主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告秋田県知事,同秋田県教育長及び同秋田県教育庁保健体育課長が,財団法人秋田県体育協会に対し,平成7年度ないし平成10年度に交付した選手強化対策費補助金の内,補助金交付条件に違反した補助金の返還請求を怠ることは,違法であることを確認する。 第2 事案の概要 1 本件は,秋田県(以下,「県」という。)の住民である原告らが,県が平成7年度ないし10年度までの間に財団法人秋田県体育協会(以下,「県体協」という。)に対して支出した補助金に関し,県体協を経由してその補助金の分配を受けた傘下の各競技団体が補助金を目的外に支出し,また,補助事業にかかる書類(事業実績報告書等)に実態と異なる事実及び支出金額を記載して県体協に提出したことにより,県が県体協に対して,秋田県財務規則(以下,「規則」という。)259条1項及び補助金支出にかかる条件違反に基づいて,少なくとも別紙虚偽報告・架空事業と不当利得一覧記載の事業にかかる補助金のうち「不当利得」欄記載の金額合計3960万9476円の返還を請求する権利を有し,かつ,返還を請求すべきであるにもかかわらず,被告らが当該請求権の行使を怠るとして,地方自治法242条の2第1項3号に基づき,その違法の確認を求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠等によって容易に認定できる事実については,認定に要した証拠等を末尾括弧内に掲記した。)(1) 当事者ア原告らは,いずれも県の住民である。 イ被告らは,いずれも後記「本件補助金」に関する返還請求権の行使についての権限者である。 (2) 県体協に対する補助金の支出について県は,国民総合体育大会(以下,「国体」という。)選手強化に要する経費の補助を目的に, 記「本件補助金」に関する返還請求権の行使についての権限者である。 (2) 県体協に対する補助金の支出について県は,国民総合体育大会(以下,「国体」という。)選手強化に要する経費の補助を目的に,県体協に対し,毎年「選手強化対策費補助金」(以下,「強化補助金」という。)を支出してきた。強化補助金は,秋田県教育庁保健体育課(以下,「保健体育課」という。)の所管とされ,同課において支出負担行為伺が起案され,同課長,教育長,秋田県知事(以下,「知事」という。)らによって決裁されて支出されてきた。 強化補助金の支出過程は,以下のとおりである(乙5参照)。 ア当該年度の事業計画の策定県体協は,毎年度,加盟する各競技団体に対し,国体に向けての競技力向上を目的として作成したその年度の強化方針を提示する。各競技団体は,この強化方針に基づいて年間の強化事業計画を策定し,これを県体協に提出する。県体協は,各競技団体から提出された強化事業計画の内容を検討し,整理して調整する(弁論の全趣旨)。 イ補助金の交付申請県体協は,整理,調整後の事業計画,事業経費等が記載された各競技団体の事業費予算書を添付し,補助金の交付申請書を知事宛に提出する。知事は,計画されている事業の内容が補助目的に照らして適正であるか,金額の算定に誤りがないか等について,当該申請にかかる書類を審査する(なお,以下,実際には,保健体育課が担当部所となる。)(弁論の全趣旨)。 ウ補助金の交付決定及び交付決定の通知知事は,強化補助金の交付申請を審査するなどし,適当と判断された申請に対して補助金の交付決定をし,県体協に対し,交付決定を通知する。 強化補助金交付決定通知書には,補助金の交付決定額,補助事業の目的,当該補助金を目的以外に使用してはならないことのほか,保健体育課の関係補助金要 金の交付決定をし,県体協に対し,交付決定を通知する。 強化補助金交付決定通知書には,補助金の交付決定額,補助事業の目的,当該補助金を目的以外に使用してはならないことのほか,保健体育課の関係補助金要綱に従い,事業終了後30日以内または3月31日のいずれか早い日に,実績報告書,収支精算書を提出すること等の補助金の交付条件が記載されていた。 エ支出負担行為強化補助金においては,前記交付決定が支出の原因行為としての支出負担行為となる。これについては,保健体育課担当者が起案し,同課課長,教育長,総務部長を経て,知事が決裁する(弁論の全趣旨)。 オ支出命令知事は,交付決定が決裁された後,各競技団体の事業計画を考慮し,県体協に対し,交付決定の金額の範囲内において10回ないし数十回に分割し,前金払として支出命令を行って補助金を交付していた。なお,同支出命令は,保健体育課の担当者が起案し,同課課長が決裁して出納長に通知していた。交付された補助金は,県体協が,加盟する各競技団体に対して配分していた(弁論の全趣旨)。 カ状況報告知事は,必要に応じて,補助事業の遂行状況を確認するため,状況報告書を徴することとなっているが,強化補助金については,これを省略していた(乙6)。 キ実績報告書知事は,補助事業者が補助金をその交付目的どおりに使用したかを調査確認する必要があることから,補助事業者は,事業完了後,知事に対して実績報告書を提出することが必要とされる。県体協は,強化補助金について,各競技団体の事業費決算書等を添付した実績報告書等を提出していた。県体協傘下の秋田県スケート連盟(以下,「スケート連盟」という。)は,後記本件補助金に係る事業費決算書や事業活動報告書について,実際の事業活動と異なる虚偽の内容を記載して,これを県体協に提出し,県体協は 傘下の秋田県スケート連盟(以下,「スケート連盟」という。)は,後記本件補助金に係る事業費決算書や事業活動報告書について,実際の事業活動と異なる虚偽の内容を記載して,これを県体協に提出し,県体協は,これに基づいて同補助金に係る実績報告書等を提出した。 ク補助金の確定知事は,実績報告書等の提出を受け,補助事業等の成果が補助金交付決定の内容及び条件に適合するかを調査し,適合すると認めたときは交付すべき補助金の額を確定し,補助金額の変更を要するときはこれを通知する。強化補助金については,平成7年度から平成10年度の各年度毎に,以下のとおりの補助金が県体協に対して支出され(以下,各年度に支出された強化補助金を一括して「本件補助金」という。),かつ,変更されることなく全額が確定した(乙8ないし11)。 (ア) 平成7年度 1億2500万円いずれも同8年3月29日付けで,強化補助金(一般強化)として3542万5000円,強化補助金(特別強化)として8957万5000円(イ) 同8年度 1億4700万円同8年10月31日付けで200万円,いずれも同9年3月31日付けで,強化補助金(一般強化)として3740万円,強化補助金(特別強化)として6760万円,競技力対策本部費として4000万円(ウ) 同9年度 2億円同10年3月31日付けで,強化補助金として全額(エ) 同10年度 2億3000万円同11年3月31日付けで,強化補助金として全額(3) 新聞の報道ア平成11年10月16日,秋田魁新報の新聞紙上に,スケート連盟が,県体協から支給された選手強化対策費の使途報告を数年間にわたり偽り続けていたとして,県体協に対して退会届を提出した旨の記事が掲載された。また,同紙面には,県スケート連盟の理事が,同連盟のスピード部が平成5ないし8年度 た選手強化対策費の使途報告を数年間にわたり偽り続けていたとして,県体協に対して退会届を提出した旨の記事が掲載された。また,同紙面には,県スケート連盟の理事が,同連盟のスピード部が平成5ないし8年度において「から合宿」を24回行い,県体協からの強化費合計615万円分の使途について虚偽の報告を行った旨の記事も掲載された(乙2)。 イ同年12月11日,同紙上に,スケート連盟が平成6年から10年度までの選手強化対策費につき提出した使途報告書に実態と異なる記載があったとされた問題について,県体協が,同連盟から提出された訂正報告書に基づき調査を行い,強化費はおおむね競技力強化に使われたが,一部飲食代や土産代等強化費と認められない不適切なものもあったとの結論を出した旨の記事が掲載された(乙17)(なお,以下,両記事を併せて「本件各報道」という。)。 (4) 監査請求ア原告らは,平成12年5月22日付けで,秋田県監査委員に対し,県が県体協に対して支出した本件補助金のうち平成7年度の1億2500万円と同8年度の1億4500万円について,同補助金は,県体協がその加入54競技団体の行う事業計画を付して申請し交付決定を受けて前払いを受け,各年度末に実績報告書を提出して確定させたものであるが,スケート連盟の補助事業分について,補助金が他に流用され,平成12年4月17日付け発表の県の10年度分補助金調査結果によれば,他の加入団体についても同様の不正が存在したことから,不正行為が県体協補助金全体について行われた疑いが生じているとして,被告ら等には,県体協に対して損害賠償請求ないし交付決定の取消と補助金の返還を命ずる職務上の義務があるとして,損害賠償等の請求を怠る行為の違法と関係職員に対し賠償を命ずることを求める監査請求を行った(乙1)。 イ原告らは,同日付け 償請求ないし交付決定の取消と補助金の返還を命ずる職務上の義務があるとして,損害賠償等の請求を怠る行為の違法と関係職員に対し賠償を命ずることを求める監査請求を行った(乙1)。 イ原告らは,同日付けで,秋田県監査委員に対し,県が県体協に対して支出した本件補助金のうち平成9年度の2億円及び同10年度の2億3000万円について,前記アと同旨の監査請求を行った(乙2)(以下,ア及びイの各監査請求を併せて「本件監査請求」という。)。 (5) 秋田県監査委員は,原告らに対し,同年6月30日付けで,本件監査請求は,いずれも地方自治法(以下,「法」という。)242条2項(以下,「本条項」という。)の1年の監査請求期間を徒過し,かつ,同項ただし書の正当な理由も認められないとして,不受理とする旨通知した。 (6) 県は,平成12年7月6日,スケート連盟に係る平成6年度から同10年度の分の本件補助金に関する調査結果をとりまとめ,本件補助金につき,不適正な支出があったことが明らかになった。 3 争点当事者双方が本判決において判断を求めた争点は,(1) 本件監査請求につき,本条項の監査請求の期間制限が及ぶか。 (2) 監査請求の期間制限が及ぶ場合,本件監査請求が監査請求期間内にされたといえるか。 (3) 本件監査請求が監査請求期間内にされたといえない場合,本条項ただし書にいう正当な理由が存すると認められるか。 の各点である 4 各争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本条項の適用の有無)についてア被告らの主張(ア) ある行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって,財産の管理を怠る事実としている場合,当該請求権の発生原因である当該行為のあった日又は終わった日を基準として,本条項にいう住民監査請求の期間制限が適用される( する実体法上の請求権の不行使をもって,財産の管理を怠る事実としている場合,当該請求権の発生原因である当該行為のあった日又は終わった日を基準として,本条項にいう住民監査請求の期間制限が適用される(最高裁判所昭和62年2月20日第2小法廷判決(以下,「62年判決」という。)参照)。なぜなら,住民監査請求において,特定の財務会計上の行為が違法であるとする監査請求をすれば,それには当該財務会計上の行為の違法に基づく実体法上の請求権の行使を怠る事実の監査請求も実質的には含まれており,監査請求人は,これにより,請求権の行使を怠ることによる監査請求の目的を達成するはずであり,それにもかかわらず怠る事実の監査請求のみをした場合には監査請求の期間制限がないとすると,監査請求の期間制限を設けた趣旨を没却することになるからである。 また,住民監査請求の対象となる財務会計上の行為の違法性は,住民訴訟の地方財政の健全化を図るという目的に鑑み,当該職員の故意・過失等の主観的な事情を考慮することなく,客観的に判断すべきである(いわゆる「客観的違法性」)。 (イ) 県は,県体協傘下の各競技団体が,年度当初に提出した事業費予算書に記載したとおりの事業を実施したとして,実際に行った事業内容とは異なる事業費決算書を作成して県体協に対し提出し,県職員が,県体協から当該事業費決算書を添付した実績報告書が提出された際,書類の審査や現地調査等が不十分であったため,本来補助すべきでないものも含めて補助金の額を確定させてしまったものである。したがって,本件補助金に係る額の確定は,本来補助すべきでないものに対して補助金を支出することを確定したということで,客観的に違法である。そうすると,本件訴訟において,怠る事実に係る不当利得返還請求権は,客観的に違法である額の確定に基づいて発生した きでないものに対して補助金を支出することを確定したということで,客観的に違法である。そうすると,本件訴訟において,怠る事実に係る不当利得返還請求権は,客観的に違法である額の確定に基づいて発生した,実体法上の請求権であるから,本件訴訟に係る住民監査請求の期間制限は,当該額の確定のあった日を基準として,1年間の期間制限を定めた本条項の規定が適用されるものといわなければならない。 イ原告らの主張(ア) 62年判決は,地方公共団体の財務会計上の行為が違法,無効であることを理由とする監査請求に関する事案であるが,本件は,財務会計上の行為が違法,無効であることに基づく事案ではないから,本条項の適用はない。 原告らは,本件監査請求について,各年度中の補助金支出行為自体の違法,不当を主張するものではなく,支出後に,支出先の団体が,定められた補助の趣旨に反した使用をしている場合,すなわち,本件補助金に係る実施計画書及び実績報告書等に記載されている補助事業が実施されず,又は,これと異なる事業に当該補助金が使用された場合には,規則259条1項各号に該当する事情が生じたと認められて,被告らに補助金の返還を求める権利が発生するところ,この返還請求権(実体法上の不当利得返還請求権)の行使を怠る事実があると主張するものである。 行政処分概念については,直接国民に権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為と解されるところ,本件補助金についてみると,交付決定通知によって,補助金を受ける側は,補助金の交付を受ける権利を取得すると解される。したがって,本件補助金に係る財務会計上の行為は,本件補助金交付決定と実際に支出する支出命令により一応完結する。それは,補助金交付決定後に事業の一部に変更が生じた場合,変更承認申請が必要であることからも認められる。そうすると,本件は, 上の行為は,本件補助金交付決定と実際に支出する支出命令により一応完結する。それは,補助金交付決定後に事業の一部に変更が生じた場合,変更承認申請が必要であることからも認められる。そうすると,本件は,職員に違法事由が認められない交付決定と支出命令の後に,補助金を受ける側が補助金を補助目的に違背して使用し,知事宛に提出された報告書に記載されている事業が実施されていなかったことに由来する不当利得返還請求権にかかる訴訟であるのであって,財務会計上の行為が違法,無効であることに基づく監査請求に関する事案ではないから,62年判決とは事案を異にして,本条項の適用はないと解すべきである。 (イ) 本件は,実際に実施していなかった事業について,あたかも実施したかのような実績報告書を提出し,補助金支出を確定させ,もって補助金返還を免れたというものであり,補助金の詐取ともいうべき行為である。このように,自治体職員を欺罔して公金を支出せしめるといった財務会計上の行為の直接の相手方の違法な行為によって自治体側の支出行為がなされた場合には,本条項の期間制限の適用はないものというべきである。なぜなら,本条項の期間制限の趣旨は「行政の安定性」を図るというものであるところ,財務会計上の行為に関与した職員に違法性が認められない場合,法242条の2第1項4号の賠償措置等を職員に求めることはできないのであるから,行政の安定性を侵すことはない。逆に,そのような事案まで行政の安定性を理由に期間制限の適用を認めると,違法な行為を行った「直接の相手方」を免責することになるという背理に陥る。そのような立法趣旨との矛盾が生じないような解釈として,財務会計上の行為に関与した職員の違法性の有無により,怠る事実の請求に期間制限を適用するかどうかが区別されるべきである。なお,被告知事は,平成1 のような立法趣旨との矛盾が生じないような解釈として,財務会計上の行為に関与した職員の違法性の有無により,怠る事実の請求に期間制限を適用するかどうかが区別されるべきである。なお,被告知事は,平成13年12月13日付けで,平成12年5月29日付け補助金交付決定によって支出した「助成金」について,「提出された実績報告書に,講師等の謝礼金の支払いについて虚偽の記載がある」との理由で,交付決定の一部を取り消し,その返還を命じている。この補助金も実績報告書の提出を受けただけでは,虚偽の記載の有無はわからなかったものであり,1年以内に監査請求することは不可能な事案である。虚偽の記載が判明した時点以降,被告知事は,いつでも補助金の返還を求めることが可能なのであり,これを怠れば,その怠る事実の監査請求を受けることになるのである。 以上のように,本件訴訟に係る監査請求は,期間制限の適用がない事案であるといわなければならない。 (2) 争点(2)(監査請求期間の徒過の有無)についてア原告らの主張前記(1)で述べたとおり,本件監査請求では,本条項は適用されないから,監査請求期間の徒過の問題は生じない。 イ被告らの主張本件補助金は,平成7年度分は平成8年3月29日付けで,同8年度分は同年10月31日付け及び同9年3月31日付けで,同9年度分は同10年3月31日付けで,同10年度分は同11年3月31日付けで,それぞれ補助金額が確定された。したがって,平成12年5月22日になされた本件監査請求は,本件補助金の金額が各年度毎に確定した日から1年以上が経過しており,本条項に規定する1年の監査請求期間を徒過してなされたものである。 (3) 争点(3)(正当な理由の有無)についてア原告らの主張監査委員は,本件監査請求につき,県体協への補助金が1つの公金支 ,本条項に規定する1年の監査請求期間を徒過してなされたものである。 (3) 争点(3)(正当な理由の有無)についてア原告らの主張監査委員は,本件監査請求につき,県体協への補助金が1つの公金支出であるとして監査請求期間を徒過したと認定したが,これは誤りである。本件補助金の実体は,各競技団体の各実施事業毎の多数の補助金が集合したもので,各補助金(実施事業毎)について,それぞれに監査請求することが可能であり,それらは別々に監査請求期間が起算されるものである。そして,このように解する場合,本件監査請求は,期間を徒過したことにつき正当な理由がある。 (ア) 各競技団体の各実施事業毎の補助金の集合である点について確かに,本件補助金の申請書は,県体協から県に対して提出され,補助金は,県体協に支出されたうえ,県体協から各競技団体に配分されるので,本件補助金は,県体協に対する1個の補助金のようにも見える。しかし,本件補助金は,県体協に何らの使途を限定しないで交付されたものではなく,各競技団体から県体協を通して提出された各事業毎に積算されて,その各事業毎に使途を限定されて支出されるものである。そのため,県体協に支出された本件補助金も,各競技団体にその事業計画どおりに交付配分され,県体協においてその交付配分を留保決定する権限はない。つまり,本件補助金の実体は,各競技団体から各事業毎の補助金申請が県体協を通じてなされ,県が,各事業毎に交付を決定し,県体協を通じて各競技団体に交付しているといえるのであり,それら多数の補助金申請,交付が,形式上,県体協を通じて一体のように行われているに過ぎないものである。 このことは,県の調査結果報告書に,補助金は,県体協を「通じて」,「スケート連盟に交付され」,その補助金は,「実施事業」毎に特定されている旨の記載があ 体のように行われているに過ぎないものである。 このことは,県の調査結果報告書に,補助金は,県体協を「通じて」,「スケート連盟に交付され」,その補助金は,「実施事業」毎に特定されている旨の記載があることから,県自身が認識しているところであって,この事情は,他の競技団体への補助金交付についても同様である。また,本件補助金詐取に対する県の改善策によると,補助対象事業者を「第62回秋田国体競技力向上対策本部」(以下,「対策本部」という。)とし,補助金の配分は対策本部から各競技団体に対して配分されることとなった。対策本部は県の組織ともいわれるのであって,そうすると,県の補助金が県組織に交付され,その県組織から各競技団体に配分されるというのであるから,本件補助金の実体が各競技団体から申請された各事業毎に交付された多数の補助金であることは明らかである。 また,県体協への補助金支出についての監査請求をした場合,監査委員は,本件補助金全額について監査するかどうかの判断を迫られる。仮に,監査請求の趣旨が全ての競技団体の全ての事業に関する補助金支出を対象とするというのであれば,全ての競技団体の全ての事業に関する補助金支出の当否が監査対象となることは疑いがない。しかし,一部の競技団体に関する補助金支出の当否を対象とするものであれば,その一部の競技団体に関する補助金の当否を監査することになる。しかし,監査委員が,1つの補助金であるとして全ての事業の補助金の当否を監査することは考えられない。したがって,本件補助金の実体は,各競技団体の各実施事業毎の多数の補助金が集合したものというべきである。 (イ) 正当な理由について一部の競技団体において補助金の不正支出があったとしても,他の競技団体においても当然に補助金の不正支出があったとの合理的疑いを持つことができるも たものというべきである。 (イ) 正当な理由について一部の競技団体において補助金の不正支出があったとしても,他の競技団体においても当然に補助金の不正支出があったとの合理的疑いを持つことができるものではない。なぜなら,実際に,どのような虚偽記載や詐取の方法が実行されているのか,1回限りか計画的に大規模に行われたのかなど,その動機,背景,経過等が同じとはいえないからである。したがって,スケート連盟の不正が報道された時点で,直ちに他の競技団体の事業に関わる補助金についても監査請求が可能であったとは到底認められない。 監査委員は,本件各報道によって原告らが本件補助金について監査請求することが可能であったとするが,10月16日付け記事は県体協の加盟競技団体の1つであるスケート連盟の不正支出に関する報道であり,12月11日付け記事も同連盟に関するものである。スケート連盟の不正支出については,平成12年2月22日に調査報告が公表されたが,他の競技団体の不正支出や虚偽記載については,この時点でも何ら報道,報告されておらず,スケート連盟に関わる調査報告も中間報告に過ぎなかった。県が同連盟の調査結果を公表したのは,同年7月6日に至ってからであり,他の競技団体の虚偽記載等が明らかになったのは,県が同年4月17日に公表した中間報告においてであり,その最終調査結果の公表は,同年9月28日を待たねばならなかった。このように,調査権限のある県ですら長期間の調査期間を要したのは,本件補助金の事業が多数にわたるからである。原告ら住民が,本件補助金について,虚偽記載等の事実を知ったとしても,それらを精査して監査請求に及ぶまでには,相当長期間の調査が必要であったことはいうまでもない。 以上によれば,原告らには,本条項ただし書にいう正当な理由がある。 イ被告らの主張 を知ったとしても,それらを精査して監査請求に及ぶまでには,相当長期間の調査が必要であったことはいうまでもない。 以上によれば,原告らには,本条項ただし書にいう正当な理由がある。 イ被告らの主張(ア) 本件補助金は,1つの補助金である。 本件補助金は,交付決定先や支出命令書における支払先,請求書における請求者まで,相手方は全て県体協となっており,本件補助金が,県体協傘下の各競技団体に個別に交付されたものではなく,県体協に対して交付された各年度毎に1つの補助金(なお,平成7年度分については,「一般強化」と「特別強化」の2つの補助金)であることが明らかである。 また,本件補助金の交付申請前の段階における県体協と各競技団体との間のやりとりは,以下のとおりである。 a 県体協は,国体に向けて競技力向上を目的とした強化方針や補助基準を策定して,各競技団体に提示する。 b 県体協が示した方針に基づき,各競技団体は,年間の強化事業計画(事業費予算書を含む)を策定し,県体協に提出する。 c 県体協は,その提出された強化事業計画,とりわけ事業費予算書の内容を検討し,県から交付される予定である補助金の額を念頭に置きながら,調整を行う。 d その際,県体協が示した強化方針と一致しない事業の削除や修正を求め,各競技団体に配分すべき額を示す。 e これを受けて,各競技団体は,県体協の方針が具現された強化事業とその予算(配分されるべき額をふまえた予算)を記載した事業費予算書を県体協に提出する。 このような手順を経て,県体協は,県に補助金の交付申請を行い,県からの補助金の交付決定を受けた後,各競技団体の事業費予算書に基づいて県からの補助金を配分する。そのため,各競技団体が記載した事業計画や積算した予算額どおりに補助金が交付されて多数の補助金申請とそれに対する交付の 交付決定を受けた後,各競技団体の事業費予算書に基づいて県からの補助金を配分する。そのため,各競技団体が記載した事業計画や積算した予算額どおりに補助金が交付されて多数の補助金申請とそれに対する交付のように映るかもしれないが,上記手順から明らかであるように,補助事業者である県体協は,交付申請前に自らの強化方針を貫いた上で補助金の交付申請をしているのであり,本件補助金が各競技団体に対する各事業毎の補助金の集合であるということはできない。 (イ) 本条項ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力を持って調査したときに客観的に見て当該行為を知ることができたかどうか,また,当該行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁判所昭和63年4月22日第2小法廷判決(以下,「63年判決」という。)参照)。 そうすると,本件補助金は,予算計上され,これにかかる一連の財務会計上の行為も秘密裏に行われたものではないから,本件監査請求は,正当な理由の有無を論ずるまでもなく,本条項に規定する期間を徒過したものとして不適法というべきである。 (ウ) なお,本件補助金にかかる不正行為が秘密裏になされたものとしても,以下に述べるとおり,正当な理由は認められないものというべきである。 すなわち,監査請求制度は,住民訴訟という裁判所による解決方法に先立ち,違法・不当な事実を地方公共団体の自治的,内部的処理によって迅速かつ効果的に予防・是正することを目的とするものであり,監査委員は,監査請求書において請求人が主張する違法理由に拘束されることなく,それ以外にも,監査委員自ら積極的に調査を行うことにより判明した事実や法的知識等から別個の違法理由が判明すれば,そ あり,監査委員は,監査請求書において請求人が主張する違法理由に拘束されることなく,それ以外にも,監査委員自ら積極的に調査を行うことにより判明した事実や法的知識等から別個の違法理由が判明すれば,そのような違法理由も審査して,監査請求の判断を行わねばならない。したがって,普通地方公共団体の住民は,1つの補助金について,その一部について違法または不当に使用されたことを疑うに足る事実が存在すれば,それをもってその補助金の全体について住民監査請求をすることができるものである。そして,原告らの行った本件住民監査請求は,まさにそのような住民監査請求である。なお,監査請求を経た以上,訴訟において監査請求の理由として主張した事由以外の違法事由を主張することは何ら禁止されておらず,主張する違法事由が異なる毎に監査請求を別個のものとしてこれを繰り返すことを認める必要も実益もない。 ところで,本件監査請求では,住民が相当な注意力をもって調査すれば客観的に住民監査請求をすることができる程度に違法・不当性を疑うことができた時期は,本件補助金のうち平成7年度及び同8年度分については平成11年10月16日付け記事が,同平成9年度及び同10年度分については同年12月11日付け記事が,それぞれ報道された時点である。そして,本件監査請求は,いずれも,それらの日から5か月以上を経過した平成12年5月22日になされたものであるから,相当な期間内になされたものではなく,結局,正当な理由は存在しない。 さらに,原告らが平成11年12月16日付けで知事宛に提出した「県スケート連盟の補助金不正受給疑惑についての要請書」には,「同様の疑惑は,県体協を通して補助金が配分された少なからぬ競技団体についても指摘されています。」と記載があるのであり,スケート連盟以外の各競技団体についても不適 不正受給疑惑についての要請書」には,「同様の疑惑は,県体協を通して補助金が配分された少なからぬ競技団体についても指摘されています。」と記載があるのであり,スケート連盟以外の各競技団体についても不適正支出があるとの強い疑いを持っていたことは明らかである。住民監査請求を提起するには,合理的疑いを持つことができればそれで足り,個々の事業毎の不当利得が明らかになった時期がいつであるかを問わないのであるから,原告らは,遅くとも平成11年12月16日には住民監査請求をすることができたものである。さらに,原告らが平成7年度及び同8年度分にかかる本件補助金に関する住民監査請求書に添付した事実証明書は,県が行った平成10年度分の補助金にかかる調査の結果を示す表とスケート連盟の不適正支出を報道する新聞記事の写しのみである。したがって,原告らは,住民監査請求にかかる年度以外の年度の調査結果とスケート連盟だけの不適正支出に関する新聞記事とを添付して,平成7年度及び同8年度の本件補助金全体について住民監査請求を行ったものである。同様に,原告らは,平成9年度分の本件補助金全体について住民監査請求をしているのであるが,事実の存在を推認させる書面として提出された事実証明書は,平成11年10月16日付けの秋田魁新報の写し(内容は,平成5年度から平成8年度に,スケート連盟において不適正支出があったことを報道したもの)とスケート連盟の不適正執行にかかる総括表,スケート連盟の平成9年度当初事業計画・年度末決算報告・訂正決算報告比較及び平成9年度スケート連盟の補助金執行にかかる資料であり,いずれも平成9年度における県体協への補助金の使途の一部を示すに過ぎず,かつ,スケート連盟に関するものだけである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本条項の適用の有無)について(1) あり,いずれも平成9年度における県体協への補助金の使途の一部を示すに過ぎず,かつ,スケート連盟に関するものだけである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本条項の適用の有無)について(1) 原告らが本件訴訟において主張する怠る事実について,被告らは,県が県体協から提出された実態と異なった実績報告書等に基づいて補助金の額を確定したために,客観的に違法な補助金の額の確定がされたことより生じた不当利得返還請求権の不行使であって,本条項が適用される旨主張するのに対し,原告らは,違法,不当性のない補助金支出行為後に,県体協傘下の各競技団体が交付の条件に反する行為を行ったことにより生じた不当利得返還請求権の不行使であって,本条項が適用されない旨主張するので,この点につき検討する。 ア本条項が適用される「怠る事実」の範囲本条項が監査請求期間を規定する趣旨は,違法,不当な財務会計上の行為であっても,いつまでも住民監査請求又は住民訴訟の対象となりうるものとしておくことは,法的安定性を損ない,好ましくないことから,財務会計上の行為の法的安定及び地方財政の円滑な執行と,地方公共団体の財政の健全化という住民監査請求の目的との調和を図るところにある。本条項は,一般的には,違法,不当と主張される「当該行為」たる財務会計上の行為について,監査請求の期間を規定するものであり,法242条1項に規定する「怠る事実」を対象とするものではない。 しかし,普通地方公共団体において,違法に財産の管理を怠る事実があるとして,法242条1項の規定による住民監査請求があった場合に,当該監査請求が,当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠 該監査請求が,当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為を違法であるとし,当該行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実としている場合は,当該監査請求については,当該怠る事実に係る請求権の発生原因である当該行為のあった日又は終わった日を基準として,本条項の規定を適用すべきものと解するのが相当である(62年判決参照)。そして,かかる監査請求であるか否かは事の性質上,監査請求人の法律構成の如何にかかわらず,客観的に判断されるべきである。 また,当該監査請求にかかる実体法上の請求権を発生させた行為・事実等により,その行為・事実等のあった後になされた当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の特定の財務会計上の行為が違法,不当であるとされる場合で,かつ,当該監査請求に係る実体法上の請求権に基づく違法是正等の措置が後発の財務会計上の行為の違法是正等の措置と同一視できる場合には,当該監査請求については,後発の財務会計上の行為のあった日又は終わった日を基準として本条項の規定を適用すべきものと解するのが相当である。 なぜなら,このように解さないとすれば,本条項の規定により,後発の財務会計上の行為があった日又は終わった日から1年を経過した後にされた監査請求は不適法とされ,当該行為の違法是正等の措置を請求することができないものとされているにもかかわらず,当該行為を瑕疵あるものとした行為・事実等自体に基づく請求権の不行使という怠る事実として構成することにより当該行為の違法是正等の措置を請求しうることと同一の結果を招くこととなるのであって,法が本条項により監査請求に期間制限を設けた趣旨が没却されるものといわざるを得ないからである。 なお,法242条の2第1項にいう不当又は違 置を請求しうることと同一の結果を招くこととなるのであって,法が本条項により監査請求に期間制限を設けた趣旨が没却されるものといわざるを得ないからである。 なお,法242条の2第1項にいう不当又は違法とは,財務会計上の規範に照らして,客観的に当該行為に不適切又は規範に違反する点があることをいい,当該財務会計上の行為を行う職員の故意又は過失という主観的違法を必要とするものではないと解される。なぜなら,このように解さないとすれば,当該職員がやむを得ない過誤に基づいて客観的に違法な財務会計上の行為を行おうとし,又は行った時には,右過誤を指摘してその防止又は是正を求めることができないこととなるが,地方公共団体の財政を健全なものとするという住民監査請求の目的に照らして,このような結論は不当というべきであるからである。 イ次に,県における補助金支出の手続について検討する。 (ア) 規則(乙5)によれば,県における補助金支出の一般的な手続は,以下のとおりである。 a 補助金の交付を受けようとする者は,交付申請書を知事に提出する。 b 知事は,審査等により補助金を交付すべきものと認めた時は,補助金の交付の決定をする。なお,この場合,補助金の交付目的を達成するために条件を付することができる。知事は,交付の決定をした時は,速やかに決定の内容及び条件を申請者に対して通知する。 c 申請者は,通知を受けた場合に交付決定の内容又は条件に不服がある時は,申請の取下げをすることができる。取下げがあった場合,交付決定はなかったものとみなされる。 d 補助事業を行う者(以下,「補助事業者」という。)は,補助事業の遂行の状況に関して知事に報告をすることを要し,知事は,補助事業が交付決定の内容又は条件に従って遂行されていないと認める場合,これらに従って遂行するよう命ずることが 事業者」という。)は,補助事業の遂行の状況に関して知事に報告をすることを要し,知事は,補助事業が交付決定の内容又は条件に従って遂行されていないと認める場合,これらに従って遂行するよう命ずることがある。 e 補助事業者は,補助事業が完了したとき等に実績報告書を知事に提出する。 f 知事は,報告書の書類の審査等により報告に係る補助事業の成果が補助金の交付決定の内容及び条件に適合するかを調査し,適合すると認めたときは交付すべき補助金の額を確定し,交付決定の変更を要するときはこれを通知し,適合しないと認めるときは当該補助事業につき適合させるための措置をとるべきことを補助事業者に対し命ずることができる。 g 補助金は,補助事業の完了確認後に交付するものとする(以下,この原則的な取扱いを「後払」という。)。ただし,必要があるとき等には,既済部分に関し概算払をし,また,前金払をすることができる。 h 知事は,補助事業者が補助金を他の目的に使用したとき,提出書類の記載事項に虚偽があるとき,交付の条件に違反したとき等の場合,交付決定を取り消し,取り消しに係る部分の補助金の返還を命ずる。 ⅰ 知事は,額の確定によって確定した交付の決定額が既に交付した補助金の額に満たないときは,決定額を超える部分について期限を定めて返還を命ずる。 (イ) 以上に照らすと,県における補助金交付は,原則として,補助事業者の申請により,補助事業内容を確認して補助するかどうか及び補助の内容と条件とを決定し,補助事業が完了した後,当該事業が決定内容に適合することを調査した上で補助金額を確定し,補助金を後払するという手順を経るものである。補助金の支出についてこのような手順を経る必要があるのは,一方で,補助事業を申請する者の立場に立てば,県が当該事業に対し補助金を拠出するか不明な段階では資金 助金を後払するという手順を経るものである。補助金の支出についてこのような手順を経る必要があるのは,一方で,補助事業を申請する者の立場に立てば,県が当該事業に対し補助金を拠出するか不明な段階では資金調達の目処ないし目算が立たず,補助事業の着手が困難となりうることから,補助金の拠出の有無を実際の交付に先んじて判断すべき要請が認められ,この要請に対応するために補助金の交付決定をまず暫定的に行う必要があること,及び,他方で,県側には,県による補助金の交付が県民の税金等を無償で譲渡するものであって,当該事業が実際に実施されて発生した費用の限度内で,かつ,補助するのが適切かつ必要な限度でのみ,実際の補助金すなわち税金の交付を認めるべきという要請があり,この要請に対応するために,実際に行われた補助事業の結果等を事後的に調査して,交付を相当とする金額を最終的に決定し,必要と認められた限度で現実の支出を行えるようにする必要があることに求められるものと解される。 以上のような補助金額を最終的に定めるという実態や,額の確定により交付決定の変更を要するときには,交付決定の規則を準用して,単に通知してこの交付決定の変更を行い,額の確定により,定まった金額が補助金として支出されること等に鑑みれば,補助金の額の確定には補助金の交付決定という性格が認められるものであると解される。したがって,補助金の額の確定は,財務会計上の行為に該当すると認められる。 (ウ) ところで,本件補助金は県体協に対して前金払として交付されたものであるので,前金払の支出行為の性質を検討する。 補助金の前金払とは,特に必要される場合に限って,いまだ補助事業が完了する前に補助事業者に対し補助金が支出されるものである(規則258条4項。なお,たとえば,本件補助金であれば,事業活動の資金が唯一本件 金の前金払とは,特に必要される場合に限って,いまだ補助事業が完了する前に補助事業者に対し補助金が支出されるものである(規則258条4項。なお,たとえば,本件補助金であれば,事業活動の資金が唯一本件補助金で賄われているとして,前金払が特に必要であるとするようである。)。そうすると,前金払における具体的支出額は,補助金交付手続きにおける額の確定による「補助金の交付は適切かつ必要な限度に止めるべき」という要請を充たす以前の暫定的な交付額であって,当然に事業終了後にこれをその限度に変更されうることが予定される,暫定的な額であると認められる。規則259条2項が,実績報告書の調査等によって補助金の額の確定を行い,確定された額が支出額に満たない場合は超える分の返還を命ずると規定するのは,この趣旨を手続的に明示した規定と解される。 ウ原告らは,当該補助金支出後に,県体協傘下の各競技団体が本件補助金を目的外に使用し,県に対する提出書類に虚偽記載をしたという各事実により,規則259条1項1号及び2号により,補助金の返還請求権が成立した旨主張する。仮に,同各事実によって補助金の返還請求権が成立するとすれば,前記の補助金支出の手続に照らし,本件補助金の各年度における額の確定行為は,原告らの主張する同一の各事実により,本来決定すべき額と異なった補助金額を確定したものであり,客観的に違法,不当性を帯びたものとなるものと認められる。 そして,本件監査請求に係る実体法上の請求権は,補助金として交付された金員のうち,目的外に使用したこと等により返還されるべき金員の返還請求権であるから,原告らは,結局,本件補助金の交付にかかる違法是正等の措置を求めるものと解されるところ,原告らの主張と同一の事実によって違法,不当と認められる額の確定は,これにより,前金払としての暫定的 あるから,原告らは,結局,本件補助金の交付にかかる違法是正等の措置を求めるものと解されるところ,原告らの主張と同一の事実によって違法,不当と認められる額の確定は,これにより,前金払としての暫定的な本件補助金の交付を確定させるものであることに照らせば,原告らが請求する違法是正等の措置は,本件補助金にかかる額の確定行為に対する違法是正等の措置と同一のものになると解するのが相当である。 エしたがって,本件監査請求については,本件補助金に係る各年度毎の額の確定のあった日を基準として本条項の規定が適用されると解するが相当である。 (2) なお,原告らの主張は,虚偽の実績報告書を提出して補助金支出を確定させた事実を前提とした上で,さらに,本条項の適用がない旨主張するものとも理解されるので,以下,これについて検討する。 ア同前提に基づけば,発生すべき不当利得返還請求権は,財務会計上の行為である補助金の額の確定が客観的に違法であることに基づいて発生した財産権と認められ,その財産権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とするものと解される。したがって,本件訴訟に前置されるべき本件監査請求に対しては,前記(1)ア記載の本条項の趣旨に照らし,各年度毎の本件補助金の額の確定行為のあった日を基準として本条項の適用があるというべきである。 イこの点につき,原告らは,自治体職員を欺罔して公金を支出させるといった財務会計上の行為の直接の相手方の違法な行為によって自治体側の支出行為がなされた場合には,法242条の2第1項4号の措置等の問題は生じないから,行政の安定性を侵害することはないというべきとして,本条項の適用はない旨主張する。 しかし,前記本条項の趣旨にいう行政の安定性とは,単に,行政機関内部の職員の法的地位の安定性のみを指すものではなく,地方公共団体の財政執 ることはないというべきとして,本条項の適用はない旨主張する。 しかし,前記本条項の趣旨にいう行政の安定性とは,単に,行政機関内部の職員の法的地位の安定性のみを指すものではなく,地方公共団体の財政執行全体を指して要請されるものであるから,論旨は理由がない。 (3) 以上によれば,本争点において,被告らが主張するところは理由があり,本件請求に関しては,本件補助金の各年度の額の確定のあった日を基準として本条項の適用があると解するのが相当である。 2 争点(2)(監査請求期間の徒過の有無)について前記争いのない事実等によれば,原告らによる本件監査請求は,本条項に規定する監査請求期間を徒過してなされたものと認められる。 3 争点(3)(正当な理由の有無)について(1) 原告らは,本件補助金が,県体協傘下の各競技団体の各実施事業毎の補助金の集合であるとし,かつ,スケート連盟に係る補助金の不正支出の事実があったとしても,県体協傘下の他の競技団体に係る補助金の不正支出の存在について合理的な疑いを持つことはできないとし,さらに,スケート連盟に係る不正支出の調査結果が最終的に公表されたのは平成12年7月6日のことであり,他の競技団体の問題が明らかになったのは同年4月17日であるとして,同年5月22日付けでなされた本件監査請求には,本条項ただし書にいう正当な理由がある旨主張するのに対し,被告らは,本件補助金は県体協に対する各年度毎に1本(ただし,平成7年度分については2本。以下同じ。)の補助金であり,原告ら地方公共団体の住民は平成11年12月11日には,住民監査請求をすることができる程度に違法,不当性を疑うことができた旨主張するので,この点につき検討する。 (2) 本件補助金の性質について前記争いのない事実等,証拠(乙1,2,8ないし11,17)及び弁論 求をすることができる程度に違法,不当性を疑うことができた旨主張するので,この点につき検討する。 (2) 本件補助金の性質について前記争いのない事実等,証拠(乙1,2,8ないし11,17)及び弁論の全趣旨によれば,本件補助金に係る県の相手方は全て県体協となっていたこと,県体協は,傘下の各競技団体の上部団体であるところ,補助金として交付される強化費は国体での得点の期待度等を勘案して計算された金額を各競技団体に振り分けていたこと,本件補助金は実際には各競技団体がそれぞれの各事業について使用していたこと,強化補助金は県体協から脱退すると受領できなくなると理解されていたこと等が認められる。そうすると,配分される補助金を使用するのは確かに各競技団体であるものの,本件補助金は,各競技団体がそれぞれに補助要求金額を持ち寄って算出したものを集計したものではなく,したがって,各競技団体が独立して請求する補助事業を一括したものではなく,県体協が,国体における県の総合成績の向上等を目的として,より効率よく高得点を獲得することを企図して,各競技団体に補助金を分配していたものと推認される。 なお,この点につき,原告らは,県体協への補助金支出についての監査請求をした場合,監査委員は,本件補助金全額についての当否を判断することは考えられない旨述べる。しかし,このことをもって,本件補助金が実質的に県体協傘下の各競技団体に個別に支給される補助金を一括して決裁したにすぎないという事実を推認することはできない。 以上によれば,本件補助金は,県体協の事業目的に基づいた県体協に対する各年度毎に1個(平成7年度については2個)の補助金であると認めるのが相当である。 (3) 正当な理由の判断基準ア正当な理由が存すると認められるか否かは,①本条項の適用に当たり,基準とされる る各年度毎に1個(平成7年度については2個)の補助金であると認めるのが相当である。 (3) 正当な理由の判断基準ア正当な理由が存すると認められるか否かは,①本条項の適用に当たり,基準とされる財務会計上の行為又はその違法性,不当性を基礎づける事実が秘密裏になされたかどうか,②住民が相当の注意力をもって調査したときに,客観的に見て住民監査請求ができる程度に当該財務会計上の行為又はその違法性,不当性を疑わせる事実を知ることができたか,③それを知ることができたときから相当な期間内に住民監査請求をしたかという諸点から判断すべきものである(63年判決参照)。 イ ①について本件補助金に係る本条項の適用の基準とされる財務会計上の行為は,前記のとおり,各年度における本件補助金の額の確定行為であるが,この行為の違法性,不当性を基礎づける事実は,県体協が県に提出した各年度における補助事業に係る実績報告書が虚偽であったとの事実あるいは県体協傘下の各競技団体が補助金を目的外に使用したとの事実であると認められるところ,この違法性,不当性を基礎づける事実が秘密裏に行われたことは明らかである。 ウ ②及び③について前記争いのない事実等によれば,県民が相当の注意力をもって調査したときは,遅くとも本件各報道がなされた平成11年12月11日までには,客観的に見て本件補助金が支出され,同補助金の使用につき不正があるとの疑いを抱くに足りる事実を知ることができたというべきである。 原告らは,県体協傘下のスケート連盟以外の競技団体に係る本件補助金の支出の不正は,県が発表した平成12年4月17日付けの報告書を待たねば監査請求はできなかった旨主張する。しかし,前記のように,本件補助金は県体協傘下の各競技団体に個別に支出されたものではないから,スケート連盟に係る不正支出につ 成12年4月17日付けの報告書を待たねば監査請求はできなかった旨主張する。しかし,前記のように,本件補助金は県体協傘下の各競技団体に個別に支出されたものではないから,スケート連盟に係る不正支出について疑いを抱く余地があれば,本件補助金に係る監査請求は可能であったというに十分であり,原告らの主張は失当といわねばならない。なお,前記争いのない事実等によれば,県は,平成11年12月24日には他の競技団体についても調査を開始しているほか,証拠(乙18)によれば,原告らの中にも,同月16日までに,本件補助金に関し他の競技団体に係る不正支出を疑う者があった事実が認められるのであるから,住民が相当の注意力をもって調査したときに,客観的に見て住民監査請求ができる程度に当該財務会計上の行為の違法性,不当性を疑わせる事実を知ることができたことが推認され,他にこれを覆すに足りる証拠はない。 そうすると,本件監査請求は,当該財務会計上の行為の違法性,不当性を疑われる事実を知ることができた日から5か月を経過した後になされたものであって,知ることができたときから相当な期間内に住民監査請求をしたとは認められない。 エ以上によれば,本件監査請求が監査請求期間経過後にされたことについて,本条項ただし書に規定する正当な理由が存するものと認めることはできない。 4 したがって,本件監査請求は,監査請求期間を徒過した不適法なものというべきである。 第4 結論以上によれば,原告らの本件訴えは,適法な監査請求を経ていない不適法な訴えというべきであるから,本案についての検討をするまでもなく,却下することとして,主文のとおり判決する。 秋田地方裁判所民事第1部裁判長裁判官杉本正樹裁判官菊池章裁判官山崎克人 なく,却下することとして,主文のとおり判決する。 秋田地方裁判所民事第1部裁判長裁判官杉本正樹裁判官菊池章裁判官山崎克人
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