令和3年9月28日判決言渡令和元年(行ウ)第68号法人税及び復興特別法人税の更正処分並びに加算税賦課決定処分取消請求事件 主文 1 本件訴えのうち次の部分を却下する。 ⑴ 岸和田税務署長が平成29年6月27日付けでした原告の平成25年6月1日から平成26年5月31日までの事業年度の法人税の更正処分のうち,所得金額マイナス3138万9411円及び納付すべき税額マイナス354円を超えない部分の取消しを求める部分⑵ 岸和田税務署長が平成29年6月27日付けでした原告の平成2 5年6月1日から平成26年5月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分のうち,課税標準法人税額0円及び納付すべき税額マイナス6円を超えない部分の取消しを求める部分 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 岸和田税務署長が平成29年6月27日付けでした原告の平成25年6月1日から平成26年5月31日までの事業年度の法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 2 岸和田税務署長が平成29年6月27日付けでした原告の平成25年6月1日から平成26年5月31日までの課税事業年度の復興特別法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要内国法人である原告は,平成25年7月30日(以下「本件配当日」という。), カナダに本店を置く法人であるA(以下「A社」という。)から,剰余金の配当 (以下「本件配当」という。)を受けたところ,法人税法23条の2第1項(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)の規定により,本件配当の額からその5%相当額を控除した金額の円換算額は, (以下「本件配当」という。)を受けたところ,法人税法23条の2第1項(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)の規定により,本件配当の額からその5%相当額を控除した金額の円換算額は,益金の額に算入されないとして,上記円換算額を益金の額に算入せずに原告の平成25年6月1日から平成26年5月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)に係る法 人税及び平成25年6月1日から平成26年5月31日までの課税事業年度(以下「本件課税事業年度」という。)に係る復興特別法人税の確定申告をした。 これに対し,処分行政庁は,A社は法人税法23条の2第1項にいう「外国子会社」に該当しないから同項の規定の適用はないとして,本件事業年度に係る法人税の更正処分(以下「本件法人税更正処分」という。)及び本件課税事業年度 に係る復興特別法人税の更正処分(以下「本件復興特別法人税更正処分」といい,本件法人税更正処分と併せて「本件各更正処分」という。)並びに本件各更正処分に係る過少申告加算税の各賦課決定処分(以下,「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)をした。 本件は,原告が,A社は法人税法23条の2第1項にいう「外国子会社」に該 当するから本件各処分は違法であるなどと主張して,被告を相手に,本件各処分の取消しを求める事案である(本判決では,欠損金額を所得金額のマイナス,還付金額を納付すべき税額のマイナスとして表記する。)。 1 関係法令等の定め⑴ 法人税法の定め(「外国子会社」から受ける配当等の益金不算入) 法人税法23条の2第1項は,内国法人が「外国子会社」(当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額がその発行済株式又は出資〔その有する自己の株式又は出資を除く。〕 益金不算入) 法人税法23条の2第1項は,内国法人が「外国子会社」(当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額がその発行済株式又は出資〔その有する自己の株式又は出資を除く。〕の総数又は総額〔以下「発行済株式等」という。〕の100分の25以上に相当する数又は金額となっていることその他の政令で定める要件を備えている外国法人をいう。)から受け る同法23条1項(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。) 1号に掲げる金額(以下「剰余金の配当等の額」という。)がある場合には,当該剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額に係る費用の額に相当するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額は,その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上,益金の額に算入しない旨規定する(以下,同法23条の2第1項に規定する制度を「外国子会社配当 益金不算入制度」という。)。 ⑵ 法人税法施行令の定めア 「外国子会社」の要件法人税法施行令22条の4第1項(平成27年政令第142号による改正前のもの。以下同じ。)は,法人税法23条の2第1項に規定する政 令で定める要件は,次に掲げる割合のいずれかが100分の25以上であり,かつ,その状態が同項の内国法人が外国法人から受ける剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6月以上(当該外国法人が当該確定する日以前6月以内に設立された法人である場合には,その設立の日から当該確定する日まで)継続していることとする旨規定する。 (ア) 法人税法施行令22条の4第1項1号当該外国法人の発行済株式等のうちに当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額の占める割合(イ) 法人税法施行令22条の4第1項2号当該外国法人の発 22条の4第1項1号当該外国法人の発行済株式等のうちに当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額の占める割合(イ) 法人税法施行令22条の4第1項2号当該外国法人の発行済株式等のうちの議決権のある株式又は出資の 数又は金額のうちに当該内国法人が保有している当該株式又は出資の数又は金額の占める割合イ租税条約の二重課税排除条項の定めによる「外国子会社」の要件の例外法人税法施行令22条の4第5項(平成26年政令第138号による改正前のもの。以下同じ。)は,租税条約(法人税法139条〔平成26 年法律第10号による改正前のもの〕に規定する条約をいい,我が国以 外の締約国又は締約者の居住者である法人が納付する租税を我が国の租税から控除する定め〔以下「二重課税排除条項」という。〕があるものに限る。)の二重課税排除条項において法人税法施行令22条の4第1項各号に掲げる割合として100分の25未満の割合が定められている場合には,同項の規定の適用については,同項中「100分の25以上」と あるのは「第5項に規定する租税条約の同項に規定する二重課税排除条項に定める割合(第4項において「租税条約に定める割合」という。)以上」と,「同項の」とあるのは「同条第1項の」と,「が外国法人」とあるのは「が外国法人(当該租税条約の我が国以外の締約国又は締約者の居住者である法人に限る。以下この条において同じ。)」とする旨規定す る。 ウ法人税法23条の2第1項に規定する政令で定めるところにより計算した金額法人税法施行令22条の4第2項は,法人税法23条の2第1項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は,剰余金の配当等の額の 100分の5に相当する金額とする旨規定する。 ⑶ 日加租税 法人税法施行令22条の4第2項は,法人税法23条の2第1項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は,剰余金の配当等の額の 100分の5に相当する金額とする旨規定する。 ⑶ 日加租税条約の定めア定義「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とカナダ政府との間の条約」(以下「日加租税条約」という。) 3条1項は,日加租税条約の適用上の用語の定義について規定し,同条2項は,一方の締約国による日加租税条約の適用上,日加租税条約において定義されていない用語は,文脈により別に解釈すべき場合を除くほか,日加租税条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令における当該用語の意義を有するものとする旨規定する。 イ二重課税排除の方法 日加租税条約21条2項(b)は,日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令に従い,カナダにおいて取得される所得が,カナダの居住者である法人によりその議決権のある株式又はその発行済株式の少なくとも25%を所有する日本国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には,日本国 の租税からの控除を行うに当たり,当該配当を支払う法人によりその所得について納付されるカナダの租税を考慮に入れるものとする旨規定する。 2 前提事実当事者間に争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定す ることができる事実は,次のとおりである。 ⑴ 原告及びA社ア原告原告は,平成▲年▲月▲日に設立された,大阪府岸和田市に本店を置き,海外企業に対する企業進出に関するコンサルティング等を目的とす る,資本金300万円の株式会社である(乙2)。 イ A社A社は,平成▲年▲月▲日 に設立された,大阪府岸和田市に本店を置き,海外企業に対する企業進出に関するコンサルティング等を目的とす る,資本金300万円の株式会社である(乙2)。 イ A社A社は,平成▲年▲月▲日,カナダのブリティッシュ・コロンビア州事業法人法に基づき,カナダに所在していた2法人が新設合併することにより設立された外国法人である。 ⑵ 本件配当原告は,平成25年7月30日(本件配当日),A社から645万7500カナダドルの剰余金の配当(本件配当)を受け,本件配当の額の円換算額6億1720万7850円を受取配当金勘定に計上する会計処理をした(乙3)。 ⑶ 本件配当日におけるA社の発行済株式の種類,株主の状況等 ア本件配当日におけるA社の発行済株式の種類本件配当日におけるA社の発行済株式は,普通株式である①クラスA-1株式(額面金額なし),②クラスA-2株式(額面金額なし),③クラスB株式(額面金額なし)及び④クラスC株式(額面金額なし)並びに優先株式である⑤クラスD株式の5種類であった。このうち議決権の ある株式は,①クラスA-1株式,②クラスA-2株式及び④クラスC株式の3種類であり,これらの議決権の内容は,次のとおりであった。 (甲15,16)(ア) クラスA-1株式及びクラスA-2株式クラスA-1株式及びクラスA-2株式を有する者は,A社の全ての 株主会議において74%の議決権を行使することができる。 (イ) クラスC株式クラスC株式を有する者は,A社の全ての株主会議において26%の議決権を行使することができる。 イ本件配当日におけるA社の株主の状況等 本件配当日におけるA社の株主は,原告,B及びCであり,各株主が保有する株式の種類及び数は,次のとおりであった(なお, 権を行使することができる。 イ本件配当日におけるA社の株主の状況等 本件配当日におけるA社の株主は,原告,B及びCであり,各株主が保有する株式の種類及び数は,次のとおりであった(なお,A社の設立時及び本件配当日以前6か月の間における株主及び株式の状況もこれと同様であった。)(甲15,16)。 (ア) 原告 クラスC株式(議決権あり)1株(イ) BクラスB株式(議決権なし)100株(ウ) CクラスA-1株式(議決権あり)100株 クラスA-2株式(議決権あり)100株 クラスD株式(議決権なし)1万株(エ) 合計 1万0301株(このうち議決権のある株式は201株)⑷ 本件訴訟に至る経緯ア確定申告書の提出原告は,平成26年7月31日,岸和田税務署長に対し,別表の「確 定申告」欄の記載のとおり,本件事業年度に係る法人税及び本件課税事業年度に係る復興特別法人税の各確定申告をした。その際,原告は,本件事業年度の法人税について,本件配当は,法人税法23条の2第1項に規定する「外国子会社」から受ける剰余金の配当等の額に該当するとして,本件配当の額からその5%相当額を控除した金額の円換算額5億 8634万7458円を,益金の額に算入しなかった。(甲1)イ本件各処分岸和田税務署長は,平成29年6月27日付けで,原告の本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の復興特別法人税について,別表の「更正処分等」欄の記載のとおり,本件各処分をした(甲2の1・2)。 ウ再調査の請求原告は,平成29年9月19日,本件各処分を不服として,再調査の請求をした。これに対し,岸和田税務署長は,同年12月22日付けで再調査の請求を棄却する旨の決定をした。(甲 ウ再調査の請求原告は,平成29年9月19日,本件各処分を不服として,再調査の請求をした。これに対し,岸和田税務署長は,同年12月22日付けで再調査の請求を棄却する旨の決定をした。(甲3,4)エ審査請求 原告は,平成30年1月19日,再調査の請求を棄却する決定を不服として,審査請求をした。これに対し,国税不服審判所長は,同年12月14日付けで審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲5,6)⑸ 本件訴訟の提起原告は,令和元年5月15日,本件訴訟を提起した。 3 税額等に関する当事者の主張被告が本件訴訟において主張する本件各処分の根拠及び計算は,別紙1「課税の根拠及び適法性」のとおりであるところ,原告は,下記4の争点2から争点5までに関する部分を除き,その計算の基礎となる金額及び計算方法を明らかに争わない。 4 争点⑴ 本件各更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める訴えの利益の有無(争点1)⑵ A社が法人税法施行令22条の4第1項(2号)に規定する「外国子会社」の要件を満たすか否か(争点2) ⑶ 法人税法施行令22条の4第1項が法人税法23条の2第1項に適合するか否か(争点3)⑷ 法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項が憲法14条1項に適合するか否か(争点4)⑸ 法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項2号が日 加租税条約21条2項(b)に適合するか否か(争点5) 5 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(本件各更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める訴えの利益の有無)について(原告の主張) ア更正処分は,申告とは別個独立の行為であり,申告によって確定した税額を追加し,又は減少させ 正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める訴えの利益の有無)について(原告の主張) ア更正処分は,申告とは別個独立の行為であり,申告によって確定した税額を追加し,又は減少させるにすぎないとの考え方(申告と更正処分との関係についてのいわゆる併存説)によれば,更正処分の全部が取り消されたとしても,納税義務者は申告によって確定した税額について納税義務を免れない。そうすると,増額更正処分のうち申告額を超えない部分の取消 しを求める訴えの利益がないことを前提として,増額更正処分のうち申告 額を超えない部分を除外してその取消しを求めると,仮にその請求が全部認容されたとしても,当該増額更正処分の一部が残存してしまうことになる(納税者は,申告によって確定した税額についての納税義務ではなく,その取り消されなかった部分の更正によって確定した税額についての納税義務を負うことになる。)。これは,法理論上無理がある上に,社会的にも 容認し難い。 したがって,増額更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める訴えの利益はあるというべきであるから,本件訴えは,本件各更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める部分も含め,訴えの利益がある。 イ仮に,増額更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める訴えは,訴えの利益を欠くことがあるとしても,それは申告額が正の額である場合に限られると解すべきである。申告額が負(マイナス)の額(還付金が発生する)である場合,増額更正処分のうち申告額を「超える部分」又は「超えない部分」との表現は,およそ,その詳細な説明なくし て通常人には理解できないものになっているし,そもそも,日本語としても正確な表現であるかも疑わしい。また,「還付金の額を超えない部分」がある い部分」との表現は,およそ,その詳細な説明なくし て通常人には理解できないものになっているし,そもそも,日本語としても正確な表現であるかも疑わしい。また,「還付金の額を超えない部分」があるとすれば,「還付金の額を超える部分」も存在することになるが,それぞれの部分を特定することはできない。 本件では,原告の申告額は負(マイナス)の額であるから,本件訴え は,本件各更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める部分も含め,訴えの利益がある。 (被告の主張)申告は,増額更正処分がされたことによって,申告によって生じた効果を維持する独立の存在意義を失っており,増額更正処分が,その内容に申告の 内容を含む(吸収する)ことによって,申告の効果を維持しているという関 係にある(申告と増額更正処分との関係についてのいわゆる吸収説)。そして,納税者が申告が過大であるとしてその誤りを是正するためには,所定の期間内に更正の請求を行う必要があることからすれば(国税通則法23条),納税者が,更正の請求という法の求める特別の手続を経由することなく,申告額を超えない部分についてまで取消しを求めることは,納税者が申告にお いて自認する範囲を超えて増額更正処分の取消しを求めるものであるから,原則として訴えの利益を欠くというべきである。 これを本件についてみると,原告は,本件各更正処分の全部の取消しを求めているが,本件事業年度の法人税及び本件課税事業年度の復興特別法人税に係る各確定申告において,原告の法人税に係る所得金額及び納付すべき税 額は,所得金額マイナス3138万9411円,納付すべき税額マイナス354円と申告し,また,復興特別法人税に係る課税標準法人税額及び納付すべき税額は,課税標準法人税額0円,納付すべき税額マイ 額は,所得金額マイナス3138万9411円,納付すべき税額マイナス354円と申告し,また,復興特別法人税に係る課税標準法人税額及び納付すべき税額は,課税標準法人税額0円,納付すべき税額マイナス6円と申告しており,本件各更正処分のうち,それらの申告額を超えない部分については,原告が自認するものである。 したがって,本件訴えのうち上記の原告の各申告額を超えない本件各更正処分の部分の取消しを求める部分は,不適法である。 ⑵ 争点2(A社が法人税法施行令22条の4第1項〔2号〕に規定する「外国子会社」の要件を満たすか否か)について(被告の主張) ア 「外国子会社」該当性の判断方法平成21年法律第13号による法人税法の一部改正(以下「平成21年改正」という。)前の法人税法69条8項(以下「旧法人税法69条8項」という。)は,いわゆる間接外国税額控除制度(以下,単に「間接外国税額控除制度」という。)を定めていたところ,旧法人税法69条8項 の委任を受けた平成21年政令105号による改正前の法人税法施行令 146条1項2号(以下「旧法人税法施行令146条1項」という。)は,間接外国税額控除制度の対象となる「外国子会社」の要件を定めていた。 間接外国税額控除制度は,外国の会社には多種多様な株式を発行している例もあることから,間接外国税額控除制度の対象となる「外国子会社」の判定基準として,資本参加という経済実態に即した株式総数の基準と 法律的な企業支配力に即した議決権付き株式の数の基準とを並行的に採用して,簡明を期したものであった。これは,各国の多種多様な制度に基づき設立された外国法人を一定の基準に当てはめ,これに該当した外国法人のみを制度の対象とすることで,多種多様な制度から成る外国法人に対する 簡明を期したものであった。これは,各国の多種多様な制度に基づき設立された外国法人を一定の基準に当てはめ,これに該当した外国法人のみを制度の対象とすることで,多種多様な制度から成る外国法人に対する内国法人の支配を,画一的に判断するための基準を採用した ものである。 法人税法施行令22条の4第1項の規定は,旧法人税法施行令146条1項の規定を引き継いだものであるから,旧法人税法施行令146条1項についての上記解釈は,外国子会社配当益金不算入制度の「外国子会社」においても妥当する。 そして,「外国子会社」の該当性については,法人税法施行令22条の4第1項2号に規定する「議決権のある株式又は出資の数又は金額」という文言から考え得る,①議決権のある株式の数,②議決権のある株式の金額,③議決権のある出資の数及び④議決権のある出資の金額の各保有割合に係る要件に基づき判断することとなる。 イ ①「議決権のある株式の数」の保有割合に係る要件を満たすか否か「議決権のある株式の数」の保有割合に係る要件は,株式を発行する外国法人に対して内国法人が保有する,議決権が付与された株式の数の割合を基準とし,内国法人による一定の支配力から,「外国子会社」に該当するか否かを判定するとしたものであると解される。 本件では,A社が発行する議決権のある株式の総数は201株であり, そのうち,原告が保有するA社の議決権のある株式の数は1株であるから,A社の議決権のある株式の総数に占める原告の保有するA社の議決権のある株式の数の割合は,201分の1となり,100分の25に満たない。 したがって,A社は,「議決権のある株式の数」の保有割合に係る要件 を満たさない。 ウ ②「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件を満たすか否 分の1となり,100分の25に満たない。 したがって,A社は,「議決権のある株式の数」の保有割合に係る要件 を満たさない。 ウ ②「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件を満たすか否か「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件は,株式を発行する外国法人に対して内国法人が保有する,議決権が付与された株式の金額の割合を基準とし,内国法人による一定の支配力から,「外国子会社」 に該当するか否かを判定するとしたものであると解される。しかし,株式の金額との文理からは株式のどのような金額を意味するのかが明らかでない。そのため,規定の趣旨・目的に照らしてその意味内容を明らかにする必要があるところ,法人税法23条の2第1項は,法律的な企業支配力をみるために,「外国子会社」に係る要件を定めたものであるから, 「議決権のある株式の金額」とは,企業支配力を示し得る金額と解すべきである。他方で,そのような金額が存在しない場合においては,「議決権のある株式の金額」によって「外国子会社」に該当するか否かを判断することはできないと解すべきである。 本件で,原告が保有するA社のクラスC株式は,A社の定款において, 「クラスC普通株式は,会社の全ての株主会議において26%の議決権を行使する権限を有する。」と定められることによって付与されているのみであって,何らかの金額がA社に対する支配力の前提となっているとは認められない。 したがって,本件では,A社に対する原告の支配力の有無やその程度 を示す指標としての「議決権のある株式の金額」の存在は認められない から,A社が原告の「外国子会社」に該当するか否かは,「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件によって判定することはできない。 エ ③「議決権のある出資の数」 額」の存在は認められない から,A社が原告の「外国子会社」に該当するか否かは,「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件によって判定することはできない。 エ ③「議決権のある出資の数」の保有割合に係る要件を満たすか否か「議決権のある出資の数」の保有割合に係る要件は,出資に対して議決権が付与された外国法人に対して内国法人が保有する,議決権が付与 された出資の数の割合を基準とし,内国法人による一定の支配力から,「外国子会社」に該当するか否かを判定するとした要件であると解される。 これは,資産の流動化に関する法律59条1項が,特定目的会社の有議決権事項について,「社員…はその有する特定出資又は優先出資一口に つき一個の議決権を有する」と規定するように,各社員の「出資の数」に応じて議決権が付与されるような法人については,その出資の数が当該法人に対する支配力の判断基準とされるのが通常であることから,議決権が付与された出資の数を基準として,「外国子会社」に該当するか否かを判定するとしたものと解される。 したがって,「議決権のある出資の数」の保有割合に係る要件は,株式が発行されておらず,出資の数がその支配力の前提とされるような外国法人に対する支配力を判定するためのものと解するのが相当である。 A社は株式を発行する法人であるから,A社が原告の「外国子会社」に該当するか否かは,「議決権のある出資の数」の保有割合に係る要件に よって判定することはできない。 オ ④「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件を満たすか否か「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件は,出資に対して議決権が付与された外国法人に対して内国法人が保有する,議決権が付与された出資の金額の割合を基準とし,内国法人による一定の支配力 否か「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件は,出資に対して議決権が付与された外国法人に対して内国法人が保有する,議決権が付与された出資の金額の割合を基準とし,内国法人による一定の支配力か ら,「外国子会社」に該当するか否かを判定するとした要件であると解さ れる。 これは,持分会社の各社員がそれぞれ1個の持分を有する法人については,その出資の金額が当該法人に対する支配力の判断基準とされる場合が通常であることから,「外国子会社」の該当性について議決権が付与された出資の金額を基準としたものと解される。 したがって,「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件は,株式が発行されておらず,出資の金額がその支配力の前提とされるような外国法人に対する支配力を判定するためのものと解するのが相当である。 A社は株式を発行する法人であるから,A社が原告の「外国子会社」に該当するか否かは,「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件 によって判定することはできない。 カ小括以上によれば,A社は,法人税法施行令22条の4第1項2号に規定する「議決権のある株式又は出資の数又は金額」の保有割合に係る要件を満たさないから,原告の「外国子会社」に該当しない。 (原告の主張)ア法人税法施行令22条の4第1項2号の「議決権のある出資の金額」又は「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件を満たすこと(ア) 会社法及び法人税法の規定内容会社法(27条4号等)及び法人税法(2条14号等)の規定に照 らせば,株式会社における出資の金額とは,出資が金銭の払込みによりされた場合にはその払い込まれた金銭の額であり,出資の総額とは,払い込まれた金額の総計であると観念することができる。 上記の会社法及び法 ば,株式会社における出資の金額とは,出資が金銭の払込みによりされた場合にはその払い込まれた金銭の額であり,出資の総額とは,払い込まれた金額の総計であると観念することができる。 上記の会社法及び法人税法の規定内容からすれば,「外国子会社」に該当するか否かの判断において,「外国子会社」が株式会社の場合は 「株式の数」のみを判断基準とすべきではなく,少なくとも,株式会 社設立(新設合併による設立を含む。)時の払込資本の額がそのまま維持されている場合や,発起人と募集株式の引受人の出資が1株当たりの株式発行価額と同額で行われている場合等,実情に応じた個別的な判断が可能な場合は,発行株式の引受けのための金銭の払込み又はその他の資産の給付を「出資」とし,その払込みの額又はその給付の額 を「出資の金額」又は「株式の金額」として「外国子会社」該当性の判断基準とすることができると解すべきである。 (イ) 国際的な取扱いaOECDモデル租税条約OECDモデル租税条約10条2項a)は,「一方の締結国の居住者 である法人が支払う配当に対しては,当該一方の締結国においても,当該一方の締結国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は,当該配当の受益者が他方の締結国の居住者である場合には,次の額を超えないものとする。」として,「当該配当の受益者が,当該配当を支払う法人の資本の25パーセント以上を直接に所有する法人 (パートナーシップを除く。)である場合には,当該配当の額の5パーセント」と規定しており,株式や出資の概念と必ずしも一致しない資本の概念をその基準としている。 b カナダ事業法人法カナダ事業法人法においては,法人が発行する株式について1株ご とに出資額や議決権の数(議決権割合)を異にすることが ずしも一致しない資本の概念をその基準としている。 b カナダ事業法人法カナダ事業法人法においては,法人が発行する株式について1株ご とに出資額や議決権の数(議決権割合)を異にすることが一般的に許容されている。そのため,株式の数だけを基準に利益分配や支配関係を判定することは適当ではない。 (ウ) 小括以上の状況からすれば,外国法人が株式を発行する法人であっても, 法人税法施行令22条の4第1項2号の要件を満たすか否かについて は,「議決権のある株式又は出資の数又は金額」のうち,「議決権のある株式の数」の保有割合に係る要件のみならず,発行株式の引受けのための金銭の払込額である「議決権のある出資の金額」又は「議決権のある株式の金額」の各保有割合に係る要件によって判断することもあり得るというべきであり,少なくとも,内国法人の外国法人に対す る出資が,設立時(新設合併による設立を含む。)又は新設合併時に行われただけである場合や,発起人と募集株式の引受人の出資が1株当たりの株式発行価額と同額で行われている場合等,実情に応じた個別的な判断が可能な場合は,発行株式の引受けのための金銭の払込み又はその他の資産の給付を「出資」とし,その払込みの額又はその給付 の額を「出資の金額」又は「株式の金額」として「外国子会社」該当性の判断基準とすることができるというべきである。 (エ) 本件について本件では,A社の発行株式の引受けはその新設合併による設立時にされただけであるから,A社が原告の「外国子会社」に該当するか否か は,引受けのための金銭の払込みの額を「出資の金額」又は「株式の金額」として,「議決権のある出資の金額」又は「議決権のある株式の金額」の各保有割合に係る要件を満たすか否かによって判断することが は,引受けのための金銭の払込みの額を「出資の金額」又は「株式の金額」として,「議決権のある出資の金額」又は「議決権のある株式の金額」の各保有割合に係る要件を満たすか否かによって判断することができる。 そして,本件配当日において,A社の出資のうちの議決権のある出資 の金額の総額(6万5211カナダドル)のうちに原告の出資の金額(6万5200カナダドル)が占める割合は約99.98%であって,100分の25以上である。したがって,A社は,法人税法施行令22条の4第1項2号の「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件を満たす。 また,本件配当日において,A社の発行済株式のうちの議決権のある 株式の金額の総額(6万5211カナダドル)のうちに原告が保有する株式の金額(6万5200カナダドル)が占める割合は約99.98%であって,100分の25以上である。したがって,A社は,法人税法施行令22条の4第1項2号の「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件を満たす。 したがって,A社は原告の「外国子会社」に該当する。 イ法人税法施行令22条の4第1項2号に定める「割合」には「議決権の割合」も含むこと「外国子会社」に該当するか否かは,外国法人の経営判断に対する内国法人の支配力(影響力)をもって判断すべきであるから,法人税法施 行令22条の4第1項2号に定める「割合」には当然に議決権割合が含まれると解すべきである。特に,カナダの会社法制度においては,会社の株式のクラスごとに1株当たりの議決権の数が異なる制度が一般的に認められているから,カナダの会社に対する支配力(影響力)は,議決権の割合をもって判断されるべきである。また,我が国が諸外国と締結 した租税条約の「外国子会社」に関する規定は,近 度が一般的に認められているから,カナダの会社に対する支配力(影響力)は,議決権の割合をもって判断されるべきである。また,我が国が諸外国と締結 した租税条約の「外国子会社」に関する規定は,近年では,議決権の保有割合を基準とするものがほとんどである。なお,OECDモデル租税条約コメンタリーの10条2項の解説においては,条約の締約国が二国間交渉において同項a)の「資本(capital)」に代えて「議決権(votingpower)」を基準に用いることができるとされている。 原告は,本件配当日において,A社の議決権の100分の26を保有していた。したがって,A社は,原告の「外国子会社」に該当する。 ⑶ 争点3(法人税法施行令22条の4第1項が法人税法23条の2第1項に適合するか否か)について(被告の主張) 法人税法23条の2第1項は,「外国子会社」の要件として「株式又は出 資の数又は金額」の保有割合に係る要件,すなわち,「株式の数」,「株式の金額」,「出資の数」及び「出資の金額」の各保有割合に係る要件を例示して規定している。これらのような経験上一定の具体的な意味内容を示すものとして用いられることが通常である文言を用いて定められている要件は,通常の用例に係る意味内容に即して文理的に解釈されなければならない。同項は, その文理に照らせば,議決権の数や議決権等の保有割合に係る要件を定めていると解する余地はない。 また,法人税法23条の2第1項が,「外国子会社」の要件の定めについて政令に委任した趣旨は,「外国子会社」の要件について,行政機関に対して専門技術的な観点からの一定の裁量権を付与する趣旨である。 さらに,法人税法は,国際的二重課税を排除するための制度として,外国税額控除(法人税法69条)の制 の要件について,行政機関に対して専門技術的な観点からの一定の裁量権を付与する趣旨である。 さらに,法人税法は,国際的二重課税を排除するための制度として,外国税額控除(法人税法69条)の制度に加え,国際的二重課税排除に係る制度の簡素化と企業が国外で得た所得の還流の促進という目的のために,外国子会社配当益金不算入制度という優遇措置を設けたものである。法人税法施行令22条の4第1項2号が,上記の優遇措置の対象として,「議決権のある 株式又は出資の数又は金額」の保有割合に係る一定の要件を満たす外国法人に限って「外国子会社」と定めたことは,内国法人の外国法人に対する実質的な支配力を反映させたものであって,授権法である法人税法の趣旨・目的に沿うものであり,法人税法の仕組みとも整合している。 そして,法人税法施行令22条の4第1項によって制限される権利ないし 利益は,財産権ないし経済的利益にすぎない。 以上のように,法人税法施行令22条の4第1項は,授権規定である法人税法23条の2第1項の文理の範囲内で,同項が委任した趣旨に沿って「外国子会社」の要件を定めたものであり,授権法である法人税法の趣旨・目的及び仕組みとも整合し,財産権ないし経済的利益を制限するにすぎないから, 法人税法23条の2の委任の範囲を逸脱するものではない。 (原告の主張)法人税法施行令22条の4第1項2号に定める割合には,議決権割合が含まれないと解さざるを得ないとすると,同項は,法人税法23条の2第1項の規定の趣旨に反した違法な規定である。 したがって,違法な法人税法施行令22条の4第1項の規定に基づいてさ れた本件各処分もまた違法である。 ⑷ 争点4(法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項が憲法14条1項に適 たがって,違法な法人税法施行令22条の4第1項の規定に基づいてさ れた本件各処分もまた違法である。 ⑷ 争点4(法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項が憲法14条1項に適合するか否か)について(被告の主張)国民の租税負担に係る規定を策定するに当たっては,財政・経済・社会政 策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく,課税要件の定めについて,極めて専門技術的な判断を必要とすることから,租税法の分野における取扱いの区別は,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が同目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,その合理性を否定することができず, これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできない(最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照)。 法人税法23条の2第1項及びその委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項各号の規定の立法目的は,「外国子会社」からの配当等に係る国際 的二重課税排除に係る制度の簡素化と企業が国外で得た所得の還流を促進することにあり,これが正当であることは明らかである。そして,これらの規定は「株式の数」等の一定の保有割合を「外国子会社」の要件としているところ,内国法人に関する規定と同様に,「株式の数」等の一定の保有割合を「外国子会社」の要件と定めることは,多種多様な制度から成る外国法人に 対する内国法人の支配の有無及び程度を画一的に判断するための基準として 合理的といえ,議決権についても「議決権のある株式又は出資」という形で「外国子会社」の判断のための要件に取り込んでいるのであるから,法人税法23条の2第1項が「外国子会社」の めの基準として 合理的といえ,議決権についても「議決権のある株式又は出資」という形で「外国子会社」の判断のための要件に取り込んでいるのであるから,法人税法23条の2第1項が「外国子会社」の要件として「株式の数」等の保有割合を定めることが,上記立法目的との関連で,著しく不合理であることが明らかであるとはいえない。 したがって,法人税法23条の2第1項及びその委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項の規定は,その合理性が否定されるものではなく,憲法14条1項の規定に違反するものということはできない。 (原告の主張)仮に,法人税法23条の2第1項及びその委任を受けた法人税法施行令2 2条の4第1項が,議決権の数又は議決権割合を「外国子会社」の判定基準として定めていないのであれば,株式会社に対する企業支配力を端的に示すものが議決権の数又は議決権割合であるにもかかわらず,100分の25以上の割合の議決権を保有している内国法人が外国子会社配当益金不算入制度の適用から排除されてしまうことになるが(このような事態は,上記のOE CDモデル租税条約コメンタリーにおける取扱いとも整合しない。),一方で,外国法人の発行済株式等の数又は金額の100分の25以上を有する内国法人は保有する議決権の数又は議決権の割合にかかわらず,外国子会社配当益金不算入制度の対象となり得ることになるから,不合理な差別であるというべきである。 したがって,法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項の規定は,憲法14条1項に定める納税者間の平等(租税公平主義)に明らかに反する不合理なものであるから,憲法14条1項に違反する。 ⑸ 争点5(法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項2号が日加租税条約21条2項 税者間の平等(租税公平主義)に明らかに反する不合理なものであるから,憲法14条1項に違反する。 ⑸ 争点5(法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項2号が日加租税条約21条2項(b)に適合するか否か)について (被告の主張) ア日加租税条約はその文言に即して解釈されるべきであるところ,日加租税条約21条2項(b)は,その英語正文の「thevotingshares」及び日本語正文の「議決権のある株式」の各文言に照らせば,議決権のある株式の保有割合を定めていることは明らかである。 イまた,日加租税条約3条2項は,一方の締約国による日加租税条約の適 用上,日加租税条約において定義されていない用語は,文脈により別に解釈すべき場合を除くほか,日加租税条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令における当該用語の意義を有するものとする旨規定する。「文脈により別に解釈すべき場合」かどうかは,国内法上の用語の意義に基づく解釈と租税条約の締結の際の前提とされていたと認められる文 脈に基づく解釈とを比較して,国内法上の用語の意義に基づく解釈が不合理な解釈になる場合は,国内法上の用語の意義に基づく解釈が否定されることとなる。 日加租税条約において,「議決権のある株式」の定義がされていないから,文脈により別に解釈すべき場合でない限り,我が国の国内法上の意 義を有するものと解釈すべきことになる。そして,我が国の国内法上,「議決権のある株式」を定義する規定はないものの,「議決権」そのものを問題とする場合には「議決権(の数)」等といった文言が用いられていること(法人税法施行令4条,5条,71条,139条の7,租税特別措置法66条の6等)からすれば,我が国の国内法上,「議決権のある株 る場合には「議決権(の数)」等といった文言が用いられていること(法人税法施行令4条,5条,71条,139条の7,租税特別措置法66条の6等)からすれば,我が国の国内法上,「議決権のある株 式」とは,「議決権」そのものを意味するのでなく,通常の用例どおり,議決権の付与された株式との意義を有するものと解される。日加租税条約の締結の際の前提とされていた文脈に基づく解釈として,これと異なる特別な意義が付与されていたといった事情はないから,文脈により別に解釈すべき場合には当たらない。 したがって,日加租税条約21条2項(b)の「議決権のある株式」とは, 議決権が付与された株式を意味すると解すべきであるから,法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項2号は日加租税条約21条2項(b)に適合する。 (原告の主張)日加租税条約21条2項(b)の文言は,日本語正文では「…その議決権の ある株式…の少なくとも25パーセントを所有する日本国の居住者である法人」,英語正文では「notlessthan 25 percent… ofthevotingsharesofthecompany」であるが,「所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約」(以下「日英租税条約」という。)10条2項(a)の 文言は,日本語正文では「法人の議決権のある株式の10%以上に相当する株式を…所有する法人」,英語正文では「sharesrepresenting … atleastpercentofthevotingpowerofthecompany」である。このように,租税条約において,日本語正文では「議決 epresenting … atleastpercentofthevotingpowerofthecompany」である。このように,租税条約において,日本語正文では「議決権のある株式」と統一的に表記されている文言が,英語正文では「thevotingshares 」と「shares representing … thevotingpower」という異なる文言が使われている。その理由は,「sharesrepresenting … thevotingpower」を含む一文が「acompanythathasownedsharesrepresentingdirectlyorindirectly … atleast 10 percentofthevotingpowerofthecompany」(日本語正文では「法人の議決権のある株式の10%以上に相当する株式を直接又は間接に所 有する法人」)とされていることから明らかなように,直接所有の株式のみならず間接所有の株式も含めて判定する場合には,より厳密に規定する必要があるためであったと考えられる。 以上のように,株式の直接保有のみに限定して考えれば,「25 percentofthevotingsharesofthecompany」は,「sharesrepresenting 25 percent ofthevotingpowerofthecompany」と同義であることを示しており,我 が国が締結した租税条約においては,「議決権のある株式」の保有割合を判定するに当たって,「議決権のある株式の数の割合」及び「議決権のある株式の金額の割合」のほかに,議決権の割合でも判定することが認めら 国が締結した租税条約においては,「議決権のある株式」の保有割合を判定するに当たって,「議決権のある株式の数の割合」及び「議決権のある株式の金額の割合」のほかに,議決権の割合でも判定することが認められているものと解される。 日加租税条約の二重課税排除条項に定める割合に係る上記の判断基準 (「議決権のある株式」について,株式の数,株式の金額及び議決権の数)は,法人税法施行令22条の4第5項の規定からも明らかなとおり,また,租税条約が,法律と同様,政令よりも上位の法規範であることから当然に,同条1項各号に掲げるべき割合に係る判断基準に含まれていなければならない(法人税法23条の2第1項が,外国子会社配当益金不算入制度において, 租税条約の二重課税排除条項に定める割合に係る上記の判断基準のいずれについても政令で規定することを拒んでいないのであるから,このことは,明らかである。)。 したがって,法人税法23条の2第1項,法人税法施行令22条の4第1項2号の規定は,租税条約の二重課税排除条項に定める割合に係る上記判断 基準のうち議決権の数について定めていない点において,日加租税条約に違反し,憲法98条の条約尊重義務にも違反する。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件各更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを求める訴えの利益の有無)について ⑴ 判断枠組み納税義務者が確定申告をした後に増額更正処分がされた場合であっても,それによって納税義務者が申告を行ったという事実が消滅するわけではなく,申告によって生じた効果は上記増額更正処分の中に吸収されて引き継がれ,引き続き存続すると解するのが相当である。もっとも,法人税については申 告納税方式が採用されており(国税通則法16条1項1号,同条2項1号, 記増額更正処分の中に吸収されて引き継がれ,引き続き存続すると解するのが相当である。もっとも,法人税については申 告納税方式が採用されており(国税通則法16条1項1号,同条2項1号, 法人税法74条1項),その納付すべき税額は第一次的には納税者のする申告により確定するものとされている。そして,申告納税方式の国税につき,その申告内容に誤りがあり納付すべき税額が過大であったなどの場合には,所定の期間内に限り,更正の請求の手続によりその是正を求めることができることとされている(国税通則法23条)。このように,申告の誤りにつき 更正の請求という特別の救済手段が法定されていることからすれば,その過誤が重大であって法の定める方法以外に是正を許さないとすれば納税者の利益を著しく害すると認められるような特段の事情がない限り,納税者が,申告後にされた増額更正処分につき,更正の請求の手続を経ることなく,申告額を超えない部分の取消しを求める訴えは,不適法であるというべきである。 ⑵ 本件について本件において,本件各更正処分の過誤が重大であって法の定める方法以外に是正を許さないとすれば納税者の利益を著しく害すると認められるような特段の事情があるとは認められないから,①本件法人税更正処分のうち平成26年7月31日付けの確定申告における申告額である所得金額マイナス3 138万9411円及び納付すべき税額マイナス354円を超えない部分並びに②本件復興特別法人税更正処分のうち同日付けの確定申告における申告額である課税標準法人税額0円及び納付すべき税額マイナス6円を超えない部分の各取消しを求める訴えは,不適法であるというべきである。 ⑶ 原告の主張について これに対し,原告は,後記ア・イのとおり主張するので,以下検討する 付すべき税額マイナス6円を超えない部分の各取消しを求める訴えは,不適法であるというべきである。 ⑶ 原告の主張について これに対し,原告は,後記ア・イのとおり主張するので,以下検討する。 ア原告は,更正処分は,申告とは別個独立の行為であり,申告によって確定した税額を追加し,又は減少させるにすぎないとの考え方によれば,納税義務者は申告によって確定した税額についての納税義務を免れないことになるとして,本件訴えのうち申告額を超えない部分の取消しを求める部 分の訴えの利益がある旨主張する。 しかし,上記⑴で説示したとおり,納税義務者が確定申告をした後に増額更正処分がされた場合,申告によって生じた効果は上記増額更正処分の中に吸収されて引き継がれ,引き続き存続すると解するのが相当である。そして,本件においては,本件各処分の過誤が重大であって法の定める方法以外に是正を許さないとすれば納税者の利益を著しく害する と認められるような特段の事情があるとは認められないから,本件訴えのうち申告額を超えない部分の取消しを求める部分は,不適法であるというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ原告は,申告額が負(マイナス)の額である場合,増額更正処分のうち 申告額を超えない部分の取消しを求める訴えの利益はないと解すると,上記の「申告額を超えない部分」の意味内容は不明確・不正確であって,どの部分をいうものか特定することはできないから,相当でないとして,上記部分の取消しを求める訴えの利益はある旨主張する。 しかし,上記⑴で説示したとおり,申告によって生じた効果は上記増 額更正処分の中に吸収されて引き継がれ,引き続き存続すると解されるところ,納付すべき税額をマイナスとして申告がされた場 する。 しかし,上記⑴で説示したとおり,申告によって生じた効果は上記増 額更正処分の中に吸収されて引き継がれ,引き続き存続すると解されるところ,納付すべき税額をマイナスとして申告がされた場合,当該申告は,当該申告に係る還付金が発生することを確定する効果のみならず,同還付金を超える額の還付金が発生するものではないことを確定する効果も有するものであるから,その後にされた増額更正処分のうち申告額 を超えない部分とは,当該増額更正処分のうち当該申告に係る還付金を超える額の還付金が発生することを内容とする部分であるということができ,その部分を特定することができないものではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 小括 以上によれば,本件訴えのうち,①本件法人税更正処分のうち平成26年 7月31日付けの確定申告における申告額である所得金額マイナス3138万9411円及び納付すべき税額マイナス354円を超えない部分並びに②本件復興特別法人税更正処分のうち同日付けの確定申告における申告額である課税標準法人税額0円及び納付すべき税額マイナス6円を超えない部分の各取消しを求める部分は,不適法であるというべきである。 2 争点2(A社が法人税法施行令22条の4第1項〔2号〕に規定する「外国子会社」の要件を満たすか否か)について法人税法23条の2第1項は「外国子会社」の要件の定めを政令に委任し,同項の委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項1号及び同項2号は「外国子会社」の要件を定めている。 法人税法施行令22条の4第1項に規定する「外国子会社」の要件に関し,A社が同項1号の要件を満たさないことは当事者間に争いがなく,以下では,A社が同項2号の要件を満たすか否かについて,検討する。 法人税法施行令22条の4第1項に規定する「外国子会社」の要件に関し,A社が同項1号の要件を満たさないことは当事者間に争いがなく,以下では,A社が同項2号の要件を満たすか否かについて,検討する。 ⑴ 法人税法施行令22条の4第1項(2号)に規定する「外国子会社」の要件のうち,議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件について 法人税法23条の2第1項の委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項2号は,「外国子会社」の要件として,(A)当該外国法人の発行済株式等のうちの議決権のある株式又は出資の数又は金額のうちに当該内国法人が保有している当該株式又は出資の数又は金額の占める割合のいずれかが100分の25以上であり,かつ,(B)その状態が,当該内国法人が当該外国法 人から受ける剰余金の配当等の額の支払義務が確定する日以前6月以上(当該外国法人が当該確定する日以前6月以内に設立された法人である場合には,その設立の日から当該確定する日まで)継続していることとする旨規定する。 このうち,上記(A)の議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件は,「議決権のある株式又は出資の数又は金額」という文言に照らすと,論 理的には,「議決権のある株式の数」及び「議決権のある出資の金額」の保 有割合に係る要件の2通りを定めたものと解する余地もあれば,「議決権のある株式の数」,「議決権のある株式の金額」,「議決権のある出資の数」及び「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件の4通りを定めたものと解する余地もある。 そこで,上記(A)の議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件は, 上記の2通りの要件を定めたものと解すべきか,あるいは,上記の4通りの要件を定めたものと解すべきかについて,以下検討する。 ア 「議決権の )の議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件は, 上記の2通りの要件を定めたものと解すべきか,あるいは,上記の4通りの要件を定めたものと解すべきかについて,以下検討する。 ア 「議決権のある株式又は出資の数又は金額」の文理一般に,法令において,「A又はBのC又はD」と規定されている場合,通常,「AのC」,「AのD」,「BのC」及び「BのD」の4通りを意味す ると解されるが,文理上,「AのC」及び「BのD」の2通りを意味すると解すべきこともある(例えば,国税通則法115条2項の「再調査の請求又は審査請求について決定又は裁決をした者」は,「再調査の請求について決定をした者」及び「審査請求について裁決をした者」の2通りを意味すると解すべきである。)。 そして,法人税法施行令22条の4第1項2号の「議決権のある株式又は出資の数又は金額」についてみると,「議決権のある株式の数」,「議決権のある株式の金額」,「議決権のある出資の数」及び「議決権のある出資の金額」の4通りを意味すると解しても,いずれも不合理なものとはいえないから,上記の4通りと解するのが文理上は自然ということが できる。 イ外国子会社配当益金不算入制度の沿革次に,外国子会社配当益金不算入制度の沿革についてみると,外国子会社配当益金不算入制度を定める法人税法23条の2第1項は,平成21年法律第13号による法人税法の一部改正(平成21年改正)によっ て新たに設けられた規定であるところ,平成21年改正前の法人税法6 9条8項(旧法人税法69条8項)は,内国法人が「外国子会社」から受ける配当について,間接外国税額控除制度(内国法人が「外国子会社」から配当等を受けた場合,当該「外国子会社」の所得に対して課される外国法人税のうち当該配当等 8項)は,内国法人が「外国子会社」から受ける配当について,間接外国税額控除制度(内国法人が「外国子会社」から配当等を受けた場合,当該「外国子会社」の所得に対して課される外国法人税のうち当該配当等に対応する金額を,当該内国法人の納付する外国法人税額とみなして,外国税額控除の対象とする制度)を規定し ていた。 そして,旧法人税法69条8項及びその委任を受けた平成21年政令第105号による改正前の法人税法施行令146条1項(旧法人税法施行令146条1項)は,間接外国税額控除制度の対象となる「外国子会社」の要件を定めていたところ,「外国子会社」の要件については,旧法 人税法69条8項は法人税法23条の2第1項と同内容の定めであり,旧法人税法施行令146条1項は法人税法施行令22条の4第1項とそれぞれ同内容の定めであった(旧法人税法69条8項及び旧法人税法施行令146条1項の規定内容は,別紙2「間接外国税額控除制度における外国子会社の要件の定めの沿革」の4のとおりである。)。 このように,法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項は,旧法人税法69条8項及び旧法人税法施行令146条1項の「外国子会社」の要件の定めをそれぞれ引き継いだものである。 ウ間接外国税額控除制度における「外国子会社」の要件の定めの沿革また,間接外国税額控除制度は,昭和37年法律第45号による法人 税法の一部改正によって導入されたものであるところ,間接外国税額控除制度の創設時から最終改正時までにおける「外国子会社」の要件の定めの沿革(「Ⓐ法人税法の定め及びⒷⒶの施行当時の委任命令の定め」,「Ⓒ文理による,株式又は出資の保有割合に係る要件の自然な解釈」)は,別紙2「間接外国税額控除制度における外国子会社の要件の定めの沿革」 革(「Ⓐ法人税法の定め及びⒷⒶの施行当時の委任命令の定め」,「Ⓒ文理による,株式又は出資の保有割合に係る要件の自然な解釈」)は,別紙2「間接外国税額控除制度における外国子会社の要件の定めの沿革」 のとおりである。 これによると,旧法人税法69条8項の施行までは,「外国子会社」の要件として規定されていた「数又は金額の株式又は出資」(別紙2の2Ⓐ),「株式又は出資の数又は金額」(別紙2の3Ⓐ)という文言は,①「株式の数」又は②「出資の金額」の2通りを意味すると解するのが自然である。他方で,旧法人税法69条8項,旧法人税法施行令146条 1項の施行により,「外国子会社」の要件の文言が変更されたことによって(株式又は出資の保有割合に係る要件の分母に相当する部分に関する文言が,「その発行済株式の総数又は出資金額」から「その発行済株式又は出資…の総数又は総額」に変更された。),これらの施行後においては,「株式又は出資の数又は金額」という文言は,①「株式の数」,②「株式 の金額」,③「出資の数」及び④「出資の金額」の4通りを意味すると解するのが自然である。 エ小括以上の法人税法施行令22条の4第1項2号の規定の文理(上記ア),外国子会社配当益金不算入制度の沿革(上記イ),間接外国税額控除制度 における「外国子会社」の株式又は出資の保有割合に係る要件の定めの沿革(上記ウ)等に照らせば,同号の「議決権のある株式又は出資の数又は金額」は,①「議決権のある株式の数」,②「議決権のある株式の金額」,③「議決権のある出資の数」及び④「議決権のある出資の金額」の4通りを意味するものと解するのが相当である。 そうすると,法人税法施行令22条の4第1項2号は,議決権のある発行済株式等の要件(上記⑴の(A)の要件)と 及び④「議決権のある出資の金額」の4通りを意味するものと解するのが相当である。 そうすると,法人税法施行令22条の4第1項2号は,議決権のある発行済株式等の要件(上記⑴の(A)の要件)として,外国法人の発行済株式等のうちの,①「議決権のある株式の数」のうちに内国法人が保有している当該株式の数の占める割合が100分の25以上であること,②「議決権のある株式の金額」のうちに内国法人が保有している当該株 式の金額の占める割合が100分の25以上であること,③「議決権の ある出資の数」のうちに内国法人が保有している当該出資の数の占める割合が100分の25以上であること,④「議決権のある出資の金額」のうちに内国法人が保有している当該出資の金額の占める割合が100分の25以上であることの4通りのいずれかを満たすことと定めていると解される。 このことを前提として,本件で上記①~④のいずれかの要件を満たすか否かについて,以下検討する。 ⑵ ①「議決権のある株式の数」の保有割合に係る要件を満たすか否か前記前提事実⑶のとおり,本件配当日において,A社が発行する議決権のある株式の総数は201株であり,そのうち原告が保有するA社の議決権の ある株式の数は1株であるから,A社の議決権のある株式の総数に占める原告が保有するA社の議決権のある株式の数の割合は,201分の1であって,100分の25に満たない。 したがって,A社は,その発行済株式等のうちの①「議決権のある株式の数」のうちに内国法人(原告)が保有している当該株式の数の占める割合が 100分の25以上であるという要件(上記⑴の(A)の要件)を満たさない。 ⑶ ②「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件を満たすか否かア 「株式の金額」の解釈上記 める割合が 100分の25以上であるという要件(上記⑴の(A)の要件)を満たさない。 ⑶ ②「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件を満たすか否かア 「株式の金額」の解釈上記②の「議決権のある株式の金額」の保有割合に係る要件のうち, 「株式の金額」は,その文言からはその意味内容は一義的に明らかとはいえない。そのため,まず,「株式の金額」の意味内容をどのように解すべきかについて検討する。 (ア) 「株式の金額」について法人税法その他の関係法令には,「株式の金額」の定義を定めた規定 はないが,その文理に照らせば,「株式の金額」とは,株式の額面金額 (我が国の法制度でいえば,例えば,平成13年法律第79号による改正前の商法166条1項4号の額面のある株式の金額)をいうものと解するのが相当である。 (イ) 法人税法23条の2第1項の委任の趣旨a 法人税法23条の2第1項の趣旨 外国子会社配当益金不算入制度が導入される前の法人税法は,我が国の法人が外国において事業を行う場合に,支店を設けて事業を行うか,あるいは子会社を設けて事業を行うかについて,税制は中立的である必要があるとの考慮から,一定の外国法人(「外国子会社」)から受ける配当に係る二重課税を排除するための制度として,外国税額控 除方式を採用し,内国法人が一定の外国法人から配当等を受けた場合には,当該外国法人の所得に対して課される外国法人税のうち当該配当等に対応する金額を,当該内国法人の納付する外国法人税額とみなして,外国税額控除の対象としていた(間接外国税額控除制度)。しかし,間接外国税額控除制度は,控除額の計算が複雑であり,また, 間接外国税額控除制度の下では,内国法人は外国で得た所得を現地に留保する傾向があるとい 象としていた(間接外国税額控除制度)。しかし,間接外国税額控除制度は,控除額の計算が複雑であり,また, 間接外国税額控除制度の下では,内国法人は外国で得た所得を現地に留保する傾向があるという問題があった。そのため,「外国子会社」から受ける配当に係る二重課税排除の方式として,企業の配当政策の決定に対する税制の中立性の観点に加え,適切な二重課税の排除を維持しつつ,制度を簡素化する観点も踏まえ,間接外国税額控除制度に 代えて,外国子会社配当益金不算入制度が導入されることとなった。 このような外国子会社配当益金不算入制度の導入の経緯に照らせば,法人税法23条の2第1項は,内国法人が「外国子会社」から受ける配当に係る二重課税を排除するための制度として,間接外国税額控除制度よりも簡素な制度として外国子会社配当益金不算入制度を定め, 我が国への所得の還流をより促進することを図る趣旨であると解され る。 b 法人税法23条の2第1項の規定内容そして,法人税法23条の2第1項は,外国子会社配当益金不算入制度の対象となる「外国子会社」について,その株式又は出資の保有割合に係る要件として,その発行済株式等の数又は金額の100分の 25以上を保有することといった簡明な要件を例示した上で,具体的な定めを政令に委任している。 c 以上の法人税法23条の2第1項の趣旨(上記a)及び規定内容(上記b)等に照らせば,同項が外国子会社配当益金不算入制度の対象となる「外国子会社」の定めを政令に委ねた趣旨は,適切な二重課 税の排除を維持しつつ,間接外国税額控除制度よりも簡素な制度とし,内国法人が外国で得た所得の我が国への所得の還流をより促進するという同項の産業政策的な趣旨に整合するように,多種多様な制度から成る外国法人のうち,ど つつ,間接外国税額控除制度よりも簡素な制度とし,内国法人が外国で得た所得の我が国への所得の還流をより促進するという同項の産業政策的な趣旨に整合するように,多種多様な制度から成る外国法人のうち,どのような法人を外国子会社配当益金不算入制度の対象とするかといった専門技術的な判断を政令に委ねたものであ り,また,内国法人が外国法人に対して実質的な支配力を有しているか否かに関わらない簡明な判定基準を採用することも許容するものと解するのが相当である。 そうすると,「議決権のある株式の金額」の「株式の金額」とは,株式の額面金額であると解釈することは,上記の同項が外国子会社配 当益金不算入制度の対象となる「外国子会社」の定めを政令に委ねた趣旨と整合するものといえる。 (ウ) 小括以上のとおり,「株式の金額」の文理(上記(ア)),法人税法23条の2第1項の委任の趣旨(上記(イ))に照らせば,上記②の「議決権のあ る株式の金額」の保有割合に係る要件の「株式の金額」とは,株式の 額面金額をいうものと解するのが相当である。そうすると,「議決権のある株式の金額」とは,議決権のある株式の額面金額と解される。 イ本件について前記前提事実⑶のとおり,原告が本件配当日において保有していたクラスC株式とは,議決権はあるものの,額面金額がない株式であるとい うのである。そうすると,原告が有するA社のクラスC株式について,その額面金額を観念することができず,「議決権のある株式の金額」は存在しないというべきである。 したがって,A社は,その発行済株式等のうちの②「議決権のある株式の金額」のうちに内国法人(原告)が保有している当該株式の金額の 占める割合が100分の25以上であるという要件(上記⑴の(A)の要件)を満たさな その発行済株式等のうちの②「議決権のある株式の金額」のうちに内国法人(原告)が保有している当該株式の金額の 占める割合が100分の25以上であるという要件(上記⑴の(A)の要件)を満たさない。 ⑷ ③「議決権のある出資の数」の保有割合に係る要件を満たすか否か株式を発行する法人に対する影響力は,出資ではなく,保有する株式の数・内容に反映されることが通常であることに照らすと,法人税法施行令2 2条の4第1項2号は,外国法人が株式を発行する法人である場合には,「議決権のある株式の数」又は「議決権のある株式の金額」の各保有割合に係る要件により判定することとし,「議決権のある出資の数」又は「議決権のある出資の金額」の各保有割合に係る要件により判定することを想定していないものと解するのが相当である。 本件では,A社は株式を発行する法人であるから(前記前提事実⑶),A社が原告の「外国子会社」に該当するか否かは,「議決権のある株式の数」又は「議決権のある株式の金額」の各保有割合に係る要件により判定し,「議決権のある出資の数」の各保有割合に係る要件によって判定することはできないものというべきである。 したがって,A社は,その発行済株式等のうちの③「議決権のある出資の 数」のうちに内国法人(原告)が保有している当該出資の数の占める割合が100分の25以上であるという要件(上記⑴の(A)の要件)を満たさない。 ⑸ ④「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件を満たすか否か上記⑷で説示したとおり,法人税法施行令22条の4第1項2号は,外国 法人が株式を発行する法人である場合には,「議決権のある株式の数」又は「議決権のある株式の金額」の各保有割合に係る要件により判定することとし,「議決権のある出資の数」又 の4第1項2号は,外国 法人が株式を発行する法人である場合には,「議決権のある株式の数」又は「議決権のある株式の金額」の各保有割合に係る要件により判定することとし,「議決権のある出資の数」又は「議決権のある出資の金額」の各保有割合に係る要件により判定することを想定していないものと解するのが相当である。 本件では,A社は株式を発行する法人であるから(前記前提事実⑶),A社が原告の「外国子会社」に該当するか否かは,「議決権のある株式の数」又は「議決権のある株式の金額」の各保有割合に係る要件により判定し,「議決権のある出資の金額」の保有割合に係る要件によって判定することはできないものというべきである。 したがって,A社は,その発行済株式等のうちの④「議決権のある出資の金額」のうちに内国法人(原告)が保有している当該出資の金額の占める割合が100分の25以上であるという要件(上記⑴の(A)の要件)を満たさない。 ⑹ 原告の主張について これに対し,原告は,後記ア~ウのとおり主張するので,以下検討する。 ア 「出資」又は「出資の金額」について原告は,内国法人の外国法人に対する出資が,設立時又は新設合併時に行われただけである場合や,発起人と募集株式の引受人の出資が1株当たりの株式発行価額と同額で行われている場合等,実情に応じた個別的な判 断が可能な場合は,発行株式の引受けのための金銭の払込み又はその他の 資産の給付を「出資」とし,その払込みの額又はその給付の額を「出資の金額」として「外国子会社」該当性の判断基準とすることができる旨主張する。 しかし,上記⑷及び⑸で説示したとおり,法人税法施行令22条の4第1項2号は,株式を発行する外国法人が「外国子会社」に該当するか 否かは,「議決 当性の判断基準とすることができる旨主張する。 しかし,上記⑷及び⑸で説示したとおり,法人税法施行令22条の4第1項2号は,株式を発行する外国法人が「外国子会社」に該当するか 否かは,「議決権のある出資の金額」の各保有割合に係る要件により判定することを想定していないものと解される。このことは,内国法人の外国法人に対する出資が,設立時(新設合併による設立を含む。)又は新設合併時に行われただけである場合や,発起人と募集株式の引受人の出資が1株当たりの株式発行価額と同額で行われている場合等においても同 様であると解すべきである(なお,原告が指摘するOECDモデル租税条約及びカナダ事業法人法の規定は,その法規範の性質・規定内容等に照らすと,我が国の法令である法人税法施行令22条の4第1項2号の解釈に直ちに影響を及ぼすものではない。)。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 イ 「株式の金額」について原告は,内国法人の外国法人に対する出資が,設立時又は新設合併時に行われただけである場合や,発起人と募集株式の引受人の出資が1株当たりの株式発行価額と同額で行われている場合等,実情に応じた個別的な判断が可能な場合は,発行株式の引受けのための金銭の払込みの額又はその 他の資産の給付の額を「株式の金額」として「外国子会社」該当性の判断基準とすることができる旨主張する。 しかし,「株式の金額」に株式の引受けのための金銭の払込額その他の資産の給付額を含むと解することは「株式の金額」という文言に照らして自然な解釈であるとはいい難い(上記⑶ア(ア))。また,内国法人の外 国法人に対する出資が,設立時(新設合併による設立を含む。)又は新設 合併時に行われただけである場合等の事情がある場合には,「外国 あるとはいい難い(上記⑶ア(ア))。また,内国法人の外 国法人に対する出資が,設立時(新設合併による設立を含む。)又は新設 合併時に行われただけである場合等の事情がある場合には,「外国子会社」に該当するか否かを個別的に判断すべきであるとの解釈は,「外国子会社」について簡明な判定基準とすることを許容する法人税法23条の2第1項の委任の趣旨(上記⑶ア(イ))と整合しないものというべきである。 以上によれば,「株式の金額」に,出資の金額を含むと解釈することはで きないというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ウ支配力(影響力)について原告は,「外国子会社」に該当するか否かの判断は,外国法人の経営判断への内国法人の支配力(影響力)をもって判断すべきであるから,法人 税法施行令22条の4第1項2号に定める「割合」には議決権の割合が含まれる旨主張する。 そこで検討すると,上記⑴エのとおり,法人税法施行令22条の4第1項2号は,法人税法23条の2第1項に規定する政令で定める要件として,①「議決権のある株式の数」,②「議決権のある株式の金額」,③ 「議決権のある出資の数」及び④「議決権のある出資の金額」の各保有割合に係る要件を定めているところ,「議決権のある株式」(上記①・②)及び「議決権のある出資」(上記③・④)は,その文理に照らせば,それぞれ,議決権のある株式又は議決権のある出資そのものであって,議決権の割合を含むものではないと解するのが自然である(なお,租税特別 措置法66条の6第1項1号ロが,内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例の対象となる外国関係会社について,「議決権…の数」という文言を用いて,議決権の数の保有割合に係る要件を定めていることに鑑みても, 条の6第1項1号ロが,内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例の対象となる外国関係会社について,「議決権…の数」という文言を用いて,議決権の数の保有割合に係る要件を定めていることに鑑みても,上記の法人税法23条の2第1項2号についての文理解釈は自然なものというべきである。)。 また,法人税法施行令22条の4第1項1号及び同項2号の各文言に 照らせば,同項1号は,議決権のないものも含めた全ての発行済株式等の保有割合に係る要件を定め,同項2号は,発行済株式等のうち,議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件を定めたものと解するのが,同項の構造にも整合する解釈であるといえる。 さらに,以上のように解釈することは,「外国子会社」の判定において 簡明な基準を許容する上記の法人税法23条の2第1項の趣旨とも整合するものといえる。 以上の法人税法施行令22条の4第1項2号の文理,同項の構造及び法人税法23条の2第1項の趣旨に照らせば,法人税法施行令22条の4第1項2号に定める「割合」には,議決権の数又は議決権の割合を含 まないと解するのが相当である(上記の解釈は,原告が指摘するカナダの会社法制度,我が国が締結した租税条約における「外国子会社」の要件についての定め及びOECDモデル租税条約コメンタリーにおける解説の内容に鑑みても,左右されるものではない。)。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑺ 小括以上によれば,A社は,法人税法施行令22条の4第1項(2号)に規定する「外国子会社」の要件を満たさない。 3 争点3(法人税法施行令22条の4第1項が法人税法23条の2第1項に適合するか否か)について 法人税法23条の2第1項は,外国子会社配当益金不算入制度の対象となる「外 を満たさない。 3 争点3(法人税法施行令22条の4第1項が法人税法23条の2第1項に適合するか否か)について 法人税法23条の2第1項は,外国子会社配当益金不算入制度の対象となる「外国子会社」について,当該内国法人が保有しているその株式又は出資の数又は金額がその発行済株式等の100分の25以上に相当する数又は金額となっていることその他の政令で定める要件を備えている外国法人をいう旨規定する。同項の文言からは,同項が,「外国子会社」の要件として,議決権の割合 に係る要件を定めることを政令に委任している旨を明確に読み取ることはでき ない。 また,上記2⑶ア(イ)で説示したとおり,法人税法23条の2第1項が外国子会社配当益金不算入制度の対象となる「外国子会社」の定めを政令に委任した趣旨は,適切な二重課税の排除を維持しつつ,間接外国税額控除制度よりも簡素な制度とし,内国法人が外国で得た所得の我が国への所得の還流をより 促進するという同項の産業政策的な趣旨に整合するように,多種多様な制度から成る外国法人のうち,どのような法人を外国子会社配当益金不算入制度の対象とするかといった専門技術的な判断を政令に委ねたものであり,また,内国法人が外国法人に対して実質的な支配力を有しているか否かに関わらない簡明な判定基準を採用することも許容するものと解するのが相当である。 このような同項の委任の趣旨からすると,同項の委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項が,「外国子会社」の要件として,発行済株式等の保有割合に係る要件(同項1号)及び議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件(同項2号)を定め,議決権の数又は議決権の割合に係る要件を定めていないことが不合理であるということはできない。 以上の法人税法23条の2 )及び議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件(同項2号)を定め,議決権の数又は議決権の割合に係る要件を定めていないことが不合理であるということはできない。 以上の法人税法23条の2第1項の文言,同項の委任の趣旨及び同項の委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項の規定内容等に照らすと,同項が,法人税法23条の2第1項の「外国子会社」の要件として,発行済株式等の保有割合に係る要件(法人税法施行令22条の4第1項1号)及び議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件(同項2号)を定め,議決権の数又は議決 権の割合に係る要件を定めていないことが,法人税法23条の2第1項の委任の趣旨を逸脱するものということはできない。 4 争点4(法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項が憲法14条1項に適合するか否か)について⑴ 判断枠組み 国民の租税負担に係る規定を策定するに当たっては,財政・経済・社会政 策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく,課税要件の定めについて,極めて専門技術的な判断を必要とすることから,租税法の分野における取扱いの区別は,その立法目的が正当なものであり,かつ,当該立法において具体的に採用された区別の態様が上記の目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,その合理性を否定することがで きず,これを憲法14条1項の規定に違反するものということはできないものと解するのが相当である(最高裁昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照)。 ⑵ 本件についてこれを本件についてみると,法人税法23条の2第1項は,上記2⑶ア (イ)で説示したとおり,内国法人が「外国子会社」から受ける配当に係る二重 39巻2号247頁参照)。 ⑵ 本件についてこれを本件についてみると,法人税法23条の2第1項は,上記2⑶ア (イ)で説示したとおり,内国法人が「外国子会社」から受ける配当に係る二重課税を排除するための制度として,間接外国税額控除制度よりも簡素な制度として外国子会社配当益金不算入制度を定め,我が国への所得の還流をより促進することを目的とする規定であると解されるところ(同項の委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項の目的もこれと同様であると解され る。),内国法人が「外国子会社」から受ける配当に係る二重課税を排除する必要があることは明らかであり,従来の間接外国税額控除制度よりも簡素な制度を定めて国民の利便性を向上させ,我が国への所得の還流を促進するとの産業政策的な考慮から外国子会社配当益金不算入制度を設けることには合理性があるといえる。したがって,上記目的は正当であるというべきである。 そして,法人税法23条の2第1項は,上記目的を達成するために,外国子会社配当益金不算入制度を定めている。同項及び同項の委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項は,外国子会社配当益金不算入制度の対象となる「外国子会社」の要件として,発行済株式等の保有割合に係る要件(1号)及び議決権のある発行済株式等の保有割合に係る要件(2号)等を定めてい る。外国法人は多種多様な制度から成り,内国法人が外国法人に対して外国 子会社配当益金不算入制度の対象とするにふさわしい影響力を有する全ての場合を過不足なく捕捉する要件を定めることは極めて困難であるというべきであるから,「外国子会社」の要件を定めるに当たって,一定程度の簡明な基準を採用したとしても,これをもって直ちに不合理であるということはできない。また,内国法人が外国法人に対 て困難であるというべきであるから,「外国子会社」の要件を定めるに当たって,一定程度の簡明な基準を採用したとしても,これをもって直ちに不合理であるということはできない。また,内国法人が外国法人に対して一定の議決権を保有している場 合には,その影響力は,議決権のある発行済株式等の数又は金額に反映されるのが通常であるから,議決権の数又は議決権の割合を判定の基準として定めなかったとしても,このことをもって,上記目的との関連で不合理であるということはできない。したがって,法人税法23条の2第1項及びその委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項が外国子会社配当益金不算入制 度の対象となる「外国子会社」の要件として,議決権の数又は議決権の割合に係る要件を定めず,上記の簡明な要件を定めたことは,上記目的との関連において,不合理であるということはできない。 ⑶ 原告の主張についてこれに対し,原告は,外国子会社配当益金不算入制度において議決権の数 又は議決権割合を「外国子会社」の判定基準として定めていないのであれば,株式会社に対する企業支配力を端的に示すものが議決権の数又は議決権割合であるにもかかわらず,100分の25以上の割合の議決権を保有している内国法人が外国子会社配当益金不算入制度の適用から排除されてしまうことになるが,外国法人の発行済株式等の数又は金額の100分の25以上を有 する内国法人は,当該外国法人に対する議決権の割合にかかわらず,外国子会社配当益金不算入制度の対象となり得ることになるから,不合理な差別である旨主張する。 しかし,上記⑵で説示したとおり,法人税法23条の2第1項及びその委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項が外国子会社配当益金不算入制 度の対象となる「外国子会社」の要件のうち株式又 る。 しかし,上記⑵で説示したとおり,法人税法23条の2第1項及びその委任を受けた法人税法施行令22条の4第1項が外国子会社配当益金不算入制 度の対象となる「外国子会社」の要件のうち株式又は出資の保有割合に係る 要件として議決権の数又は議決権の割合を基準として採用せず,上記の簡明な基準を採用したことは,上記の法人税法23条の2第1項の目的との関連において,不合理であるということはできないから,憲法14条1項に違反するということはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑷ 小括以上によれば,法人税法23条の2第1項,法人税法施行令22条の4第1項は,憲法14条1項に適合するというべきである。 5 争点5(法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項2号が日加租税条約21条2項(b)に適合するか否か)について ⑴ 検討ア日加租税条約21条2項(b)日加租税条約21条2項(b)は,日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令に従い,カナダにおいて取得される所得が,カナダの居住者である法人によりその議決権 のある株式又はその発行済株式の少なくとも25%を所有する日本国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には,日本国の租税からの控除を行うに当たり,当該配当を支払う法人によりその所得について納付されるカナダの租税を考慮に入れるものとする旨規定するところ,上記の「議決権のある株式」とは,その文理に照らせば,議決権そのもので はなく,議決権のある株式をいうものと解するのが相当である。 イ日加租税条約3条2項また,日加租税条約3条2項は,一方の締約国による日加租税条約の適用上,日加租税条 決権そのもので はなく,議決権のある株式をいうものと解するのが相当である。 イ日加租税条約3条2項また,日加租税条約3条2項は,一方の締約国による日加租税条約の適用上,日加租税条約において定義されていない用語は,文脈により別に解釈すべき場合を除くほか,日加租税条約の適用を受ける租税に関する当該 一方の締約国の法令における当該用語の意義を有するものとする旨規定す る。「文脈により別に解釈すべき場合」に当たるか否かは,国内法上の用語の意義に基づく解釈と租税条約の締結の際の前提とされていたと認められる文脈に基づく解釈とを比較して決せられ,国内法上の用語の意義に基づく解釈が不合理な解釈になる場合には,国内法上の用語の意義に基づく解釈が否定されることとなる(ここでいう「文脈」とは,条約文のほか, 条約の締結に関連して当事国の間でされた条約の関係合意及び条約の締結に関連して当事国の1又は2が作成した文書であってこれらの当事国以外の当事国が条約の関係文書として認めたものをいうと解される〔条約法に関するウィーン条約31条2項参照〕。)。 日加租税条約において,「議決権のある株式」の定義規定はないから, 文脈により別に解釈すべき場合でない限り,我が国の国内法上の意義を有するものと解釈すべきことになる。我が国の国内法上,「議決権のある株式」の定義規定はないものの,上記2⑹ウのとおり,法人税法施行令22条の4第1項2号の「議決権のある株式」とは,その文理等に照らし,議決権のある株式と解すべきである。そして,日加租税条約の条約 文,日加租税条約の締結に関連する関係合意及び関係文書において,「議決権のある株式」について特別な意義が付与されていたといった事情はないから,「文脈により別に解釈すべき場合」に当たらない 約 文,日加租税条約の締結に関連する関係合意及び関係文書において,「議決権のある株式」について特別な意義が付与されていたといった事情はないから,「文脈により別に解釈すべき場合」に当たらない。 そうすると,我が国の国内法の適用上,日加租税条約21条2項(b)の「議決権のある株式」とは,議決権のある株式を意味すると解すべきで ある。 ウ以上によれば,法人税法23条の2第1項,法人税法施行令22条の4第1項2号は,日加租税条約21条2項(b)に適合するというべきである。 ⑵ 原告の主張についてこれに対し,原告は,日加租税条約21条2項(b)と日英租税条約10条 2項(a)の日本語正文及び英語正文のそれぞれの文言を比較して,日加租税 条約21条2項(b)の規定は,同規定にいう「議決権のある株式」の保有割合を判定するに当たって,議決権の割合によってすることを認めている旨主張する。 しかし,日加租税条約21条2項(b)の「議決権のある株式」とは,議決権のある株式と解すべきことは上記⑴アのとおりである。また,日加租税条 約21条2項(b)と日英租税条約10条2項(a)との文言の相違が,上記⑴イの「文脈により別に解釈すべき場合」に当たるというべき事情は見当たらないから,このことを理由として日加租税条約21条2項(b)の「議決権のある株式」について議決権の割合を意味すると解することはできない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 小括したがって,法人税法23条の2第1項,法人税法施行令22条の4第1項は,日加租税条約21条2項(b)に適合するものである(条約尊重義務を定めた憲法98条2項に違反するということもできない。)。 6 まとめ 以上によれば,A社は,法人税法2 2条の4第1項は,日加租税条約21条2項(b)に適合するものである(条約尊重義務を定めた憲法98条2項に違反するということもできない。)。 6 まとめ 以上によれば,A社は,法人税法23条の2第1項にいう「外国子会社」に該当しないというべきである。そして,弁論の全趣旨によれば,争点2~5に関する部分を除き,計算の基礎となる金額及び計算方法については当事者間に争いがなく,その算定過程に違法,不合理な点はない。したがって,本件各処分は,適法であるというべきである。 第4 結論よって,本件訴えのうち主文第1項記載の部分は不適法であるからこれを却下することとし,その余の原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官新宮智之 裁判官山田慎悟 別紙1課税の根拠及び適法性 1 本件各更正処分について⑴ 本件各更正処分の根拠 ア本件法人税更正処分の根拠原告の本件事業年度の法人税に係る所得金額,納付すべき税額,翌期へ繰り越すべき欠損金額等は,次のとおりである。 (ア) 原告の所得金額(別表「更正処分等」①欄)5億2236万4397円 上記金額は,下記aの金額に下記bの金額を加算し,下記c~eの金額を減算した金額である。 a 申告所得金額(別表「確定申告」①欄)マイナス3138万9411円上記金額は,原告の本件事業年度の法人税に係る確定申告書の「所得 金額又は欠損金額」欄に記載された金額である。 b 外国法人から受ける配当等の益金 告」①欄)マイナス3138万9411円上記金額は,原告の本件事業年度の法人税に係る確定申告書の「所得 金額又は欠損金額」欄に記載された金額である。 b 外国法人から受ける配当等の益金算入漏れ5億8634万7458円上記金額は,本件配当の額645万7500カナダドルの円換算額6億1720万7850円(円換算レートとして,本件配当日における 電信売買相場の仲値である1カナダドル当たり95.58円〔以下「配当日レート」という。〕を適用した金額)から本件配当の額の100分の5に相当する金額である3086万0392円を差し引いた金額で,A社が法人税法23条の2第1項及び法人税法施行令22条の4第1項に規定する「外国子会社」に該当するとして,原告が益金 の額に算入していないものであるが,A社は原告の「外国子会社」に 該当しないことから,本件配当が法人税法23条の2第1項に規定する益金不算入の対象となる配当に該当せず,益金の額に算入されるため,本件事業年度の所得金額に加算すべき金額である。 c 外国源泉税額の益金算入額3086万0392円 上記金額は,本件配当に係る外国源泉税の額32万2875カナダドルを配当日レートで換算した金額で,原告が法人税法39条の2(平成27年法律第9号による改正前のもの。以下同じ。)の規定が適用されるとして損金の額に算入していないものであるが,本件配当が上記bに記載した理由により法人税法23条の2第1項に規定する配当 に該当しないことから,上記金額に同法39条の2の規定は適用されず損金の額に算入されるため,本件事業年度の所得金額から減算すべき金額である。 d 寄附金の損金不算入額の減少額149万2500円 上記金額は,原告が本件事業年度の法人税に係 適用されず損金の額に算入されるため,本件事業年度の所得金額から減算すべき金額である。 d 寄附金の損金不算入額の減少額149万2500円 上記金額は,原告が本件事業年度の法人税に係る確定申告書に添付した寄附金の損金算入に関する明細書の「所得金額仮計」欄に上記bの金額を加算し,上記cの金額を減算して再計算した寄附金の損金不算入額の減少額で,本件事業年度の所得金額から減算すべき金額である。 e 繰越欠損金の損金算入額 24万0758円上記金額は,本件法人税更正処分に伴い損金の額に算入される前事業年度から繰り越された欠損金の全額で,本件事業年度の所得金額から減算すべき金額である。 (イ) 課税所得金額に対する法人税額(別表「更正処分等」②欄) 1億3236万2820円 上記金額は,上記(ア)の所得金額5億2236万4000円(国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)のうち,800万円相当額は法人税法66条2項及び租税特別措置法42条の3の2第1項(平成27年法律第9号による改正前のもの)に規定する100分の15の税率を乗じて算出した金額及び800万円 相当額を超える金額は法人税法66条1項(平成27年法律第9号による改正前のもの)に規定する100分の25.5の税率を乗じて算出した金額の合計金額である。 (ウ) 控除税額(別表「更正処分等」③欄)354円 上記金額は,法人税法68条(平成29年法律第4号による改正前のもの)に規定する法人税額から控除される所得税の額で,原告の本件事業年度の法人税に係る確定申告書の「所得税の額」欄に記載された金額である。 (エ) 差引所得に対する法人税額(別表「更正処分等」④欄) 1億3236万24 される所得税の額で,原告の本件事業年度の法人税に係る確定申告書の「所得税の額」欄に記載された金額である。 (エ) 差引所得に対する法人税額(別表「更正処分等」④欄) 1億3236万2400円上記金額は,上記(イ)の金額から上記(ウ)の金額を差し引いた金額(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てたもの)である。 (オ) 既に納付の確定した法人税額(別表「更正処分等」⑤欄) マイナス354円上記金額は,原告の本件事業年度の法人税に係る確定申告書の「この申告による還付金額」欄に記載された還付金額である。 (カ) 差引納付すべき法人税額(別表「更正処分等」⑥欄)1億3236万2700円 上記金額は,上記(エ)の金額から上記(オ)の金額を差し引いた金額(国 税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てたもの)である。 (キ) 翌期へ繰り越す欠損金額(別表「更正処分等」⑧欄)0円上記(ア)のとおり,本件事業年度において欠損金は生じておらず,また, 前事業年度から繰り越された欠損金の全額が本件法人税更正処分により控除されたことから,翌期へ繰り越す欠損金はない。 イ本件復興特別法人税更正処分の根拠原告の本件課税事業年度の課税標準法人税額,復興特別法人税額等は,次のとおりである。 (ア) 課税標準法人税額(別表「更正処分等」⑩欄)1億3236万2000円上記金額は,課税所得金額に対する法人税額1億3236万2820円(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法47条1項)から国税通則法118条1項の 規定により1000円未満の端数を切り捨てたものである。 (イ) 復興特別法人税額(別表 ための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法47条1項)から国税通則法118条1項の 規定により1000円未満の端数を切り捨てたものである。 (イ) 復興特別法人税額(別表「更正処分等」⑪欄)1323万6200円上記金額は,上記(ア)の課税標準法人税額1億3236万2000円に,東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確 保に関する特別措置法48条に規定する100分の10の税率を乗じて算出した金額である。 (ウ) 控除税額(別表「更正処分等」⑫欄)6円上記金額は,東日本大震災からの復興のための施策を実施するために 必要な財源の確保に関する特別措置法49条1項に規定する復興特別法 人税額から控除される復興特別所得税の額で,原告の本件課税事業年度の復興特別法人税に係る確定申告書の「復興特別所得税の額」欄に記載された金額である。 (エ) 差引復興特別法人税額(別表「更正処分等」⑬欄)1323万6100円 上記金額は,上記(イ)の金額から上記(ウ)の金額を差し引いた金額(国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てたもの)である。 (オ) 既に納付の確定した復興特別法人税額(別表「更正処分等」⑭欄)マイナス6円 上記金額は,原告の本件課税事業年度の復興特別法人税に係る確定申告書の「この申告による還付金額」欄に記載された金額である。 (カ) 差引納付すべき復興特別法人税額(別表「更正処分等」⑮欄)1323万6100円上記金額は,上記(エ)の金額から上記(オ)の金額を差し引いた金額(国 税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てたもの)である。 ⑵ 本件各更正処分の適法性本件法人税更正処分に ,上記(エ)の金額から上記(オ)の金額を差し引いた金額(国 税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てたもの)である。 ⑵ 本件各更正処分の適法性本件法人税更正処分における所得金額,納付すべき法人税額及び翌期へ繰り越す欠損金額並びに本件復興特別法人税更正処分における納付すべき復興特別 法人税額は,いずれも上記⑴の各金額と同額である。 2 本件各賦課決定処分について⑴ 本件各賦課決定処分の根拠ア法人税に係る過少申告加算税賦課決定処分の根拠(別表「更正処分等」⑨欄) 本件法人税更正処分に伴って賦課される過少申告加算税の額は,本件法人 税更正処分による差引納付すべき法人税額1億3236万2700円(上記1⑴ア(カ))から国税通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額(1億3236万円)に100分の10の割合(同法65条1項〔平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。〕に定める割合)を乗じて算出した1323万6000円に,上記納付 すべき法人税額1億3236万2700円のうち50万円を超える部分に相当する税額1億3186万2700円から同法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額(1億3186万円)に100分の5の割合(同法65条2項〔平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。〕に定める割合)を乗じて算出した金額659万3000円 を加算した1982万9000円である。 なお,本件法人税更正処分に基づき,原告が新たに納付すべき法人税額の計算の基礎となった事実のうちに,本件法人税更正処分前の法人税の計算の基礎とされていなかったことについて同法65条4項(平成28年法律第15号による改正前のもの。以 原告が新たに納付すべき法人税額の計算の基礎となった事実のうちに,本件法人税更正処分前の法人税の計算の基礎とされていなかったことについて同法65条4項(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)所定の「正当な理由」があると認め られるものはない。 イ復興特別法人税に係る過少申告加算税賦課決定処分の根拠(別表「更正処分等」⑯欄)本件復興特別法人税更正処分に伴って賦課される過少申告加算税の額は,本件復興特別法人税更正処分による差引納付すべき復興特別法人税額132 3万6100円(上記1⑴イ(カ))から国税通則法118条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額(1323万円)に100分の10の割合(同法65条1項に定める割合)を乗じて算出した132万3000円に,上記納付すべき復興特別法人税額1323万6100円のうち50万円を超える部分に相当する税額1273万6100円から同法11 8条3項の規定に基づき1万円未満の端数金額を切り捨てた後の金額(12 73万円)に100分の5の割合(同法65条2項に定める割合)を乗じて算出した金額である63万6500円を加算した195万9500円である。 なお,本件復興特別法人税更正処分に基づき,原告が新たに納付すべき復興特別法人税額の計算の基礎となった事実のうちに,本件復興特別法人税更正処分前の復興特別法人税の計算の基礎とされていなかったことについて同 法65条4項所定の「正当な理由」があると認められるものはない。 ⑵ 本件各賦課決定処分の適法性本件各賦課決定処分により原告に賦課された各過少申告加算税の金額(別表「更正処分等」⑨及び⑯欄)は,いずれも上記⑴ア及びイの金額と同額である。 以上 本件各賦課決定処分により原告に賦課された各過少申告加算税の金額(別表「更正処分等」⑨及び⑯欄)は,いずれも上記⑴ア及びイの金額と同額である。 以上
▼ クリックして全文を表示