【DRY-RUN】○ 主文 原判決中控訴人と被控訴人とに関する部分を取消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 控訴人 主文と同旨 二
○ 主文原判決中控訴人と被控訴人とに関する部分を取消す。 被控訴人の請求を棄却する。 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一控訴人主文と同旨二被控訴人本件控訴を棄却する。 第二当事者双方の主張及び証拠関係は、次に付加するほか、原判決事実摘示中、控訴人と被控訴人に関する部分と同一であるから、これを引用する(たゞし、原判決一二枚目表末行「世界赤産党」を「世界共産党」と、同一七枚目表三行目「人民新聞誌上」を「人民新聞紙上」と、同二三枚目表一行目「会場集辺」を「会場周辺」と各訂正する。)。 一被控訴人の主張 1 被控訴人が日本赤軍と連繋関係を有するとの控訴人の主張に対し、さらに、次のとおり反論する。 (一) 被控訴人の新左翼紙上の寄稿文(一九七二年七月五日付―乙第八〇号証)については、右寄稿文がロツド空港事件直後の、現地における賛美と興奮の渦の中で書かれたにもかかわらず、被控訴人は、その冒頭で、自己の立場が人道主義に基くものであることを述べ、日本赤軍とは明確に一線を画している。 (二) 被控訴人は、ロツド空港事件後Aと接触交際がなかつたものであり、同人の新左翼紙(一九七二年九月一五日号)の記事(乙第八一号証)は、本人が遠くにあつて永く会つていない人々に対して、右紙面を借りて意思を伝えようとしたものである。 2 旅券法第一三条第一項第五号の解釈について旅券法第一三条第一項第五号は、第一次的判断権を外務大臣に与えることを規定しているにすぎず、それ以上のものではない。しかも外務大臣の右判断権自体外務大臣の国際関係、外交上の専門的識見を考慮して与えられたものであるから、その判断の前提事実の認識についてまで独占的権限を与えたものでないことは、明らかである。海外渡航の自由という憲法上の基本的人権が外 臣の国際関係、外交上の専門的識見を考慮して与えられたものであるから、その判断の前提事実の認識についてまで独占的権限を与えたものでないことは、明らかである。海外渡航の自由という憲法上の基本的人権が外務大臣の誤まつた事実認識により制限された場合には、裁判所は、救済の責任があり、外務大臣の専門的知識及びそれに基づく判断も一つの資料として、その処分の適否につき広い判断権を有する(最高裁判所昭和四四年七月一一日第二小法廷判決、民集二三巻八号一四七〇頁参照)。 なお、処分の違法性と過失とを混同して、被控訴人と日本赤軍との連繋関係の存在につき誤認があつたとしても、右誤認につき過失がない場合には、控訴人外務大臣の判断には、相当の理由があり、したがつて本件処分は違法でないとなしえないことは、いうまでもない。 二控訴人の主張 1 被控訴人が日本赤軍と連繋関係を有すると認められる理由として、次の事実を追加する。 被控訴人は、昭和五〇年一二月一二日夜、帰国した際、羽田空港で警視庁公安部司法警察員から捜索差押を受け、カセツトテープ一個等を押収され、Bに迎えられ、同人方に宿泊した。後日右差押物件返還のため、被控訴人が連絡先として指定した新左翼社に電話すると、Bが被控訴人の代理人として出頭してきた。右各事実によると、被控訴人は、右Bと密接な親交関係があるものと認められる。Bは、CとAが同四六年二月二日婚姻届を出した際の証人となつたもので、同人らと密接な関係にあつたものと認められる。 2 旅券法第一三条第一項第五号の解釈について旅券法第一三条第一項第五号は、「著るしく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞がある」か否かの判断を外務大臣の裁量に委ねたものでありしかも外務大臣は、「虞があると認めるに足りる相当の理由」があれば、旅券発給を拒否しうる権限が与え 接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞がある」か否かの判断を外務大臣の裁量に委ねたものでありしかも外務大臣は、「虞があると認めるに足りる相当の理由」があれば、旅券発給を拒否しうる権限が与えられているのであるから、外務大臣が相当の理由があると判断したことについて合理性があれば、その権限の行使は、適法であるといわねばならない。 本件についてみるに控訴人外務大臣は、すでに述べた各事実に基いて被控訴人を日本赤軍と連繋関係を有するものとして著るしく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する虞があると判断したのであるが、被控訴人を日本赤軍と連繋関係を有するものと判断したことは無理からぬことであり、その判断には相当の理由があり、また、著るしく且つ直接に国益又は公安を害する虞があると判断したことにつき相当の理由があることは、すでに述べたとおり(原判決事実摘示、第四、三(四))である。 したがつて本件処分は、控訴人外務大臣が同号の規定により与えられた権限をその法規の目的に従つて適法に行使したものであるから、違法ではない。 三証拠関係(省略)○ 理由一被控訴人が昭和五一一年一月八日サウジアラビアを渡航先として、控訴人外務大臣に対し、一般旅券発給の申請をしたところ、控訴人外務大臣は、被控訴人に対し、一般旅券発給拒否処分をなし、同年二月一六日付書面により、同月二四日に被控訴人に対し、これを通知したことは、当事者間に争いがない。 二旅券法第一三条第一項第五号が違憲である旨の主張について当裁判所も、被控訴人の右違憲の主張は、理由がないと判断するものであつて、その理由は、この点に関する原判決理由の説示(原判決二八枚目表三行目から同裏一一行目までと同一であるから、これを引用する。 三旅券法第一四条違反(理由付記の不備)の主張について控訴人外務大臣が本件 の理由は、この点に関する原判決理由の説示(原判決二八枚目表三行目から同裏一一行目までと同一であるから、これを引用する。 三旅券法第一四条違反(理由付記の不備)の主張について控訴人外務大臣が本件処分をなすにあたつて、被控訴人が同法第一三条第一項第五号に該当する旨を示して通知したこと(異議申立手続において、被控訴人が日本赤軍と連繋関係を有するとの理由が示された。)は、当事者間に争いがないところ、被控訴人は、同法第一四条によれば、同法一三条の規定により一般旅券発給拒否処分をなすについては、理由を付した書面により通知をしなければならないことになつているが、根拠条文を示しただけでは、処分理由を示したものといえないと主張するので、判断する。 「一般に、法が行政処分に理由を付記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分理由を相手方に知らせて不服申立に便宜を与える趣旨に出たものであ」つて、「どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由附記を命じた各法律の趣旨、目的に照らしてこれを決定すべきである」(最高裁判所昭和三八年五月三一日第二小法廷判決、民集一七巻四号六一七ページ)。これを旅券法についてみるに、同法第一三条第一項は、旅券の発給を拒否できる場合を六つの類型に分けて具体的に明文化し、これらのいずれかに該当しなければ、拒否処分は許されないとしているから、右拒否処分の理由付記の程度としては、どの条項で拒否したかを明示さえすれば、処分庁の恣意は抑制されることになり、また申請者に対しても不服申立についての必要最少限度の便宜ははかられているものといいうる。したがつて、本件処分理由は、単に処分庁の権限の根拠規定を示したものではなく、被控訴人が同規定に該当するという本件処分に到達した理由を明示したものであ 最少限度の便宜ははかられているものといいうる。したがつて、本件処分理由は、単に処分庁の権限の根拠規定を示したものではなく、被控訴人が同規定に該当するという本件処分に到達した理由を明示したものであつて、処分理由の付記の不備の瑕疵があるということはできない。 四旅券法第一三条第一項第五号該当性の有無について控訴人外務大臣が旅券法第一三条第一項第五号に該当するとして本件処分をなしたことは、前叙のとおりであり、成立に争いのない甲第二号証によれば、控訴人外務大臣が本件処分に対する異議申立を棄却した際に示した右条項に該当する具体的な事由が原判決添付別紙「異議棄却決定理由」のとおりであつたことが認められる。 1 日本赤軍の組織実態および破壊活動等いずれも成立に争いがない乙第五ないし第二一号証、同第二三ないし第三六号証、同第四八ないし第五〇号証、同第五二ないし第五八号証、同第六二、六三号証および同第六八ないし第七一号証、原審証人Dの証言により成立が認められる同第六一号証の一、二および同証言によれば、控訴人の日本赤軍の組織実態および日本赤軍による破壊活動等についての主張事実(原判決の事実摘示第四、三(一)、(二)記載の事実―原判決一二枚目表九行目から同一八枚目表一行目までが認められ、右認定を左右する証拠はない。 2 被控訴人と日本赤軍との連繋関係の有無について(一) 前掲乙第二三ないし第二八号証、同第四八ないし第五〇号証、同第五二ないし第五八号証および同第六九ないし第七一号証、成立に争いがない甲第七号証、同第一一、一二号証、乙第一号証、同第二号証の一、同第二二号証、同第三八号証の二ないし一二、同第三九号証、同第四〇号証の一ないし三、同第四三ないし第四七号証、同第五一号証、同第五九、第六〇号証および同第六四ないし第六六号証、原審証人Dの証言により成立 二号証、同第三八号証の二ないし一二、同第三九号証、同第四〇号証の一ないし三、同第四三ないし第四七号証、同第五一号証、同第五九、第六〇号証および同第六四ないし第六六号証、原審証人Dの証言により成立が認められる乙第二号証の二、同第三七号証、同第四一、第四二号証および同第七二ないし第七四号証、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第七五号証の二ならびに原審証人Dの証言によれば、控訴人主張の、原判決事実摘示第四、三、(三)、1、3ないし6記載の各事実(原判決一八枚目表七行目から同二〇枚目表一行目までおよび同二一枚目表二行目から同二三枚目裏六行目まで)が認められ、原審における被控訴人本人尋問の結果(第一回)中右認定に反する部分は、前記各証拠対比して措信することができず、他に右認定に反する証拠はない。 (二) 以上の認定事実によれば、(1) 被控訴人は、レバノンに渡航した後、日本赤軍の中心人物であるAと交友関係を結び、直接会う機会がなくなつた後も、Aは、「新左翼」紙に、しばらく会えないが、同じことを考えて歩いているんだ、がんばれよ、と被控訴人を激励する一文を寄せている(Aが上記文章を寄稿していることは、成立に争いのない乙第八一号証により認めることができる。)。また、日本赤軍構成員であるEから押収した換字表(乙第二号証の二)に被控訴人の氏名が暗号数字で記載されており、右換字表がEがAらからの通信文を読むためのものであることを考えると、被控訴人は、Aと密接な関係にあつたものと考えられる(なお、換字表中「7アタ」とあるのはE自身のことである旨の供述は、原審における被控訴人本人尋問の結果(第一回)に照らし、真実のことを供述したものとは考えられない。)。 (2) 被控訴人は、日本国内における宣伝の場を提供するなど日本赤軍と極めて緊密な連帯関係を有する人民新 ける被控訴人本人尋問の結果(第一回)に照らし、真実のことを供述したものとは考えられない。)。 (2) 被控訴人は、日本国内における宣伝の場を提供するなど日本赤軍と極めて緊密な連帯関係を有する人民新聞社(旧新左翼社)発行の新左翼紙に日本赤軍のテルアビブロツド空港事件の斗争を賛美し、高く評価する「五・三〇斗争二周年アピール」(もつとも、原審における被控訴人本人尋問の結果(第一回)によれば、右アピールを掲載した新左翼紙(乙第三八号証の六)の見出は、新聞社においてつけたものであることが認められる。)を発表して、日本赤軍の行動を熱烈に支持しており、また、共産主義者同盟赤軍派の中から結成されたものとみられるテルアビブ斗争支援委員会に対し、「パレスチナの戦列から」と題するアピールを送り、パンフレツト(乙第七五号証の二)にして発行されている。もつとも、右アピールとほぼ同内容の「パレスチナ通信」と題する被控訴人の寄稿文が新左翼紙(甲第一九号証)に掲載されているのであるが、両者を比較すれば、その発行の前後はともかくとして、文章の体裁、用字、内容よりして、「パレスチナの戦列から」は、直接被控訴人の原稿から掲載されたものであることが認めるのが相当であつて、新左翼紙から転載したものと認めることはできず、また、人民新聞社に保管中の被控訴人の原稿が無断持出された旨の原審における被控訴人本人尋問の結果(第一回)は、そのまゝ信用することはできない。 (3) 被控訴人は、人民新聞社の編輯長と親交関係があり、同社の中東特派員になり、帰国後も日本赤軍構成員Fと接触したことがあつた。 ということができ、これらの事実を総合して考えれば、被控訴人は、パレスチナ解放斗争と日本赤軍のテルアビブロツド空港斗争を支持・支援し、日本赤軍と思想的立場を共通にする部分があり、日本赤軍構成員および ということができ、これらの事実を総合して考えれば、被控訴人は、パレスチナ解放斗争と日本赤軍のテルアビブロツド空港斗争を支持・支援し、日本赤軍と思想的立場を共通にする部分があり、日本赤軍構成員および関係者と親交関係を有している事実に徴し、日本赤軍と密接な関係を有するものと認めるのが相当である。 (三) なお、控訴人主張の原判決事実摘示第四、三、(三)、2記載の事実(原判決二〇枚目表二行目から同二一枚目表一行目まで)および当審における追加主張事実(二、1、ないし、「被控訴人は、右Bと密接な親交関係があるものと認められる。」との点を除く。)は、いずれも成立に争いがない乙第八四ないし第八六号証、乙第三号証および同第四号証の一ないし五、右乙第八四ないし第八六号証および弁論の全趣旨により成立が認められる同第八二、第八三号証ならびに原審証人Dの証言により認められるが、これら事実は、次に述べる理由により、被控訴人と日本赤軍との連繋関係を認める資料となすことはできない。 (1) 被控訴人とGとの関係の有無前掲乙第三号証、同第四号証の一ないし五、成立に争いのない中第八ないし第一〇号証、原審における被控訴人本人尋問の結果(第一回)によれば、警視庁が前記押収した通信文五枚(乙第四号証の二ないし五)は、Gへの私信ではなく、いずれも新聞・新左翼への寄稿文(一部同新聞社への連絡文がある。)であり(現に同新聞に掲載されている。―甲第八ないし第一〇号証)、Gの夫であり、同新聞社々員であるHが社命で自宅に保管していたものであること、被控訴人は、Gとは面識もないことが認められ、これら事実によれば、被控訴人がG宅を日本国内向けの書簡等の送付先として利用し、同新聞社への寄稿文を同女あてに送つていたものと認めることは困難である。 (2) 被控訴人とBとの関係の有無当審証人Dの証 ら事実によれば、被控訴人がG宅を日本国内向けの書簡等の送付先として利用し、同新聞社への寄稿文を同女あてに送つていたものと認めることは困難である。 (2) 被控訴人とBとの関係の有無当審証人Dの証言、当審における被控訴人本人尋問の結果によれば、被控訴人が昭和五〇年一二月一二日帰国した際、連絡の手違いから羽田空港に出迎えがなかつたので、電話番号を記憶していた大阪市のI(被控訴人の以前の勤務先の経営者)に電話で連絡し、同人の世話でBに空港まで迎えに来て貰い、同人宅で四、五泊したこと、被控訴人は、右Bとは初対面で、出迎えて貰うについてもIに人相等を教えて貰つたことが認められ、これら事実によれば、被控訴人は、Bとはそれ以前から親密な関係にあつたものとは認められず、Bが押収物還付の代理人として出頭したとしても、右事実は、前記認定を左右するものではない。 (3) 結局、GおよびBが日本赤軍となんらかの関係を有することは、前認定のとおりであるが、被控訴人が右両名と密接な関係を有するとは認め難いのであるから、控訴人の前記主張事実をもつて被控訴人と日本赤軍との連繋関係の存在を認める資料とすることはできない。 3 国際関係に及ぼす影響等日本赤軍による前記1認定の破壊活動に対しては、日本国内はもとより国際世論からも非難が浴びせられており、世界各国は、そのような破壊活動等を惹起させないよう出入国管理を強化し、日本赤軍関係者らによるテロ活動の中心的人物の所属国であるわが国に対しても出入国管理の強化および破壊活動等の再発防止に努めるよう強く期待していることは、公知の事実であり、成立に争いがない乙第七六号証の一、二によれば、国連総会においても人質行為防止の国際条約案の起草が全会一致で採択される等(一九七六年一二月一五日)テロ活動の防止に各国の協力が要請されているこ あり、成立に争いがない乙第七六号証の一、二によれば、国連総会においても人質行為防止の国際条約案の起草が全会一致で採択される等(一九七六年一二月一五日)テロ活動の防止に各国の協力が要請されていることが認められる。また、前記1認定の事実および弁論の全趣旨によれば、日本赤軍は、右のような国際的な非難の中でますます孤立感を強める反面、その存在を世界に誇示するため、クアラルンプール事件、ダツカ空港事件にみられるように人質と交換にわが国で拘禁中の過激派および一般刑事事件犯人らの釈放を求めて、奪還するなどの犯行を重ね、海外組織の強化を図ろうとしていることが認められる。 このような国際的環境下にあつて、わが国が被控訴人を日本赤軍と連繋関係のある者と知りながら、その海外渡航を認めるに及んだときには、テロ活動防止に関するわが国の基本姿勢について世界各国から疑惑を招き、非難を浴びせかけられることは必定で、わが国の国際関係に重大な影響をもたらすことは、明らかといわねばならない。 4 被控訴人の経歴、旅行の目的ところで、前掲甲第一一、一二号証、成立に争いのない同第三、四号証および同第五号証の一ないし七、原審における被控訴人本人尋問の結果(第一回)に照らし成立の認められる同第六号証の一ないし二一および同第一六号証ならびに同本人尋問の結果、弁論の全趣旨により成立が認められる乙第七七号証、原審証人Jの証言によれば、次の事実が認められ、右認定を左右する証拠はない。 (一) 被控訴人は、昭和三八年高校卒業後、大阪に出て、ウエイトレス、店員、労働組合の書記等の職業を転々とした後、日本キユーバ文化交流研究所の公募に応じ、同四五年五月から三か月間、さとうきび刈奉仕団の一員としてキユーバに渡航し、同四六年四月パレスチナ難民救援センターの計画に従い、レバノンのベイルートに赴き、 日本キユーバ文化交流研究所の公募に応じ、同四五年五月から三か月間、さとうきび刈奉仕団の一員としてキユーバに渡航し、同四六年四月パレスチナ難民救援センターの計画に従い、レバノンのベイルートに赴き、PLOのジエルサレム病院等で看護婦として活躍し、同五〇年一二月に帰国した。 (二) 被控訴人は、貧困な農家に育ち、大阪に出てからも下積みの生活を転々としているうちに、社会に対する自覚を高め、貧困、差別などからの解放を求めて意欲的に行動してきたものであり、おのずと新左翼に属し、イスラエルに対するパレスチナ人の斗争を支持していた。 (三) 被控訴人が本件旅券を申請した理由は、株式会社柿右衛門経営のサウジアラビヤのリヤドのレストランでアラビア語の通訳担当の従業員として稼働するためであつた。なお、同会社との間には、被控訴人の旅券発給され次第雇傭契約を締結する旨の口頭の約束がなされているが、現地の事情として、女性が稼働できるか否か、疑問なしとしない。 5 以上認定の被控訴人と日本赤軍との連繋関係の存在、被控訴人に旅券を発給した場合の国際関係に及ぼす影響、被控訴人地位、経歴、人柄、旅行目的を総合して考えれば、控訴人外務大臣が、著るしく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者にあたると判断してなした本件処分は、控訴人外務大臣に旅券法第一三条第一項第五号の規定により外務大臣に支えられた権限がその法規の目的に従つて適法に行使されたものということができ、正当であつて、何らの違法はない。 五以上の次第であつて、本件処分は適法であり、本件旅券発給拒否処分が違法であることを前提とする被控訴人の控訴人に対する本訴請求は、理由がないから、これを棄却すべきである。 よつて、右と判断を異にする原判決は不当であつて、本件控訴は理由 であり、本件旅券発給拒否処分が違法であることを前提とする被控訴人の控訴人に対する本訴請求は、理由がないから、これを棄却すべきである。 よつて、右と判断を異にする原判決は不当であつて、本件控訴は理由があるから、原判決中被控訴人と控訴人とに関する部分を取消し、被控訴人の請求を棄却することとして、民事訴訟法第三八五条第八九条第九六条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官小林定人惣脇春雄山本博文) 主文 被告外務大臣が原告に対し昭和五二年二月一六目付でなした一般旅券発給拒否処分を取消す。 原告の被告国に対する請求を棄却する。 訴訟費用は、原告と被告外務大臣との間では被告外務大臣の負担とし、原告と被告国との間では原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者双方の申立一原告 1 主文一項と同旨。 2 被告国は原告に対し四八〇万円および内四〇〇万円に対する昭和五二年二月二五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 4 2項につき仮執行の宣言。 二被告ら 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 (被告国)担保を条件とする仮執行免脱宣言。 第二原告の請求の原因一一般旅券発給拒否処分原告は、サウジアラビアを渡航先として、昭和五二年一月八日被告外務大臣に対し一般旅券発給申請書を提出した。 しかるに、被告外務大臣は、原告に対し、一般旅券発給拒否処分(以下、本件処分という)をなし、昭和五二年二月一六日付書面により同月二四日これを通知した。 原告は、本件処分について昭和五二年四月二〇日被告外務大臣に対し異議申立をなしたが、被告外務大臣は、これを棄却する旨決定し、原告に対し同年九月八日付書面により同月一六日これを通知した。 二本件処分の違法性(一) 違憲性被告外務大臣は、旅券 告外務大臣に対し異議申立をなしたが、被告外務大臣は、これを棄却する旨決定し、原告に対し同年九月八日付書面により同月一六日これを通知した。 二本件処分の違法性(一) 違憲性被告外務大臣は、旅券法一三条一項五号に基づいて本件処分をなしたものであるが、右規定は憲法二二条二項に違反するものであり、したがつて本件処分は違憲のものである。 海外渡航の自由は、憲法二二条二項において保障された憲法上の基本的人権であり、国政上最大限の尊重を必要とするものである。現在、外国へ渡航しようとする者は、必らず旅券を所持していなければならないのであるから、国民が外務大臣から旅券の発給を受ける権利は、憲法における国民の海外渡航の自由の保障そのものとして保障されなければならない。 ところが、旅券法一三条一項五号が、旅券の発給を拒否できる基準として定めているところは、極めて漠然且つ不明確であり、殆んど政府の自由な裁量によりその拒否を決しうるとするのと違いはない。かかる抽象的、不明確な基準で憲法の保障する海外渡航を禁止する可能性を認める規定は憲法に違反するものといわなければならない。 (二) 旅券法一四条違反―理由付記の不備の違法旅券法一四条によれば、同法一三条の規定により一般旅券発給拒否処分をなすについては、理由を付した書面によりその旨の通知をしなければならないこととなつているが、被告外務大臣は、本件処分をなすにあたつては、単に同法一三条一項五号に該当する旨を示しただけで、右規定のどの部分に該当するのかさえ明らかにせず、まして右規定に該当する具体的理由については何ら明示しなかつた。 同法一四条によつて明示されるべき理由とは、単に根拠条文を示すだけでは足りず、根拠条文に該当する具体的理由を示さねばならないことはいうまでもない。 ところが、本件処分時には根拠条文が示され なかつた。 同法一四条によつて明示されるべき理由とは、単に根拠条文を示すだけでは足りず、根拠条文に該当する具体的理由を示さねばならないことはいうまでもない。 ところが、本件処分時には根拠条文が示されたにとどまる。また、異議申立手続の中において、漸く、日本赤軍と連繋関係を有するという理由が示されはしたが、これとても極めて漠然とした抽象的なものにすぎず、一体、何をもつてどのような連繋関係が存するというのか一向に明らかではなく、それ故に「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞がある」とする理由が示されたものとは未だいいえないだけでなく、かかる後の手続においてなされた理由付記によつて本件処分の瑕疵は治癒されない。 したがつて、本件処分には理由を付すことを怠つた違法がある。 (三) 旅券法一三条一項五号不該当被告外務大臣は、原告が旅券法一三条一項五号に該当するとして本件処分をなし、その異議申立手続の中で、原告が日本赤軍と連繋関係を有すると主張しているが、原告は、いわゆる日本赤軍との間に連繋関係といわれるような関係は何ら有しておらず、したがつて、被告外務大臣のなした本件処分は何らの根拠もない違法のものである。 1 仮に、旅券法一三条一項五号の規定が憲法に違反するものではないとしても、これは例外的に旅券の発給を拒否できる場合を定めたものであるから、旅券発給申請者の渡航によつて、わが国の利益又は公安が著しく且つ直接に害されるおそれが明白に認定しうる場合にのみ旅券の発給を拒否することができるものと解釈されなければならない。 2 ところで、原告の経歴、人柄、渡航目的は以下のとおりである。 原告は、昭和三八年高校卒業と同時に、故郷大分県より集団就職により来阪し、以来様々な職種を経て交友関係を拡げる中で、各種の社会活動に参加し、社会的自覚に目覚 歴、人柄、渡航目的は以下のとおりである。 原告は、昭和三八年高校卒業と同時に、故郷大分県より集団就職により来阪し、以来様々な職種を経て交友関係を拡げる中で、各種の社会活動に参加し、社会的自覚に目覚めた健全なる一市民として成長し、人々に敬愛され、善良なる市民生活を送つてきたという経歴を有する。勿論この間前科前歴等は有しない。 この間、海外渡航歴は二回あり、一度目は昭和四五年五月から三ケ月間キユーバへ、二度目は昭和四六年四月から昭和五〇年一二月までの間レバノンへ、それぞれ渡航滞在したものである。一度目のキユーバ行は「砂糖キビ刈り奉仕団」の一員として参加したものであつて、この際、同人はその働きぶりと人柄により、カストロ首相から労働英雄の賞を授与されたほどである。 二度目のレバノンの五年間は、国連でも認知された準国家機関であるPLO(パレスチナ解放機構)の正式機関である月赤十字病院(国際赤十字病院の傘下にもある)において、看護婦として、パレスチナ難民救援のためボランテイア活動をなし、これを通じ日本とアラブ人民との友好に多大な貢献をなして来たものである。 なお、レバノン滞在中、一時日本のマスコミにより、時節柄アラブ赤軍との関連が取り沙汰されたことがあるが、これも無関係なことが既に判明しているところである。 このように原告は、わが国と外国諸国との友好に貢献し、むしろわが国の外交上の利益に多大な貢献をなしてきたものであり、今回のサウジアラビアへの渡航も、レバノンでの語学体験を活用し就職の手段とするとともに、アラブにあつて日本とアラブ人民の友好に貢献したいとの願いに出たものである。 3 原告がいわゆる日本赤軍と連繋関係を有しているなどというのは、何らの根拠もない、いわばいいがかりにしかすぎず、原告には国益や公安を害するおそれは全く存しない。 三被告国の いに出たものである。 3 原告がいわゆる日本赤軍と連繋関係を有しているなどというのは、何らの根拠もない、いわばいいがかりにしかすぎず、原告には国益や公安を害するおそれは全く存しない。 三被告国の賠償責任と原告の受けた損害(一) 被告外務大臣は、旅券法一三条一項五号が憲法に反すること、または原告が右規定に該当しないことを、認識しうべかりしにかかわらず、故意または過失により違憲または違法な本件処分をなした。これにより、原告は海外渡航の権利を侵害され、後記のとおりの損害を受けたので、被告国は国家賠償法一条一項によりこれを賠償すべき責任が存する。 (二) 原告は、大阪府守口市所在の飲食店経営を業とする株式会社柿右衛門(代表者K)が、サウジアラビアのリアド市において昭和五二年一月二〇日からレストランを新規開店するにあたり、昭和五一年一二月下旬、右西原との間で、右レストランにおいて、通訳兼ウエイトレスとして従事する旨の雇用契約を締結していたものであり、本件処分により、原告の受けた損害は以下のとおりである。 1 逸失利益三〇〇万円原告と株式会社柿右衛門との間の雇用契約は一年間(但し、期間満了後更新されることが予定されたもの)であり、原告は本件処分により少なくとも一年間にわたつて月額二五万円の得べかりし利益を喪失したので、逸失利益の合計額は三〇〇万円である。 2 慰藉料一〇〇万円原告は、いわれもなく日本赤軍と連繋関係があるなどとされて本件処分を受け、従前、海外でなした献身的活動や、これによつてわが国と外国諸国との友好に多大の貢献をなした誇りを著しく傷つけられたばかりでなく、右レストランでの就職の機会を奪われ、又、右レストランでの労働を通じて日本とアラブ人民の友好に貢献したいとの願いも無惨に踏みにじられた。 これによつて、原告の受けた精 著しく傷つけられたばかりでなく、右レストランでの就職の機会を奪われ、又、右レストランでの労働を通じて日本とアラブ人民の友好に貢献したいとの願いも無惨に踏みにじられた。 これによつて、原告の受けた精神的苦痛は甚大であり、これを慰藉するものとして、少なくとも右金員が支払われなければならない。 3 弁護士費用八〇万円当代理人らに対する報酬は、右1および2の合計額四〇〇万円の二割相当額であるので、八〇万円となる。 4 合計四八〇万円五よつて、被告外務大臣に対し本件処分の取消を、被告国に対し、損害賠償として四八〇万円および内四〇〇万円に対する本件処分のなされた翌日である昭和五二年二月二五日から完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。 第三被告らの答弁一請求の原因一は認める。 二(一) 請求の原因二、(一)については、被告外務大臣が旅券法一三条一項五号の規定に基づいて本件処分をしたことは認めるが、右規定が憲法二二条二項に違反し、したがつて本件処分は違憲であるとの点は争う。 (二) 請求の原因二、(二)については、旅券法一四条が同法一三条の規定に基づき一般旅券の発給をしないと決定したときは、理由を付した書面をもつて一般旅券の発給を申請した者にその旨を通知しなければならないと規定していること、被告外務大臣が、本件処分をなすにあたつては、原告が同法一三条一項五号に該当する旨を示して通知したこと、異議申立手続において、原告が日本赤軍と連繋関係を有するとの理由を示したことは認めるが、その余は争う。 (三) 請求の原因二、(三)については、原告に前科がないこと、原告が昭和四六年四月二一日から同五〇年一二月一二日まで日本国を出国し、中東地域に渡航滞在していたこと、原告がレバノンで看護活動をしていたこともあること 因二、(三)については、原告に前科がないこと、原告が昭和四六年四月二一日から同五〇年一二月一二日まで日本国を出国し、中東地域に渡航滞在していたこと、原告がレバノンで看護活動をしていたこともあること、原告がレバノン滞在中一時日本のマスコミによりアラブ赤軍との関連をとり沙汰されたことは認めるが、その余は争う。 三(一) 請求の原因三、(一)は争う。 (二) 請求の原因三、(二)については、大阪府守口市に飲食店を営む株式会社柿右衛門(代表者K)が存在することおよび同会社がサウジアラビアのリアド市においてレストランを新規開店しようとしたことは認めるが、その余は争う。 第四被告らの主張被告外務大臣が、原告からなされたサウデイ・アラビアを渡航先とする数次往復用の一般旅券の発給申請につき旅券法一三条一項五号を適用して昭和五二年二月一六日付けでなした一般旅券発給拒否処分(本件処分)は、正当であつてなんらの違法も存しない。 一原告の違憲性の主張について旅券法一三条一項五号は、「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」には旅券の発給をしない旨規定している。 これは旅券の発給を申請した者に右のような行為を行う意図があり、その危険がある場合のみならず、たとえ申請者にその意図がないときでも、一般に外国に渡航することが著しくかつ直接に日本国の利益又は公安を害する結果を招く虞がある場合には、旅券の発給を拒否することができるものといわなければならない。けだし、この場合において、日本国の利益又は公安を害するかどうかは国の立場から客観的に判断すべきものだからである。 ところで、旅券発給の制限を定めた旅券法一三条一項五号の規定が、憲法二二条の保障する外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合 公安を害するかどうかは国の立場から客観的に判断すべきものだからである。 ところで、旅券発給の制限を定めた旅券法一三条一項五号の規定が、憲法二二条の保障する外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めたものであつて、憲法二二条に違反しないことは、最高裁判所の判例として確立しているところである。 二原告の旅券法一四条違反(理由付記の不備の違法)の主張について被告外務大臣が、本件処分時に、原告が旅券法一三条一項五号に該当すると明示したのは、単に処分庁の権限の根拠規定を示したものにとどまらず、原告が同規定に該当する者であるからという本件処分に到達したところの必要な理由を示したものであり、所論のように理由不備の違法はない。 ところで、一般に、法が行政処分に理由を付記すべきものとしているのは、「処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立に便宜を与える趣旨に出たものである」と解されている。 これを旅券法についてみるに、旅券法一三条一項は「外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が左の各号の一に該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。」と規定し、旅券の発給を拒否できる場合を次の六つの類型に分けて具体的に明文化し、これら六つの類型のいずれかに該当するときでなければ、拒否処分が許されないものとしているのであり、特に、旅券法一三条一項五号による拒否処分をなすにあたつては、同条二項により、外務大臣はあらかじめ法務大臣と協議しなければならないとされ、その拒否処分には厳しいチエツクを加えている。 このように、放券法は旅券発給拒否処分事由を類型化し、拒否し得る場合を制限的に規定しているのであるから、旅券発給拒否処分の理由付記の程度と らないとされ、その拒否処分には厳しいチエツクを加えている。 このように、放券法は旅券発給拒否処分事由を類型化し、拒否し得る場合を制限的に規定しているのであるから、旅券発給拒否処分の理由付記の程度としては、どの条項(拒否理由)で拒否されたのかを明示しさえすれば、処分庁の恣意は十分に抑制されることになり、また、申請者に対して不服申立のための便宜も尽されているものといえるのであつて、一般的に不利益処分に関し、理由付記を要求する法の趣旨にも十分合致しているのである。 三原告の旅券法一三条一項五号不該当の主張について原告は、次に述べるとおりいわゆる日本赤軍と称される過激派集団と連繋関係を有することが認められ、日本赤軍による既往の破壊活動等にかんがみると、原告の海外渡航は日本国の利益または公安を著しくかつ直接に害する虞があるものと認められる。したがつて、旅券法一三条一項五号に基づく被告外務大臣の本件処分は正当かつ適法なものである。 (一) 日本赤軍の組織実態「日本赤軍」は、わが国の極左団体の一つである共産同赤軍派(共産主義者同盟赤軍派)の思想的流れをくむグループで、昭和四六年二月、その提唱に係る「国際根拠地建設論」(これは、世界赤産党建設、世界革命戦争の根拠地を先行的に組織しようというものである。)の実践として、アラブに渡つた共産同赤軍派中央委員Aらが共産同赤軍派と訣別して新たに組織したグループで、当初は「アラブ赤軍」と名乗つていたものである。 日本赤軍は、「(1)日本人民共和国の建設、(2)臨時革命政府をめざす日本革命協議会、(3)地下大衆運動による全人民的団結、(4)武装闘争、(5)国際革命協議会の建設と国際共産主義運動の統一」の五つの柱を軸に、国際・国内遊撃戦を中心にあらゆる人民の指導勢力の結集を図り、世界革命へ向けての根拠地たるべき日 全人民的団結、(4)武装闘争、(5)国際革命協議会の建設と国際共産主義運動の統一」の五つの柱を軸に、国際・国内遊撃戦を中心にあらゆる人民の指導勢力の結集を図り、世界革命へ向けての根拠地たるべき日本人民共和国を建設しようとの独善的な闘争理論を掲げ、後記のような傍若無人の破壊活動等を展開し、かつ、これを展開しようとしているものである。 日本赤軍の組織としては、最高指導機関として政治委員会があり、その下に調査、兵站等を担当する組織委員会と、軍事の実行を担当する軍事委員会が置かれている。その構成員は、Aをキヤツプとする二十数名の日本人グループで構成され、これらの者はアラブ諸国を拠点として活動している。 日本国内でも、海外から送還された日本赤軍関係者などを中心に、日本赤軍からのメツセージ等を発表したりするなどの支援活動が展開されており、一〇〇名を下らない数のシンパがこれを支援している。 (二) 日本赤軍による破壊活動等 1 テルアビブ・ロツド空港事件日本赤軍の構成員であるC、L、Mら三名は、昭和四七年五月三〇日、イスラエル、テルアビブ・ロソド(アラビア語ではリツダ)国際空港の待合室で群衆約三〇〇人に向けて自動小銃を乱射、手投げ弾を投げ、九八人を殺傷させるという国際無差別殺人を敢行、C、Lはその場で自爆し、Mはイスラエル当局に逮捕拘束されるところとなつた。なお、日本赤軍は右事件を「五・三〇リツダ闘争」と称している。 2 日航機ハイジヤツク事件日本赤軍構成員Nは、アラブゲリラ四名とともに、昭和四八年七月二〇日、オランダのアムステルダムからアンカレツジ経由で東京へ向う予定の日航ジヤンボジエツト機(乗員二二人、乗客一二三人)をアムステルダム上空で乗取り、アラブ首長国連邦のドバイ空港を経て、同月二五日、リビア・ベンカジ空港に着陸、乗員乗客を解放した後、同 京へ向う予定の日航ジヤンボジエツト機(乗員二二人、乗客一二三人)をアムステルダム上空で乗取り、アラブ首長国連邦のドバイ空港を経て、同月二五日、リビア・ベンカジ空港に着陸、乗員乗客を解放した後、同機を爆破し、Nら犯人はその場でリビア軍隊に逮捕された。 3 シンガポール・クウエート事件日本赤軍構成員O、Pの二名は、アラブゲリラ二名とともに、昭和四九年一月三一日、シンガポールのシエル石油製油所を襲撃爆破し、フエリーボートを奪い乗組員五人を人質として海上に逃れたこと、一方、右支援として、同年二月六日、アラブゲリラ五名が在クウエート日本大使館を占拠し、大使ら一六人の人質と交換にシエル石油製油所襲撃ゲリラら四名をクウエート空港まで日航特別機で移送させたこと、そして、シエル石油製油所襲撃ゲリラ・大使館占拠事件のアラブゲリラ九名は合流の上、右空港を飛び立ち、同年二月八日、南イエメンのアデン空港に着陸、右ゲリラ九名は同政府の管理下に入つた。 4 ハーグ事件日本赤軍構成員O、Q、Rの三名は、昭和四九年九月一三日、けん銃、手投け弾で武装して、オランダのハーグにあるフランス大使館を襲撃占拠し、大使ら一一人の人質と交換に、フランス当局に偽造旅行券行使などで逮捕されていたP(日本赤軍構成員)を奪還するとともに、オランダ当局から三〇万ドルを強奪した上、同年九月一七日、フランス航空機で、スキボール・アムステルダム国際空港を離陸、同年九月一八日、シリアのダマスカス空港に着陸、その場でシリア政府の管理下に入つた。 5 クアラルンプール事件日本赤軍構成員S、R、Oら五名は、昭和五〇年八月四日、手投げ弾、けん銃で武装して、マレーシアの首都クアラルンプールにあるアメリカおよびスウエーデン大使館を襲撃、アメリカ領事ら五三人を人質にとり、両大使館を占拠し、右人質と交換に、わが 五〇年八月四日、手投げ弾、けん銃で武装して、マレーシアの首都クアラルンプールにあるアメリカおよびスウエーデン大使館を襲撃、アメリカ領事ら五三人を人質にとり、両大使館を占拠し、右人質と交換に、わが国で拘禁中のQ、T、U、V、Wを奪還した上、同年八月七日、クアラルンプール空港を日航特別機で離陸、同年八月八日、リビアのトリポリ空港に着陸、その場でリビア政府の管理下に入つた。 6 ダツカ空港事件日本赤軍構成員N、Q、V、Uら五名は、昭和五二年九月二八日、パリ発東京行きの南まわり欧州線の日航機(乗員、乗客合計一五六人)がインドのボンベイ空港を離陸した直後、けん銃、手投げ弾で武装しこれを乗取り、バングラデシユのダツカ空港に着陸させ、人質と交換にわが国で拘禁中のR、X、Y、Z、P1、P2を奪還するとともに、現金六〇〇万ドルを奪つた上、同年一〇月三日、ダツカ空港を離陸、ダマスカスを経てアルジエリアのダル・エル・ベイダ空港に着陸、同年一〇月四日、人質を解放し、その場でアルジエリア政府の管理下に入つた。 7 破壊活動等再発の危険性日本赤軍は、前記6のダツカ空港事件以降、なりを潜めているが、本件処分当時においてはもちろんのこと、現在においても、前述のような凶悪なハイジヤツク事件、人質事件等を繰り返す危険性を有しているものである。すなわち、日本赤軍は、昭和五二年一二月人民新聞社から発刊した「団結をめざして―日本赤軍の総括―」の中において、従前の破壊活動等を総括し、日本赤軍は、「遊撃戦を主軸に革命活動をつづけてきました。しかし、私たちの闘いは、遊撃戦といつても本来の意味の遊撃戦にはなり切れていず、本格的遊撃戦の端緒を担つているにすぎません。 遊撃戦の端緒期に、遊撃戦陣型を闘いぬくために、不断に組織の総力戦展開を余儀なくされます。」、「私たちは、本当に武装闘争の 味の遊撃戦にはなり切れていず、本格的遊撃戦の端緒を担つているにすぎません。 遊撃戦の端緒期に、遊撃戦陣型を闘いぬくために、不断に組織の総力戦展開を余儀なくされます。」、「私たちは、本当に武装闘争の端緒についたばかりです。」とこれを位置づけ、今後、さらに「全国的な遊撃戦を準備し」、「党性、階級性、人民性を革命任務の中で不断に意識化し、実践し、持久的な武装闘争を、より発展させることを約束します。」、「武装闘争実践を、人民の意志の表現として、持久的で階級的な国際、国内遊撃戦として展開せしめるでしよう。」と、武装闘争の継続を宣言しており、日本赤軍によるテロ活動、破壊活動等の危険は未だやんでいない。また、日本赤軍は、昭和五三年一月以降、人民新聞誌上に、「階級的団結へ前進を」、「七八年にあたつて」、「三里塚の闘う農民へ」、「3・26三里塚に感激」、「同志奪還闘争への意見に応えて(1)~(5)」、「拷問に耐抜く思想を」などのメツセージ、小論を掲載し、日本国内の支援者らとの提携等を呼びかけるなどをしているほか、同年五月三〇日の「五・三〇リツダ闘争六周年」に際し、ダツカ事件の際の人質乗客、乗務員及び在監中の刑事被告人らに対し、団結を求めるとともに闘う決意を表明した書信を郵送し、同年七月開催の新東京国際空港反対闘争の一環としての集会に際して、国内支援グループである拒否戦線が配布したビラにおいては、「共に全世界の闘う人民の隊伍の一翼を担い抜き、闘う日本人民の代表として日帝をはじめとする帝国主義者を、日本の内外で打倒し抜こう!私たちはすでにその用意を闘いへむけて組織しつつある。・・・・・・我々こそが闘う日本人民の代表としての隊伍を、敵への攻撃を、最前線の革命任務を闘い抜く責任を用意する段階にあることを、闘う全ての人民の前に明らかにしよう!」と述べ、次の破壊 しつつある。・・・・・・我々こそが闘う日本人民の代表としての隊伍を、敵への攻撃を、最前線の革命任務を闘い抜く責任を用意する段階にあることを、闘う全ての人民の前に明らかにしよう!」と述べ、次の破壊活動等への宣戦予告を行なつている。 これに加えて、ダツカ空港事件の犯人Nら五名および奪還されたRら六名はアルジエリア政府の管理下に入つてから消息が跡絶えていたが、その後日本赤軍本隊と合流した。 (三) 原告と日本赤軍の連繋関係原告は、次に述べるとおり日本赤軍と連繋関係を有するものであり、日本赤軍による前記破壊活動等にかんがみると、原告の海外渡航は日本国の利益又は公安を著しくかつ直接に害する虞があるものと認められる。 1 日本赤軍による昭和四九年一月三一日の「シンガポール・シエル製油所爆破事件」の国内捜査として、警視庁は、同年二月四日、当時世界革命戦線情報センターの代表で、日本赤軍構成員であるEの携行品等に対し捜索差押を実施し、同人が携行した手提鞄からメモ、ノート等五件を押収したところ、押収品のメモの中から暗号通信の組立て又は解読に用いる「換字表」が発見され、そして、同「換字表」には原告の氏名等が暗号数字で表示されており、右「換字表」について、Eは、昭和四九年三月一六日警視庁係官に対し、「メモに記載の暗号は、ある人間から自分あてに来た手紙を読むのに必要なものである。この暗号は、自分が決めたものではなく、向うから言つてきたものである。」と供述し、そのある人とはAかとの問に対しては否定も肯定もせず、「7アタ」とあるのはE自身のことであると述べ、右「換字表」の「1マリアン」とはAを意味し、さらに、Eは右「換字表」の捜索押収時に、A作成のアドレス(秘密連絡場所)を換字表とともに所持していた。 Eは、昭和四八年七月二〇日の日航機ハイジヤツク事件に関連し、同年 「1マリアン」とはAを意味し、さらに、Eは右「換字表」の捜索押収時に、A作成のアドレス(秘密連絡場所)を換字表とともに所持していた。 Eは、昭和四八年七月二〇日の日航機ハイジヤツク事件に関連し、同年八月一三目、パリのサンジヤク・ホテルで、通訳同伴の上「P3」と紹介されて記者会見し、日本赤軍並びに「被占領地域の息子たち」の共同声明と題して、日航機ハイジヤツク闘争の意義等を発表し、さらに、Eは、昭和五二年九月二八日のダツカ空港事件についても、同年一〇月四日、ニコシアのホテルで記者会見し、その意義等を発表し、日本赤軍のスポークマン的な役割りを果たしており、また日本赤軍関係者であるP4(同人が日本赤軍構成員であつたことは、明らかであり、同人は日本赤軍による翻訳作戦―ヨーロツパにおける日本商社員誘拐、身の代金強奪作戦の陰謀等に加わつていたものである。)は、警視庁の取調べに対し、「Eは、昭和四九年九月のハーグ事件の際、Oら犯人がシリア政府に投降した後、その釈放についてシリア政府と交渉するためベイルートからダマスカスに赴き、Oらと面接し、その状況をベイルートのAらに報告した」とその行動状況を供述しており、Eが日本赤軍構成員であることは明らかである。 なお、昭和四六年五月、映画「赤軍、PFLP世界戦争宣言」の製作のため、レバノンに赴いたP5、Eは、Aが居住しているベイルート市内のアパートの上階を借受け居住中、原告およびP6がその居室を訪れるなどの交際のあつたことを警視庁係官に供述している。 2 日本赤軍構成員Pは、昭和四九年七月二六日「P7」名義の偽造日本旅券を行使してフランス・パリ(オルリー空港)入国を図つたが、発覚し、フランス当局に逮捕されるところとなり、右逮捕時、Pは右行使の偽造旅券のほかに数通の偽造日本旅券、偽造米ドルおよび通信文等十数通を隠匿 行使してフランス・パリ(オルリー空港)入国を図つたが、発覚し、フランス当局に逮捕されるところとなり、右逮捕時、Pは右行使の偽造旅券のほかに数通の偽造日本旅券、偽造米ドルおよび通信文等十数通を隠匿所持していたが、その通信文の中に「P8」から「P9」にあてた航空郵便とみられる手紙(暗号記号を用いるなどして綴られたもの)一通が含まれており、国内捜査の結果、「P9」とは、大阪府堺市P10に居住する大阪市立大学理学部図書室事務員Gであることが判明し、そして、警視庁が「シンガポール・シエル製油所爆破事件」の国内捜査の一環として、昭和四九年八月一〇日前記G宅に対し、捜索差押を実施し、メモ、通信文等六件を押収したところ、同押収資料のうち通信文五枚中二枚に「四月一七日P10」、「四月二五日ベイルートP10」と発信名が記載されたものが発見された。 しかして、前記のとおり、Gは、日本赤軍構成員Pからの通信文の受取人とされており、しかもその通信文の内容はその当事者間のみにおいて了解できるものとされていることからすると、Gは日本赤軍となんらかの関係を有することは明らかである。 3 原告は、国内における宣伝の場を提供するなど日本赤軍と極めて緊密な連帯関係にある人民新聞社(旧新左翼社)発行の「新左翼」(昭和四九年六月五日付け)を通じて、「五・三〇闘争二周年アピール」を発表している。 すなわち、右「新左翼」紙には、「五・三〇闘争二周年アピール勝利か死か!戦時下でのレバノンより P10」と題し、原告からのアピール文が発表されているが、その中で、原告は、「五・三〇リツダ闘争二周年に際し、日本の同志諸兄姉に防衛体制にあるパレスチナキヤンプから、熱烈な連帯を表明したい。・・・・・・この防衛戦争は、被占領地パレスチナにおいてM奪還を筆頭に戦われた、クリアツテイ・シモオナ作戦、 に際し、日本の同志諸兄姉に防衛体制にあるパレスチナキヤンプから、熱烈な連帯を表明したい。・・・・・・この防衛戦争は、被占領地パレスチナにおいてM奪還を筆頭に戦われた、クリアツテイ・シモオナ作戦、学校占拠、ハイフア石油タンク爆破、ジエルサレムにおける爆破等の戦闘をひきうけたパレスチナ人民の戦争だ。・・・・・・すでにこの一カ月に二度も、M奪還がさけばれた。Mの名はアラブ人民誰一人として知らぬ者はない。決意したフエダイン達は、私に『私達パレスチナ人民はMを奪い返すためには最後の一人の血の一滴までささげるつもりだ』と語つた。・・・・・・私も三度目の戦争への決意をととのえたナースとして陣地にいる。勝利か死か!革命的誠意をこめて、パレスチナの戦列から」と述べている。 ところで、右アピール以前にも、テルアビブ・ロツド空港事件直後に結成されたテルアビブ闘争支援委員会は、原告の昭和四七年七月一二日付けで「パレスチナの戦列から」と題するアピールを、日本赤軍(当時アラブ赤軍)からのアピール、昭和四九年五月に出国し日本赤軍構成員となるRの「革命二戦士追悼にむけて」などとともに特集し、これをパンフレツトにして発行している。 そして、このテルアビブ闘争支援委員会は、昭和四七年六月、共産主義者同盟赤軍派の中から結成されたものとみられている。 4 原告は、昭和五〇年一月人民新聞社(旧新左翼社)の中東特派員となつているが、この人民新聞社は、日本赤軍に宣伝の場を提供したり、日本赤軍の支持支援を呼びかけたり、日本赤軍作成のポスターの販売斡旋をするなど、日本赤軍とは極めて緊密な関係にあり、原告は同社の編集長らとも親交関係がある。 さらに、人民新聞社は、東京都立川市<地名略>に東京多摩支局を置いているが、風林舎内には日本赤軍に対する支援活動を行なつている「三多摩パレスチナと連帯 あり、原告は同社の編集長らとも親交関係がある。 さらに、人民新聞社は、東京都立川市<地名略>に東京多摩支局を置いているが、風林舎内には日本赤軍に対する支援活動を行なつている「三多摩パレスチナと連帯する会」の事務所が置かれている。 右のように、人民新聞は右連帯する会に事務所を提供したり、同会の会合等に場所を提供するなど、日本赤軍関係者と緊密な関係を有している。 なお、原告は、昭和五二年二月一一日武蔵野市の武蔵野公会堂で開催された「今パレスチナの意味を問う講演会」の会場集辺で「パスポートをよこせ」とのビラを配布する了解を得るため、風林舎を訪れるなどし、右連帯する会の構成員とも接触関係を持つに至つている。 5 原告は、昭和五二年二月一一日「今パレスチナの意味を問う講演会実行委員会」(代表日本赤軍関係者F。同人は日本赤軍構成員で、日本赤軍による翻訳作戦の陰謀等に加わつていた。)が主催した「今パレスチナの意味を問う講演会」に参加し、Fとともに集会案内ビラを貼付するなど、同人と接触関係を有していた。 6 原告は、パレスチナ難民支援センターの呼びかけに応じ、昭和四六年四月、医師P6とともに、右センター派遣の医療団先発隊として出国し、昭和五〇年一二月までの間レバノンを中心とする中東地域に渡航し、同地にあるパレスチナ解放機構の医療機関にボランテイアとして勤務していたものであるが、この間、原告は日本赤軍構成員A、P6らと交友関係を有していたものである。 以上のとおり、原告は昭和四六年四月から昭和五〇年一二月までの間レバノンを中心とする中東地域に渡航し、同地にあるパレスチナ解放機構の医療機関にボランテイアとして勤務していたものであるが、この間、(1)テルアビブ・ロツド空港事件に関連するアピールをテルアビブ闘争支援委員会に、同事件のMらのテロ行動を賞讃する趣旨の記 ナ解放機構の医療機関にボランテイアとして勤務していたものであるが、この間、(1)テルアビブ・ロツド空港事件に関連するアピールをテルアビブ闘争支援委員会に、同事件のMらのテロ行動を賞讃する趣旨の記事を「新左翼」紙に寄せたり、日本赤軍と極めて緊密な連帯関係にある人民新聞社(旧左翼社)の中東特派員となつて同社にパレスチナ・ゲリラのテ口活動を賞讃する寄稿を行なつていたほか、(2)昭和四九年警視庁が日本赤軍構成員Eから押収した文書(換字表)に日本赤軍メンバーの氏名とともに原告の氏名も暗号コード付きで記載されていたこと、(2)その他原告が日本赤軍関係者と極めて密接な関係を保つていることなどの事実を総合評価すると、原告は日本赤軍と極めて緊密な関係にあることが認められるのである。 (四) 旅券法一三条一項五号該当日本赤軍による前記(二)の破壊活動に対しては、日本国内はもとより国際世論からも非難が浴びせられているところである。そして、世界各国は、そのような破壊活動等を惹起させないよう出入国管理を強化し、日本赤軍関係者等によるテロ活動の中心的人物の所属国であるわが国に対しても出入国管理の強化および破壊活動等の再発防止に努めるよう強く期待していることは周知の事実であり、また、国連総会においても人質行為防止の国際条約案の起草が全会一致で採択される(一九七六年一二月一五日)等テロ活動の防止に各国の協力が要請されている。 このような国際的環境下にあつて、既往の日本赤軍関係者等による破壊活動等の中心的人物の所属国であるわが国が、原告を日本赤軍関係者であると知りながら、その海外渡航を認めるに及んだときには、テロ活動防止に関するわが国の基本姿勢について世界各国から疑惑を招き、非難を浴びせかけられることは必定で、わが国の国際的な信用を著しく損うおそれがあるばかりでなく、 海外渡航を認めるに及んだときには、テロ活動防止に関するわが国の基本姿勢について世界各国から疑惑を招き、非難を浴びせかけられることは必定で、わが国の国際的な信用を著しく損うおそれがあるばかりでなく、その国際関係に重大な影響をもたちし、ひいてはわが国の国益を著しく、かつ直接に害するおそれがあることは明らかであるというべきである。 また、日本赤軍は、右のような国際的な非難の中で、ますます弧立感を強める反面、その存在を世界に誇示するため、クアラルンプール事件、ダツカ空港事件にみられるように人質と交換に、わが国で拘禁中の過激派および一般刑事事件犯人らの釈放を求めて、奪還するなどの犯行を重ね、海外組織の強化を図ろうとしている。 このような状況下で、日本赤軍関係者と認められる原告の海外渡航を認めることは、直接、間接に組織の充実をもたらすことにもつながる(すなわち、原告は再度のレバノン・パレスチナ難民キヤンプ行きを希求しており、今回の旅券発給申請はそのための便宜的手段とみられなくもないのである。)。そして、世界革命へ向けてはいかなる武装闘争、破壊活動をも辞さない構えを示している日本赤軍が、前記(二)で述べたような破壊活動等を繰り返さないという保障もない状況下において、日本赤軍関係者である原告の海外渡航を認めることは、わが国の利益のみならず、わが国の公安をも、直接、間接に侵害するおそれが極めて強いことは明らかである。 よつて、被告外務大臣が、原告からの旅券発給申請につき、原告を旅券法一三条一項五号に該当するものと認定して本件処分をしたことにはなんらの違法も存しないものである。 四結論以上のとおり本件処分は適法なものであり、その違法を前提とする原告の国家賠償請求には理由がないといわなければならない。 第五証拠関係(省略)○ 理由一請求の原因一につ ものである。 四結論以上のとおり本件処分は適法なものであり、その違法を前提とする原告の国家賠償請求には理由がないといわなければならない。 第五証拠関係(省略)○ 理由一請求の原因一については各当事者間に争いがない。 二旅券法一三条一項五号が違憲である旨の原告の主張について。 原告は、旅券法一三条一項五号は憲法二二条二項において保障された基本的人権である海外渡航の自由を制限するものであるところ、その定める「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」という基準は抽象的、不明確なものであり、基本的人権を制限するものとしては許されない、と主張するので、この点について判断する。 旅券法一三条一項五号が憲法二二条二項において保障された基本的人権である海外渡航の自由を制限するものであることは原告主張のとおりであるが、海外渡航も無制限に許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服すべきものである。そして、旅券法一三条一項五号の右基準は、これに該当する者の出国により公共の福祉が害されることが明らかであるから、公共の福祉のために海外渡航の自由の制限を合理的に定めたものということができるのであつて、違憲の立法ということはできないものであり、また抽象的、不明確な基準を示す無効のものということはできない(最高裁判所昭和二九年(オ)第八九八号、昭和三三年九月一〇日大法廷判決参照)。 したがつて、原告の右主張を容れることはできない。 三旅券法一三条一項五号該当性の有無について。 旅券法一三条一項五号に該当するとして、被告外務大臣が本件処分をなしたことについては各当事者間に争いがなく、成立に争いがない甲第二号証によれば、被告外務大臣が本件処分に対する異議申立を棄却した際に示した右条項に該当す 号に該当するとして、被告外務大臣が本件処分をなしたことについては各当事者間に争いがなく、成立に争いがない甲第二号証によれば、被告外務大臣が本件処分に対する異議申立を棄却した際に示した右条項に該当する具体的な事由が別紙「異議棄却決定理由」のとおりであつたことが認められる。 そこで、右該当性の有無について判断する。 (一) 成立に争いがない乙第五ないし第二一号証、第二三ないし第三六号証、第四八ないし第五〇号証、第五二ないし第五八号証、第六二、第六三号証、第六八ないし第七一号証、証人Dの証言により真正に成立したと認められる乙第六一号証の一、二および証人Dの証言によれば、「被告らの主張」の三、(一)(日本赤軍の組織実態)、(二)(日本赤軍による破壊活動等)記載の各事実が認められ、右認定を左右する証拠はない。 そうすると、右認定の日本赤軍の組織実態および日本赤軍の破壊活動等よりすれば、日本赤軍と連繋関係にあると認められる者は、旅券法一三条一項五号に定める「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」に該当することはいうまでもない。 (二) 原告と日本赤軍との連繋関係の存在について。 前掲乙第二三ないし第二八号証、第四八ないし第五〇号証、第五二ないし第五八号証、第六九ないし第七一号証、成立に争いがない甲第七、第一一、第一二号証、乙第一号証、第二号証の一、第三号証、第四号証の一ないし五、第二二号証、第三八号証の二ないし一二、第三九号証、第四〇号証の一ないし三、第四三ないし第四七号証、第五一、第五九、第六〇号証、第六四ないし第六六号証、証人Dの証言により真正に成立したと認められる乙第二号証の二、第三七、第四一、第四二号証、第七二ないし第七四号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第七五号証 、第六四ないし第六六号証、証人Dの証言により真正に成立したと認められる乙第二号証の二、第三七、第四一、第四二号証、第七二ないし第七四号証、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる乙第七五号証の二およびDの証言によれば、「被告らの主張」三、(三)のうちの1ないし6記載の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。 そして、右各証拠に加え、成立に争いがない甲第四号証、第五号証の一ないし七、第八ないし第一〇号証、第一四、第一五、第一九、第二〇号証、原告本人尋問(第一回)の結果により真正に成立したと認められる甲第六号証の一ないし二一、証人Jの証言および原告本人尋問(第一、第二回)の結果によれば、(1) 原告は、レバノンのベイルートに赴いていた昭和四六年四月から昭和五〇年一二月までの間、パレスチナ解放機構(以下、PLOという)の経営するジエルサレム病院で約一年間、PLOの難民キヤンプ内のハイフア病院で約四年間看護婦として働いていたが、後記のとおりP6がPLOの病院を辞めてからは、PLOの中で働く唯一の日本人であつた関係から、PLOを訪れる日本の政治家、学者、報道関係者らは、まず原告のところへ案内され、原告の助力をえて取材等の活動に従事していた。 (2) 原告は、いわゆる新左翼に属する者であるが、イスラエルに対するパνスチナ人の闘争を支持し、パレスチナ人が領土を得て独立するまでPLOの病院で看護婦として働く意思を有しており、レバノンに滞在していた前記約五年の間、新左翼社(現在の人民新聞社)の発行する新聞「新左翼」(現在の新聞「人民新聞」)へ五〇回以上にわたる寄稿を続け、昭和五〇年一月には新左翼社の特派員の資格をもえた。 (3) 新左翼社は、原告から送られてくる右寄稿文に適当な見出をつけて新聞「新左翼」に掲載していたものであり、その見出には過激 にわたる寄稿を続け、昭和五〇年一月には新左翼社の特派員の資格をもえた。 (3) 新左翼社は、原告から送られてくる右寄稿文に適当な見出をつけて新聞「新左翼」に掲載していたものであり、その見出には過激で刺戟的な言葉が用いられていたにもかかわらず、右寄稿文の内容は、パレスチナ現地の状況を伝える極めて実直なものであつた(但し、右寄稿文がパレスチナ人の側に立つてなされていたことはいうまでもない。)。 そして、これらの寄稿文は、新左翼系の他の雑誌等に勝手に転載されていた。 (4) PLOの中において、テルアビブ・ロツド空港事件が対イスラエルとの戦場で行われた闘争と評価されており、右事件で生き残つた日本赤軍構成員Mに対する極めて強い同情が存する反面、日本赤軍の行つた日航ハイジヤツク事件等その余の行為については、パレスチナ人の闘争とは関係のないもので、テロ行為との評価が与えられている。 (5) 原告は、パレスチナ問題についての自己の立場は人道主義に基づくものであり、日本赤軍のそれは政治的なものであると位置づけ、日本赤軍そのものを支持したり、女子供を盾にするようなその行動に共感をおぼえたことはない旨明言し、日本赤軍の行つた前認定の破壊活動等の多くを否定している。しかも、原告は、前記寄稿文の中で、テルアビブ・ロツド空港事件についてこれを讃美するかの如き言辞を用いているが、その実その暴力的な行為に対しても批判的で、ただパレスチナ人の闘争を支持する立場から批判的な気持を明言しかねている。そして右の言動が仮りそめのものでないことは、原告がその生まれ育ちの点でも心情の点でも、全くの庶民であり、やさしさと明るさが身についていることによつて裏づけられるのである。 (6) 原告は、昭和四六年四月P6と一緒にレバノンへ赴き、PLOのジエルサレム病院に勤めていたとき、同じ日 、全くの庶民であり、やさしさと明るさが身についていることによつて裏づけられるのである。 (6) 原告は、昭和四六年四月P6と一緒にレバノンへ赴き、PLOのジエルサレム病院に勤めていたとき、同じ日本人であるということで、日本赤軍構成員Aと一緒に食事するなどの交際をしていたことがあり、その際Aを訪ねて来た映画監督のP5やE(赤軍関係者)と会つたこともあるが、テルアビブ・ロツド空港事件の起きる少し前頃からAとの交際がなくなり、また、レバノンへ赴いて一年程してP6がジエルサレム病院を辞めて、日本赤軍と同じ思想傾向のグループの経営する病院へ移つたことならびに日航ハイジヤツク事件の起きたときに原告がこれを批判したことから同女と不仲となつたこともあつて、P6との交際も殆んどなくなつた。 (7) 昭和四九年二月四日警視庁がEに対し捜索差押を実施し、同人から押収した前記換字表には、原告がレバノンにいたとき、原告を訪れた参議院議員山口淑子のほかに、サルトル、カダフイ、周恩来、ザツプ、シアヌーク等の名前も見受けられる。 (8) 昭和四九年八月一〇日警視庁がG宅に対し捜索差押を実施し、押収した通信文五枚(原告がベイルートから発信したもの)は、Gへの私信ではなく、いずれも新聞「新左翼」に掲載されたものであり、Gの夫であり新左翼社の社員であるHが社命で自宅に保管していたものである。 (9) テルアビブ闘争支援委員会の特集号に掲載されている原告の昭和四七年七月一二日付の「パレスチナの戦列から」と題するアピールは、前叙のとおり、原告の前記寄稿文のうちの一つで、新聞「新左翼」に掲載されたものの原文が、原告に無断で転載されたものである。 (10) 昭和五二年二月一一日武蔵野市の武蔵野公会堂で開催された「今パレスチナの意味を問う講演会」の講演者は、P11、P12、P13、 に掲載されたものの原文が、原告に無断で転載されたものである。 (10) 昭和五二年二月一一日武蔵野市の武蔵野公会堂で開催された「今パレスチナの意味を問う講演会」の講演者は、P11、P12、P13、P14といつた人達であつたが、いずれも日本赤軍と関係がある者とはみられていない。そして、右同日右講演会に出席した原告は、右集会案内のビラ貼りの手伝をしたが、その際一緒にビラ貼りをした者が偶々右集会の主催者の代表者であるF(日本赤軍関係者)であつたに過ぎない。 以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。 右認定の各事実を基礎に原告と日本赤軍との連繋関係の存否について検討すると、(1)原告が新左翼系の者であつて、イスラエルに対するパレスチナ人の闘争を支持しており、その限りで日本赤軍と共通の思想的立場にあるが、他方において日本赤軍の行つた破壊活動等を明確に批判しており、しかも原告が日本赤軍との連繋関係を隠すために、殊更日本赤軍の行つた破壊活動等を批判しなければならない状況にあるとも認め難く、(2)原告が新聞「新左翼」に寄稿したり、新左翼社の特派員の資格をえたり、さらには日本赤軍関係者と接触する行為に及んでいるが、これらの行為は、いずれも原告が新左翼系の者で、イスラエルに対するパレスチナ人の闘争を支持しているために、その活動の範囲内でなされたものに過ぎず、特に日本赤軍関係者と親密な交際をしているわけでもなく、(3)前記換字表に原告の名前が見受けられるが、これまでに認められた他の事実を併せ考えてみても、PLO内における原告の知名度や交際の広さを斟酌すると、原告が日本赤軍と連繋関係を有するが故に換字表に乗せられたものとみることはできないのであり、結局原告と日本赤軍との間に連繋関係が存するとは認められない。 したがつて、本件処分は、原告が日本 酌すると、原告が日本赤軍と連繋関係を有するが故に換字表に乗せられたものとみることはできないのであり、結局原告と日本赤軍との間に連繋関係が存するとは認められない。 したがつて、本件処分は、原告が日本赤軍との連繋関係を有していないにもかかわらず、原告が日本赤軍との連繋関係を有し、旅券法一三条一項五号に該当するとしてなされた違法のものであるから、理由付記の不備の違法について判断するまでもなく取消を免れない。 四原告の国家賠償の請求について。 原告は、被告外務大臣が、旅券法一三条一項五号が憲法に反すること、または原告が右規定に該当しないことを認識しまたは認識しうべかりしにかかわらず、故意または過失により違憲または違法な本件処分をなしたことにより、原告が蒙つた損害の賠償を求める旨主張するので、判断する。 旅券法一三条一項五号が憲法に反しないことは前叙のとおりであり、被告外務大臣が本件処分をなすにつき、事実に反するにもかかわらず、原告を日本赤軍と連繋関係を有する者と故意に認定したと認めるに足りる証拠はなく、原告において、日本赤軍の行つたテルアビブ・ロツド空港事件について批判する気持を有していながら、前記寄稿文の中でこれを讃美するかの如き言辞を用いたり、自己の前記寄稿文につき、新左翼社がこれを新聞「新左翼」に掲載するにあたつて、その見出に過激で刺戟的な言葉を付するのを放置したり、日本赤軍に宣伝の場を提供し、その支持支援の呼びかけを行つている新左翼社(現在の人民新聞)の特派員となつたりしていることは前叙のとおりであり、さらには自己の前記寄稿文が日本赤軍関係者の発行するパンフレツトに転載されていることに関し、原告自身光栄である旨述べている事実(原告本人尋問―第二回―の結果)に徴すると、本件処分がなされるについての原告側の責任は重大であつたといわなければ 発行するパンフレツトに転載されていることに関し、原告自身光栄である旨述べている事実(原告本人尋問―第二回―の結果)に徴すると、本件処分がなされるについての原告側の責任は重大であつたといわなければならないのであつて、被告外務大臣において、他の車実―日本赤軍関係者から押収された物の中に、原告の名前の見受けられる換字表や原告が発信した手紙が発見されたことならびに原告と日本赤軍関係者との間に交友関係が認められたこと等―と相俟つて、原告を日本赤軍と連繋関係にある者と誤認したことは無理からぬことである。したがつて、本件処分を行うにつき被告外務大臣に過失があつたことを認めることはできない。 そうすると、その余の点につき判断するまでもなく、原告の被告国に対する国家賠償法一条に基づく損害賠償請求は失当であり棄却を免れない。 五よつて、原告の被告外務大臣に対する請求は正当であるからこれを認容することとし、被告国に対する請求は失当であるからこれを棄却することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。 別紙「異議棄却決定理由」貴殿の中東地域において行つた諸活動及びその他の資料からみて、貴殿はいわゆる日本赤軍と称される過激派集団と連繋関係を有するものと認められ、これら過激派集団の既往の破壊活動等にかんがみ、貴殿の海外渡航はわが国の利益及び公安を著しくかつ直接に害する虞があると認められる。 以上
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