平成14(ネ)965 手付金返還請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成15年2月5日 名古屋高等裁判所
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判決文本文4,837 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 3 原判決は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 (3) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 2 被控訴人主文1,2項と同旨第2 事案の概要 1 本件は,被控訴人が建築請負業者である控訴人との間で,建物建築請負契約を予定した土地売買契約(建築条件付き宅地分譲)を締結したが,建物建築請負工事がされなかった経緯において,被控訴人から控訴人に対し,建物請負契約不成立により土地売買契約が解除となったとして土地売買契約の特約に基づき,支払った手付金200万円の返還及び遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,被控訴人の請求を認容したところ,控訴人が控訴したものである。 2 争いのない事実,前提事実及び争点(当事者の主張を含む)は,以下に当審主張を付加するほか,原判決「第2 事案の概要」の各該当欄に記載のとおりであるから,これを引用する(但し,原判決2頁7行目の「という。」を「という。)」と改め,同5頁3行目の「被告の前記販売広告中の」を「本件広告中の」と改める。)。 3 控訴人の当審主張(1) 争点(1)についてア原判決は,本件広告中の「この宅地は,土地売買契約後3か月以内にAと住宅の建築請負契約を締結していただくことを条件に販売します。この期間中に建築しないことが確定したとき,あるいは建築請負契約が成立しない場合,土地売買契約は白紙となり受領した金銭は全額無利息にて返却いたします。」との記載(以下「本件広告文言」という。)が本件契約の 中に建築しないことが確定したとき,あるいは建築請負契約が成立しない場合,土地売買契約は白紙となり受領した金銭は全額無利息にて返却いたします。」との記載(以下「本件広告文言」という。)が本件契約の内容の一部(特約)である旨判断している。 イしかし,本件土地売買契約の契約書7条2項には「買主の違約により契約を解除されたときは手付金は売主がこれを取得して買主に返還せず。売主の違約により本契約を解除されたときは,売主は受領してある手付金を買主に返還し,且つこれと同額の違約金を買主に支払うものとする。」と明記されており,8条(特約事項)1も「買主は本契約締結後3か月以内にAとの住宅建築請負契約を締結するものとする。」との義務づけを記載しているのみであって,本件広告文言の特約は記載されていない。 本件土地売買契約の内容については,契約書の記載内容により判断すべきである。 ウ原審における証人Bの証言や控訴人代表者本人尋問によっても,本件土地売買契約と本件建物契約とが同時に締結されたことは争いがなく,本件土地売買契約締結のときに,本件広告文言についての会話ややり取りはなかったし,被控訴人側からの契約書の修正の要求もなかった。契約書(甲2)の内容で納得して被控訴人側も署名押印した。すなわち,原審において控訴人代表者本人が供述しているように(同調書10頁),同時に締結される本件建物契約により,本件広告文言の適用の可能性がなくなった旨も控訴人代表者が説明し,これを理解し納得して,本件土地売買契約が締結されたものである。 エ原判決の判断は,本件土地売買契約の契約書7条を無視するものであり,誤っている。 (2) 争点(2)について本件建物契約は,本件広告文言の「建物請負契約」である。 ア建物請負契約の締結の仕方は様々である。 控訴人の場合, 約書7条を無視するものであり,誤っている。 (2) 争点(2)について本件建物契約は,本件広告文言の「建物請負契約」である。 ア建物請負契約の締結の仕方は様々である。 控訴人の場合,間取り自由で,建築施工面積37坪の建物であって,控訴人の定める標準仕様の標準装備でよいのであれば,本件建物契約の契約書(甲1)で十分であり,後は37坪の範囲で間取り設計を決めるだけであるが,それは請負契約締結後の作業となる。 標準仕様,標準装備を変更し,グレードを上げた装備にするとか,建築施工面積を増加する場合は,契約の変更となる。 イ本件建物契約により,手付金の授受がされ,違約の場合の手付金没収の約束もされた。 このような約束は単なる建築請負契約の予約の枠を大幅に超えるものであり,本件建物契約は,本件広告文言にいう建築請負契約そのものであると解すべきである。 ウ本件広告文言は,本件土地売買と同時に本件建物契約がされたことで,適用の余地がなくなったと解すべきである。 本件事案は,本件土地売買契約締結後,被控訴人の都合により契約を解除した場合に相当し,本件土地売買契約7条2項により,手付金は没収され,被控訴人には返還されないことになったとみるべきである。 原判決の認定は誤っている。 4 被控訴人の応答(1) 控訴人が本件広告を出して取引の勧誘を行い,被控訴人においても本件広告文言を信じて本件土地売買契約を締結した以上,本件広告文言が本件土地売買契約の内容となるのは当然のことである。 (2) したがって,被控訴人は本件広告文言により控訴人に対し本件土地売買契約の手付金200万円の返還を求めているわけであるから,そもそも,被控訴人に本件土地売買契約の契約書7条2項の「違約」はないのである。 仮に控訴人の主張を前提にしても,上記7条2項と本件広告文言 買契約の手付金200万円の返還を求めているわけであるから,そもそも,被控訴人に本件土地売買契約の契約書7条2項の「違約」はないのである。 仮に控訴人の主張を前提にしても,上記7条2項と本件広告文言との優先関係については,前者が後者により修正されているというべきである。 (3) なお,控訴人主張の本件土地売買契約の契約書8条(特約事項)1(「買主は本契約締結後3か月以内にAとの住宅建築請負契約を締結するものとする。」)については,本件土地売買契約と本件建物契約が同時に締結されていることからすれば,同8条(特約事項)1の存在自体が,本件建物契約が本件広告文言の「建築請負契約」に該当しないことを雄弁に物語るものである。 第3 当裁判所の判断当裁判所も,被控訴人の本訴請求は認容すべきであるものと判断するが,その理由は,次のとおり当審主張に対する判断を付加するほか,原判決の「第3 当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審主張に対する判断) 1 当審主張(1)について控訴人は,本件土地売買契約の契約書には,本件広告文言の特約は記載されておらず,本件土地売買契約の内容については契約書の記載内容により判断すべきである旨主張する。 しかしながら,前記(引用にかかる原判決)のとおり,本件は建築条件付き宅地分譲であるところ,本件広告文言は,独占禁止法に抵触しないために顧客を保護する重要な意義を有するものであり,本件土地売買契約の契約書に明記されていないとしても,本件土地売買契約の契約内容となっているとみるべきであるから,控訴人の主張は採用できない。 また,控訴人は,本件土地売買契約締結のときに,本件広告文言についての会話ややり取りはなかった旨,あるいは,同時に締結される本件建物契約により,本件広告文言の適用の可能性がなくなった旨 用できない。 また,控訴人は,本件土地売買契約締結のときに,本件広告文言についての会話ややり取りはなかった旨,あるいは,同時に締結される本件建物契約により,本件広告文言の適用の可能性がなくなった旨を控訴人代表者が説明し,これを被控訴人が納得して本件土地売買契約が締結された旨主張する。 しかし,同主張の前段と後段とが矛盾することはおくとしても,前記のとおり,本件広告文言が重要な意義を有することからして,本件土地売買契約締結の際に本件広告文言についてのやり取りがなかったとすれば,控訴人が本件広告文言により取引を勧誘し,被控訴人は本件広告文言を信じて契約締結に至ったのであるから,当然に本件広告文言は契約内容となるというべきである。 また,原審における控訴人代表者本人尋問の結果中には,本件各契約締結の際に,本件建物契約締結により本件広告文言の適用の可能性がなくなった旨を控訴人代表者が説明したとの部分が存する。しかし,原審における証人Bの証言によれば,被控訴人側は本件契約締結前に控訴人代表者から「3か月以内に話がまとまらなければ,土地の部分の手付金は返還します。ただ,建物の方の100万円は戻りませんから。」との説明を受け,本件各契約をする気持ちになったことが認められる。同事実に照らすと,本件各契約締結の際に,控訴人代表者が供述するような説明をしたとすれば本件各契約は締結に至らなかったとみるのが自然であり,上記控訴人代表者本人尋問の結果部分は採用できない。 2 当審主張(2)について控訴人は,控訴人との建物建築請負契約においては,建築施工面積37坪の建物であって,控訴人の定める標準仕様の標準装備(間取り自由)でよいのであれば,本件建物契約の契約書(甲1)で十分であり,標準仕様,標準装備を変更し,グレードを上げた装備にするとか,建築施工面積を増加する あって,控訴人の定める標準仕様の標準装備(間取り自由)でよいのであれば,本件建物契約の契約書(甲1)で十分であり,標準仕様,標準装備を変更し,グレードを上げた装備にするとか,建築施工面積を増加する場合は,契約の変更となるものであって,本件建物契約は「建物請負契約」である旨主張する。 しかしながら,原審における控訴人代表者本人尋問の結果及び原審証人Bの証言によれば,本件各契約締結のときに既に,控訴人としては5000万円ないし6000万円程度の建物請負を予定しており,他方被控訴人側としてはグレードを上げた設備にし,建坪を増加することを予定していたことが認められるのであって,設計契約としての拘束力は当然としても,建坪を37坪とし工事価格を2000万円と定めた(その2区画分)本件建物契約については,控訴人及び被控訴人とも,契約としての拘束力を予定していなかったと認められる。換言すれば,設計契約の点を除き,本件建物契約は意味のないものであって,もし仮に控訴人が本件広告文言の適用を避けることを意図して本件建物契約締結に至ったのであれば,詐欺的行為と言わざるを得ない。控訴人の主張は採用できない。 控訴人は,その他争点(2)につきるる主張するが,本件建物契約と同時に締結された本件土地売買契約の契約書8条(特約事項)1に「買主は本契約締結後3か月以内にAとの住宅建築請負契約を締結するものとする。」と記載されており(甲2によれば同条項は控訴人使用の定型用紙に付加して記載されたものとみられる。),本件各契約締結のときにおいて,その後に本件広告文言の「建築請負契約」を締結することを予定していたことが優に認められることからも,控訴人主張は採用できない。 (結語)よって,原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却し,控訴費用の負担について 結することを予定していたことが優に認められることからも,控訴人主張は採用できない。 (結語)よって,原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由がないからこれを棄却し,控訴費用の負担について民事訴訟法67条1項,61条を,仮執行の宣言について同法297条,259条1項を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第3部裁判官藤田敏裁判官倉田慎也裁判長裁判官福田晧一は,転補のため,署名押印することができない。 裁判官藤田敏

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