平成25年7月24日判決言渡平成24年(行ケ)第10418号審決取消請求事件平成25年7月10日口頭弁論終結判決 原告三協立山株式会社 訴訟代理人弁護士赤尾直人訴訟代理人弁理士岩 﨑 孝治同七條耕司 被告株式会社ナルコ岩井 被告日本総合住生活株式会社 被告 YKKAP株式会社 被告ら3名訴訟代理人弁理士佐藤嘉明 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求特許庁が無効2012-800031号事件について平成24年10月26 日にした審決を取り消す。 第2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。)被告らは,平成18年3月17日に出願(ただし,平成15年3月7日を出願日とする特願2003-62183号の分割出願)され,平成23年10月7日に設定登録された,発明の名称を「引戸装置の改修方法及び改修引戸装置」とする特許第4839108号(請求項の数6。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 原告は,平成24年3月16日,特許庁に対し,本件特許の全ての請求項について無効にすることを求めて審判の請求をした。特許庁は,上記請求を無効2012-800031号事件として審理をした結果,平成24年10月26日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同年11月5日,原告に送達した。 は,上記請求を無効2012-800031号事件として審理をした結果,平成24年10月26日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同年11月5日,原告に送達した。 2 特許請求の範囲の記載(甲1)本件特許の請求項1,2,4及び5に係る特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(以下,請求項1に係る発明を「本件発明1」,請求項2に係る発明を「本件発明2」,請求項4に係る発明を「本件発明4」,請求項5に係る発明を「本件発明5」といい,これらを総称して「本件発明」という。また,本件特許の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)。 「【請求項1】建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の 底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有する改修用引戸枠を,前記既設引戸枠内に室外側から挿入し,その改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり, 修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。 【請求項2】建物の開口部に取付けてあるアルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有する既設引戸枠を残存し,前記既設下枠の室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去し,前記既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,この後に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠を有し,前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材を装着すると共に,前記改修用引戸枠の改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材を装着した改修用引戸枠を,前記既設 引戸枠内に室外側から挿入し,その室外側上枠シール材を建物の開口部の上縁部に接すると共に,前記室外側竪枠シール材を建物の開口部の縦縁部に接し,前記改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端が 部の縦縁部に接し,前記改修用下枠の室外寄りを,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持すると共に,前記改修用下枠の室内寄りを前記取付け補助部材で支持し,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁を,ビスによって既設下枠の前壁に固定することで,改修用引戸枠を取付け補助部材を基準として取付けることを特徴とする引戸装置の改修方法。」「【請求項4】建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されているこ とを特徴とする改修引戸装置。 【請求項5】建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から 前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されているこ とを特徴とする改修引戸装置。 【請求項5】建物の開口部に残存した既設引戸枠は,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室内側案内レールと室外側案内レールを備えた既設下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る既設竪枠を有し,前記既設下枠の室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され,その既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設け,その取付け補助部材が既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付けてあり,この既設引戸枠内に,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用上枠,アルミニウム合金の押出し形材から成り室外から室内に向かって上方へ段差を成して傾斜し,室外寄りが低く,室内寄りが室外寄りよりも高い底壁を備えた改修用下枠,アルミニウム合金の押出し形材から成る改修用竪枠を有する改修用引戸枠が挿入され,この改修用引戸枠の改修用下枠の室外寄りが,スペーサを介して既設下枠の室外寄りに接して支持されると共に,前記改修用下枠の室内寄りが,前記取付け補助部材で支持され,前記背後壁の上端と改修用下枠の上端がほぼ同じ高さであり,前記改修用上枠の室外側部に室外側上枠シール材が装着され,この室外側上枠シール材は建物の開口部の上縁部に接し,前記改修用竪枠の室外側部に室外側竪枠シール材が装着され,この室外側竪枠シール材は建物の開口部の縦縁部に接し,前記改修用下枠の前壁が,ビスによって既設下枠の前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであるが,原告の主張する取消事由 に関連する部分の要旨は,本件発明1,2,4及 前壁に固定されていることを特徴とする改修引戸装置。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであるが,原告の主張する取消事由 に関連する部分の要旨は,本件発明1,2,4及び5には,サポート要件違反及び実施可能要件違反はなく,また,本件発明1は明確であるというものである。 第3 取消事由に関する原告の主張 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)について(1) 本件発明においては,既設下枠の室外側案内レールが切断・撤去され室内側案内レールが残存する構成も,室外側案内レール及び室内側案内レールの双方が撤去される構成もいずれもが発明特定要件又はそれと同等に扱われるべきものであって,審決のように,既設下枠の室内側案内レールの残存又は切断・撤去のみを対象として発明特定要件を論ずるのは誤りである。 (2)ア本件発明においては,「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」ることが要件(以下この要件を「背後壁固着要件」という。)とされている。他方,本件明細書においては,室内側案内レールが残存する実施形態において,取付け補助部材を室内側案内レールにビスで固着して取り付ける構成(以下「室内側案内レール固着構成」という。)は採用されているが,背後壁固着要件による構成は採用されておらず,したがって,室内側案内レールが残存する実施形態において背後壁固着要件による構成は不要とされている。 イ前記アにもかかわらずサポート要件を充足するためには,室内側案内レール固着構成と背後壁固着要件による構成との間に,以下のいずれかの関係が成立することを必要不可欠とする。 (ア) 室内側案内レール固着構成であっても,背後壁固着要件による構成を重畳して採用することが技術常識に合 後壁固着要件による構成との間に,以下のいずれかの関係が成立することを必要不可欠とする。 (ア) 室内側案内レール固着構成であっても,背後壁固着要件による構成を重畳して採用することが技術常識に合致し,かつこの点が自明であること。 (イ) 室内側案内レールが残存するとしても,室内側案内レール固着構成を,背後壁固着要件による構成に置換することが技術常識に合致し,かつこ の点が自明であること。 ウしかし,前記イ(ア)については,本件明細書の図6(別紙参照。以下も同様である。)及び13で示された各実施形態において,室内側案内レール固着構成のみを採用し,背後壁固着要件による構成を不要としていることが,技術慣習の確立及び有用性等が成立しないことを裏付けているし,たとえ重畳した固着によって堅固な固着が実現するとしても,本件発明において,室内側案内レール固着構成又は背後壁固着要件による構成のいずれかが選択されていることは,上記堅固な固着は本来必要とされていないことを裏付けている。 また,前記イ(イ)を満たすためには,当該置換が技術慣習として確立しているか,又は室内側案内レール固着構成よりも,背後壁固着要件による構成の方が技術内容として優れており,かつこの点が自明であることを必要不可欠とする。 しかし,本件明細書の図6及び13に示す各実施形態,さらに図1,3,10及び11に示す他の実施形態において,室内側案内レール固着構成を採用していることは,上記置換が技術常識として確立していないことを示している。 しかも,室内側案内レールが残存している場合には,室内側案内レール固着構成においては,単に室内側案内レールに取付け補助部材を固着するという単純な作業によって取付け補助部材の固着を実現することができる。 これに対し,背後 ールが残存している場合には,室内側案内レール固着構成においては,単に室内側案内レールに取付け補助部材を固着するという単純な作業によって取付け補助部材の固着を実現することができる。 これに対し,背後壁固着要件による構成においては,ビス挿通孔を室外側壁部107及び室内側案内レール115の双方に設けるか,又は室外側壁部107のうち,室内側案内レール115よりも上側の位置に設けた上で,室内側壁部108と背後壁104とをビス止めするという煩雑な作業を必要不可欠とするので,室内側案内レール固着構成の方が優れている。 エ以上によれば,前記イ(ア)及び(イ)のいずれも満たされていないので,発 明の詳細な説明において,背後壁固着要件に関する記載が存在しなくともサポート要件が充足されるとすることはできない。 (3) 本件明細書の図3,6及び13に示す実施形態においては,室内側案内レール115はビス110によって取付け補助部材106に固着するために必要不可欠な対象物であるから,改修用下枠69の固着に際し,室外側案内レール114が作業の支障(邪魔)にならない限り,全部残存させるか又は一部残存させる場合があり得るとしても,室内側案内レール115が残存する場合には,一部切断等せずして室内側案内レール固着構成を採用することが技術常識に合致するものであり,被告が後記第4の1(2)において主張するように,室内側案内レールが残存する構成において背後壁固着要件による構成を採用することが技術常識に合致するとはいえない。 また,室外側壁部107は,取付け補助部材106の構成要素であって,切断・撤去の対象ではないのに対し,室内側案内レール115は,本来,切断・撤去も可能である以上,あえて一部残存させたうえで,ビス挿通孔を設定する必要がない。したがって,本件明細書【0 要素であって,切断・撤去の対象ではないのに対し,室内側案内レール115は,本来,切断・撤去も可能である以上,あえて一部残存させたうえで,ビス挿通孔を設定する必要がない。したがって,本件明細書【0100】は,あくまで室内側案内レール115の全てを切断・撤去したことを前提とした記載であり,その記載が被告の主張を裏付けるものともいえない。 2 取消事由2(実施可能要件に関する認定判断の誤り)について(1) 本件発明において,室内側案内レールが撤去される場合の背後壁固着要件だけでなく,残存する場合の背後壁固着要件もまた発明特定事項に該当することは前記1(1)のとおりであるので,審決の判断は誤りである。 (2) 本件明細書には,室内側案内レール115が残存する実施形態につき,室内側案内レール固着構成のみが開示されており,背後壁固着要件による構成については何ら開示されていない以上,当業者においては,同実施形態につき背後壁固着要件による構成は不要であるものと解するのが当然である。 したがって,本件明細書において,室内側案内レール115が残存する実 施形態につき,背後壁固着要件による構成についても容易に実施し得るように開示されたものと評価することできない。 (3) 上記(2)を前提とした場合,前記1(2)イ(ア)又は(イ)の要件を満たせば,実施可能要件が充足されているということができるが,これが満たされていないことは前記1(2)ウのとおりである。 (4) 審決は,室内側案内レール115を残存させる構成につき,実施可能要件が必要であるとしても,例えば,出願当初の本件特許の明細書の図14(別紙参照。以下も同様である。)のような位置関係の場合には,室内側案内レール115にビス挿通孔又は切り欠きを形成することによって,室内側案内レール ても,例えば,出願当初の本件特許の明細書の図14(別紙参照。以下も同様である。)のような位置関係の場合には,室内側案内レール115にビス挿通孔又は切り欠きを形成することによって,室内側案内レールを残存し得ること,ビス110が室内側案内レール115の上方に位置する場合には,室内側案内レール115に何の工作をする必要もなく,室内側案内レール115を残存することができること等は,当業者にとって明らかである以上,室内側案内レール115が残存する場合に,背後壁固着要件の実施につき,発明の詳細な説明が当業者にとって理解し難いというものではないという予備的な説示をしている。 しかし,本件特許の出願当初明細書も室内側案内レール115を残存した場合につき背後壁固着要件による構成を不要としている。そして,室内側案内レール固着要件による構成の方が容易に実施可能な状態にあるため,審決の指摘するような技術的手法を採用すべき技術的意義や動機付けが存在せず,当業者が,このような技術的手法を容易に実施することはあり得ない。 しかも,本件明細書の図14及び【0100】が開示している実施形態は,室内側案内レール115が撤去された場合には,室内側案内レール固着構成を採用することができないため,室外側壁部107にビス挿通孔を形成することによって,背後壁固着要件による構成を採用するものであり,本件発明は,室内側案内レール115を残存させた上で,室内側案内レール固着構成を採用することを原則としており,上記図14に示す実施形態はあくまでそ の余の例外的な構成にすぎない。そうすると,室内側案内レール115が残存しているにもかかわらず,本来採用すべき室内側案内レール固着構成ではなく,あえて審決の指摘するような技術的手法を伴う背後壁固着要件を採用することは技術常識に反する ると,室内側案内レール115が残存しているにもかかわらず,本来採用すべき室内側案内レール固着構成ではなく,あえて審決の指摘するような技術的手法を伴う背後壁固着要件を採用することは技術常識に反するし,後知恵にすぎない。したがって,審決の判断は誤っている。 3 取消事由3(明確性要件に関する認定判断の誤り)について本件特許の請求項1においては,室内側案内レールが残存している場合及び室内側案内レールが撤去される場合のいずれについても,背後壁固着要件を実現する技術内容は全く明らかにされていない。具体的には,ビスをいずれの方向からいかなる部位を通過させた上で,取付け補助部材と背後壁とを固着すべきかを全く明らかにしていない。室内側案内レールを残存させる構成の場合には,当該室内側案内レールの存在は,取付け補助部材を対象としてビスによって背後壁固着要件を実現する上で,必然的に作業上の支障と化す。このような場合,ビスの通過方向及び通過部位を明らかにしなければ,室内側案内レールの残存と上記固着とを両立させることができない。その意味において,請求項1記載の背後壁固着要件による構成は極めて不明瞭である。 本件明細書の記載を参照しても,室内側案内レールが撤去される場合については明確性の要件を充足していると解し得ないではないが,室内側案内レール115が残存する場合については,図6及び13のように,室内側案内レール固着要件による構成のみが開示され,背後壁固着要件による構成を不要としており,本件発明1につき,背後壁固着要件による構成は本来不要であって,当該要件による構成は不存在と解する以外にない。 したがって,明確性要件は充足されておらず,審決の判断は誤りである。 第4 被告らの反論 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)につい 件による構成は不存在と解する以外にない。 したがって,明確性要件は充足されておらず,審決の判断は誤りである。 第4 被告らの反論 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)について(1) 本件発明においては,「室内側案内レール」の特定の態様は課題の解決及 び効果に関与する事項ではなく,請求項に発明特定事項として記載する必要はないので,サポート要件を問われるべきものではない。 (2) 本件出願の原出願の出願時である平成15年3月7日当時,取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付ける場合,つまり一つの部材をビスで他の部材の立面に固着するような場合,たとえ取付け方向の手前に更に板状の第3の部材が存在していたとしても,第3の部材が固着作業の邪魔にならないならばそれをあえて撤去する必要はないことは普通に知られていた事項である。または,その板状の第3の部材が固着作業の邪魔になるなら,それを全部切断・撤去することのほかに,若干残して撤去したり,ビス挿通孔を設けたり,切り欠き部を形成してビスでの固着作業の邪魔にならないようにすることも技術常識であった。 また,上記に例示した出願時の技術常識等はいずれも本件明細書の発明の詳細な説明中(【0070】,【0094】,【0100】)に直接的又は間接的に言及されている。 したがって,仮にサポート要件を求められるものであっても,この要件は充足されており,審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(実施可能要件に関する認定判断の誤り)について本件発明は「室内側案内レールが残存すること」及び「室内側案内レールが撤去されること」を発明特定事項としていないのであるから,このような要素まで,実施要件の充足を要求されるべきものでないし,仮 て本件発明は「室内側案内レールが残存すること」及び「室内側案内レールが撤去されること」を発明特定事項としていないのであるから,このような要素まで,実施要件の充足を要求されるべきものでないし,仮に充足を求められるものであっても,前記1のとおり,当業者は技術常識や明細書の記載を参考にして本件発明を実施可能なのであり,かつ,その実施も当業者に合理的に期待し得る程度を超えた試行錯誤を要するものではない。 したがって,本件発明が実施要件を満たすとした審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(明確性要件に関する認定判断の誤り)について本件発明1は,背後壁固着要件の実施の態様の細部まで記載することを必要 とされるべき発明ではないことは当業者に明らかであるので,原告の主張は誤っている。 原告も平成25年2月4日付け第1準備書面のBの第1の一の1において特許請求の範囲の記載に関し,「これに対し,本件請求項1,2,4,5発明においては,「室外側案内レールを付け根付近から切断して撤去」すること(請求項1,2発明の場合),又は「室外側案内レールは付け根付近から切断して撤去され」ること(請求項4,5発明の場合)を要件とするも(双方の要件は同趣旨である。),室内側案内レールの切断・撤去及び残存の何れをも要件としていない。したがって,請求項1,2,4,5発明においては,必然的に室内側案内レールを切断・撤去しない構成と,切断・撤去する構成の何れをも包摂している。」として判断するほどに請求項1の記載は明白なのであるから,本件発明1は明確である。したがって,審決の判断に誤りはない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がなく,その他,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のと 審決の判断に誤りはない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がなく,その他,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 取消事由1(サポート要件に関する認定判断の誤り)について(1) 本件発明について本件発明の特許請求の範囲は,前記第2の2に記載のとおりであるところ,本件明細書(甲1)には,次の内容の記載がある。 「【技術分野】【0001】本発明は,建物の壁に窓として設けられている既設引戸を改修用引戸に改修する引戸装置の改修方法,及び,その改修した改修引戸装置に関する。 【背景技術】【0002】 図15は従来の技術の改修用引戸装置1を示す鉛直断面図であり,図16は図15の切断面線VII-VIIから見た水平断面図である。経年変化によって老朽化した集合住宅などの建物は,リフォームとも呼ばれる改修工事の一環として,その建物に設けられる窓もまた,改修される。この窓は,集合住宅の場合,一棟に設けられる設置箇所数が多いため,改修作業の効率の向上が望まれている。」「【0008】上記の改修用下枠13,改修用竪枠14および改修用上枠15が,既設下枠5,既設竪枠7および既設上枠9にそれぞれ取付けられた後,下枠カバー材19が改修用下枠13の下枠補助材30にビス47によって固定され,竪枠カバー材18が改修用竪枠14の竪枠補助材37にビス48によって固定され,上枠カバー材17が改修用上枠15の上枠補助材43にビス49によって固定される。」「【発明が解決しようとする課題】【0010】このような従来の技術では,改修用下枠13が既設下枠5に載置された状態で既設下枠5に固定されるので,改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間 「【発明が解決しようとする課題】【0010】このような従来の技術では,改修用下枠13が既設下枠5に載置された状態で既設下枠5に固定されるので,改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題がある。 【0011】また,改修用下枠13の下枠下地材30は既設下枠5の案内レール21,22上に直接乗載され,その案内レール21,22を基準として固定されているから前述の改修用下枠13と改修用上枠15との間の空間の高さ方向の幅H1がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題がある。 【0012】本発明の目的は,広い開口面積を確保することができる引戸装置の改修方 法及び改修引戸装置を提供することである。」「【発明の効果】【0018】請求項1~6記載の本発明によれば,既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去したので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,有効開口面積が減少することがなく,広い開口面積が確保できる。 また,既設下枠に室内寄りに取付補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取付けるので,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできる。」「【発明を実施するための最良の形態】・・・【0067】図6は本発明の実施の他の形態の改修用引戸装置50bが設置された窓51の鉛直断面図で,図7は図6の切断面線B-Bから見た窓51の水平断面図である。・・・【0069】この実施の形態の既設下 図6は本発明の実施の他の形態の改修用引戸装置50bが設置された窓51の鉛直断面図で,図7は図6の切断面線B-Bから見た窓51の水平断面図である。・・・【0069】この実施の形態の既設下枠56,改修用下枠69,取付け補助部材106は前述の図1,図2に示す実施の形態の既設下枠56,改修用下枠69,取付け補助部材106とほぼ同様で,既設下枠56の背後壁104の上端部に室内68側に向かう横向片104aを有し,この横向片104aと改修用下枠69の支持壁89の上端が同一高さであること,改修用下枠69の室外73側部分に乾式の室外側下枠シール材300が室内68側に向けて装着され,この室外側下枠シール材300が既設下枠56の前壁102に圧接して いることが大きく相違する。 【0070】具体的には,既設下枠56の室外側案内レール114を図6の仮想線で示すように切断して撤去されている。この室外側案内レール114は全てを切断して撤去しても良いし,若干残して撤去しても良い。 取付け補助部材106は,その室外側壁部107が室内側案内レール115にビス110で固着して取付けられる。 改修用下枠69の支持壁89,室内側脚部分91が取付け補助部材106の上壁部109に支持され,底壁81の室外寄りがスペーサ301を介して既設下枠56の底壁103の室外寄りに支持され,ビス112で取付け補助部材106に固定される。」「【0100】また,図14に示すように,既設下枠56の室内側案内レール115を前述と同様に切断して撤去し,取付け補助部材106を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着しても良い。 例えば,取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビ 枠56の背後壁104にビス110で固着しても良い。 例えば,取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることが好ましい。」(2)ア特許制度は,明細書に開示された発明を特許として保護するものであり,明細書に開示されていない発明までも特許として保護することは特許制度の趣旨に反することから,特許法36条6項1号のいわゆるサポート要件が定められたものである。したがって,同号の要件については,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明の欄の記載によって十分に裏付けられ,開示されていることが求められるものであり,同要件に適合するものであるかどうかは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の 記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であるか,すなわち,発明の詳細な説明の記載と当業者の出願時の技術常識に照らし,当該発明における課題とその解決手段その他当業者が当該発明を理解するために必要な技術的事項が発明の詳細な説明に記載されているか否かを検討して判断すべきである。 イ前記(1)認定の本件明細書の記載によれば,本件発明は,従来技術において,(ア)改修用下枠が既設下枠に載置された状態で既設下枠に固定されるので,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(以下「課題(ア)」という。),及び,(イ)改修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されるため改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまう 修用下枠の下枠下地材は既設下枠の案内レール上に直接乗載され,その案内レールを基準として固定されるため改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅がより小さくなり,有効開口面積が減少してしまうという問題(以下「課題(イ)」という。)があったため,これらの問題を,①既設下枠の室外側案内レールを切断して撤去する(以下「構成①」という。),②既設下枠の室内寄りに取付け補助部材を設けるとともに,この取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取り付け,取付け補助部材を基準として改修用引戸枠を既設引戸枠に取り付ける(以下「構成②」という。)ことにより解決したものであり,構成①を採ることにより,改修用下枠と改修用上枠との間の空間の高さ方向の幅が大きく,広い開口面積が確保でき,構成②を採ることにより,既設引戸枠の形状,寸法に応じた形状,寸法の取付け補助部材を用いることで,形状,寸法が異なる既設引戸枠に同一の改修用引戸枠を取付けできるという効果を奏するものであると認められる。そして,本件明細書【0100】には,既設下枠56の室内側案内レール115を切断して撤去する場合における構成①及び②の具体的な構成(実施形態)が記載されている。 ウ他方,本件特許の請求項1,2,4及び5の文言に照らすと,本件発明には,上記イ(本件明細書【0100】,図14)に記載した,既設下枠56の室内側案内レール115を切断して撤去する構成のみならず,既設下枠56の室内側案内レール115を切断せず残存させる(撤去しない)構成(背後壁固着要件を充足する構成)も含まれると解釈できるところ,本件明細書には,既設下枠の室内側案内レールを残存させる(撤去しない)構成とした上で,背後壁固着要件を充足する実施形態は記載されてい 成(背後壁固着要件を充足する構成)も含まれると解釈できるところ,本件明細書には,既設下枠の室内側案内レールを残存させる(撤去しない)構成とした上で,背後壁固着要件を充足する実施形態は記載されていない。 しかし,上記イに認定したところによれば,本件発明において,課題(ア)及び(イ)を解決するためには,構成①及び②を採用すれば足り,既設下枠の室内側案内レールを切断して撤去するかどうかは上記課題の解決には関係しないし,室内側案内レールを切断して撤去しなければ本件発明の効果を奏しないということもない。加えて,本件明細書の図6の実施形態(甲1【0067】,【0069】,【0070】)等に,既設下枠56の室内側案内レール115を残存する(撤去しない)構成が開示されていることも併せ考えると,当業者であれば,本件明細書の記載から,構成②とする際に,既設下枠56の室内側案内レール115を切断して撤去する構成のほかに,既設下枠56の室内側案内レール115を残存させる(撤去しない)構成も想定できるといえる。 以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明には,当業者において,特許請求の範囲に記載された本件発明の課題とその解決手段その他当業者が本件発明を理解するために必要な技術的事項が記載されているものといえる。 したがって,本件発明は,本件明細書において十分に裏付けられ,開示されているものと認められ,特許法36条6項1号のサポート要件違反の有無に関する審決の判断の結論に誤りはない。 (3) 原告の主張についてア原告は,本件発明においては背後壁固着要件をその構成として含んでいるところ,本件明細書においては,室内側案内レールが残存する実施形態において,室内側案内レール固着構成は採用されているが,背後壁固着要件による構成は採用されてお 後壁固着要件をその構成として含んでいるところ,本件明細書においては,室内側案内レールが残存する実施形態において,室内側案内レール固着構成は採用されているが,背後壁固着要件による構成は採用されておらず,同実施形態において同構成は不要とされており,室内側案内レール固着構成であっても背後壁固着要件による構成を重畳して採用することが技術常識に合致し,かつこの点が自明であるともいえず,室内側案内レールが残存するとしても,室内側案内レール固着構成を背後壁固着要件による構成に置換することが技術常識に合致し,かつこの点が自明であるともいえないので,発明の詳細な説明において,背後壁固着要件に関する記載が存在しなくともサポート要件が充足されるとすることはできない旨主張する。 しかし,前記(2)において認定したところに照らすと,本件発明につき,室内側案内レールが残存する実施形態において,室内側案内レール固着構成は採用されているが,背後壁固着要件による構成は採用されていないということはできず,原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は,本件明細書の図3,6及び13に示す実施形態においては,室内側案内レール115はビス110によって取付け補助部材106に固着するために必要不可欠な対象物であるから,改修用下枠69の固着に際し,室外側案内レール114が作業の支障(邪魔)にならない限り,全部残存させるか又は一部残存させる場合があり得るとしても,室内側案内レール115が残存する場合には,一部切断等せずして,室内側案内レール固着要件を採用することが技術常識に合致している旨主張する。 しかし,本件明細書には,室内側案内レールを残存させるのは,取付け補助部材を固着するためであるとの記載はなく,室内側案内レール115に取付け補助部材106を 常識に合致している旨主張する。 しかし,本件明細書には,室内側案内レールを残存させるのは,取付け補助部材を固着するためであるとの記載はなく,室内側案内レール115に取付け補助部材106を固着しない場合にも,室内側案内レール115 を残存することを排除しているとはいえない。また,本件明細書【0100】には,「例えば,取付け補助部材106の室内側壁部108を既設下枠56の背後壁104にビス110で固着する。この場合には室外側壁部107に図示しないビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることが好ましい。」との記載があり,取付け補助部材106の室外側壁部107のようなビス止めの妨げとなる部材がある場合に,ビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることが開示されていることに照らすと,室内側案内レール115を残存させた場合に,室内側案内レール115にビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることは,当業者がごく普通に着想し得ることであると認められる。 なお,原告は,室外側壁部107は,取付け補助部材106の構成要素であって,切断・撤去の対象ではないのに対し,室内側案内レール115は,本来,切断・撤去も可能である以上,あえて一部残存させたうえで,ビス挿通孔を設定する必要がなく,本件明細書【0100】は,あくまで室内側案内レール115の全てを切断・撤去したことを前提とした記載である旨主張する。確かに上記段落の記載は,室内側案内レールを撤去した実施例を説明したものではあるものの,そうであるからといって,取付け補助部材106の室外側壁部107のようなビス止めの妨げとなる部材がある場合に,ビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めするという上記開示がなされていることには変わりはない。 し け補助部材106の室外側壁部107のようなビス止めの妨げとなる部材がある場合に,ビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めするという上記開示がなされていることには変わりはない。 したがって,原告の上記各主張を採用することはできない。 2 取消事由2(実施可能要件に関する認定判断の誤り)について(1) 前記1に判示したところに照らすと,少なくとも室内側案内レール115を残存した際に,室内側案内レール115にビス挿通孔を形成し,背後壁にビスで固着する構成を採用することにより,取付け補助部材の室内側壁部を既設下枠の背後壁に固着するとともに,既設下枠の室内側案内レールを残存 させる(撤去しない)構成とすることは,当業者が容易に実施できるものと認められる。 したがって,本件発明は実施可能要件を充足するものであり,この点に関する審決の判断に誤りはない。 (2) 原告の主張についてア原告は,本件明細書には,室内側案内レール115が残存する実施形態につき,室内側案内レール固着構成のみが開示されており,背後壁固着要件による構成については何ら開示されていない以上,当業者においては,同実施形態につき背後壁固着要件による構成は不要であるものと解するのが当然であり,本件明細書において,室内側案内レール115が残存する実施形態につき,背後壁固着要件による構成についても容易に実施し得るように開示されたものと評価することできない旨主張するが,前記(1)に認定したところによれば,原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は,審決は,室内側案内レール115を残存させる構成につき,実施可能要件が必要であるとしても,例えば,出願当初の本件特許の明細書の図14のような位置関係の場合には,室内側案内レール115にビス挿 原告は,審決は,室内側案内レール115を残存させる構成につき,実施可能要件が必要であるとしても,例えば,出願当初の本件特許の明細書の図14のような位置関係の場合には,室内側案内レール115にビス挿通孔又は切り欠きを形成することによって,室内側案内レールを残存し得ること,ビス110が室内側案内レール115の上方に位置する場合には,室内側案内レール115に何の工作をする必要もなく,室内側案内レール115を残存することができることなどは,当業者にとって明らかである以上,室内側案内レール115が残存する場合に,背後壁固着要件の実施につき,発明の詳細な説明が当業者にとって理解し難いというものではないとしているが,本件明細書は,室内側案内レール115を残存した場合につき背後壁固着要件による構成を不要としており,室内側案内レール固着要件による構成の方が容易に実施可能な状態にあるため,審決の指摘するような技術的手法を採用すべき技術的意義や動機付けが存在せず,当業 者においては,このような技術的手法を容易に実施することはあり得ず,室内側案内レール115が残存しているにもかかわらず,本来採用すべき室内側案内レール固着構成ではなく,あえて審決の指摘するような技術的手法を伴う背後壁固着要件を採用することは技術常識に反するし,後知恵にすぎないなどと主張する。 しかし,前記1(3)イ認定のとおり,本件明細書において,室内側案内レール115に取付け補助部材106を固着しない場合にも,室内側案内レール115を残存することを排除しているとはいえないし,この場合,当業者であれば,構成②とする際に,既設下枠56の室内側案内レール115を切断して撤去する構成のほかに,既設下枠56の室内側案内レール115を残存させる(撤去しない)構成も想定でき,そのように室内側 当業者であれば,構成②とする際に,既設下枠56の室内側案内レール115を切断して撤去する構成のほかに,既設下枠56の室内側案内レール115を残存させる(撤去しない)構成も想定でき,そのように室内側案内レール115を残存した際に,ビス挿通孔を形成し,そのビス挿通孔からビス止めすることはごく普通に着想し得るものであると認められる以上,原告の上記主張を採用することはできない。 3 取消事由3(明確性要件に関する認定判断の誤り)について原告は,本件特許の請求項1においては,室内側案内レールが残存している場合及び室内側案内レールが撤去される場合のいずれについても,ビスをいずれの方向からいかなる部位を通過させた上で,取付け補助部材と背後壁とを固着すべきかを全く明らかにしておらず,背後壁固着要件を実現する技術内容は全く明らかにされていない,室内側案内レールを残存させる構成の場合には,当該室内側案内レールの存在は,取付け補助部材を対象としてビスによって背後壁固着要件を実現する上で,必然的に作業上の支障と化すので,ビスの通過方向及び通過部位を明らかにしなければ,室内側案内レールの残存と上記固着とを両立させることができないのであり,請求項1記載の背後壁固着要件による構成は極めて不明瞭である,本件明細書では,室内側案内レール115が残存する場合については,室内側案内レール固着要件による構成のみが開示され ており,背後壁固着要件による構成を不要としており,本件発明1につき,背後壁固着要件による構成は本来不要であって,当該要件による構成は不存在と解する以外にないなどと主張する。 しかし,本件特許の請求項1に係る特許請求の範囲には,「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」と記載されている する以外にないなどと主張する。 しかし,本件特許の請求項1に係る特許請求の範囲には,「取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面にビスで固着して取付け」と記載されているので,取付け補助部材を既設下枠の底壁の最も室内側の端部に連なる背後壁の立面に取付けること,及び固着手段としてビスを用いることが特定されており,それらの記載は明確であるといえる。 なお,既設下枠の室内側案内レールを残存させる(撤去しない)構成とした場合には,前記1(3)イ認定のとおり,室内側案内レールにビス挿通孔を設けることによりビスによる固着作業が支障なく行われ得るが,そのようなことは当業者が本件発明1を具現化する際にごく普通に成し得ることであり,室内側案内レールにビス挿通孔を設ける旨の記載がないことをもって特許請求の範囲の記載が明確でないということはできない。 したがって,原告の上記主張を採用することはできず,本件特許の請求項1の特許請求の範囲が不明確とすることはできないとした審決の判断の結論には誤りはない。 4 まとめ以上によれば,原告の主張する取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき事由もない。 第6 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官設樂 一 裁判官西理香 裁判官神谷厚毅 別紙別紙別紙別紙図6 図14 裁判官神谷厚毅 別紙別紙別紙別紙図6 図14
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