平成24(わ)362 強姦

裁判年月日・裁判所
平成24年11月26日 神戸地方裁判所
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判決文本文4,973 文字)

平成24年11月26日宣告平成24年第362号 主文 被告人を懲役4年に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 神戸地方検察庁で保管中の包丁1本(平成24年領第899号の4)を没収する。 理由 (犯罪事実)被告人は,平成24年2月25日午後10時55分頃から同月26日午前零時14分頃までの間,神戸市a区b町c丁目d番e号fgの当時の被告人方で,同所に誘い込んだA(当時48歳)を強姦しようと企て,同女の顔面等を平手で数回殴り,手に持った包丁(主文掲記のもの)を同女の顔面に押し当てるなどしながら,「引いたら切れるぞ。」,「熱い湯ぶっかけんど,おんどれ。」などと言い,さらに,自己の両腕の入れ墨を示すなどしながら,「俺がただの男や思うとんかい。」,「おんどれの顔切ったら,完全に傷害や。」などと言うなどの暴行,脅迫を加え,その反抗を著しく困難にした上,強いて同女を姦淫した。 (証拠の標目)省略(争点に対する判断) 1 争点本件の争点は,Aの反抗を著しく困難にする程度の暴行,脅迫の有無と姦淫の有無の2点である。 2 A証言の概要上記各争点に関し,Aは,概要,以下のとおり証言する。 平成24年2月25日午後7時過ぎ頃から,飼い犬の散歩の途中に寄った居酒屋で飲酒していたところ,それまでにその店で1 度見かけたことがある被告人が1人で入ってきて,客が少なくなると隣に座ってきた。その後,被告人からもう1軒行こうとしつこく誘われ,断り切れずに被告人とカラオケスナックに行ったが,その店から帰ろうとした際,今度はタクシーで家まで送っていけとしつこく言われ,被告人を送ったタクシーにそのまま乗って自分も帰るつもりで,結局これに応じた。しかし,タクシーが被告人方付近に着く たが,その店から帰ろうとした際,今度はタクシーで家まで送っていけとしつこく言われ,被告人を送ったタクシーにそのまま乗って自分も帰るつもりで,結局これに応じた。しかし,タクシーが被告人方付近に着くと,被告人からお茶くらい入れていけと言われ,タクシー代も支払われてしまったので,運転手に迷惑がかかると思い,タクシーから降りて被告人方まで行き,被告人にコーヒーを入れた。 すると,被告人は服を脱ぎだして下着姿になり,愛人になるように迫ってきたので,拒絶して帰ろうと玄関の土間まで行ったが,顔や頭を平手で何度も殴られて部屋の中に戻るように要求され,さらに,台所から持ち出してきた包丁の刃をのど元や顔に当てられ,「包丁を引いたら切れるぞ。」と脅されたため,余りの恐怖で言うことを聞くしかないと思い,部屋の中に戻った。その後,トイレに行かせてもらい,その中から携帯電話で110番にかけ,応対した警察官に小声で助けを求めたが,被告人方の住所が分からなかったため,居場所を伝えることができず,被告人との会話の中で住所等を聞き出して助けに来てもらおうと考え,携帯電話を通話状態にしたままトイレから出た。そうすると,被告人は,上半身裸になって入れ墨を見せ,暴力団関係者であることをにおわせるようなことを言うなどして,性交を求めてきたので,拒絶すると,さらにたたかれたり包丁で脅されたりした。その最中に,自分の携帯電話の着信音が鳴り,警察との通話が切れていることに気付いたが,被告人から電話に出るなと言われたため,その電話に出ることはできなかった。その後,被告人は全裸になってテーブルに腰を掛け,男性器をなめるよう求めてきた。拒絶すると,髪の毛を鷲掴みにされ,口を被告人の男性器のところに持っていかれたため,唇で挟むようにしてくわえていると男性器が勃起した。被告人に要求されて全裸 腰を掛け,男性器をなめるよう求めてきた。拒絶すると,髪の毛を鷲掴みにされ,口を被告人の男性器のところに持っていかれたため,唇で挟むようにしてくわえていると男性器が勃起した。被告人に要求されて全裸になると,キスをされ,仰向けに押し倒され,胸をもまれ,覆い被さられて,男性器を女性器に入れられた。被告人が手元に包丁を置いたままにしていたので,逆らうと包丁で傷付けられるかもわからないと思い,抵抗できなかった。姦淫されたことは,これまでの性交の経験から圧迫感のような違和感を感じたことでわかった。被告人による姦淫の態様は,男性器を入れて2,3度腰を動かし,休憩すると言ってテーブルに座り直し,男性器をくわえさせた後,また男性器を入れるというもので,このような行為が4,5回繰り返された。その間に,バイアグラだという薬を飲まされそうになったが,飲むふりをして口から出し,自分のダウンジャケットのポケットに隠した。被告人方を出ると娘から電話があり,迎えに来てもらったが,娘と合流した後,恐怖から解放され,泣きじゃくってしゃがみ込んでしまった。 3 A証言の信用性⑴ 上記の110番への電話については,警察がその電話を切るまでの約12分間,兵庫県警察本部地域部通信指令課でその通話内容が録音されていた(甲18,弁2)。 そこには,①Aが,警察官に小声で助けを求めるものの自分の居場所が分からないと伝え,その後,Aが被告人との会話の中で,被告人から住所等の手掛かりを聞き出そうとしている内容,②被告人が「はよすんで,はよ帰らんかい。」と言い,それに対しAが「だから,できへんて言うとうやん。」と答えるなど,被告人がAに性交を求め,Aがそれを拒絶していることがうかがえる内容,③被告人が「Bの実弟や,俺は。」などと暴力団関係者であることをAににおわせる内容, ら,できへんて言うとうやん。」と答えるなど,被告人がAに性交を求め,Aがそれを拒絶していることがうかがえる内容,③被告人が「Bの実弟や,俺は。」などと暴力団関係者であることをAににおわせる内容,④被告人が「暑いから,脱ぎよんねん。」と言い,Aが「絵描いとんの,見せんでも構へんって。」と言うなど,被告人がAに対し入れ墨を示していることがうかがえる内容,⑤何かをたたくような音がした後にAが「痛い,やめてよ。」と言うなど,被告人がAに対し暴力を振るっていることがうかがえる内容,⑥被告人がAに対し「俺がただの男や思うとんかい。」,「おんどれの顔切ったら,完全に傷害や。」,「ほんなら,どないや,言うこと聞くんか,聞かへんのか。」などと鋭い口調で言い,Aを脅して意のままにしようとしていることがうかがえる内容,⑦Aが「もう包丁振り回さんとってぃよ~っ。」と言うなど,被告人がAに対し包丁を振り回していることがうかがえる内容等の各音声が録音されており,これらの内容は,前記2のA証言の内容と合致している。 また,その信用性に特に争いがないAの娘の供述(甲27)によれば,Aは,被告人方を出た後,迎えに来た娘に会うと,歩道上の縁石に座り込んで急に泣き出し,娘に対し泣きながら,「包丁向けられて…たたかれて…110番したのに来てくれんかった。誰も来てくれんかった。」などと説明し,帰宅後に娘から何があったのか改めて聞かれたのに対し,「無理矢理された。」と答えたことが認められるほか,本件後Aが警察に提出したダウンジャケットのポケットからは勃起不全治療剤が見つかっており(甲22~24),A証言は,これらの事実ともよく整合している。 そして,警察がAからの電話を途中で切ったため,Aが姦淫されたとする時点での録音は存在しないが,上記②~⑦の録音内容からは ており(甲22~24),A証言は,これらの事実ともよく整合している。 そして,警察がAからの電話を途中で切ったため,Aが姦淫されたとする時点での録音は存在しないが,上記②~⑦の録音内容からは,被告人が,性交を拒絶するAに対し,包丁も使って執ように暴行,脅迫を加え,何としてもAを姦淫しようとしていたことがうかがえるのであって,その後姦淫されるまでに至ったというA証言の内容は,これらの録音内容に引き続く状況として極めて自然であるし,男性器が自分の女性器に挿入され姦淫されたと認識した理由や姦淫の態様についての証言も,その特徴的な内容等に照らして実際に体験し記憶したことをありのままに述べていると認められるものであって,思い違いや誇張による虚偽のものであるとは考えられない。 ⑵ これに対し,被告人は,Aの方から性交を積極的に求めてきたが,結局男性器が勃起せず,性交はできなかったなどと公判で供述する。しかし,性交を求めていたのが被告人の方であったことは前記の録音内容からも明白であるなど,被告人の供述は,全体的に事実を殊更自己に有利にねじ曲げようとしているものといわざるを得ない。 また,弁護人は,Aが被告人方に上がる前後には逃げ出す機会が幾度もあったこと,被告人よりも体格がよく,被告人と冷静にやり取りをしていたことなどから,被告人の暴行,脅迫は,Aの反抗を著しく困難にする程度には至っておらず,姦淫についても,被告人の年齢や,2,3度腰を動かしてはやめることを繰り返したというAが証言する被告人の行動の態様からは,男性器の没入はなかったと考えるのが自然であると主張する。しかし,被告人は自身の入れ墨をAに見せつけ,包丁も使って暴行,脅迫に及んでいたものであり,それが少なくとも上記の程度に至っていたことは,被告人が高齢でAより小柄である るのが自然であると主張する。しかし,被告人は自身の入れ墨をAに見せつけ,包丁も使って暴行,脅迫に及んでいたものであり,それが少なくとも上記の程度に至っていたことは,被告人が高齢でAより小柄であることを考慮しても,前記の録音内容から十分にうかがえるものであるし,姦淫の点も,確かに上記の態様からは男性器の勃起が持続しなかったか,挿入を継続するには十分でなかった可能性はあるが,Aがこれまでの性交の経験から前記のとおり証言していることについて,その信用性に疑いを差し挟む余地は認められない。 4 結論以上によれば,被告人の暴行,脅迫及び姦淫行為についてのA証言は信用できる一方,被告人の供述は信用できず,A証言によれば,被告人がAに対し,強姦の故意をもって判示のとおりの暴行,脅迫を加え,それが少なくともAの反抗を著しく困難にさせる程度のものであったこと,及び姦淫の事実は,いずれも十分に認められる。 (法令の適用)省略(量刑の理由)被告人は,半ば強引に被害者を自宅に誘い込み,唐突で甚だ身勝手にも,同女に自分の愛人になるように求め,これを断られると,同女に対し,包丁も持ち出して判示のとおりの執ようで危険な暴行,脅迫を加えた上,口淫させては同女を姦淫するという行為を数回にわたり繰り返したもので,その犯行態様はまことに卑劣で悪質である。 本件犯行により被害者が受けた屈辱感,恐怖感などの精神的苦痛は察するに余りあり,同女は,本件被害後,家から出られなくなるなどの深刻な影響を受けているのに,慰謝の措置は何らとられておらず,同女の処罰感情が厳しいのは当然である。 しかるに,被告人は,被害者の方から性交を求めてきたが自分の男性器が機能せず挿入できなかったなどと,被害者の心情を逆なでするような不合理極まりない弁解に終始しており,反 感情が厳しいのは当然である。 しかるに,被告人は,被害者の方から性交を求めてきたが自分の男性器が機能せず挿入できなかったなどと,被害者の心情を逆なでするような不合理極まりない弁解に終始しており,反省の態度は全く見られない。 以上によれば,被告人の刑事責任は重く,71歳と高齢であること,30年以上の間前科がないこと,長女が出廷して被告人の監督を誓い,長女を含む被告人の子らが寛大な処分を望む旨の嘆願書を提出していることなどの,被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,相当期間の実刑は免れず,被告人を主文のとおりの刑に処するのが相当であると判断した。 (求刑懲役6年,包丁1本の没収)平成24年11月26日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官細井正弘 裁判官西森英司 裁判官小林礼子

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