平成28(ワ)12395 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年3月15日 大阪地方裁判所
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判決文本文93,968 文字)

主文 1 被告大阪府は、原告に対し、1224万4094円並びにうち562万2302円に対する平成28年8月10日から及びうち316万4628円に対する平成29年5月10日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告大阪府に対するその余の請求及び被告国に対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、原告に生じた費用の20分の1及び被告大阪府に生じた費用の10分の1を被告大阪府の負担とし、原告及び被告大阪府に生じたその余の費用並びに被告国に生じた費用を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告らは、原告に対し、連帯して1億4597万5006円及びこれに対する平成7年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告は、現住建造物等放火、殺人及び詐欺未遂の罪で無期懲役の判決の言渡しを受け、長期間にわたり身柄を拘束された後、再審において、無罪の判決が確定した者である。 本件は、原告が、公共団体である被告大阪府に対しては、大阪府警察所属の警察官による捜査に違法があったと主張し、また、被告国に対しては、検察官の捜査、公訴の提起及び公判並びに再審における活動に違法があったと主張して、国家賠償法1条1項及び4条並びに民法719条1項前段に基づき、損害金合計1億6061万6382円の一部である1億4597万5006円及びこれに対する原告が現住建造物等放火及び殺人の各被疑事実によって逮捕された日である平成7年9月10日から支払済みまで国家賠償法4条によって適用される民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 なお、以下の略語は、別紙「略語表」に記載のとおりで よって適用される民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。 なお、以下の略語は、別紙「略語表」に記載のとおりである。 また、年月日については、特に断らない限り、全て平成7年の出来事である。 1 争いのない事実等当事者原告(昭和●年●月●日生まれ)は、7月22日、本件火災発生当時の内縁の夫であったA1と共謀の上、保険金詐取の目的で本件家屋に放火してA2を殺害したとの嫌疑によって、9月10日以降、身柄を拘束され、公訴を提起され、無期懲役の判決の言渡しを受けた。原告は、同判決の確定後、服役したが、本件再審開始決定を経て、平成28年8月10日、無罪の判決の言渡しを受け、当該判決は、即日、確定した。 本件火災ア原告、A1、A2(当時11歳)及びA3(当時8歳)の4名は、本件火災当時、本件家屋内にいた。 イ 7月22日午後4時50分頃、本件家屋の本件ガレージに駐車中であった本件車両の底部付近から、出火した。消火活動が行われたが、本件車両から本件家屋に火が燃え移り、本件家屋は、全焼した。 A2の死亡本件火災当時、本件ガレージに隣接する風呂場において入浴中であったA2が、本件火災によって、焼死した。 原告及びA1の任意同行に至るまでの経緯原告及びA1は、本件火災発生後、警察官から事情聴取を受け、本件家屋等の実況見分に立ち会うなどし、A1は、警察官から自己の毛髪を採取された。 また、A1は、8月14日、B1署に出頭した際、生前のA2との間に性的関係があり、A2と最後に性的関係を持ったのは本件火災の前日であった旨の供述書を作成した。 9月10日の原告及びA1の任意同行並びに通常逮捕 原告及びA1は、同日午前7 に性的関係があり、A2と最後に性的関係を持ったのは本件火災の前日であった旨の供述書を作成した。 9月10日の原告及びA1の任意同行並びに通常逮捕 原告及びA1は、同日午前7時10分頃、警察官から任意同行を求められ、A1はB2署において、原告はB1署において、それぞれ取調べを受けた。 原告は、同日午後8時6分、A1は、同日午後8時20分、それぞれ、互いに共謀の上、A2の死亡保険金を詐取する目的で、本件家屋に放火して本件火災を発生させ、よってA2を殺害した旨の殺人及び現住建造物等放火の被疑事実で通常逮捕された。 原告の取調べは、主にA4らが、A1の取調べは、主にA5らが担当した。 上記の後の原告及びA1の身柄拘束A6検察官は、同月11日、大阪地裁裁判官に対し、上記被疑事件について原告の勾留を請求し、大阪地裁裁判官は、同日付けで勾留場所を大阪拘置所と指定して、本件勾留決定をした。 A6検察官は、同日、上記勾留場所を不服として、本件準抗告を申し立てた。 大阪地裁は、同月13日、本件勾留決定のうち勾留場所を大阪拘置所と指定した部分を取り消して勾留場所をB1署留置場と指定する旨の本件準抗告決定をした。 大阪地裁裁判官は、同月20日、原告及びA1の勾留期間を、いずれも、同月30日まで延長した。 また、原告及びA1は、10月2日、それぞれ、保険会社を欺いて、本件保険契約に基づく保険金を詐取しようとしたが、これを遂げなかったとの詐欺未遂の被疑事実で通常逮捕され、その後、勾留された。 原告及びA1の各身柄拘束前後の供述状況原告及びA1は、9月10日に任意同行された際、当初、いずれも上記の各被疑事実を否認したが、A1が、同日午前中、原告と共謀の上、本件保険契約に基づく保険金を詐取 1の各身柄拘束前後の供述状況原告及びA1は、9月10日に任意同行された際、当初、いずれも上記の各被疑事実を否認したが、A1が、同日午前中、原告と共謀の上、本件保険契約に基づく保険金を詐取する目的で、本件家屋に放火してA2を殺害した旨の自白をし、原告も、同日午後、A1と同様の自白をした。その後、上記のとおり、原告及びA1は、通常逮捕された。 A1は、同月11日、勾留質問前にA6検察官が行った弁解録取及び大阪地裁裁判官が行った勾留質問においては、いずれも黙秘したものの、同月12日の取調べにおいて、自白に転じ、自分が自白をしたことを伝えるとともに、原告にも自白を促し、弁護人を信頼してはならないと諭す内容の書面(本件書面)を作成した。A1は、同月13日、自白から再び否認に転じたが、同月14日の取調べでは、否認から自白に転じ、同日以降、自白を続けた。以上の取調べの間、A1は、多数の供述録取書に署名指印し、多数の供述書を作成した。 原告は、上記のとおり、同月10日の午後に自白に転じ、供述録取書1通に署名指印し、供述書5通を作成して、逮捕時の弁解録取においても自白をし、その旨の弁解録取書に署名指印した。しかし、原告は、同月11日、勾留質問前にA6検察官が行った弁解録取及び大阪地裁裁判官が行った勾留質問では、いずれも否認した。原告は、同月14日、再び自白に転じ、供述書3通を作成したが、弁護人の接見においては、否認し、同月15日以降、否認又は黙秘を続けた。以上のとおり、原告が自白をしたのは、9月10日及び同月14日の2回のみであった。 本件公訴の提起A6検察官は、原告及びA1について、いずれも、同月30日、現住建造物等放火及び殺人の罪で公訴を提起し、10月13日、詐欺未遂の罪で公訴を提起した。本件公訴事 であった。 本件公訴の提起A6検察官は、原告及びA1について、いずれも、同月30日、現住建造物等放火及び殺人の罪で公訴を提起し、10月13日、詐欺未遂の罪で公訴を提起した。本件公訴事実は、要旨、原告及びA1は、共謀の上、マンション購入資金等に窮したことから、先に原告が保険会社との間で締結していた本件保険契約に基づく保険金を受領する目的で、本件家屋に火を放ち、入浴中の事故を装い、A2を焼死させ、また、保険会社に対し、A2を殺害した事実を秘し、保険金の支払を請求し、保険金支払名下に欺いて、現金1500万円を交付させようとしたが、その目的を遂げなかった、というものである。 本件確定審の審理及び判決ア本件確定審の争点及び証拠構造 本件確定審の主要な争点は、本件火災がA2の殺害を目的としたA1の放火によるものなのか、その点について原告とA1との間に共謀が認められるかであったところ、これらの争点に関する直接証拠は、A1及び原告の捜査段階における自白のみであった。 そのため、原告及びA1は、いずれも、公判廷において本件公訴事実を否認した上、上記自白の任意性及び信用性を激しく争った。 イ本件確定審第一審本件確定審第一審においては、A1及びA5の尋問が行われた。検察官は、原告からの証拠開示の申出を拒否して、原告の取調状況報告書を開示せず、本件火災発生直後のA1の消火活動に係る本件聞込み状況書及び自然発火の可能性に関する本件GS報告書の取調べを請求しなかった。 大阪地裁は、平成11年3月30日、A1の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定し、これらの証拠に基づき、本件公訴事実を認定した上、A1を無期懲役に処するとの判決を言い渡した(なお、判決の作成日は、同年6月14日である 0日、A1の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定し、これらの証拠に基づき、本件公訴事実を認定した上、A1を無期懲役に処するとの判決を言い渡した(なお、判決の作成日は、同年6月14日である。)。 大阪地裁は、同年5月18日、原告の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定し、これらの証拠を総合し、本件公訴事実を認定した上、原告を無期懲役に処するとの判決を言い渡した。 ウ本件確定審控訴審及び本件確定審上告原告は、本件確定審第一審の判決を不服として控訴を申し立てたが(本件確定審控訴審)、大阪高裁は、平成16年11月2日、やはり原告の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定して、原告の控訴を棄却する判決を言い渡した。検察官は、本件確定審控訴審において、原告の勾留の取消しを請求せず、原告が無罪である旨の意見を陳述することもなかった。 原告は、本件確定審控訴審の判決を不服として上告を申し立てたが(本件確定審上告審)、最高裁判所は、平成18年12月11日、上告を棄却する 決定をし、同月22日、同決定に対する異議の申立ても棄却したため、原告に対する本件確定審第一審の判決が確定した。 A1も、上記イの判決を不服として控訴を申し立てたが、大阪高裁は、平成16年12月20日、やはりA1の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定して、A1の控訴を棄却する判決を言い渡した。 また、A1は、上記判決を不服として上告を申し立てたが、最高裁判所は、平成18年11月7日、上告を棄却する決定をし、同月24日、判決訂正の申立ても棄却したため、A1に対する上記イの判決も確定した。 エ本件再審請求事件A1は、平成21年7月7日、上記イの確定した判決について再審の請求をし、原告は、同年8月7日、確定した本件確定審第一 ため、A1に対する上記イの判決も確定した。 エ本件再審請求事件A1は、平成21年7月7日、上記イの確定した判決について再審の請求をし、原告は、同年8月7日、確定した本件確定審第一審の判決について再審の請求をした。 大阪地裁は、両事件を併合し、平成24年3月7日、原告及びA1の両名について、いずれも再審開始の決定(本件再審開始決定)をした。 検察官は、本件再審開始決定に対し、同月12日、各即時抗告の申立てをした(本件即時抗告事件)が、大阪高裁は、平成27年10月23日、上記各即時抗告をいずれも棄却する決定をするとともに、原告及びA1に対する各懲役刑の執行を同月26日午後2時から停止する決定をした。本件再審開始決定は、同月30日、確定した。 オ本件再審検察官は、平成28年5月2日実施の本件再審の第1回公判期日において、本件公訴事実について原告の有罪の主張・立証は行わないとして、裁判所に対し、しかるべき判断を求める旨の意見を陳述したが、原告が無罪であるとの意見は、陳述しなかった。 大阪地裁は、同年8月10日、要旨、A1及び原告の各自白には証拠能力が認められず、A1及び原告の各自白を除いた証拠からは本件火災が自然発 火によるものである可能性が合理的な疑いとして認められるため、A1の放火行為は認められない、よって、原告及びA1が、共謀の上、本件公訴事実記載の各犯行を行ったことも認められないと判断して、原告及びA1に対し、いずれも無罪の判決(本件再審判決)を言い渡した。 検察官が、同日、本件再審判決に対する上訴放棄の申立てをしたことから、本件再審判決は、即日、確定した。 2 争点 警察官の原告に対する取調べの違法性ア大声、暴言等を用いた取調べイ長時間にわたる取調べ 上訴放棄の申立てをしたことから、本件再審判決は、即日、確定した。 2 争点 警察官の原告に対する取調べの違法性ア大声、暴言等を用いた取調べイ長時間にわたる取調べウ供述拒否権等を告知せず、又はこれを無視した取調べエ原告の精神状態を不当に利用した取調べオ原告の自責の念を悪用した取調べカ虚偽の事実を告知して行った取調べキ原告の体調が悪化した状態における取調べク違法な取調べによって得られたA1の自白を利用した取調べケ原告を一方的に犯人と断定した取調べコ原告の首を押さえるなどの直接的な有形力を用いた取調べ 警察官の補充捜査の違法性ア本件火災の出火原因に関する補充捜査の違法性イ出火原因以外の補充捜査の違法性ウ原告及びA1の自白の検討に関する補充捜査の違法性検察官の捜査段階における各活動の違法性ア警察官の原告に対する違法な取調べを黙認し、又は助長したかイ原告及びA1の自白の評価を誤ったか検察官による本件公訴の提起の違法性 ア原告及びA1に対する取調状況の検討に違法があるかイ本件公訴の提起の前提となる証拠の評価及び補充捜査に違法があるか検察官の本件確定審における各活動の違法性ア公判を維持するために事実及び証拠を隠蔽したかイ A5の偽証に関与したかウ証拠の評価を誤ったかエ勾留の取消しの請求及び無罪の弁論をすべき義務があったか検察官の本件再審請求事件及び本件即時抗告事件における各活動の違法性原告の損害及びその数額 除斥期間の経過の有無 3 争点に関する当事者の主張の要旨別紙「当事者の主張の要旨 検察官の本件再審請求事件及び本件即時抗告事件における各活動の違法性原告の損害及びその数額 除斥期間の経過の有無 3 争点に関する当事者の主張の要旨別紙「当事者の主張の要旨」記載のとおりである。 第3 争点に対する判断 1 認定事実上記争いのない事実等並びに後掲各証拠(なお、枝番のある証拠は、特に枝番を掲記しない限り、全ての枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。以下の事実に反する証拠は、採用することができない。 当事者等及びその経済状況ア原告は、本件火災発生当時、31歳の女性であり、道路交通法違反以外に前科及び前歴はなく、後記以降の身柄拘束は、初めての体験であった。(甲14、乙245)イ A1は、本件火災発生当時、当時29歳の男性であり、原告とは、本件火災発生当時、内縁関係にあった。(甲56、乙13)ウ A2は、本件火災発生当時、小学校6年生(11歳)であった。 本件火災当時、原告を保険契約者兼保険金受取人とし、A2を被保険者とする新生存給付金付定期保険契約(本件保険契約)が締結されていた。本件 保険契約は、保険金額が少ない分、3年に一回、30万円を受領することができる保険商品であり、保険契約者又は保険金受取人の故意によって保険金の支払事由が生じた場合、保険金の支払を受けることができない。A2以外に、原告、A1及びA3も、種類は異なるものの、本件保険契約と同じくC1生命保険相互会社(当時)との間で、生命保険契約を締結していた。(乙84)原告は、A2をC2中学校に入学させることを検討しており、A2に家庭教師をつけ、そろばん及び習字も習わせていた。また、A2が在籍していた小学校の担任教師によれば、原告は、教育熱心であり、参観日には必ず出 は、A2をC2中学校に入学させることを検討しており、A2に家庭教師をつけ、そろばん及び習字も習わせていた。また、A2が在籍していた小学校の担任教師によれば、原告は、教育熱心であり、参観日には必ず出席し、上記教師との懇談会では、A2の学習状態について熱心に質問していた。 他方、原告は、A2に対し、自転車、バドミントン用ラケット、ローラースケート等を買い与え、夏休みに東京ディズニーランドに連れて行くなど、楽しい経験もさせていた。原告は、A2及びA3の学校の送り迎えも行っていた。原告が後記カのマンション購入を検討したのは、上記マンションならば、A2及びA3が在籍していた小学校と同一の学区であり、転校をしなくてよいためでもあった。(乙69、71、277、278)エ A3は、本件火災発生当時、小学校3年生(8歳)であった。 原告は、A2と同様、A3に対しても、そろばん及び習字を習わせ、学校の送り迎えを行い、自転車などを買い与え、A2と共に上記東京ディズニーランドに連れて行くなどしていた。(乙277、278)オ原告、A1、A2及びA3は、本件火災発生当時、本件家屋に居住していた。 カ原告及びA1は、大阪市B1区の新築分譲マンションの購入のため、9月までに一定金額を準備する必要があった。もっとも、上記マンションの代金から手付金10万円を控除した残額4040万円については、住宅ローン等による支払が予定されており、原告及びA1が準備する必要のある額は、上 記残額以外の諸費用約170万円にとどまっていた。また、原告及びA1が当該約170万円を準備することができない場合は、上記マンションの販売会社が相談に乗ることになっており、原告及びA1は、同社の社員であったA7に対し、6月19日頃、上記170万円をローンにすることができない 70万円を準備することができない場合は、上記マンションの販売会社が相談に乗ることになっており、原告及びA1は、同社の社員であったA7に対し、6月19日頃、上記170万円をローンにすることができないか相談し、その回答を待っていた。さらに、原告及びA1は、上記手付金10万円を放棄しさえすれば、上記売買契約を解除することも可能であった。 原告及びA1は、自動車ローンを組んでいたものの、毎月の収入から弁済を続けており、本件火災発生時まで、一度も滞納したことがなく、かえって、原告は、本件火災発生当時、約88万円の預貯金を有していた。A1の当時の年収については、A7が、A1の帳簿によって、約630万円であることを確認しており、住宅ローンの審査に通るものと予測していた。もっとも、原告は、高校時代以来の友人であるA8に対しては、しばしば借入れを求めたこともあった。(乙69から83まで、459)本件火災後は、本件家屋が全焼し、本件車両も、家財道具も、全て失ったため、原告は、金銭に窮するようになり、A1を通じて、アルバイト先に対し、アルバイト料の支払を早めるよう依頼し、また、保険会社に対し、本件契約に基づく保険金の支払について相談し、8月25日、保険金の支払を求めた。(乙71、84) 本件家屋(甲1、乙30)ア本件火災発生時の本件家屋の状況は、おおむね別紙図面のとおりである。 イ本件家屋は、西側を道路と面する木造瓦葺き2階建家屋であり、1階部分西側には、本件ガレージが設けられており、その東側には、6畳和室や2階に通じる階段等がある。 また、本件ガレージの北側には、風呂場が設置されており、6畳和室から台所を通って風呂場に入る構造となっている。 ウ本件ガレージは、3枚のサッシ引き違い戸により、道路と仕切られており、 また、本件ガレージの北側には、風呂場が設置されており、6畳和室から台所を通って風呂場に入る構造となっている。 ウ本件ガレージは、3枚のサッシ引き違い戸により、道路と仕切られており、 6畳和室に通じる上り口にはガラスの引き戸が設けられ、本件ガレージとの仕切りになっている。 エ本件ガレージの床面は、北西部に設けられた排水口に水が流れるように、東高西低に6センチメートルほどの傾斜が付けられ、南北にも若干の傾斜が付けられていた。 本件火災に至るまでの経緯(後掲各証拠のほか、甲1、乙30)ア A1は、7月22日午後4時頃、本件火災当時の勤務先である大阪市B3区内のマンション工事現場から、本件車両を運転して、本件家屋に向かう途中であった同日午後4時28分頃、本件ガソリンスタンドに立ち寄り、「満タン」と注文し、ガソリン30リットルを給油した。(乙250)本件ガソリンスタンドにおいては、本件火災当時、顧客から「満タン」の給油を頼まれた際、切りのよい数字に合わせるため、給油ノズルが自動停止した後も手動で追加給油していた店員が二名いた。 警察官は、同月26日、本件ガソリンスタンドに対する聞き込みによってこれを把握し、その旨を記載した本件GS報告書を作成したが、検察官は、本件確定審において、その取調べを請求しなかった。(乙276)イ A1は、上記アの給油後、本件ガソリンスタンドから約2.4キロメートルの距離にある本件家屋まで本件車両を走行させて、本件家屋に帰宅し、本件車両をバックで本件ガレージに入れて駐車させたが、その後、しばらくの間、エンジンをかけたままにしていた。(乙51)本件ガレージの床面には、上記エのとおり傾斜が付けられていたため、市道側に正面を向けて駐車された本件車両の燃料タンクは、前方や 、その後、しばらくの間、エンジンをかけたままにしていた。(乙51)本件ガレージの床面には、上記エのとおり傾斜が付けられていたため、市道側に正面を向けて駐車された本件車両の燃料タンクは、前方やや右方向、すなわち、給油口方向に、若干、傾斜していた。(甲3)ウ A1が、本件車両のエンジンをかけたまま運転席に座っていたところ、原告が、A2及びA3を連れて帰宅し、本件ガレージのサッシ引き違い戸を施錠した。A2及びA3に続いて原告が6畳和室に上がった後、A1も、本件 車両のエンジンを切って、6畳和室に上がった。(乙53)エその後、A2は、原告から風呂に入るように言われて、一人で風呂に入り、A1は、作業服を脱いでトランクス1枚になり、一旦、本件ガレージに降りた後、再び6畳和室に戻り、原告と会話するなどしていた。(乙53)オ本件火災が発生した同月22日の天候は、雨であり、本件火災発生時も、雨が降っていた。(乙268)本件火災の状況及び消火活動ア A2が入浴中であった同日午後4時50分頃、本件火災が発生した。 イ原告及びA1が本件火災に気付いた直後、A1は、原告に対し、「水、水撒き。」と告げた後、本件家屋を出て行った。(乙52)ウ A3によれば、本件火災の当初、火は小さく、大きさは、横約20センチメートル、高さ約5センチメートル程度にすぎなかった。(乙52)エ原告は、水汲み場に行き、大きな洗面器に水を汲んで火の方に水をかけ、本件火災発生から2分後である午後4時52分頃、119番通報した。原告は、消防吏員に対し、「火事です」、「車のところが燃えています」、「家の庭に入れている車が、もう家の中に入ってきているんです」、「すぐ来て下さい」と述べ、住所及び電話番号を告げた上、消防隊の出動を要請した。(乙 に対し、「火事です」、「車のところが燃えています」、「家の庭に入れている車が、もう家の中に入ってきているんです」、「すぐ来て下さい」と述べ、住所及び電話番号を告げた上、消防隊の出動を要請した。(乙52、329)オ複数の近隣住民らが、本件火災の消火活動に当たったところ、それらの中で最も早くから消火活動を行っていたと考えられるA9によれば、本件火災当初の状況は、次のとおりであった。 本件車両の右前輪と右後輪の間の底から、煙の少ない炎が三、四十センチメートルくらいの高さまで上がっており、本件車両後方から黒煙が出ていたが、中が全然見えないという状態ではなかった。消火器を使えば火を消せると思い、消火器を用いて炎に消火液を掛けると、その炎が一旦は消えた状態になったが、消火液が途切れると再び炎が本件車両の底から流れ出て、その ような状態を繰り返した。火勢が増した後、A1が「A2A2」と叫び、「A2が中にいる」と述べたが、本件家屋に入ることができる状態ではなかった。 A9は、A1の消火活動を目撃していない。(乙54)また、近隣住民であるA10によれば、本件火災当初、炎の高さは、約50センチメートルであった。(乙62)カ近隣住民であるA11、A10、A12、A13及びA14によれば、本件火災当初の状況は、次のとおりであった。(乙61から65まで)A11は、「ボーン」という何かが破裂するような音を聞き、しばらくすると、もう一度、同じ音がし、何かが割れるような音も聞いた。その後、本件家屋から、灰色の煙が、ドライアイスの煙が立ち込めるように出てきた。 A10は、突然ドッジボールが破裂するような「ボン」という音が聞こえて、自宅がかなり振動し、その音と同時に、「パリン」と何かが割れるような音を聞いた。 A12は、自宅の表の方 るように出てきた。 A10は、突然ドッジボールが破裂するような「ボン」という音が聞こえて、自宅がかなり振動し、その音と同時に、「パリン」と何かが割れるような音を聞いた。 A12は、自宅の表の方から「ボーン」という何かがぶつかるような大きな音を聞いた。 A13が、消火液をかけたところ、一瞬、火の勢いが弱まったようであったが、すぐにまた強くなった。 A14は、「ボーン、ボーン」という、以前にA14の自宅近くで火事があり車両が燃えたときと同じような音を聞いた。 キ近隣住民であるA15、A16及びA17によれば、本件火災当時におけるA1の言動は、次のとおりであった。 A15は、同日午後5時10分頃、本件家屋に赴いた消防吏員であるA19の聞き込みに対し、A1が、A15宅に飛び込んで来て、消火器を貸してくださいと言うので、A1に消火器を一本持たせて、一緒に外に出たが、自分は、A1が消火器を掛けている間に自宅に戻り、妻に対し、119番通報するよう指示した旨供述した。A19は、これを、本件聞込み状況書に記載 した。(甲15)しかし、A15は、9月20日に行われた検察官の取調べに対しては、A1は、A15が消火器を取り外す前に外に出て行った旨、A15が消火器をもって自宅の前に出たとき、A1は本件家屋前にいなかった旨、本件聞込み状況書に記載されている上記供述とは異なる供述をした。検察官は、本件確定審において、本件聞込み状況書を、証拠として提出しなかった。(乙56)A16によれば、A1は、消火活動を行っていなかったが、本件家屋から炎や煙が出た頃になって、救出する素振りも見せないまま、「A2、出てこい」と叫んでいた。(乙57)A17は、男の「火事や」という叫び声が聞こえて、叫び声が聞こえた方を見ると、本件家屋前に ら炎や煙が出た頃になって、救出する素振りも見せないまま、「A2、出てこい」と叫んでいた。(乙57)A17は、男の「火事や」という叫び声が聞こえて、叫び声が聞こえた方を見ると、本件家屋前に、トランクスを履いているだけで後は何も着ておらず上半身裸のままA1が立っていたのを目撃した。A1は、「A2」と叫んでいたが、消火活動は行っていなかった。(乙58)他の近隣住民であるA18、A11、A10、A12及びA13も、A1が、「A2」と叫んでいるが、消火活動を行っていないことを目撃した。(乙59、61から64まで)ク消防吏員であるA20は、本件火災発生から約7分後に本件家屋付近に到着したところ、A1が、ナイロンホース(グリーン又は青色のもの)で本件車両に向けて水を掛けており、「奥にA2が居る。」と叫んでいるのを目撃し、A1が本件ガレージに入ろうとするので、警察官に止めてもらった。(乙317)A20は、その後の警察官の取調べにおいても、本件火災発生から約7分後に本件家屋付近に到着したところ、6、7名が初期消火活動を行っており、A1が、ゴムホースを持って本件家屋内に水をかけていたのをはっきり覚えている旨供述した。(乙318)ところが、A20は、9月22日に行われた検察官の取調べにおいて、散 水用のホースで水を掛けている人が一人いたのは、はっきり覚えている、本件家屋の前で「中にだれかおれへんか」と声を掛けると、A1が「A2が中におんねん」と言ってきた、本件家屋の中を見ると、本件車両からかなり炎が上がっていた旨、すなわち、A1は消火活動を行っていなかった旨、上記供述を変更した。(乙67)ケ入浴中のA2が、本件火災により風呂場で焼死し、本件家屋は、全焼した。 鑑定書によれば、A2の死体の解剖所見から、 わち、A1は消火活動を行っていなかった旨、上記供述を変更した。(乙67)ケ入浴中のA2が、本件火災により風呂場で焼死し、本件家屋は、全焼した。 鑑定書によれば、A2の死体の解剖所見から、膣内に精子を確認することはできなかったが、死後半日から2日前くらいの間に性交があった可能性は否定できないことが判明した。(甲1、乙30、410、412)コ原告のアルバイト先の営業主任であったA21が、本件火災後間がない7月24日、A2の仮通夜に出席した際、原告は、顔が痩せこけて真っ白であり、目が窪みこんで、目の周りが黒ずんでおり、立つのがやっとという感じで、何かにもたれかかっている状態であった。 A21が、原告に対し、アルバイト料と香典を手渡そうとしたところ、原告は、泣き崩れた。 A8が、同日、電話で原告と話そうとしたものの、原告は、泣きじゃくり、言葉にならない状態であった。(乙71、73) 本件家屋及び本件車両の焼損状況(後掲各証拠のほか、甲1、乙30)ア本件ガレージの焼損が最も激しく、天井板がすべて焼失し、天井部の梁が炭化して亀甲状態を呈していたほか、床面のコンクリートが剥離するほどの激しい焼損部分があり、特に、奥側(東側)の焼損が激しかった。 イ本件車両については、車両前面は、おおむね原形をとどめているが、車両後部は、強度の焼損等が生じており、右側面については運転席ドア付近から、左側面については運転席ドア後方から、いずれも車両後部にかけて焼損等が生じ、特に、右側面のスライドドアの把手付近の焼損が激しかった。一方、右側面の給油口から下方にかけての車体表面について、給油キャップの周辺 及び給油キャップの直径とほぼ同じ横幅の部分が焼損しておらず、車体本来の赤色が約10センチ幅で帯状に車体下辺まで伸びて残 の給油口から下方にかけての車体表面について、給油キャップの周辺 及び給油キャップの直径とほぼ同じ横幅の部分が焼損しておらず、車体本来の赤色が約10センチ幅で帯状に車体下辺まで伸びて残っていた。さらに、車底部も、全体的に焼損していたが、前端から110センチメートルほどの範囲については比較的焼損の程度が弱い一方で、そこから後方に70センチメートルほどの範囲については周囲と比べて強く焼損しており、この付近に取り付けられていた燃料タンクも焼損等し、当該燃料タンクに通じる配管は、いずれも途中から焼失していた。 本件火災発生後、燃料タンク内のガソリンの残量は3.2リットルであり、燃料残量計の針は4分の3強の残量を示していたなお、本件車両は、平成5年2月23日に初度検査を受けており、A1は、これを新車で購入し、本件火災の約5か月前の車検においても、何ら異常が指摘されていなかった。(乙45、46)ウ本件火災の翌日である7月23日に実施された実況見分調書には、給油口キャップが「完全に締まって」いた旨及び「きちんと締められている」との記載がある一方、上記実況見分調書の添付写真に写っている給油キャップは、その取っ手部分が、明らかに右上がりとなっており、水平になっていない。 (甲1、乙30、34(写真128号及び130号))エ本件風呂釜は、種火の状態であったが、目立った焼損はなく、若干のすすの付着が認められる程度であった。 オ本件火災現場には、ポリタンクが残存していたが、捜査機関は、その鑑定を実施しなかった。 カ本件火災現場には、細長い形状の染みが残存していたが、長さや形状から給油ポンプが溶融したものであると言われればそのように見えなくもないという程度のものであり、後にA1が犯行に使用したと自白した給油ポンプの溶融物 は、細長い形状の染みが残存していたが、長さや形状から給油ポンプが溶融したものであると言われればそのように見えなくもないという程度のものであり、後にA1が犯行に使用したと自白した給油ポンプの溶融物であるとは断定し難い状態であった。(乙450)また、警察官は、給油ポンプの溶融残渣の有無を確認するための実況見分 を行う前に、本件ガレージのコンクリート床面を何度も調査しているのに、それらの際には、上記染みの存在には気付いていなかった。 キ本件火災現場からは、後にA1が犯行に使用したと自白したターボライターも、発見されなかった。 A1及び原告の逮捕に至るまでの経緯ア A1及び原告は、本件火災発生日である7月22日の夜、B1署において、事情聴取を受け、同月23日、本件家屋の実況見分に立ち会った。(乙34、85)イ同日付けC3新聞には、「ふろの火が車のガソリンに引火?」との見出し部分に続き、B1署が、「たき口のガスの火がガソリンに引火した疑いもあるとみて」いたなどの記事が掲載されていた。(甲9、38)また、同日付けC4新聞にも、B1署が、「ふろがまと軽ワゴン車が六十㌢しか離れていなかったことなどから、同署ではふろがまの火がガソリンに引火した可能性があるとみている。」との記事が掲載されていた。(甲10)ウしかし、警察官は、同日、本件火災について放火が濃厚であるとの心証を抱いており、A1に対し、同月24日付け身体検査令状により身体検査を実施した。A1は、前頭部右側の5センチメートル×5センチメートル位の範囲に長さ約5センチメートル位の焦げがあるのみであり、ほとんど火傷を負っていなかった。(乙86、454)エ同月27日付けC5新聞には、B1署が、本件火災は放火であると断定して、本格捜査を始めた、本 長さ約5センチメートル位の焦げがあるのみであり、ほとんど火傷を負っていなかった。(乙86、454)エ同月27日付けC5新聞には、B1署が、本件火災は放火であると断定して、本格捜査を始めた、本件車両の給油口のふたは閉まっており、引火の可能性はないと判断したなどの記事が掲載され、原告は、同日、B1署において、事情聴取を受けた。(甲12)オ A1及び原告は、同月30日、それぞれ、B1署で事情聴取を受けたが、その際、A1は、警察官から、A1が本件火災の重要参考人であると告げられた。 同日の事情聴取において、A1の学歴や職歴、原告と出会って同居するようになった経緯、家族関係、当時の収支状況、上記カの新築分譲マンションを購入予定であること及びその資金調達の方法、本件車両の状況、本件火災後にA2にかけた生命保険金を請求したことなど、生活全般にわたる相当量の供述書が作成された。また、A1は、同日、本件火災当日の行動について、本件車両に乗って仕事に出かけた時間、その際の所持品(2、3千円の現金、赤色プラスチックのターボライター等)、工事現場の名称やおおよその位置、帰宅するために工事現場を出発した時間、本件家屋までの経路、その途中で30リットルのガソリンを入れたことや、本件ガソリンスタンドの名称及び位置、原告との架電状況、C6電車の高架沿いを通って本件家屋に到着した時間、帰宅時の本件ガレージの状況、原告がA2らを連れて本件家屋に帰宅した際の状況、通常午後8時頃に入浴するA2が、原告に言われて風呂場に向かった際の状況、出火状況、その後のA1及び原告の行動等について、相当詳細な供述をした。(乙87から105まで)カ警察官は、科捜研に対し、同月31日、「ガス風呂釜バーナー一式」を資料とし、本件風呂釜の種火から漏出ガソリン の後のA1及び原告の行動等について、相当詳細な供述をした。(乙87から105まで)カ警察官は、科捜研に対し、同月31日、「ガス風呂釜バーナー一式」を資料とし、本件風呂釜の種火から漏出ガソリンへの引火の可能性について、鑑定を嘱託した。 ところが、科捜研技術吏員のA22は、理由は不明であるが、鑑定事項を「(ガスバーナーの)コックの位置について」とした上、鑑定結果について、「元コックは『全開』の位置、風呂釜バーナコックは種火バーナだけにガスが流れる位置であったと認められる。」などと記載し、B1署から嘱託を受けた、本件風呂釜の種火から漏出ガソリンへの引火の可能性については、記載しなかった。しかるに、B1署は、科捜研に対し、再度の鑑定を嘱託しなかった。(乙38、39)キ原告は、8月5日、A7に対し、「警察で色々調べられたんよ。」「私たちが犯人やいうてる。」、「警察はこの子が殺したと思ってんよ。」、「何でこの子が 殺さなあかんの。」などと、A1を指して、述べていた。 また、原告は、A21に対し、A1及び原告が逮捕される数日前、「主人が重要参考人として調べられてるんです。」と述べた。(乙69、71)ク警察官は、同月9日、C7株式会社大阪支社のサービス技術グループチーフであるA23に対する聞き込みを実施した。A23は、車両とバーナーの距離が70から80センチメートル離れていれば、揮発したガソリンに種火が引火することはありえない旨の供述をした。(乙42)ケ A5は、本件火災については放火の可能性が高く、A1を重要参考人として身辺捜査等を実施しており、本件家屋跡から燃燬残渣を発見したことから、同月14日、A1の転居先に電話をかけ、A1に対し、上記燃焼残渣の任意提出を求めるとともに、任意出頭を求めた。 A1は 人として身辺捜査等を実施しており、本件家屋跡から燃燬残渣を発見したことから、同月14日、A1の転居先に電話をかけ、A1に対し、上記燃焼残渣の任意提出を求めるとともに、任意出頭を求めた。 A1は、同日、B1署に出頭し、事情聴取を受けた際、A2との間に性的関係があり、最後の性的交渉が本件火災前日であった旨の供述書を作成した。 なお、A1は、同日、自ら出頭してきたものではない。(甲1、乙30、106、273。これと異なる本件確定審におけるA5の証言の信用性は、本件再審判決において、虚偽であると認定されている。)コ警察官は、同月16日、B1署の裏庭に設置されている焼却炉を利用し、燃焼実験を実施した。当該実験は、焼却炉内に立てたろうそくを本件風呂釜の種火に見立て、ガソリンを入れた深さ約4センチメートルの缶をろうそくに近付けていき、どの距離で引火するか、また、すすがどの程度付着するかを確認するものであった。その結果は、缶を火のついたろうそくの下部まで近付けて初めて引火し、その火災に接した焼却炉のかき出し口に黒いすすが付着するというものであった。(乙40、41)サ A1は、同月17日、原告と相談した上、一人で無料法律相談を受け、担当のA24弁護士に対し、事情を説明して、自分と原告が放火殺人の犯人として警察に疑われているが無実であるなどと述べた。 これに対し、A24弁護士は、「警察から事情聴取をされても、やっていないことをやったというようなこと言ってはいけない。」と述べ、名刺を渡した。 A1は、A24弁護士に対し、A2との間に性的関係があったことを述べた上、そのことと疑われている件とは無関係である旨を説明した。 (甲67)A1の身柄拘束及び取調状況(乙107)ア A1は、9月10日朝、警察官から任意同行を求められ 関係があったことを述べた上、そのことと疑われている件とは無関係である旨を説明した。 (甲67)A1の身柄拘束及び取調状況(乙107)ア A1は、9月10日朝、警察官から任意同行を求められ、B2署において、A5らから、現住建造物等放火及び殺人の被疑事実について、被疑者として取調べを受けた。(乙107)イ A1は、当初、否認し、A5らに対し、A24弁護士の名刺を渡した上、A24弁護士に連絡して欲しいと頼むなどしたが、その後、自白するに至り、同日午後8時20分頃までの間に、8通の供述書を作成した。(乙107から115まで)それらの要旨は、上記カの新築分譲マンション購入資金に充てるためにA2にかけていた本件保険契約に基づく保険金を得ようと考え、本件家屋で放火してA2を殺害した、原告が、6月22日深夜、A2を殺害して保険金を得ようという趣旨の話を言い出し、自分が、原告に対し、7月5日の深夜、雨が降って早く帰れる日に、A2を風呂に入れて、その間に自分が本件車両に火を付けるという方法を伝えたところ、原告はうなずいていた、本件当日、雨が降っていたことから犯行を実行することを決意し、自宅に電話をかけたが、原告が不在であったので、伝言を残していたところ、原告から、昼頃に電話があったことから、原告に対し、その旨伝えた、午後4時頃、大阪市内のマンション工事現場を出て、自宅に戻る途中で、本件車両からガソリンを抜くために、本件ガソリンスタンドに立ち寄って、ガソリンを満タンにし、その後、C6電車の高架沿いの店舗において給油ポンプを購入するなどするとともに、原告が自宅に来ていたA2の同級生を送り終えたか確認するため、 何度か原告に電話をしたが、繋がらなかった、帰宅した後、ガソリンの臭いを消すために、本件車両のエンジンをかけたままに もに、原告が自宅に来ていたA2の同級生を送り終えたか確認するため、 何度か原告に電話をしたが、繋がらなかった、帰宅した後、ガソリンの臭いを消すために、本件車両のエンジンをかけたままにしながら、給油ポンプを使って、本件ガレージ内にあったポリタンクに底から20センチメートル位ガソリンを入れて、それを隠した、その後、原告がA2とA3を連れて帰宅したので、原告と目で合図を交わし、原告らを先に和室に上がらせ、続いて、自分も和室に上がった、原告がA2を風呂に入れるのを待ち、自分は、火を付けたことが疑われないようにパンツ1枚になり、A2がシャワーを使う音を聞いてから、本件車両左後角部において、ポリタンクからガソリンをまき、本件車両右側面の中央付近において、その辺りにまで広がっていたガソリンにターボライターで火を付けたところ、火は、一瞬にして本件車両の奥まで燃え広がったが、車両の下であったことから、高くは燃え上がらなかった、火を付ける前に、本件車両の下に給油ポンプを投げ込んだ、その後、和室に戻って、原告と話をし、10秒ほどしてから、自分が「何やあれ」と言い、原告も、A3をだますため、「もえてる」と言って慌てたふりをした、自分は、自転車と本件車両との間を通って、本件ガレージの出入口を開錠して、表に飛び出したが、A2が死ななければ保険金がもらえないため、大声で「火事」とは叫ばなかった、7月30日、B1署の警察官に呼ばれて、重要参考人として疑われていることが分かり、A3も、取調べを受けていたので、原告と共に、A3に対し、口止めをした、というものである。 ウ A1は、9月10日午後8時20分頃、上記アの被疑事実によって通常逮捕され、弁解録取の際にも犯行を認める旨の弁解録取書が作成されたが、同日午後10時20分頃から行われたA24弁護士との ある。 ウ A1は、9月10日午後8時20分頃、上記アの被疑事実によって通常逮捕され、弁解録取の際にも犯行を認める旨の弁解録取書が作成されたが、同日午後10時20分頃から行われたA24弁護士との接見では、犯行を否認した。 A1は、上記接見の際、A24弁護士に対し、A5から、首を絞められて壁に押し付けられた、調書で頭を叩かれた、A3もA1がおかしいと言っていると伝えられた、本件を否認すれば、A2との性的関係についても事件に すると言われ、自白すればそのことを伏せておくと言われた、原告が先に自白したと聞かされ、自分も自白した、などと述べた。(甲86)エ A1は、同月11日午前中、A5らによる取調べにおいて、事件とは関係のない身上経歴等については取調べに応じたものの、犯行については黙秘し、その後行われたA6検察官による弁解録取及び大阪地裁裁判官による勾留質問の際にも、犯行を黙秘した。(乙107、118、119)オ A6検察官は、同日、大阪地裁裁判官に対し、上記アの被疑事件についてA1の勾留を請求し、大阪地裁裁判官は、同日付けでA1を被疑者とする勾留状を発した。(乙8)カ A1は、同日の夜、A24弁護士と接見し、犯行を否認した上、A24弁護士を弁護人に選任した。(甲67、87、乙120)キ A1は、同月12日、A5らによる取調べを受けた際、当初、黙秘したが、その後、再び自白するに至り、原告宛に、要旨、自分は全て話をして容疑を認めることにした、真実は一つだから仕方ない、自分は逮捕される前に全て正直に話している、弁護士が来て、やったと言ったら死刑になると言われた、原告に対しても同じように死刑になると言ったのではないか、そういう人は絶対に信じたらあかん、自分はやっと気づいた、との書面(本件書面)を、自ら作成した。 来て、やったと言ったら死刑になると言われた、原告に対しても同じように死刑になると言ったのではないか、そういう人は絶対に信じたらあかん、自分はやっと気づいた、との書面(本件書面)を、自ら作成した。 同日付けA5を取調担当者とするA1の取調日誌の「特異な言動」欄には、「死刑だけは助けて下さい」との発言が記載されている。(乙107)ク A1は、同日午後6時15分から同日午後10時28分まで、A6検察官による取調べを受け、検察官調書が作成された。 上記検察官調書には、要旨、9月10日、警察に呼ばれて事情を聞かれた際に、色々と考えた上で真実を話すことにして事件を素直に認め、自分から供述書を書いた、同月11日、検察官の弁解録取の際には、気持ちの整理がつかずに黙秘したが、それは、同月10日に接見したA24弁護士から、事 件を認めたら死刑になると言われ、どうしたらよいか尋ねたところ、黙秘するか否認すればよいと助言を受けたからである、しかし、その後は反省をして、申し訳ないことをしたという気持ちから正直に話をしようと決めて、本日、検察庁に来た、死刑になるのは嫌だし、情状酌量をしてもらいたい、現在の心境は、真実を話してA2の冥福を祈りたいし、罪は償わなければならないと思う、そして、検事から、この自分の心境を原告に伝えてもらい、事実を正直に話すように私が話していたと伝えて欲しい、との記載が冒頭にあり、犯行の動機、原告との共謀状況、本件当日の犯行準備の状況、犯行状況等について、同月10日に作成された供述書(上記イ)の内容とほぼ同様の記載が続いている。(乙122)ケ A1は、大阪地検において、同月12日午後10時40分頃から約30分、A24弁護士と接見した際、A24弁護士に対し、自分は無実であるが自白した旨を伝えた。(甲67、88、 ている。(乙122)ケ A1は、大阪地検において、同月12日午後10時40分頃から約30分、A24弁護士と接見した際、A24弁護士に対し、自分は無実であるが自白した旨を伝えた。(甲67、88、乙107)コ A1は、同月13日、A5らによる取調べを受けて、犯行を自白し、供述書3通を作成した。 A1が、同日午後5時40分頃から約30分、A24弁護士と接見したところ、A24弁護士から、要旨、自分はやっていないし、A1もやっていない、警察に騙されて嘘の自白をしてもA2は喜ばない、自分は否認で頑張っているなどの原告の言葉を伝えられた。 A1は、A24弁護士に対し、A24弁護士を信用してもよいか、それであれば黙秘するが信用できるのか、などと問い掛けた。(甲67、89、乙107、123から125)サ A1は、同月14日、A5らによる取調べにおいて、当初、否認していたが、途中から自白に転じ、供述書11通を作成した。(乙107、126から136)A1は、同日、A24弁護士を解任した上で、A25弁護士を弁護人に選 任し、同日午後5時頃、同弁護士と接見し、犯行を認めた。A1は、その後に接見を求めたA24弁護士とは、接見しなかった。(甲90、乙137)シ同月15日付けA1の取調日誌の「特異な言動」欄には、「お父さんの手紙又見せて下さい」という記載がある。(乙107)ス大阪地裁裁判官は、同月20日、A1の勾留期間を同月30日まで延長する決定をした。(乙8)セ A1は、上記サの後も、自白を維持し、同月30日、現住建造物等放火及び殺人の罪で起訴され、10月13日に詐欺未遂の事実で起訴されるまでの間、本件公訴事実を自白する内容の供述録取書が作成された。 また、A25弁護士が、捜査機関に対し、A1の取調べに関する抗議を行っ び殺人の罪で起訴され、10月13日に詐欺未遂の事実で起訴されるまでの間、本件公訴事実を自白する内容の供述録取書が作成された。 また、A25弁護士が、捜査機関に対し、A1の取調べに関する抗議を行った形跡はなく、また、A1は、A25弁護士を弁護人に選任した後、否認に転じることはなく、自白を続けた。(甲72、乙107)原告の身柄拘束及び取調状況ア原告は、9月10日午前7時10分頃、警察官から任意同行を求められ、B1署において、現住建造物等放火及び殺人の被疑事実について、A4らから、被疑者として取調べを受けた。 上記取調べの時間は、同日午前7時30分頃から午後0時頃まで及び同日午後0時30分頃から午後8時30分頃まで、合計13時間にも及び、休憩時間は、いずれも取調室において、午後0時頃から午後0時30分頃までの30分及び午後6時30分頃から午後7時頃までの30分のみであった。 (乙235、243)イ原告の取調状況に関する経過報告書には、以下のとおり、同日の取調べにおけるA4ら及び原告の言動が記載されている。(乙235)「A2」及び「A2」とあるのは、A2のことであり、「A1」とあるのは、A1のことであり、「A3」及び「我が子」とあるのは、A3のことである(以下同じ)。なお、引用した証拠に明白な誤記がある部分については、訂正 した上で、摘示する(以下同じ)。 同日午前9時頃、原告は、ハンカチを口に当てて顔面を蒼白にしており、うつむく姿勢を取っていた。 同日午前11時30分頃以降、A4らが、度々、昼食の機会を与えたが、原告は、昼食を摂らなかった。 A4らが、原告に対し、A1とA2との間に性的関係があった旨を告げた同日午後1時20分頃以降、原告は、体を小刻みに震わせて、寒さを訴 昼食の機会を与えたが、原告は、昼食を摂らなかった。 A4らが、原告に対し、A1とA2との間に性的関係があった旨を告げた同日午後1時20分頃以降、原告は、体を小刻みに震わせて、寒さを訴え、A4らが貸与した作業服を着込み、肩掛けを膝に当てていた。 A4らが、A2が11歳で人生を終えたこと等について言及したところ、原告は、それまで以上に寒がる様子を見せ、A4らが貸与した毛布を腰に巻いた。 A4らにA1が自白した旨の連絡が入った同日午後2時30分頃、A4らが「本当のことを話さんとA2が浮かばれんぞ」、「A1は真実を話している」と告げると、原告は、これまで以上に体を震わせ、「ゲエー・ゲエー」と空えずきをした(「えずき」とは、吐き気を催す様子であると解される。)。 A4らが、そのような状況の原告に対し、「人の心、母親の心を失ったらあかん」「真実を話して、A2を成仏させてやれ」などと告げると、原告は、涙を浮かべながらうなづき、「ごめんなさい」と小声で言い、更に顔面を蒼白にして震えながら、小声でポツリポツリと供述を始めたので、A4らは、原告に対し、犯行を認める供述書を作成させた。 A4らが、原告に対し、医師の診療等を受けさせた記載は、存在しない。 ウまた、上記イの事実との時系列は明らかでないが、以下のとおり、同日の取調べにおけるA4らの言動が記載されている。(乙243) 本件火災の原因について「出火場所である車については、科学捜査研究所の鑑定結果や」「車の会社での検査結果等から車からの出火ではないと言い切れる。」 「車からの出火ではない。」「火のない所から火がでたんや。」「車のガソリン漏れが原因の火事を思わせるにはあまりにも浅はかな知恵ではない ら車からの出火ではないと言い切れる。」 「車からの出火ではない。」「火のない所から火がでたんや。」「車のガソリン漏れが原因の火事を思わせるにはあまりにも浅はかな知恵ではないか。」「車の鑑定することを考えなかった事が二人の浅知恵や。」「ガソリンの蓋は火事の後の検証でもしっかりと閉まっていたことは事実や。」「欠陥車でなかった事は鑑定済みや。」「車検後も異常がなかったと自分でも言ってたではないか。」「何故火が出たのか説明できるか。」 A3の供述の存在について「A3は「パパが車の所に行って部屋に戻ってすぐに、ママが燃えていると言った」と供述している。」「唯一の目撃者である八歳の我が子が真実を語っているんやで。」「我が子の供述を嘘だとは言えんのと違うか。」「我が子の供述を実の母親が争うのか」「母親として人間の心を失ったらあかんのと違うか。」「真実を語っている我が子と争うのか」 A2の救出可能性について「A2を助ける時間は十分にあったはずやないか。」「A3は「ママのA2って呼ぶのを聞いてない」と言ってるぞ。」「なんでA2を助けんかったんや。」 A1とA2との性的関係について「知らん、知らんでは自分の心が一生晴れんのと違うか。」「A1がA2と、関係があったんを知らん事ないやろ。」「A3も「パパエッチ」と言っているぞ。」 「A2は殴られるから嫌々応じたんと違うか。」「どうしてそんな悪い男と手を組むんや。」「A2があまりにも可哀想とちがうか。」 A4らが、原告に対し、A1とA2と性的関係にあった事実を伝えたこと及びA3の本件火災に関する供述を伝えたことは 悪い男と手を組むんや。」「A2があまりにも可哀想とちがうか。」 A4らが、原告に対し、A1とA2と性的関係にあった事実を伝えたこと及びA3の本件火災に関する供述を伝えたことは、A4自身、本件の証人尋問において認めている。また、同日の取調べにおいてA4らが言及した、本件車両を製造したホンダの調査結果は、同日時点においては、存在していなかった。 (上記ウの全体について、甲17から20まで、62、67、乙235、243、証人A4、原告本人)エ原告は、同日の午前中は否認していたが、上記イ及びウの取調べを経て、午後から自白するに至り、午後8時6分頃までの間に、供述録取書1通及び供述書5通を作成した。 それらの要旨は、A1と計画して、保険金を得るためにA2を殺した、自分が、A1に対し、6月初旬頃、A2を殺したら1500万円が入るという話をした、この話を最初に言ったのは自分であるが、本件家屋に火を付けてA2を殺そうと考えたのはA1であり、それは7月初旬頃であった、A1は、自分に対し、A2を殺すために火を付ける日は、雨が降ってA1が早く帰ってきた日で、A2を風呂に入れているときにする、火を付けるときは、A2を風呂に入れてほしいと言った、A1は、ガソリンに火を付けたらよく燃えるし、煙も出る、自動車のガソリンが漏れて火事になったことにしようと言った、自分は、A1は男性であるから、自動車のことやガソリンのことはよく知っているので、火を付ける方法についてはA1に任せた、A2の保険金は1500万円で、A3の保険金は1800万円であった、A3は、年下の男の子であり、可愛く思っていたが、A2は、A3ほど可愛くなかったために、A2を殺すことにした、というものである。(乙235から241まで、 243)オ原告は、 、A3は、年下の男の子であり、可愛く思っていたが、A2は、A3ほど可愛くなかったために、A2を殺すことにした、というものである。(乙235から241まで、 243)オ原告は、同日午後8時6分頃、上記アの被疑事実によって通常逮捕され、弁解録取の際にも、犯行を認める旨の弁解録取書が作成された。 (乙242)原告は、上記取調べ終了後の午後8時50分頃、A24弁護士と接見したが、一人では歩けない状態であり、女性警察官から支えられるようにして歩いており、非常に取り乱し、憔悴している様子であった。 (甲67、乙235)原告は、A24弁護士との接見において、犯行を否認した。A24弁護士は、原告に対し、本当にやっていないのであれば、否認ないし黙秘をするように助言するとともに、本件は、共犯事件であり、自分一人で原告及びA1双方の弁護をすることはできないので、どちらかには別の弁護士が就くことになる旨説明した。そのため、原告は、その後、A26弁護士を弁護人に選任した。(甲62、67)カ原告は、同月11日午前9時30分頃から午後12時45分頃まで、A4らの取調べを受けたが、同日午前11時40分頃から20分、A26弁護士と接見した。その後、A4らが、原告に対し、原告の身上経歴についての供述録取書を読み聞かせ、署名指印を求めたところ、原告は、署名指印を拒んだ。上記供述録取書は、原告の身上経歴についてのものであるのに、A26弁護士と上記接見のために中断した後、突如、原告の自白が記載され、その直後、原告が「私やってませんから署名しません」と述べて署名指印を拒んだ旨の記載がされている。また、原告は、後記キの勾留手続に関する身柄押送の際にも、警察官との雑談に応じず、黙秘した。(乙243、244、245)キ原告は、同日、A6検 べて署名指印を拒んだ旨の記載がされている。また、原告は、後記キの勾留手続に関する身柄押送の際にも、警察官との雑談に応じず、黙秘した。(乙243、244、245)キ原告は、同日、A6検察官による弁解録取において、犯行を否認し、同月10日の取調べの際に、A1とA2との間に性的関係があった旨を告げられてショックを受けていた上、警察官に大声で怒鳴られたため、頭の中が空白となり、どうにでもなれという気持ちで自白した旨供述したが、A6検察官 は、同月11日、大阪地裁裁判官に対し、原告の勾留を請求した。 (乙246、270)ク原告は、同日、大阪地裁裁判官による勾留質問の際にも、被疑事実を否認し、当該裁判官に対し、警察官から、A1がA2をセックスのおもちゃにしていたこと、A1が自白したことを告げられた上、原告が共犯者である旨を記載したA1のメモも示され、頭がボーッとしていたために、虚偽の自白をした旨供述した。(乙247)その後、大阪地裁裁判官は、同日付けで、勾留場所を、B1署ではなく、大阪拘置所と指定して、本件勾留決定をした。(乙7)ケ A6検察官は、同日、上記勾留場所を不服とし、本件準抗告を申し立てた。 A6検察官は、本件準抗告の申立書において、引き当たり捜査の必要性を主張したが、その後、引き当たり捜査は行われなかった。 (乙243、248)コ原告は、同月12日、午前11時19分頃から午後0時6分頃まで、A26弁護士と接見した後、A4らから、大阪拘置所において、取調べを受けた。 上記取調べの時間は、同日午後2時頃から午後4時15分頃まで及び午後5時15分頃から午後8時50分頃まで、合計5時間50分に及んだものの、原告は、A4らに対し、犯行を否認し、その後、黙秘を続けた。(乙243、244、 同日午後2時頃から午後4時15分頃まで及び午後5時15分頃から午後8時50分頃まで、合計5時間50分に及んだものの、原告は、A4らに対し、犯行を否認し、その後、黙秘を続けた。(乙243、244、377)原告の取調状況に関する経過報告書には、以下のとおり、同日の取調べにおけるA4ら及び原告の言動が記載されている。なお、「あの子」とは、A1のことである。 原告は、「私、最初の日にA2を殺したと言ったけど、あれは嘘です」「A2とあの子の関係を聞かされて、頭の中が真っ白になって、どうでもええわ、という気持ちで書いたんです」と一気に捲し立てた。 A3の話になると、下を向いてしまい、気持ちが込み上げてくるのか、空えずきをする素振りを見せた。 A4らは、「真実を話さんと、A2が浮かばれんぞ」等と諭した。 サ原告は、同月13日午前8時49分頃から午前10時20分頃まで、更に弁護人に選任したA34弁護士と接見し、その後、A4らから、大阪拘置所において、同日午前10時35分頃から午前11時頃まで、取調べを受け、さらに、同日午前11時頃から午前12時06分頃まで、A26弁護士と接見した。原告は、A4らの上記取調べにおいて、雑談にも応じず、完全に黙秘した。(乙243、244、377)原告の取調状況に関する経過報告書には、以下のとおり、同日の取調べにおけるA4ら及び原告の言動が記載されている。 原告が、着席すると同時に、「これからは何も喋りません」、「取調べにも応じません」と申し立てた。 上記の原告の言動の後、A27が、大きな声で、「恥ずかしくないのか」、「何を言ってるんや」、「ちゃんと話さんとあかんがな」、「何もやってないのなら話できるやろ」と述べた。 これに対し、原告は、「大声出さんといて下 後、A27が、大きな声で、「恥ずかしくないのか」、「何を言ってるんや」、「ちゃんと話さんとあかんがな」、「何もやってないのなら話できるやろ」と述べた。 これに対し、原告は、「大声出さんといて下さい」と申し立てた。 シその後、大阪地裁裁判官は、本件勾留決定のうち勾留場所を大阪拘置所と指定した部分を取り消した上、勾留場所をB1署留置場と指定する決定(本件準抗告決定)をした。(乙249)原告は、本件準抗告決定によって、同日、大阪拘置所からB1署に移監されて、同日午後4時20分頃から午後5時7分頃まで及び午後6時頃から午後11時頃まで、A4らから取調べを受け、その間の同日午後7時46分頃から午後8時6分頃まで、A26弁護士と接見した。(乙244、377)原告の取調状況に関する経過報告書には、以下のとおり、上記サの取調べにおけるA4ら及び原告の言動が記載されている。(乙243、244) A4らは、原告に対し、生前のA2の写真を示して、「A2に謝る気持ちはないのか」と述べた。 A4らは、原告に対し、A1が自白をしたことを伝えるとともに原告にも自白を促し弁護人を信頼してはならないと諭す内容のA1作成の書面(本件書面)を示した。 A4らは、原告に対し、「A2は、死んで行く時にママ、ママと叫んでたんと違うか」と述べ、原告は、悲し気な顔をした。 A4は、原告に対し、同日午後8時6分頃までのA26弁護士との接見後、「死刑が怖いのか。」と問い掛けると、原告は、辛そうな表情になり小さくうなずいた。 A4が、原告に対し、A2の生前の写真を提示したこと及び接見禁止中であるにもかかわらず本件書面を示したことは、A4も、本件の証人尋問において、認めている。( になり小さくうなずいた。 A4が、原告に対し、A2の生前の写真を提示したこと及び接見禁止中であるにもかかわらず本件書面を示したことは、A4も、本件の証人尋問において、認めている。(証人A4)ス A28検察官は、同日、弁護人らと協議した上、同月14日から同月17日までの接見日時を指定した。(乙377)セ原告は、同月14日、A4らの取調べを受けた。 上記取調べの時間は、同日午前11時15分頃から午後0時5分頃まで、午後1時頃から午後5時15分頃まで及び午後6時10分頃から午後11時23分ないし25分頃まで、合計10時間18分ないし20分にも及んだ。 (乙244、250、463)原告の取調状況に関する経過報告書には、以下のとおり、同日の取調べにおけるA4ら及び原告の言動が記載されている。(乙243、244)同日午後1時頃から午後5時15分頃までは、次のとおりである。 A4らは、話を聞いているか分からないが無表情のまま一点を見据えている原告に対し、「いっぺん椅子から立って背伸びしてみい」と告げた。 原告は、ゆっくり立ち上がろうとしたが、そのまましゃがみ込んだ。 女性の警察官が、原告を支えるようにして椅子に座らせた。 原告は、その後、少しえずくような仕草を見せた。 A4らが、その後、原告に対し、「A2に恥ずかしくないのか」等と、強い口調で述べると、原告は、うつむいて涙で目を潤ませた。 同日午後6時10分頃以降は、次のとおりである。 原告は、出場して取調室に行く間、背を丸めてヨタヨタと老人のような歩き方をするので、A27が、原告の右腕の付け根付近を持って支えながら入室させた。 A4らは、同日午後6時10分以降、以下のとおり述べた上、同日午後10時過ぎ頃まで、何度も何度 タと老人のような歩き方をするので、A27が、原告の右腕の付け根付近を持って支えながら入室させた。 A4らは、同日午後6時10分以降、以下のとおり述べた上、同日午後10時過ぎ頃まで、何度も何度も、同じ言葉を繰り返したところ、原告の目から涙がにじみ出てきた。その後、A4らは、原告に対し、自白を記載した供述書を作成するよう求めた。 a 「自分の心にA2という大きなトゲが刺さったままでいいのか。」b 「大きな罪という重荷を背負って一生歩き続けるのか。」c 「「A2はもう土にかえって声を出す事はない。しかし、お前の心の中にはA2が生き続けとんと違うか。」d 「人はだませても、自分の心をだます事はできんやろ。」e 「泥沼への道を自分から選ぶな。」f 「嘘の話をせんでもよい。真実の話をしたらええんや。」g 「真実は真実、嘘は嘘」「必ず真実が顔を出す。その時になって頭を下げても人は手を差しのべてくれん。」h 「A3でも、見たまま感じたまま真実を語っている。」i 「真実は一つやぞ、いくらメッキをしても鉄は鉄や金にはならんのや」j 「A2の事を考えたら嘘はつけんはずや」k 「後に残ったA3の事も考えてやれ。」ソ原告は、同日、再び、犯行を自白し、供述書3通を作成した。(乙251から253まで)それらの要旨は、A2を殺して保険金をもらうつもりだった、7月22日 に計画を実行しようと決めていたわけではなく、A1が外の仕事ができず早く帰って来られることから、雨が降った日に火を付けてA2を殺そうと決めていた、本件火災の当日、A1と電話をした際、A1から、今日は早く帰れる、雨が降っているから今日するわ、と言われ、自分は、わかったと答えた、A1が本件家屋に帰ってから、A2に風呂に入るように言い、A1が本件 本件火災の当日、A1と電話をした際、A1から、今日は早く帰れる、雨が降っているから今日するわ、と言われ、自分は、わかったと答えた、A1が本件家屋に帰ってから、A2に風呂に入るように言い、A1が本件車両に火を付けた、本日本当のことを話す気持ちになったのは、心を大切にして失ったらいけない、真実の上に嘘を付いても真実は一つなどと言われたからである、そのとおりと思い、涙がこぼれた、9月10日(なお、原文では「7」月と記載されているが、「9」月の明白な誤記であると認める。)に警察に来た時に書いた文章は本当のことである、弁護士が来てから、気持ちが変わった、弁護士に色々言われて、自分はやっていないことにしようと思い、次の日にやっていないと言った、というものである。 タ A29弁護士は、上記スの接見指定外の時刻である同日午後8時26分頃、B1署に架電して原告との接見を求めるとともに、あらかじめA28検察官に連絡しないまま、同日午後8時40分頃、B1署を訪れ、A28検察官に架電し、「弁護人となろうとする者」(刑訴法39条1項)として、原告との接見を求めた。 A28検察官は、A29弁護士に対し、要件の疎明を求めるとともに、現在、原告の取調べ中であることを伝えた上、原告が接見を拒否しない限り、上記取調べが終わり次第、原告との接見を認める旨述べた。 上記申出の際、A4らは、現に原告を取調べ中であった。A29弁護士自身、A28検察官の「具体的指定時期については、事前に検事に連絡せずに警察署へ直行したこと、とにかく接見することが第1目標と考えるべきこと、現に取調中であったこと等から、取調後の接見はやむをえないものと考え」て、原告の取調べの中断を要求しなかった。 しかし、A29弁護士は、その後も原告の取調べが約2時間40分継続し たた 調中であったこと等から、取調後の接見はやむをえないものと考え」て、原告の取調べの中断を要求しなかった。 しかし、A29弁護士は、その後も原告の取調べが約2時間40分継続し たため、同日午後11時10分頃、A28検察官に架電し、直ちに原告の取調べを中断して接見を認めるよう要求した。 A28検察官は、A29弁護士の上記要求を受けて、A4らに対し、その旨を伝達した上、同日午後11時20分頃、A29弁護士に対し、間もなく原告の取調べを終える旨及びその後に接見を指定する旨を伝えた。 A28検察官は、同日午後11時35分頃、同日午後11時40分から5分だけ接見を認める旨伝えたが、A29弁護士から抗議を受けたため、10分の接見を認めることにした。 原告は、上記接見の際、A4らから、A2を助けられなかったのは殺したのと変わらないと言われ、原告自身もそのように考え、自白した旨述べた。 原告は、更にA29弁護士を弁護人に選任した。 (甲35、乙243、244、377、379)チ原告は、上記接見後の同月15日以降、再び、否認ないし黙秘を続けた。 A4らの原告に対する取調べの時間は、同日から原告が現住建造物等放火及び殺人の罪で公訴を提起されるまで、早い日は午前9時20分から開始し、遅い日は午後11時40分まで続けられた。 原告の取調状況に関する経過報告書には、以下のとおり、取調べにおけるA4ら及び原告の言動が記載されている。(乙243、244) 同日、A4らは、黙秘する原告に対し、「事件に関わってないのなら、私は無実ですと紙に書け」と迫った(同日)。 同月17日、A4らは、原告に対し、大声で、「真実は一つや」、「弁護士は、お前の言う事を信じて、走り回ってくれているんやぞ」、「一番の味方まで騙 無実ですと紙に書け」と迫った(同日)。 同月17日、A4らは、原告に対し、大声で、「真実は一つや」、「弁護士は、お前の言う事を信じて、走り回ってくれているんやぞ」、「一番の味方まで騙したらあかんがな」と述べた。 また、同日、A4らは、原告に対し、「お前が無実やとして、なんであの時A2を助けたらんかったんや、何でや」と何度も大声で述べた。 同月18日、A4らは、原告に対し、「人間の心を失ったらあかん、真実 の事を話さんとA3にまで迷惑が掛る、自分の事だけを考えてたらあかん」と述べた。 A27は、何の反応を示さない原告に対し、「無実と言うならそれを主張したらええがな、黙っているのは卑怯やぞ」と述べたが、原告がなお反応を示さないので、何度も大声で「聞こえているのか」と問い掛けた。 同月19日、A4らが、原告に対し、A2の仮仏壇の写真を見せると、原告は、上記写真に向かって話し掛けていた。 同月20日、A4らは、原告に対し、「無実やと言うなら、その事を堂々と主張しなさい」と大声で述べた。 同月21日、A4らは、原告に対し、「真実を話さんかったら、A2が浮かばれんぞ、人間の心を取り戻せ」と述べた。 A27は、原告に対し、「真実の事を言わなあかん」等と強い口調で述べ、 A4は、原告に対し、「これ以上、両親やA3に迷惑を掛けたらあかん」等と述べた。 同月23日、A4らは、原告に対し、「なぜ黙ってるんや」と述べた。 また、A4らは、原告に対し、「無実やったらその事を話したらどうや」と述べても、原告が無表情であったため、「おい聞こえているのか」と大声で述べた。 さらに、A27は、原告に対し、「やってないんやったらその事を信用してやるから、私は無実ですと紙に書いたらええ や」と述べても、原告が無表情であったため、「おい聞こえているのか」と大声で述べた。 さらに、A27は、原告に対し、「やってないんやったらその事を信用してやるから、私は無実ですと紙に書いたらええがな」と述べて、ボールペンと紙を渡した。原告がこれを無視すると、原告の自白を記載した供述書を渡した上、「これは嘘の文章ですと訂正の文章を書きなさい」と述べた。 同月29日、A4は、原告に対し、「やってなかったら、やってない状況を話したらええがな」等と述べた。 ツ弁護人らは、大阪地裁裁判官に対し、同月16日、原告の勾留の取消しを請求した。これに対し、A6検察官は、同日、勾留取消請求に対する意見書 において、同月14日の接見について取調べ中に直ちに接見を認める必要はなかった旨の意見を述べた上、大阪地裁裁判官の問合せに対し、同日深夜に接見を認める結果となったのは、同日夕方から原告が自白を始め、自白書の作成に意外な時間を要したためであると述べた。上記裁判官は、A6検察官の上記説明を、電話聴取書に記録した。(乙378、379)大阪地裁裁判官が、上記請求を却下したところ、弁護人らは、大阪地裁に対し、同月18日、上記却下決定に対する準抗告の申立てをした。 A6検察官は、上記準抗告の申立てに対する意見書において、同月14日の夕食後に、原告の態度が少しずつ軟化し、午後9時を過ぎたころから少しずつ自供するようになり、供述書を作成させたところ多少の時間がかかった旨、上記電話聴取書に記録された説明とは異なる説明を行った。 (乙463)テ弁護人らは、B1署に対し、同月19日付け抗議書を送付し、同書面は、同月20日、B1署に到達した。(甲101)上記抗議書には、警察官の原告に対する取調べが黙秘権を侵害しており、長時間に テ弁護人らは、B1署に対し、同月19日付け抗議書を送付し、同書面は、同月20日、B1署に到達した。(甲101)上記抗議書には、警察官の原告に対する取調べが黙秘権を侵害しており、長時間に及んでいること、原告が真犯人であるとの予断と偏見に基づく捜査が行われていること、警察官が机に置いたA2の写真を見るよう原告に強要していること、警察官が怒鳴りながら原告の首の後ろを掴んで揺すったり、立たせたりしていることが記載されていた。 また、弁護人らは、A28検察官に対しても、上記と同様の同日付け抗議書を送付し、上記書面は、同月20日、大阪地検に到達した。さらに、弁護人らは、A6検察官に対しても、上記と同様の同日付け抗議書を送付し、上記書面は、同月21日、大阪地検に到達した。(甲102、272)ト原告が、A6検察官に対し、A4らの取調べの様子を伝えたところ、A6検察官は、原告に対し、「ちゃんと言っとくから」と返事をした。 また、A6検察官が、同日以降、原告の取調べのためB1署に赴くようになると、原告は、その日は「少しだけひどさがましになった。」と感じた。(甲 60、乙244、原告本人)また、A6検察官が、同月19日、原告の取調べを行った際、自己の体調に関し、生理痛や過去の交通事故の後遺症による腰痛等を訴えるにとどまり、A4らの取調べによる体調不良を訴えていない上、「捜査官への要望としては、取り調べ時間を短くして欲しいただそれだけである。」と述べるだけであった。(乙271)ナ大阪地裁裁判官は、同月20日、原告の勾留期間を、同月30日まで延長する決定をした。(乙7)ニ弁護人らは、上記ナの決定に対し、同月22日、準抗告を申し立てたが、大阪地裁は、同月23日、「被疑者の供述の任意性確保の 日、原告の勾留期間を、同月30日まで延長する決定をした。(乙7)ニ弁護人らは、上記ナの決定に対し、同月22日、準抗告を申し立てたが、大阪地裁は、同月23日、「被疑者の供述の任意性確保のため、相応の配慮を施しながら捜査を実施していることが窺え」るなどと認定し、上記準抗告を棄却する決定をした。(乙376)ヌ A6検察官は、同月21日、原告に対する取調べを行った際に、A4らの取調状況及び原告の体調に関する原告の言い分を聴取した。(乙374)ネ弁護人ら作成の大阪地検に対する同月29日付け申入書には、同月20日以降の警察官の取調べに対する抗議は記載されておらず、A6検察官の対応に関する抗議も記載されていなかった。(甲106)ノ本件公訴の提起直前である同月25日、警察官による再現実験(9月25日再現実験)が行われた。(乙274、275)9月25日再現実験は、同日、大阪府立消防学校の燃焼実験室において、本件火災発生当時の本件車両を含む本件ガレージ内の状況を再現し、土間の床面にガソリンを約4リットル、車両の右側面中央部付近の床面にガソリンを約2リットルをまき、車両の右側面中央部付近からまいたガソリンに着火させた場合の模擬室の燃焼状況を確認するものであった。上記実験の結果、着火後、直ちに土間の後方にガソリンの燃焼による炎が立ち上がり、多量の黒煙が発生し、着火から約7秒後に模擬室の開口部から炎が噴き出し、一気 に天井の高さを超える状態になった。観測することが危険になったことから、警察官は、着火から2分23秒で退避を始め、着火から2分35秒で消火を始めた。 このように、9月25日再現実験においては、極めて短時間で激しい燃焼状態となり、比較的高くまで火が上がっており、その実験結果は、上記オ及びカの近隣住民らによ 着火から2分35秒で消火を始めた。 このように、9月25日再現実験においては、極めて短時間で激しい燃焼状態となり、比較的高くまで火が上がっており、その実験結果は、上記オ及びカの近隣住民らによる目撃状況とは異なっていた。 本件確定審ア本件公訴の提起(甲1、乙1、2、30) 本件公訴の提起A6検察官は、原告及びA1について、いずれも同月30日、現住建造物等放火及び殺人の罪で公訴を提起し、10月13日、詐欺未遂の罪で公訴を提起した。本件公訴事実は、次のとおりであった。 本件公訴事実①原告及びA1は、共謀の上、マンション購入資金等に窮したことから、先に原告が保険会社との間で締結していた本件保険契約に基づく保険金を受領する目的で、本件家屋に火を放ち、入浴中の事故を装ってA2を殺害しようと企て、7月22日午後4時50分頃、本件家屋で、原告において、A2を入浴させた上、A1において、本件ガレージのコンクリート床面にあらかじめ用意していたガソリンをまき、所携のライターで点火して火を放ち、付近の柱、天井等に燃え移らせ、よって、A2ほか1名が現に住居に使用する本件家屋を全焼させて焼損するとともに、その頃、本件家屋の風呂場において、A2を焼死させ、もって、A2を殺害した。 本件公訴事実②原告及びA1は、共謀の上、8月22日、本件保険契約に関し、当該保険契約の約款上は、保険契約者又は保険金受取人の故意によって保険金を支払う事由が生じた場合は保険金の支払を受けられないのに、原告及びA 1においてA2を殺害した事実を秘し、A2が事故によって死亡した内容の事故状況報告書兼事故証明書を作成した上、保険会社保険外交員らに対し、同証明書をA2の災害死亡保険金請求書等とともに提 1においてA2を殺害した事実を秘し、A2が事故によって死亡した内容の事故状況報告書兼事故証明書を作成した上、保険会社保険外交員らに対し、同証明書をA2の災害死亡保険金請求書等とともに提出し、同保険外交員らを介して、当該書類を、同月25日、保険会社保険金課に到達受理させて、同課課長に対し、保険金の支払を請求し、保険金支払名下に欺いて、現金1500万円を交付させようとしたが、原告及びA1が逮捕されたため、その目的を遂げなかった。 イ本件確定審の争点及び証拠構造本件確定審の主要な争点は、本件火災がA2の殺害を目的としたA1の放火によるものなのか、その点について原告とA1との間に共謀が認められるかであったところ、これらの争点に関する直接証拠は、A1及び原告の捜査段階における自白のみであった。原告及びA1は、いずれも、公判廷において各公訴事実を否認した上、上記自白の任意性及び信用性を争った。 ウ本件確定審第一審 本件確定審第一審においては、原告が自白した9月10日の供述録取書、逮捕時の弁解録取書及び原告が同日及び同月14日に作成した本件刑事事件を自白する旨の供述書が、証拠書類として取り調べられた。 (乙10、12、236から242まで、251から253まで) 第3回公判期日において、A23の証人尋問が実施され、A23は、上記クの捜査段階における供述を維持した。 弁護人らは、第12回公判において、裁判所に対し、証拠開示に関する申入書を提出し、検察官に対して取調経過一覧表及びその根拠となる取調メモ等を弁護人らに開示させるよう、申し入れた。(甲29、乙390)しかし、検察官は、弁護人らに対し、上記書面を開示しなかった。 また、検察官は、火災発生直後のA1の消火活動に係る本件聞込み状況書及び自然発火の に開示させるよう、申し入れた。(甲29、乙390)しかし、検察官は、弁護人らに対し、上記書面を開示しなかった。 また、検察官は、火災発生直後のA1の消火活動に係る本件聞込み状況書及び自然発火の可能性に関する本件GS報告書を、証拠請求しなかった。 平成9年10月28日の第20回及び同年11月25日の第21回各公判期日において、A5の証人尋問が行われた。(甲1、30)A5は、①8月14日の自供書の作成過程について、要旨、8月14日は、A1から話があると言ってB1署にやってきた、A1は、自分に対し、後で判明したら困るので先に言っておくが、実はA2と性的関係があると言ってきた、自分は、上司の指示で、A1に自供書を作成させた、A1に対し、この件が今後どうなるか自分では判断できないと言ったが、自分の胸の内に納めておくと言ったことはない旨供述した。 また、A5は、②9月10日の自供書の作成過程について、要旨、自分は、先に説明をしてほしい、やっていないのであればわかるように説明する必要があると答えたが、説明する義務があるというような言葉は使っていない、ガソリンタンクが膨張しており、ガソリン漏れはなく、燃料計が4分の3くらいを示していたことや、ホンダの技術者から事情を聴取した班長から、ガソリンを抜いて火を付けたとしか考えられないと聞いていたことから、そのことをA1にぶつけた。A1に対し、A3がA1が火を付けるところを見ているとは言っていないし、A2との性的関係を自分から言い出したこともない、足を組んで座っているA1の右足を蹴ったことはない、A30を離席させて、A1と二人でモーニングセットを食べた際に、A1と膝を交えて真心で訴えなければならないと思って、A1の膝をつかんで揺すりながら、何とか正直な話をしてくれ、これから立 ことはない、A30を離席させて、A1と二人でモーニングセットを食べた際に、A1と膝を交えて真心で訴えなければならないと思って、A1の膝をつかんで揺すりながら、何とか正直な話をしてくれ、これから立ち直らなあかんやないか、今の状況からしても、お前は何も答えれないじゃないか、お前は今だんだん俺に突き詰められていっているんや、下が絶壁になって助けてくれと言ったんでは終わりやぞ、裁判官に対しても情状酌量の余地もなくなるぞ、などと説得をしたところ、A1が自供するに至った旨供述した。 さらに、A5は、③9月11日から同月14日までの間に作成されたA 1の自供書の作成過程について、要旨、9月12日、A1が、最初は黙秘すると言っていたので、自分は、黙秘するというなら、そう言い通せばよい、A1は犯人しか分からないことを次々供述書に書いている、自分たちはこの供述書があれば十分であると言って突き放したら、時間が経つにつれ、A1が、僕はどうなるんですかと話しかけてきた。そこで、自分は、黙秘しろ、否認しろということだが、A1自身が事細かく書いた自供書があることを、弁護士に話したのか、と言うと、A1は、それは言っていない、弁護士からやったと言ったら死刑になると言われたと答えた、自分は、うその否認をさせるのは弁護士の仕事ではないと言うと、A1が本当の弁護士というのはどのようなものかと聞いてきたので、やったことはやったことで、それを情状面で捉えてA1を救うのが本当の弁護士であると答えた、最終的に、A1から助けて欲しいと言って、再び自白を始めた、さらに、A1は、弁護士に踊らされている、原告も、弁護士にそう言われたから大変な過ちを犯している、原告も助けて欲しい、原告に対し、今の状況を説明するために手紙を書きたいと言ったので、手紙を書かせた。A1が原 1は、弁護士に踊らされている、原告も、弁護士にそう言われたから大変な過ちを犯している、原告も助けて欲しい、原告に対し、今の状況を説明するために手紙を書きたいと言ったので、手紙を書かせた。A1が原告に手紙を渡したいと言ったが、A1には接見禁止が付いていたので、双方のやり取りができるとすれば捜査を総合的に担当している検察官しかいないと説明すると、A1が、検察官のところに連れて行ってほしいと言ってきたので、すぐに検察官のところに行くこととなった、9月12日頃、A1の家族から預かった写真をA1に示して、A1の家族が、しっかり罪を償ってきれいな体になって帰ってきてほしいと思っていることは伝えたが、A1の父親からA1に宛てた手紙については、A1が起訴されるまでは見せていない、9月14日、A1は朝から否認していたが、自分は、A1が実際にやったのでなければ言えないような話をしているのだから、今更どうやってつじつまの合うことを作って言うのかと話した。A1は、黙って聞いていたが、その後、弁護士に踊らされている、誰か良い弁 護士を探して欲しい、A24弁護士を解任したい、と言い出し、解任届を書いた。午後からA24弁護士が接見に来たが、A1は、会いたくないと言って接見を拒否した旨供述した。 大阪地裁は、平成11年5月18日、原告を無期懲役に処するとの判決を言い渡した。大阪地裁は、罪となるべき事実を認める証拠として、原告の供述録取書及び上記供述書のうち7通を証拠の標目に掲げた上、原告が9月10日及び同月14日に自白したこと、同日の取調べについて虚偽の自白を誘引するだけの問題があったとは考え難いことなどを認定し、原告の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定して、これらの証拠に基づき、本件公訴事実を認定した(大阪地裁平成7年第329 偽の自白を誘引するだけの問題があったとは考え難いことなどを認定し、原告の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定して、これらの証拠に基づき、本件公訴事実を認定した(大阪地裁平成7年第3295号、同第3458号)。(乙12)また、大阪地裁は、同年3月30日、A1を無期懲役に処するとの判決を言い渡した。大阪地裁は、A1の多数の供述録取書及び本件書面を含む多数の供述書を、罪となるべき事実を認める証拠として証拠の標目に掲げた上、A1の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定して、これらの証拠に基づき、本件公訴事実を認定した(大阪地裁平成7年(わ)第3294号、同第3457号)。(乙13)エ本件確定審控訴審 原告は、上記ウの判決を不服として控訴を申し立てた。(乙14)本件確定審控訴審においては、科捜研による燃焼実験が行われた。(乙383、384)上記実験は、平成13年5月15日、本件ガレージの内部の本件車両の位置及びA1がガソリンを入れていたと供述するポリタンク等を再現した模擬建物を用いて行われた。 A22が作成した同年6月8日付け鑑定書には、本件ガレージから他の居室に向かうガラス戸を開放するなど室内に空気の出入りを可能にする ような状況下であれば、まいたガソリンは、燃焼を継続し、本件ガレージ内の本件車両等に延焼し、本件車両の燃料タンク内のガソリンが噴出するような状況となり、模擬建物内から火炎が噴き出すような燃焼状況となることが記載されていた。 上記実験において、着火後、一気に火炎が立ち上がり、10秒過ぎまで天井付近まで上がった火炎が見えていたが、室内に充満した煙のために徐々に火炎が見えなくなっており、このような燃焼状況は、A1、原告及び近隣住民らの目撃供述とは異なっていた。 がり、10秒過ぎまで天井付近まで上がった火炎が見えていたが、室内に充満した煙のために徐々に火炎が見えなくなっており、このような燃焼状況は、A1、原告及び近隣住民らの目撃供述とは異なっていた。 大阪高裁は、平成16年11月2日、本件確定審第一審と同様、原告の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定して、原告の控訴を棄却する判決を言い渡した(大阪高裁平成11年第753号)。 検察官は、本件確定審控訴審において、原告の勾留の取消しを請求せず、原告が無罪である旨の意見も陳述しなかった。(乙14から16まで) A1も、上記ウの判決を不服として控訴を申し立てたが、大阪高裁は、平成16年12月20日、やはりA1の捜査段階における自白の任意性及び信用性を肯定して、A1の控訴を棄却する判決を言い渡した(大阪高裁平成11年第678号)。(甲1、乙30、363)オ本件確定審上告審等 原告は、上記エの判決を不服として上告を申し立てたが、最高裁判所は、平成18年12月11日、上告を棄却する決定をし(最高裁判所平成17年第457号)、また、同月22日、上記決定に対する異議の申立ても、棄却した(最高裁判所平成18年第823号)。これによって、原告に対する上記エの判決が確定した。(乙17から20まで) A1も、上記エの判決を不服とし上告を申し立てたが、最高裁判所は、同年11月7日、上告を棄却する決定をし(最高裁判所平成17年第378号)、また、同月24日、判決訂正の申立ても、棄却した(最高裁判所 平成18年第27号、第28号)。これによって、A1に対する上記エの判決も確定した。(甲1、乙30)カ原告に対する懲役刑の執行原告は、和歌山刑務所に収容され、本件再審において懲役刑の執行の停 8年第27号、第28号)。これによって、A1に対する上記エの判決も確定した。(甲1、乙30)カ原告に対する懲役刑の執行原告は、和歌山刑務所に収容され、本件再審において懲役刑の執行の停止がされるまで(後記ウ)、身柄を拘束され続けた。 (甲105、原告本人)本件再審請求事件ア再審請求(乙21、22)A1は、平成21年7月7日、上記ウの確定判決に対して再審の請求をし(大阪地裁平成21年第8号)、原告は、同年8月7日、同の確定判決に対して再審の請求をした(大阪地裁平成21年第11号)。 イ本件再審開始決定(甲2から4まで)大阪地裁は、上記アの各請求を併合した上、C8大学院理工学研究科に所属のA31教授らが平成23年5月20日に実施した燃焼実験(C9実験)及びA31教授の尋問を実施した(後記)。 C9実験は、当時の本件ガレージの状況を可能な限り再現し、室温及び風呂釜の燃焼状況についても本件当時の状況に近くなるように調整し、本件風呂釜と同等のガス風呂釜を設置した実験用の小屋を二棟(A棟及びB棟)建設し、本件車両と同種車両を設置し、摂氏25度に設定した約7. 3リットルのガソリンを、A棟では約36秒を、B棟では約60秒をかけてまき終える速度で、実験小屋床面に撒布する実験であった。 A31教授は、C9実験の結果を踏まえ、ガソリン蒸気は、ガソリン液体より軽く、拡散速度も速い上、風呂釜の「煙突効果」(煙突等の縦長の空間において、内部の空気の温度が周囲よりも高い場合に、浮力によって空間上方では内部の圧力が高くなって空気が外部に吸い出される一方で、下方では外部の圧力が低くなり空気が空間内に吸い込まれる現象をいう。)があいまって、液体ガソリンよりも先に本件風呂釜に至ったガソリン蒸気 内部の圧力が高くなって空気が外部に吸い出される一方で、下方では外部の圧力が低くなり空気が空間内に吸い込まれる現象をいう。)があいまって、液体ガソリンよりも先に本件風呂釜に至ったガソリン蒸気 に本件風呂釜の種火が引火するという自然発火の機序を推察することができる旨供述した。 大阪地裁は、平成24年3月7日、C9実験に関連する提出証拠、A31教授の尋問が刑訴法435条6号の新規性及び明白性を満たすものと判断し、原告及びA1について、いずれも再審開始の決定(本件再審開始決定)をした。(乙22)本件再審開始決定の理由は、要旨、以下のとおりである。 aC9実験の結果に照らして、放火方法に関するA1の自白には科学的見地からして不自然不合理なところがあり、実験時の燃焼状況はA1の自白と矛盾し、本件火災の客観的状況ともそぐわない。 b 検察官主張の諸点を検討しても、C9実験の再現忠実性に、特段問題は見当たらず、異なった条件設定で実験が実施されていたとしても、実験結果の重要部分は揺るがない。 c 新証拠によって燃料計について明らかとなった事実に照らすと、本件車両からガソリンを抜いたとのA1の自白を裏付ける事情は、失われる。 dA31教授らが行った熱傷の受傷程度に関する計算結果によれば、A1の自白が真実であれば、本件火災当時にA1が火傷を負わなかったことは、不自然である。 eA1及び原告の自白の信用性には、いずれも疑問が生じる。 f 全証拠を検討しても、本件火災の原因を自然発火と認定するまでには至らないものの、少なくともその可能性を積極的に排斥する証拠関係にないということはでき、これは上記eとあいまって、本件確定審の有罪認定に疑問を差し挟ませる事情といえる。 gA1及び原告が犯人であることの情況証 、少なくともその可能性を積極的に排斥する証拠関係にないということはでき、これは上記eとあいまって、本件確定審の有罪認定に疑問を差し挟ませる事情といえる。 gA1及び原告が犯人であることの情況証拠として指摘された事実関係の証明力は、それのみでA1及び原告を犯人として認定することができる程度には到底及ばない。 ウ本件即時抗告事件検察官は、本件再審開始決定に対し、同月12日、即時抗告の申立てをした(平成24年第144号)。(乙24)なお、検察官による上記即時抗告の申立てにより、原告の和歌山刑務所からの釈放は、釈放予定時刻の直前に、停止された。 (甲105、原告本人) 大阪高裁は、検察官が実施した各種燃焼実験(C10実験)の結果報告のほか、多くの事実取調べを実施した。その際、自然発火の可能性に関する事実取調べを更に実施した結果、本件火災の原因として、自然発火である具体的可能性が否定できないと判断した。 その理由は、要旨、以下のとおりであった。(乙25)a 即時抗告審において、平成26年6月下旬、車両の給油口から相当量のガソリンが漏出したとの報告があったC11(本件車両であるC12と同じ系統の車両である。)4台に、摂氏約15度に設定したガソリンを満タンまで給油して、約10分間暖機運転をした後、車両左後方を約4.5センチメートルジャッキアップして、漏出の有無を確認する実車見分(本件実車見分)が行われ、上記4台のうち3台については、暖機運転開始から約3分で、残りの1台についてはジャッキアップをした時点で、いずれもガソリンが漏れ始めた。 bC13大学自動車システム開発工学科に所属のA32教授は、上記aのガソリン漏出事例を踏まえて、本件車両について、燃料タンク内の圧力が上 をした時点で、いずれもガソリンが漏れ始めた。 bC13大学自動車システム開発工学科に所属のA32教授は、上記aのガソリン漏出事例を踏まえて、本件車両について、燃料タンク内の圧力が上昇し、補助的要因も加わることによって、燃料タンク内の液体ガソリンが給油口から漏出する可能性がある旨意見を述べているところ、その意見は、上記aのガソリン漏出事例の機序や要因についての合理的な説明として、合理性があり、信用性が肯定できる。 cC12においても、給油キャップのシール性に不足を生じて給油口からガソリンが漏出する可能性は、否定できない。 d 本件火災について、100ミリリットルから300ミリリットル程度の量のガソリン漏出による自然発火から大規模火災に発展した可能性が否定されない。本件火災の原因としての自然発火の可能性は、極めて小さいとか、抽象的なものにとどまるなどと評価して、排斥することはできず、その可能性は、具体的に認め得るものといってよい。 eA1の自白については、これを裏付ける物証や客観的事実は存しない。 また、A1の自白に秘密の暴露に当たるものがなく、警察官の誘導や押し付けがあった可能性も否定できない。 fA1及び原告の自白の採取過程には、種々の問題点があるため、信用性に疑問を入れる余地が生じている。 大阪高裁は、平成27年10月23日、検察官の即時抗告を、いずれも棄却する決定をした。(乙25)また、大阪高裁は、同日、原告及びA1に対する各懲役刑の執行を、同月26日午後2時から停止する決定をした。(乙26)本件再審開始決定は、同月30日、確定した。(甲1、乙30)エ本件再審の審理検察官は、平成28年5月2日実施の本件再審の第1回公判期日 月26日午後2時から停止する決定をした。(乙26)本件再審開始決定は、同月30日、確定した。(甲1、乙30)エ本件再審の審理検察官は、平成28年5月2日実施の本件再審の第1回公判期日において、「確定審及び再審請求審段階における全ての証拠を検討した結果、現時点では、被告人が公訴事実の犯行をしたことにつき合理的な疑いを超える程度の立証をすることが困難であると判断するに至った。よって、検察官としては、公訴事実につき、被告人の有罪の主張・立証は行わないこととし、裁判所に対し、しかるべき判断を求めるものである。」との意見を陳述した。 もっとも、検察官は、被告人すなわち原告が無罪であるとの意見は、陳述しなかった。(乙27、29)オ本件再審判決大阪地裁は、同年8月10日、要旨、A1及び原告の各自白には証拠能力 が認められず、A1及び原告の各自白を除いた証拠からは、本件火災が自然発火によるものである可能性が合理的な疑いとして認められる、したがって、A1の放火行為は認められず、また、原告が本件公訴事実記載の各犯行を行ったことも認められないとして、原告及びA1に対し、いずれも無罪の判決(本件再審判決)を言い渡した。 その理由は、要旨、以下のとおりであった。(甲1、乙30) C9実験の結果を踏まえたA31教授の供述は、専門家としての知見及び説明の合理性に照らして、高い証拠価値を有する。 また、A31教授らが実施した滴下実験(床面から10センチメートルの高さに置いた種火から50センチメートル離れた位置に、ガソリンを25ミリリットル滴下して引火するか否かという実験であった。)においては、ガソリン蒸気へ引火したことが認められた。 なお、予混合火炎(あらかじめ酸素と燃料蒸気が混合した予混合気内に形成され リンを25ミリリットル滴下して引火するか否かという実験であった。)においては、ガソリン蒸気へ引火したことが認められた。 なお、予混合火炎(あらかじめ酸素と燃料蒸気が混合した予混合気内に形成される火炎をいう。)ではすすがほとんど生じないため、本件火災後も、本件風呂釜には目立った焼損はなく、若干のすすの付着が認められる程度であったことは上記イの推察と矛盾しないという、A31教授による説明も、合理的なものである。 以上により、本件再審開始決定において、本件車両からガソリンが漏出すれば、本件風呂釜の種火で引火する可能性があったと認められる。 A32教授は、C11のガソリン漏出事案の機序及び原因について、燃料タンク及び同燃料タンク内のガソリンに熱が加えられ、燃料タンク内の圧力が上昇するという要因に、補助的な要因が加わり、給油口から液体ガソリンが漏出した、本件車両についても、同様の要因によって、燃料タンク及び同燃料タンク内のガソリンの温度上昇と同燃料タンクの内圧上昇等により液体ガソリンが給油口から漏出した可能性がある旨の理論上の仮説を立てた上、本件実車見分により、上記仮説は定性的定量的に裏付け られたとし、また、本件実車見分を踏まえて、本件車両についても、給油キャップの開弁圧を上回る圧力上昇が生じる可能性があり、その場合、最大で37ないし38リットルの液体ガソリンが入った燃料タンクの上部空間(約10リットル)の1割に相当する液体ガソリンが漏出する可能性がある旨の意見を述べた。 そして、本件火災発生前のA1の行動(上記1ア)によれば、本件車両の燃料タンク周囲に設置されていた装置が高温となり、ラジエーターからの放熱等も加わって、燃料タンクが加熱される状況にあったといえること、本件GS報告書によれば、本件車両に ア)によれば、本件車両の燃料タンク周囲に設置されていた装置が高温となり、ラジエーターからの放熱等も加わって、燃料タンクが加熱される状況にあったといえること、本件GS報告書によれば、本件車両に本件ガソリンスタンドで給油した際、給油ノズルが自動停止した後も追加給油が行われた蓋然性があること、本件ガレージの床面には、上記エのとおりの傾斜が付けられていたこと、上記給油当時のガソリンの温度は、摂氏15度前後であったと推認できることに照らし、本件火災当時の本件車両においては、A32教授が指摘するガソリン漏出の要因を満たしていた可能性が認められる。 A32教授の上記意見は、A32教授が実施した実証実験による一連の観測結果によっても裏付けられている。 以上により、A32教授の上記意見は、A32教授の専門家としての豊富な経験及び説明の合理性に照らして、高い証拠価値を有するものであって、A32教授の上記意見によれば、本件車両の給油キャップのシール性に不備がない場合であっても、給油口からガソリンが漏出した可能性も否定することができない。 さらに、給油キャップのシール性に不備があった場合は、本件実車見分の対象となったC11と同様、比較的容易に2、300ミリリットル程度のガソリンが漏出する可能性も認められるところ、本件当時の本件車両の給油キャップのシール性に不備があった可能性が合理的なものとして認められた。すなわち、関係各証拠によれば、給油キャップの取っ手が水平 にならなければ、給油キャップが完全に閉まっている状態といえないところ、本件火災の翌日に実施された実況見分調書には、給油口キャップが完全に閉まっていた旨の記載がある一方で、上記実況見分調書に添付された写真(上記ウ)に写っている本件車両の給油キャップは、その取っ ろ、本件火災の翌日に実施された実況見分調書には、給油口キャップが完全に閉まっていた旨の記載がある一方で、上記実況見分調書に添付された写真(上記ウ)に写っている本件車両の給油キャップは、その取っ手部分が明らかに右上がりとなっており、水平になっていない。上記各写真は、給油口外蓋を開いた直後の給油キャップの状態を撮影したものであると考えるのが自然である。他方、上記実況見分調書によれば、給油キャップの内側及び給油口付近の筒内に火熱等による変色等の異常は認められない上、本件火災の翌々日に行われた検証時の写真では、給油キャップの取っ手が水平になっていて完全に閉まっているように見えることをも考え合わせれば、本件火災発生時には本件車両の給油キャップが完全に閉まっていたのに、焼損による変形によって本件火災発生後にその取っ手が斜めに傾く状態になったという可能性は乏しく、その他本件火災前は完全に閉まっていた給油キャップが本件火災の影響によって緩んだことをうかがわせる証拠も、見当たらない。そうすると、本件火災発生時に本件車両の給油キャップが完全に閉まっていなかった可能性が証拠上合理的なものとして残るといわざるを得ず、この事情は、本件車両の給油キャップのシール性に不備があったことを相当程度うかがわせる事情ということができる。 加えて、A32教授が実施した給油キャップのシール性に関する実験等によれば、直径1ミリメートルほどの砂粒等の異物が、給油キャップに付着すれば、シール性が損なわれると考えられるところ、そのような異物の付着がなかったと認めるに足りる証拠もなかった。 以上のとおり、本件火災の発生当時、本件車両の燃料タンク内圧と気圧との間にその開弁圧を超え得る差圧が生じていた可能性及び本件車両の給油キャップのシール性に不備があった可能性が、いずれも合 った。 以上のとおり、本件火災の発生当時、本件車両の燃料タンク内圧と気圧との間にその開弁圧を超え得る差圧が生じていた可能性及び本件車両の給油キャップのシール性に不備があった可能性が、いずれも合理的なもの として認められる。加えて、本件火災後の本件車両の右側面の運転席ドア付近から車両後部にかけて焼損等が生じ、特にスライドドアの把手付近が激しく焼損しているにもかかわらず、その下方にある給油キャップの周辺や、給油キャップから車体下辺にかけて、給油キャップの直径とほぼ同じ約10センチメートル幅の帯状に本件車両本来の赤色が残っている。その原因として、給油口から漏出した液体ガソリンが保護膜となって、塗装の焼損を防いだとの仮説が相応の説得力を有していると考えられるところ、上記仮説以外に、上記の焼損を免れた部位の状況を合理的に説明する仮説は示されていないことに鑑みると、上記の帯状に本件車両の赤色が残っている状況は、本件火災の相当初期の段階から、既に給油口からある程度の量のガソリンが漏れ出していた可能性を裏付けるものと評価することができる。よって、本件車両の給油キャップのシール性に不備があり、その結果2、300ミリリットル程度のガソリンが給油口から漏出した可能性が、合理的なものとして残る。 そうすると、本件火災が自然発火である可能性は、抽象的・非現実的なものにとどまらないというべきであり、少なくともそれ自体で、本件火災の事件性やA1の犯人性を強く推認させるほど低いものなどとはいうことはできない。 A1の捜査段階における自白については、以下のとおりである。 A1から、話があると言ってB1署にやってきたというA5の供述は、自ら作成した報告書の記載と矛盾しており、8月14日の自供書の作成のれたきっかけとなる出来事につい については、以下のとおりである。 A1から、話があると言ってB1署にやってきたというA5の供述は、自ら作成した報告書の記載と矛盾しており、8月14日の自供書の作成のれたきっかけとなる出来事について虚偽の供述をしている。 また、既に本件の重要参考人として事情聴取を受けているA1が、本件の動機ともなり得るA2との関係について自発的に話し出したというA5の供述は、唐突に過ぎる一方で、上記報告書によれば、当時、A5らは、A1がA2に対して性的行為に及んでいることを認知しており、既に捜査 を始めていたことが認められる上、A1にA2との性的関係を追及することができるだけの材料を既に得ていたことがうかがわれる。このような事情に照らせば、専らA1から自発的にA2との性的関係を話し出したというA5の供述部分も、不自然な感を免れない。 さらに、9月10日の自供書の作成過程についても、A5は、当初は、取調べの際にA1に対してA3の話はしていないと供述していたのに、A1の確定控訴審における証人尋問の際には、その旨の記載のあるA1の自白調書を示されて追及された結果、その供述を覆していると認められ、この点について、当初は虚偽の供述をしていたといわざるを得ない。そして、このような虚偽の供述をしているのは、A1が供述するとおり、A1が火を付けるところをA3が目撃していたという虚偽の事実関係を前提にした追及をしたのを隠そうとしたためであるという疑いが生じる。 さらに、A5は、9月10日の取調べにおいても、自分から、A2との性的関係を言い出したことはない旨供述するが、本件の動機ともなり得る事情について、A1に追及しなかったというのは不自然である上、A4作成の取調状況報告書によれば、同日、原告に対してはA1とA2との性的関係を明らかにして取調べを行っ 述するが、本件の動機ともなり得る事情について、A1に追及しなかったというのは不自然である上、A4作成の取調状況報告書によれば、同日、原告に対してはA1とA2との性的関係を明らかにして取調べを行っていたことが認められること等に照らすと、A5から、否認すればA2との性的関係をマスコミにばらすと告げられ、それが虚偽自白をする理由の一つになった旨のA1の供述の信用性は、否定し難いものとなっている。 さらに、9月15日の取調べに係るA5を取調担当者とする取調日誌には、「特異な言動」欄に「お父さんの手紙又見せて下さい」との記載があり、この記載は、既に見せた父親の手紙をもう一度見せて欲しいという意味に解するのが自然である。そうすると、その日より前に、A5が、A1に対し、A1の父親の手紙を見せていたということになる。 A1の自白の内容は、相当具体的ではあるものの、捜査官が把握してい た情報から推測可能な内容にとどまり、秘密の暴露というべき内容はない。 また、A1の自白する放火行為は、C9実験に照らすと、実現可能性に乏しく、その実験結果は、本件火災の初期段階を目撃した近隣住民らが共通して述べる本件火災の状況と整合してもいないから、放火の実行方法に関するA1の自白の内容は、不自然不合理というほかない。 A1の放火の実行方法に関して上記不自然不合理な内容の自白になっていることは、警察官の誘導・示唆によって虚偽の自白を続けたという、A1の供述を裏付けるものということができる。 また、A1の自白以外に、原告がA2の殺害を企図しても不自然ではないというほど原告とA2との関係が本件当時悪かったことをうかがわせるような証拠は見当たらない上、当時の原告らの家計状況等も踏まえれば、家財を燃やしA2を殺害してまでして170万円を手に入 自然ではないというほど原告とA2との関係が本件当時悪かったことをうかがわせるような証拠は見当たらない上、当時の原告らの家計状況等も踏まえれば、家財を燃やしA2を殺害してまでして170万円を手に入れたかったというのは、やや無理がある。また、本件火災発生直後からの原告らの行動は、突然の火災による動揺や狼狽等によって合理的な行動ができなかったと見ることが可能であるだけでなく、原告は、A2を焼死させて保険金を得ようと企てた者にはそぐわない行動もしている。 そして、A1の供述によれば、A1は、同月10日、A5から、A3がA1による放火行為を目撃しているという事実と異なる前提での追及を受けた上、犯行を否認すればA2との性的関係を公にすることを示唆され、原告が自白した旨虚偽を告げられるなどしたと認められ、このような取調べは、被疑者が心理的強制を受け、その結果、虚偽の自白が誘発されるおそれのあるものである。そして、A1の父親もA1が有罪であると考えていることを表す手紙を示すなどした結果、A1において、自らが本件火災の放火犯人であるとの疑いを晴らすことはもはや不可能とあきらめ、できるだけ情状を良くしようとの思いから、取調官に迎合して虚偽の自白をしていったとの疑いがある。さらに、その後の自白も、取調べの影響が残存 したまま自白を続けたと疑いが残るから、A1の自白には任意性が認められない。 原告の自白については、以下のとおりである。 原告の自白の信用性を裏付けるという関係にあるA1の自白に証拠能力が認められない以上、原告の自白に信用性を認めることはできないが、次のとおり、そもそも原告の自白の任意性を認めることができない。 A4作成の取調状況報告書の記載内容に照らせば、A4らにおいては、取調べの最初から原告を 告の自白に信用性を認めることはできないが、次のとおり、そもそも原告の自白の任意性を認めることができない。 A4作成の取調状況報告書の記載内容に照らせば、A4らにおいては、取調べの最初から原告を犯人扱いした上、何度も、A1とA2との間に性的関係があったことを告げ、A3の目撃状況を説明して、その供述を母親である原告が争うのかと迫り、A2を助けようと思えば助けられたのになぜ助けなかったのかと追及し、A1は真実を話していると言って自白を迫ったことが認められる。このように、上記取調状況報告書の記載内容だけでも、原告に対して相当な精神的圧迫を加える取調べが躊躇なく行われていたということができる。 9月11日以降の原告に対する取調べ状況が記載された取調日報には、複数箇所にA4らが原告に対して大声で追及した旨の記載が認められることも考え合わせれば、「9月10日の取調べの際に、A2が死んでから食事もとれず、健康状態はあまり良くなかった中、怒鳴られ続け、午後になってからも、認めろと怒鳴られ、A1とA2との関係を、何度も言われ、そのうち、A1が自白をしたというファクシミリが流れてきたと言われて、それをちらちら見せられ、また怒鳴られ、机を叩いたり、自分の目の前に顔を近づたりして、犯行を認めろと迫られた」旨の原告の供述を、虚偽であると決め付けて排斥することはできない。 また、A24弁護士が、9月10日の接見時、女性の警察官に支えられるようにして留置所に連れて行かれて、一人では歩けない状態であった旨を述べていることからすると、原告は、A4らの上記取調べによって、相 当衰弱していたことがうかがわれ、これは過度の精神的圧迫を加える取調べが行われていた疑いを強めるものである。 さらに、上記取調日報に、A2やA3の話題に言及した旨の記載が複 て、相 当衰弱していたことがうかがわれ、これは過度の精神的圧迫を加える取調べが行われていた疑いを強めるものである。 さらに、上記取調日報に、A2やA3の話題に言及した旨の記載が複数箇所に認められる上、原告に対し、A1が作成した原告宛の書面(本件書面)を示して取調べを行った旨の記載があることに照らせば、A4らは、9月11日から同月14日までの間においても、9月10日の取調べと同様の取調べを行って自白を迫っていたと考えるのが自然である。 加えて、この間の取調べにおいては、一度は自供した原告が否認ないし黙秘に転じていたのであるから、A4らによる追及の程度は、より強烈なものであったと推察できる。 以上のとおり、原告に対し、9月10日の当初から、過度の精神的圧迫を加える取調べが行われ、原告において虚偽の自白をせざるを得ない状況に陥ったとの疑いが合理的なものとして認められる。したがって、原告の自白に任意性を認めることはできない。 カ本件再審判決の確定検察官が、本件再審判決が言い渡された平成28年8月10日、本件再審判決に対する上訴放棄の申立てをしたため、本件再審判決は、即日確定した。 (乙31) 2 警察官の原告に対する取調べの違法性 判断枠組み任意捜査の一環としての被疑者に対する取調べは、事案の性質、被疑者に対する容疑の程度、被疑者の態度等諸般の事情を勘案して、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度において、許容されるものと解すべきである(最高裁判所昭和57年第301号同59年2月29日第二小法廷決定・刑集38巻3号479頁参照)。 検討 上記1の認定事実に基づき、以下、各争点について判断する。 ア A1の取調べの違法性 A5らは、9月10 二小法廷決定・刑集38巻3号479頁参照)。 検討 上記1の認定事実に基づき、以下、各争点について判断する。 ア A1の取調べの違法性 A5らは、9月10日の任意同行より1月以上も早い段階で、A1とA2とが性的関係にあったという、A1にとって公表されたくない決定的な弱みであり、かつ、犯行の動機となり得る事実を把握していたところ、同日の取調べにおいて、A1に対し、犯行を否認すればA2との関係を公にすると示唆した上、原告が自白した旨の虚偽の事実や、A3もA1を疑っている旨の虚偽の事実を告げたことによって、A1が心理的強制を受け、その結果、虚偽の自白が誘発されるおそれを生じさせたものである。この点は、本件再審判決が正当に指摘するとおりである。 また、A1は、死刑に処されることを非常に畏怖していた様子が窺われるところ、A5らによる同月12日から同月14日までの取調べにおいても、A5から、A3がA1による放火行為を目撃しているという事実とは異なる前提での追及を受け、原告が自白した旨の事実を告げられ、接見禁止中であるにもかかわらず、病魔に侵されている父親がA1を有罪であると考えている旨の手紙を複数回閲覧させられた結果、できる限り有利な情状により死刑を回避するため、A5らに迎合し、虚偽の自白をした疑いがある。 同月15日以降においても、A1は、上記同月10日から同月14日までの虚偽の自白が誘発されるおそれを生じさせた取調べの影響が残存したまま自白を続けた合理的な疑いがある。この点も、本件再審判決が正当に指摘するとおりである。 加えて、当初、A24弁護士と接見して否認していたA1が、後に、弁護人を絶対に信頼してはならない旨を記載した本件書面を作成し、A24弁護士を突如解任した上 当に指摘するとおりである。 加えて、当初、A24弁護士と接見して否認していたA1が、後に、弁護人を絶対に信頼してはならない旨を記載した本件書面を作成し、A24弁護士を突如解任した上、以後の接見を拒絶したことに照らすと、A5らによる上記取調べにおいて、A1と弁護人との信頼関係を動揺させられた 可能性も否定することはできない。 以上のA5らによる取調べの結果、A1は、当初の否認から一転して自白するに至っているが、その自白の内容は、警察官が把握していた情報から推測可能な内容にとどまり、秘密の暴露というべき内容も存在せず、後に不自然・不合理・非科学的であると判断された犯行方法を含むものであることに照らすと、A5らの推測に基づく誘導及び示唆によって上記の自白をするに至った疑いがある点についても、本件再審判決が正当に指摘するとおりである。 以上によれば、A5らの上記取調べが、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えていたことは、明らかである。 イ原告の取調べの違法性後記以下のとおり、9月10日以降に行われたA4らの一連の取調べは、原告の母親としての情愛と女性としての感情とを巧みに利用し、虚偽の事実や違法な取調べによって獲得されたA1の自白を織り交ぜつつ、体調の著しい悪化にも適切に対処せず、弁護人らとの信頼関係をも動揺させる違法な手法によって行われたものである。 A4は、9月10日の任意同行より1月以上も早い段階で、A1とA2との性的関係を把握しており、A1及び原告による共同犯行を疑っていたところ、同日の取調べにおいて、愛情を注いで将来を楽しみにしていたA2を失って落胆していた原告に対し、これを知れば母親として当然に激しく動揺することが予想されるA1とA2との性 共同犯行を疑っていたところ、同日の取調べにおいて、愛情を注いで将来を楽しみにしていたA2を失って落胆していた原告に対し、これを知れば母親として当然に激しく動揺することが予想されるA1とA2との性的関係を、冒頭に告知した上、原告がかねてA1とA2との性的関係を知悉していたものと決め付けて追及するとともに、幼いA3すらこれを知悉していたとの虚偽の事実も告知して追及した。これが、原告が自白するに至った大きな要因であることは、原告が述べているとおりである。また、A4は、当時は存在しなかった客観的・科学的証拠があたかも存在するかの ように装うとともに、原告の母親としての良心を揺さぶり、A2を救助することができなかったことを責め立て、A3がA1の放火を目撃していた旨の虚偽の事実を告知した上、母親としてA3と対峙することの不当性を訴え、死亡したA2を成仏させるよう諭して、原告に自白を迫った。さらに、本件が重大な事案であったことを考慮しても、原告に対する取調べは、早朝から夜間まで長時間に及び、休憩も、取調室において、合計1時間しか確保されていない。上記取調中、原告の体調が著しく悪化したのに、A4は、医療的措置を採っておらず、上記取調べ終了後、原告は、精神的にも、体力的にも、限界に近い状態に陥っていた。 加えて、原告は、交通違反以外に前科前歴がなく、警察官による本格的な取調べは、初めての経験であった上、A1とは異なり、上記取調べに先立ち、直接、弁護士から法的助言を受けたこともなく、上記取調べ時点においては、いまだ弁護人を選任していなかった。 当初否認していた原告が、取調べの初日である同日中に自白に転じたのは、上記認定のとおり、当初から過度の精神的圧迫を加える取調べが行われ、原告において虚偽の自白をせざるを得ない状況に陥った結果であ 当初否認していた原告が、取調べの初日である同日中に自白に転じたのは、上記認定のとおり、当初から過度の精神的圧迫を加える取調べが行われ、原告において虚偽の自白をせざるを得ない状況に陥った結果であり、このようなA4らの取調べは、社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えていたというべきである。 A4は、同月11日の取調べにおいても、否認に転じた原告に対し、度々大声を出して、犯行を追及した。A4の自白の獲得に向けた追及が熾烈であったことは、同日付けの原告の供述録取書に、身上経歴関係の記載の途中で、弁護人らとの接見後、突如、原告が自白した旨の記載がされ、更にその直後に、原告が上記記載を否定して署名指印を拒絶した記載があるという特異な経過に照らして、明らかである。 また、A4らは、同月13日の取調べにおいて、原告が大阪拘置所に収容されている間、否認ないし黙秘を続ける原告から自白を得ることが できなかったが、本件準抗告により原告がB1署に移監された途端、黙秘する意向を示した原告に対し、供述するよう大声で求めるとともに、A2の生前の写真を示しつつ、A2が死亡する際の状況を生々しく告知しただけでなく、接見禁止中であるにもかかわらず、A1が既に自白しており弁護人を信頼すれば死刑になる可能性があるかのような記載のある本件書面をも示して、自白を迫った。A4らによる一連の取調べにおいて、内縁の夫であるA1の自白を知らされたことが、原告が自白するに至った大きな要因であることも、原告が述べているとおりである。 以上のような供述の自由を侵害し弁護人らとの信頼関係を動揺させるA4らの取調べが、上記の違法な取調べによる影響とあいまって社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えていたことは、明らかである。 A4ら を侵害し弁護人らとの信頼関係を動揺させるA4らの取調べが、上記の違法な取調べによる影響とあいまって社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えていたことは、明らかである。 A4らは、同月14日の取調べにおいて、原告が犯人であるのに虚偽の弁解を述べているとの前提に立ち、自白と反省を迫り、椅子から立ち上がらせるなど義務のない行動を求め、椅子から立ち上がれず嘔吐するなど体調が著しく悪化した原告の状況を現認していたにもかかわらず、医療的措置を採らなかった。 以上のようなA4らの取調べが、上記及びの違法な取調べによる影響とあいまって社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えていたことは、明らかである。 A4らは、同月15日以降の取調べにおいても、否認ないし黙秘する原告に対し、義務のない行動を求め、否認ないし黙秘を続ける供述態度が弁護人らを欺く行動であるなどと大声で告知し、原告の母親としての良心に付け込み、A2を救助することができなかったことを責め立て、自白しなければA3に迷惑が掛かると大声で告知していた。 以上のようなA4らの取調べが、上記からまでの違法な取調べによる影響とあいまって社会通念上相当と認められる方法ないし態様及び限度を超えていたことは、明らかである。 小括以上のとおり、9月10日以降に行われたA4らの一連の取調べが、国家賠償法1条1項の適用上違法であることは、明らかである。 したがって、警察官の取調べの違法性に係るその余の争点及び警察官の補充捜査の違法性に関する争点については、判断する必要がない。 ウ因果関係 上記アのとおり、A1は、当初否認していたにもかかわらず、A5らの違法な取調べによって、自白に転じ、以後、その影響の下で 査の違法性に関する争点については、判断する必要がない。 ウ因果関係 上記アのとおり、A1は、当初否認していたにもかかわらず、A5らの違法な取調べによって、自白に転じ、以後、その影響の下で自白を維持したものであり、A5らの違法な取調べがなければ、否認を続けていたものと合理的に推認することができる。 また、上記イのとおり、原告も、当初否認していたにもかかわらず、A4らの違法な取調べによって、二度の自白に転じたものであり、上記A1と同様、A4らの違法な取調べがなければ、否認を続けていたものと合理的に推認することができる。 さらに、A5ら及びA4らの各取調べの経緯に照らすと、A1の自白と原告の自白が相互補強・相互依存の関係にあることは、明らかである。 そうすると、A5ら及びA4らの違法な取調べがなければ、A1の自白及び原告の自白は、いずれも存在しなかったことになる。 本件刑事事件における直接証拠は、A1の自白及び原告の自白のみであり、A1の自白及び原告の自白は、原告が、本件刑事事件により逮捕勾留され、本件公訴を提起され、本件確定審において有罪判決を受けることになった決定的な重要証拠であることは明らかである。よって、A5ら及び A4らによる各違法な取調べと原告の身柄拘束、本件公訴の提起、有罪判決及び懲役刑の執行との間には、因果関係を認めることができる。 なお、A1の自白及び原告の自白以外にA1及び原告による本件犯行を推認させる事情として、①新築分譲マンションの購入資金の調達のためにA2の保険金を詐取する必要があった可能性、②本件火災前後における原告の言動に不自然な点があったこと及び③原告がA2を嫌悪していた可能性が指摘されていた。 しかし、①上記マンションの購入資 の保険金を詐取する必要があった可能性、②本件火災前後における原告の言動に不自然な点があったこと及び③原告がA2を嫌悪していた可能性が指摘されていた。 しかし、①上記マンションの購入資金として不足していた残額は170万円程度であったこと、仮に同額が不足した場合も、不動産会社によって補填される可能性があったこと、本件火災発生当時における原告及びA1の経済状態は、殺人を実行してまで保険金を詐取しなければならないほどに逼迫した状態ではなく、むしろ、住宅ローンの審査を通過する程度の収入はあったことに照らすと、A1と原告がマンションの購入資金調達のためにA2を焼死させるという重大凶悪事件を犯す動機としては、疑問があり、十分なものであったとはいえない。そもそも、真夏の酷暑の夕方に、より燃焼しやすい晴天時を避け、あえて雨天時に放火殺人を敢行しようと計画すること自体が、犯行計画として不自然・不合理である。また、現に多数の近隣住民が初期消火活動に携わったことからも明らかなとおり、一般に、人の活動時間帯であり迅速な消火活動が行われやすい夕方に、あえて放火殺人を敢行することも、犯行計画として不自然・不合理である。加えて、本件保険契約の内容、締結時期、原告ら家族の加入状況及び免責事由をも考慮すれば、A1及び原告の犯行動機は、十分なものであったとはいえない。 また、②原告が、小学校高学年であったA2に対し、夕方、一人で入浴するよう促した行為は、通常の家庭にもみられる日常的な行動にすぎず、格別不合理なものではないこと、原告による本件火災発生後の救助活動が、 後方視的に見れば、必ずしも十分ではなかったとしても、突然に発生した火災に直面して動揺ないし狼狽したため、かつ、8歳のA3を抱き抱えて脱出した状態であったため、適切か の救助活動が、 後方視的に見れば、必ずしも十分ではなかったとしても、突然に発生した火災に直面して動揺ないし狼狽したため、かつ、8歳のA3を抱き抱えて脱出した状態であったため、適切かつ合理的な救助活動ができなかったと説明することも可能であること、本件火災により本件家屋、本件車両及び家財道具を全て失った原告が、金銭に窮し、本件保険契約に基づく保険金の支払を求めた行為は、子を失った親の行動としても、必ずしも不合理であるとはいえないことに照らすと、本件火災前後における原告の言動も、犯人性を推認させる事情としては十分でない。むしろ、本件火災発生直後に火に散水して119番通報したことは、放火殺人を共謀した者の行動としては、明らかに矛盾する。また、A1も、本件火災発生直後、原告に消火活動を指示し、下着姿で本件家屋から飛び出した上、原告及び近隣住民に対して本件火災の発生を知らせて、自ら消火活動を行い、時期については住民の供述が一致していないものの、少なくともA2の救出を呼び掛けていたのであって、放火殺人を実行した者の行動としては、やはり矛盾している(A19が経験を有する消防吏員であることに照らすと、本件火災発生直後に作成された本件聞込み状況書の方が、後に作成された供述録取書に比して信用性が高いことは、明らかである。また、A20の供述についても、本件火災発生直後に作成された供述録取書の方が、その約2か月後に作成された供述録取書に比して信用性が高いというべきである。)。 さらに、③原告がA2を嫌悪していた旨のA1の供述は、裏付けが乏しく(本件即時抗告事件に係る大阪高裁の棄却決定)、かえって、認定事実によれば、原告は、本件火災発生時まで、A2に対し、A3とともに、母親らしい愛情を注ぎ、将来の成長を期待していたこと、A2が死亡 しく(本件即時抗告事件に係る大阪高裁の棄却決定)、かえって、認定事実によれば、原告は、本件火災発生時まで、A2に対し、A3とともに、母親らしい愛情を注ぎ、将来の成長を期待していたこと、A2が死亡した後、ひどく取り乱し、憔悴していたことが認められる。これらの事実によれば、原告は、A1がA2と性的関係があったことを本件火災の前に知悉していたとは認め難いから、A4に上記事実を告知され、精神的に動揺した結果、 虚偽の自白に至ったとの上記イの認定は、一層強固に裏付けられることになる。 したがって、A1の自白及び原告の自白以外にA1及び原告による本件犯行を推認させる事情は、いずれも決定的なものであったと認めることは困難であるから、違法な取調べによって獲得されたA1の自白及び原告の自白が存在しなければ、上記①から③までの事情のみによって原告が身柄を拘束されて有罪判決を受ける可能性はなかったというべきである。 小括よって、被告大阪府は、原告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害を賠償する責任を負うことになる。 3 検察官の捜査段階における各活動の違法性上記1の認定事実に基づき、以下、各争点について判断する。 後記から6までに認定説示するとおり、総じて、本件再審判決から後方視的に見れば、検察官の諸活動には種々の疑問があるように思われるが、本件確定審が行われた当時の法令、判例、実務及び証拠関係並びに当審に現れた証拠関係に照らすと、原告の主張を十分にしんしゃくしても、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとまでは、断定することができない。 警察官の原告に対する違法な取調べを黙認し、又は助長したか原告は、A6検察官が、本件準抗告を申し立て、また、原告に対する取調べに関する弁護人らの抗議に対して何 は、断定することができない。 警察官の原告に対する違法な取調べを黙認し、又は助長したか原告は、A6検察官が、本件準抗告を申し立て、また、原告に対する取調べに関する弁護人らの抗議に対して何らの対応もせず、さらに、弁護人らの接見を妨害した結果、警察官の違法な取調べを黙認し、又は助長した旨主張する。 ア A6検察官が本件準抗告を申し立てた行為は、違法であるか。 A6検察官が、A1及び原告を通常逮捕して間がない段階で、かつ、A1及び原告が既に自白と否認とを繰り返していた状況下において、放火殺人という重大事案について、真相解明のために引き当たり捜査の必要性を主張して、本件準抗告を申し立てた行為は、刑訴法429条1項2号に基づく適法 行為であり、この種の事案について、一般的に、犯行現場等について引き当たり捜査を実施する必要性を否定することができないことは明らかであるから、その後の捜査の状況に照らして、最終的に引き当たり捜査を実施しなかったとしても、検察官による本件準抗告の申立てが国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえず、原告の上記主張は、採用することができない。 イ A6検察官は、原告に対する取調べについての弁護人の抗議に対し、何らの対応も採らなかったか。 A6検察官は、弁護人ら作成の9月19日付け抗議書を受領した後、原告から警察官の取調べの様子を聴取して、「ちゃんと言っとくから」と返事をしたこと、原告も、9月20日以降、B1警察署に取調べに赴いた日は、少しだけ取調べ状況のひどさがましになった旨述べていること、同月29日付けの大阪地検に対する申入書において、同月20日以降の警察官の取調べを問題視する指摘はない上に、検察官が警察官らの原告に対する違法不当な取調べを黙認し、又は助長していた旨の指摘はないこと、弁 9日付けの大阪地検に対する申入書において、同月20日以降の警察官の取調べを問題視する指摘はない上に、検察官が警察官らの原告に対する違法不当な取調べを黙認し、又は助長していた旨の指摘はないこと、弁護人らは、A6検察官に対し、その後、抗議書を送付していないこと、弁護人らによる勾留期間延長の裁判に対する準抗告に対し、大阪地裁は、「被疑者の供述の任意性確保のため、相応の配慮を施しながら捜査を実施していることが窺え」る旨認定したこと(乙376)に照らすと、A6検察官が、弁護人の上記抗議を無視したとは認めることができない。 よって、A6検察官の行動が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえず、原告の上記主張は、採用することができない。 ウ A28検察官は、弁護人の接見を妨害したか。 検察官、検察事務官又は司法警察職員(本項目において、以下「捜査機関」という。)は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(本項目において、以下「弁護人等」という。)から被疑者との接見又は書類若しくは物の授受(本項目において、以下「接見等」 という。)の申出があったときは、原則としていつでも接見等の機会を与えなければならないのであり、刑訴法39条3項本文にいう「捜査のため必要があるとき」とは、上記接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られる。そして、弁護人等から接見等の申出を受けた時に、捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に上記取調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、上記取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として上記にいう取調べの中断等により捜査に顕著な支 調べ等をする確実な予定があって、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、上記取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として上記にいう取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たると解すべきである。 上記のように、弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは捜査に顕著な支障が生じるときは、捜査機関は、弁護人等と協議の上、接見指定をすることができるのであるが、その場合でも、その指定は、被疑者が防御の準備をする権利を不当に制限するようなものであってはならないのであって(刑訴法39条3項ただし書)、捜査機関は、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見等のための日時等を指定し、被疑者が弁護人等と防御の準備をすることができるような措置を採らなければならないものと解すべきである(最高裁判所平成7年第105号同12年6月13日第三小法廷判決・民集54巻5号1635頁参照)。 これを本件についてみると、A29弁護士は、A28検察官が弁護人らと協議の上で指定した接見時間外である同月14日午後8時40分頃、あらかじめA28検察官に連絡しないまま、B1署を訪れ、A28検察官に架電した上、「弁護人となろうとする者」の立場で原告との接見を求めたが、当時、A4らが現に原告を取調べ中であった。そうすると、A29弁護士の申出に沿った接見を認めたのでは取調べの中断により捜査に顕著な支障が生じることになり、「捜査のため必要があるとき」に該当するものとして、A28 検察官は、A29弁護士と協議の上、接見指定をすることができることになる。 その上で、A28検察官は、A29弁護士に対し、原告が取調べ中であることを伝え、原告が接見を拒否しない限り、上記取調べが終わり次第、原告との接見を認める旨述べ、A29弁護 できることになる。 その上で、A28検察官は、A29弁護士に対し、原告が取調べ中であることを伝え、原告が接見を拒否しない限り、上記取調べが終わり次第、原告との接見を認める旨述べ、A29弁護士自身、上記の経緯に照らし、A28検察官の対応もやむを得ないものと判断して、上記取調べの中断を要求していない。その後、A28検察官は、A29弁護士から、直ちに原告の取調べを中断した上で接見を認めるよう要求されたため、A4らに対し、その旨を伝達した上、その10分後、A29弁護士に対し、間もなく取調べを終える旨及びその後に接見を指定する旨を伝え、その25分後、接見を認める旨を伝え、現にA29弁護士に接見を認めている。これらの事実に照らすと、A28検察官は、A29弁護士と協議して、できる限り速やかな接見のための時間を指定し、原告がA29弁護士と防御の準備をすることができるような措置を採ったと認めるべきである。 なお、A6検察官は、大阪地裁裁判官に対し、原告が自白を始めた時間について、異なる説明をしているが、供述態度が変遷している被疑者が「自白を始めた」と評価し得る時点を厳密に特定することは、困難な場合があるといわざるを得ないから、原告の取調べを行っていないA6検察官が、原告が自白を始めた時間を正確に把握しておきながら、殊更、裁判官に対し、虚偽の説明をしたとまでは認め難い。 よって、A28検察官の行った接見指定が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえず、原告の上記主張は、採用することができない。 原告及びA1の自白の評価を誤ったか原告は、検察官において、原告らの取調状況報告書を検討するなどすれば、A1及び原告の自白の任意性及び信用性の欠如を容易に認識することができた旨主張する。 ア A1は、任意同行以前 原告は、検察官において、原告らの取調状況報告書を検討するなどすれば、A1及び原告の自白の任意性及び信用性の欠如を容易に認識することができた旨主張する。 ア A1は、任意同行以前の時点において、弁護士から法的助言を得ていた上、勾留された後、A24弁護士を弁護人に選任しており、A24弁護士を解任した後は、A25弁護士を弁護人に選任したこと、A25弁護士を弁護人に選任した後は、一貫して自白を続けたこと、A25弁護士からは、警察官及び検察官に対し、抗議文が送付されることはなかったこと、後に本件再審において否定されることにはなるが、本件公訴の提起の時点においては、詳細かつ具体的で一応それなりに筋の通った自白を続けていたことに照らすと、検察官がA1の取調状況報告書を検討すれば、直ちにA1の自白の任意性及び信用性の欠如を容易に認識することができたとまでは認めることができない。 イ原告は、上記2イのとおり、9月10日の当初から過度の精神的圧迫を加える取調べが行われていた上、自白と否認ないし黙秘とを繰り返していたのであるから、原告が弁護人らから法的援助を受けていたことを考慮しても、A6検察官が、原告の取調状況報告書の記載内容と原告の供述過程とを丹念に突き合わせて検討を尽くしていたならば、原告の自白の任意性及び信用性について、相応の疑問を抱いてしかるべきであったとも思われる。 しかしながら、A6検察官が、同月19日に行った原告の取調べにおいて、原告は、自己の体調に関し、生理痛や過去の交通事故の後遺症による腰痛等を訴えるにとどまっており、A4らの取調べによる体調不良は訴えておらず、「捜査官への要望としては、取り調べ時間を短くして欲しいただそれだけである」と述べて、原告の自白の任意性及び信用性に疑問を生じさせる警察官らの取調べに 、A4らの取調べによる体調不良は訴えておらず、「捜査官への要望としては、取り調べ時間を短くして欲しいただそれだけである」と述べて、原告の自白の任意性及び信用性に疑問を生じさせる警察官らの取調べに係る具体的な事情を、直接、訴えることがなかったのである。 原告は、その3日後の同月22日の取調べにおいては、首を掴まれて供述書に顔を押し付けられたと訴えたが、同時に、この何日間かは(警察官によるそのような行為は)なかったが、検察官にぜひ聞いて欲しかった、と述べる一方、首と腰が痛むので今はシップもしてもらっているとも述べていたため (乙374)、A6検察官において、原告の上記訴えが、同日時点では過去のものとなっており、重要な事情として深刻に捉えられなかった可能性もないではない。なお、そもそも、本件当時、通常の能力を有する検察官が、取調状況報告書を、いかなる場合に、どの程度詳細に検討した上で、公訴の提起を行っていたのかも、証拠上明らかでない。 このような事情と、A1が詳細かつ具体的で一応それなりに筋の通った自白を維持していたこと(上記ア)、後に証拠力が乏しいものと判断されることにはなるが、一応の燃焼実験が実施されて、専門家の意見も聴取されていたことがあいまって、A6検察官は、原告の取調状況報告書の記載内容を考慮してもなお、有罪の心証を得て本件公訴の提起に至ったのではないかと推認することも可能である(原告及び被告国のいずれからも、A6検察官の証人尋問の申出が行われなかったため、この推認の当否を厳密に判断することはできない。同様の理由で、上記のとおり、本件当時における取調状況報告書の検討に係る標準的な実務運用についても、判断することができない。)。 以上によれば、検察官が上記取調状況報告書を検討していれば直ちに原告の自白の任意性及び信 とおり、本件当時における取調状況報告書の検討に係る標準的な実務運用についても、判断することができない。)。 以上によれば、検察官が上記取調状況報告書を検討していれば直ちに原告の自白の任意性及び信用性の欠如を容易に認識することができたとまでは、断定することができない。 ウよって、原告の上記主張は、採用することができない。 小括よって、検察官の捜査段階における各活動が、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとまでは断定することができず、原告の上記主張は、採用することができない。 4 検察官による本件公訴の提起の違法性 判断枠組み刑事事件において、無罪の判決が確定したというだけで直ちに検察官の公訴の提起及び追行が国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為となるもので はなく、公訴の提起及び追行時の検察官の心証は、その性質上、判決時における裁判官の心証と異なり、上記提起及び追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であるところ、この理は、上告審で確定した有罪判決が再審で取り消され、無罪判決が確定した場合においても異ならないと解するのが相当である。公訴の提起時において、検察官が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば、上記公訴の提起は違法性を欠くものと解するのが相当である。したがって、公訴の提起後その追行時に公判廷に初めて現れた証拠資料であって、通常の捜査を遂行しても公訴の提起前に収集することができなかったと認められる証拠資料をもって公訴提起の違法性の有無を判断する資料とすることは許されないものというべきである(最高裁判所昭和 であって、通常の捜査を遂行しても公訴の提起前に収集することができなかったと認められる証拠資料をもって公訴提起の違法性の有無を判断する資料とすることは許されないものというべきである(最高裁判所昭和59年第103号平成元年6月29日第一小法廷判決・民集43巻6号664頁、最高裁判所昭和62年第667号平成2年7月20日第二小法廷判決・民集44巻5号938頁、最高裁判所平成24年第133号同26年3月6日第一小法廷判決・訟務月報60巻12号2485頁参照)。 原告は、検察官において、本件公訴の提起に当たり、本件火災が事故により生じた可能性の程度、A1が自白した放火行為による着火の可能性等を十分検討する必要があり、そのための再現実験などの補充捜査を行う義務があったにもかかわらず、これを怠った旨、自然発火の可能性について、更なる補充捜査を行う義務があったにもかかわらず、これを怠った旨、検察官によるA1及び原告の取調べ状況ないし自白の任意性に対する検討が不足していた旨主張する。 しかし、公訴の提起時において、検察官が現に収集した証拠資料によれば、本件火災の出火場所は、本件ガレージであること、火元となり得る火気の存在としては、本件車両と本件風呂釜があるところ、いずれも実況見分の結果及び 専門家の意見に基づき火災原因であることが否定されたために、何者かの故意又は過失による出火が疑われたが、本件家屋の表戸が施錠されていたことから、第三者の行為による出火が考え難かったこと、A1及び原告が一定の金銭を必要としており一応の動機らしいものは存在したこと、本件火災発生後のA1の言動に不自然な点がないとはいえないこと、A1の自白と原告の自白が存在しており、これらの内容は大筋において一致していたことが認められていた。 他方、本件再審判決 存在したこと、本件火災発生後のA1の言動に不自然な点がないとはいえないこと、A1の自白と原告の自白が存在しており、これらの内容は大筋において一致していたことが認められていた。 他方、本件再審判決が認定した給油口からのガソリンの漏出による自然発火の可能性を裏付ける証拠資料(複数の大規模な実験結果及び専門家の意見)は、いずれも本件再審請求事件の過程において、相当の時間と費用とをかけて収集されたもの推認することができるから、上記証拠資料については、通常の捜査を遂行しても公訴の提起前に収集することができなかったものと認められる。 そして、本件確定審第一審が、公訴の提起時において検察官が現に収集した証拠資料に基づき、有罪の判決を言い渡し、本件確定審控訴審及び本件確定審上告審が、いずれも上記判決を維持し、上記判決が確定したことに照らすと、A1が犯行に使用したと自白した給油ポンプ及びターボライターが本件家屋内から発見されず、ポリタンクの鑑定が実施されず、科捜研による再度の鑑定が実施されなかったことなど、後方視的に見れば、万全な捜査が行われたと評価することはできなかったことを踏まえても、上記証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があったものというべきである。 以上によれば、検察官に更なる補充捜査を行う義務を認めることはできず、また、検察官によるA1及び原告の取調べ状況ないし自白の任意性に対する検討が本件公訴の提起を違法とするほど不足していたと断定することはできないから(上記3)、本件公訴の提起が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 小括 よって、検察官による本件公訴の提起は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえず であるとはいえない。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 小括 よって、検察官による本件公訴の提起は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえず、原告の上記主張は、採用することができない。 5 検察官の本件確定審における各活動の違法性 公判を維持するために事実及び証拠を隠蔽したかア判断枠組み 本件確定審当時に適用されていた平成16年法律第62号による改正前の刑訴法(以下「改正前刑訴法」という。)下における検察官の証拠開示の在り方については、以下のとおり解釈されるべきである。 裁判所は、その訴訟上の地位にかんがみ、法規の明文ないし訴訟の基本構造に違背しない限り、適切な裁量により公正な訴訟指揮を行い、訴訟の合目的的進行をはかるべき権限と職責を有するものであるから、証拠調べの段階に入った後、弁護人から、具体的必要性を示して、一定の証拠を弁護人に閲覧させるよう検察官に命ぜられたい旨の申出がなされた場合、事案の性質、審理の状況、閲覧を求める証拠の種類及び内容、閲覧の時期、程度及び方法、その他諸般の事情を勘案し、その閲覧が被告人の防禦のため特に重要であり、かつこれにより罪証隠滅、証人威迫等の弊害を招来するおそれがなく、相当と認めるときは、その訴訟指揮権に基づき、検察官に対し、その所持する証拠を弁護人に閲覧させるよう命ずることができるものと解すべきである(最高裁判所昭和43年(し)第68号同44年4月25日第二小法廷決定・刑集23巻4号248頁)。 イ以上を前提に検討すると、本件確定審においては、原告の取調状況報告書について、大阪地裁から、検察官に対し、証拠開示命令が発せられておらず、本件聞込み状況書及び本件GS報告書については、弁護人から、大阪地裁 提に検討すると、本件確定審においては、原告の取調状況報告書について、大阪地裁から、検察官に対し、証拠開示命令が発せられておらず、本件聞込み状況書及び本件GS報告書については、弁護人から、大阪地裁に対し、証拠開示の申出がされていなかったことは、明らかである。 そうすると、後方視的にみれば、上記各書類がより早期に開示されていたならば迅速な真相の解明に寄与していたとは認められるが、改正前刑訴法に 基づく刑事訴訟実務下においては、検察官が、本件確定審において、弁護人の申入れにもかかわらず原告の取調状況報告書を開示しなかった行為及び本件聞込み状況書及び本件GS報告書を証拠請求しなかったことが刑訴法上違法であったとはいえず、したがって、国家賠償法1条1項の適用上違法ということもできない。 なお、改正前刑訴法による刑事訴訟実務の下において審理が行われていた本件確定審について、刑訴法1条及び検察庁法4条に基づいて検察官の証拠開示義務を導くことは、改正前刑訴法の解釈上は、困難であるといわざるを得ない(最高裁判所昭和34年(し)第60号同年12月26日第三小法廷決定・刑集13巻13号3372頁は、原決定が、要旨、検察官が、当事者であると共に、公益の代表者として、裁判所のなす実体的真実の発見に協力すべき国法上の義務(検察庁法4条)及び刑訴法上の義務(刑訴法1条等)を負うものであることを根拠とし、検察官が手持ち証拠を弁護人側に早期に閲覧させるべきであると判断したことに対し、これを採用していない。)。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 A5の偽証に関与したかア原告は、検察官が、本件確定審において行われたA5の証人尋問において、A5が8月14日にA1の取調べを行うに至った経緯及びA5が9月10日 することができない。 A5の偽証に関与したかア原告は、検察官が、本件確定審において行われたA5の証人尋問において、A5が8月14日にA1の取調べを行うに至った経緯及びA5が9月10日のA1の取調べにおいてA1とA2の性的関係を追及したか否かについて、A5の証言が虚偽であることを容易に認識し得たにもかかわらず、A5に偽証をさせたことが違法である旨主張する。 イ本件再審判決は、A5が、8月14日にA1が自らB1署に赴いてきたか否かについて、虚偽を述べていたと認定し、A2との関係を材料にA1を追及したことはなかったとの証言を不自然な内容であると認定しているところ、上記1の各認定事実に照らすと、上記の認定は、正当である。 しかし、本件全証拠によっても、検察官がA5に対して偽証をさせた事実 及びA5の偽証を認識しながらあえてこれを制限しなかった事実は、これらを認めるに足りない。かえって、A5が上記証言を行ったのは、A1に対する8月14日の取調べから2年以上経過した後であったこと、A5の証言内容は、9月10日の取調べに関するA30の証言内容ともおおむね符合していたことに照らすと、検察官がA5の偽証に意図的に関与し、又はA5の偽証を黙認したと認めることはできない。なお、検察官が、A5の尋問に先立ち、いかなる資料に基づき、いかなる事前打合せを行ったかについても、本件の証拠上は、明らかでない。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 証拠の評価を誤ったかア原告は、検察官が、本件確定審において、各証拠の評価を誤り、自然発火の可能性の存在を前提とした対応を採らなかった旨主張する。 イしかし、本件確定審において取り調べられた証拠によれば、本件風呂釜と本件車両の給油口との間 審において、各証拠の評価を誤り、自然発火の可能性の存在を前提とした対応を採らなかった旨主張する。 イしかし、本件確定審において取り調べられた証拠によれば、本件風呂釜と本件車両の給油口との間に90センチメートルの距離がある上、本件風呂釜が原型をとどめ、目立った焼損もなく、若干のすすの付着が認められる程度であったこと、火災の専門家であるA22も本件風呂釜の種火がガソリンに引火した可能性を指摘しなかったこと等が認められる。 これらに照らすと、本件確定審において、本件風呂釜の種火がガソリンに引火して本件火災を生じさせたと認定することはできない状況であったといわざるを得ないところ、上記証拠は、長年にわたり家庭用ガスの保安等の業務に携わってきたA23の供述とも整合するものであったことに照らすと、近隣住民の目撃状況やA1の負傷状況と整合しない実験結果も判明していたからといって、検察官が、本件確定審において、各証拠の評価を誤っていたということはできず、自然発火の可能性の存在を前提とした対応を採る法的義務もなかったというほかない。 なお、原告は、A22の証言によって、本件車両の給油口直下の赤色塗装 部分に照らすと、本件車両の給油口からガソリンが漏出した可能性が明白になっていた旨主張する。しかし、A22の証言内容を精査すれば、本件車両の給油口からガソリンが漏出した可能性を否定した上で、上記赤色塗装部分については、本件車両の給油口から生じたガソリン蒸気に引火して本件火災が発生した際、本件車両の給油口直下が燃焼しなかった旨を証言しており、本件車両の給油口からガソリンが漏出した可能性を肯定したものではないことは、明らかである。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 勾留の取消しの請求及び無罪の弁論をすべき義務 件車両の給油口からガソリンが漏出した可能性を肯定したものではないことは、明らかである。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 勾留の取消しの請求及び無罪の弁論をすべき義務があったかア原告は、検察官は、遅くとも本件確定審控訴審の弁論終結時においては、原告の勾留の取消しを請求する義務及び無罪の論告をすべき義務があったにもかかわらず、上記各義務を怠った旨主張する。 イしかし、上記4において説示したとおり、本件再審判決が認定した給油口からのガソリンの漏出による自然発火の可能性を裏付ける証拠資料は、本件再審請求事件の過程において収集されたものであり、本件確定審第一審が、公訴の提起時において検察官が現に収集した証拠資料に基づき、有罪の判決を言い渡し、本件確定審控訴審及び本件確定審上告審が、いずれも上記判決を維持し、上記判決が確定したことに照らすと、本件公訴の追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑がなかったとはいえない。そうすると、検察官に、本件確定審控訴審の弁論終結時において、原告の勾留の取消しを請求する義務及び無罪の論告をすべき訴訟法上の義務があったとは認めることができない。 よって、原告の上記主張は、採用することができない。 小括よって、検察官の本件確定審における各活動は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえず、原告の上記主張は、採用することができない。 6 検察官の本件再審請求事件及び本件即時抗告事件における各活動の違法性原告は、検察官は、本件再審開始決定がされた時点で、直ちに原告の身柄の拘束を解くべきであり、即時抗告を申し立てるべきではなかった旨、遅くともC10実験によってC9実験の結果が裏付けられた時点で、 原告は、検察官は、本件再審開始決定がされた時点で、直ちに原告の身柄の拘束を解くべきであり、即時抗告を申し立てるべきではなかった旨、遅くともC10実験によってC9実験の結果が裏付けられた時点で、即時抗告を取り下げるべきであった主張する。 しかし、検察官は、刑訴法上、即時抗告権を有しているから(同法450条)、特段の事情がない限り、即時抗告の申立て及びその維持が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 これを本件についてみると、本件再審決定は、C9実験時の燃焼状況はA1の自白と矛盾し、本件火災の客観的状況ともそぐわないこと、C9実験の再現忠実性に特段疑問は見当たらないこと、A1の自白が真実であれば、本件火災当時にA1が火傷を負わなかったことは不自然であること等の事情を認定しながらも、全証拠を検討しても、本件火災の原因を自然発火と認定するまでには至らないとも説示していたものである。もとより、本件再審決定は、当該説示に続いて、少なくともその可能性を積極的に排斥する証拠関係にないとも説示しているが、検察官において、本件再審決定の上記説示等に照らし、本件火災が自然発火であることの具体的可能性についての検討が十分であるとはいえないと判断して、本件再審決定を不服として即時抗告を申し立てたものと認めることができる。そして、検察官の即時抗告を受けて、大阪高裁は、更に審理を尽くし、検察官が実施した各種燃焼実験の結果報告のほか、自然発火の可能性に関する多くの事実取調べを実施した上で、最終的に、本件火災の原因として自然発火である具体的可能性が否定できないと判断したのであるから、検察官の即時抗告が、何ら理由のない不合理な申立てであったとはいえない。 なお、原告は、検察官の即時抗告により、和歌山刑務所からの釈放が遅れた結果、身柄拘束が長期化し きないと判断したのであるから、検察官の即時抗告が、何ら理由のない不合理な申立てであったとはいえない。 なお、原告は、検察官の即時抗告により、和歌山刑務所からの釈放が遅れた結果、身柄拘束が長期化したことが認められるが(甲105、原告本人)、その点は、後記7の損害額の算定において考慮することになる。 以上によれば、即時抗告の申立て及びその維持が国家賠償法1条1項の適用上違法となる特段の事情は、認めることができない。 小括よって、検察官の本件再審請求事件及び本件即時抗告事件における各活動は、いずれも国家賠償法1条1項の適用上違法であるとはいえず、原告の上記主張は、採用することができない。 7 原告の損害及びその数額 逸失利益ア 9月10日から原告に対する懲役刑の執行の停止がされた日である平成27年10月26日(以下「身柄拘束期間」という。) 算定期間上記2ウにおいて説示したとおり、A5ら及びA4らによる各違法な取調べと原告の身体拘束、本件公訴の提起、有罪の判決及び懲役刑の執行との間には、因果関係を認めることができる。 したがって、上記各違法な取調べと身柄拘束期間における逸失利益との間には、因果関係があると認められ、上記期間を、逸失利益の算定期間とするのが相当である。 算定の基準とすべき額証拠(甲56、乙245、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、高等学校卒業後9月10日までの間、子供服売場の販売員、会社員、喫茶店の店員、ホステス等として、おおむね継続的に就労をしていたことが認められる。これらに照らすと、原告は、平成7年から平成27年までの各年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・高校卒・女子労働者による該当年齢の平均賃金 おむね継続的に就労をしていたことが認められる。これらに照らすと、原告は、平成7年から平成27年までの各年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・高校卒・女子労働者による該当年齢の平均賃金を得ることのできた蓋然性があったと認められる。 したがって、身柄拘束期間における逸失利益の算定の基準とすべき額は、 別紙「身柄拘束期間における逸失利益」の「証拠」欄に各記載の証拠及び弁論の全趣旨により、上記別紙中「平均賃金」欄に各記載のとおりとする。 生活費控除刑事施設に収容中であった原告が身柄拘束期間において生活費を負担していないこと(顕著な事実)、原告が女性であり9月10日当時はA1と内縁関係にあったことに照らすと、身柄拘束期間における逸失利益を算定するに当たって、生活費控除として、上記「平均賃金」欄に各記載の額のうち、その3割を控除するのが相当である。 小括以上を前提に、原告の身柄拘束期間における逸失利益の額を算定すると、別紙「裁判所認定額」の「表1 各損害の認定額」(以下「表1」という。)中「身柄拘束期間における逸失利益」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 イ平成27年10月27日(原告に対する懲役刑の執行の停止がされた日の翌日)以降(以下「執行停止後」という。) 算定期間等証拠(甲105、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、相当長期間に及ぶ刑務所での生活により、人間関係の構築が困難となり、社会と断絶した結果、執行停止後、周囲の人と会話がかみ合わないことがあり、他者との対話を多く必要とする職場での就労が困難であること、人混みに苦痛を感じ、電化製品の使用方法も分からない等の問題が生じていること、そのため、原告は、新聞の集金、広報誌の み合わないことがあり、他者との対話を多く必要とする職場での就労が困難であること、人混みに苦痛を感じ、電化製品の使用方法も分からない等の問題が生じていること、そのため、原告は、新聞の集金、広報誌の配布等、一人でもできる仕事を選ぶほかないことが認められる。このように、執行停止後、原告には社会生活への適応上支障が生じている一方で、原告が医師による疾病等の診断及び治療を受けたと認めるに足りる証拠がないこと、幸いにも執行停止後に周囲から社会生活上の不明点について教示を受けることのできる環境 に恵まれ、上記の就労が困難な状況も改善の兆しがあると考えられることを考慮すると、原告に対する懲役刑の執行の停止がされた日の翌日である同日から10年間、原告の就労の機会が一定程度制限されたものと認めるのが相当である。 したがって、A5ら及びA4らによる各違法な取調べ(上記2ア及びイ)と執行停止後10年間における逸失利益との間には因果関係があり、原告は、上記期間において労働能力を5%喪失したものと認めるのが相当である(10年に対応するライプニッツ係数は、7.7217である。)。 算定の基準とすべき額原告は、身柄を拘束された9月10日までの間、継続して就労していたこと(上記ア)、原告が昭和39年1月24日生まれであること(上記第2の1)が認められる。これらに照らすと、執行停止後における逸失利益の算定の基準とすべき額は、平成27年の賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・高校卒・女子労働者50歳から54歳までの年収額342万4900円となる。 小括以上を前提に、執行停止後における逸失利益の額を算定すると、表1中「執行停止後における逸失利益」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 【計算式】3 となる。 小括以上を前提に、執行停止後における逸失利益の額を算定すると、表1中「執行停止後における逸失利益」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 【計算式】342万4900円×5%×7.7217=1322302.5 本件刑事事件における弁護士費用及び実験等の実費(以下「弁護士費用等」という。)証拠(甲109、110)及び弁論の全趣旨によれば、原告が、弁護人らに対し、平成29年5月9日、弁護士費用等(多数の実験を行った実費、打合せに要した費用等を含む。)として、4595万円を支払ったことが認められるが、本件全証拠によっても、その額の内訳の詳細については、認めるに足りず、上記支払額の全額を、A5ら及びA4らの各違法な取調べとの間に因果関係が ある損害であると認めることはできない。 他方、原告は、弁護人らによる捜査段階から本件再審判決が確定するまでの弁護活動が寄与した結果、本件再審において無罪の判決の言渡しを受けたものといえる。したがって、これらを踏まえ、民訴法248条の趣旨をしんしゃくして検討すると、A5ら及びA4らの各違法な取調べとの間に因果関係があると認められる弁護士費用等の額は、原告が弁護人らに支払った上記金額の4割に相当する額と認めるのが相当である。 そして、その額を算定すると、表1中「弁護士費用等」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 慰謝料ア身柄拘束期間における慰謝料原告は、和歌山刑務所に収容され本件再審において懲役刑の執行の停止がされるまで、長期間にわたり身柄を拘束され続けた結果、愛する家族と共に過ごすはずであった人生の貴重な時間を喪失したことが認められる(上記1カ及びウ、甲105、原告本人)。 また、証拠(甲105、原告本人)及び 間にわたり身柄を拘束され続けた結果、愛する家族と共に過ごすはずであった人生の貴重な時間を喪失したことが認められる(上記1カ及びウ、甲105、原告本人)。 また、証拠(甲105、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告が、身柄拘束期間において、本件火災当時わずか8歳であったA3を、自ら養育することができず、母親として深刻な精神的苦痛を受けたことが認められる。 これらの事情を総合すれば、身柄拘束期間における慰謝料の額は、表1中「身柄拘束期間における慰謝料」の「認定額」欄に記載のとおりと認めるのが相当である。 イ執行停止後における慰謝料執行停止後、原告の社会生活への適応に支障が生じていたこと(上記イ)にとどまらず、証拠(甲74、甲105、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、既に本件再審判決が確定しているにもかかわらず、ウェブサイト等において、原告が保険金目当てに放火により我が子を殺害したなどとして、 本件再審判決を正解せず原告を本件刑事事件の犯人と断定する誹謗中傷が続いたこと、原告は、20年以上にわたり離別していたA3との親子関係の再構築に苦悩し続けたことが認められる。 これらに照らすと、原告は、執行停止後も、本件再審判決の確定後に至るまで、本件確定審における有罪の判決が一旦確定したことによる社会的偏見にさらされ、就労の機会も一定程度制限され、継続的に精神的苦痛を被ってきたものというべきである。 さらに、A4は、本件再審判決において、明確に自己の取調べの違法性が認定され、自然発火の可能性が科学的に認定され、そもそも原告には犯行の動機が乏しく、原告の本件火災後の行動も合理的に説明できると認定され、検察官も上訴権を放棄して、上記判決が即日確定しているにもかかわらず、本件訴訟の証人尋問において、公開 れ、そもそも原告には犯行の動機が乏しく、原告の本件火災後の行動も合理的に説明できると認定され、検察官も上訴権を放棄して、上記判決が即日確定しているにもかかわらず、本件訴訟の証人尋問において、公開法廷で、また、上記のとおり無罪が確定している原告の面前において、現在でも原告が犯人であると思うと証言した(証人A4)。上記証言が、A4が自ら行ったものではなく、原告からの質問に対して行ったものであることを考慮しても、原告の感情を傷つけ、更なる精神的苦痛を与えたことは、原告が供述するとおりであるし、上記証言は、原告に対するいわれのない誹謗中傷を、更に招きかねないものである。 これらの事情を総合すれば、執行停止後における慰謝料の額は、表1中「執行停止後における慰謝料」の「認定額」欄に記載のとおり認めるのが相当である。 遅延損害金ア身柄拘束期間における逸失利益及び慰謝料に対する遅延損害金本件再審判決が確定した時である平成28年8月10日から原告が下記アの補償金の交付を受けた日である平成29年5月9日までの身柄拘束期間(273日間)における上記各損害の合計額(7406万4338円)に対する遅延損害金額を算定すると、表1中「身柄拘束期間における逸失 利益及び慰謝料の合計額に対する確定遅延損害金」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 イ弁護士費用等に対する遅延損害金本件再審判決が確定した時である平成28年8月10日から下記ウの原告が費用補償金の交付を受けた日である平成29年5月9日まで(273日間)の弁護士費用等に係る損害額(1838万円)に対する遅延損害金額を算定すると、表1中「弁護士費用等に対する確定遅延損害金」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 【計算式】1838万円×5%÷365日×273日 係る損害額(1838万円)に対する遅延損害金額を算定すると、表1中「弁護士費用等に対する確定遅延損害金」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 【計算式】1838万円×5%÷365日×273日損益相殺ア補償金の控除証拠(甲108)及び弁論の全趣旨によれば、大阪地裁は、原告に対し、平成29年5月9日、刑事補償法に基づく補償金として9190万円を交付したことが認められるところ、同法5条3項は、他の法律によって損害賠償を受けるべき者が同一の原因についてこの法律によって補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならないと規定している。同項は、国家賠償法その他の法律に基づく損害賠償の対象となる損害のうち、補償金による填補の対象となる損害と同性質であり、かつ、相互補完性を有するものについて、損益相殺的な調整を図るべき旨を定めたものと解するのが相当である。 そして、同法4条2項が、裁判所が同条1項の補償金の額を定めるには、拘束の種類及びその期間の長短、本人が受けた財産上の損失、得るはずであった利益の喪失、精神上の苦痛及び身体上の損傷並びに警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情を考慮しなければならないと規定していることに照らすと、原告が同日に交付を受けた補償金による填補の対象となる損害は、身柄拘束期間における逸失利益(上記ア)及び慰謝 料(上記ア)の元本に相当する部分と同性質であり、かつ、相互補完性があるものと解される。他方で、損害の元本に対する遅延損害金に係る債権は、飽くまで債務者の履行遅滞を理由とする損害賠償債権であるから、遅延損害金を債務者に支払わせることとしている目的は、補償金の目的とは明らかに異なるものであって、補償金による填補の対 害金に係る債権は、飽くまで債務者の履行遅滞を理由とする損害賠償債権であるから、遅延損害金を債務者に支払わせることとしている目的は、補償金の目的とは明らかに異なるものであって、補償金による填補の対象となる損害が、遅延損害金と同性質であるということも、相互補完性があるということもできない(最高裁判所昭和58年第128号同62年7月10日第二小法廷判決・民集41巻5号1202頁、最高裁判所平成20年第494号、第495号同22年9月13日第一小法廷判決・民集64巻6号1626頁、最高裁判所平成21年第1932号同22年10月15日第二小法廷判決・裁判集民事235号65頁、最高裁判所平成24年第1478号同27年3月4日大法廷判決・民集69巻2号178頁参照)。 したがって、原告が交付を受けた補償金の額を遅延損害金に充当することは許されず、身柄拘束期間における逸失利益及び慰謝料の元本に充当して、これを控除するのが相当である。よって、補償金を控除した後の上記元本の額を算定すると、表1中「身柄拘束期間における損害の元本」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 イ作業報奨金の控除証拠(乙466)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、和歌山刑務所収容中、少なくとも合計額43万9620円の作業報奨金の支給を受けたことが認められる。 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律所定の作業は、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰を主たる目的とする矯正処遇の一方策であり、作業報奨金の目的も、労働に対する対価としての賃金とはその性質が異なるものといえる。したがって、逸失利益を債務者に支払わせることとしている目的は、作業報奨金の目的とは異なるものであって、身柄拘束期間における 逸失利益及び慰謝料と同性質で の性質が異なるものといえる。したがって、逸失利益を債務者に支払わせることとしている目的は、作業報奨金の目的とは異なるものであって、身柄拘束期間における 逸失利益及び慰謝料と同性質であるということも、相互補完性があるということもできない。 したがって、原告が支給を受けた作業報奨金の額を身柄拘束期間における逸失利益及び慰謝料の元本及び遅延損害金に充当することは、許されないというべきである。 ウ費用補償金の控除 費用補償金の交付証拠(甲108、乙465)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 a 大阪地裁は、原告に対し、平成29年3月31日、費用補償金として1522万7264円を交付する旨の決定をした(大阪地裁平成29年第1号)。 b 上記aの費用補償金の額の内訳は、原告に対する関係については1万1892円、弁護人らに対する関係については1521万5372円であった。 c 原告は、大阪地裁から、同年5月9日、費用補償金として、1522万7264円の交付を受けた。 損益相殺の可否上記cの費用補償金は、刑訴法188条の2第1項本文に基づき、国が、原告に対し、同法188条の6第1項所定の被告人若しくは被告人であった者又はそれらの者の弁護人であった者が公判準備及び公判期日に出頭するに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護人であった者に対する報酬の範囲で、本件刑事事件における裁判に要した費用の補償をしたものである。また、同法188条の7は、同法188条の2第1項本文に基づく補償の請求その他補償に関する手続、補償と他の法律による損害賠償との関係、補償を受ける権利の譲渡又は差押え及び被告人又は被告人であ った者の相続人に対する補償については、この法律に特別の定めがある場 補償に関する手続、補償と他の法律による損害賠償との関係、補償を受ける権利の譲渡又は差押え及び被告人又は被告人であ った者の相続人に対する補償については、この法律に特別の定めがある場合のほか、刑事補償法第1条に規定する補償の例によると規定しており、刑訴法188条の7が準用する刑事補償法5条3項は、他の法律によって損害賠償を受けるべき者が同一の原因について刑訴法188条の2第1項本文によって補償を受けた場合には、その補償金の額を差し引いて損害賠償の額を定めなければならないものとしている。上記によれば、同法188条の7が準用する刑事補償法5条3項についても、国家賠償法その他の法律に基づく損害賠償の対象となる損害のうち、費用補償金による填補の対象となる損害と同性質であり、かつ、相互補完性を有するものについて、損益相殺的な調整を図るべき旨を定めたものと解するのが相当である(上記ア)。したがって、原告が交付を受けた費用補償金(上記)のうち、原告に関係する部分である1万1892円(同b)を除いた1521万5372円は、弁護士費用等と同性質であり、かつ、相互補完性を有するものと解されるから、上記補償金の額を弁護士費用等に充当し、控除するのが相当である。 他方、費用補償金による填補の対象となる損害は、遅延損害金と同性質であるということも、相互補完性があるということもできない(上記アの昭和62年7月10日第二小法廷判決等参照)から、原告が交付を受けた費用補償金の額を遅延損害金に充当することは許されず、弁護士費用等の元本に充当し、控除するのが相当である。 そして、その額(弁護士費用等の元本から費用補償金の額を控除した後の弁護士費用等の額)を算定すると、表1中「費用補償金を控除した後の弁護士費用等」の「認定額」欄に記載のとおりとな が相当である。 そして、その額(弁護士費用等の元本から費用補償金の額を控除した後の弁護士費用等の額)を算定すると、表1中「費用補償金を控除した後の弁護士費用等」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 小括ア身柄拘束期間における損害以上によれば、身柄拘束期間における損害のうち、填補されていないもの は、上記期間における逸失利益及び慰謝料の合計額に対する本件再審判決が確定した平成28年8月10日から原告が補償金の交付を受けた平成29年5月9日までの遅延損害金であると認めるのが相当である。 そして、その額を算定すると、別紙「裁判所認定額」の「表2 まとめ」(以下「表2」という。)中「身柄拘束期間における損害」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 イ弁護士費用等弁護士費用等のうち、填補されていないものは、別紙「裁判所認定額」中「弁護士費用等に対する確定遅延損害金」及び「費用補償金を控除した後の弁護士費用等」の各「認定額」欄に記載の合計額であると認められる。 そして、その額を算定すると、表2中「弁護士費用等」の「合計額」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 ウ執行停止後における損害さらに、執行停止後における損害のうち、填補されていないものは、表2中「執行停止後における逸失利益」及び「執行停止後における慰謝料」の各「認定額」欄に各記載のとおりとなる。 本件訴訟の弁護士費用相当損害額原告は本件訴訟を弁護士らに依頼して提起したものであるところ、本件訴訟に現れた一切の事情をしんしゃくすると、本件訴訟の弁護士費用相当損害額は、表2中の「費用補償金を控除した後の弁護士費用等」、及びの各「認定額」欄記載の額の合計額(798万6930円)の約1割に相当する 一切の事情をしんしゃくすると、本件訴訟の弁護士費用相当損害額は、表2中の「費用補償金を控除した後の弁護士費用等」、及びの各「認定額」欄記載の額の合計額(798万6930円)の約1割に相当する額であると認めるのが相当である。 そして、その額を算定すると、表2の「本件訴訟の弁護士費用相当損害額」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 結論 以上によれば、A5ら及びA4らの各違法な取調べとの間に因果関係がある と認められる原告の損害額を算定すると、表2中「判決の認容額(元本)」の「認定額」欄に記載のとおりとなる。 8 除斥期間の経過の有無原告は、逮捕、勾留、公訴の提起及び公判を経て、確定した有罪の判決による刑の執行を受けたのであり、原告に対して国家刑罰権を実行するための一連一体の手続が行われた結果、居住及び移転の自由並びに名誉等の権利及び利益が侵害され続けたものである。そのため、本件において、国家賠償法4条によって適用される民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段所定の除斥期間の起算点である「不法行為の時」とは、確定した刑の執行の根拠である有罪の判決の効力が覆された時、すなわち、再審において言渡しを受けた無罪の判決が確定した時であり、その時点をもって除斥期間の起算点とすべきである(東京高等裁判所令和元年第3124号、同第3931号同3年8月27日第20民事部判決・公刊物未登載)。 したがって、上記のとおり、A5ら及びA4らの各違法な取調べとの間に因果関係があると認められる原告の損害に係る損害賠償請求権の除斥期間の起算点は、本件再審判決が確定した時である平成28年8月10日と解するのが相当であるから、いまだ除斥期間は経過していない。 よって、被告大阪府の上記主張は、採 の損害に係る損害賠償請求権の除斥期間の起算点は、本件再審判決が確定した時である平成28年8月10日と解するのが相当であるから、いまだ除斥期間は経過していない。 よって、被告大阪府の上記主張は、採用することができない。 9 結論よって、原告の請求は、被告大阪府に対し、1224万4094円並びにうち562万2302円に対する平成28年8月10日から及びうち316万4628円に対する平成29年5月10日から各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、被告大阪府に対するその余の請求及び被告国に対する請求は、いずれも理由がないから、主文のとおり判決する。 なお、仮執行宣言については、相当でないから、これを付さないこととする。 大阪地方裁判所第16民事部 裁判長裁判官本田能久裁判官堀部麻記子裁判官嶋玲哉(原本署名押印欄) 88~94※ 別紙当事者目録及び別紙略語表は掲載省略 (別紙)当事者の主張の要旨 1 警察官の原告に対する取調べの違法性大声、暴言等を用いた取調べ (原告の主張)A4らは、原告に対し、原告の横に顔を近づけ、「恥かしくないのか。何を言ってるんや。ちゃんと話さんとあかんがな。何もやってないのなら話できるやろ。」と怒鳴り、暴言を吐くなど、大声や暴言を用いた取調べを行い、原告を畏怖させて自白を迫った。よって、A4らの取調べには、違法がある。 (被告大阪府の主張)A4らが原告に対し大声で質問したことがあることは、認めるが、その余は、 用いた取調べを行い、原告を畏怖させて自白を迫った。よって、A4らの取調べには、違法がある。 (被告大阪府の主張)A4らが原告に対し大声で質問したことがあることは、認めるが、その余は、否認する。A4らは、聞こえないふりをしたり合理的な説明もせず黙秘したりする状態であった原告に対し、供述を促すために一時的に大声で質問したが、原告を畏怖させる意図は、なかった。よって、A4らの取調べには、 違法がない。 長時間にわたる取調べ(原告の主張)原告に対する取調べは、下記のとおり、連日、長時間にわたって行われた。 よって、A4らの取調べには、違法がある。 ① 9月10日(原告が任意同行された日):午前7時30分から午後8時30分まで② 同月11日:午前9時30分から午後0時45分まで③ 同月12日:午後2時から午後8時50分まで④ 同月13日:午前10時35分から午後11時まで ⑤ 同月14日:午前11時15分から午後11時25分まで⑥ 同月15日から同月30日まで:午前中(早いときは午前9時20分)か ら午後10時又は午後11時頃(遅いときは午後11時40分)まで(被告大阪府の主張)争う。原告に対する10日の取調べの実質的な部分(上記①)は、供述録取書の作成が終わった午後6時50分頃に終わっており、同時刻以降は逮捕手続に入っていた。また、同月14日の取調べ(上記⑤)は、午後から行わ れており、長時間とはいえない。さらに、A4らは、原告に対する取調べにおいて、終日取調べを行った場合には留置施設で食事休憩を取らせ、取調べが深夜に及んだ場合には翌日の取調開始時刻を遅くするなど、原告に配慮した。よって、上記の一連の取調べには、違法がない。 供述拒否権等を告知せず、又はこれ 場合には留置施設で食事休憩を取らせ、取調べが深夜に及んだ場合には翌日の取調開始時刻を遅くするなど、原告に配慮した。よって、上記の一連の取調べには、違法がない。 供述拒否権等を告知せず、又はこれを無視した取調べ (原告の主張)A4らは、原告に対し、10日の取調べにおいて、供述拒否権の告知及び任意捜査である旨の告知を全く行わなかった。また、A4らは、原告に対し、「無実と言うならそれを主張したらええがな。黙っているのは卑怯やぞ。」などと怒鳴り、原告に供述拒否権があることを無視し、原告の意思に反して、 供述を迫った。よって、A4らの取調べには、違法がある。 (被告大阪府の主張)否認する。A4らは、原告に対し、10日の取調べにおいて、供述拒否権を告知した。また、原告は、A4らが告知していなくても、任意捜査である旨理解していた。さらに、警察官が供述を促しても黙秘している被疑者に対 して事件について合理的な説明を求めることは、取調べとして当然許される。 よって、A4らの取調べには、違法がない。 原告の精神状態を不当に利用した取調べ(原告の主張)A4らは、原告に対し、10日の取調べにおいて、「なんでA2を助けんか ったんや。」「A1がA2と、関係があったんを知らん事ないやろ。」などと、A1がA2と性的関係にあった事実を唐突に伝えて心理的ショックを与え、 原告がこれに気付かなかったことを責める発言をし、原告を精神的に追い詰め、この原告の精神状態を利用した取調べを行った。よって、A4らの取調べには、違法がある。 (被告大阪府の主張)A4らが、原告に対し、10日の取調べにおいて、A1とA2との性的関 係を告げたこと、原告の取調状況報告書に原告の主張するA4らの発言の記載があることは認める がある。 (被告大阪府の主張)A4らが、原告に対し、10日の取調べにおいて、A1とA2との性的関 係を告げたこと、原告の取調状況報告書に原告の主張するA4らの発言の記載があることは認めるが、その余は否認ないし争う。A4らは、10日の取調べにおいて、黙秘する原告に対し、心を開いてもらう意図で、A1とA2との性的関係について質問した。また、原告は、A4らがA1とA2との性的関係について話した際も、黙ったままで取り乱す様子はなく、既にこれを 知っていたのではないかと思われ、A4らの発言により、原告が精神的に追い詰められたものとは認められない。よって、A4らの取調べには、違法がない。 原告の自責の念を悪用した取調べ(原告の主張) A4らは、原告に対し、生前のA2の写真を見せるなどして、「A2が可愛そうと思わんか」「助ける間があったんと違うか」「A2に謝る気持ちはないのか」などと述べ、原告が本件火災からA2を救出できなかったことについて、責任を追及し、原告を精神的に追い込んだ。よって、A4らの取調べには、違法がある。 (被告大阪府の主張)否認ないし争う。A4らは、原告に対し、捜査資料に照らし、原告及びA1がA2を救出できる状況であったにもかかわらず救出活動をした形跡がなかったことにつき、疑問点を確認し、合理的な説明を求めたものにすぎない。 よって、A4らの取調べには、違法がない。 虚偽の事実を告知して行った取調べ(原告の主張) A4らは、原告に対し、10日の取調べにおいて、次のとおり、虚偽の事実を告知して自白を迫った。よって、A4らの取調べには、違法がある。 ア A4らは、原告に対し、客観的に放火であったことを裏付ける証拠が存在しないにもかかわらず、存在する いて、次のとおり、虚偽の事実を告知して自白を迫った。よって、A4らの取調べには、違法がある。 ア A4らは、原告に対し、客観的に放火であったことを裏付ける証拠が存在しないにもかかわらず、存在するかのような虚偽の事実を告知して、自白を迫った。 イ A4らは、原告に対し、A3が本件火災の直前にA1が火を付けるところを見たと供述しているとの虚偽の事実を告知して、自白を迫った。 ウ A4らは、原告に対し、同日午前中のA1が自白する前と考えられる時間に、A1が自白しているとの虚偽の事実を告知して自白を迫る、いわゆる切り違え尋問を行った。 (被告大阪府の主張)否認する。A4らは、10日の取調べにおいて、次のとおり、原告に対し、虚偽の事実を告知していない。よって、A4らの取調べには、違法がない。 ア A4らは、本件車両からの出火ではないと告げたが、各種証拠から判断された事実に基づくものであり、虚偽ではない。 イ A4らは、原告に対し、A3の供述内容を説明したが、A3は、本件火災の直前にA1が火を付けるところを見たとは供述していないから、A4らは、原告に対し、このような事実を告知したことはない。 ウ A4らが、原告に対し、A1が自白したと伝えたことはある。しかし、A1が自白したのは、同日午前中であり、A4らが原告に対してA1の自 白を告知したのは、同日午後2時30分頃である。したがって、A4らは、いわゆる切り違え尋問を行っていない。 原告の体調が悪化した状態における取調べ(原告の主張)原告は、同日の時点において、A2を亡くした喪失感等から、既に、体調 不良であり、取調べ中に吐き気を催したり、寒いと震えたりしていた。しかし、A4らは、同日以降、かかる原告の体調に配慮することなく、苛酷な取 おいて、A2を亡くした喪失感等から、既に、体調 不良であり、取調べ中に吐き気を催したり、寒いと震えたりしていた。しかし、A4らは、同日以降、かかる原告の体調に配慮することなく、苛酷な取 調べを行い、同月14日には、原告から病院に連れて行ってほしいと頼まれても、そのまま取調べを続けるなどし、原告の体調は更に悪化した。A4らは、原告のこのような体調不良を利用して、自白を迫った。よって、A4らの取調べには、違法がある。 (被告大阪府の主張) 否認する。原告は、体調不良を理由とする診療を申し出なかった。また、A4らは、原告に対し、取調べによる動揺などにより多少の体調不良があったとしても、その状態に配慮しながら取調べを継続していた。さらに、A4らは、原告が体調不良であることに乗じて自白を迫ってもいない。よって、A4らの取調べには、違法がない。 違法な取調べによって得られたA1の自白を利用した取調べ(原告の主張)A4らは、原告に対し、A1との接見等禁止決定がされていた同月13日の取調べにおいて、A1が被疑事実を認めることにしたこと、弁護士の助言に従った場合には死刑になること等が記載されたA1作成の本件書面を見せ た。よって、A4らの取調べには、違法がある。 (被告大阪府の主張)否認ないし争う。仮に、A4らが、原告に対し、同日、本件書面を見せたとしても、本件書面書は、違法に作成されたものではなく、接見等禁止決定の趣旨を損なうものでもない。よって、A4らの取調べには、違法がない。 原告と一方的に犯人と断定した取調べ(原告の主張)A4らは、原告に対し、捜査の過程で明らかになった、原告による犯行であるとすれば矛盾する事実等を無視し、放火であることを裏付ける証拠は何ら存在しない状況 的に犯人と断定した取調べ(原告の主張)A4らは、原告に対し、捜査の過程で明らかになった、原告による犯行であるとすれば矛盾する事実等を無視し、放火であることを裏付ける証拠は何ら存在しない状況において、本件火災が原告とA1の共謀による放火殺人事 件であると一方的に断定し、原告及びA1に自白させるしかないと考え、事実誤認を前提とした取調べを行った。よって、A4らの取調べには、違法が ある。 (被告大阪府の主張)否認しないし争う。A4らは、安易に放火殺人事件であると断定した捜査を行っておらず、必要とされる捜査を尽くし、鑑定結果等を踏まえ、各種証拠から判断された事実を基に、原告に対する取調べを行った。よって、A4 らの取調べには、違法がない。 原告の首を押さえるなどの直接的な有形力を用いた取調べ(原告の主張)A4らは、原告に対し、同日の取調べにおいて、無理やりA2の写真を見せる目的で、原告の首を押さえるなどの直接的な有形力を用いた。よって、 A4らの取調べには、違法がある。 (被告大阪府の主張)否認する。A4らは、同日の取調べにおいて、原告の首を押さえるなど、原告に対する直接的な有形力を用いたことはない。よって、A4らの取調べには、違法がない。 2 警察官の補充捜査の違法性 本件火災の出火原因に関する補充捜査の違法性(原告の主張)大阪府警察は、本件火災直後に得た、本件風呂釜の種火がガソリンに引火したことを示す所見の存在を認識していたこと及び本件火災の初期の状況を 目撃した近隣住民の供述が自然発火の可能性を裏付けるものであったことから、本件風呂釜の種火からの引火可能性及び本件車両からのガソリンの漏出可能性を、科学的及び こと及び本件火災の初期の状況を 目撃した近隣住民の供述が自然発火の可能性を裏付けるものであったことから、本件風呂釜の種火からの引火可能性及び本件車両からのガソリンの漏出可能性を、科学的及び客観的に、解明する必要があった。しかし、大阪府警察は、そのような補充捜査をほとんど行わず、わずかに行った補充捜査においては、必要な鑑定事項について鑑定がなされていないのに、追加の鑑定を 求めず、ガソリンの性質及び物理工学等に関する専門的知見及び基礎的な物理の知見等を有する専門家に確認することもなかった。このように、本件火 災の出火原因に関して極めて不十分な補充捜査しか行わなかった。よって、警察官の出火原因に関する補充捜査には、違法がある。 (被告大阪府の主張)争う。大阪府警察は、本件火災の出火原因に関する補充捜査の結果、本件車両の給油口の内蓋が閉まっており、ガソリンの漏出が認められなかったこ と、本件車両のガソリンタンク及び燃料系配管に異常がなかったこと、本件火災の前に本件車両付近からの異臭等がなかったこと、本件風呂釜に異常はなく、焼損等もなかったこと、8月16日に行なわれたガスの種火に見立てたろうそくの火にガソリンを近づけ、引火するか等を確認した2度の実況見分によっても、本件風呂釜の種火がガソリンに引火する可能性は認められな かったこと及びC7株式会社のA23に対する捜査結果においても、本件風呂釜の種火がガソリンに引火する可能性が否定されたこと、出火原因の調査において、自然発火の可能性があるという意見は一切出なかったことなどに照らし、自然発火の可能性はなく、放火の疑いがあると判断した。よって、警察官の出火原因に関する補充捜査には、違法がない。 出火原因以外の補充捜査の違法性(原 出なかったことなどに照らし、自然発火の可能性はなく、放火の疑いがあると判断した。よって、警察官の出火原因に関する補充捜査には、違法がない。 出火原因以外の補充捜査の違法性(原告の主張)本件刑事事件は、保険金目的の計画的犯行ということになる。しかし、保険金目的で、財産的損害が大きく、原告及びA1にも危険性の高い放火という手段を選ぶことは不合理であること、入浴中のA2が避難する可能性が十 分にあったこと、A3が巻き添えになった可能性もあったこと等を踏まえると、上記の計画は、不自然である。また、原告は経済的に困窮していなかったこと、原告が愛情深くA2を養育していたこと、原告及びA1はいわゆる119番通報や消火活動などできる限りの救助活動を行っていたこと等、原告及びA1が犯人であれば玄関を施錠することはかえって不自然であること など、原告及びA1が犯人であることと矛盾し、又は合理的に説明することができない複数の間接事実があった。 大阪府警察は、上記の各点について間接事実を評価せず、必要な補充捜査を行わなかった違法がある。 よって、警察官の補充捜査には、違法がある。 (被告大阪府の主張)否認ないし争う。本件刑事事件は、原告及びA1が経済的に困窮し、保険 金を詐取する目的で本件家屋に放火して入浴中のA2を焼死させたというものであり、自白したA1の詳細な供述に不合理、不自然な点は、認められなかった。また、大阪府警察は、原告及びA1が経済的に困窮していたこと、保険金目的で放火したことについては、十分な捜査資料を得ている。また、A1が本件火災直前に本件車両付近に行ったとするA3の供述は信用できる こと、原告及びA1がA2を救助しなかったという事実の評価に誤りがない たことについては、十分な捜査資料を得ている。また、A1が本件火災直前に本件車両付近に行ったとするA3の供述は信用できる こと、原告及びA1がA2を救助しなかったという事実の評価に誤りがないこと及びA2の死亡直後に保険金を請求していること等からすると、原告及びA1が犯人だと推認する間接事実の評価が、誤っているとはいえない。 よって、警察官の補充捜査には、違法がない。 原告及びA1の自白の検討に関する補充捜査の違法性 (原告の主張)ア原告の自白の検討原告は、10日の取調べ及び同月14日の取調べ以外は、否認している。 また、原告の自白の内容は、具体性に欠けている上、A1の自白の内容と、共謀の時期、共謀した時の会話の内容等の点において一致していない上、 これを客観的に裏付ける証拠もなかった。このように、原告の自白の信用性が欠如していることを推認させる事実が多数認められるにもかかわらず、大阪府警察は、証拠の評価を誤り、補充捜査も行わなかった。よって、警察官の補充捜査には、違法がある。 イ A1の自白の検討 大阪府警察は、A1が自白した放火行為によって生じる火災の状況と本件火災の状況との異同を確認する補充捜査を行わず、A1の供述と異なる 方法で再現実験を行ったにすぎなかった。また、A1の供述が目撃供述及び燃焼実験結果の内容と矛盾すること、A1が自白した方法により放火したとすると、火傷を負わなかったのは不自然であること、A1が犯行に用いたとする給油ポンプ及びターボライターが存在しないこと、A1がまいたガソリンの量に関するA1の供述内容が変遷していること及びA1の 供述に秘密の暴露が存在しないこと等に対する評価及びそれを前提とした補充捜査が不十分であった。さらに、大阪府警察は、 A1がまいたガソリンの量に関するA1の供述内容が変遷していること及びA1の 供述に秘密の暴露が存在しないこと等に対する評価及びそれを前提とした補充捜査が不十分であった。さらに、大阪府警察は、現場から採取し、A1が犯行に用いたと供述したポリタンクについて、ガソリン付着の有無に関する鑑定等を実施せず、又は実施したが、都合の悪い結果が出たため、破棄したことが疑われる。よって、警察官の補充捜査には、違法がある。 (被告大阪府の主張)否認ないし争う。 ア原告の自白の検討原告の自白の内容とA1の自白の内容との間に、不合理といえる不一致はなく、原告の自白の内容を裏付ける客観的証拠も存在する。また、原告 に対する取調べには違法がなく、原告が自白した際の供述書及び供述録取書の作成経緯に照らしても、信用性がないとはいえない。よって、警察官の補充捜査には、違法がない。 イ A1の自白の検討A1の供述について、大阪府警察は、4リットルと2リットルのガソリ ンをまいた燃焼実験等を行っており、必要な補充捜査を行った。また、当該燃焼実験でまいたガソリンの量がA1の自白供述よりも少量であるが、建物が燃焼したこと、本件火災の目撃状況が異なることから、A1がまいたガソリンの量が7リットルよりも少量であった可能性はあるものの、まき方によっては、A1の火傷なしにまくことは不可能とはいえない。また、 A1が犯行に用いた給油ポンプと思われる残渣は発見されていること、A1の供述する犯行計画の内容が不合理とまでいえず、供述の変遷も、被疑 者の供述としてよくみられるところであることからすると、補充捜査の必要はなかった。なお、本件ガレージから押収したポリタンクについて、油類付着状況を確認するための鑑定の有 遷も、被疑 者の供述としてよくみられるところであることからすると、補充捜査の必要はなかった。なお、本件ガレージから押収したポリタンクについて、油類付着状況を確認するための鑑定の有無及び実施しなかった理由を明らかにすることはできない。よって、警察官の補充捜査には、違法がない。 3 検察官の捜査段階における各活動の違法性 警察官の原告に対する違法な取調べを黙認し、又は助長したか(原告の主張)A6検察官らは、本件準抗告をし、また、原告に対する取調べについての弁護人らの抗議に対し、何らの対応も取らず、弁護人らの接見を妨害するなどして、警察官の違法な取調べを黙認し、又は助長した。 A6検察官は、本件準抗告の際、勾留場所を大阪拘置所とした場合、原告を犯行現場に同行させることが極めて困難となり、引き当たり捜査に支障を来し、円滑な捜査を進め難い旨の主張をしたが、実際には、本件準抗告決定の後、一度も原告を犯行現場に同行させなかった。すなわち、A6検察官は、本件準抗告の真の目的とは異なる主張をした。 また、A6検察官らは、弁護人らが同月19日付けの抗議書において、A4らの原告に対する取調べについて抗議したにもかかわらず、何らの対応も取らなかった。また、A28検察官は、同月14日午後8時40分頃、A29弁護士がB1署に到着し原告との接見を申し出た際、原告に対する取調べ後の接見を指定し、同日午後11時40分まで、原告との接見をさせなかっ た。この間、A4らは、原告に対し、虚偽の自白を行うよう迫り、原告は、同日午後9時45分頃以降、自白を開始し、同日午後10時頃以降、虚偽の自白に沿った供述書を作成していた。A28検察官は、原告がA29弁護士との接見によって否認を維持するのを避けるために接 、原告は、同日午後9時45分頃以降、自白を開始し、同日午後10時頃以降、虚偽の自白に沿った供述書を作成していた。A28検察官は、原告がA29弁護士との接見によって否認を維持するのを避けるために接見を認めなかった。さらに、A6検察官は、裁判官に対し、接見を妨害したことを隠蔽するために、 原告が自白を開始した時刻が同日の夕方である旨虚偽の説明を行った。 よって、A6検察官らの捜査段階の活動には、A4らの違法な取調べを黙 認し、又は助長した違法がある。 (被告国の主張)否認ないし争う。本件準抗告の申立ては、刑訴法429条1項2号に基づく適法な申立てである。そして、A6検察官が本件準抗告の申立ての際、引き当たり捜査の必要性を主張したことにも、合理性があった。また、A6検 察官らは、弁護人らから抗議を受けた後の同月20日以降、B1署で原告に対する取調べを行い、原告も取調べを問題視する指摘をしていないこと等からしても、A6検察官らが、弁護人らの抗議を無視し、A4らの原告に対する違法な取調べを黙認し、又は助長したなどともいえない。さらに、A28検察官が、同月14日のA29弁護士の接見をA4らの取調べ終了後と指定 したことについても、原告がA29弁護士による接見の申出直前の同日午後8時30分頃から自白を開始し、供述書の作成に時間を要する状況であったこと、A29弁護士が同日午後11時10分までの間取調べの中断を求めなかったこと及びA29弁護士が直ちに取調べを中断するよう求めた際、速やかにその旨を警察官に連絡し、同日午後11時25分に取調べが終了した後 直ちに原告との接見を認めていることに照らすと、A28検察官の同日の接見指定には、違法がない。よって、A6検察官らの捜査段階の活動には、A4らの違法な取 午後11時25分に取調べが終了した後 直ちに原告との接見を認めていることに照らすと、A28検察官の同日の接見指定には、違法がない。よって、A6検察官らの捜査段階の活動には、A4らの違法な取調べを黙認し、又は助長した違法がない。 原告及びA1の自白の評価を誤ったか(原告の主張) 原告及びA1の自白には、任意性及び信用性がない。A6検察官らは、A1がA24弁護士と接見する度に自白を撤回していたことを認識していたし、A24弁護士から原告及びA1に対する取調べに関し抗議を受けていた。 また、取調状況報告書の記載内容及び科捜研に対する燃焼実験の鑑定嘱託の結果によれば、A1の自白どおりガソリンをまいてライターで着火すること は、A1にとって極めて危険であり、着火後の燃焼状況も本件火災の状況とは大きく異なる。したがって、A6検察官らは、原告及びA1の自白には任 意性及び信用性がないと認識することができた。よって、A6検察官らの捜査段階の活動には、原告及びA1の自白の評価を誤った違法がある。 (被告国の主張)否認ないし争う。本件公訴の提起時を基準とすると、A1の自白には、任意性及び信用性があったものと評価することができたのであるから、A6検 察官らが、A1の自白の評価を誤ったとはいえない。また、A6検察官らが、A1の取調状況報告書を検討していたとしても、その記載内容からA5らのA1に対する取調べに違法があるとして、A1の自白の任意性及び信用性がないと認識することは困難であった。よって、A6検察官らの原告及びA1の自白の評価についての捜査段階の活動には、違法がない。 4 検察官による本件公訴の提起の違法性原告及びA1に対する取調状況の検討に違法があるか(原告の主 察官らの原告及びA1の自白の評価についての捜査段階の活動には、違法がない。 4 検察官による本件公訴の提起の違法性原告及びA1に対する取調状況の検討に違法があるか(原告の主張)原告及びA1に対する取調べには、違法があり、原告及びA1の自白には、任意性及び信用性がなかったため、本件公訴事実の直接証拠は、なかった。 しかし、A6検察官は、上記の事実を軽視し、又は、無視した。よって、A6検察官の上記取調状況の検討には、違法がある。 (被告国の主張) 否認ないし争う。本件公訴の提起時において、原告及びA1に対する取調状況に自白の任意性及び信用性を疑わせる事情を認めることは、できなかっ た。また、原告及びA1の自白は、客観的証拠及び信用性の高い供述証拠と整合していた。よって、A6検察官の上記取調状況の検討には、違法がない。 本件公訴の提起の前提となる証拠の評価及び補充捜査に違法があるか(原告の主張)A6検察官は、本件刑事事件において重要かつ不可欠である本件風呂釜か らの引火可能性及びガソリンの漏出可能性について、専門家に確認するという補充捜査を怠った。また、A6検察官は、A1の自白が事実であるとすれ ば犯行に使用されたはずの給油ポンプ等の道具がいずれも発見されていないことを軽視した。また、A6検察官は、A1がほとんど火傷をしていないこと、本件火災の初期の出火状況がガソリンを相当量まいた場合と大きく相違することなど、本件火災の出火原因が放火である事実を否定する客観的証拠も存在していたにもかかわらず、これらの事実及び証拠等を無視した。さら に、A6検察官は、原告が本件火災直後に通報したこと、A1が消火活動をしていたこと並びに原告及びA1の犯行動機には大きな疑問 も存在していたにもかかわらず、これらの事実及び証拠等を無視した。さら に、A6検察官は、原告が本件火災直後に通報したこと、A1が消火活動をしていたこと並びに原告及びA1の犯行動機には大きな疑問があることなど、原告及びA1の犯行を否定する多くの事実を軽視し、又は、無視した。 よって、A6検察官による本件公訴の提起の前提となる証拠等の評価及び補充捜査には、違法がある。 (被告国の主張)否認ないし争う。本件公訴の提起時の証拠関係によると、本件火災が自然発火である可能性を否定する証拠、すなわち、本件風呂釜の種火がガソリンに引火した可能性を否定する合理的な根拠が、十分にあった。また、A6検察官が、本件火災が何者かの放火行為によるものであり、事件性が認められ ると判断したことには、十分に合理的な根拠があった。また、本件家屋の出入口が施錠されていたこと、本件ガレージ内が出火場所と認められたこと、本件火災直前直後の原告及びA1の不自然な言動、原告及びA1には犯行動機があったことなどに照らすと、原告及びA1の供述にかかわらず、原告及びA1が共謀して本件刑事事件に及んだものと推認できる状況にあった。ま た、A1の詳細な自白は、任意性を欠く事情が認められない上、十分信用性を認めることができる内容であった。さらに、原告も一時的に自白し、任意性及び信用性を欠くと認められる事情まではなかった。そこで、A6検察官は、間接事実を中心として、本件火災の出火原因について、原告及びA1が共謀して放火した行為によるものであると認定し、本件公訴の提起の判断を したのであり、その判断には十分に合理的な根拠がある。これらの事情を考慮すると、A6検察官には、自然発火の可能性がないことについて更に補充 捜査を行うべき職務上の法 の判断を したのであり、その判断には十分に合理的な根拠がある。これらの事情を考慮すると、A6検察官には、自然発火の可能性がないことについて更に補充 捜査を行うべき職務上の法的義務はない。よって、A6検察官による本件公訴の提起の前提となる証拠の評価及び補充捜査には、違法がない。 5 検察官の本件確定審における各活動の違法性公判を維持するために事実及び証拠を隠蔽したか(原告の主張) 本件刑事事件において、原告の取調状況報告書が自白の任意性及び信用性を判断する上で極めて重要な役割を果たしていることは、明らかであったが、検察官は、上記取調状況報告書の開示を拒否した。また、検察官は、A1が消火活動をしていたこと等が記載されている報告書等原告の無罪を裏付ける証拠については、一切証拠調べ請求を行わなかった。検察官は、これらの証 拠の存在が明らかになれば公判を維持できないと考えたからこのような対応をしたのであり、検察官による証拠の隠蔽行為である。よって、検察官が本件確定審において上記の各証拠を提出しなかった行為には、違法がある。 (被告国の主張) 争う。検察官が、本件確定審において、原告の取調状況報告書、聞き込み 状況書等を証拠として開示し、又は、取調べを請求しなかったからといって、当時の刑訴法上違法となる余地は、ない。したがって、検察官の対応は、職務上の法的義務に違背していない。よって、検察官が本件確定審において原告の主張する各証拠を提出しなかった行為には、違法がない。 A5の偽証に関与したか (原告の主張)A5は、8月14日にA1が作成したA2との性的関係についての供述書の作成経緯について、真実は、A5作成の捜査報告書記載のとおり、A5がA1を呼び出したのに 与したか (原告の主張)A5は、8月14日にA1が作成したA2との性的関係についての供述書の作成経緯について、真実は、A5作成の捜査報告書記載のとおり、A5がA1を呼び出したのに、A1が同日、自らB1署を訪れ、A2と性的関係に及んだ事実を述べたと虚偽の証言をした。また、A5は、A1に対する9月 10日の取調べの際には、A1とA2との性的関係について、A5から言い出したことはないと、虚偽の疑いが極めて強い証言をした。A5の上記各証 言は、本件確定審における検察官の主張に沿うものであること、A5の証人尋問を行った検察官は、A5の証言と矛盾する関係証拠を当然確認したはずであることからすると、検察官が、A5の偽証に関与し、A5が偽証したことが明らかになる証拠を隠蔽したというべきである。よって、検察官がA5の偽証に関与した行為には、違法がある。 (被告国の主張)否認する。検察官は、A5に対し、虚偽の証言をするよう求めておらず、A5もこれを了承していない。A5の証言が信用することができる一方で、A1の供述は信用することができないのであるから、検察官がA5に偽証させた事実は、認められない。よって、検察官には、A5の証言に関し、違法 がない。 証拠の評価を誤ったか(原告の主張)本件確定審控訴審においては、本件火災の原因が自然発火によるものであることを示す証拠が新たに提出され、自然発火ではないとする根拠は薄弱で あることが判明したが、検察官は、その評価を誤り、必要な補充捜査を行わなかった。また、検察官は、A1の自白の任意性及び信用性の評価を誤った。 よって、検察官の活動には、証拠の評価を誤った違法がある。 (被告国の主張)否認ないし争う。本件確定審を通じて、本件車両 かった。また、検察官は、A1の自白の任意性及び信用性の評価を誤った。 よって、検察官の活動には、証拠の評価を誤った違法がある。 (被告国の主張)否認ないし争う。本件確定審を通じて、本件車両からガソリンが漏出する という前提自体が考え難い状況にあり、関係証拠を踏まえても、自然発火の可能性がないとする主張に根拠がないことは、明らかではなかった。よって、検察官の活動には、証拠の評価を誤った違法がない。 勾留の取消しの請求及び無罪の弁論をすべき義務があったか(原告の主張) 検察官には、本件確定審控訴審の論告において、被告人が有罪であることについて合理的な疑いが残る場合には、直ちに、被告人を釈放し、無罪を求 める論告を行うべき義務がある。よって、検察官が原告の勾留取消請求及び無罪の弁論を行わなかった点には、違法がある。 (被告国の主張)本件確定審控訴審の段階においても、全証拠を総合勘案しても到底有罪判決を期待し得ない状況に至ったとは認められない。したがって、本件確定審 控訴審の最終段階において、検察官が勾留取消請求をしたり、無罪を求める論告をしたりしなければならない職務上の法的義務があったとはいえない。 よって、検察官が原告の勾留取消請求及び無罪の弁論を行わなかった点には、違法がない。 6 検察官の本件再審請求事件及び本件即時抗告事件における各活動の違法性 (原告の主張)検察官は、自ら行った再現実験において弁護側の証拠の信用性を弾劾することに失敗し、むしろ、弁護側の証拠の信用性を一層裏付けることとなった。しかし、検察官は、以後も立証を行おうとしたが、A33C14大学教授を中心に行われた実験及び同教授の意見書には、信用性がなく、本件即時抗告事件は、 上記意見書を 性を一層裏付けることとなった。しかし、検察官は、以後も立証を行おうとしたが、A33C14大学教授を中心に行われた実験及び同教授の意見書には、信用性がなく、本件即時抗告事件は、 上記意見書を一切採用しなかった。かかる経過に照らすと、検察官は、本件再審開始決定に対して、各即時抗告を申し立てることなく速やかに再審公判に臨むべきであった。また、検察官は、遅くとも、自ら行った再現実験(C10実験)によって弁護側の実験の信用性を弾劾することに失敗した時点において、各即時抗告を取り下げるべきであった。それにもかかわらず、漫然と時間を推 移させ原告の身柄拘束を続けた検察官の本件再審請求事件及び本件即時抗告事件の活動には、違法がある。 (被告国の主張)検察官が、再審開始決定を誤りであると判断した場合に即時抗告を申し立てる行為は、検察官として当然行うべき正当な職務上の行為であり、特段の事情 がない限り、その権限の行使には、違法がない。 検察官は、本件再審開始決定が誤りであるとして各即時抗告を申し立てたの であり、かかる検察官の判断には合理性が認められ、本件即時抗告事件の判断を待たずに本件即時抗告事件を取り下げなければならない法的義務は、ない。 したがって、本件再審開始決定に対して各即時抗告を申し立て、本件即時抗告事件における実験後も、本件車両からガソリンが漏出し自然発火が生じたという現実的な可能性を示す証拠が存在しなかったこと等に照らして各即時抗告を 取り下げなかったことは、明らかに正当な職務行為である。 よって、本件再審請求事件及び本件即時抗告事件における検察官の活動には、違法がない。 7 原告の損害及びその数額(原告の主張) 逸失利益小計9196万489 再審請求事件及び本件即時抗告事件における検察官の活動には、違法がない。 7 原告の損害及びその数額(原告の主張) 逸失利益小計9196万4893円ア 9月10日から平成27年10月26日(原告に対する懲役刑の執行の停止がされた日)まで 7030万0006円原告は、身柄を拘束されていたために稼働能力に見合った職に就くこと ができず、収入を得ることができなかった。原告の稼働能力は、賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者・全年齢に基づいて算出すべきところ、当該期間における収入の合計は、7030万0006円となる。また、生活費及び作業報奨金を控除することは、相当ではない。 イ平成27年10月27日(原告に対する懲役刑の執行の停止がされた日の翌日)から令和●年●月●日(原告67歳)まで2166万4887円原告は、長期間にわたる身柄拘束によって、懲役刑の執行の停止がされた日の翌日から67歳までの間、労働能力を一部喪失し、その喪失率は、 56%(障害等級第7級相当)である。そして、当該期間の逸失利益は、平成27年の賃金センサス第1巻第1表(産業計・企業規模計・学歴計・ 女子労働者・全年齢)に基づいて算出すべきところ、その合計額は、2166万4887円となる。 本件刑事事件における弁護士費用及び実験、鑑定等の実費4595万0000円原告は、弁護人らに対し、捜査段階から本件再審判決が言い渡されるまで、 法廷内外での弁護活動を依頼した。また、再現実験費用、学識経験者らとの打合せ費 定等の実費4595万0000円原告は、弁護人らに対し、捜査段階から本件再審判決が言い渡されるまで、 法廷内外での弁護活動を依頼した。また、再現実験費用、学識経験者らとの打合せ費用及び自動車の調査費用も必要であった。原告は、これらの費用として、弁護人らに対し、交付を受けた刑事補償法に基づく補償金9190万円の2分の1である4595万円を支払ったから、被告らは、同額を賠償すべきである。 慰謝料 1億0000万0000円原告は、警察官及び検察官の各違法行為により生じたいわゆる冤罪によって、多大な精神的苦痛を受けた。しかし、被告らは、反省せず、原告に対し、謝罪せず、A4は、原告が現在も犯人であると思っていると法廷で証言した。 また、原告を無罪とする本件再審判決が確定した後も、原告が犯人であると 罵る世間の声は、いまだ消えない。また、原告は、長期間の身柄拘束によって、高度の心的ストレスを受け、刑務所における決められた生活によって人間関係の構築が困難となった。さらに、原告は、社会との断絶によって社会人としてキャリアを積むこともできなくなってしまった。これらにより、原告は、労働能力の一部を喪失した(障害等級第7級相当)。 これらによる原告の慰謝料は、1億円を下らない。 からまでの合計額 2億3791万4893円 損益相殺 9190万0000円原告が交付を受けた補償金9190万円は、損益相殺の対象となる。 本件の弁護士費用相当損害額 1460万1489円 弁護士費用相当損害額は、損益相殺後の残額1億4601万4893円の1割に当たる1 対象となる。 本件の弁護士費用相当損害額 1460万1489円 弁護士費用相当損害額は、損益相殺後の残額1億4601万4893円の1割に当たる1460万1489円とするのが相当である。 合計額 1億6061万6382円上記の損益相殺後の残額1億4601万4893円及び上記の弁護士費用相当損害額1460万1489円の合計額は、1億6061万6382円となる。 請求額(一部請求) 1億4597万5006円 原告は、上記の一部である1億4597万5006円を、請求する。 (被告大阪府の主張)否認ないし争う。原告は、補償金の交付を受けており、原告の身柄拘束期間における損害は、これにより、補填されている。 逸失利益 ア 9月10日から平成27年10月26日(原告に対する懲役刑の執行の停止がされた日)まで原告は9月10日当時、就労していたのであるから、逸失利益は、その当時の原告の収入額及びその後の見込み収入額に基づいて算出すべきである。そして、賃金センサスを用いる場合、原告の学歴に応じた数値を用い るべきである。また、原告は身柄を拘束されている間生活費の負担を免れていたのであるから、少なくとも3割は、控除されるべきである。 イ平成27年10月27日(原告に対する刑の執行が停止された日の翌日)から令和●年●月●日(原告67歳)まで原告は、心的外傷後ストレス障害等の精神疾患に罹患していると診断さ れ、通院したことを示す証拠を提出しておらず、原告に心的ストレスが残存しているとは認められない。よって、上記期間における逸失利益は、 、心的外傷後ストレス障害等の精神疾患に罹患していると診断さ れ、通院したことを示す証拠を提出しておらず、原告に心的ストレスが残存しているとは認められない。よって、上記期間における逸失利益は、認められない。 本件刑事事件における弁護士費用及び実験等に要した実費原告は、根拠となる証拠を示しておらず、具体的な費用が特定されていな い。 慰謝料 補償金は、慰謝料的要素も全て考慮した上で算定されており、1億円は、高額に過ぎる。 本件の弁護士費用相当損害額損益相殺後の損害賠償金額の1割が相当である。 (被告国の主張) 否認ないし争う。 逸失利益ア 9月10日から平成27年10月26日(原告に対する懲役刑の執行の停止がされた日)まで原告は、9月10日当時月額約10万円の収入を得ていたにとどまるか ら、無条件に、賃金センサスに基づいて算出される収入を得ていた蓋然性があったとはいえない。また、原告の実際の学歴に即して、高卒の全年齢の平均賃金に基づいて基礎収入を算出すべきである。また、逸失利益を認める期間について、警察官による同日の任意同行、通常逮捕並びにその後の検察官による勾留請求及び勾留期間延長請求に違法はないから、同日を 始期とすべきではない。さらに、逸失利益の算定に当たっては、生活費を控除するべきである。 イ平成27年10月27日(原告に対する懲役刑の執行の停止がされた日の翌日)から令和●年●月●日(原告67歳)まで平成27年10月27日以降の逸失利益について、原告の心的ストレス が精神障害に匹敵するとの客観的な立証はされておらず、労働能力が一部喪失しているとはいえないので、逸失利益は、発生していない。 本件刑 0月27日以降の逸失利益について、原告の心的ストレス が精神障害に匹敵するとの客観的な立証はされておらず、労働能力が一部喪失しているとはいえないので、逸失利益は、発生していない。 本件刑事事件における弁護士費用及び実験等の実費大阪地裁は、原告に対し、平成29年3月31日、刑訴法188条の3第1項本文に基づき、1522万7264円を交付する旨決定した。当該決定 は、本件確定審における弁護士報酬に加え、再審請求手続に要した調査費用、実験費用等もしんしゃくして算定しているが、原告の主張する上記各費用等 は、上記金額を超えることはない。 慰謝料原告の主張する慰謝料は、死亡慰謝料と比較しても、高額に過ぎる。 損益相殺原告は、和歌山刑務所において、作業報奨金合計43万9620円の支給 を受けたから、これに相当する金額は、控除すべきである。また、上記及びの各損害については、補償金の交付によって既に賄われている。また、仮に、補償金の交付によって損害の全てが賄われるわけではないとしても、補償金相当額を控除すべきである。 8 除斥期間の経過の有無 (原告の主張)警察官及び検察官の各違法行為によって下された有罪判決が確定した場合において、それが存在することによって生じた損害については、当該有罪判決が適法かつ有効なものである以上、その損害の性質上、再審による無罪判決が確定するまでは損害が生じたものとして取り扱うことはできない。したがって、 除斥期間の起算点は、再審による無罪判決が確定した時であるというべきである(最高裁判所昭和56年第767号同57年10月19日第三小法廷判決・民集36巻10号2163頁参照)。よって、除斥期間は、経過していない。 (被告大阪府の主張) 時であるというべきである(最高裁判所昭和56年第767号同57年10月19日第三小法廷判決・民集36巻10号2163頁参照)。よって、除斥期間は、経過していない。 (被告大阪府の主張)争う。仮に、警察官の行為に何らかの違法性が認められるとしても、原告に 対する取調べ及び補充捜査が行われたのは、原告が詐欺未遂罪で公訴を提起された10月13日までである。よって、既に、不法行為の時から20年以上が経過しており、原告の請求権は、除斥期間の経過により、消滅している。

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