昭和50(オ)918 配当異議

裁判年月日・裁判所
昭和51年10月12日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 昭和49(ネ)1005
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判決文本文2,304 文字)

主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人の負担とする。理由 上告代理人佐々木秀雄、同永吉崇の上告理由について公正証書は、訴訟手続を経ることなくそれ自体で債務名義となり、債権者はこれに執行文の付与を受けて強制執行をすることが可能となるものであるから、公正証書が公正の効力を有するためには法律の定める要件を具備することを要する(公証人法二条)ところ、代理人による公正証書作成の嘱託については、代理権限を証する書面や印鑑証明等の提出を要し(同法三二条)、公証人は、本人に対し代理人の氏名等所定の事項を通知し(同法施行規則一三条の二)、作成した公正証書を列席者に読み聞かせ又は閲覧させたうえ、列席者各自これに署名捺印することを要するものと規定されている(同法三九条)。思うに、右法規の趣旨とするところは、公正証書のもつ重要性にかんがみ、公正証書が正当な権限を有する者によつて嘱託され、その記載事項が真実に合致することを担保するにあるものと解されるから、公正証書の作成を現実に嘱託する者に人違いがないということは、公正証書の作成にあたり要求される最も基本的な事項というべきであつて、署名が行為者を識別する重要な方法であること、他方、公正証書に記載される執行受諾の意思表示は、公証人に対してされる訴訟行為であつて、これには私法上取引の相手方保護を目的とする民法の表見代理に関する規定の適用又は準用がないものと解されている(最高裁昭和三一年(オ)第一二三号同三三年五月二三日第二小法廷判決・民集一二巻八号一一〇五頁参照)ことなどを総合すると、代理人の嘱託による公正証書の場合には、公証人法の前記規定に定める手続を履践し、かつ、当該公正証書に嘱託者である代理人が自署することを要し、代理人- 1 -が本人とし 参照)ことなどを総合すると、代理人の嘱託による公正証書の場合には、公証人法の前記規定に定める手続を履践し、かつ、当該公正証書に嘱託者である代理人が自署することを要し、代理人- 1 -が本人として公正証書の作成を嘱託することは右規定の適用を僣脱するものというべきであるから、その嘱託は違法であり、これに基づいて作成された公正証書は公正の効力を生ずるに由なく、署名代理を認める余地はないものと解するのが、相当である。 どを総合すると、代理人の嘱託による公正証書の場合には、公証人法の前記規定に定める手続を履践し、かつ、当該公正証書に嘱託者である代理人が自署することを要し、代理人- 1 -が本人として公正証書の作成を嘱託することは右規定の適用を僣脱するものというべきであるから、その嘱託は違法であり、これに基づいて作成された公正証書は公正の効力を生ずるに由なく、署名代理を認める余地はないものと解するのが、相当である。これを本件についてみると、原審の確定したところによれば、被上告人は訴外株式会社D商店(以下「D商店」という。)の債権者であるが、昭和四四年九月三〇日の配当期日において、配当表中上告人を債権者、D商店を債務者とする東京法務局所属公証人E作成にかかる昭和四三年第一〇四八四号債務弁済契約公正証書による債権に対する配当金額について、右公正証書はD商店の嘱託に基づき作成されたものではないから債務名義として無効である旨の異議を述べたこと、上告人のD商店に対する売掛債権中一〇〇〇万円につき右両者間に公正証書を作成する旨の合意が成立したが、D商店代表取締役Fが出張して不在のため同人からあらかじめ右内容の公正証書作成方の指示を受け、印鑑証明書等の必要書類とD商店印の交付を受けていたG及び上告人の代理人Hとが公証人役場に出頭し、本件公正証書の作成を嘱託したこと、その際、Gは代理方式によらず、D商店代表取締役Fと称して右嘱託をし、かつ、同証書にFと署名し、その名下にD商店印を押捺したこと、以上の事実が認められるというのである。右事実関係に照らすと、債務者であるD商店の代表取締役Fは右公証人のもとに出頭せず、その代理人Gが本件公正証書の作成を嘱託したが、同人は公証人法所定の代理方式によらず、D商店代表取締役Fと称して右嘱託をし、かつ、同証書にF 務者であるD商店の代表取締役Fは右公証人のもとに出頭せず、その代理人Gが本件公正証書の作成を嘱託したが、同人は公証人法所定の代理方式によらず、D商店代表取締役Fと称して右嘱託をし、かつ、同証書にFと署名したというのであるから、前記説示のとおり、本件公正証書は、その作成の嘱託に違法があり、公正の効力を有しないものというべきである。そうすると、右公正証書は債務名義として無効なことが明らかであるから、これを理由とする被上告人の本件配当異議を認めた原審判断は、正当として是認することができ、原判決- 2 -に所論の違法はない。 の代理方式によらず、D商店代表取締役Fと称して右嘱託をし、かつ、同証書にFと署名したというのであるから、前記説示のとおり、本件公正証書は、その作成の嘱託に違法があり、公正の効力を有しないものというべきである。そうすると、右公正証書は債務名義として無効なことが明らかであるから、これを理由とする被上告人の本件配当異議を認めた原審判断は、正当として是認することができ、原判決- 2 -に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官天野武一裁判官江里口清雄裁判官高辻正己裁判官服部高顯裁判官環昌一- 3 -

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