昭和38(う)491 公職選挙法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和39年10月2日 仙台高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決中被告人等に関する部分を破棄する。      被告人Aを懲役五月に、      被告人Bを懲役四月に処する。      但し、被告人両名に対し本裁判確定の日から三年間右各

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判決文本文5,683 文字)

主文 原判決中被告人等に関する部分を破棄する。 被告人Aを懲役五月に、被告人Bを懲役四月に処する。 但し、被告人両名に対し本裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予する。 被告人Bから金一万七千円を追徴する。 当審における訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。 理由 本件控訴趣意は、弁護人佐藤邦雄名義の控訴趣意書の記載と同じであるから、これを引用する。 控訴趣意第一点(審判の請求を受けない事件について判決をし、または審理不尽の違法の主張)について。 被告人Aに対する昭和三八年八月二七日付起訴状記載の公訴事実第一の(一)の、同被告人が自己の当選を得る目的で、C、B、D、E等と共謀の上、昭和三八年七月二〇日頃同被告人の自宅で選挙人F外三〇名の選挙人に対し、一人当り一三六円相当の酒食の饗応接待をした旨の訴因に対し、原判決が右選挙人F外三〇名につき、別表で具体的にその氏名を特定して、右公訴事実と同旨の認定をしたことは所論のとおりである。論旨は、起訴状記載の右公訴事実において、単に選挙人F外三〇名と掲げたのみで、その三〇名の氏名を具体的に記載しないのは起訴状の重大な不備であり、原判決がこれを勝手に特定したことは結局審判の請求を受けない事件について判決をしたか、少くとも審理不尽の違法があると主張する。しかしながら、本件の如く当選を得る目的で多数の選挙人を同一の日時、場所で、酒食を提供する方法により饗応する行為は包括一罪をもつて論ずべきものであるから、訴因としては日時、場所、饗応の内容の記載がある以上、被饗応者の各自につき逐一その氏名を掲げることなく、被饗応者の氏名としてその中一名の者を掲げ、同人外三〇名としても包括一罪を構成すべき罪となるべき事実の特 ては日時、場所、饗応の内容の記載がある以上、被饗応者の各自につき逐一その氏名を掲げることなく、被饗応者の氏名としてその中一名の者を掲げ、同人外三〇名としても包括一罪を構成すべき罪となるべき事実の特定として欠けるものではないので、本件起訴状には重大な不備があるものとは認められない。しかし、このような場合原審としては、検察官に釈明して右三〇名を特定するのが望ましいことではあるが、それなくして原審が公判廷で異議なく取り調べられた証拠に基づき、右三〇名の氏名を具体的に特定して公訴事実と同旨の饗応の事実を認定したからといつて、それが所論の如く、審判の請求を受けない事件について判決をしたものといえないことはもちろん、審理不尽ともいえない。論旨は理由がない。 控訴趣意第二点(事実誤認の主張)について、原判決挙示の証拠によれば、被告人Aに関する原判示第一の(二)の(1)、および被告人Bに関する原判示第二の(二)の(1)の各事実はすべてこれを認めるに十分で、記録を精査しても原判決の右各事実認定に誤りがあるとは認められない。右の各事実は、被告人Aが自己の選挙運動を総括主宰する被告人Bに対し投票買収運動の報酬等として現金二万円を供与し、被告人Bが右供与を受けたという事実であるが、この前後において右両被告人が共謀の上他の選挙人に対し酒食の饗応(原判示第一の(一)、同第二の(一))、または現金供与(原判示第一の(二)の(2)、同第二の(二)の(3))をしていることは所論のとおりである。論旨は、右の如く被告人両名が共謀の上饗応、供与している事実からしても被告人等の本件二万円の授受は供与、受供与とみるべきではなく、共犯者間の金員授受、すなわち、被告人Aと同Bが共謀して選挙運動に使用しようとして被告人Aが被告人Bに二万円を預けたものとみることが、被告人等の真意に 件二万円の授受は供与、受供与とみるべきではなく、共犯者間の金員授受、すなわち、被告人Aと同Bが共謀して選挙運動に使用しようとして被告人Aが被告人Bに二万円を預けたものとみることが、被告人等の真意に合致すると主張する。しかしながら、原審公判廷で被告人等がいずれも証拠とすることに同意して取り調べられた被告人等の検察官に対する各供述調書(被告人Aにつき昭和三八年八月一四日付、被告人Bにつき同月一六日付)によれば、原判示選挙に立候補した被告人Aは、自己の選挙地盤に他の候補者の喰い込みを防止するための対策を被告人Bにとつて貰うよりほかはないと考え、そのためには同被告人にかなりの苦労をかけることにもなるので、その報酬も含めた趣旨で同被告人に対し本件の現金二万円を供与し、被告人Bも被告人Aの右意図を了知して右二万円の供与を受けた事実が認められるのみでなく、被告人等は原審第一回公判廷でも、右原判示と同旨の起訴状記載の公訴事実は全部その通り相違ない旨述べていることが明らかであるから、右事実の前後に被告人等が共謀の上他の有権者に対し饗応、供与の事実があつたとしても、本件につき被告人等に供与、受供与の事実を認定する妨げとなるものではない。論旨は理由がない。 職権をもつて調査するに、一、 原判決は被告人Bに関する原判示第二の(二)の(3)において、同被告人が昭和三八年八月二日頃Gに対し現金三千円を供与した事実を認定しているが、その供与の趣旨は、原判示選挙に立候補した被告人Aのための選挙運動を依頼し、前記趣旨のもとに供与したとあるので、原判示第二の(二)の(1)にあるように投票並びに投票取りまとめ等の選挙運動の報酬として供与したもの、すなわちいわゆる事前供与の事実を掲げたものとしか解されない。しかしながら、原判決が証拠にあげた被告人Bの検察官に対する昭和 あるように投票並びに投票取りまとめ等の選挙運動の報酬として供与したもの、すなわちいわゆる事前供与の事実を掲げたものとしか解されない。しかしながら、原判決が証拠にあげた被告人Bの検察官に対する昭和三八年八月一六日付供述調書と原審相被告人Gの検察官に対する昭和三八年八月一五日付供述調書(六枚綴りのもの)によれば、被告人BはGがA候補を当選さぜるため一生懸命選挙運動に従事したので、そのお礼の趣旨で、選挙期日の前日に三千円を供与し、Gも右趣旨を知つてこれを受けたもの、すなわちいわゆる事後供与の事実が認められ、さらに原判決が証拠にあげた被告人等の原審公判廷における供述にしても、原判示第二の(二)の(3)の事実に対応する被告人Bに対する昭和三八年八月二七日付起訴状記載の公訴事実第二の(二)の(3)および原審相被告人Gに対する起訴状記載の公訴事実はいずれも事後供与の事実が掲げられ、被告人BおよびGは原審公判廷で右公訴事実はいずれもその通り相違ない旨述べていることが明らかであつて、いわゆる事前供与の事実を認むべき証拠は存しない。また原判決は右事実に対する法令の適用においても、公職選挙法二二一条一項三号、三項を掲げ、いわゆる事後供与の罰則を適用している。してみれば、原判決は罪となるべき事実と証拠、さらに法令の適用との間に理由にくいちがいがあるものというべきであるから、原判決中被告人Bに関するこの部分は破棄を免れない。 <要旨>二、公職選挙法二二一条三頂にいう「公職の候補者」とは、同法の規定にもとづく正式の立候補届出または推薦</要旨>届出により候補者としての地位を有するに至つた者をいい、未だ正式の届出をしない、いわゆる「立候補しようとする特定人」を包含しないものと解すべく(昭和三五年二月二三日最高裁判所第三小法廷判決参照)、また同項にいう「選挙運動 地位を有するに至つた者をいい、未だ正式の届出をしない、いわゆる「立候補しようとする特定人」を包含しないものと解すべく(昭和三五年二月二三日最高裁判所第三小法廷判決参照)、また同項にいう「選挙運動を総括主宰した者」とは、右「公職の候補者」の場合との刑の権衡からして(候補者は右の立候補届出または推薦届出以後でないと同項による刑の加重を受けない。)候補者の正式の立候補届出または推薦届出以後において、当該選挙運動を実質的に総括主宰した者をいい、右の届出以前におけるものを含まないものと厳格に解するのを相当とする。しかるに原判決は、被告人Aの原判示第一の(一)、および被告人Bの原判示第二の(一)の各立候補届出前の饗応接待の所為に対し、いずれも公職選挙法二二一条三項を適用して処断していることが明らかである。したがつて公職選挙法二二一条三項にいう「公職の候補者」には「立候補をしようとする特定人」を、また「選挙運動を総括主宰した者」には、候補者の立候補の正式届出以前における総括主宰者をも含まれるものと解した原判決は法令の解釈適用を誤つた違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決中被告人A、同Bに関するこの部分はいずれも破棄を免れない。 原判決は、被告人Aに関する右原判示第一の(一)の罪とその余の同二の(1)、(2)の各罪、また被告人Bに関する右原判示第二の(二)の(3)、および第二の(一)の各罪とその余の第二の(二)の(1)、(2)の各罪とを、各併合罪の関係にあるものとして、それぞれ一個の刑をもつて処断しているので、原判決中被告人A、同Bに関する部分はいずれもその全部について破棄すべきものであるから、控訴趣意中被告人等の量刑不当の主張に対する判断は後記自判の際自ら示されるのでこれを省略し、被告人Aについては刑訴法三九二条二 A、同Bに関する部分はいずれもその全部について破棄すべきものであるから、控訴趣意中被告人等の量刑不当の主張に対する判断は後記自判の際自ら示されるのでこれを省略し、被告人Aについては刑訴法三九二条二項、三九七条一項、三八〇条により、被告人Bについては同法三九二条二項、三九七条一項、三七八条四号、三八〇条により、原判決中被告人等に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により当裁判所においてつぎのとおり判決する。 (当裁判所の認めた被告人Bに対する罪となるべき事実)被告人Bは、昭和三八年八月二日頃岩手県江刺市ab番地H方A候補の選挙事務所で、同候補者の選挙運動者Gに対し、同人が同候補者に当選を得しめるため投票取りまとめ等の選挙運動をしたことの報酬とする目的で現金三千円を供与したものである。 (同証拠の標目)一、 被告人Bの原審公判廷における供述記載一、 被告人Bの検察官に対する昭和三八年八月一六日付供述調書一、 Gの検察官に対する昭和三八年八月一五日付(六枚綴りのもの)供述調書(法令の適用)被告人Aにつき原判決の確定した事実を法律に照らすと、同被告人の原判示所為中原判示第一の(一)の立候補届出前の選挙運動の点は公職選挙法一二九条、二三九条一号、罰金等臨時措置法二条、刑法六〇条に、饗応接待の点は公職選挙法二二一条一項一号、罰金等臨時措置法二条、刑法六〇条に、原判示第一の(二)の(1)、(2)の点は公職選挙法二二一条三項、一項一号、罰金等臨時措置法二条(原判示第一の(二)の(2)の点につきさらに刑法六〇条を適用)に各該当するところ、原判示第一の(一)の立候補届出前の選挙運動と饗応接待の各所為は一個の行為にして数個の罪名にふれる場合であるから刑法五四条一項前段、一〇条により重い饗応接待の罪の刑に従い、以上は同法四五条前段の併合罪 判示第一の(一)の立候補届出前の選挙運動と饗応接待の各所為は一個の行為にして数個の罪名にふれる場合であるから刑法五四条一項前段、一〇条により重い饗応接待の罪の刑に従い、以上は同法四五条前段の併合罪であるから所定刑中いずれも懲役刑を選択し、同法四七条本文、一〇条により最も重い原判示第一の(二)の(1)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役五月に処し、情状により同法二五条一項一号を適用し、本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。 被告人Bにつき当裁判所の認めた事実と原判決の確定した原判示第二の(一)、(二)の(1)、(2)の各事実を法律に照らすと、同被告人の原判示所為中、原判示第二の(一)の立候補届出前の選挙運動の点は公職選挙法一二九条、二三九条一号、罰金等臨時措置法二条、刑法六〇条に、饗応接待の点は公職選挙法二二一条一項一号、罰金等臨時措置法二条、刑法六〇条に、原判示第二の(二)の(1)は公職選挙法二二一条三項、一項四号、罰金等臨時措置法二条に、原判示第二の(二)の(2)は公職選挙法二二一条三項、一項一号、罰金等臨時措置法二条、刑法六〇条に、判示所為は公職選挙法二二一条三項、一項三号、罰金等臨時措置法二条に各該当するところ、原判示第二の(一)の立候補届出前の選挙運動と饗応接待の各所為は一個の行為にして数個の罪名にふれる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により重い饗応接待の罪の刑に従い、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、同法四七条本文、一〇条により最も重い原判示第二の(二)の(1)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役四月に処し、情状により同法二五条一項一号を適用し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、同被告人が原判示第二の(二)の(1)の罪 二)の(1)の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で同被告人を懲役四月に処し、情状により同法二五条一項一号を適用し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、同被告人が原判示第二の(二)の(1)の罪により収受した二万円のうち一万七千円はこれを没収することができないので公職選挙法二二四条によりその価額一万七千円を追徴する。 なお当審における訴訟費用は刑訴法一八一条一項本文、一八二条により全部被告人両名に連帯してこれを負担させることとし、主文のとおり判決する。 (裁判長判事斎藤寿郎判事小嶋弥作判事杉本正雄)(弁護人佐藤邦雄の控訴趣意は省略する。)

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