 高及保有量の判決が實際と齟齬する結果割當敷量を賣渡すことが當該供出義務者に 困離な場合無きに非ざるべきも右義務者は一應右割當られた数量の米穀を政府に賣 渡すべきものである。實収高の見積が過重である旨又は保有量の査定が過少である 旨を主張して右賣渡を拒み得ざるものと解するを相當とする。眞實斯る實際に即さ ない割當がなされたときは右供出義務者は別途の方法例えば所謂割當變更の申出還 元米制度の利用等によつてその食糧の確保を計るべきである。又食糧管理法第三條 第一項によれば米穀の生産者はその生産した米穀を政府以外のものに賣渡すことを 禁ぜられてるるが政府以外のものに賣渡すことゝ所謂割當量を政府に賣渡さないこ とは別個の問題である所謂供出義 食糧管理法第三條 第一項によれば米穀の生産者はその生産した米穀を政府以外のものに賣渡すことを 禁ぜられてるるが政府以外のものに賣渡すことゝ所謂割當量を政府に賣渡さないこ とは別個の問題である所謂供出義務者が割當量の米穀を所定の時期に政府に賣渡さ ない以上政府以外のものに之を賣渡した事實の有無を問はず右條項に背反すと言う べきである。原判決が本件供出義務者Aに原判示米殻の割當量全部を政府に賣渡す 義務ありと認め同人と共謀して同判示時期迄に右割當量の一部を政府に賣渡さなか つた被告人の所爲に對し食糧管理法第三条第一項違反を以て問擬したのは相當であ る。原判決には所論の違法はなく論旨は理由がない。 論旨第三鮎に對する判断。論旨第二點に對する判断に於て説示した通り米穀の生 崖者が政府に賣渡すべき米穀の割當を受けたときは地方長官の指定する時期に之を 政府に賣渡すべき義務を有するのであるから右生産者は右割當数量の米穀を所定の 時期に政府に賣渡さない不作爲によつて食糧管理法第三條第一項違反となる。政府 以外のものに賣渡した事實の有無を問はぬことも又論旨第二點に對する判断に於て 示した通りであるから本件に於て政府以外のものに賣渡した事實がないとの理由に よつて右條項違反を免れることは出來ない。又米穀の生産者が割當てられた米穀を 政府に賣渡さない場合食糧緊急措置令によつて之を収用し得るのであるが之と前示 食糧管理法第三條第一項違反とは別個の問題であつて斯る収用の方法あることによ つて右條項違反の成立に影響あるべき理はない。被告人が所謂供出義務者Aと共謀 して原判示割當量の米穀を所定の時期に政府に賣渡さなかつた事實に對し食糧管理 法第三條第一項違反を以て問擬した原判決は相當であつて所論の違法はない。論旨 は理由がない。 論旨第四點に對する判断。政府に賣渡すべき米穀等の数量の割當られた場合所 に賣渡さなかつた事實に對し食糧管理 法第三條第一項違反を以て問擬した原判決は相當であつて所論の違法はない。論旨 は理由がない。 論旨第四點に對する判断。政府に賣渡すべき米穀等の数量の割當られた場合所謂 供出義務者はその割當に異議あると否とを問はず一應所定の期日に之を政府に賣渡 すべきものであることは論旨第二點に對する判断に於て説示した通りである。原判 決は被告人が斯る供出義務者たるAと共謀の上原判示割當數量の米穀を所定の期日 迄に政府に賣渡さなかつた事實を認定したのであつて刑法第六十五條第一項第六十 條によつてAの身分によつて構成すべき犯罪行爲に加功したものであるから食糧管 理法第三十七條に所謂法人の代表者又は法人若は人の代理人使用人その他の従業者 がその法人又は人の業務に關し違反行爲をした場合とは全く異るのである。同條を 論據として本件被告人の所爲を辯護するのは適切ではない。原判示事實に對し、前 示食糧管理法第三條第一項違反を以て問擬した原判決に所論の違法はなく論旨は理 由がない。 論旨第五點に對する判断。食糧管理法は現下の食糧事情に鑑み國民食糧の確保及 國民經済の安定を圖るため食糧を管理しその需給及價格の調整並配給の統制を行う ことを目的とする。本法の如きものが存しなければ國民の大多数は食糧を確保する を得ずしてその生存を危殆に陥るゝは勿論經済の復興を阻害し國家の存立さえ危く するに到る虞がある。本法は國民の基本的人權の享有を妨げず又その最低限度の生 活を營む權利を害せざるのみならず却つて國民の基本的人權を尊重しその最低限度 の生活を保障しようとする法律であつて憲法の條項に反することはない。従つて本 法の條項に背反する者あれば之に臨むに刑罰を以てする場合のあることは當然であ り斯る違反者が處罰さるゝの一事を以て本法が憲法第十一條又は第二十五條に反す るといふは正常で 項に反することはない。従つて本 法の條項に背反する者あれば之に臨むに刑罰を以てする場合のあることは當然であ り斯る違反者が處罰さるゝの一事を以て本法が憲法第十一條又は第二十五條に反す るといふは正常ではない。素より本法の實施に際しては食糧生産者の利益と相反す る處がないでもないから政府はその實施につき格段の注意を拂ひ特に論旨第二點に 對する判断に於て説示した如く實収高の測定と農家保有米食糧の確保に萬全を期し 生産者と消費者との利害の調節に努むべきであつて些かも生産者及その家族の生活 を脅し生活力に悪影響を與えるが如きことを愼まねばならないがこのことは飽く迄 本法實施上の行政部門の問題であつて本法自身のそれではない。本法の實施に當り 偶々生産者及その家族の利害に牴触する如き處置ありたりとしてもそれは本法實施 上生ずる行政の過誤であつてその過誤あるが故に本法自體を目して憲法に反する法 律なりとすることはできない。所謂保有米の性質については論旨第二點に對する判 断に於て説示した如く法律上の權利ではなく、本法實施上の行政的措置であり政府 に賣渡すべき米穀等の数量の決定に當り参考資料となるものであるから被告人獨自 の見解を以て保有米の査定過少なることを主張するを許されぬ筋合である。原剣決 が原判示事實に對し食糧管理法第三條第一項を適用したのは相當である。原判決に は所論の違法はなく又食糧管理法は所論憲法の條規に反することはない。論旨は理 由がない。 仍て刑事訴訟法第四百四十六條によつて主文の通り判決する。 (裁判長判事 佐伯顯二 判事 久禮田益喜 判事 八木田政雄)
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