判決 主文 1 被告C及び被告Kは、原告Aに対し、連帯して、2億2327万8484円及び内2億2134万2195円に対する令和元年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告C及び被告Kは、原告Bに対し、連帯して、396万円及びこれに対する平成29年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告三井住友は、被告C又は被告Kに対する第1項の判決が確定したときは、原告Aに対し、2億2327万8484円及び内2億2134万2195円に対する令和元年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告三井住友は、被告C又は被告Kに対する第2項の判決が確定したときは、原告Bに対し、396万円及びこれに対する平成29年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告Aは、被告三井住友に対し、33万4391円及びこれに対する令和2年6月16日から支払済みまで、うち31万5200円については年5分の割合による、うち1万9191円については年3分の割合による、各金員を支払え。 6 訴訟費用は、本訴反訴を通じて、原告Aに生じた費用の5分の3、被告らに生じた費用の5分の3及び原告Bに生じた費用の10分の7を被告らの負担とし、原告Aに生じた費用の5分の2及び被告らに生じた費用の5分の2を原告Aの負担とし、原告Bに生じた費用の10分の3を原告Bの負担とする。 7 原告らのその余の請求及び被告三井住友のその余の請求をいずれも棄却する。 8 この判決は、第1項、第2項及び第5項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求(本訴事件) 1 被告C及び被告Kは、原告Aに対し、連帯して、3億5001万3626円 の判決は、第1項、第2項及び第5項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求(本訴事件) 1 被告C及び被告Kは、原告Aに対し、連帯して、3億5001万3626円及び内3億4326万3387円に対する令和元年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告C及び被告Kは、原告Bに対し、連帯して、550万円及びこれに対する平成29年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告三井住友は、被告C又は被告Kに対する判決が確定したときは、原告Aに対し、3億5001万3626円及び内3億4326万3387円に対する令和元年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告三井住友は、被告C又は被告Kに対する判決が確定したときは、原告Bに対し、550万円及びこれに対する平成29年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (反訴事件)原告Aは、被告三井住友に対し、334万3916円及びこれに対する令和2年6月16日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまで、うち315万2000円については年5分の割合による、うち19万1916円については年3分の割合による、各金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本訴事件後記第3の1記載の交通事故(以下「本件事故」という。)により原告Aが受傷し後遺障害が残存したとして、原告A及びその配偶者である原告Bが、被告Cに対しては民法709条に基づき、被告Kに対しては自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条及び民法715条に基づき、損害賠償を求めるとともに、被告三井住友に対して、保険契約に基づく直接請求として損害賠償金の支払を求める事案である。 2 反訴事件被告三井住 法」という。)3条及び民法715条に基づき、損害賠償を求めるとともに、被告三井住友に対して、保険契約に基づく直接請求として損害賠償金の支払を求める事案である。 2 反訴事件被告三井住友は被告Kとの間で損害保険契約を締結していた保険会社である ところ、本件事故により被告K所有の大型貨物自動車(後記第3の1(3)ア記載の車両)が破損したことから被告三井住友が被告Kに車両保険金を支払い、被告Kの原告Aに対する損害賠償請求権に代位したとして、原告Aに対し、代位取得した損害賠償金の支払を求める事案である。 第3 前提事実(争いのない事実及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) 1 本件事故の発生(1)事故発生日時平成29年2月26日午後11時20分頃(2)事故発生場所北海道a郡a町字b町c番地(3)事故車両ア被告C運転の大型貨物自動車(札幌●●●か●●●●。以下「被告車両」という。)イ原告Aが乗車中の普通乗用自動車(旭川●●●て●●●●。以下「原告車両」という。)(4)事故態様原告Aは、上記事故発生場所付近において平成29年2月26日午後10時59分頃に自損事故(以下「本件自損事故」という。)を起こし、上記事故発生場所の道路(以下「本件道路」という。)上に原告車両を停車させた。その後、同日11時20分ころ停車中の原告車両に、被告車両が衝突した。 2 被告Kの運行供用者及び使用者性(1)被告Kは被告車両の所有者である。 (2)被告Cは被告Kの従業員であり、本件事故は被告Kの運送事業の業務執行につき発生したものである。 3 被告三井住友と被告Kとの自動車保険契約(1)対人賠償責任保険被告三井住友は、本件事故当時、被告Kとの間で、被告車両 故は被告Kの運送事業の業務執行につき発生したものである。 3 被告三井住友と被告Kとの自動車保険契約(1)対人賠償責任保険被告三井住友は、本件事故当時、被告Kとの間で、被告車両を被保険自動 車とする自動車保険契約(以下「本件保険契約」という。)を締結していた。本件保険契約には、対人賠償責任保険特約が含まれており、対人賠償責任保険特約の約款においては、被保険者(本件では被告C又は被告K)の法律上の損害賠償責任が確定した場合には、被告三井住友は、原告らに対して、直接、損害賠償金の支払義務を負うものとされている。 (2)車両保険金の支払本件保険契約には、車両保険特約が含まれている。 本件事故による被告車両の修理費は415万7638円であったが、被告車両は経済的全損となったため、被告Kは被告車両の残存価格336万9000円及びレッカー費用19万1916円の合計356万0916円の損害を被った。 ただし、被告車両のスクラップ価格が21万7000円となったため、最終的な損害額は334万3916円である。 4 原告Aの治療経過原告Aは、本件事故後、以下のとおり治療を受けた。 (1)L診療所原告Aは、本件事故後、L診療所に救急搬送されたが、平成29年2月27日午前0時50分頃に、札幌市内のE病院に転送された。 (2)E病院入院期間平成29年2月27日~同年4月26日(3)F病院入院期間平成29年4月26日~令和元年10月27日(4)症状固定日F病院に入院中の平成31年1月31日(症状固定時43歳)(5)入院日数症状固定日までの入院日数 704日間 退院までの入院日数 973日間 固定日F病院に入院中の平成31年1月31日(症状固定時43歳)(5)入院日数症状固定日までの入院日数 704日間 退院までの入院日数 973日間 5 後遺障害原告Aには、脳外傷による後遺障害が残存し、自賠責共済の被害者請求の手続において、自賠法施行令の別表第1に定める1級1号に該当するものと認定された。 6 原告らの関係及び後見人の選任等(1)原告らは、平成28年8月8日に婚姻した夫婦である。 (2)原告Aは昭和●年●月●日生(本件事故当時41歳)、原告Bは昭和●年●月●日生(本件事故当時46歳)である。原告Aについては、札幌家庭裁判所において後見手続が開始され、原告Bが成年後見人に選任された(平成30年10月16日に審判確定)。 (3)本件事故当時、原告Aは、G株式会社に勤務する会社員であり、原告Bは、H病院に勤務する歯科衛生士であった。 (4)本件事故当時、原告Aはa町のGに勤務していたため同町内に居住し、他方、原告Bは札幌市d区e条f丁目g号(以下「旧自宅」という。)に居住していた。 (5)原告Aは、令和元年5月31日、札幌市d区h条i丁目j号所在の分譲マンションのkのl号室を購入した(以下「新自宅」という。)。 令和元年6月13日、原告Bは、旧自宅から新自宅に転居し、原告Aは、令和元年10月27日にF病院を退院し、現在、原告らは、新自宅に居住している。 7 原告Aへの既払額(1)対人賠償責任保険による支払被告三井住友は、原告Aに対し、治療費等合計692万2226円を支払った。 (2)人身傷害保険金の支払 原告Aは、本件事故当時、被告三井住友との間で、原告車両を被保険自動車とする自動車保険契約を締結しており、 、治療費等合計692万2226円を支払った。 (2)人身傷害保険金の支払 原告Aは、本件事故当時、被告三井住友との間で、原告車両を被保険自動車とする自動車保険契約を締結しており、この保険には人身傷害保険が含まれていた(以下「本件人傷保険契約」という。)。 被告三井住友は、本件人傷保険契約に基づく保険金として、随時、医療機関等に対し、合計544万8904円を支払った。 また、令和元年7月25日、被告三井住友は、本件人傷保険契約に基づく保険金として、原告Aに対し、金4455万1096円を支払った。 (3)自賠責共済の被害者請求による支払令和元年5月28日 4000万円(4)傷病手当金原告Aは、国家公務員共済組合法50条1項に基づく傷病手当金として、口頭弁論終結までに合計55万0416円の給付を受けた。 (5)障害基礎年金(国民年金)原告Aは、国民年金から、障害基礎年金として、口頭弁論終結までに121万8319円の給付を受けた。 (6)障害厚生年金(国家公務員共済)原告Aは、国家公務員共済組合から、障害厚生年金として、口頭弁論終結までに304万7815円の給付を受け、又は受けることが確定した(弁論の全趣旨)。 第4 争点及びこれに対する当事者の主張別紙「争点及びこれに対する当事者の主張」のとおり第5 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実、括弧内に記載の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1)本件事故現場の状況 本件事故の発生場所は、北海道a郡a町字b町を南北に縦貫する国道229号線の南方面(m町からn村へ向かう方面)車線上であり、片側1車線のアスファルト舗装された平坦なほぼ直線の道路である 本件事故の発生場所は、北海道a郡a町字b町を南北に縦貫する国道229号線の南方面(m町からn村へ向かう方面)車線上であり、片側1車線のアスファルト舗装された平坦なほぼ直線の道路である。本件道路の有効幅員は7. 8メートル、速度制限は50キロメートル毎時であり、道路の西側は、海岸に接しており、路端にはガードロープが設置されている。本件道路の東側は、住宅が立ち並ぶ住宅街であり、歩道が整備され、街路灯がほぼ等間隔に設置されていた(甲3の5、3の6、31、乙4)。 本件事故直後の平成29年2月26日午後11時58分頃の天気は曇り、路面は凍結状態で路面標示は視認できない状態であり、本件事故発生時も同様の状況であったと推認される(甲3の5)。 (2)本件自損事故の態様原告Aは、本件事故現場付近において平成29年2月26日午後10時59分頃に本件自損事故を起こし、本件道路南方面車線上に原告車両前部を道路左側の積雪部分に乗り上げ、同車両左側面を北側(被告車両と正対する方向)に向け、南方面車線の大部分を閉塞させる態様で停車させた。 原告Aは本件自損事故後、付近の住民に警察への通報を依頼し、同日午後11時8分頃、本件自損事故の発生について被告三井住友の事故受付センターに連絡し、レッカー業者の手配を依頼した。 原告Aは上記事故の原因について、原告Bに架電し「道路がすごく滑って、ガードレールとぶつかってしまった」旨、伝えている。 (甲3の5、3の10、3の13、31、41)(3)本件事故の態様被告Cは被告車両を運転し、本件道路を南方面に向かって走行し、同日午後11時20分ころ、前照灯を下向き(ロービーム)、時速約70キロメートルで本件事故発生場所付近に至った。本件事故現場付近には本件自損事故により原 を運転し、本件道路を南方面に向かって走行し、同日午後11時20分ころ、前照灯を下向き(ロービーム)、時速約70キロメートルで本件事故発生場所付近に至った。本件事故現場付近には本件自損事故により原告車両が停車していたが、被告Cは遠方を望見していたため、原告車両 を約17.8メートル手前まで発見できなかった。 被告Cは原告車両を視認後、直ちにブレーキを掛けたが被告車両は速度をほとんど減じることなく前部を原告車両の左後部側面に衝突させ、衝突後約180メートル走行して停止した。 原告車両は衝突によって、南方向に約37.4メートル移動し、路外の雪山に乗り上げて停止した。 原告Aは、本件事故発生当時、原告車両の助手席側に乗車しており、原告車両の灯火類は消灯されていた。原告車両の色は黒色で発炎筒や停止板等は本件事故現場手前には設置されていなかった。 (甲3の5、3の6、3の14、31)(4) 原告Aの本件事故後の治療等ア原告Aは、本件事故後、L診療所に救急搬送されたが、JCS100の意識障害がみられ、脳挫傷、脳出血、くも膜下出血等及び腹腔内出血が疑われたため、平成29年2月27日午前0時50分頃に、札幌市内のE病院に転院搬送された(甲4)。 イ原告Aは、E病院に搬入された時点で意識不明の状態であり、外傷性肝損傷、外傷性血気胸、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、多発肋骨骨折と診断された。同病院では、外傷性肝損傷に対し二度にわたる開腹手術及び外傷性血気胸に対する胸腔ドレナージ手術が実施され、その余の外傷については保存的治療が選択された。また、歯の動揺がみられ、破折片の除去を受けた(甲5の1、5の2、11)。 同年3月7日頃、原告Aは頭部外傷後のびまん性軸索損 手術が実施され、その余の外傷については保存的治療が選択された。また、歯の動揺がみられ、破折片の除去を受けた(甲5の1、5の2、11)。 同年3月7日頃、原告Aは頭部外傷後のびまん性軸索損傷及び遷延性意識障害と診断され、同年4月26日にF病院に転院した(甲5の3、5の4、106)。 ウ原告AはF病院において意識障害に対するリハビリテーションを中心とした治療を受け、同病院入院中の平成31年1月31日に症状固定の診断を受 けた。F病院脳神経外科D医師作成の後遺障害診断書(甲9)及び神経系統の障害に関する医学的意見(甲10)によれば、原告Aには言語障害、記銘力障害、見当識障害、情動抑制障害、両側上下肢の不全麻痺、歩行障害、膀胱直腸障害が残存し、生活全般について介護を要する状態である(甲6〔枝番含む〕、9、10)。 2 争点1(原告A及び被告らの責任の有無及び過失相殺)について(1)上記認定の本件事故態様によれば、本件事故は、被告Cが制限速度を大幅に上回る時速約70キロメートルで被告車両を走行させ、遠方を望見し、衝突の17.8メートル手前まで原告車両を認識しなかったために生じたものといえ、被告Cには前方注視義務違反及び制限速度違反によって本件事故を発生させた過失が認められる。 (2)他方、原告Aが運転操作上の過失によって本件自損事故を起こし、被告車両の進路上に原告車両の後部を逸出させて停止させていたことが本件事故の誘因となった点は原告Aの過失と認められる。 (3)以上のとおり、本件事故は被告C及び原告A双方の過失によって生じた事故であるが、本件道路は街路灯が等間隔で設置された平坦なほぼ直線の道路であり、本件事故時の天候は曇りで降雪はなかったことから被告車両側からの視認状況が悪かったとは認められず、被告 失によって生じた事故であるが、本件道路は街路灯が等間隔で設置された平坦なほぼ直線の道路であり、本件事故時の天候は曇りで降雪はなかったことから被告車両側からの視認状況が悪かったとは認められず、被告Cが路面状況に応じ、制限速度内の適切な速度で被告車両を走行させ、前照灯を適切に使用し、進路前方を注視していれば容易に回避可能な事故であったこと、被告Cによるブレーキ操作の遅れと凍結路面のために被告車両が速度をほとんど減ずることなく原告車両に衝突し、その衝撃で原告車両を約37.4メートルも移動させるほどの衝撃を与えていることを考慮すれば、被告Cの過失が本件事故の発生及び原告Aに生じた傷害の結果に与えた影響は大きいものと認められる。 他方で上記認定の原告Aの過失に加えて、本件自損事故の発生時刻が夜間であるにも関わらず、原告車両が駐車灯や非常点滅灯を点灯させておらず、発炎 筒や三角停止板の設置等の後続車両への警告措置が行われていなかった点も考慮すると、本件事故の過失割合は原告A1:被告C9と認定するのが相当である。 (4)原告らは、被告車両の走行速度が時速約76キロメートルであり、被告Kが被告Cによる大幅な速度超過を容認していたと主張するが、本件事故発生時の被告車両の走行速度は、被告車両に搭載されていたタコグラフの記録(甲3の12)から、時速約70キロメートルと認められ、また、被告Kが被告Cによる大幅な速度超過を容認していたことを認めるに足る証拠はない。 原告らは、速度超過のような道路交通法違反の認識がある意図的過失と運転操作ミスのような瞬間的な過失は質的に差異があるから、加害者側に意図的過失がある場合に被害者側の瞬間的過失を対当させて相殺すべきではないとも主張する。しかし、上記認定の被告Cの過失及び原告Aの過失は、その程 のような瞬間的な過失は質的に差異があるから、加害者側に意図的過失がある場合に被害者側の瞬間的過失を対当させて相殺すべきではないとも主張する。しかし、上記認定の被告Cの過失及び原告Aの過失は、その程度には差異があるものの、いずれも本件事故の発生に寄与したものであるから、過失相殺の対象となる過失というべきである。 (5)被告らは、①視認不良、②駐車方法の不適切、③非常点滅灯の不灯火、④車両の放置及び⑤原告Aの車内での待機を過失相殺事由として指摘し、大幅な過失相殺を主張する。 しかし、上記①については、前記のとおり、視認状態が悪かったとは認められない。上記②及び④は、これらを原告Aの過失として個別に積算し過失割合を認定すべき性質のものではなく、また、⑤については、本件事故の現場は制限速度50キロメートルの民家が立ち並ぶ一般道路であり、高速自動車道路のように非常停車した場合に後続車による追突事故を誘発する危険性が一般的に高い場所とはいえないことから、原告Aの過失として考慮すべきものとは認められない。 そして、上記②及び③の過失が認められるとしても、被告Cの速度超過等を考慮すると、原告Aの過失割合は1割にとどまるというべきである。 3 争点2(原告Aの損害)及び争点4(損益相殺的調整)について本件事故によって原告Aに生じた損害は以下のとおりと認められる。なお、本文記載の計算式に従って計算した結果、小数点以下が生ずる場合は、これを切り捨てる。 (1) 治療関係費 860万2099円ア 709万9506円(被告三井住友支払分)被告三井住友が以下の医療費を支払ったことに争いはない。 (ア) 対人賠償責任保険に基づき、本件事故から平成29年8月分までの各医療機関の医療費として372万3660円 住友支払分)被告三井住友が以下の医療費を支払ったことに争いはない。 (ア) 対人賠償責任保険に基づき、本件事故から平成29年8月分までの各医療機関の医療費として372万3660円(イ) 本件人傷保険契約に基づき、同年9月分から平成30年7月分までのF病院の医療費として337万5846円イ 150万2593円(原告A支払分)(ア) F病院 149万7303円(甲7の1~15)平成30年8月から令和元年10月27日までの同病院の医療費であり、症状固定後の治療費も含まれているが、上記期間の入院加療は本件事故との相当因果関係が認められる。 (イ) J医院 5290円(甲8の1~5)歯の欠損の補綴に要した費用であるが、本件事故直後に歯の破折が確認されていることから、本件事故との相当因果関係が認められる。 (2)入院雑費 105万6000円原告Aは、本件事故の翌日から症状固定日(平成31年1月31日)までE病院及びF病院に入院しているところ、入院雑費は日額1500円を相当と認める。 (計算式)1500円×704日(入院日数)(3)付添看護費用 457万6000円証拠(甲97、98、106、原告B)によれば原告Bは、本件事故発生の 翌日から原告Aの症状固定まで、入院中の原告Aに付き添って原告Aの更衣、整容、排泄、移乗、移動等の看護行為やリハビリテーションの補助を行っていることが認められる。 上記認定の本件事故後の原告Aの受傷状況及び診療経過並びに後遺障害の程度を踏まえれば、付添看護の必要性・相当性は認められ、その看護費用は日額6500円と認定するのが相当である。 (計算式)6500円×704日(4) 将来介護費用 1億1490万7 後遺障害の程度を踏まえれば、付添看護の必要性・相当性は認められ、その看護費用は日額6500円と認定するのが相当である。 (計算式)6500円×704日(4) 将来介護費用 1億1490万7292円上記認定事実及び証拠(甲106、原告B)によれば、原告Aは症状固定後も両下肢及び両上肢(特に左上肢)に麻痺が残り、高次脳機能障害による言語障害、記銘力障害等があるほか、易怒性や性的逸脱行為の傾向があること、F病院退院後の原告Aのリハビリ及び介護は原告Bによる在宅介護を中心としつつ、通所リハビリや訪問看護及び訪問リハビリ等も利用していることが認められる。 原告Aの後遺障害の程度やその内容からすれば、原告Aは、症状固定後も将来にわたって職業介護と近親者による介護が必要な状態と認められ、そのために要する将来介護費用は、日額1万8500円を下回らないものと認められる。 原告Aは将来介護費用、将来介護雑費及び逸失利益の算定の際の中間利息控除についてホフマン係数を用いるべき旨主張する。しかし、損害賠償額の算定に当たり被害者に将来生ずべき費用を現在価額に換算する場合、被害者が受領した賠償金を複利によって運用することが可能であることとの均衡及び平成11年に発表されたいわゆる三庁共同提言(乙33)において中間利息の控除方法としてライプニッツ方式を採用することが原則とされたことにより、現在の裁判例の多くがライプニッツ方式を採用し、これによって賠償額の認定における被害者相互間の公平及び損害の予測可能性が担保されていることに照らせば、本件においてもライプニッツ方式により中間利息控除を行うべきであり、 中間利息控除の方法に関する原告Aの主張はいずれの損害費目の算定においても採用できない。 (計算式)1万8500円×3 いてもライプニッツ方式により中間利息控除を行うべきであり、 中間利息控除の方法に関する原告Aの主張はいずれの損害費目の算定においても採用できない。 (計算式)1万8500円×365×17.0170(余命期間39年のライプニッツ係数)(5) 将来介護雑費 931万6807円原告Aは、将来医療費・通院費用等を含めて将来介護雑費として請求しているところ、証拠(甲106、原告B)によれば、原告AはF病院の医療費、I病院の医療費、訪問看護及び訪問リハビリの費用、介護タクシーの費用等として症状固定から口頭弁論終結に至るまでに年間170万円程度を支出していることが認められる。 原告Aの後遺障害の程度からすれば、これらの支出は将来にわたって継続するものと認められるから、将来介護雑費として年54万7500円(日額1500円)を認めることが相当である。 (計算式)54万7500円×17.0170(余命期間39年のライプニッツ係数)(6)家屋改築費用 278万8793円原告らは新自宅を購入後、原告Aの退院に当たって家屋の改装を行っているところ、証拠(甲16の1~3)によれば、原告Aが本件事故と相当因果関係がある損害として請求する改築費用の内訳は、車いすで利用可能な洗面台への改装工事、脱臭作用のある壁タイル(エコカラット)の貼り付けによる臭気軽減工事、廊下への手すりの設置工事等と認められ、いずれも原告Aの後遺障害の程度及び内容に鑑み必要かつ相当な改装費用と認められる(被告らが美観目的であるとして必要性を争うアクセントクロスについては、原告Aがこれを控除し、請求を減縮している。)。 (7)休業損害 467万8684円 原告Aは本件事故の翌日から症状固定に至るまで休業しているところ、原 うアクセントクロスについては、原告Aがこれを控除し、請求を減縮している。)。 (7)休業損害 467万8684円 原告Aは本件事故の翌日から症状固定に至るまで休業しているところ、原告Aの主張に鑑み、休業による損害は以下のとおり算定される。 事故前基礎年収(平成28年)643万0444円・・・・・・・①休業日数 704日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・②受給した休職手当 772万4144円・・・・・・・・・・・・③(計算式)①/365×②-③(8)逸失利益 8873万1124円原告Aは本件事故の前年に643万0444円の給与収入を得ていたところ、本件事故により労働能力を100パーセント喪失したと認められるから、原告Aの逸失利益は以下のとおり算定される。 事故前基礎収入(平成28年)643万0444円・・・・・・・①労働能力喪失率 100%・・・・・・・・・・・・・・・・・・・②労働能力喪失期間(症状固定時43歳) 24年・・・・・・・・・③(計算式)①×②×13.7986(24年のライプニッツ係数)(9)介護用品・設備取得費用 319万1692円ア介護用車両 287万5000円証拠(甲19の1~3)によれば、原告Aは、令和元年6月ころ、本件介護用車両を287万5000円で購入したことが認められる。本件介護用車両は車椅子からの乗り降りを容易にするため助手席が回転し、後部ハッチ部分に車椅子の収納を補助する電動アームが取り付けられた改造車両であるところ、原告Aの後遺障害の程度に照らせば、購入の必要性が認められ、その価格も相当なものと認められる。 イ車椅子、シャワーチェア及び手すりのレンタル費用 ムが取り付けられた改造車両であるところ、原告Aの後遺障害の程度に照らせば、購入の必要性が認められ、その価格も相当なものと認められる。 イ車椅子、シャワーチェア及び手すりのレンタル費用 31万6692円証拠(甲20〔枝番含む。〕、22、23〔枝番含む。〕)によれば、原告A は、平成30年6月から令和元年6月までの間、旧自宅でのトイレに簡易な手すりをレンタルで設置し、レンタル費用として合計3万6000円を支出したこと、平成31年4月4日に介護用シャワーチェアを1万3492円で購入したこと、令和元年10月15日に屋外用と屋内用の2台の車椅子を26万7200円(自己負担額)で購入したことが認められる。 原告Aの後遺障害の程度並びに各備品の効用に照らせば、これら支出は原告Aの介護に必要なものと認められ、価格も相当である。 ウパルスオキシメーター原告Aは日常的なバイタルチェックとして、血中の酸素飽和度(SpO2)の測定が必要であるとしてパルスオキシメーターの購入費用を請求する。しかし、原告Aの後遺障害として呼吸器の障害は指摘されておらず、SpO2の継続的な測定が必要な状態にあると認めるに足る証拠もないから、パルスオキシメーターの購入費用は本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。 (10)将来の介護用品・設備取得費用 547万7181円原告Aは①介護用車両の半額、②車椅子、③パルスオキシメーター、④シャワーチェアについて耐用年数に従った買替えを前提に将来の介護用品・設備取得費用を請求する。これらのうち③パルスオキシメーターを除く買替え費用は本件事故と相当因果関係ある損害と認められるから、耐用年数に従った買替えを前提にライプニッツ係数で現価を再計算した額を損害と認める。 証拠(甲19、20、2 パルスオキシメーターを除く買替え費用は本件事故と相当因果関係ある損害と認められるから、耐用年数に従った買替えを前提にライプニッツ係数で現価を再計算した額を損害と認める。 証拠(甲19、20、22、24〔いずれも枝番含む〕)によれば、各備品の耐用年数から想定される買替えの時期、その際の費用及び現在価値への再計算は別紙介護用品等買換費用一覧のとおりと認められる。 被告らは、車椅子の購入費用の補助等、原告Aが将来受けるべき公的給付については損益相殺的調整の対象として損害から控除すべき旨主張するが、障害者総合支援法や身体障害者福祉法等の福祉制度に基づく給付は将来において も給付の額や範囲が確実なものとはいえないし、給付の趣旨からしても損害と利益との間に同質性があるとはいえないから損益相殺的調整の対象とすべきものとは認められない。 (11)文書料 4万2442円(甲26の1~13)交通事故証明書、診断書、休業補償のために勤務先に提出した住民票等の取得費用であり、いずれも本件事故と相当因果関係が認められる。 (12)入院慰謝料 500万円本件事故から症状固定日までの入院期間に加え、本件事故による原告Aの受傷が深刻であり生死が危ぶまれる状態が継続したこと等を考慮し、上記金額を相当と認める。 (13)後遺障害慰謝料 2800万円原告Aの後遺障害の程度、症状固定時の年齢等一切の事情を考慮し、上記金額を相当と認める。 (14)過失相殺前の損害額 2億7636万8114円(1)ないし(13)の小計額である。 (15)過失相殺後元本 2億4873万1302円本件事故の過失割合は原告A1:被告C9であるから、これに従って過失相殺を行う。 (計算式)2億7636万8114円×(1- (15)過失相殺後元本 2億4873万1302円本件事故の過失割合は原告A1:被告C9であるから、これに従って過失相殺を行う。 (計算式)2億7636万8114円×(1-0.1)上記計算によれば、過失相殺として控除された額は2763万6812円である。 (16)弁護士費用相当額 1800万円過失相殺後元本から後述の既払金等の控除した残額を考慮し、上記金額を相当と認める。 (17)控除前損害額合計 2億6673万1302円 既払金等の控除及び損益相殺的調整を行う前の損害額は上記のとおりである。以下、既払金等の控除及び損益相殺的調整について検討する。 (18)対人賠償責任に基づく被告三井住友の既払金 ▲692万2226円上記金額を原告Aの損害元本から控除することに争いはない。 (19)人身傷害保険① ▲544万8904円被告三井住友が本件人傷保険契約に基づき原告Aに支払った保険金額であり、原告Aに生じた損害のうち、原告Aの過失相殺額(上記(15)参照)に先に充当される。 本充当後の未充当の過失相殺額は2218万7908円である。 (20)弁論終結時までに給付の確定した傷病手当金等 ▲481万6550円ア国家公務員共済組合法に基づく傷病手当金 55万0416円イ国民年金法に基づく障害基礎年金 121万8319円ウ国家公務員共済組合法に基づく障害厚生年金 304万7815円これら傷病手当金等については、損益相殺的調整と過失相殺との先後に争いがあるが、国民年金法第22条及び国家公務員共済組合法第47条が、給付事由が第三者の行為によって生じた場合には、当該給付事由に対して行った給付の 等については、損益相殺的調整と過失相殺との先後に争いがあるが、国民年金法第22条及び国家公務員共済組合法第47条が、給付事由が第三者の行為によって生じた場合には、当該給付事由に対して行った給付の価額の限度で、政府又は組合が受給権者の第三者に対する損害賠償請求権を取得し、また、受給権者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府又は組合は、その価額の限度で、給付をしないことができる旨定めることにより、受給権者に対する第三者の損害賠償義務と政府又は組合の給付義務とが相互補完の関係にあり、同一の事由による損害の二重てん補を認めるものではない趣旨を明らかにしていること、国民年金法第22条1項及び国家公務員共済組合法第47条1項により組合又は政府に移転する損害賠償請求権は、受給権者の過失を斟酌した後の損害賠償請求権を意味すると解することが文理上自然であることに照らせば、これら傷病手当金等は過失相殺後の損害額 元本から損益相殺的調整を行うべきである。 また、これらが支給され、又は支給されることが確定することにより、そのてん補の対象となる損害は不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが、公平の見地からみて相当であるからこれら控除に係る損害について遅延損害金は生じない。 なお、国家公務員共済組合法に基づく傷病手当金は被害者の休業損害から、国民年金法に基づく障害基礎年金及び国家公務員共済組合法に基づく障害厚生年金については、被害者の逸失利益から損益相殺的な調整を行うべきところ、原告Aの休業損害及び逸失利益は、同人の過失を考慮してもこれら調整すべき額を超えている。 (21)自賠責共済金 ▲4000万円(支払日は令和元年5月28日)①本件事故発生日である平成29年2月26日 の休業損害及び逸失利益は、同人の過失を考慮してもこれら調整すべき額を超えている。 (21)自賠責共済金 ▲4000万円(支払日は令和元年5月28日)①本件事故発生日である平成29年2月26日から支払日である令和元年5月28日までに生じた遅延損害金、②元本の順に充当する。 被告らは自賠責共済金を元本に充当する旨の合意又は元本充当の指定がされた旨主張する。しかし、本件全証拠を検討しても、原告Aと支払者である北海道トラック交通共済協同組合との間で元本充当する旨の合意がされた事実は認められず、また、平成29年法律第44号による改正前民法491条1項の規定は費用、利息及び元本については弁済者による指定充当を許容するものではないから上記のとおり充当すべきものと認められる。 充当計算は別紙遅延損害金等充当計算書のとおりである。 (22)人身傷害保険② ▲4455万1096円(支払日は令和元年7月25日)原告Aの過失部分に先に充当され、これを超える額に相当する損害賠償請求権の元本部分が被告三井住友に移転することから、当該額について原告Aの損害元本から控除する。 上記充当方法によると、原告Aの過失相殺額に充当すべき額は2218万7908円(上記(19)参照)、元本に充当すべき額は2236万3188円で ある。また、原告Aは、被告三井住友に移転した損害について、上記(21)の自賠責共済金受領の翌日から人身傷害保険金支払日までに生じた遅延損害金を確定遅延損害金として請求しているところ、その額は別紙遅延損害金等充当計算書のとおり193万6289円である。 (23)損益相殺的調整及び既払金等控除後の損害残元本上記認定説示に従った原告Aの損害の計算結果は別紙原告Aの損害一覧表(裁判所認定)のとおりであり、口頭弁論終結時点で元 万6289円である。 (23)損益相殺的調整及び既払金等控除後の損害残元本上記認定説示に従った原告Aの損害の計算結果は別紙原告Aの損害一覧表(裁判所認定)のとおりであり、口頭弁論終結時点で元本2億2134万2195円(遅延損害金起算日は上記人身傷害保険②が支払われた日の翌日である令和元年7月26日)、確定遅延損害金193万6289円と認められる。 3 争点3(原告Bの損害)について本件事故によって原告Bに生じた損害は、以下のとおりと認められる。 (1)固有の慰謝料 400万円本件事故によって原告Aに生じた傷害及び後遺障害の程度並びに将来において原告Bが行う介護の負担等、本件に現れた全事情を考慮し、上記金額を相当と認める。 (2)過失相殺 ▲40万円原告Aの過失を被害者側の過失として考慮し、慰謝料額の10%相当額である40万円を控除する。 (3)弁護士費用 36万円過失相殺後の損害額の10分の1である36万円を相当と認める。 (4)合計 396万円 4 反訴請求について(1)本件事故により被告Kに被告車両の残存価格336万9000円及びレッカー費用19万1916円から被告車両のスクラップ価格21万7000円を控除した334万3916円の損害が生じたこと、被告三井住友は、訴外被告Kと締結した車両保険特約に基づき、被告Kに対し、平成29年3月30日に 合計387万4916円を支払ったことは争いがない。 (2)被告三井住友は、保険法第25条1項に基づき、被告Kが原告Aに対して有する損害賠償請求権について、同請求権の額又は保険給付額のいずれか少ない額を限度として当然に代位するところ、本件事故の過失割合は、原告A1:被告C9であるから、被告三井住友は被告Kが原告Aに して有する損害賠償請求権について、同請求権の額又は保険給付額のいずれか少ない額を限度として当然に代位するところ、本件事故の過失割合は、原告A1:被告C9であるから、被告三井住友は被告Kが原告Aに対して有する損害賠償請求権の元本33万4391円(被告車両の損害分として31万5200円、レッカー費用分として1万9191円)について代位したものと認められる。 第5 結論以上によれば、原告Aの請求は、損害額元本2億2134万2195円及び確定遅延損害金193万6289円並びに損害額元本に対する令和元年7月26日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前民法(以下同じ。)所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で、原告Bの請求は、396万円及びこれに対する本件事故の日である平成29年2月26日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で、被告三井住友の請求は、33万4391円及びうち31万5200円に対する民法所定年5分の、1万9191円に対する民法所定の範囲内である年3分の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれらを認容することとし、本訴請求及び反訴請求のその余の部分はいずれも理由がないからこれらを棄却する。 仮執行宣言は、主文記載の範囲でこれを付すのが相当である。 よって、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官中野郎 裁判官水野峻志 裁判官田中大地 (別紙) 争点及びこれに対する当事者の主張第1 争点 1 原告A及び被告らの責任の有無及び過失相殺 2 原告Aの損害 3 原告Bの損害 4 損益相殺的調整 地 (別紙) 争点及びこれに対する当事者の主張第1 争点 1 原告A及び被告らの責任の有無及び過失相殺 2 原告Aの損害 3 原告Bの損害 4 損益相殺的調整(1) 自賠責共済の被害者請求による既払額(2) 傷病手当金及び障害年金の既払額(3) 将来の公的給付第2 争点についての当事者の主張 1 原告A及び被告らの責任の有無及び過失相殺(原告らの主張)本訴事件につき、被告Cの運転には過失があるから、被告らには損害賠償責任(ないし対人賠償責任保険の直接請求に対する支払責任)がある。また、本件では、本訴事件の請求につき、過失相殺をすべきではない。 反訴事件につき、原告Aの過失は証明されておらず、また、原告Aに過失があるとしても、被告Cの過失が圧倒的に大きいから、原告Aには賠償責任はなく、仮に賠償責任があるとしても大幅な過失相殺が為されるべきである。 その理由は以下のとおりである。 (1) 被告Cの運転上の過失被告車両は、総重量約25トンであり、普通乗用車に比べて制動性能が劣るうえ、事故を起こした場合には相手車両の乗員に対して深刻な被害をもたらす危険性が高く、交通法規を遵守すべきことは当然であり、高い技術と交通安全意識が求められる。にもかかわらず、被告Cは、本件事故現場の路面が凍結状態であることを知りながら、夜間に対向車両がいないにもかかわらず前照灯を下向きにし、前方を注視せず、制限速度である時速50キロ メートルを大きく超える時速76キロメートルで走行していた。このような被告Cの運転は自動車運転上の基本的注意義務に違反しているもので、過失がある。なお、ドライブレコーダの信頼性にかかる被告らの主張は合理性がない。 (2) 被告Kの過失被告Kは、貨物 のような被告Cの運転は自動車運転上の基本的注意義務に違反しているもので、過失がある。なお、ドライブレコーダの信頼性にかかる被告らの主張は合理性がない。 (2) 被告Kの過失被告Kは、貨物運送事業者として、運行管理者を選任し、タコグラフやドライブレコーダの記録等をもとに運転状況を管理している(貨物自動車運送事業法18条、貨物自動車運送事業輸送安全規則18条、20条等)。タコグラフやドライブレコーダの記録を見れば、各運転手が速度超過をしていることは容易に把握できるにもかかわらず、本件事故当日、被告Cが平然と速度超過をしていることからすれば、被告Kにおいては、厳冬期においても、大幅な速度超過を容認していたものと思われる。自賠法3条は、危険責任・報償責任の法理に基づいて定められたものである。事業者が、営利のために総重量25トンもの巨大な危険物を公道において運行しているにもかかわらず、安全運転を軽視しているとすれば、その責任は極めて重いと言わざるを得ない。民法722条2項は「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。」と規定しており、これは加害者側の過失の重さと、被害者側の過失の重さを総合考慮する趣旨であり、条文上明らかなとおり、被害者に何らかの過失があっても、不法行為者側の過失と比べて、実質的に対当するような過失でなければ、過失相殺をする必要はない。被告Kの交通法規を無視する経営方針は、本件事故の発生に直結しているものであり、被告らの賠償責任の額を定めるにあたって、この点は、被告ら側の過失として斟酌されるべきである。 (3) 過失の質的相違自動車運転における過失には、短時間の前方不注視やハンドル・ブレーキの操作ミスのような一瞬の不注意(以下「瞬間的過失」という。)と、大幅 て斟酌されるべきである。 (3) 過失の質的相違自動車運転における過失には、短時間の前方不注視やハンドル・ブレーキの操作ミスのような一瞬の不注意(以下「瞬間的過失」という。)と、大幅 な速度超過、飲酒運転、無免許運転等のような道路交通法違反の認識がある過失(以下「意図的過失」という。)がある。意図的過失は、瞬間的過失があっても重大事故につながらないように道路交通法が定めている二重三重の安全装置を「外す」行為と言わざるを得ない。 また、自賠法3条の責任は、危険責任・報償責任に基づいて立法されたものであるところ、営利目的で危険物を公道で運行して利益を得ている事業者が、意図的過失を推奨・容認している場合には、それは、道路交通法の定める安全装置を「壊す」行為というべきであり(以下「構造的過失」という。)、過失の程度としては極めて重い。本件では、被告Cには意図的過失が、被告Kには構造的過失が認められる。なお、被告Kはドライブレコーダから速度の表示を意図的に消去して証拠提出しており、このことは被告Kの構造的過失を裏付けるものである。 瞬間的過失と、意図的過失や構造的過失は質的に異なるから、加害者側に意図的過失及び構造的過失が認められる場合に、被害者の瞬間的過失を対当させて相殺するべきではない。 (4) 被告らの主張に対する反論被告らが主張する過失相殺の根拠であるアないしオの事実については、以下の通り反論する。 ア視認不良本件事故現場は見通しの良い直線道路であり、降雨・降雪・霧等もなく、被告Cが走行用前照灯を点灯していれば、100メートル先の障害物を発見することが可能だったから、視認不良とはいえない。 イ駐車方法不適切原告Aは、原告車両を故意に駐車させたものではない。また、本件事故現場は凍結路面で ていれば、100メートル先の障害物を発見することが可能だったから、視認不良とはいえない。 イ駐車方法不適切原告Aは、原告車両を故意に駐車させたものではない。また、本件事故現場は凍結路面であり、極端に摩擦係数が低下していたから、原告Aが制限速度を遵守していたとしても、轍等の路面の凹凸や路面上のゴミ等の影 響でスリップが発生した可能性もあり、自損事故が原告Aの過失によるものであるとの証明もない。 ウ灯火・三角反射板・発炎筒等の不使用灯火については、自損事故の損傷により点灯不能の状態であった可能性があり、点灯可能な状態で意図的に点灯しなかったことは証明されていない。三角反射板は法令で義務付けられている設備ではない。発炎筒については、自損事故から本件事故までの間隔が約20分間で発炎筒の燃焼時間が一般的に5分程度であることからすると使用したものの燃え尽きていた可能性や、そもそも自損事故後に原告Aが取り出そうとしたが取り出せなかった可能性があり、この点も原告Aの過失と捉えることはできない。 エ車両を移動させなかった重過失原告Aは、自損事故後レッカー移動の手配をしており、原告車両の損傷程度からすれば、他に移動させる手段は考えられず、この点も原告Aの過失とはいえない。 オ原告Aが車両に乗車していたこと原告Aが、いったん原告車両の外に出て、その後、原告車両内に戻った事実は認められるが、その理由は不明であり、保険関係書類を探していたとか、ライトが消えてしまったので再点灯させようとしていた等の可能性が考えられ、原告Aが原告車両に乗り込んだ事実を過失とみるべきではない。 (被告らの主張)(1) 賠償責任の不発生原告車両は、黒色で発見しにくく、また、ハザードランプの点灯などの衝突防止措置をと れ、原告Aが原告車両に乗り込んだ事実を過失とみるべきではない。 (被告らの主張)(1) 賠償責任の不発生原告車両は、黒色で発見しにくく、また、ハザードランプの点灯などの衝突防止措置をとらずに、被告車両の走行車線の全幅を塞ぐ形で、左側面を後方に向け車両の反射部分による反射すら確保できない状況で停車していた ものであり、前照灯を下向きにしていた被告Cが発見してこれを回避するのは不可能であった。被告Cが前照灯を上向きにしなかったことは過失ではない。よって、被告Cには過失はなく、被告らには賠償責任がない。 なお、被告Kが提出したドライブレコーダの映像に速度の表示がなかったのは、被告Kがドライブレコーダのコピーに使用したソフトでは映像部分はコピーできたが、映像の下の部分の速度等の数値の記録部分についてはコピーできなかったに過ぎず、意図的に映像に加工をした事実はない。 (2) 被告Kの過失原告らは、自賠法3条及び民法715条に基づき被告Kに対して損害賠償を請求しているところ、自賠法3条は車両の保有者責任であり、民法715条は使用者の具体的過失に基づく報償責任ないしは危険責任で、いずれも事実上の無過失責任であって使用者の固有の過失に基づく責任ではないから、自賠法3条及び民法715条の責任の存否の判断において使用者の固有の過失を考慮すべきではない。 (3) 過失相殺における各当事者の過失(過失の質的相違)被告Cの過失の態様が考慮されるのは当然であるが、原告らが主張する被告Kの固有の過失を過失相殺において考慮するのは、自賠法3条の保有者責任及び民法715条の使用者責任の場合と同様の趣旨で妥当ではない。 また、原告Aの過失を瞬間的過失とするのも、原告Aが自損事故後に車両から降りながら本件事故前にわざ 考慮するのは、自賠法3条の保有者責任及び民法715条の使用者責任の場合と同様の趣旨で妥当ではない。 また、原告Aの過失を瞬間的過失とするのも、原告Aが自損事故後に車両から降りながら本件事故前にわざわざ車両内に戻ってとどまっていたという事実において最も典型的に表れているように、本件における原告Aの過失の実態に則していない。 (4) 過失相殺仮に、被告C及び被告Kに損害賠償責任があるとしても、以下の事実を総合勘案すれば、原告Aの過失が大きく、既払金を考慮すれば、被告らが原告らに支払うべき金額はない。 ア本件事故は深夜に発生しており、天候は曇りであった。原告車両は黒色で車体の左側面を後続車両側に向けていたことから車両に装備されている反射部品からの反射も確保されておらず、後続車にとっては視認不良であった。よって被告Cの過失から10%が引かれるべきである。 イ原告車両は自損事故を起こして被告車両の走行車線の全幅を塞いでいたのに、原告Aは原告車両を移動させずに放置していたので、駐車方法不適切に該当し、その不作為は極めて危険で後続車との事故に直結するものであった。よって被告Cの過失から20%が引かれるべきである。 原告らの主張によれば、当時の本件事故現場付近の路面は凍結していて制限速度を順守していても路面の凹凸やごみ等の存在の影響でスリップした可能性もあり、原告Aの過失ではないとするならば、同様のことは被告Cにも言えることになり、被告Cには過失がないということになる。同じ路面状況を一方では考慮して他方で考慮しないというのは不公平かつダブルスタンダートである。 ウ車両は、夜間、道路にあるときは、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない(道路交通法52条)。原告Aは、自損事故を起こした後も原告車両 は不公平かつダブルスタンダートである。 ウ車両は、夜間、道路にあるときは、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない(道路交通法52条)。原告Aは、自損事故を起こした後も原告車両のライトが点いていて故障していなかったにもかかわらず全ての灯火を消し、三角反射板や発煙筒を焚いたり、電灯を持って後方に合図に行ったりする警告措置を何らとらなかった。これは「非常点滅灯の不灯火等」に該当し、その不作為は多重的で追突事故に直結するものであった。よって被告Cの過失から20%が引かれるべきである。 エ原告Aは、自損事故により原告車両が走行車線の全幅を塞いでいたのであるから、後続車との衝突事故の発生を容易に予見できたのに、原告車両を放置して近隣の住民の協力を得る等して移動させなかった。これは重過失に該当し、被告Cの過失から20%が引かれるべきである。 オ原告Aが車内にとどまっていなければ原告Aが負傷することはなかったのであり、原告Aには損害の発生だけではなく損害の拡大についても責任がある。 (3) 原告の主張に対する反論ア原告は、被告Cが前照灯を下向きにして被告車両を走行させていたことを論難するが、前照灯の上下の向きについては、事実上取締の対象となっておらず、先行車や対向車の存在する場合には上向きにすることはできないことから多くのドライバーは下向きのまま走行しており、過失と評価すべきでないし、過失相殺の対象とすべきではない。 イ原告は、被告車両の重量を強調しているが、エネルギーは、E=1/2mv²であるから、車両の重量より速度が占める割合が圧倒的に大きく車両重量を強調するのは妥当ではない。 ウ原告は、被告車両の速度が時速76キロメートルと主張しているが、本件事故前に最終的に速度が記録されていた時点 車両の重量より速度が占める割合が圧倒的に大きく車両重量を強調するのは妥当ではない。 ウ原告は、被告車両の速度が時速76キロメートルと主張しているが、本件事故前に最終的に速度が記録されていた時点で速度は時速74kmと記録されている。事故当時の被告車両の速度は、捜査報告書に従い時速70キロメートルである。ドライブレコーダの映像では、衝突の約0.3秒前から時速0kmと記録されており、当該速度表示の信頼性はないというべきである。 2 原告Aの損害損害に関する双方の主張は、以下の通りである。 (原告Aの主張)(1) 治療費 860万2099円現在までに、治療関係費が次のとおり発生している。 ア平成30年7月分までの医療費は、合計709万9506円である。なお、これについては、被告三井住友が、対人賠償責任保険又は人身傷害保険に基づき各医療機関に直接支払ったものである。 イ原告Aによる支払分平成30年8月分以降の医療費150万2593円は、原告Aが医療機関に支払った。 (2) 入院雑費 105万7500円症状固定日までの入院期間中、日額1500円の入院雑費が発生した。 (計算) 1500円×705日 = 105万7500円(3) 付添看護費用等 1057万5000円原告Bは、本件事故発生から症状固定に至るまで、入院中の原告Aに付き添って看護をした。原告Bが原告Aに毎日長時間付き添って更衣、整容、排泄、移乗、移動等の具体的な看護行為を行っていたこと、原告Aは危険行為の防止のために一時期身体拘束をされていたが原告Bが付添っている時間帯は拘束が解かれていたこと、原告Bがリハビリテーションに参加することで原告Aの症状の改善に大きく寄与したこと、原告Bの付添により原告Aの精神が安定し離床拒否や されていたが原告Bが付添っている時間帯は拘束が解かれていたこと、原告Bがリハビリテーションに参加することで原告Aの症状の改善に大きく寄与したこと、原告Bの付添により原告Aの精神が安定し離床拒否やリハビリ拒否を減らし、暴力行為等の不適切行為も抑制されていたこと、原告Bの付添看護は在宅介護の準備として重要であったこと、外出及び外泊中の介護は原告Bが全て担っていたこと、原告Aには頼りにできる親族が原告B以外にはおらず原告Bは年収480万円以上の仕事を退職して原告Aの介護に専念せざるを得なかったこと、等の事情を考慮すれば、原告Bによる付添看護費用の額は日額1万5000円で換算することが相当であり、症状固定までの705日分で1057万5000円となる。 (計算) 1万5000円×705日=1057万5000円(4) 将来介護費用 1億9444万7363円ア原告Aには、下肢の麻痺のために歩行は困難であり、左上肢の麻痺も高度であるため、車椅子のリムを両手で掴んで操作することが不可能である。移動の際は、車椅子を介助者が押して移動している。右上肢は筋力低 下や巧緻運動の低下はあるが、実用性はあり、右上肢を使っての食事動作は可能である。重度の高次脳機能障害があり、WAISによる知能検査が実施不可能な程度である。簡単な指示は理解し、意思疎通は可能であるが、言語障害、記銘力障害、見当識障害、情動抑制障害があり、日常生活動作を指示しても指示にしたがって実施しないことも多く、また、介助者に暴力を振るったり、性的に不適切な言動をすることもある。 イ以上の症状からすると、移動、更衣、食事、口腔ケア、入浴、排泄、清拭、整容その他のあらゆる日常生活動作について他人の介護(身体的介助のみならず看視・声掛けも含む)が必要な状況である。 ウ 。 イ以上の症状からすると、移動、更衣、食事、口腔ケア、入浴、排泄、清拭、整容その他のあらゆる日常生活動作について他人の介護(身体的介助のみならず看視・声掛けも含む)が必要な状況である。 ウ原告Bは、本件事故以前において、H病院において歯科衛生士として就労しており、年収は480万円以上であったが、原告Aの介護のために退職した。現在も職場復帰はできていないが、原告Bには職場復帰の意思も能力もある。また、原告Bは、原告Aより5歳年長で、症状固定時において48歳であるから、年齢的にも、原告Aの余命期間全てにおいて原告Bが全面的に介護を担うことは困難である。 エ現在は、原告Aの介護は原告Bが担っており、短時間の訪問介護を利用しているほか、1週間に2回のデイサービスを利用している状況であるが、上記ウの事情からすれば、職業介護人中心の介護に移行することも十分考えられる。その場合には、1日8時間につきデイサービスを利用し、6時間につき訪問介護を利用し、夜間等の10時間は原告Bが介護するものと考えても、職業介護人の費用だけでも日額3万7000円を超え、これに夜間について原告Bが介護する負担も考慮すれば、日額4万円を超える介護費用がかかるものと考えてもおかしくはない。 オ原告Bによる介護は、職業介護人による介護と比較しても質的に劣るものではなく、仮に原告B中心の介護を行う場合には原告Bの介護は極めて長時間に及ぶうえ原告Aの症状(身体機能面の症状も重度であるう え、暴力行為や性的逸脱行為もみられる。)からすると介護負担は精神的にも相当重い。したがって、近親者介護を前提とする場合でも、職業介護人の単価よりも安価に算定すべき合理的理由はないと考える。 カ以上をふまえたうえで、将来の不確実性等を考慮しても、原告Aの将来介護 も相当重い。したがって、近親者介護を前提とする場合でも、職業介護人の単価よりも安価に算定すべき合理的理由はないと考える。 カ以上をふまえたうえで、将来の不確実性等を考慮しても、原告Aの将来介護費用は日額2万5000円を下まわらないと考える。原告Aは症状固定時43歳であり、余命期間は約39年であるから、将来介護費用の額は、以下のとおり1億9444万7363円となる。 (計算)2万5000円×365日×21.3093= 1億9444万7363円なお、現在価値の算定についてはホフマン方式を採用すべきである。その理由は、後記(8)で述べるとおりである。 キ将来介護費用の計算にあたって、被告は、将来受けられる公的給付(障害福祉制度、介護保険、健康保険等による給付)を控除すべき(あるいは公的給付を考慮して低額に算定すべき)と主張しているが、将来の公的給付を控除したり、将来の公的給付を考慮して将来介護費用の額を低く算定すべきではない。その理由は、後記4(3)の(原告の主張)で述べるとおりである。 (5) 将来介護雑費(将来医療費・通院費を含む) 1166万6842円原告Aは、今後も定期的な投薬やリハビリテーションのための通院が必要であり、症状固定後の状況からすると、通院診療費、リハビリテーション費用、投薬費用、通院交通費(介護タクシー代や病院の駐車場代)が必要となる。そのための費用だけでも、年額173万1150円がかかる。 他に、各種の介護雑費(オムツ、尿取りパッド、おしりふき、ティッシュペーパー、清拭用シート、車椅子のメンテナンス費用、駐車場使用料金増額分)も発生する。なお、このうち、オムツ及び尿取りパッドについては、現在は、オムツを使用しない普通の生活をさせたいとの原告Bの考えもあっ て、あまり利用してい 、駐車場使用料金増額分)も発生する。なお、このうち、オムツ及び尿取りパッドについては、現在は、オムツを使用しない普通の生活をさせたいとの原告Bの考えもあっ て、あまり利用していないが、しばしば失禁をする状態は継続しており、将来的には利用する可能性は高い。 なお、将来における公的給付を考慮すべきでないことは後記4(3)の(原告の主張)で述べるとおりである。 以上を考慮すると、将来介護雑費(将来医療費・通院費を含む)の額としては、控えめに考えても年額54万7500円を下回ることはない。よって、以下のとおり、1166万6842円となる。 (計算) 54万7500円×21.3093= 1166万6842円(6) 家屋改築費用 278万8793円原告Aは、本件事故後、在宅介護に移行するにあたり、新自宅を購入し、その際、障害の状態をふまえて改築工事を実施した。その費用は、278万8793円であった。 (7) 休業損害 469万6546円原告Aは、本件事故後、症状固定日まで入院治療を継続しており、就労することが不可能であった。このため、休業損害が発生した。 ア原告Aの事故前年(平成28年)の年収は643万0444円であり、休業損害算定における基礎日額は1万7618円とする。 イ原告Aは、事故日から症状固定日まで705日間休業した。この間に発生した休業損害は1242万0690円である。 (計算)1万7618円×705日=1242万0690円ウただし、勤務先のG株式会社から、上記期間に対する給与又は休職手当が支払われており、その額は、合計772万4144円である。本件については、紛争の早期解決のため、損害計上にあたって、この額を控除した残額である469万6546円を損害と主張する。 (計算)124 が支払われており、その額は、合計772万4144円である。本件については、紛争の早期解決のため、損害計上にあたって、この額を控除した残額である469万6546円を損害と主張する。 (計算)1242万0690円 - 772万4144円 = 469万6546円(8) 逸失利益 9966万9953円ア原告Aの事故前年(平成28年)の年収は643万0444円であり、原告Aは、労働能力を100%喪失した。原告Aは、症状固定時(平成31年1月31日)において43歳であったから、労働能力喪失期間は67歳に至るまでの24年間とする。24年に相当するホフマン係数は15.4997である。よって、原告Aの逸失利益は9966万9953円となる。 (計算式)643万0444円×100%×15.4997= 9966万9953円イ中間利息控除方式上記のとおり、原告Aは、中間利息控除方式についてはホフマン方式を主張する。その理由は以下のとおりである。 (ア) 昭和40年頃までは、中間利息控除方式は、計算が簡明なホフマン方式(年ごと単利)が一般的であったが、昭和40年代以降、ライプニッツ方式が徐々に一般化した。ライプニッツ方式を採用すべきとする論拠は、①社会における利殖の実態が複利であること、②ホフマン方式だと36年分以上の現価係数は20を超えてしまい、被害者は年5%の利息を前提にすると利息だけで元本を減らさずに年収を確保できることになること、という点であった。①についていえば、現代社会では、20年以上にわたって、銀行の定期預金金利は1%未満の時代が続いている。利殖の実態に最も関連する「利率」について、実態を無視した「5%」で計算しておきながら、単利か複利かの点についてだけ「実態に沿う方法を採用する」というのは、全く合 金利は1%未満の時代が続いている。利殖の実態に最も関連する「利率」について、実態を無視した「5%」で計算しておきながら、単利か複利かの点についてだけ「実態に沿う方法を採用する」というのは、全く合理性がない。むしろ、計算が簡便なホフマン方式を採用するほうが合理性がある。②については机上論であり、現実の定期預金の金利が1%未満であるという事実や、 仮に定期預金が5%1年複利で運用できるような社会では同時に物価や賃金水準の上昇(貨幣価値の下落)も必然的に生じるので「現価係数が20を超えたら被害者は利息だけで暮らせる」ことにはなりえず、現価係数が20を超えることを問題とすること自体的外れである。 (イ) 中間利息控除率を5%とする以上、ライプニッツ方式よりも、ホフマン方式のほうが現実の損害に近づくことは明らかである。既に、中間利息控除率を3%とする民法改正も行われており、5%1年複利という方式が社会実態にそぐわないことは明らかとなっている。最判平成17年6月14日民集59巻5号983頁も、5%による中間利息控除が被害者に酷であることを指摘している。中間利息控除率3%が社会実態に合致するという最新の立法事実が確定している以上、個別事案の妥当な解決を図ることを職責とする個々の裁判所は、できるかぎり、適正な損害計算に努める必要がある。原告Aの逸失利益の現価係数は、民法改正後の3%1年複利では16.9355、他方、5%1年複利で13.7986(被告の主張)、5%年ごと単利(原告の主張)では15.4997である。立法事実として、13.7986が被害者に酷なものであり、16.9355のほうが損害実態に近いということが明確に示されている以上、現行法の枠内で、それに近い計算方法が可能であれば、それを採用することは事実審の裁判官の責務 986が被害者に酷なものであり、16.9355のほうが損害実態に近いということが明確に示されている以上、現行法の枠内で、それに近い計算方法が可能であれば、それを採用することは事実審の裁判官の責務である。最高裁判所は、一貫して、ライプニッツ方式とホフマン方式のいずれについても、不合理な方法とはいえない旨を判示しており(最判平成2年3月23日判タ731号109頁、最判平成3年11月8日交民集24巻6号1333頁、最判平成22年1月26日判時2076号47頁)、いずれの方式を採用するかは事実審の裁判官の良心に委ねられている。 5%という利率を前提とする限りライプニッツ方式(5%1年複利による中間利息控除)よりもホフマン方式(年ごとの5%年単利)での計 算のほうが、現実の損害に近いことは明白であり、後者を採用しない理由は見出し難い。 (ウ) そもそも、5%という中間利息控除率は、賃金水準に関しては裁判時点の賃金水準が一生涯にわたって上昇しないという社会を擬制するとともに、被害者は受領した金員を年利5%で利殖できるという社会を擬制するものであるが、二つの擬制は経済学的には絶対に両立しないものである。つまり、いわゆる3庁共同提言後、裁判所が採用している5%1年複利の中間利息控除は、相矛盾する被害者に不利な方法を組み合わせたもので、極めて不合理で、被害者にとって著しく酷なものである。このことは経済学者等が「没論理的」と強く批判しているところである。 (エ) 中間利息控除率を5%としなければならないと判断した前掲最判平成17年6月14日は、その根拠として、民事執行法、破産法、民事再生法、会社更生法の規定が法定利率による中間利息控除を規定していることを指摘しているところ、これらの規定との整合性をいうのであれば、これらの規定は 4日は、その根拠として、民事執行法、破産法、民事再生法、会社更生法の規定が法定利率による中間利息控除を規定していることを指摘しているところ、これらの規定との整合性をいうのであれば、これらの規定は、単利による中間利息控除を規定しているので、上記最判はホフマン方式と整合性があることになる。 (オ) 支払を遅延した加害者が負担する遅延損害金が単利であるのに対し、被害者にとって回避不能の中間利息控除が複利で行われるというのは、公平を欠く。 (9) 介護用品・設備取得費用 321万3472円ア介護用車両原告Aは、令和元年6月頃、介護用車両(トヨタ・スペイドの福祉車両。 以下「本件介護車両」という。)を287万5000円で購入した。本件事故がなければ、本件介護車両を購入する必要はなかったのであるから、上記金額は、本件事故と相当因果関係のある損害と考える。 イ車椅子原告Aは、入院中については、病院から車椅子を借りて利用していたが、在宅介護にあたって、車椅子の作成が必要となった。令和元年10月15日、原告Aは、屋外用と屋内用の2台の車椅子を取得した。取得にあたっては、札幌市の福祉制度を利用したので、自己負担額は26万7200円であった。よって、26万7200円を損害と主張する。なお、上記の自己負担額は附属品にかかるものであるところ、附属品はブレーキや転倒防止装置等いずれも原告Aの症状に基づき必要なものであり、本件事故と相当因果関係があることは明らかである。 ウパルスオキシメーター原告Aは、重度の脳外傷があり、事故直後は気管切開をして酸素を導入していた。現在は、自発呼吸をしており、酸素の吸入はしていないが、日常的なバイタルチェックとして、血中の酸素飽和度(SpO2)の測定が必要である。このため、原告Aは、 直後は気管切開をして酸素を導入していた。現在は、自発呼吸をしており、酸素の吸入はしていないが、日常的なバイタルチェックとして、血中の酸素飽和度(SpO2)の測定が必要である。このため、原告Aは、在宅介護に移行するにあたり、令和元年10月24日、F病院の購買経由で、血中の酸素飽和度を測定する機器(パルスオキシメーター)を2万1780円で購入した。 なお、被告は呼吸不全であればパルスオキシメーターでの測定の前に救急車を呼ぶべきであるからパルスオキシメーターは不要であると主張するが、外見上明らかな呼吸不全の状態であれば救急車を呼ぶことは当然であるが、パルスオキシメーターの利用はそのような場合に限られるものではなく、被告の指摘はあたらない。 エシャワーチェア原告Aは、在宅介護に移行するにあたり、平成31年4月4日、入浴時に使用するシャワーチェアを1万3492円で購入した。 オ手すりのレンタル費用 平成30年6月、トイレ介助に利用するため、旧自宅のトイレに簡易な手すりをレンタルで設置した。レンタル費用の合計は3万6000円であった。 (10) 介護用品・設備買換費用 708万7756円原告Aは、今後、【別表1】のとおり、介護用品・設備を買い換える必要があり、それぞれの買換費用を現在価値に換算すると合計708万7756円となる。現在価値の算定にあたって、ホフマン方式を採用すべきことは、前記(8)で述べたとおりである。 なお、介護用車両と車椅子の必要性および価額算定については、以下のとおり主張する。 ア介護用車両買換費用1台目の介護用車両の取得費用は、本件事故がなければ支出することがなかったものであり、直接的な因果関係が認められるうえ、現に支出を余儀なくされたものであるから、上記(9)のとおり全 用車両買換費用1台目の介護用車両の取得費用は、本件事故がなければ支出することがなかったものであり、直接的な因果関係が認められるうえ、現に支出を余儀なくされたものであるから、上記(9)のとおり全額を請求する。他方、自動車自体は、車椅子等と異なり、純粋な介護用品ではなく、他の家族(原告B)も利用するものである。将来の買換費用については、家族の便益も考慮すると、全額を損害とするのは躊躇があるので、買換え1回につき、自動車の代金287万5000円の50%にあたる143万7500円を損害と考える。 イ車椅子買換費用車椅子の価額は、2台分で合計66万0706円となる。すでに購入済の2台分については、福祉制度による公的給付を受けており、現実の負担額が26万7200円であったので、この額を損害としたが、将来分については、後記4(3)のとおり公的給付を控除すべきでないから、総額(2台合計66万0706円)を損害として計算する。 (11) 文書料 4万2442円 原告Aは、診断書等の文書の取得費用として、合計4万2442円を支払った。 (12) 慰謝料 3500万円ア入院慰謝料原告Aは、症状固定日(平成31年1月31日)まで、705日間(約23か月)入院した。また、原告Aは、症状固定後も入院を継続し、退院したのは、令和元年10月27日であり、退院するまでの入院日数自体は974日(約32か月)に及ぶ。入院期間中、原告Aは、自らの意思で自由に体を動かすこともできないまま、懸命のリハビリテーションを続けた。こうした事情からすると入院慰謝料としては最大限のものが認められるべきである。よって、入院慰謝料としては500万円が相当である。 イ後遺障害慰謝料原告Aには自賠責等級で別表第一の1級の後遺障害の中でも、重 からすると入院慰謝料としては最大限のものが認められるべきである。よって、入院慰謝料としては500万円が相当である。 イ後遺障害慰謝料原告Aには自賠責等級で別表第一の1級の後遺障害の中でも、重篤な後遺障害が残ったものである。原告Aは、症状固定時43歳であり、今後の長い人生を最重度の後遺障害を負って生きていくこととなった。よって、後遺障害慰謝料については3000万円が相当である。 (13) 弁護士費用 2500万円(14) 損益相殺的調整及び遅延損害金の計算ア以上の損害額を前提に、遅延損害金を計算し、また、前記第3の7記載の既払額について、以下に述べるとおりの損益相殺的調整を行った結果は【別表2】及び【別表3】のとおりである。 イ被告三井住友が、対人賠償責任保険の保険金として支払った692万2226円については元本充当することを認め、これらの各支払日までの遅延損害金も発生しないことを認める。 ウ被告三井住友が、人身傷害保険金として、随時、医療機関等に対して支払った合計544万8904円及び令和元年7月25日に原告Aに支払 った4455万1096円は損害元本を填補する。上記各人身傷害保険金の支払日までに発生した賠償義務者に対する遅延損害金の請求権については代位の対象とならないので、本来は、代位により移転せず、原告Aのもとに残る(最判平成24年2月20日民集66 巻2 号742 頁)。ただし、上記544万8904円については被告三井住友から直接医療機関に支払われていること、個々の支払日を特定して遅延損害金の計算をすることは煩に耐えないことから、この544万8904円に関しては各支払日までの遅延損害金は主張しない。他方、4455万1096円については、上記最判にしたがい、支払日までの遅延損害金を請求する をすることは煩に耐えないことから、この544万8904円に関しては各支払日までの遅延損害金は主張しない。他方、4455万1096円については、上記最判にしたがい、支払日までの遅延損害金を請求する。 また、仮に本訴事件の請求について過失相殺がなされる場合には、代位の範囲については、いわゆる裁判基準差額説によって計算されるべきである。 エ上記のほか、損益相殺に関する主張は、後記4のとおりである。 (被告らの主張)(1) 治療費被告三井住友が支払った医療費709万9506円については認め、その余は不知。 (2) 入院雑費争う。 (3) 付添看護費用等原告主張の事実については不知。 原告Aの入院していた病院は完全看護の病院であり、医師による付添の指示もなく、また、原告Bの行っていた付添看護行為の大半は看護師が行うことができるものであった。さらに、原告Bによる付添看護は原告Aにとって不利益なものもあり、原告Aの精神症状の遷延化ないしは難治化をもたらした可能性がある。 また、原告Bの退職による収入の喪失は、間接損害に過ぎないうえ、あくまでも看護に専念したいとの原告Bの主観的事情によるものであるから、本件事故による損害とはいえない。 原告主張の単価(日額1万5000円)は過去の裁判例と比較しても格段に高額であり、合理的理由がない。 (4) 将来介護費用原告Aの余命期間が39年であることは認め、その余は不知ないし争う。 原告Aの症状はかなり改善しており、右手を使って自分で食事をすることができ、トイレに付き添って行けば自力で排尿・排便が可能であり、車椅子を足で漕いで移動できるなど、相当程度改善している。 原告Aの症状からすれば、原告Bが原告Aを介護する時間は、せいぜい1日あたり4時間15分 レに付き添って行けば自力で排尿・排便が可能であり、車椅子を足で漕いで移動できるなど、相当程度改善している。 原告Aの症状からすれば、原告Bが原告Aを介護する時間は、せいぜい1日あたり4時間15分程度であり、職業介護人の利用も考えれば、原告Bの負担はさらに軽い。 原告Bの復職の予定については不知。 以上からすると、原告Aの主張する将来介護費用は高額に過ぎる。 また、後記4における被告の主張のとおり、障害者総合支援法による公的給付を利用することができるから、その時間は、介護が必要とはいえない。 なお、中間利息控除方式は、いわゆる3庁共同提言後、ライプニッツ方式が全国に広く浸透しており、法的安定と公平等の観点から、ライプニッツ方式によるべきである。 (5) 将来介護雑費争う。 原告Aの介護について一定程度の介護雑費が必要であることは認めるが、車椅子のメンテナンス費用及び駐車料金増額分については否認し、その余は不知。駐車場は後部から出し入れする方式の介護用車両であれば、広い駐車スペースは不要である。 なお、中間利息控除方式はライプニッツ方式によるべきである。 (6) 家屋改築費用不知ないし否認する。 新自宅は、もともとバリアフリーのマンションであるとのことであるから、大きな改築は不要である。 尿の臭気対策として、壁の6ないし7面をエコカラットに変更したことは目的と手段が釣り合っていないし、アクセントクロスやタイルは美観目的であり、相当性を欠く。テレビを壁面に固定する工事も相当性を欠く。 (7) 休業損害原告Aが本件事故による傷害により休業せざるを得なかったことは認めるが、その余は不知ないし否認する。 (8) 逸失利益基礎収入と労働能力喪失率と労働能力喪失期間については認める。 なお 害原告Aが本件事故による傷害により休業せざるを得なかったことは認めるが、その余は不知ないし否認する。 (8) 逸失利益基礎収入と労働能力喪失率と労働能力喪失期間については認める。 なお、中間利息控除方式はライプニッツ方式によるべきである。 (9) 介護用品・設備取得費用ア介護用車両原告Aの移動に介護用車両が必要であることは認めるが、その余は否認する。必要な限度で福祉サービスを受けることが可能であり、介護用車両を取得することは必要がない。仮に、介護用車両が必要であるとしても、カーリースを利用すれば月額2万5000円程度で利用できる。 イ車椅子車椅子の必要性は認めるが、その余は否認する。購入費用の9割は公的給付で賄うことが可能であるし、附属品の価格が車椅子代金に匹敵するほど高額となっているが、この内容が不明である。 ウパルスオキシメーター パルスオキシメーターが必要であることは否認する。原告Aは、現在、自発呼吸をしているから、パルスオキシメーターは必要ない。呼吸不全の症状があらわれた場合には、血中酸素濃度を測定する前に救急車で病院に搬送すべきである。 エシャワーチェアシャワーチェアの必要性は認めるが、その余は否認する。 シャワーチェアは、福祉による給付対象であり、1割負担で購入するか、レンタルすることが可能である。 オ手すりのレンタル費用原告Aにおいてトイレ用手摺が必要であることは認めるが、その余は否認する。 手すりについては、福祉による給付対象であり、1割負担で購入するか、レンタルすることが可能である。 (10) 介護用品・設備買換費用ア介護用車両否認する。理由は、前記(9)のとおり。 イ車椅子車椅子の必要性は認めるが、その余は否認する。理由は、 、レンタルすることが可能である。 (10) 介護用品・設備買換費用ア介護用車両否認する。理由は、前記(9)のとおり。 イ車椅子車椅子の必要性は認めるが、その余は否認する。理由は、前記(9)のとおり。 ウパルスオキシメーター否認する。前記(9)のとおり、そもそも必要がない。 エシャワーチェアシャワーチェアの必要性は認めるが、その余は否認する。理由は前記(9)のとおり。 (11) 文書料不知ないし否認する。 (12) 慰謝料ア入院慰謝料金額を争う。症状固定日後の入院期間を入院慰謝料の算定根拠とすることは許されないし、他に慰謝料の増額事由は認められない。 症状固定後の入院は傷害の治療のためではなく後遺障害の緩和等に要するものであるから、慰謝料としては後遺障害慰謝料の中に含まれるから、入通院慰謝料でも考慮されるべきとすることは、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の双方に含まれることになり、慰謝料の二重取得(ダブルカウント)になる。 イ後遺障害慰謝料金額を争う。他の事案との公平性を考えるべきであり、本件では慰謝料増額事由は認められない。 原告らは、原告Aの後遺障害について1級の中でも重篤なものと主張するが、1級の中には寝たきりで意思の疎通もできない等の原告Aより遥かに重篤なものも多く含まれており、原告Aの後遺障害1級の中でも重篤とすることには合理性がない。 (13) 弁護士費用争う。 (14) 損益相殺的調整及び遅延損害金の計算原告主張のイ及びウは認める。 その余の既払金による損益相殺的調整については、後記4のとおりである。 3 原告Bの損害(原告Bの主張)原告Bは、夫である原告Aが重篤な障害の残る状態となり、さらに事故後、現在まで献身的な付添介 の既払金による損益相殺的調整については、後記4のとおりである。 3 原告Bの損害(原告Bの主張)原告Bは、夫である原告Aが重篤な障害の残る状態となり、さらに事故後、現在まで献身的な付添介護を続け、今後も続けていくことになる。原告Bの精 神的苦痛は金銭で慰藉することは不可能なものであるが、過去の裁判例等を参考に、あえて金銭に換算すれば、慰謝料額は500万円が相当である。また、弁護士費用は50万円が相当である。 (被告らの主張)争う。裁判例において、近親者の慰謝料を認めた事例は、被害者が幼児や若年者であるとか、加害者の過失が特に悪質な場合に限られているところ、本件はそのような事例ではない。 仮に原告Bにも慰謝料が認められるのが相当であるとしても、原告Aの後遺障害慰謝料及び原告Bの慰謝料の両者の合計額において他の同種の事案との公平性や法的安定性が考慮されるべきである。 4 損益相殺的調整(1) 自賠責共済の被害者請求による既払額(被告らの主張)原告引用の最判平成16年12月20日裁判集民事215号987頁は、あらゆる場合に法定充当となることまで判示したものではない。 法令上、損害の各項目の計算の仕方が厳密に規定され、自賠責会社がそれに反する計算や支払いを許容されていないのだから、自賠責共済から支払われた4000万円は、後遺障害に関する損害(逸失利益及び後遺障害慰謝料)に充当されるとする黙示の合意があったとされるべきである。 仮にそうでないとしても、自賠責共済が原告Aに支払うにあたって後遺障害慰謝料と逸失利益の元本に充当する旨の指定をしたものである(改正前の民法488条)。 (原告Aの主張)自賠責共済の被害者請求による4000万円の支払は法定充当となる(最判平成16年12月20日裁判集 と逸失利益の元本に充当する旨の指定をしたものである(改正前の民法488条)。 (原告Aの主張)自賠責共済の被害者請求による4000万円の支払は法定充当となる(最判平成16年12月20日裁判集民事215号987頁)。自賠法16 条の請求に基づく支払は「損害賠償額の支払」であるから、賠償金が支払われた場合と同様に法定充当となる。 被告らの主張する黙示の合意は存在しないし、弁済者による指定は、改正前の民法491条に反することができないから、被告らの主張は失当である。 (2) 傷病手当金及び障害年金の既払額(被告らの主張)前記第3の7の(4)ないし(6)の傷病手当金及び障害年金に関する損益相殺的調整の方法としては、控除前過失相殺説(絶対説)が妥当であり、過失相殺の有無と関係なく、全額を原告Aの損害賠償請求権から控除すべきである。傷病手当金及び障害年金による給付は、労災保険の給付と同様に損害を填補するものであるから、最判平成元年4月11日民集43 巻4 号209頁にしたがって、控除前過失相殺説(絶対説)により処理されるべきである。 代位制度の有無は法理論的帰結ではなく政治的政策的判断の結果であるから、損益相殺と過失相殺の先後を決定する法理論的な根拠とはならない。 公的保険はすべて被保険者が一定程度の保険料を負担しており、労災保険も例外ではない。しかし、公的保険において被保険者が負担している保険料は、保険金支払事由が生じた場合に支払われる保険料と比較すると僅かなものにすぎず、国庫から多額の資金が補てんされており、自らが保険料を負担して契約する私的保険である人身障害保険とはこの点において法的性質を全く異にし、公的保険に保健法が適用されないのは明らかであることも考慮すれば、公的保険と私的保険を同視することはでき が保険料を負担して契約する私的保険である人身障害保険とはこの点において法的性質を全く異にし、公的保険に保健法が適用されないのは明らかであることも考慮すれば、公的保険と私的保険を同視することはできない。 (原告Aの主張)傷病手当金及び障害年金(国民年金及び国家公務員共済)については、損益相殺的調整の対象となることは認める。ただし、これらが損益相殺的調 整の対象となる理由は、法律に基づき代位が生じ、その限りにおいて原告Aの被告らに対する損害賠償請求権が保険者(共済組合等)に移転するからである。そして、過失相殺がなされる場合の代位の範囲に関しては、控除前過失相殺説(絶対説)、控除後過失相殺説(比例説)、損害額超過説(差額説)の三つの見解があるところ、原告は、主位的には損害額超過説(差額説)を主張し、仮にそれが認められないとしても、控除後過失相殺説(比例説)を主張する。その理由は以下のとおりである。 ア保険代位制度の立法趣旨は、保険給付を受けた被害者が、不法行為に基づく損害賠償請求権をも行使しうるとすると、被害者が二重に利得して不当な利得を受けることとなり、他方、被害者が保険給付により満足を受けた結果、権利行使をしなければ、加害者が免責されて不当な利得を受けることとなることから、そのような「被害者の過剰利得」及び「賠償義務者の不当な免責」の阻止をする点にある。損害賠償請求権が移転することで、結果として、保険者は給付した保険金相当額を事後的に回収することができることとなるが、そのこと(保険者の給付を賠償義務者に賄わせること)を目的とする制度ではない。この点は、最判平成20年2月19日民集62 巻2 号534 頁や最判平成30年9月27日民集72 巻 4 号432 頁の判示からも明らかである。 イこの問題は、加 こと)を目的とする制度ではない。この点は、最判平成20年2月19日民集62 巻2 号534 頁や最判平成30年9月27日民集72 巻 4 号432 頁の判示からも明らかである。 イこの問題は、加害者による賠償金の支払によって、被害者が被った損害の填補を優先させるか(=差額説)、保険者の求償請求を優先させるか(=絶対説)、あるいは両者の権利を同列に置き比例按分するのか(=比例説)という問題であり、被害者と保険者のいずれが優先するのかという価値判断の問題に帰着する。この点、公的保険は、加害者の有無や被害者自身の過失の有無に関わらず、保険給付を確実に行う義務がある。そうであるならば、偶々、加害者が存在するからといって、そのことだけで、ただちに、保険者の負担額を減額すべき理由はない。また、公的保険のうち、 労災保険を除く3つの保険(公的年金保険、健康保険、介護保険)は、いずれも、被保険者の拠出した保険料を基本的な原資とするものであり、その点では相当程度の対価性がある。つまり、自身の傷病、障害、死亡、高齢化等の保険事故に備えるために自身(又は家族)が対価を拠出して加入しているのである。以上のような公的保険の仕組みからすると、被保険者自身が不法行為の被害に遭って現に損害が発生している状況において、損害の全部が填補されたわけでもないのに、被害者の加害者に対する損害賠償請求権よりも、保険者の求償権を優先させること(絶対説)は背理であると思われる。また、比例説の場合も、被保険者(被害者)が損害全部の填補を受けていないにもかかわらず、保険者が被保険者(被害者)と同列(按分)で加害者から賠償金を受け取れることになる。これは、保険料を負担した被保険者と、保険者(賠償義務者の存否と関係なく必要な給付をすべき義務を負う者)を同列に置くもの が被保険者(被害者)と同列(按分)で加害者から賠償金を受け取れることになる。これは、保険料を負担した被保険者と、保険者(賠償義務者の存否と関係なく必要な給付をすべき義務を負う者)を同列に置くものであり、制度の仕組みからすると疑問である。 ウこの問題について直接判断した最高裁判例はないが、最判平成20年2月19日民集62 巻2 号534 頁は、被害者自身の自賠責保険に対する請求(自賠法16条の被害者請求。以下、単に「被害者請求」という。)と老人保健法41条1項に基づいて市町村が代位した被害者請求が競合した場合に、被害者自身による請求が優先するものと判断している。また、同様に、最判平成30年9月27日民集72 巻4 号432 頁は、被害者自身による被害者請求と労災保険法12条の4第1項に基づいて国が代位した被害者請求とが競合した場合に、被害者自身による請求が優先するものと判断している。このように、最高裁は、被害者請求の競合場面に関する限り、公的保険の保険者による求償よりも被害者本人の請求が優先するものと判断しており、これらの判断は、損害額超過説(差額説)と整合 する。また、私保険である人身傷害保険の場合も、最判平成24年2月20日民集66 巻2 号742 頁が、損害額超過説(差額説)を採用している。 なお、最判平成元年4月11日民集43 巻4 号209 頁は、労災保険について絶対説を採用しているが、これは労災保険の保険料を負担するのは、使用者(企業側)であり被保険者(労働者)は保険料を負担していないこと、業務災害の場合には安全配慮義務違反等を根拠に使用者の賠償責任が問われることも多く、その場合には労災保険は賠償責任保険として機能する面もあること、等、他の公的保険(公的年金保険、公的医療保険、介護保険)とは相当異 は安全配慮義務違反等を根拠に使用者の賠償責任が問われることも多く、その場合には労災保険は賠償責任保険として機能する面もあること、等、他の公的保険(公的年金保険、公的医療保険、介護保険)とは相当異なる性質を有する保険であることに起因しているものと考えられる。したがって、被保険者側が保険料を負担している公的保険に関しては、労災保険と同列には論じられず、最判平成元年4月11日民集43 巻4 号209 頁の射程は、労災保険以外の公的保険には及ばないと考えられる。 エ保険に関する一般法である保険法(平成20年成立)は、同法25条において、保険代位について明確に差額説を採用している。保険法は公的保険には直接適用はされないが、前記アで述べた保険代位の立法趣旨は公的保険の場合でも同様であるから(このことは、最判平成20年2月19日民集62 巻2 号534 頁や最判平成30年9月27日民集72 巻4 号432頁の判示からも明らかである。)、別異に解する特段の事情のないかぎり、公的保険における保険代位の解釈についても保険法25条と同様の解釈(=差額説)を採用すべきである。 (3) 将来の公的給付(被告らの主張)原告Aは、障害福祉制度により、車椅子等の購入や訪問介護のヘルパーの費用の9割について、確実に、公的な給付を受けることができる。将来の公的給付について給付が不確実であるというのであれば、被害者の後遺障害 の将来の変化や被害者の平均余命までの生存可能性についても不確実であるのに、将来の不確実性を理由に公的給付の損益相殺の調整を否定するのは公平を欠き、被害者に損害賠償と公的給付の二重填補を肯定するものであり不当である。 社会保険に基づく将来の公的給付については、公的給付も損害賠償も損害補填的性質を有する意味において相補 定するのは公平を欠き、被害者に損害賠償と公的給付の二重填補を肯定するものであり不当である。 社会保険に基づく将来の公的給付については、公的給付も損害賠償も損害補填的性質を有する意味において相補的性質を有し、かつ、公的給付は国庫すなわち税金により賄われるから、二重払いになるような解釈運用は厳に慎まれなければならない。 したがって、原告Aが将来受けるべき公的給付については損益相殺的調整の対象として損害から控除されるべきである。 前記のとおり代位規定や支給免責規定の有無は、極めて政策的政治的な判断の結果であるから、それらが将来の福祉制度に基づく将来給付の損益相殺の可否の法理論的根拠とはなりえないし、障害者であるからといって損害以上の給付が得られることは社会福祉制度が国庫すなわち税金によって賄われていることからも許容されない。 (原告の主張)ア社会保険に基づく将来給付と損益相殺的調整公的給付のうち、各種社会保険制度(国民健康保険法、健康保険法、高齢者の医療の確保に関する法律、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、介護保険法、労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法、国民年金法、厚生年金保険法等に基づく、医療、介護、労災、年金の各制度)に基づく給付については、既払分は、代位により保険者である公的機関に権利が移転するから、その限りで、被害者は損害賠償請求権を喪失することは当然である。しかし、未払い部分については損益相殺的調整をすべきではない。このことは最大判平成5年3月24日民集47 巻4号3039 頁から明らかであるし、そもそも、これらの公的給付が未払いの状 況で損害賠償金が支払われた場合には、その限度で、各法律の支給免責規定により公的機関(保険者)は給付の義務を免れるのであ から明らかであるし、そもそも、これらの公的給付が未払いの状 況で損害賠償金が支払われた場合には、その限度で、各法律の支給免責規定により公的機関(保険者)は給付の義務を免れるのであるから、法理論的にみて賠償義務者において損益相殺的調整を主張する余地は全くない。 イ福祉制度に基づく将来給付と損益相殺障害者総合支援法等の福祉制度に基づく給付に関しては、上記アの社会保険制度と異なり、代位規定及び支給免責規定は設けられておらず、純粋に損益相殺をすべきか否かが問題となるところ、以下の点を考慮すれば将来給付分はもとより、既給付分についても損益相殺の対象とすべきではない。 (ア) 上記アで述べたとおり、我が国の法体系において、社会保険制度には代位制度及び支給免責制度が規定されており、社会保険による給付によって賠償義務者の義務は消滅しない。つまり、賠償義務と社会保険では、まずは前者による填補が優先されているのであり、社会保険の存在によって賠償義務者の負担が軽減されたり賠償義務者が利益を得たりすることは法の予定しないところである。そして、障害者総合支援法7条は他法優先を定め、障害福祉制度よりも社会保険制度を優先的に利用すべきこととされている。したがって、障害福祉制度は最後の手段であって、社会保険制度がこれに優先し、さらに社会保険制度に優先して、損害賠償請求権が行使されるべきものである。要するに、自助(私債権である損害賠償請求権による填補)が最優先であり、それで損害が十分に填補されていない場合には共助(社会保険制度)が利用され、それでも足りない場合に、はじめて公助(社会福祉制度)を利用すべきことが、我が国の法体系である。したがって、福祉制度が、損害賠償請求権よりも優先して支払われるべきとの被告らの主張は、法体系と真逆の発想である りない場合に、はじめて公助(社会福祉制度)を利用すべきことが、我が国の法体系である。したがって、福祉制度が、損害賠償請求権よりも優先して支払われるべきとの被告らの主張は、法体系と真逆の発想である。 (イ) 障害者総合支援法に基づく給付は、障害者の福祉のために給付されるものであり、本来的に、損害の填補性がなく、代位規定も、支給免責の規定も置かれていないから、その給付を損益相殺的調整に用いるべきでは ない。代位規定や支給免責規定を設けたり、また、資産要件等を設けることは立法政策としてはありうるところであるが、現時点において、立法府はそのような規定を設けていない。この点は、障害者の利益を考慮した立法府の政策判断であって、決して賠償義務者に利益を与えるための政策判断ではない。福祉制度による給付について損益相殺をしない場合には、被害者が二重填補を受ける場合がありうるが、障害者が一定の利益を得ることは法律が織り込み済みのことである。逆に、代位規定や支給免責規定のない社会福祉制度に基づく給付について損益相殺を認めた場合、賠償義務者は、税金を利用して賠償金の支払義務を免れるという不当な利得を得ることとなるが、障害福祉制度による給付が不法行為の加害者のために機能することになり、本末転倒である。 (ウ) また、社会保障制度全般について財政状況が逼迫している現状においては、社会福祉制度による現在の支給状況が将来数十年にわたって維持されることが確実とはいえない。法改正があればもとより、自治体における運用変更、国の通達等によって、支給量が制限されることは十分に想定されるし、支給要件に資産要件等が付加されることも考えられる。 (エ) 以上からすると、福祉的給付については、社会保険による給付以上に、将来の給付分を損益相殺の対象とすべきでは れることは十分に想定されるし、支給要件に資産要件等が付加されることも考えられる。 (エ) 以上からすると、福祉的給付については、社会保険による給付以上に、将来の給付分を損益相殺の対象とすべきではない。 【別表1】 介護用品等買換費用一覧(添付省略)【別表2】 原告Aの損害一覧表(添付省略)【別表3】 遅延損害金計算書(添付省略)
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