令和5(行ケ)10053 特許取消決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年6月24日 知的財産高等裁判所 4部 判決 決定取消
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判決文本文45,163 文字)

令和6年6月24日判決言渡令和5年(行ケ)第10053号特許取消決定取消請求事件口頭弁論終結日令和6年5月8日判決 原告三井化学株式会社 原告国立研究開発法人産業技術総合研究所 上記両名訴訟代理人弁護士高橋雄一郎上記両名訴訟代理人弁理士速水進治同林佳輔同花岡一哉 被告特許庁長官同指定代理人山村浩同野村伸雄同小暮道明同須田亮一 主文 1 特許庁が異議2021-700369号について令和5年3月30日にした決定のうち、特許第6781864号の請求項1、3~18に係る特許を取り消した部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 【略語】本判決で用いる略語は、別紙1「略語一覧」のとおりである。なお、本件決定中で使用されている略語は、本判決でも原則としてそのまま踏襲している。 第1 請求主文と同旨 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)(1) 原告らは、発明の名称を「ペリクル膜、ペリクル枠体、ペリクル、その製造方法、露光原版、露光装置、半導体装置の製造方法」とする発明について、平成29年7月3日特許出願をし(優先権主張日は平成2 (1) 原告らは、発明の名称を「ペリクル膜、ペリクル枠体、ペリクル、その製造方法、露光原版、露光装置、半導体装置の製造方法」とする発明について、平成29年7月3日特許出願をし(優先権主張日は平成28年7月5日)、令和 2年10月21日本件特許に係る特許権の設定登録を受け(請求項の数23)、同年11月11日に特許掲載公報が発行された。 (2) 本件特許について、特許異議の申立て(①令和3年4月23日付け〔請求項1~18に係る特許に対するもの〕、②同年5月7日付け及び③同月11日付け〔いずれも請求項1~23に係る特許に対するもの〕の3件)がされ、 特許庁は、これらの申立てを異議2021-700369号事件として審理を行った。 (3) 原告らは、令和4年8月8日付けで取消理由通知(決定の予告)を受けたことから、その意見書提出期間内である同年11月11日、本件特許の特許請求の範囲(請求項1~23)を下記2(1)及び別紙2のとおりに訂正(本件 訂正)する旨の訂正請求をした(訂正後の請求項の数17)。 (4) 特許庁は、令和5年3月30日、本件訂正を認めた上で、「特許第6781864号の請求項1、3-18に係る特許を取り消す。特許第6781864号の請求項2、19-23に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。」との本件決定をし、その謄本は同年4月10日原告らに送達された。 (5) 原告らは、令和5年5月9日、本件決定の取消しを求める本件訴訟を提起 した。 2 本件発明の内容(1) 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲の請求項(本件訂正後のもの、請求項2、19~23は削除)のうち、独立項である請求項1、6を以下に掲げる(請求項3~ 5、13~18は請求項1を直接又は間接に引用する請 本件特許の特許請求の範囲の請求項(本件訂正後のもの、請求項2、19~23は削除)のうち、独立項である請求項1、6を以下に掲げる(請求項3~ 5、13~18は請求項1を直接又は間接に引用する請求項、請求項7~18は請求項6を直接又は間接に引用する請求項である。なお、請求項1についての分説は原告らによる。請求項3~5、7~18については別紙2に記載)。 【請求項1】 1A 支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり、1B 前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、 1C 前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、1D 下記条件式(1)を満たし、1G 前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し、 1H 前記カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下である、1I 露光用ペリクル膜。 (1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベ クトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方 向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークと インとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 RBが0.40以上である。 【請求項6】カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下であり、カーボンナノチューブの長さが10μm以上10cm以下であり、カーボンナノチューブ中のカーボンの含有量が98質量パーセント以上で ある、カーボンナノチューブシートの自立膜であるペリクル膜であって、前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向し、下記条 件(1)を満たし、前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有する、ペリクル膜。 (1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナ ノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強 度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシ 方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強 度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシート の面内方向の回折強度との差で除した比 RBが0.40以上である。 (2) 本件明細書(甲20)には、本件発明について次のような開示があることが認められる。 ア本発明は、半導体デバイス等をリソグラフィ技術により製造する際に使用するフォトマスク又はレチクル及び、塵埃が付着することを防ぐフォト マスク用防塵カバーであるペリクル等、特に、極端紫外光(ExtremeUltraviolet:EUV)リソグラフィ用の極薄膜であるペリクル膜、ペリクル枠体、ペリクル、及びその製造方法、並びにこれらを用いた露光原版、半導体装置の製造方法に関する(【0001】)。 イリソグラフィでは、回路パターンが描画されたマスクに露光光を照射し て、フォトレジストが塗布された半導体ウェハに回路パターンを転写するが、その際マスク上に塵埃などの異物が付着すると、該異物の影が半導体ウェハに転写され、回路パターンが正確に転写されず不良品となってしまうことがある。 これに対し、ペリクル膜が貼り付けられた支持枠からなるペリクルをマ スクに装着すると、塵埃などの異物をペリクル膜上に付着させ、マスクに付着することを防ぐことができ、ペリクル膜に付着した異物の影が半導体ウェハ上で結象することはないため、不良品の発生率を大幅に抑制できる(【0002】、【0003】)。 ウペリクル膜の光透過率が低いと、半導体ウェハ上に形成されているフォ トレジストが十分に感光されないため、ペリクル膜には、露光光を高透過率で透過させる特性 002】、【0003】)。 ウペリクル膜の光透過率が低いと、半導体ウェハ上に形成されているフォ トレジストが十分に感光されないため、ペリクル膜には、露光光を高透過率で透過させる特性が求められる。 ペリクル膜にEUV光などの露光光が照射されると、露光時にはペリクル膜の温度が上昇する。そのため、温度上昇時の放熱性や耐熱性という観点からも、EUV透過率の高いペリクル膜が必要となる(【0006】)。 エ従来、ペリクル膜の膜強度を得るために密度を高めると高い透過率が得 られないこと、カーボンナノチューブは製造過程で含まれる金属などの不純物が多く透過率が悪くなることが指摘されていた(【0008】)。 オそこで、本件発明は、請求項記載の構成を採用した(【0013】~【0015】、【0017】~【0019】、【0021】、【0023】、【0024】、【0026】~【0034】)。 カ本件発明によれば、EUV透過性が高く耐熱性に優れたペリクル膜、ペリクル枠体、ペリクルを提供することができる。また、これらを用いた露光原版をもって、EUV光等によって微細化されたパターンを形成でき、異物による解像不良が低減されたパターン露光を行うことできる露光原版及び半導体装置の製造方法を提供することができる(【0040】)。 キ RB の値が、0.40以上では面内配向しており、0.40未満では面内配向していないことを表す。RBの値は、0.40以上であることが好ましく、0.6以上がより好ましい(【0104】)。 クバンドルが面内配向しているカーボンナノチューブシートは、バンドルの径と同等の膜厚とすることが可能となり、高いEUV透過率を達成する ことができる。さらには、バンド 0104】)。 クバンドルが面内配向しているカーボンナノチューブシートは、バンドルの径と同等の膜厚とすることが可能となり、高いEUV透過率を達成する ことができる。さらには、バンドルが面内配向しているカーボンナノチューブシート(又はペリクル膜)は、面内方向にバンドル同士が絡み合った網目構造とすることができるために、100nm以下の厚さであっても自立膜を形成することができる(【0112】)。 面内配向したバンドルが網目構造を有するカーボンナノチューブシート は、シートに応力が加わった際に、応力を分散させると同時に、バンドルの変形やバンドルの並進運動を抑制することができるため、自立膜に応力を加えても網目構造及び自立膜形状を保つことができる(【0114】)。 3 本件決定の理由の要旨(1) 訂正の許否について 本件訂正は、いずれも特許請求の範囲を減縮するものであり、その他法定 の要件を充足するものであるから、これを認める。 (2) 判断基準日について本件特許の優先権主張の基礎出願には、本件発明の構成要素であって記載されていないものがあるから、本件発明の特許出願には優先権の効果は認められず、新規性、進歩性、拡大先願等の判断基準日は、本件特許の出願日であ る2017年(平成29年)7月3日である。 (3) 特許法113条2号の特許取消理由について(詳細は別紙3「本件決定の理由」を参照)本件決定において判断の対象となった特許取消理由は、以下のものである。 (取消理由)(引用例/先願)(対象請求項)新規性欠如引用文献1請求項1、3~5進歩性欠如引用文献1~3(それぞれ独立の主引用例)請求項1、3~18拡大先願違反先願1請求項 用例/先願)(対象請求項)新規性欠如引用文献1請求項1、3~5進歩性欠如引用文献1~3(それぞれ独立の主引用例)請求項1、3~18拡大先願違反先願1請求項1、3~5、13~18ア引用文献1を主引用例とする本件発明1、3~5の新規性欠如について の判断本件発明1、3~5は、引用発明1との間に実質的な相違点はなく、新規性を欠く。その特許は特許法29条1項に違反してされたものである。 イ引用文献1を主引用例とする進歩性欠如についての判断本件発明は、引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明で きたものである。その特許は特許法29条2項に違反してされたものである。 ウ引用文献2を主引用例とする進歩性欠如についての判断本件発明は、引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。その特許は特許法29条2項に違反してされたものであ る。 エ引用文献3を主引用例とする進歩性欠如についての判断本件発明は、引用発明3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。その特許は特許法29条3項に違反してされたものである。 オ拡大先願についての判断 本件発明1、3、4は先願発明Aと、本件発明5は先願発明Bと、本件発明13は先願発明Cと、本件発明14~16は先願発明Dと、本件発明17、18は先願発明Eと、それぞれ同一である。その特許は特許法29条の2に違反してされたものである。 4 取消事由 本件の取消事由は以下のとおりである。 なお、本件発明の特許出願に優先権の効果は認められず、新規性、進歩性、拡大先願等の判断基準日が本件特許の出願日となることには争いがない。 (1) 引用 本件の取消事由は以下のとおりである。 なお、本件発明の特許出願に優先権の効果は認められず、新規性、進歩性、拡大先願等の判断基準日が本件特許の出願日となることには争いがない。 (1) 引用文献1を主引用例とする本件発明1、3~5の新規性の判断の誤り(取消事由1) (2) 引用文献1を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り(取消事由2)(3) 引用文献2を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り(取消事由3)(4) 引用文献3を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り(取消事由4)(5) 本件発明1、3~5、13~18と拡大先願に係る発明との同一性に関する判断の誤り(取消事由5) 第3 当事者の主張 1 取消事由1(引用文献1を主引用例とする本件発明1、3~5の新規性の判断の誤り)について【原告らの主張】(1) 引用発明1の認定の誤り 本件決定の引用発明1の認定は、以下のとおり誤りである。 ア引用文献1中、構成1cの認定根拠とされる部分(12頁7~8行)は、CNT自立膜を得ることができるかもしれないという筆者の予想ないし期待を述べたものであって、実際に行った実験内容に基づくものではなく、図14(b)も上記予想ないし期待に基づく模式図にすぎない。 引用文献1には、CNT膜の形状を保ったままSiNx膜をどのように 除去するのか記載も示唆もない。本件決定が引用する引用文献1の10頁2行は、「エアロゾルCVD法」で成長させたCNTを微多孔フィルタ上に集めて膜を形成し、これを、開口部を持つ基板に乾燥転写することで自立膜を作製する他の文献(甲18)を引用するものであるが、これと引用文献1記載の技術は異なる。 イ構成1eの認定根拠とされる を形成し、これを、開口部を持つ基板に乾燥転写することで自立膜を作製する他の文献(甲18)を引用するものであるが、これと引用文献1記載の技術は異なる。 イ構成1eの認定根拠とされる部分(図11(e))は、CNTの光散乱を評価するシミュレーションに用いるパラメータとしてSWCNT(単層CNT)の径を示したものである。実際に作製、評価を行った「SiNx/多層CNT積層膜」に関するものではない点、単層CNTであるという点において、多層CNTに係る発明である引用発明1の径を特定する根拠とし て不適切である。 ウ引用文献1において、積層膜からSiNx膜を除去したものが「ペリクル膜」であると解すべき根拠はない。引用文献1において、自立CNTペリクル膜を対象とした性能評価の記載はない。 原告らは、引用文献1の記載に基づいてSiNx上にCNT膜を堆積し たCNT積層膜を作製し、その後、SiNxを除去することで自立膜を形成できるかを確認すべく、実験を行ったが(甲36)、SWCNT膜が破砕してバラバラになってしまい、ペリクルとして使用可能な程度のCNTの自立膜を形成可能なものではないことが確認された。 (2) 相違点(実質的な相違点)の認定の誤り 本件決定の認定する相違点1Aを前提としても、それに含まれるRB0.4 以上事項は、引用発明1に対して実質的な相違点となる。この点を含め、実質的な相違点はないとした本件決定の判断は誤りである。 本件決定がRB0.4以上事項が実質的な相違点でないと判断する理由は、本件発明1のRB0.4以上事項はCNTのバンドルが面内配向していることを特定するものであり、引用発明1は面内配向しているものを想定している から、「CNTペリクル膜中でバンドルが する理由は、本件発明1のRB0.4以上事項はCNTのバンドルが面内配向していることを特定するものであり、引用発明1は面内配向しているものを想定している から、「CNTペリクル膜中でバンドルが面内配向し」ているものである以上引用発明1もRB0.4以上事項を満たすことになるというものである。 しかし、本件発明1は、「前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており」との構成(構成1C)に加え、「下記条件式(1)を満たし」としてRBが0.40以上であるとし、面内配向が高度であることを RBの値により特定しているのである(構成1D)。 引用文献1の図11(a)(b)及び10頁5~8行には、CNTの配置に関する近似モデルが示されているだけで、実際に作製したCNT膜が配向していることも記載されず、まして、どの程度の配向性を有しているかも記載されていない。 被告は、RB0.4以上事項は薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常満たしている旨主張するが、「薄膜自立無秩序SWCNTシート」なる本件決定に記載もない概念を導入するもので不当であるし、この「薄膜自立無秩序SWCNTシート」が本件明細書の実施例1と同様にRB0.4以上事項を満たしているとは限らない(甲40の実験結果参照)。 【被告の主張】(1) 引用発明1の認定に誤りがないことについてア原告らは、本件決定中、引用発明1の構成1cの認定根拠とされる部分が実際に行った実験内容に基づくものではない旨主張する。 しかし、本件出願当時において単層カーボンナノチューブを用いたCN Tシートからなる200nmよりも十分に小さい厚さの自立膜であって、 CNTに対して特段の配向秩序が与えられることなく製造されたもの(薄 時において単層カーボンナノチューブを用いたCN Tシートからなる200nmよりも十分に小さい厚さの自立膜であって、 CNTに対して特段の配向秩序が与えられることなく製造されたもの(薄膜自立無秩序SWCNTシート)は技術常識であったのであり、しかも、引用文献1はその根拠となる甲18を明記している。原告らは、甲18記載の技術と引用文献1記載の技術とで自立膜の作製方法が異なる旨主張するが、引用発明1は、「CNTペリクル膜」という物に係る発明であることか ら、当業者が自立膜という構造を認識、理解できるかどうかが問題である。 イ原告らは、本件決定が構成1eを認定した根拠箇所が、シミュレーションに用いられるパラメータとしてSWCNTの径を示したものにすぎないこと、引用発明1が多層CNTに係る発明であることから、構成1eでSWCNTの径を特定する点で誤りである旨主張する。 しかし、引用文献1に記載されている径(1~3nm)は、技術常識に沿うものであるし(乙5)、引用文献1には、SWCNTについての記載もあることから、当業者であれば、当該根拠箇所の記載における多層CNTをSWCNTに読み替えて認識、理解できる。 ウ原告らは、引用文献1において、積層膜からSiNx膜を除去したもの が「ペリクル膜」であると解すべき根拠はない旨主張するが、図14(b)からペリクル膜であることは理解できる。 また、原告らは、引用文献1には、自立CNTペリクル膜を作製したことの記載がない旨主張するが、その明記の有無は、引用文献1の記載及び技術常識に基づいて、本件決定が認定した引用発明1に係るCNTペリクル 膜を当業者が認識、理解できることを左右するものではない。 さらに、原告らは、引用文献1におけ 文献1の記載及び技術常識に基づいて、本件決定が認定した引用発明1に係るCNTペリクル 膜を当業者が認識、理解できることを左右するものではない。 さらに、原告らは、引用文献1におけるCNT薄膜の製造方法の記載からは、CNTの自立膜を作ることができず、SWCNT膜が破砕してバラバラになる旨主張し、その根拠として原告らが行った実験結果(甲36)を挙げるが、当業者であれば、適宜CNTの分散性を向上させるようにして、 CNTの自立膜を作ることができる。 (2) 相違点(実質的相違点)の認定の誤りがないことについて原告らは、RB0.4以上事項が実質的な相違点である旨主張するが、RB0.4以上事項は、通常の発想のもとで、通常の性状のSWCNT及び通常用いられるプロセスで製造された薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば、通常、満たしているといえるものである。 RBは、CNTのバンドルの三角格子に由来する特定のピークについて、ベースラインとなる強度を差し引いた上での、面内方向におけるピーク強度と膜厚方向におけるピーク強度の比によって定義される(本件明細書【0099】)ところ、面内配向が強いほどRBの値は大きな正の値となり(【0103】)、0.40以上では面内配向しているとされている(【0104】)。 そして、膜厚200nmかつ径が100nmを超えるバンドルが見られない自立膜に係る実施例1では、RBが1.02(【0188】、【0190】、【0192】)である一方、膜厚200nmかつ径が100nmを超えるバンドルが観察された非自立膜に係る比較例1では、RBが0.353(【0194】、【0196】、【0197】)であるとされている。 薄膜自立無秩序SWCNTシートは、膜厚、バンドル径及び自立 ドルが観察された非自立膜に係る比較例1では、RBが0.353(【0194】、【0196】、【0197】)であるとされている。 薄膜自立無秩序SWCNTシートは、膜厚、バンドル径及び自立性のいずれの観点においても、比較例1よりは実施例1に相当程度似通っている。その上、そもそも比較例1のRBの値(0.353)がRB0.4以上事項の下限である0.4に相当程度近く、さらにRBの値には一定程度の不確定性が入り込まざるを得ないことをも考慮すれば、比較例1よりも実施例1に相当程 度似通っている薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば、RB0.4以上事項を満たしているというべきである。さらに、上記のとおり、RBの値は面内配向が強いほど大きな正の値となるところ、膜厚が薄くなれば、SWCNTバンドルがシート表面方向に沿う程度がより大きくなることから、当該シートは、より明白に、RB0.4以上事項を満たすことになる。 なお、原告らは、バンドルが面内配向したものであってもRB0.4以上事 項を満たすとは限らないとして甲40の実験結果を提出するが、RB測定サンプルの保管が実際にどのような条件で行われていたか確認できず、サンプルの実在も確認できないこと、本件明細書等に記載された実施例及び比較例と実験条件が異なること、当該各RB測定サンプルは特性が位置的にみて不均一となっていることといった問題がある。また、RB0.4以上事項を満たさな いとされるサンプル1、2は一部破損がみられるところ、製造工程にあたって一部が破砕してしまうような膜は、掬い取り前の状態において何らかの問題があるというべきであり、そのような問題のある浮遊体のうち、その後の製造工程において破砕しなかった膜を「自立膜」と評価することは妥当ではない。 、掬い取り前の状態において何らかの問題があるというべきであり、そのような問題のある浮遊体のうち、その後の製造工程において破砕しなかった膜を「自立膜」と評価することは妥当ではない。 2 取消事由2(引用文献1を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り)について【原告らの主張】本件決定における引用発明1と本件発明の一致点・相違点の認定を前提としても、本件決定には、容易想到性の判断について誤りがある。 (1) 引用発明1は、SiNx/多層CNT積層膜からSiNx膜を除去した後の膜を特定するものである。 引用発明1の「SiNx膜を除去した後、CNTペリクル膜は、完全に自立しているものであり」という構成は、実際に作製されたものではなく、技術常識を踏まえても実現困難なものである。このような具現化されていない要素 を含む引用発明1を出発点として、相違点1A又は相違点6Aを満たす構成は、容易に想到し得るものではない。 (2) 引用発明1においてRB0.4以上事項を具備するようにする動機付けはないし、引用発明1の膜に対してRB0.4以上事項を具備するような高度な配向性を付与する技術手段は引用文献1に記載されていない。 (3) 本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件 発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用文献1記載の発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 【被告の主張】(1) 原告らの主張するところは、結局引用発明1の認定の誤りをいうものにすぎず、その前提が失当である。 (2) 原告らは、引用発明1において、SiNx/CNT積層膜からSiNx膜を除去した後において、当該積層 ところは、結局引用発明1の認定の誤りをいうものにすぎず、その前提が失当である。 (2) 原告らは、引用発明1において、SiNx/CNT積層膜からSiNx膜を除去した後において、当該積層膜のときのCNT膜の性状がそのまま維持されるか、特にRB0.4以上事項を満たすかは不明である旨主張するが、除去を行う手法はSiN層のウェットエッチングであって技術常識にすぎないし(乙10、11)、RB0.4以上事項は、薄膜自立無秩序SWCNTシー トであれば通常満たしているといえるものであることは前述のとおりであるから、この点が相違点に当たるとしても少なくとも容易想到である。 3 取消事由3(引用文献2を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り)について【原告らの主張】 (1) 引用発明2の認定の誤り、相違点の認定の誤り本件決定は、引用発明2につき「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」との認定をするが、引用文献2の発明に係る放熱体は、当該放熱体とは異なる物品から発する熱を放熱するものである(37頁下から2行~38頁1行)。 また、引用文献2には、「従来にみられない高純度、高比表面積のカーボンナノチューブ(特に配向した単層カーボンナノチューブ・バルク構造体)およびその製造方法装置を提供すること」との記載があり、図27をみても、引用発明2におけるカーボンナノチューブ・バルク構造体は、カーボンナノチューブが垂直方向に成長した構造を有する。 以上の点を併せ考慮すると、本件発明1と引用発明2の間には、①本件発 明1は、「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、前記ペリクル膜 上の点を併せ考慮すると、本件発明1と引用発明2の間には、①本件発 明1は、「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり」という構成1Aを備えるのに対し、引用発明2は、「光学製品が発した熱を放熱するのに用いられる、配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」である点、②カーボンナノチューブシートについ て、本件発明1は「面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」ているという構成1Gを備えるのに対し、引用発明2は、当該構成を備えていない点で相違点があるのに、本件決定はこれを看過している。 また、本件発明6と引用発明2の間においても、上記①、②と同様、③カーボンナノチューブシートについて、本件発明6は「面内配向した前記バンド ル同士が絡み合った網目構造を有し」ているという構成を備えるのに対し、引用発明2は、当該構成を備えていない点、④本件発明6は、「カーボンナノチューブシートの自立膜であるペリクル膜であって」という構成を備えるのに対し、引用発明2は、「光学製品が発した熱を放熱するのに用いられる、配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」である点で相違点があるのに、 本件決定はこれを看過している。 (2) 相違点の容易想到性の判断の誤りア引用発明2に周知技術を適用して、カーボンナノチューブシートについて、上記(1)②、③の相違点に係る構成(「面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」ているという構成)とすると、引用発明2の 配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体(カーボンナノチューブが垂直方向に成長する)ではなくなるから、このような改変には阻 み合った網目構造を有し」ているという構成)とすると、引用発明2の 配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体(カーボンナノチューブが垂直方向に成長する)ではなくなるから、このような改変には阻害要因がある。 イ引用発明2を出発点として、上記(1)①、④の相違点に係る構成を備えるようにするためには、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」自 体を「光学製品」とし、「光学製品」としてペリクル膜を選択するという2 段階の改変を要することとなる。 第1段階の改変は、引用文献2に記載されていない技術事項を持ち込むものであるとともに引用文献2における「放熱体」の技術的意義を喪失させるものであるから、阻害要因がある。 引用文献2に「ペリクル」についての記載も示唆も全く存在しないこと を踏まえれば、当業者が第2段階の改変を行う動機付けは全く存在しない。 ウ本件発明は、0.8nm以上6nm以下の径の複数のカーボンナノチューブから形成され、100nm以下の径を有するバンドルの絡み合いにより形成される本件発明特有の網目構造と、RB0.4以上事項という、本件発明特有の定義による高度な配向性を備えた面内配向を共に備えるCNT 自立膜であるペリクル膜というひとまとまりの構成を有することにより、自立ペリクル膜としての実用に耐える強度と、高いEUV透過性とを両立させるという作用効果を奏するものであるところ、上記構成を満たす構成は、引用文献2及び周知技術から容易に想到し得るものではない。 エ本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件 発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものでもない 件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件 発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。 【被告の主張】本件決定における引用発明2及び相違点の認定並びに相違点の容易想到性についての判断に誤りはなく、原告らの主張には理由がない。 4 取消事由4(引用文献3を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り)について【原告らの主張】(1) 引用発明3の認定の誤り特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」は、当該刊行物の記載 から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない。また、刊行物に物 の発明が記載されているといえるためには、刊行物の記載及び本件特許の出願時の技術常識に基づいて、当業者がその物を作れることが必要である。引用文献3は、配向カーボンナノチューブシートをペリクル膜として利用するアイデアを提示するものにすぎず、配向カーボンナノチューブシートが、EUV用ペリクル膜として実用に耐える性能(機械的強度、EUV耐性、サイズ 等)を有することは、記載されていない。 本件特許出願日において、SW-CNT(単層CNT)の自立膜を形成することは知られていたが(甲18)、これには、触媒鉄粒子が含まれており、EUV用のマスクペリクルとしては使用できない。結局、引用文献3には、「マスクペリクルとして配置される、配向したカーボンナノチューブシートを含 む自立型の光学素子」を満たす発明を当業者が作れるように記載されているとはいえないから、そこに特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」が記載されているとはいえない。 これを前提とすると、引用文献3記載の発明は、①本件 発明を当業者が作れるように記載されているとはいえないから、そこに特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」が記載されているとはいえない。 これを前提とすると、引用文献3記載の発明は、①本件発明1の「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、厚さが 200nm以下であり、前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり」(構成1A)という構成を備えない点で本件発明1と相違し、②本件発明6の「カーボンナノチューブシートの自立膜であるペリクル膜であって」という構成を備えない点で本件発明6と相違する。 これら相違点を看過した本件決定は誤りである。 (2) 容易想到性についての判断の誤り本件決定の認定する相違点を前提としても、容易想到性の判断には誤りがある。 ア本件発明1、6は、所定の要件を満たすバンドル同士が面内配向した状態で絡み合った網目構造と、RB0.4以上事項という、本件発明特有の定 義による高度な配向性を備えた面内配向を共に備えるCNT自立膜である ペリクル膜というひとまとまりの構成を有することにより、自立ペリクル膜としての実用に耐える強度と、高いEUV透過性とを両立させるという作用効果を奏するものである。 引用発明3は実際に作製されたものではなく、技術常識を踏まえても実現困難な、引用発明3の自立型の光学素子を構成する配向カーボンナノチ ューブシートを出発点として、相違点3Aと3B(又は、相違点3Cと3D)に含まれる複数の構成を具備する自立CNTペリクル膜という構成に到達することは、容易想到とはいえない。 イ RB0.4以上事項は、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば、通常、満たしているといえるとする被告の主張 具備する自立CNTペリクル膜という構成に到達することは、容易想到とはいえない。 イ RB0.4以上事項は、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば、通常、満たしているといえるとする被告の主張が不当であることは前述のとおり である。 ウ以上のとおり、本件発明1及び本件発明6は、引用文献3記載の発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用文 献3記載の発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 【被告の主張】(1) 引用発明3の認定に誤りがないことについて引用文献3には、「リソグラフィ装置内のマスクペリクルとして配置され る光学素子」(【0085】)が、①約20~500nmの範囲内の素子厚さを有すること(【0064】)、②カーボンナノチューブシートを含むこと(【0061】)、③当該カーボンナノチューブシートは、カーボンナノチューブシートの表面と実質的に平行にカーボンナノチューブが配向したものであること(【0061】)、④自立型であること(【0067】)、⑤リソグ ラフィ装置内のマスクペリクルとして配置されること(【0085】)、が開 示されている。また、本件出願当時、膜厚が40、80、120、160及び200nmの自立膜を構成するSWCNT薄膜それ自体は、甲18に記載されており、この文献は、技術常識に属するものであった。そうすると、当業者は、これらの技術的事項について、上記した引用文献3の記載のみならず、上記技術常識に属する自立膜を構成するSWCNT膜をも踏まえて認識、理解 、技術常識に属するものであった。そうすると、当業者は、これらの技術的事項について、上記した引用文献3の記載のみならず、上記技術常識に属する自立膜を構成するSWCNT膜をも踏まえて認識、理解 するといえるところ、具体的には、引用発明3に係る光学素子が、サポートや支持がされなくても存在するカーボンナノチューブシートから構成されていることを、上記技術常識に属する自立膜を踏まえて認識、理解するといえる。 引用文献3には、引用発明3に係る光学素子の構造が、本件出願当時の技術常識を前提にして、当業者に理解可能な程度に明らかになっていたといえ るから、引用文献3には、本件発明1と対比可能な程度に技術的事項が開示されていたものである。 (2) 容易想到性の判断に誤りがないことについてア引用発明3の「カーボンナノチューブシート」に係るCNTはSWCNTでよい(【0023】)ところ、相違点3Bに係るSWCNTの径は通常 のものである。 イ SWCNTは、通常、バンドルを形成するところ、引用発明3のCNTは表面と実質的に平行に配向していることから、SWCNTバンドルの径は、膜厚(500nm以下)と比べて同程度以下となる。そして、引用文献3にはEUV放射の透過率がカーボンナノチューブシートのシート厚さに依存 することが記載されている(【0065】)ことから、引用発明3において、EUV放射の透過率を高めるべく、カーボンナノチューブシートの膜厚を小さくするのは技術の通常の方向性といえるところ、そうであれば、当該膜厚を小さくしつつ、その結果、バンドル径も通常存在するようなものとすることは、当業者にとって容易である。 ウ 「カーボンナノチューブシート」を製造するに当たって、CNTに特段の を小さくしつつ、その結果、バンドル径も通常存在するようなものとすることは、当業者にとって容易である。 ウ 「カーボンナノチューブシート」を製造するに当たって、CNTに特段の 配向秩序が与えられないようにすることは通常なされていたことであるから、引用発明3の「カーボンナノチューブシート」を同様に構成することは当業者が適宜なし得たことであり、そのようにしたことにより、当該「カーボンナノチューブシート」は、通常存在するような、SWCNT同士が絡み合った網目構造を有していることになる。 エ RB0.4以上事項は、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば、通常、満たしているといえるものであることは前述のとおりである。 ペリクル膜の厚さを薄くすることでEUV放射の透過率を高めることは技術の通常の方向性であり、面内配向膜である引用発明3のペリクル膜において膜厚を200nm以下にまで小さくしつつ、その結果、バンドル径 を通常存在する100nm以下とするように構成すれば、RB0.4以上事項を満たすことになる。 オ相違点3A及び3Bに係る本件発明1の構成は、引用発明3に係る「約20~500nmの範囲内の素子厚さ」を有する「自立型」の「光学素子」を構成する「配向したカーボンナノチューブシート」において、通常のSW CNTを用いるとともに、膜厚を技術の通常の方向性に従って薄くし、さらに、通常行われるようなCNTに特段の配向制御が与えられないプロセスを用いれば、満たされてしまうようなものにすぎず、当業者が容易に想到できたものである。 5 取消事由5(本件発明1、3~5、13~18と拡大先願に係る発明との同一 性に関する判断の誤り)について【原告らの主張】(1) 先願1は、「EUV 到できたものである。 5 取消事由5(本件発明1、3~5、13~18と拡大先願に係る発明との同一 性に関する判断の誤り)について【原告らの主張】(1) 先願1は、「EUVLでの使用に適したペリクルを可能にする極端紫外線リソグラフィレチクルのためのペリクル膜を提供する」ものであり、加圧による結合(bonding)は、CNT間の引力(ファンデルワールス力)よ りも大きいこと、加圧による結合により膜が強化されることが記載されてお り、「オーバーラップしたCNT又は交差するCNTを、2つの加圧面の間で加圧することで共に結合し、これにより自立型CNTペリクル膜を形成する」ものである。この点は、先願1に記載された発明における課題解決手段の中核をなすものであるから、これを含めて先願1に記載された発明を認定すべきである。 そうすると、本件発明1は、所定の要件を満たすバンドル同士が面内配向した状態で絡み合った網目構造と、RB0.4以上事項を満たす高度な配向性を備えた面内配向とを備えた、厚さが200nm以下のカーボンナノチューブシートの自立膜であるペリクル膜(構成1A)であるのに対して、先願1記載の発明は、バンドル同士が絡み合った網目構造の形成により自立型CNT ペリクル膜としたものではなく、「2つの加圧面の間で加圧することで、オーバーラップしたCNTまたは交差するCNTが共に結合し、これにより自立型CNTペリクル膜としたもの」である点で両者は相違することになる。 なお、先願1記載の発明は、加圧による結合により強化した膜であり、結合した点は固定化されるため、シートに応力が加わった際に、応力を分散させ ることができないのに対し、本件発明1は、「バンドル同士が絡み合った網目構造」を有することによ より強化した膜であり、結合した点は固定化されるため、シートに応力が加わった際に、応力を分散させ ることができないのに対し、本件発明1は、「バンドル同士が絡み合った網目構造」を有することにより、「シートに応力が加わった際に、応力を分散させると同時に、バンドルの変形やバンドルの並進運動を抑制することができるため、自立膜に応力を加えても網目構造および自立膜形状を保つことができる。」という効果を奏する。よって、上記相違点は実質的なものである。 (2) 先願1にも、RB0.4以上事項の記載はないところ、これは実質的な相違点であるのに、本件決定ではこの相違点を看過した。 (3) 以上のとおり、本件発明1は先願1に記載された発明と同一でなく、本件発明1を引用する本件発明3~5、13~18についても同様である。 【被告の主張】 (1) 原告らは、「オーバーラップしたCNTまたは交差するCNTを、2つの 加圧面の間で加圧することで共に結合し、これにより自立型CNTペリクル膜を形成する」という構成は、先願1に記載された発明における課題解決手段の中核をなすものであるから、これを含めて先願発明を認定すべきである旨主張する。 しかし、本件決定は、加圧面間で少なくとも1つの「CNTフィルム」を加 圧することによって形成された「自立型CNTペリクル膜102」を先願発明Aとして認定したところ、さらに、加圧前の当該「CNTフィルム」が、CNTの束から形成されたメッシュ(すなわち網目状)、ウェブ、グリッド(すなわち格子状)などのCNTの接続された配置であることをも認定しているのであるから、先願発明Aの加圧前の当該「CNTフィルム」は、実質的には、 CNTの束が交差又はオーバーラップして配置されたもので 格子状)などのCNTの接続された配置であることをも認定しているのであるから、先願発明Aの加圧前の当該「CNTフィルム」は、実質的には、 CNTの束が交差又はオーバーラップして配置されたものである。 一方、先願発明Aでは、化学結合が存在するが、加圧により、交差又はオーバーラップしたCNTの束のうち、あらゆるものが共に結合するとは考えにくく、交差又はオーバーラップしたCNTの束が、共に結合されることなく、そのまま残っていることが想定されている。 このようにそのまま残ったCNTの束は、CNTが、通常、アスペクト比が非常に高く柔軟性に優れていることに加えて、先願1の図1からも明らかなとおり、加圧前の「CNTフィルム」を製造するのに、特段の配向秩序が与えられているとは解されないことから、絡み合った網目構造を備えているといえる。 したがって、先願発明Aに係る自立型カーボンナノチューブペリクル膜は、CNTの束が絡み合った網目構造を有するのであり、また、当業者はそのように認識するといえる。 なお、本件発明1の1E「前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」は、「絡み合った網目構 造」を含んでいればよく、これに加えて、化学的な結合構造を含んでいる態様 を排除するものではない。 (2) 原告らは、RB0.4以上事項の有無は実質的な相違点である旨主張するが、薄膜自立無秩序SWCNTシートがRB0.4以上事項を満たすことは上述のとおりであり、本件発明1との間に実質的な相違点はない。 (3) よって、本件決定がした先願発明Aの認定、本件発明1と先願発明Aとの 一致点及び相違点の認定に誤りはない。また、本件発明3~5及び13~18と先願発明A~Eについ な相違点はない。 (3) よって、本件決定がした先願発明Aの認定、本件発明1と先願発明Aとの 一致点及び相違点の認定に誤りはない。また、本件発明3~5及び13~18と先願発明A~Eについても事情は同じである。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1、2(引用文献1に基づく新規性、進歩性の判断の誤り)について原告らが取消事由1、2を通じて主張するところの眼目は、①引用文献1に は「自立CNTペリクル膜」の発明が記載されているとはいえない、②引用発明1には本件発明のRB0.4以上事項の記載がないところ、これらに係る本件発明1との相違点は実質的なものであり、かつ、引用発明1にRB0.4以上事項を持ち込むことは容易想到ともいえないという2点に集約される。 当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由があ るものと判断する。以下に詳説する。 (1) 引用文献1(甲1)の記載事項引用文献1には以下の開示があるものと認められる。 ア本発明は、保護膜として用いられる新規ペリクル膜を用いたEUVリソグラフィーイメージングに関するものである(1頁タイトル、要約)。 イ反射型マスクでは、露光パワーはペリクルを2回通過すると減少する(1頁下から2~1行)。 EUVペリクルとしては、高い平均透過率と良好な透過均一性、高温負荷に耐え得ることが求められる(2頁18~29行)。 ウ新規な低密度ベースのペリクルとして、SiNXプロセスフローのカーボ ンナノ材料(CNM)の統合に基づくものがある(7頁下から4~1行)。 シリコンウェハの両側に、SiNXの層を形成し、裏面は、四角形でパターン化されている。対象のカーボンナノ材料が試料の表側に堆積された後、シリコンを除 くものがある(7頁下から4~1行)。 シリコンウェハの両側に、SiNXの層を形成し、裏面は、四角形でパターン化されている。対象のカーボンナノ材料が試料の表側に堆積された後、シリコンを除去するために、裏面はKOH液でエッチング処理するが、同処理は試料の表面のSiNX層で選択的に止まる。その結果、独立したSiNX/CNM膜が作製される。 CNT膜は、多層CNT粉末をパラフィンワックス溶液中に分散させ溶液をSiNX上にスピンコート又はスプレーコートすることによって堆積された(8頁1~15行)。 エ CNT膜は約95%の透過率を達成することができた。そのSEM像は約50nmの厚さを示すが、ナノチューブの配置によって局所的な厚さの ばらつきが大きい。ナノチューブ直径は~15nmである。多層ナノチューブであり、ナノチューブ層が3~4層からなることが示唆される(9頁9~24行)。 オ安定した自立型CNT膜の製造が実際に可能なことが報告されている(甲18)(9頁下から4行~10頁2行)。 カ CNTの複雑なネットワークを平面内に位置する平行な管の集合に簡略化したペリクルモデル(2層から10層)を用い、管の直径や間隔を変えて計算することができた(10頁5~8行)。 キこのコーティング被膜は、SiNxを除去した後、完全に自立しているかもしれない(maybefullyfreestanding)(12頁7~8行)。(注・ 下線は原告の訳文。本件決定の訳文は「完全に自立していることができる。」)ク図14には、EUV+H2においてカーボンナノチューブを保護するMoでのPVDコーティング(同(a))、RuでのALDコーティングの模式図(同(b))が示され、後者は自立していることが把握される。 UV+H2においてカーボンナノチューブを保護するMoでのPVDコーティング(同(a))、RuでのALDコーティングの模式図(同(b))が示され、後者は自立していることが把握される。 図14.EUV+H2においてカーボンナノチューブを保護する2種類のコーティング手法の模式図。(a)MoでのPVDコーティング、(b)RuでのALDコーティング。両方の場合とも、実験の堆積結果のSEM写真が右側に示されている。 (2) 引用文献1には「自立CNTペリクル膜」の記載があるか上記(1)のとおり、引用文献1には、SiNxの影響を差し引いたCNT膜単体での透過率の計算がなされていること(9頁9~24行、図10)、RuコーティングされたCNT膜を作成した例(図14(b))において背面SiN膜をエッチング除去し自立膜とする技術も記載されていること、CNT自 立膜自体は甲18等に記載された周知の技術であることに照らすと、上記(1)キの疑義のある記載の解釈に立ち入るまでもなく、当業者は、引用文献1からCNT自立膜の構成を認識することができるといえる。 原告らは、甲18記載の技術と引用文献1記載の技術とでは、自立膜の作製方法が異なる旨主張するが、引用発明1は物に係る発明であるから、その 発明の新規性、進歩性に影響を及ぼすものとはいえない。 (3) RB0.4以上事項の有無は実質的相違点かア本件決定が認定した本件発明1と引用発明1の相違点1A(別紙3「本件決定の理由」1(2)アの[相違点1A])の中には「引用発明1ではRB0. 4以上事項の構成が明らかでない」点が含まれているところ、本件決定は、このRB0.4以上事項の有無に係る相違点は実質的な相違点ではないと判断した。 イしかし、引 引用発明1ではRB0. 4以上事項の構成が明らかでない」点が含まれているところ、本件決定は、このRB0.4以上事項の有無に係る相違点は実質的な相違点ではないと判断した。 イしかし、引用文献1には、RBの数値を特定する記載は一切なく、その示唆もない。また、CNT膜の面内配向性をRBによって特定すること自体も、 引用文献1その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできない。 ウ本件決定の上記アの判断は、RBの値が、0.40以上では面内配向しており、0.40未満では面内配向していないことを表す旨の本件明細書等の記載(【0104】)から、本件発明1のRB0.4以上事項が、CNT のバンドルが面内配向していることを特定するものであり、引用発明1は面内配向しているものを想定しているから、RB0.4以上事項を満たすことになるとの理解に基づくものと解される。 しかし、本件発明1の特許請求の範囲に照らすと、CNTバンドルが面内配向しているという定性的構成(構成1C)と、RB0.4以上事項とい うパラメータによる定量的構成(構成1D)は独立の構成となっており、本件明細書の【0104】等の記載を踏まえても、引用発明1のCNTバンドルが面内配向の特性を有しているからといって、RB0.4以上事項を当然に満たすと判断することはできない。 エ被告は、通常の発想のもとで、通常の性状のSWCNT及び通常用いら れるプロセスで製造された薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば、膜厚、バンドル径及び自立性のいずれの観点においても、本件明細書等における比較例1よりは実施例1に相当程度似通っているといえる上、比較例1のRBの値(0.353)がRB0.4以上事項の下限である0.4に 、バンドル径及び自立性のいずれの観点においても、本件明細書等における比較例1よりは実施例1に相当程度似通っているといえる上、比較例1のRBの値(0.353)がRB0.4以上事項の下限である0.4に相当程度近いこと等を考慮すれば、比較例1よりも実施例1に相当程度似通 っている薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば、RB0.4以上事項を 満たしている旨主張する。 しかし、被告の主張する「通常の発想のもとで、通常の性状のSWCNT及び通常用いられるプロセスで製造された」との薄膜自立無秩序SWCNTシートの製造方法や、当該薄膜自立無秩序SWCNTシートの「膜厚、バンドル径及び自立性」について具体的に特定する主張立証はされておらず、 したがって、「比較例1よりも実施例1に相当程度似通っている薄膜自立無秩序SWCNTシート」の内容も明らかではないというよりほかない。 かえって、原告ら提出に係る甲40によれば、原告らが引用文献2記載の方法で作製したCNT自立膜(サンプル1、2)ではそれぞれRBが-0. 38、-0.26であったのに対し、本件発明の完成当時に製造されたCN T自立膜では1.04だったのであり、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば、RB0.4以上事項を満たしているともいえない。 被告は、甲40について、①RB測定サンプルの保管が実際にどのような条件で行われていたか確認できず、サンプルの実在も確認できない、②本件明細書等に記載された実施例及び比較例と実験条件が異なる、③当該各 RB測定サンプルは、特性が位置的にみて不均一となっている、④RB0. 4以上事項を満たさないとされるサンプル1、2は一部破損がみられるから自立膜とみられないなどと論難するが、①については、サンプル1、2は平成29年4月の開発時に作製 て不均一となっている、④RB0. 4以上事項を満たさないとされるサンプル1、2は一部破損がみられるから自立膜とみられないなどと論難するが、①については、サンプル1、2は平成29年4月の開発時に作製したものと推認され、②については、甲40は、「面内配向していてRBが0.4未満の膜が存在するかどうか」の点 を検証する実験であるから本件明細書等の実施例及び比較例の条件によらねばならないものではない。また、③については、もともとRBの測定方法は局所的な断面に対するものであり、RB0.4以上事項は、少なくとも一つの断面で0.4未満以上となることを意味するのであるから、被告主張の点をもって甲40に基づく上記判断は左右されない。さらに、④につい ては、甲40では、サンプル1、2について製造過程で一部破損があったと しても、自立膜となったものを測定しているのであるから、やはり被告の主張は採用できない。 (4) 以上のとおりであって、本件決定には、RB0.4以上事項を含む相違点1Aが実質的なものであることを看過し、引用発明1に基づき本件発明1、3~5が新規性を欠くとした誤りがあり、取消事由1は理由がある。 2 取消事由2(引用文献1を主引用例とする進歩性の判断の誤り)について(1) 本件決定が認定した本件発明1と引用発明1との相違点1A及び本件発明6と引用発明1との相違点6AにはRB0.4以上事項の有無が含まれるところ、引用文献1には、RBの数値を特定する記載は一切なく、その示唆もないこと、CNT膜の面内配向性をRBによって特定すること自体も、引用文献1 その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできないこと、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常RB0.4 って特定すること自体も、引用文献1 その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできないこと、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常RB0.4以上事項を満たしているとの被告の主張が採用できないことは前述のとおりである。 (2) そうすると、他に副引用例が提出されているわけでもない本件において、 当業者が相違点1Aに係る本件発明1の構成又は相違点6Aに係る本件発明6の構成を容易に想到することができたとはいえず、引用発明1に基づき本件発明1及び本件発明6の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。 本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明1に基づき 本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。 よって、取消事由2は理由がある。 3 取消事由3(引用文献2を主引用例とする進歩性の判断の誤り)について(1) 引用文献2(甲2)の記載事項 引用文献2には、以下の開示があるものと認められる。 ア本発明は、詳しくは、従来にない高純度化、高比表面積化、ラージスケール化、パターニング化を達成したカーボンナノチューブ及び配向単層カーボンナノチューブ・パルク構造体並びにそれらの製造方法。装置及び応用に関する(1頁4~9行)。 イ CNTの製造方法として、炭素源となる化合物を高温で触媒となる金属 微粒子と接触させるとCNTが成長するという化学気相成長(CVD)がある。金属微粒子は基板上に配置するため、基板面に垂直に配向したCNTが成長する(1頁14~22行)。 ウ従来の技術には、不純物を除く精製中に無秩序・無配 が成長するという化学気相成長(CVD)がある。金属微粒子は基板上に配置するため、基板面に垂直に配向したCNTが成長する(1頁14~22行)。 ウ従来の技術には、不純物を除く精製中に無秩序・無配向のバルク構造体を形成してしまうため垂直配向した単層カーボンナノチューブのバルク構 造体が得られていないという問題があった(3頁15~26行)。 エ本発明は、反応系に金属触媒を存在させ、かつ反応雰囲気に酸化剤を添加することを特徴とする(21頁20~22行)。 オ本発明に係る配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体は、配向した単層カーボンナノチューブが複数本集まったものであり、基板上に垂直 配向したものとすることができ、高純度で、ラージスケール化されたものである(26頁10~25行)。 カバルク構造体の応用例としては、電子部品、電気製品、光学製品及び機械部品等の種々の物品の放熱体として利用される放熱体(37頁15行~38頁1行、図17)、伝熱体(38頁2~11行、図18)、光学素子(3 9頁3~18行、図20)がある。 (2) 以上を前提に、引用発明2の認定の誤り、相違点の認定の誤りについて検討する。 上記(1)カによれば、引用文献2記載の放熱体は、「光学製品」等の他の物品で発した熱を「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」が放熱する ものであり(37頁28行~38頁1行)、ここでいう「光学製品」と「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」は別個の物品である。 ところが、本件決定は、引用発明2を、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」とし、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」自体が「光学製品」であるという前提で引用発 決定は、引用発明2を、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」とし、「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」自体が「光学製品」であるという前提で引用発 明2の認定をしており、同認定は誤りである。 そして、この誤った認定は、相違点2A及び相違点2H(引用発明2は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」であるとの点)の認定にもそのまま反映されている。 この認定の誤りは、引用発明2の技術分野、基本的な技術的意義に関わっ てくるものであって、決定の結論に影響を及ぼすものである。 (3) 次に、容易想到性の判断について検討する。 ア相違点2A及び相違点2Hについて引用文献2に記載された発明においては、熱を発生する物品(光学製品 等)と、その熱を放熱する「放熱体」とが別個のものとして存在する。一方、本件発明1における「カーボンナノチューブシートの自立膜」である「ペリクル膜」は、引用文献2でいう「熱を発生する物品(光学製品等)」であり「放熱体」に該当するものではない。 したがって、引用発明2における「配向単層カーボンナノチューブ・バル ク構造体」を「放熱体」に該当しないペリクル膜として適用するということは、引用文献2の記載から離れた適用であり、論理付けが成立しない。また、引用文献2にはペリクル膜の例示はなく、その示唆もない。 よって、引用発明2について相違点2Aに係る本件発明1の構成とすること、相違点2Hに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に なし得たことではない。 イ相違点2D及び相違点2Gについて引用文献2の「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」は、垂直に 明6の構成とすることは、当業者が容易に なし得たことではない。 イ相違点2D及び相違点2Gについて引用文献2の「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」は、垂直に起立した複数のCNTの集合体からなるものである(上記(1)イ、オ)。 したがって、当該構造体におけるCNT同士がバンドルを形成したとして も、バンドル自体が絡み合いを有し、その結果「網目構造」を形成するという形態に至ることは想定されていない。 仮にバンドル同士が絡み合い「網目構造」を有する状態に至ったとすれば、そのような状態の構造は、もはや「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体」ではなくなり、垂直配向した単層カーボンナノチューブのバ ルク構造体を得るという引用文献2記載の課題にも反するから、そのような適用には阻害要因が存在する。 (4) 以上のとおりであって、本件決定は引用発明2及び相違点2Aの認定、相違点2A及び相違点2H並びに相違点2D及び相違点2Gの容易想到性の判断に誤りがあるから、引用発明2に基づき本件発明1及び本件発明6の進歩 性を否定した本件決定の判断には誤りがある。 また、本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件発明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明2に基づき本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。 よって、取消事由3は理由がある。 4 取消事由4(引用文献3を主引用例とする本件発明の進歩性の判断の誤り)について原告らは、取消事由4として、①引用文献3の認定の誤り、②引用発明3に基づく容易想到性についての判断の誤りを主張するところ、以下に述べるとおり、当裁判所は、①に係る原告らの主 の誤り)について原告らは、取消事由4として、①引用文献3の認定の誤り、②引用発明3に基づく容易想到性についての判断の誤りを主張するところ、以下に述べるとおり、当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由がある ものと判断する。 (1) 引用文献3(甲3)の記載事項引用文献3には、以下の開示があるものと認められる。 ア本発明は、リソグラフィ装置用の光学素子、かかる光学素子を含むリソグラフィ装置、さらに、かかる光学素子を製造する方法に関する(【000 2】)。 イ極端紫外線(EUV)源は、スズ(Sn)等の蒸気を使用してEUV放射を生成することになるが、スズがリソグラフィ装置内に漏洩して、リソグラフィ装置内のミラー上に一定程度を超えて堆積すると、バルクSnと同じようにEUV放射を反射し、コレクタの透過は全体として著しく減少さ れる(【0006】)。 ウそこで、本発明の光学素子(【0061】)は、約20~500nmの範囲内の素子厚さを有し、EUV垂直照射下で少なくとも約20%の透過を有するものとし(請求項1、【0010】、【0064】)、好適にはシートの表面と実質的に平行したナノチューブを含み(【0061】)、強度が あることによりサポートが必ずしも必要でなく、自立型であり(【001 1】、【0067】)、マスペリクルとして配置され(【0085】)、EUV透明材料層を含み、EUV透明材料層及びナノチューブシートはラミネートを形成し(【0068】)、EUV透明材料層は、Be、B、C、Si、P、S、K、Ca、Sc、Sr、Rb、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ag、Ba、La、Ce、Pr、Ir、Au、Pa、及びUからなる 群から選択される1つ以上の元 料層は、Be、B、C、Si、P、S、K、Ca、Sc、Sr、Rb、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ag、Ba、La、Ce、Pr、Ir、Au、Pa、及びUからなる 群から選択される1つ以上の元素、さらに特にB、C、Si、Sr、Sc、Ru、Mo、Y、およびZr、よりさらに特にZrを含み得るものとし(【0069】)、任意選択的なホルダによって囲まれている(【0063】)ものとした。 エ引用発明3の配向カーボンナノチューブシートは、自立的であることに より良好、均一な透過が可能となり(【0067】)、マスクペリクルとして配置されるので、デブリがターゲットに到達することをさらに減少し、マスク上流部分内へと不所望の成分が流入することを減少しうる(【0031】、【0085】)。 (2) 原告らは、引用文献3には、EUV用ペリクル膜として実用に耐える性能 の配向したカーボンナノチューブシートは示されておらず、マスクペリクルとして配置される、配向したカーボンナノチューブシートを含む自立型の光学素子」を満たす発明を当業者が作れるように記載されているとはいえないから、特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」が記載されているとはいえない旨主張する。 しかし、当業者は、引用発明3に係る光学素子を、技術常識に属する自立膜を構成するSWCNT膜(甲18)をも踏まえて認識、理解するところ、当該膜は引用発明3でいう「マスクペリクル」として使用できる「配向カーボンナノチューブシート」に該当するのであるから、引用文献3の記載及び技術常識に照らして、ペリクル膜として使用できる自立型の「配向カーボンナノチ ューブシート」の作製方法を理解できると解され、引用文献3に「刊行物に記 載された発明」が記載されていない 技術常識に照らして、ペリクル膜として使用できる自立型の「配向カーボンナノチ ューブシート」の作製方法を理解できると解され、引用文献3に「刊行物に記 載された発明」が記載されていないとはいえない。 原告らは、甲18のSWCNTの自立膜は触媒鉄粒子が含まれ、EUV用ペリクルとしての実用に耐える性能を有しない旨主張するが、実用に耐えるものであるか否かは本件特許請求の範囲に直接特定された事項ではなく、原告らの主張は対比に必要な限度を超えた事項を要求するものであるし、鉄触 媒粒子がEUV光を吸収する不純物となるのであれば、当業者は適宜これを除去した態様として引用発明3を理解するものといえるから(乙16~18)、原告らの主張は採用できない。 よって、引用発明3の認定に誤りがあるとの原告らの主張は採用できない。 (3) 次に、引用文献3に基づく容易想到性について検討する。 本件決定が認定した本件発明1と引用発明3との相違点3A及び本件発明6と引用発明3との相違点3DにはRB0.4以上事項の有無が含まれるところ、引用文献3には、RBの数値を特定する記載は一切なく、その示唆もない。 CNT膜の面内配向性をRBによって特定すること自体も、引用文献3その他の出願時の文献に記載されていたと認めることはできず、技術常識であっ たということもできないこと、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常RB0.4以上事項を満たしているとの被告の主張が採用できないことは前述のとおりである。 被告は、面内配向膜である引用発明3のペリクル膜において膜厚を200nm以下にまで小さくしつつ、バンドル径を通常存在する100nm以下と するように構成すれば、RB0.4以上事項を満たすことになる旨主張するが、上記被告の主張は、膜厚及び において膜厚を200nm以下にまで小さくしつつ、バンドル径を通常存在する100nm以下と するように構成すれば、RB0.4以上事項を満たすことになる旨主張するが、上記被告の主張は、膜厚及びバンドル径の上限値とRBの数値の関係を定量的に特定するものではなく、膜厚200nm以下でバンドル径が100nm以下であるカーボンナノチューブの面内配向膜であっても、RBが0.4以上ではない膜も存在する(甲40)ことに照らすと、被告主張のとおり構成するこ とで、引用発明3がRB0.4以上事項を満たすことになるとはいえない。 (4) そうすると、当業者が相違点3Aに係る本件発明1の構成又は相違点3Dに係る本件発明6の構成を容易に想到することができたとはいえず、引用発明3に基づき本件発明1及び本件発明6の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。 本件発明3~5、7~18は、本件発明1又は本件発明6を引用し、本件発 明1又は本件発明6の構成を全て含むものであるから、引用発明3に基づき本件発明3~5、7~18の進歩性を否定した本件決定の判断には誤りがある。 よって、取消事由4は理由がある。 5 取消事由5(本件発明1、3~5、13~18と拡大先願に係る発明との同一 性に関する判断の誤り)について原告らは、取消事由5として、①自立型ペリクル膜の形成が加圧結合によるものか(先願発明A)、網目構造によるものか(本件発明1)という先願1の課題解決の中核をなす構成に係る相違点の看過、②RB0.4以上事項の有無を実質的な相違点と認めなかった判断の誤りを主張するところ、以下に述べるとお り、当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由があるものと判断する。 (1) 先願1( を実質的な相違点と認めなかった判断の誤りを主張するところ、以下に述べるとお り、当裁判所は、①に係る原告らの主張は採用できないが、②の主張は理由があるものと判断する。 (1) 先願1(甲19)の記載事項先願1には、以下の開示があるものと認められる。 ア本発明は、極端紫外線リソグラフィレチクルのためのカーボンナノチュ ーブペリクル膜を形成する方法、極端紫外線リソグラフィのためのペリクルを形成する方法、及び極端紫外線リソグラフィのためのレチクルシステムを形成する方法に関する(【0001】)。 イ従来のリソグラフィでは、ペリクルが一般にレチクルの上に配置されて、ハンドリング及び露光などの間のレチクルの汚染から保護する(【000 3】)。 しかし、従来の深紫外線(DUV)ペリクルは、極端紫外線光の過吸収を呈し、極端紫外線の高いエネルギーは、ペリクル膜の材料を損傷する傾向があるという問題があった(【0005】)。 本発明は、EUVLでの使用に適したペリクルを可能にする極端紫外線リソグラフィレチクルのためのペリクル膜を提供することを目的とする (【0006】)。 ウ本発明は、オーバーラップしたCNTフィルムを加圧することによって、強化された膜を形成する(【0007】、【0013】、【0089】)。 エ本出願の文脈内では、“CNTフィルム”という用語は、個々のCNTまたはCNTの束から形成されたメッシュ、ウェブ、グリッドなどのCNT の接続された配置を指すことができることに留意されたい。各CNTフィルムの個々のCNT(単層壁CNTまたは多層壁CNT、MWCNT)は、整列されて束を形成することができる。整列したCNTのこのような束は、CNTフィルムの製造中に自発的に形成される い。各CNTフィルムの個々のCNT(単層壁CNTまたは多層壁CNT、MWCNT)は、整列されて束を形成することができる。整列したCNTのこのような束は、CNTフィルムの製造中に自発的に形成される傾向がある。したがって、オーバーラップするCNT同士を結合することは、オーバーラップする 個々のCNTまたはオーバーラップするCNT束を共に結合することを含むことができる(【0010】)。 CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、CNTフィルム内にランダムに配置されることができる。しかしながら、CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿 って配置または整列されてもよい(【0011】)。 オ本発明は、自立型CNTペリクル膜によって比較的高い機械的強度と低いEUV光吸収を示す自立型CNTペリクル膜を形成し、その粒子遮断または保護特性及び耐薬品性は、オーバーラップしたCNT間の結合によって高められる(【0022】)。 カ複数の個々のCNTが束(すなわち、糸またはロープ様構造)を形成する という意味で、CNTは、CNTフィルム104内に束ねられることもでき、これは、CNTフィルムが、整列した網を形成する複数の束、またはランダムに配向されたCNT束から形成される。したがって、図1に示す各要素110は、代替的に、CNT束を指してもよい。CNT束110は、例えば、2~20個の個々のCNTを含むことができる(【0080】)。 【図1】 (2) 加圧結合か網目構造かの相違点について原告らは、本件決定が、先願1に記載された課題解決の中核をなす「オーバ ーラップしたCNT又は交差するCNTを、2つの加圧面の間で加圧するこ 2) 加圧結合か網目構造かの相違点について原告らは、本件決定が、先願1に記載された課題解決の中核をなす「オーバ ーラップしたCNT又は交差するCNTを、2つの加圧面の間で加圧することで共に結合し、これにより自立型CNTペリクル膜を形成するものである」構成を先願発明に含めなかったことが不当である旨主張する。 しかし、上記(1)エ、カ(図1)に照らすと、先願発明Aも、本件発明1と同様、「面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造」(構成1G)を備えているものと認められる。先願発明AのCNTの束では化学結合が生じているとしても、本件発明1の構成1Gは、化学結合を含むバンドル同士が絡み合う態様を排除するものとはいえない。加圧結合か網目構造かの相違 点の看過をいう原告らの主張は、CNTの加圧結合による自立型CNTペリクル膜の形成(先願1)と、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造によるペリクル膜の形成(本件発明1)を択一関係のように理解するものであるが、その前提において失当である。 (3) RB0.4以上事項に係る相違点について 本件決定は、本願発明Aの「CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され」は、本件発明1のRB0.4以上事項に相当すると判断したが、先願1には、RBの数値を特定する記載は一切なく、その示唆もない。CNT膜の面内配向性をRBによって特定すること自体も、先願1その他の出願時の文献に記 載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできないことは前述のとおりであり、本件決定の上記判断は根拠を欠くというべきである。 被告は、先願発明Aに係る「自立型カーボンナノチ 載されていたと認めることはできず、技術常識であったということもできないことは前述のとおりであり、本件決定の上記判断は根拠を欠くというべきである。 被告は、先願発明Aに係る「自立型カーボンナノチューブペリクル膜」は、厚さが5~50nmの範囲であって、0.5~2nmの範囲の直径を有する SWCNTから形成され、自立するものであり、しかも、加圧前の「CNTフィルム」を製造するのに、特段の配向秩序が与えられているとは解されないことから、当該「自立型カーボンナノチューブペリクル膜」は、薄膜自立無秩序SWCNTシートに該当し、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常RB0.4以上事項を満たしている旨主張する。しかし、被告の主張は、特 段の配向秩序が与えられていないカーボンナノチューブ自立膜における厚さ 及びSWCNT直径とRBとの関係を定量的に特定するものではなく、薄膜自立無秩序SWCNTシートであれば通常RB0.4以上事項を満たしているとの被告の主張が採用できないことは前述のとおりである。被告の主張は採用できない。 よって、先願発明Aは本件発明1と同一とはいえない。 (4) そうすると、先願発明Aが本件発明1と同一だとした本件決定の判断には誤りがある。 本件発明1を引用する本件発明3~5、13~16についても、RB0.4以上事項を含む以上、先願発明A~Eと同一とはいえず、この点についても本件決定の判断には誤りがある。 6 結論以上のとおり、取消事由1~5はいずれも理由があるから、本件決定中、請求項1、3~18に係る部分を取り消すこととし、主文のとおり判断する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官宮坂 項1、3~18に係る部分を取り消すこととし、主文のとおり判断する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官宮坂昌利 裁判官本吉弘行 裁判官岩井直幸 別紙1 略語一覧 (略語) (意味)・本件特許 :原告らを特許権者とする特許第6781864号の特許・本件決定 :本件特許に係る異議2021-700369号事件について特許庁が令和5年3月30日にした特許取消決定(本件訴訟の対象)・本件訂正 :原告らの令和4年11月11日付け訂正請求に係る本件特許の特許請求の範囲の訂正・本件発明 :本件特許の請求項1~23に係る発明の総称(本件訂正後のもの)ただし、請求項2、19~23は削除されている。 請求項の番号に応じ、「本件発明1」等という。 ・本件明細書 :本件特許に係る明細書・引用発明1 :引用文献1(IvanPollentier,et.al.,“EUVlithographyimagingusingnovelpelliclemembranes”,Proc.ofSPIEVol.9776 977620,2016年3月18日、甲1)に記載された発明として本件決定が認定した内容(別紙3の1(1))・引用発明2 :引用文献2(国際公開第2006/011655号)に記載された発明として本件決定が認定した内容(別紙3の3(1))・引用発明3 本件決定が認定した内容(別紙3の1(1))・引用発明2 :引用文献2(国際公開第2006/011655号)に記載された発明として本件決定が認定した内容(別紙3の3(1))・引用発明3 :引用文献3(特表2011-530184号公報)に記載された発明として本件決定が認定した内容(別紙3の4(1))・先願1 :特願2018-93909号(特開2018-194840号公報、優先権の主張の基礎とされた出願の番号:17171172.4、欧州特許庁)・先願発明 :先願1に記載された発明として本件決定が認定した内容。個別には「先願発明A」~「先願発明E」という(別紙3の5(1))。 ・RB0.4以上事項:本件特許の請求項1、6の(1)として記載された条件式。ただし、本件決定は「RB0.40以上事項」と呼称している。 ・CNT :カーボンナノチューブ・SWCNT :単層カーボンナノチューブ 別紙2 本件特許の特許請求の範囲の記載(請求項1、6を除く。)【請求項3】前記カーボンナノチューブシートに接する保護層をさらに含む請求項1に記載の露光用ペリクル膜。 【請求項4】前記保護層は、SiOx(x≦2)、SiaNb(a/bは0.7~1.5)、SiON、Y2O3、YN、Mo、Ru、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、B4C、SiCまたはRhからなる群から選択される1つ以上を含む、請求項3に記載の露光用ペリクル膜。 【請求項5】請求項1、3~4のいずれか一項に記載の露光用ペリクル膜と、前記ペリクル膜を支持する支持枠と、を有するペリクル。 【請求項7】前記カーボンナノチューブの径に対する長さの比(長さ/径)が、1×104以上1×108以下である、請求項6 ル膜と、前記ペリクル膜を支持する支持枠と、を有するペリクル。 【請求項7】前記カーボンナノチューブの径に対する長さの比(長さ/径)が、1×104以上1×108以下である、請求項6に記載のペリクル膜。 【請求項8】カーボンナノチューブシートに接する保護層をさらに含む請求項6に記載のペリクル膜。 【請求項9】前記保護層は、SiOx(x≦2)、SiaNb(a/bは0.7~1.5)、SiON、Y2O3、YN、Mo、Ru、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、B4C、SiCまたはRhからなる群から選択される1つ以上を含む請求項8に記載のペリクル膜。 【請求項10】請求項6~9のいずれか一項に記載のペリクル膜と、前記ペリクル膜を支持する支持枠と、を有するペリクル。 【請求項11】請求項6~9のいずれか一項に記載のペリクル膜と、前記ペリクル膜を支持する第1の枠体と、を有するペリクル枠体。 【請求項12】請求項11に記載のペリクル枠体と、前記ペリクル枠体に接続される第2の枠体と、を有するペリクル。 【請求項13】 原版と、前記原版のパターンを有する側の面に装着された請求項5、10または12に記載のペリクルと、を含む露光原版。 【請求項14】請求項13に記載の露光原版を有する、露光装置。 【請求項15】露光光を放出する光源と、請求項13に記載の露光原版と、前記光源から放出された露光光を前記露光原版に導く光学系と、を有し、前記露光原版は、前記光源から放出された露光光が前記ペリクル膜を透過して前記原版に照射されるように配置されている、露光装置。 【請求項16】前記露光光が、EUV光である、請求項15に記載の露光装置。 【請求項17】光源から放出された 記ペリクル膜を透過して前記原版に照射されるように配置されている、露光装置。 【請求項16】前記露光光が、EUV光である、請求項15に記載の露光装置。 【請求項17】光源から放出された露光光を、請求項13に記載の露光原版のペリクル膜を透過させて原版に照射し、前記原版で反射させるステップと、前記原版によって反射された露光光を、前記ペリクル膜を透過させて感応基板に照射することにより、前記感応基板をパターン状に露光するステップと、を有する、半導体装置の製造方法。 【請求項18】前記露光光がEUV光である、請求項17に記載の半導体装置の製造方法。 別紙3 本件決定の理由 1 引用発明1に基づく新規性欠如について(1) 引用文献1の記載事項の認定(分説は原告による)引用文献1には、下記の引用発明1が記載されている。 「1aEUVリソグラフィーイメージングに用いられる支持枠の開口部に張設されたCNTペリクル膜であって、1b カーボンナノ材料系のペリクルのCNT膜は、SiNX上にスピンコーティング又はスプレーコーティングによって堆積され、1cSiNx膜を除去した後、CNTペリクル膜は、完全に自立しているものであり、1dCNTの複雑なネットワークが平面内に位置し、1eSWCNTの径が1~3nmであり、1fCNTは、Mo又はRuでコーティングされた、1gCNTペリクル膜。」(2) 本件発明1についてア本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点について[一致点]「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり、前記カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下である、露光用ペリクル膜 開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜であり、前記カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下である、露光用ペリクル膜。」[相違点1A]カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、」「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比RBが0.40以上である」のに対し、引用発明1は、そのような構成か明らかでない点。 イ相違点1Aが実質的なものであるかについて相違点1Aは実質的なものではない。 RB0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているものであるところ、引用発明1の「CNT」のバンドルも「複雑なネットワークを平面内に位置し」、 RB0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているものであるところ、引用発明1の「CNT」のバンドルも「複雑なネットワークを平面内に位置し」、面内配向をしている。 (3) 本件発明3-5について本件発明3-5の発明特定事項は全て引用発明1と一致する。 2 引用発明1に基づく進歩性欠如について(1) 本件発明1、3-5についてカーボンナノチューブに関する技術において、バンドルが複数のカーボンナノチューブから形成され、バンドルの径が100nm以下であるものは周知技術であり、カーボンナノチューブシート中でバンドルが面内配向し、前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有しているものも周知技術である。 RB0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているといえる。 CNTに関する周知技術も参酌して、引用発明1の「CNTペリクル膜」を相違点1Aに係る本件発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。 (2) 本件発明6についてア本件発明6と引用発明1の一致点及び相違点について[一致点]「カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下であり、カーボンナノチューブシートの自立膜である、ペリクル膜。」[相違点1B]カーボンナノチューブについて、本件発明6は「長さが10μm以上10cm以下であり、」「カーボンナノチューブ中のカーボンの含有量が98質量パーセント以上である」のに対し、引用発明1は、そのようなものであるのか明らかでない点。 [相違点1C]カーボンナノチューブシートについて、本件発明6は「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチュ 、引用発明1は、そのようなものであるのか明らかでない点。 [相違点1C]カーボンナノチューブシートについて、本件発明6は「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向し、下記条件(1)を満たし、前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有する」、「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベ クトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 RBが0.40以上である。」のに対し、引用発明1は、そのような構成か明らかでない点。 イ相違点の容易想到性について(ア) カーボンナノチューブの長さが10μm以上10cm以下であり、カーボンナノチューブ中のカーボンの含有量が98質量パーセント以上であるものは周知技術であり、ペリクル膜には放熱性や耐熱性が求められること、ペリクル膜に用いられるカーボンナノチューブは不純物を少なくすることも周知の課題であるから、引用発明1に上記周知技術を採用することは当業者が適宜なし得た。 (イ) 相違点1Cは、 られること、ペリクル膜に用いられるカーボンナノチューブは不純物を少なくすることも周知の課題であるから、引用発明1に上記周知技術を採用することは当業者が適宜なし得た。 (イ) 相違点1Cは、相違点1Aと同様に、実質的な相違点ではない。又は、引用発明1に周知技術を採用して、相違点1Cに係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 (3) 本件発明7、本件発明8,9、本件発明10-12、本件発明13-18について当業者が引用発明1及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができた。 3 引用発明2に基づく進歩性欠如について(1) 引用文献2の記載事項の認定引用文献2には、下記の引用発明2が記載されている。 「複数の配向単層力一ボンナノチューブからなり、高さが10μm以上10cm以下であり、純度が98mass%以上であり、配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート。」(2) 本件発明1についてア本件発明1と引用発明2の一致点及び相違点について[一致点]「カーボンナノチューブシートであり、前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備える、膜。」[相違点2A]本件発明1は「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜」であって「厚さが200nm以下であ」り、「カーボンナノチューブシートの自立膜であり」のに対し、引用発明2は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」である点。 [相違点2B]バンドルが、本件発明1は「径が100nm以下であり」、「カーボンナノチューブシート中で」「面内配向しており、」「(1)カーボンナノチューブシートの ート」である点。 [相違点2B]バンドルが、本件発明1は「径が100nm以下であり」、「カーボンナノチューブシート中で」「面内配向しており、」「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前 記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 RBが0.40以上である。」の「条件式(1)を満た」すのに対し、引用発明2はそのようなものか明らかでない点。 [相違点2C]カーボンナノチューブの径が、本件発明1は「0.8nm以上6nm以下」であるのに対し、引用発明2はそのようなものか明らかでない点。 [相違点2D]カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」ているのに対し、引用発明2は、そのような構成か明らかでない点。 イ相違点の容易想到性について(ア) カーボンナノチューブシートを含むペリクル膜として厚さが200nm以下のものは、周知技術である。 引用発明2の「放熱シート」は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品であ」り、光学製品である放熱シートの一態様として、カーボンナノチューブを含むペリクル膜は、一般的に ある。 引用発明2の「放熱シート」は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品であ」り、光学製品である放熱シートの一態様として、カーボンナノチューブを含むペリクル膜は、一般的に知られている。 ペリクル膜は支持枠に開口部に張設されることは、技術常識であり、カーボンナノチューブシートを自立膜とすることも、周知技術である。 そうすると、引用発明2に周知技術を採用して、相違点2Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 (イ) 引用発明2に周知技術を採用して、相違点2B~2Dに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 (3) 本件発明6についてア本件発明6と引用発明2の一致点及び相違点について[一致点]「カーボンナノチューブの長さが10μm以上10cm以下であり、カーボンナノチューブ中のカーボンの含有量が98質量パーセント以上である、カーボンナノチューブシートであって、前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備える、膜。」[相違点2E]バンドルが、本件発明6は「径が100nm以下であり」、「カーボンナノチューブシート中で」「面内配向し」ており、「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カー ボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシ ンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 RBが0.40以上である。」の「条件式(1)を満た」すのに対し、引用発明2はそのようなものか明らかでない点。 [相違点2F]カーボンナノチューブの径が、本件発明6は「0.8nm以上6nm以下」であるのに対し、引用発明2はそのようなものか明らかでない点。 [相違点2G]カーボンナノチューブシートについて、本件発明6は「面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」ているのに対し、引用発明6は、そのような構成か明らかでない点。 [相違点2H]本件発明6は「カーボンナノチューブシートの自立膜である」「ペリクル膜」であるのに対し、引用発明2は「配向単層カーボンナノチューブ・バルク構造体を用いた光学製品である放熱シート」である点。 イ相違点の容易想到性について引用発明2に周知技術を適用して相違点2E~2Hに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 (4) 本件発明3、4、8、9、 本件発明5、10-12、本件発明7、本件発明13-18についても、当業者が引用発明2及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができた。 4 引用発明3に基づく進歩性欠如について(1) 引用文献3の記載事項の認定引用文献2には、下記の引用発明3が記載されている。 「光学素子は、約20~500nmの範囲内の素子厚さを有し、 4 引用発明3に基づく進歩性欠如について(1) 引用文献3の記載事項の認定引用文献2には、下記の引用発明3が記載されている。 「光学素子は、約20~500nmの範囲内の素子厚さを有し、光学素子は、カーボンナノチューブシートの表面と実質的に平行にカーボンナノチューブが配向したカーボンナノチューブシートを含み、光学素子は、自立型であり、光学素子は、リソグラフィ装置内のマスクペリクルとして配置され、光学素子はさらに、EUV透明材料層を含み、EUV透明材料層およびナノチューブシートはラミネートを形成し、光学素子のEUV透明材料層は、Be、B、C、Si、P、S、K、Ca、Sc、Sr、Rb、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ag、Ba、La、Ce、Pr、Ir、Au、Pa、およびUからなる群から選択される1つ以上の元素、さらに特にB、C、Si、Sr、Sc、Ru、Mo、Y、およびZr、よりさらに特にZrを含み、 ナノチューブシートは任意選択的なホルダによって囲まれている、光学素子。 (2) 本件発明1についてア本件発明1と引用発明3の一致点及び相違点について[一致点]「支持枠の開口部に張設される露光用ペリクル膜であって、前記ペリクル膜は、厚さが200nm以下であり、前記ペリクル膜は、カーボンナノチューブシートの自立膜である、露光用ペリクル膜。」[相違点3A]カーボンナノチューブシートについて、本件発明1は「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、前記カーボンナノチュー ナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」、「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 RBが0.40以上である。」のに対し、引用発明3はそのようなものか明らかでない点。 [相違点3B]カーボンナノチューブの径が、本件発明1は「0.8nm以上6nm以下」であるのに対し、引用発明3はそのようなものか明らかでない点。 イ相違点の容易想到性について(ア) 相違点3Aについてバンドルが複数のカーボンナノチューブから形成され、バンドルの径が100nm以下で、カーボンナノチューブシート中で面内配向したもの及び面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有するカーボンナノチューブシートはいずれも周知技術である。また、上記RB0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているところ、引用発明3は「カーボンナノチューブシートの表面と実質的に平 シートはいずれも周知技術である。また、上記RB0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているところ、引用発明3は「カーボンナノチューブシートの表面と実質的に平行にカーボンナノチューブが配向し」ている。 よって、引用発明3に周知技術を採用して、相違点3Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 (イ) 相違点3Bについて引用発明3に周知技術を採用して、相違点3Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 (3) 本件発明6についてア本件発明6と引用発明3の一致点及び相違点について[一致点]「カーボンナノチューブシートの自立膜である、ペリクル膜。」[相違点3C]本件発明6は「カーボンナノチューブの径が0.8nm以上6nm以下であり、カーボンナノチューブの長さが10μm以上10cm以下であり、カーボンナノチューブ中のカーボンの含有量が98質量パーセント以上である」のに対し、引用発明3のカーボンナノチューブはそのようなものか明らかでない点。 [相違点3D]カーボンナノチューブシートについて、本件発明6は「前記カーボンナノチューブシートは複数のカーボンナノチューブから形成されるバンドルを備え、前記バンドルは径が100nm以下であり、前記カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向し、下記条件(1)を満たし、前記カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有する」、「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度の 造を有する」、「(1)カーボンナノチューブシートの断面の制限視野電子線回折像において、前記カーボンナノチューブのバンドルの三角格子に由来する前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の、回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける回折強度と、前記カーボンナノチューブシートの膜厚方向の前記ピークと重ならず、ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける回折強度との差を、前記膜厚方向の前記ベースラインとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度と、前記膜厚方向の回折強度のピークとなる逆格子ベクトルにおける前記カーボンナノチューブシートの面内方向の回折強度との差で除した比 RBが0.40以上である。」のに対し、引用発明3はそのようなものか明らかでない点。 イ相違点の容易想到性について(ア) 相違点3Cについて相違点3Cに係る構成はいずれも周知技術である。 よって、引用発明3に周知技術を採用して、相違点3Cに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 (イ) 相違点3Dについて相違点3Aと同様に、引用発明3に周知技術を採用して、相違点3Dに係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た。 (4) 本件発明3、4、8、9、本件発明5、10-12、7、13-18について いずれも当業者が引用発明3及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができた。 5 拡大先願について(1) 先願1の記載事項の認定先願1には、以下の先願発明A-Eが記載されている。 (先願発明A)「ペリクルフレームのようなフレームによって、その縁部で懸架されている、極端紫外線リソグラフィレチクルのための自立型カーボンナノチューブペリクル膜であって、CNTペリクル膜の厚さ 明A)「ペリクルフレームのようなフレームによって、その縁部で懸架されている、極端紫外線リソグラフィレチクルのための自立型カーボンナノチューブペリクル膜であって、CNTペリクル膜の厚さは、5~50nmの範囲であり、CNTペリクル膜は、CNTフィルムを加圧することによって、形成することができ、CNTフィルムが、整列した網を形成する複数の束から形成され、CNT束は、例えば、2~20個の個々のCNTを含むことができ、CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され、CNTフィルムは、0.5~2nmの範囲の直径を有するSWCNTから形成することができ、CNTの束から形成されたメッシュ、ウェブ、グリッドなどのCNTの接続された配置であり、カーボンナノチューブフィルム上にB、B4C、ZrN、Mo、Ru、SiC、TiNおよびa-Cからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含むコーティングが形成される、自立型カーボンナノチューブペリクル膜。」(先願発明B)「先願発明Aに記載の自立型カーボンナノチューブペリクル膜と、カーボンナノチューブペリクル膜を固定するペリクルフレームと、を含むペリクル。」(先願発明C)「先願発明Bに記載のペリクルがレチクル上に取り付けられた、レチクルシステム。」(先願発明D)「レチクル上に存在するパターンは、EUV放射で先願発明Cに記載のレチクルシステムのレチクルを照明することによって、EUV放射に敏感な層に転写することができ、EUV光は、レチクルパターンによって変調され、フォトレジストがコーティングされたウエハ上に結像される半導体を製造す テムのレチクルを照明することによって、EUV放射に敏感な層に転写することができ、EUV光は、レチクルパターンによって変調され、フォトレジストがコーティングされたウエハ上に結像される半導体を製造する極端紫外線リソグラフィ装置。」(先願発明E)「レチクル上に存在するパターンは、EUV放射で先願発明Cに記載のレチクルシステムのレチクルを照明することによって、EUV放射に敏感な層に転写することができ、EUV光は、レチクルパターンによって変調され、フォトレジストがコーティングされたウエハ上に結像される半導体を製造する極端紫外線リソグラフィ。」(2) 本件発明1について本件発明1は、先願発明Aと同一である。 先願発明Aの「『CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され、』『CNTの束から形成されたメッシュ、ウェブ、グリッドなどのCNTの接続された配置であり』」は、本件発明1の「カーボンナノチューブシートは、面内配向した前記バンドル同士が絡み合った網目構造を有し」に相当する。 RB0.40以上事項は、露光用ペリクル膜のバンドルが面内配向をしていることを特定しているといえることから、先願発明Aの「CNTフィルムのCNTまたはCNT束は、重要または主な方向に沿って、または複数の主方向に沿って配置または整列され」は、本件発明1の「カーボンナノチューブシート中で前記バンドルが面内配向しており、下記条件式(1)を満たし、」(条件式(1)はRB0.40以上事項)に相当する。 (3) 本件発明3、4、本件発明5、本件発明13、本件発明14-16、本件発明17、18について本件発明3、4は先願発明Aと、本件発明5は先願発明Bと、本件 上事項)に相当する。 (3) 本件発明3、4、本件発明5、本件発明13、本件発明14-16、本件発明17、18について本件発明3、4は先願発明Aと、本件発明5は先願発明Bと、本件発明13は先願発明Cと、本件発明14-16は先願発明Cと、本件発明17、18は先願発明Eと同一である。

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