主文 原判決主文第三項中、上告人らからそれぞれ被上告人らに対し昭和四八年一一月二七日以降同五一年一月二〇日までの遅延損害金二万二七六七円の支払を求める請求を棄却した部分を破棄する。被上告人らは、各自上告人らに対し、各二万二七六七円を支払え。上告人らのその余の上告を棄却する。前項の部分に関する上告費用は上告人らの負坦とし、その余の訴訟の総費用はこれを三分し、その一を上告人らの、その余を被上告人らの負担とする。理由 上告代理人坂元洋太郎の上告理由第一について原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、亡Dには本件損害の発生につき少なくとも五割の割合をもつて過失があると認められる旨の原審の判断は、正当として是認することができないものではなく、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の裁量に属する過失相殺の割合についての判断を論難するものにすぎず、採用することができない。同第二について原審が認容した請求は不法行為に基づく損害賠償請求ではなくこれと択一的に提起された被上告人らが亡Dに対して負担すべき同人と被上告人B株式会社との間の雇傭契約上の安全保証義務違背を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求であることが原判決の判文に照らして明らかであるから、所論中前者の請求であることを前提として原判決の判断を非難する部分は理由がない。ところで、債務不履行に- 1 -基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であり、民法四一二条三項によりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきであるから、債務不履行に基づく損害賠償請求についても本件事故発生の翌日である昭和四三年一月二三日以降の遅延損害金 よりその債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきであるから、債務不履行に基づく損害賠償請求についても本件事故発生の翌日である昭和四三年一月二三日以降の遅延損害金の支払を求めている上告人らの請求中右遅滞の生じた日以前の分については理由がないというほかはないが、その後の分については、損害賠償請求の一部を認容する以上、その認容の限度で遅延損害金請求をも認容すべきは当然である。 の債務者は債権者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものというべきであるから、債務不履行に基づく損害賠償請求についても本件事故発生の翌日である昭和四三年一月二三日以降の遅延損害金の支払を求めている上告人らの請求中右遅滞の生じた日以前の分については理由がないというほかはないが、その後の分については、損害賠償請求の一部を認容する以上、その認容の限度で遅延損害金請求をも認容すべきは当然である。しかるところ、記録に徴すれば、原判決の認容した債務不履行に基づく損害賠償請求は、上告人ら代理人の提出の昭和四八年一一月二六日付準備書面に基づいて始めて主張されたものであるところ、右準備書面は同日第一審裁判所に提出されるとともに法廷において被上告人ら代理人に交付されたことが明らかである。したがつて、被上告人らは同日限り右損害賠償債務について遅滞に陥つたものというべきであり、上告人らは、被上告人らに対し、その翌日である昭和四八年一一月二七日以降支払ずみに至るまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めうべきものといわなければならない。ところで、原審の適法に確定するところによれば、亡Dは昭和一一年一〇月三〇日生れの男子で本件事故当時三一歳であり、被上告人B株式会社の塗装工として稼働し、本件事故当時一日二八〇〇円の賃金収入を得ていたが、塗装工の賃金は漸次上昇して、昭和四八年三月当時の福岡県下における塗装工の平均賃金は一日三二〇〇円となり、同五一年一月当時には一日六〇四〇円となつた、また、亡Dは、六五歳まで就労が可能であり、毎月少なくとも二五日稼働するものとして、同人の収入は、本件事故当日である同四三年一月二二日から同四八年三月二一日までは毎月七万円、同月二二日から同五一年一月二一日までは毎月八万円、同月二二日からは毎月一五万一〇 五日稼働するものとして、同人の収入は、本件事故当日である同四三年一月二二日から同四八年三月二一日までは毎月七万円、同月二二日から同五一年一月二一日までは毎月八万円、同月二二日からは毎月一五万一〇〇〇円の収入を得ることができた、また、同人の生活費は右収入の五割を超えることがない、というのである。以上の事実関係のもとにおいて、亡Dの- 2 -稼働可能期間中の逸失利益の死亡当時における現在価を原審の採用するホフマン複式により中間利息を控除して計算するときは、その金額は、別紙逸失利益計算表記載のとおり一四六九万五六六二円(円未満切捨。 一年一月二一日までは毎月八万円、同月二二日からは毎月一五万一〇〇〇円の収入を得ることができた、また、同人の生活費は右収入の五割を超えることがない、というのである。以上の事実関係のもとにおいて、亡Dの- 2 -稼働可能期間中の逸失利益の死亡当時における現在価を原審の採用するホフマン複式により中間利息を控除して計算するときは、その金額は、別紙逸失利益計算表記載のとおり一四六九万五六六二円(円未満切捨。以下同じ。)となるべきものである。そして、更に原審の確定するところによれば、亡Dには本件損害の発生につき少なくとも五割の割合による過失があるというのであり、また、上告人らは亡Dの両親であつて亡Dの取得した損害賠償債権を二分の一ずつ相続により承継したところ、その後上告人らは労働者災害補償保険法により遺族補償年金六九二万四三九一円の支給を受けたというのである。右事実関係のもとで過失相殺につき前記割合によつてこれを控除すると亡Dの逸失利益は七三四万七八三一円となるべきものであり、上告人らは亡Dからそれぞれ右金額の二分の一にあたる三六七万三九一五円の損害賠償債権を承継したことになるが、更に、前記上告人らが受けた労働者災害補償保険法による遺族補償年金六九二万四三九一円を二分したうえ、上告人らの相続した前記損害賠償債権額からそれぞれ控除するときは上告人ら各自の相続した損害賠償債権額は二一万一七二〇円となるべきものである。したがつて、右金額に対する前記の被上告人ら各自が遅滞に陥つた日の翌日である昭和四八年一一月二七日から同五一年一月二〇日までの民法所定年五分の割合による遅延損害金の額は、別紙遅延損害金計算表記載のとお たがつて、右金額に対する前記の被上告人ら各自が遅滞に陥つた日の翌日である昭和四八年一一月二七日から同五一年一月二〇日までの民法所定年五分の割合による遅延損害金の額は、別紙遅延損害金計算表記載のとおり二万二七六七円となることが計数上明らかである。してみれば、上告人らの遅延損害金請求のうち昭和五一年一月二一日以降の分のみを認容し、昭和四八年一一月二七日以降同五一年一月二〇日までの分二万二七六七円をなんらの理由を付することなく棄却した原判決は民法四一二条の解釈適用を誤り、ひいて理由不備の違法を犯したものといわなければならないから論旨はその限度において理由があり、右部分は破棄を免れない。 記載のとおり二万二七六七円となることが計数上明らかである。してみれば、上告人らの遅延損害金請求のうち昭和五一年一月二一日以降の分のみを認容し、昭和四八年一一月二七日以降同五一年一月二〇日までの分二万二七六七円をなんらの理由を付することなく棄却した原判決は民法四一二条の解釈適用を誤り、ひいて理由不備の違法を犯したものといわなければならないから論旨はその限度において理由があり、右部分は破棄を免れない。- 3 -次に、上告人らは子である亡Dを失つたことによる精神的苦痛に対する慰藉料としてそれぞれ一二五万円の支払を求め、原審は上告人ら各自につき五〇万円の限度でこれを認容しているが、亡Dと被上告人らとの間の雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係の当事者でない上告人らが雇傭契約ないしこれに準ずる法律関係上の債務不履行により固有の慰藉料請求権を取得するものとは解しがたいから、上告人らは慰藉料請求権を取得しなかつたものというべく、したがつて、右五〇万円について前記期間の遅延損害金請求を棄却した原判決は結局正当である。また、前記のとおり、昭和四八年一一月二六日以前についての遅延損害金請求を棄却した点においても原判決は正当であり、上告人らのその余の上告は理由がないことに帰する。そして、以上の事実関係によれば、前記説示のとおり被上告人らは、各自上告人らに対しそれぞれ右遅延損害金二万二七六七円を更に支払う義務があり、上告人らの本件遅延損害金の請求は、右の限度においてこれを認容すべきである。よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、九五条、九二条、八九条、九 金二万二七六七円を更に支払う義務があり、上告人らの本件遅延損害金の請求は、右の限度においてこれを認容すべきである。よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、九五条、九二条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官中村治朗裁判官団藤重光裁判官藤崎萬里裁判官本山亨裁判官谷口正孝別紙(逸失利益計算表は末尾添付)別紙(遅延損害金計算表は末尾添付)- 4 -
▼ クリックして全文を表示