主文 被告人を懲役6年に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実) 被告人(犯行時19歳)は、特定少年であるが、第1 A、少年B、C及び氏名不詳者らと共謀の上、強盗の目的で、令和6年8月31日午前1時4分頃から同日午前1時18分頃までの間に、さいたま市(住所省略)所在のD駐車場において、れんがを拾い、これを携帯した上、さいたま市(住所省略)所在のE方に向かうなどし、もって強盗の予備をし 第2 金品を強取しようと考え、F、C及び氏名不詳者らと共謀の上、同日午後0時34分頃、被告人及びFが、G株式会社H店長Iが看守する神奈川県厚木市(住所省略)Jビル1階所在の同店に出入口自動ドアから侵入し、その頃、同所において、同社(代表取締役K)所有の商品棚のガラス戸8枚をハンマーでたたき割った上、同店店員L(当時54歳)の面前で、同社所有のショーケースを同 ハンマーでたたき割り(損害見積額合計39万4600円)、同人に対し、同ハンマーを振り上げて同人を脅迫し、もって他人の物を損壊するとともに、Lの反抗を抑圧して、I管理の腕時計等130点(販売価格合計8425万7500円)を強取し、同日午後0時36分頃、被告人が、同市(住所省略)M駐車場先歩道上及び同市(住所省略)Nビル先歩道上において、逃走した被告人及びFを追い 掛け、被告人の前に立ちはだかったO(当時30歳)に対し、同ハンマーでその左側頭部を殴打し、さらに、その左腕にかみつく暴行を加え、これら一連の暴行により、同人に加療約2週間を要する頭部挫創、左上肢擦過傷の傷害を負わせた。 (証拠の標目)省略 (法令の適用) 省略(処遇選択の理由) 1 弁護人は、被告人を の暴行により、同人に加療約2週間を要する頭部挫創、左上肢擦過傷の傷害を負わせた。 (証拠の標目)省略 (法令の適用) 省略(処遇選択の理由) 1 弁護人は、被告人を保護処分に付するのが相当であるとして、少年法55条により本件を家庭裁判所に移送すべきであると主張する。 2 本件各犯行は、被告人がSNS上でいわゆる闇バイトに応募して加担したも のであるが、原則検察官送致事件を含む強盗傷人等事件を中心に、まずは犯行の態様、結果、被告人の果たした役割及び動機経緯等についてみる。 本件強盗傷人等事件は、被告人及び共犯者が、営業時間中の被害店舗に侵入し、狙いを定めていた貴金属等が陳列されている棚のガラス戸やショーケースを、頭部が鉄製のハンマーでたたき割り、店員にハンマーを振り上げながら近づいて脅迫し つつ、合計130点のネックレスや腕時計等をショルダーバッグやリュックサックに入れて逃走し、被告人らを取り押さえようと立ちはだかった通行人の頭部をハンマーで殴打し、通行人らに取り押さえられながらも、さらに抵抗するため通行人の腕にかみついたものである。店舗内での犯行態様は、店員に対して暴行こそ加えていないものの、凶器を用いて店員を脅し、短時間で手際よく多量の貴金属等を奪取 するという大胆かつ悪質なものである。また、ハンマーによる通行人の頭部への殴打は、一歩間違えれば重大な結果を生じさせ得る極めて危険な行為である。指示役の指示の下で、実行役や運転手役等に役割分担され、凶器等の準備や下見をした上で実行された組織的で計画的な犯行であった点でも悪質である。 被害品は多数で、販売価格合計約8425万円と非常に高額であり、器物損壊の 被害額も少なくなく、財産的被害は重大である。被害品は全て還付されているが、それ 的な犯行であった点でも悪質である。 被害品は多数で、販売価格合計約8425万円と非常に高額であり、器物損壊の 被害額も少なくなく、財産的被害は重大である。被害品は全て還付されているが、それは被告人らが通行人によりその場で逮捕されたという偶然の事情によるものであり、修理を要する状態となった被害品も少なからずあるから、この点を考慮するのにも限度がある。また、通行人に負わせた傷害は加療約2週間を要するものにとどまったが、医療用ホチキスで3針止めるなどの措置を要する頭部のけがであり、 傷害の結果も軽いものとはいえない。 これに先行する強盗予備事件についても、指示役の指示により、被告人を含む実行役3名及び運転手役において、強盗に入るためレンガを持って民家へ向かったという悪質な犯行である。 本件各犯行は指示役の指示によって行われたもので、被告人は従属的な立場であったものの、強盗傷人等事件においては、実行役として犯行時には共犯者に対して 指示するなど主体的に行動し、ハンマーによるガラス戸等の破壊や店員への脅迫、更には通行人に対する暴行にも及んだことに加え、凶器となるハンマー等を購入し、被害店舗へ下見に行くなどもしており、被告人が果たした役割は極めて重要である。 被告人は、一連の犯行に加担した経緯について、組織に対して個人情報は伝えていなかったものの、強盗予備事件の前に指示役から被告人の住所くらいすぐに見付 けられるなどと言われて、やるしかないと思った旨述べるが、そうであったとしても、強盗予備事件において被告人以外の実行役2名が強盗はできないとして対象の民家に立ち入る前に離脱したため強盗の実行を断念した時点のほか、その後の強盗傷人等事件までの間にも離脱する機会はあったにもかかわらず、被告人自身は離脱せず、結局は自ら 名が強盗はできないとして対象の民家に立ち入る前に離脱したため強盗の実行を断念した時点のほか、その後の強盗傷人等事件までの間にも離脱する機会はあったにもかかわらず、被告人自身は離脱せず、結局は自ら応募した闇バイトの報酬欲しさもあって被害店舗への強盗を了承 するに至ったこと、前記のとおり指示されたものとはいえ被告人が悪質な役割を果たしていることなどを踏まえると、被告人にも一定程度意欲的な面があったことは否定できない。 3 続いて、犯情以外の事情についてみる。 被告人は、前歴はなく、高校を卒業するまで母親の監護の下目立った問題もなく 過ごしていたが、経済的に恵まれない家庭の事情にコンプレックスを抱えたまま、就職のため実家のある地方から関東近郊に上京してきたところ、職場の同僚などと東京において遊興しているうちに、クレジットカードの支払が困難となり、パチンコで手持ちの現金を増やそうとしたが失敗するなどして、闇バイトで高額な報酬を得ることを考えるようになった。被告人によれば、闇バイトは犯罪なのだろうと思 いつつ、「運び」と呼ばれる違法薬物等を運ぶ仕事などを想定して闇バイトに応募 したところ、同僚等から借りた6万円が担保金名目で詐取され、それも取り戻そうと更に闇バイトを探して、本件各犯行に至っている。このような経緯は、被告人の金銭管理等の未熟さや社会常識の乏しさに起因しているものでもあるが、当時の被告人にとっても、他のバイトを探す、親族・知人を頼るといった方法により犯罪行為に手を染めることを回避できたはずである。また、周りに影響されやすく、やる と決めたら徹底的にやってしまうという被告人の性格が、指示役から指示されるがままに、指示役に従わせるために共犯者を殴り、その共犯者と共に、大胆かつ悪質な犯行に及んだという一連 されやすく、やる と決めたら徹底的にやってしまうという被告人の性格が、指示役から指示されるがままに、指示役に従わせるために共犯者を殴り、その共犯者と共に、大胆かつ悪質な犯行に及んだという一連の行為にも影響したことは否定できないものの、離脱した少年を含む共犯者に追随するなどして犯行への加担を中止することは十分に可能であったといえる。 一方、被告人は、犯行を認めた上で、一連の司法手続を経て、被害者らの心情理解に努め、自己の問題点に向き合うなどして内省を深めている様子が見られる。また、けがを負わせた被害者に対しては5万円の見舞金を支払っている。 4 以上を総合的に踏まえて検討すると、本件各犯行に至った被告人の性格面の問題点や内省を深めている様子などからすれば、鑑別結果通知書や少年調査票でも 指摘があるとおり、少年院での矯正教育による更生を図ること自体は有効であるといえる。しかし、原則検察官送致事件を含む本件の重大性や被告人の果たした役割、本件犯行に関与した経緯、本件の社会的影響等に鑑みると、被告人を保護処分に付することが社会的に許容されるとはいえないから、保護処分相当性は認められず、被告人に対しては刑事処分をもって臨むほかない。 (量刑の理由)本件は、強盗傷人等1件、強盗予備1件の事案であるところ、「(処遇選択の理由)」で検討したとおり、悪質かつ重大で、被告人は指示役の指示に従った従属的な立場にあったといえる一方で、果たした役割自体は大きいことなどを考慮すると、同種の事案(処断罪:強盗致傷、共犯関係等:実行共同正犯、強盗の点:既遂、犯 行態様:店舗ねらい、凶器等:あり、処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件)の 中で最も重いとまではいえないが相応に重い部類に当たるものといわざるを得ない。 その他 強盗の点:既遂、犯 行態様:店舗ねらい、凶器等:あり、処断罪と同一又は同種の罪の件数:1件)の 中で最も重いとまではいえないが相応に重い部類に当たるものといわざるを得ない。 その他の事情についてみると、被告人は事実を認めた上で、被害者らに対する謝罪の言葉を述べ、自身の問題性と向き合い始めており、被告人なりの反省を深めつつあるといえること、犯行時被告人が19歳3か月であり、20歳に近い年齢とはいえ未熟な面があったこと、強盗傷人等事件で負傷させた被害者に対して母親の協 力を得て見舞金5万円を支払っていること、公判出廷した被告人の母親が被告人の社会復帰への支援を誓約していること、前科前歴がないことなどの事情も認められる。 そこで、これら被告人のために酌むべき事情をも考慮して、被告人に対しては主文掲記の懲役刑を科すことが相当であると判断した。 (求刑懲役10年)令和7年4月30日横浜地方裁判所小田原支部刑事部裁判長裁判官寺本真依子 裁判官岩﨑貴彦 裁判官柏木悠香
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