平成14(行ウ)2 知事宴会費用返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年7月29日 広島地方裁判所
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判決文本文10,705 文字)

主文 1 被告らは,広島県に対し,連帯して48万1772円及びこれに対する平成13年7月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,広島県知事である被告A及び広島県総務企画部秘書室長であった被告Bが,県幹部職員数名と一部の県議会議員を招いて意見交換会と称する会合を開催し,その際の飲食等代金として48万1772円を県の公金から支出したことが違法であるとして,広島県内に事務所を有する市民団体である原告が,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前のもの。以下同様。)242条の2第1項4号前段に基づいて,被告らに対し,上記支出金相当額の損害賠償及び法定の遅延損害金の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(1) 当事者原告は,平成8年1月20日,国,地方公共団体等にかかわる不正,不当な行為を監視し,これを是正することを目的とする市民オンブズマンの情報交換・経験交流・共同研究等を行い,不正の調査・摘発・改善等を行うことを目的として設立された市民団体で,権利能力なき社団である。 平成13年6月当時,被告Aは広島県知事,被告Bは広島県総務企画部秘書室長であった者である。 (2) 本件公金支出平成13年6月21日,広島市内の料亭「甲」において,広島県知事被告A,県幹部職員及び県議会の議員合計14名が参加して意見交換会と称する会合(以下「本件会合」という。)が開催され,その際の飲食等代金として合計48万1772円が広島県の交際費から支出された(以下これを「本件公金支出」という。)。その内訳は以下のとおりである(甲1の2)。 ア料理 という。)が開催され,その際の飲食等代金として合計48万1772円が広島県の交際費から支出された(以下これを「本件公金支出」という。)。その内訳は以下のとおりである(甲1の2)。 ア料理 28万円(2万円×14)イ酒 8800円(800円×11)ウビール 1万2750円(850円×15)エウイスキー 4000円オ焼酎 6000円カウーロン茶 900円(300円×3)キ食事・赤出し・果物 2万1000円(1500円×14)ク冷酒 3万6000円(2品)ケワイン 2万5000円(3品)コサービス料 5万8000円サ消費税 2万2622円シ車代 6700円(6名分)(3) 被告Bによる支払広島県では,交際費の支出については資金前渡の方法が採られており,出納長からあらかじめ概括的に交際費の資金前渡を受けた上で,その資金の中から個別具体的な交際費の支出を行うことになっている。資金前渡を受けた交際費の支出権限は,本来的には知事にあるが,秘書室長が専決権を有しており(広島県決裁規程(昭和38年広島県訓令第32号)8条,別表第2室長専決事項45号),本件では,平成13年7月3日,被告Bが,あらかじめ概括的に資金前渡を受けていた交際費資金の中から上記飲食等代金を支払った。 (4) 監査請求原告は,平成13年10月10日,広島県監査委員に対し,地方自治法242条1項に基づき,上記公金支出につき監査請求を行ったが,広島県監査委員は,同年12月17日付けで,原告の請求は理由がない旨原告に通知した。 2 争点及び当事者の主張本件公金支出の違法性(原告の主張)(1) 本件会合の趣旨,目的ア本件会合が 年12月17日付けで,原告の請求は理由がない旨原告に通知した。 2 争点及び当事者の主張本件公金支出の違法性(原告の主張)(1) 本件会合の趣旨,目的ア本件会合が開催されたのは,平成13年11月施行の県知事選挙を約5か月後に控えた同年6月21日であるが,同日午後,被告Aは県議会議長室を訪れ,自民党議員会役員が同席する中で県知事選挙への立候補を表明して自民党による事実上の推薦を受けており,そのことを理由に,過去に例のない(出席者の顔ぶれ,出席人数,交際費からの費用支出額の大きさ等の点で異例である。)本件会合が急きょ特別に企画されたものである。実際,本件会合に係る経費支出伺の起案日と決裁日はいずれも平成13年6月21日となっている。 イ本件会合が被告らが主張するように重要な意見交換の場であれば,飲食等代金は食糧費から支出されるべきであるのに,本件では外部との交際上要する経費である交際費から支出され,その結果,情報公開請求に対して,食糧費の支出であれば当然公開されるべき出席者氏名が公開されず,被告らも,県職員出席者以外の出席者について,県議会の枢要な立場にある議員と主張するのみでそれ以上明らかにしようとしない。これは,それまで定例的に行われていた県の執行機関と一部の県議会議員との懇談会の飲食等代金が食糧費から支出され,出席者氏名が公表されていたのと比べても異例であって,本件会合の目的が秘匿すべきものであることをうかがわせる。なお,原告が行った調査の結果によれば,本件会合には自民党議員のみが出席したものである。 ウ被告らは,県庁舎整備問題等県の重要政策課題についての当時の議会審議及び議員との意見交換の状況から,意見交換の集大成として本件会合の必要性を認識した旨主張する。しかし,本件会合の直前 。 ウ被告らは,県庁舎整備問題等県の重要政策課題についての当時の議会審議及び議員との意見交換の状況から,意見交換の集大成として本件会合の必要性を認識した旨主張する。しかし,本件会合の直前に行われた平成13年2月ないし3月の県議会定例会においては,被告ら主張の議題についての質疑は,質問者数,全体に占める質疑の量ともわずかであり,被告らが主張するような活発な議論や緊迫した議会運営がなされているとは到底いえない状況であり,同年6月,9月,12月の県議会定例会における議論状況も同様である。また,議会審議以外の場における県の執行機関と議員との意見交換については,その有無及び内容は全く明らかでなく,被告らが主張するように緊迫した状況にあったとはうかがえない。そうすると,過去に前例のない本件会合を殊更当該時期に,しかも急きょ開催する必要性,合理性は全くない。 エまたそもそも,そのような重要な事項についての意見交換を,料亭で飲み食いをしながら,しかも大酒を飲みながら行う理由は全くない。 オ以上によれば,本件会合は,被告Aが県知事選挙立候補について自民党議員会から事実上の推薦を受けたことに対するものとして開催された,私的な宴会であると考えられる。 (2) 本件会合の態様,内容本件会合の実態を見ても,県職員出席者は文書類を一切持参せず,出席者への配付資料もなく,司会者,報告者もなく,出席者の誰かから,まとまった報告や,系統的な説明がなされたり,系統立った意見,反論が述べられることもなく,開始時から酒食が提供されて,店の酌婦が酒や食器を運び酒を注ぐ中,出席者が酒を酌み交わしながら入り乱れ,あちらこちらに別れてそれぞれが勝手に話をするといったもので,秘密を要する重要な意見交換会といいながら人払いもされておらず,意 酌婦が酒や食器を運び酒を注ぐ中,出席者が酒を酌み交わしながら入り乱れ,あちらこちらに別れてそれぞれが勝手に話をするといったもので,秘密を要する重要な意見交換会といいながら人払いもされておらず,意見交換というよりもまさに懇親そのものであった。 しかも,本件会合については案内状,出席者名簿,会議録等その内容を明らかにした文書はなく,経費支出伺と料亭からの請求書しか作成されていないというのであり,本件会合の成果がその後の県政に反映されたことをうかがわせる事実もない。 仮に,本件会合の席上で被告らが主張するような重要な政策課題についての話が一部には出ていたとしても,本件会合の上記実態からすれば,本件会合は被告らが主張するような県の重要政策課題についての十分な意見交換といった内容のものであったとは到底いえないのであり,1人当たりの食事に2万円,各種酒類に9万2550円等といった高額の公費を支出して急きょ行うに値するものでは全くない。 (3) 以上によれば,本件会合における飲食等は社会通念上儀礼の範囲をはるかに超えたものであり,当該飲食等代金を公金から支出したのは違法である。 (被告らの主張)(1) 本件会合は,県庁舎整備やエルミタージュ美術館の分館誘致,国際平和創造拠点機能の整備等の県の重要政策課題について,県議会においても各般から活発な意見が続出して議論が高まり,自民党県議会議員会においても早期開発待望論と十分な費用対効果の検討が必要であるとする慎重論が対立し,平成13年2月県議会定例会における予算特別委員会の集中審議における執行部側の答弁への不満を背景に,一部の議会勢力から執行部側の態度決定を強く迫られる状況が続く中で,県政運営において極めて厳しい高度の政治性を有する判断を迫られることとなり,政策企画局 審議における執行部側の答弁への不満を背景に,一部の議会勢力から執行部側の態度決定を強く迫られる状況が続く中で,県政運営において極めて厳しい高度の政治性を有する判断を迫られることとなり,政策企画局を中心に議員と日々再三にわたり意見交換を行う過程において,意見交換の集大成としてその開催の必要性が認識されてきたものである。そこで,飲食を伴いながらきたんのない会合を行う必要があると考えられたので,県の執行機関と県議会との間で十分な意見交換を行い,今後の施策運営に反映させる目的で,急きょ本件会合が計画され開催されることになった。県執行機関側から出席したのは,被告Aのほか,C政策企画局長,D地域振興部長,E商工労働部長であった。原告が主張するような被告Aの県知事選挙立候補に関する私的な宴会では決してない。 (2) 原告は,食糧費ではなく交際費から本件飲食等代金を支出したこと,出席者を明らかにしないことを問題視する。しかし,県議会は県執行機関とは異なる外部の機関であるから,議員を相手方とする本件会合の飲食等代金を交際費から支出することに問題はないし,出席者を明らかにするか否かについては食糧費と交際費とで取扱いが異なるわけではなく,本件会合の出席者についての情報は,個人識別情報(広島県情報公開条例10条2号)及び行政事務の遂行上支障を及ぼすおそれがある情報(同条6号)に当たるため明らかにしないのであり,交際費であるからといって特別の扱いをしているわけではない。 また,原告は,平成13年2月ないし3月の県議会定例会中の本会議や委員会における質問者の数や全体に占める割合のみをもって議論の重要性や緊迫感が感じられないと主張し,本件会合の必要性を否定する。しかし,県議会においては,質問者はなるべく同じ質問が繰り返されないよう分担することを配慮す の数や全体に占める割合のみをもって議論の重要性や緊迫感が感じられないと主張し,本件会合の必要性を否定する。しかし,県議会においては,質問者はなるべく同じ質問が繰り返されないよう分担することを配慮することが多いのであって,原告の上記主張は,このことを理解しないもので失当である。 また,施策遂行上の重要局面において意見交換会を実施するか否かの判断は,県政執行責任者としての知事や県幹部職員の裁量によるべきものである。 さらに,原告は,本件会合に関する文書がほとんど作成されていないことを問題視するが,本件会合のような意見交換会は極めて微妙なやりとりとなるもので,まして知事自らが出席する会合においては記録書を作成する必要がないものも多いし,開催通知等も必ずしも作成する必要がないものである。 (3) 本件飲食等の内容及びその代金額については,出席者の内容や人数,意見交換の趣旨・目的,相手方の意見,過去の実績等を総合的に判断した結果,意見交換の内容が重要な案件であり,秘匿すべき事項も多々含まれていることから,協議内容が他へ漏れることがないよう,また相手方の地位・立場を考慮して,本件会合の会場をこれまで何度も利用したことのある甲と決定したものであり,接遇の内容も従前の例に比して今回が特に華美なものではなく,飲食等代金の額も従前と変わらない。甲の利用は広島市内では高額の部類に入るが,知事自らが賓客を接遇する際の場所として社会通念上儀礼の範囲内のものである。 (4) したがって,本件会合における飲食等は社会通念上儀礼の範囲内のものであり,当該飲食等代金を公金から支出したことは違法ではない。 第3 争点に対する判断 1 普通地方公共団体は,その事務を処理するために必要な経費を支弁するものであるところ(地方自治法232条1項),普通地方公共団 等代金を公金から支出したことは違法ではない。 第3 争点に対する判断 1 普通地方公共団体は,その事務を処理するために必要な経費を支弁するものであるところ(地方自治法232条1項),普通地方公共団体の執行機関と議会とは,法に定められた諸種の権限を行使することによって相互にけん制し合う立場にあるが,その間においても,普段から十分な意思の疎通を図る必要があることは否定できないところであるから,普通地方公共団体の執行機関が,そのような目的のために当該普通地方公共団体の議会の議員を招いて意見交換を行う会合を実施し,また,その際にできるだけ率直に話合いができるように,社会通念上儀礼の範囲内にとどまる程度の飲食等の接遇を行うことは,当該普通地方公共団体の事務の遂行に伴う行為として許されるというべきであり,これに要した費用を公金から支出することも許されるというべきである。 しかし,かかる会合が本来の目的を離れ,あるいは必要もない会合に名を借りるのみで,意見交換としての実体を伴わず,ないしは実施態様からしてその目的にかなわず,当該会合における接遇が意見交換と関連性を有しなくなっている場合には,当該接遇は社会通念上儀礼の範囲内として許容されるものではなく,もはや当該普通地方公共団体の事務の遂行に伴うものとはいえないのであって,これに要した費用を公金より支出することは許されないというべきである。 2 甲1,20,21,乙1ないし3,証人C,被告B及び弁論の全趣旨によれば,広島県においては,遅くとも平成11年ころから,年に2回,9月及び2月に開催される県議会定例会の時期に合わせて,予算編成に関する意見交換と称して,飲食を伴う懇談会が甲等において定例的に開催されており,当該懇談会の参加者は,知事,副知事,出納長のほか,総務部長,財政課長等主として予算作 定例会の時期に合わせて,予算編成に関する意見交換と称して,飲食を伴う懇談会が甲等において定例的に開催されており,当該懇談会の参加者は,知事,副知事,出納長のほか,総務部長,財政課長等主として予算作成に関わる県幹部職員と,県議会の議長,副議長及び自民党議員会役員等であり,その際の飲食等代金は食糧費から支出されていたこと,本件会合は上記の定例的な懇談会とは異なる前例のないもので,出席者も全く異なり,県執行機関側から参加したのは,被告Aのほか,C政策企画局長,D地域振興部長,E商工労働部長であり,平成13年6月の県議会定例会の直前である同月21日に開催されたこと,本件会合に関し作成された文書は,経費支出伺及び甲からの請求書のみであることが認められ,また,経費支出伺についても,上記の定例的な懇談会に関するものには出席者がすべて記載されているが,本件会合に関するものには,その体裁からして出席者個々人が特定して記載されてはいないと認められる。 3 本件会合を開催するに至った経緯及び必要性(1) 証人C及び被告Bは,本件会合を開催するに至った経緯及び必要性について,次のように供述する。 本件会合は,それまでの定例的な懇談会とは異なるもので,開催日の2,3日前に急きょ被告Bが中心となりCと共に計画,企画されたものである。議会側の出席議員の人選は議会側に任せた。出席議員の人数及び人選が決まったのは当日である。 平成13年6月21日という時期に急きょ本件会合を開催することとなった理由は,県庁舎整備,エルミタージュ美術館分館誘致,国際平和創造拠点機能の整備等を中心とした県の重要政策課題についての議論が高まって,平成13年2月ないし3月の県議会定例会ころに議論がピークに達し,集中的な審議が行われ,予算特別委員会においても精力的に質疑が行 点機能の整備等を中心とした県の重要政策課題についての議論が高まって,平成13年2月ないし3月の県議会定例会ころに議論がピークに達し,集中的な審議が行われ,予算特別委員会においても精力的に質疑が行われたが,議会側が執行部側の答弁に不満を持ち,議会側から県側に強く態度決定を迫る状況が続き,同議会終了後も政策企画局を窓口として議会側との間で今後の県政運営について再三再四意見交換,折衝を行ってきたところ,その過程において,この意見交換の集大成としての会合の必要性が次第に強く認識され,きたんのない意見交換をしようとの機運が高まったためである。 (2) しかし,平成13年2月ないし3月の県議会定例会における質疑状況を見ると,県庁舎整備問題に関して質問した議員は,本会議において1人,予算特別委員会においても3人にとどまり,その内容も当該問題に関してそれぞれ1回の質疑と1回の答弁がなされただけで終わっており,それ以上に議論の発展は見られない(乙16)。エルミタージュ美術館分館誘致問題に関しては,本会議においては質問がなく,予算特別委員会においても質問者は1人である(乙18)。さらに,国際平和創造拠点機能の整備問題に関して質問した議員は,本会議において1人あったにとどまり,その内容も当該問題に関して1回の質疑と1回の答弁がなされただけで終わっている(乙20)。 このように,平成13年2月ないし3月の県議会定例会においては,本会議及び予算特別委員会において,県庁舎整備,エルミタージュ美術館分館誘致,国際平和創造拠点機能の整備問題が,断片的に取り上げられ話題に上ったことは認められるものの,証人C,被告Bが供述するような議論の高まりや,集中的な審議,精力的な質疑がなされた事実はうかがわれず,議会側が県執行部側に強く態度決定を迫ったという事実もう れ話題に上ったことは認められるものの,証人C,被告Bが供述するような議論の高まりや,集中的な審議,精力的な質疑がなされた事実はうかがわれず,議会側が県執行部側に強く態度決定を迫ったという事実もうかがわれない。また,その他の政策課題に関しても,この時期に県執行部側が態度決定を強く迫られるような特別に緊迫した状況にあったと認めることはできない。 さらに,本件会合の直後に開催された平成13年6月の県議会定例会における質疑状況を見ても,県庁舎整備問題に関して本会議で質問した議員は1人で,その内容も当該問題に関して1回の質疑と1回の答弁がなされただけで終わっており(乙16),エルミタージュ美術館分館誘致問題に関しては質問がなく(乙18),国際平和創造拠点機能の整備問題に関して本会議で質問した議員は2人であり,その内容も当該問題に関してそれぞれ1回の質疑と1回の答弁がなされただけで終わっている(乙20)。このように,本件会合の直後に行われた県議会定例会においても,これらの問題について格別議論が高まった様子はうかがわれない。 (3) 証人C及び被告Bは,平成13年2月ないし3月の県議会定例会終了後も政策企画局を窓口として議会側と再三再四意見交換を行ってきたと供述するが,その意見交換の経過,内容は全く明らかでなく,県議会定例会における上記のような質疑状況にも照らすと,同人らが供述するような緊迫した頻繁な意見交換,折衝がなされていたとはにわかに認め難い。 (4) そうしてみると,本件会合が開催された平成13年6月21日の時期に,被告らが主張するような県の重要政策課題について意見交換を行うため,殊更に県議会議員と被告A及び政策企画局長のほか地域振興部長,商工労働部長が加わって,本件会合を,しかも議員の人選は議会側に任せて当日に決められるとい うな県の重要政策課題について意見交換を行うため,殊更に県議会議員と被告A及び政策企画局長のほか地域振興部長,商工労働部長が加わって,本件会合を,しかも議員の人選は議会側に任せて当日に決められるといった形で,急きょ開催するような合理的必要性があったと認めることは困難といわざるを得ない。 4 本件会合の態様,内容(1) 本件会合の態様について,証人Cは次のように供述する。 本件会合は,平成13年6月21日の午後6時ころから午後8時ころまでのおよそ2時間にわたり,甲において行われた。 県の執行機関側から出席したのは,被告Aのほか,C政策企画局長,E商工労働部長,D地域振興部長であるが,これらの者は本件会合に文書類を一切持参せず,本件会合の場において出席者に配布された資料もなかった。 本件会合は和室の個室において行われ,午後6時ころの開始と同時に食事の提供が始まり,会合の始まりの乾杯が行われた。本件会合の進行についての式次第はないし,司会を務める者もおらず,県の執行機関側及び議員側から特定の者が個別にまとまった発言をしたり,特定の議題について全体でまとまった議論をすることはなく,仲居が食事や酒を運ぶ中出席者各自が飲酒,飲食をしつつ,席を移動しながら周囲の者と思い思いに話し合うという形で終始した。 (2) 証人Cの上記供述によれば,本件会合が開催されたおよそ2時間は,県の重要政策課題についての従前の議論状況及び今後の方針等についてまとまった発表がなされることもなく,特定の議題を定めて全体で議論するわけでもなく,会の進行内容を取り決めた式次第もなく,会の進行を取り仕切る者もない状況で,各人の手元に配布された資料も全くないまま,各人が飲酒,飲食をしつつ周囲の者と自由に会話していたというのである。このような態様からすると を取り決めた式次第もなく,会の進行を取り仕切る者もない状況で,各人の手元に配布された資料も全くないまま,各人が飲酒,飲食をしつつ周囲の者と自由に会話していたというのである。このような態様からすると,本件会合は,客観的にはいわゆる懇親会と何ら異ならないもので,県の重要政策課題についてそれまでなされてきた意見交換の集大成としての意見交換会の体をなしたものであったとは認め難いといわざるを得ない。 (3) さらに加えて,本件意見交換会の出席者について,被告らは,知事,C政策企画局長,E商工労働部長,D地域振興部長のほか,県議会の中でしかるべき立場にある議員10名であると主張し,証人C及び被告Bも同様の供述をするが,それ以上に出席した議員の名前や議会における役職等を明らかにしない。しかも,出席議員の人選は議会側に任され,本件会合当日に人数,人選が決まったという事情にもかんがみると,出席した議員が,県庁舎整備問題等の重要政策課題に関する意見交換の集大成といった,被告ら主張に係る本件会合の趣旨,目的に果たして本当に合致する者であったのかどうかも明らかでない。また,本件会合に関して作成された文書は経費支出伺のみで,議事録や,意見交換の内容,成果についてまとめた文書等は一切作成されていないというのである。 (4) そうしてみると,本件会合は,被告らの主張に係る目的にかなうような態様のものであったとは認め難いというべきである。 5 上記3,4で検討したところからすれば,本件会合は,被告らが主張するように,県の重要政策課題についてそれまでなされてきた意見交換の集大成として十分な意見交換を行うことを目的として開催する必要性に乏しく,またその態様も被告ら主張の目的にかなうものとは認め難いものだったのであるから,総額48万1772円,出席者1人当たり3万 の集大成として十分な意見交換を行うことを目的として開催する必要性に乏しく,またその態様も被告ら主張の目的にかなうものとは認め難いものだったのであるから,総額48万1772円,出席者1人当たり3万4412円もの公金支出を伴う酒食等を提供してそのような会合を開催すること自体,社会通念上儀礼の範囲内のものとして許容される余地はなく,地方公共団体の適正な事務の遂行ないしはそれに伴うものとは到底いえない。したがって,被告らの主張するような理由によって上記支出を正当化することはできず,本件会合を主催して上記の支出を行うことは,その全額について違法というべきである。 6 被告Bは,秘書室長として知事の交際費の支出について専決権限を有し,本件会合を計画,企画した上で,その専決権限を行使して上記違法な支出を行ったものである。したがって,被告Bには,上記支出につき故意又は重大な過失があったことは明らかである。また,被告Aは,本来的に資金前渡を受けた交際費の支出権限を有し,本件会合の開催を了承し,それに出席してその内容を知りながら,被告Bの上記支出を容認していたものであるから,指揮監督義務を怠ったもので,上記支出について故意又は過失があったといえる。 したがって,被告らは,地方自治法242条の2第1項4号前段に基づき,連帯して本件会合の飲食等代金の支払により広島県が被った48万1772円の損害,及び,これに対する支払日の翌日である平成13年7月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金について賠償責任を負う。 第4 結論以上によれば,原告の本訴請求は理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部裁判長裁判官山垣清正 主文 原告の本訴請求は理由がある。 よって,主文のとおり判決する。 広島地方裁判所民事第3部裁判長裁判官山垣清正裁判官田中一隆裁判官武林仁美

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