主文 被告人は無罪。 理由 第1 本件公訴事実(訴因変更後のもの)「被告人は、港湾運送事業等を営むA株式会社の従業員であり、名古屋市c区de丁目f番所在のB岸壁に接岸中の貨物船Cの甲板上において、船内荷役にやく作業主任者として、前記C設置のクレーンを使用し、同船左舷側に停泊中の汽船D船倉に積載されたスチールコイルを、前記Cの船倉に移し入れる荷揚げ作業の指揮監督業務に従事していたものであるが、令和2年6月25日午前11時17分頃、前記クレーンを使用して、前記荷揚げ作業を行うに当たり、前記D船倉に積載されたスチールコイル2個(合計約15.585トン、以下「本件コイル」という。)をワイヤーロープでつり上げ、同船船倉内の床面上に仮置きする際、同仮置きの作業は、つり上げ時の荷重の影響や海面の影響により生じる床面の傾斜等により、本件コイルが予想外の動きをするおそれがあるのはもとより、本件コイルを床面上に固定するためには、同船船倉内にいた作業員らにおいて、本件コイルが床面に接地する前までに、可能な限り固定する場所に近付いて「矢」と呼ばれる敷板を床面と本件コイルの間の適切な位置に投げ入れるなどの作業をする必要があり、直前に本件コイルを仮置きしようとした際には、前記敷板の位置が適切でなかったことなどにより、本件コイルが転がって本件コイルの間に隙間が生じるなどして2回にわたって仮置きに失敗していたため、同作業員らが、前記敷板の位置を調整して確実に本件コイルを固定させようとするなどして不用意に本件コイルに近付いてこれに圧迫されたり挟まれたりするなどの事故が発生するおそれが高まっていたのであるから、改めて仮置きをやり直すに当たっては、同作業員らの立ち位置を確実に うとするなどして不用意に本件コイルに近付いてこれに圧迫されたり挟まれたりするなどの事故が発生するおそれが高まっていたのであるから、改めて仮置きをやり直すに当たっては、同作業員らの立ち位置を確実に確認し、同人らに対し、本件コイルから退避してこれに近付かないように指示し、同人らがかかる指示 に従って退避したことを確認した上で、前記クレーンの運転士に前記クレーンを使用して本件コイルをつり上げさせる注意義務があったのに、これを怠り、同作業員らの立ち位置を確認せず、同人らに対し、本件コイルから退避して本件コイルに近付かないように指示せず、同人らがかかる指示に従って退避したことも確認しないまま前記クレーンの運転士に前記クレーンを使用して本件コイル2個をつり上げさせた過失により、本件コイル付近で荷役作業をしていたE(当時21歳)が本件コイル付近に近付き、同人を本件コイル間に挟圧させ、よって、同人に頭蓋骨骨折等の傷害を負わせ、同年9月8日午後3時13分頃、同市g区hi丁目j番地所在のF病院において、同人を前記傷害に基づく重症頭部外傷により死亡させたものである。」第2 争点弁護人は、訴因変更後の本件起訴状記載の公訴事実について、E(以下「被害者」という。)がスチールコイルの吊り上げの際に退避の指示をされていたにも関わらず、退避していた位置から吊り上がっていくスチールコイルに自ら近付いたことにより起こったものであり、被告人には結果の予見可能性がなかった、仮に予見可能性があったとしても、被告人は自ら及び他の作業員を介して被害者に退避及び接近禁止の指示をしていたのであり、結果回避義務を尽くしていたから、被告人には過失がなく、被告人は無罪であると主張し、被告人もこれに沿う主張をするので、以下、検討する。 第3 前提となる事実(後掲 接近禁止の指示をしていたのであり、結果回避義務を尽くしていたから、被告人には過失がなく、被告人は無罪であると主張し、被告人もこれに沿う主張をするので、以下、検討する。 第3 前提となる事実(後掲各証拠によると、次の各事実が認定できる。) 1 被告人は、令和2年6月25日(以下「本件当日」という。)、港湾運送関連事業や貨物運送取扱事業等を営むA株式会社(以下「本件会社」という。)の従業員として働いていた。被告人は、本件当日、船舶に荷を積み、船舶から荷を下ろし、又は船舶において荷を移動させる作業をするに当たり、労働災害を防止するために配置される船内荷役作業主任者の資格を有していた。被害者は、玉掛技能者、クレーン運転士等の資格を取得し、平成3 0年4月に本件会社に入社し、荷役作業員として働いていた。(甲11、12、14、18、乙2、3、弁2、3) 2 本件当日、B岸壁に大型の貨物船Cが接岸されていた。Cの左舷側には、小型の貨物船である汽船Dが停泊していた。被告人、被害者及び他の荷役作業員らは、本件当日、Cに設置されたクレーンを用いてD船倉に積載されていた合計42個のスチールコイル(以下「コイル」という。)をC船倉に移し入れる作業を行う予定であった。ここでいうコイルとは、鋼板を薄く延ばしてロール状に巻いたものであり、中心が空洞になった円筒形をしているものである。(甲1ないし5、11、13ないし16、乙2、3) 3 本件当日午前8時10分頃、荷役作業開始前の打合せにおいて、フォアマンと呼ばれる作業全体の進捗を管理する者等が、被害者を含む荷役作業員に対し、作業中にコイルが転がる可能性があるから、むやみに近付かないようにすることなどの説明をした。(甲13ないし15、G証人12頁等、被告人7頁等) 4 本件当日、荷役作業を行う際の 荷役作業員に対し、作業中にコイルが転がる可能性があるから、むやみに近付かないようにすることなどの説明をした。(甲13ないし15、G証人12頁等、被告人7頁等) 4 本件当日、荷役作業を行う際の配置は次のとおりであった。被告人は、船内荷役作業主任者の資格を有する作業指揮者として、C左舷甲板上において、Dを見下ろす位置に立ち、クレーン運転士、玉掛作業員(クレーンの先についているスリングと呼ばれるワイヤーの集合体を重量物に取り付ける玉掛作業に従事する者)及び玉掛作業員に指示を出す玉掛責任者に対し、荷役作業の指揮をしていた。D船倉には、玉掛責任者としてG、玉掛作業員としてH、I及び被害者が配置されていた(以下、これら4名の玉掛作業員を併せて「本件作業員」という。)。被告人は、Gとの間で、無線による連絡が可能であったほか、本件作業員に対して直接声をかけることが可能であった。Cに設置されたクレーン内には、クレーン運転士としてJが配置されていた。Jがいたクレーン操縦室からは、作業現場であるD船倉の一部を直接目視することはできないため、同人は無線により作業指揮者である被告人の 指示を聞きながらクレーンの操縦を行っていた。G及びHは、コイルの荷役作業の経験が複数回あったが、被害者及びIは、本件当日までそのような経験がなかった。(甲1ないし5、11ないし16、24、25、27、乙2、3、G証人2頁等、H証人21頁等、被告人23頁等) 5 荷役作業開始直前から荷役作業開始後までの間、被告人、G及びHは、複数回にわたって、被害者やIに対し、スリングをコイルに掛けたら、あるいはコイルの吊り上げの際にはコイルから離れること、仮置きの際には、コイルが床面に接地したら、床面とコイルとの間に矢を滑り入れてコイルを固定する必要がある場合があることなど をコイルに掛けたら、あるいはコイルの吊り上げの際にはコイルから離れること、仮置きの際には、コイルが床面に接地したら、床面とコイルとの間に矢を滑り入れてコイルを固定する必要がある場合があることなどの説明をした。(甲15、16、24、25、弁4、G証人14頁等、H証人10頁等、被告人8頁等) 6 荷役作業は本件当日午前9時頃に開始された。D船倉には、合計42個のコイルが8列に並べて置かれていた。被告人の指揮の下、これらのコイルは、順次、C船倉に移し入れられ、午前11時頃までには、D上に残されたコイルは合計8個になっており、別紙(省略)のとおり、その配置は船首側から数えて4列目(ただし、ここでいう4列目とは当初8列に並べて置かれたうちの4列目という表現であり、残り8個となった段階では、コイルは4列目、5列目、6列目にしか置かれておらず、4列目が最も船首側に当たる。)の右舷側に1個、5列目の右舷側に1個、6列目に6個(上下2段であり、上段に2個、下段に4個)であった。被告人は、午前11時10分頃、6列目の上段にあったコイル2個(左舷側に外径1.02メートル、幅1メートル、総重量6.895トンのもの(以下、これを「aコイル」という。)、右舷側に外径1.21メートル、幅1.2メートル、総重量8.69トンのもの(以下、これを「bコイル」という。)。以下、a、b両コイルを併せて「本件両コイル」という。)よりも先に、下段にあったコイルをC船倉に移し入れるため、上段の本件両コイルをD船倉内で移動させ、4列目の左舷側に仮置きすることとし、本件作業員に対し、その旨伝えた。なお、 ここでいう4列目と5列目には一定程度の空間(もう1列入りそうな程度に空いている。)があり、ここでいう4列目は素直に見れば3列目に当たるようにも思われるが、そうであっ 旨伝えた。なお、 ここでいう4列目と5列目には一定程度の空間(もう1列入りそうな程度に空いている。)があり、ここでいう4列目は素直に見れば3列目に当たるようにも思われるが、そうであっても判断には影響しないので、4列目と表現する。(甲1ないし7、13ないし16、25、乙2、3、被告人32、54頁等) 7 被告人の指示に基づき、次のとおり1回目の仮置きがなされた。本件作業員が本件両コイルにスリングを通した後、ワイヤーが緩んだ状態からクレーンでワイヤーを巻き上げ、ワイヤーが緊張する地切りの時点(30センチメートルほど吊り上げて、状況を確認する時点)で巻き上げをいったん停止し、緊張した状態にあるワイヤーを再び巻き上げて本件両コイルを吊り上げ、仮置き場所とした4列目の船首側の左舷側へ移動し、床面近くまで巻き下げた。ところが、Dが右舷側を下に傾いていたため、床面に接地した直後、本件両コイルが右舷側に30センチメートルほど転がり、このまま巻き下げを続ければ、さらに右舷側に転がってしまうことから、巻き下げを停止した。そのため、後述の矢を入れる作業に着手する前に仮置きがやり直されることになった。(甲1ないし6、13、15、16、乙2、3、G証人19頁等、被告人11頁等) 8 被告人の指示に基づき、次のとおり2回目の仮置きがなされた。緊張した状態にあるワイヤーを再び巻き上げ、本件両コイルを数十センチメートル吊り上げ、1回目の仮置きよりも左舷側の壁に近い位置まで移動し、床面に接地する程度まで巻き下げた。ところが、Dが右舷側を下に傾いていたことから、aコイルが先に床面に接地し、bコイルがわずかに(5ないし15センチメートル程度)浮いている状態で巻き下げを停止した。そこで、bコイルを床面に固定し転がらないようにするため、HとIが約1メートル ら、aコイルが先に床面に接地し、bコイルがわずかに(5ないし15センチメートル程度)浮いている状態で巻き下げを停止した。そこで、bコイルを床面に固定し転がらないようにするため、HとIが約1メートルの距離に近づいて「矢」と呼ばれる木製の輪止め(様々な大きさのものがあるが、代表的なものとして三角形で高さ18センチメートル、横25センチメート ル、幅11センチメートルのものがあり、他の物もこれと大きく変わらない。)をbコイルの右舷側で、かつ、bコイルが右舷側に転がっても安全なように、bコイルが転がる延長線上より船首側に外れた地点から、bコイルと床面との間を目掛けて滑らせて入れた。巻き下げを続けると、bコイルが矢の上に乗ってしまい、右舷側に60センチメートルほど転がったので、本件両コイルの間が最も近い部分で60センチメートルほどの隙間が空いた状態でクレーンの巻き下げを停止した。ワイヤーは緊張した状態にあったが、ここで巻き下げを続けると、b コイルがさらに右舷側に転がってしまうため、もう一度仮置きをやり直すことになった。(甲1ないし6、13、15、16、乙2、3、G証人20、33、47頁等、H証人16、22、35頁等、被告人12、35頁等) 9 被告人は、本件当日午前11時17分頃、Jに対し、本件両コイルを吊り上げるよう指示し、これに従って、Jは吊り上げ作業を行なった(3回目の仮置きであり、以下、このうち吊り上げの部分を「本件吊り上げ」という。)。この際、別紙(省略)のとおり、本件両コイルの船首側の左舷側にH、右舷側にI、本件両コイルの船尾側の左舷側に被害者、右舷側にGがいた。被告人は、本件吊り上げを開始する直前に、本件作業員に対し「もう一度巻く」との声をかけ、Hは他の本件作業員に「どけよ」との声をかけた。 Gは、他の本件作業員 船尾側の左舷側に被害者、右舷側にGがいた。被告人は、本件吊り上げを開始する直前に、本件作業員に対し「もう一度巻く」との声をかけ、Hは他の本件作業員に「どけよ」との声をかけた。 Gは、他の本件作業員が本件両コイルから離れた位置にいること、とりわけ被害者は約2メートル離れた位置にいることを確認し、被告人に対し吊り上げてもよいとの合図をした。被告人は、その合図を受けて、Jに対し、本件吊り上げを指示した。本件吊り上げの開始直後、被害者が腰を屈めた状態で本件両コイルに近寄っていき、本件両コイルの間(コイル船尾側の端から見て船首側へ30ないし40センチメートルくらい入ったあたり)に挟まれ、頭蓋骨骨折、脳挫傷等の傷害を負った。この際、本件両コイルは、床面から50ないし60センチメートルくらいの高さにあり、被害者は前傾姿勢をし ており、コイルの下端部から船尾側に出ている被害者の足が見える状態であった。また、コイルは、吊り上げによる上下の動きはあったが、それ以外に船首側や船尾側に動くことはなかった。被害者は、令和2年9月8日午後3時13分頃、上記傷害に基づく重症頭部外傷により死亡した。(甲1ないし5、9、10、13ないし17、25、乙2、弁4、G証人24、42、52頁等、H証人19、29、37頁等、被告人9、16、56、66頁等)第4 争点に対する判断(結果予見可能性について) 1 被告人及び弁護人は、結果予見可能性を争っているが、結果予見可能性がなければ、結果予見義務もないことを前提としている。そして、結果予見義務とは、業務上過失致死罪が成立するための要件としての注意義務違反を基礎付けるものである。そうすると、結果予見義務を課すためには、抽象的な結果発生の予見可能性があるかを判断するのではなく、具体的な結果発生の予見可能性がなければ するための要件としての注意義務違反を基礎付けるものである。そうすると、結果予見義務を課すためには、抽象的な結果発生の予見可能性があるかを判断するのではなく、具体的な結果発生の予見可能性がなければならないと考えるべきである。これを本件についてみると、被害者が死亡するという抽象的な結果発生の予見可能性を問題にするのではなく、本件吊り上げの際に被害者が本件両コイルの間に自ら近寄っていき、本件両コイルに頭部を挟まれて死亡するという具体的な結果発生の予見可能性の有無を検討すべきことになる。また、業務上過失致死罪が成立するための要件としての注意義務違反を基礎付ける点に着目すると、結果発生の予見がごくわずかでも可能であれば予見可能性が認められると考えるべきではなく、一般人(ただし、その者の職業、その者が置かれている具体的な立場、その者が従事している業務内容等を考慮した上での一般人というべきである。)ならば予見することが可能であったかという見地から判断すべきである。 2 被害者が本件両コイルに挟まれて頭部に傷害を負った後で、被害者を本件両コイルの間から引き出した後、aコイルの右舷側(aコイルとb コイルの間)から矢が発見された(G証人54頁)。そして、aコイルの右舷側に矢を入れる時期は、コイルが床面に固定してスリングを外した後であるが、そのことを 被告人が被害者に伝えたことはなかった(被告人51頁)というのであるから、被害者は、aコイルの右舷側に矢を入れに行った可能性がある。 そして、本件吊り上げは、仮置きに2回失敗した後になされたものであり、とくに2回目の仮置きでは的確に矢を滑り込ませることができずにbコイルの固定に失敗していた。そうすると、作業指揮者から矢を入れるよう指示がなくても、玉掛作業員の各自の判断によりコイルが床面から3 、とくに2回目の仮置きでは的確に矢を滑り込ませることができずにbコイルの固定に失敗していた。そうすると、作業指揮者から矢を入れるよう指示がなくても、玉掛作業員の各自の判断によりコイルが床面から30ないし40センチメートルの高さまで下りてくると、矢を入れるために50センチメートルの距離までコイルに接近することがあった(G証人36頁、H証人24頁、被告人43頁)という事実を考慮すると、被害者が自分の判断でaコイルの右舷側に矢を入れたり、b コイルの右舷側に残された矢を回収するために本件両コイルに近寄る可能性はあった。 3 しかし、2回目の仮置きにおいて、HとIは約1メートルの距離に近づいて、bコイルの右舷側で、かつ、bコイルが右舷側に転がっても安全なように、bコイルが転がる延長線上より船首側に外れた地点から、bコイルと床面との間を目掛けて矢を滑らせて入れたのであり、aコイルの右舷側に矢を入れたのではない。後述のとおり、aコイルの右舷側へ矢を入れることの危険性はこれよりも著しく大きい。 被害者は、本件当日までコイルの荷役作業の経験がなかったにしても、玉掛技能者、クレーン運転士等の資格を取得していた上、平成30年4月に本件会社に入社してから、荷役作業員として働き、本件当日には約2年間の経験を積んでいたのであり、作業の危険性は理解していたはずである。また、被害者は、本件当日、荷役作業開始前の打合せ、荷役作業開始直前から荷役作業開始後までの間に、複数回にわたり、多数の者から、荷役作業における人身事故の発生の危険性について注意喚起を受けていた上、当初42個あったコイルが8個にまで減るほど作業を進めていたのであるから、作業の危険性に対する理解を深めていたといえる。さらに、本件両コイルの大きさや巨大な重量、本件吊 り上げにより空中で 42個あったコイルが8個にまで減るほど作業を進めていたのであるから、作業の危険性に対する理解を深めていたといえる。さらに、本件両コイルの大きさや巨大な重量、本件吊 り上げにより空中でコイルが動く可能性があることは一見して理解できることからすると、本件吊り上げの際に、腰を屈めた状態で本件両コイルに近寄っていき、本件両コイルの間(コイル船尾側の端から見て船首側へ30ないし40センチメートルくらい入ったあたり)に頭部を入れることの危険性は誰が見ても明らかである。そうすると、被害者が上記のような行為をすると予見することはできず、本件両コイルの間に頭部を挟まれて死亡するという結果の予見は不可能であったといわざるを得ない。 4 被告人が本件吊り上げを指示する前に自ら本件作業員が本件両コイルから離れた位置にいることを確認したかはっきり覚えていない旨述べる捜査段階の供述調書が存在することからすると(乙3、被告人42頁等)、被告人が上記のような確認を怠った可能性はある。しかし、このような確認がなされなかったり、矢を滑り入れるべき時期や手順について詳細な説明がなかったり、2回目の仮置きに失敗した際、b コイルの右舷側に残された矢はすぐに回収する必要はない(H証人32頁等)という事実を被害者に説明していないとしても、前記のとおり、被害者の行為が明らかに危険であったことを考慮すると、結果の予見が不可能であったことは変わらない。 5 以上により、本件では、結果の予見可能性が認められず、結果予見義務違反もないので、被告人に業務上過失致死罪は成立しない。 第5 結論訴因変更後の本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により被告人に無罪の言渡しをする。 (求刑禁錮1年)令和4年11月29日名古屋 第5 結論訴因変更後の本件公訴事実については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により被告人に無罪の言渡しをする。 (求刑 禁錮1年)令和4年11月29日名古屋地方裁判所刑事第3部裁判官 西 前 征 志
▼ クリックして全文を表示