- 1 - 主文 原決定を破棄し、原々決定を取り消す。 本件を名古屋地方裁判所に差し戻す。 理由 抗告代理人土屋勝裕、同髙橋佳久の抗告理由について 1 本件は、スジャータめいらく株式会社(以下「スジャータ社」という。)の株主である抗告人が、利害関係参加人を吸収合併存続株式会社、スジャータ社を吸収合併消滅株式会社とする吸収合併(以下「本件吸収合併」という。)についての会社法785条2項所定の株主(以下「反対株主」という。)であるとして、スジャータ社に対し、抗告人の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求したが、その価格の決定につき協議が調わないため、同法786条2項に基づき、価格の決定の申立て(以下「本件申立て」という。)をした事案である。 2 記録によれば、本件の経緯は次のとおりである。 スジャータ社は、令和2年10月15日、利害関係参加人との間で、効力発生日を同年12月1日として本件吸収合併をする旨の吸収合併契約(以下「本件合併契約」という。)を締結した。 スジャータ社は、「第1号議案名古屋製酪株式会社との吸収合併契約承認の件」(以下「本件議案」という。)を決議事項とする臨時株主総会(以下「本件総会」という。)を令和2年11月13日に開催することとし、スジャータ社の代表取締役(以下「本件代表取締役」という。)は、同月9日、スジャータ社の株式7950株を有する抗告人に対し、本件総会の招集通知を発するとともに、本件総会に抗告人自身が出席しない場合には、上記招集通知に同封された委任状用紙(以令和4年(許)第11号株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件令和5年10月26日第一小法廷決定 出席しない場合には、上記招集通知に同封された委任状用紙(以令和4年(許)第11号株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件令和5年10月26日第一小法廷決定- 2 -下「本件委任状用紙」という。)に本件議案に対する賛否を記載するなどして委任状を作成し、これを返送するよう議決権の代理行使を勧誘した。 本件委任状用紙には、冒頭に、作成日付、議決権の個数並びに株主の住所及び氏名を記載する欄が設けられていたほか、宛先として「スジャータめいらく株式会社御中」と印字されており、これに続いて、「委任状」という表題の下に「私は、を代理人と定め下記の権限を委任いたします。」、「令和2年11月13日開催の貴社臨時株主総会及びその継続会または延会に出席して下記の議案につき私の指示(〇印で表示)にしたがって、議決権を行使すること。ただし、議案に対して賛否の表示のない場合及び原案に対して修正案または動議が提出された場合は、いずれも白紙委任いたします。」とそれぞれ印字されており、更にその下に「賛」又は「否」のいずれかに〇印を付けて本件議案に対する賛否を記載する欄(以下「本件賛否欄」という。)が設けられていた。 抗告人は、令和2年11月10日、上記の議決権の代理行使の勧誘に応じ、本件委任状用紙を用いて、上記の点線の部分に本件代表取締役の氏名を記載するとともに、本件賛否欄の「否」に〇印を付け、その欄外に「合併契約の内容や主旨が不明の上、数日前の通知であり賛否表明ができません(合併契約書を表示して下さい)」との付記(以下「本件付記」という。)をするなどして原々決定別紙のとおりの委任状(以下「本件委任状」という。)を作成し、これをスジャータ社に対して返送した。 令和2年11月13日、本件総会におい との付記(以下「本件付記」という。)をするなどして原々決定別紙のとおりの委任状(以下「本件委任状」という。)を作成し、これをスジャータ社に対して返送した。 令和2年11月13日、本件総会において本件合併契約を承認する旨の決議がされたところ、上記決議が行われるに当たり、本件代表取締役は抗告人の代理人として本件議案に反対する旨の議決権の行使をした。 抗告人は、令和2年11月30日までに、スジャータ社に対し、抗告人の有する全株式を公正な価格で買い取ることを請求した。 令和2年12月1日、本件吸収合併の効力が発生し、スジャータ社は利害関係参加人に吸収合併された。 - 3 -抗告人は、令和3年1月20日、本件申立てをした。 抗告人は、抗告人がスジャータ社に対して本件委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするための株主総会に先立って消滅株式会社等に対してされる当該吸収合併等に反対する旨の通知(以下「反対通知」という。)に当たるから、抗告人は反対株主であり、本件申立ては適法であると主張している。 3 原審は、要旨次のとおり判断し、抗告人は反対株主ではないから、本件申立ては不適法であるとして、これを却下すべきものとした。 本件委任状は、代理人となるべき者に対して本件総会における議決権の代理行使を委任する旨の意思表示をした書面であり、本件賛否欄の「否」に〇印を付けた部分は、上記の者に対する指示であってスジャータ社に向けられたものであるということはできない。また、本件委任状の宛先がスジャータ社とされているのは、代理権を証明する書面が株式会社に提出されなければならないとされていること(会社法310条1項)からすると不自然ではない。さらに、本件付記があることからすると、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思が 権を証明する書面が株式会社に提出されなければならないとされていること(会社法310条1項)からすると不自然ではない。さらに、本件付記があることからすると、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思が本件委任状に表明されているということもできない。したがって、抗告人がスジャータ社に対して本件委任状を送付したことは、反対通知に当たらない。 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 会社法785条1項、2項1号イは、吸収合併等をするための株主総会において議決権を行使することができる株主が反対株主として株式買取請求をするためには、上記株主総会に先立って当該株主が反対通知をすることを要する旨規定している。その趣旨は、消滅株式会社等に対し、吸収合併契約等の承認に係る議案に反対する株主の議決権の個数や株式買取請求がされる株式数の見込みを認識させ、当該議案を可決させるための対策を講じたり、当該議案の撤回を検討したりする機会を与えるところにあると解される。そして、本件のように、株主が上記株主総会に先- 4 -立って吸収合併等に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を消滅株式会社等に送付した場合であっても、当該委任状が作成・送付された経緯やその記載内容等の事情を勘案して、吸収合併等に反対する旨の当該株主の意思が消滅株式会社等に対して表明されているということができるときには、消滅株式会社等において、上記見込みを認識するとともに、上記機会が与えられているといってよいから、上記委任状を消滅株式会社等に送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当である。 これを本件についてみると、本件委任状は、スジャータ社が、抗告人に対し、宛先を自社とする本件委任状用紙を送付して議決権の代理行 株式会社等に送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当である。 これを本件についてみると、本件委任状は、スジャータ社が、抗告人に対し、宛先を自社とする本件委任状用紙を送付して議決権の代理行使を勧誘し、抗告人が、これに応じて、本件委任状用紙の各欄に記載をするなどして作成し、スジャータ社に対して返送したものである。そうすると、抗告人が本件賛否欄に記載したところは、代理人となるべき者に対して議決権の代理行使の内容を指示するだけのものではなく、上記勧誘をしてきたスジャータ社に対する応答でもあったということができ、本件委任状の送付は、スジャータ社に向けて本件吸収合併についての抗告人の意思を通知するものでもあったというべきである。そして、本件賛否欄には「否」に〇印が付けられていたのであるから、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思が本件委任状に表明されていたことは明らかである。なお、本件付記は、その記載内容等からすると、本件議案に反対する理由を記載したものとみるべきであって、本件付記があることは、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思が本件委任状に表明されていたとの上記判断を左右するものではない。 以上からすると、本件委任状の送付は、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思をスジャータ社に対して表明するものということができる。 したがって、抗告人がスジャータ社に対して本件委任状を送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当である。 5 以上と異なる見解の下に、本件申立てを却下すべきものとした原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原- 5 -決定は破棄を免れない。そして、原々決定を取り消し、更に審理を尽くさせるため、本件を原々審に差し戻すこととする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主 の違反がある。論旨は理由があり、原- 5 -決定は破棄を免れない。そして、原々決定を取り消し、更に審理を尽くさせるため、本件を原々審に差し戻すこととする。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官深山卓也裁判官山口厚裁判官安浪亮介裁判官岡正晶裁判官堺徹)
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