平成15(ネ)166 傭車料請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成16年3月24日 広島高等裁判所 広島地方裁判所 福山支部 平成14(ワ)148
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判決文本文6,353 文字)

主文 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人に対し,104万8840円及び内金94万8840円に対する平成11年6月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを4分し,その3を被控訴人の,その余を控訴人の各負担とする。 5 この判決の第2項は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,142万9685円及び内金129万9685円に対する平成11年6月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要 1 本件は,控訴人が,被控訴人に対し,被控訴人の過失に基づく交通事故により控訴人所有の車両が全損し,控訴人は傭車を余儀なくされたとして,傭車料と弁護士費用の合計142万9685円及び内金129万9685円(傭車料)に対する不法行為の後である平成11年6月18日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。原判決は,傭車の必要性が認められないとして控訴人の請求を全部棄却したため,控訴人が控訴した。 その他の事案の概要は,次項に付加するほかは,原判決の事実及び理由中の「第2 事案の概要」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。 2 当審における当事者の主張(1) 控訴人ア控訴人A支店における本件事故前3か月の車両の稼働状況からしても,稼働率の低い車両があるものの僅か2台であり,また,これらの車両の非稼働日に代替車両とするとしても,非稼働車両の ) 控訴人ア控訴人A支店における本件事故前3か月の車両の稼働状況からしても,稼働率の低い車両があるものの僅か2台であり,また,これらの車両の非稼働日に代替車両とするとしても,非稼働車両の発生は大半が顧客,運転手の都合,車の修理等で当日になって生ずることが多く,したがって,将来いつ生ずるかも知れない非稼働車両及び非稼働日のすべてを予測し,これを代替車両として恒常的に配車することは事実上不可能である。 また,A支店においては,配置された4トン車のすべてに集配エリアを設定し,それぞれが各別のエリアを担当して毎日定期的に規則正しく稼働しているため,他のエリアの集配のために代替させることは事実上不可能である。 イ一般貨物自動車運送事業者が各営業所に配置する運行車両の数を変更する場合には国土交通大臣に事前の届出をしなければならず(貨物自動車運送事業法9条3項,同法施行規則6条),国土交通省の定める「事業計画変更認可申請等の処理について」の基準によれば,「自社営業所間における車両融通は,短期間のものであっても当該営業所それぞれにおいて増車,減車の手続をとらせること」とされている。この届出は実施予定日の7ないし10日前までにすることとなっているが,現実には1か月程度を要するため,仮に控訴人B支店の車両をA支店において使用するとしても,本件事故に伴う代替車両確保のためには日数的に対応が困難である。 ウまた,そもそも,B支店には恒常的にA支店に代替車両を供給できるような非稼働車は存在せず,稼働しない日に限ってB支店の車両を利用するとしても,A支店とB支店とは約40キロメートルの距離があり,朝夕のラッシュ時には1.5ないし2時間を要するものであるから,現実の利用は困難である。 (2) 被控訴人ア本件で問題とな としても,A支店とB支店とは約40キロメートルの距離があり,朝夕のラッシュ時には1.5ないし2時間を要するものであるから,現実の利用は困難である。 (2) 被控訴人ア本件で問題となるのは,一般的に,通常の稼働状況からして,事故車両が生じた場合にどれだけ他の車両で代替できるかであり,他の車両が仮にすべて稼働していたとしても,そのことが傭車が必要であったことを示すものとはいえない。 イしかも,控訴人は,島根県内にA支店のほかB支店を有しており,同支店の車両を使用することが可能であったはずである。A支店とB支店との物理的,時間的距離は,現在の交通状況からしてさほど問題とすべきものではない。 ウ控訴人主張の届出は,本件のような車両事故による短期間の車両の増減の場合には敢えて申請しないのが通常であり,そのような実態及び規制緩和の要請に基づき,平成15年4月以降は廃止されているはずである。 また,他の支店,営業所からA支店に車両の管理を移転して車両の増減をする場合には届出が必要であるとしても,当該車両の管理を他の支店,営業所の管理においたままで使用するのであれば届出は必要ないはずである。 仮にそのような場合でも届出が必要であるとしても,届出は7日前まででよく,控訴人の事業規模からすれば,このような届出は容易であるはずである。したがって,傭車が必要であったとしても7日を超えることはないはずである。 エ C株式会社は,控訴人の連結子会社であり,別会社であるとしても形式的なものにすぎないし,連結子会社として,損益計算書項目は連結され,損益取引は相殺・消去する必要があり,結局は損失とはならないはずである。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲1,2,3の3,原審における証人D)及び弁論の全趣旨によれば, 損益計算書項目は連結され,損益取引は相殺・消去する必要があり,結局は損失とはならないはずである。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲1,2,3の3,原審における証人D)及び弁論の全趣旨によれば,本件事故により控訴人車両(事故車両)は全損となり,控訴人において廃車手続をしたこと,控訴人は,事故車両の代替車両として新車両を発注したが,アルミボディーに控訴人固有のボディカラーを施す特注仕様であったことなどのため,納車は事故日(平成11年6月17日)から54日を経過した同年8月10日となったこと,この新車両の納入までの間,控訴人は,代替車両として,事故車両と同じく控訴人固有のボディカラーを施した4トン車をC株式会社から傭車し,同車両は42日間稼働し,控訴人はC株式会社に対し,一日当たり3万2000円の単価に基づく傭車料及び消費税(総額141万1200円)を支払ったことが認められる。 2 控訴人は,上記の42日をもって代替車両の傭車が必要であった日数と主張するところ,甲5,12(控訴人A支店における集配車両稼働状況の一覧表),原審における証人Dによれば,本件事故当時,控訴人は,A支店において利用可能な集配車両として58台の車両(うち4トン車23台,2トン車35台)を所有しており,本件事故日の翌日から新車納入の日までの54日の期間中,事故車両と同じ4トン車の非稼働車両が1台もなかった日(事故車両を除く22台の4トン車がすべて稼働していた日)が合計30日(いずれも土,日曜日及び祝祭日を除く平日である。)あるものの,その他の日(8月9日を含む。)には1台以上の非稼働の4トン車があったこと,特に,上記の54日の期間中に8日あった土曜日においては恒常的に複数の非稼働車両が存在したことが認められ,したがって,これらの日には非稼働車両を代替車両として使用 以上の非稼働の4トン車があったこと,特に,上記の54日の期間中に8日あった土曜日においては恒常的に複数の非稼働車両が存在したことが認められ,したがって,これらの日には非稼働車両を代替車両として使用できた可能性が否定できず,これらの日の傭車の使用は本件事故と相当因果関係のあるものとは認められない。この点,本件事故日を含む平成11年6月において,稼働率が100パーセント未満の車両があること(甲9)に関し,原審において証人Dは,古い車であったとか,使い勝手が悪かったのではないかとの証言をする。しかし,同証言によっても上記の非稼働車両自体が故障その他の事由により代替車両として使用することが困難であったと認めるには十分ではないし,また,運転手の病気その他突発的な事由により非稼働車両が生じたためにこれを代替車両として利用することができなかったとの事実を認めるに足りる的確な証拠もない。 3 他方,上記のとおり,4トン車の非稼働車両が1台もなかった日が30日(いずれも土,日曜日及び祝祭日を除く平日である。)あるところ,甲12,13,弁論の全趣旨によれば,控訴人A支店は,本件事故以前から,事故車両を含む4トン車のすべてに,それぞれ別個の集配エリアを設定して集配業務に使用し,不特定多数の顧客からの運送依頼に応じていたこと,本件事故後においても,土,日曜日及び祝祭日を除く平日はほとんどすべての車両を,土曜日には一部の車両を,集配業務に使用していたことが認められる。また,事故車両自体の過去の稼働実績(甲4によれば,平成11年5月までの過去3か月間の月平均稼働日数は30日当たり21.85日((22+21+24)÷(31+30+31)×30≒21.85)である。)に基づき新車納入までの54日間の稼働日を推定・換算すると39.33日となる。上記の54日のうちには 30日当たり21.85日((22+21+24)÷(31+30+31)×30≒21.85)である。)に基づき新車納入までの54日間の稼働日を推定・換算すると39.33日となる。上記の54日のうちには8回の土曜日が含まれているが,いずれの土曜日にも稼働したとしても更に31日間の稼働をしたことになる。以上のような控訴人の営業形態や事故車両を含む集配車両の稼働状況からすれば,現に控訴人A支店の4トン車がすべて稼働していた30日(いずれも土,日曜日及び祝祭日を除く平日)については,事故車両に代わる代替車両が必要であり,かつ,A支店にはこれに充てることのできる代替車両はなかったものと認められる(なお,事故車両の過去の稼働実績からすれば同車は更に8.33日の稼働をしていた可能性があるが,上記のとおり,他に代替車両が存在する状態での稼働であった可能性が否定できず,傭車の必要性が認められないことは前記判示のとおりである。)。 4 これに対して被控訴人は,控訴人は大規模運送会社であり,他の予備車両の利用ないし配車のやり繰りにより欠便を生じさせないことが可能であるはずであること,控訴人A支店の集配車両の稼働率からしても代替車両の存在が窺われること,更には,控訴人の他の支店,営業所の車両を代替させることも可能であったはずである旨主張する。 しかし,大規模会社であるとの一事をもって代替車両が存在すると推認することはできないし,集配車両の稼働率に基づく推計も抽象的な可能性にすぎない。現に,A支店は,その配置された車両のすべてに,それぞれ異なる集配エリアを設定して集配業務に充てており,そのために事故車両に代替できる車両が存在しない日が30日あったことは上記認定のとおりである。もっとも,原審における証人D,甲14によれば,控訴人が傭車をした当時,控訴人は,島 集配業務に充てており,そのために事故車両に代替できる車両が存在しない日が30日あったことは上記認定のとおりである。もっとも,原審における証人D,甲14によれば,控訴人が傭車をした当時,控訴人は,島根県内にA支店のほかB支店を有し,同支店にも集配車両を配置していたことが認められ,そうとすれば,B支店の車両を代替車両として使用することができたのではないかとも考えられる。しかし,上記証拠によれば,B支店はA支店よりも規模が小さく,A支店以上に非稼働車両が少なかったことが認められるところ,A支店においては,上記認定のとおり,平日においてはすべての集配車両が集配業務にあたるのが原則的な運用形態であり実態でもあったことからすれば,B支店においても同様であって,恒常的又は相当な頻度で代替可能な車両が存在したものとは認められない。 また,仮にB支店において非稼働車両が生じた場合に限って代替車両として利用するとしても,甲14によれば,代替車両の移動だけのためにも相当の時間を要し,A支店の業務に当たることは事実上困難というほかなく,これを解決するためにB支店の集配車両の管理をA支店に移すことも,各支店での貨物自動車運送事業法施行規則に従った増車,減車の申請手続を要することから応急の対策としては現実的ではなく(甲8,14,18の1,23,原審における証人D,当審における調査嘱託の結果),いずれにしても,B支店の集配車両を代替車両として使用することは困難ないし不可能であったというべきである。したがって,控訴人がB支店にも集配車両を配置していたとの事実をもって,A支店において傭車の必要がなかった事情とみることはできない。 5 以上によれば,控訴人がC株式会社からの傭車をした日数のうち,30日分については,他に代替車両がないため必要不可欠のものとして本件 A支店において傭車の必要がなかった事情とみることはできない。 5 以上によれば,控訴人がC株式会社からの傭車をした日数のうち,30日分については,他に代替車両がないため必要不可欠のものとして本件事故と相当因果関係があるというべきであるから,被控訴人は,控訴人に対し,その日数に応じた傭車料合計100万8000円(32,000×30×1.05=1,008,000)から,傭車によって支出を免れた費用合計5万9160円(甲3の2,弁論の全趣旨によれば1日当たり1972円である。1972×30=59,160)を控除した94万8840円を損害として支払うべきであり,その余の傭車の利用についての控訴人の主張は理由がない。 被控訴人は,損害の発生に関し,C株式会社が控訴人の子会社であり,別会社であるとしても形式的なものにすぎないし,連結子会社として,損益計算書項目は連結され,損益取引は相殺・消去する必要があり,結局は損失とはならない旨主張する。しかし,そのことによって関係会社の法的独立性が否定されたり,債権債務が法的に消滅しあるいは発生しないものとされるわけではなく,まして,関係会社外の関係において損失(被控訴人に対する債権)の発生が否認されるものでもない。C株式会社において控訴人に対する売上げが生じたことを理由に控訴人に損害が生じたとの事実を否定することはできない。また,上記のような関係にあるからといって,関係会社間において当然に代替車両のやりくりをすべきものということもできず,被控訴人の上記主張は理由がない。 6 そして,本件の事案内容その他一切の事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は10万円が相当と認められる。 7 よって,控訴人の請求は,104万8840円及び内金94万8840円に対する不法行為の後である平成11 の事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は10万円が相当と認められる。 7 よって,控訴人の請求は,104万8840円及び内金94万8840円に対する不法行為の後である平成11年6月18日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がないから,これと異なる原判決を変更して,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所第3部裁判長裁判官西島幸夫裁判官大段亨裁判官齋藤憲次

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