平成6(ネ)2275 富国生命保険休職命令無効確認

裁判年月日・裁判所
平成7年8月30日 東京高等裁判所
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判決文本文4,185 文字)

主文 一本件控訴を棄却する。 二控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一控訴人 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求を却下又は棄却する。 3 訴訟費用は、第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。 二被控訴人主文と同旨第二事案の概要及び証拠関係本件事案の概要は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」中の「第二事案の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。 一原判決五枚目表四行目の末尾に続けて「なお、被控訴人は、本件第一回休職命令がなされた当時、頚肩腕障害の治療を継続中であり、かつ、それに関して労働者災害補償保険法による療養補償給付を受給中であったから、そのまま就労をさせた場合、頚肩腕障害の症状が増悪する具体的危険性があったことは明白である。」を加える。 二同五枚目裏四行目の「いえないが、」を「いえず、したがって治療を継続中であるが、」と改める。 第三証拠関係(省略)第四争点に対する判断当裁判所も、被控訴人の本訴請求は原判決が認容した限度において正当としてこれを認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正、付加するほか、原判決の「第三判断」に記載の理由説示と同一であるからこれをここに引用する。 一原判決七枚目表八行目の「原告は、」の次に「内務職員として内勤の一般事務に従事していたが(乙七)、」を加え、同一〇枚目表六行目の「していない」を「しておらず、その治療を継続中である」と改める。 二同一三枚目裏六行目の次に行を改めて次のとおり加える。 「被控訴人は、平成四年一二月一日以降右休職の発令日まで就業規則に従って通常勤務を行った(当審における被控訴人本人尋問の結果)。」三同一四枚目表九行目の冒頭から同一 行を改めて次のとおり加える。 「被控訴人は、平成四年一二月一日以降右休職の発令日まで就業規則に従って通常勤務を行った(当審における被控訴人本人尋問の結果)。」三同一四枚目表九行目の冒頭から同一四枚目裏一行目の末尾までを次のとおり改める。 「しかしながら、就業規則によって認められる控訴人の休職制度全般の趣旨に照らすと、同規則四八条一項五号の休職事由は、職員本人に何らかの帰責事由があり、それが原因となって、本人をその業務に従事させることが不適当と認められるような事由をいうものと解するのが相当であるところ、被控訴人が頚肩腕障害に罹患したことや、それが治癒せず将来再燃、増悪する可能性があることなどが、ただちに、被控訴人の責めに帰すべき事由によるものであるとまでいえないことは明らかであるから、右症状の再燃、増悪の可能性があることをもって、同条項五号の休職事由があるということはできない。したがって、右事由を根拠とする控訴人の第一回休職命令は、理由がなくその効力がない。 なお、成立に争いのない乙第七号証によれば、控訴人においては、同条項五号を、職員本人の帰責事由の有無にかかわらず、単に、職員を該当業務に従事させることが不適当と認められる場合には直ちに休職を命ずることができるものと解しているかのようであるが、そのような解釈は、右五号前段の「本人の帰責事由により業務上必要な資格を失うなど、」との明文の規定を無視することになるし、さらには、職員に対し前記のように無給などの不利益をもたらす休職制度の基本となる同条項一号から六号までの詳細な要件そのものを無意味なものとならしめることになるから、到底採用できない。」四同一五枚目表二行目の「相当程度の支障をきたす場合」を「支障をきたす場合」と、同一五枚目裏三行目の「本件」から同六行目の末尾までを「本件の なものとならしめることになるから、到底採用できない。」四同一五枚目表二行目の「相当程度の支障をきたす場合」を「支障をきたす場合」と、同一五枚目裏三行目の「本件」から同六行目の末尾までを「本件の場合、被控訴人の頚肩腕障害が治癒しておらず、その症状が再燃したり、増悪したりする可能性があるというだけでは足りず、被控訴人の右傷病が、就業規則四八条一項一号の傷病欠勤の場合と実質的に同視できるものであって、通常勤務に支障を生ずる程度のものである場合に、はじめて同条項六号の休職事由があるというべきである。」とそれぞれ改める。 五同一六枚目表二行目の「として、」の次に「当時、被控訴人の頚肩腕障害が治癒しておらず、治療を継続中であったこと、」を、同七行目の「あること」の次に「平成五年一月一三日及び同年二月一七日の右組合との各団体交渉においても、組合及び被控訴人は、被控訴人に症状再燃の恐れがあり、現状のままの勤務であれば被控訴人の疾病が増悪するが、その場合は全て控訴人に責任がある旨の主張を繰り返し行っていたこと(乙第七号証)」をそれぞれ加える。 六同一六枚目裏四行目の「であるから」から同七行目の末尾までを「である。団交の席における組合等の主張も、被控訴人の職場環境に配慮して欲しいというものであり、客観的理由に基づき通常勤務に支障が生ずるというものではない。」と改め、同八行目の冒頭から同一七枚目表九行目の末尾までを次のとおり改める。 「そして、前記一の1ないし8及び二の2(一)(1)ないし(5)の認定事実、殊に、控訴人は、すでに約一年四か月にわたる長期の傷病欠勤をしていた被控訴人から平成四年八月二四日に医師の診断書を添えて出勤の申し出を受け(就業規則三四条三項)、検討のすえ、同年一〇月一四日をもって、被控訴人が就業規則に従った通常勤務を行うことができ 勤をしていた被控訴人から平成四年八月二四日に医師の診断書を添えて出勤の申し出を受け(就業規則三四条三項)、検討のすえ、同年一〇月一四日をもって、被控訴人が就業規則に従った通常勤務を行うことができるものと判断してその傷病欠勤の扱いを解くこととし、被控訴人に対し同年一二月一日から出勤されたいとの命令を発していること、これに基づき、被控訴人は、同日から職場に復帰し、以後第一回休職命令が発令されるまでの約三か月間就業規則に従って通常勤務を行っていたこと、この間、被控訴人は、週一回程度、就業時間外に通院治療を受けていたが、頚肩腕障害の症状が特別に悪化するようなことはなかったことなどを総合すると、平成五年三月一日時点において、被控訴人が就業規則四八条一項一号の場合と実質的に同視しうるような長期間の傷病欠勤を継続し、被控訴人の傷病の内容、程度が通常勤務に支障を生ずるほどのものであったとは到底認められないから、同条項一号に準ずる休職事由があるとは認められず同条項六号の休職事由には該当しないというべきである。 また右一号に準ずる休職事由が存在しないことは、次のようにいうこともできる。すなわち、控訴人は、被控訴人の頚肩腕障害を業務外及び通勤災害以外の傷病(就業規則三一条一項)として取り扱っているものであるところ、控訴人の会社における、職員の業務外及び通勤災害以外の傷病による欠勤及び休職の制度は、基本として、(一) 職員が業務外等の傷病による欠勤の申出をし控訴人がその事実を認めた場合に傷病欠勤として取り扱われ、(二) その傷病欠勤が勤続年数に応じて定められている一定の期間(同規則三二条一項一号)以上継続した場合には六か月の休職が命ぜられ(同規則四八条一項一号)、例外的に右休職の要件が備わっていないときでも、それに準ずるやむを得ない理由があると認められると 一定の期間(同規則三二条一項一号)以上継続した場合には六か月の休職が命ぜられ(同規則四八条一項一号)、例外的に右休職の要件が備わっていないときでも、それに準ずるやむを得ない理由があると認められるときはその都度定める期間の休職が命ぜられ(同条項六号)、(三) さらに、右六か月の休職期間満了後も傷病欠勤が止まず復職が命ぜられないときは、職員は自動退職になる(同規則五七条二号)というものである。したがって、同規則三二条一項一号に定める期間の傷病欠勤をしても、その後、医師の証明書を提出して出勤の申し出をし(規則三四条三項)会社がこれを承認して出勤を命じ、これに基づいて職員が相当の長期間にわたり就業規則に従った通常勤務を行っている場合には、もはや右休職を命ずる前提としての傷病欠勤の存在がなくなるのであるから、傷病欠勤と短期間の出勤を繰り返すなどの特段の事情のない限り、たとえ、職員の傷病が治癒しておらず治療中であり、将来その症状が再燃し増悪する可能性がある場合であっても、それを理由として職員に対し無給等の不利益を伴う右休職処分を命ずることは許されないというべきである。本件においては、被控訴人の頚肩腕障害が治癒せず治療中でありその症状は将来再燃、増悪する可能性があるが、被控訴人は、長期間の傷病欠勤後、控訴人の承認の下に復職してすでに約三か月通常勤務を行っていたものであるから、右特段の事情があるとは認められず、控訴人は、被控訴人に対し右休職処分ができないものである。 なお、控訴人が、被控訴人の頚肩腕障害を業務に起因するものと判断しているのであるならば、業務上災害による傷病としての措置(同規則三〇条一項一一号など)を採らずに、直ちに被控訴人に対し同規則四八条一項一号、六号による休職を命じるのは相当でないというべきである。また、控訴人は、被控訴人から頚 上災害による傷病としての措置(同規則三〇条一項一一号など)を採らずに、直ちに被控訴人に対し同規則四八条一項一号、六号による休職を命じるのは相当でないというべきである。また、控訴人は、被控訴人から頚肩腕障害が業務に起因するものであるとしてその責任を問われることを回避するため予防手段として右休職処分を命ずることも許されない。 そうすると、控訴人の第一回休職命令は、同条項一号、六号の事由を根拠としても理由がなく、その効力がない。」第五結論よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官丹宗朝子新村正人市川頼明)

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