○ 主文一原判決を取り消す。 二被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 三訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。 ○ 事実及び理由第一控訴の趣旨主文と同旨。 第二事案の概要一被控訴人らの請求 1 控訴人が、被控訴人Aの昭和六二年分所得税にかかる更正の請求について、平成元年四月五日付けでした更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 2 控訴人が、被控訴人Bの昭和六二年分所得税にかかる更正の請求について、平成元年四月五日付けでした更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 二争いのない事実原判決三枚目表二行目の「使用」及び同三行目の「収用」をそれぞれ「使用等」に改め、同裏六行目の「使用裁決をした」の次に「(以下、被控訴人らに対する使用裁決を「本件使用裁決」という。)」を、同四枚目表五行目の「右各損失補償金」の次に「(以下「本件損失補償金」という。)」を、同九行目の「正処分」の次に「(以下「本件更正処分」という。)」をそれぞれ加えるほかは、原判決事実及び理由欄の「第二事案の概要」「一争いのない事実等」(原判決二枚目裏一〇行目から同五枚目表一行目まで。原判決添付別紙を含も。)に記載のとおりであるから、これを引用する。 三争点次のとおり付加訂正するほかは、原判決事実及び理由欄の「第二事案の概要」「二争点」(原判決五枚目表三行目から同一四枚目裏六行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 原判決五枚目裏六行目の「過大であり」を「と過大であり」に、同六枚目裏末行から同七枚目表五行目までを「そして、本件損失補償金には、昭和六二年法律第九六号による改正前の租税特別措置法(以下「租特法」という。)三三条の四第一項、そうでないとしても租特法三一条の二第一項、そうでないとしても租特法三一条の適用があり、 失補償金には、昭和六二年法律第九六号による改正前の租税特別措置法(以下「租特法」という。)三三条の四第一項、そうでないとしても租特法三一条の二第一項、そうでないとしても租特法三一条の適用があり、その各場合の被控訴人らの税額は別表のとおりであるから、本件更正処分は右課税額を差し引いた過大税額分は取り消されるべきである。」に、同八枚目裏六行目の「収用」を「使用等」にそれぞれ改め、同一一枚目表三行目の「一号」及び同四行目の「全部の」をそれぞれ削除し、同裏七行目の次に改行の上「仮に、本件損失補償金が譲渡所得に当たるとしても、租特法三三条の四第一項の特例については、同条三項一号、同条四項の要件を充たしていないから、これを適用することはできない。」を加え、同一二枚目表五行目の「が、その年の総所得金額に対する合計額」を「をもってその年分の課税総所得金額に係る所得税の額」に改め、同一三枚目表二行目から同四行目までを削除し、同末行の「計算した所得金額」を「計算した課税総所得金額」に、同行の「所得金額を算出し」を「所得税の額を算出し」に、同裏一行目及び同三行目の各「所得金額」をいずれも「総所得金額」に、同一行目の「資産所得」を「資産所得の金額」に、同三行目の「資産所得額」を「資産所得の金額」に、同一四枚目表六行目の「所得金額」を「所得税の額」に、同八行目の「合算課税」を「平均課税及び合算課税」にそれぞれ改め、同裏六行目の「賦課決定処分を行った。」の次に「なお、右賦課決定処分については、更正処分又は原処分が取り消されるなどして過少申告加算税の計算の基礎となる所得税額に変動が生じた場合は格別、そうでない限り、被控訴人らが法定の期間内に所定の不服申立てをしなかったことにより確定したものであるから、被控訴人らの主張する信義則違反の事由により取り消される余地はな 税額に変動が生じた場合は格別、そうでない限り、被控訴人らが法定の期間内に所定の不服申立てをしなかったことにより確定したものであるから、被控訴人らの主張する信義則違反の事由により取り消される余地はない。」を加える。 第三争点に対する判断一本件損失補償金を収入すべき時期 1 所得税法は、所得税に関し、一暦年を単位として、その期間ごとに課税所得を計算し、課税することとしている。したがって、所得がどの年分に帰属するか、ひいては収入がどの年分に帰属するかは重要な問題である。この点について、同法三六条一項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とすると定めている。これは、現実の収入の有無にかかわらず、その収入の原因たる権利が確定した場合には、その時点で所得の実現があったものとして右権利確定の時期の属する年分の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用したものであり、右にいう収入の原因となる権利が確定する時期はそれぞれの権利の特質を考慮して決定されるべきものである(最高裁昭和五三年二月二四日第二小法廷判決・民集三二巻一号四三頁参照)。 そこで、以下、本件損失補償金ないし本件損失補償金に係る権利の特質を考慮しつつ、本件損失補償金をどの年分の収入に帰属させるべきかについて検討を加える。 2 国(防衛施設局長)が米軍用地使用等特措法に基づき土地を使用することによって土地所有者が受ける損失は、国が補償しなければならない(米軍用地使用等特措法一四条により適用される土地収用法六八条。以下米軍用地使用等特措法一四条により適用される土地収用法の規定については単に収用法○条という。)が、その損失補償金にも種々のものがあり、例えば、収用法七二条の使 条により適用される土地収用法六八条。以下米軍用地使用等特措法一四条により適用される土地収用法の規定については単に収用法○条という。)が、その損失補償金にも種々のものがあり、例えば、収用法七二条の使用する土地に対する補償金、収用法七四条の残地に対する補償金、収用法七七条の使用する土地にある物件の移転料補償金、収用法八〇条の収用する物件に対する補償金、収用法八八条の離作料、営業上の損失その他土地を使用することによって土地所有者が通常受ける損失の補償金などがある。そして、証拠[甲一、原審証人C]及び弁論の全趣旨によれば、本件損失補償金は、収用法七二条の使用する土地に対する補償に係るもののみであり、他の補償項目に係るものは含まれていないことが認められる。そこで、収用法七二条の補償金ないし同補償金に係る権利の特質について検討する。 3 収用法七二条の使用する土地に対する補償については権利取得裁決において定められる(収用法四八条一項二号、七二条、七三条)ところ、国は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期(明渡裁決において定められた明渡しの期限ではない。)までに当該土地の所有者に対し右補償金の払渡しをしなければならず(同法九五条一項)、右時期までに補償金の払渡しをしないときは、権利取得裁決は、その効力を失い、裁決手続開始の決定は、取り消されたものとみなされる(同法一〇〇条一項)のであって、国は、右時期までに右補償金の払渡しをすることを条件として、右権利取得の時期において、裁決で定められたところにより、当該土地を使用する権利を取得し、当該土地に対するその他の権利は、使用の期間中は、行使することができないこととなる(収用法一〇一条二項)。 他方、当該土地の所有者は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期までに収用法七二条の補償金の払渡しを受 の他の権利は、使用の期間中は、行使することができないこととなる(収用法一〇一条二項)。 他方、当該土地の所有者は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期までに収用法七二条の補償金の払渡しを受けることができる反面、明渡裁決において定められた明渡しの期限までに国に土地を引き渡さなければならないが、右引渡義務を履行すればそれで足り、それを超えて国に対し継続的に当該土地を使用させるという役務提供義務を負うものではない。 土地所有者は国の使用を妨害することなくこれを受忍する義務を負うものではあるが、これは国が使用権を取得することにより生じる一般国民が国の使用権の行使を妨害してはならない義務と何ら変わるところはなく、右受忍行為をもって役務提供行為を観念することはできない。 また、当該土地上に物件があり土地所有者に右物件の移転義務があるのに土地所有者がこれを履行しない場合には、都道府県知事は、行政代執行法の定めるところに従い、自ら右移転行為をし又は第三者をしてこれをさせることができる上、その代執行に要した費用に充てるためその費用の額の範囲内で、土地所有者が受けるべき明渡裁決に係る補償金を土地所有者に代わって受けることができ、その場合右の限度で土地所有者に対し明渡裁決に係る補償金が支払われたものとみなされることになり、その分土地所有者が払渡しを受けるべき補償金の額が減少するが、権利取得裁決に係る補償金である収用法七二条の使用する土地に対する補償金の返還ないし減額がされることはないのであり(収用法一〇二条の二第二項ないし第四項)、右の規定に照らしても、収用法七二条の補償金は、土地所有者が国に対して有する土地引渡義務の履行とも関連性を有しないというべきである。 4 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに 法七二条の補償金は、土地所有者が国に対して有する土地引渡義務の履行とも関連性を有しないというべきである。 4 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定二条三項は、合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならないと定め、米軍用地使用等特措法八条一項は、土地を使用する必要がなくなったときは、防衛施設局長は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に報告しなければならないと規定し、同条二項は、内閣総理大臣は、右報告を受けたときは、土地の使用の認定が将来に向かってその効力を失う旨を官報で告示しなければならないと規定しており、また、収用法一〇五条一項は、防衛施設局長は、土地を使用する場合において、事業の廃止、変更その他の事由によって使用する必要がなくなったときは、遅滞なく、その土地を土地所有者に返還しなければならないと定めていることから明らかなように、米軍用地使用等特措法に基づく使用において、使用期間満了前に使用土地が返還される場合のあることが予定されている。 しかし、「収入の原因となる権利の確定」(前出の最高裁判決)とは、収入の原因となる法律関係が成立し、この法律関係に基づく収入を事実上支配管理しうる事実の生じたことをいい、将来における不確定な事情によって、権利の全部又は一部が消滅することなく、終局的に確定していることまでも要するものではないと解される。したがって、これを本件についていえば、権利取得裁決により、国は、定められた権利取得時期に土地の使用権原を原始取得し、右土地の所有者である被控訴人らは、国から本件損失補償金の一括支払を受けているというのであるから、被控訴人らは、右支払を受けた日以後 より、国は、定められた権利取得時期に土地の使用権原を原始取得し、右土地の所有者である被控訴人らは、国から本件損失補償金の一括支払を受けているというのであるから、被控訴人らは、右支払を受けた日以後は、本件損失補償金全額を事実上支配管理しうる状況に至ったというべきであり、右「権利の確定」を判断するに当たっては、将来国から使用期間満了前に使用土地が返還された場合に、被控訴人らが本件損失補償金のうち未使用期間に相当するものを国に返還する義務が発生するか否かといった事情は考慮する必要がないのである。 5 以上にみてきたように、収用法七二条の補償金は使用する土地そのものに対するものであり、国は、権利取得の時期までに右の補償金を払い渡すことを条件として右の時期において当該土地を使用する権利を取得し、他方、土地所有者は、右の時期までに右の補償金の払渡しを受けることができ、土地所有者としては、明渡しの期限までに当該土地を明け渡しさえすれば、その後は他の一般国民と同様に国の使用権の行使を受忍する義務を負うのみであって、そこには継続的な役務の提供行為を観念することはできず、また、右明渡しの不履行でさえ収用法七二条の補償金の保持に影響するものではない。このような収用法七二条の補償金ないし右補償金に係る権利の特質に徴すると、本件損失補償金は、国からみれば、当該土地に対する国による使用権取得の対価であり、土地所有者からみれば、使用権の設定それ自体による当該土地に対する損失補償金の性質を有するものというべきであって、本件損失補償金の払渡しは右権利取得の時期より前にされたものではあるがこれを収入すべき権利ないし保持する権利は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期において確定したものであり、それゆえに、被控訴人らは、特段の事情のない限り、本件損失補償金全額に のではあるがこれを収入すべき権利ないし保持する権利は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期において確定したものであり、それゆえに、被控訴人らは、特段の事情のない限り、本件損失補償金全額について、返還の必要に迫られることなくこれを自由に管理支配できるのであるから、右権利取得の時期において右補償金に係る所得の実現があったものと解するのが相当であり、したがって、本件損失補償金は昭和六二年分の総収入金額に算入されるべきものである。なお、右特段の事情が発生した場合には、国税通則法二三条二項一号又は三号、同法施行令六条一項一号により更正の請求をすれば足りるのであり、むしろ、右のような規定の存在は、右特段の事情が発生する可能性があることを根拠として本件損失補償金に係る所得が未だ実現されていないという見解と相容れないものである。 収用法七二条の補償金である本件損失補償金ないし右補償金に係る権利の特質及び右補償金を収入すべき時期について、右のように解することは、次のとおり税法の関係規定とも整合性を有する。 6 まず、収用法七二条の補償金は、所得税法三三条の譲渡所得に該当する場合があることが予定されている。 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいい、保有資産の増加益について、右資産が譲渡によって保有者の手を離れるのを機会に、右増加益に相当する所得の実現があったものとして課税することとされている。そして、同条は、建物所有を目的とする借地権等の設定により土地の利用が長期にわたって固定され土地の用益権と底地権とが分離されたと認められ、反面右設定の対価としてある程度のまとまった金額が支払われる場合に、実質的に土地所有権の一部である用益権部分の譲渡があったとみられるという考え方の下に、用益権部分について増加益の実現があったものとしてこれを譲渡所得として課税 度のまとまった金額が支払われる場合に、実質的に土地所有権の一部である用益権部分の譲渡があったとみられるという考え方の下に、用益権部分について増加益の実現があったものとしてこれを譲渡所得として課税することとし、他方、不動産所得として累進税率を適用することに伴う負担を軽減している。ただ税務上、資産の譲渡に当たるか否かについては画一的な基準が要請されることから、同条一項は、資産の譲渡について、建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含もとし、これを受けて、所得税法施行令七九条は、右の行為について、建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権又は特定の地役権の設定のうち、その対価として支払を受ける金額がその土地の価額の十分の五に相当する金額を超えるものをあげている。 ところで、租特法三三条一項、同法施行令二二条一項は、土地が米軍用地使用等特措法の規定に基づいて収用され、補償金を取得する場合において、その全額を課税の対象とすると、個人の生活保持のための代替資産の取得を阻害する結果になりかねないことから、右収用等による譲渡した資産のうち代替資産の取得価額に相当する部分については譲渡がなかったものとみなし、譲渡所得の取得価額と取得時期とを代替資産に引き継がせろことにより課税を繰り延べることとしたものであり、租特法三三条三項は、土地が米軍用地使用等特措法の規定に基づいて使用され、補償金を取得する場合において、当該土地を使用させることが所得税法三三条一項に規定する建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものに該当するときには、租特法三三条一項の規定の適用については、土地について収用等 物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものに該当するときには、租特法三三条一項の規定の適用については、土地について収用等による譲渡があったものとみなす旨規定しているが、このことは、米軍用地使用等特措法に基づく使用が右の要件を充足している場合には、その補償金について譲渡所得の規定が適用されることが前提となっているものと解される。 その補償金が譲渡所得となる場合としては、例えば、右使用権が建物所有を目的とするもので、その使用権設定の対価として支払を受ける補償金の額がその土地の価額の十分の五に相当する金額を超える場合があげられるが、ここにいう使用権設定の対価とは、租特法三三条五項が「(同条)一項一号に規定する補償金の額は、名義がいずれであるかを問わず、資産の収用等の対価たる金額をいうものとし、収用等に際して交付を受ける移転料その他当該資産の収用等の対価たる金額以外の金額を含まないものとする。」と定めていることをも併せ考えると、収用法七二条の使用する土地に対する補償金をいうものと解されるのである。そして、そのことは、右補償金の額については、それが土地の価額の十分の五に相当する金額を超えるか否かを問わず、一括してその全額がある年分の総収入金額に算入されるべき金額であることを示しているのである。 これに対し、被控訴人らは、米軍用地使用等特措法に基づく使用の場合の補償金が譲渡所得に該当するのは、借地権設定契約における権利金に相当する使用権設定の対価が支払われる場合であり、本件損失補償金のように賃料の一括前払いの性質を有する補償金の支払の場合には適用されないと主張するが、使用する土地に対する補償金に借地権設定契約におけるいわゆる権利金などと賃料の区別に相当するような区別がない 金のように賃料の一括前払いの性質を有する補償金の支払の場合には適用されないと主張するが、使用する土地に対する補償金に借地権設定契約におけるいわゆる権利金などと賃料の区別に相当するような区別がないことは収用法七二条の規定からも明らかであり、また、収用法七二条に基づいて算定された補償金が譲渡所得に該当しないとすると、租特法三三条三項一号に該当する場合はないこととなり、同項は無意味な規定となってしまうことに照らすと、被控訴人らの右主張は採用できない。 7 次に、所得税法は、役務の提供を約することにより一時に取得する契約金に係る所得その他の所得で臨時に発生するもののうち政令で定めるものを臨時所得とし(二条)、右の所得が特定の年分に全額帰属することを前提とした上で、これを五年間にわたって平準化して累進課税による負担を緩和するため平均課税の適用を認めている(九〇条)。そして、所得税法施行令八条は、臨時所得として、一定の場所における業務の全部又は一部を休止し、転換し又は廃止することとなった者が、当該休止、転換又は廃止により当該業務に係る三年以上の期間の不動産所得、事業所得又は雑所得の補償として受ける補償金に係る所得(三号)、不動産を有する者が、三年以上の期間、他人に右資産を使用させること(地上権その他の当該資産に係る権利を設定することを含む。)を約することにより一時に受ける権利金その他の対価で、その金額が当該契約による右資産の使用料の年額の二倍に相当する金額以上であるものに係る所得(譲渡所得に該当するものを除く。)(二号)その他これらに類する所得をあげており、税法は、これらの所得についてはその全額が特定の年分に帰属されるべきものであることを前提としていると解される。 ところで、事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で り、税法は、これらの所得についてはその全額が特定の年分に帰属されるべきものであることを前提としていると解される。 ところで、事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう(所得税法二七条一項)が、これらは自己の計算と危険において営利を目的とし対価を得て継続的に行う経済活動から生ずる所得であり、これらの事業を営も者が商法上の商人に該当する場合(商法四条)が少なくなく、その場合には、営業上の財産及び損益の状況を明らかにするため商業帳簿を作成することが必要とされ、その作成に関する規定の解釈については公正なる会計慣行を斟酌することとされており(商法三二条)、また商法上の商人に該当しないとしても、右所得は企業活動から生ずる所得であるから、いずれにしても、事業所得については、法人税の課税所得の計算(法人税法二二条四項参照)と同様に、適正な期間損益計算を目的とする企業会計の処理基準に従った算定方法が広く採用されるべきである。そして、将来の数年分の逸失利益(事業所得)に対する補償を一括して受領した場合に、適正な期間損益計算に重きを置く立場からはその算定の基礎に従って毎年合理的に分割して総収入金額に算入すべきであるとの考えもあり得ると考えられるが、所得税法及び同法施行令は、その事業所得の場合でさえ、右補償金は、これを受領した時点において既に確定した収入であり、これを将来的に繰り延べる理由がないものとして、その補償の対象となっている逸失利益たる収入の性質如何にかかわらず、その全額を特定の年分の総収入金額に算入すべきこととしたものと解されるのである。そうすると、本件損失補償金は前記のとおり国の使用権取得の対価であり使用土地に対する補償の性質を有するも にかかわらず、その全額を特定の年分の総収入金額に算入すべきこととしたものと解されるのである。そうすると、本件損失補償金は前記のとおり国の使用権取得の対価であり使用土地に対する補償の性質を有するものではあるが、仮に、被控訴人らの主張するように一〇年間にわたる継続的な役務提供の対価である賃料の補償の性質を有するとしても、税法は、これを補償金として一括受領している場合には、その算定基礎に従って毎年分割して総収入金額に算入していくことを許容してはいないと解するのが相当である。 また、所得税法施行令八条二号の所得は、契約により土地等の不動産に三年以上の期間の使用権を設定するに際し、一時に受ける権利金その他の対価で使用料の年額の二倍に相当する金額以上であるものに係る所得であるが、譲渡所得に該当するものが除かれていることに照らすと、税法は、契約による土地に対する使用権の設定が、建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権又は特定の地役権の設定等のうち、その対価として支払を受ける金額がその土地の価額の十分の五に相当する金額を超えるものであるときは、これによる所得を譲渡所得とし、譲渡所得の要件を充たさない場合には、これを臨時所得として平均課税の適用を認め、右の所得を不動産所得として累進税率を適用することに伴う負担を軽減することとしたものと解される。そして、米軍用地使用等特措法による使用の場合に譲渡所得の適用があることが予定されていることは前記のとおりであり、右の一連の制度の趣旨からすると、契約によるものではないとの一事をもって、平均課税の適用を否定することはできないのであって、収用法七二条の補償金が譲渡所得の要件を充たさない場合には、所得税法施行令八条二号の所得に類する臨時所得として平均課税の適用が予定されていると解するのが自然である。こ 定することはできないのであって、収用法七二条の補償金が譲渡所得の要件を充たさない場合には、所得税法施行令八条二号の所得に類する臨時所得として平均課税の適用が予定されていると解するのが自然である。このことは、収用法七二条の補償金である本件損失補償金全額がある特定の年分の総収入金額に算入されるべきことを示している。 8 これに対し、被控訴人らは、(一)国が賃貸借契約に基づき土地を使用する場合と米軍用地使用等特措法に基づき土地を使用する場合とで何ら使用の態様が異なるものではないこと、(二)本件損失補償金は、使用する土地及び近傍類地の地代を基礎として算定されていること、(三)昭和四二年法律第七五号による削除前の米軍用地使用等特措法一〇条(以下「米軍用地使用等特措法一〇条」という。)は、土地の使用に対する損失補償の金額の支払について、使用の期間が一年を超えるときは、当該使用に対する損失補償の金額を一年分ごとに分割して支払うことができる旨定めていたことを指摘し、これらは、本件損失補償金が土地を使用させるという継続的な役務提供の対価である賃料の前受金たる性質を有し、その使用期間の経過とともにこれを収入すべき権利が確定していくことを裏付けていると主張する。 しかしながら、収用法七二条の補償金である本件損失補償金ないし右補償金に係る権利の特質や右補償金に係る税法の規定について検討を加えてきたところに照らすと、契約による場合と米軍用地使用等特措法による場合とで国の使用態様が異ならないことは、本件損失補償金を総収入金額に算入すべき時期を決定する上で重要性を有するものではないし、収用法七二条は、使用する土地に対する補償金の額をいかに算定すれば正当な補償となるかという観点から、その算定に当たり当該土地及び近傍類地の地代等を考慮すべきことを定めたにすぎず、そのこ のではないし、収用法七二条は、使用する土地に対する補償金の額をいかに算定すれば正当な補償となるかという観点から、その算定に当たり当該土地及び近傍類地の地代等を考慮すべきことを定めたにすぎず、そのことから直ちに本件損失補償金の性質やこれを総収入金額に算入すべき時期を決定し得るものではない。また、米軍用地使用等特措法一〇条は、収用法七二条の補償金を一年分ごとに分割して支払うことができる旨定めていたが、これは本来であれば、収用法九五条一項により、国は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期までに収用法七二条の補償金の払渡しをしなければならないが、例外的に一年分ごとに分割して支払うことができることとして右支払方法の特例を定めたにすぎないものであるから、右の場合に各年分の損失補償金がどの年分の総収入金額に算入されるかはさておき、米軍用地使用等特措法一〇条の規定が存在するがゆえに、収用法九五条一項により権利取得の時期までに収用法七二条の補償金が払い渡される場合の右補償金の性質やこれが総収入金額に算入される時期を左右するものではない。ましてや、右規定は昭和四二年法律第七五号により削除されたのであり、収用法七二条の補償金の性質やこれが総収入金額に算入される時期について疑義の生ずる余地はないというべきである。したがって、被控訴人らの主張を採用することはできない。 以上のとおりであるから、本件損失補償金は全額昭和六二年分の総収入金額に算入すべきである。 二本件損失補償金の所得区分 1 不動産の貸付(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産を使用させることを含も。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)は、不動産所得とされている(所得税法二六条一項)。前記のとおり本件損失補償金が土地に国の使用権を設定した対価であることや租特法三三 を含も。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)は、不動産所得とされている(所得税法二六条一項)。前記のとおり本件損失補償金が土地に国の使用権を設定した対価であることや租特法三三条一項一号が米軍用地使用等特措法の規定に基づいて使用される場合に「土地を使用させること」という文言を使っていることに照らすと、米軍用地使用等特措法に基づいて使用される場合は、所得税法二六条一項の「他人に不動産を使用させること」に含まれるものと解するのが相当である。そして、収用法七二条の使用する土地に対する補償金は、事業所得に係る収入金額に代わる性質を有するものとはいえないから、事業所得ともいえず(所得税法施行令九四条参照)、本件損失補償金は、譲渡所得又は不動産所得のいずれかに区分されるものと解される。 2 そこで、まず、本件損失補償金が譲渡所得に該当するか否かについて検討する。 譲渡所得の意義、範囲及び課税の趣旨については前記のとおりであり、本件損失補償金が譲渡所得となるためには、建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるもの(建物若しくは構築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権又は特定の地役権の設定のうち、その対価として支払を受ける金額がその土地の価額の十分の五に相当する金額を超えるもの)による所得であることが必要である(所得税法三三条一項、同法施行令七九条一項一号。なお、租特法三三条一項、三項の規定に照らすと、右の資産の譲渡とみなされる行為は必ずしも契約による行為に限られるわけではなく、米軍用地使用等特措法に基づき使用される場合も右行為とみなされる場合があると解されることは前記のとおりである。)。 証拠[甲一、乙一三、一四、一五の1ないし5、一六の1、2]及び弁論 るわけではなく、米軍用地使用等特措法に基づき使用される場合も右行為とみなされる場合があると解されることは前記のとおりである。)。 証拠[甲一、乙一三、一四、一五の1ないし5、一六の1、2]及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人らに対する本件使用裁決は、被控訴人らの所有地を含も沖縄県国頭郡<地名略>北西部にある伊江島補助飛行場内の一部の未契約土地約二八万四〇〇〇平方メートルについてされたものの一つであるが、右裁決において、これらの土地の使用方法については、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の空対地射爆撃訓練場用地として使用することとされたこと、現実にもこれらの土地は契約地主の土地と一体となって米軍の射爆撃訓練場用地として使用され、そのうち被控訴人ら所有地付近は、後に、金網フェンスで囲まれ、ハリヤー(垂直離着陸機)の訓練及び海兵隊の夜間訓練に利用されるようになったこと、右フェンス内の土地上には、五個の建造物、管制塔及び木造の倉庫様の建物並びに仮設の構造物である滑走路、ハリヤーパット及びテント等があるが、その占める割合は僅少であり、しかも、被控訴人らの所有地上には建造物も構築物もなく、滑走路付近の土地を除き全く手入れもされずに放置された状態であること、以上の事実が認められるところ、右使用裁決に係る被控訴人所有地を含も未契約土地の使用目的や使用実態に照らすと、本件使用裁決に係る使用権の設定は、到底、建物又は構築物の所有を目的としたものとはいえないし、また、所得税法施行令七九条一項掲記の地役権の設定に相当するものともいえない。そうすると、その余の点について判断するまでもなく、本件使用裁決に係る使用権の設定は、所得税法三三条一項にいう資産の譲渡に当たらないものであり、本件損失補償金に係る所得を譲渡所得ということはできない。 3 これに対し、被控訴人ら 判断するまでもなく、本件使用裁決に係る使用権の設定は、所得税法三三条一項にいう資産の譲渡に当たらないものであり、本件損失補償金に係る所得を譲渡所得ということはできない。 3 これに対し、被控訴人らは、被控訴人らの土地は昭和一九年以来米軍用地として使用され、用益権と底地権が分離された状況に置かれ、今後も長期間にわたり使用されることが予測されるものであるから、所得税法三三条一項、所得税法施行令七九条一項が本来予定していた用益権の譲渡とみなされる典型的事例であると主張する。しかしながら、所得税法三三条一項は、資産の譲渡とみなす「他人に土地を長期間使用させる行為」について政令に委ね、社会経済情勢の変化に対応して必要に応じ随時その範囲を定めていく立法方針をとっており、現に所得税法施行令七九条一項は、右の行為について限定的に列挙し、逐次改正追加されているのであり、ある使用権の設定について用益権と底地権に分離され用益権が譲渡されたのと同視できるからといって、同条項を安易に類推適用することは許されないといわなければならない。そして、同条項には、資産の譲渡とみなされる行為の要件として、米軍用地使用等特措法に基づく使用は列挙されていないのであるから、本件損失補償金に係る所得を譲渡所得に該当するものということはできず、被控訴人らの主張は採用できない。 したがって、本件損失補償金に係る所得は不動産所得に該当するものである。 三平均課税の適用前記のとおり、所得税法は、居住者のある年分に臨時所得がある場合には、これを五年間にわたって平準化し累進税率の適用による負担を緩和するため、平均課税方式を採用し、臨時所得の金額がその年分の総所得金額の百分の二十以上である場合に、(一)その年分の課税総所得金額から臨時所得の金額の五分の四に相当する金額を控除した金額(当該課税 するため、平均課税方式を採用し、臨時所得の金額がその年分の総所得金額の百分の二十以上である場合に、(一)その年分の課税総所得金額から臨時所得の金額の五分の四に相当する金額を控除した金額(当該課税総所得金額が臨時所得の金額以下である場合には当該課税総所得金額の五分の一に相当する金額。以下「調整所得金額」という。)をその年分の課税総所得金額とみなして計算した税額と(二)その年分の課税総所得金額に相当する金額から調整所得金額を控除した金額(臨時所得の金額の五分の四又は課税総所得金額の五分の四)に右の税額の調整所得金額に対する割合(平均税率)を乗じて計算した金額の合計額を、その年分の課税総所得金額に係る所得税の額とすることとしている(九〇条)。 そして、収用法七二条の補償金である本件損失補償金が譲渡所得の要件を充たさない場合には、所得税法施行令八条二号の要件を具備すれば、同号所定の所得に類する臨時所得として平均課税の適用が予定されていると解するのが自然であることは前記のとおりである。そこで、本件損失補償金が同号の要件を充たしているか否かについて検討すると、本件使用裁決に係る使用期間は一〇年であり、本件損失補償金を算定する際に考慮された当該土地及び近傍類地の地代の年額の二倍に相当する金額以上であることは証拠[甲一、原審証人C一及び弁論の全趣旨に徴し明らかであるから、不動産所得である本件損失補償金に係る所得は、所得税法施行令八条二号の所得に類する臨時所得に当たるものと解され、平均課税の適用がある(なお、証拠[乙一の1、2]によれば、被控訴人らが本件確定申告に当たり提出した確定申告書には、所得税法九〇条一項の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の合計額の計算に関する明細の記載があることが認められる。)。 四資産所得合算課税の適用昭和六三年法律 告に当たり提出した確定申告書には、所得税法九〇条一項の適用を受ける旨及び同項各号に掲げる金額の合計額の計算に関する明細の記載があることが認められる。)。 四資産所得合算課税の適用昭和六三年法律第一〇九号による削除前の所得税法九六条ないし一〇一条は、生計を一にする一定範囲内の親族(例えば、夫と妻)の中に資産所得(例えば、不動産所得)を有する者がいる場合には、これらの者の中で総所得金額から資産所得の金額を控除した金額が最も大きい者、右控除した金額のある者がいないときは資産所得の金額が最も大きい者(主たる所得者。例えば、夫)が、自己の所得のほかその他の親族(合算対象世帯員。例えば、妻)の資産所得を有するものとみなして計算した所得税の額に相当する金額(合算所得税額)を主たる所得者の総所得金額と合算対象世帯員の資産所得の金額の比に按分した金額を各人の所得税の額とする(ただし、主たる所得者の総所得金額及び合算対象世帯員の資産所得の金額の合計額からこれらの者に係る同法七二条一項(雑損控除)に規定する損失の金額とこれらの者の支払った同法七三条一項(医療費控除)に規定する医療費の金額との合計額を控除した金額が一五〇〇万円以下である場合には、合算課税は適用されない。)、いわゆる資産所得合算制度を採用していた。この制度は、資産所得は通常世帯主の支配に委ねられることが多く、世帯を単位として担税力に応じた課税をすることが適当であること、及び資産所得はその性質上名義を分散することが容易であるため、その分散如何によって生じる税負担の著しい差異を排除し、公平な課税をする必要があることから、創設されたものであり、被控訴人らについても、その要件が充足された場合には、資産所得合算課税の適用があるものと解される。 これに対し、被控訴人らは、資産所得合算課税制度は、憲法一三 必要があることから、創設されたものであり、被控訴人らについても、その要件が充足された場合には、資産所得合算課税の適用があるものと解される。 これに対し、被控訴人らは、資産所得合算課税制度は、憲法一三条、二九条に違反すると主張するが、憲法上租税に関する事項は法律又は法律に基づいて定められるところに委ねられていると解すべきところ(憲法八四条)、被控訴人らの主張は、特定の法律における具体的な税額計算の定めに関する立法政策上の適不適を争うものにすぎず、違憲の問題を生ずるものではないから、採用することができない。 また、被控訴人らは、公用使用による損失の補償の場合、公益的理由から強制的に使用期間に対応する損失補償金を一括受領させて合算課税最低限度額を超える資産所得を生じさせ、合算課税の適用を不可避なものにし、租税負担の公平を害することになるから、右損失補償金は資産所得合算課税の対象とはならないと主張する。 しかしながら、前記削除前の所得税法は、特に、公用使用による損失補償金に係る所得を資産所得から除外してはいないし、資産所得合算課税制度の趣旨に照らしてもこれを除外しなければならない理由は見出せない。また、前記のとおり、被控訴人らにおいて昭和六二年三月二五日に本件損失補償金全額の払渡しを受け、これを収入すべき権利が同年中に確定したものである以上、国において、右損失補償金につき合算課税の適用を受けないような措置を講ずべき法的義務はなく、却って右合算課税を適用しないときは、同一の要件を充足する他の被課税者との間で課税に不公平が生じる。したがって、被控訴人らの右主張は採用できない。 五税額の計算以上に基づき、被控訴人らの納付すべき税額を計算すると、次のとおりである。 本件損失補償金として被控訴人Aが払渡しを受けた九四五九万二七二八円及び被控訴人Bが払渡しを は採用できない。 五税額の計算以上に基づき、被控訴人らの納付すべき税額を計算すると、次のとおりである。 本件損失補償金として被控訴人Aが払渡しを受けた九四五九万二七二八円及び被控訴人Bが払渡しを受けた二二九〇万六六九二円は、いずれも昭和六二年分の不動産所得に係る総収入金額に算入されるべきものであり、本件確定申告における不動産所得に係る必要経費の金額を控除して不動産所得の金額を計算すると、被控訴人Aについては八五一三万三四五五円、被控訴人Bについては二〇六一万六〇二三円となる。被控訴人Aの総所得金額は、事業所得に係る損失の金額五五〇万八五八〇円を控除した七九六二万四八七五円であり、被控訴人Bの総所得金額は二〇六一万六〇二三円である。 被控訴人らは生計を一にする夫婦であり(乙一の1、2、弁論の全趣旨)、いずれも総所得金額から資産所得の金額を控除した金額がないから、資産所得合算課税を適用する場合は、資産所得の金額が大きい被控訴人Aが主たる所得者、被控訴人Bが合算対象世帯員となる。被控訴人らには、前記の雑損控除に係る損失の金額及び医療費控除に係る医療費の金額はなく、被控訴人Aの総所得金額及び被控訴人Bの資産所得の金額の合計額は一五〇〇万円を超えるから、被控訴人らの税額の計算においては、資産所得合算課税が適用される。まず、被控訴人Aの総所得金額に相当する金額に被控訴人Bの資産所得の金額を加算した金額一億〇〇二四万〇八九八円をもって被控訴人Aの総所得金額とみなされる。 そのうち臨時所得の金額は被控訴人らの不動産所得の金額の合計額である一億〇五七四万九四七八円であり、その年分の総所得金額の百分の二十以上であるから、平均課税が適用される。所得控除額は八三万一三〇〇円であるから課税総所得金額は九九四〇万九〇〇〇円である。これに平均課税を適用すると、課税 八円であり、その年分の総所得金額の百分の二十以上であるから、平均課税が適用される。所得控除額は八三万一三〇〇円であるから課税総所得金額は九九四〇万九〇〇〇円である。これに平均課税を適用すると、課税総所得金額に係る所得税の額は三三九五万七五二〇円となり、これが合算所得税額となる。 これを被控訴人Aの総所得金額と被控訴人Bの資産所得の金額の比に按分してそれぞれの所得税の額を計算すると、被控訴人Aについては二七一六万六〇〇〇円、被控訴人Bについては六七九万一五〇〇円となる。 六課税における公平原則違反の主張について証拠[甲一、乙一三、一四、一五の1ないし5、一六の1、2、一九の1ないし3、二〇]及び弁論の全趣旨によれば、米軍に提供されている施設の一つである伊江島補助飛行場に存する土地は、契約地主の土地も被控訴人らを含む反戦地主の土地も、いずれも同一の使用方法で使用されていること、契約地主と国との間で交わされる土地賃貸借契約書において、契約期間は国の会計年度に合わせて一年間とされ、毎年度期間の更新が行われ、賃料も右各契約期間内に一年分の支払がされる旨約されていることが認められる。 被控訴人らは、右事実を指摘した上で、契約地主の場合は一年分の賃料について毎年課税されるのに対し、被控訴人らの場合は一〇年分の賃料に相当する金額の本件損失補償金を一括して払い渡されるためその年分の不動産所得として課税され累進税率の適用による負担が契約地主よりも重く、現に、本件損失補償金を一年ごとに受領するとした場合一一年分の税額は合計一二一〇万五〇五七円である(中間利息を三パーセントとした場合)のに対し、これを一括して受領すると税額は三三九五万七五〇〇円となり、著しい不公平が生じるから原処分は憲法一四条が保障する租税における公平原則に反し、違法であると主張する。 しか ーセントとした場合)のに対し、これを一括して受領すると税額は三三九五万七五〇〇円となり、著しい不公平が生じるから原処分は憲法一四条が保障する租税における公平原則に反し、違法であると主張する。 しかしながら、このような税額の違いが生じるのは、昭和六二年において、契約地主が一年分の賃料しか受領しておらず右賃料分しか収入すべき権利が確定していないのに対し、被控訴人らが昭和六二年五月一五日から一〇年間の使用権設定の対価である本件損失補償金全額の払渡しを同年三月二五日に受けこれを収入すべき権利が同年五月一五日の時点で確定しており、昭和六二年分の総収入金額に算入すべき金額に右のような差がある上、これに累進税率を適用することによるものであって、本件更正処分に係る課税が公平原則に反しているということはできない。 これに対し、被控訴人らは、国との間で賃貸借契約を締結して国に使用させることは被控訴人らの思想、信条に反するがゆえに、あえて累進税率の適用による税負担の軽い国との契約を拒否するほかなく、そうすると、米軍用地使用等特措法に基づき使用されることになり、損失補償金の一括受領を強いられるが、ここで、被控訴人らに対し契約地主よりも高率の税率を課することは、被控訴人らを思想、信条により差別するとともに、被控訴人らの思想、信条の自由を侵害するものであるから、本件更正処分に係る課税は憲法一四条、一九条に反する違法なものと主張する。 しかしながら、右のとおり、被控訴人らは昭和六二年三月二五日に本件損失補償金の払渡しを受け、右損失補償金を収入すべき権利は同年中に確定し、同年分の総収入金額に算入されるべきものである以上、これを前提として所定の総所得金額及び所得税の額の計算の規定に従って税額を算定すべきであって、これら一連の所得税法の規定それ自体は特定の者をその思想、信 の総収入金額に算入されるべきものである以上、これを前提として所定の総所得金額及び所得税の額の計算の規定に従って税額を算定すべきであって、これら一連の所得税法の規定それ自体は特定の者をその思想、信条により差別するものでも、その思想、信条の自由を侵害するものでもない上、右の規定によることなく契約地主と同額の税額を課すときは、同一の要件を充たす他の納税者との間で課税に不平等、不公平が生じるだけでなく、契約地主との間でも平等、公平を欠くことになるのであり、さらに、本件損失補償金に係る不動産所得について税額計算の過程において平均課税が適用され五年間にわたって平準化され累進税率の適用による負担が緩和されていることを考慮すると、租税法規の適用におけるこれら納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてまでもなお、被控訴人らに対する課税の段階において、本件損失補償金に係る被控訴人らの税負担を契約地主のそれと同程度にしなければ正義に反するといえるような特別な事情を見出すことはできないのであって、本件更正処分に係る課税自体が憲法一四条、一九条に反するとはいえない。 むしろ、被控訴人らの主張は、本件損失補償金の払渡しの方法について、一年ごとの分割払いとするか権利取得の時期までの全額払いとするかといった選択の余地がなく、一方的に後者の方法を強いられることの違法、すなわち、損失補償の方法自体の違法、あるいは、本件使用裁決において、契約地主よりも税負担が重いことを考慮して損失補償金の額が定められなかったという損失補償額に対する不服をいうものと解されるところ、前記のとおり被控訴人らは昭和六二年中に本件損失補償金の払渡しを受けてこれを収入すべき権利が確定している以上、被控訴人らの主張に係る違法又は不服は、本件更正処分に係る課税の違法をもたらすものと解することはできない 訴人らは昭和六二年中に本件損失補償金の払渡しを受けてこれを収入すべき権利が確定している以上、被控訴人らの主張に係る違法又は不服は、本件更正処分に係る課税の違法をもたらすものと解することはできない。被控訴人らの主張は採用できない。 七過少申告加算税賦課決定の違法の主張について被控訴人らは、昭和六三年三月一一日、本件確定申告をした後、同年八月二四日付けで更正処分及び過少申告加算税賦課決定を受け、平成元年三月八日付けで更正の請求をしたことは争いがなく、過少申告加算税賦課決定に対して、不服申立てがされないまま不服申立期間が経過したことは弁論の全趣旨から明らかである。 ところで、右の更正の請求とは、納税申告書を提出した者が、当該申告書に記載した課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと等により、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があった場合には、当該更正後の税額)が過大であるときなどに、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し更正があった場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をするものであり(国税通則法二三条一項)、これに対し減額更正がされ、あるいは、更正をすべき理由がない旨の通知処分がされても右通知処分が取り消されるなどして過少申告加算税の計算の基礎となる所得税額に変動が生じた場合に税務署長が過少申告加算税の計算の基礎となる税額及び納付すべき税額を変更する決定をする(同法三二条二項)ことはあっても、既に過少申告加算税賦課決定に対し不服申立てがされないまま不服申立期間が経過し、納税申告者から不服申立てができない状態になったときには、右通知処分の取消訴訟において、右過少申告加算税賦課決定の違法を主張し、右賦課決定の取消し 対し不服申立てがされないまま不服申立期間が経過し、納税申告者から不服申立てができない状態になったときには、右通知処分の取消訴訟において、右過少申告加算税賦課決定の違法を主張し、右賦課決定の取消しを求めることはできないといわざるを得ない。 したがって、被控訴人らは、本件訴訟において、過少申告加算税賦課決定の取消しを求めているかのようであるが、仮にそうであったとしても、右のとおり、過少申告加算税賦課決定の違法を主張し、右賦課決定の取消しを求めることはできないし、ましてや右の違法を主張して右通知処分である原処分の取消しを求めることはできないのであって、被控訴人らの主張は失当といわなければならない。 仮に、過少申告加算税賦課決定の違法を主張できるとしても、これに関する被控訴人らの主張は、「第二事案の概要」「二争点」「1 被控訴人らの主張」の(四)記載のとおりであり、要するに、名護税務署職員がことさら後の更正処分の内容と異なる指導をしたというものではなくて、本件確定申告前に被控訴人らが更正の請求の内容と同一の確定申告をしたい旨主張してきたのに対し、本件損失補償金全額を昭和六二年分の不動産所得の総収入金額に算入して総所得金額及び税額を計算する申告しか認められないと指導したというものであり、右の機会に合わせて資産取得合算課税による確定申告をするよう指導助言してくれなかったというにすぎないのである。そうすると、過少申告加算税賦課決定が信義則に反するとは、到底いうことはできないのであって、被控訴人らの右主張はこの点からも失当といわなければならない。 八結論以上のとおりであって、本件更正処分に違法はなく、被控訴人らの更正の請求に対する、更正をすべき理由がない旨の控訴人の各通知処分(原処分)に違法はないから、本件請求はいずれも理由がなく棄却すべきであ 以上のとおりであって、本件更正処分に違法はなく、被控訴人らの更正の請求に対する、更正をすべき理由がない旨の控訴人の各通知処分(原処分)に違法はないから、本件請求はいずれも理由がなく棄却すべきであり、これと異なる原判決は不当であるからこれを取り消すこととし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九六条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官岩谷憲一角隆博伊名波宏仁)(原裁判等の表示)○ 主文一被告が、原告Aの昭和六二年分所得税にかかる更正の請求について、平成元年四月五日付けでした更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 二被告が、原告Bの昭和六二年分所得税にかかる更正の請求について、平成元年四月五日付けでした更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。 三訴訟費用は被告の負担とする。 ○ 事実及び理由第一請求主文と同旨第二事案の概要一争いのない事実等 1 原告Aの不動産収入(一) 沖縄県収用委員会は、那覇防衛施設局が「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用に関する特別措置法」(以下「米軍用地収用特措法」という。)に基づき申し立てた、原告A所有の土地に対する二〇年間の強制使用裁決申立てに対し、昭和六二年二月二四日、次の内容の使用裁決をした。 (1) 土地の使用方法駐留米軍用地として使用する。 (2) 土地の使用期間権利を取得する時期から一〇年間(3) 損失補償金九四五九万二七二八円(4) 権利取得の時期昭和六二年五月一五日(5) 明渡しの時期昭和六二年五月一五日(二) 原告Aは、昭和六二年三月二五日、国から、右損失補償金を受領した。 (三) 原告 五九万二七二八円(4) 権利取得の時期昭和六二年五月一五日(5) 明渡しの時期昭和六二年五月一五日(二) 原告Aは、昭和六二年三月二五日、国から、右損失補償金を受領した。 (三) 原告Aの昭和六二年分の不動産所得は、右損失補償金以外には存しない。 2 原告Bの不動産収入(一) 沖縄県収用委員会は、原告Bについても、原告Aと同様、次の内容の使用裁決をした。 (1) 土地の使用方法駐留米軍用地として使用する。 (2) 土地の使用期間権利を取得する時期から一〇年間(3) 損失補償金二二九〇万六六九二円(4) 権利取得の時期昭和六二年五月一五日(5) 明渡しの時期昭和六二年五月一五日(二) 原告Bは、昭和六二年三月二五日、国から、右損失補償金を受領した。 (三) 原告Bの昭和六二年分の不動産所得は、右損失補償金以外には存しない。 3 確定申告と更正処分(一) 原告らは、昭和六三年三月一一日、右各損失補償金につき、それぞれ別紙「確定申告」欄記載の所得税確定申告(以下「本件確定申告」という。)をした。 (二) 被告は、昭和六三年八月二四日付けで、別紙「更正処分等」欄記載の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定(以下「本件更正処分等」という。)をした。 (三) 原告らは、右更正処分等に対し、原告らの確定申告及び右更正処分等には誤りが存するとして、平成元年三月八日付けで、被告に対し、それぞれ別紙「更正の請求」欄記載のとおりの更正の請求をした。 (四) 被告は、原告らの右更正の請求に対し、平成元年四月五日付けで、それぞれ更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「原処分」という。)をした。 4 不服申立ての前置(一) 原告らは、右各通知処分を不服として、平成元年六月五日、被告に対し、それぞれ異議を申し立てたが、被告は、同年九月 理由がない旨の通知処分(以下「原処分」という。)をした。 4 不服申立ての前置(一) 原告らは、右各通知処分を不服として、平成元年六月五日、被告に対し、それぞれ異議を申し立てたが、被告は、同年九月二日付けでそれぞれ異議を棄却する旨の決定をした。 (二) 原告らは、右決定に不服があるとして、平成元年一〇月二日、それぞれ審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成三年一月七日付けで、それぞれ審査請求を棄却する旨の裁決をした。 二争点 1 原告の主張(一) 本件損失補償金収入の帰属年について本件損失補償金は、強制使用裁決により国が原告らの土地につき使用権を取得したことに伴い、昭和六二年五月一五日から一〇年間の土地の使用という役務に対する対価、すなわち賃料の前受けとしての性格を有するものである。 そして、本件損失補償金中、昭和六二年分の強制使用の対価たる性質を有する金員は、原告Aについては六七九万五二二六円、原告Bについては一六四万五五三九円であり、右を超える部分の損失補償金については、次年以降の損失補償金の前受収益と解すべきものであり、昭和六二年分の不動産所得とすべきものではない。 にもかかわらず、被告は、原告らの損失補償金の全額を、昭和六二年分の不動産所得の総収入金額に算入して所得及び税額を計算した更正処分等をしたが、その税額は、原告Aにつき二七一六万六〇〇〇円、原告Bにつき六六九万七〇〇〇円過大であり、違法である。 そして、原処分は、右更正処分等を適法なものと判断したのであるから、これもまた違法である。 (二) 長期譲渡所得課税(所得税法三三条一項、同法施行令七九条)の適用仮に、被告の主張どおり、本件損失補償金の全額が、本件使用裁決によって取得する使用権取得の対価に該当し、昭和六二年分の所得として計上されるとしても、同使用権の取得は、いわ 、同法施行令七九条)の適用仮に、被告の主張どおり、本件損失補償金の全額が、本件使用裁決によって取得する使用権取得の対価に該当し、昭和六二年分の所得として計上されるとしても、同使用権の取得は、いわゆる借地権の設定と同視すべきものであるから、譲渡所得課税の適用を受けるものである。 すなわち、建物もしくは構築物の所有を目的とする土地の使用の権利であり、対価としての権利金の額がその土地の価額(更地の時価)の二分の一を超える場合は、譲渡所得に該当し(所得税法三三条一項、同法施行令七九条)、その年の一月一日において、所有期間が一〇年を超えるものについては、長期譲渡所得として他の所得と分離して課税されることとなる。 そして、原告らの本件使用裁決にかかる土地について、国土利用計画法の標準価格又は地価公示法による公示価格と相続税評価額との比準により土地の時価を算出する方法(以下「公示価格比準法」という。)により算出した土地の価額と、収受した本件補償金の額とを比較すると、以下のようになる。 原告A 八七二三万五四三六円補償金九四五九万二七二八円原告B 一八六〇万七六二五円補償金二二九〇万六六二九円右のとおり、補償金は両名とも土地の価額を上回っており、公示価格比準法に基づき算出された価額は、実際の取引価額よりいくらか下回る価額となるという公知の事実を考えれば、本件補償金の額が、土地の価額の二分の一を上回っていることは明らかである。そして、原告らは、いずれも本件土地を一〇年を超えて所有しており、長期譲渡所得の適用がある。 したがって、本件損失補償金について、長期譲渡所得として計算すれば、課税額は、原告Aについて一九三一万四八〇〇円、原告Bについて四〇八万六二〇〇円となり、いずれも被告のした更正処分による税額を下回ることとなるため 件損失補償金について、長期譲渡所得として計算すれば、課税額は、原告Aについて一九三一万四八〇〇円、原告Bについて四〇八万六二〇〇円となり、いずれも被告のした更正処分による税額を下回ることとなるため、被告の更正処分は右課税額を差し引いた過大税額分(原告Aについて七八五万一二〇〇円、原告Bについて二七〇万五三〇〇円)は取り消されるべきである。 (三) 合算課税の違法性仮に、原告らの前記(一)(二)の主張が認められないとしても、本件更正処分等及び原処分は、合算課税を適用している点で違法性がある。 すなわち、所得税法九六条ないし一〇一条の合算課税の規定は、法的に人格を異にする原告らの不動産所得について、合算して課税を行うものであり、国民の個人の尊厳、財産権を保障した憲法一三条及び二九条に違反し、違憲無効である(なお、右合算課税の規定は、昭和六三年に削除改正された。)。 仮に、所得税法の合算課税を定めた条項自体は合憲であるとしても、右規定の本来の目的は、資産所得の特質から租税負担の公平を期するところにあり、被課税者が自由取引により一定額以上の所得を得たときを課税対象とする趣旨のものであり、強制使用による損失補償金については、対象としていないものと解される。なぜならば、強制使用による損失補償金は、公益的理由から強制的に強制使用期間に対応する損失補償金の一括受領を被収用者に強制し、合算課税最低限度額を超える不動産所得を生じさせるものであるから、右損失補償金について、合算課税を適用して課税することは、租税負担の公平を害することになるからである。 (四) 過少申告加算税賦課決定の違法性原告らは、確定申告を行う際、事前に名護税務署と税務申告の仕方について再三交渉を行い、同交渉の中で更正の請求内容と同一の確定申告を行いたい旨主張したが、同署は、原告らの損失補 加算税賦課決定の違法性原告らは、確定申告を行う際、事前に名護税務署と税務申告の仕方について再三交渉を行い、同交渉の中で更正の請求内容と同一の確定申告を行いたい旨主張したが、同署は、原告らの損失補償金の全額を昭和六二年分の不動産所得の総収入金額に算入して、所得及び税額を計算する申告しか認められない旨主張したため、原告らはその指示に従ってそれぞれ確定申告をした。 ところが、名護税務署は、右確定申告の際には、原告らに対して何ら合算課税による確定申告をすべき指導をしていないにもかかわらず、後日、確定申告方法に誤りが存したとして更正処分等を行ったものである。 したがって、仮に、原告らの確定申告方法につき誤りが存するとしても、それは名護税務署の責に帰すべきものであるから、原告らに対し過少申告加算税の賦課決定をするのは、所得税申告手続の信義則に違反し、違法である。 (五) 課税における公平原則違反任意に国と軍用地賃貸借契約を締結している地主(以下「契約地主」という。)の所有地と、米軍用地収用特措法により強制使用された地主(以下「反戦地主」という。)の所有地のそれぞれの使用は、いずれも同一目的のために、同一の使用形態で使用されているものであり、その実態は、経済的実態を含めて全く同一である。 両者間には、国の使用権原の根拠が契約によるのか、強制使用裁決によるのかという法的形式に違いがあるにすぎず、租税負担の公平という租税制度の精神からすれば、両者は同一に扱うべきである。 しかし、被告がした本件更正処分等によれば、原告らの総所得金額は、一億〇〇二四万〇八九八円となり、納付すべき税額は、合計三三九五万七五〇〇円となる。 これに対して、原告らが契約地主となったと仮定し、原告らが強制使用裁決書が認定した額の賃料を一年ごとに受領するとした場合、使用期間と対応する一一年 、納付すべき税額は、合計三三九五万七五〇〇円となる。 これに対して、原告らが契約地主となったと仮定し、原告らが強制使用裁決書が認定した額の賃料を一年ごとに受領するとした場合、使用期間と対応する一一年間の各年の税額の現在価値を中間利息三パーセントとして算出すると、原告A分は合計一一〇六万三二二九円、原告B分は合計一〇四万一八二八円となり、両名の分の合計は一二一〇万五〇五七円となる。 右のとおり、本件更正処分等及び原処分の納税額は、原告らが契約地主と仮定した場合と比較して、二一八五万二四四三円も高額であり、著しい不公平が生じている。 原告らは、良心と信念に従い、国との軍用地賃貸借契約を拒否しているものであり、そのため、原告らに対し、強制使用裁決がなされ、損失補償金が支払われたものであるところ、原告らに対し、契約地主に比べて前記のような重税を課すことは、憲法一四条が保障する租税における公平原則に違反し、かつ、原告らを思想、信条により差別するもので、憲法一九条の思想、信条の自由を侵害する違法なものである。 2 被告の主張被告の本件更正処分等の算出根拠は、以下のとおりである。 (一) 原告らの本件損失補償金収入の帰属年本件損失補償金は、本件使用裁決により、国が本件土地を一〇年間、日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の空対地射爆撃訓練場用地として使用する物権類似の権利を取得し、その反面として、原告らが本件土地を使用し、収益することができなくなったことによって被る損失に対する確定した補償として、土地収用法九五条一項の規定に基づき、国から原告らに対し、一時に支払われたものである。 この補償金は、本件土地の使用期間の経過により、逐次発生するものではないし、後年分の使用の対価(前受収益)の性質を有するものではない。 また、右にいう確定した補償とは、本件使用裁決 われたものである。 この補償金は、本件土地の使用期間の経過により、逐次発生するものではないし、後年分の使用の対価(前受収益)の性質を有するものではない。 また、右にいう確定した補償とは、本件使用裁決時に本件補償金の返還が予定されていないということを意味するが、その後の事情ないし法律関係の変動等によって本件補償金が返還される可能性を否定するものではない。 原告らは、本件使用裁決により、本件土地の明渡しの期限である昭和六二年五月一五日において、本件損失補償金の全額の支払いを請求し得ることが確定し、それ以前の同年三月二五日、本件損失補償金の全額を受領することにより、現実にその利得を支配、管理し、自己のために享受していたものであるから、所得税法三六条一項に照らし、本件補償金全額が、昭和六二年分の不動産所得にかかる総収入金額に算入されることになる。 したがって、被告は、原告Aの受領した九四五九万二七二八円及び原告Bの受領した二二九〇万六六九二円を全て昭和六二年分の不動産所得として計上した。 (二) 長期譲渡所得課税の適用の有無本件使用裁決により、国が取得する権利は、物権類似の権利であるが、長期譲渡所得課税を適用するためには、その権利の目的が所得税法三三条一項かつこ書及び同法施行令七九条一項一号にいう「建物若しくは構築物の全部の所有を目的」としているか否かが検討されねばならない。 本件使用裁決において、土地の使用方法は、「日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の空対地射爆撃訓練場用地として使用する。」と特定されている。そして、現実にも本件使用裁決にかかる土地の大部分は、射爆撃訓練場として使用されており、右土地上には、五個の建造物、管制塔及び倉庫様(木造)の建物並びに仮設の建造物である滑走路、ハリヤーパット及びテント等はあるものの、その占める割合は極めて僅 分は、射爆撃訓練場として使用されており、右土地上には、五個の建造物、管制塔及び倉庫様(木造)の建物並びに仮設の建造物である滑走路、ハリヤーパット及びテント等はあるものの、その占める割合は極めて僅少である。しかも、原告ら所有地上には建造物も構築物もないから、建物あるいは構築物の所有を目的として利用されているとは、到底いい難い。 以上によれば、本件使用裁決に基づく使用権は、建物もしくは構築物の所有を目的としているとはいえない。 更に、所得税法七九条一項一号の土地の価額とは、通常の取引価格をいうところ、本件補償金は、本件各土地の取引価格のおよそ四三パーセント程度にすぎず、右価額の一〇分の五を超えないから、本件には所得税法三三条一項の適用はない。 (三) 平均課税の適用(所得税法九〇条)所得税法は、居住者のその年分の変動所得の金額及び臨時所得の金額の合計額等(以下「平均課税対象金額」という。)が総所得金額の一〇〇分の二〇以上である場合には、課税総所得金額から、平均課税対象金額の五分の四に相当する金額を控除した金額(以下「調整所得金額」という。)をその年の課税総所得金額とみなして計算した税額と、課税総所得金額から調整所得金額を控除した金額(平均課税対象金額の五分の四)に調整所得金額に対する右の税額の割合(平均税率)を乗じて計算した金額との合計額が、その年の総所得金額に対する合計額とする、いわゆる平均課税方式を採用している。この制度は、要するに、変動所得及び臨時所得を五年間にわたって平準化するという考え方のもとに、その五分の一のみを他の所得と合算して、累進税率の適用に服せしめ、他の五分の四には平均税率を適用して累進税率の適用を緩和しようというものである。 そして、臨時所得とは、役務の提供を約することにより一時に取得する契約金にかかる所得等で、臨時に 税率の適用に服せしめ、他の五分の四には平均税率を適用して累進税率の適用を緩和しようというものである。 そして、臨時所得とは、役務の提供を約することにより一時に取得する契約金にかかる所得等で、臨時に発生する所得のうち政令で定めるものをいい、具体的には、専属契約によって支払いを受ける一時金のような臨時に発生する所得のうち政令で定める一定の要件を具備するものをいう(同法二条一項二四号、同法施行令八条)とされている。 本件損失補償金は、本件使用裁決がなければ、これを他に賃貸することなどにより得ることができたであろう不動産所得の補償として支払われたものと見ることができることから、所得税法施行令八条三号の規定する、「一定の場所における業務の全部又は一部を休止し、転換し又は廃止することとなった者が、当該休止、転換又は廃止により当該業務に係る」不動産所得の補償として支払われたということができ、かつ、三年以上の期間の、不動産所得の補償として受ける補償金にかかる所得に該当するものということができるから、同号に掲げる所得に類する所得に当たるものである。 したがって、被告は、原告らの不動産所得について、平均課税の規定を適用して、原告Aの不動産所得を八五一三万三四五五円、原告Bの不動産所得を二〇六一万六〇二三円と計算した。 (四) 合算課税の適用(所得税法九六条ないし一〇一条、ただし、昭和六三年の法改正により削除された。)資産所得合算課税の制度は、生計を一にする親族の中に資産所得(利子所得、配当所得、不動産所得)を有する者がいる場合には、これらの者の中で、資産所得以外の所得が最も多い者(主たる所得者)が、自己の所得のほかその他の親族(合算対象世帯員)の資産所得を有するものとみなして計算した所得金額に、一般の税率を適用して所得金額を算出し、これを主たる所得者の所 の所得が最も多い者(主たる所得者)が、自己の所得のほかその他の親族(合算対象世帯員)の資産所得を有するものとみなして計算した所得金額に、一般の税率を適用して所得金額を算出し、これを主たる所得者の所得金額及び合算対象世帯員の資産所得に応じて案分した金額を、それぞれの納付すべき税額として課税するものである。ただし、主たる所得者の所得金額及び合算対象世帯員の資産所得額の合計金額から、これらの者にかかる雑損控除の対象となる損失の金額とこれらの者の支払った医療費控除の対象となる医療費の金額との合計額を控除した金額(以下「所得合計額」という。)が一五〇〇万円以下である場合には、資産所得の合算課税の規定は適用されないものとされている。 原告らは、生計を一にする夫婦であるが、本件損失補償金として原告Aが受領した九四五九万二七二八円及び原告Bが受領した二二九〇万六六九二円は、いずれも昭和六二年分の総収入金額に算入されるべきものであるところ、確定申告にかかる不動産所得の必要経費の金額を控除し、更に、原告Aについては事業所得の損失の額を控除して、原告らの総所得金額を計算すると、原告Aの総所得金額は七九六二万四八七五円、原告Bの総所得金額は二〇六一万六〇二三円となり、原告A及び原告Bには、雑損控除の対象となる損失の金額及び医療費控除の対象となる医療費の金額はないため、その合計額は一五〇〇万円を超えることとなり、原告らの昭和六二年分の所得金額の計算においては、資産所得の合算課税の規定を適用すべきこととなる。 以上から、被告は、原告らの所得税額に合算課税を適用し、納付すべき税額を、原告Aについて二七一六万六〇〇〇円、原告Bについて六七九万一五〇〇円と計算した。 (五) 更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分原告らの昭和六二年分の所得税額は、右のとおり合算課税の き税額を、原告Aについて二七一六万六〇〇〇円、原告Bについて六七九万一五〇〇円と計算した。 (五) 更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分原告らの昭和六二年分の所得税額は、右のとおり合算課税の規定を適用して計算すべきところ、原告らの行った本件確定申告は、同規定を適用したものでなかったため、被告は同規定を正しく適用して所得税額を計算し、原告らに対し、納付すべき税額について、前記計算のとおり更正処分を行い、更に、原告Aに対し三三万三〇〇〇円、原告Bに対し三九万六〇〇〇円の過少申告加算税の賦課決定処分を行った。 第三争点に対する判断一まずはじめに、本件補償金の全額を原告らの昭和六二年分の所得として計上し得るか否かについて検討する。 1 権利確定主義所得税法にいう所得とは、各人が収入等の形で新たに取得する経済的価値、すなわち経済的利得を意味し、これは、財貨の譲渡もしくは役務の提供の対価である収入(収益)から、財貨の譲渡もしくは役務の提供に要した必要経費(費用)を控除したものである。 このように、収入から必要経費その他の金額を控除して所得が計算されるが、この所得がどの年分に帰属するかという問題は、結局、収入がどの年分に帰属するかという問題に帰着する。 そして、収入がどの年分に帰属するかについては、現実に収入があった時点を基準とする考え方(現金主義)と、現実の収入がなくても所得が発生した時点を基準とする考え方(発生主義)とがある。 ところで所得税法は、三六条一項において、「その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額」と定めている。 そして、ここにいう「その年において収入すべき金額」とは、その年において収入すべきことが確定し、相手方にその支払 べき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額」と定めている。 そして、ここにいう「その年において収入すべき金額」とは、その年において収入すべきことが確定し、相手方にその支払いを請求し得ることとなった金額をいうのであり、所得税法は、広義の発生主義のうち、いわゆる権利確定主義を採用したものであると解されている。 このように、所得税法が、収入の帰属時期につき、現金主義によらず、権利確定主義を採用した理由は、今日の経済取引においては、信用取引が支配的であり、たとえ現実の収入がなくても、収入すべき権利が確定すれば、その段階で所得の実現があったと考えるのが合理的であり、また、現金主義のもとでは、租税を回避するため、収入の時期を先に引き延ばし、あるいは人為的にその時期を操作する傾向が生じやすいことから、収入の原因となる権利の確定した時期をとらえて課税することとしたものである。 そして、権利の確定した時期とは、財貨の譲渡や役務の提供などにより債権が確定した時期であると解すべきである。 したがって、本件補償金を当該年分の収入として計上するか否かは、本件補償金が生ずる原因となった強制使用裁決の性質、内容、その他の法律上、事実上の諸条件等を具体的に総合考慮し、財貨の譲渡や役務の提供の有無について検討する必要がある。 2 強制使用裁決の効力駐留米軍の用に供するため土地を強制使用する場合には、米軍用地収用特措法一四条により、同法に特別の定めのある場合を除くほかは、土地収用法が適用されるところ、土地収用法によれば、起業者は、権利取得裁決において定められた権利取得の時期までに、権利取得裁決にかかる補償金を支払わねばならず(同法九五条一項)、右時期までに補償金を支払わない場合は、権利取得裁決はその効力を失い、取り消されたものとみなされる(同法 られた権利取得の時期までに、権利取得裁決にかかる補償金を支払わねばならず(同法九五条一項)、右時期までに補償金を支払わない場合は、権利取得裁決はその効力を失い、取り消されたものとみなされる(同法一〇〇条一項)。 そして、起業者は、土地を使用するときは、権利取得裁決において定められた権利取得の時期に、裁決で定められたところにより、当該土地を使用する権利を取得し、当該土地に関するその他の権利は、使用の期間中は、行使することができないのであり(同法一〇一条二項9、右補償金の支払い等の義務が履行される限り、裁決で定められた期間中の使用権阻が確定的に取得されることとなる。 また、裁決後に生じた滅失又はき損の危険は、起業者が負担すべきものと規定されている(同法一〇三条)。 3 本件使用裁決による補償金額の算出方法一般に、使用裁決に伴う補償金額は、使用される土地及び近傍類地の地代及び借賃等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とされており(土地収用法七二条、七一条)、公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱一九条は、使用する土地に対しては、正常な地代又は借賃をもって補償するものとしており(一項)、右正常な地代又は借賃は、使用する土地及び近傍類地の地代又は借賃に、これらの土地の使用に関する契約が締結された事情、時期及び権利の設定の対価を支払っている場合においてはその額を考慮して適正な補正を加えた額を基準とし、これらの土地の前記要綱八条の規定により算定した正常な取引価格、収益性、使用の態様等を総合的に比較考量して算定するものとする(右要綱一九条三項)とされている。 そして、甲一号証、証人Cの証言及び弁論の全趣旨によれば、沖縄県収用委員会は、本件土地について、損失補償金を算定する 態様等を総合的に比較考量して算定するものとする(右要綱一九条三項)とされている。 そして、甲一号証、証人Cの証言及び弁論の全趣旨によれば、沖縄県収用委員会は、本件土地について、損失補償金を算定するに当たり、まず、不動産鑑定士に原告らの土地の当時の時価及び適正賃料を鑑定させ、その鑑定の結果を尊重し、更に、近傍類地の賃料、従前の補償金額、申請者である国の申立て金額等を考慮してその補償金額を決定したことが認められ、使用裁決書(甲一号証)には、本件土地の損失補償金については、「鑑定人の評価額、近傍類地の賃料、従前の使用裁決の際の補償金、現地調査の結果等を総合勘案し、中間利息の控除率については現在の経済情勢等を考慮して年三パーセントと定め、ライプニッツ式算出方法により算出し」たと記載されている。 4 本件土地の使用態様甲一号証、乙一三、一四号証、一五号証の一ないし五、一六号証の一、二及び弁論の全趣旨によれば、本件土地の使用裁決において決定された使用目的は、「日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の空対地射爆撃訓練場用地として使用する」とされているところ、本件使用裁決の対象となった原告らの所有する本件土地は、沖縄県国頭郡<地名略>北西部の伊江島補助飛行場内に存し、他の反戦地主及び契約地主の土地と一体となって、現実に、米軍基地射爆撃場として利用されていることが認められる。 5 補償金の支払い時期昭和四二年法律第七五号による削除前の米軍用地収用特措法一〇条によれば、一年を超える土地の補償金は、これを一年ごとに分割して支払うことができるとされている。 しかし、確実に補償金の全額を取得するという被使用者の権利強化等の観点から、右規定が削除され、現在では、権利取得裁決にわいて定められた権利取得の時期までに補償金の全額を支払わねばならないとされている(土地収用 実に補償金の全額を取得するという被使用者の権利強化等の観点から、右規定が削除され、現在では、権利取得裁決にわいて定められた権利取得の時期までに補償金の全額を支払わねばならないとされている(土地収用法九五条一項)。 なお、契約地主と国との間の賃貸借契約の期間は一年であり、賃料は、一年ごとに支払われている。 6 補償金の返還について土地収用法一〇五条一項は、「起業者は、土地を使用する場合において、その期間が満了したとき、又は事業の廃止、変更その他の事由に因って使用する必要がなくなったときは、遅滞なく、その土地を土地所有者又はその承継人に返還しなければならない。」と定め、また、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定二条三項は、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。」と定め、米軍用地収用特措法八条は、「土地等を使用し、又は収用する必要がなくなったときは、防衛施設局長は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に報告しなければならない。」(一項)、報告を受けた内閣総理大臣は、「土地等の使用又は収用の認定が将来に向ってその効力を失う旨を官報で告示しなければならない。」(二項)と規定していることから明らかなように、米軍用地収用特措法に基づく強制使用においても、強制使用期間満了前に使用土地が返還されることが法的に予定されているものである。 ところが、裁決の定めた使用期間の中途で土地が返還された場合に、土地所有者が、既に受領している、右返還のとき以降の使用期間に対応する損失補償金の返還が必要か否かについては、明文の規定を欠いており、この点については、米軍用地収用特措法、土地収用法等の趣旨、 に、土地所有者が、既に受領している、右返還のとき以降の使用期間に対応する損失補償金の返還が必要か否かについては、明文の規定を欠いており、この点については、米軍用地収用特措法、土地収用法等の趣旨、不当利得等の法理などを考慮の上、解釈により決していくことになる。 そして、調査嘱託の結果及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 学校法人嘉数学園は、沖縄県国頭村<地名略>(原野、二万八八三五平方メートル)の土地のうち、共有持分一〇分の六を所有していたところ、平成四年二月一二日付けで、同年五月一五日から平成七年五月一四日までの期間について、使用裁決がなされ、平成四年四月一〇日、右補償金として、七三五万七四二六円を受領した。 ところが、使用期間の中途である平成五年六月二四日、那覇防衛施設局長から、右土地を使用する必要がなくなったとして、同年七月一日に右土地を返還する旨の通知があり、その際、同年七月一日から平成七年五月一四日までの期間を土地の未使用期間として、その期間に対応する金額の返還を求められた。 右金額の具体的な算出方法は、以下のとおりである。 (1) 平成四年二月一二日の沖縄県収用委員会の裁決に基づく土地単価に使用面積を乗じた額(年額)に、裁決と同じ年利率三パーセントによる使用期間一年一か月一七日の複利年金原価率一・〇九三八を乗じ、使用認定告示日(平成二年八月二二日)における損失補償金額二七三万九八五五円を求める。 (2) 右認定告示日における損失補償金額二七三万九八五五円に、土地収用法七一条に基づく権利取得裁決時までの物価変動率に応じる修正率一・〇三八四を乗じた額二八四万五〇六五円を、使用期間に相当する損失補償金額とし、既払補償金額七三五万七四二六円から右二八四万五〇六五円を差し引いた四五一万二三六一円を、返還すべき金額とする。 以 一・〇三八四を乗じた額二八四万五〇六五円を、使用期間に相当する損失補償金額とし、既払補償金額七三五万七四二六円から右二八四万五〇六五円を差し引いた四五一万二三六一円を、返還すべき金額とする。 以上の事実は、たとえ一定期間分の損失補償金を受領していたとしても、その期間中に土地の使用が不要になり、その返還を受けた場合には、残存期間に対応する補償金を返還することになることを示しており、その意味では、右返還にかかる補償金は、残存期間が経過しない間は、収入としては未確定であったということができる。 7 通達の存在(一) 不動産所得における支払日基準の採用課税実務においては、地代、家賃等の不動産所得の総収入金額は、契約等により支払日が定められているものについてはその支払日、支払日が定められていないものについてはその支払を受けた日を収入すべき時期とすることとされている(所得税基本通達三六-五(一)、いわゆる「支払日基準」の採用)。 (二) 個別通達における時間基準の採用ところで、不動産所得のうち、不動産等の賃貸料にかかる収入金額は、前記基本通達三六-五によれば、原則として契約上の支払日の属する年分の総収入金額に算入されることになるが、個別通達において、その例外として、不動産等の貸付けが事業的規模で行われている場合で、(1)不動産所得を生ずべき業務にかかる取引について、帳簿書類を備えて継続的に記帳し、その記帳に基づいて、不動産の金額を計算していること、(2)その者の不動産等の賃貸料にかかる収入金額の全部について、継続的にその年中の貸付期間に対応する部分の金額をその年分の総収入金額に算入する方法により所得金額を計算しており、かつ、帳簿上当該賃貸料にかかる前受収益及び未収収益の経理が行われていること、(3)その者の一年を超える期間にかかる賃貸料収入に 額をその年分の総収入金額に算入する方法により所得金額を計算しており、かつ、帳簿上当該賃貸料にかかる前受収益及び未収収益の経理が行われていること、(3)その者の一年を超える期間にかかる賃貸料収入については、その前受収益又は未収収益についての明細書を確定申告書に添付していること、以上の要件に該当するものは、所得税法六七条の二の適用を受ける場合を除き、その賃貸料にかかる貸付期間の経過に応じ、その年中の貸付期間に対応する部分の賃貸料の額を、その年分の不動産所得の総収入金額に算入すべき金額とすることができる旨定めている(個別通達「不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額の計上時期について」(昭和四八年一一月六日付け直所二-七八通達))。 (三) 事業所得における時間基準の採用また、事業所得において、資産の貸付けによる賃貸料で、その年に対応するものにかかる収入金額については、その年の末日をもって総収入の金額とすべきことを定めている(前記基本通達三六-八(六))。 (四) 返還を要しない金銭の取扱いまた、所得税基本通達三六-七において、不動産の貸付けに伴い、敷金、保証金等の名目により収受する金銭について、その収入計上時期を定めている。 すなわち、貸付期間の経過に応じて返還を要しないこととなる部分の金額がある場合における当該返還を要しないこととなる部分の金額については、当該貸付けにかかる契約に定められたところにより当該返還を要しないこととなった日の属する年分の不動産所得の金額の計算上総収入金額に算入するとしている(同基本通達三六-七(二))。 8 検討(一) 本件補償金の法的性質(1) 被告は、本件補償金は、国が期間を一〇年間とする駐留米軍用地としての使用権を取得することの対価として、かつ、本件土地を使用できなくなったことにより生じる原告らの (一) 本件補償金の法的性質(1) 被告は、本件補償金は、国が期間を一〇年間とする駐留米軍用地としての使用権を取得することの対価として、かつ、本件土地を使用できなくなったことにより生じる原告らの損失に対する確定した補償として支払われたものとみるべきであると主張する。 (2) しかしながら、前記のとおり、本件土地は、他の反戦地主や、契約地主の土地と一体となり、駐留米軍の軍用地として使用されているものであり、土地収用法の使用裁決に基づき使用権限を取得した原告らの土地と、賃貸借契約に基づいて使用する契約地主の土地について、米軍の利用形態に何らの違いが存するわけではない。 (3) また、一般に、土地の使用において、所有者がなす最も中心的な役務は、当該土地を使用者に使用、収益させることであるが、本件のような強制使用裁決においては、土地所有者の意思に反して強制的に使用権を設定することから、所有者と起業者との間で、私法上の合意により、所有者において、起業者に使用収益させる義務は生じないものの、土地収用法一〇一条二項によれば、起業者は、強制的に、当該土地を使用する権利を取得し、所有者は、強制的に右使用を受忍する義務を負わされ、その他の権利を行使することはできなくなるのであるから、使用裁決においても、少なくとも、国の使用を妨害しないで国の使用を容認するという限度において、役務の提供を観念することができる。 (4) そして、原告らの補償金は、前記3認定のとおり、土地収用法七二条に基づいて、当該土地の賃料相当額を鑑定等により求め、それらを参考にして、中間利息等を控除して算出したものであり、右算出方法、同法七一条との対比等を考慮すれば、本件補償金は、本件土地についての、使用期間に対応した使用の対価を損失としてとらえ、これを補償するものということができる。 ( 除して算出したものであり、右算出方法、同法七一条との対比等を考慮すれば、本件補償金は、本件土地についての、使用期間に対応した使用の対価を損失としてとらえ、これを補償するものということができる。 (5) 更に、土地収用法において、契約期間の中途で土地が返還された場合についての補償金の返還の有無について定めた規定はないが(なお、被告の主張する同法一〇三条は、公平の原則より滅失、き損についての危険負担を定めた規定であり、中途返還の場合の補償金の返還とは関係ない。)、前記6認定のとおり、実際に、土地を所有者に対し、強制使用期間の中途で返還した場合、補償金の一部返還を要求した事例が存し、しかも、その際の返還要求額の算出方法は、使用裁決における期間のうち、未使用期間に対応する割合の損失補償金について返還を求めていることが認められる。これは、国においても、右のような中途返還の場合については、損失補償金の返還請求権が発生するとの立場に立っていることを示すものである。 この点について、被告は、起業者と地権者との間に新たな合意が形成され、この合意に基づいて金員の返還がされたものであり、損失補償金についての返還請求権を認めた事例ではない旨主張するが、調査嘱託の結果によれば、「慶佐次通信所に所在する嘉数学園所有土地に係る補償金の返納について」と題する書面において、「貴園所有の土地について、使用期間途中において使用する必要がなくなったので、未使用分(平成五年七月一日から平成七年五月一四日までの一年一〇か月一四日分)の損失補償金については返納してもらうことになる。」、「当局から貴園に対し、財産返還通知書の発出がなされた後、貴園は当局から納入告知書の記載のとおり返納金を返納してもらうことになる」との記載が見られることからすれば、右は地権者との間で補償金の一部返還に 局から貴園に対し、財産返還通知書の発出がなされた後、貴園は当局から納入告知書の記載のとおり返納金を返納してもらうことになる」との記載が見られることからすれば、右は地権者との間で補償金の一部返還について新たな合意を形成するものではなく、未使用期間に対応する損失補償金について、返済請求権を行使したものとみるのが自然である。 (6) また、前記のとおり、かって補償金の支払時期は、一年ごとであったところ、その後の改正で金額を一括して支払わねばならなくなったが、これは、土地所有者が、事前に一括して金額の支払を受けるという権利強化を図ったものであって、補償金の性質は、何ら変更されていないと考えられるところ、一年ごとに支払うこと自体、土地使用の対価たる性質であることを裏付けるものである。 (7) 以上からすれば、本件補償金は、原告らがその所有する土地を一定期間国に使用させるという役務を提供することにより、その期間に対応する対価として支払われたもの、すなわち土地使用の対価であると解すべきである。 したがって、本来原告らに対する補償金は、原告らの役務の提供をまってはじめて収益が発生し、使用期間が経過するにしたがって発生していくものであり、また、その時点で権利が確定していくと解すべきである。ところで、本件において、原告らが補償金を現実に受領した時点では、原告らは役務の提供(国に土地を使用させること)を全く行っておらず、原告らは、いまだ役務を提供していない段階で、その対価だけを先に受領したものである。本件補償金が、確定的に原告らの収入としてとらえられるのは、使用期間の経過により、原告が国に対し現実に役務を提供し、補償金について経過に応じて確定した返還不要部分であると考えられ、中途で本件土地が返還されれば、右補償金のうち、返還日以降の日数に対応する部分は、国 の経過により、原告が国に対し現実に役務を提供し、補償金について経過に応じて確定した返還不要部分であると考えられ、中途で本件土地が返還されれば、右補償金のうち、返還日以降の日数に対応する部分は、国に補償金の返還請求権が認められると解される。 したがって、原告らの昭和六二年分の所得は、同年一二月三一日おいて、使用期間が経過し、実際に使用された同年五月一五日から同年一二月三一日までの期間に対応する金額が計上され、昭和六三年一月一日以降の期間に対応する補償金は、土地使用という役務の提供の対価の前受金たる性質を有するものと解すべきである。 (二) 通達との関係本件補償金は、原告らがその所有する土地を国に使用させるという役務の提供に対する対価として支払われたものであると解すれば、その所得区分は、不動産の貸付けによる所得(所得税法二六条一項)として不動産所得に該当する。 ところで、前記のとおり、不動産所得については、支払日基準を採用しているところ、本件補償金は、裁決書においては支払日は明示されていないものの、土地収用法の規定上、昭和六二年五月一五日の権利取得時までには補償金が支払われることは明らかである(現に、原告らは、同年三月二五日に補償金を受領している。)ので、昭和六二年分として、補償金全額が課税対象とならないかが一応問題となる。 継続的な役務の提供に対する収益については、役務の提供に応じて収益が発生するのであるから、収入金額の計上時期については、本質的には、発生主義、実現主義の観点からみれば、合理的な企業会計基準としての時間基準が妥当するところである。 現に、企業会計を前提とした法人税の計算においては、継続的役務提供にかかる収益については、会計慣行における実現主義的観点を取り入れ、原則として期間計算の方法により損益を計上することにしている。 基本 現に、企業会計を前提とした法人税の計算においては、継続的役務提供にかかる収益については、会計慣行における実現主義的観点を取り入れ、原則として期間計算の方法により損益を計上することにしている。 基本通達三六-五が右のような期間計算の考え方を採用していないのは、企業会計を前提とした法人税の所得計算と、個人の所得税においては、所得計算の目的が必ずしも同一ではないので、直ちに企業会計を前提とした考え方は導入されるものではないことや、個人の場合には、法人と異なり、継続的記帳を前提とした所得計算が採りにくいことなどを理由とする。 しかし、事業所得に該当する資産の貸付けや、不動産所得であっても、不動産の貸付けを事業的規模で行っている場合のように、法人税との類似性が認められる場合で、しかも時間基準を用いても、課税計算が特に煩雑にならない一定の場合には、時間基準を採用することとしており、場合によっては、より合理的な時間基準を採用して所得を計算する余地があるものと解される。 私人間の通常の賃貸借等においては、毎月あるいは一年ごとに賃料が支払われる場合が通常であるところ、そのような事例においては、支払日基準を採用しても、課税年分においてそれほど異なることはなく、実際上の不利益は小さいものと考えられる。 ところが、本件において、原告らの所得について、支払日基準を採用して補償金の金額について支払日の帰属する年分の課税とすれば、累進課税制度を採用する現行税制下においては、被告の主張するように平均課税を適用して所得をある程度平準化し、累進税率の適用を緩和したとしても、なお、国から一年ごとに賃料を受け取っている契約地主との間で課税額に著しい不均衡が生じることとなる。 前記のとおり、補償金の支払い時期は、土地収用法によって一括前払いが規定されているため、通常の契約と異なり から一年ごとに賃料を受け取っている契約地主との間で課税額に著しい不均衡が生じることとなる。 前記のとおり、補償金の支払い時期は、土地収用法によって一括前払いが規定されているため、通常の契約と異なり、原告らには、本件補償金の受領時期及び方法については選択の余地は全くなく(前記のとおり、以前は、一年を超える長期にわたる補償金についても、一年ごとに支払う方法が認められていたところ、土地所有者の保護の観点から、廃止された。)、本件について、硬直的に支払日基準を採用し、補償金全額に一括して課税することは、課税の公平の観点から許されるものではない。 被告は、仮に、原告らに、租税の公平負担の原則と相いれない状況があったとしても、原告らは、所得税法一五二条等によって、更正の請求ができるのであり、事後的に課税の是正を図ることができる旨主張するが、前記のとおり、右課税自体が違法である以上、事後的に更正の請求ができるからといって、これを適法なものと解すことはできない。 そして、本件補償金の法的性質を考えれば、むしろ前記基本通達三六-七(二)の趣旨があてはまる場面であると考えられる。 すなわち、同通達は、不動産の貸付けに伴い、敷金や補償金として賃貸人に提供される金額のうち、一定期間を経過すれば、その全部又は一部が賃貸人に帰属することが取り決められているものについては、その実質が権利金や更新料と変わらず、不動産所得の収入金額となるものであるが、その計上時期については、返還を要しないことが確定した都度、その確定した金額を収入金額として計上すべきことを明らかにしたものである。 前述のとおり、本件土地が、期間満了前に中途で返還された場合は、未使用期間に相当する割合の補償金は、返還することを要し、その反面、使用期間に対応する割合の補償金については、返還を要しないこととな 。 前述のとおり、本件土地が、期間満了前に中途で返還された場合は、未使用期間に相当する割合の補償金は、返還することを要し、その反面、使用期間に対応する割合の補償金については、返還を要しないこととなるのであるから、その返還を要しなくなった補償金は、右基本通達三六-七(二)にいう、敷金等のうち返還を要しないこととなる部分の金額と実質的に類似性が認められる。 そうすれば、本件補償金について、使用期間の経過に応じて収益が発生し、その時点で権利が確定していくと考え、当該年分の使用期間に応じた部分を収入として計上することと、右基本通達三六-七(二)により、敷金等について、当該貸付けにかかる契約に定められたところにより、当該返還を要しないこととなった日の属する年分の収入に計上することとの間には、十分整合性が認められる。 (三) 以上から明らかなように、本件補償金について、その全額を昭和六二年分の所得として計上することは、収入の計上時期を誤った違法なものであり、許されない。 二結論以上から、明らかなように、原処分は、本件補償金の全額を、原告らの昭和六二年分の不動産所得として総収入金額に算入して計算した本件更正処分等を、適法妥当なものとしたものであり、その余の点を判断するまでもなく違法といわなければならず、よって、主文のとおり判決する。
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