平成23(ネ)785 地位確認等請求控訴事件(通称 パナソニック(旧パナソニック電工)黙示の労働契約)

裁判年月日・裁判所
平成24年4月20日 名古屋高等裁判所 棄却 津地方裁判所 平成22(ワ)73
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判決文本文17,642 文字)

平成24年4月20日判決名古屋高等裁判所平成23年(ネ)第785号地位確認等請求控訴事件〔原審・津地方裁判所平成22年(ワ)第73号〕口頭弁論終結日平成24年2月15日判決 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 控訴人が被控訴人Xに対する雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認する。 (3) 被控訴人Xは,控訴人に対し,平成21年4月1日から毎月15日限り,23万6396円及びこれに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (4) 被控訴人らは,控訴人に対し,各自330万円及びこれに対する平成21年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (5) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 (6) 仮執行宣言 2 控訴の趣旨に対する答弁主文同旨第2 事案の概要(以下,略称は原判決の表記に従い,適宜,原判決における記載箇所を示す。)1(1) 本件は,控訴人が,被控訴人Yから派遣されて労務を提供していた先のZ 株式会社(以下「Z」という。)との間に直接雇用契約関係が存在するとして,Zに対し,雇用契約上の地位が存在することの確認及び未払賃金の支払を求めるとともに,被控訴人Y及びZが控訴人をして,労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「派遣法」という。)に違反する不法な就労を継続させ,最終的に控訴人の雇用を喪失せしめ,控訴人に精神的苦痛を生じさせたとし 遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「派遣法」という。)に違反する不法な就労を継続させ,最終的に控訴人の雇用を喪失せしめ,控訴人に精神的苦痛を生じさせたとして,不法行為を理由に両社に損害賠償を求める事案である。 (2) 原審は,控訴人とZとの間には直接雇用契約関係は成立していない等として,請求を全部棄却する旨の判決をしたところ,控訴人がこれを不服として控訴した。その後(平成24年1月1日),被控訴人XがZを吸収合併し訴訟を承継した。 2 当事者の主張〔請求原因その1(黙示の雇用契約上の地位確認及び賃金支払請求),これに対する被控訴人Xの認否及びこれに対する被控訴人Xの主張,請求原因その2(不法行為)及びこれに対する被控訴人らの認否〕は,次項のとおり,当審における控訴人の主張(原審での主張を敷衍するものを含む。)を付加するほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要及び当事者の主張」1ないし4に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における控訴人の主張(1) 黙示の雇用契約成立の有無ア黙示の雇用契約成立の一般的要件黙示の雇用契約は,労働者と労務提供先との間に,客観的に推認される黙示の意思の合致が認められる場合に認定されるところ(最高裁平成10年9月8日第三小法廷判決参照),そのためには①派遣先が派遣労働者の採用に関与していたか,②派遣先が派遣労働者の給与額を事実上決定したといえるか,③派遣先が派遣労働者の具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったかが検討されるべきである。 イ Zによる控訴人採用への関与(ア) 原判決は,①被控訴人Yの担当者が控訴人を含む本件参加者(原判決8頁18行目)の中から採否 得る地位にあったかが検討されるべきである。 イ Zによる控訴人採用への関与(ア) 原判決は,①被控訴人Yの担当者が控訴人を含む本件参加者(原判決8頁18行目)の中から採否を決するための面接を行った際には,Zの担当者は同席していなかった,②本件説明会(同8頁21行目)に出席したZの従業員は,本件参加者の情報(履歴書等も含む)を一切知らされていなかった,③従前,Zが被控訴人Yの採用した派遣労働者の受入れを拒否した事実はないと認定した上で,控訴人を採用したのは被控訴人Yであり,Zは関与していないと判示した。 (イ) しかし,控訴人がZの工場で行われた本件説明会(原判決8頁21行目)に参加した際,Zの従業員A(同8頁26行目)から,就労期間の確認がなされ,その上で控訴人の採用が決まったのであるから,Zによる事前面接がなされたといえる。 ウ Zが控訴人の給与額を事実上決定していた。 (ア) 原判決は,①控訴人は,被控訴人Yから賃金の支払を受けていたこと,②Zとしては,被控訴人Yがどの従業員に対してどのような形で賃金を支払っているかを認識していなかったこと,③Zから被控訴人Yに対して支払われる労働者派遣契約に基づく契約代金(派遣料金)と被控訴人Yが控訴人に支払う賃金との間には必ずしも相関関係がないことの各事実が認められるとし,これらの事実から,被控訴人Yが派遣料金とは無関係に控訴人の賃金を決定していたと判示する。 (イ) しかしながら,Zと被控訴人Yとの間では,派遣労働者ごとに派遣料金をいくらにするか交渉をしており,決定された派遣料金の中から派遣労働者の賃金が決まることになり,その交渉において,Zの方が被控訴人Yよりも強い立場にあった。 また,控訴人は,賃金額について,Z にするか交渉をしており,決定された派遣料金の中から派遣労働者の賃金が決まることになり,その交渉において,Zの方が被控訴人Yよりも強い立場にあった。 また,控訴人は,賃金額について,Z及び被控訴人Yの双方に賃金を上げてくれるように交渉していたが,Zの従業員から,被控訴人Yに賃 金を上げるように言っておくとの返答をもらっていた。このように,Zは,被控訴人Yに対し,控訴人の賃金額について指示できる立場にあった。 以上のとおり,Zは派遣料金の決定をすることにより,あるいは被控訴人Yへ直接指示をすることにより,実質上控訴人の賃金額を決定していた。 エ Zと被控訴人Yは密接な関係にある。 (ア) 原判決は,①被控訴人Yの従業員のうち,Zから出向してきている従業員は4%程度であり,Zと被控訴人Yの間には特段の人的関係はないこと,②被控訴人YはZとの間でのみ,労働者派遣契約を締結しているのではなく,その業務の3割から4割程度は他の会社(Zと何ら資本関係のない会社)との間の労働者派遣契約が占めていること,の各事実から,被控訴人YはZとの関係において,その存在が形式的なものであったとか,実質的にZに従属していたとかいう事実を認めることはできないと判示した。 (イ) しかしながら,以下のとおり,Zと被控訴人Yは密接な関係にある。 a 被控訴人YはZの100%子会社であり,求人広告でも,Zとの繫がりを強調している。 b 被控訴人Yが上記のとおりZの100%子会社であり,かつ出向者がいることからすれば,両社が人的関係を有するとみることが十分可能である。 c 被控訴人Yの派遣先はX関連が多い。 オ Zは控訴人の労務管理をしていた。 (ア) 出退勤管理及び休暇の取得原判決は 的関係を有するとみることが十分可能である。 c 被控訴人Yの派遣先はX関連が多い。 オ Zは控訴人の労務管理をしていた。 (ア) 出退勤管理及び休暇の取得原判決は,被控訴人Yが控訴人の出退勤及び年次有給休暇の管理をしていたと判示する。しかし,控訴人の有給休暇の取得についてはZの許 可を得なければならず,Aから労働時間の申告を早く行うように求められた。これは,Zの側でも控訴人の労務について把握していたということであり,被控訴人Yは,Zから独立して労務管理をしていたのではない。 (イ) 定期面談原判決は,Zとの面談は安全衛生管理を目的とし労務管理を目的としたものではないと判示する。しかし,Zによる派遣労働者に対する定期面談においては,控訴人が賃金を上げてほしいとか,正社員になりたい等の希望をZに伝えていたのであり,このことからすれば,上記面談は,人事考課をも兼ねていたと考えるのが自然である。 (ウ) 健康診断,社会保険控訴人が被控訴人Yの行っていた健康診断を受診していたこと,控訴人の社会保険の手続は被控訴人Yが行っていたことは,形式上の使用者が被控訴人Yである以上,当然であり,これをもって被控訴人Yの雇用契約が実質を伴ったものであるとはいえない。 カまとめ(ア) 被控訴人Yと控訴人間の派遣労働契約の効力について被控訴人Yと控訴人間に締結された派遣労働契約は,派遣法40条の2ないし5等の私法的強行規定に違反した契約であるから,社会的・経済的弱者であり,派遣法等に詳しくない派遣労働者である控訴人の無知に乗じた事案であり,控訴人を実質的に保護するため,上記契約は民法90条に違反し無効と解さざるを得ない。 (イ) 被控訴人YとZ間の労働 り,派遣法等に詳しくない派遣労働者である控訴人の無知に乗じた事案であり,控訴人を実質的に保護するため,上記契約は民法90条に違反し無効と解さざるを得ない。 (イ) 被控訴人YとZ間の労働者派遣契約の効力について被控訴人Y及びZは,派遣法40条の4等の規定の適用を回避するため,専門業務偽装という形式で,共謀の上,敢えて労働者派遣契約を締結した点において,その違法性及び悪質性が極めて高い事案であり,両 社の労働者派遣契約は民法90条に違反し,無効である。 (ウ) Zと控訴人との黙示の雇用契約の成立について被控訴人Yと控訴人間の派遣労働契約も被控訴人YとZとの労働者派遣契約も,違法な動機を目的とする契約であり無効である以上,控訴人とZとの間の法律関係は意思解釈で補う必要がある。 Zは,事前面接により被控訴人Yによる控訴人の採用に関与し,賃金がZからの派遣料金の範囲内で決まり,Zが被控訴人Yに控訴人の賃金について指示することが可能であったこと,被控訴人Yが控訴人の具体的な就業形態を一定の限度で決定し得る地位にあったことが立証されていないことからすれば,平成15年7月下旬ころ,控訴人とZとの間に黙示の雇用契約が成立したというべきである。 (2) 派遣法40条の4違反に基づく雇用契約が成立する(予備的主張)。 ア控訴人の業務内容は一般製造業の業務である。 控訴人の従事していたテストピースの成形作業の実態は,単なる物の製造にすぎず,一般製造業であった。派遣法40条の2第1項1号にいう「政令」である「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令」(昭和61年4月3日政令第95号。 以下「政令」という。)4条に26の業務(以下「専門26業務」という。) ある「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令」(昭和61年4月3日政令第95号。 以下「政令」という。)4条に26の業務(以下「専門26業務」という。)が定められたところ,控訴人の従事した業務は,この専門26業務中の政令4条9号の業務(以下「9号調査業務」という。)でも,同条17号の業務(以下「17号研究業務」という。)でもない。 イ派遣受入期間が制限されている。 派遣法40条の2によれば,一般製造業の派遣可能期間は原則1年であり,控訴人については就労を開始してから1年後の平成16年8月1日までであった。 ウ Zには直接雇用義務が存在し,同社はこれに違反した。 派遣法は,一般業務について,「臨時的・一時的」ではなく,派遣受入可能期間を超えて長時間にわたって派遣労働者による労務提供を受け入れようとする派遣先に対しては,当該派遣労働者で派遣先での直接雇用を希望する者に対して直接雇用契約を申し込むべき義務を課した。 もっとも,派遣法40条の4は,「第35条の2第2項の規定による通知を受けた場合において」と規定しているところ,本件ではかかる通知はなされていない。しかし,適法な派遣において同法40条の4により直接雇用申込義務が発生するにもかかわらず,本件のような違法な派遣においては上記規定が適用されず直接雇用申込義務が発生しないとすることは均衡を失する。同法26条5項によれば,派遣先は,当該労働者派遣の役務の提供が開始される日以後当該業務について,期間制限に抵触することとなる最初の日を通知しなければならないと定めており,派遣元は,この通知を受けて初めて期間制限に抵触することとなる日がいつであるかを知ることができ,同法35条の2第2項の「通知」ができる。そうすると,派遣先が同法26条 なければならないと定めており,派遣元は,この通知を受けて初めて期間制限に抵触することとなる日がいつであるかを知ることができ,同法35条の2第2項の「通知」ができる。そうすると,派遣先が同法26条5項による通知を行っていない場合,派遣先としては,同法35条の2第2項の「通知」を受けていないことを理由として同法40条の4に基づく直接雇用申込義務を免れることは信義則上もできないと解釈すべきである。このような場合には,同法40条の4の趣旨に照らし,「通知」を受けたと否とにかかわらず,直接雇用申込義務が課されるというべきである。 本件では,Zは被控訴人Yと共謀し,派遣受入期間の制限を潜脱するために,控訴人の業務があたかも「専門26業務」に該当するかのように偽装するという悪質な違反をしている。仮に,共謀が認められなくても,Zは,控訴人に従事させている業務が専門26業務に該当しないことを認識できたにもかかわらず,適正な形で派遣することも是正することもせず,専門26業務での派遣を行った。このように,派遣法に故意又は過失によ り直接加担した派遣先であるZには,派遣元から派遣法35条の2第2項の「通知」を受けるべき正当な期待は存在しない。 Zは,控訴人が就労を開始した平成15年8月1日から1年経過した平成16年8月1日時点で,派遣法40条の4の直接雇用申込義務があるにもかかわらず,これを履行しなかった。 エ派遣法40条の4は私法的効力規定である。 (ア) 派遣法40条の4は,派遣先は「当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し,雇用契約の申込みをしなければならない」と規定する。 この規定では,「雇用契約の申込みをしなければならない」という文言が用いられており,努力義務規定に典型的な「雇用契約の申込みをするように努めなけれ 雇用契約の申込みをしなければならない」と規定する。 この規定では,「雇用契約の申込みをしなければならない」という文言が用いられており,努力義務規定に典型的な「雇用契約の申込みをするように努めなければならない」という文言は用いられていない。 (イ) 同条が派遣労働者の雇用の安定の増進を図る目的で平成15年改正により追加された規定であることなどに照らすと,同条は,派遣先に法律上,私法上の直接雇用申込義務を課した私法的効力規定と解すべきものであって,派遣先に対し,単に雇用契約の申込みをすべき努力義務を課した規定ではない。 オまとめZは,上記の直接雇用申込義務を履行しないまま,控訴人を派遣労働者として就労させ続けたが,Zが労務提供を受け入れたことが雇用契約の申込みであり,控訴人が就労を続けたことが承諾と解釈でき,平成16年8月1日の時点で期間の定めのない直接の雇用契約が成立した。 (3) 不法行為の成立ア侵害行為(ア) Zによる業務の偽装控訴人がZで従事した業務は,派遣受入期間の制限のない専門26業務のいずれにも該当しない一般製造業務であった。さらに,控訴人がZ において就労を開始した平成15年8月1日時点では,一般製造業務に対する労働者の派遣は許されていなかった。平成11年改正において,派遣期間を制限する40条の2,派遣期間経過後の直接雇用義務を課する40条の3が新設されたところ,製造業務に対する派遣が可能になったのは,平成16年改正以降であり,派遣可能期間は1年であったが,平成19年に期間は3年に延長された。製造業務においては,常用代替の危険が高いことから,派遣対象業務とすることに慎重な態度がとられ,派遣対象業務となった後も,厳しい期間制限がされていた。常用代替の防止は,数次の改正の 年に延長された。製造業務においては,常用代替の危険が高いことから,派遣対象業務とすることに慎重な態度がとられ,派遣対象業務となった後も,厳しい期間制限がされていた。常用代替の防止は,数次の改正の後,派遣期間の規制のみに委ねられ,派遣法40条の2は,常用代替防止の「最後の砦」となった。 ところが,控訴人は,平成15年からZで製造業務に従事し,5年以上勤務し常用代替として就労したのであり,その違法性は強い。 (イ) 違法な事前面接Zと被控訴人Yは,控訴人の就労に先立ち,事前面接を実施し,Zの従業員Aは,事前面接において,控訴人に対してだけ就労期間の確認をし,一般製造業務たる成形業務に派遣の形で就労させる労働者として控訴人を選別した。 (ウ) 解雇権濫用控訴人は,本来指揮命令を行って就労させていたZに直接雇用がなされなければならない地位にあった。そして,Zに直接雇用されていれば,客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であると認められる事由がなければ労働契約法16条により解雇できない地位にあった。本件では,控訴人の契約更新後,被控訴人YがZの四日市工場で就労する派遣労働者を募集していることからすれば,控訴人を解雇(雇い止め)する必要性が認められない。 イ侵害行為の違法性 Z及び被控訴人Yは,事前面接を行って控訴人を特定した上,業務内容を偽装し,派遣不可能な製造業務に控訴人を従事させ,控訴人は,5年8月の間,不安定な派遣労働を強いられたのであり,結果として契約を更新しないという形で労働契約を終了させられ,仕事を失った。 上記両社の行為は,控訴人のZにおいて,安定的かつ平穏に勤務し,労働者として適正な給与を得て生活するという人格的権利利益を侵害したもので,不法行為を構成する。 終了させられ,仕事を失った。 上記両社の行為は,控訴人のZにおいて,安定的かつ平穏に勤務し,労働者として適正な給与を得て生活するという人格的権利利益を侵害したもので,不法行為を構成する。 ウ故意又は過失の存在(ア) 故意(共謀)a 事前面接の意味Zと被控訴人Yは,Zにおいて派遣労働者として就労させる労働者を選別するため,事前面接を実施した。 b 控訴人に対し専門26業務について明確に説明していないこと被控訴人Yが控訴人に対し派遣当初及び更新の際に交付した雇用契約書には,業務内容について「第9号調査」あるいは「第17号研究開発」と記載されているが,控訴人は雇用契約書の内容について詳しい説明を受けていない。このことは,Z及び被控訴人Yが,控訴人を専門26業務と偽装しているにもかかわらず,控訴人に偽装の事実を知らせる機会をあえて与えないようにしていたものといえる。 c 共謀について被控訴人YはZの100%子会社であり,被控訴人Yの派遣先はZ又はその関係会社が大部分を占め,事前面接も,Zの四日市工場内で行われ,両社は非常に強い関連性を有している。そして,Z及び被控訴人Yは,共謀の上,控訴人を派遣労働者としてZにおいて就労させた。 (イ) 過失 a 仮に,Z及び被控訴人Yが故意に控訴人による専門26業務就労を偽装していたとは認められないとしても,上記両社は適法な状態で控訴人を就労させる義務があり,違法状態の場合には適法状態に是正する義務があるにもかかわらず,以下のように,その義務を少なくとも過失により怠った。 bZの過失Zは控訴人を就労させていたのであるから,控訴人の従事していた成形業務が,調査(政令4条9号)にも研究開発(同条17号)に うに,その義務を少なくとも過失により怠った。 bZの過失Zは控訴人を就労させていたのであるから,控訴人の従事していた成形業務が,調査(政令4条9号)にも研究開発(同条17号)にも当たらず,実態は製造業務であることを,少なくとも知り得る立場にあった。そして,控訴人に専門26業務に該当しない製造業務を行わせていたのであれば,控訴人を引き続き同様の業務に従事させるには直接雇用を行わなければならなかったところ,Zはこれを完全に怠り,違法な状態で5年8か月も就労させた挙げ句に,自ら派遣を打ち切った。 c 被控訴人Yの過失被控訴人Yは,仮に控訴人がZにおいて専門26業務を行うと信じて派遣したのであったとしても,控訴人の従事する業務の確認を怠っており,派遣法31条で派遣元事業主に義務付けられている派遣労働者の就業状況について派遣契約の定めに反しないように確認する義務を怠った。 このように,被控訴人Yは,少なくとも過失により控訴人を派遣法に違反する状態で就労させたこと,過失により違法状態を適法に是正する義務を怠ったことは明らかである。 d 派遣法違反の認識控訴人の派遣就労が派遣法違反であることは,従業員間でも話題になっていたのであり,Z及び被控訴人Yは,控訴人の派遣就労が派遣 法違反であることを認識していた。 また,被控訴人Yは,繰り返し,大阪労働局から是正指導,是正命令を受けていたから,控訴人の労働についても派遣法違反であるとの認識を持ち,違反状態を解消することは十分可能だったといえる。 エ関連共同性が認められる。 Zと被控訴人Yは,事前面接を行い,控訴人の業務内容を偽装して控訴人を派遣労働者として就労させたのであり,主観的共同性が認められる。 また,控訴人は被控訴人Yから 共同性が認められる。 Zと被控訴人Yは,事前面接を行い,控訴人の業務内容を偽装して控訴人を派遣労働者として就労させたのであり,主観的共同性が認められる。 また,控訴人は被控訴人Yから派遣されて,Zで就労していたのであるから,派遣法違反での就労という状態の作出につき,上記両社には少なくとも客観的共同性が認められる。 オ損害の発生及び額(ア) 精神的損害控訴人が被った精神的苦痛を慰謝するには金額は300万円を下らない。 (イ) 経済的損害控訴人がZに直接雇用されていれば,控訴人は解雇権濫用の法理の保護を受ける立場にあった。しかし,実際には,労働者派遣契約の更新を拒絶するという極めて単純な手続によって仕事を失うこととなった。 仮に,派遣法40条の4に基づき,控訴人がZの期間労働者となったと考えた場合でも,控訴人は期間6か月の有期雇用を更新してきたものといえ,実質上期間の定めのないものとなり,解雇権濫用の法理が適用される。 そうすると,控訴人は無効な解雇により,平成21年4月以降,本来得られるはずである賃金相当額について経済的損害が生じている。その額は,Zが被控訴人Yに平成20年7月から同年9月まで支払った月額31万7036円である(これが認められないとしても,被控訴人Yか らの同期間における平均賃金23万6396円)。そして,雇い止めされなければ,1年間は就労でき,その金額は上記金額の12か月分の380万4432円(少なくとも283万6752円)を下回ることはない。 (ウ) まとめ控訴人は,賃金相当分の経済的損害の発生も考慮し,慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の支払を求める。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,控訴人の請求はいずれ (ウ) まとめ控訴人は,賃金相当分の経済的損害の発生も考慮し,慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の支払を求める。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 事実の経過事実の経過は原判決7頁3行目から同13頁22行目までのとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決11頁23行目の「製品」を「もの」と改める。 2 Zと控訴人との間の黙示の雇用契約の成否について(1) 控訴人は,派遣先のZと派遣労働者である控訴人との間に雇用契約が成立する旨主張するところ,労働契約とは,使用者が労働者に賃金を支払う旨を,労働者が使用者に対し労務を提供する旨を約すことを主な要素とする契約である。したがって,明示的な雇用契約のない派遣労働者と派遣先企業との間には,特段の事情のない限り黙示的な労働契約が成立するということもできないところ,派遣労働者に賃金を支払う者が派遣元企業ではなく派遣先企業であり,派遣労働者の労務提供の相手方が派遣元企業ではなく派遣先企業であるといえる特段の事情がある場合には,派遣労働者と派遣先企業との間に黙示的な労働契約関係の成立を考える余地があると解するのが相当である。 具体的には,派遣労働者の賃金が実際上派遣先企業によって決定され,派遣元企業を介して派遣先企業自身によって支払われているといえるか,派遣先 企業が派遣労働者の採用を決定していたか,配置等の具体的就業態様を決定し得る地位にあったといえるかなどを検討すべきである(なお,最高裁平成20年(受)第1240号同21年12月18日第二小法廷判決・民集63巻10号2754頁参照)。 (2) Zと被控訴人Yとの関係ア Zと被控訴人Yとの関係に きである(なお,最高裁平成20年(受)第1240号同21年12月18日第二小法廷判決・民集63巻10号2754頁参照)。 (2) Zと被控訴人Yとの関係ア Zと被控訴人Yとの関係についての判断は,原判決15頁1行目から11行目に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ控訴人は,被控訴人YはZの100%子会社であり,出向者も存在し,取引関係もX関連が多いから,両社には密接な関係があると主張する(前記第2の3(1)エ(イ)aないしc)。 ウしかしながら,被控訴人Yは,昭和63年1月8日に設立された一般労働者派遣事業等を目的とする資本金5000万円の株式会社であり(弁論の全趣旨),原判決が認定するように,全従業員272名のうち,Zからの出向者は11名と約4%に止まっていること,その取引先はZ又はその関連会社のみではなく,取引先の3割ないし4割はそれ以外の会社であることからすれば,被控訴人Yが形式的存在であるとか,Zに従属していたとは認められない。したがって,控訴人の上記イの主張は採用できない。 (3) 控訴人の採用に関するZの関与の有無ア控訴人を採用することについてZが関与したかどうか,その程度等については,原判決15頁13行目から同17頁17行目に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ控訴人は,本件説明会において,Zの従業員のAから就労期間の確認がなされ,採用が決まったのであるから,事前面接がなされたと主張する(前記第2の3(1)イ(イ))。 ウこの点に関し,控訴人は,本件説明会において,Aから「5年以上働いてくれるか」と就労期間の確認をされた旨を本人尋問で供述している〔調 書2頁〕のに対し,証人Aはこれを否定する供述をする〔調書11頁〕。 本件説明会は,その名のとおり説明会 Aから「5年以上働いてくれるか」と就労期間の確認をされた旨を本人尋問で供述している〔調 書2頁〕のに対し,証人Aはこれを否定する供述をする〔調書11頁〕。 本件説明会は,その名のとおり説明会であり,複数の本件参加者に対して同一場所でまとめて行うのであるから,説明も質問も,個人固有の関心事を除外した内容になるのが通例であると考えられる。したがって,本件説明会においてZのAが控訴人に対してだけ「5年以上働いてくれるか」との質問を発し,控訴人が「はい」と答えたとの控訴人の供述は,上記説明会の性格とは整合しないのであり,採用できず,この点に関してはAの供述を採用するのが相当である。次いで個別の面接が行われたが,証拠(甲22,乙22,証人A)によれば,被控訴人Yの担当者B(原判決8頁23行目)が控訴人と本件面接(同8頁23行目から24行目)をし,その結果被控訴人Yが控訴人の採用を決めたこと,面接にはZの従業員は立ち会っていないこと,控訴人は,本件面接において,被控訴人YのBから「前の仕事は何だった」と尋ねられ,営業などの仕事をしてきたと答えると,「決まり」と言われたこと(控訴人自身の供述),なお,本件説明会は,被控訴人YがZに依頼して実施されたこと,Zは,被控訴人Y以外の会社とも労働者派遣契約を締結し,労務の提供を受けたが,それら別の派遣会社が決定した派遣労働者の受入れを拒否したことはないことが認められる。 以上の事情によれば,Zは,控訴人の採用に関与していたとはいえず,控訴人の上記イの主張は採用できない。 (4) 控訴人の賃金の決定権の所在についてア控訴人の賃金を被控訴人Yが決定していたことについては,原判決17頁19行目から同18頁21行目に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ控訴人は,Zが控 決定権の所在についてア控訴人の賃金を被控訴人Yが決定していたことについては,原判決17頁19行目から同18頁21行目に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ控訴人は,Zが控訴人の給与額を事実上決定していたと主張する(前記第2の3(1)ウ(イ))。 ウしかしながら,原判決が認定するように,Zとしては,被控訴人Yがその従業員に対して,どのような形で賃金を支払っているかを認識しておらず,Zから被控訴人Yに対して支払われる労働者派遣契約に基づく契約代金と被控訴人Yが控訴人に支払う賃金との間には必ずしも相関関係がない。 しかも,証拠(甲1の8・9,乙23,証人C,控訴人本人)によれば,控訴人の賃金は,控訴人と被控訴人Yとの交渉により合意が形成され成立していることが認められる。 以上によれば,Zが控訴人の賃金額を決定しているとはいえず,控訴人の上記イの主張は理由がない。 (5) 控訴人に対する労務管理ア控訴人に対する労務管理は被控訴人Yがしていたことについては,原判決18頁23行目から同22頁18行目に記載のとおりであるから,これを引用する。 イ控訴人は,出退勤及び休暇の取得について,Zが管理していたと主張する(前記第2の3(1)オ(ア))。 しかしながら,控訴人がZから年次有給休暇の許可を得ていた事実を認めるに足りる証拠はない。Aが控訴人に対して労働時間の申告を早く行うように求めたことが認められるが,それは,派遣料金が労働者の労働時間及び時間当たりの単価に応じて決まるため,Zが被控訴人Yに対して支払う派遣料金を早く確定する必要があったにすぎない。原判決が認定説示するように,①被控訴人Yは,控訴人の労働時間について,平成15年8月から平成18年12月までは,控訴 め,Zが被控訴人Yに対して支払う派遣料金を早く確定する必要があったにすぎない。原判決が認定説示するように,①被控訴人Yは,控訴人の労働時間について,平成15年8月から平成18年12月までは,控訴人において自ら労働時間を記入した管理表を1か月に1回の割合でファクシミリ送信及び郵送の方法によって送付することにより,平成19年1月以降は,控訴人において被控訴人Yのウェブサイトにアクセスして自らの労働時間を申告する方法により,それぞれ管理していたこと,②年次有給休暇については,控訴人は,Zに連絡 した上で,被控訴人Yに対して年次有給休暇を取得する旨通知し,その旨管理表に記載し,又は被控訴人Yのウェブサイトにアクセスして申告するという方法により,取得していたこと,③控訴人は,本件解除通告(原判決3頁24行目)の後,Cに対し,未消化の年次有給休暇について,これを全て取得させてほしいとの希望を伝え,CがZと調整した結果,控訴人の意向に沿うことができたこと,これらの事実によれば,被控訴人Yが控訴人の出退勤及び年次有給休暇の取得について管理を行っていたと認められる。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 ウ控訴人は,Zとの定期面談は,人事考課も兼ねていたと主張する(前記第2の3(1)オ(イ))。 しかしながら,原判決が認定説示するように,Zは,半年に1回程度,担当者に控訴人と面談させていたが,労働安全衛生の観点からなされるもので10分ないし15分程度であること,他方,Zは自己の従業員に対しては,人事考課を目的として少なくとも1時間程度の面談を実施していることから,Xによる控訴人との面談は労務管理の一貫とはいえない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 エ控訴人は,健康診断 として少なくとも1時間程度の面談を実施していることから,Xによる控訴人との面談は労務管理の一貫とはいえない。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 エ控訴人は,健康診断及び社会保険の手続を被控訴人Yが行っていたことをもって雇用契約が実質を伴ったものとはいえないと主張する(前記第2の3(1)オ(ウ))。 しかしながら,健康診断及び社会保険の手続をしていることは雇用契約の実質を検討するに際し,重要な要素と考えられるから,控訴人の上記主張は採用できない。 (6) 黙示の雇用契約の成立の有無ア前記(2)ないし(5)で検討したように,控訴人の採用及び給与の額は被控訴人Yが決定し,配置を含む控訴人の具体的な就業態様を一定の限度で決 定し得る地位にあったことからすれば,控訴人とZとの間には黙示の雇用契約の成立を認めることはできない。 イしかも,本件において,控訴人と被控訴人Yとの雇用契約を無効とするような特段の事情はない(なお,前掲最高裁判決参照)。 3 派遣法40条の4違反に基づく雇用契約の成否について(1) 控訴人は,Zに派遣法違反があるから,Zに直接雇用義務が発生し,控訴人とZとの間で雇用契約が成立すると主張する(前記第2の3(2)アないしウ)。そこで,以下,順次検討する。 (2) 控訴人の業務内容が専門26業務に該当するか否かついてア控訴人の業務内容原判決(11頁20行目から12頁18行目)が認定するように,控訴人は,本件工場(原判決2頁20行目)品質保証部品質評価グループに配属され,主に本件工場管理棟1階において,金型プレスを用いるなどしてプラスチック材料から成形品(テストピースとも呼ばれ,電化製品等の部品の品質テストをするための物)を作成する作業を担 価グループに配属され,主に本件工場管理棟1階において,金型プレスを用いるなどしてプラスチック材料から成形品(テストピースとも呼ばれ,電化製品等の部品の品質テストをするための物)を作成する作業を担当していた。このテストピースは,曲げ強度,引っ張り強度,耐熱性等様々な観点の品質テストに使用される物である。そして,控訴人は,本件工場で就業を開始した当時は,テストピースの作成業務を担当した経験はなく,Zの従業員らから,様々な教育や指導(実際の仕事を通じて,必要な技術,能力,知識,あるいは態度や価値観を身に付けさせる教育訓練をいう。いわゆるOJT)を受けながら作業手順や業務を習熟していった。上記教育や指導は,控訴人が就労を開始した平成15年8月1日から平成18年10月12日まで,継続的に行われていた(1年後に正社員と同じ位になり,3年目にはどんな仕事も1人でできるようになった〔甲22の6頁〕)。 イところで,派遣法40条の2第1項1号イは,政令で定める「専門的な知識,技術又は経験を必要とする業務」(いわゆる専門26業務)につい ては,派遣先の常用雇用の代替のおそれが客観的に低いとの趣旨から,派遣受入期間の原則制限(1年)の例外とする旨を規定している。 この点に関し,被控訴人らは,控訴人の担当業務は上記政令4条17号の「研究開発」に該当するとし,その理由として,この点に関する労働者派遣事業関係業務取扱要領237頁(甲6)に記載されている「(17)イ④」の「実験,計測,解析及び分析,実験等に使用する機器,装置及び対象物の製作又は作成,標本の製作等」に該当し,かつ「(17)ロ①」の「専門的な知識,技術又は経験を必要とする業務でないものを専ら行うもの」,及び「(17)ロ②」の「製品の製造工程に携わる業務を専ら行うもの」の除 作成,標本の製作等」に該当し,かつ「(17)ロ①」の「専門的な知識,技術又は経験を必要とする業務でないものを専ら行うもの」,及び「(17)ロ②」の「製品の製造工程に携わる業務を専ら行うもの」の除外事由に該当しないと主張する。 そこで,検討するに,控訴人は,前記アのとおり,金型プレスを用いるなどしてプラスチック材料からテストピースを作成する作業を担当していること,この業務は,材料,金型及びプレスの種類が多く,機械操作に慣れるのに時間を要し,控訴人の場合,正社員と同程度に習熟するのに1年程度を要したことから,上記「(17)イ④」に該当する可能性がある。しかしながら,控訴人は,採用されるに際し,上記作業に関わる経験を有していたわけではなく,専門的な経験を買われて採用されたわけでもない。さらに,控訴人は,派遣期間中にプラスチックの成形技能士の資格を取得したわけでもない。これに加え,甲22及び控訴人本人尋問の結果によれば,控訴人はテストピースの作成に当たり,現場のリーダーの指示に従い,ファイルや機械の取扱説明書を見ながら作業を進めていたこと,OJT教育も従業員に特別な能力を付けさせるためのものではなかったことが認められる。 そうすると,控訴人の業務内容は,慣れてくれば,作業効率が上がり1人でもできるが,慣れない段階でも指示を受けながらできる性質のものであり,専門的な知識,技術又は経験を必要とする業務でないものを専ら行 うものというべきであり,前記「(17)ロ①」に該当し,政令の指定する専門26業務には該当しないと解するのが相当である。 (3) 派遣法違反による雇用契約の成立についてア前記(2)のとおり,控訴人の業務は専門26業務に該当しないから,派遣法40条の2による派遣期間の制限を受け,控訴人の派遣受入期間は, 。 (3) 派遣法違反による雇用契約の成立についてア前記(2)のとおり,控訴人の業務は専門26業務に該当しないから,派遣法40条の2による派遣期間の制限を受け,控訴人の派遣受入期間は,1年後の平成16年8月1日までとなる。しかし,本件において,控訴人はこの期間を超えてZに派遣されていたのであるから,派遣法違反の労働者派遣がなされたことになる。 イ次に,派遣法違反の労働者派遣の場合に派遣先に直接雇用義務が発生するかを検討する。 派遣法40条の4は,「35条の2第2項の規定による通知を受けた場合において」と規定し,派遣元から同法40の2第1項に抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行わない旨の通知を受けた場合に,派遣先に対し派遣労働者に直接雇用を申し込むべき義務を課しているのであり,本件のように上記通知がなされていない場合には上記義務がある旨を定めてはいない。しかも,派遣法は,その目的規定(1条)から明らかなように,直接には,労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講じ,派遣労働者の就業に関する条件の整備等を図るための取締法規であり,その実効性確保のために,各事業主に対する厚生労働大臣による指導,助言及び勧告,改善命令,公表等という制度を採用しているのであるから,同法違反の派遣労働があった場合に派遣労働者と派遣先企業との間に労働契約の成立をいわば擬制することによって同法の遵守が確保されるようにする旨の立法政策を採用していると解するのは困難である。なお,本件においては,三重労働局長からZに対し,控訴人に関して派遣法49条の2第2項に基づく雇入れの勧告はなされていない(乙18)。 したがって,控訴人の上記(1)の主張は採用できない。控訴人は上記(1) の主張の根拠を種々主張するが,いずれも独 法49条の2第2項に基づく雇入れの勧告はなされていない(乙18)。 したがって,控訴人の上記(1)の主張は採用できない。控訴人は上記(1) の主張の根拠を種々主張するが,いずれも独自の見解であって,雇用契約が成立したとは解されない。 4 不法行為の成否について(1) 控訴人は,Z及び被控訴人Yは業務内容を偽装し,違法な事前面接をし,解雇権濫用をして,控訴人がZにおいて,安定的かつ平穏に勤務し,労働者として適正な給与を得て生活する人格的権利利益を違法に侵害したと主張する(前記第2の3(3)ア,イ)。 (2) しかしながら,前記2で検討したように,Zの違法な事前面接は認めることはできず,Zとの間で黙示の雇用契約が成立したとの事実は認められないのであるから,控訴人の解雇権の濫用の主張は前提を欠き理由がない。 また,控訴人の担当業務は政令で指定する26の専門業務ではなかったというべきであるにもかかわらず,Zと被控訴人Yが,結果的に専門26業務に該当するとして派遣期間の制限がないかのように扱った事実がある。しかし,控訴人は被控訴人Yとの間で登録型(一般労働者派遣事業によるもの。 派遣法2条4号)の派遣労働契約を締結しており,かかる登録型の派遣労働契約は,その前提となる労働者派遣契約が終了すれば,終了するものであり,控訴人は,その契約を更新されるべきである旨を主張できるような安定的な雇用契約上の地位を有していたわけではない。 前記2で検討したとおり,派遣法は,取締法規であり,その違反には各事業主に対する厚生労働大臣による指導,助言及び勧告,改善命令,公表等の制度を採用しているにすぎず,これらの手段を通じて個々の派遣労働者の労働条件が保護されることがあるとしても,派遣労働者と派遣先企業との労働契約の成立を保障したりする 助言及び勧告,改善命令,公表等の制度を採用しているにすぎず,これらの手段を通じて個々の派遣労働者の労働条件が保護されることがあるとしても,派遣労働者と派遣先企業との労働契約の成立を保障したりするものではないこと,その違反に対して罰則が定められていないこと等からすれば,非許容業務ではないのに派遣労働者を受け入れ,許容期間の制限を超えて派遣労働者を受け入れたからといって,直ちに控訴人に対して私法上の制裁ともいうべき不法行為上の違法があるとま でいうことはできない。 したがって,控訴人の上記(1)の主張は採用できず,その余について検討するまでもなく,被控訴人らに不法行為上の責任は認められない。 5 結論以上によれば,控訴人の請求は理由がないからこれを棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であるから本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第1部 裁判長裁判官岡光民雄 裁判官岡田治 裁判官河村隆司

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