平成11(ワ)948 預金返還請求

裁判年月日・裁判所
平成15年1月27日 神戸地方裁判所
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判決文本文10,389 文字)

判決平成15年1月27日神戸地方裁判所平成11年(ワ)第948号預金返還請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 第1 当事者の求める裁判 1 原告(請求の趣旨)(1) 被告は,原告に対し,次の金員を支払え。 ア 3690万1617円,及びこれに対する平成4年8月5日から平成11年5月24日まで年3.75%の割合による金員,平成11年5月25日から完済まで年6分の割合による金員イ 5598万7793円,及びこれに対する平成4年12月22日から平成11年5月24日まで年3.45%の割合による金員,平成11年5月25日から完済まで年6分の割合による金員(2) 訴訟費用は被告の負担とする。 (3) この判決は仮に執行することができる。 2 被告(請求の趣旨に対する答弁)主文と同旨第2 当事者の主張 1 原告(請求原因)(1) 当事者原告は建築請負を業とする者であり,被告は銀行である。被告は,平成11年4月1日,甲銀行を合併した。甲銀行は,平成8年1月29日,乙銀行から,営業の全てを譲り受けた。 (2) 定期預金の預け入れア甲1定期預金原告は,平成4年8月4日,乙銀行丙支店において,3690万1617円を利率年3.75%の定期預金(以下「甲1定期預金」という。)として預け入れた(甲1)。 イ甲2①~④定期預金原告は,平成4年12月21日当時,乙銀行丙支店において,原告の父a名義で,次のとおり合計5598万7793円を,利率年3.45%の定期預金として預け入れていた( イ甲2①~④定期預金原告は,平成4年12月21日当時,乙銀行丙支店において,原告の父a名義で,次のとおり合計5598万7793円を,利率年3.45%の定期預金として預け入れていた(甲2)。 (ア) 900万2017円(以下「甲2①定期預金」という。)(イ) 1698万6085円(以下「甲2②定期預金」という。)(ウ) 1500万円(以下「甲2③定期預金」という。)(エ) 1499万9691円(以下「甲2④定期預金」という。)(3) 結論よって,原告は,被告に対し,本件定期預金契約に基づき,次の各金員の支払を求める。 ア甲1定期預金3690万1617円,及びこれに対する平成4年8月5日から平成11年5月24日(訴状送達の日)まで年3.75%の割合による約定利息金,平成11年5月25日から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金イ甲2①~④定期預金5598万7793円,及びこれに対する平成4年12月22日から平成11年5月24日(訴状送達の日)まで年3.45%の割合による約定利息金,平成11年5月25日から完済まで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金 2 被告(請求原因に対する認否)(1) 請求原因(1)(当事者)は認める。 (2) 請求原因(2)(定期預金の預け入れ)のうち,甲2①②定期預金の利率を否認し,その余は認める。 3 被告(抗弁)甲1定期預金3690万1617円,甲2①~④定期預金5598万7793円については,別紙1,別紙2①~④記載のとおり,原告名義,A建設㈱名義(原告個人会社),A建設工業㈲名義(原告個人会社),A建設・b(原告妻)名義,Hエンタープライズ・c 期預金5598万7793円については,別紙1,別紙2①~④記載のとおり,原告名義,A建設㈱名義(原告個人会社),A建設工業㈲名義(原告個人会社),A建設・b(原告妻)名義,Hエンタープライズ・c(原告)名義,a(原告父)名義の各預金口座を経由して,入出金が繰り返されている。 これによれば,原告が本訴で支払請求をしている定期預金合計9280万円については,現金支払分として約2570万円,振込分として約2150万円,交換払分として約2900万円,貸付金返済分として約2170万円(以上合計約9790万円)が最終的に出金されているのであり,いずれも原告の意思に基づき適法な処理によって返還手続が完了している。 4 原告(抗弁に対する認否,反論)(1) 抗弁は否認する。 (2) 乙銀行丙支店の行員であったdは,原告の当座預金の残高不足のときに普通預金口座から入金するためと原告を偽って,予め署名押印させた預金払戻請求書を使用して,貸付金を含めた原告の預金を無断で払い戻し,定期預金として預金したり,再び解約・払戻しをしたりすることを繰り返していた。 (3) dは,原告に予め署名・押印させた払戻請求書が手元にないときは,届出印の押印のいらない「違例出金」を行っていた。dは,引き出した預金を,多人数名義の定期預金にしたり,多額の定期積金にしたりしている。dがこれらの行為を多数回行っているうちに,乙銀行丙支店の他の行員も,それらの行為が許されるものと思って,同様の行為を行うようになっていったものと思われる。 (4) 乙銀行丙支店での取引について,あまりにも違例取扱いによる出金が多く,銀行実務の鉄則に違反することからも,別紙1,別紙2①~④の出金手続等は,原告の意思に基づかないものであることが裏付けられる。 での取引について,あまりにも違例取扱いによる出金が多く,銀行実務の鉄則に違反することからも,別紙1,別紙2①~④の出金手続等は,原告の意思に基づかないものであることが裏付けられる。 理由 第1 争いのない事実請求原因(1)(当事者),同(2)(定期預金の預け入れ)(ただし,甲2①②定期預金の利率を除く)は,当事者間に争いがない。 第2 事実の認定前記第1の争いのない事実に,証拠(甲1~33〔枝番を含む〕,甲35~57〔枝番を含む〕,甲62~95〔枝番を含む〕,甲96・97〔一部〕,乙1~290〔枝番を含む〕,乙292~315。なお,証人dの証言によると,原告が成立を否認している書証についても成立が認められる。証人dの証言,原告本人の供述〔一部〕),及び弁論の全趣旨によると,次のとおり認めることができる。 1 事案の概要(1) 原告は,当初,原告が個人として建設業を営んでいた関係で,乙銀行(丙支店扱い)との間で,貸付取引及び預金取引を開始した。 原告は,その後,税金対策等の理由から,平成2年2月,A建設工業㈲(代表取締役が原告)を設立し,平成4年5月,個人企業であるHエンタープライズを設立し,平成4年6月,A建設㈱(代表取締役がb〔原告妻〕,取締役が原告及びa〔原告父〕)を設立した。そして,原告は,これらの会社名義やa名義でも,乙銀行丙支店で預金取引をしている。 これらの会社は,いずれも建設業を目的とするものであり,相互に当座決済資金や営業資金等を融通しあう関係にあり,a名義の預金についても同様であった。 (2) 原告が本訴で請求する甲1定期預金,甲2①~④定期預金についても,別紙1,別紙2①~④記載のとおり,原告(前記各企業)の営業資金や原告 う関係にあり,a名義の預金についても同様であった。 (2) 原告が本訴で請求する甲1定期預金,甲2①~④定期預金についても,別紙1,別紙2①~④記載のとおり,原告(前記各企業)の営業資金や原告の借入金の返済などとして使用されているのである。 この甲1定期預金3690万1617円,甲2①~④定期預金5598万7793円の預入れ,払出手続きは,平成4年8月4日から平成5年5月7日にかけて,乙銀行丙支店の行員(dが多かった)が,原告から事前に電話連絡を受けたり,あるいは,原告の自宅やA建設の事務所等に出向いたりして,原告の個別具体的な指示を受けてなしたものである。 2 甲1定期預金の返還状況等(1) 預入れ原告は,平成4年8月4日,乙銀行丙支店で,原告名義で甲1定期預金3690万1617円を開設した(乙12)。甲1定期預金は,平成4年7月3日付け「乙銀スーパーローンエースカード(兼当座貸越契約)」に基づき,乙銀行から原告に対し融資された8000万円のうちの3900万円が原資となっている(乙37,38,156,157,305,312)(別紙1参照)。 (2) 払出手続ア原告は,平成4年9月4日,乙銀行丙支店で,原告名義の定期預金払戻請求書(乙158,違例取扱い)に基づき,甲1定期預金3690万1617円を払い出し,利息金(税金控除)を加算した3699万5641円でもって,次の各取引を行った(別紙1参照)。 (ア) 原告名義で3400万円の定期預金を開設(乙83,159)(イ) 原告名義で200万円の定期預金を開設(乙12,22,161)(ウ) 原告名義の普通預金口座に99万5641円を入金(乙160)イそして,上記甲1定期預金の払出手続(違例取 ) 原告名義で200万円の定期預金を開設(乙12,22,161)(ウ) 原告名義の普通預金口座に99万5641円を入金(乙160)イそして,上記甲1定期預金の払出手続(違例取扱い)については,直ちに,違例取扱いの補完手続として,原告の署名・押印のある定期預金払戻請求書(乙285)が同日付で徴収されている。 (3) 定期預金証書の回収未了乙銀行丙支店の担当者は,違例扱いの補完手続に際し,原告から定期預金証書(甲1)を回収するのを失念している。 しかし,甲1定期預金の払出金を原資として開設された3400万円の定期預金については,その満期による元利金の支払時点で,定期預金証書(乙83)が原告から回収されていて,その裏面には,元利金の受領を確認する原告の署名・押印がなされている。 したがって,甲1定期預金証書については,単なる回収漏れであることが明らかである。 3 甲2①~④定期預金の返還状況等(1) 始めに甲2①~④定期預金5598万7793円(甲2)については,平成2年5月24日に1000万円が入金され,平成4年12月21日に5598万7793円の最高残高となったが,原告はかかる時点の金額について返還請求をするものである。 そして,この5598万7793円の内訳は,①900万2017円(甲2①定期預金),②1698万6085円(甲2②定期預金),③1500万円(甲2③定期預金),④1499万9691円(甲2④定期預金)の4口の定期預金である。 (2) 甲2①定期預金ア預入れ原告は,B公庫からの借入金を原資として,平成4年11月30日,乙銀行丙支店で,a(原告父)名義で甲2①定期預金900万2017円を開設した 2①定期預金ア預入れ原告は,B公庫からの借入金を原資として,平成4年11月30日,乙銀行丙支店で,a(原告父)名義で甲2①定期預金900万2017円を開設した(乙268,別紙2①参照)。 イ払出手続原告は,平成4年12月28日,乙銀行丙支店で,a名義の署名押印のある定期預金払戻請求書(乙270)に基づき,甲2①定期預金900万2017円を払い出し,利息金(税金控除)を加算した900万4117円を,A建設㈱(原告の個人会社)名義の普通預金口座に入金している(乙271,別紙2①参照)。 (3) 甲2②定期預金ア預入れ原告は,C火災海上保険から受領した火災保険金を原資として,平成4年12月10日,乙銀行丙支店で,a(原告父)名義で甲2②定期預金1698万6085円を開設した(別紙2②参照)。 イ払出手続(ア) 原告は,平成5年1月15日,乙銀行丙支店で,a名義の甲2②定期預金1698万6085円を更新し,同人名義の定期預金1702万3017円(甲2②定期預金に利息金〔税金控除〕を加算)とした(別紙2②参照)。 (イ) 次いで,原告は,平成5年1月26日,乙銀行丙支店で,a名義の署名押印のある定期預金払戻請求書(乙95)に基づき,上記定期預金1702万3017円を中途解約し,利息金(税金控除)を加算した1702万5286円でもって,次の各取引を行った(別紙2②参照)。 a 原告がa名義で借り入れていた手形借入金1600万円及び同利息金5万5890円の合計1605万5890円の返済(乙263)ba名義で定期預金96万9396円を開設(乙264)(4) 甲2③定期預 入れていた手形借入金1600万円及び同利息金5万5890円の合計1605万5890円の返済(乙263)ba名義で定期預金96万9396円を開設(乙264)(4) 甲2③定期預金ア預入れ原告は,B公庫からの借入金を原資として,平成4年12月21日,乙銀行丙支店で,a(原告父)名義で甲2③定期預金1500万円(乙208)を開設した(別紙2③④参照)。 イ払出手続原告は,平成4年12月31日,乙銀行丙支店で,a名義の署名押印のある定期預金払戻請求書(乙210)に基づき,甲2③定期預金1500万円を払い出し,利息金(税金控除)を加算した1500万1249円でもって,次の2口の定期預金を開設している(別紙2③④参照)。 (ア) A建設・b(原告妻)名義で1000万円の定期預金(乙211)(イ) A建設・b(原告妻)名義で500万1249円の定期預金(乙233)(5) 甲2④定期預金ア預入れ原告は,B公庫からの借入金を原資として,平成4年12月21日,乙銀行丙支店で,a(原告父)名義で甲2④定期預金1499万9691円(乙209)を開設した(別紙2③④参照)。 イ払出手続(ア) 原告は,平成5年1月21日,乙銀行丙支店で,a名義の甲2④定期預金1499万9691円を更新し,同人名義の定期預金1503万4852円(甲2④定期預金に利息金〔税金控除〕を加算)とした(別紙2③④参照)。 (イ) 次いで,原告は,平成5年1月27日,乙銀行丙支店で,a名義の署名押印のある定期預金払戻請求書(乙243)に基づき,上記定期預金1503万4852円を中途解約し,利息 2③④参照)。 (イ) 次いで,原告は,平成5年1月27日,乙銀行丙支店で,a名義の署名押印のある定期預金払戻請求書(乙243)に基づき,上記定期預金1503万4852円を中途解約し,利息金(税金控除)を加算した1503万5605円でもって,次の各取引を行った(別紙2③④参照)。 aA建設・b名義で定期預金703万5605円を開設(乙244)bA建設㈱名義の普通預金口座に800万円を入金(乙245) 4 総括甲1定期預金3690万1617円,甲2①~④定期預金5598万7793円については,別紙1,別紙2①~④記載のとおり,原告名義,A建設㈱名義(原告個人会社),A建設工業㈲名義(原告個人会社),A建設・b(原告妻)名義,Hエンタープライズ・c(原告)名義,a(原告父)名義の各預金口座を経由して入出金が繰り返されている。 これによれば,原告が本訴で支払請求をしている定期預金合計9280万円については,現金支払分として約2570万円,振込分として約2150万円,交換払分として約2900万円,貸付金返済分として約2170万円(以上合計約9790万円)が最終的に出金されているのであり,いずれも原告の意思に基づき適法な処理によって返還手続が完了している。 第3 前記認定の補足説明 1 資金移動の把握等(1) 原告は,建設業を個人又は法人名義で長年にわたり経営してきた者であり,当然,日々の売上,支払等について自己の資金繰りがどうなっているのか,特に当座取引については,万一の決済資金の不足による不渡事故を回避する必要から,現金と同様に預金等の残高についても常に把握していた筈である。 しかも,原告は,毎年の決算期における決算種類の作成に際しては,当然,乙銀行丙支店を通じて よる不渡事故を回避する必要から,現金と同様に預金等の残高についても常に把握していた筈である。 しかも,原告は,毎年の決算期における決算種類の作成に際しては,当然,乙銀行丙支店を通じて預金の残高照合を行い,資金の出入りについても確認しているから(原告本人調書27,28枚目),仮に不明朗な資金移動があれば気付く筈である。ところが,原告は,平成10年になって初めて不明朗な資金移動に気付いた,すなわち,約5年間も分からなかったという(原告はそのように主張している)。 しかし,そのようなことは,考えられないことである。すなわち,仮に,原告が主張するように,長年にわたり,乙銀行丙支店の行員(dら)が,原告に無断で頻繁かつ多額の金員を処理していたのであれば,原告は,直ちにそのことに気付くのが当然であり,5年間もそのことが分からなかったなどということは,あり得ないことである。 (2) 換言すれば,原告は,建設業を営んでいたのであるから,当然,日々の取引決済についての銀行預金の入出金を把握し,乙銀行からの残高照合表によって月々の預金の流れを把握し,年度毎の税務申告において,年間営業成績を明らかにするための資料等として作成する当座預金元帳等を通じて,年間の資金の流れを把握していた筈である。 したがって,乙銀行丙支店からの借入の事実や,乙銀行丙支店での頻繁かつ多額の金員の移動について,全く知らなかったなどということは,信じられないことである。 (3) 以上によると,別紙1,別紙2①~④の資金の流れについても,原告の意思に基づきなされたものと認めることができる。 2 原告の対応の不自然さ原告は,現在でも,甲1定期預金の原資である「乙銀スーパーローンエースカード(兼当座貸越契約)」8000万円は,被告丙支店の されたものと認めることができる。 2 原告の対応の不自然さ原告は,現在でも,甲1定期預金の原資である「乙銀スーパーローンエースカード(兼当座貸越契約)」8000万円は,被告丙支店の行員(dら)が,原告に無断で借入手続を行ったものであると主張して,被告を相手に,当裁判所平成10年(ワ)第2152号配当異議訴訟を提起し,これを維持・継続している。ところが,原告は,本訴では,被告に対し,上記借入金8000万円を原資とする甲1定期預金3900万円について,その返還を請求している。 この原告の対応の不自然さは極めて遺憾である。原告が甲1定期預金についてこのような矛盾した訴訟を遂行していることは,甲2①~④定期預金についての原告の主張の信憑性を判断するに際しても,当然考慮すべき一事情といえる。 3 定期預金の払戻しを請求しなかった理由原告が個人ないしは会社名義で営む建設業は,平成5年後半以降経営状態が悪化の一途をたどり,原告は,平成5年12月以降,乙銀行からの借入金の返済も遅滞し,平成6年1月には,不渡手形を出している。ところが,原告は,その後も平成10年になるまで,乙銀行に対し,甲1定期預金,甲2①~④定期預金の払戻しを一度も請求していない(乙290,証人d,原告本人〔一部〕)。 原告は,甲1定期預金,甲2①~④定期預金は,既に払戻していることを承知していたため,経済的に破綻した後も,乙銀行ないしは甲銀行に対し,長期間にわたり,これらの定期預金の払戻しを請求しなかったものである。 4 最終支払先(振込分,手形交換払分)の検討(1) 振込分甲1定期預金,甲2①③④定期預金の最終支払先中の振込分についてみるに,その振込・支払先は,原告が競売不動産を購入した際の神戸地方裁判所(別紙1, 交換払分)の検討(1) 振込分甲1定期預金,甲2①③④定期預金の最終支払先中の振込分についてみるに,その振込・支払先は,原告が競売不動産を購入した際の神戸地方裁判所(別紙1,別紙2③④),原告の電気代・ガス代(別紙1),原告の住宅ローンの借入先である乙銀行(別紙1),原告が指定したD設計・E証券・JCB(別紙1),原告が指定した㈱F・G(別紙2①)である。 これらの支払先への振込について,乙銀行丙支店の行員(dら)が,原告に無断で振り込んだなどということは,考えられないことである。原告がこれらの振込が行われた普通預金口座を管理し,原告の意思に基づきこれらの振込がなされたことが明らかである。ということは,その原資となった甲1定期預金,甲2①③④定期預金の支払手続についても,原告の意思に基づきなされたものと認めることができる。 (2) 手形交換払分甲1定期預金,甲2①③④定期預金の最終支払先中の手形交換払分は,原告が建設業を営み,乙銀行丙支店で,A建設㈱名義,Hエンタープライズ・c名義で当座預金を開設していた関係上,原告が振り出した手形・小切手の決済資金として使用されているものである(別紙1,別紙2①③④)。 乙銀行丙支店の行員(dら)が,原告が振り出した手形・小切手を決済するため,原告に無断で上記当座預金口座にその決済資金を振り込んだなどということは,考えられないことである。このように,原告の意思に基づき上記振込がなされたことが明らかである以上,その原資となった甲1定期預金,甲2①③④定期預金の払出手続についても,原告の意思に基づきなされたものと認めることができる。 5 預金払出における違例取扱いの検討(1) 原告の主張原告は,「乙銀行丙支店での取 ③④定期預金の払出手続についても,原告の意思に基づきなされたものと認めることができる。 5 預金払出における違例取扱いの検討(1) 原告の主張原告は,「乙銀行丙支店での取引について,あまりにも違例取扱いによる出金が多く,銀行実務の鉄則に違反することからも,別紙1,別紙2①~④の出金手続等は,原告の意思に基づかないものであることが裏付けられる。」と主張する。 (2) 検討しかし,証拠(甲59,乙80~95,乙290,証人d),及び弁論の全趣旨によると,次のように認定判断することができ,原告の前記(1)の主張は採用することができない。 ア違例扱いの意義銀行実務では,預金が預金者の依頼によって払い出される場合には,それが真実預金者の意思によるものであることを明らかにするために,預金通帳あるいは定期預金証書とともに,預金払戻請求書に預金者の署名と届出印鑑を押捺してもらうのが原則的取扱いである。 そして,例外的な取扱いとして,銀行は,払出時点で預金通帳や定期預金証書,更には,届出印鑑が具備しない場合でも,当該顧客との取引実態から判断して,後日不備取引の補完を前提として,払出に応じることもある。 このような違例取扱いにおいては,速やかに違例の補完を行うことが必要であり,補完作業としては,後日不足していた預金通帳の提示,預金証書の回収,更には,預金払戻請求書に当該顧客の署名及び届出印鑑の押捺を受けることになる。 イ原告との預金取引での違例扱い原告と被告担当者(dである場合が多かった。)との違例扱い処理による出金については,殆どが原告から被告担当者に電話による預金処理の依頼があり,被告担当者は,処理に要する通帳,印鑑が具 扱い原告と被告担当者(dである場合が多かった。)との違例扱い処理による出金については,殆どが原告から被告担当者に電話による預金処理の依頼があり,被告担当者は,処理に要する通帳,印鑑が具備しない場合には,違例承認票取扱規定(甲59)に従って,違例扱いによる処理を行い,当該処理後に,早急に補完手続を取るために,遅滞なく原告の自宅ないしは事務所に出向いて,届出印鑑の押印あるいは署名等をもらうというものであった。 別紙1,別紙2①~④の払戻手続においても,原則的な払出手続あるいは例外的払出による補完手続が実行され,全て補完種類が作成されているのであり,上記払戻手続は,全て原告の意思に基づくものである。 ウ届出印鑑や通帳の所持者そもそも,原告の届出印鑑や通帳を被告担当者(dら)が所持していたとすれば,違例扱いなどをする必要はなく,当初から届出印鑑,通帳によって原則的な払出手続をすれば足りる筈である。このように,乙銀行丙支店では,原告との預金取引に補完手続を取っていたこと自体,原告が預金印鑑や通帳を自ら所持していた何よりもの証拠である。そして,多数回にわたって行われた違例扱いについて,長年月何らトラブルが生じていなかったということは,補完手続を実行する際に,当該預金取引における入出金処理を原告自身が承諾していたことを物語っている。 何故ならば,補完手続には,原告の所持,保管している届出印鑑の押印が最低限必要であるところ,原告の協力なくしては補完書類の作成は不可能であり,しかも,原告が主張するように違例扱いが多数回,多額に上るというのであれば,多数回,多額に及ぶ当該補完書類の作成について,原告としても全く無関心ではいられず,当然,その理由を問いただすなり,それ以後は違例扱いをしないよ るように違例扱いが多数回,多額に上るというのであれば,多数回,多額に及ぶ当該補完書類の作成について,原告としても全く無関心ではいられず,当然,その理由を問いただすなり,それ以後は違例扱いをしないように要請する筈であるのに,このような事実は全くないからである。 第4 結論以上によると,原告が本訴で返還を求める定期預金は,全て原告に返還済みであることが認められ,したがって,原告の本件預金返還請求は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判官紙浦健二

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