平成18(ネ)229 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成19年3月20日 福岡高等裁判所 破棄自判 福岡地方裁判所 小倉支部 平成17(ワ)236
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判決文本文6,900 文字)

-1-主文 原判決を次のとおり変更する。 (1)YはX1に対し271万3989円X2に対し80万46,,63円及びこれらに対するいずれも平成14年11月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)Xらのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを10分し,その1をYの負担とし,その余をXらの負担とする。 この判決は第1項の(1)に限り仮に執行することができる。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 Yは,X1に対し3210万1102円,同X2に対し1070万0367円及びこれらに対する平成14年11月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 事案の要旨本件はAが自宅建物の2階窓以下本件窓というから転落して死亡,(「」。)した事故以下本件事故というについてその原因は同建物の所有者(「」。),,であり賃貸人であるBが,本件窓に手すり等を設置していなかったことにあるとして,Aの遺族であるXらが,Bの相続人であるYに対し,債務不履行責任ないし土地工作物責任(所有者の責任)に基づいて,損害賠償を求めている事案である。 原審が,Xらの請求をいずれも棄却したため,Xらが控訴した。 前提事実(1)Bは会社勤めをしていたが退職後の生活に備えて賃貸用建物として,,,-2-原判決別紙物件目録記載の建物以下本件建物という及びその北側に(「」。)あって本件建物に隣接する同じ構造の建物1棟以下別棟というの建(「」。)築を計画し,昭和48年2月16日ころ,両建物を建築した。両建物は,いずれも木造セメント瓦葺2階建で,1棟の建物の内部が中央部 に隣接する同じ構造の建物1棟以下別棟というの建(「」。)築を計画し,昭和48年2月16日ころ,両建物を建築した。両建物は,いずれも木造セメント瓦葺2階建で,1棟の建物の内部が中央部で2つに区分されている1棟2戸の構造となっており,各戸には1階と2階をつなぐ階段が設置されていた。 Bは,上記両建物の近くにある自宅に居住しながら,自らこれら賃貸用建物の管理をしていた。 (甲1,乙1,2の各1・2,5,6,当審証人C。 )(2)平成12年10月1日Bは本件建物のうち正面向かって右側部分の,,,1階及び2階部分以下本件居室というを下記の約定でX1に貸し(「」。),渡した(争いがない,甲2。 )賃料月4万5000円賃貸期間2年間特約①本件建物の屋根外壁等の修理は賃貸人であるBの負担とする。 ②入居者は,Xら及びAとする。 ,,,(3)本件居室は1階に玄関が南東向きに設置されておりそのほか1階には浴室,トイレ,台所,居室1間が,2階には居室2間があり,玄関前の敷地には,コンクリート舗装が施された幅約4メートルの駐車スペースが設けられていた。本件窓は,2階の南東側,すなわち,玄関のほぼ真上の位置に設けられており,床(畳)面から約73センチメートルの位置に窓枠下部があって,2枚の窓ガラスを交互にスライドさせて開閉する構造となっており,網戸も設置されていたが,手すりや柵等は設置されていなかった。また,本件窓の両脇の外壁には,蛇腹式(伸縮式)の物干し竿受け(以下「本件竿受けというが設置されており竿を受ける位置が遠近2カ所に設けられて」。),-3-いた(甲5の10・11,乙1の2)が,既に錆付いていて伸縮できない状態であった。その状態における外壁面から本件竿受けの先端ま されており竿を受ける位置が遠近2カ所に設けられて」。),-3-いた(甲5の10・11,乙1の2)が,既に錆付いていて伸縮できない状態であった。その状態における外壁面から本件竿受けの先端までの距離は47センチメートル,2階床面を基準にした本件竿受けの高さは138.5セ。 ,,ンチメートルであるなお本件建物の他の1戸及び別棟の建物についても本件竿受けとほぼ同一箇所に本件竿受けと同様の器具が設置してあるが,それぞれ規格は異なる。 (4)Aは平成14年11月6日午前8時50分ころ本件窓から転落し救,,,,,急車でh市i区○町○番○号所在のm病院に搬送されたが脳死状態であり結局,同月16日午後3時50分ころ,急性硬膜下血腫により,同病院で死亡した(甲4,原審及び当審におけるX1(以下においては,単に「X1」と表示する。 。))(5)Aの相続人は夫であるX1同XとAとの間の子であるX2のほかA,,,と前夫との間の2人の子である。したがって,Aの死亡により,X1は2分の1,同X2は6分の1の各割合で,Aの権利義務を承継した(甲10(各証。 ))(6)Bは本件事故発生後直ぐに本件建物及び別棟の各南東側窓に手すり,,,を設置した(甲5(各証,弁論の全趣旨。 ))(7)Bは平成15年11月4日死亡しYが唯一の相続人としてBの権利義務,全部を承継した(争いがない,甲11(各証。 )) 争点と当事者の主張次のとおり,付加,訂正するほか,原判決3頁5行目から9頁末行までのと(,,,おりであるただし各項の見出しについては例えば1(一)とあるのを(1)ア2(二)(1)を(2)ア(ア)のように読み替える)から,これを引用する。 。 (1)同4頁23行目の「約73㎝であり」の次から おりであるただし各項の見出しについては例えば1(一)とあるのを(1)ア2(二)(1)を(2)ア(ア)のように読み替える)から,これを引用する。 。 (1)同4頁23行目の「約73㎝であり」の次から同24行目の「低い」ま,でを転落防止用の手すり等が設けられていないことと相俟つと各種安全,「,基準に照らし,通常有すべき安全性を備えていない」と改める。 -4-(2)同6頁4行目末尾の次に「本件竿受けは,XらやAが本件賃借部分に入,居する前から設置されていたものであり,Bが設置したと考えられる(竿受けの規格が異なっていることは,上記推認を妨げない」を加える。 。)。 (3)同7頁8行目の「また」の次に「本件竿受けは,Bが設置したものでは,なく賃借人らが勝手に設置したものに過ぎないしを加え同11行目か,,」,ら12行目にかけての「本件窓の物干し」を「本件竿受け」と改め,同14行目のものであったの次に蛇腹部分が錆び付いて伸縮ができなかった「」「(ようであるが,油をさせば動くようになる」を加える。 。)第3当裁判所の判断 争点(1)について(1)X1の供述によれば,以下の事実が認められる。 アX1は,移動たこ焼き屋をして収入(月収15万円)を得ていたが,かねてから週3回の人工透析を受けなければならない身体であり平成14年,11月6日もh市j区内の病院に人工透析を受けに行くために午前8時,,50分ころ自宅を出発しようとしていた他方Aはh市の臨時職員准。 ,,(看護師としてn病院の看護科に勤務しながら家事を取り仕切っていた),,が,当日は休みであり,洗濯物を持って2階に上がって行った。 イX1が,玄関で靴を履いて今まさに外に出ようとしたところ,外でドサッという音 の看護科に勤務しながら家事を取り仕切っていた),,が,当日は休みであり,洗濯物を持って2階に上がって行った。 イX1が,玄関で靴を履いて今まさに外に出ようとしたところ,外でドサッという音がしたのでAが洗濯物を落としたものと考え外に出て見たと,,ころ玄関前の駐車スペースにAが仰向けに倒れておりその周りには洗濯,,物が56枚程落ちており本件窓の外にある物干し竿には洗濯物が一部干,,されていた。 (2)前提事実(3)及び上記(1)の事実によればAは本件窓の外にある物干し竿,,。 に洗濯物を干していて本件窓から転落したものであることは明らかであるYの主張するところは,一般的な疑問ないし可能性を指摘するにすぎず,本件事故については採用の限りでない。 -5- 争点(2)及び(3)について,,(1)上記両争点は本件窓に手すり等が設置されていなかったことをもって土地の工作物の設置又は保存に瑕疵がある(民法717条)というべきなの(),()か争点2または賃貸人としての安全配慮義務違反となるのか争点3というものである。そうであれば,両者は,法律構成は相違するものの,その核心部分は,入居者の安全性確保という観点から,本件窓に手すり等が設置されていなかったことをどう評価するかという点においては共通するものであるから,以下,便宜一括して検討を加えることとする。 (2)本件窓の外側に本件竿受けが設置されていたことは,前提事実(3)のとおりである。もっとも,Xら及びAが本件居室に入居した際には既に本件竿受けは存在していたものであり,Aは,本件居室に入居して以来,本件竿受け,()。 に物干し竿を設置しこれを使用して洗濯物を干していたものであるX1ただし,本件竿受けの設置者および設置時期は明らかでは は存在していたものであり,Aは,本件居室に入居して以来,本件竿受け,()。 に物干し竿を設置しこれを使用して洗濯物を干していたものであるX1ただし,本件竿受けの設置者および設置時期は明らかではない(Bが設置したと認めるには至らない。 。)(3)ところで本件竿受けが蛇腹式伸縮式であることからすると本件窓,(),の外に洗濯物を干す際には,片方の窓ガラスを開け,蛇腹部分を移動させて,,,本件竿受けを手前に引き寄せ洗濯物を物干し竿に直接掛けるかあるいは物干し用品(ハンガー類等)に洗濯物を干し,これを物干し竿に掛けた後,蛇腹部分を移動させて本件竿受けを必要な位置まで伸ばすかすることが予定されていたものと考えられるが,実際には,蛇腹部分が錆びているために伸縮させることができなかった(前提事実(3) 。しかし,X1もAも,錆を取)ったり油をさすなどして本件竿受けの伸縮機能の回復を試みたり,Bに連絡して補修を求めたりしたことはなかった(X1,弁論の全趣旨。 )(4)本件窓が床(畳)面からの高さ(以下「腰高」という)約73センチメ。 ートルの位置に窓枠下部があって,2枚の窓ガラスを交互にスライドさせて開閉する構造となっていたこと,本件窓には手すりや柵等は設けられていな-6-かったこと(以上,前提事実(3) ,Aは身長約157センチメートルであっ)たこと(X1)を総合すると,本件窓から身を乗り出したりした場合,窓下に転落することもないとはいえない特に上記(3)のとおり本件竿受けの。 ,,蛇腹部分が錆び付いていて本来の伸縮機能を失っていたことからすると,洗濯物を干すためには,手に洗濯物を持ったままの状態で,本件窓からある程度外に身を乗り出さなければならないことが考えられるのであって,万一身体のバランスを失 来の伸縮機能を失っていたことからすると,洗濯物を干すためには,手に洗濯物を持ったままの状態で,本件窓からある程度外に身を乗り出さなければならないことが考えられるのであって,万一身体のバランスを失ったような場合には,そのまま下に転落する危険性がなくはなかったものである。そして,現に,Aは本件窓の外に洗濯物を干している際に,本件窓から転落したのである(上記1。 )(5)そうであれば本件窓に手すりや柵等が設置されていなかったことは転,,落防止という観点からしてその安全性が十分なものでなかったということにならざるを得ない。したがって,本件窓の設置・保存に瑕疵があったというべきである。 (6)ところでYはこの点に関して本件窓の腰高が約73センチメートル,,,あることをもって窓として通常有すべき安全性を備えているとする如くであり,そのことを前提として縷々主張する。 建築基準法では,採光や換気のために開口部の面積をどの程度確保しなければならないかの規制はあっても,窓の腰高を規制する規定はないが,建設業界では,一般に,幼児が足をかけてよじ登ることのできる高さ65センチメートルと幼児の墜落を防止するに足りる高さ85センチメートルを参考に65センチメートルから85センチメートルが適当と考えられている甲,( 裁判所に顕著な事実したがって本件窓の腰高は上記基準の範囲内,)。 ,であるものということができるし,また,採光や通風,さらには居室の開放感等の見地からしても,窓の腰高を余り高くすることはできないし,相当でもないものといわなければならない。そうであれば,約73センチメートルという本件窓の腰高自体を瑕疵とみなすことはできない。 -7-しかしながら,本件窓の外には本件竿受けが設置され,賃借人が本件窓か,,,ら戸 なければならない。そうであれば,約73センチメートルという本件窓の腰高自体を瑕疵とみなすことはできない。 -7-しかしながら,本件窓の外には本件竿受けが設置され,賃借人が本件窓か,,,ら戸外に洗濯物を干すことが予定されていたのでありこの場合賃借人は戸外に体を伸び出す姿勢を取ることになるので,本件窓の安全性に対する検討に際しては,この点を併せ考慮しなければならないのである。なお,上記(2)のとおり本件竿受けはBが設置したと断ずることはできないが本件居,,室にあって,洗濯物を干すには本件窓を利用して戸外に干すのが最適であるものと認められるし,Bにおいてもそのことを認識していたものと推認されるところであるそして上記(3)の事実に照らせば本件竿受けに設置した。 ,,物干し竿に洗濯物を干すには一定程度の危険性があったことは否めないから,本件窓の外に手すり等を設置して,転落防止に備えるべきであったものである。 そうすると,本件窓の腰高について瑕疵がないからといって,本件窓が十分な安全性を備えていたということにはならない。 争点(4)(1)本件事故によるAの損害としては治療費・入院費等が9751円である,ことが認められ,葬儀費は100万円の限度で認めるのが相当である。 ,,(2)逸失利益については算定の基礎となるべき年収を331万7656円生活費控除率4割として,就労可能年数18年のライプニッツ係数11.690を乗じて計算すると,2327万0039円となる。 (3)慰謝料は2400万円とするのが相当である。 (4)ただし,上記2(6)のとおり,本件窓の腰高自体は相当性の範囲内にあったこと,本来,本件竿受けの蛇腹部分を縮めて物干し竿を本件窓に近づけて洗濯物を干し,その後に本件竿受けを必要な位置まで伸ばすという仕組 し,上記2(6)のとおり,本件窓の腰高自体は相当性の範囲内にあったこと,本来,本件竿受けの蛇腹部分を縮めて物干し竿を本件窓に近づけて洗濯物を干し,その後に本件竿受けを必要な位置まで伸ばすという仕組みであり,それが有効に機能しているならば,約73センチメートルという本件窓の腰高と相俟って,洗濯物を干す際にも,通常の注意を払えば転落することはないと考えられること,現に,本件建物と別棟は,本件事故発生まで3-8-0年近くにわたり,賃貸物件としてその用に供されてきたが,その間,本件事故のような転落事故が発生したことはないこと,XらやAは,本件事故まで既に2年間以上にわたり,本件居室で生活を続けていたものであり,その間,Aは,本件窓の外に洗濯物を干し続けてきたにもかかわらず,同人及びX1において本件竿受けの不具合を修理・調整することもなく,また,Bに対して本件竿受けの不具合や本件窓の危険性を訴えるでもなかったこと(上記2(2)及び(3))といった諸事情に照らせば,本件事故の発生については,Aにも極めて大きな過失があったことは否定できず,その過失割合は90パーセントに及ぶものであり,この割合で過失相殺をするのが相当である。 そうすると,Aは,上記損害額合計4827万9790円の10パーセントに相当する482万7979円の損害賠償請求権があり,これをX1が2分の1,同X2が6分の1の割合で相続したことになる。したがって,X1の取得分は241万3989円円未満切り捨て同X2のそれは80万4(),663円となる。 (5)弁護士費用は,X1についてのみ30万円の限度で認めるのが相当である。 結論 以上の次第であるから,Xらの請求は上記の限度で理由がある。これと異なりその請求を全部棄却した原判決は不当であって,変更を免れない。したがって,本 30万円の限度で認めるのが相当である。 結論 以上の次第であるから,Xらの請求は上記の限度で理由がある。これと異なりその請求を全部棄却した原判決は不当であって,変更を免れない。したがって,本件控訴は一部理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第3民事部裁判長裁判官西理-9-裁判官有吉一郎裁判官吉岡茂之

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