平成17(わ)370 建造物侵入,建造物等以外放火,窃盗,森林法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年6月22日 松山地方裁判所
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判決文本文6,297 文字)

平成18年6月22日宣告平成17年(わ)第370号建造物侵入,建造物等以外放火,窃盗被告事件平成17年(わ)第465号森林法違反,建造物侵入,窃盗被告事件平成17年(わ)第565号森林法違反被告事件平成17年(わ)第634号窃盗,建造物侵入被告事件判決主文被告人を懲役18年に処する。 未決勾留日数中230日をその刑に算入する。 理由 【犯罪事実】被告人は,第1正当な理由がないのに,平成17年5月29日午前4時ころ,愛媛県今治市甲町乙a番地の株式会社AB工場工場長Cが看守する同工場(鉄骨造スレート葺平家建,床面積約5764.69平方メートル)内に,同工場北西出入口から侵入し 同工場内に設置された同会社所有の鉄板造一部プラスチック製波板葺平屋建休憩所(床面積約4.2平方メートル)に放火してこれを焼損しようと企て,そのころ,同休憩所内において,吊り下げられていた作業服のポケット内に紙に包んだマッチを押し込んだ上,所携のマッチに点火して,同紙に火を放ち,その火を同作業服を媒体として同休憩所に燃え移らせ,よって,同休憩所を全焼させてこれを焼損し,そのまま放置すれば,同工場及びこれに近接した人家等に延焼するおそれのある危険な状態を発生させ,もって,公共の危険を生じさせた そのころ同工場内において同人管理に係るエアー式グラインダー3台時,,( 価合計約1万5000円相当)を窃取した(以上,平成17年7月26日付け起訴状に係る事実)第2平成17年5月28日午後3時30分ころ,愛媛県今治市丙町丁b番地所在のD所有に係る雑木林において,所携のマッチで点火した線香の束の火をその場に積み上げた枯れ草等に押し付けて火を放ち,その火を付近山林に燃え移らせ,よって,同人ほか24名所有に係る雑木林約31.23ヘクタール に係る雑木林において,所携のマッチで点火した線香の束の火をその場に積み上げた枯れ草等に押し付けて火を放ち,その火を付近山林に燃え移らせ,よって,同人ほか24名所有に係る雑木林約31.23ヘクタールを焼損し,もって,他人の森林に放火した(平成17年9月11日付け起訴状第1に係る事実)第3金品窃取の目的で,同日午後6時30分ころ,E株式会社代表取締役Fが看守する建造物である同市丙町丁c番地所在の同社ブロック製造工場の東側出入口から同工場内に侵入し,そのころ,同所において,同人管理に係るはつり機等5点(時価合計約20万円相当)を窃取した(同起訴状第2に係る事実)第4平成17年5月29日午前零時20分ころ,愛媛県今治市甲町戊d番地e付近所在の宗教法人Gほか1名所有に係る竹林において,所携のマッチで落ち葉に点火するなどして2か所に火を放ち,その火を付近竹林に燃え移らせ,よって,上記竹林合計約132.5平方メートルを焼損し,もって,他人の森林に放火した(平成17年11月9日付け起訴状第1に係る事実)第5同日午前2時30分ころ,同市甲町己f番地g所在のH所有に係る雑木林において,所携のマッチで枯れ葉の上に置いたわら束に点火して火を放ち,その,,,上に段ボール箱を乗せるなどしてその火を付近下草等に燃え移らせよって同雑木林約18平方メートルを焼損し,もって,他人の森林に放火した(同起訴状第2に係る事実)第6同日午前2時40分ころ,同市甲町己h番地所在のI所有に係る雑木林において,所携のマッチで枯れ草に点火して火を放ち,その火を付近枯れ草等に燃 え移らせ,よって,同雑木林約0.6平方メートルを焼損し,もって,他人の森林に放火した(同起訴状第3に係る事実)第7同日午前3時15分ころ,同市甲町乙i番地所在のJほか3名所有に係る雑 に燃 え移らせ,よって,同雑木林約0.6平方メートルを焼損し,もって,他人の森林に放火した(同起訴状第3に係る事実)第7同日午前3時15分ころ,同市甲町乙i番地所在のJほか3名所有に係る雑木林において,所携のマッチで枯れ草に点火して火を放ち,その火を付近枯れ,,. ,,草等に燃え移らせよって同雑木林約09平方メートルを焼損しもって他人の森林に放火した(同起訴状第4に係る事実)第8平成17年5月29日午前7時ころ,広島県豊田郡庚町辛(現広島県尾道市庚町)壬j番地所在のトタン葺土壁造農機具小屋南側軒下において,K所有に係るチェーンソー等2点(時価合計約1万3000円相当)を窃取した(平成17年12月12日付け起訴状第1に係る事実)第9正当な理由がないのに,同月30日午前1時ころ,Lが看守する建造物である同町辛(現広島県尾道市庚町)壬k番地l所在M南方約100メートル先の漁具倉庫に,同倉庫出入口西横の無施錠腰高窓から侵入し,同日午前6時45分ころ,同所において,同人管理に係る水中ポンプ等2点(時価合計約2万1000円相当)を窃取した(同起訴状第2に係る事実)第金品窃取の目的で,同年6月1日午後9時30分ころ,N株式会社代表取 (),締役Oが看守する同町辛現広島県尾道市庚町癸m番地所在の同社敷地内に同所南側門扉の下をくぐり抜けて侵入し,同月2日午前4時ころ,同所において,同人管理に係る水中ポンプ等204点及びP所有に係るケース等4点(時価合計約60万3700円相当)を窃取した(同起訴状第3に係る事実)ものである。 省略【証拠の標目】 省略【累犯前科】省略【法令の適用】【量刑の理由】 事案の概要本件は,被告人が,平成17年5月28日午後3時30分ころ,愛媛県今治市丙町の雑木林に ものである。 省略【証拠の標目】 省略【累犯前科】省略【法令の適用】【量刑の理由】 事案の概要本件は,被告人が,平成17年5月28日午後3時30分ころ,愛媛県今治市丙町の雑木林に放火して,合計約31万2300平方メートルの雑木林を焼損する大規模な森林火災を引き起こした森林法違反(森林放火)1件(判示第2,)同日午後6時30分ころ,同市丙町内の工場に侵入して工具類を窃取した建造物侵入・窃盗1件(判示第3,翌29日午前零時20分ころから同日午前3時1)5分ころまでの間,同市甲町内で,前後4回にわたり,他人の森林に放火して合計約150平方メートルの雑木林等を焼損した森林法違反(森林放火)4件(判示第4ないし第7,同日午前4時ころ,同市甲町内の工場に侵入して,同工場)内の休憩所に火を放ち,さらに工具類を窃取した建造物侵入・建造物等以外放火(),,(。 ,・窃盗1件判示第1同日午前7時ころ広島県豊田郡庚町内当時以下住居表示は犯行当時のものによる)で工具類を窃取した窃盗1件(判示第8,。 )翌30日及び同年6月1日に,同町内で,それぞれ建造物に侵入し,水中ポンプ等を窃取した建造物侵入・窃盗2件(判示第9及び第10)の事案である。 犯行に至る経緯,動機等被告人は,瀬戸内海島嶼部のQ島にある広島県豊田郡庚町辛癸に居住していたところ,平成17年5月28日昼ころ,当時勤務していた会社を休み,原動機付自転車に乗って自宅を出た後,Q島からR大橋を利用してS島に渡った。被告人は,S島において,Q神社に赴くなどした後,S島内を徘徊し,判示第2の犯行現場先にある地蔵堂において,線香束及びマッチを見たとき,日頃抱いていたうっ屈から漠然とこの世からいなくなろうなどと考えて,上記線香束及びマッチを持って犯行現場である雑木 内を徘徊し,判示第2の犯行現場先にある地蔵堂において,線香束及びマッチを見たとき,日頃抱いていたうっ屈から漠然とこの世からいなくなろうなどと考えて,上記線香束及びマッチを持って犯行現場である雑木林に入り,判示第2の犯行に及んだ。被告人は,火を放った直後,火の勢いなどを見て死ぬことが怖くなり,犯行現場から逃走した。 その後,自宅に帰りづらくなり家出をして暮らすための所持金を手に入れようと考え,判示第3の建造物侵入・窃盗の犯行を敢行し,一旦Q島に戻った後,再びS島に戻った。そして,被告人は,判示第2の犯行が大規模な森林火災に発展したため,そのような嫌なことを忘れようなどと考え,判示第4ないし第7及び判,,示第1の1の各放火を順次行い工具などを換金して所持金を得ようなどと考え判示第1の2及び第8ないし第10の各窃盗を行ったばかりか,判示第10の工場敷地内の事務所においてツーショットダイヤルに電話するなどのいたずらを繰り返しており,およそ判示第2の犯行の重大性を顧みない行動を続けた。なお,被告人は,判示第2の犯行の動機につき,火を自分に燃え移らせて自分がこの世の中から消えてしまおうと思った旨供述する。しかし,上記犯行前後の被告人の行動等からすると,そのような気持ちは確固たるものではなく,漠然とそのような気持ちを抱いていたとしても,結局は被告人はうっ屈した気持ちを晴らすことを主たる目的として判示第2の犯行を敢行したと認める。以上の被告人の本件各犯行は,極めて場当たり的であって,その短絡的,身勝手かつ自己中心的な動機に何ら斟酌すべき点はない。 森林法違反(森林放火(判示第2及び第4ないし第7)について)( )判示第2の犯行について 判示第2の犯行(以下,本項において「本件犯行」という)により,起訴。 に係るものだけでも合計約3 森林法違反(森林放火(判示第2及び第4ないし第7)について)( )判示第2の犯行について 判示第2の犯行(以下,本項において「本件犯行」という)により,起訴。 に係るものだけでも合計約31万2300平方メートルもの広範囲な雑木林(以下「本件雑木林」という)が焼失しており,その結果は極めて甚大であ。 る。被告人が平成17年5月28日午後3時30分ころ放火した後,延焼を続け,消防当局等の懸命な消火活動により,同年6月2日午前9時ころようやく鎮火したのであり,この火災が周辺住民の生命,身体及び財産に対して及ぼした危険は極めて大きく,周辺住民に与えた延焼の恐怖感,不安感は非常に甚大である。本件犯行場所周辺には乾燥した雑木林が広がっていたことや本件雑木林は岩場の急峻なところが多く,かつ,周辺の道路が未整備であり消火活動に 困難を伴う状況下にあったことなどを併せ考えると,本件放火行為は極めて危険かつ悪質なものである。加えて,昭和62年の森林火災以降約20年にわたる植林事業によって再生した森林が焼失したのであり,本件雑木林のみに限っても,多額の植林事業費等が無に帰したほか,多額の消火活動経費を要したものと認められ,本件犯行による有形無形の財産的損害も大きい。なお,被告人は本件犯行が思いもよらぬ大規模火災になった旨弁解する。この点,当日晴天であったこと,本件犯行場所は火災の発見が遅れ,消火が困難な場所であった。 ,,ことは認められるしかし被告人の本件犯行が場当たり的なものであること被告人は過去の放火行為において,大規模な延焼を経験していないこと,火の勢いを見て死ぬのが怖くなり逃走した(自分が死ぬとの気持ちが確固たるものではないのは前記のとおりであるとしても)との点を否定するまでの証拠はないことからして,被告人の上記弁解を排斥すること と,火の勢いを見て死ぬのが怖くなり逃走した(自分が死ぬとの気持ちが確固たるものではないのは前記のとおりであるとしても)との点を否定するまでの証拠はないことからして,被告人の上記弁解を排斥することはできない。 ( )判示第4ないし第7の各犯行について 被告人は,平成17年5月29日午前零時20分ころから同日午前3時15分ころまでの間に,前記甲町の4か所において,次々と深夜に人気のない場所で連続して放火していることからすれば,かかる判示第4ないし第7の各犯行は,いずれも危険,執拗かつ悪質なものであり,また,合計約150平方メートル余りの雑木林等が焼損しており,その結果は重大である。 建造物等以外放火(判示第1の1)について被告人は,深夜人気のない工場内において,火を放っており,判示休憩所付近には引火性危険物があったほか,上記工場内には引火,爆発の危険のある混合ガス等があったこと及び同工場から数十メートル離れたところには民家があったことなどからすると,判示第1の1の犯行は,危険かつ悪質なものである。 建造物侵入・窃盗(判示第3,第1冒頭の事実,第1の2,第9及び第10)及び窃盗(判示第8)について被告人は,前記工場等4か所に侵入するなどして,5か所で,合計220点の 工具等を窃取したものであり,被害額は合計約85万円余りにのぼっている。 前科等被告人には,放火などを短期間に繰り返した非現住建造物等放火5件及び窃盗4件によって,平成4年7月に懲役4年に処せられた前科,その後,放火などを短期間に繰り返した非現住建造物等放火9件,非現住建造物等放火未遂2件及び,。 窃盗5件によって平成11年9月に懲役7年に処せられた判示累犯前科があるそして,判示累犯前科の刑の執行終了後わずか4か月余りで,本件各犯行を行っているのであって,放 建造物等放火未遂2件及び,。 窃盗5件によって平成11年9月に懲役7年に処せられた判示累犯前科があるそして,判示累犯前科の刑の執行終了後わずか4か月余りで,本件各犯行を行っているのであって,放火や窃盗について常習性が認められ,被告人の規範意識の鈍麻は顕著である。 判断など以上からすれば,本件各犯行における被告人の刑事責任,特に判示第2の犯行の責任は極めて重大である。 他方,本件各犯行は場当たり的なものであり,計画的犯行とまでは認められないこと,被告人は,判示第2の犯行について,犯行時において,かような大規模火災となるとまでは考えていなかったこと,幸いにして判示第2及び第4ないし第7の各森林法違反(森林放火)を通じて人的被害が軽微なものにとどまったこと,各窃盗の被害品の大部分が被害者の元に戻っていること,被告人は,公判の最後において,多くの人に迷惑をかけた旨供述したことなど被告人に有利に斟酌すべき事情も認められる。 そこで検討するに,本件では量刑上最も重視されると思料される被告人の判示。 ,第2の犯行の評価が問題となる判示第2のような大規模な森林放火については類似の先例に乏しい。森林法違反の罪(森林放火)は建造物等以外放火罪(刑法110条1項)の特別法として,同罪の法定刑を非現住建造物等放火罪(刑法109条1項)と同じ法定刑まで引き上げているものの,現住建造物等放火罪(刑法108条)の法定刑に比べれば軽い。そこで,前記のとおり判示第2の犯行について考慮する不利・有利の事情に加え,放火についての被告人の常習性及び同 種の前科等を考慮し,これに過去の森林放火や現住建造物等放火罪等の量刑事情を比較検討し,さらに本件の他の犯行も併せ考慮すれば,被告人に対しては主文の懲役刑で処断するのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 ( ,これに過去の森林放火や現住建造物等放火罪等の量刑事情を比較検討し,さらに本件の他の犯行も併せ考慮すれば,被告人に対しては主文の懲役刑で処断するのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役25年)平成18年6月22日松山地方裁判所刑事部裁判長裁判官前田昌宏裁判官武田義德裁判官酒井英臣

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