令和3(う)754 住居侵入、強盗致死、建造物侵入、窃盗、強盗、窃盗未遂、強盗傷人

裁判年月日・裁判所
令和5年1月25日 東京高等裁判所 破棄差戻 東京地方裁判所 平成31合(わ)94
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判決文本文9,003 文字)

- 1 -令和5年1月25日宣告 東京高等裁判所第5刑事部判決令和3年(う)第754号 住居侵入、強盗致死、建造物侵入、窃盗、強盗、窃盗未遂、強盗傷人被告事件主 文原判決を破棄する。 5本件を東京地方裁判所に差し戻す。 理 由第1 事案の概要及び控訴趣意1 事案の概要原判決の処断罪である住居侵入、強盗致死被告事件(原判示第7事件)の10公訴事実は、「被告人3名は、金品を強奪する目的で、共謀の上、平成31年2月28日午前10時51分頃から同日午前11時17分頃までの間に、被害者方に玄関ドアから侵入し、その頃、同所において、被害者(当時80歳)に対し、その手足を緊縛し、その口を粘着テープで塞いだ上、その頸部を圧迫し又はその鼻孔部を閉塞するなどの暴行を加えて、その反抗を抑圧し15て金品を強奪しようとしたが、金品の発見に至らなかったためその目的を遂げず、前記一連の暴行により、その頃、同所において、被害者を窒息により死亡させた」というものである。 同事件は、被告人Cに対する窃盗被告事件(第1事件)、被告人Cに対する強盗傷人被告事件(第2事件)、被告人A及び被告人Bに対する建造物侵20入、窃盗被告事件(第3事件)、被告人Aに対する窃盗未遂被告事件(第4事件)、被告人A及び被告人Bに対する住居侵入、強盗被告事件(第5事件)、被告人3名に対する建造物侵入、窃盗被告事件(第6事件)と併せて審理、判決された。 2 原判決の概要25被告人らは、第7事件について「被害者の頸部を圧迫していないし、鼻を - 2 -塞いでもいない。死因が窒息であることは争う。」と主張したほか、事実を争わなかった。 原判決は、第1事 25被告人らは、第7事件について「被害者の頸部を圧迫していないし、鼻を - 2 -塞いでもいない。死因が窒息であることは争う。」と主張したほか、事実を争わなかった。 原判決は、第1事件から第6事件までについて、公訴事実のとおりの事実を認定したが、第7事件について、頸部圧迫又は鼻孔部閉塞の暴行を認定することはできず、被害者は慢性心不全の急性増悪によって死亡したと認定し5た上、被害者が慢性心不全の状態にあったことは被告人らが知り得ない事情であり、被告人らが行為に及ぶ際に、被害者を死亡させるリスクを想定するのは容易ではなかったというべきであり、致死の結果を招いたことについて被告人らの意思決定を非難できる程度が高いとまではいえないことを理由に、その刑を酌量減軽した上、被告人Aを懲役28年、被告人B及び被告人Cを10懲役27年に処した。 3 控訴趣意検察官の控訴趣意は、第7事件に関する事実誤認の主張及び処断罪である第7事件について刑を酌量減軽して被告人らを無期懲役に処さなかった原判決の量刑は軽すぎるとする量刑不当の主張であり、被告人Aの弁護人神山啓15史(控訴趣意書は元弁護人和田恵作成)、被告人Bの弁護人増村圭一及び被告人Cの弁護人水橋孝徳の各控訴趣意は、いずれも原判決の量刑は重すぎるとする量刑不当の主張である。 第2 検察官の事実誤認の控訴趣意について1 検察官の主張と弁護人らの答弁の要旨20検察官の主張は、第7事件について、被害者の死因を慢性心不全の急性増悪と認定した上、被告人らが頸部圧迫又は鼻孔部閉塞の暴行を加えて被害者を窒息死させたとの事実を認定することはできないとした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというものである。 弁護人らの答弁は、被害者が被告人らの 閉塞の暴行を加えて被害者を窒息死させたとの事実を認定することはできないとした原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるというものである。 弁護人らの答弁は、被害者が被告人らの行為によって高度のストレス負荷25がかかり慢性心不全が急性増悪して死亡した可能性があるとの合理的な疑問 - 3 -が残る以上、被害者の死因が窒息死であると認定することはできないから、原判決の事実認定は不合理とはいえないというものである。 2 第7事件に関する原判決の判断原判決は、第7事件について、次のとおり説示した。 被害者の司法解剖を行い、死因等の鑑定を行ったD医師は、急死の3徴候5が認められること、明らかに致死的となる損傷や疾病が認められないこと、頸部に外力が加わったことを示唆する所見があることを根拠に、頸部圧迫又は鼻孔部閉塞による窒息死の可能性が考えられると供述する。これに対し、被害者が罹患していた膠原病の専門医で、同人のカルテや鑑定書等の資料を検討したE医師は、被害者は、本件当時、慢性心不全の状態にあって、被告10人らの行為により体や精神に強度のストレスがかかったことでこれが急性増悪して死亡した可能性があると供述しているから、そのような可能性を排斥できるかが問題となる。 E医師は、被害者には心不全に矛盾しない症状があったこと、心不全になりやすい既往歴を有していたことを根拠として挙げており、その見解に特段15不自然、不合理な点は認められない。 そうすると、被害者が窒息死した可能性はあるものの、本件犯行当時、慢性心不全の状態にあり、被告人らの行為により高度のストレス負荷がかかったことで慢性心不全が増悪して死亡した可能性を排斥するのは困難であり、「疑わしきは被告人の利益に」の原則に従い、被害者は被告人ら 性心不全の状態にあり、被告人らの行為により高度のストレス負荷がかかったことで慢性心不全が増悪して死亡した可能性を排斥するのは困難であり、「疑わしきは被告人の利益に」の原則に従い、被害者は被告人らの行為によ20る慢性心不全の急性増悪によって死亡したと認定した。そのように認定する以上、他に証拠もない中で、被告人らが被害者に頸部圧迫又は鼻孔部閉塞の暴行を加えたと認定することもできない。 被告人らの行為は、被害者に強度の肉体的・精神的な負荷をかけるものとして、その生命身体に危険を及ぼす可能性が高い行為と評価するのが相当で25ある。もっとも、被害者が慢性心不全の状態にあったことは被告人らが知り - 4 -得ない事情であり、被告人らが行為に及ぶ際に、被害者を死亡させるリスクを想定するのは容易ではなかったというべきであり、致死の結果を招いたことについて被告人らの意思決定を非難できる程度が高いとまではいえない。 第7事件に関する事情のみからは、同事件が強盗致死のうち無期懲役を相当とするような最も重い部類に属する事案であるということはできず、一連5の犯行を全体的に評価することによって無期懲役の選択が相当になるともいえない。 3 当裁判所の判断原判決の判断は、①被害者が慢性心不全の状態にあった可能性があることと被告人らの暴行によって死亡したことは両立し得るのに、被害者の遺体を10解剖した法医学の専門家であるD医師の見解を十分検討しないまま、被害者のカルテ、看護記録及び鑑定書を検討したにとどまるE医師の見解に基づいて慢性心不全が急性増悪して死亡した可能性を排斥するのは困難であるとした点、②被告人らが高齢の被害者に対し強度の暴行を加えたことを認定しながら、被害者が慢性心不全の状態にあったことを知り得なかったことを理由1 が急性増悪して死亡した可能性を排斥するのは困難であるとした点、②被告人らが高齢の被害者に対し強度の暴行を加えたことを認定しながら、被害者が慢性心不全の状態にあったことを知り得なかったことを理由15として、致死の結果を招いたことについて被告人らの意思決定を非難できる程度が高いとまではいえないとした点において、論理則、経験則等に照らして明らかに不合理であり是認することができない。そして、原判決は、被告人らの意思決定を非難できる程度が高いとまではいえないことを理由として刑を酌量減軽したものと解され、前記の不合理な認定が判決に影響を及ぼし20たことは明らかであるから、破棄を免れない。以下、その理由を説明する。 ⑴ 頸部圧迫の暴行の有無についてア 原審におけるD医師の証言D医師は、原審において、次のとおり供述した。 解剖の結果、被害者には、右顎二腹筋後腹の結合組織内、甲状軟骨の高さ25の食道後面の結合組織内、左広頸筋後面、左胸鎖乳突筋に血液の膠着が認め - 5 -られた。これらは、内因性のものとは考え難く、鈍体による打撃又は圧迫により形成されたと考えられる。 また、被害者の左右の眼瞼及び眼球には溢血点が多数認められ、心筋梗塞等の病気による急死の場合に認められるものと比べて非常に大きく発現していた。頬やまぶた周り等顔の皮膚にも溢血点様の変色がしっかり認められ、5これらは、一定時間、首の血流が閉塞されたことにより起こり得るものであり、頸部圧迫を示唆する所見である。 イ 原判決の判断原判決は、被害者はステロイドを比較的長期にわたって服用していたことにより血管がもろくなって出血しやすい状態にあった可能性があると認めら10れるから、頸部の結合組織内及び筋肉内の血液の膠着は、抵抗する被害者を制圧する際な を比較的長期にわたって服用していたことにより血管がもろくなって出血しやすい状態にあった可能性があると認めら10れるから、頸部の結合組織内及び筋肉内の血液の膠着は、抵抗する被害者を制圧する際などに首に一定の外力が加わり形成されたとしても不自然でなく、眼瞼及び眼球の溢血点及び溢血斑も、同様に頸部の静脈を閉塞させる程度の外力が加わり形成されたとしても不自然ではないから、いずれも気道を塞ぐような頸部圧迫がなくとも説明可能であるとした上、窒息死するほどの頸部15圧迫があったとするなら大きな力が継続的に加わったと思われる頸部の表面に目立った内出血等が見当たらないことは、頸部圧迫があったことに対する疑問を生じさせるとした。 ウ 当裁判所の判断しかし、被害者がステロイドを服用していたことは認められるものの、ス20テロイドの影響によって血管がもろくなって出血しやすい状態にあったというのは、抽象的な可能性の指摘にとどまる上、D医師は、当審において、被害者に出血しやすい傾向があったことを積極的にうかがわせるようなものはなかった旨供述しており、被害者がステロイドを服用していたことは、頸部圧迫があったとするD医師の見解を排斥する根拠になり得ない。また、D医25師の当審における供述によれば、頸部圧迫があった場合に頸部表面に内出血 - 6 -等が生ずることが多いとはいえないから、頸部表面に目立った内出血等が見当たらないことも、頸部圧迫があったことを疑うべき根拠になり得ない。 そうすると、原判決は、合理的な根拠がないのに、被害者の頸部が圧迫された旨のD医師の専門的見解を排斥したものということができる。D医師の見解によれば、被害者の頸部が圧迫され、それによって首の血流の閉塞が一5定時間継続したと考えられるというのであるから、被告人 れた旨のD医師の専門的見解を排斥したものということができる。D医師の見解によれば、被害者の頸部が圧迫され、それによって首の血流の閉塞が一5定時間継続したと考えられるというのであるから、被告人らのうち少なくとも1名が被害者の頸部に圧迫を加えたと認めるほかない。加えて、被告人ら自身、被害者の脈拍を測るなどして生存を確認した旨供述していること、被告人Bが被害者が死亡した旨の報道を知る前に「強盗殺人、刑期」の語をインターネットで検索したことなどは、この認定に沿うものであって、これを10補強するものということができる。以上のとおり、被告人らのうち少なくとも1名が被害者の頸部を圧迫する暴行を加えたことは明らかであり、これを否定した原判決の認定は、論理則、経験則等に照らして不合理といわざるを得ない。 ⑵ 被害者の死因について15ア 原審におけるD医師の証言D医師は、原審において、次のとおり供述した。 解剖の結果、被害者には、眼球及び眼瞼に溢血点が発現していること、肺や肝臓、副腎、脾臓、甲状腺といった臓器に鬱血が認められたこと、心臓から凝血塊を混じえない暗赤色流動性血液が認められたことという急死の3徴20候が認められた。 また、頸部圧迫を示唆する所見が認められた。 他方、被害者には、明らかに致死的となる損傷、疾病や中毒は認められなかった。被害者には慢性心不全の場合に認められる胸水の貯留はなく、肺には一部に水腫が認められたが、高度な肺水腫やむくみもなく、慢性心不全を25疑わせる所見は認められなかった。 - 7 -以上から、被害者の死因としては窒息の可能性が考えられ、窒息の原因としては頸部圧迫や鼻孔部閉塞が考えられる。解剖所見のみから窒息と断定することはできないが、積極的に窒息以外に考えられる死因は -以上から、被害者の死因としては窒息の可能性が考えられ、窒息の原因としては頸部圧迫や鼻孔部閉塞が考えられる。解剖所見のみから窒息と断定することはできないが、積極的に窒息以外に考えられる死因は見当たらなかった(もっとも、D医師は、当審において、窒息以外にも、暴行を受けたストレスによって不整脈を起こして亡くなった可能性は否定しきれない旨供述し5た。)。 イ 原判決の判断原判決は、被害者が窒息死した可能性はあるものの、被害者は、当時、慢性心不全の状態にあり、被告人らの行為により高度のストレス負荷がかかったことで慢性心不全が増悪して死亡した可能性を排斥するのは困難であると10し、慢性心不全の急性増悪を否定したD医師の見解に対しては、心臓の左側部分のみが障害された場合には肺に水がたまるが胸には水はたまらず、被害者は心臓の左側部分のみが障害されていた可能性があるから、胸水がなかったことは心不全を否定する根拠にならない、D医師は、被害者の肺に一部水腫が認められたとしたのみで、その程度については詳しく説明しておらず、15肺水腫の程度が心不全の場合に認められるべき程度と矛盾するかどうかは明らかとなっていないから、E医師の見解が鑑定所見と矛盾するとはいえないとした。また、原判決は、事件前日の被害者の看護記録に「両下肢浮腫著明」との記載があり、これがなかったことを前提にはできないという。 ウ 当裁判所の判断20しかし、被害者が慢性心不全の状態にあったと仮定しても、慢性心不全によって死亡したとは限らず、暴行によって死亡した可能性があり得るのであるから、被害者の死因を検討するに当たっては、被害者が慢性心不全であった可能性を検討するのみでは足りず、急死の3徴候が認められ、頸部圧迫を示唆する所見が認められるとしたD医師の見 性があり得るのであるから、被害者の死因を検討するに当たっては、被害者が慢性心不全であった可能性を検討するのみでは足りず、急死の3徴候が認められ、頸部圧迫を示唆する所見が認められるとしたD医師の見解を十分検討する必要がある。 25そして、急死の3徴候及び頸部圧迫を示唆する所見が認められたとするD - 8 -医師の見解は、解剖結果に基づく専門的判断であり、その合理性を疑うべき事情はない。原判決が依拠したE医師の見解は、被害者のカルテ、看護記録及び鑑定書を検討した結果に基づくものにすぎない上、被害者に下腿浮腫、体重増加、呼吸困難といった心不全に矛盾しない症状があったこと、被害者が大動脈弁狭窄症、腎不全及び間質性肺炎という心不全になりやすい既往歴5を有していたことを理由に、被害者が慢性心不全の状態にあった可能性を指摘するものにとどまり、前記のD医師の見解に疑問を生じさせ得るようなものではない。 また、被害者に慢性心不全を疑わせる所見はなかったとするD医師の見解について、原判決は、被害者が心臓の左側部分のみが障害されていた可能性10があると指摘する。しかし、左心のみが障害されていたことをうかがわせる事情がないだけでなく、下腿浮腫を根拠とするE医師の見解からすれば、全身から血液が戻る右心にも障害が生じていたことになるはずであり、原判決の指摘はこれと整合しない。原判決が、解剖において被害者に認められた肺水腫の程度が心不全の場合に認められるべき程度と矛盾するかどうかが明ら15かになっていないと指摘する点も、肺の一部に水腫が認められたものの、高度の肺水腫やむくみはなく、慢性心不全の急性増悪を疑わせる所見はなかったとするD医師の供述を正解しないものであり、肺水腫の程度がD医師の供述するところと異なり著しいものであったと疑うべ たものの、高度の肺水腫やむくみはなく、慢性心不全の急性増悪を疑わせる所見はなかったとするD医師の供述を正解しないものであり、肺水腫の程度がD医師の供述するところと異なり著しいものであったと疑うべき根拠もない。 さらに、D医師は、当審において、心不全で死亡した場合には急死の所見20は出てこないし、心不全で時間をかけて死亡した場合は心臓から凝血塊がみられるはずであるが、被害者についてはそういったものはなかった旨供述している。 そうすると、被害者には慢性心不全を含め死亡に結びつく疾病はなかったとするD医師の見解に疑いは生じないというべきであるから、その専門的見25解を無視して被害者の死因が慢性心不全の急性増悪であった可能性があると - 9 -した原判決の認定は、論理則、経験則等に照らして不合理なものというほかない。 もっとも、前記のとおり、D医師は、原審及び当審において、解剖所見のみから死因が窒息であると断定することはできず、暴行を受けたストレスにより不整脈を起こして死亡した可能性も否定しきれない旨供述している。こ5れによれば、被害者の死因が窒息であると断定することはできないことになるが、死亡に至った医学的機序が不明となるにすぎず、被害者が被告人らの暴行によって死亡したことは優に認定できるから、原判決の認定が不合理であるとの判断には影響しない。 ⑶ 被告人らの意思決定に対する非難の程度について10被告人らの被害者に対する暴行は、被害者に強度の肉体的・精神的な負荷をかけ、その生命・身体に危険を及ぼす可能性が高い行為であるとの原判決の評価に誤りはない。一方、原判決が「被害者が慢性心不全の状態にあったことは被告人らが知り得ない事情であり、被告人らが行為に及ぶ際に、被害者を死亡させるリスクを想定するのは容易 行為であるとの原判決の評価に誤りはない。一方、原判決が「被害者が慢性心不全の状態にあったことは被告人らが知り得ない事情であり、被告人らが行為に及ぶ際に、被害者を死亡させるリスクを想定するのは容易でなかったというべきであり、致15死の結果を招いたことについて被告人らの意思決定を非難できる程度が高いとまではいえない」とした点は、被害者が慢性心不全の急性増悪により死亡したとの事実認定に基づくものであるから前提を欠く。むしろ、被告人らは、被害者が高齢であることを認識しながら、激しく抵抗する被害者に対し、その手足を緊縛し、口を粘着テープで塞ぎ、頸部を圧迫するなどの強度の暴行20を加えたのであるから、自分たちの行為の危険性を認識していたことは明らかであって、致死の結果を招いたことについて被告人らの意思決定を非難できる程度が高いとまではいえないとする原判決の評価は是認できない。 弁護人らは、被告人A及び被告人Bにおいて第7事件の前に第5事件を実行し、人が死亡する結果が生じない経験をしていたから、被害者に重篤な結25果が生じる危険を想起することは困難であったと主張するが、第7事件と第 - 10 -5事件では被告人らが加えた暴行の内容が同一ではないから、所論は前提を欠く。 ⑷ 結論以上のとおり、第7事件について、頸部圧迫の暴行を認定することができないとした上、被害者が慢性心不全の急性増悪により死亡したとした原判決5には事実の誤認がある。 そして、原判決は、その誤認した事実に基づいて、致死の結果を招いたことについて被告人らの意思決定を非難できる程度が高いとまではいえないとの誤った評価をした上、これに基づいて、第7事件に関する事情のみからは同事件が強盗致死のうち無期懲役を相当とするような最も重い部類に属する10事 意思決定を非難できる程度が高いとまではいえないとの誤った評価をした上、これに基づいて、第7事件に関する事情のみからは同事件が強盗致死のうち無期懲役を相当とするような最も重い部類に属する10事案であるということはできないとしたものであって、専ら前記事実誤認に基づく誤った評価を理由として刑を酌量減軽したものと認められるから、前記事実誤認が判決に影響を及ぼしたことは明らかである。 検察官の論旨は、以上の限度で理由があり、検察官のその余の論旨及び各弁護人の論旨について検討するまでもなく、原判決は破棄を免れない。 15第3 破棄差戻しよって、刑訴法397条1項、382条により原判決を破棄する。以上のとおり、原判決が、処断罪である第7事件について、致死の結果を招いたことについて被告人らの意思決定を非難できる程度が高いとまではいえないことを理由として刑を酌量減軽したことは是認することができないが、第7事20件は裁判員裁判対象事件であり、各被告人に対し、他に酌量減軽を相当とする理由があるかどうかを含め、どのような量刑をすべきかについては、裁判員の参加する合議体により判断するのが相当であるから、同法400条本文により、本件を東京地方裁判所に差し戻すこととする。 令和5年1月25日25東京高等裁判所第5刑事部 - 11 - 裁判長裁判官 伊 藤 雅 人 裁判官 島 戸 純5 裁判官 江 見 健 一 健 一

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