平成22(ワ)13776 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年8月31日 東京地方裁判所
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判決文本文227,667 文字)

平成24年8月31日判決言渡同日原本領収裁判所書記官塙義和平成22年(ワ)第13776号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年5月21日 判決 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 目次主文.................................................. 4事実及び理由.................................................. 4第1 請求.............................................................. 4第2 事案の概要........................................................ 4 1 概要.............................................................. 4 2 前提事実.......................................................... 4 3 争点............................................................. 13第3 争点に関する当事者の主張......................................... 15 1 本件特許発明1に係る侵害の成否................................... 151-1 構成要件1Aの充足性(争点1-1)................. 15 1 本件特許発明1に係る侵害の成否................................... 151-1 構成要件1Aの充足性(争点1-1)........................... 151-2 構成要件1Bの充足性(争点1-2)........................... 221-3 構成要件1Cの充足性(争点1-3)........................... 341-4 均等侵害の成否(争点1-4)................................. 511-5 道具理論の成否(争点1-5)................................. 581-6 乙11号証を主引例とする進歩性の欠如(争点1-6)........... 611-7 乙8号証を主引例とする進歩性の欠如(争点1-7)............. 88 2 本件特許発明2に係る侵害の成否................................... 96 2-1 構成要件2Aの充足性(争点2-1)........................... 962-2 構成要件2B~2Cの充足性(争点2-2).................... 1032-3 構成要件2D~2Fの充足性(争点2-3).................... 1082-4 構成要件2Gの充足性(争点2-4).......................... 1152-5 間接侵害の成否(争点2-5)................................ 1162-6 均等侵害の成否(争点2-6)................................ 成否(争点2-5)................................ 1162-6 均等侵害の成否(争点2-6)................................ 117 3 本件特許発明3に係る侵害の成否.................................. 1233-1 構成要件3Aの充足性(争点3-1).......................... 1233-2 構成要件3B~3C及び3Eの充足性(争点3-2)............ 1273-3 構成要件3Dの充足性(争点3-3).......................... 1393-4 構成要件3F及び3Hの充足性(争点3-4).................. 1403-5 構成要件3Iの充足性(争点3-5).......................... 1463-6 サポート要件違反の有無(争点3-6)........................ 1473-7 明確性要件違反の有無(争点3-7).......................... 1593-8 実施可能要件違反の有無(争点3-8)........................ 1633-9 乙13号証を主引例とする進歩性の欠如(争点3-9).......... 164 4 原告の損害額(争点4).......................................... 182第4 当裁判所の判断.................................................. 183 1 本件特許発明1に係る侵害の成否について.......................... 1831-1 ..................................... 183 1 本件特許発明1に係る侵害の成否について.......................... 1831-1 構成要件1Aの充足性(争点1-1)について.................. 1831-2 構成要件1Bの充足性(争点1-2)について.................. 1901-3 構成要件1Cの充足性(争点1-3)について.................. 2071-4 まとめ...................................................... 217 2 本件特許発明2に係る侵害の成否について.......................... 2172-1 構成要件2Aの充足性(争点2-1)について.................. 2172-2 構成要件2B~2Cの充足性(争点2-2)について............ 225 2-3 構成要件2D~2Fの充足性(争点2-3)について............ 2342-4 構成要件2Gの充足性(争点2-4)について.................. 2362-5 まとめ...................................................... 237 3 本件特許発明3に係る侵害の成否について.......................... 2373-1 構成要件3Aの充足性(争点3-1)について.................. 2373-2 構成要件3B~3C及び3Eの充足性(争点3-2)について.... 2473-3 構成要件3Dの充足性(争点3-3)について....... いて.................. 2373-2 構成要件3B~3C及び3Eの充足性(争点3-2)について.... 2473-3 構成要件3Dの充足性(争点3-3)について.................. 2563-4 構成要件3F及び3Hの充足性(争点3-4)について.......... 2573-5 構成要件3Iの充足性(争点3-5)について.................. 2583-6 まとめ...................................................... 260第5 結論............................................................ 260 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙被告製品目録記載の各製品を,製造し,譲渡し,貸渡し,譲渡若しくは貸渡しの申出をし,又は譲渡若しくは貸渡しのために展示してはならない。 2 被告は,原告に対し,金2億5000万円およびこれに対する平成22年4月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 概要本件は,発明の名称を「信号処理装置」「電子楽器の音源装置」「楽音データ再生装置」とする3つの特許権を有する原告が,被告が製造・販売するLSIが原告の特許権を侵害する旨主張して,被告に対し,特許法100条1項に基づく差止請求として当該LSIの製造,譲渡等の禁止と不法行為に基づく損害賠償請求として4億8000万円の一部である2億5000万円(附帯請求として訴状送達の日 て,被告に対し,特許法100条1項に基づく差止請求として当該LSIの製造,譲渡等の禁止と不法行為に基づく損害賠償請求として4億8000万円の一部である2億5000万円(附帯請求として訴状送達の日の翌日である平成22年4月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案である。 2 前提事実以下の各事実は,当事者間に争いがない。 (1) 当事者原告は,楽器,音楽機器,半導体等を製造販売する会社である。 被告は,半導体集積回路等を製造販売する会社である。 (2) 特許第2943636号ア概要 原告は,次の特許権を有している(以下,【請求項1】に係る特許発明を「本件特許発明1」といい,これに係る特許を「本件特許1」という。 また,当該特許権に係る特許公報〔甲1の2〕を末尾に添付し,これを「本件特許1明細書」という。)。 発明の名称信号処理装置出願日平成6年11月22日出願番号特願平6-288474公開日平成8年6月7日公開番号特開平8-147883登録日平成11年6月25日特許番号特許第2943636号特許請求の範囲【請求項1】データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,発音指示を発生する発音指示手段と,該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元 て音信号を生成する信号処理装置において,発音指示を発生する発音指示手段と,該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータ に基づいて音信号を生成する演算手段とを具備することを特徴とする信号処理装置イ本件特許発明1の構成要件の分説本件特許発明1の構成要件は,次のとおり分説することができる(以下「構成要件1A」などという。)。 1A データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,1B 発音指示を発生する発音指示手段と,1C 該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード れた先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する演算手段と1D を具備することを特徴とする信号処理装置。 ウ本件特許発明1の目的・効果本件特許発明1は,「従来より,デジタルデータを記録する際には,その記憶容量を小さくするために,各種のデジタルデータ圧縮技術が用いられてきた」(本件特許1明細書【0002】)が,「再生するためのデータ処理に時間がかかるため,頭出しにおいて直ちに再生音が出てこないと いう問題を生じる」(同明細書【0004】)という課題解決を目的とするものであり,本件特許発明1の構成により,「圧縮データのデコード時における時間遅れが生ぜず,このため高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができるという利点が得られる」(同明細書【0052】)ようになったものである。 (3) 特許第2734323号ア概要原告は,次の特許権を有している(以下,【請求項2】に係る特許発明を「本件特許発明2」といい,これに係る特許を「本件特許2」という。 また,当該特許権に係る特許公報〔甲2の2〕を末尾に添付し,これを「本件特許2明細書」という。)。 発明の名称電子楽器の音源装置出願日平成4年11月30日公開日平成6年6月14日公開番号特開平6-167978登録日平成10年1月9日特許番号 出願日平成4年11月30日公開日平成6年6月14日公開番号特開平6-167978登録日平成10年1月9日特許番号特許第2734323号特許請求の範囲【請求項2】楽音信号の先頭から,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する記憶手段と,発音指示に応答して,前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する読出手段と, 前記読出手段によって読み出された,圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに展開するデータ展開手段と,前記読出手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したか否かを判別する第2の判別手段と,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する第2の選択手段とを具備し,前記第2の選択手段によって選択されたディジタル・データに基づいて発音することを特徴とする電子楽器の音源装置。 イ本件特許発明2の構成要件の分説本件特許発明2の構成要件は,次のとおり分説することができる(以下「構成要件2A」などという。)。 音することを特徴とする電子楽器の音源装置。 イ本件特許発明2の構成要件の分説本件特許発明2の構成要件は,次のとおり分説することができる(以下「構成要件2A」などという。)。 2A 楽音信号の先頭から,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する記憶手段と,2B 発音指示に応答して,前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する読出手段と,2C 前記読出手段によって読み出された,圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに展開するデータ展開手段と,2D 前記読出手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したか否かを判別する第2の判別手段と, 2E 前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する第2の選択手段とを具備し,2F 前記第2の選択手段によって選択されたディジタル・データに基づいて発音する2G ことを特徴とする電子楽器の音源装置。 ウ本件特許発明2の目的・効果本件特許発明2は,「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である」ことに鑑み,「発音指示後,時間遅れを極めて少な 装置。 ウ本件特許発明2の目的・効果本件特許発明2は,「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である」ことに鑑み,「発音指示後,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる電子楽器の音源装置を提供する」(本件特許2明細書【0003】)ことを目的とし,本件特許発明2の構成により,「時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる(請求項2)」(同明細書【0062】)。 (4) 特許第3918826号ア原告は,次の特許権を有している(以下,【請求項4】に係る特許発明を「本件特許発明3」といい,これに係る特許を「本件特許3」という。 また,当該特許権に係る特許公報〔甲3の2〕を末尾に添付し,これを「本件特許3明細書」という。)。 発明の名称楽音データ再生装置出願日平成16年3月30日公開日平成17年10月13日公開番号特開2005-283944登録日平成19年2月23日 特許番号特許第3918826号特許請求の範囲【請求項1】圧縮楽音データと非圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,非圧縮楽音データの順に読み出して再生する楽音データ再生装置であって,前記記憶媒体から前記非圧縮楽音データを読み出すとともに,前記非圧縮楽音データの読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する第1の読出手段と,前記記憶媒体から前記圧縮楽音データを読み出す第2の読出手段と,前記第2の読出手段によって読み出された圧縮楽音データを伸張して出 読み出し終了通知を出力する第1の読出手段と,前記記憶媒体から前記圧縮楽音データを読み出す第2の読出手段と,前記第2の読出手段によって読み出された圧縮楽音データを伸張して出力するデコーダと,前記第1の読出手段の出力と前記デコーダの出力とを切り換える切換手段と,前記第1の読出手段,前記第2の読出手段,および前記切換手段を制御する制御手段とを具備し,前記圧縮楽音データは,楽音データの再生における所定の再生処理単位の整数倍のデータサイズを有し,前記制御手段は,ループ再生指示を受けて,前記第2の読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換える第1手順,前記デコーダによる前記圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で前記第1の読出手段へ前記非圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換える第2手順,を順に実行し,前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて再び前記第1手順を実行することにより,前記楽音データをループ再生させる ことを特徴とする楽音データ再生装置。 【請求項4】前記非圧縮楽音データに代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の楽音データ再生装置。 イ本件特許発明3の構成要件の分説本件特許発明3の構成要件は,次のとおり分説することができる(以下「構成要件3A」などという。)。 3A 圧縮楽音データとADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶 件は,次のとおり分説することができる(以下「構成要件3A」などという。)。 3A 圧縮楽音データとADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの順に読み出して再生する楽音データ再生装置であって,3B 前記記憶媒体から前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを読み出すとともに,前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する第1の読出手段と,3C 前記記憶媒体から前記圧縮楽音データを読み出す第2の読出手段と,3D 前記第2の読出手段によって読み出された圧縮楽音データを伸張して出力するデコーダと,3E 前記第1の読出手段の出力と前記デコーダの出力とを切り換える切換手段と,3F 前記第1の読出手段,前記第2の読出手段,および前記切換手段を制御する制御手段とを具備し,3G 前記圧縮楽音データは,楽音データの再生における所定の再生処理単位の整数倍のデータサイズを有し,3H 前記制御手段は,ループ再生指示を受けて,前記第2の読出手段へ 前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換える第1手順,前記デコーダによる前記圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で前記第1の読出手段へ前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換える第2手順,を順に実行し,前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて再び前記第1手順を実行す ータの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換える第2手順,を順に実行し,前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて再び前記第1手順を実行することにより,前記楽音データをループ再生させる3I ことを特徴とする楽音データ再生装置。 ウ本件特許発明3の目的・効果本件特許発明3は,「パチンコ等のゲーム機の分野においては,同じ楽曲を続けて繰り返し再生するループ再生がしばしば行われる。しかしながら,上述した圧縮楽音データをゲーム機において使用する場合,例えばMPEGは1152サンプル,AACは1024サンプルを1フレームとし,このフレーム単位で再生処理を行うようになっているので,曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになる。このため,繰り返し再生において曲の終端部と先頭部との間に無音部分が生じてしまう問題があった。」(本件特許3明細書【0002】)という課題に鑑み,「無音部分を作ることなくループ再生を行うことができる楽音データ再生装置を提供する」(同明細書【0003】)ことを目的とするものであり,「この発明によれば,楽音データの終了部に非圧縮データを配置したので,圧縮楽音データを,無音部分を作ることなく任意の箇所でループ再生することができる効果が得られる」(同明細書【0008】)。 (5) 被告の行為被告は,別紙被告製品目録記載の各製品(以下,同目録記載の番号に従っ て「被告製品1」などという。)を製造・販売している。 被告製品1~4の概要は,別紙被告製品1~4説明書記載のとおりである(ただし,別紙被告製品1説明書3機能のうち,下線及び二重取消線を付した箇所を除く。)。 という。)を製造・販売している。 被告製品1~4の概要は,別紙被告製品1~4説明書記載のとおりである(ただし,別紙被告製品1説明書3機能のうち,下線及び二重取消線を付した箇所を除く。)。 なお,被告は,被告製品2~4の構成要件3G充足性については,クレームが記載不備であると主張するほか,その充足性について積極的に争うものではない。 3 争点(1) 本件特許発明1に係る侵害の成否ア被告製品1が本件特許発明1の技術的範囲に属するか。 (ア) 構成要件1Aの充足性(争点1-1)「外部記憶手段に記録する」の意義(イ) 構成要件1Bの充足性(争点1-2)a「発音指示を発生する発音指示手段」の意義b 被告製品1が「発音指示手段」を備えているか。 (ウ) 構成要件1Cの充足性(争点1-3)a 「所定の開始位置から所定の部分まで」の意義b 構成要件1Cにおける①「デコード処理」の開始と「音信号の発生」の開始の同時性②「デコード処理」と「音信号の発生」の平行性の程度c 被告製品1が構成要件1Cを処理する演算手段を備えているか。 (エ) 均等侵害の成否(争点1-4)(オ) 道具理論の成否(争点1-5)イ本件特許1が特許無効審判により無効にされるべきものであるか。 (ア) 乙11号証を主引例とする進歩性の欠如(争点1-6)(イ) 乙8号証を主引例とする進歩性の欠如(争点1-7) (2) 本件特許発明2に係る侵害の成否被告製品2~4が本件特許発明2の技術的範囲に属するか。 ア構成要件2Aの充足性(争点2-1)構成要件2Aの「ディ (2) 本件特許発明2に係る侵害の成否被告製品2~4が本件特許発明2の技術的範囲に属するか。 ア構成要件2Aの充足性(争点2-1)構成要件2Aの「ディジタル・データ」の意義イ構成要件2B~2Cの充足性(争点2-2)(ア) 構成要件2B~2Cにおいて,①「ディジタル・データ」の読み出し開始と「圧縮処理を施したデータ」の読み出し開始の同時性,②「ディジタル・データ」の読み出しと「圧縮処理を施したデータ」のデコード処理の同時平行性が要求されているか。 (イ) 被告製品2~4が「読出手段」「データ展開手段」を備えているか。 ウ構成要件2D~2Fの充足性(争点2-3)(ア) 構成要件2Dの「第2の判別手段」の意義(イ) 被告製品2~4が「第2の判別手段」「第2の選択手段」を備えているか。 エ構成要件2Gの充足性(争点2-4)被告製品2~4が「電子楽器の音源装置」に該当するか。 オ間接侵害の成否(争点2-5)カ均等侵害の成否(争点2-6)(3) 本件特許発明3に係る侵害の成否ア被告製品2~4が本件特許発明3の技術的範囲に属するか。 (ア) 構成要件3Aの充足性(争点3-1)構成要件3Aには楽音データの先頭部がADPCM方式によって圧縮された楽音データである場合が含まれるか。 (イ) 構成要件3B~3C及び3Eの充足性(争点3-2)被告製品2~4が「第1の読出手段」「第2の読出手段」「切換手段」を備えているか。 (ウ) 構成要件3Dの充足性(争点3-3)被告製品2~4が「デコーダ」を備えているか。 第1の読出手段」「第2の読出手段」「切換手段」を備えているか。 (ウ) 構成要件3Dの充足性(争点3-3)被告製品2~4が「デコーダ」を備えているか。 (エ) 構成要件3F及び3Hの充足性(争点3-4)a 被告製品2~4が「制御手段」を備えているか。 b 被告製品2~4が「第1手順」「第2手順」を実行するか。 (オ) 構成要件3Iの充足性(争点3-5)被告製品2~4が「楽音データ再生装置」に該当するか。 イ本件特許3が特許無効審判により無効にされるべきものであるか。 (ア) サポート要件違反の有無(争点3-6)(イ) 明確性要件違反の有無(争点3-7)(ウ) 実施可能要件違反の有無(争点3-8)(エ) 乙13号証を主引例とする進歩性の欠如(争点3-9)(4) 原告の損害額(争点4)第3 争点に関する当事者の主張以下,本件特許1~3明細書の図面は末尾に添付したものを参照することとし,本文中には掲載しない。 1 本件特許発明1に係る侵害の成否1-1 構成要件1Aの充足性(争点1-1)「外部記憶手段に記録する」の意義(原告の主張)(1) 「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録するとともに」というのは,外部記憶手段に記録されたものが,所定の圧縮手段でデータを圧縮したものであるという趣旨である。 (2) 被告は,構成要件1Aには,デコード処理機能だけでなく,「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録する」という機能(エンコード処理機能)も含まれていると解されるところ,被告製品1はエンコ ード処理機能の方は有しないの けでなく,「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録する」という機能(エンコード処理機能)も含まれていると解されるところ,被告製品1はエンコ ード処理機能の方は有しないので要件不充足である旨主張しているが,以下のとおり,そのような解釈は失当である。 本件特許発明1が,専らデコード処理機能に関するものであり,何らエンコード処理機能に関する内容を含んでいないことは,構成要件1B以下のクレーム文言,ないしは本件特許1明細書記載の発明の課題,目的,効果等より明らかである。 すなわち,本件特許発明1は,「信号処理装置」に関する発明である(同明細書【発明の名称】及び構成要件1D)が,クレーム文言上,当該「信号処理装置」が具備すべき構成として限定されているのは,いずれもデコード処理機能に関わる,発音指示手段(構成要件1B)と,音信号を生成する演算手段(構成要件1C)のみであり,エンコード処理機能ないしは圧縮処理に関わる文言は一切ない。 そもそも,構成要件1Aのような「おいて」書きによって示された構成は,当該発明の前提部分または上位概念であるから,当然,構成要件1Aにおいて限定された権利範囲は,その他の構成要件1B~1Dにおいて限定された権利範囲よりも広くなるはずである。したがって,構成要件1B~1Dにおいて広くデコード処理機能を有する信号処理装置を対象にしているにもかかわらず,その上位概念であるべき構成要件1Aにおいて,デコード処理機能と併せてエンコード処理機能まで有する信号処理装置にまで狭く権利範囲を限定しているなどと解する余地は,概念的にあり得ない。 このことは,技術的意義を考えれば,より一層明確になる。すなわち,本件特許発明1の目的は,「再生するためのデータ処理に時間がかかるため 限定しているなどと解する余地は,概念的にあり得ない。 このことは,技術的意義を考えれば,より一層明確になる。すなわち,本件特許発明1の目的は,「再生するためのデータ処理に時間がかかるため,頭出しにおいて直ちに再生音が出てこないという問題を生じる」(同明細書段落【0004】)という具体的な課題の解決,すなわち,発音遅延の解消この1点にある。 かかる課題を解決するために,本件特許発明1では,先頭楽音データの一 部を予め先行してデコード処理しておき(構成要件1C前段),発音指示(構成要件1B)に応じて当該先頭楽音データを遅延なく発音させている間に,続きのデータのデコード処理を開始して追いつき,先行デコードデータに基づく発音と発音指示後のデコードデータに基づく発音との間で途切れなく発音を継続させる(構成要件1C後段)という解決原理を採用したのである。専らデコード処理に係る工夫で解決を図っていることは明らかである。 したがって,本件特許発明1の課題解決原理の実現のために,対象装置がデコード処理機能に加えてエンコード処理機能まで具備している技術的必要性など全く認められないのであるから,そもそも上位概念として,構成要件1Aでエンコード処理機能付きにまで対象装置の範囲を限定する解釈は採り得ないのである。 (3) 本件特許1当初明細書(特開平8-147883〔甲23〕)には,デコード機能に関する発明である請求項1~3に加え,【請求項4】として,エンコード機能に関する発明も記載されていたが,審査の過程(乙5拒絶理由通知書)で完全に削除したという経緯がある。 該【請求項4】をサポートしていた,エンコード機能の説明部分(同当初明細書段落【0014】【0015】【図3】等)は,特に削除するまでの必要もないた 書)で完全に削除したという経緯がある。 該【請求項4】をサポートしていた,エンコード機能の説明部分(同当初明細書段落【0014】【0015】【図3】等)は,特に削除するまでの必要もないために,本件特許1明細書においてもそのまま実施例のエンコード機能部分に対する説明として残されたものである。 本件特許1当初明細書の請求項1~3で示されたデコード機能に関する発明と,請求項4で示されたエンコード機能に関する発明とを,併せて1つの実施例を用いて効率的に説明するために,エンコード機能とデコード機能,ないしは,録音機能と再生機能とを併せ持つ装置を対象にしたにすぎないのであり,上記請求項4の構成に当該実施例のデコード機能が直接関係しないのと同様に,本件特許発明1(請求項1)の構成には当該実施例のエンコード機能は直接関係しないのである。 したがって,エンコード機能に関する発明削除後も本件特許1明細書の実施例に残存して示されているにすぎないエンコード機能部分を殊更に採り上げて,これが別のデコード機能に関する発明である本件特許発明1(請求項1)の技術的課題に深く関わるものと捉えたり,対象装置に必須の構成であると捉えたりすることは,審査経過に照らしても誤りであることは明らかというべきである。 (4)ア構成要件1Aのクレーム文言解釈の問題は,文言の分析からは,「とともに」の意義の解釈の問題と,その直前の「記録する」の意義の解釈の問題とに分かれる。 被告の主張は,「記録する」「とともに」「生成する」信号処理装置について,「記録する」と「生成する」の両方を兼ね備える信号処理装置と読み,すなわち,「とともに」を「and(アンド)」の意味で解釈し,かつ,「記録する」について,文字通りそのまま「信号処理装置」が ついて,「記録する」と「生成する」の両方を兼ね備える信号処理装置と読み,すなわち,「とともに」を「and(アンド)」の意味で解釈し,かつ,「記録する」について,文字通りそのまま「信号処理装置」が記録する動作を行うと読むものである。 したがって,被告主張に完全に従えば,当該「信号処理装置」は,「記録する」=エンコード機能と,「生成する」=デコード機能との両方を兼ね備える装置ということになる。 イこれに対し,原告の主張は,「とともに」を「and(アンド)」の意ではなく,「(~した)状態下で」あるいは「(~した)条件のもとで」(英語で言えば,「with(ウィズ)」)というように,先行の前提条件と後続の本文とをつなぐものとして解釈するものである。 本件では,「とともに」で結ばれた前後の事柄の関連性と時間的先後を示す意味で使われているにすぎない。すなわち,「ともに」の後に記されたデコード処理の対象となる圧縮データが,当該デコード処理よりも時間的に先行し,かつ当該デコード処理とは対になる演算を用いる圧縮処理によって予め「外部記憶手段に記録」されたものであることを明確にするた めに,「とともに」の前に,「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録する」という前提条件を確認的に配置したにすぎないのである。このような前提条件と本文との関係は,まさに「とも-に【共に・倶に】①ひとつになって。いっしょに。相連れて。」(広辞苑【第五版】),すなわち英語で言えば,「with(ウィズ)」に当たるものである。 特に本件では,発明のスタートとなる圧縮データが,構成要件上,必要な装置の中に含まれていない「外部記憶手段」に記録されていることもあり,発明の前提部分にすぎない圧縮処理ないしはエンコード処理 特に本件では,発明のスタートとなる圧縮データが,構成要件上,必要な装置の中に含まれていない「外部記憶手段」に記録されていることもあり,発明の前提部分にすぎない圧縮処理ないしはエンコード処理にまでクレームで言及する必要があったのである。 ウ原告の主張は,「記録する」についても,その動作主体は「信号処理装置」ではなく,構成要件に記載されていない動作主体が,当該「信号処理装置」の外部記憶手段に「記録する」と読むものである。 したがって,このとき,仮に「とともに」を「and(アンド)」の意に解釈するとしても,当該「信号処理装置」は,その外部記憶手段に,構成要件に記載されていない動作主体(他のエンコーダでもよい)がデータを圧縮して「記録する」ことと,その圧縮データをデコードして音信号を「生成する」ことの両方を兼ね備える装置と読むべきことは明らかであり,当該「信号処理装置」にエンコード機能まで兼用させる限定解釈をする理由はない。 被告の解釈は,「とともに」で結合される後半のデコード機能部分を抜き去って,そのまま前半部分の「データを所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録する」を「信号処理装置」に直結するという読み方をするから,あたかも「信号処理装置」自身が「記録する」動作を行うように読めてしまうが,「とともに」で結ばれた文章の読み方としては適正さを欠いているといわざるを得ない。 仮に,被告主張に完全に従って,「エンコード機能を有する信号処理装置において」と読むとした場合,前提としてそのような機能をあえて掲げた以上,以降のクレームにはその機能について何らかの言及があって然るべきである。しかるに,以降の構成にエンコード機能が全く登場しないことはこれまで主張のとおりである。 ような機能をあえて掲げた以上,以降のクレームにはその機能について何らかの言及があって然るべきである。しかるに,以降の構成にエンコード機能が全く登場しないことはこれまで主張のとおりである。 原告主張のように,「その外部記憶手段にデータを圧縮して記録した信号処理装置において」と読めば,構成要件1C等にデコード機能の対象ないしは出発点としてその内容の言及がされ,無理なくクレーム解釈が行えるのである。 このように,本件特許1明細書の【特許請求の範囲】の記載だけからも,被告の主張する限定解釈が採り得ないことは明らかである。 (5) 被告製品1は,圧縮オーディオデジタルデータ(最大1024曲のフレーズデータ)が外部音声ROM内にOggVorbis方式にて圧縮済みのデジタルデータとして格納されている(別紙被告製品1の機能説明3の5)参照)から,「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,」の構成に該当する。 また,被告製品1は,オーディオを構成する一連のフレーズを伸長変換(デコード)演算して,バス部へ転送する機能(別紙被告製品1の機能説明3の6)参照)が「所定のデコード処理によって元のデータに戻し,」に該当し,バス部を経由してスピーカに対応する発音チャンネル単位で出力部へオーディオデータを出力する機能(別紙被告製品1の機能説明3の7)参照)が「該元のデータに基づいて音信号を生成する」に該当するから,「信号処理装置」に該当する。 したがって,被告製品1は構成要件1Aを充足する。 (被告の主張)(1) 本件特許発明1の信号処理装置は「データを所定の圧縮処理によって圧 縮して外部記憶手段に記録する」(下線は被告が付したものである。以下,被告の主張について同じ。 (被告の主張)(1) 本件特許発明1の信号処理装置は「データを所定の圧縮処理によって圧 縮して外部記憶手段に記録する」(下線は被告が付したものである。以下,被告の主張について同じ。)とクレームされているのであるから,本件特許発明1の信号処理装置は,その装置自体にエンコード機能・記録機能を有するものでなければならない。「おいて」書きであるからといって,クレームの文言を無視してよいことにはなり得ない。 (2) 本件特許1明細書段落【0001】【0014】【0015】【図3】には,以下の記載がある。 「【0001】【産業上の利用分野】この発明は,高効率データ圧縮を採用したレコーダ等に用いて好適な信号処理装置に関する。」「【0014】次に,上述した構成による動作について,図4~図6に示すタイムチャートを参照して説明する。 [RECタイムチャート]まず,図4において,RECキー1bが押下されると,ADC11によってデジタル信号に変換されたデータがCPU5によって演算器10のバッファABUFにブロック(1024サンプル)単位で順次格納される。まず,バッファABUF(0)に最初の1ブロック目(以下,第0ブロックという)のデータが格納される。第0ブロックのデータが全て格納されると,該バッファABUF(0)のデータが演算器によって圧縮が開始される。この圧縮時間を符号Dで示す。この圧縮時に,バッファABUF(1)に次の第2ブロック(「1」で示されている)のデータが格納されていく。また,圧縮されたデータはバッファBBUF(0)に書き込まれる。そして,第0ブロックのデータ圧縮が終了すると,バッファBBUF(0)のデータを外部記憶装置9へ書き込む。この書き込みの時間を符号Sで示す。この書き込みの間にも ッファBBUF(0)に書き込まれる。そして,第0ブロックのデータ圧縮が終了すると,バッファBBUF(0)のデータを外部記憶装置9へ書き込む。この書き込みの時間を符号Sで示す。この書き込みの間にも,バッファABUF(1)へは第1ブロックのデータが格納されていく。 【0015】上記第1ブロックのデータの格納が終了すると,次に,該デ ータの圧縮が行なわれ,圧縮データはバッファBBUF(1)に書き込まれる。そして,データ圧縮が終了すると,バッファBBUF(1)に書き込まれた圧縮データは外部記憶装置へ書き込まれる。この間に,バッファABUF(0)には,第2ブロックのデータが格納されていく。以下,同様にして,バッファABUF(0),(1)およびバッファBBUF(0),(1)を交互に用いることで連続して圧縮を行なっていく。なお,この場合には,バッファBBUFはシングルでもよい。あるいは,バッファABUF上で演算を行なうようにすれば,バッファBBUFは1つも必要ない。」このように,本件特許1明細書には,本件特許発明1の信号処理装置自体がデータを所定の圧縮処理によって外部記憶手段に記録することが明確に記載されている。 (3) 被告製品1は,外部MPUからオーディオ再生命令を含む様々な実行命令を受ける命令受取機能,オーディオ再生命令に従い,外部音声データROM内に格納された圧縮オーディオディジタル・データを伸張して出力をする機能を備えるが,構成要件1Aの「データを所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録する」ことはない。また,外部ROMに対して圧縮オーディオディジタル・データを記録するのは,被告製品1が組み込まれた装置(遊技機)ではない別の装置であり,オーディオディジタル・データを圧縮する(エンコード)ことも 。また,外部ROMに対して圧縮オーディオディジタル・データを記録するのは,被告製品1が組み込まれた装置(遊技機)ではない別の装置であり,オーディオディジタル・データを圧縮する(エンコード)ことも別の装置が行う。 したがって,被告製品1は構成要件1Aを充足しない。 1-2 構成要件1Bの充足性(争点1-2)(1) 「発音指示を発生する発音指示手段」の意義(原告の主張)ア本件特許発明1における,「発音指示」がいかなるものであるかを考えるには,構成要件1Cとの関係が重要である。 構成要件1Cでは,構成要件1Bの「発音指示」について,「該発音指 示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始する」と明記されている。すなわち,発音が開始されるまではいくつかの信号のやりとりが通常行われるであろうが,それらの中でも,既にデコード済みの音信号の発生を開始させる信号が,「発音指示」であり,したがってそれを発生させる手段が「発音指示手段」である。 イ本件特許1明細書の実施例でいえば,段落【0041】【図6】に「同期パルス」として示されているものがそれに関係する。 「【0040】[同期再生キー処理]そして,同期再生キー1gが押下されると,図13に示す同期再生キー処理が実行される。まず,ステップSG1においてタイマ割込みを停止する。これにより,図5に示すタイマ割込み処理が中断される。次に,ステップSG2において,演算器10を圧縮データをデコードするためにデコーダに設定する。次に,ステップSG3へ進み,モードフラグSCを「1」に設定し,その後,当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。以上の処理で,同期パルス待ち受け状態に設定され,次に同期パルス(同 にデコーダに設定する。次に,ステップSG3へ進み,モードフラグSCを「1」に設定し,その後,当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。以上の処理で,同期パルス待ち受け状態に設定され,次に同期パルス(同期トリガ割り込み)を受信したタイミングで同期再生がスタートする(下線は原告が付したものである。以下,原告の主張について同じ。)。 【0041】[同期トリガ割込み処理]次に,図6に示す同期パルスが出力されると,図14に示す同期トリガ割込み処理が実行される。まず,ステップSH1において,モードフラグSCが「1」であるか否かを判断する。この場合,上述した同期再生キー処理において,モードフラグSCが「1」に設定されているため,ステップSH1における判断結果は「YES」となり,ステップSH2へ進む。ステップSH2では,モードフラグSCを「2」に設定する。次に,ステップSH3へ進み,マークポインタMPに基づいて,外部記憶装置9のトラック中の読み込み開始ブロック (ステップSF4にて読み込んだブロックに続くブロック)を指定する。 そして,ステップSH4において,外部記憶装置9からのバッファBBUF(0)への初めのブロック(上記ステップSH3において設定された読み込み開始ブロック)のデータの読み込みを開始する。」上記段落【0041】に示されるように,同期パルスが出力され,それが受信されると,そのタイミングで図14の「同期トリガ割込み処理」が開始され,「モードフラグ」を判断して1から2に切り替えた上で,外部記憶装置からのバッファBBUFの初めのブロックのデータの読み込みを開始する。すなわち,BBUFにはエンコードされたデータが収納されているため,デコードが開始される。 他方,モードフラグは1から2に切り替えられたので の初めのブロックのデータの読み込みを開始する。すなわち,BBUFにはエンコードされたデータが収納されているため,デコードが開始される。 他方,モードフラグは1から2に切り替えられたので,段落【0043】「モードフラグSCが「2」に設定されているので・・RAM8より・・デコードされ,書き込まれたデータを・・読み出す。」すなわち,発音が開始される。 以上から明らかなように,同期パルスを受けて,同期トリガ割り込み処理が行われる,言い換えれば同期パルスを受けて,同期トリガ割り込み処理をスタートさせるものがあることが示されているのであり,その同期トリガ割り込み処理をスタートさせるものが明細書実施例における発音指示手段であり,図14の「スタート」にあたるものが,実施例上の発音指示であり,これにより一方では発音の開始が,他方ではデコードの開始がされている。 ウ被告は,発音指示手段という機能を実現するクレームの内容は,本件特許1明細書に説明されている「同期再生キー」が備える機能と解する以外にないなどと主張しているが,明らかに明細書を読み間違えているもので失当である。 被告の引用する段落【0040】は「[同期再生キー処理]そして,同 期再生キー1gが押下されると,・・・以上の処理で,同期パルス待ち受け状態に設定され,次に同期パルス(同期トリガ割り込み)を受信したタイミングで同期再生がスタートする。」である。 上記のように,「同期再生キー1g」が押下されると,装置としては,待ち受け状態になるだけで,これだけでは何も起こらない,すなわちまだ音信号の発生は開始されない。 次に,「同期パルス」が受信されて初めて再生がスタートするのである。 構成要件1Bの「発音指示」は構成要件1Cの「該 ,これだけでは何も起こらない,すなわちまだ音信号の発生は開始されない。 次に,「同期パルス」が受信されて初めて再生がスタートするのである。 構成要件1Bの「発音指示」は構成要件1Cの「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始する」ものでなければならないことは,構成要件文言上明らかであるから,待ち受け状態にするだけで,次に同期パルスが来ないと音信号が発生しない場合における,待ち受けキーの押下が,発音指示にあたることはあり得ない。 エ被告は,同期パルスは図6の途中再生指示と同時に発生することが記載されている,図6の途中再生指示は途中再生開始点として任意の位置を予め指定しておくもの,図6の記載からして「同期再生処理」の指示は同期再生キー1gの押下によってされるものであると解さざるを得ないなどと主張しているが,明らかな誤解である。 本件特許1明細書において,図6の説明は,段落【0018】[途中再生タイムチャート]に記載されているが,ここには,「途中再生開始のタイミングを指示する同期パルスが供給されると,」と明記されているのである。すなわち,図6における「同期パルス」と「途中再生指示」との関係は,「同期パルス」=「途中再生指示」と位置付けるものであるから,「同時に発生することが記載されている。」のは当然である。 被告は,「同期再生キー1gの押下」を「途中再生指示」と同視しているようであるが,「同期再生キー1gの押下」は「同期再生の開始を指 示」(段落【0009】)というように,明細書は明らかに「途中再生指示」(段落【0018】)とは文言上も区別しているから誤りである。 「同期再生キー1gの押下」は「同期パルス待ち受け状態」へのトリ 落【0009】)というように,明細書は明らかに「途中再生指示」(段落【0018】)とは文言上も区別しているから誤りである。 「同期再生キー1gの押下」は「同期パルス待ち受け状態」へのトリガーとなるだけで,「途中再生開始のタイミングを指示する同期パルス」とは直結してはいない(段落【0040】)のだから,そのような外部の操作キーだけ捉えて,「発音指示手段」と呼べないことは明らかである。 本件特許1明細書の図6の「途中再生指示」は,図から明らかなように,「パルス待ち SC=1」の状態で「同期パルス」を受信し,「HT再生SC=2」にモードフラグを設定変更することで発行される(段落【0041】【図14】)。敢えていえば,このようなモードフラグの切替えを伴う内部の発信回路全体を捉えて「発音指示手段」というべきである。 オ本件特許発明1は,「レコーダ等に用いて好適な信号処理装置に関する」発明である(段落【0001】)から,組み込む先の外部の「レコーダ等」から命令を受けなければ何ら動作しない,部品としての信号処理装置を対象としており,したがって,これが具備する「発音指示手段」も,外部の操作キーなどではなく,内部にあって直接「演算手段」の動作開始を指示する回路がこれに相当する。 (被告の主張)ア本件特許1明細書には,「発音指示手段」に関する説明は全くされていない。しかし,本件特許発明1の「指示」に関する記載としては,次のものがある。 「【0008】【実施例】次に図面を参照してこの発明の実施例について説明する。図1はこの発明の一実施例の構成を示すブロック図である。パネルスイッチ1は,同期再生の開始,停止を指示,マークしたブロックの頭出しを指定,また,同期再生するトラックを指定するため について説明する。図1はこの発明の一実施例の構成を示すブロック図である。パネルスイッチ1は,同期再生の開始,停止を指示,マークしたブロックの頭出しを指定,また,同期再生するトラックを指定するためのキーなどから構成されてお り,これらのキーの状態はCPU(中央処理装置)5へ供給される。また,ディスプレイ2は上記パネルスイッチ1による指示等,当該装置の状態を表示する。 【0009】ここで,パネルスイッチ1の一例を図2(a)に示す。この図において,パネルスイッチ1は,テンキー,録音再生の開始するキー,動作停止を指示するキー,再生トラックやデータ位置を指示するキー等から構成されている。具体的には,再生の開始を指示する「PLAY」キー1a,録音の開始を指示する「REC」キー1b,上記再生および録音を停止させる「STOP」キー1c,どのトラックまたは位置から再生するかを指示する「トラック」キー1dおよび「位置」キー1e,後述する同期再生を行なう先頭位置を指示する(マークする)「マーク」キー1f,そして,同期再生の開始を指示する「同期再生」キー1gからなる。また,上述した各種キーに付帯して数値を入力するためのテンキー1hがある。」「【0016】[PLAYタイムチャート]まず,図5において,PLAYキー1aが押下されると,外部記憶装置9から第0ブロックの圧縮データを読み込み,バッファBBUF(0)に格納する。圧縮データの格納が終了すると,次に,演算器10によるデコードが開始される。このデコードされた第0ブロックのデータはバッファABUF(0)に格納されていく。そして,デコードが終了すると,バッファABUF(0)に格納された第0ブロックのデータは順次DAC12に供給されてアナログ信号に変換される。この間に,次の第1 ッファABUF(0)に格納されていく。そして,デコードが終了すると,バッファABUF(0)に格納された第0ブロックのデータは順次DAC12に供給されてアナログ信号に変換される。この間に,次の第1ブロックの圧縮データを外部記憶装置9から読み込み,バッファBBUF(1)に格納していく。そして,圧縮データの格納が終了すると,演算器によるデコードが行なわれ,デコードされた第1ブロックのデータはバッファABUF(1)に格納されていく。」「【0040】[同期再生キー処理]そして,同期再生キー1gが押下さ れると,図13に示す同期再生キー処理が実行される。まず,ステップSG1においてタイマ割込みを停止する。これにより,図5に示すタイマ割込み処理が中断される。次に,ステップSG2において,演算器10を圧縮データをデコードするためにデコーダに設定する。次に,ステップSG3へ進み,モードフラグSCを「1」に設定し,その後,当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。以上の処理で,同期パルス待ち受け状態に設定され,次に同期パルス(同期トリガ割り込み)を受信したタイミングで同期再生がスタートする。 【0041】[同期トリガ割込み処理]次に,図6に示す同期パルスが出力されると,図14に示す同期トリガ割込み処理が実行される。」イ図2(a)に記載された「トラック」「位置」「マーク」「同期再生」「STOP」「PLAY」「REC」「早戻し」「戻し」「早送り」と記載されているものは,いずれも操作キーであり,操作者(オペレータ)がこれを押下して指示を発し,これらのキーの状態がCPU5に供給される(段落【0008】参照)。「PLAY」キーは,これが押下されることにより,圧縮データの読み込み,デコード処理,アナログ信号変換が行われて信号処 指示を発し,これらのキーの状態がCPU5に供給される(段落【0008】参照)。「PLAY」キーは,これが押下されることにより,圧縮データの読み込み,デコード処理,アナログ信号変換が行われて信号処理装置から発音する(再生機能)。 したがって,「発音指示を発生する発音指示手段」は,上記の再生機能を動作させるための作用をする技術手段を意味し,当該指示手段によって「発音指示」が発生する。つまり,「発音指示」は発音指示手段によってCPU(中央演算処理手段)へ伝達される発音指示信号を意味する。 ウ実施例においては,「PLAY」キー(1a),「同期再生」キー(1g)が「発音指示手段」に相当する。本件特許発明1の「発音指示(信号)」は,これが発生することに先立って「前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,該発音指示の発生に応じて,前記 所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する」から,本件特許発明1の「発音指示手段」は,明細書の説明によれば「同期再生」キー(1g)がこれに相当すると理解できる。 また,本件特許1明細書の図6の「途中再生指示(信号)」は,途中再生開始点として任意の位置を予め指定して(マーク処理)から行うものであり,途中再生はマーク処理によっては自動的には開始しない。同明細書の実施例に 許1明細書の図6の「途中再生指示(信号)」は,途中再生開始点として任意の位置を予め指定して(マーク処理)から行うものであり,途中再生はマーク処理によっては自動的には開始しない。同明細書の実施例における「同期再生処理」は,「同期再生キー1gの押下による同期パルス待ち受け状態」にした後に,同期再生キー1gの押下とほぼ同時刻に「同期パルスの出力による同期トリガ割込み処理」が開始することによって初めて実行することができる処理である。同明細書には,同期パルスの出力の詳細は記載されていないが,「途中再生開始のタイミングを指示する同期パルスが供給されると,」(段落【0018】)との記載及び図6の記載からして,「同期再生処理」の指示(信号)(=同期パルス)は同期再生キー1gの押下によって発生するものであると解さざるを得ない。 そして,同期パルス(発音指示信号)は,同期再生キー1gが押下されない限り発生(出力)することはない。したがって,本件特許発明1の「発音指示手段」は,同期再生(途中再生)を開始する技術手段としての「同期再生キー1g」のような物理的手段と解すべきである。そして,これに基づき同期再生としての発音指示(信号)である同期パルスが発生する。 (2) 被告製品1が「発音指示手段」を備えているか。 (原告の主張)ア被告製品1は,レジスタマップが「発音指示手段」に該当し,当該レジスタマップがPCMバッファゲートに対して,その情報を伝達するとともに,対象トラックのシーケンサに対しても,後続データのデコードを,その後直ちに再開するように指示を発行する動作が「発音指示を発生する」に該当するから(別紙被告製品1の機能説明3.3(4)(5)参照),構成要件1Bに該当する。 イ(ア) 被告は,オーディオ再 の後直ちに再開するように指示を発行する動作が「発音指示を発生する」に該当するから(別紙被告製品1の機能説明3.3(4)(5)参照),構成要件1Bに該当する。 イ(ア) 被告は,オーディオ再生命令を「発音指示」に,外部MPUを「発音指示手段」に対応付けようとすることで非侵害を主張しているようであるが,失当である。 (イ) オーディオ再生命令ないしはコマンドリストを構成するコマンドは,アドレスビットとデータビットとの組合せから成るところ,レジスタマップに書き込まれる際にはすでにデータビットだけになっており,当該指示の受け手であるシーケンサに到達する前に,その形態が変更されている。 外部MPUから入力された上記コマンドは,コマンド解析部の入り口の128段FIFO(コマンドバッファ)で順番待ち状況に置かれる。 また,初期設定コマンドやコマンド解析休止コマンドの制御を受けるため,実行のタイミングも,外部MPUではなく,被告製品1内部に委ねられている。 以上のとおり,外部MPUから入力された指示は,その形態もタイミングも変更されているから,到底,被告が主張するように,何ら変更されずにシーケンサに伝達されるものではない。 (ウ) また,仮に,その点をおいたとしても,シーケンサに対しレジスタマップから入力される指示は,外部MPUからの指示と同じものなどと は到底いうことができない。 なぜなら,レジスタマップは1個設けられているにすぎないのに対し,シーケンサは,トラック毎に各別に設けられているからである。すなわち,外部MPUから上記共通のレジスタマップに書き込まれるときには,対象トラックの情報もコマンドの内容として実行命令とともにデータビットを構成しているが,それがトラック毎の ているからである。すなわち,外部MPUから上記共通のレジスタマップに書き込まれるときには,対象トラックの情報もコマンドの内容として実行命令とともにデータビットを構成しているが,それがトラック毎の各別のシーケンサに伝達されるためには,そのデータビットの内容が解析され,対象トラックを認識した上で,実行命令の内容をそのトラック用のシーケンサに伝達する必要があるからである。 ウさらに,「発音指示」は,発音指示一般に対応付けられるものではなく,先行デコード後の即時発音指示に特化して対応付けられるものであることは,構成要件1Cの文言態様「該発音指示…」から明らかである。 したがって,「発音指示」は,シーケンサに対しデコード開始を指示するだけではなく,PCMバッファゲートに対し蓄積された先頭データの出力開始を指示するものでもあるため,その発生のためには,レジスタマップ内部のステータス系の状態表示を書き換えるという内部動作が必要不可欠であるから,もはや外部MPUから入力された指示とは,完全に同一性は失われている。 (被告の主張)ア被告製品1は「発音指示(信号)」を発生させる物理的な操作手段を有しておらず,構成要件1Bを充足しない。 イ原告は,レジスタマップが「発音指示手段」に該当し,レジスタマップがPCMバッファゲートに対して,その情報を伝達するとともに,対象トラックのシーケンサに対しても,後続データのデコードを,その後直ちに再開するように指示を発行する動作が「発音指示を発生する」に該当すると主張する。 しかしながら,レジスタマップは,「発音指示(信号)」を伝達するものであって,「発音指示(信号)」を新たに発するものではないから「発音指示手段」に該当しない。 ウ(ア) 原 しかしながら,レジスタマップは,「発音指示(信号)」を伝達するものであって,「発音指示(信号)」を新たに発するものではないから「発音指示手段」に該当しない。 ウ(ア) 原告は,外部MPUから入力された指示は,その形態もタイミングも変更されているのだから,到底,被告が主張するように,何ら変更されずにシーケンサに伝達されるものではないと主張する。 しかし,被告製品1は,外部MPUからのオーディオ再生命令を受け取らない限り,デコードや発音を開始することはない。すなわち,被告製品1は,外部MPUからオーディオ再生命令(「発音指示(信号)」)を受け取ると,コマンド解析部,レジスタマップへと,予め定義された処理方法に基づいて,「発音指示(信号)」が順次伝達されるにすぎず,自ら「発音指示(信号)」を発生することはない。 なお,原告は,上記主張の根拠として,オーディオ再生命令ないしはコマンドリストを構成するコマンドは,アドレスビットとデータビットとの組合せから成るところ,レジスタマップに書き込まれる際にはすでにデータビットだけになっており,当該指示の受け手であるシーケンサに到達する前に,その形態が変更されていると主張する。 しかしながら,被告製品1のレジスタマップは,甲6号証(被告製品1の仕様書)15頁に記載された表に該当するものである。同表の左欄のアドレスに右端の命令が1バイト(8ビット)で示すフォーマットによるパラメータを伴って定義されている。 被告製品1では,トラック2に対するオーディオ再生命令は,4A81h(0100 1010 1000 0001)で表記される信号である(甲6の15頁レジスタマップ。24頁レジスタ名SEQCTRL)。また,音量調整命令はこれとは異な るオーディオ再生命令は,4A81h(0100 1010 1000 0001)で表記される信号である(甲6の15頁レジスタマップ。24頁レジスタ名SEQCTRL)。また,音量調整命令はこれとは異なる命令であり,トラック2に対するフェード命令は,例えば現在のトラックボリュームからフェード アウトしフェード終了時にはトラックボリュームを0に更新する命令は,7101h(0111 0001 0000 0001)である(甲6の15頁レジスタマップ。25頁レジスタ名FADECTRL)。このように,オーディオ再生命令はアドレスビットとデータビットの組合せで意味をもつ情報(信号により伝達される情報)であり,個々に切り離しては情報として無意味であって,実際の設計においても,レジスタマップブロックにはアドレスとデータの両方の信号が入力される。 (イ) また,原告は,外部MPUから入力されたコマンドは,コマンド解析部の128段FIFO(コマンドバッファ)で順番待ち状況に置かれ,また,初期設定コマンドやコマンド解析休止コマンドの制御を受けるため,実行のタイミングも,外部MPUではなく,被告製品1内部に委ねられているとも主張する。 しかし,タイミングの問題は,データの内容(発音指示(信号)として伝達される情報の内容)とは全く別の問題である。 (ウ) さらに,原告は,仮に,その点をおいたとしても,シーケンサに対しレジスタマップから入力される指示は,外部MPUからの指示とは全く異なるものといわざるを得ないとして,レジスタマップは1個設けられているにすぎないのに対し,シーケンサは,トラック毎に各別に独立に設けられているからであるなどと主張する。 しかしながら,被告製品1のレジスタマップは,予め定義された外部MP 設けられているにすぎないのに対し,シーケンサは,トラック毎に各別に独立に設けられているからであるなどと主張する。 しかしながら,被告製品1のレジスタマップは,予め定義された外部MPUからの指令の組合せの値に応じた各種動作との対応関係に従ってシーケンサに対するオーディオ再生命令(発音指示(信号))であることを認識し,シーケンサにその情報を伝達するだけであって,オーディオ再生命令(発音指示(信号))との同一性は失われていないし,独自に新たな発音指示(信号)を発行するものでもない。 原告は,シーケンサはトラック毎に各別に独立に設けられていると主 張するが,シーケンサは,登録したフレーズ番号がトラック毎に複数並べられているもので,各トラック毎に独立して動作する。被告製品1のシーケンサは,一種の表(テーブル)として記憶されたものにすぎず,何らかの物理的な実体があるものではない。 1-3 構成要件1Cの充足性(争点1-3)(1) 「所定の開始位置から所定の部分まで」の意義(原告の主張)ア 「所定の開始位置から」は,先頭からでも途中からでも,いずれでもよく,適宜選択可能(本件特許1明細書段落【0009】では「(マークする)」と記載され,段落【0050】は「任意位置」「トラックの先頭から・・にしても良い」と記載されている)という意味である。 「所定の部分」とは,このデコード処理された部分の発音に引き続いて「所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータ」が途切れなく発音できることが必要なので,それを「所定の部分」と表現したものである。「所定の部分」については,常に一つに固定されていなければならない理由はない。 したがって,「所定の部分」についても, 音できることが必要なので,それを「所定の部分」と表現したものである。「所定の部分」については,常に一つに固定されていなければならない理由はない。 したがって,「所定の部分」についても,一定の規則性,例えば「発音指示」までの時間や解凍に要する時間等から定まるものであれば,「所定の部分」である。 イ被告は,「所定」が「固定」を含まず,被告製品1は先頭位置に「固定」だから非侵害だと主張しているようであるが,失当である。 「所定」=定まっていること,定めてあること,「固定」=ひと所に定まって移動しないこと(広辞苑【第五版】)であるから,辞書的国語的にも,「所定」⊃「固定」(「所定」は「固定」を含む上位概念)であり,かつ,技術的にも明細書上も,「再生するトラックの先頭から」(本件特許1明細書段落【0050】)の「固定」位置に適用することが想定され ているのであるから,「固定」だから「所定」ではなく非侵害との主張が容れられる余地はない。 ウ被告は,デコードする対象のデータ量が「PAUSE命令」と「PLAY命令」との両命令が発せられる時間差に応じて決定されることをもって「所定」ではないと主張するが,失当である。 「所定の部分」とは「固定部分」を意味しない。「変化するから」「所定」ではないということはできない。明細書に示された「ヘッドタイムHT」についても,「ヘッドタイムHTの再生期間内に次ブロックの転送(時間S)とデコード(時間D)が完了することが保証されていれば良い」(本件特許1明細書段落【0051】)という幅のある値である。 本件特許発明1においても,被告製品1の「PAUSE命令」に相当する「マーク処理」により先行デコード(構成要件1C前段)が行われ,被告製品1の「PLA 051】)という幅のある値である。 本件特許発明1においても,被告製品1の「PAUSE命令」に相当する「マーク処理」により先行デコード(構成要件1C前段)が行われ,被告製品1の「PLAY命令」に相当する「同期再生キー処理」~「同期トリガ割込み処理」により発音開始や後続デコード(本件構成要件1C後段)が行われ(同明細書段落【0038】~【0043】),「バッファ」に相当する「テンポラリRAM8」の記憶容量によって「所定の部分」ないしは「ヘッドタイムHT」に示される先行デコードの範囲が規定される(同明細書段落【0051】,【0018】)というように対応付けられるのであるから,本件特許1明細書に示される構成が被告製品1の構成と別異に解さなければならない理由は全くなく,かかる観点からも,被告の「所定の部分」否認論が失当であることは明らかである。 (被告の主張)ア原告は,「所定の部分」とは「固定部分」を意味しない,「変化するから」「所定」ではないということはできないと主張しているが,これは「所定」と「固定」とは意味が異なるものであると主張しているものである。すなわち,少なくとも「固定の開始位置」と「所定の開始位置」は異 なるものであるという主張であり,「固定の開始位置」はある一定の開始位置という意味であり,「所定の開始位置」というのはある一定の開始位置のみのものは含まず,開始位置が変化することが含まれなければならないという主張と理解することができる。 しかるに,被告製品1は,先行デコードの開始位置が常にフレーズの先頭という一定の開始位置であって,その他の開始位置はないから「所定の開始位置」ではなく「固定の開始位置」である。 したがって,原告の主張を前提としても,被告製品1は構成要件1Cを ーズの先頭という一定の開始位置であって,その他の開始位置はないから「所定の開始位置」ではなく「固定の開始位置」である。 したがって,原告の主張を前提としても,被告製品1は構成要件1Cを充足しない。 イ被告製品1は,上記のとおり,「所定の開始位置」からデコードも開始しないし,全トラックが停止中であることを条件とし,仮に何らかの理由により「PAUSE命令+PLAY命令」という組み合わせのプログラムが存在したと仮定した場合には,「PAUSE命令」によって,先頭の圧縮データから順次デコードを開始しバッファに格納し,続いて,「PLAY命令」を受けてバッファに格納したデコードデータを出力する。このとき,バッファに余裕がある限り次の圧縮データのデコードを行うが,バッファに空き領域が不足するとデコードは行わない。この場合の被告製品1は,外部記憶手段に格納されたプログラムが規定する「PAUSE命令」と「PLAY命令」との両命令が発せられる時間差に応じて,バッファに余裕がある限り圧縮データを順次デコードするが,デコードする対象のデータ量はこの時間差によって決定されるのである。 このような時間差によってデコードの対象となるデータ量が決定されることをもって「所定の部分」ということはできない。 したがって,仮に,「PAUSE命令+PLAY命令」という組み合わせのプログラムが存在し,「PAUSE命令+PLAY命令」が供給されたとしても,被告製品1は,構成要件1Cを充足するように動作しない。 (2) 構成要件1Cにおける①デコード処理の開始と音信号の発生の開始の同時性②デコード処理と音信号の発生の平行性の程度(原告の主張)ア本件特許発明1の技術思想に即して解釈すれば,本件特許発明1で重要 における①デコード処理の開始と音信号の発生の開始の同時性②デコード処理と音信号の発生の平行性の程度(原告の主張)ア本件特許発明1の技術思想に即して解釈すれば,本件特許発明1で重要なのは,予めデコードした先頭楽音データを遅延なく発音させるとともに,当該先頭データが発音している間に,続きのデータのデコードを開始して追いつき,先行デコードデータに基づく発音と,発音指示後のデコードデータに基づく発音との間で途切れがないようにすることであるから,そのような出力データの接続を可能にする程度の同時平行処理を要求するのが,構成要件1Cにいう「とともに」の意味である。 イそもそも,「ともに」とは,一般に「①ひとつになって。いっしょに。 相連れて。同じく。…②同時に。」(広辞苑第5版)と説明されており,本件における「ともに」とは,被告の主張する「②同時に」の意よりはむしろ,再生開始(発音)コマンドの発行を受けて,「先頭データの再生の開始」という動作と,「デコードの再開」という動作とが連動すること,すなわち「①ひとつになって。いっしょに。相連れて。同じく」の意で用いられていると解するのが自然である。 被告は,構成要件1Cのクレーム文言「とともに」の語義だけを根拠に上記「(厳密な意味での)同時性」への限定解釈を主張しているが,上記のように,「とともに」は多義的な言葉であり,辞書的にさえ,そのような「(厳密な意味での)同時性」に限定する理由がない上,「とともに」は技術用語ではなく,日常用語であるから,その語義から本件特許発明1における「とともに」の意義が直ちに明らかになるものではなく,本件特許発明1の技術的特徴に照らして,技術的見地から確定されるべきものである。 ウ構成要件1Cの技術的意義は,被告自身が,「予め行 ける「とともに」の意義が直ちに明らかになるものではなく,本件特許発明1の技術的特徴に照らして,技術的見地から確定されるべきものである。 ウ構成要件1Cの技術的意義は,被告自身が,「予め行われるデコード処 理の対象部分である先頭の所定部分は,その先頭データに基づく音信号の発生時間が所定部分以降の圧縮データのデコード処理時間以上になるように設定される必要があり,したがって,先頭データに基づく音信号の発生と所定部分以降の圧縮データのデコード処理とが平行して行われる必要があるからである。」(被告第6準備書面31頁)と述べるとおりであり,そのように本件特許1明細書の詳細な説明でも記載されている。 そして,やはり被告自身が述べるように,まさに「この『平行性』は,特許請求の範囲において,『前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定部分以降の圧縮データのデコード処理を行い』との規定に基づくものである。」(被告第6準備書面31頁)のであり,当該構成要件の技術的意義は,特許請求の範囲自体からも十分に解釈できるものである。 以上のとおりであるから,当該「とともに」の意味は,特許請求の範囲及び明細書の記載により,先頭データに基づく音信号の発生と所定部分以降の音信号の発生とが途切れなく接続する程度の同時平行性を指していることが容易に理解できるのであり,にもかかわらず,当該多義語を,被告が主張するような,寸分の違いもなく正しく同時に,という意味に限定して解すべき合理的理由はない。 (被告の主張)ア構成要件1Cとして,特許請求の範囲は次のように記載している。 「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮 1Cとして,特許請求の範囲は次のように記載している。 「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する演算手段と」 上記の記載から,「音信号の発生の開始」と「デコード処理の開始」は,「発音指示の発生」に応じて開始すること,その両者の開始が,「とともに」という用語で接続されているから,「発音指示の発生」に応じて同時に開始することを意味している。また,「音信号の発生」と「デコード処理」は,「平行して」行われることが明記されている。 したがって,特許請求の範囲の記載は,音信号の発生開始とデコード処理の同時性と音信号発生とデコード処理の平行性を規定していることは明らかである。 イ本件特許1明細書段落【0018】[途中再生タイムチャート]には,「途中再生開始のタイミングを指示する同期パルスが供給されると,まず,上述したテンポラリーRAM8に記憶されていたデータ(マークされた位置のアドレス以降のデータ)を所定サンプリング速度で順次読み出したDAC12へ供給し,サウンドシステムから出力する。また,これと同時に,第3ブロックの圧縮データを外部記憶装置から読み込んでバッファBBUF(0)へ格納する。」と記載し,これに続けて,段落【0019】では,「上記格納が終了すると,演算器10によりバッファBBUF(0)の圧縮データをデコードし」と記載している。 込んでバッファBBUF(0)へ格納する。」と記載し,これに続けて,段落【0019】では,「上記格納が終了すると,演算器10によりバッファBBUF(0)の圧縮データをデコードし」と記載している。 また,図6においては,「途中再生指示」により出力される同期パルスに同期してリニア波形(予めデコードされてテンポラリーRAM8に記憶されていたデータ〔マークされた位置のアドレス以降のデータ〕)はDACに入力されて音信号の発生を開始するとともに,外部記憶圧縮波形が読み出されてBBUFに格納され,順次デコードが行われる。予めデコードされてテンポラリーRAM8に記憶されていたデータ(マークされた位置のアドレス以降のデータ)による再生は「HT再生」として記載された時間行われ,その間にこれと平行して圧縮波形の読み出し及びリニアデコード演算が行われることが図示されている。さらに,発明の詳細な説明には, 音信号の発生開始とデコード処理開始の同時性と音信号発生とデコード処理の平行性が記載されており,それ以外の態様の記載はない。 ウ本件特許1明細書の記載によれば,開始位置からヘッドタイムHT分以上のデータ部分(所定部分)を予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶しているから,発音指示の発生にともなってその先頭データから発音(再生)するに際して,デコードの時間も記憶手段への書き込みの時間も不要であるため,当該発音指示の発生と同時に発音することができることを規定し,当該所定部分がヘッドタイムHT分以上のデータからなるために,当該所定部分以降の圧縮データのデコードを同時に開始することによってデコード及び書き込みに要する時間が存するものの,デコードに平行して予めデコードし先頭データとして記憶された部分の発 らなるために,当該所定部分以降の圧縮データのデコードを同時に開始することによってデコード及び書き込みに要する時間が存するものの,デコードに平行して予めデコードし先頭データとして記憶された部分の発音が行われており(ヘッドタイムHT分以上のデータであるから),その間にデコード及び書き込みが行える。 以上,開始位置からヘッドタイムHT分以上のデータ部分は,① 所定部分以降の圧縮データのデコード処理に要する時間(=ヘッドタイムHT)と同一の部分を所定の開始位置から所定部分を予めデコード処理して先頭データとした場合,② 所定部分以降の圧縮データのデコード処理に要する時間(=ヘッドタイムHT)を超えた部分を所定の開始位置から所定部分を予めデコード処理して先頭データとした場合,の2つ場合がある。 この①の場合において,先頭データに基づく音信号の発生開始と所定部分以降のデコード処理の開始とが同時に行われ,先頭データに基づく音信号の発生とデコード処理が平行して行われると,先頭データに基づく音信号の発生終了と同時に所定部分以降の最初の部分のデコード処理が終了しているから(何らかの記憶手段にデコード後の波形データが保持されてい る),先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて所定部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいた音信号を生成することができる。 次に,②の場合において,先頭データに基づく音信号の発生開始と所定部分以降のデコード処理の開始とが同時に行われ,先頭データに基づく音信号の発生とデコード処理が平行して行われると,先頭データに基づく音信号の発生終了前に所定部分以降の最初の部分のデコード処理が終了しているから,先頭データに基づいた音信号の れ,先頭データに基づく音信号の発生とデコード処理が平行して行われると,先頭データに基づく音信号の発生終了前に所定部分以降の最初の部分のデコード処理が終了しているから,先頭データに基づいた音信号の発生の終了までこれを待機させ,先頭データの音信号発生終了に引き続いて所定部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいた音信号を生成することができる。もっとも,②の場合において,先頭部分の音信号の発生が終了した時点で所定部分に続く部分のデコード処理が終了するように構成することを条件にして先頭データに基づく音信号の発生開始から遅れて所定部分以降のデコード処理を開始するようにすることは理論的には可能である。 この場合,先頭部分の音信号の発生が終了した時点で所定部分に続く部分のデコード処理が終了していることは,必須の構成であって,これを欠く時は所望の効果を得ることができない。しかし,特許請求の範囲の記載はこのような構成を全く記載せず,「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する演算手段と」いうように一律に規定している。したがって,①の場合を包含する「所定部分」を一律に対象にする以上,すなわち,①②の場合を通じて切れ目なく音信号発生を行 うためには,デコード処理の開始時は先頭の所定部分に基づく音信号の発生開始時でなければならない。上記の理論的可能性に基づく構成は,本 上,すなわち,①②の場合を通じて切れ目なく音信号発生を行 うためには,デコード処理の開始時は先頭の所定部分に基づく音信号の発生開始時でなければならない。上記の理論的可能性に基づく構成は,本件特許発明1の技術的範囲からは除外されていると解さざるを得ない。 (3) 被告製品1が構成要件1Cを処理する演算手段を備えているか。 (原告の主張)ア被告製品1の構成要件1C前段(「該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,」)の充足については,別紙被告製品1の機能説明3.3(1)ないし(3)の構成により実現されている。 被告製品1の動作と構成要件との対比をより具体的に説明すれば,次のとおりである。上記構成の「PLAY命令に先立って」が「該発音指示に先立って,」に該当する。 上記構成の「先頭から」が「所定の開始位置から」に該当する。 上記構成の「通常,バスバッファの容量であるOggVorbis4フレーム分(サンプル数で言うと1024×4)が満杯になるまで」が「所定の部分まで」に該当する。なお,「上記PAUSE命令と次項PLAY命令との間隔…が,10ms以上で,4フレーム分満杯になるのに足りない場合には,圧縮データの種類やトラック数に応じて予め定まっているデコードスケジュールに従って,先頭から各トラック1フレーム以上4フレーム未満の部分」が「所定の部分」である。 上記構成の「対象トラックに設定されているフレーズ番号のフレーズを予めデコードし」が「予めデコード処理して元のデータに戻し」に該当する。 上記構成の被告製品1の「バスバッファ」が,「所定の記憶手段」に該当 ックに設定されているフレーズ番号のフレーズを予めデコードし」が「予めデコード処理して元のデータに戻し」に該当する。 上記構成の被告製品1の「バスバッファ」が,「所定の記憶手段」に該当する。 イ構成要件1C中段(「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,」)については,別紙被告製品1の機能説明3.3(4)(5)の構成により実現されている。 被告製品1の動作と構成要件との対比をより具体的に説明すれば,次のとおりである。 上記構成の「…『PLAY命令』を受けると…その際,レジスタマップは,自身のステータス系の情報が,通常再生準備状態(RUNSTAT=0,PAUSESTAT=1)であれば,即時発音開始を伴うPLAY命令であることを認識し,上記ステータス系の情報を通常再生状態(RUNSTAT=1,PAUSESTAT=0)に変更することにより,「PCMバッファゲート」に対して,その情報を伝達する(図1)。」「とともに,対象トラックのシーケンサに対しても,後続データのデコードを,その後直ちに再開するように指示を発行する。」ことが「該発音指示の発生」に該当する。 上記構成の「PCMバッファゲートはこの情報に基づき,予めデコードされ,バスバッファに蓄積されていた先頭部分のフレーズデータを直ちに出力して発音を開始するよう動作する」が「(該発音指示の発生)に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始する」に該当する。 上記構成の「他方,レジスタマップは,上記PCMバッファゲートへの指示とともに,対象トラックのシーケンサに対し 憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始する」に該当する。 上記構成の「他方,レジスタマップは,上記PCMバッファゲートへの指示とともに,対象トラックのシーケンサに対しても,後続データのデコードを,その後直ちに再開するように指示を発行する。このとき,予めデコードされた音データがバスバッファに格納された状態でPLAY命令が発行された場合には,バスバッファに格納された音データがサンプリング周波数(32kHz,44.1kHzまたは48kHz)に基づき,1サ ンプルずつ順次読み出される。この1サンプルずつの読み出しの進行に伴い,所定量の空きエリア(1024サンプル分以上)が確保できた時に,後続のOggVorbisデータのデコードを再開する。」が「(該発音指示の発生)に応じて,…とともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,」に該当する。 上記構成の「所定量の空きエリア(1024サンプル以上)が確保でき」るのは,「該発音指示」後,僅か約23.2msec.であり,後記のとおり,その後,上記「後続データのデコード」動作と,上記「バスバッファに格納された(予めデコードされた)音データがサンプリング周波数(32kHz,44.1kHzまたは48kHz)に基づき,1サンプルずつ順次読み出される」動作とは,同時平行的に行われるのだから,まさに,「(該発音指示の発生)に応じて,…とともに」に当たる。 被告製品1では,出力バッファの記憶量は,OggVorvisデコード演算4フレーム分の読み出し時間に堪える容量が確保されており,このうち1フレーム分の読み出しを待って続きのデコードを開始しても,次の1フレーム分のデコードに要する時間10msに比べて,残り3フレーム分の出力に費やす時間23 時間に堪える容量が確保されており,このうち1フレーム分の読み出しを待って続きのデコードを開始しても,次の1フレーム分のデコードに要する時間10msに比べて,残り3フレーム分の出力に費やす時間23.2×3=69.6msは十分に長いので,両者のデータ間で途切れが生じることはない。被告製品の「とともに」要件の充足は明らかである。 ウ構成要件1C後段(「前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する演算手段」)については,被告製品1の機能説明3.3(5)の構成により実現されている。 被告製品1の動作と構成要件との対比をより具体的に説明すれば,次の とおりである。 上記構成の「バスバッファに格納された音データがサンプリング周波数(略)に基づき,1サンプルずつ順次読み出される。」が「前記先頭データに基づく音信号の発生」に該当する。 上記構成の「この1サンプルずつの読み出しの進行に伴い,所定量の空きエリア(1024サンプル分以上)が確保できた時に,後続のOggVorbisデータのデコードを再開する。この,OggVorbisデータのデコードは,サンプリング周波数より高速の基準クロック(図2)に基づき1フレーム(1024サンプル分)単位で一括して行われバスバッファに格納される。」が「音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,」に該当する。 上記構成の「このバスバッファへの格納が,予めデコードされてバスバッファに格納されていた音データの未読サンプルが欠乏する前に行われ 分以降の圧縮データのデコード処理を行い,」に該当する。 上記構成の「このバスバッファへの格納が,予めデコードされてバスバッファに格納されていた音データの未読サンプルが欠乏する前に行われることにより,音切れのない連続再生が保証される。」が「前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する」に該当する。 エ以上のとおり,被告製品1は構成要件1Cを充足する。 被告は,被告製品1においては,そのような動作の命令を与えるプログラムは存在せず,主張自体失当であるなどと主張する。 被告がいう「そのような動作の命令を与えるプログラム」とは,外部から被告製品に対し,「PAUSE命令」に引き続き「PLAY命令」を送り込むための部品があって,その部品に備えられているプログラムのことを指していると思われ,そのようなプログラムは被告製品内部にはないことを主張していると理解されるが,本件特許発明1の構成要件1Cが要求しているのは,そのような外部からの信号処理の要求があった場合におけ る信号処理装置内部の処理についてであるから,外部からの信号処理を要求する部品の操作の実施自体は,構成要件1Cの該当性とは無関係である。 オ本件構成要件1Cが要求しているのは,「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始」する「演算手段」の具備だけである。 被告製品1は,外部からのコマンドを受け取ると,レジスタマップのステータス系の情報を分析した上で,その条件が一致すれば,バスバッファに蓄積されていた先頭部 「演算手段」の具備だけである。 被告製品1は,外部からのコマンドを受け取ると,レジスタマップのステータス系の情報を分析した上で,その条件が一致すれば,バスバッファに蓄積されていた先頭部分のフレーズデータを直ちに出力して発音を開始するよう指示し,他方,対象トラックのシーケンサに対しても,後続データのデコードを,その後直ちに再開するように指示を発行するという内部の演算手段により,これを完全に充足している。 (被告の主張)ア被告製品1は,集積回路から成るサウンド用LSIである。このようなLSIは,コンピュータプログラムによって制御されて初めて所望の動作をするものであるが,被告製品1は,「PAUSE命令+PLAY命令」を含むようなコンピュータプログラムを内蔵していない。 構成要件1Cが規定する演算手段は,機能的クレームとして「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する」という機能を奏するものとして特定されている。 しかしながら,被告製品1単独では(たとえ電力が供給されても)何ら の動作をしない。上記のとおり,被告製品1には「PAUSE命令+PLAY命令」のプログラムを備えないからである。被告製品1を作動させるためには,被告製品1に対して何らかの処理を行うべきであるとする命令が外部から供給されなければならない。このような機能を奏するた LAY命令」のプログラムを備えないからである。被告製品1を作動させるためには,被告製品1に対して何らかの処理を行うべきであるとする命令が外部から供給されなければならない。このような機能を奏するための所定の動作をする命令からなるコンピュータプログラムに基づき,当該動作を命令する信号(命令をするための情報)が外部から供給された場合に,被告製品1が初めて当該プログラムに応じた動作をするのである。仮に,「PAUSE命令+PLAY命令」のプログラムが被告製品1にインストールされるとするときは(このようなインストールをすることは実際にできないが),コンピュータプログラムという一種の部品が被告製品1に後から結合されて(インストールされて),当該機能を奏する「~手段」がそのときに初めて出現する(当該手段を有する装置が生産される)。プログラムによって動作する装置においては,このような機能を奏するためのプログラムが(インストールされるなどして)存在しなければ,ただの箱にすぎないことになる(被告製品1と異なり,このようなプログラムを内蔵している装置(所望の動作をするような命令の組合せからなるプログラムを内蔵しているメカトロニクス装置)は,当該プログラムが格納されることによって,これに関連する装置が出現する(生産されるといっても良い)。そして,被告製品1はそのようなコンピュータプログラムを内部に一切備えていないし,こうしたプログラムが被告製品1にインストールされることもない。したがって,構成要件1Cが規定するような動作を行うためのプログラムも内部に一切備えていない。つまり,「PAUSE命令」+「PLAY命令」を命ずるコンピュータプログラムが被告製品1には存在しない(内蔵していないし,インストールされることもない)から,このようなプログラムを備えない被 ない。つまり,「PAUSE命令」+「PLAY命令」を命ずるコンピュータプログラムが被告製品1には存在しない(内蔵していないし,インストールされることもない)から,このようなプログラムを備えない被告製品1単独で,構成要件1Cの機能を奏することはなく,被告製品1は構成要件1Cが規定する「演算手段」 (機能的に特定されている)を備えないから,本件特許発明1の直接侵害はあり得ない。 イ 「PAUSE命令」+「PLAY命令」が機能するための条件である全部のトラックについてのオーディオ再生が行われていない場合に,仮に,「PAUSE命令」及びこれに続く「PLAY命令」が外部MPUから発せられると,次のように動作する。 被告製品1は,全トラックが停止中であることを条件とし,「PAUSE命令」を受けると先頭の圧縮データから順次デコードを開始しバッファに格納していく。続いて,「PLAY命令」を受けるとバッファに格納したデコードデータを出力する。このとき,バッファに余裕がある限り次の圧縮データのデコードを行うが,バッファの空き領域が不足するとデコードは行わない。 ところで,「PAUSE命令+PLAY命令」の条件として,上記のように全てのトラック停止中であることを要求しているのは,いずれかのトラックが停止していないときに「PAUSE命令」を受けてバスバッファのゲートを閉じてしまうと,当該トラックについての発音までも停止してしまうことになり不都合であるため,全部のトラックが停止中に限り「PAUSE命令」の拡張をし,ゲートを閉じる命令として機能するようになっているという意味である。上記のように「PAUSE命令」が拡張されたときの「PLAY命令」は同様に拡張され,閉じたゲートを開く命令を伴うため,デコードが完了しているか る命令として機能するようになっているという意味である。上記のように「PAUSE命令」が拡張されたときの「PLAY命令」は同様に拡張され,閉じたゲートを開く命令を伴うため,デコードが完了しているか否かに関係なく直ちにバスバッファからの出力を開始する。 換言すると,「PAUSE命令+PLAY命令」における「PAUSE命令」は,バスバッファのゲートを閉じる命令である。そして,同様に「PAUSE命令+PLAY命令」における「PLAY命令」は,バスバッファのゲートを開ける命令である。つまり,ゲートスイッチ命令に相当 する。 ゲートスイッチ命令としての「PAUSE命令」に相当するコマンドは,PAUSEコマンドである。レジスタマップのアドレス4Ahを指定しさらにバラメータとして,上位1バイト中の上位2ビット目に「1」,下位1バイトに対象トラックを指定する。全トラックが休止中において,第3トラックを指定してゲートを閉めるためのコマンドは,具体的には次のようになる。 4A43h(0100 1010 0100 0011)このコマンドがプログラムにより外部MPUから送信されると,第3トラックは再生準備状態になる。ゲートスイッチがOFF状態でデコードが開始される。PCMバッファにデコード済みデータが蓄積される。次に,外部MPUはプログラムに応じて上記で指定した再生準備中のトラックである第3トラックを指定してPLAYコマンドを発行する。ゲートスイッチ命令としての「PLAY命令」に相当するコマンドは,PLAYコマンドである。レジスタマップのアドレス4Ahを指定し,さらにパラメータとして,上位1バイト中の上位1ビット目に「1」,下位1バイトに対象トラックを指定する。具体的には次のようになる。 ンドである。レジスタマップのアドレス4Ahを指定し,さらにパラメータとして,上位1バイト中の上位1ビット目に「1」,下位1バイトに対象トラックを指定する。具体的には次のようになる。 4A83h(0100 1010 1000 0011)このコマンドがプログラムにより外部MPUから送信されると,第3トラックは再生状態になる。ゲートスイッチがONになりPCMバッファに準備された音データが出力される。 被告製品1は,外部記憶手段に格納されたプログラムが規定するPAUSEコマンドとPLAYコマンドの発行時間差に応じて,バッファに余裕がある限り圧縮データを順次デコードするが,デコードする対象のデータ量はこの時間差によって決定される。PAUSEコマンドとPLAYコマンドの発行時間差が十分でないときは,最初に再生すべきデータ(1ブロ ック)のデコードを終了していない可能性があり,そのときは,当該デコード終了までの間は無音状態となる。つまり,「PLAY命令」という発音指示が発生したにもかかわらず無音となるから,構成要件1Cが規定する「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始」しない。さらに,先頭フレーズの圧縮データのデコード中には,これに続く圧縮データ(所定の部分以降の圧縮データに相当する)のデコードもしない。 これに対して,「PAUSE命令」と「PLAY命令」との時間差が十分あるときは,「PLAY命令」を受けるまでの間にデコード処理を行い元のPCMデータを格納していくが,バッファに空き領域がなくなることがある。この空き領域がなくなると,デコード処理を中止する。その後「PLAY命令」を受けて,元のPCMデータ(所定部分に相当する)に基づく発 データを格納していくが,バッファに空き領域がなくなることがある。この空き領域がなくなると,デコード処理を中止する。その後「PLAY命令」を受けて,元のPCMデータ(所定部分に相当する)に基づく発音を開始し,バッファの空き領域ができると,再びデコード処理を開始する(再開されたデコード対象は,所定部分以降の圧縮データに相当する)。この場合は,構成要件1Cが規定する「前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,」という音信号の発生開始とデコード処理の開始の同時性を備えないことになる。 このように,信号の発生の前に行われるデコード対象の圧縮データ(所定部分)は,外部記憶手段に格納されたプログラムが規定する「PAUSE命令」と「PLAY命令」との両命令が発せられる時間差に応じてバッファに余裕がある限り圧縮データを順次デコードする。したがって,「所定の部分」は,両者の時間差によって変化するものであり,また,ヘッドタイムHT分以上のデータであることは何ら保証されず,「PAUSE命令」と「PLAY命令」との時間差が十分でないときは,無音となってしまう(本件特許発明1の課題を解決できない)。逆に,「PAUSE命 令」と「PLAY命令」との時間差が十分あるときは,バッファの余裕がなくなり,音信号の発生とデコード処理の平行性を備えなくなるのである(課題解決手段として重要な構成を欠くことになる。)。 構成要件1Cが規定する「所定の開始位置」は,予め操作者が指定する任意の位置を意味するといわざるを得ない。被告製品1は,上記のように外部MPUから「PAUSE命令」+「PLAY命令」が供給された場合において,特殊な条件が成立した場合(全トラ 予め操作者が指定する任意の位置を意味するといわざるを得ない。被告製品1は,上記のように外部MPUから「PAUSE命令」+「PLAY命令」が供給された場合において,特殊な条件が成立した場合(全トラックが停止状態)にのみ,先頭位置からのデータの読み込みを開始し,その後デコード処理を行うが,操作者により任意の位置を指定することはできない。また,この場合のデコード対象は,「PAUSE命令」+「PLAY命令」の時間差に応じて変化するから,HTで特定される「所定の部分」をデコードしない。 さらに,構成要件1Cが規定する「所定の記憶手段」は,予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして記憶するための特別の記憶手段(実施例では,テンポラリーRAM8)であり,通常の再生処理でデコード後データを記憶する記憶手段(実施例ではBBUF)とは異なるものである。被告製品1は,BBUFに相当する記憶手段のみを用い,所定の部分はHT分ではなく,先頭データとして記憶するための特別の「所定の記憶手段」を備えない。 ウ以上の次第であるから,外部MPUから「PAUSE命令」+「PLAY命令」が供給された場合であっても,被告製品1は構成要件1Cが規定する動作をしない。 1-4 均等侵害の成否(争点1-4)(原告の主張)(1) 仮に,構成要件1Aの,「外部記憶手段に記録する」を「外部記憶手段に記録された」場合は文言上含まれないと解釈したとしても,ア 「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録すると ともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,」について,「所定の圧縮処理によつて圧縮したデータ ,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,」について,「所定の圧縮処理によつて圧縮したデータが記録された外部記憶手段に記録された圧縮デー夕を所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,」にすることは,特許発明1の本質的部分ではなく(第1要件非本質的部分),イ上記アのように置き換えることが可能なことは自明であり,そうしても本件発明1の作用効果自体には全く影響がなく(第2要件置換可能性),ウ上記アのように置き換えることは,当業者はもちろん,一般レベルでさえも,それが容易なことは理解されており(第3要件置換容易性),エ上記アのように置き換えると,そのために公知技術に接近し,公知技術から容易推考の範囲に含まれてくるという問題は全くなく(第4要件逆均等ではないこと),オ明細書の記載,出願経過における意見書・補正書等において,「所定の圧縮処理によつて圧縮したデータが記録された外部記憶手段に記録された圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,」にすることは権利対象から除外する旨の態度を表明したことは全くない(第5要件禁反言)ので,均等侵害が成立する。 (2) 第1要件(非本質的部分)本件特許発明1の本質的部分は,構成要件1C(特徴部分)に示された,先行デコードよる発音遅延の解消にある。 本件特許1明細書に示された作用・効果,本件出願経過,被告から提出された出願前資料,どの観点から捉えても,本件特許発明1が,デコード処理 の工夫( コードよる発音遅延の解消にある。 本件特許1明細書に示された作用・効果,本件出願経過,被告から提出された出願前資料,どの観点から捉えても,本件特許発明1が,デコード処理 の工夫(先行デコード)によって,圧縮データのデコード時における時間遅れをなくす効果をもたらした,デコード機能に関する発明であることは明らかである。 付加的に説明されている「マルチトラック・レコーダ」については後記ウで述べるが,同明細書の目的【0005】,効果【0052】として挙げられているのは,「圧縮データのデコード時における時間遅れが生ぜず,このため高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができる」ということであり,付加的に説明されている「マルチトラック・レコーダ」についても,「録音」と「再生」を「同期」させるために本件特許発明1を使うのは,あくまで使用例の1つにすぎない。 「エンコード機能」の有無が本件特許発明1の本質的部分に当たらないことは明らかである。 したがって,均等第1要件の充足に問題はない。 (3) 第2要件(置換可能性)本件特許発明1は,録音側ないしはエンコード機能に関する工夫は何も必要とはしていない。単に,デコードする際の当然の前提として,外部記憶手段(ROM)に予め,対となる形式で圧縮データを格納しておくことを確認しているだけである。 したがって,外部記憶手段(ROM)に格納された所定の圧縮データさえあればよく,それが同じ信号処理装置に具備された演算器を用いて準備しようが,信号処理装置外の別の演算器ないしは演算ソフトウェアを用いて準備しようが,発明の効果に影響を及ぼさないことは明らかである。 この点,被告は,置換後の発明では所定の圧縮処理によりデータを圧縮して外部記憶手段 別の演算器ないしは演算ソフトウェアを用いて準備しようが,発明の効果に影響を及ぼさないことは明らかである。 この点,被告は,置換後の発明では所定の圧縮処理によりデータを圧縮して外部記憶手段に記録できないからマルチトラック・レコーダとして成立し得ないことを理由に作用効果の同一性を否定し,均等第2要件(置換可能性)非充足を主張しているが,失当である。 そもそも,均等第2要件にいう作用効果の同一性とは,明細書の発明の詳細な説明の作用効果に関する記載を基礎とすべきとされてきたところ,本件特許発明1の作用効果は,本件特許1明細書において,「【0007】【作用】外部記憶手段に記録された圧縮データの任意の位置からデコード処理を行う場合,該デコード処理に先立って,圧縮データのデコード開始位置から所定の部分までを演算手段によって予め元のデータに戻した後,該データを所定の記憶手段に記憶する。そして,上記所定の部分以降のデコード処理の準備が整った時点で,所定の記憶手段に記憶したデコードされたデータを出力するとともに,上記所定の部分以降の圧縮データを順次デコード処理を行い,前記デコード処理されたデータの出力と並行して上記所定の部分以降のデコード処理を行い,先にデコードされたデータの出力に引き続いて上記所定の部分以降のデコード処理により生成されたデータを出力する」「【0052】【発明の効果】以上,説明したように,この発明によれば,外部記憶手段に記録された圧縮データの任意の位置からデコード処理を行う場合,該デコード処理に先立って,圧縮データのデコード開始位置から所定の部分までを予め元のデータに戻して所定の記憶手段に記憶し,上記所定の部分以降のデコード処理の準備が整った時点で,所定の記憶手段に記憶したデコードされたデ って,圧縮データのデコード開始位置から所定の部分までを予め元のデータに戻して所定の記憶手段に記憶し,上記所定の部分以降のデコード処理の準備が整った時点で,所定の記憶手段に記憶したデコードされたデータを出力するとともに,上記所定の部分以降の圧縮データを順次デコード処理を行って,前記デコード処理されたデータの出力と並行して上記所定の部分以降のデコード処理を行い,先にデコードされたデータの出力に引き続いて上記所定の部分以降のデコード処理により生成されたデータを出力する演算手段を具備するようにしたため,圧縮データのデコード時における時間遅れが生ぜず,このため高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができるという利点が得られる。」と明記されている。 すなわち,均等第2要件にいう作用効果とは,あくまで,所定の部分の先行デコードによって,圧縮データのデコード時における時間遅れが生じないようにする点が対象とされるべきことは,明細書の記載からも明らかである。 さらに,マルチトラック・レコーダは,同明細書において,「【0047】なお,上述した実施例では,演算器,ADCおよびDACを1つとしたが,複数設けたり,時分割的な処理によってマルチトラックレコーダとしてもよい。」と明記されているとおり,実施例の応用形として,+αを加えたものとして,なお書きで紹介されている応用例の1つにすぎないものである。 本件特許発明1の実施例そのものでは,演算器等が1つであり,エンコードとデコードを同時に行うことは記載されていないのであるから,被告の主張する「マルチトラック・レコーダ」の作用効果を奏することなど,本件特許発明1自体の実施例上の作用効果ですらない。到底,同一性を論ずる対象ではないのである。 以上のとおり,均等第2 告の主張する「マルチトラック・レコーダ」の作用効果を奏することなど,本件特許発明1自体の実施例上の作用効果ですらない。到底,同一性を論ずる対象ではないのである。 以上のとおり,均等第2要件(置換可能性)の充足にも問題はない。 (4) 第3要件(置換容易性)外部記憶手段(ROM)に格納する所定の圧縮データを,内蔵の演算器ではなく,外部の演算器ないしは演算ソフトウェアを用いて準備しても同様の効果を得られることは,特に追試等を行わなくても容易に想到できる設計事項であることは,本件侵害時点の平成16年時点を問題にするまでもなく明白である。 エンコードとデコードの対となる演算機能はもとより,一般にも,複数の機能を1つにまとめるのは困難を伴うことがあるとしても,1つにまとまっていた機能を元の複数に分けることには,経済性はともかく,技術的困難を生じないことは明らかである。 したがって,均等第3要件の充足にも問題はない。 (5) 第4要件(公知技術からの非容易推考性) 無効論で説明するように,被告提出に係る出願前資料は,いずれも本件特許発明1の特徴部分の構成(構成要件1C)を欠くものであった。 したがって,構成要件1Aについて,エンコード機能+デコード機能を具備する信号処理装置から,デコード機能だけを具備する信号処理装置に「置換」し,エンコード機能は外部に委ねても,本件特許発明1の特徴部分の構成(構成要件1C)を欠く公知技術からは容易推考性が認められないのであるから,均等第4要件(公知技術からの非容易推考性)の充足にも問題はない。 (6) 第5要件(禁反言等の不存在)本件出願経過を見ても,原告が,デコード機能だけを有する信号処理装置への「置換」を排除してき 公知技術からの非容易推考性)の充足にも問題はない。 (6) 第5要件(禁反言等の不存在)本件出願経過を見ても,原告が,デコード機能だけを有する信号処理装置への「置換」を排除してきた事情もない。原告が本件特許発明1について行った補正は,構成要件1Cに関するデコード動作の明確化であり,何らエンコード機能ないしは録音に関わるものではない。 むしろ,本件出願経過において,原告は,旧請求項4のエンコード機能に関する発明を削除することにより,エンコード機能に依存しない,デコード機能に特化した発明へと集約を図っているのであるから,その意味でもデコード機能だけを有する信号処理装置を除外することなどあり得ない。 被告は,特許請求の範囲に含めなかったことを問題としているのではなく,原告が限定を付したことを問題としているなどと主張するが,誤導的である。 「限定を付した」というのは,いわゆる除くクレームのような場合を指すのであって,単に,「~において」と対象を示すだけのことが,どうして「限定を付した」ことになるのか,理解不能である。対象外のものを消極的に「特許請求の範囲に含めなかった」だけで,積極的に対象内のものに「限定を付した」ことになるとすれば,およそ第5要件具備など成し得なくなってしまう。 したがって,均等第5要件(意識的除外等の不存在)の充足にも,問題は ない。 (被告の主張)(1) 第2要件(作用効果の同一性)特許請求の範囲は,「該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,」と規定しており,「所定の開始位置」すなわち,任意に指定した開始位置からの再生において発音遅れがない ら所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,」と規定しており,「所定の開始位置」すなわち,任意に指定した開始位置からの再生において発音遅れがないようにする作用効果を奏する構成を必須としている。指定した任意の開始位置からの再生がデコード遅れなく行われる必要があるのは,マルチトラック・レコーダを代表とする機器においてである。したがって,本件特許発明1の「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置」を,原告が主張するように,「外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置」というようにデータを所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録する構成を欠くものに置換すると,マルチトラック・レコーダに当該置換後の発明を適用することができなくなる。これでは,本件特許発明1の産業上の利用分野としてレコーダに用いて好適であるとする本件特許1明細書段落【0001】の記載に反することになる。 したがって,第2要件を具備しないものである。 (2) 第4要件(公知技術からの非容易推考性)この点については,無効論において述べるが,公知技術から容易想到であるから,第4要件を具備しないものである。 (3) 第5要件(意識的除外等の不存在)原告があえて特許請求の範囲にエンコード機能・録音機能を有する信号処 理装置であるとの限定を付したことは意識的な限定に他ならない。エンコード機能・録音機能を有しない信号処理装置を意識的に除外した があえて特許請求の範囲にエンコード機能・録音機能を有する信号処 理装置であるとの限定を付したことは意識的な限定に他ならない。エンコード機能・録音機能を有しない信号処理装置を意識的に除外したことに他ならない。 したがって,第5要件も具備しない。 (4) 第1要件(発明の本質部分ではないこと)次の技術は本件特許発明1の出願日前に当業者に周知・慣用の技術であった。 ① デコードにある程度の時間がかかる技術的課題の解決手段として予めデコードして記憶手段に格納しておきこれに基づき発音する技術② デコード済みのデータを出力しながらこれに続く圧縮データのデコードを同時平行して行う技術このような周知技術のもとで,本件特許発明1が特許性を備えるとすれば,例えば,マルチトラック・レコーダによる多重録音において予め録音したトラックにおける音楽を再生しながら演奏する場合に,正確な頭出し(所望のタイミングで再生が正確に開始すること)をすることが要求される場合などに適用することができることが必須であると解さざるを得ない。すなわち,マルチトラック・レコーダ等が備えるべきエンコード機能及び外部記憶手段に記録する機能を本件特許発明1の構成要素として無視することはできないとともに発明の本質部分といわざるを得ない。このことは,本件特許発明1の産業上の利用分野が,レコーダ等に用いて好適であるとする本件特許1明細書段落【0001】の記載からも明らかである。 したがって,第1要件も具備しない。 1-5 道具理論の成否(争点1-5)(原告の主張)(1) 被告製品1には圧縮機能が備えられていないが,被告は被告製品1を購入した者が圧縮データを作成するのに必要な圧縮ソフトを,「Astart 論の成否(争点1-5)(原告の主張)(1) 被告製品1には圧縮機能が備えられていないが,被告は被告製品1を購入した者が圧縮データを作成するのに必要な圧縮ソフトを,「Astart e」の商品名で購入者に提供する他,必要なライブラリーソフトを購入者に提供している。 被告製品1に用いられている圧縮データの形式は,OggVorbis方式に準拠した形式であるが,被告製品1で使用可能な圧縮データを作成する圧縮ソフト,あるいは圧縮器は他に市販されておらず,購入者は事実上「Astarte」等被告提供のソフトを用いて圧縮されたデータを,購入者は外部ROMに記憶させることによって,被告製品1の使用に供している。 このことは,圧縮することが要件であると解したとしても,被告は,「Astarte」等被告提供のソフトを手足,道具として圧縮させていることに他ならないから,いわゆる道具理論として,構成要件の充足が行われている。 (2) 被告は,物の構成の一部を備えていない場合に,その欠如している部分の構成を原告が主張するような道具で代替する余地はないなどと主張し,道具理論適用を否定しているが失当である。 道具理論は,第三者に分担された問題の一部の構成が,商品の性質及び構造に照らし,他の用途が考えられず,該第三者によって実施されることが,当該商品の製造時点から,当然のこととして予定されていたことを要件に,規範的に全部実施と同視できることを要件に認められるものであるから,何ら物の発明への適用が排除されるものではない。一般に,方法発明については,結論の妥当性を確保するために,道具理論の構成を採る要請が物の発明よりも強い(間接侵害を認めにくい事例が起こりやすいから)というにすぎず,本件のように,物の発明であっても,規範 方法発明については,結論の妥当性を確保するために,道具理論の構成を採る要請が物の発明よりも強い(間接侵害を認めにくい事例が起こりやすいから)というにすぎず,本件のように,物の発明であっても,規範的に全部実施と同視できれば,道具理論は成立する。 本件では,被告製品1が,単に,本件特許発明1の物の構成の一部を備えていない場合に,その欠如している部分の構成を代替するものではなく,被告製品1自体が,エンコード機能を有さずにデコード機能だけを有する信号 処理装置であっても,これに対応するエンコードデータを作成するソフトウェアを同じユーザーに供給し,当該ユーザーの使用する一般のハードウェアと組み合わせてエンコード機能を分担させることが当然のこととして予定されている,そういう形でセット販売もされている(甲5プレスリリース)という特殊な形態を捉えて,まさに結論の妥当性を確保するために,規範的に全部実施と同視できると主張しているのである。 (3) したがって,本件において,原告の主張する道具理論が排斥される理由はない。 (被告の主張)(1) 本件の「信号処理装置」という物の発明においては,信号処理装置自体がエンコード機能・記録機能を備えていなければならない。物の構成の一部を備えていない場合に,その欠如している部分の構成を原告が主張するような道具で代替する余地はない。 「Astarte」などのエンコード用ツール(OggVorbisは,音声データ圧縮方法の1つである)はソフトウエアであり,これがPCなどの情報処理装置にインストールされることにより,PCMデータをエンコードして外部音声データROMに格納すべき圧縮楽音データとすることができる機能を備えた信号処理装置となり,これは被告製品1とは別に生産される。 被告製品1は ールされることにより,PCMデータをエンコードして外部音声データROMに格納すべき圧縮楽音データとすることができる機能を備えた信号処理装置となり,これは被告製品1とは別に生産される。 被告製品1は,LSIチップであり,一種の部品であって外部音声データROMも備えない。被告製品1とは全く別の情報処理装置がPCMデータをエンコードして,これまた被告製品1とは全く別の外部音声データROMに記憶させるべき圧縮楽音データとするのである。しかし,当該圧縮楽音データとする機能(エンコード機能)を備えた情報処理装置が同装置内で直接当該外部音声データROMに記憶させることは行われていない。圧縮データを格納した外部音声データROMは,エンコード機能を備える情報処理装置とは別に,大量に製造されるものであり,,このようなROMの記録装置が,エ ンコードされた圧縮データを大量の外部音声データとして記憶するのである(このROMへの記憶は遊技機メーカ又は外注のメモリメーカが行う。)。 (2) 本件特許発明1の「信号処理装置」における道具と評価するためには,「Astarte」単体で,エンコード機能及び記憶機能を有するものであることが必要であるというべきである。しかし,「Astarte」単体は単なるソフトウエアであって,情報処理装置にこれがインストールされなければエンコード機能を奏することはできず,また,エンコード後のデータを記憶させることは別途ROM記憶装置を用いる。 したがって,被告製品1とAstarteとをセットとしての組合せ物として把握しても,その組合せ物全体で本件特許発明1の発明物(信号処理装置)を構成することはない。 (3) 上記のとおりであるから,被告の手を離れたところを含めて,被告製品1が使用される場面のすべてにおいて,本件 の組合せ物全体で本件特許発明1の発明物(信号処理装置)を構成することはない。 (3) 上記のとおりであるから,被告の手を離れたところを含めて,被告製品1が使用される場面のすべてにおいて,本件特許発明1が規定する発明物(信号処理装置)が生産される(現出する)ことはない。被告製品1の製造販売行為が,遊技機メーカに対して,支配関係や道具としての利用関係を形成することはない。 1-6 乙11号証を主引例とする進歩性の欠如(争点1-6)(被告の主張)(1) 乙11号証(特開平6-167978公報)の記載乙11号証には,以下のような記載がある。 「【請求項1】入力されるディジタル楽音データに圧縮処理を施すデータ圧縮手段と,録音すべきディジタル楽音データの入力から所定期間経過したか否かを判別する第1の判別手段と,前記第1の判別手段によって所定期間経過していないと判別された場合には,前記ディジタル楽音データを選択し,前記第1の判別手段によって所定期間経過したと判別された場合には,前記データ圧縮手段により圧縮処理が施されたデータを選択する第1の選択手段 と,書き込み可能な記憶手段と,前記選択手段によって選択されたデータを前記記憶手段に書き込む書込手段とを具備することを特徴とする電子楽器の音源装置。 【請求項2】楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する記憶手段と,発音指示があった場合に前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータを読み出す読出手段と,前記読出手段によって読み出された,圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに 場合に前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータを読み出す読出手段と,前記読出手段によって読み出された,圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに展開するデータ展開手段と,前記読出手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したか否かを判別する第2の判別手段と,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する第2の選択手段とを具備し,前記第2の選択手段によって選択されたディジタル・データに基づいて発音することを特徴とする電子楽器の音源装置。」(2頁左欄2行~36行)「【0002】【従来の技術】従来より,楽音信号をPCM(パルス符号化変調)等を用いてディジタルのPCM・データに変換し,さらに,圧縮処理を施して波形メモリ内に記憶するとともに,再生(発音)時には,この波形メモリ内から圧縮処理を施したデータ(エンコード・データ)を読み出し,このデータにデコード(展開)処理を施して,元のPCM・データに戻し,楽音を発生させる電子楽器の音源装置が知られている。圧縮処理には,例えば,ADPCM(適応型差分PCM)や,さらに圧縮効率をあげたサブバンドコーディン グを用いることできる。圧縮処理を施すことによって,波形メモリ内に記憶する情報量を少なくすることができるので,より少ない容量の記憶装置を用いて効率的に波形メモリを構成することができる。 【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで 内に記憶する情報量を少なくすることができるので,より少ない容量の記憶装置を用いて効率的に波形メモリを構成することができる。 【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで,上述したような,特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である。すなわち,オペレータ(操作者)による発音指示によって読み出したエンコード・データを,元のPCM・データへデコードする時間が必要である。このため,図11に示すように,楽音発生が,発音指示後から,デコード処理に要する時間Dだけ遅れるいう問題があった。この発明は,上記課題に鑑みなされたもので,その目的とするところは,発音指示後,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる電子楽器の音源装置を提供することにある。 【0004】【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために請求項1記載の発明は,入力されるディジタル楽音データに圧縮処理を施すデータ圧縮手段と,録音すべきディジタル楽音データの入力から所定期間経過したか否かを判別する第1の判別手段と,前記第1の判別手段によって所定期間経過していないと判別された場合には,前記ディジタル楽音データを選択し,前記第1の判別手段によって所定期間経過したと判別された場合には,前記データ圧縮手段により圧縮処理が施されたデータを選択する第1の選択手段と,書き込み可能な記憶手段と,前記選択手段によって選択されたデータを前記記憶手段に書き込む書込手段とを具備することを特徴としている。 【0005】上述した課題を解決するために請求項2記載の発明は,楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を 005】上述した課題を解決するために請求項2記載の発明は,楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施 したデータの状態にて記憶する記憶手段と,発音指示があった場合に前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータを読み出す読出手段と,前記読出手段によって読み出された,圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに展開するデータ展開手段と,前記読出手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したか否かを判別する第2の判別手段と,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する第2の選択手段とを具備し,前記第2の選択手段によって選択されたディジタル・データに基づいて発音することを特徴としている。」「【0007】請求項2記載の発明によれば,発音指示があった場合に,記憶手段からディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータが読み出され,ディジタル・データは,第2の選択手段を介して出力される一方,圧縮処理を施したデータは,さらにデータ展開手段によって元のディジタル・データに戻される。第2の選択手段は,発音指示後からディジタル・データを選択して,すべてのディジタル・データを出力し,この後,データ展開手段によって戻されたディジタル・データを選択して,選択されたデータを出力する。 したがって,発音指示後,直ちに,ディジタル・データが読み出 して,すべてのディジタル・データを出力し,この後,データ展開手段によって戻されたディジタル・データを選択して,選択されたデータを出力する。 したがって,発音指示後,直ちに,ディジタル・データが読み出され,この後に,元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる。」「【0062】【発明の効果】以上説明したように,この発明によれば,楽音信号の所定期間までのディジタル・データの長さは,圧縮処理を施したデータの長さに比べて充分短いので,圧縮効率を悪化させなくて済むという利点がある(請 求項1)。また,発音指示後,直ちに,ディジタル・データが読み出され,この後に,元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる(請求項2)。」(2) 乙11号証に記載された発明以上の記載によれば,次の発明が記載されている(以下「乙11発明」という。)。 「データを先頭から所定期間までの所定部分をディジタル・データの状態にて,前記所定部分以降のデータを所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,発音指示を発生する発音指示手段と,該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の るとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する演算手段とを具備することを特徴とする信号処理装置。」(3) 本件特許発明1と乙11発明との対比本件特許発明1と乙11発明を対比すると,両者は次の点で一致し,次の点で相違する。 【一致点】データを所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置 において,発音指示を発生する発音指示手段と,該発音指示の発生に応じて,記憶手段に記憶された所定の開始位置から所定の部分までの先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定部分以降の圧縮データのデコード処理を開始して,前記先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する演算手段とを具備することを特徴とする信号処理装置。 【相違点】先頭データについて,本件特許発明1では所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,発音指示に先立って予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶されるのに対し,乙11発明では,圧縮処理せずにディ 処理によって圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,発音指示に先立って予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶されるのに対し,乙11発明では,圧縮処理せずにディジタル・データの状態にて外部記憶手段に記録されている点。 (4) 相違点の検討ア相違点の技術的意味本件特許1明細書の図6によると,「途中再生指示」が発行される段階で,テンポラリーRAM8(図6では「TMP」と表示されている)にはリニア波形,すなわち非圧縮データが「所定部分」として(マーク処理によりマークされた位置(1の途中)から2の最後まで)記憶されている。 また,外部記憶手段には,所定部分以降の圧縮データが記憶されている。 すなわち,本件特許発明1において,途中再生指示がされる時点においては,途中再生対象の先頭であるマーク位置からHT分の所定部分は,ディジタル・データ(非圧縮データ)の状態にてテンポラリーRAM8に記憶するととともに,前記所定部分以降の部分をディジタル・データの状態 にて記憶している。そして,HT分とは,所定部分以降のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理(デコード処理)に要する時間以上のものである。したがって,本件特許発明1において,途中再生指示がされる時点においては,乙11発明の楽音信号のデータ記憶手段と同一の状況となっている。 さらに,乙11発明の装置は,同請求項1が規定するように,楽音データ(非圧縮データ)をエンコードして記憶する手段を備えており,楽音データの全部をエンコードすることを控えて,先頭の所定部分をHT分になるようにエンコードせずにディジタル・データのまま記憶する方法を具体的に開示している。他方,本件特許発明1は,その信号処理装置はデ ータの全部をエンコードすることを控えて,先頭の所定部分をHT分になるようにエンコードせずにディジタル・データのまま記憶する方法を具体的に開示している。他方,本件特許発明1は,その信号処理装置はデータ(楽音データ)をエンコードして外部記憶装置に記憶するものの,途中再生の対象である先頭,すなわち所定の開始位置から所定の部分まで(HT分)のディジタル・データを,途中再生指示が発行されるまでの間に予めデコード処理してこれを得る構成を備えている。 このことを踏まえると,上記相違点は,途中再生の対象となる先頭データとしての所定部分(HT分)のディジタル・データ(非圧縮データ)について,本件特許発明1は,予めデコード処理して得るものであるのに対し,乙11発明では,エンコードせずに先頭部分(HT分)の楽音データをディジタル・データ(非圧縮データ)のまま記憶するかの相違であり,その先頭部分(HT分)のディジタル・データの取得方法の相違にすぎないことがわかる。 イ乙8号証(特開平6-259088号公報)の記載乙8号証には,次のような記載がある。 「【特許請求の範囲】【請求項10】音声データをディジタル圧縮形式で記憶した複数の圧縮音声データファイルを有し,表示画面上の音声アイコンウインドウにおけ る音声アイコンの操作によって選択された圧縮音声データファイルを処理対象とし,編集コマンドの入力によって編集処理を行う音声編集装置において,圧縮音声データの伸長処理に関するデータを生成し,管理する伸長音声データ管理部と,音声アイコンの入力を監視し,該音声アイコンに対する操作が行われるたびに,前記伸長音声データ管理部から必要なデータを受け取り,決められた編集画面操作及び編集操作を行うと共に,操作受け ータ管理部と,音声アイコンの入力を監視し,該音声アイコンに対する操作が行われるたびに,前記伸長音声データ管理部から必要なデータを受け取り,決められた編集画面操作及び編集操作を行うと共に,操作受け付けシグナルを生成する音声編集画面制御及び音声編集部と,前記操作受け付けシグナルを受け取り,将来編集対象となり伸長処理の必要となる音声データファイルを予測し,伸長優先順位管理テーブルに結果を記録する伸長優先順位判定部と,前記伸長優先順位管理テーブルの記録に基づいて,前記圧縮音声データの伸長処理を行い,得られた伸長音声データを前記伸長音声データ管理部に格納する伸長処理部とを備えたことを特徴とする音声デ-タ編集装置。」「【0003】その中で,ディジタル音声データを対話的に編集する音声データ編集装置は,映像表示装置上に波形等でグラフィカルに表示された音声データを,マウス等の入力手段によって,対話的に操作することで音声データの再生,複製,分割,結合等の編集操作を行うものである。オペレータは,編集可能な複数の音声データをアイコンとして表示した音声アイコンウインドから,編集対象となる音声アイコンを選択し,任意の編集コマンドを入力することでその編集処理を行うことができる。 【0004】音声データ編集装置では,一般に圧縮音声データを用いているので,編集処理を行うためには,圧縮音声データを伸長する必要がある。 【0005】【発明が解決しようとする課題】従来の音声データ編集装置では,オペレータが編集対象となる音声データを選択し,そのデータに対し て ″cut″,″波形表示″ 等の編集コマンドを入力して初めて,伸長処理が始まるものであった。このため,コマンド入力後,伸長処理のための時間待たされることが多く, 択し,そのデータに対し て ″cut″,″波形表示″ 等の編集コマンドを入力して初めて,伸長処理が始まるものであった。このため,コマンド入力後,伸長処理のための時間待たされることが多く,操作の応答性の点で問題があった。 【0006】また,あらかじめすべての音声データを伸長して格納することは,記録データ量が膨大になってしまう欠点を持ち,さらに編集装置起動時にすべてのデータを伸長する方法では,起動時間が長くなってしまう短所を持つ。 【0007】本発明の目的は,ディジタル圧縮音声データの編集における,上記のような欠点を最小限に押えた,音声データ編集方法及び装置を提供することにある。 【0008】【課題を解決するための手段】本発明の特徴は,音声データに対するオペレータの一連の操作から,将来編集対象になるであろう可能性の高い音声データを予測し,実際の編集コマンド入力以前に伸長処理を始めるものである。すなわち,オペレータの編集コマンド入力に対応する処理と並行して,これから編集されるであろうデータを予測し,編集操作に先行して予め伸長処理を行なう音声データ編集方法及び,予測される編集可能性の程度に応じて各音声データに伸長優先順位を設定する手段と,その優先順位に従って伸長処理を行う手段と,結果を記憶させる手段より構成され,本来の編集制御とは独立して先行的に伸長処理を行う音声データ編集装置に特徴がある。」「【0020】アイコンウインドウでのアイコンのピック操作(704)の時は,そのピック操作後,ワークエリアへの移動操作が行われる可能性が高いと判断し,優先順位2を設定(712)する。この時の様子を示したものが図10である。マウスカーソル260によってピックされたアイコンに対応するvoi ,ワークエリアへの移動操作が行われる可能性が高いと判断し,優先順位2を設定(712)する。この時の様子を示したものが図10である。マウスカーソル260によってピックされたアイコンに対応するvoice4には,優先順位2が付けられる。 【0021】アイコンウインドウからワークエリアへの音声アイコンの移動操作(705)の時は,ワークエリアに移動される音声データが直後に編集されるデータであることが確実なので,一番優先順位の高い1を設定(713)する。この様子を示したものが図11である。この時,ワークエリア240のvoice4には一番優先順位の高い1が付けられる。この後,play ボタン等による再生や,cut ボタン等によってvoice4データの編集処理が行われる。」「【0024】図12は,伸長処理部510が伸長処理を行う順番を決める過程を示すフローチャートである。一連の流れのなかで伸長処理部510がどのような作業を行っていようとも,優先順位管理テーブル1000の優先順位が更新されたことを示す優先順位更新シグナルを受信すると(511),割り込み動作として再スタートを行う(512)。スタートするとまず,その時刻までの伸長処理済みデータサイズを優先順位管理テーブル1000に記録する(513)。伸長処理が終了している場合には,ステップ513を省略する。次に,優先順位管理テーブル1000を参照して,完全に伸長処理の終っていない音声データの中で優先順位が一番高く,かつ更新時刻の最も新しい音声データをピックアップする(514,515,516)。そして,このデータの伸長処理を始める(517)。 伸長したデータは,伸長データ管理部430によって伸長データ格納領域150に格納すると共に,優先順位管理テーブル1000の記録を更新す 15,516)。そして,このデータの伸長処理を始める(517)。 伸長したデータは,伸長データ管理部430によって伸長データ格納領域150に格納すると共に,優先順位管理テーブル1000の記録を更新する(518)。そして再び始めのステップ514に戻り,同じ動作を繰り返す。なお,前に述べたように,伸長処理中に伸長優先順位管理テーブル1000の優先順位が変更された場合は(優先順位更新シグナル受信),伸長作業を中断し伸長された部分だけを記録し,新たな優先順位で作業を始める。 【0025】伸長装置部510から伸長データ格納要求がされると,伸 長音声データ管理プログラム130は必要なメモリ領域を伸長データ格納領域150に割り当てるが,もし容量が足りないときは伸長優先順位管理テーブル1000を参照し,優先順位の最も低いデータを消去し,スペースを確保する。なお,伸長データ格納領域150は,できるだけ大きな記憶容量をもたせる。多くの伸長データを蓄えられるようし,一度伸長したデータを記憶容量の不足のため削除し,その後必要となって再び伸長することをなるべく避けるためである。音声編集画面制御及び音声編集部600は,ある音声伸長データが必要になったとき,伸長データ管理プログラム130に問い合わせ,そのデータが格納されている伸長データ格納領域150のアドレスを得る。もし,まだ伸長されていなければ,伸長データが作成されるまで待つ。しかし,音声編集画面制御及び音声編集部600が実際に伸長データを必要とする以前に,その音声データに対しては高い伸長優先順位が付けられている可能性が高いので,すでに伸長されているかあるいは部分的に伸長済みである場合が多いと考えられ,新たに伸長しなければならない量の期待値は低くなる。よって,編集の際に,データ伸長のため が付けられている可能性が高いので,すでに伸長されているかあるいは部分的に伸長済みである場合が多いと考えられ,新たに伸長しなければならない量の期待値は低くなる。よって,編集の際に,データ伸長のために待たされる時間は,全体的に少なくなる。」【0026】図13は,本発明の実施例の効果を示す図である。…本発明の方法によれば(b)に示すように,音声アイコンウインドウに対するオペレータの操作の時点T1~T2,T3~T4で将来編集対象になるであろう音声データを予測し,時点T2,T4で各々先行的に伸張処理を始めることができる。対話操作において,対象データの選択や編集コマンドの入力には通常数秒ないし十数秒程度の時間を要する。本発明の方法において,T1~T2間の1次予測とT3~T4間の2次予測の結果最も優先順位を高く設定した音声データが,その後の編集作業に実際に使われたとすると,従来の方法に比べて最大2つの対話入力操作分,すなわち,十数秒ないし数十秒コマンド入力後の伸張処理を早く終了させることができ る。」「【0034】また,以上の実施例では,音声データごとに伸長優先順位を付け,優先順位の高いデータから,データ全体を伸長するものであったが,ひとつのデータを幾つかに分割し,それぞれに優先順位を付けることもできる。例えば,それぞれの音声データを10秒ごとに分割し,それぞれの先頭10秒間に高い優先順位を付ければ,音声データの先頭10秒間だけの頭だし再生のとき,伸長待ち時間が少なくなる可能性が高くなる。 また,音声データの波形表示を行う際も,一画面に表示できる時間はたかだか10秒程度なので,データ先頭の一画面を表示するだけの場合応答性が早くなる可能性が高くなる。よってこの実施例によれば,音声データのブラウジングを行う時などに有 際も,一画面に表示できる時間はたかだか10秒程度なので,データ先頭の一画面を表示するだけの場合応答性が早くなる可能性が高くなる。よってこの実施例によれば,音声データのブラウジングを行う時などに有効である。」「【0036】【発明の効果】以上述べたように,本発明によれば,編集中将来利用されるであろう圧縮データに,その利用可能性に応じ優先順位を付け,優先順位の高いものから先行的に伸長処理を行うことで,実際にその伸長データが必要になったときの伸長処理時間を短縮あるいは省略することができる。」図1及び図13は次のものである。 ウ乙8号証記載の技術(予めデコードしておく技術)事項(ア) 先頭の開始位置から所定の部分まで上記の「ひとつのデータを幾つかに分割し,それぞれに優先順位を付けることもできる。例えば,それぞれの音声データを10秒ごとに分割し,それぞれの先頭10秒間に高い優先順位を付ければ,音声データの先頭10秒間だけの頭だし再生のとき,伸長待ち時間が少なくなる可能性が高くなる。」との記載によれば,それぞれの音声データを10秒ごとに分割し,それぞれの先頭10秒間に高い優先順位を付けることができ,そのような場合において,当該各先頭データは先頭から10秒間は,「先頭の開始位置から所定の部分まで」に相当する。 (イ) 音声データの再生処理コマンドの入力に先立って,当該音声データの先頭部分を予めデコード処理すること上記の各10秒間の先頭音声データに優先順位を付けた場合には,図13の時刻T1~T2において対象データが選択されることにより優先順位が一番高いものと認識されるから デコード処理すること上記の各10秒間の先頭音声データに優先順位を付けた場合には,図13の時刻T1~T2において対象データが選択されることにより優先順位が一番高いものと認識されるから,当該選択された対象データであ る音声データについて,時刻T2において当該データの伸長処理を始め(517),伸長したデータは,伸長データ管理部430によって伸長データ格納領域150に格納される。この伸張処理は,未だ,編集処理が開始しないときに,編集処理対象である確率が高いものとして予測して実行されるものである。そして,実際に当該予測どおりに当該音声データが編集対象となり,編集処理として音声データの再生処理が選択されたときは,先頭データとして10秒間の頭出し再生が実行される。つまり,この場合には,音声データの再生処理コマンドの入力に先立って,当該音声データの先頭部分(先頭の10秒間)を予めデコード処理することに相当する。 (ウ) 先頭位置から所定部分までの圧縮データを予めデコードしておく技術が本件特許発明1出願日前に周知・慣用技術であったことデコードにある程度の時間がかかる技術的課題の解決手段として先頭位置から所定部分までの圧縮データを予めデコードしておく技術が本件特許発明1出願日前に周知・慣用技術であった。 (エ) 相違点と乙8号証,周知・慣用技術相違点にかかる構成は,乙8号証にその全部が記載されているとともに,その相違点は,本件特許発明1の出願日前に当業者に周知・慣用技術であったことは明らかである。 (5) 本件特許発明1は全体が圧縮されたデータからなること,乙11発明が非圧縮データと圧縮データを混在させたものであること乙11発明が「楽音信号の先頭から所定期間までの部 である。 (5) 本件特許発明1は全体が圧縮されたデータからなること,乙11発明が非圧縮データと圧縮データを混在させたものであること乙11発明が「楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶」されているものであることは,本件特許発明1と同様,発音指示時におけるデコード処理による楽音発生の時間遅れを解消するための解決手段を示している。つまり,もともと,本件特許発明1も乙11発明も,圧縮データのデコードにある程度の時間がかかるため,所望のタイミン グで再生できないという問題が生じるということが技術的課題であるから,いずれにしても音信号発生の対象がすべて圧縮データであるための技術的課題である。したがって,進歩性の判断の主引例として乙11号証発明を出発点とすることは,原告が主張するように,従来技術に戻るなどと評価する必要はない。 上記相違点は,技術的課題を有する従来技術の前提状況に関するものであり,本件特許発明1は,予めデコードして先頭の所定部分のディジタル・データを得る構成により,また,乙11発明は先頭部分をエンコードせずに楽音データをそのままディジタル・データ(非圧縮データ)としてこれを得る構成により,発音指示に応じて即時にDACから発音できるようにしているものであって,実質的な相違点ではないといわなければならない。 (6) 乙11発明に乙8号証記載の発明(以下「乙8発明」という。)を適用するということの意味乙11発明及び乙8発明は,音(楽音)信号を生成演算する演算手段を具備する信号処理装置であり,圧縮データのデコードに一定の時間がかかるため,所望のタイミングで再生できないという問題が生じるということを技術的課題とし,その解決手段として,発音指示の発生時には音信 具備する信号処理装置であり,圧縮データのデコードに一定の時間がかかるため,所望のタイミングで再生できないという問題が生じるということを技術的課題とし,その解決手段として,発音指示の発生時には音信号の発生を非圧縮データ(ディジタル・データ。元のデータ)を先頭データとしてこれに基づいて行うものである点において,本件特許発明1と同一である。乙11発明は,この技術的課題の解決手段である「発音指示の発生時には音信号の発生を非圧縮データ(ディジタル・データ。元のデータ)を先頭データとしてこれに基づいて行う」ことを実現するために,先頭データをエンコードせずに非圧縮データ(ディジタル・データ)としてそのまま記憶手段に記憶する構成としている。乙8号証は,この技術的課題の解決手段である「発音指示の発生時には音信号の発生を非圧縮データ(ディジタル・データ。元のデータ)を先頭データとしてこれに基づいて行う」ことを実現するために,本 件特許発明1と同様に圧縮データを予めデコード処理して先頭データとして記憶手段に記憶する構成としている。 そして,上記相違点に関して,乙11発明に乙8発明を適用するとは,乙11発明の技術的課題の解決手段である「発音指示の発生時には音信号の発生を非圧縮データ(ディジタル・データ。元のデータ)を先頭データとしてこれに基づいて行う」ことを実現するための構成である,乙11発明の先頭データを非圧縮データ(ディジタル・データ)として記憶手段に記憶する構成について,当該先頭データの非圧縮データを乙8発明に基づき圧縮データを予めデコード処理して先頭データとして記憶手段に記憶することとで得る構成とすることをいうのである。決して,基本構成(前提構成)を変更するとともに,新たな解決手段を付加するなどということではない。 (7) ド処理して先頭データとして記憶手段に記憶することとで得る構成とすることをいうのである。決して,基本構成(前提構成)を変更するとともに,新たな解決手段を付加するなどということではない。 (7) 乙11発明に乙8発明を適用する動機圧縮データのデコードに一定の時間がかかるため,所望のタイミングで再生できないという問題が生じるということを技術的課題とし,その解決手段として,発音指示の発生時には音信号の発生を非圧縮データ(ディジタル・データ。元のデータ)を先頭データとしてこれに基づいて行うために,予めデコード処理して先頭データとして記憶手段に記憶する構成とするという技術思想を提供した本件特許発明1との相違点について,同じ解決のためのアプローチをする乙11発明と乙8発明の親和性は極めて高いというべきであり,両発明を組み合わせる動機は十分に肯定されるべきである。ましてや,そもそも,圧縮データを用いることを大前提とする以上,乙11発明の先頭データのディジタル・データの代わりに圧縮データを用い,発音指示の発生時点までにこれを予めデコードしてディジタル・データとすることは当業者の技術常識上自然であり,乙11発明及び乙8発明に接した当業者は乙11発明に乙8発明を適用して本件特許発明1に至るはずである。 本件特許発明1を初めとして乙11発明も乙8発明も,圧縮データのデコ ードに一定の時間がかかるために,所望のタイミングで圧縮データに基づく音信号の発生ができないことを共通の技術的課題にしているのであって,一方で,いずれも非圧縮データではなく圧縮データを用いることが技術的に求められている技術分野であり,乙11発明の課題解決手段が,その技術的に求められたもの(できれば圧縮データを用いる方が良いというもの)である以上,課題が一部残 はなく圧縮データを用いることが技術的に求められている技術分野であり,乙11発明の課題解決手段が,その技術的に求められたもの(できれば圧縮データを用いる方が良いというもの)である以上,課題が一部残存している,あるいは不徹底なものと当業者が一般に理解するべきものである。 (原告の主張)(1) 乙11号証について乙11発明と本件特許発明1とでは,圧縮データのデコード時間遅れによる発音開始時間遅れの問題を解決するという課題においてのみ共通しているが,以下述べるように,課題解決のための技術的構成も技術思想も大きく相違している。 (2) 本件特許発明1と乙11発明の対比ア一致点「データを所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置(電子楽器の音源装置)」が対象である点,及び「発音指示を発生する発音指示手段」を具備する点で一致している。 イ相違点1本件特許発明1が対象データを全て「所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段」に記録しているのに対して,乙11発明では,「楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」点。 すなわち,本件特許発明1において,「外部記憶手段」に記録するデータは,「楽音信号の先頭から所定期間までの部分」はもちろん,それ以外も含めてデータ全体が「所定の圧縮処理によって圧縮したデータ」である点。 なお,同様に,「先頭データに基づく音信号の発生 タは,「楽音信号の先頭から所定期間までの部分」はもちろん,それ以外も含めてデータ全体が「所定の圧縮処理によって圧縮したデータ」である点。 なお,同様に,「先頭データに基づく音信号の発生と平行して前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する」点の「先頭データ」も異なる。 ウ相違点2本件特許発明1が「該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,」という構成を具備しているのに対して,乙11発明はそのような構成を具備していない点。 エ相違点3本件特許発明1が「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始」するのに対して,乙11発明では,「発音指示があった場合に前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータを読み出す」点。 すなわち,本件特許発明1では,発音指示に先立って予めデコード処理することで所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて,発音指示の発生に応じて,音信号の発生を開始するのに対して,乙11発明では,元々記憶手段に記憶されているディジタル・データを,発音指示があった場合に,そのまま読み出す点が相違している。 オ課題及び効果について 「再生時の圧縮データのデコードの際に時間遅れを生じるという問題がある」という課題を解決することを意図し に,そのまま読み出す点が相違している。 オ課題及び効果について 「再生時の圧縮データのデコードの際に時間遅れを生じるという問題がある」という課題を解決することを意図している点は,本件特許発明1と乙11発明は一致している。したがって,「圧縮データのデコード時における時間遅れが生ぜず」という効果を奏する点では,本件特許発明1と乙11発明は一致している。 しかし,本件特許発明1では,上記相違点に係る構成を具備していることにより,「外部記憶手段」に記録するデータは圧縮データのみであってよく,乙11発明のような「楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」という特殊なデータ記録構成を採用する必要がない,という乙11発明にはない優れた効果を奏する。 これに伴い,本件特許発明1では,高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができるのに対して,乙11発明では,記録するデータ中にPCM等々のデジタルデータが不可避的に含まれてしまうので,高圧縮率の圧縮法を本件特許発明1ほどに効果的に用いることができない。 また,これに伴い,本件特許発明1では,全ての範囲のデータを圧縮データで記録している通常の記録形態の圧縮データであれば,どのようなコンテンツであっても,格別のコンテンツデータ改変の必要なしに,本件特許発明1を適用することができるので,各種コンテンツに対する適応性が高いという利点を持つのに対して,乙11発明では,全ての範囲のデータを圧縮データで記録している通常の記録形態の圧縮データからなるコンテンツをそのまま適用することができず,各コンテンツを,「楽音信号の先頭から所定 を持つのに対して,乙11発明では,全ての範囲のデータを圧縮データで記録している通常の記録形態の圧縮データからなるコンテンツをそのまま適用することができず,各コンテンツを,「楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」という特殊なデータ記録構成に一々変換しな ければならない。 このように,本件特許発明1は,乙11発明に対して,相違点1~3を有するのみならず,これらの相違点の故に,大きな効果上の相違を有する。 カ一致点,相違点の評価について前述のとおり,本件特許発明1と乙11発明とでは,圧縮データのデコード時間遅れによる発音開始時間遅れの問題を解決するという課題においては共通しているが,その課題解決のための技術思想が180度異なるといえるほど,大きく相違している。 すなわち,乙11発明の特徴は,その課題解決のためには,「楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」という記憶構成を採用することが必須であるところ,乙11発明に基づいて当業者が本件特許発明1を容易に推考し得るという考え方は,乙11発明の課題解決のための最も重要な特徴部分を放棄させ,先頭部分のデータを後続の重い圧縮形式に戻させたうえで,再度予め発音指示に先立ってデコード演算させるための余分の構成を採用させる,という大きな変形を強いるものである。このような無理な変形は,到底,乙11発明に基づいて容易に発想し得るものではない。 乙11発明においては,課題解決のための手段と 分の構成を採用させる,という大きな変形を強いるものである。このような無理な変形は,到底,乙11発明に基づいて容易に発想し得るものではない。 乙11発明においては,課題解決のための手段として,「楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」という,異なるタイプのデータに切り分けて記憶する構成を採用することを必須のものとしているのであるから,かかる必須の構成をあえて改変して,それ以前の「全てのディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」という構成に戻すことになる本件特許発明1の特徴点に到達するためにしたはずであるという示唆 等が,乙11には全くない。 したがって,仮に,相違点に係る技術がそれ単独では被告主張のように周知・公知だとしても,乙11発明からはそれらの周知・公知技術と組み合わせる示唆・動機付けが認められないのみか,発想・技術思想・目のつけどころが全く逆なのであるから,他の引用例を検討するまでもなく,被告の無効主張には理由がないというべきである。 (3) 乙8号証についてア乙8発明は,本件特許発明1が「音信号を生成する信号処理装置」であるのに対して,「音声データ編集方法及び編集装置」の発明であって,乙8号証【要約】欄にも記載されているように「編集コマンド入力時の応答を早め,操作性を向上させる。」ことを目的とするもので,段落【0001】産業上の利用分野に記載されているように「複製,分割,結合」等の編集作業を迅速に行えるようにする発明であって,「デコードにある程度の時間がかかる技術的課題の解決手段として予めデコードして記憶手段に格納しておきこれに 記載されているように「複製,分割,結合」等の編集作業を迅速に行えるようにする発明であって,「デコードにある程度の時間がかかる技術的課題の解決手段として予めデコードして記憶手段に格納しておきこれに基づき発音する技術」ではない。 すなわち,音声データを取り扱う点では共通でも,本件特許発明1が音を出すこと自体を目的とする発明であるのに対し,乙8発明は「複製,分割,結合」等の編集作業を行うことを目的とする発明であり,発明全体が異なる。 このことは,以下説明するように,特に乙8発明においては,編集作業のための各種操作が加わる点において,本件特許発明1との相違点として浮かび上がってくる。 イ乙8号証の主な記載は次のとおりである。 「【0005】(発明が解決しようとする課題)従来の音声データ編集装置では,オペレータが編集対象となる音声データを選択し,そのデータに対して ″cut″,″波形表示″ 等の編集コマンドを入力して初め て,伸長処理が始まるものであった。このため,コマンド入力後,伸長処理のための時間待たされることが多く,操作の応答性の点で問題があった。」「【0008】(課題を解決するための手段)本発明の特徴は,音声データに対するオペレータの一連の操作から,将来編集対象になるであろう可能性の高い音声データを予測し,実際の編集コマンド入力以前に伸長処理を始めるものである。すなわち,オペレータの編集コマンド入力に対応する処理と並行して,これから編集されるであろうデータを予測し,編集操作に先行して予め伸長処理を行なう音声データ編集方法及び,予測される編集可能性の程度に応じて各音声データに伸長優先順位を設定する手段と,その優先順位に従って伸長処理を行う手段と,結果を記憶させる手段より 行して予め伸長処理を行なう音声データ編集方法及び,予測される編集可能性の程度に応じて各音声データに伸長優先順位を設定する手段と,その優先順位に従って伸長処理を行う手段と,結果を記憶させる手段より構成され,本来の編集制御とは独立して先行的に伸長処理を行う音声データ編集装置に特徴がある。」段落【0010】~【0012】には,音声圧縮データファイル400に複数の圧縮音声データvoice1~voice5を記録しておく一方で,各圧縮音声データvoice1~voice5の伸長済データを伸長音声データ格納領域150に順次格納することが示されている。 段落【0016】~【0025】には,図6に示すような「伸長優先順位管理テーブル1000」によって,各圧縮音声データファイル毎に,その優先順位と伸長済データサイズをリアルタイムで管理し,優先順位と伸長済データサイズをリアルタイムに逐次更新することが示されている。 すなわち,ユーザの編集操作状況に応じて各圧縮音声データファイルの優先順位が随時変更され,現在の最優先順位の圧縮音声データが伸長され,その伸長済データが伸長音声データ格納領域150に格納され,伸長優先順位管理テーブル1000には,各圧縮音声データvoice1~voice5のファイル毎に,現時点までの伸長済データサイズがどれだけにな ったかが記録される。そして,「音声編集画面制御及び音声編集部600は,ある音声伸長データが必要になったとき,伸長データ管理プログラム130に問い合わせ,そのデータが格納されている伸長データ格納領域150のアドレスを得る。もし,まだ伸長されていなければ,伸長データが作成されるまで待つ。」(段落【0025】)また,段落【0034】には,「また,以上の実施例では,音声デ ータ格納領域150のアドレスを得る。もし,まだ伸長されていなければ,伸長データが作成されるまで待つ。」(段落【0025】)また,段落【0034】には,「また,以上の実施例では,音声データごとに伸長優先順位を付け,優先順位の高いデータから,データ全体を伸長するものであったが,ひとつのデータを幾つかに分割し,それぞれに優先順位を付けることもできる。例えば,それぞれの音声データを10秒ごとに分割し,それぞれの先頭10秒間に高い優先順位を付ければ,音声データの先頭10秒間だけの頭だし再生のとき,伸長待ち時間が少なくなる可能性が高くなる。また,音声データの波形表示を行う際も,一画面に表示できる時間はたかだか10秒程度なので,データ先頭の一画面を表示するだけの場合応答性が早くなる可能性が高くなる。よってこの実施例によれば,音声データのブラウジングを行う時などに有効である。」と記載されている。 この段落【0034】に示された実施形態においては,先頭10秒間の圧縮音声データを伸長し,この先頭10秒間分の伸長済データを再生発音する又は画面表示する形態からなっている。このような実施形態においては,再生又は画面表示する目的のデータ自体が先頭10秒間分であり,それに引き続いて残りの圧縮音声データが再生又は表示されるものではない。 ウすなわち,段落【0034】に記載された実施形態において,先頭10秒間分のデータは,記録されているデータの一部ではあり,「頭だし」という言葉が使われているが,頭に引き続いて胴体が表示されるのではなく,再生又は表示する目的のデータの全部を構成しているものである。 乙8発明において,本来のデータの全部を再生又は表示しようとする場 合は,主たる実施形態に示されているように,全部の伸長 生又は表示する目的のデータの全部を構成しているものである。 乙8発明において,本来のデータの全部を再生又は表示しようとする場 合は,主たる実施形態に示されているように,全部の伸長データが作成されるまで待たなければならない(段落【0025】)。 すなわち,乙8発明においては,実際に使用されるかかどうか未定の再生又は表示する目的のデータの全部を予め伸長するという技術思想しか示されておらず,したがって,再生又は表示することが目的のデータであるが,その先頭の一部だけを発音指示に先立って予め伸長しておき,発音指示に応じて先頭を再生している間に残りのデコード処理を開始して引き続きすべての部分の再生を行うという技術思想は有していない。 そして,乙8発明は,段落【0026】に「対象データの選択や編集コマンドの入力には通常数秒ないし十数秒程度の時間を要する。本発明の方法において・・優先順位を高く設定した音声データが,その後の編集作業に実際に使われたとすると従来の方法に比べ最大2つの対話入力操作分・・伸長処理を速く終了させることができる」と記載されているように, 本件特許発明1乙8発明指定された圧縮データ(未定ではない)の一部を何を編集=再生対象にするのか未定(選択中)の間を利用し,発音指示に先だって,指定されたデータの一部をデコードしておく 編集に供されるかも知れない,されないかも知れないデータを伸長しておいて選択による当たりはずれの問題はなく,そのデータの一部のデコードされた部分は使用されるが,それ以降分は発音指示後デコードされて引き続き発音に供されるもしそれが編集対象に選ばれたならば伸長されたデータで たりはずれの問題はなく,そのデータの一部のデコードされた部分は使用されるが,それ以降分は発音指示後デコードされて引き続き発音に供されるもしそれが編集対象に選ばれたならば伸長されたデータでかつ目的とする全部がそのまま伸長なしに使用可能になる 選択的中か否かに関係なく,発音指示後にデコードされた部分はすぐ発音に供され,残部は引き続いてデコードされる当たれば編集=再生対象が決定されてから伸長するよりも早くできる。 選択が外れるということはあり得ない選択が外れれば,通常通り全体が伸長されるまで待つ という違いがあり,早くできる場合がある点のみ共通していても,一部か全体かということに関連して,本件特許発明1の「予め」と「発音指示後」に対する乙8発明の「選択中」と「選択後」の関係の意味が異なり,乙8発明は選択が的中した場合にのみ早くなり,そうでなければ早くならないのに対し,本件特許発明1は必ず早くできる等の点で,両者はシステム全体が大きく異なる。 特に,乙8発明の時間短縮は,本件特許発明1の圧縮データのデコード時間遅れ(例えば数10ms)の改善とは性格を異にしている。 したがって,本件特許発明1と乙8発明を対比すると,発音の指示に先だってデコード処理を行うこと,すなわち「データを所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置」及び何らかの「発音指示手段」を具備する点では一致しているが,本件特許発明1における「該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭 何らかの「発音指示手段」を具備する点では一致しているが,本件特許発明1における「該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,」(相違点2)という構成に関しては相違している。 以上は,乙8発明の主たる実施態様である段落【0026】以下との対比であるが,被告の引用する,もう1つの実施態様である段落【0034】についてもこれと同様の違いがある。 本件特許発明1における「先頭データ」とは発音指示に従って発音すべきデータの一部としての先頭データであり,この後に引き続いてデコードすべきデータがデコードされるのに対して,乙8号証の段落【0034】に記載された実施形態における「先頭10秒間分のデータ」は使用未定のデータであるのみならず「音声データのブラウジング」として発音すべき「10秒間分のデータ」の全てであり,発音すべきデータの一部としての 先頭データではないからである。 エまた,本件特許発明1における「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始するとともに前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を開始」する(相違点3)という構成に関しても,乙8発明は相違している。 その理由は,乙8号証の段落【0034】に記載された実施形態においてはデコードした「先頭10秒間分のデータ」に基づいて音信号の発生を開始したときは,それで処理が終わり,この音信号発生に平行してそれ以降の圧縮データのデコード処理を開始するようにはなっていないからである。 オしたがって,乙8発明は相違点2,3に係る構成を開示していない。 (4) 乙11発明と乙8発明 平行してそれ以降の圧縮データのデコード処理を開始するようにはなっていないからである。 オしたがって,乙8発明は相違点2,3に係る構成を開示していない。 (4) 乙11発明と乙8発明の組み合わせについてア乙11発明が「楽音発生が,発音指示後から,デコード処理に要する時間Dだけ遅れるという問題があった」という課題を解決することを意図しているのに対して,乙8発明は「オペレータが編集対象となる音声データを選択し,そのデータに対して ″cut″,″波形表示″ 等の編集コマンドを入力して初めて,伸長処理が始まるものであった。このため,コマンド入力後,伸長処理のための時間待たされることが多く,操作の応答性の点で問題があった」という課題を解決することを意図しており,両者の解決しようとする技術的課題は一致していない。 すなわち,乙11発明における「デコード処理に要する時間Dだけ遅れるという問題」は,乙11号証の図11に示されるように発音指示から発音開始までの発音開始時間遅れの問題である。他方,乙8発明は,音声データ編集に係る発明であり,伸長済みのデータに対して編集処理が行われることが明白である(乙8段落【0025】「音声編集画面制御及び音声編集部600は,ある音声伸長データが必要になったとき,伸長データ管 理プログラム130に問い合わせ,そのデータが格納されている伸長データ格納領域150のアドレスを得る。もし,まだ伸長されていなければ,伸長データが作成されるまで待つ。」との記載から明らかである。)。 乙8発明は,乙11発明のように「発音指示から発音開始までの発音開始時間遅れD」の問題を解決しようとするものではない。上記(3)ウで本件発明1との違いを説明したように,本件発明1は「発音指示から」から 8発明は,乙11発明のように「発音指示から発音開始までの発音開始時間遅れD」の問題を解決しようとするものではない。上記(3)ウで本件発明1との違いを説明したように,本件発明1は「発音指示から」からの時間遅れを解決しようとするもので,乙11発明もその点だけでは同様であるが,乙8発明は「選択」を待たずに,かつ使用されるか否か未定の段階で予想されるデータを多数伸長させ準備しておくもので,「発音指示から」つまり乙8発明でいう選択して編集コマンド入力後の動作には何らの改良はなく,的中しなければ,「伸長データが作成されるまで待つ」のである。 したがって,乙11発明と乙8発明には課題の一致がみられず,当業者が乙11発明と乙8発明を結びつけることが容易であるということはできない。 イこの点,被告は,これら技術的課題は,本件特許発明1の技術的課題である圧縮データのデコード時における時間遅れが生じることと同一のものであると述べるが,誤りである。 本件においても,単に「予めデコード処理する」という大雑把な解決手段ないし解決結果の一部の共通性から部分的かつ事後分析的に遡って,「圧縮データのデコード時における時間遅れが生じること」が共通の課題であるなどという思考が否定されるべきことはいうまでもない。 むしろ,特殊なフォーマットを用いる乙11発明の特徴は,その課題解決のためには,「楽音信号の先頭から所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」という記憶形 式を採用することが必須であるところ,乙8発明では,すべてのデータを圧縮データとする記憶形式を採用しているものであり,このため乙11発明では事前デコー ータの状態にて記憶する」という記憶形 式を採用することが必須であるところ,乙8発明では,すべてのデータを圧縮データとする記憶形式を採用しているものであり,このため乙11発明では事前デコードという手段は不要であるのに対し,乙8発明では(本件特許発明1とは異なるが)事前デコードを採用するというように,解決手段が全く異なっているものであるから,このことは両者の組み合わせを容易になすことの阻害要因となる。 また,仮に,乙11発明と乙8発明を無理にでもあれ結びつけることができたとしても,相違点2,3は乙8発明には示されておらず,相違点1が示されているだけであるから,本件特許発明1を完成させることができない。例えば,乙11発明に乙8発明を組み合わせたとすると,乙11発明における記憶手段から,発音しようする圧縮処理を施したデータを一旦全部読み出して伸張する構成となり,本件特許発明1とは大きく異なるものとなる。 1-7 乙8号証を主引例とする進歩性の欠如(争点1-7)(被告の主張)(1) 乙8発明乙8号証には,音声圧縮データフィル400に記憶された収録済みのディジタル圧縮音声データを伸張し,その再生などを行う音声データ編集装置が記載されている。 この編集(再生)は,まず編集(再生)対象の音声データを選択するため,アイコンウィンドウに表示された音声データに対応する音声アイコンをマウスポインタ等で選択し,これをワークエリア240に移動させて編集(再生)対象として確定する。その後,編集の種類を選択するために編集コマンドボタン群230中に設けられた再生コマンドボタンを押下することにより,編集(再生)コマンドを入力する(段落【0020】【0021】)。 この編集(再生)コマンドの入力に先立って 編集コマンドボタン群230中に設けられた再生コマンドボタンを押下することにより,編集(再生)コマンドを入力する(段落【0020】【0021】)。 この編集(再生)コマンドの入力に先立って,編集(再生)の音声データ 選択・確定による対象音声データの先頭から10秒分のデータについて最も高い優先順位が与えられ,他の音声データの先頭から10秒分のデータとともに伸張部510により伸張が行われ,先頭データとして伸張音声データ格納領域150に格納されている(段落【0034】【0024】)。 編集対象の音声データに対する編集(再生)コマンドの入力により,実際に伸張データが必要となると,伸張データ管理プログラム130に問い合わせ,そのデータが格納されている伸張データ格納領域150のアドレスを得る。これにより伸張データを読み出して編集(再生)が開始され音声出力装置270から出音される。また,前記編集対象の音声データの先頭の10秒分の伸張データに続く残部は伸張部510により伸張が行われ,伸張データが得られ編集(再生)に供される。このことは,乙8号証に次の記載があることから明らかである。 「音声編集画面制御及び音声編集部600は,ある音声伸長データが必要になったとき,伸長データ管理プログラム130に問い合わせ,そのデータが格納されている伸長データ格納領域150のアドレスを得る。もし,まだ伸長されていなければ,伸長データが作成されるまで待つ。しかし,音声編集画面制御及び音声編集部600が実際に伸長データを必要とする以前に,その音声データに対しては高い伸長優先順位が付けられている可能性が高いので,すでに伸長されているかあるいは部分的に伸長済みである場合が多いと考えられ,新たに伸長しなければならない量の期待値は低くなる。よって, ータに対しては高い伸長優先順位が付けられている可能性が高いので,すでに伸長されているかあるいは部分的に伸長済みである場合が多いと考えられ,新たに伸長しなければならない量の期待値は低くなる。よって,編集の際に,データ伸長のために待たされる時間は,全体的に少なくなる。」(5頁左欄36行~49行)すなわち,上記の各記載によれば,先頭の10秒分の伸張データが予め伸張データ格納領域150に格納されていること,編集(再生)コマンドの入力により編集(再生)が行われること,先頭の10秒分に続く部分の圧縮データが伸張部510によって伸張され伸張データ格納領域150に格納され, これら伸張データに基づく編集(再生)が行われることが明らかであるからである。 したがって,乙8号証には,以下の発明が記載されている。 「音声圧縮データフィル400に記憶された収録済みのディジタル圧縮音声データを伸張し,その再生を行う音声データ編集装置において,コマンドボタン群230中に設けられた再生を実行させるコマンドボタンと,該再生コマンドボタン押下に先立って,再生対象の音声アイコンをマウスポインタ等で選択しワークエリア240に移動させて再生対象音声データを確定し,当該選択され移動された音声アイコンに対応する音声データの先頭から10秒分は伸張部510によって予め伸張して伸張データ格納領域150に格納され,前記再生コマンドボタンの押下により前記確定した音声データについて伸張部510において前記先頭の10秒分が読み出されて再生され,先頭の10秒分に続く残部の音声データを伸張して当該声データを再生する音声データ編集装置。」(2) 本件特許発明1との対比乙8発明の①音声データファイル400,②記憶,③ディジタ ,先頭の10秒分に続く残部の音声データを伸張して当該声データを再生する音声データ編集装置。」(2) 本件特許発明1との対比乙8発明の①音声データファイル400,②記憶,③ディジタル圧縮音声データ,④伸張,⑤再生,⑥音声データ編集装置,⑦再生を実行させるコマンドボタン,⑧再生コマンドボタンの押下,⑨音声データの先頭から10秒分,⑩伸張部510,⑪伸張データ,⑫伸張データ格納領域150は,①本件特許発明1の外部記憶手段,②記録,③データを所定の圧縮処理によって圧縮した圧縮データ,④所定のデコード処理,⑤音信号を生成,⑥信号処理装置,⑦発音指示を発生する発音指示手段,⑧発音指示,⑨所定の開始位置から所定の部分まで,⑩演算手段,⑪先頭データ,⑫所定の記憶手段にそれぞれ相当する。 したがって,本件特許発明1と乙8発明とは,次の点で一致するとともに 次の点で相違する。 【一致点】外部記憶手段に記録したデータを所定の圧縮処理によって圧縮した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,発音指示を発生する発音指示手段と,該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始し,前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づく音信号の発生及び前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生 い,前記先頭データに基づく音信号の発生及び前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理を行い,前記先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて前記所定の部分以降の圧縮データのデコード処理の結果生成された元のデータに基づいて音信号を生成する演算手段とを具備することを特徴とする信号処理装置。 【相違点1】圧縮データについて,本件特許発明1ではデータを所定の圧縮処理によって圧縮して外部記憶手段に記録するものであるのに対し,乙8発明では圧縮して記録するものではない点【相違点2】先頭データに基づいた音信号の発生と所定部分以降の圧縮データのデコード処理について,本件特許発明1では発音指示の発生に応じて両者が同時に開始し平行して行われるものであるのに対し,乙8発明ではこれが明確ではない点(3) 相違点1の検討信号処理装置において,エンコード機能によりデータを圧縮する機能をデ コード機能と共に合わせ持つことは,本件特許発明1の出願前には当業者には公知(乙11)であったものであり,実質的な相違点ではない。 (4) 相違点2の検討乙11号証には,圧縮データのデコードに要する時間分の音信号の発生が遅れるという技術的課題の解決手段として,楽音信号の先頭から,楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶すること,発音指示に応答して,記憶手段に記憶されたディジタル・データ及び圧縮処理を施したデータの読み出しを開始すること,読み出されたディジタル・データに基づいて発音し,読み出された圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに戻し,ディジタル・データの読み出し終了に引き の読み出しを開始すること,読み出されたディジタル・データに基づいて発音し,読み出された圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに戻し,ディジタル・データの読み出し終了に引き続いて展開されたディジタル・データに基づいて発音することが記載されている。 乙8発明において,音声データの最初の10秒分を伸張データとして所定の記憶手段に記憶し,他の残部を圧縮データとして未だ伸張されていない状態で外部記憶手段に記憶していることは,乙11発明における楽音信号の先頭から楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶していることに等しい。圧縮データのデコードに要する時間分の音信号の発生が遅れるという技術的課題の解決手段として,先行する所定部分のデータを発音開始の指示があるときまでに元のデータの状態(非圧縮データ)にするという技術思想は同一である。 ところで,乙8発明は,発音指示を受けても圧縮楽音データのデコードに要する時間分の音信号の発音が遅れる点を技術的課題とし,乙11発明も発音指示後にデコードに要する時間分の遅れを生じることが技術的課題であり, 両者ともその技術的課題は同一である。そして,乙8発明では予め先頭の所定部分の圧縮データをデコードして先頭データとして所定の記憶手段に記憶しており,先頭データに続く残部のデータをデコードして,再生するように構成することによってデコードに要する時間分発音が遅れる課題を解決しているものである。 この乙8発明の場合,最初の10秒分についてすでにディジタル・データ(非圧縮データ)状態と するように構成することによってデコードに要する時間分発音が遅れる課題を解決しているものである。 この乙8発明の場合,最初の10秒分についてすでにディジタル・データ(非圧縮データ)状態となっているから,当該10秒分について直ちに再生を開始することが可能である。乙8発明の編集装置における編集の種類の1つである再生は,編集(再生)対象の全部の再生を目的とするから(頭出し再生ではなく),残部の圧縮データが伸張されてその10秒分の再生に引き続いて再生される必要がある。乙8発明では,この残部の伸張をして引き続いて残部の再生が可能になるまで待ってから先頭の10秒間の再生を開始するのか,先頭10秒分の再生の際に平行して残部の圧縮データの伸張を行い,先頭10秒分の再生後引き続いて残部の再生を行うものであるのか明確ではない。そこで,同様の技術的課題を解決している乙11発明を適用し,先頭10秒分の再生の際に平行して残部の圧縮データの伸張を行い,先頭10秒分の再生後引き続いて残部の再生を行うように構成することは当業者には容易であるといわざるを得ない。 したがって,相違点2に関し,乙8発明における先頭データに基づく発音と先頭データに続く残部のデコード処理を,乙11発明を適用して同時に開始するように構成し,先頭データの発音とその先頭データに続く残部のデコード処理を平行して行うようにして,本件特許発明1に至ることは当業者に容易であるというべきである。 (5) 以上より,本件特許発明1は,乙8発明に乙11発明を適用することにより容易に想到することができる。 (原告の主張) (1) 乙8発明は「音声データ編集方法及び編集装置」の発明であって,本件の楽音についての信号処理装置とは大幅に趣が異なる。 乙8発明において ができる。 (原告の主張) (1) 乙8発明は「音声データ編集方法及び編集装置」の発明であって,本件の楽音についての信号処理装置とは大幅に趣が異なる。 乙8発明においては,多数の編集対象になるかも知れない曲(ボイスと呼ばれている)のどれかを選択して,編集を開始することになる。このとき,どれかを選択してから,その圧縮データを解凍して,画面に音符等の形で表示したり,テスト的に発音させるのに,いちいち何十秒も待たなければならないのでは待ち時間が長すぎるであろう。 そこで,各ファイルについて「先頭10秒分」だけは,全部事前解凍しておけば,この問題は解決できる。Aファイルであれ,Bファイルであれ,全部先頭部分は事前解凍されているのであるから,Aファイルを開いて,目的とするファイルではないと分かれば,次にBファイルを開くことにより,目的とするファイル(乙8発明の場合ボイス)にすぐたどりつくことができる。 乙8発明における「先頭10秒分」というのは実施例レベルでの説明にすぎないが,「一画面に表示できる時間はたかだか10秒程度なので,データ先頭の一画面を表示するだけの場合応答性が早くなる」(乙8段落【0034】)ことを意図してそうしているものであり,逆にいえば,全てのデータを全部事前解凍してメモリに入れておくのは無理でも,「先頭10秒分」だけであれば,ほとんどのファイル(乙8ではボイス)を事前解凍してメモリに入れておくことが可能だということでそうしたのである。 すなわち,この「先頭10秒分」というのは,「先頭10秒分」が第一順位で「次の10秒分」がその次の順位として事前に解凍されるのではなく,例えば100ボイスある場合は,それぞれの「先頭10秒分」が,第一順位から第100順位で事前解凍されること 先頭10秒分」が第一順位で「次の10秒分」がその次の順位として事前に解凍されるのではなく,例えば100ボイスある場合は,それぞれの「先頭10秒分」が,第一順位から第100順位で事前解凍されることをいっているのである。 言い換えれば,この場合における「先頭10秒分」は,解凍目的の順位から見れば,目的データの先頭部分ではなく,解凍目的のデータの全部を指しているのである。 (2) 乙8発明は,限られた能力下でいかに工夫するかについて,二つのモードを記載している。 分かりやすくするために,対象とするボイスが100で,1ボイスあたり平均200秒づつの伸長されるべきデータがあるとし,他方事前に伸長して記憶させるべき容量は1000秒分であるとする。 一つ目のモードは,優先度が高いと思われる5ボイス各200秒分は全部事前解凍しておくモードである。この場合,的中すれば,1ボイスすべては伸長済みで,続けて編集することが容易になるが,的中しない場合は,頭から全部伸長しなければならない(乙8段落【0025】には「伸長データが作成されるまで待つ」と明記されている。)。 二つ目のモードは,100ボイスの全てについて,先頭10秒分は伸長させておくモードである。どれを選択しても,先頭10秒分は伸長されているので,頭出しは迅速に行える。したがって,選択が間違っていたと気付いて,別のボイスを選択に移っても,その頭出しは迅速に行える。しかし,選択が正しいということになり,次の10秒間に移るときは,次の10秒間を伸長するようもう一度指示する必要がある。その場合は,「伸長データが作成されるまで待つ」ことになる。当然ながら,既に伸長記憶されている100ボイス分のデータについては,容量の余裕にもよるが,全部又はどれかを消さな 一度指示する必要がある。その場合は,「伸長データが作成されるまで待つ」ことになる。当然ながら,既に伸長記憶されている100ボイス分のデータについては,容量の余裕にもよるが,全部又はどれかを消さなければならない。 この二つのモードは,少数精鋭か,薄いが手広くかという二律背反の関係になる。被告の主張は,この二律背反の関係にあることを無視して,少数精鋭と,薄いが手広くの両者が記載されているのなら,多数精鋭も当然想定できると主張するもので,無理な理屈である。 (3) なお,被告は,乙8発明において,先頭の10秒分が解凍されていて残りは解凍されていないということは,その時点では先頭がデジタルデータであり,残りは圧縮データであるという乙11発明と同じことになるから,両 者の組合せは容易である旨も主張しているが,これは結局のところ,乙8発明を乙11発明に戻すことに他ならない。 2 本件特許発明2に係る侵害の成否2-1 構成要件2Aの充足性(争点2-1)(原告の主張)(1) 構成要件2Aの「ディジタル・データ」の意義ア本件特許発明2は,「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である」(本件特許2明細書段落【0003】)という課題に鑑み,「発音指示後,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる電子楽器の音源装置を提供する」(同明細書段落【0003】)ことを目的とし,「特に圧縮効率の高いデータ」の先頭部分を「時間遅れ」を極めて少なく楽音を発生することができるデータとすることによって,「時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる(請求項2)」(同明細書段落【0062】)ものである。 楽音信号の「ディジタル・データ」をすべて,「(デコ ることによって,「時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる(請求項2)」(同明細書段落【0062】)ものである。 楽音信号の「ディジタル・データ」をすべて,「(デコード処理にある程度の時間が必要な)特に圧縮効率の高いデータ」としてしまうと,楽音信号の先頭部分で,データの処理に時間がかかり,スムーズに発音開始がされないことから,先頭部分については,その後の「特に圧縮効率の高いデータ」の部分と比べて処理に時間のかからないデータとしておき,先頭部分の処理をスムーズにしつつ,その後の部分については,「特に圧縮効率の高いデータ」を利用することによって,上記課題を解決し,「特に圧縮効率の高いデータ」を利用するというものである。 イ構成要件2Aにおける「楽音信号」(X)は,以下に説明するとおり,先頭部分の楽音信号(XA)とその後の部分の楽音信号(XB)とからなる。 「楽音信号の先頭から」とは,「楽音信号」(X)の先頭部分であり, 具体的には,楽音信号の先頭部分である楽音信号(XA)の先頭を表す。 そして,「前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間」とは,楽音信号(XA)に続く楽音信号(XB)のディジタル・データ(B)に圧縮処理を施したディジタル・データ(β)の展開処理に要する以上の所定期間を表す。 したがって,「楽音信号の先頭から,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶する」とは,楽音信号の先頭から,「ディジタル・データ(A)の発音時間>ディジタル・データ(B)の展開時間」となるまでの楽音信号(XA)の部分について,ディジタル・ ディジタル・データの状態にて記憶する」とは,楽音信号の先頭から,「ディジタル・データ(A)の発音時間>ディジタル・データ(B)の展開時間」となるまでの楽音信号(XA)の部分について,ディジタル・データ(A)の状態にて記憶するということである。 また,「前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」とは,楽音信号(XA)以降の楽音信号(XB)の部分について,楽音信号(XB)のディジタル・データ(B)に圧縮処理を施したディジタル・データ(β)の状態にて記憶するということである。このディジタル・データ(β)は,「特に圧縮効率の高いデータ」(本件特許2明細書段落【0003】)である。 ウ被告は,「ディジタル・データ」はPCMデータであり,圧縮データとは,本件特許2明細書の従来の技術の説明において,「圧縮処理には,例えば,ADPCM(適応型差分PCM)や,さらに圧縮効率をあげたサブバンドコーディングを用いることもできる。」とあることから,請求項2の「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」にADPCMが含まれると主張する。 本件特許2明細書において,「【0003】【発明が解決しようとする課題】…上述したような,特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である」から,「この発明は,上記課題に鑑みなさ れたもので,その目的とするところは,発音指示後,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる電子楽器の音源装置を提供することにある。」と説明されている。すなわち,本件特許発明2においては,「上述したような,特に圧縮効率の高いデータのデコード処理」にある程度の時間が必要であるという課題についてされたものであり,上述した「デコード処 説明されている。すなわち,本件特許発明2においては,「上述したような,特に圧縮効率の高いデータのデコード処理」にある程度の時間が必要であるという課題についてされたものであり,上述した「デコード処理にはある程度の時間が必要である」特に圧縮効率の高いデータとしては,「さらに圧縮効率をあげたサブバンドコーディング」が含まれることは明らかである。 従来技術においてADPCMも1つの圧縮処理であるとされてはいても,「データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間」が問題となるような「デコード処理にはある程度の時間が必要である」圧縮処理の例として,本件特許2明細書は,特に圧縮効率の高いデータであるサブバンドコーディングを挙げているのである。このときには,データの先頭に,圧縮されていないPCMデータや,圧縮効率が低く,すなわちデコード処理時間の遅れが問題にならずに,すみやかにデータを読み出すことができるADPCMデータを設けることにより,圧縮データの読み出しをスムーズに行うことができるのである。 以上のとおり,楽音信号(XA)の部分について,ディジタル・データ(A)の状態にて記憶する点については,ディジタル・データ(A)は,「特に圧縮効率の高いデータ」(本件特許2明細書段落【0003】)であるディジタル・データ(β)よりも,デコード処理時間の遅れが問題にならない,圧縮効率の高くないディジタル・データの状態にて記憶されているものである。 (2) 被告製品2~4の構成要件2A充足性ア以上のとおりであるから,「デコード処理にはある程度の時間が必要である」(本件特許2明細書段落【0003】)圧縮データの先頭部分 (「楽音信号の先頭」)に付する「ディジタル・データ」に,被告製品2~4の「ADPCM①」 ード処理にはある程度の時間が必要である」(本件特許2明細書段落【0003】)圧縮データの先頭部分 (「楽音信号の先頭」)に付する「ディジタル・データ」に,被告製品2~4の「ADPCM①」データが該当する。 イ被告製品2~4は,「各フレーズデータの圧縮オーディオデジタルデータの先頭部は2048サンプル分のADPCM①データで構成されており,シーケンサは,まず,それらADPCM①データを読み出す。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)のであり,別紙被告製品2~4説明書の図3及び5の「ADPCM①」が構成要件2Aにおける「ディジタル・データ」に該当し,図5の「MDCT」が構成要件2Aにおける「圧縮処理を施したデータ」に該当する。 また,被告製品2~4は,「シーケンサから,読み出すべきフレーズ番号が入力されると,音声データROMインターフェース(I/F)を介して,音声データROMのフレーズアドレス領域に格納されているフレーズ番号のフレーズデータが格納された先頭のアドレスであるフレーズデータアドレスを読み出し,その後,これに対応する音声データROMのアドレスから,対応するフレーズのフレーズデータを読み出す。このフレーズデータの読み込みは,シリアルに行われて1つのバッファに取り込まれる。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)のであるから,「ディジタル・データ」及び「圧縮処理を施されたデータ」は,音声データROMに記憶されており,構成要件2Aを充足する。 ウ被告は,構成要件2Aの充足性について,間接侵害を主張するものである(争点2-5間接侵害の成否)。 (被告の主張)(1) 構成要件2Aの「ディジタル・データ」の意義ア特許請求の範囲は,「ディジタル・データの状態にて記憶するとともに, ものである(争点2-5間接侵害の成否)。 (被告の主張)(1) 構成要件2Aの「ディジタル・データ」の意義ア特許請求の範囲は,「ディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する記憶手段」と規定しているから,記憶手段への記憶の 態様として,「ディジタル・データの状態」と「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態」とが異なるものとして規定されていると解すべきである。 そして,「発音指示に応答して,前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する」のであるから,読み出される「ディジタル・データ」は,記憶手段に「ディジタル・データの状態」で記憶されていたものであり,読み出される圧縮処理を施したデータは,記憶手段に「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態」で記憶されていたものであることが明らかである。 さらに,「圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに展開する展開手段」と規定しているから,圧縮処理を施したデータは展開手段によって元の「ディジタル・データ」になるものであることが分かる。 このように特許請求の範囲に複数個記載されている「ディジタル・データ」を相互に区別する記載がないことから(区別するのであれば,例えば「第1のディジタル・データ」,「第2のディジタル・データ」などと規定するはずである),当該複数個の「ディジタル・データ」は,同一のデータ形式を備えるものであると理解せざるを得ない。 つまり,「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態」が「ディジタル・データの状態」を包含することはない(換 データ」は,同一のデータ形式を備えるものであると理解せざるを得ない。 つまり,「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態」が「ディジタル・データの状態」を包含することはない(換言すると,ディジタル・データに圧縮処理を施したADPCM(方式)圧縮データの状態で記憶手段に記憶されたものは,「ディジタル・データの状態」で記憶手段に記憶されたものとすることはできない)。 また,ADPCM(方式)で圧縮されたデータは,展開手段によって展開処理を施されると元のディジタル・データに展開するから,ADPCM(方式)で圧縮されたデータは,元のディジタル・データそのものではな く,あくまでもその元のディジタル・データに圧縮処理を施したものであることになる。 イ本件特許2明細書の実施例の記載中(段落【0008】~【0061】)には,「ディジタル・データ」及び「ディジタル・データの状態」並びに「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」及び「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態」という用語は一切使用されていない。 実施例の記載中には,「ディジタル・データ」に相当するものとして,「PCM・データ」が記載され,「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」に相当するものとして,「圧縮処理されたエンコード・データ」が記載されている。すなわち,明細書では,前記のとおり従来技術に関して,「楽音信号をPCM(パルス符号化変調)等を用いてディジタルのPCM・データに変換し,さらに,圧縮処理を施して波形メモリ内に記憶するとともに,再生(発音)時には,この波形メモリ内から圧縮処理を施したデータ(エンコード・データ)を読み出し,このデータにデコード(展開)処理を施して,元のPCM・データに戻し,楽音 モリ内に記憶するとともに,再生(発音)時には,この波形メモリ内から圧縮処理を施したデータ(エンコード・データ)を読み出し,このデータにデコード(展開)処理を施して,元のPCM・データに戻し,楽音を発生させる電子楽器の音源装置が知られている。」とし,楽音発生が,発音指示後から,その圧縮処理を施したデータ(エンコード・データ)のデコード処理に要する時間Dだけ遅れるという技術的課題を解決するために本件特許発明2があるとしている。 その解決手段は,発音指示に応答してまず圧縮していないPCM・データに基づき楽音を発生させつつ,同時に,これに続く圧縮処理を施したデータ(エンコード・データ)を当該PCM・データに基づく楽音の発生中にデコード処理を完了して元のPCM・データに戻してこれに基づいて楽音を引き続いて発生させるように構成したことを特徴としている。 したがって,特許請求の範囲に記載された「ディジタル・データ」は, PCM・データに相当するものを指称し,当該PCM・データに相当するものに圧縮処理を施したデータ(エンコード・データ)は,特許請求の範囲に記載された「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」を意味していることは明らかである。 本件特許2明細書には,「【0022】15はラッチ回路であり,波形メモリ10からストローブ信号ST1のタイミングで読み出されたPCM・データを,本来のサンプリングクロックSCで供給するようにラッチする。16は,カウンタ14の制御信号SA2によって入力の選択切換を行うセレクタであり,制御信号SA2のレベルが「L」の場合には入力端Bを選択し,レベルが「H」の場合には入力端Aを選択して,選択された入力端に供給されているPCM・データを出力する。そして,カウンタ16によ タであり,制御信号SA2のレベルが「L」の場合には入力端Bを選択し,レベルが「H」の場合には入力端Aを選択して,選択された入力端に供給されているPCM・データを出力する。そして,カウンタ16によって出力されたPCM・データは,図示せぬD/A変換部,サウンドシステム等を介し,この装置の発生楽音として出力される。」と記載されており,PCM・データは,D/A変換部,サウンドシステム等を介して発生楽音として出力(楽音の発生)となるのである。つまり,PCM・データは,D/A変換のみによって発音することができるものである。 特許請求の範囲において「前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し,当該選択されたディジタル・データに基づいて発音する」と規定しているのは,このディジタル・データが実施例のPCM・データに相当するゆえに,これをD/A変換して楽音として発音することができることを意味している。 このため,ADPCM(方式)の圧縮データのようなPCM・データに圧縮処理を施したデータは,デコード処理を省略してD/A変換することは不可能であるから,ADPCM(方式)の圧縮データをもって,特許請求の範囲が規定する「ディジタル・データ」とすることは到底できない。 ウ原告は,「圧縮効率の高いデータ」と「圧縮効率の高くないディジタル・データ」とが,特許請求の範囲に記載されているかのような主張をしている。 しかし,特許請求の範囲の記載には,圧縮効率の高低に関しては何ら規定されていない。また,明細書にも,「圧縮効率の高いデータ」の展開処理に要する時間よりも長く「圧縮効率の高くないディジタル・データ」の展開処理及び発音に時間が 載には,圧縮効率の高低に関しては何ら規定されていない。また,明細書にも,「圧縮効率の高いデータ」の展開処理に要する時間よりも長く「圧縮効率の高くないディジタル・データ」の展開処理及び発音に時間がかかるように「圧縮効率の高くないディジタル・データ」量を大きくして記憶する構成は,全く記載されていない。 本件特許発明2では,「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」と規定されているのであるから,データの構成としては,「ディジタル・データ」と「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」の2種類である。そして,本件特許発明2においては,「圧縮データ」に「圧縮処理」を施すことはありえない。 (2) 被告製品2~4の構成要件2A充足性本件特許2明細書段落【0002】【従来の技術】にも「圧縮処理には,例えば,ADPCM(適応型差分PCM)」と記載されているとおり,「ADPCM①」は「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」であって,構成要件2Aの「ディジタル・データ」には該当しない。 被告製品2~4の先頭データは,ADPCM方式の圧縮楽音データである。 よって,被告製品2~4は構成要件2Aを充足しない。 2-2 構成要件2B~2Cの充足性(争点2-2)(1) 構成要件2Bにおいて,①「ディジタル・データ」の読み出し開始と「圧縮処理を施したデータ」の読み出し開始の同時性,②「ディジタル・データ」の読み出しと「圧縮処理を施したデータ」のデコード処理の同時平行性が要求されているか。 (原告の主張) ア特許請求の範囲には,「ディジタル・データ」と「圧縮処理を施したデータ」の読み出しを「同時に」行うということは一切記載されていない。 構成要件2A~2Bから導かれることは, ア特許請求の範囲には,「ディジタル・データ」と「圧縮処理を施したデータ」の読み出しを「同時に」行うということは一切記載されていない。 構成要件2A~2Bから導かれることは,先頭部のディジタル・データの外への発音処理(外部への発音中ということであって,被告が述べるような「読出手段によるディジタル・データの出力中」ではない。)と,ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開(伸張)とが平行して行われるということにすぎない。 イ楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間と同一の期間までの部分をディジタル・データの状態とした場合には両者の読み出しを同時に開始する必要があるとしても,圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間より長い期間までの部分をディジタル・データの状態とした場合には,その必要性は全くない。 特許請求の範囲の記載には,「ディジタル・データ」の状態で記憶する所定期間は,圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間と明記されている。そして,「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」の状態で記憶する所定期間以降の部分とは,特許請求の範囲の記載において,圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間以降の部分である。 また,例えば,第2の実施例(本件特許2明細書段落【0023】~【0026】)において,ディジタル・データの読み出しを発音指示から開始するとともに圧縮処理を施したデータの読み出しを(N-D)クロック後に開始することが示され,第3の実施例(同明細書段落【0028】~【0036】)のとおり,「ディジタル・データ」と「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」のシリアルな処理が明確に示されているのであ することが示され,第3の実施例(同明細書段落【0028】~【0036】)のとおり,「ディジタル・データ」と「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」のシリアルな処理が明確に示されているのであり,その場合に,当該構成に応じて必要な範囲で先頭部分の「ディジタル・データ」の長さを調整すればよいことは,当業者にとっていかに も自明である。 (被告の主張)ア特許請求の範囲は,「発音指示に応答して,前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する読出手段と,」と規定しているから,発音指示信号をトリガ信号として,ディジタル・データの読み出しと圧縮処理を施したデータの読み出しとが同時に開始されることが規定されていることは明らかである。 先頭のディジタル・データについて,①圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間と同一の期間までの部分とした場合,②圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間を超えた期間までの部分とした場合の2つ場合がある。 原告は,①の場合には,ディジタル・データの読み出し開始と圧縮処理を施したデータの読み出し開始の同時である必要があることを認めている。 原告が指摘する実施例(本件特許2明細書段落【0023】~【0026】)は,圧縮処理を施したデータの読み出しを(N-D)クロック後に開始する構成が記載されている。この場合にディジタル・データと展開処理によって元のディジタル・データとなったものを切れ目なく出力するための必須の構成は,遅くとも(N-D)クロック後に圧縮処理を施したデータの読み出しを開始することである。この構成を欠いてしまっては,所望の効果を上げることはできない。しかし,特許請求の範囲の記載はこのような構成を全く規定せず,①の )クロック後に圧縮処理を施したデータの読み出しを開始することである。この構成を欠いてしまっては,所望の効果を上げることはできない。しかし,特許請求の範囲の記載はこのような構成を全く規定せず,①の場合も②の場合も,「発音指示に応答して,前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する読出手段と,」というように一律に規定しているから,原告が指摘する実施例は本件特許発明2とは異なるものであり,発明の技術的範囲から除外されていると解さざるを得ない。 イ楽音発生が,発音指示後から,その圧縮処理を施したデータ(エンコー ド・データ)のデコード処理に要する時間Dだけ遅れるという技術的課題を解決するための本件特許発明2の構成において,「前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶する」こと,及び,「発音指示に応答して,前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する読出手段」は,ディジタル・データの読み出しと圧縮処理を施したデータのデコード処理が同時平行に行われることを規定するものとして重要である(少なくとも,デコード時間Dの間は同時平行でなければならない)。読み出された圧縮処理を施したデータは展開処理を施してもとのディジタル・データに展開されるのであるが,仮に,ディジタル・データの読み出しと圧縮処理を施したデータのデコード処理が同時平行に行われなければ,すなわち,ディジタル・データの読み出し完了後に圧縮処理を施したデータのデコード処理を開始したのでは,デコードにD時間要する以上,ディジタル・データの読み出し完了(発音完了)後D時間だけ無音状態となってし ,ディジタル・データの読み出し完了後に圧縮処理を施したデータのデコード処理を開始したのでは,デコードにD時間要する以上,ディジタル・データの読み出し完了(発音完了)後D時間だけ無音状態となってしまうからである。 (2) 被告製品2~4が「読出手段」「データ展開手段」を備えているか(被告製品2~4の構成要件2B~2C充足性)。 (原告の主張)ア被告製品2~4は,「各フレーズデータの圧縮オーディオデジタルデータの先頭部は2048サンプル分のADPCM①データで構成されており,シーケンサは,まず,それらADPCM①データを読み出す。」,「読み出されたADPCM①データは,ADPCMデコーダでPCMデータに伸張され,2048サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された2048サンプル分のPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)は,音量調整後バスバッファに1サンプルずつ出力し, デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする。」,「RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」,「その通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分のデコードが必要なことを認識する。そして,バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,シーケンサはMDCTデータの読み出しを開始する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)のであり,これらを行うシーケンサ及びADPCMデコーダが,構成要件2Bの「読出手段」に該当する。 したがって,被告製品2 の読み出しを開始する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)のであり,これらを行うシーケンサ及びADPCMデコーダが,構成要件2Bの「読出手段」に該当する。 したがって,被告製品2~4は,構成要件2Bを充足する。 イ被告製品2~4は,「MDCTデータは,ハフマンデコードと逆量子化を施して復号化され,復号化された周波数領域のデータをRAMに順次格納する。」,「RAMに格納された周波数領域のデータをIMDCTで時間領域のPCMデータに変換後(フレーム単位の時間軸情報が得られる),音量調整をして1サンプルずつバスバッファに格納する。」(被告製品2~4の機能説明3.3)のであり,このハフマンデコードと逆量子化を施して復号化する手段及びIMDCTが構成要件2Cにおける「データ展開手段」に該当する。 したがって,被告製品2は,構成要件2Cを充足する。 (被告の主張)本件特許発明2は,楽音信号が「『ディジタル・データ』+『ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ』」で構成されているのに対し,被告製品2~4は,「圧縮データ(ADPCM方式)+圧縮データ(MDCT方式)+圧縮データ(ADPCM方式)」で構成されている。したがって,被 告製品2~4は,読出手段によって本件特許発明2が規定する「ディジタル・データ(非圧縮楽音データ)」に相当するものを読み出すことはない。 また,本件特許発明2の「読出手段」は,ディジタル・データ(非圧縮楽音データ)の読み出し開始とディジタル・データに圧縮処理を施したデータ(圧縮楽音データ)の読み出し開始を同時に行うものである。さらには,ディジタル・データ(非圧縮楽音データ)の読み出しとディジタル・データに圧縮処理を施したデータ(圧縮楽音データ)のデコード たデータ(圧縮楽音データ)の読み出し開始を同時に行うものである。さらには,ディジタル・データ(非圧縮楽音データ)の読み出しとディジタル・データに圧縮処理を施したデータ(圧縮楽音データ)のデコード処理が同時平行的に行われることが規定されている。 被告製品2~4は,ADPCM①データとMDCTデータとを同時に読み出すこともなく,ADPCM①のデコード処理とMDCTデータのデコード処理(IMDCT処理)とを同時平行して行うこともない。 したがって,被告製品2~4は,構成要件2Bを充足しない。 2-3 構成要件2D~2Fの充足性(争点2-3)(1) 構成要件2Dの「第2の判別手段」の意義(原告の主張)構成要件2Dにおける「データの読み出しが終了したか否かを判別する」目的は,先頭部分の「ディジタル」形式の「データ」のすべてが発音されることとなる前に,後続の圧縮効率の高い「圧縮処理を施したデータ」の発音がされることとなる等,データの混在・不整合が生じることを防ぐためであり,先頭部分の発音し残しとなるデータがないか否かを判別するためのものである。 (被告の主張)本件特許発明2の第2の判別手段は,特許請求の範囲において,「前記読出手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したか否かを判別する第2の判別手段と,」(構成要件2D)と規定しているから,ディジタル・データ及び圧縮処理を施したデータの読み出しをする際に,ディジタ ル・データの読み出しが終了したか否かを判別する機能を有するものである。 そして,本件特許発明2の第2の選択手段は,特許請求の範囲において,「前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段に である。 そして,本件特許発明2の第2の選択手段は,特許請求の範囲において,「前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する第2の選択手段」(構成要件2E)と規定しているから,第2の判別手段の判別結果に基づき,ディジタル・データ又は展開されたディジタル・データのどちらかを選択する機能を有するものである。 したがって,ディジタル・データ(PCMデータ)は,読み出されて第2の選択手段によって選択されて,そのディジタル・データ(PCMデータ)に基づき発音されるところ,データ展開手段によって展開されたデータは,一旦,例えばデータ展開手段に設けられた記憶手段に保持され,第2の判別手段によってディジタル・データ(PCMデータ)の読み出しが終了したと判別されたときに第2の選択手段によって選択されて,その展開されたデータに基づき発音される。つまり,発音されるディジタル・データと展開されたデータ(元のディジタル・データ)は2系統に分離されていることが分かる。この2系統に分離されていることは,セレクタ16を備える本件特許2明細書の図3等からも明らかである。 このような構成を備えるのは,前記のとおり,本件特許発明2において,ディジタル・データの読み出しとこれに基づく発音と圧縮処理を施したデータのデコードが同時平行に行われるため,圧縮処理を施したデータのデコード処理に基づく展開されたデータがディジタル・データに基づく発音中に続々と生成されることとなり,ディジタル・データの を施したデータのデコードが同時平行に行われるため,圧縮処理を施したデータのデコード処理に基づく展開されたデータがディジタル・データに基づく発音中に続々と生成されることとなり,ディジタル・データの読み出しとこれに基づく発音中は,デコードされた元のディジタル・データに基づく発音を待機さ せなければならないからである。 (2) 被告製品2~4が「第2の判別手段」「第2の選択手段」を備えているか(被告製品2~4の構成要件2D~2F充足性)。 (原告の主張)ア被告製品2~4について,RAMからIMDCTを通らないデータの通り道(ADPCMデータを基とするデータの通り道)と,RAMからIMDCTを経るデータの通り道(IMDCTデータを基とするデータの通り道)の2つのデータの通り道があることは原告被告間に争いがない。 仮に,被告製品には,データラインを物理的に共通としないバスがあるということだとしても,被告の主張によれば,被告製品2~4は,「あるトラックのADPCM①の読み出し,デコード,バスバッファへの格納という一連の動作が終了すると,シーケンサはデコード待ちのトラックを探索し,他のトラックについてのデコードが可能であるときはこれを(ADPCM方式による圧縮されたデータ又はMDCT方式による圧縮データのいずれもありうる)デコードしてバスバッファに格納し,他のトラックについてのデコードが必要でないときは,当該トラックのMDCT方式の圧縮データ(前記デコードが終了したADPCM①に連続するフレーズデータである)をバスバッファの状況も判断しながらデコードしてバスバッファに格納する。」(被告第13準備書面9頁下から7行目以下)というのであり,「ADPCM①」の読み出しが終了したことが確実な状態で,「シーケンサ スバッファの状況も判断しながらデコードしてバスバッファに格納する。」(被告第13準備書面9頁下から7行目以下)というのであり,「ADPCM①」の読み出しが終了したことが確実な状態で,「シーケンサ」がデコード待ちのトラックを探索し,他のトラックについてのデコードが必要でないときは,当該トラックの「MDCT方式の圧縮データ」をバスバッファの状況も判断しながらデコードしてバスバッファに格納するものであるから,結局,「シーケンサ」が,「ADPCM①」の読み出しの終了の有無を判別しているものである。 これを,被告製品2~4の構成,機能に即して見れば,被告製品2~4 において,先頭部分のデータが「ADPCMデータ」であることにより,「RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」,「その通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分のデコードが必要なことを認識する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)構成としていることは,「読出手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したか否かを判別する」ことに該当する。 したがって,被告製品2~4は,構成要件2Dを充足する。 イ被告製品2~4は,「各フレーズデータの圧縮オーディオデジタルデータの先頭部は2048サンプル分のADPCM①データで構成されており,シーケンサは,まず,それらADPCM①データを読み出す。」,「読み出されたADPCM①データは,ADPCMデコーダでPCMデータに伸張され,2048サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに は,まず,それらADPCM①データを読み出す。」,「読み出されたADPCM①データは,ADPCMデコーダでPCMデータに伸張され,2048サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された2048サンプル分のPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)は,音量調整後バスバッファに1サンプルずつ出力し,デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする。」,「RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)のであり,構成要件2Eにおける「前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し」に該当する。 被告製品2~4は,「読み出されたADPCM①データは,ADPCM デコーダでPCMデータに伸張され,2048サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された2048サンプル分のPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)は,音量調整後バスバッファに1サンプルずつ出力し,デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする。」,「RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」,「その通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分のデコードが必要なことを認識する。そして,バスバッ たことを通知する。」,「その通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分のデコードが必要なことを認識する。そして,バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,シーケンサはMDCTデータの読み出しを開始する。」,「MDCTデータは,ハフマンデコードと逆量子化を施して復号化され,復号化された周波数領域のデータをRAMに順次格納する。」,「RAMに格納された周波数領域のデータをIMDCTで時間領域のPCMデータに変換後(フレーム単位の時間軸情報が得られる),音量調整をして1サンプルずつバスバッファに格納する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)のであり,構成要件2Eにおける「前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する」に該当する。 そして,構成要件2Eにおける「選択」は,上記のとおり,「シーケンサ」が行っている。 したがって,被告製品2~4は,構成要件2Eを充足する。 ウ被告製品2~4は,「例えばパチンコなどの遊技機では,上下左右など複数スピーカ単位に,デコード演算後のオーディオデータを出力する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.5)のであって,このようにオーデ ィオデータを出力するものであり,それは,「シーケンサ」が選択したデータである。 構成要件2Eにおいて述べたとおり,被告製品2~4においては,「あるトラックのADPCM①の読み出し,デコード,バスバッファへの格納という一連の動作が終了する」までは,「ADPCM①」データを出力系統へ入力するように選択が行なわれ,そ 製品2~4においては,「あるトラックのADPCM①の読み出し,デコード,バスバッファへの格納という一連の動作が終了する」までは,「ADPCM①」データを出力系統へ入力するように選択が行なわれ,その後については,「ADPCM①」データを選択することなく「MDCT方式の圧縮データ」を出力系統へ入力するように選択が行なわれるということであり,これを「シーケンサ」が行うものである。 被告製品2~4は,この「シーケンサ」の選択に基づき発音するものであるから,構成要件2Fを充足する。 (被告の主張)ア被告製品2~4は,1系統のRAM及びバス部に時間順に格納されて,順次出力されていくので,デコーダの出力側経路ではなんら出口調停とか,終端検出は行わないので,第2の判別手段に相当するものはない。同様に,被告製品2~4は,1系統のRAM及びバス部に時間順に格納されて,順次出力されていくので,両者のいずれかを選択する第2の選択手段に相当するものもない。これらの点で,被告製品2~4は,本件特許発明2と決定的に異なる。 原告は,まず,ADPCM①データを,次にMDCTデータを順次読み出し,出力するものであるから,ADPCM①データの読み出しの終了の有無が判別される(第2の判別手段上それに応じて,異なる経路を通じたデータが選択されるものである(第2の選択手段))と主張する。 しかしながら,本件特許発明2の「第2の判別手段」は,「前記読出手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したか否かを判別する」手段であるところ,ディジタル・データをADPCM①と仮定した場 合において,前記のとおり,被告製品2~4では,ADPCM①データの読み出しが完了したか否かは判別していない。被告製品2~4では,RA ころ,ディジタル・データをADPCM①と仮定した場 合において,前記のとおり,被告製品2~4では,ADPCM①データの読み出しが完了したか否かは判別していない。被告製品2~4では,RAMに格納されたPCMデータ(ADPCM①が伸張された2048サンプル分のデータ)がバスバッファに全て出力された後に,MDCTデータを読み出しに行くものであって,ADPCM①データの読み出しが完了しただけでは,MDCTデータを読み出しに行くことはない。上記決定的相違点としたところであり,出力が1系統であるからである。 したがって,被告製品2~4は,「第2の判別手段」も「第2の選択手段」も有しない。 イ被告製品2~4は,フレーズデータとして「ディジタル・データ(非圧縮楽音データ)」に相当するものを有しないし,構成要件2Dの「第2の判別手段」も有していないので,第2の判別手段によってディジタル・データ(非圧縮楽音データ)の読み出しが終了したか否かを判別することもないから,「第2の選択手段」も有することはない。 原告は,ADPCM①が伸張されたPCMデータがRAMからバスバッファへ書き込みが完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの書き込みが完了したことを通知することをもって,「第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合」に該当すると主張するようである。 しかしながら,読出終了の判別とバスバッファへの書き込み完了の通知とは全く異なる手段である。特にADPCM①は,ディジタル・データに圧縮処理を施したデータであるからこれを読み出してそのまま出力できるものではなく,必ずデコード処理が必要となるのであるから,読出終了の判別とバスバッファへの書き込み完了の通 は,ディジタル・データに圧縮処理を施したデータであるからこれを読み出してそのまま出力できるものではなく,必ずデコード処理が必要となるのであるから,読出終了の判別とバスバッファへの書き込み完了の通知は全く異なる手段であって,実質的にも同一の手段であるということはできない。 ウ被告製品2~4は,「第2の選択手段」を有しないし,ADPCM①の 読み出しを終了したからといって,MDCTデータが展開されたPCMデータを選択するものではない。ディジタル・データに基づく発音もない。 したがって,構成要件2Fを充足しない。 2-4 構成要件2Gの充足性(争点2-4)被告製品2~4が「電子楽器の音源装置」に該当するか。 (原告の主張)一般に,「楽音」とは,「音楽の音。音楽の素材になる音。」であるといわれている(広辞苑第5版)。「楽曲(BGM)」や人を楽しませる「効果音」は,「楽音」に含まれるものである。 ミュージックシンセサイザにおいても,ノイズ混じりの自然界の音を記録再生して使用すること,ユーザーにおいて自らの求める音を録音・記憶させて使用することが行われている。例えば,甲16号証,甲17号証,甲33号証及び甲34号証は,「デジタルミュージック」,「キーボードマガジン」,「キーボードマガジンプロフェッショナル」といった雑誌記事であるが,原告を含め各社のミュージックシンセサイザにユーザーが記録した音を演奏の際に再生利用する技術が記載されている。 被告製品2~4は,複数の音(フレーズ)を個々独立に操作者の任意のタイミングで発生するような多彩な演奏を可能にしており,単なる再生装置とはいえないものである。 以上のとおり,「電子楽器の音源装置」について,限定的に解釈する理由はなく,現 に操作者の任意のタイミングで発生するような多彩な演奏を可能にしており,単なる再生装置とはいえないものである。 以上のとおり,「電子楽器の音源装置」について,限定的に解釈する理由はなく,現代の遊技機の音声発生にかかる装置は,電子楽器の音源装置にほかならない。 (被告の主張)被告製品2~4は,フレーズデータをデコードするなどして再生するためだけのサウンドLSIであり電子楽器の音源装置でもない。 原告は,あたかもCDプレイヤーや携帯型音楽プレイヤーなどの一般的な単 なるオーディオ信号の再生装置をもって「電子楽器」と称しているに等しく,技術常識に欠けるものである。また,雑誌記事等は,執筆者が主観的に記載するものであり,本件特許発明2が規定する「電子楽器の音源装置」の意味を解釈する場合には,証拠価値は全くないものといわざるを得ない。 2-5 間接侵害の成否(争点2-5)(原告の主張)(1) 被告製品2~4に接続される「外部の音声データROM」が構成要件2Aを充足し,被告製品2~4は構成要件2A~2Gを満たす。被告製品2~4は,「ADPCM①」,「MDCT」,「ADPCM②」というデータ構造の「外部の音声データROM」と接続して使用される(別紙被告製品2~4説明書図3)ほか,他の用途を有しない。したがって,被告製品2~4は,本件特許発明2の装置の生産にのみ用いるものである。 したがって,被告製品2~4の製造,譲渡等又は譲渡等の申出をする行為は,本件特許2にかかる原告の特許権を侵害するものとみなされる(特許法101条1号)。 (2) 被告製品3及び4は,「外部の音声データROM」と接続されることによって,本件特許発明2の装置となるものであるから,本件特許発明2の装置の生産に用いる される(特許法101条1号)。 (2) 被告製品3及び4は,「外部の音声データROM」と接続されることによって,本件特許発明2の装置となるものであるから,本件特許発明2の装置の生産に用いる物であるとともに,本件特許発明2の課題の解決に不可欠なものである。 被告は,原告からの平成21年5月20日付内容証明郵便により,被告製品3が本件特許発明2の技術的範囲に属することを知っている。また,被告製品4も,本件特許発明2とかかわりのある範囲で構成に何らの差異はないから,被告は,被告製品4が本件特許発明2の技術的範囲に属することを知っている。 したがって,特許法101条2号の要件を充足するから,被告が被告製品3及び4の製造,譲渡等又は譲渡等の申出をする行為は,本件特許2にかか る原告の特許権を侵害するものとみなされる。 (被告の主張)外部音声データROMに記憶されるフレーズデータは,ADPCM①,アクセル独自方式のMDCT及びADPCM②から構成されるから,ディジタル・データの状態で記憶されていないため,構成要件2Aを充足しない。 2-6 均等侵害の成否(争点2-6)(原告の主張)(1) 被告製品2~4は,再生するデータの先頭部分がPCMデータではなくADPCM形式により軽圧縮されたデータであっても,均等論の適用により,音声データROMと接続されたことにより,本件特許発明2の技術的範囲に属する。 (2) 第1要件(非本質的部分)特許発明における本質的部分とは,特許請求の範囲に記載された特許発明のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分をいう。 本件特許発明2は,「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である」(本件特許 た特許発明のうちで,当該特許発明特有の課題解決手段を基礎づける特徴的な部分をいう。 本件特許発明2は,「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である」(本件特許2明細書段落【0003】)という課題に鑑み,「発音指示後,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる電子楽器の音源装置を提供する」(同明細書段落【0003】)ことを目的とし,「特に圧縮効率の高いデータ」の先頭部分を「時間遅れ」を極めて少なく楽音を発生することができるデータとすることによって,「時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる(請求項2)」(同明細書段落【0062】)ものである。 被告製品2~4は,先頭部分を「MDCTデータ」よりも格段にデコードに処理時間のかからない「ADPCMデータ」とし,その後の部分を「MDCTデータ」としている。被告製品2~4は,先頭部分を時間遅れを極めて 少なく楽音を発生することができる「ADPCM」データとし,処理に時間のかかる「特に圧縮効率の高い圧縮処理を施したデータ」である「MDCTデータ」のデコード処理をしない構成とした。このように,被告製品2~4は,軽圧縮データであるADPCM形式のデータを用いることにより,先頭部分以外の部分より処理に「時間遅れ」のない構成とすることにより,「時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる」構成である。先頭部分のデータがまったく圧縮されていないデータであるか否かということは,上記の課題とも,目的とも,効果ともかかわりがないものであり,本件特許発明2の本質的部分とはかかわりがないものである。 以上のとおり,被告製品2~4は,本件特許発明2における本質的部分のうち,特許請求の範囲の前記の記載 ともかかわりがないものであり,本件特許発明2の本質的部分とはかかわりがないものである。 以上のとおり,被告製品2~4は,本件特許発明2における本質的部分のうち,特許請求の範囲の前記の記載にかかわる部分において相違するものではない。 (3) 第2要件(置換可能性)被告製品2~4により読み出される先頭部分のデータが「ADPCMデータ」であるとしても,「発音指示後,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる電子楽器の音源装置を提供する」(本件特許2明細書段落【0003】)という本件特許発明の目的を達成することができるし,「発音指示後,直ちに,ディジタル・データが読み出されるとともに,圧縮処理を施したデータの展開処理が前もって行われ,所定期間経過以降は展開処理で元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる」(同明細書【0062】)という本件特許発明と同一の作用効果を奏する。 また,先頭部分のデータを「ADPCMデータ」とすることに伴い,被告製品2~4においては,「RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」,「そ の通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分のデコードが必要なことを認識する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)ものであるが,これによっても,本件特許2明細書段落【0003】記載の本件特許発明2の目的を達成することができるし,同明細書段落【0062】記載の本件特許発明2と同一の作用効果を奏する。 のであるが,これによっても,本件特許2明細書段落【0003】記載の本件特許発明2の目的を達成することができるし,同明細書段落【0062】記載の本件特許発明2と同一の作用効果を奏する。 したがって,本件特許発明2の構成について,被告製品2~4における構成と置き換えても,本件特許発明2の目的は達成され,同一の作用効果を奏する。 (4) 第3要件(置換容易性)本件特許2明細書にも,「上述した実施例では,楽音信号の変換にPCMを用いたが,本発明はこれに限定されない。例えば,PWM(パルス幅変調)やPPM(パルス位置変調)を用いても良い。また,PCM・データとデコード・データとの合成を,セレクタを用いて行ったが,クロスフェード乗算器と加算器とを用いて行っても良い。この場合には,PCM・データとデコード・データとが部分的に重なりあって合成される。」(段落【0061】)と記載されているとおり,ディジタル・データには種々の形式があることが予定されている。 そして,被告が被告製品2~4の製造販売を開始した時点において,「ADPCMデータ」が,時間遅れを極めて少なく楽音を発生することができるデータ形式として周知であり,当業者が,データの先頭部を「ADPCMデータ」とし,その後を「MDCTデータ」という被告製品2~4の構成とすることは,技術的にはもちろん製造コストの上からも容易であった。 少なくとも,被告製品2~4の製造・販売行為の開始時において,先頭部分をADPCMとし,以降をより圧縮率の高いデータとする構成は,本件特許発明3にかかわる公報のほか,WO/99/51933再公表特許公報 (甲47)(例えば,請求項1~4及び5頁「背景技術」欄)にも明確に示され周知であったのであり,当業者が容易に行うことができ 明3にかかわる公報のほか,WO/99/51933再公表特許公報 (甲47)(例えば,請求項1~4及び5頁「背景技術」欄)にも明確に示され周知であったのであり,当業者が容易に行うことができたものである。 また,被告製品2~4の製造・販売行為の開始時において,先頭部分のデータを「ADPCMデータ」とすることに伴い,被告製品2~4においては,「RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」,「その通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分のデコードが必要なことを認識する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)構成とすることは,当業者にとって容易であった。 以上のとおり,被告製品2~4の製造・販売行為の開始時において,当業者は,本件特許発明2の構成を被告製品2~4の構成に置換することに容易に想到することができたものである。 (5) 第4要件(公知技術からの非容易推考性)本件特許発明2自体,「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である」ことから,データの先頭部分について,データの先頭部分以外の後の部分において必要とされる,処理に時間のかかる「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理」をしない構成,言い換えると,先頭部分以外の部分より処理に「時間遅れ」のない構成とすることにより,「時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる」構成としたまったく新たな発明である。 被告製品2~4は,この構成における先頭部分の「ディジタル・データ」につき「ADPCMデータ」として めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる」構成としたまったく新たな発明である。 被告製品2~4は,この構成における先頭部分の「ディジタル・データ」につき「ADPCMデータ」としてこの変更に伴う構成を採用したものにすぎないから,被告製品2~4の構成は,本件特許の出願時に容易に推考できたものではない。 (6) 第5要件(禁反言の不存在)原告は,被告製品2~4の構成を,本件特許2の出願手続において意識的に除外したという事情は一切存在しない。 以上のとおり,音声データROMに接続された被告製品2~4は,均等侵害のすべての要件を充足し,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,本件特許発明2の技術的範囲に属するものであり,被告製品2~4の製造・販売等は本件特許権の侵害(間接侵害)に該当する。 (被告の主張)(1) 原告が主張する均等論は,「ディジタル・データ」を「ディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータ」に置換することに加えて,「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」を「ディジタル・データにADPCM方式によりも高圧縮とする圧縮処理を施したデータ」に置換することを均等論の置換の内容とするものである。 この均等論は,本件特許発明2を特許請求の範囲の記載を離れて上位概念化したものをもって均等であるとする原告独自のものであって,最高裁判所が認める均等論ではない。 (2) 第1要件(非本質的部分)本件特許発明2は,「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」の楽音発生が,発音指示後から,デコード処理に要する時間分だけ遅れるという課題があることに鑑み,「楽音信号の先頭から,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要 データ」の楽音発生が,発音指示後から,デコード処理に要する時間分だけ遅れるという課題があることに鑑み,「楽音信号の先頭から,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」構成としたものである。 すなわち,本件特許発明2は,解決手段として,所定期間までをデコード 処理が不要な圧縮処理を施さないディジタル・データ(非圧縮データ)を配置することにより,発音指示後からの発音開始遅れを極めて少なくしたのである。 本件特許発明2は,「非圧縮データ」+「圧縮データ」というデータ構成こそが本質的部分であり,先頭に圧縮処理が不要な「非圧縮データ」を配置することが極めて重要であって,「非圧縮データ」を「圧縮データ」に置換することは,本質的部分を変更することとなる。 したがって,先頭部分の「非圧縮データ」を「ADPCMデータ」に置換することは,本質的部分の変更に該当する。 (3) 第2要件(作用効果の同一性)被告製品2~4の先頭データである「ADPCMデータ」もADPCM方式で圧縮された「圧縮データ」である以上,デコード時間を要するものである。これに続くディジタル・データに圧縮処理を施したデータには,ディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータを包含する。 そもそも本件発明2は,ディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータの展開処理に時間がかかることを技術的課題とする発明である。したがって,先頭から末尾まで全 したデータを包含する。 そもそも本件発明2は,ディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータの展開処理に時間がかかることを技術的課題とする発明である。したがって,先頭から末尾まで全部がディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータであるものは,本件発明2の技術的課題を備えた従来技術そのものである。つまり,置換可能性はない。 (4) 第3要件(置換容易性)先頭データであるディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータとこれに続くディジタル・データに圧縮処理を施したデータには,ディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータを包含する。このときは,先頭から末尾まで全部がディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータであり,本件発明2の技術的課題を備えた従来技術そのものである。つまり,置換可能性はなくその容易性を 論じる前提を欠くものである。 (5) 第4要件(公知技術からの非容易推考性)上記のとおり,置換したことによって包含することになる従来技術そのもの(先頭から末尾まで全部がディジタル・データにADPCM方式により圧縮処理を施したデータ)に均等論を適用することはできない。 (6) 第5要件(意識的除外の不存在)本件特許2明細書段落【0002】【従来技術】には,「圧縮処理には,例えば,ADPCM(適応差分型PCM)」と記載されており,ADPCMデータが圧縮データであることは原告も認識していたものである。 さらに,段落【0003】【発明が解決しようとする課題】には「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である。」と記載されており,原告が,圧縮効率の高低についても把握していたものであったことは明らか 【発明が解決しようとする課題】には「特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である。」と記載されており,原告が,圧縮効率の高低についても把握していたものであったことは明らかである。 にもかかわらず,本件特許発明2の特許請求の範囲として「楽音信号の先頭から,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する」と記載し,所定期間までの部分(先頭データ)について,圧縮処理を施さない非圧縮データとしたのであるから,圧縮処理を施したデータを意識的に除外したことに他ならない。 3 本件特許発明3に係る侵害の成否3-1 構成要件3Aの充足性(争点3-1)(1) 構成要件3Aには楽音データの先頭部がADPCM方式によって圧縮された楽音データである場合が含まれるか。 (原告の主張)ア本件特許発明3は,圧縮データの伸張後の終端部に不可避的に生じてしまう無音部分について,ループ再生の際に,無音として再生されないように(無音部分が生じないように),楽音データの終端部分に非(軽)圧縮データを配置したものであり,圧縮データの前のデータ構成については何ら限定が付加されていない。また,本件特許発明3では,主要な実施例として,非圧縮データ,圧縮データ,非圧縮データというデータ構成が示されており,その変形例として,先頭の非圧縮データをなくしてもよいと記載されているのであるから,この両者を包含するものであることは明らかである。 縮データ,非圧縮データというデータ構成が示されており,その変形例として,先頭の非圧縮データをなくしてもよいと記載されているのであるから,この両者を包含するものであることは明らかである。 したがって,本件特許発明3は楽音データの先頭部分に非(軽)圧縮データを配置するかどうかは問わないものである。 イ被告は,原告が拒絶理由を回避するために,補正前のものは始端に非圧縮データを有していたのを,補正によりこれを削除したかのように主張する。しかし,始端のデータ構成の限定をはずせば技術的範囲は広くなるのであるから,始端の限定をはずすことで,公知例による拒絶理由を回避ができるわけではない。 原告の補正は,拒絶理由通知における公知例を理由として先頭部分に非(軽)圧縮データを配置する構成を削除したものではない。 (被告の主張)ア本件特許発明3が引用する請求項1は,「圧縮楽音データと非圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,非圧縮楽音データの順に読み出して再生する楽音データ再生装置であって,」と規定しているから,ループ再生するときは,圧縮楽音データ → 非圧縮楽音データ → 圧縮楽音データ・・・の順に読み出すことが規定されている。したがって,本件特許発明3が引用 する請求項1の楽音データの先端部は圧縮楽音データであることが規定されていることは明らかである。そうすると,本件特許発明3の先端部のデータは,圧縮楽音データであることが規定されている。 イ本件特許発明3が引用する請求項1の他の記載は,①「圧縮楽音データと非圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,非圧縮楽音デー イ本件特許発明3が引用する請求項1の他の記載は,①「圧縮楽音データと非圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,非圧縮楽音データの順に読み出して再生する楽音データ再生装置であって,」とあるから,楽音データ=圧縮楽音データ+非圧縮楽音データであること,及び,楽音データの読み出し再生は,圧縮楽音データ,非圧縮楽音データの順であることが明らかである。 ②「ループ再生指示を受けて,前記第2の読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換える第1手順,前記デコーダによる前記圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で前記第1の読出手段へ前記非圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換える第2手順,を順に実行し,前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて再び前記第1手順を実行する」とあるから,ループ再生指示を受けて最初に第2の読出手段へ圧縮楽音データの読み出し指令が出力されること第2の読出手段は,「前記記憶媒体から前記圧縮楽音データを読み出す」ものであること第2手順の終了時には,第1の読出手段から読み出し終了通知が出力され,再び第1手順を実行すること 第1手順の最初では第2の読出手段へ圧縮楽音データの読み出し指令が出力されることが明らかである。 このことは,本件特許発明3が引用する「請求項1」に原告が変更補正したことにより,始端部に非圧縮データを備える楽音データを除外したことを意味する。この ることが明らかである。 このことは,本件特許発明3が引用する「請求項1」に原告が変更補正したことにより,始端部に非圧縮データを備える楽音データを除外したことを意味する。この除外は,乙11号証に基づく進歩性欠如の拒絶理由回避のためのものであり,始端部に非圧縮データを備える楽音データを除外する補正をしておきながら,権利行使の段階に至って,始端部に非圧縮データを備える楽音データであっても技術的範囲に属すると主張することは,特許請求の範囲の記載に反するとともに,禁反言の法理に照らしても許されないというべきである。 本件特許発明3は,請求項1の非圧縮データがADPCM方式で圧縮された楽音データであるから,その先端部の楽音データは,請求項1の記載に基づき,圧縮楽音データである。 (2) 被告製品2~4の構成要件3A充足性(原告の主張)被告製品2~4は,「ADPCM①」,「MDCTデータ」,「ADPCM②」の順で,「外部音声データROM」からデータを「順に読み出して再生する」(別紙被告製品2~4説明書)。 この「MDCTデータ」が,構成要件3Aにおける「圧縮楽音データ」に該当し,「ADPCM②」が,構成要件3Aにおける「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」に該当し,被告製品2~4はそれらの楽音データを「順に読み出して再生する」。また,「当該オーディオを構成するフレーズ(圧縮オーディオデジタルデータ)を外部音声ROMから順次取り出し・・・スピーカーへ出力する」(別紙被告製品2~4の機能説明3)とあるように,被告製品2~4は「(楽音データを)再生する楽音データ再生装 置」に該当する。 先頭部分に非(軽)圧縮データを配置したとしても,本件特許発明3の技術範 機能説明3)とあるように,被告製品2~4は「(楽音データを)再生する楽音データ再生装 置」に該当する。 先頭部分に非(軽)圧縮データを配置したとしても,本件特許発明3の技術範囲に含まれることに変わりはない。 被告製品2~4は,構成要件3Aを充足する。 (被告の主張)構成要件3Aの楽音データは,「圧縮楽音データ+ADPCM楽音データ」とから構成される。これに対し,被告製品2~4の楽音データは,「ADPCM楽音データ①+MDCT楽音データ(圧縮データ)+ADPCM②楽音データ」とから構成されており,構成要件3Aを充足しない。 3-2 構成要件3B~3C及び3Eの充足性(争点3-2)(1) 被告製品2~4が「第1の読出手段」「第2の読出手段」「切換手段」を備えているか。 (原告の主張)構成要件3Bの「第1の読出手段」について,簡単に図示すると以下のとおりである。本件特許発明3のように非圧縮楽音データ(PCMデータ)に代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いる場合,「読出手段」は,PCMデータが読み出されて次のバッファに送られる手前までであり,ADPCMデータのときには,ADPCMデコーダによって伸長されたPCMデータを次のバッファに送る手前までをいうものである。 ROMMDCTデコーダPCMデータPCMデータ第1の読出手段第2の読出手段 本件特許発明3の第1の読出手段における終了通知は,上記の対比のとおり,終了通知の発信時が,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出し時ではなく,伸張及び出力が終了した時点に出力されるものである。 (被告の における終了通知は,上記の対比のとおり,終了通知の発信時が,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出し時ではなく,伸張及び出力が終了した時点に出力されるものである。 (被告の主張)本件特許発明3(請求項4)が引用する請求項1の楽音データ再生装置の装置システムは,次のような技術要素を備える。 ① 第1の読出手段② 第2の読出手段③ 圧縮楽音データを伸張して出力するデコーダ④ 切換手段そして,その相互の関係は,下図に示すとおりである(模式図。ただし,非圧縮データと表示したものはADPCM方式によって圧縮された圧縮データである。以下,この項において同じ。)。 ROMADPCMデコーダMDCTデコーダPCMデータPCMデータ第1の読出手段第2の読出手段 特許請求の範囲には,第1の読出手段と第2の読出手段とを備えること,第1の読出手段,第2の読出手段および切換手段を制御する制御手段を備えること,制御手段はループ再生指示を受けて第2の読出手段へ読出指令を出力し切換手段をデコーダの出力に切り換えること,制御手段は圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で第1の読出手段へ読出指令を出力し切換手段を第1の読出手段に切り換えること,第1の読出手段の読み出し終了通知を受けて,制御手段は再び第2の読出手段へ読出指令を出力データの出力に切り換えることが規定されている。 第1の読出手段,第2の読出手段は,制御手段及び切換手段の処理対象であり,第1の読出手段は読み出し終了通知を発するなど,特許請求の範囲の各特定事項と相互に強く関係している。つまり,本件特許発明3においては,記録媒体からの2つの入力系統(第1及び第2の の処理対象であり,第1の読出手段は読み出し終了通知を発するなど,特許請求の範囲の各特定事項と相互に強く関係している。つまり,本件特許発明3においては,記録媒体からの2つの入力系統(第1及び第2の読出手段)からそれに応じた2つの出力系統(第1の読出手段からの出力及びデコーダからの出力)という2つの系統を非圧縮データと圧縮データに対応して備え,この2つの系 統を制御手段が制御して,非圧縮データの読み出し開始はループ再生命令又は圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で開始し,圧縮データの読み出し開始は第1の読出手段の読み出し終了通知を受けて行う。そして2系統の出力を切換手段が切り換え,非圧縮データの出力と圧縮データの伸張したデータの出力が順次繰り返してされ,ループ再生が実行される。 この2系統の存在は,本件特許発明3が本来は先頭部分に由来する無音部分の消去のために,非圧縮データの読み出し,これに基づく出力と圧縮データの読み出しと伸張処理とを同時平行処理する必要があるためである。2系統存在するからこそ,平行処理が可能になるのである。 すなわち,例えば,本件特許発明3と同じデータ状態を有する第1の実施形態の変形例②(ただし,ADPCM方式による圧縮データではなく非圧縮データ)について見ると,先頭部分に由来する無音部分の消去のために,終端部のPCMデータの終了時点より一定時間前に圧縮データを読み出してデコードを開始するように構成している。一定時間は,発明の詳細な説明によればMサンプル以上の出力時間に相当する。この状況を理解するため,図解すると次のとおりである。 非圧縮データの読み出し処理と圧縮データの読み出し及びその伸張処理が同時平行処理として行われるのは,上図の第2の読出手段によ 理解するため,図解すると次のとおりである。 非圧縮データの読み出し処理と圧縮データの読み出し及びその伸張処理が同時平行処理として行われるのは,上図の第2の読出手段による圧縮データの読み出し開始から第1の読出手段による非圧縮データの読出終了までの間である。デコーダは,伸張済みのデータを保持しているから,切換手段により選択されるのを待っている。その状況を模式的に図解すると次のとおりである。 (2) 被告製品2~4の構成要件3B~3C及び3E充足性(原告の主張)ア被告製品2~4は,「各フレーズデータの圧縮オーディオデジタルデータの終端部の所定サンプル分(0~1024サンプルの間。MDCTのフレーム余りを調整する部分)のADPCM②データで構成されており,シーケンサは,まず,それらADPCM②データを読み出す」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)から,「前記記憶媒体から前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを読み出す」。そして,被告製品2~4は,「読み出されたADPCM②データは,ADPCMデコーダでPCMデータに伸張され,所定サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された所定サンプル分のPCMデータ(ADPCM②が伸張されたデータ)は,音量調整後バスバッファに1サンプルずつ出 力し,デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする。RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM②が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」のであるから,「前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出しを終了した時点で読み出し終了 した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」のであるから,「前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する」。 したがって,被告製品2~4は,構成要件3Bを充足する。 イ被告製品2~4は,「外部音声データROM(前記記憶媒体)」に記憶された「MDCTデータ」(前記圧縮楽音データ)を読み出す「読出手段」を有する(別紙被告製品2~4説明書図5参照)。また,被告製品2~4は,「バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,シーケンサはMDCTデータの読み出しを開始する」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。この「読出手段」は「前記記憶媒体から前記圧縮楽音データを読み出す」ものであり,構成要件3Cにおける「前記記憶媒体から前記圧縮楽音データを読み出す第2の読出手段」に該当する。 被告は,第1の読出手段と第2の読出手段をあえて区別していることからすれば,ADPCM(方式)圧縮データの読出手段とMDCT(方式)圧縮データの読出手段とは異なる読出手段であり,本件特許発明3には第1の読出手段と第2の読出手段を共用することは含まれない旨主張する。 しかし,ADPCM(方式)圧縮データを読み出す読出手段が存在し,またMDCT(方式)圧縮データを読み出す読出手段が存在すること自体に争いがあるのではない。ADPCM(方式)圧縮データの「読出手段」とMDCT(方式)圧縮データの「読出手段」とを読み出す手段は,これらが全く別個の装置でなければならないというわけではない。「第1の読出手段」は,外部音声ROMに記憶されたADPCM②データ読み出しA DPCMデコーダでPCMデータに み出す手段は,これらが全く別個の装置でなければならないというわけではない。「第1の読出手段」は,外部音声ROMに記憶されたADPCM②データ読み出しA DPCMデコーダでPCMデータに伸張してバスバッファに出力する。この読出し終了後を探知して(バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると)「第2の読出手段」が外部音声ROMに記憶されたMDCTデータを読み出す。大きな圧縮がなされているMDCTによる圧縮データを読み出す時と,ADPCMデータを読み出す時とで,読出手段は回路部材としては同じものであっても,データによって読み出しの動作が異なり,またデコードするデコーダーも異なるので出力先も異なり,別の動作が行われている。このように1つの装置が共用される場合であっても,複数のデータを別々の時点で読み出すのであるから,被告の主張は誤りである。 したがって,被告製品2~4は,構成要件3Cを充足する。 ウ被告製品2~4は,「MDCTデータの1フレーム分が伸張されてPCMデータとなり,バスバッファへの出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへMDCTデータのバスバッファへの出力が完了したことを通知する。シーケンサは,全てのMDCTデータの伸長とPCMデータのバスバッファへの出力が完了すると,次にADPCM②部分のデコードが必要なことを認識する。そして,バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,ADPCM②の読み出しを開始する。ADPCM②のデコードからバスバッファへの出力までの動作はADPCM①と同様である。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)から,MDCTデータを外部音声ROMから読出し,(MDCTデータを伸長した)PCMデータの「バスバッファ ファへの出力までの動作はADPCM①と同様である。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)から,MDCTデータを外部音声ROMから読出し,(MDCTデータを伸長した)PCMデータの「バスバッファへの出力が完了」したことが確実な状態で,「シーケンサ」がADPCMデータのデコードが必要なことを認識し,「バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断」して,ADPCM②データの読出し,出力を行う。このように,被告製品2~4では,MDCTデコーダ(前記デコーダ)を構成する IMDCTの出力(=MDCTデータをデコードして得られたPCMデータ)を,ADPCM②の読出手段(前記第1の読出手段)の出力を一時記憶したRAMの出力(=ADPCMデータをデコードして得られたPCMデータ)に,「シーケンサ」が切り換える。 また,被告製品2~4は,「後端部のADPCM②データを伸張してバスバッファへの出力が完了すると,次に,シーケンサに複数のフレーズが登録されている場合には次のフレーズの先頭から上記の動作を行い,この読み出しを登録されているすべてのフレーズの読み出しが終わるまで行い,その後,先頭のフレーズの先頭に戻って上記の動作を繰り返す(リピート再生が指定されていない場合は,登録されているすべてのフレーズのデコードが完了した時点でデコードを停止する)。一方,シーケンサに1つのフレーズしか登録されていない場合には,当該フレーズの先頭に戻って上記の動作を繰り返す」(別紙被告製品2の機能説明3.3)。そして,被告製品2~4は,フレーズの先頭にループすると,再び,「各フレーズデータの圧縮オーディオデジタルデータの先頭部は2048サンプル分のADPCM①データで構成されており,シーケンサは,まず,それらADPCM①デー ,フレーズの先頭にループすると,再び,「各フレーズデータの圧縮オーディオデジタルデータの先頭部は2048サンプル分のADPCM①データで構成されており,シーケンサは,まず,それらADPCM①データを読み出す。読み出されたADPCM①データは,ADPCMデコーダでPCMデータに伸張され,2048サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された2048サンプル分のPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)は,音量調整後バスバッファに1サンプルずつ出力し,デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする。RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。その通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分の デコードが必要なことを認識する。そして,バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,シーケンサはMDCTデータの読み出しを開始する。MDCTデータは,ハフマンデコードと逆量子化を施して復号化され,復号化された周波数領域のデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された周波数領域のデータをIMDCTで時間領域のPCMデータに変換後(フレーム単位の時間軸情報が得られる),音量調整をして1サンプルずつバスバッファに格納する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)から,ADPCM②データを外部音声ROMから読出し,(ADPCM②データを伸長した)PCMデータを出力し,「シーケンサ」が「MDCT部分のデコードが必要なことを認識」し,「バスバッファの空き容量を確認しな PCM②データを外部音声ROMから読出し,(ADPCM②データを伸長した)PCMデータを出力し,「シーケンサ」が「MDCT部分のデコードが必要なことを認識」し,「バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断」して,MDCTデータの読出し,デコード,出力を開始する。このように,被告製品2~4では,ADPCM②の読出手段(前記第1の読出手段)の出力を一時記憶したRAMの出力(=ADPCMデータをデコードして得られたPCMデータ)を,MDCTデコーダ(前記デコーダ)を構成するIMDCTの出力(=MDCTデータをデコードして得られたPCMデータ)に,「シーケンサ」が切り換える。 以上のように,第1の読出手段の出力とMDCTデコーダの出力とをシーケンサが切換えている。 したがって,「シーケンサ」が構成要件3Eにおける「切換手段」に該当し,被告製品は構成要件3Eを充足する。 エ被告は,被告製品2~4においては,ADPCM方式による圧縮データもMDCT方式による圧縮データも平行処理されることなく,シリアルに処理されるから1系統の入力と1系統の出力の構成となっているから,第1及び第2の読出手段を読み出しの際に制御したり,読出手段の読み出しによる終了通知により第2の読出手段による圧縮データの読み出しを命令 したり,出力を切り替えたりする制御手段も切替手段も備えていない旨主張する。 しかし,RAMからIMDCTを通らないデータの通り道(ADPCMデータを基とするデータの通り道)と,RAMからIMDCTを経るデータの通り道(IMDCTデータを基とするデータの通り道)の2つのデータの通り道があることは原告被告間に争いがない。そして,MDCTデータを外部音声ROMから読出し,(MD MからIMDCTを経るデータの通り道(IMDCTデータを基とするデータの通り道)の2つのデータの通り道があることは原告被告間に争いがない。そして,MDCTデータを外部音声ROMから読出し,(MDCTデータを伸長した)PCMデータが2つのデータの通り道の一方からバスバッファへ出力され,「バスバッファへの出力が完了」したことが確実な状態で,「シーケンサ」がADPCMデータのデコードが必要なことを認識し,「バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断」して,ADPCM②データの読出し,もう一方のデータの通り道からバスバッファへ出力を行うのであるから,MDCTの出力とADPCMの出力の切換えが行われている。 (被告の主張)ア被告製品2~4を用いたシステムは,次の要素を備える。 ① 1つの読出手段② ADPCM方式による圧縮楽音データを伸張するADPCMデコーダ③ MDCT方式による圧縮楽音データを伸張するMDCTデコーダ④ 1つのバスバッファただし,本件特許発明3の第1及び第2の読出手段という2つの読出手段並びに切換手段を備えない。 そして,その相互の関係は,下図に示すとおりである。 すなわち,読出手段が外部音声ROMから先頭のADPCM方式で圧縮されたフレーズデータを読み出し,読み出されたADPCM方式で圧縮されたフレーズデータをADPCMデコーダが伸張してバスバッファに蓄積する。引き続いて,読出手段が外部音声ROMからMDCT方式で圧縮されたフレーズデータを読み出し,読み出されたMDCT方式で圧縮されたフレーズデータをMDCTデコーダが伸張してバスバッファに蓄積する。 その後,読出手段が外 段が外部音声ROMからMDCT方式で圧縮されたフレーズデータを読み出し,読み出されたMDCT方式で圧縮されたフレーズデータをMDCTデコーダが伸張してバスバッファに蓄積する。 その後,読出手段が外部音声ROMから後部のADPCM方式で圧縮されたフレーズデータを読み出し,読み出されたADPCM方式で圧縮されたフレーズデータをADPCMデコーダが伸張しバスバッファに蓄積する。 バスバッファに蓄積された伸張後のフレーズデータを順次出力する。 本件特許発明3と被告製品2~4のシステムとの決定的相違点を挙げると次のとおりである。 ① 第1及び第2の別個の読出手段を備えるか(本件特許発明3),同一の読出手段を備えるか(被告製品システム)② 切換手段によって,ADPCMデータ又は圧縮楽音データの伸張後,伸張後データの何れかを切り換えて出力するか(本件特許発明3),あるいは,ADPCMデータがバスバッファに格納され,その後ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開後(伸張後)データがバスバッファに格納されて,これが順次出力するか(被告製品システム)この決定的相違点に基づき,本件特許発明3では,読出手段の読出終了通知が必須であるとともに,ループ再生指示を受けて第2の読出手段への読出指令とデコーダへの出力への切り換え,並びに,デコーダの伸張および出力終了時点での第1の読出手段への読出指令と第1の読出手段の出力に切り換える制御手段が不可欠である。 被告製品2~4のシーケンサは,ADPCM①及び②データの読み出しが終了したことを判別しないから,読出終了通知を出力することもない。 したがって,構成要件3Bを充足しない。 イ特許請求の範囲には,第1の読出手段と第2の読 及び②データの読み出しが終了したことを判別しないから,読出終了通知を出力することもない。 したがって,構成要件3Bを充足しない。 イ特許請求の範囲には,第1の読出手段と第2の読出手段とを備えること,第1の読出手段,第2の読出手段および切換手段を制御する制御手段を備えること,制御手段はループ再生指示を受けて第2の読出手段へ読出指令を出力し切換手段をデコーダの出力に切り換えること,制御手段は圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で第1の読出手段へ読出指令を出力し切換手段を第1の読出手段に切り換えること,第1の読出手段の読み出し終了通知を受けて,制御手段は再び第2の読出手段へ読出指令を出力データの出力に切り換えることが規定されているから,第1の読出手段と第2の読出手段が同一の読出手段であるときは,制御手段は読出指令の出力により読出手段を制御をすることはできず,また,切換手段による切 り換えもできないことになるから,共用されることは含まれていない。 第2の読出手段は,構成要件3Hによって,「ループ再生指示を受けて,前記第2の読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力する」と規定されているように,先端部の圧縮楽音データを読み出すものである。 被告製品2~4が取り扱う圧縮楽音データの先端部分は,圧縮楽音データではなく,ADPCM方式で圧縮されたデータであるから,第2の読出手段を備えない。 したがって,構成要件3Cを充足しない。 ウ被告製品2~4は,1系統の読出手段によりADPCMデータおよびMDCTデータを順次読み出し,ADPCM①データがデコード処理されたPCMデータ,MDCTデータがデコード処理されたPCMデータ,ADPCM②データがデコード処理されたPCM DPCMデータおよびMDCTデータを順次読み出し,ADPCM①データがデコード処理されたPCMデータ,MDCTデータがデコード処理されたPCMデータ,ADPCM②データがデコード処理されたPCMデータ,ADPCM①データがデコード処理されたPCMデータが順次(シリアルに)バスバッファに対して出力される(PCMデータであるからデータが揃い次第これを順次出力することによる不都合はない)。本件特許発明3のように2系統の読出手段によりそれぞれ読み出され,ADPCMデータのデコード処理後データと圧縮楽音データのデコード処理後データを切換手段によって切り換えない。 したがって,被告製品2~4は,「前記第1の読出手段の出力と前記デコーダの出力とを切り換える切換手段」は備えておらず,構成要件3Eを充足しない。 3-3 構成要件3Dの充足性(争点3-3)被告製品2~4が「デコーダ」を備えているか。 (原告の主張)被告製品2~4は,「MDCTデコーダ」を有している(別紙被告製品2~4の機能説明3.4)。具体的には,「MDCTデータは,ハフマンデコード と逆量子化を施して復号化され,復号化された周波数領域のデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された周波数領域のデータをIMDCTで時間領域のPCMデータに変換後(フレーム単位の時間軸情報が得られる),音量調整をして1サンプルずつバスバッファに格納する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。このように,「第2の読出手段」に読み出された「圧縮楽音データ」(MDCTデータ)は「MDCTデコーダ」により伸長される。 したがって,被告製品2~4は,構成要件3Dを充足する。 (被告の主張)被告製品2~4においては,外部音声データROMから,AD Tデータ)は「MDCTデコーダ」により伸長される。 したがって,被告製品2~4は,構成要件3Dを充足する。 (被告の主張)被告製品2~4においては,外部音声データROMから,ADPCM①圧縮データ及びMDCT圧縮データの両者を読み出し,それぞれの方式に応じた伸張をするデコード機能を備えたデコード部(演算部)を有するが,ADPCM①は「第2の読出手段によって読み出された圧縮楽音データ」ではないから,これを伸張して出力するデコーダもない。 したがって,被告製品2~4は,構成要件3Dを充足しない。 3-4 構成要件3F及び3Hの充足性(争点3-4)(1) 被告製品2~4が「制御手段」を備えているか(構成要件3Fの充足性)。 (原告の主張)被告製品2~4は,前記3-2(原告の主張)のとおり,「第1の読出手段」「第2の読出手段」「切換手段」を有する。 そして,被告製品2~4は,「シーケンサは…再生を繰り返すようにフレーズデータを読み出し,演算部にこれを出力する」ものであり,「先頭から末尾までの再生が繰り返される」(別紙被告製品2~4の機能説明3.2)ものである。具体的には,まず,ADPCM②の読出し(前記第1の読出手段)において,「シーケンサは,・・・バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,ADPCM②の読み出しを開始 する」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。このように,「シーケンサ」は「第1の読出手段」を「制御」している。 次に,MDCTの読み出し(前記第2の読出手段)において,「バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,シーケンサはMDCTデータの読み出しを開始する」(別紙被告製品2~4の機 CTの読み出し(前記第2の読出手段)において,「バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,シーケンサはMDCTデータの読み出しを開始する」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。このように,「シーケンサ」は「第2の読出手段」を「制御」している。 さらに,「シーケンサ」が「バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると」(別紙被告製品2~4の機能説明3. 3),ADPCM②の読出手段(前記第1の読出手段)の出力を一時記憶したRAMの出力(=ADPCMデータをデコードして得られたPCMデータ)とMDCTデコーダ(前記デコーダ)を構成するIMDCTの出力(=MDCTデータをデコードして得られたPCMデータ)との切り換えが行われるので,「シーケンサ」は「切換手段」を「制御」している。 以上のように,「シーケンサ」が,「第1の読出手段」,「第2の読出手段」および「切換手段」を制御する「制御手段」に該当する。 したがって,被告製品2~4は,構成要件3Fを充足する。 (被告の主張)被告製品2~4は,「第1の読出手段」,「第2の読出手段」,「切換手段」を有せず,これらを制御する「制御手段」も具備しないから,構成要件3Fを充足しない。 (2) 被告製品2~4が「第1手順」「第2手順」を実行するか(構成要件3Hの充足性)。 (原告の主張)ア上記(1)のとおり,被告製品2~4の「シーケンサ」が,「前記制御手段」に該当する。 被告製品2~4は,「リピート再生指示が与えられたことを伝達されたシーケンサは,各トラック毎に登録されている先頭フレーズの最初から登録されている最終フレーズの末尾までを再生を繰り返すようにフレーズデ 被告製品2~4は,「リピート再生指示が与えられたことを伝達されたシーケンサは,各トラック毎に登録されている先頭フレーズの最初から登録されている最終フレーズの末尾までを再生を繰り返すようにフレーズデータを読み出し,演算部にこれを出力する(・・・)。なお,シーケンサへのフレーズの登録を1曲(例えばフレーズ3のみ)としたときは,フレーズ3の先頭から末尾までの再生が繰り返される。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.2)。このように,シーケンサは,「リピート再生指示」を受けて,先頭フレーズの最初から登録されている最終フレーズの末尾までを再生を繰り返すのであり,「リピート再生指示」が「ループ再生指示」に当たる。 したがって,被告製品2~4は,「前記制御手段は,ループ再生指示を受けて,」に該当する。 イ被告製品2~4は,「シーケンサは・・・,バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,シーケンサはMDCTデータの読み出しを開始する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3. 3)。このように,シーケンサ(制御手段)は,「前記第2の読出手段」(MDCTの読出手段)へ「前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力する」。 そして,被告製品2~4において,シーケンサの指令によって読出しの開始された「MDCTデータは,ハフマンデコードと逆量子化を施して復号化され,・・・IMDCTで時間領域のPCMデータに変換後(フレーム単位の時間軸情報が得られる),音量調整をして1サンプルずつバスバッファに格納する」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。このように,シーケンサによって,バスバッファの空き容量を確認し,ADPCMデータの出力からMDCTデコーダによって伸長されたデータへの出力に切換える(「前記切換手段を 品2~4の機能説明3.3)。このように,シーケンサによって,バスバッファの空き容量を確認し,ADPCMデータの出力からMDCTデコーダによって伸長されたデータへの出力に切換える(「前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換える」)。 以上のとおり,被告製品2~4のシーケンサ(制御手段)は,「前記第2の読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換える第1手順」を実行する。 ウ被告製品2~4は,「MDCTデータの1フレーム分が伸張されてPCMデータとなり,バスバッファへの出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへMDCTデータのバスバッファへの出力が完了したことを通知する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。ここで,MDCTデータをPCMデータに伸長するものが,構成要件3Hの第2手順にかかわる「前記デコーダ」である。 また,伸長後のPCMデータが「バスバッファへの出力が完了した時点」が構成要件の「前記圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点」に当たる。そして,被告製品2は,上記の「出力が完了した」「通知」を受けると,「シーケンサは,全てのMDCTデータの伸長とPCMデータのバスバッファへの出力が完了すると,次にADPCM②部分のデコードが必要なことを認識する。そして,バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,ADPCM②の読み出しを開始する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。 このように,シーケンサは,ADPCM②の読出手段(「第1の読出し手段」)による読み出しを開始させるのであるから,構成要件の「前記第1の読出手段へ前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み うに,シーケンサは,ADPCM②の読出手段(「第1の読出し手段」)による読み出しを開始させるのであるから,構成要件の「前記第1の読出手段へ前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出し指令を出力する」を充足する。 次に,被告製品2~4においては,「読み出されたADPCM②データは,ADPCMデコーダでPCMデータに伸張され,所定サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された所定サンプル分のPCMデータ(ADPCM②が伸張されたデータ)は,音量調整後バスバッファに1サンプルずつ出力し,デコード部においてRAMからバスバ ッファに出力するサンプル数をカウントする。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。このように,MDCTデータの出力が終了した後に,続けてADPCM②データの出力(第1の読出手段の出力)への切換が行われる。 したがって,被告製品2~4は,「前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換える」。 以上より,被告製品2~4のシーケンサは,「前記デコーダによる前記圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で前記第1の読出手段へ前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換える第2手順」を行う。 エ以上のように,シーケンサは,「第1手順」と「第2手順」を,別紙被告製品2~4の機能説明3.3に記載されている「順に実行」する。 オ第1の読出し手段(ADPCM②の読出し)から読出されたADPCM②の出力については,以下のとおりである。 まず,ADPCM②に関する被告製品2~4の動作は,「読み出されたADPCM②データは,ADPCMデコーダでPC 読出し)から読出されたADPCM②の出力については,以下のとおりである。 まず,ADPCM②に関する被告製品2~4の動作は,「読み出されたADPCM②データは,ADPCMデコーダでPCMデータに伸張され,所定サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された所定サンプル分のPCMデータ(ADPCM②が伸張されたデータ)は,音量調整後バスバッファに1サンプルずつ出力し,デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする。RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM②が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。このように,ADPCM②の読出手段(「第1の読出手段」)により,記憶媒体から読出されたADPCMデータは,バスバッファに出 力され,「出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する」。記憶媒体から読出し完了が判別された後にされるこのような通知が,「読み出し終了通知」に該当する。 そして,「後端部のADPCM②データを伸張してバスバッファへの出力が完了すると,次に,シーケンサに複数のフレーズが登録されている場合には次のフレーズの先頭から上記の動作を行い,この読み出しを登録されているすべてのフレーズの読み出しが終わるまで行い,その後,先頭のフレーズの先頭に戻って上記の動作を繰り返す・・・。一方,シーケンサに1つのフレーズしか登録されていない場合には,当該フレーズの先頭に戻って上記の動作を繰り返す」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。 すなわち,シーケンサは,後端部のADPCM②の出力後に ケンサに1つのフレーズしか登録されていない場合には,当該フレーズの先頭に戻って上記の動作を繰り返す」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)。 すなわち,シーケンサは,後端部のADPCM②の出力後に,「その後,先頭のフレーズの先頭に戻って上記の動作を繰り返す」あるいは「当該フレーズの先頭に戻って上記の動作を繰り返す」(別紙被告製品2~4の機能説明3.3)とあるように,フレーズの先頭に戻って再生を行い「楽音データをループ再生させる」。 以上のように,被告製品2~4は,「前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて再び前記第1手順を実行することにより,前記楽音データをループ再生させる」。 カしたがって,被告製品2~4は,構成要件3Hを充足する。 (被告の主張)被告製品2~4は,そもそも構成要件3Fの「制御手段」を有していない。 さらに,第1の読出手段及び第2の読出手段も有していない。また,被告製品2~4は,「切換手段」も有していないから,「第1手順」及び「第2手順」のいずれも有していない。 被告製品2~4は,フレーズの終端(ADPCM②)までデコードが完了 すると,その次は,唯一の読み出し手段によって再びフレーズの先端部のADPCM①,MDCTデータ,ADPCM②を順に読み出して順次デコードする(シーケンサにフレーズデータが1つだけ登録されている場合)という手順によってリピート再生をするものである。 被告製品2~4は,(a)リピート再生指令を受けて,ADPCM①の読み出し・デコード指令を出力すること,(b)切換手段はなくADPCM①のデコード後データをバスバッファに出力すること,(c)中間部のMDCTデータのデコードが終了したのちこれに続くADPCM②データの読み ・デコード指令を出力すること,(b)切換手段はなくADPCM①のデコード後データをバスバッファに出力すること,(c)中間部のMDCTデータのデコードが終了したのちこれに続くADPCM②データの読み出し・デコードがなされるが,その読み出し・デコードは,MDCTデータのデコード後PCMデータに基づく発音が終了していない段階で行われること(バスバッファにはMDCTデータのデコード後データが残存しているところに引き続いてADPCM②データのデコード後データが書き込まれること),(d)ADPCM②のデコーダの出力に切り換える切換手段はないこと,(e)ADPCM②の読み出し終了通知はなく,また,ADPCM②のデコードしたPCMデータがバスバッファに書き込まれると(バスバッファに空き容量があることを前提に)先端部のADPCM①を読み出してデコードをするため,MDCTデータを読み出す指令は出力されないこと,という点で全く異なる。 したがって,被告製品2~4は,構成要件3Hを充足しない。 3-5 構成要件3Iの充足性(争点3-5)被告製品が「楽音データ再生装置」に該当するか。 (原告の主張)「楽音」とは,「音楽の音。音楽の素材になる音。」である(広辞苑第5版)。被告製品が再生する「楽曲(BGM)」や人を楽しませる「効果音」は「楽音」に含まれるものである。 これを再生する被告製品2~4は,「楽音データ再生装置」に該当し,構成 要件3Iを充足する。 (被告の主張)被告製品2~4は,構成要件3A~3Hを充足しないから,「ことを特徴とする楽音データ再生装置」にも該当せず,構成要件3Iを充足しない。 3-6 サポート要件違反の有無(争点3-6)(被告の主張)(1) 本件特許発明3は, 充足しないから,「ことを特徴とする楽音データ再生装置」にも該当せず,構成要件3Iを充足しない。 3-6 サポート要件違反の有無(争点3-6)(被告の主張)(1) 本件特許発明3は,ループ再生をする際に従来の技術は,繰り返し再生において曲の終端部と先頭部との間に無音部分が生じてしまう問題(段落【0002】)があるため,無音部分を作ることなくループ再生を行うことができる楽音データ再生装置を提供すること(段落【0003】)を目的にしたものである。 ループ再生を行うときは,ループ対象の楽音データの終端部と先端部が連結して循環して再生するから,当該連結部分に無音データが存在するときは,「繰り返し再生において曲の終端部と先端部との連結部に無音部分が生じてしまう」ことになる。したがって,当該連結部分の無音データを一体不可分に解消することが重要である。終端部に由来する無音部分を厳密に解消しても,先端部に由来する無音部分が存在してはその努力は無に帰する(技術的には無意味になる)。 本件特許3明細書の発明の詳細な説明においては,第1の実施形態,その変形①②及び第2の実施形態のみが記載され,いずれも,連結部における終端部に由来する無音部分および先端部に由来する無音部分の全部を一体不可分に解消している。 (2) 請求項1にかかる発明は,非圧縮楽音データの読み出し終了時点で出力される読み出し終了通知に基づき圧縮楽音データの読み出しを開始するもの であって,これでは,非圧縮楽音データの読み出し終了後,圧縮楽音データの伸長に要する時間分は圧縮楽音データに基づく楽音の出力ができないため無音部分が生じてしまうことになる。すなわち,請求項1は,明細書の発明の詳細な説明に開 楽音データの読み出し終了後,圧縮楽音データの伸長に要する時間分は圧縮楽音データに基づく楽音の出力ができないため無音部分が生じてしまうことになる。すなわち,請求項1は,明細書の発明の詳細な説明に開示された発明とは異なるものとなっている。 請求項4は,非圧縮データに代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いるものであるが,請求項1を引用する発明において,ADPCM方式により圧縮された圧縮楽音データの読み出し終了通知に基づき圧縮楽音データを読み出したのでは,圧縮楽音データの伸長に要する時間分は圧縮楽音データに基づく楽音の出力ができないため無音部分が生じてしまい,明細書に記載された本件特許発明3が意図する作用効果を奏することができない。つまり,制御部17が後部のADPCMデータの再生終了時点より一定時間前に圧縮楽音データ読出部13へ読み出し開始を指示する構成によって初めて所望の作用効果が生じる発明が明細書の発明の詳細な説明に記載されているが,請求項4(請求項1を引用する)はかかる記載とは異なる圧縮楽音データの読み出し開始時を特定しており,発明の詳細な説明に記載した発明とは異なる発明を特定している。この点において,本件特許発明3は特許法36条6項1号に反する。 (3) 発明の詳細な説明の記載においては,圧縮楽音データの無音部分の存在によるループ再生時の不都合が次のように記載されている。 「【0002】・・・上述した圧縮楽音データをゲーム機において使用する場合,例えばMPEGは1152サンプル,AACは1024サンプルを1フレームとし,このフレーム単位で再生処理を行うようになっているので,曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになる。このため,繰り返し再生 ルを1フレームとし,このフレーム単位で再生処理を行うようになっているので,曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになる。このため,繰り返し再生において曲の終端部と先頭部との間に無音部分が生じてしまう問題があった」そこで,このようなフレーム単位で圧縮・伸張・再生処理される圧縮楽音 データを含む楽音データを対象にして,ループ再生を行う際に不都合が生じることとなる圧縮楽音データの無音部分を包含しないように圧縮楽音データを作成したり,包含する無音データを削除したりする発明が発明の詳細な説明の項に記載されている。 ところが,原告が認めるように,「フレーム」は多義的である以上,「再生処理単位」とは「フレーム」を意味すると認定することはできない。このため,本件特許発明3の特許請求の範囲の記載においては,フレーム単位で圧縮処理・伸張処理・再生処理を行うものであるか否か特定をしていないことに帰し,フレーム単位で圧縮処理・伸張処理・再生処理を行う圧縮楽音データ以外のものを対象とする発明を包含することとなり,このため明細書に記載された以外の発明が記載されている。 この点において,本件特許発明3は特許法36条6項1号に反する。 (4) 請求項4は,「前記非圧縮楽音データに代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の楽音データ再生装置。」と規定するから,請求項1を引用する請求項4記載に係る発明についてみると,請求項1の非圧縮楽音データをADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データに置換する構成の発明である旨規定されており,請求項1の他の構成要素は全て請求項4記載に係る発明の構成要素である てみると,請求項1の非圧縮楽音データをADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データに置換する構成の発明である旨規定されており,請求項1の他の構成要素は全て請求項4記載に係る発明の構成要素である。 しかしながら,非圧縮楽音データをADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データに置換して所望の効果を奏するように構成するためには,請求項1の構成に対して次のような変更を施す必要があるといわざるを得ないすなわち,① ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを記憶媒体から読み出すが,読み出し終了通知を発しない構成とすること,② ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを伸張する第2の デコーダを備える構成とすること,③ 第2のデコーダがADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で当該終了通知を発する構成とすること,④ 制御手段は,圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で第1の読出手段の出力に切り換えるのではなく第2のデコーダの出力に切り換える切り換え手段を設ける構成とすることしかるに,請求項4に係る発明は,非圧縮楽音データに代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いる場合に当業者が発明の詳細な説明に記載された発明の効果を奏するために必須と思うはずの技術事項に反する規定がされている。 逆にいうと,請求項1の非圧縮楽音データに代替させてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いる場合において,請求項1が規定する事項をもってその余の特定事項とする本件特許発明3においては,その構成のゆえに本件特許発明の作用効果を奏するどころか,現実に動作することもできない,すなわち,当業者が,請 おいて,請求項1が規定する事項をもってその余の特定事項とする本件特許発明3においては,その構成のゆえに本件特許発明の作用効果を奏するどころか,現実に動作することもできない,すなわち,当業者が,請求項1を引用する請求項4の構成に従って実施することは不可能である。 上記①~④のようにその構成を変更することが仮に容易であるとしても,その容易性は,請求項1が規定する発明特定事項において非圧縮データの代わりにADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いる場合に当業者が行うべき変更の容易性であって,現にそれ以外に何らの変更を施さない本件特許発明3の発明特定事項の構成のもとで,所望の効果を奏するように実施することが容易であるわけではない(実は不可能である)。 このことは,すなわち,請求項1を引用する請求項4に係る発明(本件特許発明3)は,発明の詳細な説明に記載された発明ではないことに帰する。 この点において,本件特許発明3は特許法36条6項1号に反する。 (5) 本件特許発明3が規定するように,楽音データの末尾にADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを備え,当該ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読出終了時に先頭の圧縮楽音データの読み出し及び伸張を開始したのでは(第2の実施形態のように,付加された無音部分の出力を除外する構成を採用しない以上),窓関数の適用によって生じることになる無音部分の付加は避けられず,圧縮楽音データの末尾に無音部分が挿入されてしまう。 すなわち,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを,フレームを構成するサンプル数で除した剰余数であると限定しない場合に生じる不都合である。ところが,発明の詳細な説明においては,非圧縮楽音データをフレームを M方式によって圧縮された圧縮楽音データを,フレームを構成するサンプル数で除した剰余数であると限定しない場合に生じる不都合である。ところが,発明の詳細な説明においては,非圧縮楽音データをフレームを構成するサンプル数で除した剰余数とするもの以外の開示はなく,この点で,本件特許発明3は,発明の詳細な説明に開示された以外の発明を包含しているから,特許法36条6項1号に反する。 (6) 以上をまとめると,発明の詳細な説明に記載された発明と本件特許発明3とは次の点で齟齬している。 ① 発明の詳細な説明に記載された発明では,ループ再生に生じる連結部分において終端部に由来する無音部分及び先端部に由来する無音部分をいずれも解消する発明であるのに対し,本件特許発明3は先端部に由来する無音部分の解消ができないものである点② 発明の詳細な説明に記載された発明では,楽音データを圧縮する際にMDCT方式を利用するなど複数のサンプルデータを単位に一括処理するために,その伸張処理によっても複数のサンプルデータを単位に一括してデコードデータが得られるものを「フレーム」と説明して発明の特定事項としているのに対し,本件特許発明3では,楽音データの圧縮方式を何ら限定することなく技術用語ではなくその一義的意義が不明な「再生処理単位」による発明の特定をしているものである点 ③ 発明の詳細な説明に記載された発明では,楽音データを構成する非圧縮楽音データ(ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ)のサンプル数が,楽音データの総サンプル数(N)を1フレーム構成サンプル数で除した剰余数であるのに対し,本件特許3発明ではそのサンプル数の特定がない点(7) 以上のとおり,本件特許発明3は,発明の詳細な説明に記載した以外の発明が (N)を1フレーム構成サンプル数で除した剰余数であるのに対し,本件特許3発明ではそのサンプル数の特定がない点(7) 以上のとおり,本件特許発明3は,発明の詳細な説明に記載した以外の発明が記載されているというべきであるから,特許法36条6項1号に違反するものであり,同法123条1項4号により無効とされるべきである。 (原告の主張)(1)ア曲(楽音データ)の先端部に由来する無音部分とは,発音開始指示に応じて圧縮楽音データの最初のフレームをデコードした場合に生じる「圧縮データを読み始めるとき伸張処理に要する時間遅れ」に起因するものであり,再生すべき圧縮楽音データの中に無音データが含まれているわけではない。再生すべき圧縮楽音データの先頭がデコード出力されるまでの時間がMサンプル分の再生時間だけ遅れるのである。このMサンプル分の遅れ時間の間は無音状態であるが,この無音状態は,そこに再生すべき楽音データとして「0データ」が存在していることに起因するのではなく,単に,再生すべき楽音データのデコード出力が遅れているから音が出ないだけなのである。 これに対して,圧縮楽音データの終端部に由来する無音部分は,「曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれる」(本件特許3明細書段落【0002】)という理由によるものである。すなわち,この場合は,再生すべき圧縮楽音データの最後のフレーム中に無音データが明確に存在しているのである。よって,該最後のフレームをデコード出力すると,該最後のフレーム中に明確に存在する無音データが再生すべき楽音データとして出力され,無音状態として 再生がされる。このような終端部に由来する無音部分は,元の楽音データには存在していなかったものであるが,フレー 確に存在する無音データが再生すべき楽音データとして出力され,無音状態として 再生がされる。このような終端部に由来する無音部分は,元の楽音データには存在していなかったものであるが,フレーム単位で圧縮することにより,圧縮楽音データの末尾に否応なしに含まれてしまい,こうして,再生すべき楽音データの一部として無音データが存在することとなる。 したがって,先端部に由来する無音部分(伸張処理に要する時間遅れ)と,終端部に由来する無音部分(圧縮楽音データ中に明確に存在する「0データ」(無音データ))は,技術的意義が全く異なっている。 イ上記のとおり,「終端部に無音部分がないようにする発明」と「先端部に無音部分がないようにする発明」は,原因を異にする異なる課題を異なる解決手段によって解決するものであり,両者は異なる発明として把握することができるものである。 「終端部に無音部分がないようにする発明」に関する本件特許発明3(請求項1に従属する請求項4)が,発明の詳細な説明においてどのように記載されているのか,具体的に述べると次のとおりである。 本件特許3明細書及び図面に示された第1の実施形態においては,楽音データは,「【0009】・・・図2(a)に示すように,この実施形態においては,楽曲の先頭部と終了部が圧縮されていないPCM(PulseCodeModuration)楽音データ(以下,PCMデータという)であり,中央部が圧縮楽音データ(以下,圧縮データという)という構成の楽音データが使用される。また,圧縮データはMPEG規格によって圧縮されている。」というデータ構造からなっている。 このような第1の実施形態は,本件特許発明3の実施形態に加えて,「先端部に無音部分がないようにする発明」( データはMPEG規格によって圧縮されている。」というデータ構造からなっている。 このような第1の実施形態は,本件特許発明3の実施形態に加えて,「先端部に無音部分がないようにする発明」(伸張処理に要する時間遅れの問題を解決する発明)の一形態が組み合わされたものである。 すなわち,① 楽曲の終了部が圧縮されていないPCM楽音データであり,その 前の部分が「圧縮楽音データ」である点が本件特許発明3の実施形態に相当し,② 楽曲の先頭部が圧縮されていないPCM楽音データであり,その後の部分が「圧縮楽音データ」である点が公知の別発明の一形態に相当する。 第1の実施形態における,「【0011】・・・先頭のMサンプルをPCMデータによってハードディスク等の記憶媒体に記憶させる(ステップS4)。ここで,Mサンプルとは,図2(b),(c)に示すように,圧縮データの伸張を開始してから第1番目の伸張済みサンプルを出力するまでに要する時間に対応するサンプル数である。・・・」「【0016】・・・ループ再生の指示を受けた制御部17は,まず,楽音データの先頭アドレスをPCMデータ読出部12へ出力してPCMデータの読み出しを指示し,次に,圧縮データの先頭アドレスを圧縮データ読出部13へ出力して圧縮データの読み出しを指示し,次いで,切換部15をPCMデータ読出部12の出力に切り換える(図7の時刻t1)。・・・PCMデータ読出部12は,楽音データの先頭部のPCMデータを全て出力した時点で,制御部17へ出力終了を通知する(時刻t2)。制御部17はこの終了通知を受け,切換部15をデコーダ14の出力に切り換える(図7(c)参照)。」「【0017】一方,圧縮データ読出部13は,制御部17からの読み出し 力終了を通知する(時刻t2)。制御部17はこの終了通知を受け,切換部15をデコーダ14の出力に切り換える(図7(c)参照)。」「【0017】一方,圧縮データ読出部13は,制御部17からの読み出し指示を受け,ROM11から圧縮データを順次読み出し,デコーダ14へ出力する。デコーダ14はその圧縮データを伸張し,伸張済みデータを切換部15へ出力する。ここで,前述したように,先頭部のPCMデータのサンプル数Mは,その読み出し時間が,デコーダ14が圧縮データ読出部13から最初のデータを受けた時点から第1番目の伸張済みデータを出力するまでの時間に一致するように決められている。したがって,制御部17がPCMデータ読出部12から終了通知を受けて切 換部15を切り換えた時点に一致するタイミングで,デコーダ14から第1番目の伸張済みデータが出力される。以後,デコーダ14から順次伸張済みデータが出力される。・・・」等の記載から明らかなように,楽曲の先頭部が圧縮されていないPCM楽音データであり,その後の部分が「圧縮楽音データ」である」という公知の別発明の一形態とは,「圧縮楽音データ」の伸張・出力にあっては,デコーダ14が圧縮データ読出部13から最初のデータを受けた時点から第1番目の伸張済みデータを出力するまでの時間に相当する時間遅れがあるため,それが発音開始時間遅れとなることに鑑み(公知の別発明の課題),楽曲の先頭部に圧縮されていないPCM楽音データを配置することにより(公知の別発明の解決手段),時間遅れを生ずることなく発音開始させるようにしたものである(公知の別発明の作用効果)。 これに対して,本件特許発明3は,「最後のフレームの後部にある無音部分」を作ることなくループ再生を行うことを課題としており,そのための解決手段を具備し ある(公知の別発明の作用効果)。 これに対して,本件特許発明3は,「最後のフレームの後部にある無音部分」を作ることなくループ再生を行うことを課題としており,そのための解決手段を具備し,それに対応する作用効果を奏するものであるから,上記の公知の別発明の課題,解決手段,作用効果とは明らかに異なるものである。 ウ第1の実施形態における,「【0011】・・・次に,上記Mサンプルに続くINT{(N-M)/1152}×1152サンプル,すなわち,1フレームのサンプル数である1152で割り切れる数のサンプルを圧縮して記憶媒体に記憶させる(ステップS5;図4,図5参照)。次に,最後に残ったMOD{(N-M)/1152}サンプルをPCMデータによって記憶媒体に記憶させる。・・・」「【0018】次に,圧縮データ読出部13は,ROM11内の圧縮データを全て読み出した時点で制御部17へ読み出し終了を通知する(時刻t3)。制御部17はこの通知を受け,予め設定されている一定時間Tが経過後,PCMデータ読出部12へ楽音 データの後部のPCMデータの先頭アドレスを出力してPCMデータの読み出しを指示し,次いで,切換部15をPCMデータ読出部12の出力に切り換える(時刻t4)。ここで,時間Tとは,圧縮データの最後のデータがROM11から読み出されデコーダ14へ入力された時点から,その最後のデータが伸張されデコーダ14から出力されるまでの時間である。」「【0019】制御部17から読み出し指示を受けたPCMデータ読出部12は,ROM11から楽音データの終了部のPCMデータを順次読み出し,切換部15を介してD/A変換器16へ出力する。これにより,楽音データの終了部のPCMデータに基づく楽音が発生する。そして,PCMデータ読出部12は,楽 データの終了部のPCMデータを順次読み出し,切換部15を介してD/A変換器16へ出力する。これにより,楽音データの終了部のPCMデータに基づく楽音が発生する。そして,PCMデータ読出部12は,楽音データの終了部のPCMデータを全て出力した時点で,制御部17へ出力終了を通知し(時刻t5),次いで,再び楽音データの先頭部のPCMデータを順次読み出し,切換部15を介してD/A変換器16へ出力する。これにより,楽音データの最後の音と最初の音が連続した状態で楽音再生が再び行われる。」等の記載が本件特許発明3の本質的部分の実施形態に対応している。すなわち,「1フレームのサンプル数である1152で割り切れる数のサンプル」を「圧縮データ」として記憶し,その後の残りのサンプル(MOD{(N-M)/1152}サンプル)を「楽音データの終了部のPCMデータ」として記憶していることにより,「楽音データの終了部のPCMデータ」には無音部が存在していないこととなり,楽音データの終了部から引き続いて,楽音データの先頭部に移行するときに,終了部の無音部が介在することなく,楽音データの先頭部に移行することができるように構成されている。 以上から理解できるように,第1の実施形態において,本件特許発明3の本質的部分の実施形態は,「楽音データの終了部のPCMデータを全て出力した時点で,制御部17へ出力終了を通知し(時刻t5),次いで,再び楽音データの先頭部のPCMデータを順次読み出し」という形態から なっており,これは,要するに,楽音データの終了部のPCMデータをすべて出力し終えたとき,楽音データの先頭部に戻る形態であり,楽音データの終了部のPCMデータには無音部がないため,楽音データの終了部から楽音データの先頭部に戻るときに終了部の無音部が介在す ータをすべて出力し終えたとき,楽音データの先頭部に戻る形態であり,楽音データの終了部のPCMデータには無音部がないため,楽音データの終了部から楽音データの先頭部に戻るときに終了部の無音部が介在することがない,という本件特許発明3の課題を解決する作用効果を奏する。 本件特許発明3の課題は,楽曲を続けて繰り返し再生する際に,最後のフレームの後部に生じる無音部分を解消することにあるのであり,曲の先頭部を発音開始するに当たって時間遅れが生じることとは無関係である。 その意味で,第1の実施形態においては,曲の先頭部を発音開始するにあたって,公知の別発明の考えを採用して,再生開始に時間遅れが出ないように工夫しているが,そのような再生開始に時間遅れが出ないようにする工夫とは別に,最後のフレームの後部に生じる無音部分を解消するよう,本件特許発明3に従う解決手段の一実施形態を上述のように開示しているので,本件特許発明3に従う一実施形態を示すものである。 したがって,特許請求の範囲(請求項1に従属する請求項4)に記載された本件特許発明3は,第1の実施の形態として発明の詳細な説明に記載された発明である。 (2) 本件特許発明3においては,特許請求の範囲において「前記圧縮楽音データは,楽音データの再生における所定の再生処理単位の整数倍のデータサイズを有し,」と記載されており,一方,明細書段落【0002】において「例えばMPEGは1152サンプル,AACは1024サンプルを1フレームとし,このフレーム単位で再生処理を行うようになっている」と記載されている。このことから,特許請求の範囲における「所定の再生処理単位」とは,発明の詳細な説明に記載された「フレーム単位で再生処理を行う」という「再生処理」の「単位」(フレーム単位)に対応して 記載されている。このことから,特許請求の範囲における「所定の再生処理単位」とは,発明の詳細な説明に記載された「フレーム単位で再生処理を行う」という「再生処理」の「単位」(フレーム単位)に対応していることが明らかである。このように,特許請求の範囲における「所定の再生処理単位」と, 発明の詳細な説明に記載された「フレーム単位で再生処理を行う」という「再生処理」の「単位」(フレーム単位)との間には明確な対応があり,どちらの側からでもその対応性を説明することができる。 また,本件特許2明細書においては,例えば,段落【0002】において「例えばMPEGは1152サンプル,AACは1024サンプルを1フレームとし,このフレーム単位で再生処理を行うようになっているので,」と記載されており,段落【0009】~【0015】等の実施例においては,サブバンド符号化方式に従う実施例が示されていることから明らかなように,本件特許2明細書及び図面の記載においては,MDCT方式に従うフレーム概念に限らず,サブバンド符号化方式に従うフレーム概念も示されている。 (3) ADPCM方式の圧縮は本件特許発明3以前から周知のものである。 「非圧縮楽音データ」に代えて「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」を用いるということは,第1の実施態様における「PCMデータ」を「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」に置き換えればよいことであり,「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」を伸張して非圧縮のPCMデータにしたものを,第1の実施態様の「PCMデータ」と同じく再生するだけのことである。 例えば,再生しようとする楽曲データの全体のサンプル数がNサンプルであり,1フレームが1152サンプルであるとすると,本件特許発明 態様の「PCMデータ」と同じく再生するだけのことである。 例えば,再生しようとする楽曲データの全体のサンプル数がNサンプルであり,1フレームが1152サンプルであるとすると,本件特許発明3に従えば,前が「圧縮楽音データ」,終端部が「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」となり,前にくる「圧縮楽音データ」においては,被告も自認しているとおり必然的に1フレーム=1152サンプル単位で圧縮され,かつ,まだ楽曲データ全体の終端部には至っていないから,最後の「圧縮楽音データ」のフレームには無音部分が入り込む余地がない。そして,全体のNサンプルから,「圧縮楽音データ」として圧縮された1フレーム=1152サンプルの整数倍のサンプル数を引いた残りが,終端部の「ADP CM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」となる。 3-7 明確性要件違反の有無(争点3-7)(被告の主張)(1) 本件特許発明3(請求項1を引用する請求項4)の特許請求の範囲に記載された「楽音データの再生における所定の再生処理単位」について,明細書の発明の詳細な説明の項には,請求項の記載を引用する形式で課題を解決するための手段についての記載があるが(段落【0004】~【0007】),他には,次の記載があるのみである。 「【0002】上述した圧縮楽音データをゲーム機において使用する場合,例えばMPEGは1152サンプル,AACは1024サンプルを1フレームとし,このフレーム単位で再生処理を行うようになっているので,曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになる。」「フレーム」は多義的な概念であるが,,本件特許発明3の発明の詳細な説明において用いられる「フレーム」は が規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになる。」「フレーム」は多義的な概念であるが,,本件特許発明3の発明の詳細な説明において用いられる「フレーム」は,楽音データを圧縮する際にMDCT方式を利用するなど複数のサンプルデータを単位に一括処理するために,その伸張処理によっても複数のサンプルデータを単位に一括してデコードデータが得られるものをもって限定的に「フレーム」と説明している。しかし,この発明の詳細な説明において限定的な意味をもって使用される「フレーム」を「再生処理単位」であるとする定義がされているわけではなく,また,特許請求の範囲において,圧縮楽音データがどのような方式によるものであるかも特定されていない。MPEG1-レイヤ2では「フレーム」を1152サンプル単位としながら,PQMFは32個のデータを単位として行なっており,1152サンプルを再生処理単位に相当するとすれば,同様に32サンプルも再生処理単位に相当することとなり,原告のように「再生処理単 位」を適宜当てはめて読み替えてよいことにはならないというべきである。 したがって,「再生処理単位」について,これを楽音データを圧縮する際にMDCT方式を利用するなど複数のサンプルデータを単位に一括処理するために,その伸張処理によっても複数のサンプルデータを単位に一括してデコードデータが得られる複数のサンプルデータ単位を意味するとすることは到底できない。この点において,本件特許発明3は特許法36条6項2号に反するものといわざるを得ない。 (2) 上記のとおり,本件特許発明3の特許請求の範囲の記載には,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読出手段及び同データの伸張処理手段の記載がなく,引用する請求項1の第1 ない。 (2) 上記のとおり,本件特許発明3の特許請求の範囲の記載には,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読出手段及び同データの伸張処理手段の記載がなく,引用する請求項1の第1の読出手段及び圧縮楽音データのデコーダとの関係が不明であって,発明が明確であるとすることができない。 さらに,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの取扱いが公知でありその実施が当業者に自明であり,発明の詳細な説明における第1の実施形態の変形例①において当業者が非圧縮楽音データの代わりにADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いる場合に所定の変更した構成を採用することが容易にできるとしても,そのことと,本件特許発明3の特定事項のもとにおいて請求項1の「非圧縮楽音データ」に代わった「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」をその構成の一部に備える楽音データのループ再生が可能であるかを混同してはならない(当業者が想定する構成の変更を反映した特許請求の範囲が本来記載されるべきである。 この点で,発明の詳細な説明における第1の実施形態の変形例①に所定の変更を加えることが当業者に想定されるとしても当該想定された発明との齟齬は明らかである)。この点において,本件特許発明3は根本的な誤りをしている。 上記発明特定事項による発明は実施不可能であって,これによって所望の 効果を奏することができないのであるから,本件特許発明3の内容は不明に帰し,記載不備であるといわざるを得ない。 (3) 以上の次第であるから,本件特許発明3の特許請求の範囲の記載は,発明を特定するものとして不明瞭であるから,特許法36条6第2号に反し,同法123条1項4号により無効とされるべきである。 (原告の主張)(1) 本件特許発明3の特許請求の範囲の記載は,発明を特定するものとして不明瞭であるから,特許法36条6第2号に反し,同法123条1項4号により無効とされるべきである。 (原告の主張)(1) 本件特許3明細書の段落【0002】において「フレーム単位で再生処理を行うようになっている」と記載されており,実施例においても「フレーム単位で再生処理を行う」構成が説明されているので,特許請求の範囲における「前記圧縮楽音データは,楽音データの再生における所定の再生処理単位の整数倍のデータサイズを有し,」とは,発明の詳細な説明に記載された「フレーム単位で再生処理を行うようになっている」という,そのような「再生処理単位」の整数倍のデータサイズに相当することが明白である。 被告は,MPEG1-レイヤ2では「フレーム」を1152サンプル単位としながら,PQMFは32個のデータを単位として行なっており,1152サンプルを再生処理単位に相当するとすれば,同様に32サンプルも再生処理単位に相当することになる旨主張する。しかし,PQMFにおける32個のデータ単位とは,再生演算途中の中間的な形態であるにすぎない。このような再生演算途中の中間的な形態にかかわらず,MPEG1-レイヤ2においては,本件発明が課題としているような終端部の無音部分は,1152サンプルからなる再生処理単位においてしか問題とされない。したがって,これをもって,本件特許発明3は明確でないということはできない。 (2) 被告は,非圧縮データ(PCMデータ)に代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いる際には,単に,前者を後者に置き換えるだけでは足りず,後者を用いるための構成が必要であるところ,発明の詳細な説明にはそのような構成は記載されていない旨主張する。 された圧縮楽音データを用いる際には,単に,前者を後者に置き換えるだけでは足りず,後者を用いるための構成が必要であるところ,発明の詳細な説明にはそのような構成は記載されていない旨主張する。 しかし,「非圧縮楽音データ」に代えて「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」を用いるということは,第1の実施態様における「PCMデータ」を「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」に置き換えればよいことであり,発明の詳細な説明に明らかに記載されている。 また,「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」それ自体及びその読み出し方や伸張処理法などは本件特許出願前より周知である(例えば甲3・5頁12行~6頁9行)から,特段の具体的記載が明示されていないとしても,当業者にとっては実施可能である。 また,請求項1に対する請求項4の当てはめも,すべて「非圧縮楽音データ」を「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」に置き換えればよいので,不明瞭な点はない。被告が必要であると主張する「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」をデコードするための構成は周知であり,「非圧縮楽音データ」に代えて「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」を用いる,という定義の中に当然に含まれている。すなわち,「非圧縮楽音データ」に代えて「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」を用いた場合,請求項1の「第1の読出手段」における「非圧縮楽音データを読み出す」という構成は,代替的に記憶した「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」を読み出すことが「非圧縮楽音データを読み出す」ことと等価となるものであるから,読み出した「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」をデコードすることを当然に含む構 縮された圧縮楽音データ」を読み出すことが「非圧縮楽音データを読み出す」ことと等価となるものであるから,読み出した「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」をデコードすることを当然に含む構成となる。 なお,公知のように,「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」の読み出し及び伸張に要する時間遅れは,フレーム単位で処理しなければならない「圧縮楽音データ」の読み出し及び伸張に要する時間遅れとは比べものにならないほど短いものであり,そのために,変形例②として,PCMデータに代替しうるものとして「ADPCM方式によって圧縮された圧縮 楽音データ」を挙げているのである。したがって,請求項1に対する請求項4の当てはめにおいても,「第1の読出手段」が「前記記憶媒体から前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを読み出す」ことが明らかにされていれば,本件特許発明3にとって必須の構成が記載されているといえるのである。 3-8 実施可能要件違反の有無(争点3-8)(被告の主張)本件特許発明3が引用する請求項1の「非圧縮データに代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いる」ことに関し,発明の詳細な説明の項には,課題を解決しようとする課題の項を除き,唯一,段落【0021】の次の記載があるだけである。 「【0021】なお,上記の実施形態において,楽音データの先頭部および終了部にPCMデータ,すなわち圧縮されていないディジタル楽音データを配置したが,これに代えて,例えばADPCM等の圧縮手法を用いた,伸張が短時間で行えるディジタル楽音データを配置してもよい。」もっとも,当業者は,この置換により所望の動作をして所望の効果を奏するように,その構成を変更することには容 等の圧縮手法を用いた,伸張が短時間で行えるディジタル楽音データを配置してもよい。」もっとも,当業者は,この置換により所望の動作をして所望の効果を奏するように,その構成を変更することには容易に想到するかもしれない。しかし,本件特許発明3は,請求項1の「非圧縮楽音データ」を「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」に代えることだけを規定したから,上記のような当業者が行うべき他の構成の変更を施すことのない構成において,発明の詳細な説明において奏すべきものとされる「無音部分を作ることなくループ再生を行うことができる」という作用効果をどのように達成できるのかは,発明の詳細な説明には何らの開示がない。 したがって,「請求項1の非圧縮データに代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いる」ことを規定した本件特許発明3(請求項1 を引用する請求項4)は,明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であって,当業者が実施することができないものであり,本件特許発明3は特許法36条4項1号に反するから,同法123条1項4号により無効とされるべきである。 (原告の主張)前記3-7(原告の主張)(2)のとおり,ADPCM方式の再生処理技術自体は周知であるから,発明の詳細な説明に特段の具体的記載が明示されていないとしても,当業者にとっては実施可能である。 3-9 乙13号証を主引例とする進歩性の欠如(争点3-9)(被告の主張)(1) 乙13号証には,以下のような記載がある。 「2.特許請求の範囲所定周期分のアナログ波形に対応するディジタル・データを,所定数のサンプル毎のブロック単位で圧縮データ・ワードとその圧縮に関するパラメータとを生成し,所定数の圧縮データ・ワードとそのパラメ 所定周期分のアナログ波形に対応するディジタル・データを,所定数のサンプル毎のブロック単位で圧縮データ・ワードとその圧縮に関するパラメータとを生成し,所定数の圧縮データ・ワードとそのパラメータを含む1または複数の圧縮符号ブロックを構成して記憶媒体にストアするようにした音源データ圧縮符号化方法であって,上記1または複数の圧縮符号ブロックのうち少なくとも始めのブロックの始めの所定数のワードはストレートPCMのワードがストアされるようにしたことを特徴とする音源データ圧縮符号化方法。」「〔課題を解決するための手段〕・・・すなわち第1図において,ルーピング区間LPが上記アナログ波形の所定周期分に対応し,このルーピング区間LP内の始めの圧縮符号ブロックBLの始めの所定数のワードをストレートPCMワードWSTとしている。このストレートPCMワードWSTの個数は,圧縮符号化の際のフィルタの次数以上とすればよい。」(2頁右下欄19行~3頁左上欄6行)「〔実施例〕・・・この繰り返し波形の所定のn周期分(nは整数)をルー ピング区間LPとし,この区間LPの始点及び終点をそれぞれルーピング開始点LPS及びルーピング終端点LPE(ルーピングポイント)と表している。そして上記フォルマント部分FR及びルーピング区間LPのアナログ波形に対応するディジタル・データを記憶媒体に記録し,再生時にはフォルマント部分FRの再生に続いてルーピング区間LPを繰り返し再生することにより,任意の長時間にわたって楽音を発生させることができる。 ここで,このようなルーピング区間LPを含む楽音データをメモリ等の記憶媒体にストアするに先立ってビット圧縮符号化することにより,データ量の低減を図るわけであるが,本実施例においては,本件出願人が先に特開昭61 のようなルーピング区間LPを含む楽音データをメモリ等の記憶媒体にストアするに先立ってビット圧縮符号化することにより,データ量の低減を図るわけであるが,本実施例においては,本件出願人が先に特開昭61-158217号公報,特開昭62-008629号公報あるいは特開昭62-003516号公報等において提案しているビット圧縮符号化方式,すなわち波高値データの所定数のサンプル(hサンプル)毎にブロック化しこのブロック単位で最適のビット圧縮を施すような高能率符号化方式を用いるものとし,この高能率ビット圧縮符号化方式について,第3図を参照しながら概略的に説明する。」(3頁右上欄16行~左下欄20行)「このビット圧縮符号化システムにおいては,上記入力信号(波高値データ)x(n)を,所定数のサンプル(hサンプル)毎にブロック化して,各ブロック毎に最適の特性の上記エンコード・フィルタ74を選択するようにしている。これは互いに異なる特性を有する複数の(例えば4個の)エンコード・フィルタを予め設けておき,これらのフィルタのうち最適の特性の,すなわち最も高い圧縮率を得ることのできるようなフィルタを選択することで実現し得るものである。」(3頁右下欄19行~4頁左上欄8行)「ここで第4図は,このようなパラメータ情報および上記ビット圧縮(エンコード)されたサンプル・データ(上記出力d(n))のlブロック分の一具体例を示すものである。この第4図におけるlブロック分のデータとしては,1バイトのヘッダ情報(パラメータ情報)RFと8バイトのサンプル用 データDA0~DB3で構成されている。」(4頁右下欄15行~5頁左上欄1行)「次に,再生側のデコーダ90の入力端子91には,上記エンコーダ70の出力端子82からの出力d(n)が伝送され, データDA0~DB3で構成されている。」(4頁右下欄15行~5頁左上欄1行)「次に,再生側のデコーダ90の入力端子91には,上記エンコーダ70の出力端子82からの出力d(n)が伝送され,あるいは記録,再生されることによって得られた信号d’(n)が供給されている。この入力信号d’(n)は利得G-1のシフタ92を介し加算器93に送られている。加算器93からの出力x’(n)は予測器94に送られて予測信号x’(n)となり,この予測信号x’(n)は上記加算器93に送られて上記シフタ92からの出力d”(n)と加算される。この加算出力がデコード出力x’(n)として出力端子95より出力される。」(5頁左上欄13行~右上欄4行)「このような構成のビット圧縮符号化システムにおいて,上記第2図のルーピング区間LPのルーピング開始点LPsから始まるブロック(ルーピング開始ブロック)の最初の所定数のワードを,第1図に示すように,ストレートPCMデータのワードWSTとする。この所定数としては,上記エンコード・フィルタ74の次数(予測フィルタの次数)の最大値と同じかあるいはそれ以上とすればよく,上記具体例ではエンコード・フィルタ74の最大次数が2次であるから,2個以上のストレートPCMデータのワードWSTを配置するようにすればよい。このためには,例えばエンコード出力端子82の直前に切換スイッチを設け量子化器76からの圧縮データとストレートPCMデータとを切換選択して出力可能と成し,上記ルーピング開始点LPSからの上記所定数ワードの間は上記切換スイッチによりストレートPCMデータを選択して出力するように構成すればよい。なお,レンジ情報はブロックで独立であるから,元のサンプルのワード長の例えば16ビットのストレートPCMデータをそのまま出力する代 よりストレートPCMデータを選択して出力するように構成すればよい。なお,レンジ情報はブロックで独立であるから,元のサンプルのワード長の例えば16ビットのストレートPCMデータをそのまま出力する代わりに,同じブロックのレンジ情報に対応するビットだけ圧縮した例えば4ビットのストレートPCMデータを出力するようにしてもよい。」(5頁左下欄2行~右下欄5行) 「この第5図において,メモリ1には,上記圧縮符号化されたサンプル・データやパラメータ情報(第4図のヘッダ情報RF,付属情報)等(音源データ)が記憶されており,さらにルーピング開始アドレス(上記ルーピング開始ブロックのメモリ内アドレス)等も例えばディレクトリ情報として記憶されている。この少なくともルーピング開始アドレスは,メモリ1のデータバスを介してアドレス・レジスタ2に送られて一時記憶され,ルーピングの終了直前にアドレス・カウンタ3にプリセットされるようになっている。デコーダ4はアドレス・カウンタ3からの出力及び上記ループ・スタート・フラグLSFに応じて,上記ルーピング開始ブロック内の始めの上記所定数ワードの間(ストレートPCMデータが出力される間)ストレートPCM切換制御信号を出力するものである。」(5頁右下欄10行~6頁左上欄6行)「このようにメモリ1から読み出される音源データの内,上記パラメータ情報(第4図のヘッダ情報RF,付属情報)は,付属情報レジスタ5に送られて一時記憶され,上記圧縮符号化されて得られた4ビットの圧縮データ(第4図のサンプル・データDA0H~DB3L)はデータ・レジスタ6に送られて一時記憶される。また,メモリ1からの音源データの内の上記ルーピング開始ブロックの始めの所定数ワードのストレートPCMデータは,マルチプレクサ8に送られる ~DB3L)はデータ・レジスタ6に送られて一時記憶される。また,メモリ1からの音源データの内の上記ルーピング開始ブロックの始めの所定数ワードのストレートPCMデータは,マルチプレクサ8に送られる。」(6頁左上欄19行~右上欄8行)「このような第5図中のデコーダ20において,上記4ビットの圧縮データについては,前述した第3図のデコーダ70と同様なデコード処理が施され,例えば16ビットの波高値データとなって出力レジスタ16を介してD/A変換器17に送られ,アナログ楽音信号として出力端子18より取り出される。」(6頁左下欄15行~右下欄1行)「ルーピング終端点を含むブロックの音源データを読み出している際には上記付属情報のループ・エンド・フラグLEFが立ち,このループ・エンド・フラグLEFに基づいてルーピング終端点に達した時点でアドレス・レジス タ2からのルーピング開始アドレスをアドレス・カウンタ3にプリセットする。 従って,アドレス・カウンタ3はアドレスバスを介してメモリ1のルーピング開始ブロックをアクセス開始し,上記始めの所定数のワードは上記ストレートPCMデータを読み出す。このストレートPCMデータを読み出している間は,デコーダ4が前記ストレートPCM切換制御信号を出力してマルチプレクサ8及び係数発生回路9に送り,このストレートPCMデータをそのまま出力レジスタ16に送るような制御がなされる。すなわち,マルチプレクサ8はメモリ1からの上記ストレートPCMデータを選択して出力し,係数発生回路9は0次のフィルタを構成するような乗算係数を係数乗算器12,13に送るから,加算器10からの出カには上記ストレートPCMデータがそのまま得られることになる。」(6頁右下欄4行~7頁左上欄5行)第5図は タを構成するような乗算係数を係数乗算器12,13に送るから,加算器10からの出カには上記ストレートPCMデータがそのまま得られることになる。」(6頁右下欄4行~7頁左上欄5行)第5図は次のものである。 (2) 乙13号証に記載された発明乙13号証では,波高値データの所定数のサンプル(hサンプル)毎にブロック化しこのブロック単位で最適のビット圧縮を施すような高能率符号化方式により楽音データが圧縮されている。そして,ルーピング開始点LPsから始まるブロック(ルーピング開始ブロック)の最初の所定数のワードを,第1図に示すように,ストレートPCMデータのワードWSTとするから,非圧縮の楽音データとしてストレートPCMデータが設けられ,ストレートPCMデータ及び圧縮データが楽音データとしてメモリ1に格納されている。 乙13号証では,第1図のようにルーピング期間では,ルーピング先頭部分のストレートPCM,これに続く圧縮データがメモリ1に格納され,ルーピング期間に基づく発音をする際には,メモリ1に格納されたルーピング期間の先頭部分のストレートPCM,これに続く圧縮データ,そして先頭のストレートPCMというように順次ルーピング期間の楽音データが繰り返し読み出される。 乙13号証のデコーダ4はアドレス・カウンタ3からの出力及び上記ループ・スタート・フラグLSFに応じて,上記ルーピング開始ブロック内の始めの上記所定数ワードの間(ストレートPCMデータが出力される間)ストレートPCM切換制御信号を出力する。したがって,ストレートPCMの読み出しが終了すると,このストレートPCM切換制御信号の出力は停止する。 乙13号証では,メモリ1から読み される間)ストレートPCM切換制御信号を出力する。したがって,ストレートPCMの読み出しが終了すると,このストレートPCM切換制御信号の出力は停止する。 乙13号証では,メモリ1から読み出される音源データの内,パラメータ情報(第4図のヘッダ情報RF,付属情報)は,付属情報レジスタ5に送られて一時記憶され,上記圧縮符号化されて得られた4ビットの圧縮データ(第4図のサンプル・データDA0H~DB3L)はデータ・レジスタ6に送られて一時記憶されるから,圧縮楽音データが読み出されるものであることは明らかである。 乙13号証のデコーダ20(第5図)において,4ビットの圧縮データは 第3図のデコーダ90と同様なデコード処理が施され,例えば16ビットの波高値データとなって出力レジスタ16を介してD/A変換器17に送られ,アナログ楽音信号として出力端子18より取り出される。 そして,ストレートPCMデータが出力される間,ストレートPCM切換制御信号をマルチプレクサ8及び係数発生回路9に対して出力し,このストレートPCMデータをそのまま出力レジスタ16に送るような制御がなされる。 乙13号証では,波高値データの所定数のサンプル(hサンプル)毎にブロック化しこのブロック単位で最適のビット圧縮を施すような高能率符号化方式が採用されるから,ストレートPCMを含むものを含めて,楽音データは全てhサンプル毎にブロックされている。 乙13号証のメモリ1には,圧縮符号化されたサンプル・データやパラメータ情報(第4図のヘッダ情報RF,付属情報)等(音源データ)が記憶されており,さらにルーピング開始アドレス(上記ルーピング開始ブロックのメモリ内アドレス)等も例えばディレクトリ情報として記憶され,ルーピング開始ア ヘッダ情報RF,付属情報)等(音源データ)が記憶されており,さらにルーピング開始アドレス(上記ルーピング開始ブロックのメモリ内アドレス)等も例えばディレクトリ情報として記憶され,ルーピング開始アドレスは,メモリ1のデータバスを介してアドレス・レジスタ2に送られて一時記憶され,ルーピングの終了直前にアドレス・カウンタ3にプリセットされ,デコーダ4はアドレス・カウンタ3からの出力及びループ・スタート・フラグLSFに応じて,ルーピング開始ブロック内の始めの所定数ワードの間ストレートPCM切換制御信号を出力して,マルチプレクサ8はストレートPCMの出力を選択する。そして,圧縮楽音データが読み出されてデコードされると,マルチプレクサ8はこのデコードデータを選択して出力するようになっていることは明らかである。 そして,ルーピング終端点を含むブロックの音源データを読み出している際には上記付属情報のループ・エンド・フラグLEFが立ち,このループ・エンド・フラグLEFに基づいてルーピング終端点に達した時点でアドレ ス・レジスタ2からのルーピング開始アドレスをアドレス・カウンタ3にプリセットする。 したがって,アドレス・カウンタ3はアドレスバスを介してメモリ1のルーピング開始ブロックをアクセス開始し,上記始めの所定数のワードは上記ストレートPCMデータを読み出す。 乙13号証は,以後これらを順次実行する。 乙13号証の第5図は,楽音データの再生装置を示している。 以上から,乙13号証には次の発明が記載されている(以下「乙13発明」という)。 「ストレートPCMデータと圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶されたメモリから前記楽音データをストレートPCMデータ,圧縮楽音データの順に読 いる(以下「乙13発明」という)。 「ストレートPCMデータと圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶されたメモリから前記楽音データをストレートPCMデータ,圧縮楽音データの順に読み出して再生する楽音データ再生装置であって,前記メモリから前記ストレートPCMデータを読み出すとともに,前記ストレートPCMデータの読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する第1の読出手段と,前記メモリから前記圧縮楽音データを読み出す第2の読出手段と,前記第2の読出手段によって読み出された圧縮楽音データをデコードして出力するデコーダと,前記第1の読出手段の出力と前記デコーダの出力とを切り換える切換手段と,前記第1の読出手段,前記第2の読出手段,および前記切換手段を制御する制御手段とを具備し,前記圧縮楽音データは,楽音データの再生における再生処理単位である1サンプルのh倍のデータサイズを有し,前記制御手段は,ルーピング期間において,前記第1の読出手段へ前記ストレートPCMデータの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前 記ストレートPCMの出力に切り換える第1手順,前記ストレートPCMの出力が終了した時点で前記第2読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第2の読出手段の出力に切り換える第2手順,を順に実行し,前記第2の読出手段から前記圧縮楽音データのデコード及び出力が終了した通知を受けて再び前記第1手順を実行することにより,前記楽音データをループ再生させることを特徴とする楽音データ再生装置。」(3) 本件特許発明3と乙13発明とを対比すると,両者は次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】 により,前記楽音データをループ再生させることを特徴とする楽音データ再生装置。」(3) 本件特許発明3と乙13発明とを対比すると,両者は次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】「第2の状態の圧縮楽音データと第1の状態の楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを読み出して再生する楽音データ再生装置であって,前記記憶媒体から前記第1の状態の楽音データを読み出すとともに,前記第1の状態の楽音データの読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する第1の読出手段と,前記記憶媒体から前記第2の状態の圧縮楽音データを読み出す第2の読出手段と,前記第2の読出手段によって読み出された第2の状態の圧縮楽音データを伸張して出力するデコーダと,前記第1の読出手段の出力と前記デコーダの出力とを切り換える切換手段と,前記第1の読出手段,前記第2の読出手段,および前記切換手段を制御する制御手段とを具備し,前記第2の状態の圧縮楽音データは,楽音データの再生における所定の再生処理単位の整数倍のデータサイズを有し, 前記制御手段は,前記第1の読出手段からの読み出し終了通知を受けて前記第2の読出手段へ前記第2の状態の圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換えるA手順,前記デコーダによる前記第2の状態の圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で前記第1の読出手段へ前記第1の状態の楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換えるB手順,を有し,前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて前記A手順を実 楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換えるB手順,を有し,前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて前記A手順を実行し,その後B手順を実行することにより,前記楽音データをループ再生させることを特徴とする楽音データ再生装置。」である点で一致する。 【相違点1】第1の状態の楽音データについて,本件特許発明3はADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データであるのに対し,乙13発明は,ストレートPCM(非圧縮楽音データ)である点で異なる。 【相違点2】楽音データの読み出しについて,本件特許発明3は,第2の状態の圧縮楽音データ,第1の状態の楽音データの順に読み出すのに対し,乙13発明は,第1の状態の楽音データ,第2の状態の圧縮楽音データの順に読み出す点で異なる。ただし,第1の状態の楽音データの読み出し後は本件特許発明3と同様に,第2の状態の圧縮楽音データ,第1の状態の楽音データの順に読み出す点では一致する。 【相違点3】ループ再生指示を受けた後の手順について,本件特許発明3は第1手順(A手順相当)を実行するものであるのに対し,乙13発明では,B手順(第2手順相当)を実行するものである点で異なる。ただし,第1の状態の 楽音データの読み出し後は本件特許発明3と同様に,A手順,B手順の順に実行する点で一致する。 (4)ア乙15号証には,次の記載がある。 「【特許請求の範囲】1.圧縮されていないか,または伸張処理に要する時間が短い第1の圧縮方法により圧縮された第1のデータと,前記第1の圧縮方法より伸張処理に要する時間が長い第2の圧縮方法により圧縮された第2のデー 1.圧縮されていないか,または伸張処理に要する時間が短い第1の圧縮方法により圧縮された第1のデータと,前記第1の圧縮方法より伸張処理に要する時間が長い第2の圧縮方法により圧縮された第2のデータから構成される楽音データを読み出す読み出し手段と,前記読み出し手段により読み出されたデータのうち,前記第1のデータを必要に応じ伸張して出力する第1の出力手段と,前記第2のデータを伸張して出力する第2の出力手段と,を備えることを特徴とする楽音生成装置。 2.圧縮されていないか,または伸張処理に要する時間が短い第1の圧縮方法により圧縮された第1のデータと,前記第1の圧縮方法より伸張処理に要する時間が長い第2の圧縮方法により圧縮された第2のデータから構成される楽音データを読み出す読み出しステップと, 前記読み出しステップで読み出されたデータのうち,前記第1のデータを必要に応じ伸張して出力する第1の出力ステップと, 前記第2のデータを伸張して出力する第2の出力ステップと,を含むことを特徴とする楽音生成方法。」「背景技術電子楽器やゲーム機などにおいては,ユーザの操作は無作為に行われこのため発音される楽音は予測しがたく,予めユーザの操作を予測して,発音要求があるであろう楽音を生成しておくことは難しかった。また,電子楽器やゲーム機などでは所定の楽音の発音要求があってから,即座に発音されることも要求されている。このような予測しがたい即座の発音要求に対処するため,電子楽器やゲーム機などに使われる楽音データは,非圧縮としたりまたは伸張する際に処理時間が少ない圧縮方法,例えばADPC M(AdaptiveDifferentiaIPulseCodeModulation)が用いられて圧縮されていた。 伸張する際に処理時間が少ない圧縮方法,例えばADPC M(AdaptiveDifferentiaIPulseCodeModulation)が用いられて圧縮されていた。 例えばMD(MiniDisc)などにおいては,高効率符号化音声圧縮方式として,ATRAC(AdaptiveTransformAcousticCoding)やATRAC2などが開発されてきており,かかる方式では,高音質が得られしかも,先のデータを予見して(ユーザの操作に左右されずに)データを先読みし,楽音を生成できる音楽再生装置を実現しつつある。 ここで,ADPCMはデータを約4分の1に圧縮するのに対し,ATRAC2は約10分の1乃至20分の1に圧縮することが可能である。また,ATRAC2で圧縮されたデータを伸張した音声は,ADPCMで圧縮されたデータを伸張した音よりも原音(圧縮前の音)に近い音となっている。 しかしながら,ATRAC2はADPCMに比べて圧縮,伸張にかかる処理の負荷が重い(約20倍)ため,ユーザの発音要求に応じて即座に発音しなければならないような電子楽器やゲーム機などにはやはり不向きとされていた。 また,電子楽器やゲーム機などでは,同時に複数の楽音が発音要求される場合があり,そのような場合にATRAC2などの処理の負荷が重い圧縮方法を用いられていた場合,即座に全ての楽音が生成できない(発音できない)という課題があった。 本発明は,このような状況に鑑みてなされたものであり,1つの楽音を生成するためのデータのうち先頭部分とその他の部分とで,異なる圧縮方法を用いて圧縮された楽音データを用いることにより,または,伸張処理されたデータのうち,一部を記憶するようにすることにより,発音要 生成するためのデータのうち先頭部分とその他の部分とで,異なる圧縮方法を用いて圧縮された楽音データを用いることにより,または,伸張処理されたデータのうち,一部を記憶するようにすることにより,発音要求から発音されるまでの遅延時間をなくし,かつ,高効率符号化音声圧方式を用いることができるようにするものである。」 以上のように,乙15号証には,非圧縮楽音データと低圧縮楽音データとを同等に取り扱い,これよりも高圧縮の楽音データと組み合わせることによって,ユーザの発音要求に応じて即座に発音する(即座に発音できないときは,最初の部分が無音となってしまうという意味である)ことができる技術として開示されている。従って,相違点1にもかかわらず,本件特許発明3は,乙15号証記載の発明に基づき,当業者は容易に想到することができる。 イ乙13号証のルーピング開始期間LPのルーピング開始点LPsから始まるブロックの始めの所定数ワードがストレートPCMのワードとなるから,ルーピング開始点LPsから始まるブロックはこのストレートPCMのワードWst分数だけ少なくなる。しかし,他の部分は全てhサンプルの整数倍のサンプルからなるブロックを形成している。 所定数のストレートPCMのワードWSTをSサンプルとすると,ルーピング開始点LPsから始まるブロックは,SサンプルのストレートPCM(非圧縮楽音データ)および(h-S)サンプル数の圧縮楽音データとなる。しかしこれに続くブロックは,いずれもhサンプルからなるビット圧縮楽音データである。この場合の,乙第13号証の圧縮楽音データのデータサイズは,「楽音データの再生における再生処理単位である1サンプルのh倍に分割したブロック数を乗じた数から先端部のストレートPCMのサンプル数(S 。この場合の,乙第13号証の圧縮楽音データのデータサイズは,「楽音データの再生における再生処理単位である1サンプルのh倍に分割したブロック数を乗じた数から先端部のストレートPCMのサンプル数(S)を減じたサンプル数(h×k-S)に等しいデータサイズである(kは全体のブロック数)。(h×k-S)は整数であるから,再生処理単位である1サンプルの整数倍であることに変わりはない。この関係を乙13号証の第1図に書き込んで図示すると次のとおりである。 これを模式的に図示すると次のとおりである。 仮に,再生処理単位が所定の複数のサンプル単位であると解するとしても,乙13号証のブロックは所定数(h)のサンプルからなる再生処理単位に相当する。圧縮楽音データは再生処理単位の整数倍のサンプルに最初のブロックの再生処理単位のサンプル数からストレートPCMサンプル数を控除したサンプル数を加算したもの(h×k-S)となる。この点で,圧縮楽音データの整数倍ではないが,最初のWSTについて,ブロック対象から先端部に移動してしまうことは当業者には容易であることは明らかである。 そうすると,PCMデータが先端部に位置するか終端部に位置するかの相違にすぎないことになり,ループ再生の連結部にPCMデータが位置することについては本件特許発明3も乙13発明においても変わりはない。 乙13発明は,ループ再生の無音部分を生じないようにする発明ではないが,本件特許発明3もループ再生の無音部分を生じないようにすることができないのであるから,この点の相違は何ら問題にすべきではない。 (5) 本件特許発明3は,乙13発明に乙15号証記載の発明を適用することによって容易に想到できるというべきであるから特許法29条2項に いのであるから,この点の相違は何ら問題にすべきではない。 (5) 本件特許発明3は,乙13発明に乙15号証記載の発明を適用することによって容易に想到できるというべきであるから特許法29条2項に違反するものであり,同法123条1項2号により無効とされるべきである。 (原告の主張)(1) 本件特許発明3は,曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになるので,繰り返し再生において曲の終端部と先頭部との間に無音部分が生じてしまう問題があったことを解決しようとするものであるのに対して,乙13発明は,そもそも,音源データの所定周期分(ルーピング区間)の始めの部分,特にルーピングの折り返し点(ルーピングポイント)での悲連続性をなくすことができ,しかも記憶容量の増大を防ぐことが可能な音源データ圧縮符号化方法の提供を目的とするものであり,本件特許発明3が解決しようとする上記課題とは無関係である。 本件特許発明3は,構成要件3A~3Hからなる構成を上記課題の解決手段として具備していることにより,「圧縮楽音データ」は楽音データの終了部に配置されないようにし,楽音データの終了部には「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」が配置されるようにしていることを特徴としている。乙13発明は,「第2図のルーピング区間LPのルーピング開始点LPSから始まるブロック(ルーピング開始ブロック)の最初の所定数のワードを,第1図に示すように,ストレートPCMデータのワードWSTとする。」(乙13の5頁左下欄2行~6行)もので,ルーピング区間LPのルーピング終端点LPEを含むブロックは圧縮データからなっている。 したがって,乙13発明は,ルーピング区間LPのルーピング終端点LP 13の5頁左下欄2行~6行)もので,ルーピング区間LPのルーピング終端点LPEを含むブロックは圧縮データからなっている。 したがって,乙13発明は,ルーピング区間LPのルーピング終端点LPEを含むブロックが圧縮データからなっている点において,本件特許発明3とは明らかに相違している。詳しく述べると,本件特許発明3と乙13発明とは,次の4点で相違する。 相違点①:乙13号証には構成要件3Aが示されていない点。 相違点②:乙13号証には構成要件3Bが示されていない点。 相違点③:乙13号証には構成要件3Gが示されていない点。 相違点④:乙13号証には構成要件3Hが示されていない点。 (2)ア構成要件3Aが,「圧縮楽音データと“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”とから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”の順に読み出して再生する楽音データ再生装置」であるのに対して,乙13発明は,ルーピング区間LPについて着目すると,ルーピング開始点LPSから始まる所定数のワードからなるストレートPCMデータのワードWSTをまず読み出し,次に圧縮データを読み出すようになっている。 したがって,乙13号証の「ストレートPCMデータ」を本件特許発明3の“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”に対応付け,「圧縮データ」を「圧縮楽音データ」に対応付けたとしても,読み出しの順序が一致しておらず,乙13号証は構成要件Aを開示していない(相違点①)。 イ構成要件3Bが,「前記記憶媒体から前記“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”を読み出すとともに,前記“ADPCM方式に 乙13号証は構成要件Aを開示していない(相違点①)。 イ構成要件3Bが,「前記記憶媒体から前記“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”を読み出すとともに,前記“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”の読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する第1の読出手段」であるのに対して,乙13発明は,ルーピング区間LPについて着目すると,メモリ1から圧縮データを読み出してデコードしているときに,該圧縮データの最後部の「ルーピング終端点を含むブロックの音源データを読み出している際には上記付属情報のループ・エンド・フラグLEFが立ち,このループ・エンド・フラグLEFに基づいてルーピング終端点に達した時点でアドレス・レジスタ2からのルーピング開始アドレスをアドレス・カウンタ3にプリセットする」(乙3の6頁右下欄4行~10行)ようになっている。 ここで,乙13号証の「ルーピング終端点に達した時点でアドレス・レ ジスタ2からのルーピング開始アドレスをアドレス・カウンタ3にプリセットする」を,本件特許発明3の「読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する」に対応付けたとしても,乙13号証では「圧縮データ」の読み出し終了に応答しているにすぎず,“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”(非圧縮楽音データ)の読み出し終了に応答する構成とはなっていないので,乙13号証は構成要件3Bを開示していない。 一方,乙13号証に示された「アドレスカウンタ3」(第5図)は,メモリ1から「ストレートPCMデータ」を読み出すように機能するので,これを一応,構成要件3Bの「第1の読出手段」に対応付けることができる。しかし,そうすると,「ストレートPCMデータ」の読み出しの終了は,「ルーピング終 PCMデータ」を読み出すように機能するので,これを一応,構成要件3Bの「第1の読出手段」に対応付けることができる。しかし,そうすると,「ストレートPCMデータ」の読み出しの終了は,「ルーピング終端点」から「ルーピング開始点」に戻るときに生じるものではないので,構成要件3Bにおける「前記“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”の読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する」ものに該当しない。 本件特許発明3では,構成要件3Bが出力する「読み出し終了通知」は,構成要件3Hにおいて「楽音データをループ再生させる」ために用いられている。よって,乙13号証に示された「アドレスカウンタ3」(第5図)を構成要件3Bの「第1の読出手段」に対応付けた場合,「ストレートPCMデータ」の読み出しの終了は,「ルーピング終端点」から「ルーピング開始点」に戻るときに生じるものではないので,結局,構成要件3Bに該当しないことになる。 このように,乙13号証の構成をどのように当てはめても,構成要件3Bに該当せず,構成要件Bを開示していない(相違点②)。 ウ構成要件3Gが,「前記圧縮楽音データは,楽音データの再生における所定の再生処理単位の整数倍のデータサイズを有し,」であるのに対して, 乙13発明は,ルーピング区間LPにおいて再生される圧縮データのサンプル数は1ブロックの整数倍とはなっていないので,「楽音データの再生における所定の再生処理単位の整数倍のデータサイズ」に該当していない。 したがって,構成要件3Gを開示していない(相違点③)。 エ構成要件3Hが,「前記制御手段は,ループ再生指示を受けて,前記第2の読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力 ていない(相違点③)。 エ構成要件3Hが,「前記制御手段は,ループ再生指示を受けて,前記第2の読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換える第1手順,前記デコーダによる前記圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で前記第1の読出手段へ前記“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”の読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換える第2手順,を順に実行し,前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて再び前記第1手順を実行することにより,前記楽音データをループ再生させる」であるのに対して,乙13発明は,ルーピング区間LPについて着目すると,ルーピング開始点LPSから始まる所定数のワードからなるストレートPCMデータのワードWSTをまず読み出し,次に圧縮データを読み出すようになっている。 したがって,乙13号証の「ストレートPCMデータ」を本件特許発明3の“ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ”に対応付け,「圧縮データ」を「圧縮楽音データ」に対応付けたとしても,読み出しの順序(第1手順と第2手順の順序)が一致しておらず,乙13号証は構成要件3Hを開示していない(相違点④)。 (3) 乙15号証においては,「1効果音を生成するデータの先頭部分が非圧縮のデータであり,残りの部分が圧縮されたデータである音楽データ」が示されており,また,非圧縮データと圧縮データの違いは,伸張処理に要する時間の相対的な長短の相違で区別することが示されている。 このように,乙15号証においても,楽音データの終わりの部分が圧縮デ ータとなっており,明らかに,本件特許発明3が特徴とする相違点①④に係る の相違で区別することが示されている。 このように,乙15号証においても,楽音データの終わりの部分が圧縮デ ータとなっており,明らかに,本件特許発明3が特徴とする相違点①④に係る構成要件3A及び3Hを開示していない。また,相違点②に係る構成要件3Bも開示していない。 特に,相違点④に係る構成要件3Hは,本件特許発明3の課題を解決し,所期の効果を奏するために重要な構成であるから,いずれの刊行物においてもこの点が開示されていないことを考慮すると,本件特許発明3は,これらの刊行物(乙13,15)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に推考し得たものではないことが明白である。 4 原告の損害額(争点4)(原告の主張)(1) 被告は,平成16年10月頃から,業として被告製品1を製造・販売しており,その売上高は平成22年3月末日現在において29億円を下らない。 また,被告製品1にかかる被告の利益率は,50%を下らず,本件特許発明1の寄与率は20%を下らない。 したがって,被告による本件特許1にかかる特許権侵害行為により原告が被った損害は,2億9000万円を下らない。 (2) 被告は,平成19年10月頃から,業として被告製品2を製造・販売しており,その売上高は平成22年3月末日現在において2億円を下らない。 被告は,平成21年2月頃から,業として被告製品3を製造・販売しており,その売上高は同月末日現在において15億円を下らない。また,被告製品2にかかる被告の利益率は,50%を下らず,本件特許発明2及び3の寄与率は40%を下らない。被告製品3にかかる被告の利益率は,50%を下らず,本件特許発明2及び3の寄与率は20%を下らない。 したがって,被告による本件特許2及び3にかかる特許権侵害行 の寄与率は40%を下らない。被告製品3にかかる被告の利益率は,50%を下らず,本件特許発明2及び3の寄与率は20%を下らない。 したがって,被告による本件特許2及び3にかかる特許権侵害行為により原告が被った損害は,1億9000万円を下らない。 (3) 原告は,本件特許1の侵害による損害賠償金のうちの一部である金1億 5000万円,本件特許2及び3の侵害による損害賠償金のうちの一部である金1億円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成22年4月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)原告の主張は否認ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 本件特許発明1に係る侵害の成否について1-1 構成要件1Aの充足性(争点1-1)について(1) 被告製品1がデコード機能を有するものの,エンコード機能を有しないものであることは当事者間に争いがない(別紙被告製品1の機能説明参照)。 したがって,構成要件1Aの「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録するとともに,前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する信号処理装置において,」うちの前段,すなわち,「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部手段に記憶する」という部分が,本件特許発明1の「信号処理装置」においてデータの圧縮処理(エンコード)が行われることを意味するものとすれば,被告製品1は構成要件1Aを充足しないということになる。 そこで,まず,構成要件1Aの「外部記憶手段に記録する」の意義について検討する。 (2) 構成要件1Aの文言をみると,①「データを所定の圧縮処理によ Aを充足しないということになる。 そこで,まず,構成要件1Aの「外部記憶手段に記録する」の意義について検討する。 (2) 構成要件1Aの文言をみると,①「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記録する」ことと②「前記外部記憶手段に記録した圧縮データを所定のデコード処理によって元のデータに戻し,該元のデータに基づいて音信号を生成する」ことが「とともに」で並列的に記載されているのであるから,「とともに」は「かつ」又はこれに類似する意味であると解 される。加えて,上記①と②はいずれも「記録する」と「生成する」という動詞であるから,上記①の「外部記憶手段に記録する」とは記録する動作(機能)を意味すると解するのが自然である。 (3) 続いて,本件特許1明細書の【発明の詳細な説明】の記載に基づいて検討する。 ア本件特許1明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある。 「【0001】【産業上の利用分野】この発明は,高効率データ圧縮を採用したレコーダ等に用いられて好適な信号処理装置に関する。 【0002】【従来の技術】従来より,デジタルデータを記録する際には,その記憶容量を小さくするために,各種のデジタルデータ圧縮技術が用いられてきた。ここでは,代表的な例として,帯域分割符号化(SBC;サブバンドコーディング)および適応変換符号化(ATC)について説明する。帯域分割符号化による圧縮法では,アナログ波形を帯域通過フィルタ(BPF;BandPassFilter)群によって帯域分割して符号化する。さらに,帯域分割された信号に,その重要さに応じて適切なビット数を割当て,該割当てられたビット数で量子化する。すなわち,この方式では,これまでの圧縮法の lter)群によって帯域分割して符号化する。さらに,帯域分割された信号に,その重要さに応じて適切なビット数を割当て,該割当てられたビット数で量子化する。すなわち,この方式では,これまでの圧縮法のように単に波形の統計的な特性を考慮して圧縮するのではなく,信号を受け取る人間の知覚処理過程に整合するようにして圧縮するようになっている。 【0003】また,適応変換符号化による圧縮法では,アナログ波形を所定の区間毎に直交変換(例えば,フーリエ変換によるスペクトル変換)し,その変換係数を適応符号化する。ここで,適応符号化とは量子化間隔を適宜,状況に応じて変化させながら量子化することである。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで,上述した圧縮技術を,例えば,マルチトラックのレコーダに適用して,性能/価格比を上げようとすると,十分な圧縮性能は得られるが,再生時の圧縮データのデコードの際に時間遅れを生じるという問題がある。すなわち,マルチトラック・レコーダでは,例えば,予め圧縮記録しておいた信号に同期させて,後から別のトラックに他の信号を記録するという作業が行なわれる。この時,予め圧縮記録しておいた信号を再生するのであるが,再生するためのデータ処理に時間がかかるため,頭出しにおいて直ちに再生音が出てこないという問題を生じる。特に,上述した技術では,FFT等のブロックデータ処理が含まれており,これが聴感上無視できないほどの再生時の立上がり遅れを生ずる。」上記記載によれば,従来技術として,帯域分割符号化(SBC)による圧縮法,適応変換符号化(ATC)による圧縮法が挙げられ,本件特許発明1は,その改良技術として位置付けられている。したがって,このような本件特許発明1の技術的な位置 ,帯域分割符号化(SBC)による圧縮法,適応変換符号化(ATC)による圧縮法が挙げられ,本件特許発明1は,その改良技術として位置付けられている。したがって,このような本件特許発明1の技術的な位置付けからみれば,本件特許発明1が圧縮技術の部分を含まず,専らデコード処理技術に関わるものであると限定して解することは相当でない。 イまた,発明の詳細な説明の実施例については,次の記載がある。 「【0008】【実施例】次に図面を参照してこの発明の実施例について説明する。図1はこの発明の一実施例の構成を示すブロック図である。…(以下省略)」「【0009】ここで,パネルスイッチ1の一例を図2(a)に示す。…(途中省略)…具体的には,再生の開始を指示する「PLAY」キー1a,録音の開始を指示する「REC」キー1b,上記再生および録音を停止させる「STOP」キー1c,どのトラックまたは位置から再生するかを指 示する「トラック」キー1dおよび「位置」キー1e,後述する同期再生を行なう先頭位置を指示する(マークする)「マーク」キー1f,そして,同期再生の開始を指示する「同期再生」キー1gからなる。…(以下省略)」「【0011】(前略)…また,テンポラリRAM8には圧縮データをデコートする際に,同期再生される最初の部分のデータが記憶される。外部記憶装置は,圧縮データを記憶するものであり,例えば,ハードディスク,あるいはDRAMやフラッシュメモリのような半導体メモリや光磁気ディスク等からなる。…(以下省略)」「【0012】次に,演算器10はDFTベースのATC(AdaptiveTransformCorder)の方法に基づく,圧縮演算(エンコード)および再生演算(デコード)を行なう 略)」「【0012】次に,演算器10はDFTベースのATC(AdaptiveTransformCorder)の方法に基づく,圧縮演算(エンコード)および再生演算(デコード)を行なう。…(以下省略)」「【0013】次に,ADC(アナログ/デジタル変換器)11はアナログ信号をデジタル信号に変換する。このデジタル信号に対して圧縮が行なわれる。…(以下省略)」「【0014】次に,上述した構成による動作について,図4~図6に示すタイムチャートを参照して説明する。 [RECタイムチャート]まず,図4において,RECキー1bが押下されると,ADC11によってデジタル信号に変換されたデータがCPU5によって演算器10のバッファABUFにブロック(1024サンプル)単位で順次格納される。…(以下省略)」「【0015】上記第1ブロックのデータの格納が終了すると,次に,該データの圧縮が行なわれ,圧縮データはバッファBBUF(1)に書き込まれる。そして,データ圧縮が終了すると,バッファBBUF(1)に書き込まれた圧縮データは外部記憶装置へ書き込まれる。…(以下省略)」「【0021】次に,上述したタイムチャートにおける動作を図7~図1 4に示すフローチャートを参照して説明する。まず,RECキーオンイベント処理について図7を参照して説明する。…(以下省略)」「【0024】[タイマ割込み処理]…(途中省略)…ステップSB2では,ADC11により入力波形をデジタル変換し,このデジタルデータをバッファABUF(i)に順次格納する(この場合,iは「0」である)。」「【0027】そして,上記ステップSB4において,バッファフラグiを反転した時,すなわち,1ブロックのデー ータをバッファABUF(i)に順次格納する(この場合,iは「0」である)。」「【0027】そして,上記ステップSB4において,バッファフラグiを反転した時,すなわち,1ブロックのデータの格納が終了すると,演算器10は,上記バッファABUF(i)に格納されたデータの圧縮を開始し,所定時間D経過後,該圧縮データはバッファBBUF(i)へ格納される。」「【0028】そして,上記圧縮が終了すると,タイマ13によってCPU5に割込みがかかり,図9に示すエンコード終了割込み処理が実行される。 [エンコード終了割込み処理]…(途中省略)…ステップSC2では,バッファBBUF(i)に格納された圧縮データを1ブロック分,外部記憶装置9へ送出させるべく,DMA へ指示する。…(途中省略)…この結果,DMAにより,バッファBBUF(i)のデータが,順次,外部記憶装置9に転送される。…(途中省略)…以上の処理をSTOPキー1cが押下されるまで繰り返し,外部記憶装置9へ順次圧縮データを書込む。」「【0046】(前略)…この装置によれば,聴感上の応答性能を損うことなく,データ量に対してその圧縮率がリニアなPCMに比べ,圧縮器の性能に応じてデータ量を1/2あるいは1/4にすることができる圧縮技術を効果的に利用することができ,結果として記憶装置(HDD,MOD,MT等)の性能限界(アクセス速度,記憶容量)から決定される最大オー ディオトラック数,最長録音時間を2倍あるいは4倍等に向上させ得る。 記憶装置は,エンコード,デコードに必要な処理装置に比べ,高価,大きい,重いので2台,4台と複数の記憶装置を装備するよりも,本装置採用による効果は大きい。」「【0047】なお,上述した実施例では,演算器,A ド,デコードに必要な処理装置に比べ,高価,大きい,重いので2台,4台と複数の記憶装置を装備するよりも,本装置採用による効果は大きい。」「【0047】なお,上述した実施例では,演算器,ADCおよびDACを1つとしたが,複数設けたり,時分割的な処理によってマルチトラックレコーダとしてもよい。マルチトラックレコーダとした場合のREC処理を示すタイムチャートを図15に示す。図15においては,4トラックのマルチトラックレコードを実現しており,トラックTr1,Tr2およびTr3は録音トラック,トラックTr4は再生トラックとしている。図において,バッファABUFでの圧縮,バッファBBUF(0)に書き込み処理は図4と同様にトラックTr1,Tr2およびTr3の各々に対して行なわれる。シングルトラックの場合と異なる点は,外部記憶装置9へ書き込む時間Sである。4トラックの場合には,次の圧縮が終了するまでに,4トラック分の圧縮データを外部記憶装置9へ転送する必要があるため,最長でも,1ブロックの時間Bの1/4以下にする。」「【0048】また,図4に示したREC処理のタイムチャートにおいて,圧縮時間Dと外部記憶装置への転送時間Sの和が1ブロックの時間Bより大であるとき,すなわち,D+S>Bとなる時は,REC処理のタイムチャートは図16に示すようになる。この場合,2つのバッファBBUFを用いているため,外部記憶装置への書込みを次のブロックのエンコード開始前までに終了しなくてもよい。言換えると,外部記憶装置への書込みは,次の外部記憶装置への書込みの開始直前に終了していればよい。したがって,例えば,マルチトラックでREC/PLAY(録音/再生)を行なう場合に適用でき,符号S’で示す時間において他のトラックへの書込みや,読み出しを行なうよう の開始直前に終了していればよい。したがって,例えば,マルチトラックでREC/PLAY(録音/再生)を行なう場合に適用でき,符号S’で示す時間において他のトラックへの書込みや,読み出しを行なうようにしてもよい。」 本件特許1明細書の実施例に関する上記記載及び図1~3の記載に照らすと,本件特許発明1の実施例である信号処理装置について,①RECキー1bを有するパネルスイッチ1,②アナログ信号をデジタル信号に変換するADC11,③ABUF,BBUFを有し圧縮演算(エンコード)を行う演算器10,④ADC11によってデジタル信号に変換されたデータをABUFに格納するCPU5,⑤BBUFに格納された圧縮データを1ブロック分,外部記憶装置9へ送出させる指示を出すDMA14が備えられていることが明らかである。そして,上記①~⑤の構成による圧縮(エンコード)手順は,㋐RECキーが押下される,㋑ADC11によりアナログ信号がデジタル信号に変換される,㋒ADC11により変換されたデータがCPU5によりABUFに格納される,㋓演算器10によりABUFに格納されたデータが圧縮されBBUFに格納される,㋔DMA14によりBBUFに格納された圧縮データが外部記憶装置9に送出される,というものである。 以上のとおり,実施例においても,本件特許発明1は,エンコード機能を有するものとされている。 ウ以上の請求項の記載文言,発明の詳細な説明の記載に照らすと,本件特許発明1の「信号処理装置」は,エンコード機能を有する技術として定められていると解するのが相当である。 エこれに対し,原告は,本件特許発明1の課題は発音遅延の解消にあり,その課題解決のために,対象装置がデコード処理機能に加えてエンコード処理機能まで具備している いると解するのが相当である。 エこれに対し,原告は,本件特許発明1の課題は発音遅延の解消にあり,その課題解決のために,対象装置がデコード処理機能に加えてエンコード処理機能まで具備している技術的必要性は認められないと主張する。確かに,前記発明の詳細な説明の段落【0004】~【0005】の記載に照らせば,本件特許発明1の課題解決手段はデコード処理の部分にあるとみられるが,そのことと,特許請求の範囲において,従来技術を踏まえてどの範囲の技術が特許の内容とされているかは,別のことであり,特許請求 の範囲に定められた技術的範囲は,特許請求の範囲の記載文言と明細書の発明の詳細な説明及び図面の記載内容に照らして判断されるべきことである。原告が主張するように,課題解決手段の部分のみに特許請求の範囲を限定して解釈すべき理由は認められない。 また,原告は,本件特許1の当初明細書(特開平8-147883〔甲23〕)には,【請求項4】として,エンコード機能に関する発明も記載されていたが,審査の過程で完全に削除したという経緯があるなどとして,エンコード機能に関する発明削除後も本件特許1明細書の実施例に残存して示されているにすぎないエンコード機能部分を殊更に採り上げて,これが別のデコード機能に関する発明である本件特許発明1の技術的課題に深く関わるものと捉えたり,対象装置に必須の構成であると捉えたりすることは,審査経過に照らしても誤りである旨主張する。 しかしながら,本件特許1に係る出願の経過をみても,拒絶理由通知書(乙5)に対する意見書(乙7)では,特許庁審査官の提示した引用文献と本件特許発明1の目的,構成,効果が異なることを主張しているにとどまり,本件発明1について圧縮(エンコード)の構成を除外したとの記載は認められないから (乙7)では,特許庁審査官の提示した引用文献と本件特許発明1の目的,構成,効果が異なることを主張しているにとどまり,本件発明1について圧縮(エンコード)の構成を除外したとの記載は認められないから,原告の主張は採用できない。 (4) 以上のとおり,構成要件1Aの「データを所定の圧縮処理によつて圧縮して外部記憶手段に記憶する」とは,信号処理装置がデータをエンコード機能によって圧縮して外部記憶手段に記憶させることをいうものと解すべきである。これに対し,被告製品1は,別紙被告製品1説明書3の機能の項に記載のとおり,データをエンコード機能によって圧縮して外部記憶手段に記憶する構成を有しないから,被告製品1は構成要件1Aを充足しない。 1-2 構成要件1Bの充足性(争点1-2)について(1) 「発音指示を発生する発音指示手段」の意義について本件特許発明1の特許請求の範囲に記載された「発音指示」及び「発音指 示手段」の意義については,特許請求の範囲の文言の記載のみからは明らかでなく,明細書や図面の記載を参照する必要があるというべきである。しかし,明細書の発明の詳細な説明における実施例以外の記載で,「発音指示」又は「発音指示手段」について触れているのは段落【0006】のみであり,同段落の記載は特許請求の範囲の記載とほぼ同一であるから,実施例以外の記載に基づいて「発音指示」及び「発音指示手段」の意義を確定することもできない。そこで,以下では実施例及び図面の記載を参照しつつ,そこから特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の実施例以外の記載と整合するように,「発音指示」及び「発音指示手段」の意義について解釈することとする。 ア本件特許1明細書の【発明の詳細な説明】には,実施例について以下の記載がある。 「【0 以外の記載と整合するように,「発音指示」及び「発音指示手段」の意義について解釈することとする。 ア本件特許1明細書の【発明の詳細な説明】には,実施例について以下の記載がある。 「【0016】[PLAYタイムチャート]まず,図5において,PLAYキー1aが押下されると,外部記憶装置9から第0ブロックの圧縮データを読み込み,バッファBBUF(0)に格納する。圧縮データの格納が終了すると,次に,演算器10によるデコードが開始される。このデコードされた第0ブロックのデータはバッファABUF(0)に格納されていく。そして,デコードが終了すると,バッファABUF(0)に格納された第0ブロックのデータは順次DAC12に供給されてアナログ信号に変換される。この間に,次の第1ブロックの圧縮データを外部記憶装置9から読み込み,バッファBBUF(1)に格納していく。そして,圧縮データの格納が終了すると,演算器によるデコードが行なわれ,デコードされた第1ブロックのデータはバッファABUF(1)に格納されていく。 【0017】上記外部記憶装置9からの圧縮データをバッファBBUF(i)に格納し,さらに,これをデコードする合計時間(S+D)は,バッファABUF(i)からDAC12へデコードされたデータを供給する(アナログ変換する)時間Eより必ずしも短い必要はなく,各々が時間E より短ければよい。すなわち,上記第0ブロックのデコードされたデータがDAC12に全て供給されるまでには,上記第1ブロックの圧縮データの全ては既にデコードされてバッファABUF(1)に格納されている。 したがって,第0ブロックのデコードされたデータ(バッファABUF(0))のDAC12への供給が終了すると,直ちに,第1ブロックのデコードされたデータ(バッファ ファABUF(1)に格納されている。 したがって,第0ブロックのデコードされたデータ(バッファABUF(0))のDAC12への供給が終了すると,直ちに,第1ブロックのデコードされたデータ(バッファABUF(1))をDAC12へ供給し始める。以下,同様にして,バッファABUF(0),(1)およびバッファBBUF(0),(1)を交互に用いることで,第2,第3ブロックの圧縮データを順次デコードし,該デコードされたデータを連続してDAC12へ供給する。 【0018】[途中再生タイムチャート]次に,図6において,マークされた任意の位置から再生する場合について説明する。例えば,上述した図5に示すタイムチャートにおいて,マークされた位置から再生する場合には,まず,所定の時間分(HT;ヘッドタイム)のデータを予め演算器10によってデコードしてテンポラリーRAM8に記憶しておく。この場合には,第1ブロックのデータ(マークされた位置以降のデータ)と第2ブロックのデータをデコードしテンポラリーRAM8に記憶しておく。そして,途中再生開始のタイミングを指示する同期パルスが供給されると,まず,上述したテンポラリーRAM8に記憶されていたデータ(マークされた位置のアドレス以降のデータ)を所定サンプリング速度で順次読み出してDAC12へ供給し,サウンドシステムから出力する。また,これと同時に,第3ブロックの圧縮データを外部記憶装置9から読み込んでバッファBBUF(0)へ格納する。 【0019】そして,上記格納が終了すると,演算器10によりバッファBBUF(0)の圧縮データをデコードし,これをバッファABUF(0)へ格納していく。この時間,上記第1ブロックのデータと第2ブロ ックのデータは順次DAC12へ出力されている。そして,第 BBUF(0)の圧縮データをデコードし,これをバッファABUF(0)へ格納していく。この時間,上記第1ブロックのデータと第2ブロ ックのデータは順次DAC12へ出力されている。そして,第2ブロックのデータが出力し終えると,引き続き,バッファABUF(0)に格納された第3ブロックのデータをDAC12へ出力する。また,これと並行して,第4ブロックの圧縮データを外部記憶装置9から読み込み,バッファBBUF(1)へ格納する。以下,上述した通常のPLAY動作と同様に,バッファABUF(0),(1)およびBBUF(0),(1)を交互に用いることで,順次,第5,第6,……第nブロックのデータをデコードし,DAC12へ出力する。なお,この場合,同期パルスが供給されるまでの処理をモードフラグSCを「1」(パルス待ち)とし,予めデコードしておいたデータの再生処理をモードフラグSCを「2」とし,さらに,通常の再生処理をモードフラグSCを「0」として表す。 【0020】ここで,ヘッドタイムHTの設定について説明する。通常,ヘッドタイムHTは1フレーム以上,2フレーム以下となる。これは,例えば,デコード演算を無限に速くすると,遅れ時間は外部記憶装置9からの圧縮データの読み込みに要する時間のみとなる。しかしながら,デコード演算を速くするには,当然のことながら高速な演算器が必要となり,このため装置規模が大きくなるとともに,コストも大となる。したがって,一般的には,最低必要な演算速度(S+D≦(1/50KHz)×1024,すなわち,約20msec)程度で設計するのが望ましい。その場合,S+Dが1フレーム分の再生時間Eに近付き,この結果,途中再生時の遅れは1~2フレーム相当時間となる。」「【0031】次に,PLAYキーオンイベント処 度で設計するのが望ましい。その場合,S+Dが1フレーム分の再生時間Eに近付き,この結果,途中再生時の遅れは1~2フレーム相当時間となる。」「【0031】次に,PLAYキーオンイベント処理について図11に示すフローチャートを参照して説明する。[PLAY処理]PLAYキー1aが押下されると,ステップSE1において,タイマ13が動作中であるか否かを判断する。これは,前述したステップSA1と同様に,既にPLAY処理またはREC処理が動作しているか否かを判断するためである。 ここで,既にPLAY処理またはREC処理が動作している場合には,ステップSE1における判断結果が「YES」となり,当該処理を終了する。 【0032】一方,PLAY処理またはREC処理がまだ動作していない場合には,ステップSE1における判断結果は「NO」となり,ステップSE2へ進む。ステップSE2では,パネルスイッチ1によって設定されたトラックおよび位置を外部記憶装置9のインターフェイスに設定する。 次に,ステップSE3へ進み,演算器10をデコーダとして動作するように設定する。そして,ステップSE4において,フラグRECを「0」に,バッファフラグiを「0」に設定する。次に,ステップSE5へ進み,タイマ割込みをスタートし,当該処理を終了する。 【0033】上記ステップSE5においてタイマがスタートすると,タイマ10が所定のタイミングでCPU5に割込みをかける。割込みがかかると,CPU5は図5に示すタイマ割込み処理を実行する。この図において,まず,ステップSB1において,フラグRECが「1」であるか否かを判断する。この場合,フラグRECは「0」であるので,ステップSB1における判断結果は「NO」となり,ステップSB5へ進む。 ず,ステップSB1において,フラグRECが「1」であるか否かを判断する。この場合,フラグRECは「0」であるので,ステップSB1における判断結果は「NO」となり,ステップSB5へ進む。 【0034】[通常PLAY処理]ステップSB5ではモードフラグSCが0,1,または2のいずれであるかを判断する。ここで,現在のPLAY動作が通常の再生動作であると,モードフラグSCは「0」であるため,ステップSB6へ進み,通常再生動作を行なう。ステップSB6ではバッファABUF(i)よりデコードされたデータを順次読み出す。次に,ステップSB7において,上記ステップSB6において読み出されたデータのあったか否かを判断する。 【0035】ステップSB7における判断結果が「YES」の場合,すなわち読み出されたデータがある場合にはステップSB8へ進む。ステップSB8ではエンドマークが検出されたか否かを判断する。そして,ステ ップSB8における判断結果が「NO」の場合にはステップSB9へ進む。 ステップSB9ではステップSB6において読み出したデータをDACへ出力する。次に,ステップSB10に進み,バッファABUF(i)にデータが残っているか否かを判断する。ここで,データが残っている場合には,ステップSB11における判断結果は「NO」となり,そのまま当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。そして,次のタイマ割込みにおいて,前回,読み出されたデータの次のデータから順次読み出し,DAC12へ出力する。この処理はバッファABUF(i)にデータがなくなるまで行なわれる。 【0036】そして,ステップSB9においてデータをDACへ出力した後で,バッファABUF(i)にデータがなくなると,ステップSB11における判断結果は「YES」 なるまで行なわれる。 【0036】そして,ステップSB9においてデータをDACへ出力した後で,バッファABUF(i)にデータがなくなると,ステップSB11における判断結果は「YES」となり,ステップSB11へ進む。ステップSB11ではバッファフラグiを反転する。なお,この時点(反転前)でバッファABUF(N_i)(i=0ならばN_i=1,i=1ならばN_i=0),すなわち1つ前のバッファABUFには,既にデコードされた次のデータが格納されており,次回からのタイマ割り込みにおける通常プレイ処理では,該バッファのデータが再生される。次に,ステップSB12において,外部記憶装置9からバッファBBUF(N_i)へ圧縮データの次のブロックの読み込みを開始する。この処理は,DMAに指示することにより実行され,外部記憶装置9への書込み開始と同様に,外部記憶装置9からの読み込み要求に応じて順次バッファBBUF(N_i)へ圧縮データを取り込み,1ブロック分の圧縮データを読み込むとその動作を終了する。 【0037】そして,次の割込みでは他方のバッファに対して同様の処理が行なわれる。すなわち,バッファABUF(0),(1)およびBBUF(0),(1)に対して交互に処理が行なわれる。そして,ステップ SB6において,読み込んだデータがエンドマークの場合(データの最後の場合)には,ステップSB8における判断結果が「YES」となり,ステップSB13へ進む。ステップSB13ではタイマ割込みを停止した後,通常の処理へ戻る。また,読み込みデータがない場合にはステップSB7における判断結果は「NO」となり,そのまま当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。 【0038】[マーク処理]上述した通常のPLAY処理において,図5に データがない場合にはステップSB7における判断結果は「NO」となり,そのまま当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。 【0038】[マーク処理]上述した通常のPLAY処理において,図5に示すMPの位置でマークキー1fが押下されると,図12に示すマーク処理が実行される。まず,ステップSF1において,フラグRECが「0」であるか否かを判断する。ここで,REC処理が行なわれている場合には,フラグRECが「1」となっているので,ステップSF1における判断結果は「NO」となり,そのまま当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。 【0039】一方,PLAY処理が行なわれている場合には,ステップSF1における判断結果は「YES」となり,ステップSF2へ進む。ステップSF2では,マークキー1fにより再生指定されたトラックの現在読み出し位置を検出し,これをマークポインタMPに格納する。次に,ステップSF3において,レジスタMPに応じてヘッドタイムHTを設定する。そして,ステップSF4へ進み,MP~MP+HT分のフレームに対応する2ブロック分のデータを予め外部記憶装置9から読み込み,デコードした後,テンポラリRAM8へ書込む。そして,当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。 【0040】[同期再生キー処理]そして,同期再生キー1gが押下されると,図13に示す同期再生キー処理が実行される。まず,ステップSG1においてタイマ割込みを停止する。これにより,図5に示すタイマ割込み処理が中断される。次に,ステップSG2において,演算器10を圧 縮データをデコードするためにデコーダに設定する。次に,ステップSG3へ進み,モードフラグSCを「1」に設定し,その後,当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。以上の処理で,同期パルス待ち受け状 縮データをデコードするためにデコーダに設定する。次に,ステップSG3へ進み,モードフラグSCを「1」に設定し,その後,当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。以上の処理で,同期パルス待ち受け状態に設定され,次に同期パルス(同期トリガ割り込み)を受信したタイミングで同期再生がスタートする。 【0041】[同期トリガ割込み処理]次に,図6に示す同期パルスが出力されると,図14に示す同期トリガ割込み処理が実行される。まず,ステップSH1において,モードフラグSCが「1」であるか否かを判断する。この場合,上述した同期再生キー処理において,モードフラグSCが「1」に設定されているため,ステップSH1における判断結果は「YES」となり,ステップSH2へ進む。ステップSH2では,モードフラグSCを「2」に設定する。次に,ステップSH3へ進み,マークポインタMPに基づいて,外部記憶装置9のトラック中の読み込み開始ブロック(ステップSF4にて読み込んだブロックに続くブロック)を指定する。 そして,ステップSH4において,外部記憶装置9からのバッファBBUF(0)への初めのブロック(上記ステップSH3において設定された読み込み開始ブロック)のデータの読み込みを開始する。 【0042】次に,ステップSH5において,ヘッドタイムHTをカウントするカウンタWTを「0」に設定し,ステップSH6へ進む。ステップSH6ではタイマを再びスタートする。これによって,図5に示すタイマ割込み処理が所定の時間間隔で実行される。なお,ステップSH1において,モードフラグSCが「1」以外の場合には,当該処理は実行されない。 【0043】そして,タイマ割込みにより図5に示す処理が実行されると,この場合,REC処理でないため,ステップSB1にお モードフラグSCが「1」以外の場合には,当該処理は実行されない。 【0043】そして,タイマ割込みにより図5に示す処理が実行されると,この場合,REC処理でないため,ステップSB1における判断結果は「NO」となり,ステップSB5へ進む。また,この場合,上述した処 理において,モードフラグSCが「2」に設定されているので,ステップSB5を経て,ステップSB15へ進む。ステップSB15ではテンポラリRAM8より予めステップSF4においてデコードされ,書き込まれたデータをタイマ割込毎に順次読み出す。 【0044】そして,ステップSB16において,上記データをDAC12へ出力し,アナログ信号に変換した後,図示しないサウンドシステムより出力する。次に,ステップSB17において,前述したカウンタWTをインクリメントし,ステップSB18へ進む。ステップSB18ではカウンタWTがヘッドタイムHT以上になったか否かを判断する。そして,カウンタWTがヘッドタイムHTより小さい場合,すなわち,テンポラリRAM8に格納されたデータが全て再生されていない場合には,ステップSB18における判断結果は「NO」となり,そのまま当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。そして,タイマ割込みが発生する毎に,ステップSB17においてカウンタWTをインクリメントし,ステップSB18においてカウンタWTがヘッドタイムHT以上になったか否かを判断する。 【0045】そして,テンポラリRAM8のデータが全て再生されると,ステップSB18における判断結果が「YES」となりステップSB19へ進む。ステップSB19ではバッファフラグiを「0」に,モードフラグSCを「0」(通常再生動作)に設定し,当該処理を終了して通常の処理へ戻る。そして,次のタ 結果が「YES」となりステップSB19へ進む。ステップSB19ではバッファフラグiを「0」に,モードフラグSCを「0」(通常再生動作)に設定し,当該処理を終了して通常の処理へ戻る。そして,次のタイマ割込みからは,モードフラグSCが「0」に設定されているため,ステップSB6~SB13の通常再生の処理が行なわれる。一方,モードフラグSCが「1」の場合にはステップSB14におけるタイマ割込みエラー処理が行なわれる。(モードフラグSCに「1」をセットする図13の同期再生キー処理では,ステップSG1でタイマを止めており,正常な動作ではSCが「1」の間にタイマ割込みは発生しない。) 【0046】このように,本実施例では,頭出しのアドレス(あるいはトラック上のタイミング)指示を受けた時点で,そのブロックのデコード処理を予め済ませ,これをテンポラリRAM8に格納しておくことにより,再生スタートの指示で直ちに音出しが可能となる。この装置によれば,聴感上の応答性能を損うことなく,データ量に対してその圧縮率がリニアなPCMに比べ,圧縮器の性能に応じてデータ量を1/2あるいは1/4にすることができる圧縮技術を効果的に利用することができ,結果として記憶装置(HDD,MOD,MT等)の性能限界(アクセス速度,記憶容量)から決定される最大オーディオトラック数,最長録音時間を2倍あるいは4倍等に向上させ得る。記憶装置は,エンコード,デコードに必要な処理装置に比べ,高価,大きい,重いので2台,4台と複数の記憶装置を装備するよりも,本装置採用による効果は大きい。」「【0049】また,図5に示したPLAY処理のタイムチャートにおける各タイミングは図17に示すようにしてもよい。図においては,バッファBBUF(i)の圧縮データをデコード 果は大きい。」「【0049】また,図5に示したPLAY処理のタイムチャートにおける各タイミングは図17に示すようにしてもよい。図においては,バッファBBUF(i)の圧縮データをデコード演算し,これをバッファABUF(i)へ転送する開始タイミングを外部記憶装置から次の圧縮データを読み込むタイミングに一致させるようにしている。これは,データを外部記憶装置からバッファへ転送する際の転送時間が一定でない場合でも,影響を受けないようにするためである。 【0050】また,本実施例では,同期パルスによる再生開始指示に応じて直ちに再生を開始する”同期再生”は,再生しようとするトラック上の任意位置を予めマークポインタMPに設定しておき,その位置から同期再生を開始するという仕様であったが,マークポインタMPの設定をやめて,再生するトラックの先頭から同期再生が行われるような仕様にしても良い。本実施例では,演算器の圧縮処理,及び,伸張処理に要する時間は共に時間DでありバッファBBUFから外部記憶装置9へのデータ転送, 及び外部記憶装置9からバッファBBUFへのデータ転送に要する時間は共に時間Sであるとしたが,これは,互いに異なる場合もあり得る。その場合も,時間Eより短い(D<E,S<E)という条件は同じで,それぞれの時間D,時間Sがその条件を満たす必要がある。 【0051】図6の同期再生の説明では,ヘッドタイムHTの時間長に関する条件は1フレーム以上,2フレーム以下であったが,これは時間Sと時間Dの和が時間E(=1フレーム)以下の場合の条件であり,時間Sと時間Dの和が1フレーム以上2フレーム以下の場合は,ヘッドタイムHTの条件は2フレーム以上,3フレーム以下となる。この条件の最大値よりも長いヘッドタイムを設定し ム)以下の場合の条件であり,時間Sと時間Dの和が1フレーム以上2フレーム以下の場合は,ヘッドタイムHTの条件は2フレーム以上,3フレーム以下となる。この条件の最大値よりも長いヘッドタイムを設定しても動作には問題が無いが,その分,テンポラリーRAM8の記憶容量が必要になり,効率が悪くなる。また,最小値についてはさらに短縮が可能で,いずれの場合も,ヘッドタイムHTが時間Sと時間Dの和より大きくなる,すなわち,ヘットタイムHTの再生期間内に次ブロックの転送(時間S)とデコード(時間D)が完了することが保証されていれば良い。 【0052】【発明の効果】以上,説明したように,この発明によれば,外部記憶手段に記録された圧縮データの任意の位置からデコード処理を行う場合,該デコード処理に先立って,圧縮データのデコード開始位置から所定の部分までを予め元のデータに戻して所定の記憶手段に記憶し,上記所定の部分以降のデコード処理の準備が整った時点で,所定の記憶手段に記憶したデコードされたデータを出力するとともに,上記所定の部分以降の圧縮データを順次デコード処理を行って,前記デコード処理されたデータの出力と並行して上記所定の部分以降のデコード処理を行い,先にデコードされたデータの出力に引き続いて上記所定の部分以降のデコード処理により生成されたデータを出力する演算手段を具備するようにしたため,圧縮データ のデコード時における時間遅れが生ぜず,このため高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができるという利点が得られる。」イ以上に照らすと,本件特許発明1の実施例である信号処理装置の再生処理の概要等は,以下のとおりである。 (ア) 通常PLAY再生(段落【0016】~【0017】,【0031】~【0037】,【 上に照らすと,本件特許発明1の実施例である信号処理装置の再生処理の概要等は,以下のとおりである。 (ア) 通常PLAY再生(段落【0016】~【0017】,【0031】~【0037】,【0043】~【0045】,【0049】)PLAYキー1aを押下すると,圧縮データのデコードが開始される。 デコードされたデータはDACに供給される(段落【0016】~【0017】)。 PLAYキー1aが押下されると,タイマ割込み処理が実行され(段落【0033】),REC処理が動作していない(RECが「0」)ときにSCの値を調べ,SC=0のとき通常再生動作(通常PLAY処理)を行い(段落【0034】),SC=1のときタイマ割込みエラー処理を行い(段落【0045】),SC=2のときテンポラリーRAM8より予めデコードされたデータを読み出す(段落【0043】)。 バッファへ転送するタイミングを変えた変形例もある(段落【0049】)。 (イ) 途中再生,同期再生及びマーク処理(段落【0018】~【0020】,【0038】~【0039】,【0040】~【0045】,【0050】~【0051】)a マーク処理PLAY処理が行われている場合に,マークキー1fが押下されると再生指定されたトラックの現在読み出し位置を検出し,マークポインタMPに格納する。MP~MP+HT分のフレームに対応する2ブロック分のデータをあらかじめ外部記憶装置9から読み込み,デコードした後,テンポラリーRAM8に書き込む(段落【0038】~ 【0039】)。 マークポインタの設定をやめて,再生するトラックの先頭から同期再生が行われるような仕様にしてもよい(段落【0050】~【00 き込む(段落【0038】~ 【0039】)。 マークポインタの設定をやめて,再生するトラックの先頭から同期再生が行われるような仕様にしてもよい(段落【0050】~【0051】)。 b 途中再生・同期再生マークされた任意の位置から再生する場合には,所定の時間分のデータをデコードしてテンポラリーRAM8に記憶しておく。途中再生開始のタイミングを指示する同期パルスが供給されると,テンポラリーRAM8に記憶されたデータを所定のサンプリング速度で順次読み出してDACへ供給し,サウンドシステムから出力する(段落【0018】~【0020】)。 同期再生キー1gが押下されると,同期パルス待ち受け状態(SC=1)に設定され,同期パルスを受信したタイミング(SC=2)で同期再生がスタートする(段落【0040】)。 同期パルスが出力されると,マークポインタMPに基づいて外部記憶装置9のトラック中の読み込み開始ブロックを指定し,外部記憶装置9からバッファBBUF(0)へのデータの読み込みを開始する(段落【0018】,【0041】~【0042】)。 cbの補足説明段落【0018】~【0020】の「途中再生」は「同期再生」と同じ意味であると解される。なぜなら,「そして,途中再生開始のタイミングを指示する同期パルスが供給されると,まず,上述したテンポラリーRAM8に記憶されていたデータ(括弧内省略)を所定サンプリング速度で順次読み出して」(段落【0018】)と記載され,「本実施例では,同期パルスによる再生開始指示に応じて直ちに再生を開始する”同期再生”は,再生しようとするトラック上の任意位置 を予めマークポインタMPに設定しておき,その )と記載され,「本実施例では,同期パルスによる再生開始指示に応じて直ちに再生を開始する”同期再生”は,再生しようとするトラック上の任意位置 を予めマークポインタMPに設定しておき,その位置から同期再生を開始するという仕様であったが」(段落【0050】)と記載されているからである。 (ウ) 効果(段落【0046】,【0052】)デコード処理を予め済ませたデータをテンポラリーRAM8に格納しておくことで,再生スタートの指示で直ちに音出しが可能となる(段落【0046】)。 圧縮データのデコード時における時間遅れが生じない(段落【0052】)。 ウそこで,まず構成要件1Cの構成要件1Bと関連する記載について検討するに,構成要件1Cの「該発音指示に先立って,前記圧縮データの所定の開始位置から所定の部分までを予めデコード処理して元のデータに戻し,先頭データとして所定の記憶手段に記憶し,該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始する」との記載に照らすと,構成要件1Cは,発音指示の開始前に,これに先だって所定の開始位置から所定の部分までのデコード処理が行われていることを前提としているから,所定の開始位置が設定されている途中再生・同期再生の場合を定めていると解するのが相当である。 そこで,この途中再生・同期再生に関する実施例の記載をみると,まず,どこから再生するのかを示すための「マーク処理」が行われる。すなわち,通常のPLAY処理において,図5に示すMPの位置でマークキー1fが押下されると,図12に示すマーク処理が行われる。マーク処理においては,マークキー1fにより再生指定されたトラックの現在読み出し位置を検出し,これをマークポ ,図5に示すMPの位置でマークキー1fが押下されると,図12に示すマーク処理が行われる。マーク処理においては,マークキー1fにより再生指定されたトラックの現在読み出し位置を検出し,これをマークポインタMPに格納し,レジスタMPに応じてヘッドタイムHTを設定する。そして,MP~MP+HT分のフレームに対応する2ブロック分のデータを予め外部記憶装置9から読み込み,デコード した後,テンポラリRAM8へ書き込む(以上段落【0038】【0039】)。このマーク処理におけるマークキー1fの押下げからデコードしたデータのテンポラリRAM8への書き込みまでが,構成要件1Cの前段,すなわち,発音指示に先立つ動作であると理解される(上記「2ブロック分のデータ」が構成要件1Cの「先頭データ」に相当するものと理解される。)。 実施例においては,次に,発音指示の発生に応じて先頭データの音信号が発生するようにするため,同期再生キー処理が行われる。すなわち,同期再生処理キーの押下げにより,モードフラグSCが「1」に設定されることにより,後続の動作が可能であるようにする。同期パルスの受信により,同期トリガ割込み処理が開始され,デコードされた先頭データの読み出しが可能になるようにする(以上段落【0040】)。これは,構成要件1C後段における「発音指示発生による音信号発生の開始」を可能にするための準備動作と解される。 そして,同期パルスの出力により同期トリガ割込み処理が開始されると初めのブロック(段落【0039】の2ブロック)のデータの読み込みが開始され(段落【0041】),DAC12を通じてサウンドシステムから出力される(段落【0018】)。これは,構成要件1C後段の「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音 落【0041】),DAC12を通じてサウンドシステムから出力される(段落【0018】)。これは,構成要件1C後段の「該発音指示の発生に応じて,前記所定の記憶手段に記憶された先頭データに基づいて音信号の発生を開始する。」に相当するものと理解される。 以上の実施例の記載と構成要件1Cとの関係を考慮しながら,構成要件1Cの「発音指示」の意義を検討すると,同期再生キー1gが押下され同期パルス待ち受け状態に設定された後に,同期パルスを受信したタイミングで同期トリガ割込み処理が行われ,同期再生がスタートするのであるから(上記イ(イ)b),実施例における同期パルスは本件特許発明1の「発音指示」に対応するものであるといえる。 そして,段落【0041】には,「次に,図6に示す同期パルスが出力されると,図14に示す同期トリガ割込み処理が実行される。まず,ステップSH1において,モードフラグSCが「1」であるか否かを判断する。」と記載されているから,同期トリガ割込み処理をスタートさせるものが発音指示手段であり,同期トリガ割り込み処理をスタートさせるためには同期パルスを発生させることが必要であると解される。 本件特許1明細書には,特許請求の範囲における「発音指示」,「発音指示手段」の技術的意義を直接説明した記載はないが,上記実施例の記載を参考にして検討するならば,「発音指示」及び「発音指示手段」はいずれも,一般的な技術として使用される同期パルスを念頭に置いたものであり,「発音指示手段」は同期パルスを発生させる手段であり,同期パルスを「発音指示」と解するのが相当である。 エさらに,「発音指示手段」の構成について検討するに,上記実施例の記載においても,本件構成要件1Cの「発音指示」と解される同期パルスを発生させる「 を「発音指示」と解するのが相当である。 エさらに,「発音指示手段」の構成について検討するに,上記実施例の記載においても,本件構成要件1Cの「発音指示」と解される同期パルスを発生させる「発音指示手段」の構成についての具体的な記載はない。 そして,段落【0004】には「マルチトラック・レコーダでは,例えば,予め圧縮記録しておいた信号に同期させて,後から別のトラックに他の信号を記録するという作業が行なわれる。この時,予め圧縮記録しておいた信号を再生するのであるが,再生するためのデータ処理に時間がかかるため,頭出しにおいて直ちに再生音が出てこないという問題を生じる。 特に,上述した技術では,FFT等のブロックデータ処理が含まれており,これが聴感上無視できないほどの再生時の立上がり遅れを生ずる。」とあり,聴感上無視できないのは,利用者が再生をさせようとする行為と実際の発音にズレが生じることが原因であることは明らかであるから,再生を開始させるための何らかの動作は利用者が行っていると解される。 オ以上のとおり,明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,再生を開始 させるために利用者が何らかの動作を行っていると考えるのが合理的であること,また【図1】【図2】で示されるものが主要な実施例であることをも考慮すると,構成要件1Bの「発音指示手段」は,同期パルスを発生させる手段であって,利用者の動作(例えばキーの押下げ等)を必要とする構成を有するものであると解するのが相当である。 この点,実施例におけるPLAYキー1aは,外部記憶装置から圧縮データを読み込み,これをデコードして読み出すための起点となるものであり(段落【0016】【0017】),同期再生キー1gは,前記のとおり,その押下により同期パルス待ち受け は,外部記憶装置から圧縮データを読み込み,これをデコードして読み出すための起点となるものであり(段落【0016】【0017】),同期再生キー1gは,前記のとおり,その押下により同期パルス待ち受け状態(SC=1)を設定するものであって,いずれも同期再生をスタートさせる(SC=2)ものではないから(上記イ(ア)及び(イ)b参照),同期パルスを発生させるものではなく,「発音指示手段」には当たらない。 カこれに対し,原告は,本件特許発明1は,「レコーダ等に用いて好適な信号処理装置に関する」発明である(段落【0001】)から,組み込む先の外部の「レコーダ等」から命令を受けなければ何ら動作しない,部品としての信号処理装置を対象としているから,これが具備する「発音指示手段」も,外部の操作キーなどではなく,内部にあって直接「演算手段」の動作開始を指示する回路がこれに相当する旨主張する。 しかしながら,上記オのとおり,「発音指示手段」は利用者の動作を必要とする構成を有するものであって,原告の主張は採用できない。また,原告の主張に沿って考えても,動作開始を指示する回路が「発音指示」を発生させる契機が不明であって,このような契機を生じさせるものが「発音指示手段」に当たると考えるのが相当である。 (2) 被告製品1が「発音指示手段」を備えているかについて原告は,被告製品1について,レジスタマップが「発音指示手段」に該当し,当該レジスタマップがPCMバッファゲートに対して,その情報を伝達 するとともに,対象トラックのシーケンサに対しても,後続データのデコードを,その後直ちに再開するように指示を発行する動作が「発音指示を発生する」に該当する旨主張する。 しかしながら,上記(1)オのとおり,「発音指示手段」 ケンサに対しても,後続データのデコードを,その後直ちに再開するように指示を発行する動作が「発音指示を発生する」に該当する旨主張する。 しかしながら,上記(1)オのとおり,「発音指示手段」は,同期パルスを発生させる手段であって,利用者の動作を必要とする構成を有するものであるから,原告の主張は失当である。また,上記(1)カのとおり,原告の主張に沿って考えても,被告製品1のレジスタマップの動作の契機が不明であって,このような契機を生じさせるものが「発音指示手段」に当たると考えられるが,この点についての主張・立証はない。 そうすると,被告製品1が「発音指示手段」を備えているとは認められない。 (3) 以上のとおり,被告製品1は構成要件1Bを充足しない。 1-3 構成要件1Cの充足性(争点1-3)について(1) 「所定の開始位置から所定の部分まで」の意義についてア本件特許1明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある。 「【0007】【作用】外部記憶手段に記録された圧縮データの任意の位置からデコ-ド処理を行う場合,該デコード処理に先立って,圧縮データのデコード開始位置から所定の部分までを演算手段によって予め元のデータに戻した後,該データを所定の記憶手段に記憶する。そして,上記所定の部分以降のデコード処理の準備が整った時点で,所定の記憶手段に記憶したデコードされたデータを出力するとともに,上記所定の部分以降の圧縮データを順次デコード処理を行い,前記デコード処理されたデータの出力と並行して上記所定の部分以降のデコード処理を行い,先にデコードされたデータの出力に引き続いて上記所定の部分以降のデコード処理により生成されたデータを出力する 【0008】 して上記所定の部分以降のデコード処理を行い,先にデコードされたデータの出力に引き続いて上記所定の部分以降のデコード処理により生成されたデータを出力する 【0008】【実施例】次に図面を参照してこの発明の実施例について説明する。図1はこの発明の一実施例の構成を示すブロック図である。パネルスイッチ1は,同期再生の開始,停止を指示,マークしたブロックの頭出しを指定,また,同期再生するトラックを指定するためのキーなどから構成されており,これらのキーの状態はCPU(中央処理装置)5へ供給される。また,ディスプレイ2は上記パネルスイッチ1による指示等,当該装置の状態を表示する。 【0009】ここで,パネルスイッチ1の一例を図2(a)に示す。この図において,パネルスイッチ1は,テンキー,録音再生の開始するキー,動作停止を指示するキー,再生トラックやデータ位置を指示するキー等から構成されている。具体的には,再生の開始を指示する「PLAY」キー1a,録音の開始を指示する「REC」キー1b,上記再生および録音を停止させる「STOP」キー1c,どのトラックまたは位置から再生するかを指示する「トラック」キー1dおよび「位置」キー1e,後述する同期再生を行なう先頭位置を指示する(マークする)「マーク」キー1f,そして,同期再生の開始を指示する「同期再生」キー1gからなる。また,上述した各種キーに付帯して数値を入力するためのテンキー1hがある。」「【0018】[途中再生タイムチャート]次に,図6において,マークされた任意の位置から再生する場合について説明する。例えば,上述した図5に示すタイムチャートにおいて,マークされた位置から再生する場合には,まず,所定の時間分(HT;ヘッドタイム)のデータを予 ークされた任意の位置から再生する場合について説明する。例えば,上述した図5に示すタイムチャートにおいて,マークされた位置から再生する場合には,まず,所定の時間分(HT;ヘッドタイム)のデータを予め演算器10によってデコードしてテンポラリーRAM8に記憶しておく。この場合には,第1ブロックのデータ(マークされた位置以降のデータ)と第2ブロックのデータをデコードしテンポラリーRAM8に記憶しておく。そ して,途中再生開始のタイミングを指示する同期パルスが供給されると,まず,上述したテンポラリーRAM8に記憶されていたデータ(マークされた位置のアドレス以降のデータ)を所定サンプリング速度で順次読み出してDAC12へ供給し,サウンドシステムから出力する。また,これと同時に,第3ブロックの圧縮データを外部記憶装置9から読み込んでバッファBBUF(0)へ格納する。」「【0038】[マーク処理]上述した通常のPLAY処理において,図5に示すMPの位置でマークキー1fが押下されると,図12に示すマーク処理が実行される。まず,ステップSF1において,フラグRECが「0」であるか否かを判断する。ここで,REC処理が行なわれている場合には,フラグRECが「1」となっているので,ステップSF1における判断結果は「NO」となり,そのまま当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。 【0039】一方,PLAY処理が行なわれている場合には,ステップSF1における判断結果は「YES」となり,ステップSF2へ進む。ステップSF2では,マークキー1fにより再生指定されたトラックの現在読み出し位置を検出し,これをマークポインタMPに格納する。次に,ステップSF3において,レジスタMPに応じてヘッドタイムHTを設定する。そして,ステップSF4 fにより再生指定されたトラックの現在読み出し位置を検出し,これをマークポインタMPに格納する。次に,ステップSF3において,レジスタMPに応じてヘッドタイムHTを設定する。そして,ステップSF4へ進み,MP~MP+HT分のフレームに対応する2ブロック分のデータを予め外部記憶装置9から読み込み,デコードした後,テンポラリRAM8へ書込む。そして,当該処理を終了し,通常の処理へ戻る。」「【0041】[同期トリガ割込み処理]次に,図6に示す同期パルスが出力されると,図14に示す同期トリガ割込み処理が実行される。まず,ステップSH1において,モードフラグSCが「1」であるか否かを判断する。この場合,上述した同期再生キー処理において,モードフラグSC が「1」に設定されているため,ステップSH1における判断結果は「YES」となり,ステップSH2へ進む。ステップSH2では,モードフラグSCを「2」に設定する。次に,ステップSH3へ進み,マークポインタMPに基づいて,外部記憶装置9のトラック中の読み込み開始ブロック(ステップSF4にて読み込んだブロックに続くブロック)を指定する。 そして,ステップSH4において,外部記憶装置9からのバッファBBUF(0)への初めのブロック(上記ステップSH3において設定された読み込み開始ブロック)のデータの読み込みを開始する。」「【0046】このように,本実施例では,頭出しのアドレス(あるいはトラック上のタイミング)指示を受けた時点で,そのブロックのデコード処理を予め済ませ,これをテンポラリRAM8に格納しておくことにより,再生スタートの指示で直ちに音出しが可能となる。…(以下省略)」「【0050】また,本実施例では,同期パルスによる再生開始指示に応じて直ちに再生を開始 リRAM8に格納しておくことにより,再生スタートの指示で直ちに音出しが可能となる。…(以下省略)」「【0050】また,本実施例では,同期パルスによる再生開始指示に応じて直ちに再生を開始する”同期再生”は,再生しようとするトラック上の任意位置を予めマークポインタMPに設定しておき,その位置から同期再生を開始するという仕様であったが,マークポインタMPの設定をやめて,再生するトラックの先頭から同期再生が行われるような仕様にしても良い。本実施例では,演算器の圧縮処理,及び,伸張処理に要する時間は共に時間DでありバッファBBUFから外部記憶装置9へのデータ転送,及び外部記憶装置9からバッファBBUFへのデータ転送に要する時間は共に時間Sであるとしたが,これは,互いに異なる場合もあり得る。その場合も,時間Eより短い(D<E,S<E)という条件は同じで,それぞれの時間D,時間Sがその条件を満たす必要がある。」「【0052】【発明の効果】以上,説明したように,この発明によれば,外部記憶手段に記録された圧縮データの任意の位置からデコード処理を行う場合,該デコード処理に先立って,圧縮データのデコード開始位置から 所定の部分までを予め元のデータに戻して所定の記憶手段に記憶し,上記所定の部分以降のデコード処理の準備が整った時点で,所定の記憶手段に記憶したデコードされたデータを出力するとともに,上記所定の部分以降の圧縮データを順次デコード処理を行って,前記デコード処理されたデータの出力と並行して上記所定の部分以降のデコード処理を行い,先にデコードされたデータの出力に引き続いて上記所定の部分以降のデコード処理により生成されたデータを出力する演算手段を具備するようにしたため,圧縮データのデコード時における時間遅れが生ぜず,この ,先にデコードされたデータの出力に引き続いて上記所定の部分以降のデコード処理により生成されたデータを出力する演算手段を具備するようにしたため,圧縮データのデコード時における時間遅れが生ぜず,このため高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができるという利点が得られる。」イ以上に基づいて検討するに,前記1-2(1)ウのとおり,構成要件1Cは,発音指示の開始前に,これに先だって所定の開始位置から所定の部分までのデコード処理が行われていることを前提としているから,所定の開始位置が設定されている途中再生・同期再生の場合を定めていると解するのが相当である。 そして,本件特許1明細書では,「圧縮データの任意の位置からデコ-ド処理を行う場合」(段落【0007】,【0052】)と記載され,本件特許発明1の実施例である信号処理装置について,「図5に示すMPの位置でマークキー1fが押下されると,図12に示すマーク処理が実行される。」(段落【0038】),「マークキー1fにより再生指定されたトラックの現在読み出し位置を検出し,これをマークポインタMPに格納する。」(段落【0039】),「マークポインタMPに基づいて,外部記憶装置9のトラック中の読み込み開始ブロック(ステップSF4にて読み込んだブロックに続くブロック)を指定する。」(段落【0041】),「頭出しのアドレス(あるいはトラック上のタイミング)指示を受けた時点で,そのブロックのデコード処理を予め済ませ,これをテンポラリRAM8に格納しておくことにより,再生スタートの指示で直ちに音出しが可 能となる。」(段落【0046】),「本実施例では,同期パルスによる再生開始指示に応じて直ちに再生を開始する”同期再生”は,再生しようとするトラック上の任意位置を予めマークポインタ が可 能となる。」(段落【0046】),「本実施例では,同期パルスによる再生開始指示に応じて直ちに再生を開始する”同期再生”は,再生しようとするトラック上の任意位置を予めマークポインタMPに設定しておき,その位置から同期再生を開始するという仕様であった」(段落【0050】)と記載されているから,実施例に即していえば,「所定の開始位置」は,操作者がマークキー1fを押下することで指定された開始位置と解される。もっとも,「マークポインタMPの設定をやめて,再生するトラックの先頭から同期再生が行われるような仕様にしても良い。」(段落【0050】)と記載されており,これはマークポインタMPを設定する実施例の変形例であることから,トラックの先頭が「所定の開始位置」に含まれないとまではいえない。 そうすると,「所定の開始位置」は,操作者が指定する任意の位置だけでなく,固定されている場合も含むと解するのが相当である。 ウまた,「所定の部分」については,「マークされた位置から再生する場合には,まず,所定の時間分(HT;ヘッドタイム)のデータを予め演算器10によってデコードしてテンポラリーRAM8に記憶しておく。この場合には,第1ブロックのデータ(マークされた位置以降のデータ)と第2ブロックのデータをデコードしテンポラリーRAM8に記憶しておく。」(段落【0018】)と記載されているように,例えば「ブロック」で特定される範囲を意味するのであり,圧縮データにおける一定の範囲をいうものと解される。 (2) 構成要件1Cにおける①「デコード処理」の開始と「音信号の発生」の開始の同時性②「デコード処理」と「音信号の発生」の平行性の程度についてア本件特許1明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある。 ①「デコード処理」の開始と「音信号の発生」の開始の同時性②「デコード処理」と「音信号の発生」の平行性の程度についてア本件特許1明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある。 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで,上述した圧縮技術を,例えば,マルチトラックのレコーダに適用して,性能/価格比を上げようとすると,十分な圧縮性能は得られるが,再生時の圧縮データのデコードの際に時間遅れを生じるという問題がある。すなわち,マルチトラック・レコーダでは,例えば,予め圧縮記録しておいた信号に同期させて,後から別のトラックに他の信号を記録するという作業が行なわれる。この時,予め圧縮記録しておいた信号を再生するのであるが,再生するためのデータ処理に時間がかかるため,頭出しにおいて直ちに再生音が出てこないという問題を生じる。特に,上述した技術では,FFT等のブロックデータ処理が含まれており,これが聴感上無視できないほどの再生時の立上がり遅れを生ずる。 【0005】この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので,圧縮データのデコード時における時間遅れが生ぜず,このため高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができる信号処理装置を提供することを目的としている。」「【0018】[途中再生タイムチャート]次に,図6において,マークされた任意の位置から再生する場合について説明する。例えば,上述した図5に示すタイムチャートにおいて,マークされた位置から再生する場合には,まず,所定の時間分(HT;ヘッドタイム)のデータを予め演算器10によってデコードしてテンポラリーRAM8に記憶しておく。この場合には,第1ブロックのデータ(マークされた位置以降のデータ)と第2ブロックのデータをデコードしテ ッドタイム)のデータを予め演算器10によってデコードしてテンポラリーRAM8に記憶しておく。この場合には,第1ブロックのデータ(マークされた位置以降のデータ)と第2ブロックのデータをデコードしテンポラリーRAM8に記憶しておく。そして,途中再生開始のタイミングを指示する同期パルスが供給されると,まず,上述したテンポラリーRAM8に記憶されていたデータ(マークされた位置のアドレス以降のデータ)を所定サンプリング速度で順次読み出してDAC12へ供給し,サウンドシステムから出力する。また,これと 同時に,第3ブロックの圧縮データを外部記憶装置9から読み込んでバッファBBUF(0)へ格納する。 【0019】そして,上記格納が終了すると,演算器10によりバッファBBUF(0)の圧縮データをデコードし,これをバッファABUF(0)へ格納していく。この時間,上記第1ブロックのデータと第2ブロックのデータは順次DAC12へ出力されている。そして,第2ブロックのデータが出力し終えると,引き続き,バッファABUF(0)に格納された第3ブロックのデータをDAC12へ出力する。…(以下省略)」イ以上によれば,構成要件1Cの同時平行性は,先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて所定の部分以降の圧縮データをデコード処理し,その結果生成された元のデータに基づいた音信号の発生を先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて行うことを可能にするために要求される構成である。また,上記アの記載によると,本件特許発明1の実施例である信号処理装置では,HT(ヘッドタイム)の間に圧縮データを読み込んでデコード処理をすればよいものであるといえる。 また,発明の詳細な説明における本件特許発明1の課題に関する記載をみても,本件特許発明 では,HT(ヘッドタイム)の間に圧縮データを読み込んでデコード処理をすればよいものであるといえる。 また,発明の詳細な説明における本件特許発明1の課題に関する記載をみても,本件特許発明1の課題は,「再生するためのデータ処理に時間がかかるため,頭出しにおいて直ちに再生音が出てこないという問題を生じる。・・・これが聴覚上無視できないほどの再生時の立上がり遅れを生じる」(段落【0004】),「圧縮データのデコード時における時間遅れが生ぜず,このため高圧縮率の圧縮法を効果的に用いることができる信号装置を提供することを目的としている。」(段落【0005】)とされており,再生時の立上がり遅れが課題とされているのであって,その課題解決の達成手段としてのデコード処理の厳格な同時平行性までが技術的な課題とされているものとは認められない。 そうすると,構成要件1Cの同時平行性は,先頭データに基づいた音信 号の発生に引き続いて所定の部分以降の圧縮データをデコード処理し,その結果生成された元のデータに基づいた音信号の発生を先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて行うことを可能にする程度であれば許容されると解するのが相当であって,厳格に同時平行性を要求する理由は見いだせない。 構成要件1Cの同時平行性に対応する請求項の部分は,拒絶理由通知後の手続補正において追加されたものであるが(乙5,6),原告の意見書(乙7)をみても,この同時平行性について厳格に解することを前提とした記載は見当たらない。 ウ以上のとおり,構成要件1Cの同時平行性は,先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて所定の部分以降の圧縮データをデコード処理し,その結果生成された元のデータに基づいた音信号の発生を先頭データに基づいた音信号 構成要件1Cの同時平行性は,先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて所定の部分以降の圧縮データをデコード処理し,その結果生成された元のデータに基づいた音信号の発生を先頭データに基づいた音信号の発生に引き続いて行うことを可能にするに足りる程度であると解される。 (3) 被告製品1が構成要件1Cを処理する演算手段を備えているかについてア甲6号証(被告製品1の仕様書43頁)には,「PCMバッファゲートによる発音遅延の制御」について,以下の記載がある。 「各トラックのデコーダ出力に設けられているPCMバッファには図6. 6に示すようなゲートスイッチが付属しており,このゲートスイッチを利用することで場合によっては発音遅延時間を減少させることができます。 (PCMバッファに起因する最大10[ms]の遅延を1[us]以内にできます。)ゲートスイッチを有効に利用できるのは以下の2つの条件を共に満たせる状況です。 1.全トラックが発音していない状態からの再生であること。(ゲートスイッチが全トラック共用のため。) 2.再生実行より10[ms]以上前に再生準備が開始できること。(音データの準備に10[ms]必要なため。)手順は以下の様になります。 1.停止中のトラックに対してPUSEコマンドを発行する。 →当該トラックは再生準備状態になります。 ゲートスイッチがOFF状態でデコードが開始され,PCMバッファにデコード済み音データが蓄積されます。音データの準備には最大10[ms]かかります。 2.再生準備中のトラックに対してPLAYコマンドを発行する。 →当該トラックは再生状態になります。 ます。音データの準備には最大10[ms]かかります。 2.再生準備中のトラックに対してPLAYコマンドを発行する。 →当該トラックは再生状態になります。 ゲートスイッチがONになりPCMバッファに準備された音データが出力されます。このとき,PLAYコマンド発行から音データ出力までの遅延は1[um]以内になります。」イ以上によると,被告製品1には,①命令を適切に組み合わせることによって発音遅延時間を減少させることができる機能,②PUSEコマンドを発行するとゲートスイッチをOFFにできる機能,③PLAYコマンドを発行するとゲートスイッチをONにできる機能,④PUSEコマンド発行からPLAYコマンドの発行まで10[ms]以上間が空くと遅延を1[um]以内にできる機能があると認められる。 しかしながら,本件全証拠によっても,㋐被告製品1が構成要件1Cを処理するためのプログラムを有していること,㋑予めデコードされる範囲が所定の開始位置から所定の部分までと範囲が定められていること,㋒バッファに蓄積された音データを再生中に圧縮されたデータをデコードしていることなどは認められない。 原告は,甲49添付の「①特許関連の技術説明」22頁~41頁において,被告製品1の仕様書(甲6)の5頁,15頁,24頁,29頁,36 頁の記載を引用して,これらの記載から上記㋐~㋒の事実が認められるとするが,これらの記載から上記㋐~㋒の事実を認めるには足りない。 そうすると,被告製品1は構成要件1Cを処理する演算手段を備えているとは認められない。 ウさらにいうと,被告製品1は,PCMバッファのみで,予めデコードしたデータとバッファに空き領域ができたときにデコードされる は構成要件1Cを処理する演算手段を備えているとは認められない。 ウさらにいうと,被告製品1は,PCMバッファのみで,予めデコードしたデータとバッファに空き領域ができたときにデコードされるデータを記憶するものであり(乙25〔技術説明会資料〕42~46頁),発音状況によってデコードが一時停止する場合があり得るから(同67頁),構成要件1Cの同時平行性を充足しない。 これに対し,本件特許発明1は,構成要件1Cに照らすと,発音指示があると所定の記憶手段の空き容量に関係なく圧縮データのデコードを行うものと解されるのであって,被告製品1と本件特許発明1とは技術思想においても相違するものであるといえる。 1-4 まとめ以上のとおり,被告製品1は構成要件1A~1Cを充足しない。 そうすると,構成要件1Aに関する主張である均等侵害及び道具理論について判断するまでもなく,被告製品1が本件特許発明1の技術的範囲に属するとは認められないから,本件特許発明1に係る請求はいずれも理由がない。 2 本件特許発明2に係る侵害の成否について2-1 構成要件2Aの充足性(争点2-1)について(1) 構成要件2Aの「ディジタル・データ」の意義について検討する。 原告は,本件特許発明2について,楽音信号の「ディジタル・データ」をすべて,「(デコード処理にある程度の時間が必要な)特に圧縮効率の高いデータ」としてしまうと,楽音信号の先頭部分で,データの処理に時間がかかり,スムーズに発音開始がされないことから,先頭部分については,その後の「特に圧縮効率の高いデータ」の部分と比べて処理に時間のかからない データとしておき,先頭部分の処理をスムーズにしつつ,その後の部分については,「特に圧縮効率の高いデータ」を は,その後の「特に圧縮効率の高いデータ」の部分と比べて処理に時間のかからない データとしておき,先頭部分の処理をスムーズにしつつ,その後の部分については,「特に圧縮効率の高いデータ」を利用することによって,上記課題を解決しつつ「特に圧縮効率の高いデータ」を利用するというものであるとし,圧縮データの先頭部分(「楽音信号の先頭」)に付する「ディジタル・データ」に,被告製品2~4の「ADPCM①」データが該当する旨主張する。 すなわち,原告の主張は,構成要件2Aの「ディジタル・データ」と「ディジタル・データに圧縮処理を施したデータ」の区別の基準について,圧縮処理を施したデータか否かという基準ではなく,特に圧縮効率が高くデータ処理に時間がかかるか否かという基準を用いるべきであると主張するものである。そして,原告は,その主張の根拠として,本件特許発明2の課題が,「特に圧縮効率の高いデータ」を利用する際の「時間遅れ」を極めて少なくすることにあることを挙げているものと解される。 しかし,「特に圧縮効率の高いデータ」を利用する際の「時間遅れ」を極めて少なくする方法として,先頭部分に圧縮しないディジタル・データを配置して課題を解決するのか,それとも,ディジタル・データのほかADPCMデータのように圧縮効率の低いデータを配置することも含めて課題を解決するのかは発明者の選択に係ることであって,圧縮しないディジタル・データとADPCMデータのように圧縮効率の低いデータのいずれをも「ディジタル・データ」として取り扱っているか否かは,明細書の記載に基づいて定められるべき事柄である。 (2) そこで,構成要件2Aの「ディジタル・データ」の意義について検討する。 ア本件特許2明細書の【請求項1】及び【発明の詳細な説明】 書の記載に基づいて定められるべき事柄である。 (2) そこで,構成要件2Aの「ディジタル・データ」の意義について検討する。 ア本件特許2明細書の【請求項1】及び【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある。 「【請求項1】入力されるディジタル楽音データに圧縮処理を施すデータ 圧縮手段と,録音すべきディジタル楽音データの入力から,前記ディジタル楽音データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間が経過したか否かを判別する第1の判別手段と,前記第1の判別手段によって所定期間経過していないと判別された場合には,前記ディジタル楽音データを選択し,前記第1の判別手段によって所定期間経過したと判別された場合には,前記データ圧縮手段により圧縮処理が施されたデータを選択する第1の選択手段と,書き込み可能な記憶手段と,前記選択手段によって選択されたデータを前記記憶手段に書き込む書込手段とを具備することを特徴とする電子楽器の音源装置。」「【0001】【産業上の利用分野】この発明は,圧縮処理を施した楽音信号に基づき録音・発音する電子楽器の音源装置に関する。 【0002】【従来の技術】従来より,楽音信号をPCM(パルス符号化変調)等を用いてディジタルのPCM・データに変換し,さらに,圧縮処理を施して波形メモリ内に記憶するとともに,再生(発音)時には,この波形メモリ内から圧縮処理を施したデータ(エンコード・データ)を読み出し,このデータにデコード(展開)処理を施して,元のPCM・データに戻し,楽音を発生させる電子楽器の音源装置が知られている。圧縮処理には,例えば,ADPCM(適応型差分PCM)や,さらに圧縮効率をあげたサブバンドコーディングを用いることできる 元のPCM・データに戻し,楽音を発生させる電子楽器の音源装置が知られている。圧縮処理には,例えば,ADPCM(適応型差分PCM)や,さらに圧縮効率をあげたサブバンドコーディングを用いることできる。圧縮処理を施すことによって,波形メモリ内に記憶する情報量を少なくすることができるので,より少ない容量の記憶装置を用いて効率的に波形メモリを構成することができる。 【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで,上述したような,特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である。すな わち,オペレータ(操作者)による発音指示によって読み出したエンコード・データを,元のPCM・データへデコードする時間が必要である。このため,図11に示すように,楽音発生が,発音指示後から,デコード処理に要する時間Dだけ遅れるいう(注:原文のまま)問題があった。この発明は,上記課題に鑑みなされたもので,その目的とするところは,発音指示後,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる電子楽器の音源装置を提供することにある。」「【0005】上述した課題を解決するために請求項2記載の発明は,楽音信号の先頭から,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する記憶手段と,発音指示に応答して,前記記憶手段に記憶されたディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する読出手段と,前記読出手段によって読み出された,圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに展開するデータ展開 ディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する読出手段と,前記読出手段によって読み出された,圧縮処理を施したデータに展開処理を施して元のディジタル・データに展開するデータ展開手段と,前記読出手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したか否かを判別する第2の判別手段と,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する第2の選択手段とを具備し,前記第2の選択手段によって選択されたディジタル・データに基づいて発音することを特徴としている。 【0006】【作用】請求項1記載の発明によれば,第1の選択手段は,ディジタル 楽音信号の入力から,データ圧縮手段の圧縮処理で圧縮されるディジタル楽音データの展開処理に要する時間以上の所定の時間まで,入力されるディジタル楽音データを選択し,所定期間以降では,データ圧縮手段により圧縮処理が施されたデータを選択する。記憶手段には,第1の選択手段によって選択されたデータが書き込まれるので,録音すべき楽音信号は,その先頭から所定期間までの部分がディジタル・データの状態にて,所定期間以降の部分が圧縮処理されたディジタル・データの状態にて,それぞれ記憶手段に記憶される。 【0007】請求項2記載の発明によれば,発音指示に応答して,記憶手段からのディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しが開始され,ディジタル・データは,第2の選択手段を介して出力される一方,圧縮処理を施した の発明によれば,発音指示に応答して,記憶手段からのディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しが開始され,ディジタル・データは,第2の選択手段を介して出力される一方,圧縮処理を施したデータは,さらにデータ展開手段によって元のディジタル・データに戻される。第2の選択手段は,発音指示後からディジタル・データを選択して,すべてのディジタル・データを出力し,この後,楽音信号の先頭から,当該楽音信号のディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間が経過した以降は,データ展開手段によって戻されたディジタル・データを選択して,選択されたデータを出力する。したがって,発音指示後,直ちに,ディジタル・データが読み出されるとともに,圧縮処理を施したデータの展開処理が前もって行われ,所定期間経過以降は展開処理で元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる。」【0008】【実施例】以下,図面を参照してこの発明の実施例について説明する。 <第1の実施例>図1は,この発明による第1の実施例の構成を示すブロック図であり,楽音信号を録音するものである。この図に示すPCM・ データは,録音すべき楽音信号を図示せぬA/D変換部によってディジタル信号に変換した2値データであり,エンコーダ1の入力端およびセレクタ2の入力端Bに供給されている。エンコーダ1は,制御信号SA1にしたがって,入力したPCM・データを圧縮処理を連続的に施すものであり,圧縮したエンコード・データをセレクタ2の入力端Aに供給する。ここで,エンコーダ1の圧縮能力は1/4であり,例えば,連続する4個のPCM・データを,1個のエンコード・データに圧縮す 施すものであり,圧縮したエンコード・データをセレクタ2の入力端Aに供給する。ここで,エンコーダ1の圧縮能力は1/4であり,例えば,連続する4個のPCM・データを,1個のエンコード・データに圧縮するものである。なお,エンコーダ1は,圧縮すべきデータを入力後,時間遅れTをもってエンコード・データを出力する。」「【0016】かかる実施例によれば,波形メモリ4に記憶される波形データは,図2(5)にその構成を示すように,1~Nサンプルまでが,すなわち,サンプリングクロックSCがNカウントされるまでがPCM・データであり,これ以降は圧縮処理されたエンコード・データである。PCM・データの部分は,圧縮処理されないのでデータ量が増加するが,圧縮処理されたエンコード・データの部分に比べて充分短いので,全体のデータ量にはほとんど影響を与えない。したがって,従来と比較して,圧縮効率にほとんど差が生じない。」「【0062】【発明の効果】以上説明したように,この発明によれば,楽音信号の所定期間までのディジタル・データの長さは,圧縮処理を施したデータの長さに比べて充分短いので,圧縮効率を悪化させなくて済むという利点がある(請求項1)。また,発音指示後,直ちに,ディジタル・データが読み出されるとともに,圧縮処理を施したデータの展開処理が前もって行われ,所定期間経過以降は展開処理で元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる(請求項2)。」 イ上記発明の詳細な説明の段落【0002】によれば,「圧縮処理には,例えば,ADPCM(適応型差分PCM)や,さらに圧縮効率をあげたサブバンドコーディングを用いることができる。」とされ,ここでは,従来技術 明の詳細な説明の段落【0002】によれば,「圧縮処理には,例えば,ADPCM(適応型差分PCM)や,さらに圧縮効率をあげたサブバンドコーディングを用いることができる。」とされ,ここでは,従来技術の説明として,ADPCMが圧縮処理を施されたデータとして扱われていることが明らかである。 そして,本件特許発明2の課題としては,従来技術の圧縮処理をされたデータのうち,「特に圧縮高率の高いデータ」のデコードに伴う時間遅れに焦点を当て,その「時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生する」ことを挙げている(段落【0003】)。 ところで,本件特許発明2の課題とされる「特に圧縮効率の高いデータ」との関係をみると,前記のとおり,本件特許2明細書の実施例(段落【0008】)には,請求項1に係る実施例として,エンコーダの圧縮能力が1/4である例が挙げられている。 そして,請求項1と本件特許発明2である請求項2との関係をみると,段落【0006】~【0007】の記載によれば,請求項1の発明が段落【0001】にいう「録音」の発明,すわなち「録音すべき音楽信号は,その先頭から所定期間までの部分がディジタル・データの状態にて,所定期間以降の部分が圧縮処理されたデータの状態にて,それぞれ記憶手段に記憶される」発明であり(段落【0006】),本件特許発明2が「発音」の発明,すなわち「発音指示後,直ちにディジタルデータが読み出されるとともに,圧縮処理を施したデータの展開処理が前もって行われ,所定期間経過以降は展開処理で元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる」発明であるものと解される(段落【0007】)。 このように,請求項1の発明と本件特許発明2とは, ・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる」発明であるものと解される(段落【0007】)。 このように,請求項1の発明と本件特許発明2とは,録音と発音という一対を成す発明であって,そこで請求項を形成する「圧縮処理を施したデ ータ」とは,同一内容のデータを意味するものと解するのが相当である。 そうすると,前記請求項1の実施例である圧縮能力1/4のエンコーダで圧縮されたデータとは,本件特許発明2の「圧縮処理を施したデータ」にも該当するものということができる。 そこで,この1/4に圧縮されたデータの性質について検討する。本件特許発明2の出願より約3年8か月ほど前の平成元年3月2日に出願されたセイコー電子株式会社出願の公開特許公報(平2-230200〔乙22〕)には,「従来のADPCB方式(注記:ADPCM方式の誤記と認められる。)では,符号化圧縮率が約1/2程度であり」との記載があり(1頁右欄10行~11行),また,本件特許発明2の出願より後の平成11年5月14日に国際特許出願されたソニー・コンピュータエンタテインメント出願の再公表特許公報(WO99/59133〔乙15〕)には,「ADPCMはデータを約4分の1に圧縮する」との記載がある(5頁27行)。 これらの記載に照らせば,ADPCMは圧縮率が約1/2ないし1/4のデータであって,上記実施例の圧縮されたデータと圧縮率が同程度であると認められる。 ウそして,本件特許2明細書のその他の記載をみても,楽音信号の先頭部分を「特に圧縮効率の高いデータ」の部分と比べて処理に時間のかからない圧縮処理されたデータとする構成を示す記載はない。かえって,本件特許2明細書には,「PCM・データの部分 みても,楽音信号の先頭部分を「特に圧縮効率の高いデータ」の部分と比べて処理に時間のかからない圧縮処理されたデータとする構成を示す記載はない。かえって,本件特許2明細書には,「PCM・データの部分は,圧縮処理されないのでデータ量が増加するが,圧縮処理されたエンコード・データの部分に比べて充分短いので,全体のデータ量にはほとんど影響を与えない。したがって,従来と比較して,圧縮効率にほとんど差が生じない。」(段落【0016】)と記載されており,楽音信号の先頭部分をPCM・データとしても課題が解決されたものと解されるから,楽音信号の先頭部分をPCM・デ ータに代えてADPCM方式の圧縮処理を施したデータとする構成も本件特許発明2に含まれると解することは困難である。 エ以上によれば,構成要件2Aの「ディジタル・データ」には,ADPCM方式の圧縮処理を施したデータは含まれないと解するのが相当である。 (3) 被告製品2~4の先頭部のデータがADPCM①データであることは当事者間に争いがなく,前記(2)のとおり,被告製品2~4の「ADPCM①」データは,「ディジタル・データ」に該当しないから,被告製品2~4は構成要件2Aを充足しない。 2-2 構成要件2B~2Cの充足性(争点2-2)について(1) 構成要件2B~2Cにおいて,①「ディジタル・データ」の読み出し開始と「圧縮処理を施したデータ」の読み出し開始の同時性,②「ディジタル・データ」の読み出しと「圧縮処理を施したデータ」のデコード処理の同時平行性が要求されているかについてア本件特許発明2の【発明の詳細な説明】には,次の記載がある。 「【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで,上述したような,特に圧縮効率の高いデータ ついてア本件特許発明2の【発明の詳細な説明】には,次の記載がある。 「【0003】【発明が解決しようとする課題】ところで,上述したような,特に圧縮効率の高いデータのデコード処理にはある程度の時間が必要である。すなわち,オペレータ(操作者)による発音指示によって読み出したエンコード・データを,元のPCM・データへデコードする時間が必要である。このため,図11に示すように,楽音発生が,発音指示後から,デコード処理に要する時間Dだけ遅れるいう(注:原文のまま)問題があった。この発明は,上記課題に鑑みなされたもので,その目的とするところは,発音指示後,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる電子楽器の音源装置を提供することにある。」「【0023】次に,この実施例の動作について説明する。 ① 発音指示から(N-D)クロックまで まず,オペレータが発音指示の旨のキーを押下すると,これに対応して発音開始トリガーPTRGが各部に供給される。これによって,カウンタ14がデータNのカウントダウンを行なうとともに,アドレスコントローラ12は,ストローブ信号ST1によってPCM・データ読出用アドレスのカウントアップを行なう。これによって,波形メモリ10からPCM・データは,図4(2)の①に示すように,ストローブ信号ST1のタイミングにて読み出され,ラッチ回路15によって,本来のサンプリングクロックSCのタイミングに戻される。このとき,制御信号SA2のレベルは「L」であり,これにより,セレクタ16は入力端Bを選択しているので,セレクタ16の出力データは,PCM・データがサンプリングクロックSCのタイミングにて出力されることになる。 【0024】② ( り,これにより,セレクタ16は入力端Bを選択しているので,セレクタ16の出力データは,PCM・データがサンプリングクロックSCのタイミングにて出力されることになる。 【0024】② (N-D)クロックからNクロックまでサンプリングクロックSC(ストローブ信号ST1)を(N-D)カウントすると,アドレスコントローラ12は,PCM・データ読出用アドレスとともに,ストローブ信号ST2によってエンコード・データ読出用アドレスのカウントアップを行なう。すなわち,Nクロックからデコーダ13による時間遅れDの分だけ前に達すると,図4(2)の②に示すように,波形メモリ10からPCM・データとエンコード・データとが,それぞれストローブ信号ST1,ST2のタイミングにて読み出される。このとき,PCM・データは①と同様に,ラッチ回路15によってサンプリングクロックSCのタイミングにて出力される一方,エンコード・データはストローブ信号ST2のタイミングにてデコーダ13に取り込まれ,展開処理が施される。 【0025】③ Nカウント経過後次に,カウンタ14によってサンプリングクロックSCがNカウントされると,すなわち,波形メモリ10に記憶されているPCM・データの先 頭からNサンプルまでのすべてが読み出されると,カウンタ14による制御信号SA2のレベルが「H」になるので,セレクタ16の入力端Aが選択される。同時に,(N-D)クロックからDクロック経過したので,デコーダ13からは元に戻されたPCM・データが,サンプリングクロックSCのタイミング毎に順次供給される。したがって,セレクタ16は,1~NサンプルまでのPCM・データに引き続き,サンプリングクロックSCのタイミングで,元に戻された(N+1)以降の プリングクロックSCのタイミング毎に順次供給される。したがって,セレクタ16は,1~NサンプルまでのPCM・データに引き続き,サンプリングクロックSCのタイミングで,元に戻された(N+1)以降のPCM・データを出力することになる。 【0026】これと同時に,アドレスコントローラ12によるPCM・データ読出用アドレスのカウントが停止する。これは,PCM・データ読出用アドレスによってエンコード・データが読み出されるのを防止するためである。これによって,図4(2)のに示すように,波形メモリ10からは,エンコード・データだけが,ストローブ信号ST2のタイミングで読み出される。すなわち,デコーダ13では,サンプリングクロックSCの4クロックに対し,1個のエンコード・データが展開され,4個のPCM・データに戻されるとともに,サンプリングクロックSC1クロックに対し1個のPCM・データがセレクタ16を介して出力される。 【0027】上述した第2の実施例によれば,図4(3)に示すように,発音指示後,まず,PCM・データが読み出され,サンプリングクロックSCのタイミングで出力される。その後,(N-D)クロック経過すると,PCM・データとエンコード・データとが読み出され,ラッチ回路15はPCM・データをサンプリングクロックSCにてラッチして出力する一方,デコーダ13はエンコード・データを順次取り込み,Nクロック経過した時点で最初のPCM・データを供給すべく,展開処理を開始する。そして,Nクロック経過すると,セレクタ16の選択は入力端Bから入力端Aへと切り替わるとともに,デコーダ13は,時間遅れDを見越して展開処理を していたPCM・データを,サンプリングクロックSCのタイミングにて出力する。したがって,発音指示後,時 ら入力端Aへと切り替わるとともに,デコーダ13は,時間遅れDを見越して展開処理を していたPCM・データを,サンプリングクロックSCのタイミングにて出力する。したがって,発音指示後,時間遅れを生じることなく,PCM・データを連続して出力することができる。」「【0049】次に,上述した実施例の動作について説明する。図9は,この実施例の動作を示すタイミングチャートである。 ① 鍵盤装置30のキーが押鍵されてからタイミング発生部32がシステムクロックφを規定数カウントするまで,すなわち,ヘッダ信号HDの状態が“H”である場合について説明する(図9において,①の期間に対応する)。 【0050】まず,キーが押鍵されると,鍵盤装置30では,ノートオンNONおよび押鍵されたキーに対応するノートコードNCDが生成される。このときの音色の種類は,すでに音色SW部31で選択されており,音色コードTCが生成されているものとする。そして,タイミング発生部32は,オン・パルス信号ONPをノートオン信号NONから,また,ノートクロックをノートコードNCDからそれぞれ生成する。 【0051】さらに,アドレス発生部33は,アドレスデータの初期値をノートコードNCDおよび音色コードTCによって決定し,さらに,ノートクロックによるアドレスデータのカウントアップをオン・パルス信号ONPによって開始する。このアドレスデータによって,第1波形メモリ34から押鍵されたキーに対応するPCM・データが読み出され,セレクタ37の入力端Aに供給される。そして,ヘッダ信号HDの状態は“H”であるので,セレクタ37は入力端Aを選択する。すなわち,キーが押鍵されてからヘッダ信号HDの状態が“H”である場合には,セレクタ37は,第1波 Aに供給される。そして,ヘッダ信号HDの状態は“H”であるので,セレクタ37は入力端Aを選択する。すなわち,キーが押鍵されてからヘッダ信号HDの状態が“H”である場合には,セレクタ37は,第1波形メモリ34から読み出されたPCM・データを出力する。 【0052】一方,読み出し部39は,アドレスデータの初期値をノートコードNCDおよび音色コードTCによって決定し,さらに,このアド レスデータのカウントアップをオン・パルス信号ONPによって開始する。 このアドレスデータによって第2波形メモリ40から,押鍵されたキーに対応するエンコード・データが読み出される。さらに,読み出し部39は,信号Sの状態(“H”)にしたがって1ブロック分のエンコードデータをデコード・バッファB(0)に転送する。この転送が終了した場合には,転送終了信号TEをデコーダ35に供給する。デコーダ35は,転送終了信号TEを入力すると,読み出し部39から転送された1ブロック分のエンコード・データのデコードをデコード・バッファB(0)に開始させ,デコード・データをデコード・バッファB(0)に書き込む。 【0053】② 次に,タイミング発生部32がシステムクロックφを規定数カウントしてからAD10が反転するまで,すなわち,ヘッダ信号HDの状態が“L”になってからアドレス発生部33が1024(210)をカウントするまでの期間について説明する(図9において,②の期間に対応する)。 【0054】まず,タイミング発生部32は,ヘッダ信号HDを“H”から“L”へ切り換えて,セレクタ37の選択を入力端Bに切り換えるとともに,ヘッダ・エンド・パルス信号HEPを生成する。また,ヘッダ信号HDにしたがって信号Sが反転するので,変化検出部38では1ショッ “L”へ切り換えて,セレクタ37の選択を入力端Bに切り換えるとともに,ヘッダ・エンド・パルス信号HEPを生成する。また,ヘッダ信号HDにしたがって信号Sが反転するので,変化検出部38では1ショットパルスが発生する。ヘッダ・エンド・パルス信号HEP信号により,アドレス発生部33のアドレスデータは,オール0にリセットされて,ノートクロックによってカウントが再開される。このアドレスデータのAD0~AD9 の10ビットがデコード・バッファB(0)のアドレスを指定する。これによって,1ブロック分のデコートデータが読み出され,セレクタ37の入力端Bに供給される。すなわち,ヘッダ信号HDが“L”になると,セレクタ37の出力データは,AD0~AD9で指定されたデコード・データとなる。 【0055】一方,読み出し部39は,次の1ブロック分のエンコードデータを信号Sの状態(“L”)にしたがってデコード・バッファB(1)に転送する。この転送が終了した場合には,転送終了信号TEがデコーダ35に供給され,デコーダ35は,転送されたエンコード・データのデコードをデコード・バッファB(1)に開始させ,デコード・データはデコード・バッファB(1)に書き込まれる。」「【0062】【発明の効果】以上説明したように,この発明によれば,楽音信号の所定期間までのディジタル・データの長さは,圧縮処理を施したデータの長さに比べて充分短いので,圧縮効率を悪化させなくて済むという利点がある(請求項1)。また,発音指示後,直ちに,ディジタル・データが読み出されるとともに,圧縮処理を施したデータの展開処理が前もって行われ,所定期間経過以降は展開処理で元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を ータが読み出されるとともに,圧縮処理を施したデータの展開処理が前もって行われ,所定期間経過以降は展開処理で元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる(請求項2)。」イ以上に基づいて,①「ディジタル・データ」の読み出し開始と「圧縮処理を施したデータ」の読み出し開始の同時性,②「ディジタル・データ」の読み出しと「圧縮処理を施したデータ」のデコード処理の同時平行性について検討する。 (ア) まず,特許請求の範囲の記載について検討するに,構成要件2Bの文言は,「ディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する」であるから,「ディジタル・データ」と「圧縮処理を施したデータ」との読み出し開始が同時であることが要求されているようにもみえる。 しかしながら,構成要件2Bに先立つ構成要件2Aの文言をみると「楽音信号の先頭から,前記楽音信号のディジタル・データに圧縮処理 を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間までの部分をディジタル・データの状態にて記憶するとともに,前記所定期間以降の部分をディジタル・データに圧縮処理を施したデータの状態にて記憶する記憶手段と,」であるから,「ディジタル・データ」の状態で記憶する所定期間は,「圧縮処理を施したデータ」の展開処理に要する時間以上の所定期間であり,「圧縮処理を施したデータ」の状態で記憶する所定期間以降の部分とは,圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間以上の所定期間以降の部分である。 そうすると,ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間と同一の期間までの部分をディジタル・データの状態とした場合には両者の読み出しを同時に開始する 部分である。 そうすると,ディジタル・データに圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間と同一の期間までの部分をディジタル・データの状態とした場合には両者の読み出しを同時に開始する必要があるが,圧縮処理を施したデータの展開処理に要する時間より長い期間までの部分をディジタル・データの状態とした場合には,その必要は認められないのであって,構成要件2Bの文言のみを根拠として,「ディジタル・データ」と「圧縮処理を施したデータ」との読み出し開始が同時であることが必要であると解することはできない。 (イ) そこで,本件特許2明細書の【発明の詳細な説明】をみるに,本件特許発明2の実施例(第2の実施例)では,「① 発音指示から(N-D)クロックまで」において,「オペレータが発音指示の旨のキーを押下すると,…波形メモリ10からPCM・データは,図4(2)の①に示すように,ストローブ信号ST1のタイミングにて読み出され」(段落【0023】),「② (N-D)クロックからNクロックまで」において,「(N-D)カウントすると,…図4(2)の②に示すように,波形メモリ10からPCM・データとエンコード・データとが,それぞれストローブ信号ST1,ST2のタイミングにて読み出される。…エンコード・データはストローブ信号ST2のタイミングにてデコーダ1 3に取り込まれ,展開処理が施される。」(段落【0024】),「③Nカウント経過後」において,「波形メモリ10に記憶されているPCM・データの先頭からNサンプルまでのすべてが読み出されると」(段落【0025】),「これと同時に,…PCM・データ読出用アドレスのカウントが停止する。…これによって,図4(2)の③に示すように,波形メモリ10からは,エンコード・データだけが,ストロー と」(段落【0025】),「これと同時に,…PCM・データ読出用アドレスのカウントが停止する。…これによって,図4(2)の③に示すように,波形メモリ10からは,エンコード・データだけが,ストローブ信号ST2のタイミングで読み出される。」(段落【0026】),「上述した第2の実施例によれば,図4(3)に示すように,発音指示後,まず,PCM・データが読み出され,サンプリングクロックSCのタイミングで出力される。その後,(N-D)クロック経過すると,PCM・データとエンコード・データとが読み出され,…デコーダ13はエンコード・データを順次取り込み,Nクロック経過した時点で最初のPCM・データを供給すべく,展開処理を開始する。」,「Nクロック経過すると,…デコーダ13は,時間遅れDを見越して展開処理をしていたPCM・データを,サンプリングクロックSCのタイミングにて出力する。 したがって,発音指示後,時間遅れを生じることなく,PCM・データを連続して出力することができる。」(段落【0027】)とされている。 以上の実施例に沿って考えると,PCM・データを読み出しているときにエンコード・データを読み出すのであって,PCM・データとエンコード・データの読み出し開始は同時である必要はないものと解される。 また,エンコード・データは,PCM・データの出力が終了した時点で,連続して出力されるように,PCM・データに展開されるものと解される。 これに上記(ア)の構成要件2Aの文言を併せ考えれば,①「ディジタル・データ」の読み出し開始と「圧縮処理を施したデータ」の読み出し 開始の同時性は必要がないと解される。また,②「ディジタル・データ」の読み出しと「圧縮処理を施したデータ」のデコード処理の同時平行性については,「 と「圧縮処理を施したデータ」の読み出し 開始の同時性は必要がないと解される。また,②「ディジタル・データ」の読み出しと「圧縮処理を施したデータ」のデコード処理の同時平行性については,「圧縮処理を施したデータ」は,「ディジタル・データ」の出力が終了した時点で,連続して出力されるように,デコード処理される限度では平行性が必要であるといえるものの(段落【0003】【0062】も参照),同時性は必要がないと解される。 (ウ) 被告は,構成要件2Bが「ディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータの読み出しを開始する」としていることを根拠として,本件特許2明細書の第2の実施例が本件特許発明2とは異なる旨主張する。 しかしながら,上記(ア)で述べたように,構成要件2Aの記載を踏まえると,「ディジタル・データ」の読み出し開始と「圧縮処理を施したデータ」の読み出し開始が同時である必要はないと解されるから,被告の主張は採用できない。 ウ以上のとおり,構成要件2Cの解釈として,「圧縮処理を施したデータ」は,「ディジタル・データ」の出力が終了した時点で,連続して出力されるように,デコード処理される限度では平行性が必要であるが,同時性は要求されないものと解される。 (2) 被告製品2~4が「読出手段」「データ展開手段」を備えているかについて別紙被告製品2~4説明書によると,「オーディオ再生命令に従い,外部音声ROM内に被告が独自に開発したMDCT方式(先頭と末尾は,ADPCM方式)にて圧縮済みのデジタルデータとして格納されている圧縮オーディオデジタルデータ(最大2048曲のフレーズデータ)の中から当該オーディオ再生に必要な構成フレーズを順次読み出す機能(第3機能)」を有する。そうすると,被告製品2~4は,構成要 れている圧縮オーディオデジタルデータ(最大2048曲のフレーズデータ)の中から当該オーディオ再生に必要な構成フレーズを順次読み出す機能(第3機能)」を有する。そうすると,被告製品2~4は,構成要件2Bの「読出手段」を備えていると認められ,「ADPCM①」データが「ディジタル・データ」である かを除いて,構成要件2Bを充足する。しかし,被告製品2~4の「ADPCM①」は,構成要件2Bの「ディジタル・データ」に該当しないのであるから,結局のところ,被告製品2~4は,構成要件2Bを充足しない。 次に,上記機能には,「MDCT方式」のデータの「展開手段」があり(別紙被告製品2~4の機能説明3.3では,ハフマンデコードと逆量子化を施して復号化され,IMDCTで時間領域のPCMデータに変換される〔当事者間に争いはない。〕。),また,上記のとおり,「当該オーディオ再生に必要な構成フレーズを順次読み出す機能」がある。そうすると,被告製品2~4は,「MDCT方式」にて圧縮済みのデジタルデータが連続して出力されるように,デコード処理されていると認められるから,構成要件2Cを充足する。 (3) 以上のとおり,被告製品2~4は,構成要件2Cを充足するが,構成要件2Bを充足しない。 2-3 構成要件2D~2Fの充足性(争点2-3)について(1) まず,構成要件2E~2Fについて検討する。 構成要件2Eは,「前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了していないと判別された場合には前記読出手段によって読み出されたディジタル・データを選択し,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する第2の選択手段 ディジタル・データを選択し,前記第2の判別手段によって前記ディジタル・データの読み出しが終了したと判別された場合には前記データ展開手段によって展開されたディジタル・データを選択する第2の選択手段とを具備し,」であり,構成要件2Fは,「前記第2の選択手段によって選択されたディジタル・データに基づいて発音する」というものであるから,構成要件2Fの「第2の選択手段」は,「第2の判別手段」の判別を前提として,「ディジタル・データ」又は「展開されたディジタル・データ」を選択するものと解される。 また,本件特許2明細書の図3及び5をみるに,本件特許発明2の実施例 では,波形メモリから読み出されたデータはPCM・データの場合には,そのままセレクタに供給され,エンコード・データの場合には,デコーダでデコード処理されてセレクタに供給され,その後,セレクタは,PCM・データとデコードされたエンコード・データのいずれかを選択するものと解される。 そうすると,本件特許発明2の実施例では,セレクタが「第2の選択手段」に該当すると解するのが相当である。 (2) そこで,被告製品2~4において,セレクタに相当するような「第2の選択手段」が備えられているかを検討する。 原告は,前記第3の2-3構成要件2D~2Fの充足性(2)(原告の主張)のとおり,被告製品2~4について,「RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」,「その通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分のデコードが必要なことを認識する。そして,バスバッファの を通知する。」,「その通知を受けて,シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,次にMDCT部分のデコードが必要なことを認識する。そして,バスバッファの空き容量を確認しながらデコードを開始できる状態と判断すると,シーケンサはMDCTデータの読み出しを開始する。」,「MDCTデータは,ハフマンデコードと逆量子化を施して復号化され,復号化された周波数領域のデータをRAMに順次格納する。」,「RAMに格納された周波数領域のデータをIMDCTで時間領域のPCMデータに変換後(フレーム単位の時間軸情報が得られる),音量調整をして1サンプルずつバスバッファに格納する。」と説明する。 また,原告は,被告製品2について,出力系統はシリアルに行われていても,「シーケンサはADPCM①部分のデコード及びバスバッファへの出力が完了したことを確認し,」(別紙被告製品2の機能説明3.3)その出力 系統への入力の順序に従って出力されるデータが選択されている,より具体的には,その選択は,「あるトラックのADPCM①の読み出し,デコード,バスバッファへの格納という一連の動作が終了する」までは,「ADPCM①」データを出力系統へ入力するように選択が行われ,その後については,「ADPCM①」データを選択することなく「MDCT方式の圧縮データ」を出力系統へ入力するように選択が行われるということであり,これを「シーケンサ」が行うものであると説明する(甲50〔技術説明会資料〕・26~27頁。これは,被告製品2についての説明であるが,被告製品3及び4も製品の機能は同じであるとの説明と解される。)。 しかしながら,後者の説明が前者の説明を敷衍するものであることを踏まえると,以上の説明は,被告製品2~4につ 説明であるが,被告製品3及び4も製品の機能は同じであるとの説明と解される。)。 しかしながら,後者の説明が前者の説明を敷衍するものであることを踏まえると,以上の説明は,被告製品2~4について,シーケンサがADPCMとMDCTデータの読み出しを切り換えることを特定するにとどまるというべきであって,ADPCMデコーダの出力とMDCTデコーダの出力を選択することを特定するものとはいい難い。 そして,その他の原告の説明に加え,本件全証拠をみても,被告製品2~4について,セレクタ等の「第2の選択手段」に相当するものが存在するとは認められない。 (3) そうすると,被告製品2~4は,「第2の選択手段」を備えないから,構成要件2E~2Fを充足しないし,「第2の選択手段」を備えない以上,「第2の判別手段」の存否も不明であるというほかなく,構成要件2Dを充足しない。 2-4 構成要件2Gの充足性(争点2-4)について(1) 被告製品2~4は,順にサウンドLSI,マルチ機能LSI,サウンドLSIである。 この点,原告は,被告製品2~4は,複数の音(フレーズ)を個々独立に操作者の任意のタイミングで発生するような多彩な演奏を可能にしており, 単なる再生装置とはいえないとして,「電子楽器の音源装置」に該当する旨主張する。 (2) そこで,「電子楽器」の意義について検討するに,本件特許2明細書をみても,これを特に定義した記載はないから,一般的な意義で使用されているものと解される。 そして,「電子楽器」は,楽器であるから,操作者により演奏情報として楽音の情報が入力され,当該情報に従って楽音として出力されるものであると解される(例えば,電子ピアノでは,演奏者の鍵盤操作により楽音の情報が入力され, は,楽器であるから,操作者により演奏情報として楽音の情報が入力され,当該情報に従って楽音として出力されるものであると解される(例えば,電子ピアノでは,演奏者の鍵盤操作により楽音の情報が入力され,当該情報に従った楽音が出力される。)。 そうすると,被告製品2~4は,オーディオ再生命令の契機が操作者の意思に基づくものであったとしても,その後の楽音の進行は,操作者の意思とは関係なくオーディオデータが出力されるものであるから(別紙被告製品2~4説明書),構成要件2Gの「電子楽器」の音源装置に該当しない。 (3) したがって,被告製品2~4は,構成要件2Gを充足しない。 2-5 まとめ以上のとおり,被告製品2~4は,構成要件2A,2B,2D~2Gを充足しない。 そうすると,構成要件2Aに関する主張である間接侵害及び均等侵害について判断するまでもなく,被告製品2~4が本件特許発明2の技術的範囲に属するとは認められないから,本件特許発明2に係る請求はいずれも理由がない。 3 本件特許発明3に係る侵害の成否について3-1 構成要件3Aの充足性(争点3-1)について原告は,請求項4に係る特許発明を本件特許発明3と主張するところ,本来,請求項4に係る発明は,請求項2,3も引用しているのであるが,原告による請求項の記載の仕方及び構成要件の分説の内容からみると,原告は,本件特許発明3としては,請求項1を引用する請求項4に係る発明に限定して請求する ことが明らかであるところから,以下では,原告の請求をそのようなものであるとして判断する。 (1) まず,構成要件3Aには楽音データの先頭部がADPCM方式によって圧縮された楽音データである場合が含まれるかについて検討する。 ア構成要件3Aは, ものであるとして判断する。 (1) まず,構成要件3Aには楽音データの先頭部がADPCM方式によって圧縮された楽音データである場合が含まれるかについて検討する。 ア構成要件3Aは,「圧縮楽音データとADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの順に読み出して再生する楽音データ再生装置であって,」というものであって,その文言上,楽音データの先頭部のデータの形式については必ずしも明らかではない。 イそこで,本件特許3明細書の【発明の詳細な説明】をみると,以下の記載がある。 「【技術分野】【0001】本発明は,圧縮され記憶媒体に記憶された楽音データを再生する楽音データ再生装置に関する。 【背景技術】【0002】近年,オーディオの分野においては,ディジタル楽音データを圧縮する方式(規格)として,MPEG,MP3,AAC,WMA等種々の方式が開発され,これに伴い,圧縮楽音データを再生する再生装置も種々実用化されている(特許文献1参照)。 ところで,パチンコ等のゲーム機の分野においては,同じ楽曲を続けて繰り返し再生するループ再生がしばしば行われる。しかしながら,上述した圧縮楽音データをゲーム機において使用する場合,例えばMPEGは1152サンプル,AACは1024サンプルを1フレームとし,このフレ ーム単位で再生処理を行うようになっているので,曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになる。このため,繰り返し再生において曲の終端部と先頭部との間に無 で再生処理を行うようになっているので,曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになる。このため,繰り返し再生において曲の終端部と先頭部との間に無音部分が生じてしまう問題があった。」「【発明が解決しようとする課題】【0003】本発明は上記事情を考慮してなされたもので,その目的は,無音部分を作ることなくループ再生を行うことができる楽音データ再生装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】【0004】この発明は上記の課題を解決するためになされたもので,請求項1に記載の発明は,圧縮楽音データと非圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,非圧縮楽音データの順に読み出して再生する楽音データ再生装置であって,前記記憶媒体から前記非圧縮楽音データを読み出すとともに,前記非圧縮楽音データの読み出しを終了した時点で読み出し終了通知を出力する第1の読出手段と,前記記憶媒体から前記圧縮楽音データを読み出す第2 の読出手段と,前記第2の読出手段によって読み出された圧縮楽音データを伸張して出力するデコーダと,前記第1の読出手段の出力と前記デコーダの出力とを切り換える切換手段と,前記第1の読出手段,前記第2の読出手段,および前記切換手段を制御する制御手段とを具備し,前記圧縮楽音データは,楽音データの再生における所定の再生処理単位の整数倍のデータサイズを有し,前記制御手段は,ループ再生指示を受けて,前記第2 の読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換える第1手順,前記デコーダによる前記 圧縮楽音データの伸 生指示を受けて,前記第2 の読出手段へ前記圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記デコーダの出力に切り換える第1手順,前記デコーダによる前記 圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で前記第1の読出手段へ前記非圧縮楽音データの読み出し指令を出力するとともに前記切換手段を前記第1の読出手段の出力に切り換える第2手順,を順に実行し,前記第1の読出手段から出力される前記読み出し終了通知を受けて再び前記第1手順を実行することにより,前記楽音データをループ再生させることを特徴とする楽音データ再生装置である。」「【0007】請求項4に記載の発明は,請求項1から請求項3のいずれかの項に記載の楽音データ再生装置において,前記非圧縮楽音データに代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いることを特徴とする。 【発明の効果】【0008】この発明によれば,楽音データの終了部に非圧縮データを配置したので,圧縮楽音データを,無音部分を作ることなく任意の箇所でループ再生することができる効果が得られる。また,この発明によれば,楽音データの先頭部に非圧縮データを配置したので,圧縮楽音データのデコードによる遅れの影響を無くし,無音部分のないループ再生をすることができる効果がある。 【発明を実施するための最良の形態】【0009】以下,図面を参照し,この発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の第1の実施の形態による楽音データ再生装置の構成を示すブロック図,図2は,(a)楽音データのフォーマット,(b)楽音データのデコードタイミング,(c)楽音データの出力タイミングを各々示す図である。図2(a)に示すように, 音データ再生装置の構成を示すブロック図,図2は,(a)楽音データのフォーマット,(b)楽音データのデコードタイミング,(c)楽音データの出力タイミングを各々示す図である。図2(a)に示すように,この実施形態においては,楽曲の先頭部と終了部が圧縮されていないPCM(PulseCodeModura tion)楽音データ(以下,PCMデータという)であり,中央部が圧縮楽音データ(以下,圧縮データという)という構成の楽音データが使用される。また,圧縮データはMPEG規格によって圧縮されている。」「【0021】なお,上記の実施形態において,楽音データの先頭部および終了部にPCMデータ,すなわち圧縮されていないディジタル楽音データを配置したが,これに代えて,例えばADPCM等の圧縮手法を用いた,伸張が短時間で行えるディジタル楽音データを配置してもよい。 また,上記実施形態は,圧縮データの先頭部および終了部にPCMデータを配置しているが,これに代えて,終了部にのみ配置してもよい。この場合,ループ再生を行うには,制御部17が後部のPCMデータの再生終了時点より一定時間前に圧縮データ読出部13へ読み出し開始を指示する必要がある。」以上のとおり,本件特許3明細書においては,楽曲の先頭部と終了部が圧縮されていないPCM楽音データで,中央部が圧縮楽音データという構成の楽音データが使用されたものが第1の実施の形態とされ(段落【0009】),これに代えて,例えばADPCM等の圧縮手法を用いた伸張が短時間で行えるディジタル楽音データを配置してもよいとされているから(段落【0021】),実施例として,楽音データの先頭部がPCM楽音データ又はADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データであるものが示 行えるディジタル楽音データを配置してもよいとされているから(段落【0021】),実施例として,楽音データの先頭部がPCM楽音データ又はADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データであるものが示されている。そして,上記実施例以外の記載において,楽音データの先頭部がADPCM方式により圧縮された楽音データであることを排斥するような記載はない。 ウ次に,出願経過について検討する。 (ア) 本件特許3の原出願に係る請求項3は「圧縮データと,その先端に配置された第1の非圧縮データまたは伸張時間が短い圧縮データと,そ の終端に配置された第2の非圧縮データまたは伸張時間が短い圧縮データとからなる楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを読み出して再生する楽音データ再生装置であって,」(乙1)とされていたのに対し,補正後の請求項4(請求項1を引用するもの)は「圧縮楽音データとADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データとから構成される楽音データが記憶された記憶媒体から前記楽音データを圧縮楽音データ,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの順に読み出して再生する楽音データ再生装置であって,」とされている。 (イ) 上記補正の経緯は,次のとおりである。 a 本件特許3を含む特願2004-97383については,拒絶理由通知がされたが,その理由の1つは,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとするものであり,拒絶理由通知書(乙2)によれば,「刊行物1には,データの先頭の所定期間を非圧縮データとし,所定期間以降を圧縮データとした音源装置(楽音データ再生装置)の発明が記載されている。これは両者を組み合わせて1つの連続データとする技術思想であり,データ記憶部に余裕があるのであ 圧縮データとし,所定期間以降を圧縮データとした音源装置(楽音データ再生装置)の発明が記載されている。これは両者を組み合わせて1つの連続データとする技術思想であり,データ記憶部に余裕があるのであれば,圧縮データの終端部を非圧縮データとし,これらを切り換えて出力再生することは設計的事項にすぎない。」というものであった。 また,他の拒絶理由として,特許法36条4項,同条6項2号の要件を満たしていないことが挙げられ,「(1)・・・段落0003にはループ再生における問題が課題である旨が記載されているが,各請求項の構成には,その関係が存在せず,なぜ無音部分が生じるのか,その前提も存在しない。(2)「読出手段の出力データを交互に(請求項1),あるいは順次(請求項2)切り換えて出力する」ということが,次のデータを含んでの意味であるのか,単に1つのデータセットのみを意味するのか不明である。(3)請求項3の記載では,「先 端」「終端」という表現がなされているが,先端の前のデータ,あるいは終端の次のデータとの処理の関係が不明である。」とされていた。 上記の拒絶理由通知における刊行物1とは特開平06-167978(乙11)であり,その明細書の発明の詳細な説明によれば,請求項2の発明について,「請求項2記載の発明によれば,発音指示があった場合に,記憶手段からディジタル・データおよび圧縮処理を施したデータが読み出され,ディジタル・データは,第2の選択手段を介して出力される一方,圧縮処理を施したデータは,さらにデータ展開手段によって元のディジタル・データに戻される。第2の選択手段は,発音指示後からディジタル・データを選択して,すべてのディジタル・データを出力し,この後,データ展開手段によって戻されたディジタル・データ よって元のディジタル・データに戻される。第2の選択手段は,発音指示後からディジタル・データを選択して,すべてのディジタル・データを出力し,この後,データ展開手段によって戻されたディジタル・データを選択して,選択されたデータを出力する。したがって,発音指示後,直ちに,ディジタル・データが読み出され,この後に,元に戻されたディジタル・データが出力されるので,時間遅れを極めて少なくして,直ちに楽音を発生することができる。」とされていた。 上記の刊行物1の記載によれば,刊行物1に関する拒絶理由の趣旨は,刊行物1にはデータの先頭の所定期間を非圧縮データとし,所定期間以降を圧縮データとした音源装置の発明が記載されており,これは非圧縮データと圧縮データの両者を組み合わせて1つの連続データとする技術思想であり,本件特許3に係る発明も圧縮データと非圧縮データを1つの連続データとする技術思想において同一であること,データの連続のさせ方として,データの記憶部に余裕があるのであれば,圧縮データの終端部を非圧縮データとすることは設計的事項にすぎないものであることを指摘したものであったと解される。 b 上記拒絶理由通知を受けて,手続補正書とともに提出された意見書 (乙3)には,以下の記載がある。 「(1)補正について別途提出する手続補正書により,元の請求項1および2を削除するとともに,元の請求項3および4の要旨を明確にした請求項を新請求項1および2とし,さらに新たな請求項を新請求項3および4として追加しました。これらの補正は,明細書の段落0009,0014,0016~0021,0024~0027などの記載を根拠とするものであり,新規事項の追加ではありません。 (2)本願発明 加しました。これらの補正は,明細書の段落0009,0014,0016~0021,0024~0027などの記載を根拠とするものであり,新規事項の追加ではありません。 (2)本願発明本願発明は,所定の再生処理単位(フレーム)の整数倍のデータサイズを有する圧縮楽音データを含む楽音データをループ再生する際に,圧縮楽音データの終端部のフレームに含まれるサンプル数が上記所定の再生処理単位とならず端数である場合,当該フレームのサンプルの無い部分が無音として再生されてしまうことを防止することを目的としてなされたものです。 そして請求項1に係る発明では,(A)上記終端部のフレームを圧縮楽音データとせずに非圧縮楽音データとして楽音データを記憶するようにしたこと,(B)圧縮楽音データと非圧縮楽音データとを切り換えて再生すること,を特徴的な構成としています。圧縮楽音データの終端部のフレーム内のサンプル数が端数であるにもかかわらず当該フレーム全体を圧縮楽音データとしてしまうと,当該フレームのサンプルの無い部分が無音として再生されてしまいますが,本願のように当該フレームを非圧縮楽音データとすることによって,圧縮楽音データの再生が終わると非圧縮楽音データを再生し,非圧縮楽音データの再生が終わったらすぐに圧縮楽音データの再生に移ることができるので,無音のないループ再生を行うことが可能となります。」 「刊行物1や刊行物2には,引例として,圧縮部と非圧縮部の再生を切り換える楽音再生装置の発明が開示されていますが,これらの引例においては,本願発明のように楽音のループ再生での無音部分の発生を防止するという課題は全く認識されていません。 また,審査官殿は,刊行物1記載の発明において記憶 いますが,これらの引例においては,本願発明のように楽音のループ再生での無音部分の発生を防止するという課題は全く認識されていません。 また,審査官殿は,刊行物1記載の発明において記憶部に余裕がある場合に終端部を非圧縮データとすることは単なる設計的事項である,と認定されましたが,本願請求項1の発明は,上記のとおり圧縮楽音データとすると終端部のフレームに無音が生じる楽音データを非圧縮データとすることによって無音部分の発生が防止可能となるという知見に基づいてなされたものであり,単に記憶部の余裕具合に応じて終端部に非圧縮データを配置しただけのものではありません。よって,刊行物1に基づいて,当業者がループ再生における無音部分の発生を防止するという課題を認識した上で,本願発明のようなデータ構造の楽音データを読み出して該楽音データをループ再生させる楽音データ再生装置を想到できたとは言えないと考えられます。 また,本願請求項1の発明では,楽音データが圧縮楽音データと終端部の非圧縮楽音データからなるデータ構造を有し,各読出手段がこれら各データ(圧縮楽音データと非圧縮楽音データ)の読み出しを終了した時に制御手段へその旨を通知して,制御手段が該通知を受けるとそれに応じたデータを読み出すように各読出手段を制御することによって,ループ再生を行うことを可能としています。このような制御手段の処理について,各刊行物には開示がありません。」c そこで,上記拒絶理由通知及び意見書の内容に照らして,補正の趣旨について検討するに,前記補正は,拒絶理由における刊行物1等を理由とする特許法29条2項違反の指摘,同法36条6項2号の明確性要件違反等と指摘を踏まえてされたものであり,その対応策として, 次のような方策を採用し 正は,拒絶理由における刊行物1等を理由とする特許法29条2項違反の指摘,同法36条6項2号の明確性要件違反等と指摘を踏まえてされたものであり,その対応策として, 次のような方策を採用したものと考えられる。まず,刊行物1との技術的相違点を明らかにするため,本件特許3に係る発明の技術的意義が,圧縮楽音データの終端部のフレームに含まれるサンプル数が上記所定の再生処理単位とならず端数である場合,当該フレームのサンプルのない部分が無音として再生されてしまうことを防止することを目的としてされたものであることを明確にした。また,明確でないと指摘された請求項1,2を削除した。そして,同じく明確でないと指摘された旧請求項3における「先端の前のデータ,あるいは終端の次のデータ処理との関係」については,新請求項1(旧請求項3)においては,「圧縮楽音データ」と「非圧縮楽音データ」の記載のみとし,「先頭の前のデータ,あるいは終端の次のデータ処理との関係」という問題が顕在化しないようにするとともに,発明の技術的意義に即した記載になるようにした。 以上のとおり,原告は,補正の際の意見書において,楽音データの終端部に非圧縮楽音データを配置したことが技術的に重要であることを主張するのみであって,楽音データの先頭部に非圧縮楽音データを配置することについて技術的な説明をしていない。 被告は,このことを捉えて,先端に非圧縮楽音データ(請求項1)又はADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ(請求項4)を配置する構成は除外されたと主張する。 しかし,原告による補正の趣旨は,楽音データの終端部に非圧縮楽音データを配置することによる無音部分の発生の解消が技術的に重要であることを指摘したものであり,意見書や補正後の請求項及び発明の詳細な説明の記載をみても, 補正の趣旨は,楽音データの終端部に非圧縮楽音データを配置することによる無音部分の発生の解消が技術的に重要であることを指摘したものであり,意見書や補正後の請求項及び発明の詳細な説明の記載をみても,先頭部分に非圧縮楽音データ(又はADPCM方式で圧縮された圧縮楽音データ)を配置することが排除されているわけではない。楽音データの先頭部に非圧縮楽音データ(又 はADPCMデータ方式で圧縮された圧縮楽音データ)を配置するか否かは本件特許発明3を含む発明において重要な事項ではなかったと解されるし,そのことが本件特許3を含む発明の技術的意義を阻害するものではなく,また補正前(出願時)に記載されていなかった新規事項の追加であるということもできない。 エ以上に照らすと,構成要件3Aは,楽音データの先頭部に非圧縮楽音データ(又はADPCMデータ方式で圧縮された圧縮楽音データ)を配置する構成を排除したものとはいえないから,構成要件3Aには楽音データの先頭部がADPCM方式によって圧縮された楽音データである場合が含まれるものというべきである。 (2) 被告製品2~4は,「ADPCM①」,「MDCTデータ」,「ADPCM②」の順で,「外部音声データROM」からデータを「順に読み出して再生する」(別紙被告製品2~4説明書)。 そして,「MDCTデータ」が構成要件3Aの「圧縮楽音データ」に,「ADPCM②」が構成要件3Aの「ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データ」にそれぞれ該当する。 (3) したがって,被告製品2~4は,「楽音データ再生装置」に該当するか否かを除いて,構成要件3Aを充足する(「楽音データ再生装置」に該当するか否かは,後記3-5において判断する。)。 3-2 構成要件3B~3C及び3Eの充足性( 「楽音データ再生装置」に該当するか否かを除いて,構成要件3Aを充足する(「楽音データ再生装置」に該当するか否かは,後記3-5において判断する。)。 3-2 構成要件3B~3C及び3Eの充足性(争点3-2)について(1) 本件特許3明細書の【発明の詳細な説明】には,実施例以外の記載(【0001】~【0008】,【00029】)においては,構成要件3Bの「第1の読出手段」,構成要件3Cの「第2の読出手段」,構成要件3Eの「切換手段」の技術的意義についての記載はなく,実施例について,以下の記載がある。 「【0014】 次に,上述した楽音データを再生する再生装置について図1,図6,図7を参照して説明する。 図1はこの発明の一実施形態による楽音データ再生装置の構成を示すブロック図である。この図において,11は前述した楽音データが記憶されたROM,12はROM11から楽音データの先頭部および終了部に設けられたPCMデータを読み出すPCMデータ読出部,13はROM11からMPEG規格によって圧縮された圧縮データを読み出す圧縮データ読出部,14は圧縮データ読出部13によって読み出された圧縮データを伸張(デコード)するデコーダ,15はPCMデータ読出部12の出力と,デコーダ14の出力のいずれか一方を選択して出力する切換部,16は切換部15の出力をアナログ信号に変換するD/A(ディジタル/アナログ)変換器,17は各部を制御する制御部である。 【0015】また,図6はデコーダ14の構成を示すブロック図である。この図において,21は,逆フォーマット回路であり,圧縮データ読出部13から出力される圧縮データ(図5の符号B参照)から量子化されたサブバンドサンプル,ビット割当情報およびスケールフ ック図である。この図において,21は,逆フォーマット回路であり,圧縮データ読出部13から出力される圧縮データ(図5の符号B参照)から量子化されたサブバンドサンプル,ビット割当情報およびスケールファクタを分離し,サブバンドサンプルを逆量子化回路22へ出力すると共に,ビット割当情報を同じ逆量子化回路22へ出力する。また,スケールファクタを逆スケーリング回路23へ出力する。 逆量子化回路22は,サブバンドサンプルをビット割当情報を用いて逆量子化し,逆スケーリング回路23へ出力する。逆スケーリング回路23はスケールファクタに基づいて逆量子化回路の出力データのスケールを元に戻し,サブバンド合成フィルタバンク24へ出力する。サブバンド合成フィルタバンク24は,逆スケーリング回路23から出力されるサブバンドデータを合成して圧縮前のPCMデータに戻す。このPCMデータは出力バッファ25に一時記憶された後,図1の切換部15へ出力される。 【0016】次に,図1に示す楽音データ再生装置の動作を図7を参照して説明する。 ループ再生の指示を受けた制御部17は,まず,楽音データの先頭アドレスをPCMデータ読出部12へ出力してPCMデータの読み出しを指示し,次に,圧縮データの先頭アドレスを圧縮データ読出部13へ出力して圧縮データの読み出しを指示し,次いで,切換部15をPCMデータ読出部12の出力に切り換える(図7の時刻t1)。制御部17から読み出し指示を受けたPCMデータ読出部12は,ROM11から楽音データの先頭部のPCMデータを順次読み出し,切換部15を介してD/A変換器16へ出力する。 D/A変換器16はそのPCMデータをアナログ楽音信号に変換し,スピーカユニット(図示略)へ出力する。これにより,楽音データの先端部の タを順次読み出し,切換部15を介してD/A変換器16へ出力する。 D/A変換器16はそのPCMデータをアナログ楽音信号に変換し,スピーカユニット(図示略)へ出力する。これにより,楽音データの先端部のPCMデータに基づく楽音が発生する。PCMデータ読出部12は,楽音データの先頭部のPCMデータを全て出力した時点で,制御部17へ出力終了を通知する(時刻t2)。制御部17はこの終了通知を受け,切換部15をデコーダ14の出力に切り換える(図7(c)参照)。 【0017】一方,圧縮データ読出部13は,制御部17からの読み出し指示を受け,ROM11から圧縮データを順次読み出し,デコーダ14へ出力する。デコーダ14はその圧縮データを伸張し,伸張済みデータを切換部15へ出力する。ここで,前述したように,先頭部のPCMデータのサンプル数Mは,その読み出し時間が,デコーダ14が圧縮データ読出部13から最初のデータを受けた時点から第1番目の伸張済みデータを出力するまでの時間に一致するように決められている。したがって,制御部17がPCMデータ読出部12から終了通知を受けて切換部15を切り換えた時点に一致するタイミングで,デコーダ14から第1番目の伸張済みデータが出力される。以後,デコーダ14から順次伸張済みデータが出力され,切換部15を介してD/A変 換器16へ出力される。D/A変換器16はその伸張済みデータをアナログ楽音信号に変換し,スピーカユニットへ出力する。これにより,ROM11内の圧縮データに基づく楽音が発生する。 【0018】次に,圧縮データ読出部13は,ROM11内の圧縮データを全て読み出した時点で制御部17へ読み出し終了を通知する(時刻t3)。制御部17はこの通知を受け,予め設定されている一定 0018】次に,圧縮データ読出部13は,ROM11内の圧縮データを全て読み出した時点で制御部17へ読み出し終了を通知する(時刻t3)。制御部17はこの通知を受け,予め設定されている一定時間Tが経過後,PCMデータ読出部12へ楽音データの後部のPCMデータの先頭アドレスを出力してPCMデータの読み出しを指示し,次いで,切換部15をPCMデータ読出部12の出力に切り換える(時刻t4)。ここで,時間Tとは,圧縮データの最後のデータがROM11から読み出されデコーダ14へ入力された時点から,その最後のデータが伸張されデコーダ14から出力されるまでの時間である。 【0019】制御部17から読み出し指示を受けたPCMデータ読出部12は,ROM11から楽音データの終了部のPCMデータを順次読み出し,切換部15を介してD/A変換器16へ出力する。これにより,楽音データの終了部のPCMデータに基づく楽音が発生する。そして,PCMデータ読出部12は,楽音データの終了部のPCMデータを全て出力した時点で,制御部17へ出力終了を通知し(時刻t5),次いで,再び楽音データの先頭部のPCMデータを順次読み出し,切換部15を介してD/A変換器16へ出力する。これにより,楽音データの最後の音と最初の音が連続した状態で楽音再生が再び行われる。 【0020】一方,PCMデータ読出部12から楽音データの終了部のPCMデータの出力終了通知を受けた制御部17は,圧縮データ読出部13へ読み出し指令 を出力する。圧縮データ読出部13はこの指令を受け,再び圧縮データを順次読み出し,デコーダ14へ出力する。そして,制御部17はPCMデータ読出部12から楽音データの先頭部の読み出し終了通知を受けて切換部15を切り換える 読出部13はこの指令を受け,再び圧縮データを順次読み出し,デコーダ14へ出力する。そして,制御部17はPCMデータ読出部12から楽音データの先頭部の読み出し終了通知を受けて切換部15を切り換える(時刻t6)。以下,上述した動作と同様の動作が繰り返され,ROM11の楽音データのループ再生が行われる。 【0021】なお,上記の実施形態において,楽音データの先頭部および終了部にPCMデータ,すなわち圧縮されていないディジタル楽音データを配置したが,これに代えて,例えばADPCM等の圧縮手法を用いた,伸張が短時間で行えるディジタル楽音データを配置してもよい。 また,上記実施形態は,圧縮データの先頭部および終了部にPCMデータを配置しているが,これに代えて,終了部にのみ配置してもよい。この場合,ループ再生を行うには,制御部17が後部のPCMデータの再生終了時点より一定時間前に圧縮データ読出部13へ読み出し開始を指示する必要がある。」「【0025】次に,図8の楽音データ再生装置の動作を説明する。 制御部17aへループ再生指示が供給されると,制御部17はヘッダ読出部33,PCMデータ読出部12および圧縮データ読出部13へ,順次,読出指令を出力し,次いで,切換部15をPCMデータ読出部12側へ切り換える。ヘッダ読出部33へ読出指令が出力されると,ヘッダ読出部33がROM31からヘッダHを読み出し,ヘッダHに含まれる総サンプル数Nをダウンカウンタ34へプリセットする。以後,ダウンカウンタ34がクロックパルスfsをダウンカウントする。 【0026】また,PCMデータ読出部12および圧縮データ読出部13へ読出指令が 出力されると,上述した第1の実施形態と同様に,まず パルスfsをダウンカウントする。 【0026】また,PCMデータ読出部12および圧縮データ読出部13へ読出指令が 出力されると,上述した第1の実施形態と同様に,まず,ROM31内のPCMデータに基づく楽音が発生し(図9の時刻t1~t2),次いで圧縮データに基づく楽音が発生する(時刻t2~t3)。そして,時刻t3において,ROM31内の圧縮データの最後のサンプルに基づく楽音が発生すると,同一タイミングで0検出回路35から検出信号が制御部17aへ出力される。 制御部17aはこの検出信号を受け,再び,ヘッダ読出部33,PCMデータ読出部12および圧縮データ読出部13へ,順次,読出指令を出力し,次いで,切換部15をPCMデータ読出部12側へ切り換える。以後,再び上記の過程で楽音再生が行われる。」(2) 以上に基づいて,まず,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データのデコーダについて検討する。 構成要件3Bには,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データについて,そのデコーダの記載がないし,本件特許3明細書の【発明の詳細な説明】にも同様に記載がない。 しかしながら,本件特許3明細書の段落【0021】においては,楽曲の先頭部と終了部が圧縮されていないPCM楽音データで,中央部が圧縮楽音データという構成の楽音データが使用されたものが第1の実施の形態とされ,これに代えて,例えばADPCM等の圧縮手法を用いた伸張が短時間で行えるディジタル楽音データを配置してもよいとされている。また,圧縮楽音データの先頭部及び終了部にPCM楽音データを配置しているが,これに代えて,終了部にのみ配置してもよいとされているから,これはADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データでも同様であると解される。 ータの先頭部及び終了部にPCM楽音データを配置しているが,これに代えて,終了部にのみ配置してもよいとされているから,これはADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データでも同様であると解される。 このように,PCM楽音データをADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データに代えることが変形例であることや,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データにデコーダが必要であることは技術常識であると解されることに照らすと,構成要件3Bの解釈として,ADPCM方式によっ て圧縮された圧縮楽音データのデコーダが必要であると解される。 (3) 上記(1)のとおり,本件特許3明細書には,実施例として,①PCMデータ読出部12は楽音データの先頭部及び終了部に設けられたPCMデータを読み出すこと,②PCMデータ読出部12は楽音データの先頭部のPCMデータを全て出力した時点で制御部17へ出力終了を通知すること,③PCMデータ読出部12は楽音データの終了部のPCMデータを全て出力した時点で制御部17へ出力終了を通知すること,④圧縮データ読出部13はMPEG規格によって圧縮された圧縮楽音データを読み出すこと,⑤圧縮データ読出部13で読み出された圧縮楽音データは,デコーダ14に送られること,⑥圧縮データ読出部13は圧縮楽音データを全て読み出した時点で制御部17へ読み出し終了を通知すること,⑦切換部15はPCMデータ読出部12の出力と,デコーダ14(圧縮データ読出部13)の出力のいずれか一方を選択して出力すること,⑧上記⑦の切換部15の動作は,PCMデータ読出部12又は圧縮データ読出部13からの終了の通知を受けた制御部からの読出指令に基づいて行われること,⑨終了通知は,PCMデータ又は圧縮楽音データを全て出力した時点でPCMデータ読出部 CMデータ読出部12又は圧縮データ読出部13からの終了の通知を受けた制御部からの読出指令に基づいて行われること,⑨終了通知は,PCMデータ又は圧縮楽音データを全て出力した時点でPCMデータ読出部12又は圧縮データ読出部13から制御部17へ通知されることが記載されている。 以上を前提として,まず,構成要件3Bの解釈として,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出し終了の判別が必要であるかについて検討する。上記(2)のとおり,構成要件3Bの解釈として,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データのデコーダが必要であると解される上,構成要件3Bにおいて読み出し終了通知が必要とされていることや,上記①~③の実施例におけるPCMデータ読出部12の動作を考慮すると,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データの読み出し終了の判別が必要であると解される。本件特許3明細書の記載では,「第1の読出手段」及び「第2の読出手段」について,読み出し終了を判別する態様が不明である ものの,構成要件3Bの記載及び上記⑨からすると,「第1の読出手段」及び「第2の読出手段」が読み出し終了の判別のため機能を有していると解するのが相当である。 続いて,構成要件3B~3Cの解釈として,「第1の読出手段」と「第2の読出手段」が1つの手段である場合が含まれるかについて検討する。 請求項1,4の記載によれば,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを読み出す「第1の読出手段」(構成要件3B)と圧縮楽音データを読み出す「第2の読出手段」(構成要件3C)とが区別され,「第2の読出手段」から読み出された圧縮楽音データはデコーダへ出力され(前記のとおり,ADPCM方式の圧縮楽音データもデコーダへの出力が必要と解されるが, の読出手段」(構成要件3C)とが区別され,「第2の読出手段」から読み出された圧縮楽音データはデコーダへ出力され(前記のとおり,ADPCM方式の圧縮楽音データもデコーダへの出力が必要と解されるが,請求項1の場合は非圧縮楽音データが使用されるので,非圧縮楽音データが「第1の読出手段」で読み出された後,デコーダへ出力する必要はない。),それぞれの読出手段から読み出されたデータの出力が切換手段で切り換えられることとされている(構成要件3D)。また,そのような切り換えを可能にするための制御手段が設けられている(構成要件3E)。このように,2つの読出系統とその切り換えが想定されているところからみて,「第1の読出手段」と「第2の読出手段」とは別個の手段であると解するのが自然である。 次に,発明の詳細な説明をみると,PCMデータ読出部12と圧縮データ読出部13は,楽音データを読み出し,制御部に読み出しの終了を通知する点で,機能は一致している。しかしながら,PCMデータ読出部12と圧縮データ読出部13が1つの読出部により実現してもよいとの記載はない。また,段落【0016】~【0017】の実施例の記載においても,制御部17は,PCMデータ読出部12,圧縮データ読出部13に読み出しを指示した後に,切換部15をPCMデータ読出部12の出力に切り換えるのであるから,2つの読出部は異なるものであると解される。 以上のような,特許請求の範囲,発明の詳細な説明の記載に照らすと,「第1の読出手段」と「第2の読出手段」は,1つの手段ではなく,異なる手段であると解するのが相当である。 そうすると,これが1つの手段でもよいとする原告の主張を採用することはできない。 (4) そこで,被告製品2~4が構成要件3Bの「第1の読出手段」を充足するかについて 解するのが相当である。 そうすると,これが1つの手段でもよいとする原告の主張を採用することはできない。 (4) そこで,被告製品2~4が構成要件3Bの「第1の読出手段」を充足するかについて検討する。 前提として,ADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データに相当するADPCM②のデコーダを有することは当事者間に争いはない(別紙被告製品2~4説明書)。 原告は,「第1の読出手段」について,ADPCMデコーダによって伸張されたPCMデータを次のバッファに送る手前までである旨主張した上で,被告製品2~4について,「読み出されたADPCM①データは,ADPCMデコーダでPCMデータに伸張され,所定サンプル分のPCMデータをRAMに順次格納する。RAMに格納された所定サンプル分のPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)は,音量調整後バスバッファに1サンプルずつ出力し,デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする。RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」とし,「ADPCM②のデコードからバスバッファへの出力までの動作はADPCM①と同様である。」とする。そして,「デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする。RAMからバスバッファへのPCMデータ(ADPCM①が伸張されたデータ)の出力が完了した時点で,デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する。」とし,これが,読み出し終了を通知するものであると主張 する。 しかしながら,被告製品2~4において,「デコード部においてRAMから バッファへの出力が完了したことを通知する。」とし,これが,読み出し終了を通知するものであると主張 する。 しかしながら,被告製品2~4において,「デコード部においてRAMからバスバッファに出力するサンプル数をカウントする」というLSIの機能を説明するものの,読み出し終了の判別を説明するものとはいえないから,ADPCM②データの読み出し終了を判別する態様は明らかではない。そして,この判別の態様が明らかでない以上,「デコード部からシーケンサへ上記バスバッファへの出力が完了したことを通知する」ことが「読み出し終了通知を出力する」に当たるともいい難い。 そうすると,被告製品2~4は「第1の読出手段」を備えていないから,構成要件3Bを充足しない。 (5) 続いて,被告製品2~4が構成要件3C及び3Eを充足するかについて検討する。 上記(3)のとおり,「第1の読出手段」と「第2の読出手段」は異なる手段であると解釈される。そして,被告製品2~4について,外部音声ROMからADPCM②データとMDCTデータの読み出し系統が同一であること(シリアルバスであること)に争いがなく,「第2の読出手段」を備えているとはいえないから,被告製品2~4は構成要件3Cを充足しない。 また,被告製品2~4は,2つの「読出手段」を備えていない以上,「切換手段」を備えているとはいえないから,構成要件3Eを充足しない。 3-3 構成要件3Dの充足性(争点3-3)について被告製品2~4は,MDCTデータのデコーダを備えている(別紙被告製品2~4説明書)。しかしながら,前記3-2のとおり,被告製品2~4が「第2の読出手段」を備えていないから,上記デコーダが「前記第2の読出手段によって読み出された圧縮楽音データを伸張 る(別紙被告製品2~4説明書)。しかしながら,前記3-2のとおり,被告製品2~4が「第2の読出手段」を備えていないから,上記デコーダが「前記第2の読出手段によって読み出された圧縮楽音データを伸張して出力するデコーダ」であるとはいえない。 そうすると,被告製品2~4は構成要件3Dを充足しない。 3-4 構成要件3F及び3Hの充足性(争点3-4)について(1) まず,「制御手段」について検討する。 ア前記3-1のとおり,本件特許発明3が引用する請求項1は,無音部分を作ることなくループ再生を行うことができる楽音データ再生装置を提供するために,楽音データを圧縮楽音データだけで構成するのではなく,圧縮楽音データと非圧縮楽音データとから構成し,楽音データの終了部に非圧縮楽音データを配置する構成を採用することにより,無音部分を作ることなくループ再生することができる効果を有するものである。また,本件特許発明3は,非圧縮楽音データに代えてADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを用いることにより同様の効果を有するものである。 このように,本件特許発明3は,楽音データを圧縮楽音データだけで構成するのではなく,楽音データを圧縮楽音データとADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データとから構成し,楽音データの終了部にADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを配置することに技術的意義を有するものである。 しかしながら,本件特許発明3においては,楽音データの終了部にADPCM方式によって圧縮された圧縮楽音データを配置するだけではなく,圧縮楽音データのデコードによる時間の遅れを解消しないと,無音部分を作ることなくループ再生することはできないことは明らかである。 構成要件3Hの「 た圧縮楽音データを配置するだけではなく,圧縮楽音データのデコードによる時間の遅れを解消しないと,無音部分を作ることなくループ再生することはできないことは明らかである。 構成要件3Hの「制御手段」の技術的意義はこの点にあると考えられる。 すなわち,構成要件3H中の「前記デコーダによる前記圧縮楽音データの伸張および出力が終了した時点で前記第1の読出手段へ前記ADPCM方式によって圧縮された圧縮された圧縮楽音データの読み出し指令を出力する」というのはこのような時間遅れの解消も目的とするものと解される。 イこの点について,本件特許3明細書の【発明の詳細な説明】をみるに,圧縮楽音データのデコードによる時間の遅れを解消する解決原理は,明示 的には説明されていないが,本件特許発明3の実施例(「第1の実施の形態」)の動作(段落【0016】~【0020】及び図7)をみるに,切換部15によって切り換えられて出力される信号がバッファに送られることは記載されていないから,バッファによって時間の遅れを調整しているとは認められない。そうすると,制御部17が切換部15による切り換えのタイミングを制御することによって,圧縮楽音データのデコードによる時間の遅れを解消するものと解するのが相当である。 ウ以上のとおり,構成要件3F及び3Hの「制御手段」は,圧縮楽音データのデコードによる無音部分が生じないように「切換手段」の切り換えのタイミングを制御する機能を有するものであると解される。 (2) これに対し,被告製品2~4は,前記3-2のとおり,「切換手段」を備えていないから,ADPCM②データの再生に連続して,MDCTデータの再生を行ったときに(正確には,ADPCM②データとMDCTデータの再生の間にADPCM①データが再生され おり,「切換手段」を備えていないから,ADPCM②データの再生に連続して,MDCTデータの再生を行ったときに(正確には,ADPCM②データとMDCTデータの再生の間にADPCM①データが再生される。),そのデコードによって無音部分が生じないのは,バスバッファにおいて,MDCTデータのデコードによる時間の遅れを調整しているからであると推測される。 このように,本件特許発明3と被告製品2~4とでは,圧縮楽音データのデコードによって無音部分を生じないようにする解決手段が異なるのであり,被告製品2~4について,本件特許発明3の「制御手段」を備えているとはいえない。また,切換手段による切り換えの「第1手順」「第2手順」があるとはいえないし,前記3-2のとおり,「第1の読出手段」「第2の読出手段」「切換手段」も備えていない。。 (3) したがって,被告製品2~4は構成要件3F及び3Hを充足しない。 3-5 構成要件3Iの充足性(争点3-5)について(1) まず「楽音」の意義について検討するに,本件特許3明細書の【発明の詳細な説明】には,以下の記載がある。 「【背景技術】【0002】近年,オーディオの分野においては,ディジタル楽音データを圧縮する方式(規格)として,MPEG,MP3,AAC,WMA等種々の方式が開発され,これに伴い,圧縮楽音データを再生する再生装置も種々実用化されている(特許文献1参照)。 ところで,パチンコ等のゲーム機の分野においては,同じ楽曲を続けて繰り返し再生するループ再生がしばしば行われる。しかしながら,上述した圧縮楽音データをゲーム機において使用する場合,例えばMPEGは1152サンプル,AACは1024サンプルを1フレームとし,このフレーム単位 するループ再生がしばしば行われる。しかしながら,上述した圧縮楽音データをゲーム機において使用する場合,例えばMPEGは1152サンプル,AACは1024サンプルを1フレームとし,このフレーム単位で再生処理を行うようになっているので,曲の最後のフレームが規定数のサンプルを含まない場合にフレームの後部に無音部分が含まれることになる。 このため,繰り返し再生において曲の終端部と先頭部との間に無音部分が生じてしまう問題があった。」以上のとおり,パチンコ等のゲーム機の分野においては,同じ楽曲を続けて繰り返し再生するループ再生がしばしば行われ,パチンコ等のゲーム機において圧縮楽音データを再生することが記載されている。 そうすると,「楽音」とは,パチンコ等のゲーム機で再生される音楽・音声その他人間の聴覚で認識できるデータであると解される。 (2) そこで,被告製品2~4が「楽音データ再生装置」に該当するかについて検討する。 原告の主張によっても,被告製品2~4では,バスバッファに書き込まれたPCMデータが読み出されて外部に出力されるから,外部のスピーカが最終的な「楽音」の発生を行うこととなる(別紙被告製品2~4の機能説明3. 5)。このように,被告製品2~4は,外部のスピーカが「楽音」の発生を行うために,非圧縮の楽音データを生成しているものの,最終的な「楽音」 の発生は外部で行われているのであるから,楽音データを「再生」する装置であるとはいい難い。 (3) そうすると,被告製品2~4は構成要件3Iを充足しない。また,構成要件3Aについても「楽音データ再生装置」に該当することが要件であるから,同様に被告製品2~4は構成要件3Aを充足しない。 3-6 まとめ以上のとおり,被告製品2~4は,構成 また,構成要件3Aについても「楽音データ再生装置」に該当することが要件であるから,同様に被告製品2~4は構成要件3Aを充足しない。 3-6 まとめ以上のとおり,被告製品2~4は,構成要件3A~3F,3H~3Iを充足しない。 そうすると,被告製品2~4が本件特許発明3の技術的範囲に属するとは認められないから,本件特許発明3に係る請求はいずれも理由がない。 第5 結論よって,原告の請求は,理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官西村康夫 (別紙)当事者目録浜松市<以下略>原告ヤマハ株式会社同訴訟代理人弁護士内藤義三同大橋厚志同田中成志同平出貴和同板井典子同山田徹同森修一郎同訴訟代理人弁理士飯塚義仁同大場弘行東京都千代田区<以下略> 修一郎同訴訟代理人弁理士飯塚義仁同大場弘行東京都千代田区<以下略>被告株式会社アクセル同訴訟代理人弁護士飯田秀郷同栗宇一樹同大友良浩同隈部泰正同和氣満美子同戸谷由布子同辻本恵太同林由希子同森山航洋同船橋茂紀同遠山光貴 同西山彩乃同訴訟復代理人弁護士杉浦秀同奥津啓太以上

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