平成25年3月25日判決言渡平成23年(ワ)第20049号地位確認等請求事件主文 1 原告と被告との間において,原告が被告の幕内力士の地位にあることを確認する。 2 被告は,原告に対し,157万8000円及びこれに対する平成23年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告に対し,(1)平成23年6月から本判決確定の日まで毎月末日限り130万9000円,(2)平成23年7月から本判決確定の日まで2か月毎の各月末日限り24万4000円,(3)平成23年9月から本判決確定の日まで4か月毎の各月末日限り2万5000円,及び上記(1)ないし(3)の各金員に対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告の負担とする。 5 この判決の2項及び3項は仮に執行することができる。 事実 及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,被告が,被告により力士として採用された原告を「故意による無気力相撲」を行ったことを理由として引退勧告処分とし,その後,同処分に従わないことが「協会(被告)内の秩序を乱す」という理由で解雇処分をしたところ,原告が,引退勧告処分該当事由も解雇処分該当事由も存せず,また,解雇処分に至る手続等に違法があるから,上記解雇処分は無効であると主張して,被告に対し,原告が被告の幕内力士の地位にあることの確認及び解雇された後の給与等の支払を求めた事案である。 1 前提事実争いがない事実,証拠(認定事実に付記したもの。)及び弁論の全趣旨によれ 対し,原告が被告の幕内力士の地位にあることの確認及び解雇された後の給与等の支払を求めた事案である。 1 前提事実争いがない事実,証拠(認定事実に付記したもの。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 当事者ア原告原告は,(住所省略)に生まれ,平成15年8月,被告により力士として採用され(力士として採用された際の合意について,以下「本件契約」という。),被告において年寄名跡を有するA(以下「A親方」という。)を師匠(いわゆる親方,以下「師匠」あるいは「親方」という。)として,その指導のもと稽古に励み,平成16年11月場所に幕下に昇進し,平成22年1月場所には十枚目(十両の正式名称であり,以下「十両」ともいう。)に,同年9月場所に西前頭▲枚目に昇進して幕内力士となった。 イ被告被告(以下「協会」ということがある。)は,我が国固有の国技である相撲道を研究し,相撲の技術を練磨し,その指導普及を図るとともに,これに必要な施設を経営し,もって,相撲道の維持発展と国民の心身の向上に寄与することを目的とし,力士,行司等の養成及び力士の相撲競技の公開実施等を事業として行う財団法人である。 (2) 被告における諸規定ア財団法人日本相撲協会寄附行為(平成21年5月13日改正,以下「寄附行為」という。)(甲1)第36条1項この法人には,力士をおく。 7項力士は,相撲道に精進するものとする。 8項力士は,有給とする。 イ財団法人日本相撲協会寄附行為施行細則(以下「施行細則」という。)(甲2 7項力士は,相撲道に精進するものとする。 8項力士は,有給とする。 イ財団法人日本相撲協会寄附行為施行細則(以下「施行細則」という。)(甲2)第7条協会は,力士の技量を審査するための相撲競技(以下本場所相撲と称する)およびその他の事業を実施する。 第12条本場所における故意による無気力相撲を防止し,監察し,懲罰するため,相撲競技監察委員会をおく。監察委員会ならびに懲罰に関しては,理事会の議決を経て,別に定める。 第54条全年寄・力士・行司およびその他は,相撲の本義を体し,公益法人である本協会の目的に鑑み,一層相撲の研究練磨に努め,人格を陶冶し,真に協会員であることを認識し,その名を辱めないよう心がけねばならない。 第60条力士は,協会所属とする。 第61条力士を志望する者は,義務教育を終了した23歳未満(新弟子検査日)の男子で,師匠を経て,協会に(略)力士検査届を提出し,協会の指定する医師の健康診断ならびに検査に合格し,登録されねばならない。 (以下略)第92条(平成22年5月27日改定前の第88条)全年寄・力士・行司およびその他協会所属員として,相撲の本質をわきまえず,協会の信用もしくは名誉を毀損するがごとき行動をなしたる者,あるいは品行不良で協会の秩序を乱し,勤務に不誠実のためしばしば注意するも改めざる者あるときは,理事会および評議員会において理事・評議員のそれぞれ現在数の4分の3以上の特別決議により,これを除名することができる。この場合,議決する前に,理事会および評議員会の場においてそ ざる者あるときは,理事会および評議員会において理事・評議員のそれぞれ現在数の4分の3以上の特別決議により,これを除名することができる。この場合,議決する前に,理事会および評議員会の場においてその協会所属員に弁明の機会を与えなければならない。 第93条(平成22年5月27日改定前の第89条)全年寄・力士・行司およびその他協会所属員に対する賞罰は,けん責・給与減額・出場停止・番附降下・解雇の5種とし,理事会の議決により行うものとする。ただし,職員については,別に定める。 第94条(平成22年5月27日改定前の第90条)協会所属員にして,引退・解雇・除名または脱走した者は,再び協会に所属することができない。 ウ故意による無気力相撲懲罰規定(昭和47年1月施行,以下「無気力相撲懲罰規定」という。)(なお,この規定は,施行細則附属規定(以下「附属規定」という。)の一部として定められている)(要旨のみ)(甲3の1)第1条本場所相撲に於ける故意による無気力相撲を防止し,監察し,懲罰するため本規定を設ける。 第2条故意による無気力相撲を防止し,監察するため相撲競技監察委員会(以下委員会と称する)をおく。 第4条委員会は,本場所相撲を常時監察し,故意による無気力相撲と思われる相撲があった場合は審判部長と協議し,故意による無気力相撲の結論を出した場合は理事長に提出するものとする。 第5条理事会は,委員会の提出した結論に基づき寄附行為施行細則第88条(現行92条)によらず理事会決議を以て懲罰を決定するものとする。 場合は理事長に提出するものとする。 第5条理事会は,委員会の提出した結論に基づき寄附行為施行細則第88条(現行92条)によらず理事会決議を以て懲罰を決定するものとする。 第6条故意に無気力相撲をした力士に対する懲罰は,けん責,給与減額,出場停止,引退勧告,除名とする。 第7条懲罰を受けた力士の師匠は,連帯してその責任を負うものとする。 第8条故意による無気力相撲に関与したものは,力士と同等の懲罰を受けるものとする。 エ無気力相撲懲罰規定のうち,第4条ないし第8条は改定(平成23年4月15日施行,以下「平成23年4月改定」という。)されたところ,同改定後の第6条の定めは以下のとおりである。(甲3の2)第6条故意に無気力相撲をした力士(懲罰時に年寄である者を含む)に対する懲罰は,出場停止,引退勧告,解雇,除名とする。 故意による無気力相撲の申込み,要求もしくは約束した力士に対する懲罰も同様とする。 オ施行細則給与・手当等支給規定(以下「給与規定」という。)(甲4)第8条力士の給与は,月給制とし,当分次の通り定める。 横綱 2820000円大関 2347000円三役 1693000円幕内 1309000円十枚目 1036000円ただし,各本場所の開催月より,各本場所の番附の階級により支給する。 1309000円十枚目 1036000円ただし,各本場所の開催月より,各本場所の番附の階級により支給する。 第25条十枚目以上の力士には,稽古廻し・締込・化粧廻し,結髪の費用に充当するため当分次の通り力士補助費を支給する。 東京本場所1場所につき 25000円第26条1項十枚目以上の力士には,力士褒賞金を支給する。 力士褒賞金の最低支給標準額を次の通り定める。 ただし,地位降下の場合は,昇進当時の増加額に相当する金額を減ずる。 3項力士褒賞金の支給時期は,各本場所毎とし,支給割合は,当分4000倍とする。 5項力士褒賞金の支給標準額は,本場所相撲の成績により増加する。 その方法は,次による。 (1) 本場所相撲の成績に基き,勝越星1番につき金50銭を増加する。 (2) 幕内力士(大関・三役を除く)にして,横綱より勝星をえたときは,特別に金10円を増加する。ただし,不戦及び反則による場合は適用しないこととする。 (3) 幕内力士以上の力士にして優勝した場合は30円(全勝優勝の場合には50円)を特別に増加する。 区分金額横綱 150円大関 100円幕内 60円 金額横綱 150円大関 100円幕内 60円十枚目 40円幕下以下 3円(3) 原告とBとの取組ア原告は,新十両▲枚目で迎えた平成22年1月場所の9日目にB(後記出場停止処分当時はC親方,本名・D)と対戦し,勝利した(以下「本件1月場所取組」という。)。 イ原告は,十両▲枚目で迎えた平成22年5月場所11日目にBと対戦し,勝利した(以下「本件取組」という。)。 (4) 故意による無気力相撲の発覚等ア警視庁の野球賭博における捜査の過程で力士の携帯電話から「故意による無気力相撲」が行われていたことを疑わせる内容のメールが発見された ことなどから,被告は,平成23年2月2日,特別調査委員会を設置し,同委員会に「故意による無気力相撲」問題についての調査を依頼した。 イ特別調査委員会は,B,E,F(本名・G,)の3名を中心に他の力士についても調査を行った。なお,上記3名は,特別調査委員会による事情聴取に先立ち,平成23年2月2日に開催された被告理事会の席上で,「故意による無気力相撲」への関与を認めていた。 (5) 原告に対する事情聴取特別調査委員会は,平成23年2月12日,同年3月1日,同月10日及び同年4月7日,「故意による無気力相撲」に関して,原告に対する事情聴取を行った。 (6) 被告のBらに対する処分等被告は,平成23年4月1日,「故意による無気力相撲」に関与 年4月7日,「故意による無気力相撲」に関して,原告に対する事情聴取を行った。 (6) 被告のBらに対する処分等被告は,平成23年4月1日,「故意による無気力相撲」に関与したことを理由に,B,Fら3名に対し出場停止2年,Hら20名に対し引退勧告ないし退職勧告の処分をした。しかし,特別調査委員会は,原告とIについては,なお調査を継続することとした。 (7) 原告に対する引退勧告処分被告は,平成23年4月11日,原告に対し,処分事由を「平成22年5月場所11日目のBとの取組等において,故意による無気力相撲を行った。」(以下「本件引退勧告事由」という。)として,無気力相撲懲罰規定第6条(平成23年4月改定前)に基づき引退勧告処分(以下「本件引退勧告処分」という。)をした。(甲8)(8) 原告に対する解雇処分被告は,平成23年4月14日,原告に対し,「貴殿は,平成23年4月11日,理事会により引退勧告の処分を受けたにもかかわらず,4月13日の期限までに引退届を提出しなかった。貴殿の行為は,協会内の秩序を乱す行為と認めるため,寄附行為施行細則第93条に基づき,処分を行うものと する。」(以下「本件解雇事由」という。)として,解雇処分(以下「本件解雇処分」という。)をした。(甲9)(9) 仮処分の申立て等原告は,平成23年4月22日,本件解雇処分が無効であることを理由に,被告を債務者として,東京地方裁判所に地位保全及び賃金仮払仮処分の申立て(同裁判所平成○年(ヨ)第○号,以下「別件仮処分事件」という。)をした。同事件は,同年6月9日の第3回審尋期日において,被告が原告に対し,賃金ないし報酬の仮払いとして,平成23年6月から平成24 て(同裁判所平成○年(ヨ)第○号,以下「別件仮処分事件」という。)をした。同事件は,同年6月9日の第3回審尋期日において,被告が原告に対し,賃金ないし報酬の仮払いとして,平成23年6月から平成24年5月まで毎月130万9000円の支払義務があることを認め(平成24年6月以降は別途協議),原告及び被告は,上記仮払いについては,本案訴訟の確定判決に基づいて清算する義務があることを相互に確認する旨の和解が成立した。 (甲10)(10) 本件訴訟の提起原告は,平成23年6月17日,本件訴訟を提起した。 2 争点(1) 本件契約の性質(2) 本件契約が準委任契約であることを理由とする本件契約解除の成否(3) 本件引退勧告事由(故意による無気力相撲)の存否及び本件引退勧告処分の効力等(4) 本件解雇事由(協会内の秩序を乱す行為)の存否及び本件解雇処分の効力(5) 地位確認の利益及び給与等請求権の存否 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件契約の性質)について(原告の主張)本件契約は,労働契約法が適用されるべき契約である。 ア原告は力士として被告に所属するものとされ,力士は被告に対し,「相撲道に精進する義務」を負うなど,被告が定める基本的な服務に従わなければならない。また,力士は,被告の生活指導部の監督を受け,被告に所属する年寄が運営する相撲部屋に帰属し,年寄を師匠としてその絶対的な指揮命令に従う存在である。そして,被告は,施行細則に,被告の秩序を乱した力士等に対する懲罰規定を設けている。 イ被告は,事業として力士の相撲競技を公開実施しているが,被告に所属する幕内力士である原告は, 。そして,被告は,施行細則に,被告の秩序を乱した力士等に対する懲罰規定を設けている。 イ被告は,事業として力士の相撲競技を公開実施しているが,被告に所属する幕内力士である原告は,本場所相撲のほか各地の巡業等の相撲競技に出場する義務を負い,原告において出場するかどうか任意に決めることはできない。また,相撲競技は,被告の理事会が定める相撲規則等の厳格なルールに従って執り行われ,力士はそれに拘束されて競技を行わなければならない。 ウ力士は,有給とされ,十枚目以上の力士に対してはその番附上の地位に応じて定額の月給と諸手当が支払われる。そして,力士の番附は,被告の番附編成会議において作成され,階級順位の昇降は本場所の勝ち星により決定される。また,幕内・十枚目の力士の番附員数はそれぞれ42名以内・28名以内と定められている。 したがって,原告が受領する給与や諸手当は,原告が幕内力士として本場所の相撲競技に出場し一定の成績を収めたことに対して,被告の番附編成会議によって付与された幕内力士としての地位に応じて支給されるものであり,原告の労働に対する対価である。 エ被告は,健康保険法及び厚生年金保険法の適用において,力士を被告が使用する労働者として扱っている。 オ以上のとおり,被告の幕内力士である原告は,被告の指揮命令のもと,被告の事業に服務して労働することの対価として,給与及び諸手当を受領している。原告は被告に使用されて労働し,その対価として被告より給与 を支払われる者として「労働者」であり,被告は原告に対して賃金を支払う者として「使用者」である。 (被告の主張)本件契約は,準委任契約である。 ア本件契約は,被告が力士 として「労働者」であり,被告は原告に対して賃金を支払う者として「使用者」である。 (被告の主張)本件契約は,準委任契約である。 ア本件契約は,被告が力士に対し,本場所・地方巡業に参加して相撲競技を行うことを委託したものであり,力士が被告に対して負う義務は,主体的な努力により培った相撲の技能を前提に,本場所相撲に出場することを基本的な内容とし,被告は,こうした力士による相撲競技という一種のパフォーマンスの受託提供に対して,その技量と格付けに応じた報酬を個々の力士に支払うことを約したものである。原告と被告との間に,労働契約上の労務提供は認められない。 イ寄附行為や施行細則上,力士が本場所相撲に出場する義務を直接に定め,強制する規定はない。力士は,個々人の判断によって,本場所相撲や地方巡業に参加している。ここには,当然,力士個人が取組においてどのような戦略を立てるかについての制約もなければ,毎日長時間にわたる拘束もなく,相撲競技の内容は個々の力士が自主的・主体的に追求すべきものであり,原告と被告との間には指揮命令関係はない。 ウ力士が被告から得る金員は,業務時間とは全く関係なく成績により定まり,通常の労働者に比べてはるかに高額であることなどから,労働の対価たる労働契約上の給与とは評価できず,また,力士には労災保険,雇用保険が適用されない。 エ被告と相撲部屋の長である師匠との関係,師匠と力士の関係は,江戸時代から受け継がれてきた独特の相撲慣習を基礎としており,力士と被告との関係は特殊であり,多くの点で労働関係法規と全く整合しない。 (2) 争点(2)(本件契約が準委任契約であることを理由とする本件契約解除の成否) (被告の主張) 告との関係は特殊であり,多くの点で労働関係法規と全く整合しない。 (2) 争点(2)(本件契約が準委任契約であることを理由とする本件契約解除の成否) (被告の主張)ア被告は,原告に対し,本件解雇処分により,有償の準委任契約である本件契約を解除する旨の意思表示を行った。本件契約の内容に普段の部屋での生活や稽古は含まれないから,同契約は継続的な契約ではない。それゆえ,被告は,民法656条,651条1項に基づき,いつでも準委任契約たる本件契約を解除することができる。 イ準委任契約は,信頼関係を前提にしているから,信頼関係が破たんした場合には契約の解除を広く認めるべきである。とりわけ,相撲は実力主義の世界であること,力士の選手生命は短く,実力主義のもと激しい人的交代にさらされていること,力士には,高度な専門性,技術,努力が要求されており,かかる水準に満たない者は相撲界を去らざるを得ないこと,力士が引退する手続は,師匠の判断のみで行われることなどの特質があり,これらのことからして,相撲界における契約解除は特に広く認められるべきである。したがって,被告は,いつでも原告との本件契約を解除することが可能であり,その解除に信頼関係を根本から破壊するような「特段の事情」は不要であり,解雇権濫用法理は適用されない。 ウ施行細則において,被告の集団的秩序を乱した者に対する制裁について,被告から放逐するものとしては,除名と解雇があり,最も厳しい処分である除名と除名ほどの悪質性が認められない場合における解雇という意味で使い分けがされている。これは,処分の軽重を明確にするため,便宜上,除名と解雇という文言が用いられているにすぎず,解雇という文言は,必ずしも労働契約関係を前提にしたものではないし る解雇という意味で使い分けがされている。これは,処分の軽重を明確にするため,便宜上,除名と解雇という文言が用いられているにすぎず,解雇という文言は,必ずしも労働契約関係を前提にしたものではないし,準委任契約における解除権を放棄したものでもない。 (原告の主張)ア本件契約は労働契約法が適用されるから解雇権濫用法理の適用がある。 イ本件契約が準委任契約ないしはそれに類似した契約であるとしても,被 告は当然には本件契約を解除できない。 (ア) 解雇権濫用法理の適用ないし準用被告と力士との契約関係において,力士の日常生活につき指揮・監督権を有するのはあくまでも被告である。師匠に力士の日常生活につき指導・監督する権限があるとしても,それは被告から委ねられた権限に過ぎず,師匠に「相撲部屋の内部自治」としての指揮・監督権があるわけではないことなどからすれば,その解除には労働契約における解雇権濫用法理が適用ないし準用されるべきであり,解雇に値する客観的に合理的な理由と適正な解雇手続の履践が必要である。 (イ) 原告の利益のための準委任契約における解除本件契約は,原告の利益のための準委任契約であるから,委任者(被告)からの解除は,受任者が著しく不誠実な行動に出るなど,本件契約関係の基礎にある信頼関係を根本から破壊し,もはやこれを継続することが困難であると認められるような「特段の事情」がある場合に限って許されると解すべきであるところ,本件においては,被告からの解除を有効ならしめるような「信頼関係の破壊」や「著しい信義則違反」となり得るような特段の事情はない。 (ウ) 被告による解除権の放棄本件契約は,被 被告からの解除を有効ならしめるような「信頼関係の破壊」や「著しい信義則違反」となり得るような特段の事情はない。 (ウ) 被告による解除権の放棄本件契約は,被告が定める寄附行為,施行細則及び附属規定によって律せられるところ,これらの諸規定において,契約解除の効果を生じさせる処分として定められているのは「除名」と「解雇」である。すなわち,被告は,前記諸規定に定める「除名」と「解雇」に当たる事由がある場合にのみ本件契約を一方的に解除し得るものとして,民法651条に定める任意の解除権を有しないことを自認しており,被告が同条に基づいて本件契約を解除することはできない。 (3) 争点(3)(本件引退勧告事由(故意による無気力相撲)の存否及び本件引 退勧告処分の効力等)について(被告の主張)ア原告は,本件取組において「故意による無気力相撲」を行った。 (ア) 原告が「故意による無気力相撲」に関与した力士であることこのことは,Fの携帯電話に原告の電話番号が登録されていたこと,Fは,原告の「故意による無気力相撲」を複数回仲介したという確実な記憶があると供述していること,Fが,本件について,被告に有利で原告に不利な供述を行う利害関係がなく,その供述経緯からすれば虚偽供述のおそれがないことなどからして明らかである。 Fは,原告との「故意による無気力相撲」に関与した相手方力士の名前等を具体的に挙げていないが,Fは原告に関して複数回「故意による無気力相撲」の仲介を行ったのであるから,その取組を具体的に特定できなくても何ら不自然ではない。また,仮に,Fが具体的な取組について思い当たるところがあっても,「故意による無気力相撲」を行っ による無気力相撲」の仲介を行ったのであるから,その取組を具体的に特定できなくても何ら不自然ではない。また,仮に,Fが具体的な取組について思い当たるところがあっても,「故意による無気力相撲」を行ったことを自ら認めている力士はBとEのみであるから,Fが当該相手方力士との人間関係を配慮してその特定をしないことには合理的な理由がある。 (イ) Bの供述が信用できることaBは,特別調査委員会による事情聴取において,初回の事情聴取から一貫して,「故意による無気力相撲」に関与した力士として,原告の名前を挙げており,取組内容を映像で確認するなどしながら,本件取組が「故意による無気力相撲」であった旨特定した。Bの供述は,当時の客観的状況や信用性の高いFの供述と一致している。 b Bが,原告のみを殊更に陥れるために虚偽の供述を行う理由は一切なく,また,Bの供述に基づき被告が引退勧告処分を行った力士の大多数が被告の処分に従ったことからも,Bの供述が虚偽である可能性はない。 c B自身,毎場所,複数回にわたり「故意による無気力相撲」を行っていたため,1年前の個々の「故意による無気力相撲」について,その申入れ日時や場所等の具体的な内容について記憶がないことは不自然ではない。 d Bは,星の精算を現金で行ったことは明言しつつも,具体的精算方法については,借りのある力士に対してFを通じて支払ってもらった旨供述した。Bは,「故意による無気力相撲」の星のやり取りについて,多数の精算をしてきたことから,その内容を本人も明確に把握しておらず,個々の取組における星の精算方法についての供述に具体性がないとしても不自然ではない。 (ウ) J特別調査委員(以下「 数の精算をしてきたことから,その内容を本人も明確に把握しておらず,個々の取組における星の精算方法についての供述に具体性がないとしても不自然ではない。 (ウ) J特別調査委員(以下「J委員」という。)の供述が信用できることJ委員は,「故意による無気力相撲」に関する調査に当たり,Bが本件取組が「故意による無気力相撲」であると述べた旨供述しているところ,同委員は,特別調査委員に就任するまで,被告と特別な関係にあったわけではなく,原告及びA親方を陥れる理由は一切なく,虚偽の供述を行う理由はない。また,その供述態度は真摯であり,供述内容が具体的であることからして同委員の供述には強度の信用性が認められる。 (エ) 原告の供述が信用できないこと原告は,「故意による無気力相撲」に一度も関与したことはなく,本件取組も「故意による無気力相撲」ではない旨供述するが,この供述は,信用性の高いFやBの供述内容に反すること,原告は,「故意による無気力相撲」を行ったことが明らかになれば被告から処分を受け力士としての地位を失う立場にあり虚偽の供述をする強い動機があること,原告の供述は重要な点で客観的事実と矛盾があること,本件取組に不自然な点があること,原告の本件訴訟における態度が不自然であることなどか らすれば,原告の供述は信用できない。 (オ) 本件取組内容「故意による無気力相撲」においては,負け役力士は,勝ち役力士のなすがままに流れに身を任せることで,勝ち役力士の有利な形で相撲を取らせ,結果的に負けるようにする。本件取組の内容は,Bは流れに任せて何もせず,原告の有利な形で相撲を取ったにすぎない。また,過去の対戦においても同じ決まり手で原告が ,勝ち役力士の有利な形で相撲を取らせ,結果的に負けるようにする。本件取組の内容は,Bは流れに任せて何もせず,原告の有利な形で相撲を取ったにすぎない。また,過去の対戦においても同じ決まり手で原告が勝利しているところ,通常,全く同じ決まり手であっさり負けることは考え難く,Bが流れに身を任せて原告と戦った結果,以前の対戦と同様の結果となったと考えるのが自然である。本件取組におけるBの不自然な動き及び決まり手は,本件取組が「故意による無気力相撲」であることを裏付けている。 イ本件引退勧告処分の相当性真剣勝負を謳う本場所興行において,「故意による無気力相撲」を行うことは,相撲愛好家の信頼を損ない,本場所興行を主体に活動してきた被告の根幹を揺るがすものである。今回の「故意による無気力相撲」の発覚により,被告は,平成23年3月場所の興行を中止するという前代未聞の事態に陥り,被告の社会的信用は失墜した。被告は,「故意による無気力相撲」について無気力相撲懲罰規定を特別に設け,同相撲に関与した力士に対して厳しい処分を規定し,これを絶対的に禁止し,審判部や親方を通じて同相撲が行われないように強く指導してきたし,原告もこの点を十分に認識していた。したがって,被告において,「故意による無気力相撲」に関与した力士に対し,引退勧告(これに従わない場合には解約又は解雇)処分を行うことは,客観的にも合理性,相当性が満たされる。 ウ本件引退勧告処分の手続(ア) 本件引退勧告処分に当たり,相撲競技監察委員会(以下「監察委員会」という。)は関与していないが,無気力相撲懲罰規定の制定権は被 告理事会にあるところ,被告は,平成23年2月2日に開催された臨時理事会において,特別調査委員会を設置するこ 会(以下「監察委員会」という。)は関与していないが,無気力相撲懲罰規定の制定権は被 告理事会にあるところ,被告は,平成23年2月2日に開催された臨時理事会において,特別調査委員会を設置することとし,「故意による無気力相撲」問題の調査を同委員会に一任することを決定し,同委員会の調査結果に基づいて本件引退勧告処分をした。したがって,同処分に至る手続において監察委員会が関与していないことに何ら手続的な問題はない。 (イ) 特別調査委員会は,平成23年2月12日,同年3月1日,同月10日,同年4月7日の4回にわたり,原告から事情聴取を行い,その弁明を聞いている。本件引退勧告処分に当たり,被告が原告に対し,十分な弁明の機会を与えていたことは明らかである。 (原告の主張)ア原告は,本件取組において「故意による無気力相撲」を行ったことはない。 (ア) 本件取組内容本件取組の映像からすれば,本件取組が,原告が先手を取って有利な体勢を築き,これに対して,Bが懸命に防御して体勢を挽回しようと試み,それを巧みに封じた原告が最後に得意技の上手出し投げでBを倒したという,両力士による真剣勝負であったことが明らかである。 (イ) 原告がBに「故意による無気力相撲」を依頼する動機がないこと原告にとって,Bが得意な取組相手であったこと,本件1月場所取組で完勝していること,当時,原告の力士としての勢いはBをはるかに上回っていたことなどからして,原告がBに「故意による無気力相撲」を依頼する動機がない。 (ウ) Bの供述が信用できないことa 本件取組が「故意による無気力相撲」であるとするBの供述は,そのことを裏付 告がBに「故意による無気力相撲」を依頼する動機がない。 (ウ) Bの供述が信用できないことa 本件取組が「故意による無気力相撲」であるとするBの供述は,そのことを裏付けるべき,本件取組の経過や内容についての具体的な説 明を欠いている。 b Bは,平成23年2月23日の特別調査委員会による第6回事情聴取において,J委員から,第5回事情聴取までの供述内容をまとめたという供述書に署名を求められたがこれを拒否し,その後も現在に至るまで署名していない。このことは,J委員が作成したという供述書に記載された内容がB自身の記憶に反し,又は反する可能性があると思っていたことを強く窺わせる。 cBは,平成23年2月11日の第4回事情聴取において,J委員に対し,本件1月場所取組及び本件取組のいずれもが「故意による無気力相撲」であると供述したにもかかわらず,同年3月16日の第8回事情聴取においては本件取組のみが「故意による無気力相撲」であると供述したとのことであり,わずか2回しかなかった原告との取組について,通常であれば間違えるはずのない重要な事実について供述を翻したとすれば,その供述の信用性に重大な疑いが生じる。 d 本件取組の星の清算方法について,星の回し合いではなく,原告に「星を買い取ってもらった」とのBの供述は,その具体的な内容を欠く上,客観的事実に反し,また,Fとの供述とも矛盾するものであるから,上記Bの供述が信用できないことが明らかである。 eJ委員は,当初から,Bに対しては,「故意による無気力相撲」に関与している他の力士のことを洗いざらい話せば,Bに対する処分を軽くする旨を伝え,実際にもそうして同人の供述を維持させようと努めているので 委員は,当初から,Bに対しては,「故意による無気力相撲」に関与している他の力士のことを洗いざらい話せば,Bに対する処分を軽くする旨を伝え,実際にもそうして同人の供述を維持させようと努めているのであり,同人もそのような利益が得られることを念頭に置きつつ力士名を口にし,それをできる限り維持していったものと推察され,かかる利益誘導によって,Bの供述がJ委員に迎合した,真実,公正さを損なうものとなったことが窺える。実際に,Bは,平成21年1月場所から同22年5月場所にかけて合計30回以上の取組につ いて「故意による無気力相撲」を行ったにもかかわらず,「出場停止処分(2年)」にすぎず,これは,「故意による無気力相撲」を認めなかった他の力士が引退勧告処分を受けたことに比べて格段に軽い処分であった。 (エ) Fの供述が信用できないことaFは,調査段階から本件訴訟における証人尋問に至るまで,本件取組に関する仲介をしたとも,同取組が「故意による無気力相撲」であったとも供述していない。 b 「故意による無気力相撲」における清算方法に関して,Fの供述はBの供述と矛盾しており,Fの供述はBの供述を弾劾する証拠ではあってもその信用性を補完する証拠ではない。 cFは,原告の「故意による無気力相撲」を複数回仲介した旨供述しているが,その仲介の具体的状況について供述していないこと,その供述内容は一貫性を欠き矛盾していることなどからして,それ自体信用性を欠いている。Fは,同人の携帯電話に原告の電話番号が登録されている旨供述するが,携帯電話の検証申請に協力せず,登録された力士名を供述しないこと,原告の携帯電話番号を知った経過が不明であることなどからして,およそ信用できるものではない。 録されている旨供述するが,携帯電話の検証申請に協力せず,登録された力士名を供述しないこと,原告の携帯電話番号を知った経過が不明であることなどからして,およそ信用できるものではない。 (オ) BとFが原告の名前を挙げたことについてBとFが原告の名前を挙げたことについては,BとFが互いに連絡を取り合いながら特別調査委員会の調査に臨んだことが窺えるから,本件取組が「故意による無気力相撲」であることの根拠にはならない。 イ本件引退勧告処分における重大な手続的違法(ア) 無気力相撲懲罰規定によると,「故意による無気力相撲」を理由に引退勧告処分を行うには,監察委員会が審判部長と協議した上で「故意による無気力相撲」を認定する必要がある。しかし,本件引退 勧告処分に当たり,同委員会が「故意による無気力相撲」の調査・認定した事実は一切なく,上記懲罰規定の要件を満たしていない。 なお,同委員会の認定を必要としたのは,相撲の専門家である同委員会にこそ「故意による無気力相撲」の認定を委ねることができるということに基づくことからすれば,相撲について素人の特別調査委員会が「故意による無気力相撲」の調査・認定を行ったとしても,監察委員会が関与していないという手続的違法を正当化し得るものではない。 (イ) 使用者が労働者を懲戒処分するときは,労働者に対し懲戒処分の根拠となる事由に関して弁明する機会を実質的に保障する必要がある。原告は,特別調査委員会委員から本件1月場所取組及び本件取組が「故意による無気力相撲」であると告げられたのみであり,また,本件引退勧告処分に際しても本件取組等が「故意による無気力相撲」であるという結論を示されたのみであって,それを根拠付ける 組及び本件取組が「故意による無気力相撲」であると告げられたのみであり,また,本件引退勧告処分に際しても本件取組等が「故意による無気力相撲」であるという結論を示されたのみであって,それを根拠付ける具体的な事実は何ら示されなかった。これらの事実が示されない限り,原告において反論のしようがない。また,B及びFの供述は信用できないことは明らかであるから,仮に,被告が原告に対し,B報告書(甲12)及びF報告書(甲13)を開示していれば,原告は両名の供述に信用性がないことを指摘することができたが,これらは開示されなかった。以上のことからすれば,原告に対し,本件引退勧告処分に際して,実質的な弁明の機会が与えられていないという重大な手続的違法がある。 (4) 争点(4)(本件解雇事由(協会内の秩序を乱す行為)の存否及び本件解雇処分の効力)について(被告の主張)ア本件解雇事由該当性前記(3)(被告の主張)イ記載の事情(「故意による無気力相撲」を行うことの重大性)に鑑みれば,無気力相撲懲罰規定に基づき下された本件 引退勧告処分に従わなかったことが著しく「協会内の秩序を乱す」(施行細則第92条)行為であることは明白である。 イ本件解雇手続(ア) 本件解雇処分は施行細則第93条に基づくものである。同条に5種の処分事由が規定されていないのは,第92条に5種の処分事由が規定されているからに他ならないから,被告は,同条記載の事由に該当することをもって,第93条に基づき解雇処分を科すことができる。 (イ) 引退勧告処分は名誉を慮って被処分者に対し自らの意思で引退する機会を与える処分であり,処分に従うか否かが被処分者の任意に委ねられた処分ではなく,勧告に従わなかった場合にはその とができる。 (イ) 引退勧告処分は名誉を慮って被処分者に対し自らの意思で引退する機会を与える処分であり,処分に従うか否かが被処分者の任意に委ねられた処分ではなく,勧告に従わなかった場合にはその事実をもって新たな処分を課すことが当然に予定された処分である。仮に,引退勧告処分に従うか否かが被処分者の任意に委ねられた処分であり,当該処分の言渡しをもって処分が完結してしまうとすれば,引退勧告処分は極めて軽微な処分といわざるを得ないが,これは,引退勧告が出場停止と除名の間に位置するかなり重い処分であることと全く相容れない。本件引退勧告処分によって,処分が完結していない以上,本件解雇処分は原告が主張するような二重処罰には当たらない。 (ウ) 被告は,別件仮処分事件において,J委員作成の平成23年5月6日付け事情聴取報告書(以下「5月6日付報告書」という。甲14)と同年4月8日付け事情聴取報告書(以下「4月8日付報告書」という。 甲12)を提出したが,2通の報告書を比較すれば分かるとおり,5月6日付報告書は,4月8日付報告書から,同日以降の事情や他の力士の内容を供述している不要な部分を排除したり,表現を簡潔にしたものにすぎない。 (原告の主張)ア本件解雇事由該当性について (ア) 本件引退勧告処分の内容は,文字どおり「勧告」(あることをするように説きすすめること)(広辞苑による定義)であって,これに従って引退するか否かは原告の任意に委ねるものである以上,原告が本件引退勧告処分に従わなかったことが著しく「協会内の秩序を乱す」行為に当たることはあり得ない。 (イ) 被告は,力士の引退は,師匠である親方の判断に委ねられ,引退届は親方が作成して被告に提出するものである旨主張 とが著しく「協会内の秩序を乱す」行為に当たることはあり得ない。 (イ) 被告は,力士の引退は,師匠である親方の判断に委ねられ,引退届は親方が作成して被告に提出するものである旨主張するところ,かかる被告の見解に立てば,原告の引退に関する判断は,専らその師匠であるA親方に委ねられ,引退届は同親方が作成して提出すべきことになる。 しかるに,被告は,本件において,引退に関する判断権がないはずの原告に対してのみその引退勧告処分をし,また,引退届の提出権がないはずの原告に対してのみその提出を勧告した。判断権のない原告が本件引退勧告処分に従わず,また,提出権のない原告が引退届を提出しない行為が「協会内の秩序を乱す」行為に当たらないことは当然である。 (ウ) なお,被告が,施行細則第92条を根拠に原告を懲戒するためには,①原告に「品行不良」があり,②「協会の秩序を乱し」,③「勤務に不誠実のためしばしば注意するも改めない」ことのすべてを充たす必要があるが,被告は,上記②の事由しか主張しておらず,上記①及び③の要件を欠くことが明らかである。 イ本件解雇処分手続について(ア) 重大な手続的違法がある本件引退勧告処分に従わなかったことを理由とする本件解雇処分はそもそも無効である。 (イ) 使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。しかし,被告が本件解雇処分の根拠とする施行細則第93条は,解雇等5種の懲戒種別を定めてはいるが,懲戒事由は定めていない。また,同第92条は除名の事由を定 めてはいるが,解雇その他の懲戒事由を定めていない。したがって,本件解雇処分は,施行細則第92条及び第93条を根拠としえず,懲戒事由の定めなしに 定めていない。また,同第92条は除名の事由を定 めてはいるが,解雇その他の懲戒事由を定めていない。したがって,本件解雇処分は,施行細則第92条及び第93条を根拠としえず,懲戒事由の定めなしになされた懲戒処分として違法であって無効であることは明らかである。 (ウ) 懲戒処分は,使用者が労働者の行った企業秩序違反行為に対する一種の制裁罰であるから,刑罰に類似し,刑事法に準じる厳格な規制に服するべきものであり,過去において懲戒処分の対象となった行為について重ねて懲戒することはできないし,同行為について反省の態度が見受けられないことだけを理由として懲戒することもできない。 本件において,被告は,無気力相撲懲罰規定を適用して,原告に対し,「故意による無気力相撲」を行ったことを理由に本件引退勧告処分をしたのであって,これにより処分は完結した。原告が同処分に応じて引退届を提出しないことをもって,被告がさらに施行細則第93条により処分をすることは,実質的にみて「故意による無気力相撲」を行ったことを理由とする二重処罰に当たる。このような本件解雇処分は違法であって無効である。そもそも,無気力相撲懲罰規定は,秩序違反行為に関する懲戒処分の一般規定である施行細則に対する特別規定の関係にある。 「故意による無気力相撲」について,施行細則第12条が「懲罰に関しては,理事会の議決を経て,別に定める」とし,これを受けて定められた無気力相撲懲罰規定第5条が「施行細則第88条(現92条)によらず」として,施行細則の適用を排除しているのは,その趣旨を具現したものである。 (エ) 被告は,本件訴訟に先行した別件仮処分事件の第1回審尋期日において,Bの供述内容を疎明する資料として,5月6日付報告書を提出した。本件解雇処分 趣旨を具現したものである。 (エ) 被告は,本件訴訟に先行した別件仮処分事件の第1回審尋期日において,Bの供述内容を疎明する資料として,5月6日付報告書を提出した。本件解雇処分は同年4月14日付けであるから,被告が提出すべき資料は,同処分以前に作成された報告書であり,原告がこの提出を求め たところ,被告は,第2回審尋期日において,4月8日付報告書を提出した。原告において,第2回審尋期日終了後,上記2通の報告書を比較検討した結果,5月6日付報告書は4月8日付報告書の中の被告にとって不都合な部分が選び抜かれて削除された上で作成されたものであることが判明した。第2回審尋期日においては,Bの事情聴取に同席したK弁護士に対する事実上の交互尋問が予定されていた。しかし,前記経過により,原告は,同尋問に際して4月8日付報告書に基づいた効果的な尋問を行えなかった。 被告において,本件解雇処分の効力を左右する4月8日付報告書を意図的に改変し,それを5月6日付報告書を書証として提出した行為は,訴訟上の信義誠実の原則に違反する。同報告書は,別件仮処分事件における主要な証拠であったから,その改変は,裁判所の判断を誤らせ,無辜の原告の力士生命を絶つおそれさえある重大な非違行為であった。 したがって,被告が,本件訴訟において,本件解雇処分の有効を主張することは許されない。 (5) 争点(5)(地位確認の利益及び給与等請求権の存否)について(原告の主張)ア確認の利益本件解雇処分は無効であるから,原告は,被告の幕内力士としての地位を有する。しかし,被告は,本件解雇処分が有効であると主張するから,原告は,上記地位にあることについて確認の利益を有する。 解雇処分は無効であるから,原告は,被告の幕内力士としての地位を有する。しかし,被告は,本件解雇処分が有効であると主張するから,原告は,上記地位にあることについて確認の利益を有する。 イ給与原告は,平成22年9月に幕内に昇進し,本件解雇処分当時も被告の幕内力士として,被告から,給与として月額130万9000円が支給されていた。 ウ力士補助費 十枚目以上の力士には,被告から,力士補助費として,東京本場所1場所につき2万5000円が支給されていた。東京本場所は,毎年1月,5月,9月と4か月毎に開催されている。 エ力士褒賞金十枚目以上の力士には,被告から,力士褒賞金として,各本場所毎に24万円(60円の4000倍)(ただし,本場所相撲の成績に基づき,勝越し1番につき2000円(50銭の4000倍)が加算される。)が支給されていた。本場所は,毎年1月,3月,5月,7月,9月,11月と2か月毎に開催されている。 原告は,平成22年11月は9月場所の勝越し1番分が増額され,24万2000円となり,平成23年1月場所にも1番勝ち越したことから,平成23年3月場所以降の力士褒賞金は2000円増の24万4000円となる。 オよって,原告は,被告に対し,(ア) 原告と被告との間において原告が被告の幕内力士であることの確認,(イ) 給与規定に基づき,a 157万8000円及びこれに対する平成23年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員,b(a) 平成23年6月から本判決確定の日まで毎月末日限り130万90 ,(イ) 給与規定に基づき,a 157万8000円及びこれに対する平成23年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員,b(a) 平成23年6月から本判決確定の日まで毎月末日限り130万9000円,(b) 平成23年7月から本判決確定の日まで2か月毎の各月末日限り24万4000円,(c) 平成23年9月から本判決確定の日まで4か月毎の各月末日限り2万5000円,及び上記(a)ないし(c)の各金員に対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める。 (被告の主張)原告が,原告主張の給与,力士補助費及び力士褒賞金を受領したことは認め,その余は争う。 原告は,相撲社会という実力主義の世界に身を置いていた者である。相撲 社会では,勝てば番付が上がり,負けたり休場すれば番付が下がるのであって,原告が相撲を続けていたとしても幕内力士の地位を死守できた蓋然性は疑わしい。幕内力士としての地位を維持できたかについて立証のない本件において,幕内力士の地位並びにこれに基づく力士補助費及び力士褒賞金を認めることはできない。 第3 判断 1 認定事実前記前提事実,証拠(認定事実に付記したもの。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 相撲の歴史と力士の入門から引退までア相撲は,我が国固有の民族信仰である神道と関係が深く,神話や伝説の中に数多く登場してきた。そして,封建時代における相撲は,武士を鍛錬する技術として広く行われ,江戸時代に入ると,相撲を催して寄進を勧める勧進相撲が盛んに行われた。この勧進相撲が現代の相撲社会の基礎となる。そして,相撲社会(被告)は,本場所興行や地方巡業において収益を確保し,その収益を興行・巡業参加者に分配して成り立っ 寄進を勧める勧進相撲が盛んに行われた。この勧進相撲が現代の相撲社会の基礎となる。そして,相撲社会(被告)は,本場所興行や地方巡業において収益を確保し,その収益を興行・巡業参加者に分配して成り立ってきた。 イ力士を志望する者は,師匠を経て,被告に力士検査届を提出し(施行細則第62条),被告の検査に合格した者が力士として登録され(施行細則第3条1項,第60条),当該師匠の下で養成されることになる(施行細則第63条)。 ウ力士養成員は,師匠の指示に従い稽古に励み,相撲部屋に住み込んで生活する。力士養成員の番附が十両以上になると関取として一人前の力士として認められる。師匠には,被告から,力士養成員の養成にかかる費用や,十枚目以上の力士を養成した場合には力士の番附に応じた養成奨励金がそれぞれ支給される(施行細則第63条,給与規定第15条,第18条)。 また,被告は,師匠に対し,相撲部屋維持費等を支給することができる (給与規定第16条等)。師匠は,これら受領した力士養成費用等について,相撲部屋単位で税務申告をする。 エ力士が引退する場合は,師匠が当該力士の引退届を被告に提出し,これにより当該力士は引退扱いとなり,番附から外されて相撲を取ることができなくなる。師匠が弟子の引退届を提出するか否かは,師匠が当該力士の資質や技術をみて判断するものとされており,師匠が引退届を出すに当たって,当該力士の承諾は不要である。実際,被告において用いられている力士の引退届(乙7)には,親方の署名押印欄はあるが,力士本人の署名押印欄は設けられていない。 (2) 力士と被告の関係ア力士は,被告に所属し(寄附行為第36条1項,施行細則第60条),相撲道に精進し(寄附行為第36条7項),協会の目的に鑑み,一層相撲の ない。 (2) 力士と被告の関係ア力士は,被告に所属し(寄附行為第36条1項,施行細則第60条),相撲道に精進し(寄附行為第36条7項),協会の目的に鑑み,一層相撲の研究練磨に努め,人格を陶冶し,真に協会員であることを認識し,その名を辱めないよう心がけねばならない(施行細則第54条)。また,被告には,力士の生活指導のため,生活指導部がおかれている(施行細則第6条)。力士は,被告に所属する年寄(全年寄は,被告理事長の指示に従い,協会事業の実施にあたる(施行細則第47条)。)が運営する相撲部屋に帰属し,力士の養成・教育・給与等にして特に施行細則に定めのないものは,師匠において処理する(施行細則第68条)。そして,施行細則には,被告の秩序を乱した力士に対する懲罰規定が設けられている(第92条ないし第94条)。 イ被告は,事業として力士の相撲競技を公開実施しているところ,被告に所属する力士について,寄附行為や施行細則上,力士が本場所相撲や地方巡業に出場する義務を直接に定め,強制する規定はない。しかし,前記アの諸規定及び弁論の全趣旨によれば,力士は,何らの正当理由なく自らの意思で本場所相撲や地方巡業を欠場することは許されていないものと認識 されており,それらの相撲への参加を事実上義務付けられているといえる。 また,相撲競技は,相撲規則等の厳格なルールに従って執り行われ,力士はそれに拘束されて競技を行わなければならない(附属規定の相撲規則(甲3の1))。 ウ力士は,有給とされ(寄附行為第36条8項),十枚目以上の力士に対してはその番附上の地位に応じて定額の月給と諸手当が支払われる(給与規定第8条,第25条,第26条)。そして,力士の番附は,被告の番附編成会議において作成され,階級 6条8項),十枚目以上の力士に対してはその番附上の地位に応じて定額の月給と諸手当が支払われる(給与規定第8条,第25条,第26条)。そして,力士の番附は,被告の番附編成会議において作成され,階級順位の昇降は本場所の勝ち星により決定される。また,幕内・十枚目の力士の番附員数はそれぞれ42名以内・28名以内と定められている(附属規定の番附編成要領(甲3の1))。 エ被告は,健康保険法に基づき,同法適用の事業所として日本相撲協会健康保険組合を組織している。そして,力士を適用事業所に使用される者として同保険の被保険者とし,同健康保険組合による保険給付等に充てるため,力士の給与から健康保険料を控除している。また,被告は,厚生年金保険法に基づき,同法適用の事業所として,力士を適用事業所に使用される70歳未満の者として,同保険の被保険者とし力士の給与から年金保険料を控除している。しかし,力士に労災保険,雇用保険は適用されない。 (甲5,16)(3) 原告の成績等(乙4の1ないし3,乙29,原告本人)ア原告は,平成15年8月,被告により力士として採用され,初土俵から1年後の平成16年11月場所に幕下に昇進し,平成21年には幕下で6場所連続して勝ち越し,平成22年1月場所に十両に昇進した。 イ原告は,平成22年1月場所は9日目にBと対戦して勝利し(本件1月場所取組),同場所は9勝6敗で勝ち越し,同年3月場所も8勝7敗で勝ち越した。同年5月場所は11日目にBと対戦して勝利し(本件取組),同場所は8勝7敗で勝ち越した。その後,同年7月場所に8勝7敗で勝ち 越し,同年9月場所に西前頭▲枚目に昇進して幕内力士となった。同場所は,8勝7敗で勝ち越し,同年11月場所は6勝9敗で負け越したが,平成23年 勝ち越した。その後,同年7月場所に8勝7敗で勝ち 越し,同年9月場所に西前頭▲枚目に昇進して幕内力士となった。同場所は,8勝7敗で勝ち越し,同年11月場所は6勝9敗で負け越したが,平成23年1月場所は8勝7敗で勝ち越した。 (4) 事実経過等ア特別調査委員会の設置まで(ア) 昭和47年1月,無気力相撲懲罰規定が施行された。(甲3の1)(イ) 平成19年4月13日付けで,被告及びBを含む力士15名は,「L」平成19年2月3日号,同月10日号,同月17日号における上記被告らに関する記事が,平成19年初場所時における幕内力士のうちMら12名を除く全ての力士が八百長をしていると見る者をして誤解せしめるものであって,上記被告らの名誉を毀損するものであるなどとして,Nらを被告として,損害賠償請求訴訟を提起した。Bは,同訴訟において,「私は,八百長をしているかのように思われてしまい,私の名誉は大きく傷ついた。」旨の陳述書を提出した。(甲25,26)(ウ) 東京地方裁判所は,上記訴訟と同旨の別件訴訟とを併合の上,平成21年3月26日,名誉毀損事実が真実であることを認めるに足りる証拠はないなどとして,被告ら(上記訴訟における原告ら)の請求の一部を認容する旨の判決をした。同判決について,上記訴訟の被告であるNらが控訴をしたが,東京高等裁判所は,同年12月16日,同控訴を概ね棄却する旨(認容金額には一部変更がある。)の判決をした。同判決について,上告及び上告受理申立てがされたが,最高裁判所は,平成22年10月14日に上告不受理決定を,同月21日に上告棄却及び上告却下判決をした。(甲27ないし30)(エ) 警視庁の野球賭博における捜査の過程で力士の携 ,最高裁判所は,平成22年10月14日に上告不受理決定を,同月21日に上告棄却及び上告却下判決をした。(甲27ないし30)(エ) 警視庁の野球賭博における捜査の過程で力士の携帯電話から「故意による無気力相撲」が行われていたことを疑わせる内容のメールが発見されたことなどから,被告は,平成23年2月2日,特別調査委員会を 設置し,同委員会に対し「故意による無気力相撲」問題についての調査を依頼した。(甲7)イ特別調査委員会における調査の概要及び調査結果等(乙2,3)(ア) 警視庁は,被告に対し,野球賭博問題で押収した携帯電話から「八百長」を窺わせるメールのやりとりがあったことの情報を提供した。その際の該当者としては,①解析された携帯電話所有者として「BとE」,②携帯電話でのメールのやりとりの当事者として「O,F」,③携帯電話でのメールのやりとりに出てくる力士として「Pほか8名」(この中に原告は含まれていない。),④携帯電話でのメールのやりとりの中に名前は出ていないが,メールの内容から「八百長」への関与が疑われる力士として「Q」が記載されていた。 (イ) 平成23年2月2日,第1回特別調査委員会が開催され,上記(ア)①②③の13名と臨時理事会で名前の出た「R」の合計14名について,同月3日から事情聴取を開始することとした。 (ウ) 同月5日,第2回特別調査委員会が開催され,同委員会は,B,F,E及びOの4名について「故意による無気力相撲」に関与したと認定し,その後,前記14名に加えて平成21年11月場所から平成23年1月場所までの間に関取であった全員及びFの合計92名を対象とした事情聴取を開始した。 (エ) 同月14日に第3回特別調査委員会 定し,その後,前記14名に加えて平成21年11月場所から平成23年1月場所までの間に関取であった全員及びFの合計92名を対象とした事情聴取を開始した。 (エ) 同月14日に第3回特別調査委員会が,同月21日に第4回特別調査委員会が,同年3月4日に第5回特別調査委員会が,同月18日に第6回特別調査委員会が,同月23日に第7回特別調査委員会が,同月25日に第8回特別調査委員会が,同年4月1日に第9回特別調査委員会がそれぞれ開催され,同委員会にて第1次報告内容が決定され,その内容は,同日開催された被告の臨時理事会に「特別調査委員会第1次報告書」(以下「第1次報告書」という。乙2)として報告 された。 (オ) 第1次報告書による力士に対する処分案の概要は以下のとおりである。 a 処分の根拠規定無気力相撲懲罰規定b 懲罰内容原則として引退(退職)勧告,関与を自認した3名については出場停止2年間c 懲罰内容を決定した理由(要旨)(a) 八百長問題については,かねてから様々指摘があったにもかかわらず,相撲協会として自浄作用が働かず,今回の事態に至った経過に鑑みると,関与した力士やその師匠の責任より,組織としての相撲協会の責任が最も重い。 (b) そのため,実行行為者である力士については除名としないが,大相撲に対する信頼を大きく損なった責任を考えると,相撲協会に残す余地はなく,反省することなく否認を続ける者については,除名の次に重い懲罰である引退勧告以外選択の余地はない。B,E及びFは,自らの行為を反省し,事案の解明に協力した事情を考慮して出場停止2年とした。 d 処分対象者と処分案(a) B,E,Fは出場停止2年(b) Hほか19 ,E及びFは,自らの行為を反省し,事案の解明に協力した事情を考慮して出場停止2年とした。 d 処分対象者と処分案(a) B,E,Fは出場停止2年(b) Hほか19名は引退勧告(カ) 特別調査委員会は,4月1日後の継続調査により「故意による無気力相撲」への関与を認めることができたとして,平成23年4月9日,「特別調査委員会第2次報告書」(以下「第2次報告書」という。 乙3)を作成した。 (キ) 第2次報告書は,継続調査となった原告とIに関するものであり,両名ともに「故意による無気力相撲」を行ったものと認定すべきであり,その処分案は,引退勧告が相当であるというものであった。 ウ Bら23名に対する処分被告は,平成23年4月1日,Bら23名に対し,前提事実(6)記載のとおりの処分をした。 エ本件引退勧告処分及び本件解雇処分被告は,平成23年4月11日開催の緊急理事会において,特別調査委員会の前記報告に基づき,原告に対し,本件引退勧告処分をし,その際,口頭で,同月13日までに引退届を提出すれば退職金を支給するが,提出しなければさらに重い処分をすると告げた。そして,同日までに引退届が提出されなかったことから,同月14日,原告を本件解雇処分とした。 (5) 関係者の報告書の記載及び供述内容等ア J委員作成の報告書等により認められるBの供述内容等J委員は,Bから平成23年2月3日を初回として,同年4月14日まで11回にわたり事情聴取(うち1回は電話による。)しているところ,同委員作成の平成23年4月8日付け「事情聴取報告書」(乙15),同年5月6日付け「事情聴取報告書」(乙16)及び平成24年5月7日付け陳述書(乙27)並び うち1回は電話による。)しているところ,同委員作成の平成23年4月8日付け「事情聴取報告書」(乙15),同年5月6日付け「事情聴取報告書」(乙16)及び平成24年5月7日付け陳述書(乙27)並びに同委員の証言によれば,BのJ委員に対する供述内容等として,以下の事実が認められる。 なお,Bは,前記のとおり,特別調査委員会において事情聴取を受けた際,供述書への署名を拒否したことから,同人作成の供述書は存在しない。 また,当審において証人として採用され,2回にわたり呼出しがされたが,出頭せず,その際,病気により,証人としての裁判所出廷は不可能である旨の医師の診断書を提出している。 (ア) 第1回事情聴取(平成23年2月3日)の際,Bは,過去に「故意 による無気力相撲」に関与した力士として,原告を含む17名らの力士の名前を挙げた。 (イ) 第4回事情聴取(同年2月11日)の際,Bは,平成22年1月場所に関し,9日目の原告との取組(本件1月場所取組)を含む4件の取組について,「故意による無気力相撲」であると断言した。また,Bは,同年3月場所における「故意による無気力相撲」について供述するとともに,同年5月場所について,本件取組を含む8件について「故意による無気力相撲」であったと述べた。 (ウ) 第5回事情聴取(同月17日)の際,Bは,前回までの聴取内容をまとめた供述書への署名を拒否した。 (エ) 第7回事情聴取(同年3月10日)の際,J委員は,Bに対し,「故意による無気力相撲」を行っていた力士との間の特徴的なエピソードがあれば教えて欲しいと促したが,Bは,普段から「故意による無気力相撲」を行っているグループの力士との取組が当たった場合,当然のように故意に る無気力相撲」を行っていた力士との間の特徴的なエピソードがあれば教えて欲しいと促したが,Bは,普段から「故意による無気力相撲」を行っているグループの力士との取組が当たった場合,当然のように故意による無気力相撲を行うのがほとんどであって,特筆すべきような事柄はないのが通常であると述べた。 (オ) 第8回事情聴取(同月16日)の際,Bは,取組の映像を記録したDVDを見ながら「故意による無気力相撲」かどうかの確認をした。原告との2回の取組についてDVDで確認した際,本件1月場所取組はガチンコの取組であったことを思い出し,また,本件取組は,原告が「故意による無気力相撲」を頼んできたものであると述べた。 (カ) 同年4月5日,J委員は,Bに架電し,原告との取組について,本件取組のみが星のやり取りをしたものであるなら,Bの原告に対する貸しが残るはずであるが,いかに精算したのかということを確認したところ,Bは「星は買い取ってもらった」と回答し,お金は,Bの誰かに対する借りを返すのに充てるため,Fに仲介したもらったと回答した。 イ S特別調査委員(以下「S委員」という。)作成の報告書により認められるFの供述内容等S委員は,Fから平成23年2月3日を初回として,同年3月31日まで7回にわたり事情聴取(うち1回は電話で聴取)しているところ,同委員作成の平成23年4月8日付け「事情聴取報告書」(甲13,乙17)によれば,FのS委員に対する供述内容等として,以下の事実が認められる。 (ア) 第1回事情聴取(平成23年2月3日)の際,Fは,「故意による無気力相撲」への関与を認め,そのやり方等について述べた。 (イ) 第3回事情聴取(同月16日)の際,F (ア) 第1回事情聴取(平成23年2月3日)の際,Fは,「故意による無気力相撲」への関与を認め,そのやり方等について述べた。 (イ) 第3回事情聴取(同月16日)の際,Fは,第1回及び第2回の事情聴取の結果を記載した供述書に署名した。 (ウ) 第4回事情聴取(同月19日)の際,Fは,場所は特定できないが「故意による無気力相撲」に関与した力士として原告を含む9名の名前を挙げた。 (エ) 第5回事情聴取(同月26日)の際,Fは,「故意による無気力相撲」に関与した力士として,新たに4名の名前を挙げた。 (オ) 第6回事情聴取(同年3月16日)の際,Fは,供述書への署名を拒否した。 (カ) 同月31日,Fに架電し,原告の「故意による無気力相撲」への関与について確認したところ,Bとの間の仲介等をした記憶はなく,また,いつ誰との取組であるか覚えてはいないが,原告について仲介等したことは間違いがないと明確に述べた。 ウ Fの当審における供述内容Fの当審における証人尋問の際の供述内容は,概ね以下のとおりである。 (ア) 「故意による無気力相撲」の仲介を行う場合,メール,電話,本人との面談の方法による。その精算は,基本的には星の貸し借りで行い, 3人とか4人のグループで行うことが多かった。お金で精算することはとても少ないが,そのようなこともあった。 (イ) 平成23年3月30日,Iが処分されないことが分かると,Iについて,OとEの三者の回しであることを自発的にS委員に話したが,これは,引退勧告処分になる力士らの名前,そして,取組が特定できないのでIに処分が下せないということ聞いて,不公平だと感じたか ,Iについて,OとEの三者の回しであることを自発的にS委員に話したが,これは,引退勧告処分になる力士らの名前,そして,取組が特定できないのでIに処分が下せないということ聞いて,不公平だと感じたからである。その際,原告についての話は聞いていない。 (ウ) 原告の「故意による無気力相撲」については,5回以上あり,電話や支度部屋で話をしたことがある。原告の携帯電話の番号が私の携帯電話に登録されている。初めて知ったのは平成22年1月頃だと思う。仲介した取組の相手方については,そうではないかと思う人がいるが,その人たちが全員処分を認めていないので,これ以上は言えない。本件取組について仲介したかどうかはどっちとも言えない。 (エ) 平成22年5月場所に,Bの星の貸借の精算をしたかについては記憶がないので何とも言えない。原告からお金をもらったことは1回もない。 (オ) 「故意による無気力相撲」は助け合い,共存共栄ということである。無気力相撲をやっていけば,大負け大勝ちをせず,うまくいけば上がっていけるという一種の保険みたいな感じである。記憶では,私が思っている「故意による無気力相撲」に関与した力士より,今回処分された力士は少ない。 エ原告の供述内容原告の当審における本人尋問の際の供述内容は,概ね以下のとおりである。 (ア) Bとは,本件1月場所取組と本件取組の2回対戦しているが,やりやすい相手であった。 (イ) 携帯電話と預金通帳は,第1回事情聴取の際に調査委員に見せた。 携帯電話にBやFのメールアドレスや電話番号を登録したことはなく,メールや電話で連絡したこともない。Fの顔は知っていた。Fが自らの携帯電話に私の電話番号を登録していると述べていることについて せた。 携帯電話にBやFのメールアドレスや電話番号を登録したことはなく,メールや電話で連絡したこともない。Fの顔は知っていた。Fが自らの携帯電話に私の電話番号を登録していると述べていることについて心当たりはなく,電話番号を教えたこともない。 (ウ) 第2回事情聴取の際に調査委員から八百長に関与していると言われた。第3回事情聴取の際にBとの取組が問題となっていると聞かされてびっくりした。入門以来八百長をやったことはない。 (エ) 平成23年2月以前,他の力士が「故意による無気力相撲」を行っているという噂を聞いたことはない。八百長という言葉を聞いたのは,Tの事件が問題となったときが最初である。 (6) 無気力相撲懲罰規定による処分等無気力相撲懲罰規定は,昭和47年1月に施行されているが,本件まで,同規定第4条に基づく提出行為はなく,また,同規定第6条に基づき処分された例はなかった。なお,被告は,同条(平成23年4月改定前)の5段階の処分につき,いかなる処分を選択するかについては,「「故意による無気力相撲」に至る経緯及びその結果等の事情を総合的に勘案する。」としている。(弁論の全趣旨,被告の平成24年11月27日付準備書面) 2 争点(1)(本件契約の性質)について(1) 相撲は,個々の力士が相撲道に精進することによって培った技量を本場所相撲等において発揮することを本質的な内容とするものであり,本件契約に関しても,力士が,被告に対して,相撲競技の公開実施に際し,相撲道に精進することによって培った個々の技量を相撲により発揮する義務を負い,他方,被告が,力士に対し,その対価として給与等を支払う義務を負うことが中核的な要素とされているとみるのが相当である。その意味において,本件契約に,力士が, 々の技量を相撲により発揮する義務を負い,他方,被告が,力士に対し,その対価として給与等を支払う義務を負うことが中核的な要素とされているとみるのが相当である。その意味において,本件契約に,力士が,被告から,そのような事務を委任されているという側面 がないわけではない。 (2) しかしながら,本件契約に関しては,上記要素にとどまらず,被告が,相撲競技の公開実施等のために必要な人的物的設備を提供するといった要素もあるほか,力士は,被告との契約に伴い,部分社会を形成する組織体である被告の構成員としての身分,地位を取得,保持し,被告から協会事業の実施にあたる者として指示を受ける年寄の運営維持する相撲部屋に住み込んで,生活指導も含めてその指導を受け,被告作成の服務規定の下,その規律にも服する(なお,その違反等については懲罰規定もある。)という要素も有しており,この点においては力士は被告の組織に組み込まれているといえるし,しかも,こうした点は,力士と年寄,ひいては被告との間の信頼関係を基礎に,継続的,集団的に行われている。 このように,本件契約は,取引法原理になじみ難い側面も含む複合的な要素を有するものであると指摘することができる。これらの点に,そもそも相撲自体は古代からあり,また,江戸時代の勧進相撲が現代の相撲社会の基礎をなしているという相撲の歴史,すなわち,力士と被告の関係(相撲部屋制度,師匠との関係も含む。)は,民法制定以前から存在する関係が基本となっていると考えられることも併せ考慮すると,本件契約が,原被告主張のように,当然に民法の典型契約である雇用契約や準委任契約に該当するものであるとみることは困難であり,むしろ,上記の点に照らせば,本件契約は,有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約と解するのが うに,当然に民法の典型契約である雇用契約や準委任契約に該当するものであるとみることは困難であり,むしろ,上記の点に照らせば,本件契約は,有償双務契約としての性質を有する私法上の無名契約と解するのが相当である。 3 争点(2)(本件契約が準委任契約であることを理由とする解除の成否)について被告は,民法656条,651条1項に基づき,いつでも本件契約を解除することができ,また,準委任契約は,信頼関係を前提にしているから,信頼関係が破たんした場合には契約の解除を広く認めるべきである旨主張する。 確かに,本件契約に,力士が,培った技量を相撲により発揮する責務を負っているという点において,被告から事務を委任されているという側面がないわけではないことは前示のとおりである。しかしながら,本件契約が上記のとおり他の諸要素も含有するものと認められ,しかも,こうした点が,年寄や被告との間の信頼関係を基礎に,継続的,集団的に行われていることに照らすと,直ちに民法656条,651条1項が適用されるとみるには沿わない側面があるともいえる。 また,前記認定のとおり,被告は自ら,施行細則第92条,第93条及び無気力相撲懲罰規定等において,契約関係消滅事由を定め,これに基づき,力士との間の継続的・集団的関係を規律しているのであって,これらによらずして,自由に,あるいは広く信頼関係の破たんを理由として,本件契約を解除できるとすることは,そもそも契約当事者の合理的意思に沿わないものであるともいわざるを得ない(なお,力士が被告から解雇された場合,以後,力士を職業とする手立てがあるとは思えない。)。 してみると,本件契約に被告主張のような準委任契約としての要素があることは否定できないにしても,本件契約に前記民法の規 された場合,以後,力士を職業とする手立てがあるとは思えない。)。 してみると,本件契約に被告主張のような準委任契約としての要素があることは否定できないにしても,本件契約に前記民法の規定の適用があるとするのは相当ではなく,この点に関する被告の主張は採用することができない。 4 本件における規範の適用上記3のとおり,本件契約について,民法656条,651条1項による解除ができると解することは相当ではない。そして,被告において,施行細則及び附属規定中に,無気力相撲懲罰規定を含め懲罰規定を設け,これに基づき,力士との継続的・集団的関係を規律してきたことは前示のとおりであり,かかる制裁規定の内容は力士と被告との間の契約の構成要素となっていたものともみることができるから,本件においても,これらの規定に基づき,本件請求の当否の判断を行うこととする。 なお,原告は,本件契約に解雇権濫用法理の適用があり,その解除には,解 雇に値する客観的に合理的な理由と適正な解雇手続の履践が必要であると主張するところ,本件契約が労働契約そのものであるとみることはできず,同法理の適用があるとまではいえない。しかし,前記認定にかかる力士と被告の関係及び上記規定に基づく契約の解消が懲戒処分として行われることからすると,上記懲罰規定の解釈適用に当たって,あらかじめその事由及び手続が規定上明確に定められていることや一事不再理の禁止,また,その処分の内容が相当なものであること等,懲罰規定の解釈,判断における一般的な法理が考慮されるべきことは当然であると考えられ,この限度では原告の主張は理由がある。 そこで,以上の見地から,以下,本件請求の当否について検討する。 5 争点(3)(本件引退勧告事由(故意による無気力相撲)の存否及び本件引退勧告 この限度では原告の主張は理由がある。 そこで,以上の見地から,以下,本件請求の当否について検討する。 5 争点(3)(本件引退勧告事由(故意による無気力相撲)の存否及び本件引退勧告処分の効力等)について(1) 本件引退勧告事由の存否についてア本件取組内容について被告は,本件取組の内容それ自体が「故意による無気力相撲」であることを裏付けると主張し,この主張に沿う証拠として被告協会員(親方)(その名前は明らかではない。)の意見を聴取した被告訴訟代理人作成の報告書(乙13)を提出する。しかし,同報告書は,「Bは取組に力が入っていない印象を受ける」,「本件取組が「故意による無気力相撲」の疑いが強いという認識で確認すると,具体的には以下の点が不自然である。」として4点を指摘するものではあるが,本件取組が「故意による無気力相撲」であると断言するものではなく,そもそも,その内容からして上記の点に関する証明力が高いものとはいい難い。そして,原告自らが本件取組を説明する旨の供述(甲21,原告本人)も直ちに不合理なものとまではいい難く,また,本件取組の映像(甲11の2)だけからは,当裁判所において上記の点を判断し難いことからすれば,本件取組内容(映像)が本件取組が「故意による無気力相撲」であることを裏付けているも のとはいえない。 イ J委員の供述等(Bの供述)(ア) 前記認定のとおり,本件取組の相手方であるBは,J委員からの事情聴取に際して,本件取組が「故意による無気力相撲」である旨供述したことが認められる。 そして,同供述は,原告が「故意による無気力相撲」に関与している旨述べるFの供述にも沿うものであるとはいえる。 (イ) しかし,上記 無気力相撲」である旨供述したことが認められる。 そして,同供述は,原告が「故意による無気力相撲」に関与している旨述べるFの供述にも沿うものであるとはいえる。 (イ) しかし,上記供述に関しては,以下のような疑問点等もある。 aBは,当初,本件1月場所取組が「故意による無気力相撲」と断言し,また,本件取組も「故意による無気力相撲」であると供述していたにもかかわらず,途中から,本件取組だけが「故意による無気力相撲」であると供述を変遷させているところ,わずか2回しかなかった原告との取組について,その供述を変遷させることは,その供述の信用性自体に疑問を生じさせる。 b 本件取組が「故意による無気力相撲」であるとすれば,そのための打合せや,見返りに関するやりとりを伴うことになると思われるが,この点に関するBの供述は,「故意による無気力相撲」は原告から依頼してきたものであるなどと述べるにとどまるものであり,原告がどのような経過で依頼し,いつどのような場所で打合せがされたかなど,具体的供述を伴うものではない。また,Bは,星は買い取ってもらい,お金は,Bの誰かに対する借りを返すのに充てるため,Fに仲介したもらったと回答しているが,本件取組に関して原告から金銭が支払われたと認めるべき証拠もない。むしろ,前記のとおり,Fは,平成23年3月31日,S委員に対して,原告の「故意による無気力相撲」について,「Bとの間の仲介等をした記憶はない」と返答しており,当初から本件取組に係る仲介については否定的供述をしていた上,当 審における証人尋問においても本件取組を仲介したことを認める旨の供述をせず,また,原告からお金をもらったことは1回もない旨供述している。結局,上記Bの供述を裏付ける証拠はなく,また いた上,当 審における証人尋問においても本件取組を仲介したことを認める旨の供述をせず,また,原告からお金をもらったことは1回もない旨供述している。結局,上記Bの供述を裏付ける証拠はなく,また,同供述はFの供述と主要な点で整合しないというほかない。この点,被告は,Bが他にも多数,「故意による無気力相撲」に関与していたことや,Bが,本件取組に関して,原告は十両に上がってきたばかりなのにこのような依頼をされて驚いたことを覚えている旨供述していることを指摘して,これらの点からするとBの供述の信用性がないということにはならない旨主張する。しかし,その主張を考慮しても,本件取組が「故意による無気力相撲」であったことを裏付ける客観的資料が何らなく,かえって,上記のとおりFの供述に沿わない部分があることは,その供述の信用性を損なうものであることは否定できない。 cBは,「故意による無気力相撲」について,相手方として20名以上の名前を,また,多数の取組を挙げているところ,一般的にいえば,そのような多数の名前や取組を挙げた場合において,人物を間違えたり,間違えた取組を指摘する可能性がないとはいえない。 d 本件取組に関して,B作成の書面は存在せず,また,同人は当審において証人として呼出しを受けても出頭しないから,同人の陳述書も証言も存在しない。そして,Bが供述したとされる内容について,原告において,Bに対して反対尋問をするなどその内容を検証する機会がなく,その限度で上記供述の信用性は減殺される。 e 被告は,Bに,あえて虚偽供述をして原告を貶める動機がないなどとも主張する。一般的にいえば,そのようにみることもできるが,上記a ないしc の疑問点ないし問題点もあることにも照らすと,この点から直ちに本件取 に,あえて虚偽供述をして原告を貶める動機がないなどとも主張する。一般的にいえば,そのようにみることもできるが,上記a ないしc の疑問点ないし問題点もあることにも照らすと,この点から直ちに本件取組が「故意による無気力相撲」であることを述べるBの供述が信用できるということにはならない。 ウ Fの供述等(ア) 前記認定のとおり,Fは,当審において,原告が「故意による無気力相撲」を5回以上行ったことがある旨供述し,Fの携帯電話には原告の携帯電話の電話番号(この番号が原告のものであることは原告も自認している(乙26,原告本人)。)が登録されていたことが認められるところ,上記Fの供述について,原告の指摘を踏まえても,特段その信用性に疑問が生じるべき事情はうかがわれず,また,上記電話番号が登録されていたことについて,原告において合理的な説明をなしえていないことからすれば,一般的にいえば,原告が「故意による無気力相撲」に関与したことがある可能性は高いといえる。 (イ) しかしながら,Fは,原告と同じく特別調査委員会による調査が継続されたIについては,「Iは取組が特定できないので処分が下せないと聞いて不公平だと感じ」,Iの「故意による無気力相撲」を特定して特別調査委員会に供述し,また,Iが提起した地位確認訴訟においても,証人として,「故意による無気力相撲」が行われるに至った経過も含め詳細に供述している(乙21,28)にもかかわらず,本件取組については,前記のとおり,S委員に対しては「仲介等した記憶はない」と返答し,当審の証人尋問においても本件取組を仲介したとは供述していない。また,原告とFが何らかの特別の関係にあったことを窺わせる証拠もない。そうすると,前記Fの供述を本件取組が「故意による無 い」と返答し,当審の証人尋問においても本件取組を仲介したとは供述していない。また,原告とFが何らかの特別の関係にあったことを窺わせる証拠もない。そうすると,前記Fの供述を本件取組が「故意による無気力相撲」であることを裏付ける証拠の一つであるとはいえても,その証拠価値には自ずから限界がある。この点において,原告の事案とIの事案とでは事情が明らかに異なる。Fは,Iの事案については,I,E及びOの三者で星を回す「故意による無気力相撲」であった旨供述しているところ,仮に,本件取組が三者間で何らかの精算が予定される「故意による無気力相撲」であって,FがB及び原告以外の三番目の力士の名前を 挙げたくないがために,本件においてI事案のような供述をしていない可能性もまったく考えられないではないが,それは一つの推測にすぎず,このことを裏付ける証拠はない。 エ原告の供述等前記のとおり,原告は入門以来「故意による無気力相撲」に全く関与したことはない旨供述するが,この点については,前記のとおり,これに反するFの供述に照らして信用し難い。しかし,本件は,本件取組が「故意による無気力相撲」であると認められるかどうかが問題となっているのであり,前記したところから直ちに,本件取組が「故意による無気力相撲」ではない旨の原告の供述について信用性に欠けるとまではいえない。 オまとめ前記のとおり,本件取組内容からはこれが「故意による無気力相撲」かどうかは明らかではないというほかはない。そして,BがJ委員に対し,「故意による無気力相撲」に関与した力士として原告の名前を挙げ,本件取組が上記相撲であると述べたことは認められるが,Bは,原告との間の「故意による無気力相撲」の特定についてその供述を変遷させてい ,「故意による無気力相撲」に関与した力士として原告の名前を挙げ,本件取組が上記相撲であると述べたことは認められるが,Bは,原告との間の「故意による無気力相撲」の特定についてその供述を変遷させていること,本件取組に関する供述内容が具体性を欠いていること,Fの仲介により星を買い取ってもらった旨供述するが,この点を裏付ける何らの証拠もなく,また,Fは仲介したことを否定する旨の供述をしていることなど,Bの供述中,本件取組が「故意による無気力相撲」であるとする点に関する部分には多くの疑問点があるといわざるを得ない。また,Fの供述中,同人が原告による「故意による無気力相撲」を仲介したことがあるという部分についてその信用性を疑うべき事情はないが,Fは,そもそも原告とB間の「故意による無気力相撲」の仲介をした記憶がない旨の供述をしている。 そして,他に,本件取組が故意による無気力相撲であることを窺わせる有力な証拠がないことからすれば,結局のところ,原告が過去に「故意によ る無気力相撲」に関与したことは窺えるものの,本件各証拠から本件取組が「故意による無気力相撲」であったと認めるには十分ではないというべきである。 (2) 本件引退勧告処分手続についてア原告は,本件引退勧告処分手続に関して,監察委員会が関与していない違法があると主張するが,無気力相撲懲罰規定の制定権は被告理事会にあると考えられる(寄付行為第48条,施行細則第1条,第2条)ところ,被告は,平成23年2月2日に開催された臨時理事会において,特別調査委員会を設置することとし,「故意による無気力相撲」問題の調査を同委員会に一任することを決定し,同委員会の調査結果に基づいて本件引退勧告処分をしたことが認められる(甲3の1,乙2,3)。したがって,同処分に至る手続 ととし,「故意による無気力相撲」問題の調査を同委員会に一任することを決定し,同委員会の調査結果に基づいて本件引退勧告処分をしたことが認められる(甲3の1,乙2,3)。したがって,同処分に至る手続において監察委員会が関与していないことを違法ということは相当ではない。 イ原告は,本件引退勧告処分に当たり,原告に対して実質的な弁明の機会が与えられていなかったと主張するが,特別調査委員会は,平成23年2月12日,同年3月1日,同月10日及び同年4月7日,「故意による無気力相撲」に関して,原告に対する事情聴取を行ったことが認められるところ,それらにより実質的な弁明の機会が与えられたというべきであり,その手続を違法ということはできない。 6 争点(4)(本件解雇事由(協会内の秩序を乱す行為)の存否及び本件解雇処分の効力)について当裁判所は,前記のとおり,本件引退勧告事由を認めることができないと判断するが,仮に,本件引退勧告事由が存したとした場合の本件解雇事由の存否及び同処分の効力について,以下に検討する。 (1) 本件解雇事由の存否についてア前記認定のとおり,被告は,原告に対し,平成23年4月11日,本件 引退勧告処分をし,さらに,同月13日までに引退届が提出されないことが「協会内の秩序を乱す」行為であるとして,施行細則第93条に基づき本件解雇処分をしたことが認められる。しかし,「勧告」とは通常の意味において「ある事をするように説きすすめること」(広辞苑),「そうした方が身のためだということを公的な立場から勧めること」(新明解国語辞典)であって,強制や命令の意味を含むものでないことは明らかである。 そうすると,言葉の意味からすれば,引退勧告に応じない事態は通常想定されるところであり,引退勧告に応じ ら勧めること」(新明解国語辞典)であって,強制や命令の意味を含むものでないことは明らかである。 そうすると,言葉の意味からすれば,引退勧告に応じない事態は通常想定されるところであり,引退勧告に応じないことをもって直ちに施行細則第92条の「協会内の秩序を乱す行為」に当たるということは相当ではない。 この点について,被告は,引退勧告処分は名誉を慮って被処分者に対し自らの意思で引退する機会を与え,「引退勧告処分に従うか否かが被処分者の任意に委ねられた処分ではなく,勧告に従わなかった場合にはその事実をもって新たな処分を課すことが当然に予定された処分である」旨主張する。しかし,前記のとおり,「勧告」の意味からしてそのようにいえるかは疑問であるし,無気力相撲懲罰規定等,被告の諸規定の各文言からすれば,その旨が規定されているとは理解することができない。また,引退勧告処分が規定されているのは,無気力相撲懲罰規定と行司懲罰規定であり(施行細則にはない。),前記認定のとおり,本件解雇処分時までに無気力相撲懲罰規定第6条に基づく処分がされた例はなかったというのであるから,「引退勧告処分に従うか否かが被処分者の任意に委ねられた処分ではなく,勧告に従わなかった場合にはその事実をもって新たな処分を課すことが当然に予定された処分である」との認識が被告内において周知されていたとも認め難く,引退勧告処分に応じて引退届を提出しないことが直ちに「協会内の秩序を乱す行為」に当たると認めることは困難である(無気力相撲懲罰規定における引退勧告処分は,いわゆる諭旨解雇処分と類似する面があるが,後者について,その内容は一義的ではないものの, 通常,一個の処分であって退職勧奨に応じないことそれ自体が処分事由とされているわけではないこと,退職勧奨に応じない場合には懲戒 類似する面があるが,後者について,その内容は一義的ではないものの, 通常,一個の処分であって退職勧奨に応じないことそれ自体が処分事由とされているわけではないこと,退職勧奨に応じない場合には懲戒解雇処分がされることが前提とされ,また,その旨の意思表示がされていると考えられることなどの点において,本件の引退勧告処分とは本質的に異なると考えられる。)。 イそもそも,被告において,力士が引退するか否かの判断権は師匠のみにあり,力士にないこと(そのこと自体の非合理性はさておく。)は被告も自認しているところである。そうすると,論理的には,引退勧告処分(判断権者ではない力士が引退勧告処分の名宛人として適切であるかという疑問もさておく。)に応じないのは判断権者である師匠となるはずである。 そして,本件では,原告の師匠であるA親方も原告の引退勧告処分には応じない意思を有していたことが窺われる(原告本人,弁論の全趣旨)。そうすると,力士である原告が引退勧告処分に応じないという意思を有していたとしても,それをもって,処分事由である「引退勧告処分に応じない」という原告の行為そのものがあるといえるのか疑問であるし,また,引退勧告に応じないことをもって,力士である原告による「協会内の秩序を乱す」行為があったということは相当ではないというべきである。 ウ被告は,「故意による無気力相撲」が大相撲に対する社会の信頼を根底から揺るがした大問題であることに鑑みれば,無気力相撲懲罰規定に基づき下された本件引退勧告処分に従わなかったことが著しく「協会内の秩序を乱す」行為であることは明白である旨主張する。 上記の趣旨(「協会内の秩序」の意味も含め)は必ずしも明らかではないが,被処分者が行った非違行為(本件でいえば,原告が「故 の秩序を乱す」行為であることは明白である旨主張する。 上記の趣旨(「協会内の秩序」の意味も含め)は必ずしも明らかではないが,被処分者が行った非違行為(本件でいえば,原告が「故意による無気力相撲」を行ったということ)に対する評価は,本来,無気力相撲懲罰規定における処分で評価されていると考えられることからして,本件解雇処分に当たり「故意による無気力相撲」の重大性をことさらに強調するこ とは「故意による無気力相撲」の事実を二重に評価しているとの疑念を招くものであり相当とは思われない(それほど重大な非違行為であれば,無気力相撲懲罰規定における「除名」処分を選択する方法もあった。ただし,特別調査委員会も「除名」は相当ではないと判断している(乙2)。)。 その点はさておいても,そもそも被告は,引退勧告処分について,処分に従うか否かが被処分者の任意に委ねられた処分ではなく,勧告に従わなかった場合にはその事実をもって新たな処分を科すことが当然に予定された処分である旨主張する(この主張を採用できないことは前記のとおりであるが。)ところ,力士に関する引退勧告処分が無気力相撲懲罰規定にのみ定めがあり,被告が「故意による無気力相撲」の重大性を主張していることに,被告が,本件引退勧告処分の際の考慮期間として当日を入れて三日間しか与えず,原告に対し引退に向けての説得を行ったとも認められないことを併せ考慮すると,結局のところ,実質的にみれば,本件は,被告が原告に対し,原告が「故意による無気力相撲」を行ったことを理由として本件解雇処分を行ったものにほかならないと考えられる。しかし,懲戒処分は一種の制裁罰であるから,当然のことながら,懲戒事由及び種別の明定が求められ,また,力士としての地位を剥奪する解雇処分であればなおさらその手続が適正で にほかならないと考えられる。しかし,懲戒処分は一種の制裁罰であるから,当然のことながら,懲戒事由及び種別の明定が求められ,また,力士としての地位を剥奪する解雇処分であればなおさらその手続が適正であることが求められる。そして,被告においては,「故意による無気力相撲」については,その行為のみを対象とする無気力相撲懲罰規定を定めており,同規定第5条は「施行細則第88条(現行第92条)によらず理事会決議を以て懲罰を決定する」と定めているのであるから,当然,これによって制裁が科せられるべきものである。被告の本件解雇処分は,実質的には,無気力相撲懲罰規定に明定されていない処分を行ったものといわざるを得ず,そうだとすれば,その手続には違法があるというべきである。被告においても,本件解雇処分をした翌日,平成23年4月改定後の無気力相撲懲罰規定を施行したところ,その懲戒種別に それまで規定されていなかった「解雇」を加えているのであり,自らの規定の不備を自認しているというべきである(なお,平成23年4月改定においては,「解雇」を加えたのみならず,懲罰について「けん責,給与減額」を削除しているのであり,同改定前までは,その規定内容からして,無気力相撲懲罰規定上は,「故意による無気力相撲」が被告における「大問題」とまでは位置付けられていなかったことが窺われる。)。 (2) 本件解雇処分の相当性についてなお,前示のとおり,懲戒処分である以上,相当性の要件が必要であると解されるところ,仮に,「協会内の秩序を乱す」という概念が抽象的であることから,引退勧告に応じないことが「協会内の秩序を乱す」行為に当たると解する余地があるとしても,施行細則第93条の賞罰は,けん責,給与減額,出場停止,番附降下,解雇の5種が定められているのであり,当 とから,引退勧告に応じないことが「協会内の秩序を乱す」行為に当たると解する余地があるとしても,施行細則第93条の賞罰は,けん責,給与減額,出場停止,番附降下,解雇の5種が定められているのであり,当然に,そのうち,最も重い処分である解雇処分とすることについては,その相当性について疑問がある。すなわち,前記認定のとおり,そもそも本件においては,被告が原告に対し本件引退勧告処分をしながら,この点における原告の考慮期間も短く,また,引退に向けての何らの説得行為も行われていない。 そして,そもそもの引退勧告事由が「故意による無気力相撲」を行ったことにあるという点を考慮するとしても,前記のとおり,本件解雇処分においてこの点を重視するのは相当ではないし,また,その点はさておいても,「故意による無気力相撲」については,被告によって処分された者だけでも25名(うち17名が幕内あるいは十両の力士である。乙2,3)にのぼり,特定はできないにしても上記力士のほか「故意による無気力相撲」に関与した力士は複数存在したことがうかがわれる(証人G,弁論の全趣旨,なお,Bは,事情聴取の際,平成13年頃から「故意による無気力相撲」を始め,1場所につき5,6回行っていたと述べている(甲17)。)ところ,力士の人数が幕内42名以内,十枚目の力士28名以内であることからすれば, 「故意による無気力相撲」に関与した力士の割合は相当に高いということができ,少なくない数の力士にとって「故意による無気力相撲」は被告が主張するような重大な出来事であるという認識は希薄なものであったと考えられる(証人G(F)は,「故意による無気力相撲」は助け合いで一種の保険であると供述する。)。そして,特別調査委員会も第1次報告書において「八百長問題については,かねてから様々指摘があったにもかかわら る(証人G(F)は,「故意による無気力相撲」は助け合いで一種の保険であると供述する。)。そして,特別調査委員会も第1次報告書において「八百長問題については,かねてから様々指摘があったにもかかわらず,自浄作用が働かず,又,監察委員会がその職責を果たせなかったことなどを考慮するならば,今回の事態に至った責任としては,関与した力士やその師匠の責任より,日本相撲協会(被告)自体としての責任が最も重い。」と指摘している(この評価を被告は争っていない。)ことからすれば,「故意による無気力相撲」を行うことが,我が国の伝統競技である相撲を愛好する多くの国民の信頼を裏切るものであって強い非難に値するものであるとはいえるが,一方,そのことを理由として,個々の力士よりも大きな責任があると指摘されている被告が,力士である原告に対し,引退勧告に応じないことが「協会内の秩序を乱す」として相撲の世界から永久に放逐してしまう(施行細則第94条)解雇処分を選択することは,被告の処分選択における裁量権を考慮しても,その相当性について疑問がある。 (3) まとめア前記5において判示したとおり,本件取組が「故意による無気力相撲」であったと認めるに足りないから,これを処分事由とする本件引退勧告処分は無効であり,同処分に従わないことを理由とする本件解雇処分は無効である。 イ仮に,本件取組が「故意による無気力相撲」であるとすれば,本件引退勧告処分については,同処分を行うという限度での相当性は認められ,これを無効ということはできないが,前記6に判示したとおり,本件引退勧告処分に従わないことをもって,原告による「協会内の秩序を乱す」行為 があったという本件解雇事由を認めることはできないから,本件解雇処分は無効といわざるを得ない。 したとおり,本件引退勧告処分に従わないことをもって,原告による「協会内の秩序を乱す」行為 があったという本件解雇事由を認めることはできないから,本件解雇処分は無効といわざるを得ない。 ウ仮に,「協会内の秩序を乱す」という概念を広く解し,本件引退勧告処分に応じないことが本件解雇事由に該当すると解するとしても,その場合,前記のとおり,個々の力士よりも大きな責任があると指摘されている被告が,力士である原告が引退勧告に応じないことを「協会内の秩序を乱す」という理由で施行細則第93条において最も重い解雇処分を選択することは,その相当性について疑問がある。 エ以上のとおり,その余の点について判断するまでもなく,本件解雇処分は無効なものと判断せざるを得ない。 7 争点(5)(地位確認の利益及び給与等請求権の存否)について(1) 地位確認に係る確認の利益等被告は,本件訴えのうち被告の幕内力士としての地位の確認を求める部分について争っているところ,被告における力士の階級上の地位が,給与体系,手当等の待遇と結び付けられていることは前記認定のとおりであり,本件訴えのうち被告の幕内力士としての地位の確認を求める部分は,後記給与の額を含む幕内力士としての待遇上の格差を問題とする趣旨のものと解せられるから,原告は,上記地位にあることについて確認の利益を有するものと認めるのが相当である。そして,本件解雇処分が無効であることは前示のとおりであるから,原告の上記請求は肯認されるべきこととなる。 この点,被告は,前記第2,3(5)被告の主張のとおり,本件解雇処分が無効であるとしても幕内力士としての地位が認められるべきではない旨主張する。しかし,前記1(3)によれば,原告が本場所相撲において負け越した場所もあったものの 5)被告の主張のとおり,本件解雇処分が無効であるとしても幕内力士としての地位が認められるべきではない旨主張する。しかし,前記1(3)によれば,原告が本場所相撲において負け越した場所もあったものの,相当程度には勝ち星をあげていた経過があるとはいえるところであり(なお,原告が何ら「故意による無気力相撲」に関与していなかったとはいえないにしても,これらの取組が「故意による無気力相撲」 であったことを裏付ける証拠はない。),他に原告が故障等により休場すること等が見込まれたというような事情があったとも窺われない。してみると,他に適切な反証がない限りは,現状の地位を維持し得た相当程度の蓋然性といった限度ではこれを認めるのが相当であり,かかる反証の認められない本件においては,上記被告の主張は採用することはできない。 (2) 給与前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成22年9月に幕内に昇進し,本件解雇処分当時,被告の幕内力士として,被告から,給与として月額130万9000円が支給されていたこと,その支払期日は毎月25日であることが認められる。 (3) 力士補助費前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,十枚目以上の力士には,被告から,力士補助費として,東京本場所1場所につき2万5000円が支給されていたこと,東京本場所は,毎年1月,5月,9月と4か月毎に開催されていること,その支払期日は東京本場所の13日目であることが認められる。 (4) 力士褒賞金前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,十枚目以上の力士には,被告から,力士褒賞金として,各本場所毎に24万円(60円の4000倍)(ただし,本場所相撲の成績に基づき,勝越し1番につき2000円(50銭の 及び弁論の全趣旨によれば,十枚目以上の力士には,被告から,力士褒賞金として,各本場所毎に24万円(60円の4000倍)(ただし,本場所相撲の成績に基づき,勝越し1番につき2000円(50銭の4000倍)増加される。)が支給されていたこと,本場所は,毎年1月,3月,5月,7月,9月,11月と2か月毎に開催されていること,原告は,平成22年11月は9月場所の勝越し1番分が増額され,同褒賞金が24万2000円となり,平成23年1月場所にも1番勝ち越したことから,平成23年3月場所以降の同褒賞金が2000円増の24万4000円となったこと,同褒賞金の支払期日は場所中の13日目であることが認められる。 第4 結論 以上によれば,原告が,被告に対し,1 原告と被告との間において原告が被告の幕内力士の地位にあることの確認,2 給与規定に基づき,(1)7万8000円及びこれに対する平成23年6月1日から支払済みまで年5分の割合による金員,(2)ア平成23年6月から本判決確定の日まで毎月末日限り130万9000円,イ平成23年7月から本判決確定の日まで2か月毎の各月末日限り24万4000円,ウ平成23年9月から本判決確定の日まで4か月毎の各月末日限り2万5000円,及び上記アないしウの各金員に対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める旨の本件請求は理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第19部 裁判長裁判官古久保正人 裁判官森岡礼子 正人 裁判官 森岡礼子 裁判官 芝本昌征
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