主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中370日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 法定の除外事由がないのに,平成15年11月2日ころ,神戸市a区b町c丁目d番e号所在のfg号棟h号室の被告人方において,覚せい剤であるフェニルメチルアミノプロパンの塩類を含有する結晶粉末約0.03グラムを水に溶かして自己の身体に注射し,もって,覚せい剤を使用した第2 A組若中であるが,平成15年11月4日,A組若頭B及び被告人において,かねてA組やA組組員に対したびたび因縁を付けて金銭を要求するなどしていたC組組員Dらと電話で話をするうち,激しい口論となり,A組組員を襲撃するかのような気勢を示すDらから同人らが多数の仲間を引き連れてA組事務所に押しかける旨申し向けられるや,Dらが危害を加えてきた場合には,A組としてこれを迎撃しDらを射殺しようと企て,A組組長E,前記B,A組副長F,同相談役G,同相談役H,同若頭補佐I,同若中J及び同若中Kと共謀の上, 1 同日午後8時30分ころから同日午後8時50分ころまでの間,Dらに対し,共同してその生命,身体に危害を加える目的をもって,神戸市i区jk丁目l番m号nビル1階所在のA組事務所及び同所付近において,前記E組長及び同Bにおいて,自動装てん式けん銃2丁を準備し,かつ,被告人,前記F,同G,同H,同J,同I,同Kにおいては,前記自動装てん式けん銃2丁及びゴルフクラブ1本等が準備されていることを知ってそれぞれ集合した 2 法定の除外事由がないのに,同日午後8時50分ころ,Dが被告人に対しいきなり手拳でその顔面を殴打するなどの暴行を加えるや,同区no丁目p番q号先から同区nr丁目s番t号 知ってそれぞれ集合した 2 法定の除外事由がないのに,同日午後8時50分ころ,Dが被告人に対しいきなり手拳でその顔面を殴打するなどの暴行を加えるや,同区no丁目p番q号先から同区nr丁目s番t号先に至るまでの路上において,A組の活動として,殺意をもって,D(当時37歳)を狙って,被告人において,A組内の役割分担により所携の自動装てん式けん銃(口径0.25インチ)で弾丸6発を発射し,前記Gにおいて,同様の役割分担により所携の自動装てん式けん銃(口径0.45インチ)で弾丸1発を発射し,そのうち弾丸6発をDの左前胸上部,左上腕部,右臀部等に命中させ,よって,同月5日午後2時53分ころ,同区u町v丁目w番地所在のM病院において,Dを左前胸上部射創,左腕頭静脈及び右肺射創による出血性ショックにより死亡させ,もって,不特定若しくは多数の者の用に供される場所においてけん銃を発射するとともに,団体の活動として,組織によりDを殺害した 3 法定の除外事由がないのに,同月4日午後8時50分ころ,同区no丁目p番q号先から同区nr丁目s番t号先に至るまでの路上において,被告人において前記自動装てん式けん銃(口径0.25インチ)1丁をこれに適合するけん銃実包6発と共に,前記Gにおいて前記自動装てん式けん銃(口径0.45インチ)1丁をこれに適合するけん銃実包5発と共に,それぞれ携帯して所持するとともに,前記実包合計11発をけん銃に使用することができるものとして所持したものである。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 本件の争点弁護人は,判示第2の2の事実について,①被告人には,D(以下「被害者」という。)に対する確定的殺意はなく,未必的殺意があったに止まる,②被告人とA組組長E(以下「E組長」という。)ら共犯者らとの間に共謀はなかった 2の2の事実について,①被告人には,D(以下「被害者」という。)に対する確定的殺意はなく,未必的殺意があったに止まる,②被告人とA組組長E(以下「E組長」という。)ら共犯者らとの間に共謀はなかった,③被告人の被害者に対する殺害行為は,団体の活動として組織により行われたものではない,④同殺害行為は被害者がいきなり被告人を殴打してきたため,自己の身体を防衛するため行ったものであるから,過剰防衛が成立する,⑤また,被告人は,判示第2の各犯行日の翌日である平成15年11月5日午前9時30分ころ,兵庫県N警察署にけん銃を持って出頭し,同署警察官に本件発砲の事実を申告したから,判示第2の各事実について自首が成立すると主張するが,当裁判所は,関係証拠によれば,判示のとおり,被告人はE組長ら共犯者らと共謀の上,被害者に対する確定的殺意をもって,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(組織的な殺人)行為に及んだものと認めるに十分であり,過剰防衛,自首の成立は認められないと判断したので,以下,その理由について補足して説明する。 第2 関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。 1 E組長は,O組若頭であるが,平成15年9月までに,A組を結成し,判示Lビル1階にその事務所を開設した。同年11月4日当時のA組の構成員は,E組長,若頭B,副長F,相談役G,同H,若頭補佐I,若中J,同K及び同被告人の合計9名であった。 2 被害者は,同年11月4日当時,P組本部長であり,その配下の者ないしはその同調者としてはQ,R,S,Tらがいた。 3 被害者は,同年9月ころ,その当時A組組員であったUが刑務所における被害者の行状を言いふらしているなどとして,A組に因縁を付け,A組は,同月20日ころ,Uをいったん絶縁処分としたのであるが,その後Uに対する絶 同年9月ころ,その当時A組組員であったUが刑務所における被害者の行状を言いふらしているなどとして,A組に因縁を付け,A組は,同月20日ころ,Uをいったん絶縁処分としたのであるが,その後Uに対する絶縁処分を解こうとしたところ,これを伝え聞いた被害者がA組事務所の組長室に乗り込むなどして辛抱料名下に金員の支払を要求してきたため,A組においては,Uの復縁を取りやめることにして,その問題を終結させ,被害者らからの金銭要求を拒否した。 4 被害者は,同年10月下旬ころ,被告人が被害者の実兄に覚せい剤を譲渡したとして,被告人を被害者方に呼び出した上,配下の者ら多人数で取り囲んで「殺したろか,チャカないんかい。」などと怒鳴りつけるなどして脅し,同年11月3日には,Qを介して,被告人の知人であるVが被害者の出所祝いを支払わなかったなどとして,被告人に対し,「Vを見つけて連れて来い,連れて来れなかったときには10万円を払え。」などと申し向けて,被告人に金員を要求した。 被告人が被害者から因縁を付けられ脅されていることを知ったB及びE組長は,被告人に対し組事務所に戻るように指示したが,被告人はこれに従わず,また組事務所に連絡もとらなかった。 5 翌4日A組組員らは組事務所に集合し,被告人からの連絡を待ったが何の連絡もなかったため,E組長はいったんは被告人を破門することにしたが,同日午後2時すぎころ,被告人はGとともにA組事務所に戻り,E組長やBらに対し,前記事情を詳しく説明した上E組長に謝罪したため,破門は見送られた。 被告人は,同日夕方ころ,A組事務所からQに電話をしたところ,Qから「Vを連れて来いと言っただろう。」などと言われて憤慨し,「わしもOの人間や。そんなもん,連れて行けるか。」などと申し向けて前記要求を拒絶し,さらに,Qと電話をか 所からQに電話をしたところ,Qから「Vを連れて来いと言っただろう。」などと言われて憤慨し,「わしもOの人間や。そんなもん,連れて行けるか。」などと申し向けて前記要求を拒絶し,さらに,Qと電話をかわった被害者から,「おいこら,ウジ虫。」などと罵られたのに対し,「ウジ虫はお互い様や。」などと怒鳴り返すと,被害者は「よう言うたのう。」などと怒鳴り付けて,電話を切った。 Bは,被告人と被害者らとの間でこのような電話でのやり取りのあったことをE組長に報告した。その後,被害者からBに電話が入り,「お宅のW(被告人)が,鼻くそ呼ばわりした。わし,辛抱できまへんから,Wの頭かち割って,自分の前に連れて来てくれまへんか。詫び入れてくれまへんか。」などと要求してきたため,BはE組長の指示を仰いだ上,電話をかけ直して被害者に対しその要求を拒否する旨伝えたところ,被害者とBとの間で激しい口論となり,遂に,被害者は「来えへんのやったら,大勢で押しかけたるから,サツでも何でも呼んどけ。」などと申し向けて,多数人でA組事務所に押しかけ,A組組員を襲撃する気勢を示した。 このBと被害者との電話でのやり取りは,被告人らA組事務所にいた多くのA組組員に聞こえており,BはE組長らに対し被害者がこれから大勢で押しかけるなどと言っていると伝え,更に,Gが「D(被害者)が押しかけてくる言うとる以上,絶対押しかけてくる。必ずチャカ持ってくるやろ。あいつらはいつも道具持っとうからな。」と言ったため,A組組員らに緊張が走り,いずれも被害者が多数人でけん銃等を用意してA組事務所に押しかけA組組員を襲撃してくると考えて,組事務所全体が緊迫した雰囲気となり,これに備えることになった。 6 E組長は,Bから被害者との電話でのやりとり等を聞いて激怒し,「あのクソガキ,A組を舐めとう かけA組組員を襲撃してくると考えて,組事務所全体が緊迫した雰囲気となり,これに備えることになった。 6 E組長は,Bから被害者との電話でのやりとり等を聞いて激怒し,「あのクソガキ,A組を舐めとうな。来たら,けじめつけなしゃあないやろ。」などと発言し,その後,携帯電話で知人のXにけん銃やけん銃実包を準備するよう依頼し,Bに対しけん銃等を受け取ってくるように指示した。BはE組長から指示された場所まで軽四トラックで出かけ,Xからけん銃2丁及びけん銃実包11発の入った紙袋を受け取ると,これをA組事務所に持ち帰って,同事務所内の組長室にいたE組長に手渡した。E組長は,B,F,G及びHの目の前で,両手に軍手をはめ,紙袋を開け,「俺が弾込めたる。」と言って,けん銃2丁にそれぞれ実包を装てんし,「もめたら,いわしてしまわなしゃあない。」などと言った。 その後,組長室において,E組長はGに実包5発が装てんされたけん銃1丁(口径0.45インチ,コルト型自動装てん式けん銃。以下「コルト型けん銃」という。)を渡し,次いで,Iに「Wに渡せ。」と言って実包6発が装てんされたけん銃1丁(口径0.25インチ,アストラ型自動装てん式けん銃。以下「アストラ型けん銃」という。)を同人に渡し,被告人は,Iからそのけん銃を受け取った。 7 その後,被害者から仲介を依頼されたYから電話があって,同人とBが立会いの上,被害者と被告人が組事務所前の路上で話合いをすることになったが,被告人は前記アストラ型けん銃(口径0.25インチ)を安全装置を外しスライドを引いた状態でジャンパーの右ポケットに入れ,そこに右手を入れたまま,被害者との話し合いに臨んだが,2人きりになると,いきなり被告人の顔面を手拳で続けざまに2回殴りつけてきた被害者に対し,被告人は,忍ばせていた前記アストラ型けん ケットに入れ,そこに右手を入れたまま,被害者との話し合いに臨んだが,2人きりになると,いきなり被告人の顔面を手拳で続けざまに2回殴りつけてきた被害者に対し,被告人は,忍ばせていた前記アストラ型けん銃を取り出し,約1メートルの至近距離から被害者に狙いを定めてまず弾丸2発を発射してこれを被害者に命中させ,さらに逃げる被害者を追いかけながら残りの弾丸4発を発射し,これを全弾被害者に命中させ,さらに被害者に対し弾丸を発射しようとしてなおも引き金を数回引いたが,弾丸切れのため,それ以上弾丸が発射されることはなかった。また,事務所にいたG,H,F,I,Jらは,銃声を聞くなどして,Gにおいてはコルト型けん銃を手にして,Jにおいては包丁を手にして,Fにおいてはゴルフクラブを手にするなどしてA組事務所を飛び出し,Gにおいては,被害者を発見するや,逃げていく被害者の後方から,被害者に向けて,前記コルト型けん銃(口径0.45インチ)で弾丸1発を発射したものの,被害者には命中しなかった。 被害者は,同月5日午後2時53分ころ,L病院において,左前胸上部射創,左腕頭静脈及び右肺射創による出血性ショックにより死亡した。 8 前記犯行後,E組長,B,F,G,H,I,J,K及び被告人は,神戸市X区内にあるファミリーレストランに集まり,被告人,GらがE組長に犯行状況について報告をすると,E組長は,被告人らに対し,「ごくろうやったな。」などと言って,その労をねぎらった。その後,E組長は「11月5日にはO組本部の定例会があるから,その日の11時までには出頭してくれ。」などと言ってG及び被告人に対し,警察に出頭するよう指示するとともに,11月5日の朝には「今回の件は二人でやったことにしてくれ。後々まで面倒みてやるから。」などといって,犯行当日午後3時以降はE組長は と言ってG及び被告人に対し,警察に出頭するよう指示するとともに,11月5日の朝には「今回の件は二人でやったことにしてくれ。後々まで面倒みてやるから。」などといって,犯行当日午後3時以降はE組長はA組事務所にいなかったことにするなど,具体的にE組長をはじめとする他のA組組員は事件とは無関係であるという虚偽の供述をするように指示し,G及び被告人は,E組長の前記指示に従って,同月5日午前9時30分ころ,それぞれけん銃を持って,兵庫県N警察署に出頭し,同署警察官に「昨夜の発砲事件の犯人である。」旨申し立てるとともに,前記E組長の指示に従った虚偽供述をした。 以上の事実が認められる。 第3 検討 1 第2認定の事実によれば,E組長及び被告人らA組組員らは,被害者が配下の者を引き連れて多数人でA組事務所に押しかけ,A組組員をけん銃等を用いて襲撃するものと緊迫感をもって予想し,A組としてこれを迎撃することにし,E組長の指示により,けん銃2丁とこれに適合する実包等を準備し,E組長は,けん銃に実包を装てんしながら「もめたら,いわしてしまわなしゃあない。」などと発言して,A組組員,ことにけん銃を渡した被告人及びGに対し,被害者らが危害を加えてきた場合には,けん銃を使用して被害者らを殺害することを指示命令したものと認められ,被告人は同組長の指示に従ってけん銃を所持し,その指示に従ってこれを用いて本件各犯行に及んだものと認められるから,被告人はE組長を始めとするA組組員である共犯者らとの間で,被害者らが被告人らに危害を加えてきた場合にはこれを殺害する旨意思を相通じたものであり,判示殺人はA組の活動として,組織により行われたと認めるに十分である。 2 そして,前記のとおり被害者らが危害を加えてきた場合にはA組として被害者を殺害する旨共謀を遂げた被告人 相通じたものであり,判示殺人はA組の活動として,組織により行われたと認めるに十分である。 2 そして,前記のとおり被害者らが危害を加えてきた場合にはA組として被害者を殺害する旨共謀を遂げた被告人は,至近距離から被害者に対し前記アストラ型けん銃に装てんされていた6発の弾丸を連続してすべて発射し,全弾丸を被害者に命中させ,なおも引き金を何度も引いているのであるから,被告人に被害者に対する確定的殺意があったことは明らかである。被告人は,当公判廷において,狙いすましてけん銃を発射したわけではない,止めを刺そうとすればできたのにしていないなどと供述して,殺意は未必的なものに止まると供述するごとくであるが,採用の限りではない。 3 次に,過剰防衛の成否について検討すると,被告人を含む共犯者らは,被害者らがA組事務所に押しかけてくることが必至の情勢になると,これを迎撃するためけん銃2丁等を用意し,被害者が危害を加えてきた場合にはこれを射殺する意思で,被告人はこの用意されたけん銃1丁を隠し持って被害者との「話し合い」に臨み,被害者から殴打されるや,積極的に被害者に攻撃を加えるべく直ちにけん銃を連続して発射して判示第2の2の行為に及んだのであり,このような事実関係の下では,正当防衛の要件である侵害の急迫性の要件を欠くものと解するのが相当である。従って,過剰防衛が成立する旨の弁護人の主張は理由がない。 4 最後に,判示第2の各罪について自首(同第2の3の罪については銃砲刀剣類所持等取締法31条の5の自首)が成立するか否かを検討すると,前記認定のとおり,被告人は,犯行の翌日,けん銃を持ってN警察署に出頭し,同署警察官に自分が前夜の発砲事件の犯人である旨申告してけん銃を提出しているけれども,前記認定のとおり,各犯罪事実について,E組長以下A組組員らの共 人は,犯行の翌日,けん銃を持ってN警察署に出頭し,同署警察官に自分が前夜の発砲事件の犯人である旨申告してけん銃を提出しているけれども,前記認定のとおり,各犯罪事実について,E組長以下A組組員らの共謀による犯行であることを隠蔽する任務を果たすべく,E組長の前記指示に従い,被告人は警察署に出頭したものであり,実際に被告人はその指示に従ってG以外の他の共犯者の存在及びその役割などの判示第2の各犯行の重要な事実について虚偽の申告をしたのであるから,このような事実関係の下では,被告人が自発的に自己の犯罪事実を申告したものとは認められないと解するのが相当である。自首が成立する旨の弁護人の主張は理由がない。 5 以上のとおりであるから,弁護人の主張はいずれも理由がない。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は覚せい剤取締法41条の3第1項1号,19条に,判示第2の1の所為は刑法60条,208条の3第1項に,判示第2の2の所為のうち,けん銃発射の点は包括して刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条,3条の13(その刑の長期は,行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によることになるが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)に,組織的な殺人の点は刑法60条,前記改正前の組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条1項3号(前記改正前の刑法199条。刑法6条,10条による。なお,その有期懲役刑の長期は,前同様,刑法6条,10条により前記改正前の刑法12条1項による。)に,判示第2の3の所為のうち,けん銃加重所持の点は包括して刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項(1項),3条1項(その刑の ,刑法6条,10条により前記改正前の刑法12条1項による。)に,判示第2の3の所為のうち,けん銃加重所持の点は包括して刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の3第2項(1項),3条1項(その刑の長期は,前同様,刑法6条,10条により前記改正前の刑法12条1項による。)に,けん銃実包所持の点は包括して刑法60条,銃砲刀剣類所持等取締法31条の8,3条の3第1項,同法施行規則3条の2にそれぞれ該当するが,判示第2の2及び第2の3はそれぞれ1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,刑法54条1項前段,10条によりそれぞれ1罪として,判示第2の2については重い組織的な殺人の罪の刑で,判示第2の3については重いけん銃加重所持の罪の刑でそれぞれ処断することとし,各所定刑中判示第2の1の罪については懲役刑を,判示第2の2の罪については有期懲役刑をそれぞれ選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第2の2の罪の刑に前記改正前の刑法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で,被告人を懲役14年に処し,刑法21条を適用して,未決勾留日数中370日をその刑に算入し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が覚せい剤を自己使用した覚せい剤取締法違反(判示第1)の事案と,暴力団A組組員であった被告人が,他の暴力団に所属する被害者が配下の者多数とともにA組事務所に押しかけてA組組員を襲撃する気勢を示していることを知るや,E組長の指示命令の下,被害者らが危害を加えてきた場合には,これを迎撃して射殺しようと企て,E組長ほかA組組員らと共謀の上,けん銃2丁及びゴルフクラブ1本等の凶器が準備されていることを知って集合するなどした上 示命令の下,被害者らが危害を加えてきた場合には,これを迎撃して射殺しようと企て,E組長ほかA組組員らと共謀の上,けん銃2丁及びゴルフクラブ1本等の凶器が準備されていることを知って集合するなどした上,前記けん銃等を不特定若しくは多数の用に供される路上において,それぞれ発射し,団体の活動として,組織として被害者を殺害し,その際,前記けん銃2丁を,これに適合する実包11発と共に携帯して所持したという凶器準備集合(判示第2の1),組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反(判示第2の2)及び銃砲刀剣類所持等取締法違反(判示第2の3)の各事案である。 本件の量刑の中心となる判示第2の各犯行についてみると,犯行に至る経緯は前認定のとおりであって,被害者から不当な言いがかりを受けるなどしたにせよ,E組長の指示の下,被告人は共犯者らと共謀の上,けん銃等を準備し,実力でこれを迎撃しようとして判示第2の各犯行に及んだものであって,犯行に至る経緯ないしその犯行の動機は暴力団特有の反社会的なもので,酌量の余地はない。 被告人は,E組長の指示命令の下,E組長以下A組組員らと共謀の上,被害者らがA組事務所に押しかけてくることを予期して,被告人において,他の組員とともに,これを迎撃する目的で殺傷能力が極めて高いけん銃2丁等の凶器が準備されていることを知ってA組事務所に集合し,決められた役割分担に従い,被告人及びGにおいてそれぞれ判示けん銃を携帯し,被害者があらわれ,被告人の顔面を殴打するなどの攻撃に出るや,被告人において,直ちに所持していたけん銃を6発連続して発射してすべてを被害者に命中させ,被害者を殺害したもので,Gにおいても所携のけん銃で銃弾を被害者に向け一発発射し,あるいは他のA組組員においても被告人に加勢するべく凶器を携えて被害者を追撃するな 発射してすべてを被害者に命中させ,被害者を殺害したもので,Gにおいても所携のけん銃で銃弾を被害者に向け一発発射し,あるいは他のA組組員においても被告人に加勢するべく凶器を携えて被害者を追撃するなど,本件はA組を挙げて立案実行された組織的な犯行であり,けん銃を使用した凶悪で反社会的な犯行であるといわねばならず,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律が制定された趣旨に照らしても,厳しく指弾されるべき犯行であるといわねばならない。そして,被告人は,けん銃6発を至近距離から被害者に発射命中させるなど確定的な殺意に基づき犯行に及んだものであって,E組長の指示に従い実行犯の役割を果たした被告人の刑事責任は重大である。 被害者は,後記のとおり本件各犯行を誘発した落ち度があったにせよ,人生半ばにして,突如,至近距離から多数の銃弾を浴びて生命を奪われたもので,その肉体的苦痛はもとより,その無念の情は甚大であったと容易に推察されるし,被害者遺族の被害感情には厳しいものがあるにもかかわらず,被害者遺族に対する慰謝の措置は何らとられておらず,その見込みもない。 加えて,住宅街の路上でけん銃2丁から実包7発が発射された本件犯行は,通行人など一般市民が巻き添えになって死傷する危険性もあったのであり,本件が地域住民など社会一般に与えた不安感や衝撃は大きく,このような社会感情を軽視することはできない。 さらに被告人は犯行後もE組長の指示に従い捜査を攪乱すべく虚偽の供述を相当期間続けていたほか,公判廷に至ってもなおE組長を庇うような曖昧な供述をしているのであって,被告人には本件を真摯に省みるという姿勢が必ずしも十分ではない。 また,同種前科4犯を有する被告人の覚せい剤取締法違反の罪(判示第1)の刑事責任も軽視できない。 以上の諸事情からすれば被告人 って,被告人には本件を真摯に省みるという姿勢が必ずしも十分ではない。 また,同種前科4犯を有する被告人の覚せい剤取締法違反の罪(判示第1)の刑事責任も軽視できない。 以上の諸事情からすれば被告人の刑事責任は極めて重大である。 そうすると,被害者は,かねて被告人に対し因縁をつけて不当な要求を重ねていた上,判示第2の各犯行の直前にも,A組事務所に多数人で押しかける旨申し向けてA組組員を襲撃する気勢を示し,現に3台の車で配下の者らとA組事務所付近にまで赴いており,このことが判示第2の各犯行を誘発した側面も否定できず,被害者にも責められるべき点は少なくないこと,けん銃等の準備はE組長の指示のもとBが行ったものであること,被害者を殺害したことに対する反省悔悟の情を深め,写経を続けていること,暴力団加入歴は短く,被告人はA組を脱退する旨の意思を明確に示していること,被告人の早期の社会復帰を望む年老いた実母の心情など被告人のために酌むべき事情を最大限に考慮しても,主文の刑はやむを得ないところである。 よって,主文のとおり判決する。 平成17年3月30日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官杉森研二 裁判官橋本一 裁判官三重野真人
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