令和7年5月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和3年(ワ)第526号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和7年2月12日判決 主文 1 被告らは、原告Aに対し、連帯して8668万6851円及びこれに対する令和2年1月22日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Bに対し、連帯して220万円及びこれに対する令和2年1月22日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、別紙訴訟費用目録記載のとおりの負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは、原告Aに対し、連帯して1億3630万9641円及びこれに対す る令和2年1月22日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Bに対し、連帯して550万円及びこれに対する令和2年1月22日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要原告Aは、被告市が開設運営する赤穂市民病院(以下「本件病院」という。)で腰椎 後方除圧術(以下「本件手術」という。)を受けた際に腰椎部の馬尾神経を切断損傷されたことにより(以下「本件医療事故」という。)、重度の後遺障害が残った。また、原告Aは、本件病院に入院中に病室内で転倒したことにより(以下「本件転倒事故」という。)、右脛腓骨骨折等の傷害を負った。 本件は、原告A及びその子である原告Bが、本件医療事故について、本件手術の執 刀医である被告Cには本件医療事故につき悪質な手技上の過失があると主張し、被告 Cに対しては不法行為責任(民法70 、原告A及びその子である原告Bが、本件医療事故について、本件手術の執 刀医である被告Cには本件医療事故につき悪質な手技上の過失があると主張し、被告 Cに対しては不法行為責任(民法709条)に基づき、被告市に対しては使用者責任(同法715条)又は債務不履行責任(同法415条)に基づき、また、本件転倒事故について、本件病院には看護師等が付き添い見守るなどの原告Aの転倒を防止するために必要な措置を講ずべき義務を怠った過失があると主張し、被告市に対して使用者責任(同法715条)又は債務不履行責任(同法415条)に基づき、損害賠償金 の連帯支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実、後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。なお、書証の記載は、特に断らない限り、枝番号のものを含む。 以下同じ。)(1)当事者等 ア原告Aは、昭和20年生(令和2年1月当時74歳)の女性であり、原告Bは、原告Aの長女である(乙A1〔患者プロファイル〕)。 イ被告市は、本件病院を開設運営する地方公共団体である。 ウ被告Cは、本件病院の脳神経外科に所属し、原告Aの主治医として本件手術を執刀した医師である(乙A1〔診療経過記録〕)。 (2)本件医療事故ア原告Aは、腰部脊柱管狭窄症の治療のため、令和2年1月22日、本件病院において、被告Cを執刀医、本件病院の脳神経外科科長であるD医師(以下「D医師」という。)を助手とする本件手術を受けたところ、第2・第3腰椎間の施術を行った被告Cの手技上の過失により、腰椎部の馬尾神経を切断損傷された(本件医療事故)(当 事者間に争いがない)。 イ原告Aは、馬尾神経の切断損傷により、両下肢の麻痺を来たし、自力での起立・歩行が不可能な状態となり、重度の膀 腰椎部の馬尾神経を切断損傷された(本件医療事故)(当 事者間に争いがない)。 イ原告Aは、馬尾神経の切断損傷により、両下肢の麻痺を来たし、自力での起立・歩行が不可能な状態となり、重度の膀胱直腸障害が生じ、腰部から両下肢にかけて神経障害性の疼痛が生じるようになった。 D医師は、令和2年10月23日、原告Aの神経障害性の症状が回復する見込みは 極めて厳しいとして、原告Aの本件医療事故による後遺障害につき症状固定と診断し た(以下、同日を「本件症状固定日」という。)。 (以上、甲A1、乙A1〔診療経過記録〕)。 ウ本件症状固定日における原告Aの後遺障害の程度は、自動車損害賠償保障法施行令別表第一(以下「別表第一」という。)1級1号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの)に相当する(当事者間に争いがない。)。 (3)本件転倒事故原告Aは、本件病院で入院継続中の令和3年1月28日、病室内で転倒し(本件転倒事故。なお、転倒の態様については争いがある。)、右脛腓骨骨折、右前距腓靭帯損傷の傷害を負った(乙A1〔診療経過記録〕)。 (4)その後の経緯等 ア原告Aは、令和5年3月31日、本件病院を退院した。 イ原告Aのその後の療養等の経緯は、以下のとおりである。 (ア)令和5年3月31日~同年7月12日赤穂中央病院に入院(イ)令和5年7月12日~同年7月31日特別養護老人ホームに短期入所(ウ)令和5年8月1日~令和6年2月29日自宅で療養 (エ)令和6年3月1日~同年7月15日特別養護老人ホームに短期入所(オ)令和6年7月16日以降特別養護老人ホームに入所(以上、甲C25、26、67、97~101) 2 争点及び当事者の主張 ~同年7月15日特別養護老人ホームに短期入所(オ)令和6年7月16日以降特別養護老人ホームに入所(以上、甲C25、26、67、97~101) 2 争点及び当事者の主張本件医療事故について被告Cに手技上の過失があり、被告らが損害賠償責任を負う ことは、当事者間に争いがない。 本件の争点及び当事者の主張は、以下のとおりである。 (1)原告らの各損害(争点1)以下のとおり補足するほかは、別紙「損害一覧表」のとおりである(同別紙記載の各番号を「別紙番号」という。)。 ア後遺障害慰謝料(別紙番号⑦)について (原告らの主張)(ア)慰謝料増額事由① 被告Cは、本件病院に入職してから9か月間で11件の重大医療事故に関与するなど本件手術を行う技量を有していなかった上、被告Cの本件医療事故における手技上の過失は、極めて著しく、重大かつ悪質なものであって、故意の傷害に匹敵する こと、② 本件医療事故により原告Aに生じた後遺障害の内容は重大であり、疼痛の苦痛も甚大であること、③ 被告Cが早急に手術しなければ人工透析になる可能性があるなどと虚偽の説明をしたこと、④ 本件病院は、被告Cが多数の医療事故に関与し、臨床工学部から被告Cが行う手術への参加を辞退する旨の申入れがなされるなどしていたのに、被告Cに手術をさせ続けるなど、その監督が杜撰で医療安全管理が機 能していなかったこと、⑤ 本件医療事故後も、被告Cが不適切な説明や不誠実な言動を繰り返し、本件病院が真摯な反省や謝罪をせず、真相究明や再発防止策をとらず、原告Aに執拗に退院を迫るなど、不適切で不誠実な対応であったことを踏まえると、原告Aの後遺障害慰謝料は増額を考慮されるべきであり、その額は4000万円を下らない。 相究明や再発防止策をとらず、原告Aに執拗に退院を迫るなど、不適切で不誠実な対応であったことを踏まえると、原告Aの後遺障害慰謝料は増額を考慮されるべきであり、その額は4000万円を下らない。 (イ)加重障害の主張について原告Aは、15年以上前に右大腿骨を骨折して人工骨頭置換術を受けたが、術後の予後が良く、可動域制限をほとんど感じることなく日常生活を送っていたのであり、本件医療事故前に下肢関節の機能障害と評価すべき既存障害はなかった。 仮に人工骨頭置換を既存障害と評価するとしても、本件医療事故後に原告AのAD Lが激変したことに鑑みれば、これを慰謝料額の算定にあたって考慮すべきでない。 (ウ)慰謝料減額事由の主張について被告Cが慰謝料減額事由として主張する内容は、慰謝料額の算定との関連が薄いものであり、慰謝料減額事由として考慮するに値しない。 (被告市の主張) 慰謝料増額事由の主張を否認ないし争い、慰謝料額の相当性を争う。 ①につき、被告Cが入職してから9か月間に被告Cが担当した手術において複数の医療事故が発生していたことは認めるが、そのうち被告Cの手技の過失が認められると判断したものは本件手術1件のみであり、被告Cが本件手術を行う技量を有していなかったとまでいうことはできない。また、スチールバーによる馬尾神経損傷は、手技の注意義務違反の内容として典型的なものであり、被告Cの本件手術における手技 の内容から「過失が極めて著しく、重大かつ悪質」とか「故意の傷害に匹敵する」とまでいうことはできない。 ②につき、原告Aの後遺障害は第1級1号の後遺障害として評価されているものであり、原告らが主張する症状を理由に慰謝料増額事由があるということはできない。 ③につき、被告Cの説明内容は不知 い。 ②につき、原告Aの後遺障害は第1級1号の後遺障害として評価されているものであり、原告らが主張する症状を理由に慰謝料増額事由があるということはできない。 ③につき、被告Cの説明内容は不知。もっとも、被告Cが腎機能低下による人工透 析となる可能性について説明をしていたとしても、虚偽の説明とまではいえない。 ④につき、臨床工学部の申入れは、被告Cの手術手技が危険であることを理由にボイコットを申し入れたというものではない。 ⑤につき、本件病院では、本件手術直後から一定の対応をし、病院長が原告らに謝罪の上、適正な損害賠償責任をする意向を伝えている。本件病院が原告Aに無理に退 院を強制したり、執拗に退院を迫ったことはなく、本件病院における看護内容が杜撰になったり原告Aを厄介者のように扱ったという事実もない。 (被告Cの主張)(ア)慰謝料増額事由の主張について慰謝料増額事由を否認ないし争う。 ①につき、被告Cが本件病院で担当した手術に複数の医療事故例があることのみをもって、被告Cが本件手術を行う技量を有していなかったとはいえない。医療事故例には、D医師の手術操作に係るものもあるし、脳神経外科の手術は合併症・偶発症のリスクも高く、被告Cが本件病院で担当した手術50例の合併症・偶発症として頻度が高いものでもない。本件病院の検証でも本件手術以外は過誤ではないと判断されて いる。また、本件手術における本件医療事故発生の原因には、D医師が水をかけすぎ たことによる視界不良と、D医師の指示によるスチールバーの使用があり、被告Cの技量のみにあるものではない。 ③につき、被告Cが原告らに医学的合理性を欠く虚偽の説明を行ったことはない。 ⑤につき、被告Cが、本件医療事故後に原告らに対する説明で神経が切断され があり、被告Cの技量のみにあるものではない。 ③につき、被告Cが原告らに医学的合理性を欠く虚偽の説明を行ったことはない。 ⑤につき、被告Cが、本件医療事故後に原告らに対する説明で神経が切断されたと断言をしなかったのは、原告Aのリハビリ等に向けた意欲が低下することを案じたた めである。被告Cは、本件病院による調査にも協力している。 (イ)加重障害原告Aは、本件医療事故前に右大腿骨頸部骨折により人工骨頭置換術を受けており、可動域に応じた下肢の機能制限が存したから、これを加重障害として斟酌すべきである。 (ウ)慰謝料減額事由被告Cは、本件病院の不適切な公表で世間の誤認を誘発されたことに加え、原告らが作成に関与したウェブ漫画により信用を毀損され、相当な範囲を超えて社会的制裁を受けている。このことは慰謝料減額事由として考慮されるべきである。 (2)本件転倒事故についての被告市の使用者責任又は債務不履行責任の有無(争点 2)(原告らの主張)原告Aは、本件転倒事故当時、投与されていた鎮痛薬の影響で精神的に極めて不安定な状態になっており、せん妄状態でその場にはいない娘(原告B)を追いかけようとして、転倒・転落に至ったものと推測される。 原告Aには本件転倒事故前に5回の転倒歴があり、本件病院も原告Aを転倒転落の危険度Ⅲ(評価スコア合計20点以上、転倒・転落をよく起こす)と評価し、転倒の危険性が高い患者と認識していた。加えて、原告Aは、本件医療事故後に投与されていた鎮痛薬等の影響により精神的に極めて不安定な状態となっており、本件転倒事故直前には15時15分から15時50分までの35分間の間に離床センサーが頻回 に作動するなど転倒事故につながる危険行動が止まない状況が顕著であった。 こ 態となっており、本件転倒事故直前には15時15分から15時50分までの35分間の間に離床センサーが頻回 に作動するなど転倒事故につながる危険行動が止まない状況が顕著であった。 このような原告Aの本件転倒事故当時の具体的状況に照らせば、本件病院には、原告Aの転倒・転落を防止するため、少なくとも原告Aの危険行動が落ち着くまで看護師らが原告Aに付き添い状態の観察を継続するなど、通常よりも高度の対策を講ずべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠り、離床センサーマットが作動せず、看護師らの見守りが不足したため、本件転倒事故が生じた。 したがって、被告市には、本件転倒事故により原告Aに生じた損害について債務不履行又は被用者による注意義務違反の過失がある。 (被告市の主張)原告Aが本件転倒事故後に発見された時の状況からすれば、原告Aは、ナースコールを押さずに単独で病室内のトイレに行こうとして転倒したものと思われる。 本件病院では、原告Aに対しトイレ移動時にはナースコールを押して看護師を呼ぶようにとの指示を徹底していたことに加え、離床センサー付きベッドを使用し、原告Aが単独で動こうとすれば離床センサーが反応してナースコールが鳴り、ナースステーションに居る看護師がナースステーションの目の前に位置する原告Aの病室に駆けつけるという態勢をとっていたのであり、転倒事故防止対策として十分な措置を尽 くしていたから、本件転倒事故の発生につき責任はない。 本件転倒事故発生時には、たまたま何らかの原因によって離床センサーが反応しなかったため、看護師が原告Aの動きに対応できなかったのであるが、本件転倒事故の発生という事実から後方視的に看護師が原告Aに付き添って観察しておくべきであったということになるものではない。本件転倒 なかったため、看護師が原告Aの動きに対応できなかったのであるが、本件転倒事故の発生という事実から後方視的に看護師が原告Aに付き添って観察しておくべきであったということになるものではない。本件転倒事故発生当時の原告Aが入院する病棟 の入院患者数、看護師数等の状況からみても、原告A一人のために看護師が付き添って観察を続けるということは不可能であった。 なお、本件病院では、本件転倒事故発生後、離床センサーが反応しない場合に備えて「転倒むし」(患者の体に取り付けるタイプの離床センサー)を追加で設置し、緩衝マットも導入したが、これらの転倒防止措置をとっても、原告Aがナースコールを押 すようにという指示を守らずに単独で行動するため、その後も転倒事故が発生してお り、仮に本件転倒事故前にこれらの対策を取っていたとしても、本件転倒事故を完全に防止することも不可能であった。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(1)本件医療事故の経緯 ア被告Cは、平成21年に医師免許を取得し、研修を経て脳神経外科医として複数の病院で勤務した後、令和元年7月に本件病院の脳神経外科に入職した。被告Cは、脊椎手術につき、以前勤務した病院で助手として関与した経験が100例ほどあったが、執刀医として関与したことは本件手術が初めてであった。(被告C本人)イ原告Aは、令和元年12月20日、腰痛を訴えて本件病院を受診し、令和2年 1月6日から同月8日まで検査入院して脊髄造影検査(ミエログラフィー)を受けた(同月6日のカルテには「前屈しなければ何メートルもあるけない」との記載がある。)。このとき尿量検査で多くはないが残尿もあった。(乙A1〔診療経過記録〕)原告Aは、同月17日、検査結果を聴取するため本件病院を受診し、主治医となった被 メートルもあるけない」との記載がある。)。このとき尿量検査で多くはないが残尿もあった。(乙A1〔診療経過記録〕)原告Aは、同月17日、検査結果を聴取するため本件病院を受診し、主治医となった被告Cから、重度の腰部脊柱管狭窄症である旨、早急に腰椎後方除圧術を実施した 方が良い旨、腎機能がさらに悪化した場合は人工透析になる可能性がある旨を説明され、同月20日入院、同月22日手術を勧められ、これを承諾した(甲C67、被告C本人)。 ウ原告Aは、同月20日から本件病院に入院し、同月22日に本件手術を受けた。 本件手術は、脊柱管狭窄症に対し、腰椎部分の椎弓の一部を切除して脊柱管を広げ圧 迫を解除する手術である。 原告Aには、第2・第3腰椎間(L2/3)及び第4・第5腰椎間(L4/5)に脊柱管狭窄がみられ、この部分の棘突起の除去、椎弓の切除、黄色靭帯の切除が予定された。本件手術は、被告Cを執刀医、D医師を助手として同日午前9時から開始され、D医師が第4・第5腰椎間(L4/5)の施術を行い、その後、被告Cが第2・ 第3腰椎間(L2/3)の施術を行った。 被告Cは、スチールバーにより棘突起を削除し、椎弓をある程度削ったところでダイヤモンドバーに換えて骨削除を進めたが、ダイヤモンドバーでは切除効率が低いことから再びスチールバーに換え、出血等により視認性の確保が十分ではないのに止血をこまめにしないままスチールバーによる骨切除を進めたところ、スチールバーが硬膜に触れて硬膜が裂け、逸脱した索状の馬尾神経をスチールバーに巻き込んで複数本 を切断損傷した。 その後、D医師が被告Cに代わって馬尾神経を硬膜内に納めるなどの修復措置を行い、本件手術は同日午後7時過ぎに終了した。 (以上、甲A2、乙A1〔診療経過記録p78、82~ を切断損傷した。 その後、D医師が被告Cに代わって馬尾神経を硬膜内に納めるなどの修復措置を行い、本件手術は同日午後7時過ぎに終了した。 (以上、甲A2、乙A1〔診療経過記録p78、82~91等、検査レポート生理検査005〕、被告C本人) (2)原告Aの後遺障害等ア原告Aは、本件医療事故で馬尾神経を切断損傷されたことにより、本件手術直後から神経脱落症状として右足関節の屈曲伸展不能、右大腿外側から下腿足背足底の感覚鈍麻、脱失があり、本件症状固定日当時は、後遺障害として、両肢関節の機能不全(右下肢足関節の底屈・背屈不能、右下肢膝関節・同股関節・左下肢足関節の屈曲・ 伸展筋力の著しい低下により自力での起立・歩行は全く不可能な状況)、極めて重度の膀胱直腸障害(尿排泄には間欠的導尿を必要とし、軟便・下痢となった際には便失禁が必発となる状況)が残遺するとともに、神経障害性疼痛(腰部から下肢部の強い疼痛があり、日により疼痛の程度に変化がみられるが、著しいときには耐え難い疼痛となり、永続的に鎮痛剤の投薬が必要な状況)が残遺した(甲A1、C15、乙A2 2の1)。 イ D医師は、令和2年5月、被告Cに代わって原告Aの主治医となり、同年10月23日(本件症状固定日)、原告Aの神経障害症状が回復する見込みは極めて厳しいとして、同日を原告Aの症状固定日と診断したが、同日以降も、原告Aの後遺症状を軽減するため、原告Aに対するリハビリや投薬治療を継続した(甲A1、乙A1〔診 療経過記録〕)。 ウ被告Cは、令和3年8月、本件病院を依願退職した(弁論の全趣旨)。 (3)被告Cが担当した手術における医療事故等ア被告Cは、令和元年7月に本件病院の脳神経外科に入職した後、数十例の手術を担当した。 イ本件病 8月、本件病院を依願退職した(弁論の全趣旨)。 (3)被告Cが担当した手術における医療事故等ア被告Cは、令和元年7月に本件病院の脳神経外科に入職した後、数十例の手術を担当した。 イ本件病院の医療安全推進室は、令和2年2月、被告Cが担当した手術のうち以 下の8例(本件医療事故を含む)を医療事故として病院長に報告し、病院長は、同月、被告Cに対し、手術の中止を指示した。 (8例:事例番号は甲C13の例による。)発生年月事故状況①【事例②】 R1.9 水頭症術後、嚥下障害等出現 ②【事例③】 R1.9 頭蓋内微小血管減圧術後、顔面の麻痺等が出現③【事例④】 R1.9 血栓回収術実施。10月下血、呼吸悪化、死亡④【事例⑤】 R1.10 椎弓形成術後、しびれ等が出現⑤【事例⑥】 R1.12 頸椎椎間板ヘルニア切除術後、嚥下機能喪失⑥【事例⑧】 R2.1 本件医療事故 ⑦【事例⑨】 R2.2 膠芽腫腫瘍切除術後、広範囲の脳梗塞⑧【事例⑩】 R2.2 血栓回収術中に出血、昏睡状態、3月死亡ウ本件病院の院内事故調査委員会は、令和4年2月、被告Cが担当した手術のうち上記8例に以下の3事例を加えた計11事例を医療事故として挙げ、同年6月、赤穂市民病院ガバナンス検証委員会に検証を依頼した。同検証委員会は、関係職員への ヒアリングを実施し、令和5年3月、本件病院の医療安全の取組が十分に機能していなかったと評価した上で、医療安全の取組を進めるための方針を提言した。 (3例:事例番号は甲C13の例による。)発生年月事故状況⑨【事例①】 R1.7 腫瘍摘出率20%以下、8月別医師が2度目の手術 ⑩【事例⑦】 R2.1 水頭症術から10か月後、発熱カテーテル抜去 による。)発生年月事故状況⑨【事例①】 R1.7 腫瘍摘出率20%以下、8月別医師が2度目の手術 ⑩【事例⑦】 R2.1 水頭症術から10か月後、発熱カテーテル抜去 ⑪【事例⑪】 R2.3 水頭症術に伴い、肺挫傷の出現(以上、甲C13、乙A8)(4)臨床工学部の申入れ本件病院の臨床工学部では、被告Cから緊急で脳カテーテル検査を実施する際の臨床工学技士による介助を依頼されたことから、令和2年1月16日に臨床工学部内で 協議し、同年2月3日に臨床工学部技士長は、脳外科診療科長であるD医師に宛て、臨床工学部で介助業務を行う場合の具体的な業務内容や責任の所在が不明確であるなどの様々な問題点があるとして、その検討を申し入れた。これに対し、D医師は、被告Cの逸脱した要求に対しては注意をしておくとした上で、検討を申し入れられた問題点については、検討に時間を要する、院長に意見具申するなどと返答した。(乙A 18、19)(5)本件医療事故後の本件病院の対応ア本件病院の病院長は、令和2年4月、脳神経外科から上記(3)イの8事例の検証結果の報告を受け、本件医療事故が医療過誤であると判断し、同年6月、原告Aの家族にその旨を報告し、口頭で謝罪した(甲C13)。 被告らは、令和3年3月、被告ら代理人弁護士を通じて、原告A代理人弁護士に対し、本件医療事故につき適正な損害賠償をする旨を通知した(乙A20)。 イ本件病院は、令和3年3月以降に院内の検証会議を3回、令和4年2月以降に院内の事故調査委員会を2回開催し、上記8事例のうち本件医療事故のみが医療過誤に当たると判断して会議を終了し、令和4年6月28日に記者会見を開いて、一連の 医療事故を謝罪した(甲C17)。 ウ本件病院は、一般 を2回開催し、上記8事例のうち本件医療事故のみが医療過誤に当たると判断して会議を終了し、令和4年6月28日に記者会見を開いて、一連の 医療事故を謝罪した(甲C17)。 ウ本件病院は、一般社団法人日本脳神経外科学会より、令和4年8月19日付けで、医療安全管理体制など医療安全教育上の懸念事項があるとして、専門医指定訓練施設の認定停止を受け、上記11事例について当時の医療安全体制の問題点を総括することが専門医指定訓練施設の再認定の条件とされた(甲C12)。 エ本件病院は、令和6年1月に実施予定であった兵庫県赤穂健康福祉事務所によ る立入検査において、1年前から準備すべき資料を指導されていたにもかかわらず、同事務所が指定する期日までに準備しなかった(甲C84~86)。 オ D医師は、令和6年5月15日、原告Bに対し、本件病院の医療課長から、本件訴訟で原告ら申請証人に採用された場合には、法廷で、D医師の認識に反し、被告Cの主張に合わせた証言をするよう命令されたと伝えた(甲C75)。 カ被告市は、原告らから提出を要請され、医療事故調査報告書(脳神経外科作成分及びD医師補足追加分)を証拠として提出したが(乙A10、11)、医療安全推進室検討分の報告書を提出しなかった。 (6)本件転倒事故の経緯ア本件転倒事故以前の転倒歴 原告Aは、本件医療事故(令和2年1月22日)後、本件病院でナースステーションの眼前の病室で入院を継続していたが、以下のとおり、一人で動こうとしたが動けず床に座り込む事故(いわゆる転倒事故)が5回発生した。そのほか、転倒にまで至らなくても、ナースコールをするようにとの看護師の指示に反し、トイレの後、一人で立ち上がり、ベッドに戻ろうとするなどの単独行動が度々みられた。(乙A1〔診療 故)が5回発生した。そのほか、転倒にまで至らなくても、ナースコールをするようにとの看護師の指示に反し、トイレの後、一人で立ち上がり、ベッドに戻ろうとするなどの単独行動が度々みられた。(乙A1〔診療 経過記録p217、244、250、344、1690、1851〕、4)① 令和2年2月7日原告Aは、トイレの後、ナースコールをするよう看護師から言われたが、ナースコール後、看護師が訪室するまでの間に一人で立ち上がろうとして転倒し、床に座り込んでいた。 ② 同月11日原告Aは、ナースコールをせず一人でトイレに行ったが、ベッドに戻れず床に座り込んでいた。 本事案を受け、看護師は、トイレ時には転倒の危険性があるため、必ずナースコールをするよう改めて説明し、転倒むし(虫の形をした装置で、患者の衣類などに取り 付け、患者の体動により転倒むし胴体から頭部分が外れるとナースコールへ通知され る。乙A15)を使用しない代わりに、移動時を除き、ベッド両サイドの柵の使用を徹底することとし、足元の差し込み柵を追加した。 ③ 同月27日原告Aのトイレの最中に付き添っていた看護師は、他の患者からのトイレコールがあったため、離室する際、原告Aに対し、一人で立たず必ずナースコールをするよう 説明したが、原告Aが、トイレ後に一人でベッドに戻ろうとして転倒し、床に座り込んでいた。 本事案を受け、看護師は、トイレの最中にやむを得ず離室する際は、一人でベッドに戻ることのないよう、ベッドの柵を取り付けてからその場を離れることとした。 ④ 同年10月27日 原告Aは、本人の希望で車椅子に乗って日中を過ごしていたが、看護師が訪室した際、床に座り込んでいた。 ⑤ 同年11月26日原告Aは、ナース とした。 ④ 同年10月27日 原告Aは、本人の希望で車椅子に乗って日中を過ごしていたが、看護師が訪室した際、床に座り込んでいた。 ⑤ 同年11月26日原告Aは、ナースコールをせずに一人でトイレに行こうとして、差し込み柵と介助バーの隙間からベッドを降りて、床に座り込んでいた。 イ転倒・転落アセスメント本件病院は、同年10月27日、原告Aの転倒・転落アセスメントスコアが合計39点であり、転倒・転落の危険度Ⅲ(転倒・転落アセスメントスコアの合計20点以上。転倒・転落を良く起こす)と評価した(乙A7)。 ウ離床センサー付きベッドの導入 本件病院は、同年11月26日の転倒事故を受けて、原告Aがベッドから一人で降りること(転倒)を防止すべく、差し込み柵に加え、柵の隙間が狭い離床センサー付きベッド(起き上がり0秒でナースコールへの通知がいくもの)を導入した。 しかし、その後も、原告Aがナースコールをすることなくベッド柵と介助バーの隙間に座っていたり、トイレの後、立ち上がって移動したりする単独行動が繰り返され た(乙A1〔診療経過記録p1852、1905〕、4の4、13、14)。 エ危険行動の継続原告Aは、令和3年1月12日及び同月21日に、ナースコールをせずに一人でベッドから降りて立つことがあり、離床センサーが作動したため訪室した看護師により発見された。 原告Aには、同月12日頃から、精神的に不安定な言動がみられたことから、同月 14日から同月20日までエビリファイ、同月21日からリスパダール錠が処方された。しかし、原告Aには、内服薬調整中も、猜疑的な発言や辻褄の合わない言動、せん妄などが継続し、その後も本件転倒事故当日まで、ベッド柵から足を出しているなどの危 月21日からリスパダール錠が処方された。しかし、原告Aには、内服薬調整中も、猜疑的な発言や辻褄の合わない言動、せん妄などが継続し、その後も本件転倒事故当日まで、ベッド柵から足を出しているなどの危険行動やトイレの後の単独行動が毎日のように生じた。 (以上、乙A1〔診療経過記録p2105、2110、2121、2157、21 61、2165、2168、2172、2177、2180、2186〕)オ本件転倒事故の発生令和3年1月28日、原告Aは、午前中から、話がかみ合わず興奮しており、これまでと同様の危険行動やトイレの後の単独行動を繰り返していたところ、午後3時31分、35分、36分、38分、45分、47分、48分の計7回、離床センサーが 作動したが、訪室した看護師により、危険行動がないことが確認された。 午後3時50分頃、ナースセンター内にいた看護師が原告Aの室内を見たところ、原告Aが病室内トイレ前で入り口側に足を向けて長座位状態でいるところを発見し、原告Aがナースコールを押さずに単独で病室内のトイレに行こうとして、離床センサーが鳴らずに、本件転倒事故が発生したものと推測された。 原告Aは、本件転倒事故により右脛腓骨骨折、右前距腓靭帯損傷の傷害を負った。 (以上、乙A1〔診療経過記録p2197~2199、2203〕、4の5)カ本件病院の看護体制本件転倒事故発生当時の原告Aが入院する病棟では、入院患者が44名、このうち転倒転落の危険度Ⅱ(評価スコア合計10~19点、転倒・転落を起こしやすい)及 びⅢ(評価スコア合計20点以上、転倒・転落をよく起こす)の患者が合計34名い た。これに対し、看護スタッフは13名(ただし、うち1名は清潔ケアを担当するパート職員)しかおらず、原告Aを担当していた スコア合計20点以上、転倒・転落をよく起こす)の患者が合計34名い た。これに対し、看護スタッフは13名(ただし、うち1名は清潔ケアを担当するパート職員)しかおらず、原告Aを担当していた看護師は6名(4病室)の患者を担当しなければならないという状況であった。 キ本件転倒事故後の経過本件病院では、本件転倒事故後、離床センサーが反応しない場合に備えて転倒むし を追加で設置したが、その後も、装着した転倒むしが外れた状態で、一人でベッドから降りた転倒事故(本件転倒事故以前のものと同程度の事故)が発生した(乙A1〔診療経過記録p2417〕、2〔診療経過記録p293〕、4の6・8)。 (7)本件病院退院の経緯ア原告Aは、令和4年7月以降、精神的に不安定な状態が継続し、攻撃的な発言 や、本件病院の売店で購入したまゆそりで自身の手首を切りつけたり、原告Aの興奮状態に対応した看護師を叩いたりするなどの危険行動があった。なお、原告Aは、退院したい旨の発言を繰り返していた。 本件病院は、同年8月31日、原告Aの危険行動への対応に関する院内協議を行い(参加者は、病院長、副院長、事務局長、D医師等)、急性期医療を担う本件病院が行 うべき治療は終了しているため、退院(転院)を勧める方針を決定した。その中で、本件病院に長く入院していることが原告Aの精神状態に悪影響を与えているものと思われること、まずは精神状態の改善のための治療を勧めること、精神疾患の治療のための入院の必要性について精神科医に確認すること等が決定された。 イその後、実際には精神疾患のための入院(転院)の具体的な話は出ないまま、 原告Bと担当看護師の関係が悪化する中で、同年12月20日、原告らが転院の意向を固め、転院調整の結果、赤穂中央病院に転院する 後、実際には精神疾患のための入院(転院)の具体的な話は出ないまま、 原告Bと担当看護師の関係が悪化する中で、同年12月20日、原告らが転院の意向を固め、転院調整の結果、赤穂中央病院に転院することとなった。 ウ D医師は、別紙1のとおり、転院先病院への診療情報提供書を作成したところ、病院長は、D医師に対し、不必要な個人名や役職の記載、不適切と考えられる表現を修正するよう述べ、そのとおり修正された結果、別紙2のとおりとなった。 (以上、甲C21、22、乙A21、22、24) 2 争点1(原告らの各損害)について【原告Aの損害】(1)本件病院での治療関係費(別紙番号①)原告Aは、令和元年12月から令和4年1月までの本件病院での治療関係費(自己負担額)として、証拠(甲C5)に基づき、79万0662円を請求する。 まず、本件手術前の検査入院時(令和2年1月6日から同月8日まで)の治療関係費(3万1460円、乙A12)は、本件手術(本件医療事故)によりかかった費用ではないから、本件医療事故による損害とはいえない。 他方、本件手術に係る入院日(令和2年1月20日)から本件症状固定日(同年10月23日)までの治療関係費は本件医療事故による損害と認められる。 また、本件症状固定日(令和2年10月23日)以降の治療関係費について、前記認定事実によれば、原告Aに対しては、本件症状固定日以降も、本件医療事故による神経障害性疼痛等の症状に対する投薬治療やリハビリ等がされており、主治医であるD医師は、リハビリを中止した場合、症状が増悪する可能性が高いと診断したことが認められるから、本件症状固定日以降も原告Aに対するリハビリ等の必要性は高く、 主治医の判断に基づき継続された治療やリハビリであると認められる た場合、症状が増悪する可能性が高いと診断したことが認められるから、本件症状固定日以降も原告Aに対するリハビリ等の必要性は高く、 主治医の判断に基づき継続された治療やリハビリであると認められる。これらの事実を踏まえると、本件症状固定日以降の治療関係費についても、本件医療事故との相当因果関係があるというべきである。 よって、原告Aの請求(79万0662円)から本件手術前の検査入院時の治療関係費(3万1460円)を控除した75万9202円を損害と認める。 (2)本件症状固定日前日までの入院付添費(別紙番号②)原告Aは、本件手術日(令和2年1月22日)から本件症状固定日前日(令和2年10月22日)までの275日間につき、3日に1回は原告Bが付き添ったとして、92日分(×日額6500円)の入院付添費を請求する。 証拠(乙A1)及び弁論の全趣旨によれば、本件病院は完全看護で医師による付添 看護の指示が明確にあったとは認められない。しかし、① 原告Aには、馬尾神経を 切断損傷されたことにより、本件手術終了直後から神経損傷により右足が動かず、自立での起立・歩行は不可能であり、その後も腰部から両下肢にかけての激しい疼痛としびれや、膀胱直腸障害が生じており(前記認定事実)、極めて重篤な障害を負っていること、② 原告Aは思い詰めやすい性格であり自殺未遂をした経験があること(乙A1〔診療経過記録p101〕)、③ 本件医療事故の直後から、原告Aに前向きにリ ハビリに取り組んでもらえるよう、原告Bと本件病院の職員が協力し合う方針が確認され、定期的に面談を行っていること(乙A1〔診療経過記録p134〕)からすれば、本件医療事故を境に突如として重度の障害を負った原告Aを精神的に支え、さらなる状況の悪化を避けるべくリハビリを継 確認され、定期的に面談を行っていること(乙A1〔診療経過記録p134〕)からすれば、本件医療事故を境に突如として重度の障害を負った原告Aを精神的に支え、さらなる状況の悪化を避けるべくリハビリを継続させるため、原告Bが原告Aに付き添う必要性があり、本件病院も、原告Bの付添を許容・依頼していたものというべきであ る。 そして、証拠(甲C8、乙A1〔診療経過記録〕)及び弁論の全趣旨によれば、リハビリが毎日のように行われる中、原告Bは、本件症状固定日(令和2年10月23日)より前の令和2年8月末日までに請求の根拠である92日を超える日数、原告Aに付き添った事実が認められるから、日額6500円×92日分=59万8000円を損 害と認める。 (3)本件症状固定日前日までの入院雑費(別紙番号③)本件手術日(令和2年1月22日)から本件症状固定日前日(令和2年10月22日)までの入院期間(275日間)につき、入院雑費として、日額1500円×275日=41万2500円を損害と認める。 (4)休業損害(別紙番号④)証拠(乙A1〔診療経過記録p75〕)によれば、原告Aは、本件手術前から、原告B及びその夫と同居し、要介護4の認定を受け、ヘルパーによる入浴介助を受けており、在宅で仕事をする原告Bが家事や買い物をしていたことが認められるから、原告Aが一家の家事を担っていたとはいえず、休業損害は認められない。 (5)本件医療事故に係る入通院慰謝料(別紙番号⑤) 本件症状固定日までの入院期間や症状を考慮して、入通院慰謝料として298万5000円を相当と認める。 (6)本件転倒事故に係る慰謝料(別紙番号⑥)後記争点2において記載のとおり、本件転倒事故に係る損害賠償は認められない。 (7)後遺障害慰謝料(別 謝料として298万5000円を相当と認める。 (6)本件転倒事故に係る慰謝料(別紙番号⑥)後記争点2において記載のとおり、本件転倒事故に係る損害賠償は認められない。 (7)後遺障害慰謝料(別紙番号⑦) ア原告Aの主張本件医療事故により原告Aに別表第一1級1号に相当する後遺障害が残存したことは、当事者間に争いがないところ、原告Aは、慰謝料増額事由があると主張して、後遺障害慰謝料として4000万円を請求するので、以下検討する。 イ検討 (ア)①(被告Cの技量)について前記認定事実によれば、被告Cは、本件手術において、出血等により視認性の確保が十分ではないのに止血をこまめにしないままスチールバーによる骨切除を進め、本件医療事故を起こしたというのであり、証拠(乙A11)によれば、その手技は、経験のある医師において危険を感じさせるものであったと認められることからすると、 被告Cの本件医療事故における注意義務違反の程度は著しいといえる。この点、被告Cは、D医師が水をかけ過ぎたことやスチールバーの使用を指示したことも本件医療事故の原因であると主張するが、仮にそのような事実があるとしても、被告Cの執刀医としての原告Aに対する注意義務違反の程度を軽減する理由となるものではない。 また、前記認定事実によれば、本件病院の医療安全推進室や院内事故調査委員会に おいて、被告Cが本件病院に入職してから約9か月の間に手術に関与した11事例(本件医療事故を含む)が医療事故として検証の対象とされたことが認められる。脳神経外科の手術には合併症・偶発症のリスクもあることからすると、上記11事例があることのみをもって直ちに被告Cに本件手術の執刀をしてはならなかったほどの技量不足があったとまで認めることはできないが、上記11事例 術には合併症・偶発症のリスクもあることからすると、上記11事例があることのみをもって直ちに被告Cに本件手術の執刀をしてはならなかったほどの技量不足があったとまで認めることはできないが、上記11事例が医療安全の観点か ら検証すべき事例であったことからすると、被告Cの技量が稚拙であったことをうか がわせる事情とはいえ、被告Cの本件医療事故における注意義務違反の程度が著しいものであったことを裏付ける事情というべきである。 (イ)②(後遺障害の程度)について前記認定のとおり、原告Aには、馬尾神経を切断損傷されたことにより、本件症状固定日時点において、両肢関節の機能不全、重度の膀胱直腸障害とともに、神経障害 性疼痛の後遺障害が残ったのであり、神経性疼痛障害については、日により疼痛の程度に変化があるものの、著しい時には耐え難い疼痛となり、永続的に鎮痛剤の投薬が必要となるほどのものであることからすると、原告Aの後遺障害の程度は重大である上、算定困難な苦痛を伴うものといえる。 (ウ)③(本件手術前の説明)について 前記認定のとおり、原告Aが腰痛を訴えて受診し、カルテには「前屈しなければ何メートルも歩けない」との記載があることからすると、被告Cが、原告Aの間欠性跛行を疑い、脊髄造影検査(ミエログラフィー)の結果、本件手術の適応があると判断したことが誤りとはいえない。また、原告Aに残尿があったことからすると、腎機能がさらに悪化した場合は透析となる可能性があるとの限りでは、虚偽とまではいえな い。そうすると、以上を前提に、被告Cが原告らに対し、早く手術した方が良いと説明したことをもって、慰謝料増額事由と評価すべき虚偽の説明があったと認めることはできない。 原告らは、原告Aが「前屈しなければ何メートルも歩けない」とい 告Cが原告らに対し、早く手術した方が良いと説明したことをもって、慰謝料増額事由と評価すべき虚偽の説明があったと認めることはできない。 原告らは、原告Aが「前屈しなければ何メートルも歩けない」という状態ではなかったと主張するが、原告Aが腰痛を訴えていたことに争いはなく、その程度に関する 評価に争いがあるとしても、本件手術の適応があるとした判断が誤りとはいえないとの上記認定を左右するに足りるものではない。また、原告らは、被告Cが手術をしたくて原告らに虚偽の説明をした旨の主張をするが、これを認めるに足りる的確な証拠はない。 (エ)④(本件病院による監督、安全管理)について 前記認定のとおり、本件病院の臨床工学部技士長が令和2年2月3日にD医師に対 し、臨床工学部で介助業務を行う場合の問題点についての検討を申し入れたことが認められるが、本件医療事故より後の出来事である。また、原告らは、本件医療事故よりも前である令和元年12月から令和2年1月頃に、臨床工学技士らの総意として、D医師に対し、被告Cの問題(カテーテル操作が乱暴で稚拙であること)を指摘して被告Cの執刀する手術への参加を辞退する意向を文書により申し入れていた事実が あるとも主張し、地域情報誌(甲C14)を証拠として提出するが、申入れの文書自体は提出されておらず、令和2年2月3日時点での申入れでも言及されておらず(乙A18、19)、その信用性を直ちに肯定できない。仮にこの事実があったとしても、D医師への申出にとどまるのであり、いずれにせよ、本件病院による監督、安全管理として、被告Cに本件手術をさせるべきでなかったとまではいえない。 (オ)⑤(本件医療事故後の対応)について被告Cが本件医療事故後に原告らに対し馬尾神経を切断損傷したことを明確に 管理として、被告Cに本件手術をさせるべきでなかったとまではいえない。 (オ)⑤(本件医療事故後の対応)について被告Cが本件医療事故後に原告らに対し馬尾神経を切断損傷したことを明確に説明しなかったことについては、被告Cも争うところではない。また、本件病院は、令和2年4月、本件医療事故が医療過誤であると判断し、同年6月に原告ら家族に口頭で謝罪したほか、令和3年3月に原告Aに代理人弁護士を通じて、損害賠償をする意 向を通知しているが、被告Cが関与した医療事故11例についての調査を終え、記者会見を開いて一連の医療事故を謝罪したのは令和4年6月であることに加え、調査内容の開示を求める原告らの要望への対応にも時間を要したこと(当裁判所に顕著な事実)が認められ、以上の事実を踏まえれば、本件病院の一連の対応について、原告Aやその親族の立場・心情に十分に配慮し、本件医療事故を起こした医師及び病院とし て迅速に説明を尽くしたと評価するには不足があるというべきである。そして、弁論の全趣旨によれば、原告Aは、本件医療事故の被害を受けた患者という立場から被告市側のこれらの対応を受け止め、本件医療事故自体の精神的苦痛にも増して、さらに苦痛を受けたと認められるから、本件医療事故後のこれらの事情は、本件医療事故の慰謝料を検討する上でも相応に考慮すべきである。 原告らは、本件病院が強引に原告Aを精神病院に転院させようとして、D医師に虚 偽の診療情報提供書を書かせたことも、悪質な対応であったと主張するが、前記認定事実を踏まえれば、原告Aは、令和4年7月以降の時点で、急性期医療を必要とする状態ではなく、本件手術から3年以上、本件症状固定日から2年半以上が経過していたことも考慮すると、本件病院でしか治療を継続できないものとはいえ 告Aは、令和4年7月以降の時点で、急性期医療を必要とする状態ではなく、本件手術から3年以上、本件症状固定日から2年半以上が経過していたことも考慮すると、本件病院でしか治療を継続できないものとはいえず、慢性期病院や療養型病院への転院を勧めること自体に問題があるとはいえない。また、転院先 病院への診療情報提供書の修文において、原告ら側が退院を強く希望していると読めるよう不当な修正がされたと原告らが受け止めた点については、別紙1及び別紙2の記載全体を見ても、客観的な患者の病態や経過を端的に提供する書面の趣旨に照らし、不合理又は不適切であるとはいえない。なお、前記認定のとおり、原告A自身が退院を希望していた事実は認められるから、記載内容が虚偽であるとも認められない。加 えて、精神病院への転院については、具体的な検討・勧奨があったわけではない。よって、転院に至る経過に関し、本件医療事故の慰謝料を増額すべき被告らの対応の悪質性を認めることはできない。 そのほか、原告らは、被告市が、㋐立入検査を妨害した、㋑D医師に被告Cの主張に合わせた証言をするように偽証を教唆した、㋒原告らが要請した文書を証拠として 提出しなかったなどとして、本件訴訟や行政手続上の対応にも問題があると主張する。 しかし、㋐については、本件病院のガバナンス上の問題を指摘することができるとしても、本件医療事故と直接的な関係はなく、本件医療事故を隠蔽しようとしたとは認定できないから、本件医療事故の慰謝料を増額すべき事情には直ちに当たらない。㋑については、偽証を教唆したとされる医療課長は、これを否定しており(乙A23)、 本件医療事故による責任自体を被告市が認めていることも踏まえれば、医療課長の説明内容に不自然不合理な点はないこと、D医師も本件手術に関与しており、被告 課長は、これを否定しており(乙A23)、 本件医療事故による責任自体を被告市が認めていることも踏まえれば、医療課長の説明内容に不自然不合理な点はないこと、D医師も本件手術に関与しており、被告らと利害が対立する立場にあること、D医師が偽証を教唆されたと原告Bに説明した内容について、説明内容の真実性を裏付ける客観証拠がないことも総合すると、偽証教唆の事実を認定することはできない。㋒については、被告市は、医療安全推進室検討分 の医療事故調査報告書を提出しなかった理由として、同文書が純然たる内部文書(い わゆるメモ)であるため、対外的な文書としては存在しないから提出しなかったと主張するところ、そのような説明が令和4年当初にされなかった点はさておき、同主張を排斥できず、提出しなかった理由が、本件医療事故を隠蔽しようとしたとか、本件医療事故を契機に苦しむ原告らをさらに苦しめようとして行ったなどの悪質性を認めることはできない。よって、本件訴訟や行政手続上の対応に関し、本件医療事故の 慰謝料を増額すべき被告らの対応の悪質性を認めることはできない。 ウ加重障害の主張について被告Cは、原告Aが本件手術前に右大腿骨を骨折して人工骨頭置換術を受けていたことをもって既存障害と評価すべき旨主張する。しかし、原告Aが人工骨頭置換により現実に可動域制限を受けていたことを認めるに足りる証拠はなく、上記主張を採用 することはできない。 エ慰謝料減額事由の主張について被告Cは、原告らが作成に関与したウェブ漫画により社会的制裁を受けていると主張する。しかし、本件医療事故により原告らが受けた損害を検討するにおいて関連がある事実とみることはできないのであり、上記主張を採用することはできない。 オ小括以上を踏まえ、原告Aの 主張する。しかし、本件医療事故により原告らが受けた損害を検討するにおいて関連がある事実とみることはできないのであり、上記主張を採用することはできない。 オ小括以上を踏まえ、原告Aの後遺障害の内容・程度に加え、本件医療事故における被告Cの過失の重大性、被告市の事後の一連の対応における不足など、本件に表れた一切の事情を総合すると、原告Aの後遺障害慰謝料としては、3300万円を認めるのが相当である。 (8)後遺障害逸失利益(別紙番号⑧)前記(4)と同様、原告Aが一家の家事を担っていたとはいえないため、逸失利益の損害は認められない。 (9)本件病院退院後の治療費・施設入所費用(別紙番号⑨)ア原告Aは、本件病院退院後に要した治療費・施設入所費用(実費)として、以 下の各損害を主張する。 ① 赤穂中央病院に入院した際の治療関係費 18万3066円② 自宅介護開始前に特定養護老人ホームに短期入所した際の介護関係費(介護保険自己負担額及び居住費を指す。以下同じ。) 6万0883円③ 自宅介護開始後(令和6年3月~7月)に特定養護老人ホームに短期入所した際の介護関係費 43万5707円 ④ 自宅介護開始後(令和6年3月~7月)に通所介護を利用した際の介護関係費(ただし、介護保険自己負担額のみ。) 5226円⑤ 特別養護老人ホームに正式入所後、令和6年10月31日までの介護関係費34万6636円イこれに対し、被告市は、本件医療事故との相当因果関係がない旨主張するが、 前記(1)と同様に、本件症状固定日よりも後の治療関係費や介護関係費ではあるが、原告Aが負った後遺障害の内容からすれば、リハビリや常時介護を要する状態であり、病院に入院又は介護施設に入所してリハビリや常時介護を 同様に、本件症状固定日よりも後の治療関係費や介護関係費ではあるが、原告Aが負った後遺障害の内容からすれば、リハビリや常時介護を要する状態であり、病院に入院又は介護施設に入所してリハビリや常時介護を受けることが必要であったといえるから、本件医療事故との相当因果関係が認められる。 ウそして、証拠(甲C25、26、97~100)及び弁論の全趣旨によれば、 原告Aは、①について18万0066円を、②~⑤についていずれも上記請求額を治療関係費等として支払ったことが認められるから、合計102万8518円を損害と認める。なお、①について、原告Aが請求する18万3066円のうち上記認定額を超える部分についてはこれを支払ったと認めるに足りる証拠はない。また、⑤について、居住費を含むところ、原告Aは、本件医療事故以前及び後記(15)の自宅介護期 間中、原告Bの自宅で同居していたから、本件医療事故がなければ別途居住費を支出する必要はなかったのであり、居住費と本件医療事故との相当因果関係が認められる。 (10)装具費用(別紙番号⑩)証拠(甲C27)及び弁論の全趣旨によれば、本損害は、原告Aが前記(9)の①の赤穂中央病院入院期間中、両下腿原発性リンパ浮腫に対し、医師より両下肢を常時 圧迫する必要があるとの装着指示を受けて購入した装具費用2万2000円である。 これは、本件医療事故により両足が動かなくなったことに伴う損害であると認められるから、本件医療事故との相当因果関係が認められる。 (11)症状固定日以降の入院入所付添費(別紙番号⑪)原告Aは、本件症状固定日(令和2年10月23日)から自宅介護開始日(令和5年8月1日)までの1013日間につき、3日に1回は原告B等の家族が付き添った として、337日分(×日額650 )原告Aは、本件症状固定日(令和2年10月23日)から自宅介護開始日(令和5年8月1日)までの1013日間につき、3日に1回は原告B等の家族が付き添った として、337日分(×日額6500円)の入院付添費を請求する。 証拠(甲C38の1、39、40、45~65、67、90の2p10、乙A1、2)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ① 原告Aは、前記(2)で認定説示した状況に加え、本件症状固定日以降の本件病院入院期間中も、重篤な後遺障害を負い、リハビリや常時介護を要した上、強い痛 みやしびれに苦しみ、精神的に不安定な状態が続いて転倒リスクのある危険行動や単独行動を起こしていたため、家族の付添いによる精神的な支えが必要な状態であったところ、令和4年6月頃までは、原告Bがほぼ毎日のように面会し、相当程度頻繁に原告Aに付き添った。 ② 同年7月頃以降は、原告Aが本件病院に入院したままで本件訴訟の審理が進む 中、原告Aの精神状態がより不安定になり、攻撃的な発言や、本件病院の売店で購入したまゆそりで自身の手首を切りつけたり、原告Aの興奮状態に対応した看護師を叩いたりするなど、本件病院の看護師等の説明・説得のみでは制御しきれない状態が続くものの、原告Bの体調等の関係で面会・付添がほとんどできなかった。 ③ その後、対立関係にある本件病院を退院する方向に進む中で、原告Bの面会・ 付添の頻度等は不明である上、転院した後、原告Aの精神状態は良くなる方向であった。 ①について、本件症状固定日よりも前ではあるが、証拠(甲C8)及び弁論の全趣旨によれば、原告Bは令和2年8月に月10回(3日に1回の頻度で)原告Aに付き添っており、令和4年6月頃までは、付添の頻度が減ったことをうかがわせる事情が ないことか (甲C8)及び弁論の全趣旨によれば、原告Bは令和2年8月に月10回(3日に1回の頻度で)原告Aに付き添っており、令和4年6月頃までは、付添の頻度が減ったことをうかがわせる事情が ないことからすれば、本件症状固定日(令和2年10月23日)から令和4年6月末 日までの616日間は、その約3分の1である205日分の付添費を相当と認める。 他方、同年7月以降の②及び③については、従前の付添の経過を踏まえても、一般的な面会や荷物の授受等を超えて、原告B等による付添(原告Aの精神的な支えとなったこと)を認めることはできない。 よって、日額6500円×205日分=133万2500円を損害と認める。 (12)症状固定日以降の入院介護雑費(別紙番号⑫)原告Aは、① 本件症状固定日から自宅介護開始までの入院雑費及び入所介護雑費(令和2年10月23日から令和5年7月31日までの1012日間)、② 自宅介護に係る雑費(同年8月1日から令和6年2月29日までの213日間)、③ 短期入所期間中の介護雑費(同年3月1日から同年7月15日までの137日間)として、 合計1362日間のうち、1361日分(×日額1500円)を請求する。 ①のうち、本件症状固定日から赤穂中央病院退院日(令和5年7月12日)まで(993日間)の入院雑費については、原告Aの後遺障害の内容に加え、治療やリハビリが実施されたこと等を考慮すると、本件医療事故と相当因果関係のある損害というべきであるから、日額1500円×993日間=148万9500円を損害と認める。 他方、同日以降の19日間の特別養護老人ホーム短期入所期間中の介護雑費については、証拠(甲C26)及び弁論の全趣旨によれば、治療やリハビリがされた様子はなく、また、おむつ代は介護保険の範囲に含まれてい 方、同日以降の19日間の特別養護老人ホーム短期入所期間中の介護雑費については、証拠(甲C26)及び弁論の全趣旨によれば、治療やリハビリがされた様子はなく、また、おむつ代は介護保険の範囲に含まれているとみられることを踏まえれば、別途、日常生活品として必要なものを超えた雑費の支出があったと認められない。 ②について、被告Cは、自宅介護雑費は後記(15)の介護費用(日額8000円) に含まれる旨主張する。この点、介護費用とは別の損害として介護雑費を認めるには、具体的な支出の内容を踏まえるべきであるところ、証拠(甲C25、30~33、101)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aの自宅介護開始後、介護用品のレンタル料や、食事・排泄等の介助に要する消耗品購入費を支出しており、令和5年8月から12月の5か月間の月平均は約9000円であると認められ、その額も不相当に多額で はない。これらの物品のレンタル及び購入は、自宅介護を継続する限り、反復的に必 要となるものであるから、月額9000円×7か月=6万3000円を損害と認める(他方、これを超えた介護雑費の支出を認めるに足りる証拠はない。)。 ③のうち、特別養護老人ホーム短期入所期間中については、①の短期入所期間と同様に、日常生活品として必要なものを超えた雑費の支出を認めることができないが、証拠(甲C97)より、7日間の自宅介護(通所介護との併用)が認められるから、 月額9000円×7日間÷30=2100円に限り、介護雑費を認める。 よって、本件症状固定日以降の入院介護雑費として、148万9500円+6万3000円+2100円=合計155万4600円を損害と認める。 (13)入浴時用車いす購入費(別紙番号⑬)証拠(甲C28)及び弁論の全趣旨によれば、本損害は、原告Aが自宅 8万9500円+6万3000円+2100円=合計155万4600円を損害と認める。 (13)入浴時用車いす購入費(別紙番号⑬)証拠(甲C28)及び弁論の全趣旨によれば、本損害は、原告Aが自宅介護を開始 するにあたり購入した入浴時用車いす購入費7100円であるところ、本件医療事故により両足が動かなくなったことに伴う損害であると認められるから、本件医療事故との相当因果関係が認められる。 (14)自家用車改造費(別紙番号⑭)証拠(甲C29)及び弁論の全趣旨によれば、本損害は、原告Aが自宅介護を開始 するにあたり要した自家用車改造費47万円であるところ、前記(13)と同様、本件医療事故との相当因果関係が認められる。 (15)自宅介護費用(別紙番号⑮)証拠(甲C67)及び弁論の全趣旨によれば、原告Aは、令和5年8月1日から令和6年2月29日までの213日間、原告Bとその夫と自宅で暮らし、常時介護を要 したことが認められるから、原告Aの後遺障害の内容や原告Bらの自宅介護の負担等を考慮して、近親者介護として、日額8000円を認めるのが相当であり、実費として、日額8000円×213日=170万4000円を損害と認める。 (16)将来介護費用(別紙番号⑯)ア口頭弁論終結日までについて 本損害は、令和6年11月1日(特別養護老人ホームに正式入所した日より後の日) からの介護費用であるところ、弁論の全趣旨によれば、同日から口頭弁論終結日(令和7年2月12日)まで、原告Aは前記(9)の⑤の期間に要した介護関係費と同額の支出を要しており、その金額は、証拠(甲C98)によれば、日額3210円(介護保険自己負担額1144円、居住費2066円)であると認められる。そこで、口頭弁論終結までの104日間分の介護 費と同額の支出を要しており、その金額は、証拠(甲C98)によれば、日額3210円(介護保険自己負担額1144円、居住費2066円)であると認められる。そこで、口頭弁論終結までの104日間分の介護費用として、日額3210円×104日=33 万3840円を損害と認める。 イ口頭弁論終結以降について証拠(甲C98)によれば、介護保険給付分を含めた、前記(9)の⑤の期間に要した介護関係費は、日額約1万3000円を下回らないものと認められる。 介護保険給付は、要介護状態となった者に対して必要な保健医療サービス及び福祉 サービスに係る給付を行うことで国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的としたものであり(介護保険法1条)、保険給付を受けるべき者が、第三者から損害賠償を受けたときは、市町村は、その価額の限度において、保険給付を行う責を免れるとされているから(同法21条2項)、損害賠償とは異なる理念に基づくものである。また、現状の介護保険給付が今後も維持されることが確実であるとはいえな い。 原告Aの後遺障害の内容や原告Bらの自宅介護の負担等に鑑みれば、今後も、24時間体制の職業介護を要するところ、その費用としては、上記の介護保険制度の趣旨からすれば、前記(9)の⑤の期間に要した介護関係費のうち自己負担額に限定すべきものとは認められず、引き続き、同期間と同様、日額約1万3000円程度の金額 を要するものと認められる。なお、日額約1万3000円という金額は、原告Aの後遺障害の内容に鑑みれば、不当に高額とも認められない。 よって、口頭弁論終結以降の将来介護費用として、原告Aの本件症状固定時(75歳)の平均余命16年に対応するライプニッツ係数から、口頭弁論終結までの約4年に対応するライプニッツ係数を差し引いて、中 よって、口頭弁論終結以降の将来介護費用として、原告Aの本件症状固定時(75歳)の平均余命16年に対応するライプニッツ係数から、口頭弁論終結までの約4年に対応するライプニッツ係数を差し引いて、中間利息を控除すると、日額1万300 0円×365日×(10.8378-3.5460)=3459万9591円を損害 と認める。 ウまとめ以上によれば、将来介護費用としては、33万3840円+3459万9591円=3493万3431円を損害と認める。 (17)小計 7880万6851円 (18)弁護士費用(別紙番号⑰)訴訟の難易及び審理の経過等に照らし、788万円(前記(17)の約10%相当)を損害と認める。 (19)合計((17)+(18))よって、被告らは、原告Aに対し、不法行為(又は使用者責任)に基づき、866 8万6851円の賠償責任(連帯債務)を負う(なお、被告市は、同額につき、債務不履行責任も負う。)。 【原告Bの損害】(1)近親者慰謝料(別紙番号⑱)被告らは、原告Bの固有の慰謝料請求権の発生を争うが、前記認定のとおり、原告 Aが本件医療事故により別表第一1級1号に相当する後遺障害(神経損傷)を負い、両足が動かず、自立での起立・歩行は不可能であり、腰部から両下肢にかけての激しい疼痛としびれや、膀胱直腸障害を生じていることからすれば、原告Bは、母である原告Aの生命が侵害された場合に比肩すべき精神的苦痛を受けたと認めることができる。 そして、前記1(7)で説示・判断した本件事案の内容を踏まえると、原告B固有の慰謝料としては、200万円を相当と認める。 (2)弁護士費用(別紙番号⑲)訴訟の難易及び審理の経過等に照らし、近 そして、前記1(7)で説示・判断した本件事案の内容を踏まえると、原告B固有の慰謝料としては、200万円を相当と認める。 (2)弁護士費用(別紙番号⑲)訴訟の難易及び審理の経過等に照らし、近親者慰謝料の10%である20万円を損害と認める。 (3)合計((1)+(2)) よって、被告らは、原告Bに対し、不法行為(又は使用者責任)に基づき、220万円の賠償責任(連帯債務)を負う。 3 争点2(本件転倒事故についての被告市の使用者責任又は債務不履行責任の有無)について原告Aは、被告市の被用者である本件病院の看護師等につき、原告Aの不穏の状態 を鎮静化する措置を取っていないにもかかわらず、危険行動がある程度落ち着くまで付き添わなかった過失がある旨主張する。 前記認定事実によれば、たしかに、本件転倒事故当日の午前中は、それ以前の数日と比べても、危険行動や単独行動を頻繁に繰り返していたが、本件転倒事故直前に離床センサーが立て続けに鳴った午後3時31分以降には、訪室した看護師により、い ずれも危険行動がないことが確認されており、最後に離床センサーが鳴った午後3時48分の時点までに、差し込み柵を外そうとしているとか、柵から足を出しているなど、訪室した看護師が付き添い続けて原告Aの言動を観察することを要するような危険行動が現に生じていたと認めるに足りる証拠はない。 そうすると、原告Aの精神状態や、離床センサーが立て続けに鳴っていたこと(原 告Aが、センサーの鳴った各時点で、起き上がろうとし、又は、足元の柵の隙間の方向へと移動しようとする動作等をしていた可能性があること)を踏まえても、その最後の時点において、上記のとおりの危険行動が起こらないか観察するために付添を継続しなければならない客観的な状況に 隙間の方向へと移動しようとする動作等をしていた可能性があること)を踏まえても、その最後の時点において、上記のとおりの危険行動が起こらないか観察するために付添を継続しなければならない客観的な状況にあったとはいえない。なお、本件転倒事故の際、離床センサーが鳴らなかったことについては、その原因が不明であり、例えば、看護 師が故意又は過失によりセンサーを切ったなどの理由で、不具合や故障を看護師が認識できる状況にあったとも断定できない。そうすると、最後に離床センサーが鳴った午後3時48分の時点において、看護師が、離床センサーが次の危険行動のタイミングには鳴らない可能性を考慮した上で、付添観察することを検討しなければならない状況であったとも認定することはできない。よって、離床センサーが鳴らなかったこ と自体が、付添観察義務を肯定する方向に傾く事情とはならない。 以上のとおり、本件転倒事故当時、本件病院の看護師等が原告Aに付き添うべき義務があったとはいえないから、被告市に対する請求(使用者責任又は債務不履行責任)は認められず、原告Aの慰謝料の損害は認められない。 第4 結論以上によれば、原告らの請求は、① 原告Aの請求のうち、被告らに対して866 8万6851円及びこれに対する不法行為の日である令和2年1月22日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を認める限度で、② 原告Bの請求のうち、被告らに対して220万円及び遅延損害金(始期と利率の根拠は①と同じ。)の支払を認める限度で理由があり、原告らのその余の請求は理由がない。 よって、原告らの請求は、主文掲記の限度で認容し、その余はいずれも棄却することとし、被告Cに係る仮執行免脱宣言については、相 を認める限度で理由があり、原告らのその余の請求は理由がない。 よって、原告らの請求は、主文掲記の限度で認容し、その余はいずれも棄却することとし、被告Cに係る仮執行免脱宣言については、相当ではないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所姫路支部民事部 裁判長裁判官 池上尚子 裁判官 土岐あすか 裁判官髙山慎は、填補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 池上尚子 別紙訴訟費用目録 1 原告Aに生じた費用 ⑴ 原告Aが5分の2を負担⑵ 被告らが5分の3を連帯負担 2 原告Bに生じた費用 ⑴ 原告Bが5分の3を負担⑵ 被告らが5分の2を連帯負担 3 被告市に生じた費用 ⑴ 原告Aが50分の19を負担⑵ 原告Bが50分の1を負担⑶ 被告市が50分の30を負担 4 被告Cに生じた費用 ⑴ 原告Aが50分の19を負担⑵ 原告Bが50分の1を負担⑶ 被告Cが50分の30を負担以上 (別紙1及び2は省略) ⑵ 原告Bが50分の1を負担⑶ 被告Cが50分の30を負担以上 (別紙1及び2は省略)
▼ クリックして全文を表示