- 1 -平成16年(ワ)第4918号損害賠償請求事件主文 被告は,原告に対し,90万円及びこれに対する平成17年1月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用はこれを5分し,その1を被告の,その余を原告の各負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成17年1月12日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事実関係本件は,被告の開設するクリニックにおいて,複数の美容整形手術を受けた原告が,被告がその説明義務を尽くさず,かつ,手技上の過誤により意図せぬ結果が発生したなどと主張して,被告に対し,債務不履行責任に基づき,治療費,慰謝料等の賠償を求めた事案である。 前提事実次の事実は当事者間に争いがないか,証拠(甲B6,乙A1,乙B1,原告及び被告各本人の供述)及び弁論の全趣旨により認めることができる。 (1) 当事者ア被告は,名古屋市内において,aクリニック(以下「被告クリニック」という。)を開設している者である。 イ原告は,昭和39年10月12日生まれであり,被告クリニックにおいて,平成7年1月9日以降,こめかみ形成術,隆鼻術,重瞼術及び下顎角形成術等の美容整形手術を受けた者である。 - 2 -(2) 診療経過等ア原告は,かつて,被告クリニック以外のクリニックで,下顎や鼻,目の美容整形手術を受けたことがあった。 イ原告は,平成6年12月26日,被告クリニックを初めて受診し,被告に対し,頬骨が張ってこめかみが窪んでいるように感じるので,これを改善したい旨の希望を申し入れたため,被告は,原告の上記希望に応じるため, ,平成6年12月26日,被告クリニックを初めて受診し,被告に対し,頬骨が張ってこめかみが窪んでいるように感じるので,これを改善したい旨の希望を申し入れたため,被告は,原告の上記希望に応じるため,こめかみ形成術を行うことにした。 ウ被告は,平成7年1月9日,原告に対し,シリコンプレートをこめかみに埋入させる方法によるこめかみ形成術を行った。 エ原告は,その後も,平成8年5月2日まで,被告クリニックにおいて,こめかみ,鼻,眼及び下顎について,美容整形手術を複数回受けるなどしたが,その概要は,次のとおりである(以下,原告が被告クリニックで受けた美容整形手術を総称して「本件各美容整形手術」という。)。 (平成7年)1月18日原告は,被告に対し,鼻根部を高くするなどして鼻の形を整容したい旨の希望を申し入れたため,被告は,原告がかつての美容整形手術で鼻に挿入されていたインプラントを取り出して,L型インプラントを入れ替える隆鼻術を行うことにした。また,その際,原告は,被告に対し,鼻孔の形の整容の希望も申し入れたため,被告は,鼻孔の切開によって整容することとし,診療記録上に鼻孔の絵を描くなどしながら,これを説明した。 1月20日隆鼻術鼻孔の切開による整容術2月7日原告は,被告に対し,上記手術による鼻孔の整容結果に不満を申し入れるとともに,こめかみが左右で不均衡な- 3 -ので,左側のこめかみを再度手術して欲しい旨申し入れた。被告は,原告を診察し,特に異状を認めなかったが,原告からの不満ないし希望の申し入れを受け,左側のこめかみを再度手術し,また,鼻に挿入したインプラントを入れ替えることとした。さらに,原告は,被告に対し,切れ長の眼にしてほしいなどと希望したため,被告は,原告に対し,その希望のとおりの眼にすることは無理であるが, ,また,鼻に挿入したインプラントを入れ替えることとした。さらに,原告は,被告に対し,切れ長の眼にしてほしいなどと希望したため,被告は,原告に対し,その希望のとおりの眼にすることは無理であるが,埋没法による重瞼術で目尻のラインを作り出すことを試みることにした。 2月16日左こめかみ再手術鼻のインプラント入替え両眼について埋没法による重瞼術2月28日鼻の下,唇の形成について説明3月10日部分的頬骨削りについての説明3月20日部分的頬骨削り術4月3日右側エラ削りについて説明4月6日右側エラ削り手術4月8日鼻の再手術希望4月18日今後左のエラを切除することを説明左目上部の皮膚切除について説明4月20日原告から被告に対し,電話で,左こめかみ及び鼻の再手術希望5月1日眉毛下部の形成について説明5月8日鼻の形成について説明5月12日原告から被告に対し,電話で,次の手術内容を左エラ削りのみにするよう連絡- 4 -5月18日左エラ削り手術5月25日上眼瞼余剰皮膚切除6月6日右エラ削り再手術6月15日隆鼻再手術上眼瞼再手術鼻孔下部縫合7月21日鼻の下にコラーゲン注射7月22日原告から被告に対し,電話で,鼻部を縫合して欲しい旨依頼7月24日鼻翼を小さくするための鼻部縫合手術9月12日鼻翼形成手術について説明9月20日鼻翼形成手術10月11日左外眼角部瘢痕下骨削りについて説明10月17日左外眼角部瘢痕下骨削り手術10月25日前額瘢痕について説明11月1日顎の形成について説明11月4日鼻の形成について説明11月11日下顎形成術について説明11月15日鼻尖形成術11月24日原告から被告に対し,咬筋を切断するよう依頼したが,被告は,同切断は被告の判断でする旨説明 1月4日鼻の形成について説明11月11日下顎形成術について説明11月15日鼻尖形成術11月24日原告から被告に対し,咬筋を切断するよう依頼したが,被告は,同切断は被告の判断でする旨説明。 11月30日原告から被告に対し,顎を全部小さくしたい旨希望12月2日原告から被告に対し,右下顎部及び右筋肉切断を提案したが,被告は,げっそりしたような顔になるなどの危険性を説明。 (平成8年)- 5 -2月1日レントゲン撮影2月5日鼻の形成手術4月4日埋没法による重瞼再手術4月22日鼻の形成手術 争点 (1) 本件各美容整形手術により,原告の主張する診療契約上の債務不履行の結果が発生したか。 (2) 上記結果の発生が認められる場合,上記手術に手技上の過誤があるか。 (3) 上記手術の際,被告が原告に対する説明義務を怠った過誤があるか。 (4) 原告の損害の有無及び金額 争点(1)に関する当事者の主張(1) 原告原告には,本件各美容整形手術により,こめかみの左右不均衡,鼻孔の左右不均衡及び不整,重瞼ライン及び開瞼の左右不均衡という意図せぬ結果が発生し,また,下顎角の左右不均衡の改善という意図した結果が達成されなかった。 (2) 被告ア人体は,器官が対称に備わる場合にも同じものではないから,本来的に完全な左右対称になることはあり得ない。また,美容整形手術は,すでにある生体に修正を施すものであるから,患者の主観的満足に近づけるとしても,自ずと限界がある(特に,原告は,もともと,頬骨の右側が左側よりも大きいという不均衡,顎の左側が右側よりも大きいという不均衡があった。)。 このような事情に照らせば,どの程度の不均衡,不整をもって診療契約上の債務不履行と評価するかについては,社会常識をもって判断しなければならず,原告に 側が右側よりも大きいという不均衡があった。)。 このような事情に照らせば,どの程度の不均衡,不整をもって診療契約上の債務不履行と評価するかについては,社会常識をもって判断しなければならず,原告についてみれば,本件各美容整形手術により,診療契約上- 6 -の債務不履行による損害賠償が問題になるほどの不均衡,不整は発生していない。 イ加えて,原告が証拠として提出する原告の容貌の写真は,いずれもその撮影当時(平成17年10月28日)の原告の容貌を表すものであるが,生体である以上,経年変化が避けられない(下顎についてみれば,咀嚼のたびに顎の筋肉が使用されるが,口内のどちら側で咀嚼することが多いかにより顎の筋肉の使用頻度が異なってその発達の度合いも異なる。)。 本件各美容整形手術は,その施術当時の原告の容貌等を前提とするものであるから,仮に現在の原告の容貌に左右不均衡な部分があるとしても,それが本件美容整形手術の結果によるものであると断定することはできない。 争点(2)に関する当事者の主張(1) 原告アこめかみ形成術(ア) こめかみ形成術には,シリコンプレート埋入,筋膜移植,脂肪注入等の方法があり,一般にはシリコンプレート埋入の方法が広く実施されているが,各方法にはそれぞれ利点及び欠点がある。原告に対するこめかみ形成術で採用されたシリコンプレート埋入の方法は,シリコンプレートが適切な位置から移動して,左右の頬骨が非対称になる可能性がある。 したがって,被告は,原告に対するこめかみ形成術の際,シリコンプレートを適切な位置に埋入すべき注意義務を負う。 (イ) しかるに,被告は,上記こめかみ形成術の際,上記注意義務を怠ったため,原告は,術後,右の頬骨弓が膨隆して左よりも高くなり,左右不均衡になった。 原告は,右の頬骨弓の高さに左のそれの を負う。 (イ) しかるに,被告は,上記こめかみ形成術の際,上記注意義務を怠ったため,原告は,術後,右の頬骨弓が膨隆して左よりも高くなり,左右不均衡になった。 原告は,右の頬骨弓の高さに左のそれの高さを近づけるため,平成7年2月16日,左こめかみ形成の再手術を受けたが,上記不均衡は改善- 7 -されなかった。 イ隆鼻術(ア) 原告に対する隆鼻術は,L型インプラントを鼻部に挿入する方法によるものであったが,この方法は,L型インプラントが真っ直ぐに挿入されないことが原因で,鼻尖部でのインプラントによる挙上に左右差が生じ,鼻孔の不整や左右差が生じる可能性がある。 したがって,被告は,原告に対する隆鼻術の際,L型インプラントを鼻柱に沿って垂直に挿入すべき注意義務を負う。 (イ) しかるに,被告は,上記隆鼻術の際,上記注意義務を怠ったため,原告は,術後,鼻孔が左右不均衡になり,かつ,特に右鼻孔の形態が不整になった。 原告は,平成7年2月16日,左こめかみ形成の再手術を受けた際,上記インプラントの入替手術も受けたが,鼻孔の左右不均衡及び不整は改善されず,同年6月15日,隆鼻術を再度受け,鼻孔の左右不均衡等を改善するため縫合手術も受けたが,なお改善されず,かえって,鼻孔の形態が変化して,洗顔時などに鼻孔から水が入りやすくなり,上顎洞炎が度々発症するなどした。 ウ重瞼術(ア) 原告に対する重瞼術は,埋没法によるものであったが,左右のデザインの相違を原因とする左右差の発生が最も多い問題点とされている。 したがって,被告は,原告に対する重瞼術の際,開瞼に左右差が生じないよう,術前にマーキングを行い,重瞼の形を患者に確認すべき注意義務を負う。 (イ) しかるに,被告は,上記重瞼術の際,上記注意義務を怠り,術前に重瞼の形を確認しなかったため,原告は, 右差が生じないよう,術前にマーキングを行い,重瞼の形を患者に確認すべき注意義務を負う。 (イ) しかるに,被告は,上記重瞼術の際,上記注意義務を怠り,術前に重瞼の形を確認しなかったため,原告は,術後,左右の開瞼が不均衡になった。 - 8 -原告は,平成7年6月15日,上眼瞼の再手術を受けたが,これによっても上記不均衡は改善されず,かえって,重瞼ラインも左右差が生じることになったため,平成8年4月4日,重瞼術を再度受けたが,重瞼ラインの左右差及び左右開瞼の不均衡は改善されなかった。 エ下顎角形成術(ア) 原告は,下顎角(エラ)がやや張りがちできつい印象を与えることを和らげるため,これを被告に相談したところ,下顎角形成術(エラ削り術)を勧められたため,平成7年4月6日に右側の下顎角形成術,同年5月18日に左側の下顎角形成術をそれぞれ受けた。 (イ) ところで,下顎角部が張り出している場合,その原因は,骨棘を含む角部の過形成であり,咬筋肥大を伴うものであることも多いとされており,術前にレントゲン撮影検査を行って下顎の形態を把握することが,下顎の切除量の判断のみならず,咬筋の肥大の有無の判断にも不可欠であり,仮に咬筋の肥大があれば,下顎骨とともに咬筋を切除すべきかどうかを検討する必要があるので,患者の顔面形態を見ながら,その希望を確認し,レントゲン写真を参考にして,手術計画を立てなければならない。 したがって,被告は,下顎角形成術の際,上記のような措置をとるべき注意義務を負う。 (ウ) しかるに,被告は,上記下顎角形成術の際,上記注意義務を怠り,レントゲン写真によって,下顎角の形態を十分に把握し,咬筋の有無を十分に検討し,これを参考にして手術計画を立てることを怠り,模索的に下顎角を切除したため,原告は,術後,下顎角に左右の不均衡が生じ ,レントゲン写真によって,下顎角の形態を十分に把握し,咬筋の有無を十分に検討し,これを参考にして手術計画を立てることを怠り,模索的に下顎角を切除したため,原告は,術後,下顎角に左右の不均衡が生じた。 原告は,平成7年6月6日,右側の下顎角形成術を再度受けたが,これによっても,上記不均衡が改善されなかった。原告の下顎角部の張り出しの原因は,咬筋肥大の可能性が高く,被告も,同年12月2日の診- 9 -察時には咬筋切除の手術計画を提示していることからも,被告が上記原因を検索し,十分な手術計画を立てていれば,原告の下顎角の左右不均衡は改善されていた。 (2) 被告原告主張の注意義務違反があることを否認する。 争点(3)に関する当事者の主張(1) 原告ア美容整形は,一般に,本来的な医療行為に比較して緊急性,必要性の乏しい場合が多く,また,その目的は,患部の治癒ではなく,その主観的願望を満足させることにあり,かつ,身体への侵襲行為を適法なものとするのは患者本人の承諾のみである。 したがって,美容整形を行う医師は,施術にあたり,検査,処置,治療法等について説明し,これを患者に理解,納得させなければならず,事前の各種診断を特に慎重に行い,高度な専門的見地から,施術の要否,適否を慎重に判断し,その方法,範囲,後遺症・合併症等を検討した上で,患者に対し,その自己決定に必要かつ十分な判断材料を提供し,吟味検討する機会を与えるべき注意義務を負う。 イこめかみ形成術(ア) 上記4(1)アのとおり,こめかみ形成術は,シリコンプレート埋入,筋膜移植,脂肪注入等の方法があり,一般的にはシリコンプレート埋入の方法が広く実施されているが,各方法にはそれぞれ利点及び欠点があり,原告に対するこめかみ形成術で採用されたシリコンプレート埋入の方法についてみれば 入等の方法があり,一般的にはシリコンプレート埋入の方法が広く実施されているが,各方法にはそれぞれ利点及び欠点があり,原告に対するこめかみ形成術で採用されたシリコンプレート埋入の方法についてみれば,瘢痕,脱毛,知覚異常,顔面神経麻痺の発生や,シリコンプレートが適切な位置から移動して,左右の頬骨が不均衡になる可能性がある。 したがって,被告は,原告に対し,術前に,こめかみ形成術の上記各- 10 -方法及びその利点・欠点について十分に説明して,その選択,判断の機会を与え,その承諾を得るべき注意義務を負う。 (イ) しかるに,被告は,原告に対し,術前に,上記の事項について何ら具体的に説明せず,上記注意義務に違反した。 そして,原告は,被告から上記注意義務を尽くした説明を受けていれば,こめかみ形成術を受けなかった。 ウ隆鼻術について(ア) 上記4(1)イのとおり,L型インプラントによる隆鼻術は,特に,これが真っ直ぐに挿入されないことが原因で,鼻尖部でのインプラントによる挙上に左右差が生じ,鼻孔の不整や左右差が生じる可能性がある。 したがって,被告は,原告に対し,術前に,上記可能性について十分に説明して,その承諾を得るべき注意義務を負う。 (イ) しかるに,被告は,原告に対し,術前に,上記可能性について十分に説明せず,上記注意義務に違反した。 そして,原告は,被告から上記注意義務を尽くした説明を受けていれば,隆鼻術を受けなかった。 エ重瞼術(ア) 原告は,目を切れ長にしたいという希望を持っていたが,被告クリニックで重瞼術を受けた当時,もともと二重瞼であったため,二重瞼にしたいという意思はなかった。しかも,上記4(1)ウのとおり,埋没法による重瞼術は,重瞼になりやすいものに行う術式であり,左右のデザインの相違を原因とする左右差の発生が最も多い あったため,二重瞼にしたいという意思はなかった。しかも,上記4(1)ウのとおり,埋没法による重瞼術は,重瞼になりやすいものに行う術式であり,左右のデザインの相違を原因とする左右差の発生が最も多い問題点とされている。 したがって,被告は,原告に対し,術前に,その希望を十分に確認し,その希望にどれだけ応じられるかを説明するとともに,開瞼の左右差が生じるなどの可能性があることについて十分に説明して,その承諾を得るべき注意義務を負う。 - 11 -(イ) しかるに,被告は,原告の真意が二重瞼にすることではないことを知りながら,原告に対し,上記可能性について十分に説明せず,上記注意義務に違反した。 そして,原告は,被告から上記注意義務を尽くした説明を受けていれば,重瞼術を受けなかった。 オ下顎角形成術(ア) 下顎角形成術は,下顎角に左右の不均衡が生じるなどの可能性があるので,被告は,原告に対し,術前に,上記可能性について十分に説明して,その承諾を得るべき注意義務を負う。 (イ) しかるに,被告は,原告に対し,術前に,上記可能性について全く説明せず,上記注意義務に違反した。 そして,原告は,被告から上記注意義務を尽くした説明を受けていれば,下顎角形成術を受けなかった。 (2) 被告ア美容整形手術は,一般に,本来的な医療行為に比較して緊急性,必要性の乏しい場合が多く,また,患者の主観的願望を満足させるための効果,結果の発生を目的に実施されるという特殊性があるから,医師の説明義務の内容,程度が加重されるといわれることがある。 しかし,上記の趣旨が,患者に十分な吟味検討の機会を与え,正しく自己決定の判断をすることができるようにする点にある以上,医師の負うべき説明義務の内容,程度は,患者との具体的な関係によって変化するものである。原告は,被告クリ に十分な吟味検討の機会を与え,正しく自己決定の判断をすることができるようにする点にある以上,医師の負うべき説明義務の内容,程度は,患者との具体的な関係によって変化するものである。原告は,被告クリニックを受診する前に,他のクリニックで下顎や鼻,目の美容整形手術を受けており,少なくとも,これらの手術の経験のない者よりも,美容整形手術に関する知識を有していたはずであるから,本件各美容整形手術における被告の原告に対する説明義務の内容,程度を判断するにあたっては,これらの事情を考慮すべきである。 - 12 -イこめかみ形成術(ア) 原告は,こめかみ形成術における患者による術式の選択を前提とした説明義務の内容を主張する。 しかし,医師は,その専門的知見に基づく判断により,術式を選択するものであり,患者が特定の方法を求めている場合や特殊な方法による場合は格別,一般的な方法を採用する場合において,他の方法についてまで説明する義務を負うものではない。 (イ) 原告に対するこめかみ形成術で採用されたシリコンプレート埋入の方法は,合併症・後遺症等の点で,最も安定した手術結果を期待できる方法であり,仮に被告が原告に対して他の方法を説明し,原告が他の方法を希望したとすれば,被告は,医師として,シリコンプレート埋入の方法を選択するよう説明,説得することになるであろうから,原告の主張するような説明義務を課すことは無意味である。 ウ隆鼻術被告は,平成7年1月18日及び同月20日,原告に対し,鼻孔の変化等の可能性について説明した。もともと,原告は,被告クリニックで隆鼻術を受ける前に,他のクリニックで同様の美容整形手術を受けており,その際に担当医師から隆鼻術に関する説明を受けたであろうから,隆鼻術による鼻孔の変化等の可能性について,十分に認識していたはずである 術を受ける前に,他のクリニックで同様の美容整形手術を受けており,その際に担当医師から隆鼻術に関する説明を受けたであろうから,隆鼻術による鼻孔の変化等の可能性について,十分に認識していたはずである。 エ重瞼術(ア) 被告は,原告から,切れ長の目にして欲しい,バランスのとれた目にして欲しいなどと希望されたため,埋没法による重瞼術により重瞼のラインを作ってこの希望に応えようとしたのであり,原告の意思に反して重瞼術を行ったものではない(これは,上目瞼余剰皮膚切除術が行われていることからも明らかである。)。 (イ) また,被告は,原告に対し,平成7年4月18日,同年5月1日,同- 13 -月25日,重瞼術について説明した。 オ下顎角形成術(ア) 被告は,原告に対してカルテに切除部分を図示し,原告と相談した上で,下顎角形成術を行っており,原告に対し,これを説明した。 (イ) 原告は,被告が術前にレントゲン撮影検査を行わず不十分な計画に基づき下顎角形成術を行った旨主張するが,被告は,原告に対する下顎角形成術を行うにあたり,レントゲン撮影検査を行っており,また,咬筋肥大はレントゲン撮影検査では判明しないから,原告の主張は失当である。 争点(4)に関する当事者の主張(1) 原告原告は,被告の診療契約上の債務不履行により,次のとおり,合計722万9500円の損害を被った(本訴はその一部請求である。)。 ア治療費162万9500円本件各美容整形手術は,診療契約上の債務の本旨に従ったものではなく,手術の目的及び結果を達成していないから,被告は,原告に対し,受領した治療費を全額返還すべき義務を負うというべきである。 イ慰謝料500万円原告は,接客業に従事していたが,本件美容整形手術により,左右のこめかみが左右不均衡になり,鼻孔に左右差及 に対し,受領した治療費を全額返還すべき義務を負うというべきである。 イ慰謝料500万円原告は,接客業に従事していたが,本件美容整形手術により,左右のこめかみが左右不均衡になり,鼻孔に左右差及び不整が生じ,開眼の左右差及び重瞼の左右不均衡が生じ,また,下顎角の左右不均衡が改善されず,抑鬱状態に陥り,従前従事していた接客業はもとより,他の業務に従事することも困難になったものであり,多大な精神的苦痛を被った。 ウ弁護士費用60万円(2) 被告争う。 - 14 -第3当裁判所の判断 争点(1)について判断する。 (1) 原告は,本件各美容整形手術により,こめかみの左右不均衡,鼻孔の左右不均衡及び不整,重瞼ライン及び開瞼の左右不均衡という意図せぬ結果が発生し,また,下顎角の左右不均衡の改善という意図した結果が達成されなかった旨主張する。 (2) 原告は,上記主張の証拠として,原告の容貌を撮影した写真(甲A3ないし甲A5)を提出する。しかし,これらの写真は,いずれも平成17年10月28日に撮影されたものであり,その撮影の時点で,本件各美容整形手術から,少なくとも9年半以上の歳月が経過しているものである。人の容貌は,加齢や日常生活等による生体組織の変化に伴い自然に変化するが,本件各美容整形手術は,いずれもその施術当時の原告の容貌等に合わせて行われたものであるから,9年半以上の歳月が経過した時点で撮影された上記写真は,本件各美容整形手術の結果として原告の容貌に原告の主張するような左右不均衡等が発生し又は改善されなかったかどうかを正確に認定する証拠として,不適格であるといわざるを得ない。 また,仮にこの点をさておくとしても,人の顔面は,骨格等の生体組織を含め,元来幾何学的に完全に左右対称ではなく,程度の差こそあれ非対称的な部分の存す る証拠として,不適格であるといわざるを得ない。 また,仮にこの点をさておくとしても,人の顔面は,骨格等の生体組織を含め,元来幾何学的に完全に左右対称ではなく,程度の差こそあれ非対称的な部分の存するのが通常である上,美容整形手術は,既存の生体組織を基礎として整容を目的として行われるものであるから,仮に本件各美容整形手術により幾何学的な意味で左右に非対称な部分が発生し又はなお残存したとしても,これをもって直ちに診療契約上の債務不履行があると断定することはできないと解される。そして,原告の提出する上記写真からは,客観的にみて,社会通念上,上記撮影当時の原告に,原告が気に病むほど人の容貌として不自然で,診療契約上の債務不履行を構成すると評価すべき程の,こめかみの左右不均衡,重瞼ライン及び開瞼の左右不均衡又は下顎角の左右不均衡- 15 -があると認めることはできない。特に,下顎角について,証拠(乙A1,乙A2の1,2,被告本人の供述)によれば,本件診療記録には,原告に対する下顎角形成術が行われる前に撮影された,原告の容貌の写真が添付されており,原告は被告クリニックで同手術を受ける前から下顎骨及び頬骨等の骨格にかなりの左右の不均衡があったことが認められるところ,この写真上の下顎角の状態と,上記平成17年10月28日撮影の写真上のそれとを比較すると,前者の下顎角の状態は,後者のそれに比して,左右の不均衡が一定程度改善されているということができる(なお,証拠(甲A1)によれば,原告は,平成9年12月4日,b病院において,医師から,「重瞼ラインの乱れと左右開瞼のアンバランスの状態があり,精神的に悩みのあることは十分考えられる。」旨診断されていることが認められるが,この事実のみでは,上記乱れ又はアンバランスの程度が客観的に明らかでないから,それが人 右開瞼のアンバランスの状態があり,精神的に悩みのあることは十分考えられる。」旨診断されていることが認められるが,この事実のみでは,上記乱れ又はアンバランスの程度が客観的に明らかでないから,それが人の容貌として不自然で診療契約上の債務不履行を構成すると評価すべき程のものであると認めることは困難である。)。 一方で,証拠(乙A1,被告本人の供述)によれば,本件診療記録には,原告に対する隆鼻術の行われた平成7年1月20日当時に撮影された,原告の鼻孔等の写真が添付されていること,この写真上の鼻孔の状態と,上記平成17年10月28日撮影の写真(甲A4)上の鼻孔の状態とを比較すると,確かに,後者の鼻孔の状態は,前者のそれに比して,鼻孔の形態が変化してその左右差が多少大きくなっていることが認められる。しかし,上記鼻孔の形態の変化ないし左右差は,客観的にみて,社会通念上,人の容貌として不自然で,診療契約上の債務不履行を構成すると評価すべき程のものであるとまでは認めがたい。 (3) 上記第2の1の前提事実によれば,原告は,被告クリニックにおいて,こめかみ形成術,隆鼻術,重瞼術及び下顎角形成術を複数回受けていることが認められるので,原告が初回の手術結果に主観的不満を抱いていたであろう- 16 -ことは推認しうるが,そのような主観的不満のみから,これらの手術結果に診療契約上の債務不履行が客観的にあると即断することもできない。 (4) したがって,結局,この争点に関する原告の主張は理由がない。 争点(3)について判断する。 (1) 一般に,美容整形手術は,疾病の治療など医師が通常行う医療行為に比較して,緊急性や必要性の乏しい場合が多く,医学的適応性も低い場合が多い上,整容を目的として行われるものであることに鑑みれば,医師は,当該手術の実施に先立ち,当該手 療など医師が通常行う医療行為に比較して,緊急性や必要性の乏しい場合が多く,医学的適応性も低い場合が多い上,整容を目的として行われるものであることに鑑みれば,医師は,当該手術の実施に先立ち,当該手術の方法,内容や期待しうる結果の程度,発生する可能性のある合併症・後遺症等の有無及びその内容・程度等の事項について説明し,患者において,当該手術を受けるかどうかなどの事項を自ら判断するに足りる情報を提供すべき注意義務を負うと解するのが相当である。 (2) そこで,上記の観点から,本件各美容整形手術について,個々に検討する。 アこめかみ形成術(ア) 原告は,こめかみ形成術は,シリコンプレート埋入,筋膜移植,脂肪注入等の方法があり,各方法にはそれぞれ利点及び欠点があって,瘢痕,脱毛,知覚異常,顔面神経麻痺の発生や,シリコンプレートが適切な位置から移動して,左右の頬骨が非対称になる可能性があるので,被告は,原告に対し,術前に,こめかみ形成術の上記各方法及びその利点・欠点について説明して,その選択,判断の機会を与え,その承諾を得るべき注意義務を負うにもかかわらず,これを怠った旨主張する。 (イ) 証拠(甲B1,乙B1,被告本人の供述)によれば,こめかみ形成術の術式には,シリコンプレート埋入,筋膜移植,脂肪注入等の方法があり,一般にはシリコンプレート埋入の方法が最も広く採用されているが,これらの方法には各々利点・欠点があり,共通する合併症・後遺症等として,瘢痕の残存,脱毛,知覚異常,顔面神経麻痺の発生のほか,シリコンプレート埋入の方法については,シリコンプレートが適切な位置か- 17 -ら移動して不自然な外観を呈する可能性のあることが認められる。 したがって,被告は,原告に対し,こめかみ形成術を行うに先立ち,上記のようなこめかみ形成術の術式の種類,合 トが適切な位置か- 17 -ら移動して不自然な外観を呈する可能性のあることが認められる。 したがって,被告は,原告に対し,こめかみ形成術を行うに先立ち,上記のようなこめかみ形成術の術式の種類,合併症・後遺症等の発生可能性及びその内容について説明し,術式の選択や手術の諾否を判断するに足りる情報を提供した上で,その承諾を得るべき注意義務を負うと解される。 (ウ) しかるに,証拠(乙A1,乙B1,被告本人の供述)によれば,被告は,原告に対するこめかみ形成術について,筋膜移植の方法は,大腿部の筋肉の一部を切除しなければならず,機能障害を生じる危険性があること,脂肪注入の方法は,当時原告が痩せていたため,脂肪の採取が困難であると考えられたこと,一方で,シリコンプレートの埋入の方法は,永続的な効果を期待でき,合併症等の危険性も少ないことなどから,シリコンプレートの埋入の方法を選択することとしたが,原告に対し,こめかみ形成術に先立ち,医師としての自らの上記判断を優先させ,その術式の種類を説明せず,また,その合併症・後遺症等についても,「1週間はぽんぽんにはれる」などと説明した程度に止まり,シリコンプレートの移動等の問題について説明しなかったこと,以上の事実が認められ,これらの事実によれば,原告は,こめかみ形成術を行う医師に要求される上記注意義務を尽くしたと認めがたく,これに違反した過誤があるというべきである。 (エ) なお,被告は,シリコンプレート埋入の方法は,こめかみ形成術の術式の中で,合併症・後遺症等の点で最も安定した手術結果を期待できるものであり,仮に被告が原告に対して他の方法を説明し,原告が他の方法を希望しても,被告は,医師として,シリコンプレート埋入の方法を選択するよう説明,説得することになるであろうから,そのような説明義務を課す り,仮に被告が原告に対して他の方法を説明し,原告が他の方法を希望しても,被告は,医師として,シリコンプレート埋入の方法を選択するよう説明,説得することになるであろうから,そのような説明義務を課すことは無意味である旨主張する。 - 18 -しかし,結論が変わらないからという理由で自己決定の機会自体を否定することは,自己決定権が認められる趣旨に悖るものである。被告の上記主張に係る事情は,自己決定権の侵害の程度ないし損害額(慰謝料額)の多寡に影響しうることは格別,当然には上記の旨の説明義務自体を否定する論拠にはならないというべきである。 イ隆鼻術について(ア) 原告は,L型インプラントによる隆鼻術は,これが真っ直ぐに挿入されないことが原因で,鼻尖部でのインプラントによる挙上に左右差が生じ,鼻孔の不整や左右差が生じるなどの可能性があるので,被告は,原告に対し,術前に,上記可能性について説明して,その承諾を得るべき注意義務を負うにもかかわらず,これを怠った旨主張する。 (イ) 証拠(甲B2,甲B5)によれば,L型インプラントを使用した隆鼻術は,合併症・後遺症等として,鼻尖部でのインプラントによる挙上が強くて皮膚が薄くなり,化膿して露出することがあること,脚部が真っ直ぐに挿入できず偏位し,片側の鼻腔粘膜を持続的に刺激して露出することがあること,このような状態下で挿入されたインプラントをそのまま放置すると,鼻孔の左右差等を生じる可能性のあることが認められる。 したがって,被告は,原告に対し,隆鼻術を行うに先立ち,上記のような合併症・後遺症等の発生可能性について説明し,手術の諾否を判断するに足りる情報を提供した上で,その承諾を得るべき注意義務を負うと解される。 (ウ) しかるに,証拠(乙A1,乙B1,被告本人の供述)によれば,被告は,原告に対す について説明し,手術の諾否を判断するに足りる情報を提供した上で,その承諾を得るべき注意義務を負うと解される。 (ウ) しかるに,証拠(乙A1,乙B1,被告本人の供述)によれば,被告は,原告に対する隆鼻術を行うに先立ち,術後に腫れ上がることがあること,稀であるがインプラントが露出してしまうことがあること,完全に真っ直ぐな鼻筋にはならないこと,手術を多数回繰り返すと鼻孔の形態が変化することがあること等の趣旨を説明したことは認められるが,- 19 -L型インプラントの偏位による鼻孔の左右差の発生可能性について明確に説明した形跡は窺われず,これらの事実によれば,原告は,隆鼻術を行う医師に要求される上記注意義務を尽くしたと認めがたく,これに違反した過誤があるというべきである。 ウ重瞼術(ア) 原告は,目を切れ長にしたいという希望を持っていたが,重瞼術の当時,もともと二重瞼であったため,二重瞼にしたいという意思はなかったので,被告は,原告に対し,術前に,その希望を確認し,その希望にどれだけ応じられるかを説明して,その承諾を得るべき注意義務を負うにもかかわらず,これを怠った旨主張する。 (イ) 上記第2の1の前提事実並びに証拠(乙A1,乙B1,原告及び被告各本人の供述)によれば,原告は,被告クリニックに来院するよりも前に,別のクリニックで両眼を二重瞼にする美容整形手術を受けており,被告クリニックで重瞼術を受けた当時も二重瞼であったこと,原告は,被告クリニックで重瞼術を受けるにあたり,被告に対し,切れ長の眼にしてほしいなどと希望したため,被告は,原告に対し,その希望のとおりの眼にすることは無理であるが,埋没法による重瞼術で目尻のラインを作り出すことを試みる旨説明したこと,以上の事実が認められ,これらの事実によれば,被告は,原告に対し,重瞼術 に対し,その希望のとおりの眼にすることは無理であるが,埋没法による重瞼術で目尻のラインを作り出すことを試みる旨説明したこと,以上の事実が認められ,これらの事実によれば,被告は,原告に対し,重瞼術にあたり,原告の希望を確認し,重瞼術を行う趣旨を説明した上で,これを行ったと認めることができる。 (ウ) また,原告は,埋没法による重瞼術は,左右のデザインの相違を原因とする開瞼の左右差が生じる可能性があるので,被告は,原告に対し,術前に,上記可能性について説明して,その承諾を得るべき注意義務を負うにもかかわらず,これを怠った旨も主張する。 (エ) 確かに,証拠(甲B3)によれば,埋没法による重瞼術は,執刀医の- 20 -技術的な経験が不十分であると,左右のデザインの相違を原因とする左右差が生じ得ることが認められるが,これは,個々の医師の技量の問題にすぎないから,このような事項について,被告が原告に対してその説明義務を当然に負うとは解されない。 (オ) 上記の認定説示によれば,被告には,原告の主張する上記(ア)及び(ウ)の説明義務を怠った過誤があると認めることはできない。 エ下顎角形成術(ア) 原告は,下顎角形成術について,下顎角に左右の不均衡が生じるなどの可能性があるから,被告は,原告に対し,術前に,その可能性について説明し,その承諾を得るべき注意義務を負うにもかかわらず,これを怠った旨主張する。 (イ) 確かに,証拠(甲B4)によれば,下顎角形成術により,通常,明らかな不均衡が生じることはないが,多少の左右差は生じうることが認められるが,仮に被告がこれを原告に説明すべき注意義務を負うとしても,証拠(乙A1,乙A2の1,2,乙B1,被告本人の供述)によれば,被告は,原告に対する下顎角形成術を行うに先立ち,原告の頭部のレントゲン撮影検査 被告がこれを原告に説明すべき注意義務を負うとしても,証拠(乙A1,乙A2の1,2,乙B1,被告本人の供述)によれば,被告は,原告に対する下顎角形成術を行うに先立ち,原告の頭部のレントゲン撮影検査を行い,その所見上,下顎骨や頬骨にかなりの左右差が確認されたため,原告に対し,下顎角形成術によって左右を完全に対称することはできない旨説明したことが認められ,この事実によれば,被告は上記注意義務を尽くしたと認めることができ,これを怠った過誤があるということはできない。 オしたがって,この争点に関する原告の主張は,こめかみ形成術及び隆鼻術に関する説明義務の違反をいう限度で理由がある。 争点(4)について判断する。 (1) 上記1の認定説示のとおり,原告には,本件各美容整形手術によりその主張するような診療契約上の不履行の結果が発生したと認められないから,そ- 21 -の結果の発生を前提とする原告の損害の主張は,争点(2)について判断するまでもなく,理由がないことになる。 (2) 一方で,上記2の認定説示のとおり,被告は,こめかみ形成術及び隆鼻術について,これらの手術を行う医師として負うべき説明義務を尽くさなかった過誤があると認められ,これにより,原告はその自己決定権を侵害され,精神的苦痛を被ったと推認されるから,被告は,原告に対し,診療契約上の債務不履行責任に基づき,上記精神的苦痛に対する慰謝料を賠償すべき義務を負うと解される。 (3) そして,上記説明義務違反の過誤の内容及び程度,その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すれば,原告の被った上記精神的苦痛を慰謝すべき金額は,80万円をもって相当と認める。 (4) また,上記(3)の慰謝料額,その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すれば,上記(2)の債務不履行と相当因果関係のある弁護士費用は,1 苦痛を慰謝すべき金額は,80万円をもって相当と認める。 (4) また,上記(3)の慰謝料額,その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すれば,上記(2)の債務不履行と相当因果関係のある弁護士費用は,10万円をもって相当と認める。 (5) したがって,被告は,原告に対し,診療契約上の債務不履行責任に基づき,上記(3)及び(4)の損害合計90万円を賠償すべき義務を負うと認められる。 結論 以上の次第で,原告の本訴請求は,被告に対して90万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成17年1月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,その限度でこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第4部裁判長裁判官永野圧彦- 22 -裁判官寺本明広裁判官大寄悦加
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