平成18年9月20日判決言渡平成15年第12932号損害賠償請求事件( )ワ判決主文 被告は、原告に対し、891万6579円及びこれに対する平成15年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告は、原告に対し、2414万4374円並びにうち2398万6236円に対する平成15年6月13日から支払済みまで及びうち15万8138円に対する平成16年12月7日から支払済みまでそれぞれ年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要事案の要旨 本件は、被告が設置経営する病院で妊娠目的で通院をしていた原告が、さらに同病院で子宮筋腫の手術を受けた際、同病院の担当医師がガーゼを原告の体内に遺留したまま開腹部の縫合を行った過失により、卵管・卵管采部癒着の後遺障害等の損害が生じたとして、被告に対し、診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償(なお、原告は、請求の趣旨変更後にもさらに損害額を追加して主張したが、当該部分について請求額を増額する旨の請求の趣旨変更の手続はと らなかった)及びうち一部に対する訴状送達日の翌日である平成15年6月。 13日から支払済みまで、残部に対する請求拡張申立書送達日の翌日である平成16年12月7日から支払済みまでそれぞれ民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 (認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した前提となる事実証拠のページ番号を〔〕内に示す)。 当事者( ))。 ア原告は、昭和34年7月24日生まれの女性である(争 る。 (認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した前提となる事実証拠のページ番号を〔〕内に示す)。 当事者( ))。 ア原告は、昭和34年7月24日生まれの女性である(争いのない事実イ被告は、横浜市a区bにおいてY病院(以下「被告病院」という)を。 設置経営している学校法人である(争いのない事実。 ) 本件手術の施行及びガーゼの遺残( )ア原告は、平成9年10月1日から同月15日まで、子宮筋腫核出術を受けるため、被告病院に入院した(争いのない事実。 )イ被告は、平成9年10月3日、原告に対し、子宮筋腫核出術(以下「本件手術」という)を施行した。手術を担当した医師はA医師(以下「A。 医師」という、B医師であったが、執刀医のA医師は、同手術の際、原。)告の腹部にガーゼを残したまま手術を終了した(証人A〔4、弁論の全〕趣旨。 ) 争点 原告が平成9年10月3日に被告病院において受けた子宮筋腫核出術(以( )下「本件手術」という)による侵害利益の内容。 損害額( )争点についての当事者の主張 別紙「主張要約書」記載のとおりである(これは、平成17年4月20日の本件第2回口頭弁論期日において当事者双方が陳述した争点整理案を基本とし、その後の当事者の主張を付加した上で更に整理したものである。 。) 第3当裁判所の判断事実認定 前記第2の2の前提となる事実に加え、証拠及び弁論の全趣旨等によれば、次の事実が認められる(認定の根拠となった証拠等を()内に示す。直前に示した証拠のページ番号を〔〕内に示す。以下同じ。 。) 被告病院に通院を開始するに至る経緯( )ア原告は、昭和63年11月23日、満29歳でC(以下「C」という)と婚姻した(争いのない事実。 。 )イ ジ番号を〔〕内に示す。以下同じ。 。) 被告病院に通院を開始するに至る経緯( )ア原告は、昭和63年11月23日、満29歳でC(以下「C」という)と婚姻した(争いのない事実。 。 )イ原告は、Cとの婚姻後、Cが米国内で勤務することとなったため、渡米することとなった。原告とCは、慣れない海外生活をしたこと等の理由により、平成2年ころまでは避妊をしていたが、避妊をやめてから1年が経過しても妊娠しなかった。そこで、原告は、平成3年の春ころ、米国の病院において検査をし、その後も原告が望んだときに検査を受けていたが、同病院においては、特段、積極的な不妊治療は行われなかった(甲A2。 8〔1、2、原告本人〔1)〕〕ウその後、原告は、平成4年(原告は満32ないし33歳)に自然妊娠したが、流産により出産に至らなかった。また、原告は、平成5年、D病院の不妊治療セミナーに参加し、その後、子宮卵管造影検査等を受けたところ、同年11月(原告満34歳)にも自然妊娠したため、被告病院に通院していたが、胞状奇胎により出産に至らなかった。その後、原告とCは、平成6年9月ころまで避妊していた。それ以降、平成9年5月までは少なくとも避妊をしていない(争いのない事実、弁論の全趣旨、甲A28。 〔2ないし4、原告本人〔1、18)〕〕エ原告は、不正出血があったことから、平成7年7月1日、被告病院を受診した。被告病院においては、膣、子宮等の検査を実施し、同月21日の診察時において、原告について不妊症として治療することとした。そこで、 同年8月18日の診察時において、同診察を担当したE医師は、同年9月21日に子宮卵管造影を予約した。そして、原告は、平成7年9月19日から、妊娠目的で被告病院の産婦人科への通院を開始した(争いのない。 事実、乙A1〔 時において、同診察を担当したE医師は、同年9月21日に子宮卵管造影を予約した。そして、原告は、平成7年9月19日から、妊娠目的で被告病院の産婦人科への通院を開始した(争いのない。 事実、乙A1〔7丁〈表・裏、8丁、原告本人〔2)〉〕〕 被告病院に通院中の経過( )ア治療の概要原告は、被告病院において、漢方薬、黄体ホルモン剤、排卵誘発剤及びドオルトンの処方等の治療を受けていた(甲A28、乙A1。 )その間、平成7年12月1日には負荷テストを実施した(乙A1TRH〔9丁裏。その結果は次のとおりである(乙A1〔16ないし19丁、〕) 。 〕)前値15値30値60値PRL32.694.970.847.6LH6.014.417.214.4FSH3.44.44.94.8また、平成7年12月22日にはCについて精液検査を実施し、その結果、精液に異常は見られなかった(乙A1〔14丁表。 〕)平成8年6月4日には、同日の診察を担当したE医師は、原告について、黄体機能不全、免疫性不妊との診断をした。この点について、A医師は、内膜が厚くならないために受精卵の着床が容易でないことによるものと考え(排卵直前期に内膜が10以上でなければ妊娠が困難であるとAmm医師は認識しているところ、平成8年6月4日及び同年7月2日の原告の子宮内膜はいずれも10未満であった(乙A1〔10丁裏、11丁mm表、それは機能的には黄体機能不全であると考えた。また、黄体機能〕)。)不全の原因は検査値からは容易にうかがわれなかったが、A医師としては、 高プロラクチン血症が原因ではないかと事後的に考えている(証人A〔19、20。 〕)、そこで、A医師は、子宮内膜の厚さを10以上にすることによりmm かがわれなかったが、A医師としては、 高プロラクチン血症が原因ではないかと事後的に考えている(証人A〔19、20。 〕)、そこで、A医師は、子宮内膜の厚さを10以上にすることによりmm受精卵の着床を容易にしようと考え、平成9年6月13日からいわゆる偽妊娠療法を実施することとし、同日、同月25日、同年7月8日、同月15日、同月29日にそれぞれドオルトンを2週間分処方した(乙A1〔77丁、弁論の全趣旨。その結果、原告の子宮内膜の厚さは、同年11月〕)7日には8.3であったが、平成10年3月25日の時点で12. mm と、目標の10を上回った(乙A1〔82丁、92丁、A7、mmmm〕弁論の全趣旨。 )イ子宮筋腫の判明A医師は、少なくとも平成9年5月28日の診察時までには、原告に子宮体部筋腫があることを認識しており、必要なら核出をすることとしていた(乙A1〔74。 〕)その後、同年8月29日の診察時に、原告がA医師に対し、月曜日に人間ドックで子宮体部筋腫と言われたと述べ、核出手術を希望した。そこで、同年9月1日の診察時において(担当医師はF医師、同年10月1日に)入院し、同月3日に子宮筋腫核出術を施行することになった(乙A1。 〔79、80)〕 子宮筋腫核出術(本件手術)の施行及びガーゼの残置( )原告は、平成9年10月1日、被告病院に入院し、同月3日、A医師、B医師の担当(A医師の執刀)により、子宮筋腫核出術を受けた。同手術においては、両側卵管通気法も施行され、両側卵管が閉塞していないことが確認されたが、A医師は、同手術終了の際、原告の腹部にガーゼを残したことに気づかないまま手術を終了した(乙A4〔1、11、12、18、69、。 〕証人A〔4、弁論の全趣旨。 〕) なお、ガーゼについ たが、A医師は、同手術終了の際、原告の腹部にガーゼを残したことに気づかないまま手術を終了した(乙A4〔1、11、12、18、69、。 〕証人A〔4、弁論の全趣旨。 〕) なお、ガーゼについては、乙A第4号証〔12〕には、ガーゼカウントが合致している旨の記載があるが、本件手術後、後記5 イにおいて認定すると( )おり卵巣嚢腫を摘出する手術を受けた際、ガーゼが発見されたことに加え、本件手術から卵巣嚢腫の摘出術までの間に手術を受けていないこと、本件手術時にはそれ以前にガーゼが残置されていたことをうかがわせる所見がなかったこと等に照らし、何らかの過誤によりガーゼカウントが合致したとの記載がされてしまったと認めるのが相当である。 本件手術後の不妊治療の経過( )ア人工授精原告は、被告病院において、平成10年10月、11月、12月及び平成11年2月に人工授精を受けたが、いずれも妊娠には至らなかった(乙A1〔124ないし150。 〕)また、原告は、Gクリニックにおいて、平成11年7月30日及び同年8月25日に人工授精を受けたが、同様にいずれも妊娠には至らなかった(甲A33〔11、C3。 〕)イ体外受精原告は、平成11年3月に被告病院のA医師に対して体外受精を希望すると述べ、同医師の紹介のもとに、Gクリニックにおいて、平成11年4月12日、7月2日、9月19日、12月12日、にそれぞれ体外受精を受けたが、3回目までは妊娠に至らず終了し、4回目は受精卵がなかったために終了となったことから、その後は顕微受精の方法によることとし、同クリニックにおいて、平成12年3月21日及び6月14日に体外受精を受けたが、いずれも妊娠には至らなかった(甲A33〔6、9、13、16、19、22、C3。 〕)原告は、その後、Hクリニックにお クリニックにおいて、平成12年3月21日及び6月14日に体外受精を受けたが、いずれも妊娠には至らなかった(甲A33〔6、9、13、16、19、22、C3。 〕)原告は、その後、Hクリニックにおいて、平成12年9月20日、12月21日、平成13年4月9日、5月28日、7月17日、11月3日、 平成14年1月21日に顕微受精の方法による体外受精を受けたが、いずれも妊娠には至らなかった(甲A35〔5丁裏、8丁裏、10丁裏、11丁、14丁表、15丁表、19丁表、21丁表、C4。 〕)ウ原告の身体症状原告は、平成9年10月15日に被告病院を退院した後、それまで原告が経験したことのない耳鳴りを体験したことから被告病院の耳鼻咽喉科で診察を受けたところ、突発性難聴と診断されたことから被告病院の耳鼻咽喉科で投薬治療を受けた。この治療は平成10年3月まで続き、聴力は正常値近くまで回復した。もっとも、耳鳴り自体は現在も残っている(甲。 A14、A28〔7、8)〕 卵巣嚢腫の疑い及び手術とガーゼの発見( )ア卵巣嚢腫の疑い原告は、平成14年4月5日、Hクリニックを受診した際、担当医師から、卵巣嚢腫が非常に大きくなっているため、I病院(以下「I病院」という)で診察を受けるよう勧められた(甲A28〔9。 。 〕)そこで、原告は、同月8日、Hクリニックからの紹介により、I病院産婦人科を受診し、同病院産婦人科部長のJ医師(以下「J医師」という)の診察を受けた。J医師は、原告について、子宮の左後方のダグラ。 ス窩に癒着性の嚢腫があり、さらに右側に10の嚢腫を認めるというcm診断をし、手術が必要との判断の下、CT検査を予約した(甲A5、A。 28〔8、9、A31〔2丁表、6丁、B12、証人J〔6)〕〕〕I病院においては、同月16日 の嚢腫を認めるというcm診断をし、手術が必要との判断の下、CT検査を予約した(甲A5、A。 28〔8、9、A31〔2丁表、6丁、B12、証人J〔6)〕〕〕I病院においては、同月16日にCT検査を受け、翌17日の受診時において、右卵巣嚢腫の手術目的での入院を同月22日にすることと決まった(甲A28〔10、A31〔2丁表、20丁)。 〕〕イガーゼの発見と摘出原告は、平成14年4月22日にI病院に入院し、平成14年4月2( )ア 3日、J医師の執刀の下で右卵巣嚢腫摘出手術(以下「本件摘出手術」という)を受けた(甲A6、A28〔10、A32〔6丁。 。 〕〕)J医師は、次のとおり同手術を進めた。すなわち、前回の手術の瘢痕を摘出した後、開腹し、上部3分の1から上方の腹膜に大網が広汎に癒着していたため、その下部で腹膜を開放した。次に、下方に腫瘍及び大きな癒着があったため、周囲を剥離していたが、その間にそれが偽嚢腫であると判明したため、これを開放した(開放、すなわち癒着を剥離して開くことにより、偽嚢腫は解消した(証人J〔18。その右側な〕)。)いし底部に埋没した卵巣があり、ダグラス窩ないし子宮の左方も広汎に癒着していたことから、順次剥離を進めていると、子宮の左後壁より発生した有茎性の変性した筋腫様の組織がまわりと癒着してダグラス窩の部分に存在し、その底部はダグラス窩の底部に達していたが、これを剥離完了して取り上げると、表面にガーゼの露出を確認した。これがガーゼ腫瘍である(甲A5、A6、A32〔6丁、証人J〔5、11ない。 〕し14)〕また、J医師は、その左方に埋没した左卵巣を剥離開放し、更にダグラス窩も完全に開放した上、漿膜及び腹膜の欠損部や両側付属器表面に癒着防止剤を添付して閉腹した。出血量は1400 。 〕し14)〕また、J医師は、その左方に埋没した左卵巣を剥離開放し、更にダグラス窩も完全に開放した上、漿膜及び腹膜の欠損部や両側付属器表面に癒着防止剤を添付して閉腹した。出血量は1400、手術時間は1ml時間40分であった(甲A6、A32〔6丁、証人J〔15。 。 〕〕)同手術中、J医師は、肉眼において確認した両側の癒着の程度から、経験的にみて原告の卵管は両側とも閉塞していることが明らかであると判断した(証人J〔1、26。 〕)もっとも、J医師は、原告が既に体外受精を行っていることを知っていたことから、卵管の機能については特段考慮する必要がないこともあり、卵管について通気や通水をして卵管の状態を確認することはしなかった(証人J〔26、27。 〕) この点に関して、被告は、卵管を確認していないというが、上記のと( )イおり直視下において医師が癒着の状況を確認した上で経験的にみて卵管閉塞が明らかであると判断しているのであり、この判断を左右するに足りる事情はないから、卵管閉塞の事実は認めざるを得ないというべきであって、被告の主張は採用できない。 ガーゼ摘出後の不妊治療の経過( )ア原告は、Hクリニックにおいて、平成14年9月21日(原告は43歳である、12月14日、平成15年2月3日及び4月23日に体外受精。)を受けたが、前3回は胚移植にも至らず、4月23日に実施したものは注射方式で戻したが着床に至らず、いずれも妊娠には至らなかった。なお、原告は、同医院において、平成14年7月にも体外受精に向けた注射を受けたが、卵の発育不全により、体外受精を行わなかった(甲A35〔25・27丁、28・29丁、A37〔2・3丁、4・5丁。 〕〕)イなお、原告は、平成15年6月以降は、体外受精を行っていない( けたが、卵の発育不全により、体外受精を行わなかった(甲A35〔25・27丁、28・29丁、A37〔2・3丁、4・5丁。 〕〕)イなお、原告は、平成15年6月以降は、体外受精を行っていない(原告本人〔15。 〕) 被告病院からの謝罪( )被告病院は、院長名義で、平成17年10月12日付け書面により、原告「に関わるガーゼ残置医療事故を深く反省し、今後2度とこのような事故を起こさないように高度な医療安全管理体制を構築しております。今後同種の医療事故の再発防止に最大限の努力を致します」という謝罪の意を表明し。 た(乙A6。 )医学的知見関係 証拠によれば、次の医学的知見が認められる。 不妊症( )ア不妊症とは、生殖年齢の男女において一定期間正常な性生活があるにもかかわらず、妊娠しない場合をいう。ここにいう「一定期間」とは、WH O及び国際産婦人科連合の定義によれば2年間であるが「一定期間につ、いては、1年から3年までの諸説があるが、2年というのが一般的である」との指摘もあり、他方で「欧米などでは1年間で不妊と診断するのが一般的な考え」であるとの指摘もある(甲B13〔不妊症について」。 「1、B16、B17〔11、13、B19〔58、乙B6)〕〕〕不妊症の原因としては、卵管腹膜因子、排卵因子、子宮因子、膣・頸管因子、子宮内膜症、男性因子、免疫学的不妊及びその他の因子がある(甲B13〔不妊症について」2、乙B6。 「〕)イ不育症とは、妊娠は成立するが流産や早産を繰り返して生児が得られないものをいう(甲B13〔不育症について」1、甲B14〔2、乙B「〕〕6。この点については、不育症は不妊症とは区別するが、広義の不妊症)の中に含む場合もあるとの指摘がある(乙B6。 ) 高プロラクチン血 B13〔不育症について」1、甲B14〔2、乙B「〕〕6。この点については、不育症は不妊症とは区別するが、広義の不妊症)の中に含む場合もあるとの指摘がある(乙B6。 ) 高プロラクチン血症の特徴( )PRL高プロラクチン血症とは、通常、正常値を超えるプロラクチン値(値15以上)が計測されたものをいう。また、潜在性高プロラクチンng/ml血症とは、日中のプロラクチン値は正常であるが、夜間睡眠時や排卵期に(A医師は、20時から翌6時にかけての時間帯であると述べる(証人A〔8)一過性にプロラクチン値が高値を示す傾向にある場合をいう。た〕)。 だし、この意義については異論もある(甲B16〔61、乙B2〔131。 〕4、証人A〔8)〕〕高プロラクチン血症になると、ちょうどそれと反比例して黄体ホルモンが下がる傾向にあり、下垂体から出るホルモンのバランスが乱れるため、排卵前の卵の発育や排卵、着床の妨げとなるほか、妊娠後も流産の確率が高まる。 (証人A〔8、9)〕 黄体機能不全( )黄体機能は、基礎体温の高温相パターン、子宮内膜組織診による内膜の日 付診、血中プロゲステロン値の測定及び子宮内膜のエコーパターンなどにより判断する(甲B2〔45。 〕)A医師によれば、黄体機能不全の際には、子宮内膜が厚くならない(排卵の時期で10以下)という症状を呈する。これに対しては、一般的にmmは黄体ホルモンを補う補充療法を行う。難治性の場合は、偽妊娠療法(子宮内膜症、子宮発育不全及び黄体機能不全などに対して行われる治療法である。 内服法が一般的かつ確実な方法で、主にゲスターゲン剤内服薬の服用を生理第4ないし5日目から開始して2ないし6か月間連続投与することにより子宮内膜を月経前の黄体期の状態や妊娠初期の状態に保つことによ 内服法が一般的かつ確実な方法で、主にゲスターゲン剤内服薬の服用を生理第4ないし5日目から開始して2ないし6か月間連続投与することにより子宮内膜を月経前の黄体期の状態や妊娠初期の状態に保つことによって内分泌環境を改善し、子宮の発育を促し、子宮を大きくする。また、下垂体へのリバウンド現象により周期的排卵も期待できる(乙A7)を行う(証人A。 )。 〔20、弁論の全趣旨。 〕)なお、A医師は、結婚後長期間妊娠していないことと内膜が厚くならないことから、原告を難治性の不妊症と診断している(証人A〔20、21。 〕) 人工授精( )ア意義等性交を介さず、精子を人為的に女性生殖器に注入し、精子をできるだけ卵子に近づけ、女性の体内で受精を期待しようとする方法であり、配偶者、の精子を用いた方法(;)とartificialinseminationwithhusbandsemenAIHartificialinseminationwithdonorsemenAI非配偶者の精子を用いた方法(;)とがある(甲B32〔385。 D〕)イ妊娠率人工授精()における妊娠率は30歳を超えると低下するといわれAIDている(甲B32〔384。 〕) 体外受精胚移植及び顕微授精( )ア体外受精胚移植の意義及び適応 体外受精は、精子及び卵子を体外に取り出して受精させた後、受精卵を子宮に戻して(胚移植という)着床させる方法である(乙B1〔10。 。 〕)体外受精胚移植の適応は、日本不妊学会が発表した新しい生殖医療技術のガイドラインによれば、次のとおりとされている(甲B5〔1。 〕)卵管性不妊( )ア両側の卵管閉塞、通過障害及び腹腔内の著しい癒着によるピックアップ障害等が検査で診断された場 生殖医療技術のガイドラインによれば、次のとおりとされている(甲B5〔1。 〕)卵管性不妊( )ア両側の卵管閉塞、通過障害及び腹腔内の著しい癒着によるピックアップ障害等が検査で診断された場合。 男性因子( )イ精子数が少なかったり、精子の運動性が不良で人工授精を行っても妊娠が成立しない場合や、人工授精を行ったとしても妊娠が不可能なほど精子の状態が不良である場合。 免疫性不妊症( )ウ女性側に抗精子抗体があるために妊娠の成立が妨げられていると考えられる場合。 原因不明不妊症( )エ種々の不妊症検査をしても原因が特定できない場合や、従来の不妊治療によっても妊娠が成立しない場合。 その他( )オ卵胞が成長しても排卵が起きないまま黄体化する場合。 重度の子宮内膜症で、内膜症治療や不妊症治療を行っても妊娠に至らない場合。 また、当初は原因が推定され治療が行われてきたのに依然として妊娠が成功しない場合にも、加齢に伴う卵巣機能の低下などを勘案し、体外受精胚移植の適応を考慮すべきである。 イ顕微授精の方法及び適応 顕微授精は、体外受精と同様に卵子及び精子を採取した後、顕微鏡下で精子を卵子の細胞質内に直接注入して受精させ、2ないし3個の胚を子宮に戻すという方法をとる(乙B1〔108。 〕)精子数が極端に少なかったり運動率や運動性が著しく低下している場合、又は過去の体外受精における受精率が悪かったり受精しなかった場合等に用いられる(甲B5〔5、乙B1〔108。 〕〕)ウ成功率、( )ア日本産婦人科学会に報告された体外受精胚移植あたりの妊娠率は約25%である(甲B5〔6、乙B4〔29。 〕〕)上記に加え、年齢別妊娠率について、女性の年齢率が30歳以下で( )イ50.9%、31ないし33歳で41.1 体外受精胚移植あたりの妊娠率は約25%である(甲B5〔6、乙B4〔29。 〕〕)上記に加え、年齢別妊娠率について、女性の年齢率が30歳以下で( )イ50.9%、31ないし33歳で41.1%、34ないし36歳で36.6%、37ないし39歳で28.0%、40歳以上で9.8%であったとし、このことについて「加齢とともに妊娠率は低下し、特に40歳以上での妊娠率は低く約10%であった」と分析した報告がある(乙B4〔30、31。 〕)他にも、体外受精、顕微授精、ともに20%程度とした文献がある( )ウ(乙B1〔107。 〕)Hクリニックにおける平成12年9月から平成13年12月までの( )エ体外受精胚移植及び顕微授精の臨床成績中、胎嚢が明らかに認められたもの(臨床妊娠)の率は、女性の年齢が34歳以下で56.4%、35歳から39歳までで37.2%、40歳以上で11.5%である(甲B5〔6。 〕) 癒着の機序( )癒着の機序について、文献上、次の記載がある(乙B8〔347。 〕)腹膜については「損傷が起こると血管の透過性が亢進し,フィブリン・、マトリックスからなる炎症性の滲出物がその部分に析出・凝固する。この析 出物は3時間以内に形成され,数日間で溶解する。もしこれが3日以内に溶解しなければ,線維芽細胞の増殖が始まり,癒着を形成する。癒着は7日目くらいにはほぼ完成している」。 「癒着を起こす機序には様々な要因の関与が考えられている。①腹膜の損傷は基本になるが,②同部の虚血の存在はフィブリンの溶解を抑制し,③血液が存在すれば,より多量のフィブリンが析出し,④異物の存在は癒着を助長する。また⑤炎症の存在も癒着の重要な要因である。しかし,これらの要因も単独で癒着を引き起こすのではなく,複雑に互いの要因が作用しあ 存在すれば,より多量のフィブリンが析出し,④異物の存在は癒着を助長する。また⑤炎症の存在も癒着の重要な要因である。しかし,これらの要因も単独で癒着を引き起こすのではなく,複雑に互いの要因が作用しあっている」。 癒着の原因に関する見解( )J医師は、原告の癒着の原因はガーゼの残置であると述べ、ガーゼは異物であり、異物に対して人間の身体はこれを除去しようと働き、炎症反応が起こって、異物をラッピングすることとなり、その過程で周囲の組織と癒着が起こって、左右の卵管が埋没する結果になったと考えるのが自然であると述べている。また、同人は、ガーゼを残置した手術の後3か月も経てば卵管癒着が生じていたであろうとも述べている(証人J〔15、30、32、3。 3)〕 原告の本件手術後における不妊に関する見解( )アA医師A医師は、卵管因子だけであればその後に行われた体外受精によって妊娠出産に至らないことの理由の説明が付かないとしている(証人A〔4 。 〕)イJ医師J医師は、原告の子宮外の癒着を剥がせば、原告は痛みを余り感じなくて済むし、医師は卵子を取り出しやすくなるから、体外受精により妊娠しやすくなると考えられると述べ、他方で、子宮外が癒着している状況では、 採卵・受精後に受精卵を子宮に戻しても着床しにくく、体外受精が意味がなかったとは言わないが非常に難しく、良い結果が出なくても当然であると述べている(証人J〔2、35。 〕)争点1 (原告が平成9年10月3日に被告病院において受けた子宮筋腫核出 ( )術による侵害利益の内容)について 卵管閉塞によって生じた結果について( )ア上記13 において認定したとおり、本件手術の際、被告病院のA医師は( )原告の子宮のダグラス窩にガーゼを残置したものの、この際には 容)について 卵管閉塞によって生じた結果について( )ア上記13 において認定したとおり、本件手術の際、被告病院のA医師は( )原告の子宮のダグラス窩にガーゼを残置したものの、この際には原告の両側卵管は閉塞していなかった。しかし、上記15 イにおいて認定したとお( )り、その後、原告の卵巣嚢腫を摘出する際にJ医師がガーゼを発見するに至り、その際に原告の両側卵管が閉塞していたことが発見されたところ、この閉塞については、卵管が子宮内においてダグラス窩付近にあることや、上記26 及び7 において認定した医学的知見を総合すれば、ガーゼが残置( )( )されたことによって炎症反応が起こり、癒着が生じて両側卵管を埋没させ、術後3か月程度で卵管を閉塞させたものであって、もはや自然には回復できないものと認めるべきである。 この卵管閉塞の結果、原告は、自然妊娠が望めない状況となったばかりか、人工授精を行っても、卵子が子宮内に排卵されないために不奏功に終わるのが確実な状態、言い換えると人工授精も不適応な状態となった。また、顕微授精による方法を含む体外受精については、前記28 の医学的知( )見からすると、卵管閉塞及び高度の癒着の発生のみでそれらが確実に不奏功に終わるとはいえないものの、高度の癒着の存在によって受精卵の着床が相当程度困難になるのは否定し難いところ、これに対して被告は特段の反証をしていないのであって、これを覆すに足りる証拠はない。したがって、このことに、原告が本件手術当時38歳であり、前記25 ウの医学的( )知見のとおり体外受精の成功率が30%を割る年齢層に達していたことを 考え合わせると、原告については高度の癒着を開放しない限り体外受精を行わないというのが通常の選択であると認められ、そのような意味で体外受精につ 精の成功率が30%を割る年齢層に達していたことを 考え合わせると、原告については高度の癒着を開放しない限り体外受精を行わないというのが通常の選択であると認められ、そのような意味で体外受精についても適応のない状態となったと認められる。 以上によると、原告は、本件ガーゼ残置により、いったん一切の妊娠可能性を奪われるに至り、これを回復するために、ガーゼを摘出し癒着を開放することによって体外受精の適応状態を回復することを余儀なくされたと認められる。また、上記のとおり、原告は客観的には人工授精及び体外受精ともに不適応の状態になっていたのであるから、その状態を認識していればいずれも実施しないのが通常であるが、ガーゼ残置自体はもとより高度の癒着は原告の認識し得ない状態で発生するものであることと、それ以前における原告の診療経過からすると、ガーゼ残置という過失行為が行われることにより原告は客観的には人工授精及び体外受精とも不適応状態となっているにもかかわらず、それを認識し得ないことから、仮にそれを認識していれば行わないであろう人工授精及び体外受精を行うこともまた通常の因果の流れであると認められ、そのような無駄な医療行為を受け、その費用を負担したことは、いずれも上記過失行為によって生じた利益侵害であると認められる。 イ被告は、原告については、もともと妊娠可能性が低かったこと、及び仮に本件ガーゼ残置がなくても実際に行ったのと同様に人工授精及び体外受精を行っていたと予想できる旨指摘する。 しかし、原告については、上記11 ウ及び上記12 において認定したと( )( )おり、過去に自然妊娠したことがあることや、自然妊娠経験後に妊娠を試みたものの妊娠に至らなかった期間は平成6年9月ころから平成9年10月までの3年程度であるが、本件手術直前期においては )( )おり、過去に自然妊娠したことがあることや、自然妊娠経験後に妊娠を試みたものの妊娠に至らなかった期間は平成6年9月ころから平成9年10月までの3年程度であるが、本件手術直前期においてはいわゆる偽妊娠療法等の不妊治療がされており、本件手術前には治療目的が達成されていなかったものの、本件手術後の平成9年11月には少なくとも子宮内膜の状 態は改善され、さらに平成10年3月には子宮内膜が厚さ10以上mmに至ったことに照らせば、本件手術前において原告に妊娠可能性がなかったとはいえず、上記主張はその前提に疑問がある。 また、仮に本件ガーゼ残置がなかったとしても、原告が同様の時期及び回数の人工授精及び体外受精を行ったか否かについては、そのことが証拠によって認定できて初めて過失行為と損害との因果関係がないことになる。 しかし、本件ガーゼ残置がなかった場合、上記のとおり、原告については自然妊娠の可能性も否定できないのであるから、人工授精及び体外受精にまで進んだか否かも明らかでない。また、本件手術に至るまで原告が妊娠しなかった原因は不明であって、しかもその時点まで人工授精は行われていないのであるから、卵管に異常がなかった場合に人工授精が不奏功に終わったか否かは明らかでない。体外受精についても、前記28 の医学的知( )見からすると、高度の癒着の有無によってその成否に有意な差異があると認められるから、果たして実際に行われたように多数回の試みがいずれも不奏功に終わったか否かは明らかでない。 したがって、被告の指摘する点は、いずれも上記アの認定判断を左右するものではない。 ウまた、被告は、たとえガーゼ残置がなかったとしても子宮筋腫核出術によって高度の癒着が生じた可能性が高いから、ガーゼ残置と卵管閉塞との間には因果関係がないと主張する。 を左右するものではない。 ウまた、被告は、たとえガーゼ残置がなかったとしても子宮筋腫核出術によって高度の癒着が生じた可能性が高いから、ガーゼ残置と卵管閉塞との間には因果関係がないと主張する。 確かに、ダグラス窩は通常の手術でも癒着しやすい場所であるし(証人J〔27、乙A第4号証〔18〕には「腹腔内には前回腹腔鏡で両側〕)、卵巣と子宮後方に一部索状のゆ着があり」との記載があり、実際に原告の子宮後方に癒着があったことが認められる。しかし、A医師は、その後、上記癒着については電気メスで切開剥離して止血を確かめた上(乙A4〔18、上記において認定したとおり、卵管の通気を確かめて通気が良〕) 好であることを確認しているにもかかわらず、卵管が埋没するほど高度の癒着が生じていることや、癒着がしやすい場所であるが故にガーゼを残置することによる炎症反応と相乗効果を発揮したと評価することも可能であること(この点について「異物の存在は癒着を助長する」との指摘があ、る(乙B8〔347)に鑑みると、ガーゼ残置がなくとも多少の癒着〕)。 が生じた可能性は高いが、高度の癒着が生じた可能性が高いとまではいえない。 したがって、被告の主張は採用できない。 突発性難聴について( )この点については、確かに、突発性難聴の発生時期が本件手術直後であることが本件手術と何らかの関係があるのではないかという疑いを生じさせるものということができるものの、それ以上に本件手術時のガーゼ残置がなければ突発性難聴が発生しなかったといえるだけの証拠はなく、しかも、上記 14 ウにおいて認定したとおり、原告の聴力は本件摘出手術の約4年も前の( )平成10年3月の時点においてほぼ回復したというのであって、本件手術後に回復したわけではないから、このことは、本件手術時の 4 ウにおいて認定したとおり、原告の聴力は本件摘出手術の約4年も前の( )平成10年3月の時点においてほぼ回復したというのであって、本件手術後に回復したわけではないから、このことは、本件手術時のガーゼ残置によって突発性難聴が起こったことにつき、消極方向に考える事実となるというべきである。 したがって、本件手術によるガーゼ残置によって突発性難聴が発生したとは認められず、因果関係は認められない。 争点2 (損害額)について ( )以上により、本件ガーゼ残置により、体内にガーゼが残置され、これにより卵管が閉塞し、かつ子宮に癒着が生じたとの障害が原告に発生したと認められるから、これにより通常生ずべき損害について判断する。 損害費目について( )アガーゼ摘出手術に関する治療費及び通院費4万1010円 上記のとおりガーゼという異物が残置された以上、これを摘出すべき( )アことは当然である上、体外受精による妊娠可能性を回復するためにもこれが必要となったと認められるから、ガーゼ摘出手術によるI病院への治療費及び通院費は、ガーゼ残置により通常生ずべき損害というべきである。 したがって、I病院における外来治療費2万6460円及び入院治療費10万5750円(甲C1(枝番号を含む)から、健康保険組合か。)ら原告に対する支払額9万5500円(甲C2)を差し引いた額に、通院5回分の交通費4300円(電車及びバスを使用することを前提とすると、1回分の料金は860円であると認めるのが相当である)を加。 えた4万1010円を損害と認める。 この点に関して、原告は、入院治療費は12万3885円(上記の額( )イに加え、食費8580円、腹帯等費用5355円、特別室使用料4200円を含んだ額となっている)であると主張する。しかし、入院費の に関して、原告は、入院治療費は12万3885円(上記の額( )イに加え、食費8580円、腹帯等費用5355円、特別室使用料4200円を含んだ額となっている)であると主張する。しかし、入院費の。 うち、食費及び腹帯等費用については入院雑費として考慮する損害であるし、特別室使用料については、これを損害と認めるべき特段の事情が見当たらない。したがって、これらの費用を治療費に含めることはできず、原告の主張は採用できない。 イガーゼ摘出のための入院雑費1万8000円上記アにおいてと同様の理由により、入院雑費についても通常生ずべき損害であると認めるべきである。これについては、1日1500円と見るのが相当であるから、同額に入院日数を乗じた1万8000円を損害額と認める。 ウガーゼ摘出のための入院による休業損害13万1888円上記アにおいてと同様の理由により、入院中の休業損害についても通常生ずべき損害であると認めるべきである。これについては、原告が人工授 精及び体外受精を受けていた当時において原告が職に就いていたことを認めるに足りる証拠はなく、家事従事者であると認めるべきであるから、手術当時である平成13年において家事従事者に認められるべき賃金相当額(これについては、平成13賃金センサス第1巻第1表産業計、企業規模計、学歴計、女子労働者全年齢平均賃金額をもって充てるのが相当である)である年額352万2400円を基礎とし、入院日数12日に相当。 する額を算定すべきであり、通院日数5日分については、上記のとおり原告は家事従事者であると認めるべきところ、通院によって通院日の家事一切ができなくなったと認めることはできず、通院に要したと推認される時間を考慮すれば、その休業損害は入院中の3分の1(1円未満切捨て)とすべきであるから、以上の休 きところ、通院によって通院日の家事一切ができなくなったと認めることはできず、通院に要したと推認される時間を考慮すれば、その休業損害は入院中の3分の1(1円未満切捨て)とすべきであるから、以上の休業損害は次の各計算式による結果の和である13万1888円を損害額と認める。 [計算式(1円未満切捨て])(入院分)3,522,400×(12÷365)≒115,804(通院分)3,522,400×(5÷365)÷3≒16,084エ人工授精・体外受精費用等491万5681円前記31 アのとおり、体外受精及び顕微受精の費用についても、本件( )( )アガーゼ残置行為を機縁として客観的に無益なものになっており、原告がそのことを認識していれば通常支出しないにもかかわらず、上記行為の形態等からそのことを認識し得なかったために支出したものというべきであるから、本件ガーゼ残置により通常生ずべき損害として認めるべきである。 そして、この額については、医療費、交通費が損害として認められる( )イほか、休業損害についても損害として認められる。しかし、上記のとおり通院によって通院日の家事一切ができなくなったと認めることはできず、通院に要したと推認される時間を考慮すれば、通院日1日につき、 家事従事者に認められるべき1日当たりの賃金相当額(これについては、通院年における賃金センサス第1巻第1表産業計、企業規模計、学歴計、女子労働者全年齢平均賃金額〔平成10年は341万7900円、平成11年は345万3500円、平成12年は349万8200円、平成13年は352万2400円、平成14年は351万8200円〕を基礎として算定するのが相当である)の3分の1(1円未満切捨て。以。 上の医療費、交通費及び休業損害の内訳は別紙損害額算定表記載のとおりで 年は352万2400円、平成14年は351万8200円〕を基礎として算定するのが相当である)の3分の1(1円未満切捨て。以。 上の医療費、交通費及び休業損害の内訳は別紙損害額算定表記載のとおりである)を以て損害と認めるのが相当である。 。 オ慰謝料300万0000円上記のとおり、原告については、本件手術時のガーゼ残置により、そもそも本来であれば存在しないガーゼという異物を体内に抱えた状態となったこと、結果として本件摘出手術を受ける必要性が生じ、そのためにI病院への通院及び入院を余儀なくされたこと、ガーゼ残置によって発生した高度の癒着が原因で卵管が閉塞したことにより、自然妊娠の可能性を失い、人工授精の適応もなくなり、そのことを認識できないまま無益な人工授精を4回行い、やはり適応のない体外受精を14回も行い、そのほとんどの回において客観的には何ら必要性がなかったにもかかわらず生殖器を他人に触れられるという屈辱的な思いを余儀なくされたことが認められ、これらによって原告は相当な精神的苦痛を受けたものと認められるところ、他方で被告病院も院長名義で書面による謝罪を行っていること等、本件における一切の事情に鑑みると、原告の精神的苦痛に基づく慰謝料としては、これを300万円とするのが相当である。 カ弁護士費用81万0000円原告は、本訴提起を原告訴訟代理人弁護士に委任しているところ、本件請求は診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償請求であり、かつ、医学的知見を要する専門訴訟であって、これを独力で遂行することには困難を 伴うから、弁護士を代理人としてこれを遂行することは合理的であると認められる。したがって、上記額を合計した額の約1割である81万円を弁護士費用としての損害として認める。 キ合計891万6579円以上を合計すると891 としてこれを遂行することは合理的であると認められる。したがって、上記額を合計した額の約1割である81万円を弁護士費用としての損害として認める。 キ合計891万6579円以上を合計すると891万6579円となるから、同額について、被告は原告に対して診療契約上の債務不履行として賠償する義務がある。 原告のその余の主張に対する判断( )アこれに対して、原告は、上記のほかにも、突発性難聴に関する治療費、今後の体外受精に関する費用をも損害費目として掲げる。 イしかしながら、突発性難聴に関する治療費については、前記3において説示したとおり、本件手術によるガーゼ残置と突発性難聴の発生との間に因果関係が認められないから、突発性難聴の発生に基づく治療費を損害として考慮することはできない。 また、体外受精費用についても、ガーゼ除去手術によって、卵管の閉塞及び子宮内の癒着が解除されたのであるから、原告の妊娠可能性を低下させ、体外受精を無益なものとしていた障害が除去されたものと認められる以上、それ以降の体外受精費用については、本件ガーゼ残置により通常生ずべき損害であるとは認められない。 結論 以上によれば、原告の請求は、被告の診療契約上の債務不履行に基づく損害賠償として891万6579円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成15年6月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから、その限度において認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部 裁判長裁判官藤山雅行裁判官金光秀明裁判官萩原孝基 (別紙)主張要約書第1原告が平成9年10月3日に被告病院において受けた子宮筋腫核出術(以下「本 34部 裁判長裁判官藤山雅行裁判官金光秀明裁判官萩原孝基 (別紙)主張要約書第1原告が平成9年10月3日に被告病院において受けた子宮筋腫核出術(以下「本件手術」という)による侵害利益の内容(争点1 )。 ( )()原告の主張 妊娠可能性について 本件手術に至るまでの妊娠可能性( )ア自然妊娠の事実原告は、平成4年7月及び平成5年11月の2回、自然妊娠をした。 イ平成6年9月から本件手術までにおける原告の黄体機能原告の黄体ホルモン(プロゲステロン)値が正常であること( )ア黄体機能不全とは、血中の黄体ホルモン(プロゲステロン)の値が黄体期(排卵から次の月経までの期間。基礎体温が高温を示す「高温期」と同義)中期で10未満の場合をいう。 ng/ml原告のプロゲステロン値は、平成7年9月25日(月経から20日目、高温期7日目)の検査では22.5、平成10年6月22日ng/ml(月経から16日目、高温期5日目)の検査では28.59、同ng/ml年7月21日(月経から17日目、高温期4日目)の検査では58. 、平成12年9月27日(月経から20日目、高温期7日ng/ml目)の検査では33.4、平成13年4月16日(月経から20ng/ml日目、高温期7日目)の検査では36.9であったものであるかng/mlら、原告のプロゲステロン値が全く正常であり、原告が黄体機能不全でないことは明らかである。 なお、平成10年当時は、被告病院A医師よりデュファストン(黄 体ホルモン剤)を処方されていたため、平成10年当時のプロゲステロン値の検査結果についてはその影響も考慮しなければならないが、上記のデータに照らせば、原告にデュファストンの投与によっても解決できないよう モン剤)を処方されていたため、平成10年当時のプロゲステロン値の検査結果についてはその影響も考慮しなければならないが、上記のデータに照らせば、原告にデュファストンの投与によっても解決できないような黄体機能不全の症状があったとは認められない。 また、被告病院における黄体ホルモン検査は、平成7年9月25日及び平成10年6月22日実施分を除き、全て低温期あるいは高温期初期に実施されているものであり、上記のとおり、黄体機能不全の診、断は高温期中期のプロゲステロン値をもってなされるものであるから被告病院における低温期ないし高温期初期のプロゲステロン値の測定には全く意味がない。 子宮内膜組織診の結果も正常であること( )イまた、原告のプロゲステロンの値が正常であり、黄体機能不全を診断するためのもう一つの方法である子宮内膜組織診の結果も正常であることについては、被告病院のA医師自身、Gクリニックへの患者紹postovulatoryd介状に「H7.9.27子宮内膜組織診POD(==排卵後の日数)7~8日目で一致しており、P4(プロゲステロayン)22.5と正常」と記載しているとおりであり、原告の黄体ng/ml機能が正常であったことは明らかである。 ウ平成6年9月から本件手術までにおける原告の卵巣機能卵巣機能不全とは、卵巣自体の機能が低下し自分の卵巣内の卵子では妊娠が極めて困難になったと判断される場合をいうが、一般的に自分の卵巣内の卵子では妊娠が極めて困難になったと判断されるのは、月経開follicle-stimulatinghormo始後の卵胞期における血中の卵胞刺激ホルモン(=FSH)の値が25に上昇した場合である。 nemIU/ml原告のFSH値は、平成7年7月21日の検査では2.9、同mIU/ml年12月1 o始後の卵胞期における血中の卵胞刺激ホルモン(=FSH)の値が25に上昇した場合である。 nemIU/ml原告のFSH値は、平成7年7月21日の検査では2.9、同mIU/ml年12月1日の検査では3.4~4.9、平成11年1月8日のmIU/ml 検査では9.7、同年1月19日の検査では10.3、同mIU/mlmIU/ml年2月9日の検査では5.2、同年2月15日の検査では14. mIU/ml 、同年3月15日の検査では9.0、平成14年6月7mIU/mlmIU/ml日の検査では5.1と全くの正常値を示している。 mIU/mlしたがって、原告が卵巣機能不全でないことは明らかである。 エ原告の卵管・卵管采部本件手術前、原告の卵管・卵管采部には何らの異常がなかった。 オ本件手術以前の検査及び不妊治療についてアメリカにおける検査( )アa検査を行ったきっかけ原告が、平成2年夏にアメリカの. .において子JoanneHerrmanMD宮ガン検診を受けた際、.に対し子供が欲しいと思ってかDrHerrmanら半年経過した旨を伝えたところ、1年たっても妊娠しなければ、念のため病院に検査に来るようにと言われたことから、原告は、避妊をやめてから1年たった平成3年の春、同病院で検査を始めることとした。 b検査の内容あらかじめ.から手渡されたスケジュール表に従い、DrHerrman体温表の提出、血液検査、卵管造影検査、内視鏡検査等の検査を行った。あくまで、原告の目的は検査であり、かつ原告の検査結果に何らの異常は認められなかったため、服薬や注射等の積極的な不妊治療は全く行われなかった。原告は平成4年7月に自然妊娠をしたことから、同病院での検査を終了した。 D病院での検査( ) の検査結果に何らの異常は認められなかったため、服薬や注射等の積極的な不妊治療は全く行われなかった。原告は平成4年7月に自然妊娠をしたことから、同病院での検査を終了した。 D病院での検査( )イa検査を行ったきっかけ原告は、平成5年の春頃、友人からD病院の不妊治療セミナーに 行かないかと誘われた。原告は平成4年7月に自然妊娠した経験もあり、自分に特に不妊治療が必要だとは考えていなかったが、できれば早く子供が欲しいと思っていたこと、当時時間に余裕のある仕事をしており自由になる時間があったことから、友人に付き合ってD病院へいくこととした。 b検査の内容原告はD病院のセミナー参加後、念のため検査だけはしておこうという気持ちから、平成5年8月6日同病院において血液検査を受け、同年10月18日に卵管造影検査を受けた。 原告は同年11月に何らの積極的な治療を受けることなく、自然に妊娠したため、D病院での検査を止め、自宅に近い被告病院へ通うこととした。 被告病院における不妊治療( )ウa胞状奇胎による流産原告は、平成5年11月に自然妊娠したことから被告病院へ通うこととしたが、妊娠後まもなく、胞状奇胎のために流産することとなった。 胞状奇胎により流産をした場合、絨毛癌の発見のために、通常半年から1年の避妊指導がなされる。なお、胞状奇胎により流産をしても、その後の妊娠は可能である。 原告は、被告病院の当時の担当医から半年間避妊をするよう指導されたため平成6年9月頃まで避妊をしたが、その後1年を経過しても妊娠しなかったことから、早期の妊娠を目指し、被告病院への通院を始めた。 b不妊治療の内容平成7年9月~平成8年1月漢方薬を服用 平成8年2月~平成9年2月黄体ホルモン剤(デュファストン)服用平成9年3月~同年5月 娠を目指し、被告病院への通院を始めた。 b不妊治療の内容平成7年9月~平成8年1月漢方薬を服用 平成8年2月~平成9年2月黄体ホルモン剤(デュファストン)服用平成9年3月~同年5月排卵誘発剤(セキソビット)及び黄体ホルモン剤服用同年5月末~同年8月ドオルトン(卵胞ホルモンと黄体ホルモンの配合薬)服用同年9月本件手術までの間排卵誘発剤及び黄体ホルモン剤服用 本件手術以降における原告の妊娠可能性(妊娠可能性の低下)( )ア原告は、卵管癒着等により、体外受精によらなければ妊娠が不可能であることガーゼ摘出手術の際、原告の左右の卵巣の周囲は広範囲に癒着して()アおり、これを完全に剥離することはできなかったこと原告は、平成14年4月23日、I病院においてガーゼ摘出手術を受けたが、その際、原告の身体は、被告病院における本件手術の際のガーゼ残置(以下「本件ガーゼ残置」という)を原因として卵管・卵。 管采部を含む卵巣の周囲が広範囲に癒着していた。 J医師は、ガーゼ摘出手術の際、癒着剥離を試みできる限りのことはしたが、癒着を完全に剥離することはできなかった。 卵管閉塞の診断について( )イJ医師は、ガーゼ摘出手術の際、肉眼的所見により原告の卵管部の癒着が強度であり、卵管通気法により通過性を回復できるような状態ではないと診断した。 本件では卵管造影や卵管通水等による診断はなされていないが、これらの診断は、あくまでスクリーニング検査(一次検診)として位置づけられるものであり、より確定的な診断は、腹腔鏡という直接的に 当該箇所を観察する方法により行われる。 本件において、J医師は、開腹手術の際直接肉眼で当該箇所を観察し、卵管・卵管采部の癒着を認めたのであるが、これは、腹腔鏡という視野の限られた器具の助けを借り 当該箇所を観察する方法により行われる。 本件において、J医師は、開腹手術の際直接肉眼で当該箇所を観察し、卵管・卵管采部の癒着を認めたのであるが、これは、腹腔鏡という視野の限られた器具の助けを借りず、またカメラやモニターを介さず直接的に観察する方法である点で、上記の腹腔鏡を用いた検査方法よりもさらに確実な方法であるから、J医師の卵管・卵管采部の閉塞の診断に誤りはない。 卵管再建術は困難であること( )ウJ医師は、ガーゼ摘出手術後、原告らに対し「今後は体外受精でな、ければ妊娠は望めない」と説明した。 J医師に対し、このように診断した理由について説明を求めたところ、同医師の説明は次のとおりであった。 a卵管・卵管采部に閉塞が生じている人が妊娠するための方法としては、理論上、①卵管再建術(卵管采形成術)によって卵管の通過性を回復する方法と、②体外受精による方法との2通りが考えられる。 bしかしながら、①の方法については、一般に手術成績が良くないものとされている(手術そのものの難易度が高く、成功率が低いということ。かかる観点、また特に原告のケースについては癒着の程)、度が強度であり、癒着の部位が卵管采に及んでいることに照らせば卵管再建術(卵管采形成術)よりは体外受精を適用すべきケースと考えた。 この点、甲B8(不妊治療プラクティス)119頁にも「卵管采部、・卵管周囲の癒着が強度で、特に卵管采部・膨大部を切除しなければ形成術が行い得ない症例」等については「卵管形成術で卵管機能を温存することはきわめて困難で(体外受精)が治療の第一選択でIVF-ET あろうと考えている」旨の記述が存在する。 また、同文献125頁(甲B10)には「手術療法においては卵管、の状態を把握し、再建術に適した卵管か否かをまず評価するための適切な でIVF-ET あろうと考えている」旨の記述が存在する。 また、同文献125頁(甲B10)には「手術療法においては卵管、の状態を把握し、再建術に適した卵管か否かをまず評価するための適切な方法の確立が重要であると考える「手術成績の不良症例を見出」、すことによりためらわず、それらの症例は体外受精へ決意し、可能性のあるものはマイクロサージェリー(※顕微鏡下の手術―甲B11。 ここでは、顕微鏡下の卵管再建術の意)を試みるという姿勢が最も大切なことではなかろうか」との記述が存在し、卵管再建術の手術成績が不良であること等を考慮すれば、卵管再建術に適した卵管であると認められない症例についてはためらわず体外受精に踏み切ることが重要であるとされている。 J医師の上記説明内容は、これらの文献の記載内容とも整合するものであり、十分に信用できるものというべきである。 イ原告は、体外受精によれば妊娠が十分可能であること原告の卵巣機能等が正常であること( )ア上記11 アのとおり、原告には過去に2回自然妊娠をした事実があ( )る。 また、上記11 イのとおり、原告のプロゲステロン値は、平成13( )年4月16日(月経から20日目、高温期7日目)の検査では36. であり、卵子の質を示す卵胞刺激ホルモン(FSH)値は、平ng/ml成14年6月7日の検査では5.1と全くの正常値を示していmIU/mlるから、原告は本件手術前においても本件手術後においても、黄体機能不全もなければ卵巣機能も全く正常であり、原告が現在も妊娠可能であることは明らかである。 本件手術後の不妊治療について( )イa本件手術後ガーゼ残置発覚以前の不妊治療 被告病院における不妊治療( )a平成9年11月から平成10年10月まで排卵誘発剤及び黄体ホルモン 。 本件手術後の不妊治療について( )イa本件手術後ガーゼ残置発覚以前の不妊治療 被告病院における不妊治療( )a平成9年11月から平成10年10月まで排卵誘発剤及び黄体ホルモン剤の服用。 。 同年10月から平成11年2月までの間に人工授精を4回行うGクリニックにおける不妊治療( )b平成11年4月から平成12年6月までの間に、体外受精6回(うち受精卵ゼロによる終了2回、人工授精3回行う。 )Hクリニックにおける不妊治療( )c平成12年9月から平成14年1月までの間に、体外受精7回(うち受精卵ゼロによる終了1回、受精卵が胚盤胞まで育たず終了が4回)行う。 bガーゼ残置発覚以降の不妊治療についてHクリニックにおいて、体外受精4回(うち受精卵が胚盤胞まで育たず終了が3回)行う。 体外受精を開始した経緯( )ウ原告は、上記のとおり、平成7年9月より被告病院において不妊治療を開始し、平成9年10月の本件手術後1年半に渡り、被告病院において排卵誘発剤及び黄体ホルモン剤の処方や、人工授精の処置を受けてきたものであるが、これらの薬剤の服用を繰り返し、人工授精を繰り返したにもかかわらず、妊娠に至らなかった。 そこで、早期の妊娠を望んでいた原告は、平成11年2月に人工授精の処置を受けた際、A医師に対し「出産は何歳まで可能ですか」と尋ねたのであるが、これに対するA医師の答えは「40代前半までが望ましいが、先日九州の病院で47歳の人が出産した」と早期の妊娠を望む原告の希望に反する対応であったため、原告は、より積極的な処置として体外受精を行いたいと同医師に申し出、同医師にGクリニ ックを紹介してもらったものである。 なお、原告が体外受精を行った経緯は上記のとおりであるが、その頃には、本件ガーゼ残置により原告の卵管・ て体外受精を行いたいと同医師に申し出、同医師にGクリニ ックを紹介してもらったものである。 なお、原告が体外受精を行った経緯は上記のとおりであるが、その頃には、本件ガーゼ残置により原告の卵管・卵管采部には癒着が生じていたと考えられるから、結果として、本件ガーゼ残置による卵管・卵管采部の癒着により自然妊娠及び人工授精による妊娠が不可能であることから体外受精を行ったのと同様であると評価しうる。 原告は着床不全ではないこと( )エa着床不全とは何か被告は原告が着床不全であったと主張するが、原告の身体のどの部分の働きがどのように不十分だということなのか(定義、またそ)のことは検査数値等の上でどのように裏付けられているのか(根拠)を明らかにされたい。 b原告には母体因子による着床障害はないこと仮に原告が「着床障害」の趣旨で「着床不全」という用語を用いているとしても、原告の身体には、もともと、卵管部に何らの問題がなくても妊娠可能性がゼロとなるような不妊の原因があったということには全くならない。 最新医学大辞典にも記載されているとおり、着床障害が惹起される要因としては「受精卵の分割、移送、子宮内膜の準備状態」とい、う受精卵側の要因及び母体側の要因の両方が考えられるところ、体外受精の場合においては、自然妊娠や人工授精の場合と異なり受精卵(胚)の発育が未熟な段階で受精卵(胚)が体内に戻されるのであるから、上記の3要素のうち「受精卵の分割」の点において自然妊娠や人工授精の場合より不利な点があるといわざるをえないのであるから、現在まで体外受精を行ったにもかかわらず妊娠に至っていないことが、直ちに、原告の身体に着床を妨げるような異常があ るということを意味するわけではない。 なお、上記の着床障害が惹起される要因のうち、母体因子(受精 を行ったにもかかわらず妊娠に至っていないことが、直ちに、原告の身体に着床を妨げるような異常があ るということを意味するわけではない。 なお、上記の着床障害が惹起される要因のうち、母体因子(受精卵ではなく母体(=原告の身体)に何らかの着床を妨げる事由がある場合)といえるものとしては「子宮内膜の準備状態」が挙げられ、るが、最新医学大事典に「母体因子の診断には、ホルモン活性の測定、基礎体温、子宮内膜組織診によるホルモン活性の測定が行われる」と記載されていることからも明らかなとおり、母体因子により着床障害が惹起されているということは、ホルモン活性の測定(具体的には上記11 イのプロゲステロン値の測定、基礎体温、子宮( )()ア)。 内膜組織診によるホルモン活性の測定により診断が可能なのであるしかるに、原告については、上記11 イのとおり、プロゲステ( )()アロンの値は全く正常であり、子宮内膜組織診の結果も全く正常であったのであるから、原告には「母体因子による着床障害」があったとは全くいえない。 原告の自然妊娠の事実( )オ原告は上記11 アのとおり、平成4年7月及び平成5年11月の2( )回、自然妊娠をしており、妊娠の成立とは受精卵が子宮内膜へ「着床」した状態をいうのであるから、原告が着床不全ではないことは明らかである。 体外受精と自然妊娠及び人工授精の差異( )カなお、原告が体外受精を行ったにもかかわらず、妊娠に至っていないからといって、着床不全であるとは全く認められない。 すなわち、自然妊娠及び人工授精では、子宮内に受精卵(胚)が到達するのは排卵後5日目くらいの段階であるところ、体外受精においては、採卵の2~3日後に、4~8分割卵くらいになった段階で胚移植(カテーテルを用いて膣から子宮内に受精 では、子宮内に受精卵(胚)が到達するのは排卵後5日目くらいの段階であるところ、体外受精においては、採卵の2~3日後に、4~8分割卵くらいになった段階で胚移植(カテーテルを用いて膣から子宮内に受精卵を戻すこと)が行われ るものであり、自然妊娠の場合と比べ、子宮に到達する受精卵(胚)の発育がまだ未熟な状態であることから、体外受精の方が自然妊娠及び人工授精に比較し着床率が下がるのは当然であり、原告の身体的機能に着床を妨げるような異常があるわけではない。 また、Hクリニックにおいて、体外受精胚移植での妊娠率は、患者の年齢が40歳を超える場合、11.5%であり、平均として10回に1回の割合で妊娠に至るものと評価できることから、原告が数回の体外受精を経た現時点において妊娠していないからといって、原告が着床障害であったと認定するのは誤りである。 突発性難聴について原告は、本件ガーゼ残置後、突発性難聴を発症し、平成9年10月20日から平成10年3月6日までの計12日間、被告病院において治療を受けた。原告はこれまでこのような症状に陥ったことはなく、本件ガーゼ残置後に発症していることから、これも本件ガーゼ残置と因果関係のある障害である。 ()被告の主張 妊娠可能性について 原告の本件手術前における不妊症( )ア原告が不妊症であったこと原告は不妊症であったことを争うもののようであるが、平成6年9月から平成9年10月3日の本件手術まで、避妊を行っていないにもかかわらず、妊娠しなかったのであるから「避妊せずに性生活を送っている、カップルが、2年以上経過しても妊娠しない場合」という不妊の概念に該当することは明らかであって、原告は不妊症であった。 イ黄体機能不全原告は不妊の原因をことごとく否定するが、上記のとおり、原告は不妊 、2年以上経過しても妊娠しない場合」という不妊の概念に該当することは明らかであって、原告は不妊症であった。 イ黄体機能不全原告は不妊の原因をことごとく否定するが、上記のとおり、原告は不妊 症だったのであり、その原因として、高プロラクチン血症の存在などから、黄体機能不全を疑い、その治療を開始しているのである。 それゆえ、原告は、被告の主張を「口から出任せ」などと激しく非難するが、誠に遺憾である。 また、黄体機能不全の治療として黄体ホルモンを投与しているため、その検査数値から黄体機能不全でないということはいえない。 なお、後述するとおり、原告は着床不全でもあるが、黄体機能不全は着床不全に関する疾患の1つとされている。 ウ米国・D病院での不妊治療原告は米国では不妊治療ではなく、検査であると主張するが、アメリカ生殖医学会では1年間妊娠しなければ不妊症と定義していること、医療費の高い米国において平成3年春から平成4年7月までという長期に及んでいること、その診療記録も提出されていないことから、単なる検査であったとはただちに信用できない。 また、D病院でも受診しているのは「不妊治療セミナー」であり、平、成4年に米国で卵管造影検査を行っているにもかかわらず、翌平成5年に再び同病院において同検査を行っていることからすれば、不妊治療と理解するのが素直である。 卵管閉塞の有無( )アガーゼ摘出時に卵管通水法を行っていないこと原告は左右の卵巣の周囲が広範囲に癒着していたから、卵管の閉塞は明らかであると主張するもののようであるが、手術記録には、卵管を観、察した形跡がなく、解剖学的にも、卵巣と卵管とは全く別異であるからそのような推論は成り立たない。 卵管閉塞の有無を確定するには、卵管通水法が不可欠であり、これは容易な検査であって、卵管閉塞の 観、察した形跡がなく、解剖学的にも、卵巣と卵管とは全く別異であるからそのような推論は成り立たない。 卵管閉塞の有無を確定するには、卵管通水法が不可欠であり、これは容易な検査であって、卵管閉塞の治療にもなるものであるから、行わな いという理由がない。 卵管通水をし忘れたというのであれば、そのように認めればよいだけの話である。 なお、原告は目視しているのだから、スクリーニング検査としての卵管通水法は不要であると主張するが、目視しただけでは卵管の疎通性は不明であり、この場合には卵管通水法が卵管閉塞の確定診断となる。 イ体外受精に先立ち卵管閉塞に関する検査が行われていないこと 原告の体外受精が卵管癒着等を原因とするものではないこと( )原告が体外受精を開始したのは、本件ガーゼ遺残の発覚前のことであり、卵管癒着のために行ったものではないから、本件ガーゼ残置と社会通念上の相当因果関係を認めることはできない。 原告は事後的に見てガーゼ残置があった以上、遡って本件体外受精もガーゼ残置によるものであると主張するもののようであるが、相当因果関係の判断は、当該時点における一般人の認識し得た事実を前提に判断すべきであるから、ガーゼ残置ということがまったく予想できなかった本例においては、相当因果関係は認められない。 原告は、体外受精によっても妊娠が困難であると考えられること( )ア着床不全妊娠は「排卵・受精・着床」という3段階を経て、成立するが、体外、受精においては、排卵・受精は体外において完了するものである以上、体外受精において妊娠しないということは、受精卵が着床しないということであるから、着床不全ということになる。なお、着床不全は、症候名であるから、着床しないという事実の存在をもって足る。 なお、原告は、その協力医に聞いたところ「着 うことは、受精卵が着床しないということであるから、着床不全ということになる。なお、着床不全は、症候名であるから、着床しないという事実の存在をもって足る。 なお、原告は、その協力医に聞いたところ「着床不全」という呼び名、は一般的でないなどと被告を批判するが、産婦人科医向けの有名雑誌において着床不全の特集が組まれるほどであるから、その協力医の有する知見 全般について多大な疑問を抱かざるを得ない。原告はそこまで主張した以上、協力医の氏名を明らかにし、主張の根拠を示さなければ、無責任な訴訟態度との謗りを免れないのではなかろうか。 イ体外受精の妊娠率原告は体外受精は自然妊娠に比べて妊娠率が下がると主張するが、妊娠率の差異は認められていない。 また、原告のかかっている病院において妊娠率が11.5%であるからといって、統計学的に考察して、11.5%×9回=103.5%の妊娠確率、すなわち体外受精を9回行なえば必ず妊娠するという数式が成り立つはずがないことはいうまでもない。 さらに、原告は「数回の体外受精を経た現時点」と主張するが、体外受精は合計17回行っていると自ら主張しているのであって、当該主張の真意が理解できない。 ウ不育症原告は、過去に2回妊娠・流産したのだから、不妊症ではないと主張するが、前述のとおり、米国では1年間の不妊期間をもって診断し、2年間妊娠しなかったことをもって不妊症と診断することはコンセンサスが得られており、加えて、流産を繰り返すような場合を含めて、広義に不妊症と呼び習わすことがあり、狭義では、これらは不育症と呼ばれている。 なお「黄体機能不全は、不妊症や不育症で高頻度にみられる疾患であ、る」とされるように不妊症と不育症は疾患として関連付けるべきものである。 人工授精及び体外受精と過失行為との因果関係( ) 。 なお「黄体機能不全は、不妊症や不育症で高頻度にみられる疾患であ、る」とされるように不妊症と不育症は疾患として関連付けるべきものである。 人工授精及び体外受精と過失行為との因果関係( )仮に本件ガーゼ残置がなかったとしても、原告には、治療を進めた上で判明したことではあるが、改善不能な着床不全があるため、結局妊娠できなかったものと考えられるから、通常の不妊治療を経て、本件実際の診療と同じ 流れで、人工授精及び体外受精を施行し、やはり妊娠できなかったものと考えられる。したがって、本件ガーゼ残置がなければ人工授精及び体外受精をする必要がなかったとの関係、また、それらの効果が得られたとの関係は認められない。 突発性難聴について原告は、ガーゼ残置により突発性難聴が生じたと主張するが、突発性難聴の原因は不明であるとするのが周知の事実であるから、本件ガーゼ残置との間に因果関係がない。 第2損害額(争点2 )( )()原告の主張 ガーゼ摘出手術に関する治療費及び通院費合計59,145円原告は、平成14年4月23日、財団法人I病院(以下I病院という)において手術を受け、被告病院における本件ガーゼ残置により遺留されたガーゼの摘出を受けた。 同手術に要した費用及びこれに関連する通院に要した費用は、下記の合計金59,145円となる(甲C1-1~7I病院領収書、甲C2給付金等決定のお知らせ。 )平成14年4月8日(通院)診療費11,050円交通費860円平成14年4月16日(通院)診療費10,230円交通費860円平成14年4月17日(通院) 診療費110円交通費860円平成14年4月22日から5月3日(入院12日間)入院費(4月分)104,630円腹帯等5,355円入院費(5月分) 円平成14年4月17日(通院) 診療費110円交通費860円平成14年4月22日から5月3日(入院12日間)入院費(4月分)104,630円腹帯等5,355円入院費(5月分)13,900円平成14年5月13日(通院)診療費2,960円交通費860円平成14年5月27日(通院)診療費2,110円交通費860円小計154,645円健康保険組合より支払い平成14年7月分療養附加金94,000円平成14年8月分療養附加金1,500円小計95,500円差引合計59,145円 ガーゼ摘出手術に関する休業損害182,202円3,912,000円(平成13年賃金センサス女性40~44歳学歴計)×17/365≒182,202円 ガーゼ摘出手術に関する入院雑費18,000円1日1500円×12=18,000円 突発性難聴の治療に関する費用140,138円原告は、本件ガーゼ残置後、突発性難聴を発症し、平成9年10月20日 から平成10年3月6日までの計12日間、被告病院において治療を受けた(甲A14。原告はこれまでこのような症状に陥ったことはなく、本件ガー)ゼ残置後に発症していることから、これも本件ガーゼ残置と因果関係のある障害である。 (内訳)診療費平成9年10月2759点(ほか薬1,380円)9,660円同年11月2233点(ほか薬1,260円)7,960円同年12月540点1,670円(ほか薬剤一部負担金50円)平成10年1月418点1,250円同年2月426点1,280円同年3月759点2,280円小計24,100円健康保険組合より支払△10,545円差引合計13,555円休業損害3,834,000円(平成9年賃 年2月426点1,280円同年3月759点2,280円小計24,100円健康保険組合より支払△10,545円差引合計13,555円休業損害3,834,000円(平成9年賃金センサス女性35~39歳学歴計)×9/365≒94,536円3,899,100円(平成10年賃金センサス女性35~39歳学歴計)×3/365≒32,047円休業損害合計126,583円 人工・体外受精費用等 人工・体外受精費用が損害賠償の対象となること( )ア本件手術の際のガーゼ残置(以下「本件ガーゼ残置」という)と人工。 授精費用との因果関係 原告は、本件手術の後、体外受精開始(平成11年4月)までの間、既に体外受精によらなければ妊娠できない状態にあったにもかかわらず、その事実を知らなかったために人工授精を受け続けた。これにより、結果的には原告が平成10年10月から平成11年10月までの間に受けた人工授精は全て無益なものであったから、これに関する費用(医療費、交通費及び通院のための休業損害)はすべてガーゼ残置と因果関係のある損害である。なお、被告病院において妊娠目的で子宮筋腫核出術その他の治療を受けていた原告が妊娠のため人工授精を受け続けることは被告にとって十分予見可能であったから、ガーゼ残置と上記損害との間には相当因果関係がある。 イ本件ガーゼ残置と体外受精費用との因果関係原告の身体は、上記1のとおり、本件手術前、自然妊娠の可能な状態であったものである。 にもかかわらず、上記12 アのとおり、原告の身体は、被告病院にお( )ける本件ガーゼ残置を原因として卵管・卵管采部を含む骨盤内に広汎な癒着が生じ、自然妊娠が全く不可能な状態(体外受精の方法によらなければ妊娠可能性が全く得られない状態)となった。 つまり、原告 ( )ける本件ガーゼ残置を原因として卵管・卵管采部を含む骨盤内に広汎な癒着が生じ、自然妊娠が全く不可能な状態(体外受精の方法によらなければ妊娠可能性が全く得られない状態)となった。 つまり、原告は、本件ガーゼ残置があったために、本件ガーゼ残置がなかった場合(ガーゼが残置されず卵管・卵管采部を含む骨盤内に癒着が生じていない場合)と同程度の妊娠可能性を得るため、体外受精の処置を受けなければならなくなったものであり、これに要した下記の費用は本件ガーゼ残置と因果関係のある損害である。 妊娠し子を持つことが、個人としての自己実現に深く関わり、女性として、人としての最も根本的な要求であるということは、疑いを差し挟む余地のないことである。 特に、妊娠可能な年齢にありながら、これまで流産により子供を出産 することができず子供のいない原告及びその夫にとっては、卵管・卵管采部の癒着により自然妊娠が不可能となったとしても、体外受精により妊娠の可能性が得られるのであれば、肉体的・精神的な負担の大きい体外受精の方法を試みてでも妊娠の可能性を得たいと考えるのは当然の心情というべきであり、このことに疑問を差し挟む余地はない。 ウ体外受精の必要性被告は40歳を超えてからの体外受精の必要性は認められないと主張する。しかし、原告が平成11年2月に人工授精の処置を受けた際、被告病院のA医師に対し「出産は何歳まで可能ですか」と尋ねたところ、A医師は「40代前半までが望ましいが、先日九州の病院で47歳の人が出産した」と回答しており、被告の主張はA医師の見解と全く異なるものである。 また、被告病院から40歳を超えた患者が多数GクリニックやHクリニックに紹介されていること、現在、40歳を超えてからの体外受精も多数行われており、40歳を超えてからの妊娠も可能であることに鑑 ある。 また、被告病院から40歳を超えた患者が多数GクリニックやHクリニックに紹介されていること、現在、40歳を超えてからの体外受精も多数行われており、40歳を超えてからの妊娠も可能であることに鑑みると、被告の上記主張は到底認められないものである。 具体的損害額( )ア本件手術後ガーゼ摘出までの間に要した費用合計6,635,578円人工授精7回、体外受精5回(中止したものを含む、顕微受精9回。)、分の医療費、通院交通費及び通院日分の休業損害(休業損害については各通院年における賃金センサス学歴計女子労働者について、平成10年及び11年は35ないし39歳の、平成12年以降は40ないし44歳の平均賃金を基礎額として日数分を算出すべきである)である(なお、原告の主張額は合計667万5576円になるから、上記額は違算であると認められる。 。) イガーゼ摘出後本件訴え提起までの間に要した費用合計1,289,570円体外受精等6回分(中止したものを含む)の医療費、通院交通費及び。 通院日分の休業損害(休業損害については、各通院年における賃金センサス学歴計女子労働者40ないし44歳の平均賃金を基礎額として日数分を算出すべきである)である。 ウ今後必要となる体外受精費用5,391,480円体外受精1回当たりの費用の平均額( )ア269,574円1年当たりの体外受精の回数( )イ本件ガーゼ残置がなかった場合と同程度の妊娠可能性を得るという観点からは月1回、年12回行うことが必要である。また、クロミッドを使用して体外受精を行う場合毎月行うことが可能であるが、これまでの実績に照らせば、少なくとも年4回は体外受精の処置を受けることが可能であり、この回数を1年当たりの体外受精の回数と考えるのが相当である。 原告が体 精を行う場合毎月行うことが可能であるが、これまでの実績に照らせば、少なくとも年4回は体外受精の処置を受けることが可能であり、この回数を1年当たりの体外受精の回数と考えるのが相当である。 原告が体外受精を必要とする年数( )ウ一般的に女性の妊娠可能年齢は約50歳までとされているが、本件ガーゼ残置がなかった場合と同程度の妊娠可能性を得るという観点からは、原告が体外受精を必要とする年数はこの年齢を基準として考えるべきである。原告の年齢が現在満43歳であることに照らせば、原告には今後少なくとも5年間は妊娠可能性が残されているといえるので、この年数を原告が体外受精を必要とする年数と考えるのが相当である。 合計( )エ269,574円×年4回×5年=5,391,480円 慰謝料10,000,000円、上記のとおり、被告病院における本件ガーゼ残置を原因として、原告にはガーゼの留置により卵管部・卵管采を含む骨盤内に広汎な癒着が生じ、体外受精の方法によらなければ妊娠が望めないばかりか、体外受精を行う際にも採卵が困難であり、採卵できた場合であっても着床が困難な状態にあったという、重大な身体的障害が発生したものである。 身体にそのような障害が発生したこと自体、原告の心に大きな傷を残すも、のであるが、体外受精の処置を受けるためには相当の通院日数が必要でありかつ、精神的・肉体的苦痛を伴うことが避けられないのであり、これによって原告が負う精神的・肉体的負担についても十分な慰謝がなされるべきである。 また、本件ガーゼ残置後、原告には突発性難聴・耳鳴り・不眠、腰痛・左足の攣り等の日常生活を妨げる不快な症状が生じるようになったものである。 さらに、A医師は本件ガーゼ残置後も原告の診療を継続していたにもかかわらず、また原告が妊娠目的で被告病院 耳鳴り・不眠、腰痛・左足の攣り等の日常生活を妨げる不快な症状が生じるようになったものである。 さらに、A医師は本件ガーゼ残置後も原告の診療を継続していたにもかかわらず、また原告が妊娠目的で被告病院に通院していることを十分認識していたにもかかわらず、原告の体内にガーゼが留置されていること、また、それによって原告に生じていた上記症状に全く気づかないまま、漫然と無意味な不妊治療(人工授精及び体外受精)を繰り返した。これにより、原告は、妊娠可能性がより高い30代後半の間に妊娠のための適切な治療を受けることができなかったものであり、妊娠・出産を切望していた原告の深い悲しみ・悔しさは察するに余りあるものである。 以上による原告の精神的損害は、金銭に評価して、1000万円を下らない。 弁護士費用3,000,000円原告は、被告が損害を賠償しようとしないため、本訴の提起を原告訴訟代、理人に依頼したが、同原告が被った損害額の約1.5割である300万円が本件ガーゼ残置と相当因果関係のある損害といえる。 合計(請求額・一部請求)24,144,374円()被告の主張 体外受精費用についての反論 社会通念上必要かつ相当な費用ではないこと( )体外受精については、社会的・経済的・倫理的に未だコンセンサスが得られていない。 体外受精には健康保険の適用がないこともその証左の1つである。この点、原告は両者は全く別問題であると主張するが、健康保険は標準的な治療法に適用され、特殊な治療には適用されないという区別に基づいているのであるから「全く別問題」ということはなく、むしろ法律的判断の重要な1要素、となるべきものである。 なお、原告は、自身が体外受精を希望していることを強調するが、それはもちろん原告も含めた個人の自由であるけれども、だか 題」ということはなく、むしろ法律的判断の重要な1要素、となるべきものである。 なお、原告は、自身が体外受精を希望していることを強調するが、それはもちろん原告も含めた個人の自由であるけれども、だからといって社会的に体外受精を必要不可欠な医療行為とみなすことにならないのは当然である。 年齢的要素( )加えて35歳を過ぎると卵子に質的な変化を来し、急激に妊娠しにくくなり、高齢出産となるのであるから、年齢的な観点から見ても、本件体外受精は必要かつ相当な費用とはなり得ない。 なお、原告の体外受精は、加齢と平成6年9月以来の不妊症を理由として開始されたものであり、仮に卵管造影検査を行って卵管に何ら異常が発見されなくとも行なわれたであろうものであるから、ガーゼ残置とは因果関係がない。 その他 差額ベッド代等( )原告の請求する費目のうち、差額ベッド代は損害とはならない。 また、食費は、入院していなくても発生することは自明であるから、あれなければこれなしの条件関係に欠け、損害とはならない。 原告は、損害の費目を精査されたい。 突発性難聴( )原告はガーゼの残置により突発性難聴を生じたと主張するが、突発性難聴の原因は不明であるとするのが周知の事実であるから、あまりに過大な請求である。 弁護士費用( )原告は認容額の15%を請求するが、10%とするのが確立した判例・実務であり、ほとんどの訴状の記載である。このように原告の請求はことごとに過大である。 慰謝料の斟酌事由( )原告は一方的に被告を非難するが、後医が異物を廃棄してしまったため、厳密にガーゼの同一性を確認することができず、かつ、ガーゼ枚数を確認したことはカルテ・看護記録に記載されているとおりであって、製品上の瑕疵の可能性も否定できない、つまり現実的に医療 てしまったため、厳密にガーゼの同一性を確認することができず、かつ、ガーゼ枚数を確認したことはカルテ・看護記録に記載されているとおりであって、製品上の瑕疵の可能性も否定できない、つまり現実的に医療行為に過誤があるのではなく医療用品に瑕疵があったとされたケースが存在するにもかかわらず、被告は、本件の円満かつ早期の解決を願って、これら主張をあからさまに行わないで来たものである。 このような事実と経過をも斟酌して慰謝料額は決定されるべきである。
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