【DRY-RUN】主 文 原判決中被告人A、同B、同C、同Dに関する部分を破棄する。 被告人Aを懲役四月に 同B、同C、同Dを各懲役参月に処する。但し、被告人A、同B、同 C、同Dに
主文 原判決中被告人A、同B、同C、同Dに関する部分を破棄する。 被告人Aを懲役四月に同B、同C、同Dを各懲役参月に処する。但し、被告人A、同B、同C、同Dに対し、本裁判確定の日から各四年間右刑の執行を猶予する。 被告人Eの本件控訴はこれを棄却する。 理由 本件各控訴の趣意は、被告人Aの弁護人池田覚太郎並びに同梅本敬一、被告人B並びに同Dの弁護人辻本幸臣、被告人Cの弁護人一木正光(但し第四点は徹回につき除く)、被告人Eの弁護人亀田得治、同横山義弘(連名)各作成の控訴趣意書記載のとおりである。 被告人Aの弁護人池内覚太郎の控訴趣意及び同弁護人梅本敬一の控訴趣意第一、第二点について原判決は、被告人Aに関し、「被告人Aは、昭和十三年一月頃、岸和田区裁判所及び堺区裁判所で賭博罪により各罰金六十円、同二十四年四月二十五日富田林簡易裁判所で同罪により罰金五千円に処せられ………たものであるが……常習として前項記載の日時場所で骨牌等を使用し金銭を賭し、俗に手本引と称する賭銭賭博を為し」と判示し、証拠説明において判示常習の点は同被告人が前認定のように賭博罪により処刑せられた事実に加え、更に本件を敢行した事跡に徴してこれを認定する、と説示しておる。そこで、池内弁護人は前記昭和十三年一月頃の罰金刑の前科は刑法第三十四条ノ二によりすでに刑の言渡の効力を失ておるに<要旨>かかわらず、原判決が右の前科を資料として常習賭博と認定したのは違法である。と主張するのである。記録</要旨>に徴すると、同被告人が昭和十三年一月頃賭博罪により罰金刑に処せられその執行を終つてから罰金以上の刑に処せられることなくして五年を経過しておることが明らかであるから、右の前科については、すでに刑の言渡の効力を失つて 人が昭和十三年一月頃賭博罪により罰金刑に処せられその執行を終つてから罰金以上の刑に処せられることなくして五年を経過しておることが明らかであるから、右の前科については、すでに刑の言渡の効力を失つておることは所論のとおりであるが、刑法第三十四条ノ二にいわゆる刑の言渡はその効力を失うというのは、将来に向つて刑の言渡による法律上の効果を失うという意味であつて、その者が以前に犯罪によつて処罰せられたという事実まで消滅するものではないから、同法条によつて刑の言渡の効力を失つておる前科であつても、同被告人が賭博罪により罰金刑に処せられたという事実を以て同被告人に賭博の習癖のあることを認定する資料とすることは違法ではない。しかしながらこれを基礎として賭博の常習性を認定するには、前科たる賭博行為と、現に間擬せられておる賭博行為との間において、賭博の習癖があると認め得べき時間的関連が存在し、これらを包括して単一な賭博の習癖の発現があつたものと認め得る場合でなければならない。原判決によると、同被告人は、昭和十三年一月賭博罪により罰金刑に処せられ、次に昭和二十四年四月二十五日同罪により罰金刑に処せられたのであつて、その間に十一年有余の歳月を経ており、また、件の賭博行為から見れば十四年余を経過しておるから、前記昭和十三年一月の賭博前科が一個であるか二個であるかの調査はしばらくおくとしても、右昭和十三年の前科たる賭博行為とその後の賭博行為との関係においては、被告人に賭博の習癖があると認め得べき時間的関連性がないものと解するを相当とする。原判決が右昭和十三年一月の賭博前科を以て賭博常習性認定の資料にしたのは法令の解釈適用を誤つておるが、同被告人及びFの検察事務官に対する各第一、第二回供述調書によると、同被告人の前記昭和二十四年の賭博前科は本引賭博であること、同被 を以て賭博常習性認定の資料にしたのは法令の解釈適用を誤つておるが、同被告人及びFの検察事務官に対する各第一、第二回供述調書によると、同被告人の前記昭和二十四年の賭博前科は本引賭博であること、同被告人は、その後、昭和二十七年一月末頃及び同年二月末頃、原審相被告人F方において本引賭博をしたこと、同被告人が原判示の日現金一万二千円を持つて右F方に行つて本件の手本引賭博を為し、その胴師となつたことを各認め得るから、前記昭和十三年の賭博前科を除いても、上記の事実だけで、被告人に賭博の習癖があり、本件賭博は右習癖の発現として為されたものであることを認定することができるので、原判決が本件を常習賭博と認定したのは結局において正当であり、前記の違法は判決に影響を及ぼさないと言える。論旨は理由がない。 被告人B、同Dの弁護人辻本幸臣の控訴趣意第一点について、原判決によると、被告人Bは、賭博罪により(一)昭和十九年三月三日罰金八十円(二)同二十一年八月七日罰金二百五十円(三)同二十三年十二月二十一日罰金五百円(四)同二十五年四月二十一日罰金二千円に各処せられ、被告人Dは、同罪により(一)昭和二十四年十二月七日罰金千円(二)同二十五年四月二十一日罰金三千円(三)同二十六年十二月十三日罰金五千円に各処せられたにかかわらず、本件の手本引賭博をしたのであつて、右の事実は原判決の挙示する証拠によつて明らかであるから、同被告人等に賭博の習癖がありその発現として本件賭博をしたものであることを認定するに十分である。原判決の事実認定は正当であつて、論旨は理由がない。 被告人Cの弁護人一木正光の控訴趣意第一ないし第三点について、同弁護人は起訴状の記載を非難するけれども、起訴状には、「常習として骨牌等を使用し金銭を賭し俗に手本引と称する賭銭賭博を為し一と記載してあるか Cの弁護人一木正光の控訴趣意第一ないし第三点について、同弁護人は起訴状の記載を非難するけれども、起訴状には、「常習として骨牌等を使用し金銭を賭し俗に手本引と称する賭銭賭博を為し一と記載してあるから、常習賭博罪の表示として十分である。従つて原裁判所が右の起訴状を受理して審理判決したのは少しも違法ではない。原判示事実並びに援用の証拠を綜合すれば、同被告人は、昭和二十二年三月十二日から同二十六年十一月二十八日までの間前後五回にわたり全部本引賭博によつて各罰金刑に処せられておるにかかわらず、更に金銭を賭して本件の手本引賭博をしたことが明らかであるから、同被告人が農業に従事しておると否とにかかわらず、賭博常習者であることを認定するに十分である。論旨は理由がない。 被告人Eの弁護人亀田得治、同横山義弘の控訴趣意について、原判示事実並びに援用の証拠を綜合すると、同被告人は、いずれも本引賭博をして、賭博罪により(一)昭和十七年八月七日罰金八十円(二)同十九年七月十六日罰金三百円に、常習賭博罪により(三)同二十二年二月七日懲役四月(四)同二十三年五月十三日懲役四月に、賭博罪により(五)昭和二十五年十月十九日罰金五千円に、各処せられた賭博並びに常習賭博の前科がある上に、更に本件の手本引賭博をしたことが明らかであるから、同被告人に賭博の習癖があり、本件の賭博はその発現として為されたものであることを認定するに十分である。原判決の事実認定は正当であつて、実験則違反や自由心証の過誤に基づく事実の誤認はない。論旨は理由がない。 被告人Aの弁護人梅本敬一の控訴趣意第三点、被告人D、同Bの弁護人辻本幸臣の控訴趣意第二点、被告人Cの弁護人一木正光の控訴趣意中量刑不当を主張する点について、 本件記録及び原裁判所において取り調べた証拠を精査し、本件犯行の動機態様、 三点、被告人D、同Bの弁護人辻本幸臣の控訴趣意第二点、被告人Cの弁護人一木正光の控訴趣意中量刑不当を主張する点について、 本件記録及び原裁判所において取り調べた証拠を精査し、本件犯行の動機態様、家庭環境、その他諸般の事情を考慮すると右の被告人等がそれぞれ常習として手本引賭博をしたのは厳重に戒むべきであるが、同被告人等はいずれも、定職を有するもので、賭博を業とする者ではないこと、娯楽機関の少い農村に居住しておること、また最近における射こう心をあおるような社会風潮が国民を毒する事実に鑑がみ被告人等だけを重く処罰するわけにもゆかない。被告人等は改悛の情顕著であるから、しばらく刑の執行を猶予し、改悛の実をあげさせる方が刑政上妥当であると思われるので、量刑に関する論旨は理由あり、原判決は破棄を免れない。 よつて、刑事訴訟法第三百九十七条、第三百八十一条に従い原判決中、被告人A、同B、同C、同Dに関する部分を破棄し、同法第四百条但し書によつて更に判決をし、同法第三百九十六条に従い被告人Eの本件控訴を棄却する。 原判決が被告人A、同B、同C、同Dについて認定した事実に、各刑法第百八十六条第一項、第二十五条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判長判事瀬谷信義判事山崎薫判事西尾貢一)
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