平成27(ワ)1945 建物明渡等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年6月14日 神戸地方裁判所
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判決文本文19,907 文字)

- 1 -平成29年6月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官建物明渡等請求事件口頭弁論終結日平成29年4月5日判決主文 1 被告A及び被告B株式会社は,原告に対し,別紙物件目録記載1の建物を明け渡せ。 2 被告A及び被告B株式会社は,原告に対し,各自,平成26年12月1日から上記建物明渡し済みまで1か月3万3600円の割合による金員を支払え。 3 被告C及び被告B株式会社は,原告に対し,別紙物件目録記載2の建物を明け渡せ。 4 被告C及び被告B株式会社は,原告に対し,各自,平成27年2月1日から上記建物明渡し済みまで1か月4万1000円の割合による金員を支払え。 5 被告Dは,原告に対し,別紙物件目録記載3の建物を明け渡せ。 6 被告Dは,原告に対し,平成27年4月1日から上記建物明渡し済みまで1か月4万1900円の割合による金員を支払え。 7 訴訟費用は被告らの負担とする。 8 この判決は,1ないし6項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文1~6項と同旨第2 事案の概要原告は,別紙物件目録記載の各建物(以下,併せて「本件各建物」といい,各建物をそれぞれ「本件1建物」などという。)を所有している。被告B株式会社(以下「被告会社」という。)は,本件1・2建物を賃借し,被告会社及び被告Aが本件1建物を,被告会社及び被告Cが本件2建物を占有している。 - 2 -被告Dは,本件3建物を賃借し,占有している。 本件は,原告が,本件1・2建物について,被告会社との間で定期建物賃貸借契約を締結し,主位的にその契約期間が満了したとして,予備的に無断転貸を理由として解除したとして,本件3建物について,被告Dとの間で定期建物賃貸借契約を締結し,その契約期間が との間で定期建物賃貸借契約を締結し,主位的にその契約期間が満了したとして,予備的に無断転貸を理由として解除したとして,本件3建物について,被告Dとの間で定期建物賃貸借契約を締結し,その契約期間が満了したとして,被告会社及び同Dに対し,所有権又は各定期建物賃貸借契約終了に基づき,被告A及び同Cに対し,所有権に基づき,本件各建物の明渡し及び上記各契約期間満了日の翌日(下表のとおり)から上記各建物明渡し済みまでの賃料相当損害金(下表のとおり)の各支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 本件各建物は,いずれもE駅・飲食店街の地下1 階に位置している。 (2) 原告は,E駅・飲食店街の建物全体を所有している(甲1)。 (3) E駅・飲食店街の地下1階は,中央に通路を挟んで,北側に約30軒,南側に20軒余りの店舗用の区画が存在しており,そのうち本件1建物は南側の「南第7-2号」,本件2建物は北側の「北第8号」,本件3建物は北側の「北第10号」とそれぞれ呼ばれる区画に位置している。 (4) E駅・飲食店街の店舗の賃貸に関する管理業務は,F株式会社(以下「F」という。)が行っている。 (5) 被告会社は,不動産の売買,不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり,宅地建物取引業者の免許を受けている(甲27)。 被告Dは,被告会社の代表取締役であり,昭和63年11月10日から宅被告契約期間満了日の翌日賃料相当損害金(1か月当たり)本件1建物被告会社・被告A平成26年12月1日3万3600円本件2建物被告会社・被告C平成27 年2 月1 日4万1000円本件3建物被告D平成27 年4 月1 日4万1900円- 3 被告会社・被告A平成26年12月1日3万3600円本件2建物被告会社・被告C平成27 年2 月1 日4万1000円本件3建物被告D平成27 年4 月1 日4万1900円- 3 -地建物取引士の登録をしている(甲28の1・2)。 (6) 本件1建物の契約関係等ア本件1建物は,平成21年12月1日以降,被告会社が,原告との間で賃貸借契約を締結した上で引渡しを受け,占有を続けている。 イ原告は,平成25年11月20日,被告会社との間で,本件1建物を次のとおり賃貸することを書面により合意した(以下「本件賃貸借契約1」という。)。 賃料月額3万0400円(税別)共益費月額3200円(税別)期間平成25年12月1日から平成26年11月30日までの1年間契約は上記の期間満了により終了し,更新がない。 原告は,上記期間満了の1年前から6か月前までの間に,被告会社に対し,期間満了により契約が終了する旨を書面によって通知するものとする。 ウ原告は,平成26年5月14日頃,被告会社に対し,本件賃貸借契約1が期間満了により終了する旨の通知をした。 エなお,原告と被告会社との間では,平成21年12月1日以降,本件賃貸借契約1と同趣旨の合意を毎年繰り返していた。 オ本件1建物は,現在,被告Aが,被告会社との間で転貸借契約を締結の上,飲食店「G」を営む経営者としてこれを占有使用している。 (7) 本件2建物の契約関係等ア本件2建物は,平成22年2月1日以降,被告会社が,原告との間で賃貸借契約を締結した上で引渡しを受け,占有を続けている。 イ原告は,平成26年1月14日,被告会社との間で,本件2建物を次のとおり賃貸することを書面により合意した(以下「本件賃貸借契約2」と- 4 -いう した上で引渡しを受け,占有を続けている。 イ原告は,平成26年1月14日,被告会社との間で,本件2建物を次のとおり賃貸することを書面により合意した(以下「本件賃貸借契約2」と- 4 -いう。)。 賃料月額3万8500円(税別)共益費月額2500円(税別)期間平成26年2月1日から平成27年1月31日までの1年間契約は上記の期間満了により終了し,更新がない。 原告は,上記期間満了の1年前から6か月前までの間に,被告会社に対し,期間満了により契約が終了する旨を書面によって通知するものとする。 ウ原告は,平成26年7月3日頃,被告会社に対し,本件賃貸借契約2が期間満了により終了する旨の通知をした。 エなお,原告と被告会社との間では,平成22年2月1日以降,本件賃貸借契約2と同趣旨の合意を毎年繰り返していた。 オ本件2建物は,現在,被告Cが,被告会社との間で転貸借契約を締結の上,スナック「H」を営む経営者としてこれを占有使用している。 (8) 本件3建物の契約関係等ア本件3建物は,平成19年4月1日以降,被告Dが,原告との間で賃貸借契約を締結した上で引渡しを受け,占有を続けている。 イ原告は,平成26年3月5日,被告Dとの間で,本件3建物を次のとおり賃貸することを書面により合意した(以下「本件賃貸借契約3」という。)。 賃料月額3万9400円(税別)共益費月額2500円(税別)期間平成26年4月1日から平成27年3月31日までの1年間契約は上記の期間満了により終了し,更新がない。 原告は,上記期間満了の1年前から6か月前までの間に,被告Dに対し,期間満了により契約が終了する旨を書面によって通知するものとする。 - 5 -ウ原告は,平成26年9月12日頃,被告 。 原告は,上記期間満了の1年前から6か月前までの間に,被告Dに対し,期間満了により契約が終了する旨を書面によって通知するものとする。 - 5 -ウ原告は,平成26年9月12日頃,被告Dに対し,本件賃貸借契約3が期間満了により終了する旨の通知をした。 エなお,原告と被告Dとの間では,平成19年4月1日以降,本件賃貸借契約3と同趣旨の合意を毎年繰り返していた。 オ本件3建物に転借人はいない。 (9) 原告は,平成28年6月16日の本件口頭弁論期日において,被告会社に対し,本件賃貸借契約1・2について,無断転貸を理由として解除するとの意思表示をした。 2 争点(1) 本件賃貸借契約1~3の締結に当たり原告が借地借家法(以下,単に「法」という。)38条2項所定の説明(以下「法定説明」という。)を行ったか否か(2) 本件賃貸借契約1・2に関し原告が転貸借を承諾していたか否か又は原告が承諾の不存在を主張することが信義則に反するか否か(3) 本件各建物の明渡請求が権利の濫用に当たるか否か 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件賃貸借契約1~3の締結に当たり原告が法定説明を行ったか否か)について(原告の主張)ア法定説明の方法等法定説明は,書面の交付が前提となり,交付した書面に説明すべき内容自体が記載されていることから,説明の方法や内容,程度は,新規の契約か再契約か,賃借人の属性(消費者か事業者か等)等によって差異が生じてしかるべきであり,それらの事情を踏まえて個別具体的に判断されるべき事柄である。 イ本件への当てはめ- 6 -(ア) 本件においては,本件1・3建物についての新規の各契約締結の際には,Fの担当者が被告Dと面談において説明した上で,同人に対し,定期建物賃貸借契約は 。 イ本件への当てはめ- 6 -(ア) 本件においては,本件1・3建物についての新規の各契約締結の際には,Fの担当者が被告Dと面談において説明した上で,同人に対し,定期建物賃貸借契約は更新がなく契約期間満了により終了する旨が記載された「定期建物賃貸借契約についての説明」と題する書面を交付している。そして,本件1建物についての新規契約の約2か月後に行われた本件2建物についての新規契約及び本件各建物についての各再契約の締結の際には,あらかじめ担当者が電話をした上,上記の説明書面を郵送することにより被告らに対して説明していた。そして,被告らは,その都度,法定説明を受けたことを確認した上,同書面に記名又は署名及び押印し,これを原告へ返送した。 (イ) Fでは,定期建物賃貸借契約の締結の際は,契約者(賃借人)に対して同契約の内容を十分に説明した上で契約手続を取るオペレーションを実施している。本件各建物に係る契約締結の際にも説明を怠ることはなかった。 ウ被告らの主張について被告らは,前賃借人との間で締結されていた普通賃貸借契約を承継したという認識であった旨主張するが,原告と被告らとの間の本件各建物についての契約は,いずれも従前の普通賃貸借契約が合意解除された後,原告が新たに賃借人となる被告らとの間で締結した。被告らの指摘は当たらない。また,前賃借人の相続財産管理人が,被告Dとの間で,同被告に対する賃借権譲渡の合意をするに際し,同被告が原告との間で締結することになる新たな契約が定期建物賃貸借であることを伝えていないはずがない。 (被告らの主張)ア法定説明の方法等法定説明は,賃借人保護の観点から,当該賃借人を基準として,実質的に賃借人が定期建物賃貸借契約の特質について十分理解し得るような十分- 7 -な説明が必要 告らの主張)ア法定説明の方法等法定説明は,賃借人保護の観点から,当該賃借人を基準として,実質的に賃借人が定期建物賃貸借契約の特質について十分理解し得るような十分- 7 -な説明が必要とされる。同項は説明文書を交付しただけでは足りず,現実に説明することまでも要求している。また,単に「この賃貸借は契約の更新がなく,期間が満了すると終了する」旨記載した書面を読み上げただけでは説明したことにはならない。 定期建物賃貸借において,賃貸借契約締結に先立って,契約書とは別に書面を交付して説明することが求められているのは,借家人が定期建物賃貸借制度の内容を十分に理解した上で契約することを担保するためであると解され,また,説明書面に,締結される建物賃貸借契約が,法38条1項の規定による定期建物賃貸借契約であることを記載すべきと解されることに照らすと,説明書面を交付して行うべき説明は,締結される建物賃貸借契約が,一般的な建物賃貸借契約とは異なる類型の定期建物賃貸借契約であること,その特殊性は,法26条所定の法定更新の制度及び法28条所定の更新拒絶に正当事由を求める制度が排除されることにあるといった定期建物賃貸借という制度の少なくとも概要の説明と,その結果,当該建物賃貸借契約所定の契約期間の満了によって確定的に同契約が終了することについて,相手方たる賃借人が理解してしかるべき程度の説明を行うことを要すると解され,説明書の条項の読み上げにとどまり,条項の中身を説明するものではなく,仮に条項内の条文の内容を尋ねられたとしても,六法全書を読んで下さいといった対応をする程度のものである場合には,一般的な賃借人において,定期建物賃貸借契約という制度の概要を理解できるものとはいえない(東京地裁平成24年3月23日判決・判例時報2152号52頁)。 いった対応をする程度のものである場合には,一般的な賃借人において,定期建物賃貸借契約という制度の概要を理解できるものとはいえない(東京地裁平成24年3月23日判決・判例時報2152号52頁)。 また,そのような説明は,再契約の度に必要とされるものである。 イ本件への当てはめ(ア) 十分な説明がなかったこと本件各建物に係る賃貸借契約において,賃借人である被告らは,原告- 8 -からそのような十分な説明を受けたことはなかった。まず,本件1・2建物の各賃貸借契約に関しては,当初の契約締結の際から一度も面談が行われず,契約書の作成及び定期建物賃貸借の説明文は郵送でのやりとりに止まっていた。本件3建物についての当初の平成19年3月30日付けの賃貸借契約締結の際には,直接面談の上,契約書その他の書類に署名捺印をしたが,原告側から当該契約が定期借家であるとの説明はなく,契約書記載の文言について読み上げられることもなく,定期建物賃貸借契約の特質について理解し得るような説明も一切なかった。また,いずれの建物に関しても,その後の再契約の際には,原告側から書類が郵送され被告会社及び同Dがそれらに記名又は署名捺印した上で返送していたのみであり,原告側から十分な説明を受ける機会は一切なかった。 担当者から,電話で「更新の書類を送ります。」という電話連絡があったことはあるが,それ以上の説明がされたことはなかった。 (イ) 被告らの属性を重視すべきでないこと被告会社は,不動産取引業を営んでいる。しかしながら,マンション,文化住宅などの自社物件を管理賃貸し,賃料収入を得ることを主たる業務にしており,仲介の実績はほとんどない。これまで,定期建物賃貸借契約の締結や媒介をしたことはない。 (ウ) 経緯・事情(従前どおりの普通賃貸借契約を締結すると 賃貸し,賃料収入を得ることを主たる業務にしており,仲介の実績はほとんどない。これまで,定期建物賃貸借契約の締結や媒介をしたことはない。 (ウ) 経緯・事情(従前どおりの普通賃貸借契約を締結するという認識の下に賃借権の譲渡を受けていたこと等)次の経緯・事情を考慮すると,説明文を交付するような説明だけで法定説明があったとすることはできない。 a 被告会社及び同Dは,次のとおり,本件各建物に関し,いずれも原告との間で普通賃貸借契約を締結していた第三者から,従前どおりの普通賃貸借契約を締結するという認識の下に賃借権の譲渡を受けた。 (a) 被告Dは,本件3建物に関し,賃借人であったIの死亡後,そ- 9 -の相続財産管理人との間で同建物の賃借権について譲渡契約を締結した。その際,同人からも,またIと内縁関係にあり同物件の紹介者であったJからも,契約関係がそれまでの普通賃貸借から定期建物賃貸借に切り替わるという説明は一切なかった。 被告Dは,本件3建物の賃借権を譲り受けるに当たり,100万円という譲渡代金を支払った。これは,以後,長期間にわたって転貸料収入が見込めることを前提にしていた。 結局,被告Dが本件各建物の契約内容が定期建物賃貸借契約とされていることを初めて知ったのは,平成26年11月に原告がE駅・飲食店街の各店舗の終了について行った説明会における説明を聴いた時である。 (b) 本件会社は,本件1建物に関し,Jとの間で同建物の賃借権について譲渡契約を締結した。その際,同人から契約関係の変更に関する説明は一切なかった。 (c) 本件会社は,本件2建物に関し,従前の賃借人であったKとの間で同建物の賃借権について譲渡契約を締結した。その際,Kやその仲介者であったLから契約関係の変更に関する説明は一切なかった。 (d) 原 本件会社は,本件2建物に関し,従前の賃借人であったKとの間で同建物の賃借権について譲渡契約を締結した。その際,Kやその仲介者であったLから契約関係の変更に関する説明は一切なかった。 (d) 原告と被告らとの間の各賃貸借契約は,いずれも従前の賃借人であるIないしKとの賃貸借契約と同じ賃料額及び共益費であった(本件1建物については敷金額も同じであった。)。そのため,被告らが従前の賃貸借契約との違いを認識することはできなかった。 b 普通賃貸借と定期賃貸借とでは賃貸借契約の安定性,継続性において全く異なり,普通賃借権が定期賃借権に切り替えられることにより賃借人は大きな不利益を受けることになる。 (2) 争点(2)(本件賃貸借契約1・2に関し原告が転貸借を承諾していたか否- 10 -か,又は原告が承諾の不存在を主張することが信義則に反するか否か)について(被告らの主張)ア原告は,被告会社が同A及び同Cに対してそれぞれ本件1・2建物を転貸していることを認識し,黙認していた。いずれの転貸借についても,原告による黙示の承諾が存在していた。また,この期に及んで原告が転貸について承諾がないと主張するのは信義則に反し許されない。 イ原告が飲食店街の店舗の転貸を認識し,黙認していたことは,以下の事情から明らかである。 E駅・飲食店街においては,M社が所有する時代から,店舗のオーナーが他人に経営を行わせるという転貸が頻繁に行われていた。そして,原告がM社から使用権及び賃貸人たる地位を譲り受けた平成3年の時点で,少なくとも15軒において転貸がされていた。原告は,E駅・飲食店街の各店舗の使用権を取得するに当たって現地を十分に調査し,多数の店舗で営業しているのが賃借人の従業員であるのか,別の経営者であるのかについて認識した。それ以降も, されていた。原告は,E駅・飲食店街の各店舗の使用権を取得するに当たって現地を十分に調査し,多数の店舗で営業しているのが賃借人の従業員であるのか,別の経営者であるのかについて認識した。それ以降も,従前から存在した転貸借契約は継続され,新たな転貸借契約が締結されることもあった。原告はこれを黙認してきた。本件1・2建物の元賃借人であったIは同所の十数店舗について普通賃借権を有し,そのほとんどを転貸していた。同人の死亡後,相続財産管理人は,賃借権の譲渡に当たり,転貸借の有無も把握した上で家庭裁判所の許可を得た。賃借権の譲渡について諾否を求められた原告が転貸借の事実を知らなかったはずはない。 当時,空き店舗が出ると,転借人を募集する貼り紙が店舗の入口ドアに掲示されることが珍しくなかった。Fの担当者は,管理のために定期的に巡回し,その貼り紙を目にしており,特に,原告側からクレーム等を付けたことはなかった。 - 11 -転借人はしばしば交替しているが,店舗の経営者である転借人が後退すれば屋号が変わり,飲食店街入口の案内看板の店名表示がその都度変更されていた。原告は,店舗の経営者が交替したことを容易に知ることができた。 各店舗の鍵は原告から飲食店街の店舗の管理を委託されている警備員の詰め所で保管されており,転借人が鍵を忘れた際には,そこへ取りに行くことがあった。警備員は,店舗の経営者が不在の場合に火災報知機の誤作動に対して鍵を使用して店内に入ったり,消防設備点検などの場合に填補の経営者の了解を得て立ち会ったりしていた。また,営業者は営業許可証を店舗の見えやすい場所に掲示することを義務付けられており,店内に入れば経営者が誰かは容易に判明した。 原告は,E駅・飲食店街の店舗の屋号が変更されると,速やかにこれを把握し,契約書の末尾に 可証を店舗の見えやすい場所に掲示することを義務付けられており,店内に入れば経営者が誰かは容易に判明した。 原告は,E駅・飲食店街の店舗の屋号が変更されると,速やかにこれを把握し,契約書の末尾に添付される店舗の配列表に反映させていた。 また,原告は,火元責任者となった店舗の経営者に対して年1回の防火訓練の際にお知らせの書類を送付していた。 (原告の主張)ア原告は,E駅・飲食店街の賃貸店舗について,転貸を黙認したことはない。管理業務を受託するFでは,転貸の事実が判明した場合,その占有を了承するときには契約の切替え(既存契約の解除,新規契約の締結)の手続を行い,転貸の解消に努めていた。 イ E駅・飲食店街は,鉄道上の物件でもあり,管理運営上,原告側が把握しない者に店舗の使用を許可することはない。また,一部の土地については,神戸市より1年更新の道路占有許可を取得しており,管理の不備を理由にいつ許可を取り消されるかもわからない事態を生じかねない無断転貸を認めることはない。 ウ E駅・飲食店街の店舗の賃貸借においては,契約上,そもそも賃借人に- 12 -よる転貸は禁止行為であるため,屋号の変更があってもそれは単なる店名変更であると認識しており,転貸がされたとは認識していなかった。また,被告らは,賃借人以外の者が火元責任者になっていることをもって原告が転貸の事実を認識していた旨主張するが,火元責任者に任命される者が必ずしも店舗の経営者であるとは限らない。上記事実は原告が転貸の事実を認識していたことの根拠にはならない。原告としては店舗にいる者は従業員(使用人)であるとの認識であった。 エ原告がE駅・飲食店街の店舗について転借人を募集する貼り紙を黙認していた事実はない。貼り紙が掲げられていたと被告らが主張する頃に定期的に巡回してい は従業員(使用人)であるとの認識であった。 エ原告がE駅・飲食店街の店舗について転借人を募集する貼り紙を黙認していた事実はない。貼り紙が掲げられていたと被告らが主張する頃に定期的に巡回していたのは管理会社の設備担当者であり,設備担当者から営業担当者へ貼り紙の事実を告げられることもなかった。Iの死亡後,原告は,Jと協議を進める中で初めて転貸の事実を把握した。それ以降,貸店舗の貼り紙が掲げられているのを確認し,Jに対し即刻外すよう指示したことがあった。 (3) 争点(3)(本件各建物の明渡請求が権利の濫用に当たるか否か)(被告らの主張)原告による定期建物賃貸借契約の締結の経過,転貸に関する態度等に照らすと,次の点が指摘でき,原告が本件賃貸借契約1ないし3の終了や本件賃貸借契約1・2における無断転貸を理由に建物の明渡しを求めることは,権利の濫用に当たり許されない。 ア相続財産管理人は,Iの賃借権を早期に処分せざるを得ない立場にあり,かつ,原告の意向に背いて処分することは不可能であった。原告はこのような優位な地位を利用して,強引に普通賃貸借から定期賃貸借への切替えを強行した。その手続は極めて杜撰である。 イ相続財産管理人は,上記譲渡に際して,家庭裁判所に対し,上記代金額が近隣での同種の契約に照らしても相当な金額である旨報告しているが,- 13 -そこでいう同種の契約とは店舗用の普通賃貸借契約が念頭に置かれているはずである。 ウところが,原告は,被告らに対し,従前の契約内容を定期建物賃貸借契約に変更する旨を説明することなく,被告らの無知や無関心に乗じて,何ら経済的な負担を被らずに普通賃貸借契約から定期建物賃貸借契約への切替えを実現した。 (原告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件賃貸 被告らの無知や無関心に乗じて,何ら経済的な負担を被らずに普通賃貸借契約から定期建物賃貸借契約への切替えを実現した。 (原告の主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件賃貸借契約1~3の締結に当たり原告が法定説明を行ったか否か)について(1) 認定事実当事者間に争いのない事実,証拠(甲2~26,乙1~18,22〔枝番があるものは枝番を含む。〕,証人N,同O,被告D本人。主な証拠は各項に再掲する。)及び弁論の全趣旨を併せると,次の事実が認められる。 ア本件各建物の従前の契約関係等本件1建物についてaPは,昭和44年4月1日当時,本件1建物を所有していた。Iは,同日,Pとの間で,本件1建物を借り受ける普通賃貸借契約を締結し,引渡しを受けた(乙1)。 b 原告,I及びPは,平成3年6月3日,Pから原告へ本件1建物の所有権が移転されるに当たり,原告がPから賃貸人の地位を承継し,賃借人であるIがこれに異議を述べない旨の覚書を交わした。以後,原告とIの間に賃貸借契約関係が成立した(乙2)。 cIは,平成18年8月25日,死亡した。神戸家庭裁判所は,同年10月26日,同人の相続財産に関し,相続財産管理人を選任した。 - 14 -d 相続財産管理人は,当初,Iが賃借権を有していたE駅・飲食店街の他の店舗とともに,賃借人及び転貸人の地位をIと内縁関係にあったJへ譲渡することを企図し,平成20年2月8日に家庭裁判所の許可を得て,同年3月24日,本件1建物ほかIが賃借権を有していたE駅・飲食店街の店舗(本件3建物を除く。)についてJとの間で転貸人たる地位譲渡契約を締結した。 eFは,平成21年3月18日,原告の代理人として,相続財産管理人に対し,同建物の賃貸借契約について無断転貸が行われていたこと 物を除く。)についてJとの間で転貸人たる地位譲渡契約を締結した。 eFは,平成21年3月18日,原告の代理人として,相続財産管理人に対し,同建物の賃貸借契約について無断転貸が行われていたことを理由に解除を申し入れ,同建物の占有者との間で定期建物賃貸借契約の締結に至る場合には原状回復を免除する旨を通知した。同月23日,同社は,Jに対しても,賃借人及び転貸人の地位の譲渡に承諾しない旨を通知した。上記dのJへの賃借人及び転貸人の地位の譲渡は実現しなかった。(甲14,15・16の各1・2,乙3)f 原告は,平成21年8月31日,相続財産管理人との間で,本件1建物ほかIが賃借権を有していたE駅・飲食店街の店舗(本件3建物を除く。)に関し,転借人である占有者が賃貸借契約を締結することを条件に,当事者間の賃貸借契約を合意解除する方向で協議すること,相続財産管理人は原告と占有者との間で新たに定期建物賃貸借契約を締結するよう準備すること等を内容とする覚書を交わした(甲17)。 g 原告は,平成21年11月30日,上記覚書に従い,相続財産管理人との間で,本件1建物についての賃貸借契約を合意解除した。その際,相続財産管理人は,契約終了に伴って原告から返還された保証金をJへ交付した。なお,Iが賃借権を有していたE駅・飲食店街の他の店舗(本件3建物を除く。)についても同様の処理がされた。(甲18,乙6)h 原告と被告会社は,平成21年11月30日頃,期間を同年12月- 15 -1日から平成22年11月30日までの1年間とする賃貸借契約を締結するに至った(当初の定期建物賃貸借契約)。なお,約定の賃料月額3万0400円及び共益費又は管理費月額3200円並びに敷金32万円は,いずれも従前のIとの間の契約時から変動はなかった。 i 被告会社は,契 った(当初の定期建物賃貸借契約)。なお,約定の賃料月額3万0400円及び共益費又は管理費月額3200円並びに敷金32万円は,いずれも従前のIとの間の契約時から変動はなかった。 i 被告会社は,契約の締結に当たり,Fの担当者であるNとの面談の上又は同社からの郵送により,定期建物賃貸借契約についての説明と題する書面を受け取ってこれに記名押印し,原告へこれを交付した。 その書面には,契約期間(同年12月1日から平成22年11月30日まで)を明示した上,下記の事項が記載されていた(以下,この記載内容を「定期建物賃貸借についての説明文言」という。)。 記当該契約は更新がなく,期間の満了により賃貸借は終了するので,期間の満了の日の翌日を始期とする新たな賃貸借契約(再契約)を締結する場合を除き,期間の満了の日までに建物を明け渡さなければならないこと,法38条2項に基づく説明を受けたこと(甲2,11,乙22,被告D本人)j 被告会社は,平成21年12月5日,Jとの間で代金60万円として本件1建物に係る賃借権を譲り受けるとの合意をし,同人へ代金を支払った(乙4,5,22)。 本件2建物についてa 同建物については,従前,賃貸人P,賃借人Kとの間に普通賃貸借契約関係が存在していた。原告,K及びPは,平成3年5月31日,Pから原告へ同建物の所有権が移転されるに当たり,原告がPから賃貸人の地位を承継し,賃借人であるKがこれに異議を述べない旨の覚書を交わした。以後,原告とKの間に賃貸借契約関係が成立した(甲19)。 - 16 -bKは,原告へ平成21年11月14日付けで上記賃貸借契約についての解約届を提出するとともに,平成22年2月1日,原告との間で同契約を同年1月31日限りで合意解約した。(甲20,22)c 被告会社は,E駅・飲 平成21年11月14日付けで上記賃貸借契約についての解約届を提出するとともに,平成22年2月1日,原告との間で同契約を同年1月31日限りで合意解約した。(甲20,22)c 被告会社は,E駅・飲食店街の賃借人で構成される団体の会長であったLから本件2建物の紹介を受け,平成21年12月11日,Kとの間で上記賃貸借契約の賃借権を譲り受ける旨の合意をし,その後,平成22年2月4日までに譲渡代金として34万3000円(Kが原告に支払済みであった賃料1か月分4万3000円を含む。)を支払った。その上で,被告会社は,平成21年12月18日頃,原告に対し,建物賃貸借契約の申込みをし,平成22年1月29日頃,原告との間で,期間を同年2月1日から平成23年1月31日までの1年間とする賃貸借契約を締結した(当初の定期建物賃貸借契約)。なお,約定の月額賃料及び共益費又は管理費の合計額は税込み4万3050円であり,従前のKとの間の契約時から変動はなかった。契約の締結に当たり,Fの担当者であるNは,あらかじめ被告会社へ電話をした上で,同月27日頃,契約書,誓約書及び請求書とともに定期建物賃貸借契約についての説明と題する書面等を郵送し,被告会社は,同書面に記名押印をしてFの下へ返送した。その書面には,定期建物賃貸借についての説明文言が記載されていた。(甲12,21,乙8ないし11,22,証人N,被告D本人)本件3建物についてa 原告は,平成9年6月30日,Iとの間で,期間を同年7月1日から平成12年3月31日まで(その後,1年ごとの自動更新)とする普通賃貸借契約を締結した(乙13)。 bIは,上記のとおり,平成18年8月25日に死亡し,同年10月26日,同人の相続に関し,相続財産管理人が選任された。その後,- 17 -被告Dは,知人を介し 貸借契約を締結した(乙13)。 bIは,上記のとおり,平成18年8月25日に死亡し,同年10月26日,同人の相続に関し,相続財産管理人が選任された。その後,- 17 -被告Dは,知人を介してJの紹介を受け,同人との間で本件3建物の賃借権の購入について協議した。(乙22,被告D)c 被告Dは,平成19年3月26日,相続財産管理人との間で,家庭裁判所の許可の下に,代金を100万円として賃借権を譲渡する旨合意し,代金を支払った。その合意においては,原告との間で,同年4月1日から新たな賃貸借契約を締結することによることとされていた。 これに従い,相続財産管理人は,原告に対し,賃貸借契約について解約届を提出した。(甲24,乙14ないし17,被告D本人)d 被告Dは,平成19年1月31日付けで,原告に対し,建物賃貸借契約の申込みをし,同年3月30日,原告との間で,期間を同年4月1日から平成20年3月31日までの1年間とする賃貸借契約を締結した(当初の定期建物賃貸借契約)。なお,約定の月額賃料及び共益費又は管理費の合計額は税込み4万3995円であり,従前のIとの間の契約時から変動はなかった。被告Dは,本件各建物についての賃貸借契約の中で最初となる上記契約締結の際,Fの担当者であるNと面談した上,定期建物賃貸借契約についての説明と題する書面に署名,押印した。Nは,面談において,契約の更新がないこと及び期間満了により契約が終了する旨を説明した。その書面には,定期建物賃貸借についての説明文言が記載されていた。(甲6,13,23,25,乙16,証人N,被告D本人)その後の再契約の状況a 原告と被告会社との間では,本件各建物について,当初の定期建物賃貸借契約や本件賃貸借契約1~3と同趣旨の合意を毎年繰り返していた。その際,定期建物賃 N,被告D本人)その後の再契約の状況a 原告と被告会社との間では,本件各建物について,当初の定期建物賃貸借契約や本件賃貸借契約1~3と同趣旨の合意を毎年繰り返していた。その際,定期建物賃貸借契約についての説明と題する書面が,再契約の契約書,誓約書等とともに,被告会社又は同Dへ郵送され,同人らが署名又は記名し,押印の上,Fの下へ返送されていた。また,- 18 -各契約期間終了の6か月前には,賃借人である被告らの下に,原告名で,期間の満了により賃貸借が終了する旨が記載された「定期建物賃貸借契約終了についての通知」と題する書面が送付された。(甲3,5,7,乙7の1~4,12の1~4,18の1~6)bFの担当者であったQは,本件各建物に関する再契約の締結に際し,平成24年1月25日付け,同年10月29日付け及び平成26年2月13日付けの各「書類送付案内」と題する書面において,「契約更新時期がまいりました」,「E飲食店街店舗更新契約書」,「E飲食店街店舗(北12号店)更新契約書」と,定期建物賃貸借契約であるにもかかわらず,「更新」という文言を使用することがあった(乙7の3,12の2,18の6)。 イ本件賃貸借契約1~3の締結状況等原告は,平成25年11月20日頃,被告会社に対し,本件賃貸借契約1に係る契約書及び定期建物賃貸借についての説明文言が記載された書面を郵送し,被告会社から記名押印された各書面の返送を受ける方法により,同契約を締結した(甲2,8)。 原告は,平成26年1月14日頃,被告会社に対し,本件賃貸借契約2に係る契約書及び定期建物賃貸借についての説明文言が記載された書面を郵送し,被告会社から記名押印された各書面の返送を受ける方法により,同契約を締結した(甲4,9)。 原告は,平成26年3月5日頃 に係る契約書及び定期建物賃貸借についての説明文言が記載された書面を郵送し,被告会社から記名押印された各書面の返送を受ける方法により,同契約を締結した(甲4,9)。 原告は,平成26年3月5日頃,被告Dに対し,本件賃貸借契約3に係る契約書及び定期建物賃貸借についての説明文言が記載された書面を郵送し,被告Dから署名押印された各書面の返送を受ける方法により,同契約を締結した(甲6,10)。 ウ平成11年の借地借家法の改正により定期建物賃貸借の制度が創設されて以来,原告は,積極的にこれによる契約締結を進め,E駅・飲食店街- 19 -における新たな契約は1年間の定期建物賃貸借契約に限るとの方針を取っていた(甲25)。 原告は,現在,E駅・飲食店街を閉鎖する方針を決定している。 (2) 事実認定の補足説明原告は,平成19年9月30日,本件3建物について,被告Dとの間で,新規に定期建物賃貸借契約を締結した際,Fの担当者が被告Dとの面談において説明した上で,同人に対し,定期建物賃貸借契約は更新がなく契約期間満了により終了する旨が記載された「定期建物賃貸借契約についての説明」と題する書面を交付したと主張し,証人Nの証言はこれに沿う。 他方,被告Dは,本人尋問及び陳述書(乙22)において,平成19年3月30日にNとの間で本件3建物についての賃貸借契約の手続を行った際,同人から,定期建物賃貸借契約に関する説明は一切なかった旨供述する。 この点,その場では定期建物賃貸借についての説明文言が記載された書面の授受及び被告Dによる署名押印がされていること,原告にとって定期建物賃貸借契約の要件である賃借人に対する説明は重要な事柄であったこと,E駅・飲食店街の店舗に関する契約業務を担当していたNは一連の業務の中で上記の要件に必要な書面等を適時に作成 ,原告にとって定期建物賃貸借契約の要件である賃借人に対する説明は重要な事柄であったこと,E駅・飲食店街の店舗に関する契約業務を担当していたNは一連の業務の中で上記の要件に必要な書面等を適時に作成していること等が認められる。これらを総合すると,同人は同日の手続の際に業務として一定の説明をしたと推認することができ,被告Dに対して定期建物賃貸借契約に関する説明を一切しなかったということは考え難い。証人Nの上記証言は採用でき,被告Dの上記供述は採用することができない。 (3) 判断ア法定説明は,客観的にみて,当該契約の相手方となる個々の賃借人において,当該契約に更新がなく期間の満了により契約が確定的に終了するものであることを理解し得る程度に行われることを要し,かつ,それをもって足りるというべきである。当該賃借人が現実に理解したことの確認まで- 20 -は要しない。 イ前記認定事実によれば,本件賃貸借契約1~3の締結の際に交付された定期建物賃貸借契約についての説明と題する書面の中に,契約期間が明示され,当該契約は更新がなく,期間の満了により終了すること,新たな賃貸借契約(再契約)を締結する場合を除き,建物を明け渡さなければならないこと等の定期建物賃貸借についての説明文言が記載されていたことが認められる。この記載は,法38条2項において求められる説明の内容として適切なものであるといえる。 そして,原告は,本件賃貸借契約1~3のいずれにおいても,契約締結の際に上記定期建物賃貸借契約についての説明と題する書面を被告会社又は同Dの下に郵送し,被告らはこれに記名押印をした書面を返送していることが認められるから,同人らは同書面を閲読することにより,その内容を理解する機会を与えられていたといえる。 さらに,本件賃貸借 下に郵送し,被告らはこれに記名押印をした書面を返送していることが認められるから,同人らは同書面を閲読することにより,その内容を理解する機会を与えられていたといえる。 さらに,本件賃貸借契約1・2の賃借人である被告会社の代表者であり,同契約3の賃借人自身である被告Dは,いずれもE駅・飲食店街の店舗である本件各建物に係る定期建物賃貸借契約のうち,少なくとも最初となる本件3建物の契約締結の際には,原告の担当者から面談の上で上記定期建物賃貸借契約についての説明を口頭で受けており,その後に本件1・2建物に係る定期建物賃貸借契約を被告会社の代表者として締結したものである。また,本件1~3建物に係る定期建物賃貸借契約は,以後,1年ごとに実質的に同じ内容の再契約が繰り返されている。加えて,前記前提事実のとおり,被告Dは,宅地建物取引業者の免許を受けた被告会社の代表取締役を務める者であり,自らも宅地建物取引士の登録をしている者であって,不動産の賃貸借契約に関して相応の知識を有している者であると認められる。これらからすると,本件賃貸借契約1~3の締結に当たり,上記書面による説明ではなお賃借人に対する説明が不十分であると認めら- 21 -れるような事情もうかがわれない。 ウなお,前記認定事実によれば,本件各建物に係る定期建物賃貸借契約の再契約が繰り返される中で,Fの担当者が当該再契約に関して,契約の「更新」である旨の誤った用語を記載した書面を被告らに送付していることが認められるが,再契約の際には,その都度,被告らに対して定期建物賃貸借についての説明文言が記載された書面が,契約終了の6か月前までには,その都度,被告らに対して「定期建物賃貸借契約終了についての通知」と題する書面の交付がされていること等からすると,上記用語の誤りによって被 の説明文言が記載された書面が,契約終了の6か月前までには,その都度,被告らに対して「定期建物賃貸借契約終了についての通知」と題する書面の交付がされていること等からすると,上記用語の誤りによって被告らに契約内容の誤解を生じさせるおそれがあったとは考え難いから,上記判断を左右しない。 エ被告らの主張について(ア) 法定説明の方法等被告らは,法定説明の内容として,締結される建物賃貸借契約が,一般的な建物賃貸借契約とは異なる類型の定期建物賃貸借契約であること,その特殊性は,同法26条所定の法定更新の制度及び同法28条所定の更新拒絶に正当事由を求める制度が排除されることにあるといった定期建物賃貸借という制度の少なくとも概要の説明と,その結果,当該建物賃貸借契約所定の契約期間の満了によって確定的に同契約が終了することについて行うことが必要であると主張する(前記第2の3(1)(被告らの主張)ア)。 しかしながら,そのような内容に少しでも欠けるところがあれば直ちに同項の説明の内容として不適切であるということはできない。上記のとおり,締結される契約に更新がなく期間の満了により確定的に終了するものであることについて当該賃借人が正しく理解することが可能な内容であり,これに理解不足や誤解を生じるおそれのないものであれば,同項における説明すべき内容としては足りるというべきである。そして,- 22 -本件賃貸借契約1~3の締結に当たり交付された書面に記載された定期建物賃貸借についての説明文言はそのような内容を満たしているものといえる。 (イ) 当てはめa 被告らは,説明の方法,程度に関し,本件賃貸借契約1~3の締結に当たってはいずれも原告側からの面談による説明はなく,本件1・2建物に関しては当初の契約時から一度も面談による説明がなく,本 はめa 被告らは,説明の方法,程度に関し,本件賃貸借契約1~3の締結に当たってはいずれも原告側からの面談による説明はなく,本件1・2建物に関しては当初の契約時から一度も面談による説明がなく,本件3建物に関しても当初の契約締結時こそ面談がされたものの,定期建物賃貸借契約に関する十分な説明はなく,このようなものでは法38条2項が求める説明がされていない旨主張する(前記第2の3(1)(被告らの主張)イ(ア))。 しかしながら,説明の方法について,上記判示のとおり,必ずしも常に面談による説明が必要であるとは解されない。本件においては,本件各建物中で初めての定期建物賃貸借契約の締結となる本件3建物に関する平成19年3月30日の契約締結時には賃借人である被告Dに対して面談が実施されており,これに続く本件1建物に関する平成21年11月30日付け及び本件2建物に関する平成22年1月29日付けの各定期建物賃貸借契約は,同人が代表取締役を務める被告会社との間の契約であったことからすると,被告Dにとって実質的に初めてとなる契約締結の時に比べれば賃借人の理解という観点から見ても説明の程度はより簡潔なものでも許容されるといえる。同様に,同じ内容の再契約が締結される際には特段の事情がない限り,書面の交付に止めるなど初回の契約締結時に比べて簡潔な説明によることも許されるといえる。よって,本件賃貸借契約1ないし3の締結に当たり,被告らに対して面談が実施されていないことをもって法38条2項所定の説明がされていないということにはならない。 - 23 -b 被告らは,自らの属性を重視すべきでないと主張する(前記第2の3(1)(被告らの主張)イ(イ))。 しかしながら,前記イのとおり,被告会社や被告Dの属性を補充的に考慮することは b 被告らは,自らの属性を重視すべきでないと主張する(前記第2の3(1)(被告らの主張)イ(イ))。 しかしながら,前記イのとおり,被告会社や被告Dの属性を補充的に考慮することは,許されるというべきである。 c 被告らは,原告との間で本件各建物について定期建物賃貸借契約を締結するに当たり,いずれも原告との間で普通賃貸借契約を締結していた第三者から,従前のとおり普通賃貸借契約を締結するという認識の下に賃借権を譲り受け,また,賃料や敷金という契約条件について従前の契約から変動がなかった等の経緯から,説明文を交付するような説明だけで法定説明があったとすることはできないと主張する(前記第2の3(1)(被告らの主張)イ(ウ)a)。 しかしながら,前記認定事実によれば,被告らは,原告との間で本件各建物について当初の定期建物賃貸借契約書を作成するに当たり,あらかじめ定期建物賃貸借についての説明文言が記載された書面を受領していること,加えて,被告らは上記賃借権の譲渡契約の締結に当たり,いずれも書面をもって原告との間では新たに賃貸借契約を締結することが確認されていることや不動産取引業を営む者である等被告らの属性を考慮すると,そのような原告との間の契約締結に至る過程において,定期建物賃貸借契約の内容に関して被告らの理解を妨げるような特段の事情があったとはいえない。 d 被告らは,普通賃貸借と定期賃貸借とでは賃貸借契約の安定性,継続性において全く異なり,普通賃借権が定期賃借権に切り替えられることにより賃借人は大きな不利益を受けることになるとも指摘するが(前記第2の3(1)(被告らの主張)イ(ウ)b),法定説明の内容・程度について,前記アの判示を左右しない。 オ以上からすると,本件賃貸借契約1ないし3において,原告は被告会社- も指摘するが(前記第2の3(1)(被告らの主張)イ(ウ)b),法定説明の内容・程度について,前記アの判示を左右しない。 オ以上からすると,本件賃貸借契約1ないし3において,原告は被告会社- 24 -又は被告Dに対し,法38条2項所定の説明を行ったということができる。 賃貸借契約1ないし3の締結までの経過に照らし,原告の同契約終了を理由とする本件各建物の明渡請求が権利の濫用となるような事情を認めることはできない。被告らは,第2の3(3) (被告らの主張)ア~ウを指摘するが,前記認定・判断によれば,原告は法にのっとり定期建物賃貸借契約への切替えを実現したというほかない。被告らの主張は採用できない。 第4 結論以上によれば,その余の争点を判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第5民事部 裁判長裁判官冨田一彦 裁判官伊丹恭 裁判官安井亜季- 25 -(別紙)物件目録 1 所在神戸市a区b通c丁目d番e構造鉄骨・鉄筋コンクリート造地下室延床面積 1,175.27平方メートル物件名 E駅・飲食店街うち,地下1階(南第f-g号)14.88平方メートル(別紙図面の「南f-g」の部分) 2 所在神戸市a区b通c丁目d番e構造鉄骨・鉄筋コンクリート造地下室延床面積 1,175.27平方メートル物件名 E駅・飲食店街うち,地下1階(北第h号)9.92平方メートル(別紙図面の「北h」の部分) ・鉄筋コンクリート造地下室延床面積 1,175.27平方メートル物件名 E駅・飲食店街うち,地下1階(北第h号)9.92平方メートル(別紙図面の「北h」の部分) 3 所在神戸市a区b通c丁目d番e構造鉄骨・鉄筋コンクリート造地下室延床面積 1,175.27平方メートル物件名 E駅・飲食店街うち,地下1階(北第i号)9.92平方メートル(別紙図面の「北i」の部分)以上

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