1 主 文 被告人を懲役18年に処する。 未決勾留日数のうち270日を刑に算入する。 理 由 (罪となるべき事実) 被告人は, 第1 令和2年4月頃,清掃作業員として働いていたマンションで,同マンション に住みながらB大学の研究員として働いていたCに声をかけ,資産家のふりを して近づき,寄付や支援を匂わせながらCを食事や買い物に同伴させていたが, 同年▲月▲日,それらが嘘であることを知ったCから強く叱責されると,逆に 激しく立腹して,Cを殺害して黙らせてやろうなどと考え,同日午後4時20 分頃から同日午後6時7分頃までの間に,被告人が当時住んでいた熊本市(住 所省略)ビル北側出入口付近において,殺意をもって,C(当時35歳)の頸 部をひものようなもので絞め付け,その場で,Cを絞頸によって窒息死させた。 第2 引き続き,Cの死体を,その両足を引っ張るなどして前記出入口付近から出 入口に設置された鉄製通路の西側端に移動させ,通路下の堀に投棄して遺棄し た。 (証拠の標目) 省略 (法令の適用) 省略 (量刑の理由) 被告人は,被害者の首を背後から,ひものようなもので,少なくとも3分以上に わたって,被害者が抵抗したり苦しむ様子を見せたりしたのに,意識を失い崩れ落 ち死に至るまで絞め続けた。被害者を確実に殺害しようとしたもので,強い殺意に 基づく悪質な犯行といえる。被告人は被害者を黙らせようと思って犯行に及んだと 2 供述するが,単に黙らせようと考えていたにしては度が過ぎており,その犯行態様 からすれば,殺意は強かったと評価するほかない。 殺害に至った経緯や動機は,被告人の供述にあいまいな部分が多く,判然としな い部分が残る。しかし,被告人は,資産家のふりをして被害者に近づき,研究員と しての任期満了や更新を心配してい するほかない。 殺害に至った経緯や動機は,被告人の供述にあいまいな部分が多く,判然としな い部分が残る。しかし,被告人は,資産家のふりをして被害者に近づき,研究員と しての任期満了や更新を心配していた被害者の弱みにつけこみ,寄付や支援を匂わ せながら,何度も食事や買い物に同伴させていた中,それらが嘘であることを知っ た被害者から強く叱責され,激しく立腹してとっさに犯行に及んだものと認めるこ とができる。したがって,被告人は,殺害を周到に準備したわけではない。もっと も,被害者が多少強く叱責したとしても,その原因は,あくまでも被害者に嘘をつ いてだまし続けてきた被告人にあるから,被害者に落ち度があるとはいえず,本件 の経緯や被告人が犯行に及んだことに同情できる点は全くない。このように理不尽 に被害者の命を奪われた遺族の喪失感や無念さは察するに余りがあり,被告人に対 する処罰感情が厳しいのは当然である。 以上によれば,本件は,同種事案の中で,殺害を入念に準備し計画していた事案 ではないという点で,検察官が主張するような最も重い部類に属するとはいえない ものの,相当に重い部類に属する事案である。 以上の犯行に関する事情に加え,被告人が,罪を認め,謝罪の態度を示している ことなど被告人に有利な事情も考慮した。 (求刑 懲役20年) 令和3年10月13日 熊本地方裁判所刑事部 裁判長裁判官 平 島 正 道 3 裁判官 杉 原 崇 夫 裁判官 安 曇 大 智
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