- 1 - 令和7年4月24日判決言渡令和6年(行ウ)第38号行政処分取消請求事件主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求A税務署長が令和4年3月1日付けで原告に対してした平成26年分ないし平成28年分、平成30年分及び令和元年分の所得税及び復興特別所得税に係る各重加算税賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は、原告が、平成26年分ないし平成28年分、平成30年分及び令和元年分(以下「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、税務調査を受けた後、収入の申告漏れ等があったとする修正申告書を提出したところ、A税務署長から、当該申告漏れは隠蔽 又は仮装したところに基づくものであるなどとして、本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けたため、被告を相手に、本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。 これに対し、被告は、本件訴えは行政事件訴訟法14条3項の出訴期間を経過して提起された不適法なものであるとして、その却下を求めている。 1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) 原告(甲1、2、8、乙4、調査嘱託の結果)ア原告は、令和5年8月当時、兵庫県(住所省略)の肩書住所地(以下「原告住所地」という。)に単身で暮らしており、原告の妻B及び子らは、横 浜市(住所省略)の住居(以下「本件送達場所」という。)に暮らしてい - 2 - た。 イ原告は、その母が開設したC(以下「本件診 )に単身で暮らしており、原告の妻B及び子らは、横 浜市(住所省略)の住居(以下「本件送達場所」という。)に暮らしてい - 2 - た。 イ原告は、その母が開設したC(以下「本件診療所」という。)の土地及び建物を所有していた。 (2) 本件各賦課決定処分の経緯(甲1、11、乙1)ア原告は、別表「審査請求に至る経緯」の「確定申告」欄のとおり、本件 各年分の所得税等の各確定申告書を提出した。 イ原告は、平成31年4月18日、平成30年分の所得税等の更正の請求書を提出し、A税務署長は、令和元年5月22日、平成30年分の所得税等について、別表の「更正処分①」欄のとおり、更正した。 ウ原告は、大阪国税局の税務調査を受け、令和4年1月19日付けで、別 表の「修正申告」欄のとおり、本件各年分の所得税等の各修正申告書を提出した。 エ A税務署長は、令和4年3月1日付けで、原告に対し、別表の「賦課決定処分」欄のとおり、本件各年分の所得税等に係る重加算税の各賦課決定処分(本件各賦課決定処分)をした。 オ原告は、令和4年12月6日、平成29年分ないし令和2年分の所得税等について、別表の「更正の請求」欄のとおり、更正の請求をした。これに対し、A税務署長は、令和5年3月3日付けで、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をした。 (3) 審査請求の経緯等(甲1~3、乙2、3、調査嘱託の結果) ア原告は、令和4年6月2日、国税不服審判所長に対し、本件各賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。 イ原告は、令和4年6月17日、国税審判官に対し、国税不服審判所が送付する書類の送達先について、原告住所地で 税相当額を超える部分の取消しを求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした。 イ原告は、令和4年6月17日、国税審判官に対し、国税不服審判所が送付する書類の送達先について、原告住所地ではなく、妻Bらが居住する本 件送達場所に送付するよう申し出た。 - 3 - ウ原告は、令和5年3月9日、国税不服審判所長に対し、本件各通知処分の全部の取消しを求める審査請求をし、この審査請求は、本件審査請求と併合審理されることとなった。 エ国税不服審判所長は、令和5年8月7日付けで、本件審査請求及び上記ウの審査請求をいずれも棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。) をした。本件裁決に係る裁決書謄本(以下「本件裁決書」という。)は、同月19日、配達証明郵便により、本件送達場所に配達された。 本件裁決書には「取消訴訟の提起についてのお知らせ」が同封されており、「この裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内」に原処分の取消訴訟を提起することができる旨(以下「本件教示文」という。)が 記載されていた。 (4) 本件訴えの提起(顕著な事実)原告は、令和6年2月22日、本件各賦課決定処分の取消しを求める本件訴えを提起した。 2 本案前の争点及び当事者の主張 本件の本案前の争点は、①出訴期間遵守の有無(争点1)、②出訴期間徒過についての正当な理由の有無(争点2)である。 (1) 争点1(出訴期間遵守の有無)(被告の主張)ア国税不服審判所長は、令和5年8月7日付けで本件裁決をし、本件裁決 書は、同月19日に原告に配達されていることから、原告は、同日、本件審査請求について本件裁決があったことを知ったものである。そうすると、本件訴えは、原告が本件裁決があったことを知った日から 書は、同月19日に原告に配達されていることから、原告は、同日、本件審査請求について本件裁決があったことを知ったものである。そうすると、本件訴えは、原告が本件裁決があったことを知った日から6か月(令和6年2月19日まで)の出訴期間(行政事件訴訟法14条3項)を経過した後の同月22日に提起されたものであるから、出訴期間を遵守しておらず、 不適法である。 - 4 - イ原告は、令和5年8月当時、単身赴任で兵庫県(原告住所地)におり、本件裁決があったことを知ったのは、妻Bから本件裁決書の画像がLINEで送られてきたのを見た同月22日であるから、本件訴えは出訴期間内に提起されている旨主張する。 しかし、処分書や裁決書が相手方に郵送された場合には、特段の事情に ついて具体的な反証がない限り、相手方は処分書等の配達を受けた日に処分等があったことを知ったものと事実上推定されるというべきである(最高裁昭和27年4月25日第二小法廷判決・民集6巻4号462頁、最高裁昭和27年11月20日第一小法廷判決・民集6巻10号1038頁)。 そして、本件裁決書は令和5年8月19日に本件送達場所に配達されてお り、特段の事情について具体的な反証がない限り、原告は、同日に本件裁決があったことを知ったものと推定されるところ、同日に原告が本件送達場所に不在であったことを示す証拠はなく、仮に同日に不在であったとしても、同月22日までの間に原告が本件送達場所に戻らなかったことを示す証拠もない。 また、本人以外の第三者が処分書等を受領したとしても、当該第三者が本人からの委託等により当該処分書等の受領権限を与えられていた場合には、当該第三者がこれを受領した時点で本人が当該処分等があったことを知った場合と同視すべきである( を受領したとしても、当該第三者が本人からの委託等により当該処分書等の受領権限を与えられていた場合には、当該第三者がこれを受領した時点で本人が当該処分等があったことを知った場合と同視すべきである(最高裁昭和35年11月22日第三小法廷判決・民集14巻13号2840頁)。しかるところ、原告は、妻Bが 居住する本件送達場所に原告宛ての郵便物が配達されるようにするとともに、妻Bに対して原告宛ての郵便物を受領することを委託していたものであり、本件審査請求に関する書類についても同様の対応を採っていたといえる。また、妻Bは、本件診療所等における経理業務を行うなどしていたものであり、原告の事業に実際に関与していた。これらによれば、仮に原 告自身が本件裁決があったことを知ったのが令和5年8月22日であった - 5 - としても、原告は、妻Bに対し、本件裁決書の受領を委託し、その受領権限を与えていたといえるから、本件送達場所に本件裁決書が配達された同月19日時点で、原告自身が本件裁決があったことを知った場合と同視すべきである。 (原告の主張) ア原告は、令和5年8月19日から22日までの間、関西で活動しており、本件送達場所にはいなかった。 また、本件送達場所には妻Bと3人の子らが居住しているところ、妻Bは、本件裁決書が本件送達場所に配達された令和5年8月19日、PTA役員として二女の通う高校に行っており、本件裁決書を受領したのは三女 のようである。妻Bは、同日、名古屋高等裁判所から決定書謄本(以下「別件決定書」という。)が配達されていることに気付き、その写真を原告にLINEで送信したが、本件裁決書が配達されていることには気付かず、3日後の同月22日になって初めてこれに気付き、同日、原告に対し、LINEでそ う。)が配達されていることに気付き、その写真を原告にLINEで送信したが、本件裁決書が配達されていることには気付かず、3日後の同月22日になって初めてこれに気付き、同日、原告に対し、LINEでその写真を送信した。 以上のとおり、原告は、令和5年8月22日にLINEで送られてきた本件裁決書の写真を見て本件裁決があったことを知ったものであり、同日から6か月以内に提訴された本件訴えは、行政事件訴訟法14条3項本文の6か月の出訴期間内に提起されたものである。 イ妻Bは、原告から書類の受取を委託されていたにすぎず、本件審査請求 に係る事項全てを管理していたわけではないし、本件診療所等の経理事務への関与も決算期に郵送されてきた書類を整理して税理士に再送するだけの形式的なものであったから、被告が援用する最高裁判例とは事案を異にし、妻Bが本件裁決書を受領した日をもって、原告が本件裁決があったことを知った日と同視することはできない。 また、妻Bは、令和5年8月19日に配達された郵便物のうち、別件決 - 6 - 定書は同日中に気付いたが、本件裁決書は同月22日まで気付かなかった。 これは、本件裁決書の入った封筒を三女が受け取り、書類や物品が雑然と置かれている本件送達場所のリビングに置いていたためであり、上記リビングの状況からしてあり得ることである。 (2) 争点2(出訴期間徒過についての正当な理由の有無) (原告の主張)本件教示文には、出訴期間が「裁決があったことを知った日」から起算されると記載されていたことから、原告は、本件裁決があったことを原告自身が知った令和5年8月22日から出訴期間が起算されると誤解したものであり、出訴期間を徒過したことにつき、行政事件訴訟法14条3項ただし書 の「 ことから、原告は、本件裁決があったことを原告自身が知った令和5年8月22日から出訴期間が起算されると誤解したものであり、出訴期間を徒過したことにつき、行政事件訴訟法14条3項ただし書 の「正当な理由」がある。 (被告の主張)本件教示文は、行政事件訴訟法14条3項及び46条1項の各規定に従って適切な教示をしたものである。原告の主張する誤解は、行政事件訴訟法14条3項本文の「裁決があったことを知った日」の解釈に係る法律の不知を いうものにすぎない。したがって、原告が出訴期間を徒過して本件訴えを提起したことにつき、同項ただし書の「正当な理由」があるとはいえない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(出訴期間遵守の有無)(1) 出訴期間の起算点(裁決があったことを知った日)について ア行政事件訴訟法14条3項は、処分につき審査請求をすることができる場合において、審査請求があったときは、処分に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、これに対する裁決があったことを知った日から6か月を経過したときは、提起することができない旨、ただし、正当な理由があるときは、この限りでない旨規定する。 行政事件訴訟法14条3項本文の「裁決があったことを知った日」とは、 - 7 - 当事者が書類の交付、口頭の告知その他の方法により裁決の存在を現実に知った日を指すものであるが、裁決書が当事者の住所に配達されるなど、社会通念上裁決のあったことが当事者の知り得べき状態に置かれたときは、反証のない限り、当事者は、その裁決があったことを知ったものと推定される(前掲最高裁昭和27年4月25日第二小法廷判決、前掲最高裁 昭和27年11月20日第一小法廷判決参照)。 イまた、当事者以外の第三者が裁決書を受領した 決があったことを知ったものと推定される(前掲最高裁昭和27年4月25日第二小法廷判決、前掲最高裁 昭和27年11月20日第一小法廷判決参照)。 イまた、当事者以外の第三者が裁決書を受領したとしても、当事者が当該裁決書の受領権限をその第三者に与えている場合には、たとえ当事者自身が裁決があったことを現実に知らなくとも、その第三者が裁決書を受領することにより裁決があったことを知った日をもって、行政事件訴訟法14 条3項本文の「これに対する裁決があったことを知った日」とすべきであり、この日から出訴期間の進行が開始するものと解される(すなわち、同項の出訴期間については、受領権限を有する第三者が裁決書を受領した時点で、本人が裁決があったことを知った場合と同視される。最高裁昭和28年12月18日第二小法廷判決・民集7巻12号1505頁、前掲最高 裁昭和35年11月22日第三小法廷判決参照)。 そして、裁決書がその受領権限を有する第三者の住所に配達されるなど、社会通念上裁決のあったことが当該第三者の知り得べき状態に置かれたときは、上記アの当事者本人の場合と同様、反証のない限り、当該第三者は、その裁決書を受領することにより裁決があったことを知ったものと推定さ れるというべきである。 (2) 妻Bが本件裁決書の受領権限を有していたか否か前提事実(3)ア並びに証拠(甲4、5、乙4)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各賦課決定処分に対する審査請求(本件審査請求)をしているところ、本件審査請求当時、兵庫県(住所省略)の原告住所地に単身で居住 していたが、株式会社D(代表取締役は原告)の奈良県(住所省略)の施設 - 8 - の立退作業や、玩具等をオークションに出品するための作業等のために原告住所地を空け 所地に単身で居住 していたが、株式会社D(代表取締役は原告)の奈良県(住所省略)の施設 - 8 - の立退作業や、玩具等をオークションに出品するための作業等のために原告住所地を空けることが多く、原告住所地への送付書類を速やかに確認することができなかったため、本件審査請求において、国税不服審判所から送付される書類の送付先を、妻Bらの居住する本件送達場所とするよう申し出て、本件診療所の経理業務を担当し原告の行う事業に関与していた妻Bに対し、 本件裁決書を含む送付書類を確認して原告に取り次ぐことを委託していたものと認められる(実際に、妻Bは、国税不服審判所から送付された原告宛ての封筒を開き、本件裁決書を撮影して原告にLINEで送信している。甲2、9)。そうすると、原告は、妻Bに対し、単なる郵便物(書類)の受取にとどまらず、本件裁決書の受領権限を与えていたといえるから、妻Bが本 件裁決書を受領して本件裁決があったことを知った日は、行政事件訴訟法14条3項本文の「これに対する裁決があったことを知った日」となる(すなわち、その時点をもって、原告が本件裁決のあったことを知ったものと同視される)というべきである。 これに対し、原告は、妻Bは単に書類の受取を委任されていたにすぎず、 本件審査請求に係る事項全てを管理していたわけではないのであり、また、本件診療所等の経理事務への関与も書類を送付するだけの形式的なものであったから、妻Bが本件裁決書を郵便で受け取った日を、原告が本件裁決があったことを知った日と同視することはできない旨主張する。しかし、妻Bは、送付されてきた原告宛ての郵便物につき、その送付主や書類内容等から 緊急性や重要性を判断し、必要があれば直ちに原告にLINEで知らせるなどといった事務を委託され い旨主張する。しかし、妻Bは、送付されてきた原告宛ての郵便物につき、その送付主や書類内容等から 緊急性や重要性を判断し、必要があれば直ちに原告にLINEで知らせるなどといった事務を委託されていたものと推認され、その中には、本件審査請求に係る書類(本件裁決書等)を受領し、原告に取り次ぐことも含まれていたといえ、原告が主張するように、単に原告宛ての郵便物(書類)の受取を任されていたにすぎないとはいえない。また、証拠(乙4)によれば、妻B は、本件診療所等について、現金出納帳、領収証、原告名義の預金通帳を基 - 9 - に会計ソフトへの入力を行うなどしていたことが認められるから、経理事務への関与は、書類の送付にとどまるものではなく、実質的な判断や対応を伴うものであったというべきである。原告の上記主張は採用することができない。 (3) 妻Bが本件裁決書を受領して本件裁決があったことを知った日について そこで、妻Bが本件裁決書を受領して本件裁決があったことを知った日について検討すると、前提事実(1)ア及び(3)イ、エのとおり、本件裁決書は、令和5年8月19日に妻Bの居住する本件送達場所に配達され、社会通念上本件裁決のあったことが妻Bの知り得べき状態に置かれたと認められるから、反証のない限り、妻Bは、同日に本件裁決書を受領して本件裁決があっ たことを知ったものと推定される。 これに対し、原告は、妻Bは令和5年8月19日に別件決定書の存在には気付いたが、三女が受け取ったと思われる本件裁決書の存在には気付かず、同月22日に本件裁決書に気付いてその写真を原告にLINEで送信した旨主張し、これを裏付けるものとして、①本件裁決書やその封筒等の写真(上 部に「2023/8/22 大阪税局」と記載のあるもの。 月22日に本件裁決書に気付いてその写真を原告にLINEで送信した旨主張し、これを裏付けるものとして、①本件裁決書やその封筒等の写真(上 部に「2023/8/22 大阪税局」と記載のあるもの。甲2、9)、②原告の携帯電話に保存された上記封筒の写真(写真に重ねて表示されている情報欄に同日午後2時20分に保存された旨が記載されているもの。甲10)及び③妻Bが同月19日に別件決定書の写真を原告に送信した際のLINEのトーク履歴(甲3)を提出する。 しかし、上記①の写真上部の「2023/8/22 大阪税局」との記載は、LINEのユーザー間で写真等のデータを共有保存するための「アルバム」のフォルダ名であり、ユーザーがいつでも自由に登録及び変更することができるものであるから、「2023/8/22 大阪税局」とのフォルダ名の記載をもって直ちに、妻Bが原告に対して令和5年8月22日に上記写 真を送信したとは認められないし、妻Bが同日まで本件裁決書の存在に気付 - 10 - いていなかったとも認められない。 また、上記②の写真の情報欄の記載は、原告が上記①の写真を令和5年8月22日中に自身の携帯電話に保存したことを示すものではあるが、妻Bが上記①の写真を原告に送信した日と、原告がその写真を携帯電話に保存した日が同一であるとは限らないから、上記②の写真の情報欄の記載をもって直 ちに、妻Bが原告に対して同日に上記①の写真を送信したとは認められないし、妻Bが同日まで本件裁決書の存在に気付いていなかったとも認められない。 さらに、上記③のトーク履歴は、妻Bが原告に対して令和5年8月19日に別件決定書の写真等を送信している途中で切れており、その後の原告と妻 Bとの間のトーク履歴は提出されていないから、その不提 さらに、上記③のトーク履歴は、妻Bが原告に対して令和5年8月19日に別件決定書の写真等を送信している途中で切れており、その後の原告と妻 Bとの間のトーク履歴は提出されていないから、その不提出部分において、同日中に本件裁決書等の写真が送付された可能性を疑わざるを得ないし、他方、本件裁決書の写真等が送信されたという同月22日における原告と妻Bとの間のトーク履歴も提出されておらず、同日中に本件裁決書等の写真が送付されていない可能性も疑わざるを得ないのであって、原告が提出する上記 ③のトーク履歴は原告の主張を裏付けるに足りず、むしろ、その提出されたトーク履歴の範囲が上記のようなものであることは、その立証趣旨に照らし不自然な面がある。したがって、上記③のトーク履歴をもって、妻Bが同日に原告に対して本件裁決書の写真を送信したとは認められないし、妻Bが同日まで本件裁決書の存在に気付いていなかったとも認められない。 なお、原告は、当裁判所から、令和5年8月19日及び22日の妻BとのLINEのトーク履歴の提出を求められたが、これらを証拠提出していないところ、提出できない理由につき、原告は、同年12月3日、それまで使用していた携帯電話を二女と交換し、LINEのトーク履歴が全て消えてしまったため、提出を求められたトーク履歴を証拠として提出することはできな い旨説明している。しかし、携帯電話を二女と交換し、トーク履歴が全て消 - 11 - えたという事情が本当にあったのかは疑わしい上、仮にそのような事情があったとしても、原告は、妻Bの携帯電話に残されたトーク履歴を証拠提出することが可能であったはずであり、原告が令和5年8月19日(残りの部分)及び22日の妻Bとのトーク履歴を証拠提出しないことはやはり不自然であって、 は、妻Bの携帯電話に残されたトーク履歴を証拠提出することが可能であったはずであり、原告が令和5年8月19日(残りの部分)及び22日の妻Bとのトーク履歴を証拠提出しないことはやはり不自然であって、上記認定判断は左右されないというべきである。 以上を総合すると、上記①及び②の写真や上記③のトーク履歴を検討しても、妻Bが令和5年8月22日まで本件裁決書の存在に気付いていなかったとの反証がなされたとはいえない。そうすると、妻Bは、同月19日に本件裁決書を受領して本件裁決のあったことを知ったものと推定されるというべきである。 (4) 出訴期間遵守の有無についてそうすると、本件裁決書の受領権限を有する妻Bが令和5年8月19日に本件裁決書を受領して本件裁決があったことを知ったものと推定されることにより、その時点で、原告が本件裁決があったことを知ったものと同視され、行政事件訴訟法14条3項本文の6か月の出訴期間が進行を開始すると ころ、本件訴えは、同日から6か月以上経過した令和6年2月22日に提起されたものであるから(前提事実(4))、上記出訴期間が経過した後に提起されたものというべきである。 2 争点2(出訴期間徒過についての正当な理由の有無)(1) 原告は、本件教示文には、出訴期間が「裁決があったことを知った日」か ら起算されると記載されていたことから、本件裁決があったことを原告自身が知った令和5年8月22日から出訴期間が起算されると誤解したものであり、出訴期間を徒過したことにつき、行政事件訴訟法14条3項ただし書の「正当な理由」がある旨主張する。 そこで検討するに、行政事件訴訟法14条3項ただし書の「正当な理由」 とは、同項本文の定める出訴期間内に取消訴訟を提起しなかったことについ - し書の「正当な理由」がある旨主張する。 そこで検討するに、行政事件訴訟法14条3項ただし書の「正当な理由」 とは、同項本文の定める出訴期間内に取消訴訟を提起しなかったことについ - 12 - ての社会通念上相当と認められる理由をいい、原告の多忙、旅行・出張、法律の不知等の主観的な事情はこれに当たらないものと解される。しかるに、上記1(1)イのとおり、当事者以外の第三者が裁決書を受領したとしても、当事者が裁決書の受領権限をその第三者に与えている場合には、たとえ当事者が裁決があったことを知らなくとも、その第三者が裁決書を受領することに より裁決があったことを知った日が、行政事件訴訟法14条3項本文の「裁決があったことを知った日」となると解されるところ、原告の上記主張は、このような「裁決があったことを知った日」の意味や正しい解釈を知らず、本件裁決があったことを原告自身が現実に知った日のことであると誤解した旨をいうものであって、このような事情は、災害や長期入院等の客観的な 事情ではなく、法律の不知又はこれに類する原告の主観的な事情にとどまるというべきである。また、原告の主張を前提としても、原告自身が本件裁決があったことを知ったとする令和5年8月22日から出訴期間満了日である令和6年2月19日まで、ほぼ6か月(5か月と28日)の期間があり、その間に本件訴えを提起することができなかった客観的な支障は特に見当 たらない上、本件裁決書の入っていた封筒には「令和5年8月17日」と大きく記載されており(甲2の1など)、原告が自分で考えた出訴期間の最終日ではなく、多少の余裕をもって早めに本件訴えを提起することも十分可能であったと考えられることも踏まえると、原告が主張する上記の事情は、出訴期間内に本件訴えを提起しなかっ 自分で考えた出訴期間の最終日ではなく、多少の余裕をもって早めに本件訴えを提起することも十分可能であったと考えられることも踏まえると、原告が主張する上記の事情は、出訴期間内に本件訴えを提起しなかったことについての社会通念上相当と認 められる理由となるものとはいい難い。 したがって、本件裁決があったことを原告自身が現実に知ったのは令和5年8月22日である(それまでは本件裁決があったことを知らなかった)という原告の主張を前提としてもなお、出訴期間を経過したことにつき、行政事件訴訟法14条3項ただし書の「正当な理由」があったとは認められない。 原告の上記主張は採用することができない。 - 13 - (2) 原告は、その他にも、出訴期間の起算点(本件裁決があったことを知った日)や正当な理由の有無につき縷々主張するが、いずれも上記認定判断を左右するものではなく、又は独自の見解に立脚するものであって、採用することができない。 3 結論 よって、本件訴えは不適法であるからこれを却下することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地淳 裁判官三木裕之 裁判官中村雅人 (別表省略)
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