平成23(ワ)529 意匠権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年1月22日 大阪地方裁判所
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平成25年1月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第529号意匠権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年9月3日判決原告 HOYACANDEOOPTRONICS 株式会社同訴訟代理人弁護士菅野光明同松井創同訴訟代理人弁理士恩田誠同中嶋恭久被告 ARKTECH株式会社同訴訟代理人弁護士石堂磨耶同田中浩之同飯塚卓也 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録1及び同2記載の各製品を製造し,譲渡し,輸出し,又は譲渡の申出(譲渡のための展示を含む。)をしてはならない。 2 被告は,その占有に係る別紙被告製品目録1及び同2記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は,原告に対し,8476万2400円及びこれに対する平成23年1月23日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。第2 事案の概要本件は,後記本件各意匠権を有する原告が,被告に対し,被告による別紙被告製品目録1及び同2記載の各製品(以下,同目録1記載の製品を「被告製品1」,同目録2記載の製品を「被告製品2」といい,併せて「被告各製品」という。)の製造販売等が,後記本件各意匠権を侵害すると主張して,意匠法37条1項及び2項に基づき,被告各製品 の製品を「被告製品1」,同目録2記載の製品を「被告製品2」といい,併せて「被告各製品」という。)の製造販売等が,後記本件各意匠権を侵害すると主張して,意匠法37条1項及び2項に基づき,被告各製品の製造販売等の差止め,廃棄を求めるとともに,本件各意匠権侵害の不法行為に基づき,損害賠償金8476万2400円及びこれに対する不法行為の後の日である平成23年1月23日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 判断の基礎となる事実掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告及び原告製品原告は,光学機器及び光学部品の製造販売その他の事業を目的とする株式会社であり,半導体製造工程で使用する光源ユニット(UV光源ユニットLE-3000,周辺露光モジュールEU-101及びUV光源ユニットLE-2000)を製造販売している。原告が製造販売する光源ユニットには,紫外線を出射する250W超高圧水銀ランプが使用されているが,同ランプには,強度保証時間,最長使用時間の定めがあるため,同ランプをランプホルダーに挿入し,回転させることで,同ランプを容易に交換することのできる構造となっており,原告は純正品の放電ランプ(250W超高圧水銀キセノンランプ「LP2511T-H」及び同「LP2511T-HA」。以下「原告製品」と総称する。)を製造販売している(甲1,2,4の1~3)。 (2) 本件各意匠権原告は,次の各意匠権(以下「本件各意匠権」といい,登録番号順に「本件意匠権1」,「本件意匠権2」という。)を有している。本件各意匠権は,いずれも,放電ランプをランプホルダーに固定するための口金部に関する部分意匠の意匠権である。 ア本件意匠権1(甲6,7) 件意匠権2」という。)を有している。本件各意匠権は,いずれも,放電ランプをランプホルダーに固定するための口金部に関する部分意匠の意匠権である。 ア本件意匠権1(甲6,7)登録番号第1325923号出願日平成19年8月10日登録日平成20年2月29日意匠に係る物品放電ランプ登録意匠別紙意匠公報1記載のとおり(以下「本件意匠1」という。)。イ本件意匠権2(甲8,9)登録番号第1326165号出願日平成19年8月10日登録日平成20年2月29日意匠に係る物品放電ランプ登録意匠別紙意匠公報2記載のとおり(以下「本件意匠2」という。)。なお,本件意匠2は,本件意匠1を本意匠とする関連意匠である。(3) 被告及び被告各製品被告は,原告の元従業員らが平成17年4月に設立した,光学機器及び同部品の製造その他の事業を目的とする株式会社であり,被告各製品を販売している。 被告各製品は,いずれも交換用放電ランプであるが,光源ユニットのランプホルダーに取り付けて使用することのできる,原告製品の互換商品である。被告各製品の構成は,別紙被告製品目録1及び同2記載の各図面のとおりであり,被告各製品について,本件各意匠に対応する口金部の意匠に差異はない(以下,当該意匠を「被告意匠」という。)。 2 争点(1) 被告意匠は本件各意匠に類似するか(争点1)(2) 原告の損害(争点2)第3 争点に係る当事者の主張 1 争点1(被告意匠は本件各意匠に類似するか)について【原告の主張】以下に述べるとおり,被告意匠は,本件各意匠と類似する。 (1) 本件各意匠の構成ア本件各意匠の構成本件各意匠の基本的構 匠は本件各意匠に類似するか)について【原告の主張】以下に述べるとおり,被告意匠は,本件各意匠と類似する。 (1) 本件各意匠の構成ア本件各意匠の構成本件各意匠の基本的構成態様は,いずれも放電ランプの端部に設けられた概ね円柱状の陰極側口金部の部分である。 本件各意匠の具体的構成態様は,別紙本件各意匠及び被告意匠の構成(当事者の主張)の(原告の主張)欄記載のとおりである(なお,以下,本件各意匠権の意匠公報の【使用状態を示す参考図】を参考に,第1胴部,第2胴部の底面を表す際に,陰極側を上,陽極側を下ともいう。)。 イ本件各意匠の要部(ア) 需要者が重視する部分本件各意匠の取引者,需要者は光源ユニットの使用者,すなわち消耗品である放電ランプの交換にあたり,視覚により放電ランプを選定・購入する者である。 これらの者は,放電ランプの選定・購入にあたり,視覚で製品を認識して判断する。ランプ全体のうち,光源ユニットに装着され,物理的固定と電気的接続が行われる口金部(この種のランプでは陰極側口金部)は,看者の注目を集める。 本件各意匠の陰極側口金部に環状に深く刻まれた平行な「溝部」は,その精度の高さと強固さと安定性を感じさせる極めてメカニカルな印象を与えるデザインであり,インパクトのある革新的で斬新な意匠であり,看者の視覚に強烈な印象を与える。 (イ) 機能的な物品の意匠について放電ランプは,ランプホルダーとの関係において,基準面に当接する溝部と第2胴部の段差面,ランプホルダーに当接する第1胴部下面の機能は要求されるが,これらの機能を発揮するための構成を前提としても第1胴部,第2胴部,溝部についての意匠創作の余地は極めて広い。すなわち,上記機能を実現する プホルダーに当接する第1胴部下面の機能は要求されるが,これらの機能を発揮するための構成を前提としても第1胴部,第2胴部,溝部についての意匠創作の余地は極めて広い。すなわち,上記機能を実現するには,第2胴部上面が第1胴部下面の輪郭から突出し,形状を問わず段部を形成すること,第1胴部下面が真円形でないことが条件である。この種の機能を発揮する形状は,溝部に限られず,限りなく多様に考えられる。したがって,本件各意匠の形状は「物品の機能を確保するために不可欠な形状のみからなる意匠」とはいえない。 (ウ) 公知意匠について被告は,乙第4号証の意匠(以下「乙4意匠」という。)及び乙第5号証の意匠(以下「乙5意匠」という。)は,いずれも溝部を備えていると主張するが,これらの意匠は,第2切欠部に相当する構成を備えていないことから,そもそも本件意匠と比較する前提条件を欠く。 なお,その他の従来意匠(甲18)には,そもそも本件各意匠のような「溝部」を備えたものはない。 そもそも,従来意匠は,溝部自体が存在しない単一の形状の陰極側口金部を備えていたところ,本件各意匠は,このような単一の形状の陰極側口金部を,第1胴部と第2胴部という二つの部分に分け,さらに,この第1胴部と第2胴部の間に幅に比べて深さの深い凹部を形成した「溝部」としたこと,第2胴部上面の周縁の一部を,「溝部」を挟んで,同方向の第1胴部より中心から離れた構成(つまり挿入方向から見て,外側に飛び出した段部)として形成したものであることから,従来意匠とは,根本的に異なる画期的かつ斬新な極めて特徴的な美感を備えている。 (エ) 特許庁での類似判断について本件各意匠には,特許庁において類似する意匠と判断された意匠が多数存在す 期的かつ斬新な極めて特徴的な美感を備えている。 (エ) 特許庁での類似判断について本件各意匠には,特許庁において類似する意匠と判断された意匠が多数存在する。a 本件意匠1の関連意匠(甲34~39,40)本件意匠1の関連意匠としては,本件意匠2のほかに,登録意匠第1326164号(甲34,35。以下「甲35意匠」という。),同1326166号(甲36,37。以下「甲37意匠」という。)及び同1326167号(甲38,39。以下「甲39意匠」という。)が存する。b 本件各意匠との類似を理由に拒絶された意匠登録出願(甲41~48,49,50,52)意願2010-018756号(甲41,42。以下,その意匠を「甲41意匠」という。)は,本件意匠1と類似するという理由から拒絶されており,意願2010-018757号(甲43,44。 以下,その意匠を「甲43意匠」という。),意願2010-018758号(甲45,46。以下,その意匠を「甲45意匠」という。),意願2010-018759号(甲47,48。以下,その意匠を「甲47意匠」という。)は,本件意匠2と類似するという理由から拒絶されている。c 上記各意匠は,いずれも溝部の形状,すなわち二つの底面は回転軸に垂直な平面であって相互に平行に対向していること,溝部の深さは,少なくとも溝部の幅と同等かそれよりも深く形成されていること,右側面図によると第2胴部の底面の輪郭は,第1胴部の周囲からはみ出して見えること(特に第1切欠部と第2切欠部において顕著であること)が共通している。なお,第1胴部下面,第2胴部 上面の形状は,概ね環状ではあるものの様々であるが,これは,通 はみ出して見えること(特に第1切欠部と第2切欠部において顕著であること)が共通している。なお,第1胴部下面,第2胴部 上面の形状は,概ね環状ではあるものの様々であるが,これは,通常見えない部分であって,部分意匠の美感にはさほど影響しない。 (オ) 本件各意匠の要部上記のとおり,放電ランプとしての機能,用途及び性質から必然的に決定される部分を捨象し,本件各意匠の出願前に公知であった意匠と比較し,関連する意匠の類否判断等を踏まえると,本件各意匠の構成において,取引者,需要者の注意を最も惹く部分,すなわち要部は次のとおりである。 D: 放電ランプの陰極側口金部に設けられた環状の溝部であって,第1胴部下面と第2胴部上面との間に形成された,第1胴部下面の輪郭の回転軸からの距離を超えない半径の円柱の周面を底とする溝部であって,a)前記二つの底面は,回転軸に垂直な平面であってb)相互に平行に対向しており,c)第2胴部上面の輪郭は第1胴部下面の輪郭と比較して,回転軸の方向から見て回転軸を中心とした同一方向において,いずれの方向においても回転軸からの距離が等しいか又は大きくなっているため,前記溝部において,第1胴部側においては,第2胴部側に比較してより外部に開放されるように形成され,d)前記溝部の最大深さは,前記溝部の幅よりも深い。(2) 被告意匠の構成被告意匠の基本的構成態様は,放電ランプの端部に設けられた概ね円柱状の陰極側口金部の部分である。 被告意匠の具体的構成態様は,別紙本件各意匠及び被告意匠の構成(当事者の主張)の(原告の主張)欄記載のとおりである。 (3) 本件意匠1と被告意匠との類否本件意匠1の図面に破線で示された意匠に係る物品と,被 び被告意匠の構成(当事者の主張)の(原告の主張)欄記載のとおりである。 (3) 本件意匠1と被告意匠との類否本件意匠1の図面に破線で示された意匠に係る物品と,被告製品の形状は実質的に同一といえるほど近似している。したがって,本件意匠1に係る物品と被告製品の形状の比較において,本件意匠1と被告意匠との類似性を妨げるような事情は存しない。以上を前提に類否を検討する。 ア共通点本件意匠1と被告意匠との共通点は,以下のとおりである。 (ア) 構成Aについて① 第1胴部下面の第1切欠部が,円柱の側面を,底面が点対称をなすように一対の対向する面により切り欠いて形成された点② 第1胴部下面が,第1切欠部を有する略円柱状の回転軸に垂直な平面からなる点イ   構成Bについて① 第2胴部上面の第2切欠部が,円柱の側面を,底面が点対称及び線対称をなすように,かつ,一対の平行して対向する面により切り欠いて形成された点② 第2胴部上面が,第2切欠部を有する略円柱状の回転軸に垂直な平面からなる点(ウ) 構成Cについて第2切欠部が,第2胴部に設けられ,円柱の側面を切り欠いて形成した,回転軸に対して点対称及び線対称をなす一対の対向する面からなる点(エ) 構成Dについて① 溝部が,第1胴部下面と第2胴部上面との間に形成された点② 溝部が,円柱の周面を底とする点③ 溝部の二つの底面が,回転軸に垂直な平面である点④ 溝部の二つの底面は,相互に平行に対向している点⑤ 第2胴部上面の輪郭は第1胴部下面の輪郭と比較して,回転軸の方向から見て回転軸を中心とした同一方向において,いずれの方向においても回転軸から ④ 溝部の二つの底面は,相互に平行に対向している点⑤ 第2胴部上面の輪郭は第1胴部下面の輪郭と比較して,回転軸の方向から見て回転軸を中心とした同一方向において,いずれの方向においても回転軸からの距離が等しいか又は大きくなっているため,溝部において,第1胴部下面側においては,第2胴部上面側に比較してより外部に開放されるように形成されている点⑥ 溝部の最大深さは溝部の幅よりも深い点イ相違点本件意匠1と被告意匠の相違点は,以下のとおりである。 (ア) 構成Aについて本件意匠1の第1胴部下面を切り欠く第1切欠部が,平行な平面で線対称であるのに対し,被告意匠では,曲面で線対称でない点で相違する。 (イ) 構成Bについて本件意匠1の第2胴部下面を切り欠く第2切欠部が,平面間の距離が第1切欠部を形成する平面間の距離よりも長く,平行な平面であるのに対し,被告意匠では,第2切欠部が,曲面間の最小距離が第1胴部を形成する曲面間を回転軸を通る直線で結んだ最小距離より長く,円弧状の曲面である点で相違する。 (ウ) 構成Cについて本件意匠1の第2切欠部が,第2胴部のみに設けられた正面方向から見て長方形の平行な平面であるのに対し,被告意匠では,第2胴部の陽極側に隣接して設けられたより小さな直径の円柱にまで連続している正面方向から見て陽極側に凸字形に形成された円弧状の曲面である点で相違する。 ウ検討ア  被告意匠が本件意匠1の要部を備えること本件意匠1も被告意匠も,上記要部の構成を共通して備え,共通の美感を有する。イ  相違点についてa 構成A,Bの相違点について第1胴部下面の形状,第2胴部上 ること本件意匠1も被告意匠も,上記要部の構成を共通して備え,共通の美感を有する。イ  相違点についてa 構成A,Bの相違点について第1胴部下面の形状,第2胴部上面の形状は視覚を通じて美感を生じさせにくい。第1切欠部自体は,看者の視覚により捉えられやすいが,第1切欠部自体は部分意匠を構成するものではない。 なお,上記のとおり,第1胴部下面の形状,第2胴部上面の形状については,異なる意匠が多数類似するものと判断されている事実からも,これらの形状の違いは,溝部が看者に与える共通の審美性の妨げにならないことが裏付けられる。 b 構成Cの相違点について第2切欠部が正面視長方形からなる平面であるか,正面視陽極側に凸字形に形成された概ね長方形からなる曲面であるかは,正面図を比較すると分かるように,ほとんどその印象に差がない。ウ  小括被告意匠は,本件意匠1の備える要部をそのまま有している一方,相違点は些細なものである。したがって,本件意匠1と被告意匠は類似する。(4) 本件意匠2と被告意匠との類否 本件意匠2の図面に破線で示された意匠に係る物品と,被告製品の形状は実質的に同一といえるほど近似している。したがって,本件意匠2に係る物品と被告製品の形状の比較において,本件意匠1と被告意匠との類似性を妨げるような事情は存しない。 ア共通点本件意匠2と被告意匠との共通点は,以下のとおりである。 (ア) 構成Aについて① 第1胴部下面の第1切欠部が,円柱の側面を,底面が点対称をなすように一対の対向する面により切り欠いて形成された点② 第1胴部下面が,第1 (ア) 構成Aについて① 第1胴部下面の第1切欠部が,円柱の側面を,底面が点対称をなすように一対の対向する面により切り欠いて形成された点② 第1胴部下面が,第1切欠部を有する略円柱状の回転軸に垂直な平面からなる点(イ) 構成Bについて① 第2胴部上面の第2切欠部が,円柱の側面を,底面が点対称及び線対称をなすように,かつ,一対の対向する面により切り欠いて形成された点② 第2胴部上面が,第2切欠部を有する略円柱状の回転軸に垂直な平面からなる点(ウ) 構成Cについて第2切欠部が,第2胴部に設けられ,円柱の側面を切り欠いて形成した,回転軸に対して点対称及び線対称をなす一対の対向する面からなる点(エ) 構成Dについて① 溝部が,第1胴部下面と第2胴部上面との間に形成された点② 溝部が,円柱の周面を底とする点③ 溝部の二つの底面が,回転軸に垂直な平面である点④ 溝部の二つの底面は,相互に平行に対向している点⑤ 第2胴部上面の輪郭は第1胴部下面の輪郭と比較して,回転軸の方向から見て回転軸を中心とした同一方向において,いずれの方向においても回転軸からの距離が等しいか又は大きくなっているため,溝部において,第1胴部下面側においては,第2胴部上面側に比較してより外部に開放されるように形成されている点⑥ 溝部の最大深さは溝部の幅よりも深い点イ相違点本件意匠2と被告意匠の相違点は,以下のとおりである。 (ア) 構成Aについて① 本件意匠2の第1胴部下面を切り欠く第1切欠部が,線対称であるのに対し,被告意匠では,曲面で線対称でない点で相違する。 ② 本件意匠2の第1切欠部が,円弧状の曲面であ いて① 本件意匠2の第1胴部下面を切り欠く第1切欠部が,線対称であるのに対し,被告意匠では,曲面で線対称でない点で相違する。 ② 本件意匠2の第1切欠部が,円弧状の曲面であるのに対し,被告意匠では,略S字状に形成された曲面である点で相違する。 (イ) 構成Bについて本件意匠2の第2胴部上面を切り欠く第2切欠部が,略平面間の距離が第1切欠部を形成する曲面間の最小距離よりも長くなるように一対の平行して対向する略平面により切り欠き,さらにその中央部と一対の対向する円弧状の曲面により切り欠いて形成したものであるに対し,被告意匠では,第2切欠部が,曲面間の最小距離が第1胴部を形成する曲面間を回転軸を通る直線で結んだ最小距離より長い円弧状の曲面である点で相違する。 (ウ) 構成Cについて① 本件意匠2の第2切欠部が,平行な平面と,この平面の中央に設けられた狭く浅い直線状の円弧状の曲面であるのに対し,被告意匠では,円弧状の曲面である点で相違する。 ② 本件意匠2の第2切欠部が,第2胴部のみに設けられた正面方向から見て略長方形の平面であるのに対し,被告意匠では,第2胴部の陽極側に隣接して設けられたより小さな直径の円柱にまで連続しており,正面方向から見て陽極側に凸字形に形成された概ね長方形の曲面である点で相違する。 ウ検討(ア) 被告意匠が本件意匠2の要部を備えること本件意匠2も被告意匠も,上記要部の構成を共通して備え,共通の美感を有する。 (イ) 相違点についてa 構成A,Bの相違点について第1胴部下面の形状,第2胴部上面の形状は視覚を通じて美感を生じさせにくい。第1切欠部自体は,看者の視覚により捉えられやすいが,第1 ) 相違点についてa 構成A,Bの相違点について第1胴部下面の形状,第2胴部上面の形状は視覚を通じて美感を生じさせにくい。第1切欠部自体は,看者の視覚により捉えられやすいが,第1切欠部自体は部分意匠を構成するものではない。 なお,上記のとおり,第1胴部下面の形状,第2胴部上面の形状については,異なる意匠が多数類似するものと判断されている事実からも,これらの形状の違いは,溝部が看者に与える共通の審美性の妨げにならないことが裏付けられる。 b 構成Cの相違点について第2切欠部が正面視長方形からなる平面であるか,正面視陽極側に凸字形に形成された概ね長方形からなる曲面であるかは,正面図を比較すると分かるように,ほとんどその印象に差がない。ウ  小括被告意匠は,本件意匠2の備える要部をそのまま有している一方,相違点は些細なものである。したがって,本件意匠2と被告意匠は類似する。【被告の主張】(1) 本件各意匠の構成ア本件各意匠の構成本件各意匠の構成は,別紙本件各意匠及び被告意匠の構成(当事者の主張)の(被告の主張)欄記載のとおりである。 イ本件各意匠の要部本件各意匠に係る物品及び被告製品は,いずれも光源ユニットを使用する者の手でランプホルダーに取り付けられるものであり,したがって,第1胴部下面,第2胴部上面及び第2切欠部の切欠面の各形状は看る者の視覚に当然に捉えられる部分である。 原告の主張は,要するに放電ランプの陰極側口金部に,回転軸に垂直な二つの平面で挟まれた環状の溝部が存在すること自体を要部だとする主張に等しい。しかしながら,①放電ランプの陰極側口金部に,回転軸に垂直な二つ 張は,要するに放電ランプの陰極側口金部に,回転軸に垂直な二つの平面で挟まれた環状の溝部が存在すること自体を要部だとする主張に等しい。しかしながら,①放電ランプの陰極側口金部に,回転軸に垂直な二つの平面で挟まれた環状の溝部が存在する構成は,機能,作用効果を達することを主目的としたものに過ぎず,美感を生じさせる構成ではないから,要部とはなりえず,また,②放電ランプの陰極側口金部に環状の溝部が存在する構成は,本件各意匠出願前から公知な構成であるから(乙4,5),溝部の存在をもって要部と解する余地はない。 (2) 被告意匠の構成被告意匠の構成は,別紙本件各意匠及び被告意匠の構成(当事者の主張)の(被告の主張)欄記載のとおりである。 (3) 本件意匠1と被告意匠との類否ア構成Aについて本件意匠1では,第1胴部下面は,一対の直線と一対の円弧状曲線で形成された点対照および線対称をなす図形となっており,四角形にも似たシンプルで静的な印象を与える。これに対し,被告意匠では,第1胴部下面は,略S字状に形成された二つの曲面で,点対称をなすように形成されている。また,全体として略楕円形状となっている上,略S字状に形成された二つの曲面で形成されているため線対称とはなっておらず,右上と左下に鋭角的なカギ状の突状部を備えておりその部分が看る者の目を惹く構成となっている。そのため,全体としてはS字形状のようにも看取されるところであり,複雑かつ流麗で動的な印象を与えるものとなっている。 イ構成B及びCについて本件意匠1の第2胴部は,円柱を一対の平行して対向する平面によって切り欠いた形状となっていることから,その上面は円形の要素が支配的となっており,また,斜めから見ると,上面を構成する2本の直線 本件意匠1の第2胴部は,円柱を一対の平行して対向する平面によって切り欠いた形状となっていることから,その上面は円形の要素が支配的となっており,また,斜めから見ると,上面を構成する2本の直線は第1胴部下面の2本の直線と平行して配置されているために,その第1胴部下面を形成する直線,第2胴部の上面及び下面を形成する直線の計3本の直線が一体的に看取でき,全体として極めて整序された静的かつシンプルな印象を与えている。これに対し,被告意匠の第2胴部には,円柱を一対の対向する円弧状の曲面によりえぐるようにして構成された第2切欠部が構成されており,その上面は,看る者に回転を連想させる動的な印象を与え,また,斜めから見ると,第1胴部下面を形成する略S字状の曲線と第2胴部上面を形成するU字状の曲線があたかも二つの波がぶつかり合うような力強く動的な印象を与えている。 その上,本件意匠1の第2切欠部は長方形の平面からなる極めてシンプルな形状であるのに対し,被告意匠の第2切欠部は凸字形の曲面で第2胴部を大きくえぐるような切欠面から形成されており,凸部分が指し示す他方の口金部(被告製品でいえば陽極側口金部方向)への流れと,波打つような略S字状に形成された第1胴部下面を構成する曲線と,第2切欠部の深くえぐられた凹部とが,互いに相反するかのような複雑な動きを連想させ,看る者にダイナミックな動的印象を与えている。 ウ小括以上のとおり,被告意匠及び本件意匠1は,放電ランプを使用する者であれば当然に目にする第1胴部下面,第2胴部上面,及び第2切欠部の切欠面の形状について,かように多くの差異点を有し,これら差異点によって両者は全く異なる美感を生じさせるものであるから,被告意匠は,本件意匠1と美感を異にするものであって,本件意匠 欠部の切欠面の形状について,かように多くの差異点を有し,これら差異点によって両者は全く異なる美感を生じさせるものであるから,被告意匠は,本件意匠1と美感を異にするものであって,本件意匠1に類似するものではない。 (4) 本件意匠2と被告意匠との類否ア構成A本件意匠2では,第1胴部下面は,一対の円弧状の曲面とそれより曲率が小さい緩やかな一対の円弧状の曲面から形成された点対称及び線対称をなす図形となっており,その第1切欠部は円弧状ではあるものの曲率が緩やかなために,全体としてシャープな印象を与える上,切欠部の端がわずかに突起していることもあって,全体に四角形様に看取される構成になっている。これに対し,被告意匠では,第1胴部下面は,略S字状に形成された二つの曲面で,点対称をなすように形成されている。全体として略楕円形状となっている上,略S字状に形成された二つの曲面で構成されているために,線対称とはなっておらず,右上と左下に鋭角的なカギ状の突状部を備えており,全体としてはむしろS字形のように看取され,複雑かつ流麗で動的な印象を与えるものとなっている。イ構成B及びC本件意匠2の第2胴部上面は,円柱を一対の平行して対向する長方形の略平面により切り欠かれて構成されており,全体として円形の要素が支配的で,整序された静的かつシンプルな印象を与える。これに対し,被告意匠の第2胴部上面は,円柱を一対の対向する深い円弧状の曲面によりえぐるようにして構成されており,その上面は,看る者に回転を連想させる動的な印象を与え,また,斜めから見ると,第1胴部下面を形成する略S字状の曲線と第2胴部上面を形成するU字 状の曲線があたかも波がぶつかり合うような力強く動的な印象を与えている。そ 印象を与え,また,斜めから見ると,第1胴部下面を形成する略S字状の曲線と第2胴部上面を形成するU字 状の曲線があたかも波がぶつかり合うような力強く動的な印象を与えている。その上,本件意匠2の第2切欠部の切欠面は,中央に細い直線上の溝を備えることで,略T字状のデザインを思わせ,全体としてシャープな印象を与えているのに対し,被告意匠の第2切欠部の切欠面は,凸字形の曲面で第2胴部を大きくえぐるように形成されており,凸部分が指し示す他方の口金部(被告製品でいえば陽極側口金部方向)への流れと,波打つような略S字状に形成された第1胴部下面を形成する曲線と,第2切欠部の深くえぐられた凹部とが,互いに相反するかのような複雑な動きを連想させ,看る者にダイナミックな動的印象を与えている。ウ小括以上のとおり,被告意匠及び本件意匠2は,放電ランプを使用する者であれば当然に目にする第1胴部下面,第2胴部上面,及び第2切欠部の切欠面の形状について,かように多くの差異点を有し,これら差異点は全く異なる美感を生じさせるものであるから,被告意匠は,本件意匠2と美感を異にするものであって,本件意匠2に類似するものではない。 2 争点2(原告の損害)について【原告の主張】(1) 被告が被告各製品を販売したことにより,原告は,原告製品について平成21年につき2649本,平成22年につき2211本の販売機会を失った。 原告製品の1本当たりの利益額は1万5840円であるところ,意匠法39条1項により,合計7698万2000円が原告の損害額である。 (2) また,原告には,弁護士費用及び弁理士費用相当額として,769万円の損害が生じた。 (3) したがって,原告の損害額は,合計8467万2400円で 原告の損害額である。 (2) また,原告には,弁護士費用及び弁理士費用相当額として,769万円の損害が生じた。 (3) したがって,原告の損害額は,合計8467万2400円である。 【被告の主張】原告の主張は否認し,争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告意匠は本件各意匠に類似するか)について(1) 本件意匠1の構成ア本件意匠1は,別紙本件意匠公報1記載のとおりであるところ,その構成態様は,次のとおりと認められる。 (基本的構成態様)本件意匠1は,放電ランプ口金部のうち,①上側に位置する略円柱状の胴部(「第1胴部」)の下面,②下側に位置する略円柱状の胴部(「第2胴部」)の上面,③第1胴部と第2胴部との間の円柱状の溝部,④第2胴部側面の一対の対向する切欠部(第2切欠部)からなる。 第1胴部下面及び第2胴部上面は,ランプの回転軸に垂直であり,溝部は同軸を中心に設けられている。 (具体的構成態様)A 第1胴部下面の形状円を,一対の対向する直線(以下「直線A」という。)により,点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面B 第2胴部上面の形状上記Aの円と等しい直径を有する円を,一対の対向する直線(以下「直線B」という。)により点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面直線A,Bはいずれも同じ向きであり,直線B間の距離は,直線A間の距離よりも長い。 C 第2切欠部の形状第2胴部の円柱を,直線Bによって回転軸の方向に切り欠いた面であり,切欠面は平面としての長方形である。 D 溝部溝部を構成する円柱の底面の直径は,直線A間の 2切欠部の形状第2胴部の円柱を,直線Bによって回転軸の方向に切り欠いた面であり,切欠面は平面としての長方形である。 D 溝部溝部を構成する円柱の底面の直径は,直線A間の距離とほぼ同一である。 イなお,原告は,本件意匠1の構成について,溝部の最大深さは,溝部の幅よりも深いと主張するが,このような長さの違いは,需要者の通常の使用態様で認識できるものとは認められず,上記構成に含めるのは相当ではない。 (2) 本件意匠2の構成ア本件意匠2は,別紙本件意匠公報2記載のとおりであるところ,その構成態様は,次のとおりと認められる。 (基本的構成態様)本件意匠2は,放電ランプ口金部のうち,①上側に位置する略円柱状の胴部(「第1胴部」)の下面,②下側に位置する略円柱状の胴部(「第2胴部」)の上面,③第1胴部と第2胴部との間の円柱状の溝部,④第2胴部側面の一対の対向する切欠部(第2切欠部)からなる。 第1胴部下面及び第2胴部上面は,ランプの回転軸に垂直であり,溝部は同軸を中心に設けられている。 (具体的構成態様)A 第1胴部下面の形状円を,回転軸に向かって凹の円弧状の緩やかな一対の対向する曲線(以下「曲線A」という。)により,点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面B 第2胴部上面の形状上記Aの円と等しい直径を有する円を,その中央に,回転軸に向かって凹の円弧状の部分を有する一対の対向する直線(以下「有凹直線B」という。)により,点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面曲線A,有凹直線Bはいずれも同じ向きであり,有凹直線B間の距離は,曲線A間の距離よりも長い。 C 線B」という。)により,点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面曲線A,有凹直線Bはいずれも同じ向きであり,有凹直線B間の距離は,曲線A間の距離よりも長い。 C 第2切欠部の形状第2胴部の円柱を,有凹直線Bによって回転軸の方向に切り欠いた面であり,切欠面は平面としての長方形で,その中央に円弧状の溝が設けられている。 D 溝部溝部を構成する円柱の底面の直径は,曲線A間の距離よりもやや短い。 ウなお,原告は,本件意匠2の構成について,溝部の最大深さは,溝部の幅よりも深いと主張するが,このような長さの違いは,需要者の通常の使用態様で認識できるものとは認められず,上記構成に含めるのは相当ではない。 (3) 被告意匠の構成ア証拠(乙1等)及び弁論の全趣旨によれば,被告意匠の構成態様は次のとおりと認められる。 (基本的構成態様)本件意匠1は,放電ランプ口金部のうち,①上側に位置する略円柱状の胴部(「第1胴部」)の下面,②下側に位置する略円柱状の胴部(「第2胴部」)の上面,③第1胴部と第2胴部との間の円柱状の溝部,④第2胴部側面の一対の対向する切欠部(第2切欠部)からなる。 第1胴部下面及び第2胴部上面は,ランプの回転軸に垂直であり,溝部は同軸を中心に設けられている。 (具体的構成態様)A 第1胴部下面の形状二つの略S字状の曲線(以下「曲線A」という。)により,点対称をなし線対称をなさないように形成した面B 第2胴部上面の形状曲線A間の回転軸を通る最大距離とほぼ等しい直径を有する円を,回転軸に向かって凹となる一対の曲線(以下「曲線B」という。)により,点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した,銀行の地図記 状曲線A間の回転軸を通る最大距離とほぼ等しい直径を有する円を,回転軸に向かって凹となる一対の曲線(以下「曲線B」という。)により,点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した,銀行の地図記号に類似する形状の面曲線B間の最小距離は,曲線A間の回転軸を通る最小距離よりも長い。 C 第2切欠部の形状第2胴部の円柱及びその下側にある円柱を,曲線Bによって回転軸の方向に切り欠いた面であり,切欠面は内側に湾曲した長方形で,下に小さな凸部がある。 D 溝部溝部を構成する円柱の底面の直径は,曲線A間の回転軸を通る最小距離とほぼ同一である。 イなお,被告は,被告意匠の構成について,第2胴部上面の直径が第1胴部下面の直径よりも短いと主張するが,このような長さの違いは,需要者の通常の使用態様で認識できるものとは認められず,上記構成に含めるのは相当ではない。 (4) 本件各意匠の要部についてア本件各意匠に係る物品である放電ランプは,光源ユニットに取り付けるなどして使用されるもので(甲4の1~3),口金部は,当該ランプを光源ユニットのランプホルダーに固定するための部分である。 上記放電ランプをランプホルダーに取り付ける際には,まず,口金部の溝部と第2胴部との段差面をランプホルダー内の基準面に当接するまで挿入し,次に,放電ランプとランプホルダー内の回転部を90度回転させて,最後に,第1胴部の下面を自重によりランプホルダーに当接させる(甲7,9)。 すなわち,本件各意匠では,溝部の直径が直線(曲線)A間の距離以下であること,直線(有凹直線)B間の距離が直線(曲線)A間の距離よりも長いこと,第1胴部の下面は,円を一対の対向する直線(曲線)で切り欠いたものであることによって,溝 径が直線(曲線)A間の距離以下であること,直線(有凹直線)B間の距離が直線(曲線)A間の距離よりも長いこと,第1胴部の下面は,円を一対の対向する直線(曲線)で切り欠いたものであることによって,溝部がランプホルダーに接合するようになっている。 なお,取り付け後は,本件各意匠の部分はランプホルダーに隠れるため,外側からは認識されない。 イ原告は,遅くとも平成16年から放電ランプ(LP2511T)を製造販売していたと認められるが,これについては,陰極側口金部の第1胴部と第2胴部との間に円柱状の溝部が存在すること,第1胴部下面と第2胴部上面の大きさがほぼ同一であることが認められる。また,ウシオ電機株式会社が平成6年から販売していた超高圧水銀ランプ(USH-255BY)には,陰極側口金部に回転軸に垂直な二つの平面で挟まれた円柱状の溝部が存在すること,上記二つの平面の大きさはほぼ同一であることが認められる(乙4,5,弁論の全趣旨)。 さらに,放電ランプではなく表示用白熱電球に係る意匠についてであるが,本件各意匠登録出願前のもので,取付板にソケット部分を嵌合固定するものがあり(意匠登録第755492号),同意匠には,大きさがほぼ同一の二つの底面に挟まれた溝部の構成が認められる(甲18)。 ウ登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものであるところ(意匠法24条2項),その判断にあたっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,需要者の注意が惹き付けられる部分を要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。 の存否等を参酌して,需要者の注意が惹き付けられる部分を要部として把握した上で,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察し,全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。 本件各意匠に係る物品及び被告各製品は,いずれも放電ランプであり,光源ユニットのランプホルダーに,前記認定の方法で取り付けて使用することを予定したものであることを考慮すると,取引の際,あるいは取り付けの際には一定方向からしか観察しないということはなく,ランプホルダーに取り付けた後には,通常見えなくなる部分についても,全体として観察の対象になるというべきである。 また,原告は,第1胴部下面及び第2胴部上面の形状は,第1胴部又は第2胴部によって通常見えない部分であって,部分意匠の美感にはさほど影響しない旨主張するが,意匠公報の各図面からも明らかなとおり,上記各形状は,取引又は取り付けの際に,第1胴部及び第2胴部の形状自体から看取できることから,直接視認することが困難であることをもって,美感に影響しないとはいえない。 また,大きさがほぼ同じ第1胴部下面と第2胴部上面という2つの底面とその間に設けられた円柱部からなる溝部が存在することについては,それ自体は,公知意匠(乙4,5)にもみられ,溝部が存在すること自体は,前記認定のとおり,放電ランプをランプホルダーに取り付けるために必要な構成であって,本件各意匠の溝部の構成に格別に美感を生じさせる要素ではない。 以上を総合すると,本件各意匠の要部は,溝部ではなく,第1胴部下面の形状,第2胴部上面の形状及び第2切欠部の形状であると解するのが相当である。 原告は,乙4意匠及び乙5意匠は第2切欠部を有しないため公知意匠として参酌する前提を欠くと主張するが,これらの意匠も意匠に係る 切欠部の形状であると解するのが相当である。 原告は,乙4意匠及び乙5意匠は第2切欠部を有しないため公知意匠として参酌する前提を欠くと主張するが,これらの意匠も意匠に係る物品は同一であることから,公知意匠として参酌することは許されるというべきであって,原告の主張は採用できない。 (5) 本件意匠1と被告意匠との対比ア共通点本件意匠1と被告意匠は,基本的構成態様において共通している。 また,具体的構成態様については,第1胴部下面と第2胴部上面の各大きさ(回転軸を通る最大距離)がほぼ同一であること,溝部を構成する円柱の底面の直径は,直線A間の距離(本件意匠1),略S字状の曲線A間の回転軸を通る最小距離(被告意匠)とほぼ同一である点において,共通している。 イ相違点本件意匠1と被告意匠は,以下の点において相違する。 A 第1胴部下面について,本件意匠1は,円を直線Aにより点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面であるのに対し,被告意匠は,略S字状の曲線Aにより点対称をなし線対称をなさないように形成した面であることB 第2胴部上面について,本件意匠1は,円を直線Bにより点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面であるのに対し,被告意匠は,円を曲線Bにより点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した,銀行の地図記号に類似する面であることC 第2切欠部について,本件意匠1は,直線Bによって第2胴部の円柱を切り欠いた面であり,切欠面はいずれも平面としての長方形であるのに対し,被告意匠は,曲線Bによって第2胴部の円柱及びその下側にある円柱を切り欠いた面であり,切欠面はいずれも内側に湾曲した長方形で,下側に小さな凸部があることウ類 るのに対し,被告意匠は,曲線Bによって第2胴部の円柱及びその下側にある円柱を切り欠いた面であり,切欠面はいずれも内側に湾曲した長方形で,下側に小さな凸部があることウ類否以上を踏まえて,類否について検討する。 (ア) 上記のとおり,本件意匠1と被告意匠は,基本的構成態様が共通しているが,第1胴部下面と第2胴部上面との間に円柱状の溝部が存在すること自体は,上記のとおり本件各意匠の要部とはいえない。また,第2切欠部は本件各意匠の要部に関するものであり,公知意匠においても第2切欠部を有するものが見当たらないことからすれば,第2切欠部が存在する被告意匠についても一定の美感の共通性が生じているといえるが,その具体的形状は下記のとおり異なっている。 また,本件意匠1と被告意匠は,第1胴部下面と第2胴部上面の各大きさ(回転軸を通る最大距離)がほぼ同一であること,溝部を構成する円柱の底面の直径は,直線A間の距離(本件意匠1),略S字状の曲線A間の回転軸を通る最小距離(被告意匠)とほぼ同一である点において,共通している。しかしながら,第1胴部下面と第2胴部上面の大きさがほぼ同一であることは,乙4意匠,乙5意匠でも看取されるものであるし,溝部を構成する円柱は,第1胴部と第2胴部に挟まれる部分であることからすれば,その底面の大きさは需要者にそれほど強い印象を与えるともいえない。 (イ) 一方,本件意匠1と被告意匠の相違点はいずれも要部に関するものであるところ,第1胴部下面は,本件意匠1では,円を一対の対向する直線により線対称かつ点対称をなすように切り欠いた形状であるから,より規則的で静的な印象を与えるのに対し,被告意匠では,二つの略S字状の曲線による点対称の形状で,線対称の性質を有しないことから,むしろ回 より線対称かつ点対称をなすように切り欠いた形状であるから,より規則的で静的な印象を与えるのに対し,被告意匠では,二つの略S字状の曲線による点対称の形状で,線対称の性質を有しないことから,むしろ回転をイメージさせる動的な印象を与えている。そして,第1胴部はランプホルダーに差し込まれ,自重によりその下面はランプホルダーと当接してランプを支える機能を有することからすれば,第1胴部下面は,特に需要者の注意を惹く部分といえるのであって,上記相違点は美感に大きな影響を与えている。 また,第2胴部上面は,本件意匠1では,第1胴部下面の場合と同様により規則的で静的な印象を与えるに対し,被告意匠では,円を回転軸に向かって凹となる一対の曲線によって大きく切り欠いて形成した銀行の地図記号に類似する形状であることから,線対称ではあるもののより動的な印象を与えている。そして,これに伴って,第2切欠部についても,同様に印象の相違が生じている。 (ウ) 以上のとおり,本件意匠1と被告意匠は,第1胴部下面の形状,第2胴部下面の形状,第2切欠部の形状について,異なる美感を生じている。 本件意匠1と被告意匠を全体としてみると,いずれも第2切欠部が存在すること自体によって,一定の印象の共通性が生じるものの,第1胴部下面,第2胴部上面及び第2切欠部の各形状の相違点が組み合わさることによって,本件意匠1では,第1胴部下面と第2胴部上面がいずれも線対称であるから,規則的で静的な印象を強めているのに対し,被告意匠では,第2胴部上面は線対称であるも第1胴部下面は線対称ではないことから,不規則で動的な印象を強めているということができる。 したがって,被告意匠を全体として観察したときに,本件意匠1と類似の美感が生じるとまでは認められず,両意匠が 下面は線対称ではないことから,不規則で動的な印象を強めているということができる。 したがって,被告意匠を全体として観察したときに,本件意匠1と類似の美感が生じるとまでは認められず,両意匠が類似しているということはできない。 エ小括以上のとおり,本件意匠1と被告意匠は類似するとは認められない。 なお,本件意匠1については,関連意匠として,登録意匠第1326164号(甲35意匠),同1326166号(甲37意匠)及び同1 326167号(甲39意匠)があり,また,本件意匠1と類似するとして拒絶査定された意匠登録出願として,意願2010-018756号(甲41意匠)があり,原告はこの点をもって本件意匠1と被告意匠が類似する旨主張する。しかしながら,甲35意匠及び甲39意匠は,第1胴部下面の形状が本件意匠1と共通であり,甲37意匠及び甲41意匠は,第2胴部上面の形状が本件意匠1と共通であり,いずれも被告意匠の場合と比較して,より多くの共通点を有しているものであって,上記結論に影響するものではない。 (6) 本件意匠2と被告意匠との対比ア共通点本件意匠2と被告意匠は,基本的構成態様において共通している。 また,具体的構成態様については,第1胴部下面と第2胴部上面の各大きさ(回転軸を通る最大距離)がほぼ同一であること,溝部を構成する円柱の底面の直径は,曲線A間の距離(本件意匠2),略S字状の曲線A間の回転軸を通る最小距離(被告意匠)とほぼ同一である点において,共通している。 イ相違点本件意匠1と被告意匠は,以下の点において相違する。 A 第1胴部下面について,本件意匠2は,円を曲線Aにより点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面であるのに対し, イ相違点本件意匠1と被告意匠は,以下の点において相違する。 A 第1胴部下面について,本件意匠2は,円を曲線Aにより点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面であるのに対し,被告意匠は,略S字状の曲線Aにより点対称をなし線対称をなさないように形成した面であることB 第2胴部上面について,本件意匠2は,円を有凹直線Bにより点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面であるのに対し,被告意匠は,円を曲線Bにより点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した,銀行の地図記号に類似する面であることC 第2切欠部について,本件意匠2は,有凹直線Bによって,第2胴部の円柱を切り欠いた面であり,切欠面はいずれも平面としての長方形で,その中央に円弧状の溝が設けられているのに対し,被告意匠は,曲線Bによって,第2胴部の円柱及びその下側の円柱を切り欠いた面であり,切欠面はいずれも内側に湾曲した長方形で,その下側に小さな凸部があることウ類否以上を踏まえて,類否について検討する。 (ア) 上記のとおり本件意匠2と被告意匠は,基本的構成態様が共通しているが,第1胴部下面と第2胴部上面との間に円柱状の溝部が存在すること自体は,上記のとおり本件各意匠の要部とはいえない。また,第2切欠部は本件各意匠の要部に関するものであり,公知意匠においても第2切欠部を有するものが見当たらないことからすれば,第2切欠部が存在する被告意匠についても一定の美感の共通性が生じているといえるが,その具体的形状は下記のとおり異なっている。 また,本件意匠2と被告意匠は,第1胴部下面と第2胴部上面の各大きさ(回転軸を通る最大距離)がほぼ同一であること,溝部を構成する円柱の底面の直径は,曲線A間の距離(本件意匠2) おり異なっている。 また,本件意匠2と被告意匠は,第1胴部下面と第2胴部上面の各大きさ(回転軸を通る最大距離)がほぼ同一であること,溝部を構成する円柱の底面の直径は,曲線A間の距離(本件意匠2),略S字状の曲線A間の回転軸を通る最小距離(被告意匠)とほぼ同一である点において,共通している。しかしながら,第1胴部下面と第2胴部上面の大きさがほぼ同一であることは,乙4意匠,乙5意匠でも看取されるものであるし,溝部を構成する円柱は,第1胴部と第2胴部に挟まれる部分であることからすれば,その底面の大きさは需要者にそれほど強い印象を与えるともいえない。 (イ) 一方で,本件意匠1と被告意匠の相違点はいずれも要部に関するものであるところ,第1胴部下面は,本件意匠2では,円を回転軸に向かって凹の円弧状の緩やかな一対の対向する曲線により点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面であるが,その曲線は緩やかであるため,より規則的で静的な印象を与えるのに対し,被告意匠では,二つの略S字状の曲線による点対称の形状で,線対称の性質を有しないことから,むしろ回転をイメージさせる動的な印象を与えている。そして,上記(5)ウのとおり,第1胴部下面の形状の相違点は美感に大きな影響を与えているといえる。 また,第2胴部上面は,本件意匠2では,円をその中央に回転軸に向かって凹の円弧状の部分を有する一対の対向する直線により点対称及び線対称をなすように切り欠いて形成した面であることから,より規則的で静的な印象を与えるに対し,被告意匠では,円を回転軸に向かって凹となる一対の曲線により大きく切り欠いて形成した銀行の地図記号に類似する形状であることから,線対称ではあるもののより動的な印象を与えている。そして,これに伴って,第2切欠 は,円を回転軸に向かって凹となる一対の曲線により大きく切り欠いて形成した銀行の地図記号に類似する形状であることから,線対称ではあるもののより動的な印象を与えている。そして,これに伴って,第2切欠部についても,同様に印象の相違が生じている。 (ウ) 以上のとおり,本件意匠2と被告意匠は,第1胴部下面の形状,第2胴部下面の形状,第2切欠部の形状について,異なる美感を生じている。 本件意匠2と被告意匠を全体としてみると,いずれも第2切欠部が存在すること自体によって,一定の印象の共通性が生じるものの,第1胴部下面,第2胴部上面及び第2切欠部の各形状の相違点が組み合わさることによって,本件意匠2では,第1胴部下面と第2胴部上面がいずれも線対称であるから,規則的で静的な印象を強めているのに対し,被告意匠では,第2胴部上面は線対称であるも第1胴部下面は線対称ではないことから,不規則で動的な印象を強めているということができる。 したがって,被告意匠を全体として観察したときに,本件意匠2と類似の美感が生じるとまでは認められず,両意匠が類似しているということはできない。 エ小括以上のとおり,本件意匠2と被告意匠は類似するとは認められない。 なお,本件意匠2と類似するとして拒絶査定された意匠登録出願として,意願2010-018757号(甲43意匠),意願2010-018758号(甲45意匠),意願2010-018759号(甲47意匠)があり,原告はこの点をもって本件意匠2と被告意匠が類似する旨主張する。 しかしながら,甲43意匠及び甲45意匠は,第2胴部上面の形状が本件意匠2と共通であり,甲47意匠は,第1胴部下面の形状が本件意匠2と共通であり,いずれも被告意匠の場合と比較して,より多くの共通点を有 しながら,甲43意匠及び甲45意匠は,第2胴部上面の形状が本件意匠2と共通であり,甲47意匠は,第1胴部下面の形状が本件意匠2と共通であり,いずれも被告意匠の場合と比較して,より多くの共通点を有しているものであって,上記結論に影響するものではない。 2 原告の訴えの追加的変更についてなお,原告は,平成24年3月12日付け原告準備書面(7)において,原告が有する特許第4537488,4573311号の各特許権を有するところ,被告による被告製品の製造販売等が上記各特許権を侵害すると主張して,被告に対する特許法100条に基づく被告製品の製造販売等の差止め・廃棄請求及び特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求を追加するに至った。これに対し,被告は,変更前と変更後の請求との間には請求の基礎の同一性がなく,また,訴えの変更を認めた場合には訴訟手続が著しく遅延すると主張して,訴えの変更の不許を申し立てた。 この点,上記各特許権が,本件各意匠の構成に関連するものであるとしても,特許権侵害訴訟における攻撃防御方法は意匠権侵害訴訟の場合とは同一ではなく,したがって,当該訴えの追加的変更は「これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき」(民事訴訟法143条1項)に当たるというべきである。 したがって,当該訴えの追加的変更については,これを許可しない。  3 結論以上によれば,本件では,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求にはいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官谷有恒 裁判官松川充康 大阪地方裁判所第21民事部 裁判長裁判官 谷有恒 裁判官 松川充康 裁判官 網田圭亮

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