令和5(ワ)6408 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年2月22日 大阪地方裁判所
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判決文本文7,980 文字)

主文 1 被告Aは、原告に対し、12万円及びこれに対する令和2年3月31日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告Bは、原告に対し、12万円及びこれに対する令和2年3月31日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、次のとおりの負担とする。 (1) 原告に生じた費用は、これを20分し、その1ずつを被告A及び被告Bの、その余を原告の各負担とする。 (2) 被告Aに生じた費用は、これを10分し、その1を被告Aの、その余を原告の各負担とする。 (3) 被告Bに生じた費用は、これを10分し、その1を被告Bの、その余を原告の各負担とする。 5 この判決は、1項及び2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告Aは、原告に対し、126万5611円及びこれに対する令和2年3月31日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告Bは、原告に対し、126万5611円及びこれに対する令和2年3月31日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は、被告らがインターネット上の掲示板に投稿した記事によって名誉を毀損されたと主張して、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償として、それぞれ126万5611円及びこれに対する不法行為の日である令和2年3月31日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。 以下同じ。)所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めている。 2 被告Aに対する請求関係(1) 争いのない事実被告Aは、有限会社YDCが管理運営するインターネット上の匿名掲示板「ホストラブ関西版」(URLはhttps://kansai 求めている。 2 被告Aに対する請求関係(1) 争いのない事実被告Aは、有限会社YDCが管理運営するインターネット上の匿名掲示板「ホストラブ関西版」(URLはhttps://kansai.hostlove.com/ 以下「本件サイト」という。)に、次のとおりの投稿をした(以下、この記事を「本件記事1」という。)。 カテゴリ大阪の個人(キャバクラ/クラブ-個人別)スレッドタイトル 【ヒマラヤ勝利】CD【雇われ】④-3 EG投稿番号 409投稿者匿名さん投稿日時令和2年3月31日18時46分48秒投稿内容 EFにコロナ移したのDママだよ~(2) 社会的評価の低下の有無に関する当事者の主張(原告の主張)ア原告は、Iの高級クラブ「クラブC」の雇われママであり、令和2年3月31日当時、同月29日に死亡した芸能人のEFや、阪神タイガースの野球選手GHが新型コロナウイルスに感染した感染源であるとのデマを流されていた。したがって、「Dママ」について述べる本件記事1は、原告を話題の対象とするものである。 イ本件記事1は、EFの感染源が原告であるとの事実を摘示するものである。原告がEFの死因に関係があるかのような印象を与えるものであるから、原告の社会的評価を低下させる。 (被告Aの主張)ア 「CD」は、本名ではないと考えられる。被告Aは、「C」と呼んでいない。本件記事1は、原告のことを指しているとは考えられない。 イ本件記事1によって原告の社会的評価が低下したとは考えにくい。本件サイトは知名度が低い上、スレッドが細分化されており、閲覧者数は限られている。本件記事1には何の説得力もないから、読者がこれを信じることはない。原告のSNS等を見る限り、原告に社会的評価の低下があったとは考えられない。 、スレッドが細分化されており、閲覧者数は限られている。本件記事1には何の説得力もないから、読者がこれを信じることはない。原告のSNS等を見る限り、原告に社会的評価の低下があったとは考えられない。 (3) 損害に関する当事者の主張(原告の主張)ア慰謝料 100万円イ調査費用 15万0555円ウ弁護士費用 11万5056円エ合計 126万5611円 3 被告Bに対する請求関係(1) 争いのない事実被告Bは、本件サイトに、次のとおりの投稿をした(以下、この記事を「本件記事2」という。)。 カテゴリ TV芸能話題(TV芸能スポーツ/雑談)スレッドタイトル EFさんのお兄さんのインタビュー投稿番号 28投稿者匿名さん投稿日時令和2年3月31日9時51分2秒投稿内容 CLUBCのママから感染したのか(2) 社会的評価の低下の有無に関する当事者の主張(原告の主張)ア原告は、Iの高級クラブ「クラブC」の雇われママであり、令和2年3月31日当時、同月29日に死亡した芸能人のEFや、阪神タイガース所属の野球選手GHが新型コロナウイルスに感染した感染源であるとのデマ を流されていた。したがって、「CLUBCのママ」について述べる本件記事2は、原告を話題の対象とするものである。 イ本件記事2は、これが投稿されたスレッドのタイトル「EFさんのお兄さんのインタビュー」やその話題内容を踏まえると、EFの感染源が原告であるとの事実を摘示するものである。原告がEFの死因に関係があるかのような印象を与えるものであるから、原告の社会的評価を低下させる さんのインタビュー」やその話題内容を踏まえると、EFの感染源が原告であるとの事実を摘示するものである。原告がEFの死因に関係があるかのような印象を与えるものであるから、原告の社会的評価を低下させる。 (被告Bの主張)ア 「CLUBCのママ」では、どこのクラブの誰を指すのか不明である。 クラブCには「ママ」と称されるスタッフが複数名おり、本件記事2における「CLUBCのママ」との記載は、「CLUBC」に在籍するどの「ママ」を指しているのか不明である。 イ本件記事2は、「感染したのか」という疑問形である。本当に感染したのかという、他の記事に対する疑問又はそれを信じ込んでしまい落胆していることを述べたもので、原告からEFに新型コロナウイルスが感染したとの事実を摘示するものではない。原告の社会的評価を低下させるものではない。 (3) 損害に関する当事者の主張(原告の主張)前記2(3)原告の主張と同じ第3 当裁判所の判断 1 被告Aに対する請求について(1) 社会的評価の低下の有無についてア判断基準ある表現における意味内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかどうかは、当該表現についての一般の読者の普通の注意と読み方とを基準として判断すべきものである(最高裁昭和31年7月20日第二小法廷 判決・民集10巻8号1059頁参照)。 イ事実摘示の有無(ア) 証拠(甲7~10、21)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、令和2年3月当時、Iの会員制クラブ「クラブC」の「雇われママ」である「CD」として、インターネット上で一定の知名度を有していたこと、芸能人のEFが新型コロナウイルスに感染後、同月29日に死亡したことや、阪神タイガースの野球選手GHが新型コロナウイルス陽性と判定されたことに関して、同日の時点 ト上で一定の知名度を有していたこと、芸能人のEFが新型コロナウイルスに感染後、同月29日に死亡したことや、阪神タイガースの野球選手GHが新型コロナウイルス陽性と判定されたことに関して、同日の時点で、原告がEFやGHの感染源であるとの噂がインターネット上に流れていたことが認められる。 証拠(甲2の1)及び弁論の全趣旨によれば、被告Aが本件記事1を投稿したスレッドは、大阪のキャバクラ又はクラブの関係者である特定の個人の話題を取り上げるものとして、「【ヒマラヤ勝利】CD【雇われ】④-3 EG」とのタイトルで令和2年3月30日23時9分に設けられたこと、当該スレッドには、投稿番号402の記事において、「不確かな情報回してるやつらなんなん? 自分で得た情報じゃないでしょ」などと記載されていた後に、被告Aが本件記事1を投稿したことが認められる。 以上に認められる事実を前提とすると、本件記事1は、本件サイトの一般的な読者の普通の注意と読み方をした場合、Iの「クラブC」の「雇われママ」である「CD」である原告のことを取り上げ、原告がEFに新型コロナウイルスを感染させたとの事実を摘示するものであると認められる。 (イ) 被告Aは、「CD」は本名ではないと考えられ、本件記事1においても「C」と呼んでいないから、原告のことを指しているとは考えられないと主張する。 しかし、原告は、Iの「クラブC」の「雇われママ」である「CD」 として、インターネット上で一定の知名度を有しており、「クラブC」のママである原告を話題として取り上げるスレッドが本件サイト中に設けられていたのであるから、上記認定を左右するものではない。 ウ社会的評価の低下の有無(ア) 本件記事1は、新型コロナウイルスの感染が拡大しており、その防止に各人が努めるべきである イト中に設けられていたのであるから、上記認定を左右するものではない。 ウ社会的評価の低下の有無(ア) 本件記事1は、新型コロナウイルスの感染が拡大しており、その防止に各人が努めるべきであると一般に考えられていた中で、原告が不用意な行動を執った結果、国民的な人気のある芸能人が死亡する原因を作ったかのような印象を読者に与えるものであるといえる。本件記事1は、原告の社会的評価を低下させるものであると認められる。 (イ) 被告Aは、本件サイトの知名度が低い上、スレッドが細分化されており、閲覧者数は限られていること、被告Aの投稿には何の説得力もないから、読者がこれを信じることはないこと、原告のSNS等を見る限り、原告に社会的評価の低下があったとは考えられないことを挙げ、原告の社会的評価を低下させることを否定する。 確かに、本件サイトの当該スレッドは、社会の幅広い人々から関心をもって閲覧されるようなものではないとはいえる。とはいえ、誰でも閲覧しようと思えば閲覧できるものであることも間違いない。本件記事1に特段の根拠は書かれていないとしても、EFに新型コロナウイルスを感染させたことを断言していることからして、その影響力を無視することはできない。被告Aが原告のインスタグラムであるとして提出する証拠(丙1の1~1の8)を踏まえても、本件記事1が原告の社会的評価を低下させるものであることを否定することはできないというべきである。 エまとめしたがって、被告Aが本件記事1を投稿したことは原告に対する不法行為を構成し、被告Aは、原告に対し、これによって原告に生じた損害を賠 償すべき義務を負う。 (2) 損害についてア慰謝料 10万円本件記事1は、原告があたかも国民的な人気のあ によって原告に生じた損害を賠 償すべき義務を負う。 (2) 損害についてア慰謝料 10万円本件記事1は、原告があたかも国民的な人気のある芸能人に新型コロナウイルスを感染させて死亡させたかのような印象を読者に与えるものであって、記事の内容によって原告に与える精神的苦痛の程度は相当強いといえる。 他方、前記(1)イ(ア)において認定したとおり、本件記事1が投稿される前に、原告がEFの感染源であるとの噂は既にインターネット上に広まっていた。本件記事1が投稿されたスレッドも、そのタイトルに「CD」と「E」が含まれていることからして、そのような噂が流れていることを前提として設けられたものであったと認められ、本件記事1の読者のうち多くの者は、本件記事1を読む前に既にその噂を知っていたと考えられる。 本件記事1のみを読んで原告がEFに感染させたのではないかと考えることはあまり想定できない。本件記事1は簡潔なもので、具体的な根拠を挙げるものでもないから、これを読むことによって、原告がEFに感染させたとの噂の信憑性が高まったと感じることもあまり想定できない。 以上のほか、本件に表れた一切の事情を考慮すると、本件記事1による原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は10万円と認めるのが相当である。 イ調査費用及び弁護士費用 2万円証拠(甲1、甲5の1・2、甲11、15)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、本件記事1を投稿した者を特定するため、弁護士に委任して、仮処分の手続により、投稿がされた際のIPアドレス等の開示を受けた後、訴訟により、投稿者の氏名及び住所の開示を受け、投稿者を被告Aと特定したことが認められる。 これらの手続及び本件訴訟の 仮処分の手続により、投稿がされた際のIPアドレス等の開示を受けた後、訴訟により、投稿者の氏名及び住所の開示を受け、投稿者を被告Aと特定したことが認められる。 これらの手続及び本件訴訟のために要した弁護士費用のうち、本件不法行為と相当因果関係を有するのは、前記アの認容額10万円の2割である2万円と認めるのが相当である。 2 被告Bに対する請求について(1) 社会的評価の低下の有無についてア判断基準前記1(1)アに説示したとおりである。 イ事実摘示の有無(ア) 前記1(1)イ(ア)のとおり、原告は、令和2年3月当時、Iの会員制クラブ「クラブC」の「雇われママ」である「CD」として、インターネット上で一定の知名度を有していたこと、芸能人のEFが新型コロナウイルスに感染後、同月29日に死亡したことや、阪神タイガースの野球選手GHが新型コロナウイルス陽性と判定されたことに関して、同日の時点で、原告がEFやGHの感染源であるとの噂がインターネット上に流れていたことが認められる。 証拠(甲18の1~18の3)及び弁論の全趣旨によれば、被告Bが本件記事2を投稿したスレッドは、「EFさんのお兄さんのインタビュー」とのタイトルで令和2年3月30日20時53分に設けられたこと、当該スレッドには、投稿番号16の記事において、「これが本当かどうかは不明だが、こんな情報がある。」として、「2月大阪IclubCのキャバ嬢2人がスペイン渡航して感染帰国しCママにも感染」、「2月23日東京銀座ブレアにてEFパーティー開催→その場にいたCママからEFさん感染」などとある記事を引用して掲載され、「D_C ←この人ですか?」との投稿番号26の記事の後、被告Bが本件記事2を投稿したことが認められる。 以上に認められる事実を前提とすると からEFさん感染」などとある記事を引用して掲載され、「D_C ←この人ですか?」との投稿番号26の記事の後、被告Bが本件記事2を投稿したことが認められる。 以上に認められる事実を前提とすると、本件記事2は、本件サイトの 一般的な読者の普通の注意と読み方をした場合、Iの「クラブC」の「雇われママ」である「CD」である原告のことを取り上げ、原告がEFに新型コロナウイルスを感染させたとの事実を摘示するものであると認められる。 (イ) 被告Bは、「CLUBCのママ」では、どこのクラブの誰を指すのか不明であると主張する。 しかし、原告は、Iの「クラブC」の「雇われママ」である「CD」として、インターネット上で一定の知名度を有しており、被告Bが投稿したスレッドに先行して投稿された記事に「Cママ」、「D_C」が話題の対象として取り上げられていたのであるから、上記認定を左右するものではない。 (ウ) 被告Bは、本件記事2は「感染したのか」という疑問形であって、本当に感染したのかという、他の投稿に対する疑問又はそれを信じ込んでしまい落胆していることを述べたもので、原告からEFに新型コロナウイルスが感染したとの事実を摘示するものではないと主張する。 しかし、先行する投稿記事を前提として、本件サイトの一般的な読者の普通の注意と読み方をした場合、本件記事2は、先行する投稿記事に疑問を投げ掛けるものではなく、先行する投稿記事を読んで、そのとおり理解したことを表明するものであると解される。原告がEFに新型コロナウイルスを感染させたとの事実を摘示するものであることは否定できない。 ウ社会的評価の低下の有無本件記事2は、新型コロナウイルスの感染が拡大しており、その防止に各人が努めるべきであると一般に考えられていた中で、原告が不用意な行動を であることは否定できない。 ウ社会的評価の低下の有無本件記事2は、新型コロナウイルスの感染が拡大しており、その防止に各人が努めるべきであると一般に考えられていた中で、原告が不用意な行動を執った結果、国民的な人気のある芸能人が死亡する原因を作ったかのような印象を読者に与えるものであるといえる。本件記事2は、原告の社 会的評価を低下させるものであると認められる。 エまとめしたがって、被告Bが本件記事2を投稿したことは原告に対する不法行為を構成し、被告Bは、原告に対し、これによって原告に生じた損害を賠償すべき義務を負う。 (2) 損害についてア慰謝料 10万円本件記事2は、原告があたかも国民的な人気のある芸能人に新型コロナウイルスを感染させて死亡させたかのような印象を読者に与えるものであって、記事の内容によって原告に与える精神的苦痛の程度は相当強いといえる。 他方、前記(1)イ(ア)において認定したとおり、本件記事2が投稿される前に、原告がEFの感染源であるとの噂は既にインターネット上に広まっていた。本件記事2が投稿されたスレッドにおいても、本件記事2が投稿される前に既に同様の噂の内容が書き込まれていたから、本件記事2の読者のうち多くの者は、本件記事2を読む前に既にその噂を知っていたと考えられる。本件記事2のみを読むことによって、原告がEFに感染させたのではないかと考えることはあまり想定できない。本件記事2は同一スレッドに既に書き込まれていた内容に新たな事実を付け加えるものでもないから、これを読むことによって、原告がEFに感染させたとの噂の信憑性が高まったと感じることもあまり想定できない。 以上のほか、本件に表れた一切の事情を考慮すると、本件記事2によ 加えるものでもないから、これを読むことによって、原告がEFに感染させたとの噂の信憑性が高まったと感じることもあまり想定できない。 以上のほか、本件に表れた一切の事情を考慮すると、本件記事2による原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は10万円と認めるのが相当である。 イ調査費用及び弁護士費用 2万円証拠(甲1、甲5の1・2、甲13、15)及び弁論の全趣旨によれば、 原告は、本件記事2をした者を特定するため、弁護士に委任して、仮処分の手続により、投稿がされた際のIPアドレス等の開示を受けた後、訴訟により、投稿者の氏名及び住所の開示を受け、投稿者を被告Bと特定したことが認められる。 これらの手続及び本件訴訟のために要した弁護士費用のうち、本件不法行為と相当因果関係を有するのは、前記アの認容額10万円の2割である2万円と認めるのが相当である。 3 結論以上の次第で、原告の被告らに対する請求は、いずれも12万円及びこれに対する不法行為の日である令和2年3月31日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があり、その余はいずれも理由がない。 よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第8民事部 裁判官中尾 彰

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