昭和22(れ)209 強盗

裁判年月日・裁判所
昭和23年4月17日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  弁護人桑名邦雄の上告趣意書第一点は「原判決ノ基本トナル原審取調中就中第三 回公判調書(昭和廿二年八月三十日附)ヲ調査スル

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主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人桑名邦雄の上告趣意書第一点は「原判決ノ基本トナル原審取調中就中第三回公判調書(昭和廿二年八月三十日附)ヲ調査スルニ裁判長ハ証拠調ヲ為ス旨ヲ告ゲ当審第一第二回公判調書及第二回公判調書中証拠ノ部ノ記載ノ各書類ノ要旨ヲ告ゲタル旨明記スルヲ以テ之等ノ証拠調ヲ為シタル事蹟アルヲ以テ之ヲ検査スルニ本調書六〇〇丁ノ明記ノ通リ一、司法警察官ノ各聴取書一、各始末書一、予審ニ於ケル各被告人ノ各証人ノ訊問調書一、実地見分書一、上申書一、検証調書一、原審公判調書ノ列記アルニ依リ此等ハ調証トシテ取調ベヲ了シタルコト明瞭ナレ共原審ニ於テ取調ベタル昭和二二年八月二日附検証調書同E同C同F同G同H昭和廿二年八月二十六日附M同I同Jノ取調ヲ欠除ス前掲ノ書類ハ各レモ証拠決定ニ基キ作成セラレタル適法ナル証拠物ニシテ而モ被告人ノ立会ハサル現状ニ於テ作成セラレタルモノナルヲ以テ之等証拠物ハ採否ノ如何ニ係ラズ被告人ニ対シ裁判長ハ之ヲ朗読シ若クハ其ノ要旨ヲ告ケ又ハ裁判所書記ヲシテ之ヲ朗読スヘキモノナルニ拘ラズ之レ正ニ違法ナルノミナラズ従ツテ右証拠ニ対スル其利益ト為ルヘキ証拠ヲ提出スヘキ機会ヲ失フノ不利益ヲ帰セリ仍テ刑事訴訟法第四百十条十三及ヒ同第三百四十条ニ依リ上告ノ理由トス」というのである。 しかし、所論各証拠(すなわち、昭和二十二年八月二日附検証調書及び各証人訊問調書、昭和二十二年八月二十六日附各証人訊問調書)についても、原審において適法な証拠調べの手続が行われていること原審第三回公判調書の記載(本件記録第七六一丁表八行目以下)によつて明かであるから、原判決には何ら所論のような違法はない。 同第二点は「共同弁護人ノ上告趣意書ヲ援用ス」というのであるが、その理由の- 1 -な 書の記載(本件記録第七六一丁表八行目以下)によつて明かであるから、原判決には何ら所論のような違法はない。 同第二点は「共同弁護人ノ上告趣意書ヲ援用ス」というのであるが、その理由の- 1 -ないことは、弁護人中野峯夫の上告論旨に対する後の説明によつて了知すべきである。 同第三点は「原審第三回公判調書ヲ検閲スルニ「裁判長ハ弁論ヲ終結シ来ル九月六日午前九時判決ノ宣告ヲ為ス旨ヲ告ケ訴訟関係人ニ出頭ヲ命シ閉廷シタリ」(記録七六三丁)ト在リ即チ判決ノ宣告ト云フ文字ヲ以テ表示シフレ共適正適法ニ非サル表示ト云ハサルヘカラサルナリ公判ノ裁判ハ其ノ判決ハ刑事訴訟法第三節ニ各条項ニ明記ノ通リ言渡タルヘキモノナリ仍テ原審公判ハ法条ニ違背スル手続ニ依リタルモノニシテ之レニ基キテ為サレタル裁判ハ措信シ難ク破毀セラルヘキモノト確信シ上告ノ理由トス」というのである。 しかし裁判所が事件について裁判をなすに熟するものと認めたときは、審理を終結して裁判を宣告すべきものであつて、その審理を終結した公判期日の調書に、弁論を終結する旨及び所論のように裁判宣告期日を定めて当該期日に判決の宣告をする旨を記載することは当然であり、又裁判の告知は公判廷に於ては宣告により之を為す(刑事訴訟法第五十条)こと多言を要しない。論旨は全く理由がない。 弁護人中野峯夫の上告趣意書第一点は「原審は「法律ニ依リ弁護人ヲ要スル事件ニ付弁護人出頭スルコトナクシテ審理ヲ為シタル」違法及び「不法ニ弁護権ノ行使ヲ制限シタル」違法を敢てしたものと云はねばならない。本件が刑事訴訟法第三百三十四条所定の所謂必要弁護事件たることは申すまでもない。従つて弁護人なくして開廷審理することは許されない。而して共同被告人の場合に於ては 「被告人ノ利害相反セサルトキハ同一ノ弁護人ヲシテ数人ノ弁護ヲ為サシムルコトヲ得」(刑 事件たることは申すまでもない。従つて弁護人なくして開廷審理することは許されない。而して共同被告人の場合に於ては 「被告人ノ利害相反セサルトキハ同一ノ弁護人ヲシテ数人ノ弁護ヲ為サシムルコトヲ得」(刑事訴訟法第四十三条第二項)るけれども、「利害相反」するときは各被告人に付き各別の弁護人を附せねばならないこと勿論である。原審に於て被告人Aは昭和二十二年九月一日相被告人Bが控訴取下をするまでは同被告人と共同被告人として審理を受けて来たのである。然るに被告人AとBとは「利害相反」する立場に在る者で- 2 -ある。公判請求書に依つても原判決に徴しても被告人Aは右B及びその輩下六名と共謀の上、被告人Aに於て判示道案内並に見張を為し且つ判示盗品を運搬し右B等に於て判示暴行脅迫を為して判示金品を強取したと謂ふのである。原審第一回公判調書に依れば被告人Aは事実相違ない旨陳述して居るに反し右Bは事実相違し極力強盗の事実を否認して居ること明白であつて記録全体を通読して見ると被告人Aの陳述することとBの陳述する所とは齟齬背反する点が非常に多いのである乃ち被告人Aが分担する部分が多ければそれだけBの責任が軽くなり、Aの負荷する部分が少なければそれだけBの罪責は重くなるわけであるから、被告人AとBとは「利害相反」するものと謂はざるを得ないのである。従つて被告人AとBとには各別の弁護人を附すべきであつて、同一の弁護人をして右両被告人の弁護人とすることは許されないのである。故に同一人をして両被告人を弁護せしむるような選任は違法であるのみならず無効であつて、弁護人なくして審理したと同一に帰せねばならない。 然るに昭和二十二年六月五日第一回公判期日に於て被告人Aの弁護人伊藤博夫が出頭しなかつたので、原審裁判所は相被告人Bの弁護人たる弁護士宮沢武七を被告人Aの弁護人に命じ したと同一に帰せねばならない。 然るに昭和二十二年六月五日第一回公判期日に於て被告人Aの弁護人伊藤博夫が出頭しなかつたので、原審裁判所は相被告人Bの弁護人たる弁護士宮沢武七を被告人Aの弁護人に命じて審理を為したことは記録上明白である。それ故原審は被告人Aのために必要な弁護人を附することなくして審理をしたこととなり、刑事訴訟法第三百三十四条第一項同法第四百十条第十号に違反して居るのである。而かも此のことが他方に於て被告人Aの弁護人伊藤博夫の弁護権を制限したこととなり同法第四百十条第十一号違反となるものと思料する次第である。何となれば被告人Aの弁護人伊藤博夫は昭和二十二年六月五日の公判期日変更願を同月二日附書面を以て提出し、(記録五四二丁)疏明として医師K作成の同月二日附診断書(記録五四三丁)を添附し、該診断書には「大腸炎、下痢腹痛の為向後約七日間の絶対安静加療を要す」と記載してあり、而かも同月八日以後差支日を除き何時でも期日指定然るべき旨附記してあるのである。されば弁護人伊藤博夫が右六月五日の公判期日を変更申- 3 -請したのは当然であつて、同月八日以後の適宜の日時に変更したからとて審理を左程遅延させることにもならないのであるから、原審裁判所はむしろ右期日変更願を容れて最寄の日時に公判期日を変更指定すべきが相当の処置であると考へらるる。 加之Bの選任した弁護人である弁護士宮沢武七を利害相反する被告人Aの官選弁護人とするに至つては非常識極まる処置であつて、その違法無効なることは前陳の通りであるが、それとは異なる見地から考へると、被告人Aのためには全然準備のない、否むしろ、Bと利害相反する立場に在るAに取つては、有害にして逆効果の生ずる虞の十分ある弁護人宮沢武七をして被告人Aを弁護せしむるが如きことは同被告人の弁護権の制限であると云はねばな 然準備のない、否むしろ、Bと利害相反する立場に在るAに取つては、有害にして逆効果の生ずる虞の十分ある弁護人宮沢武七をして被告人Aを弁護せしむるが如きことは同被告人の弁護権の制限であると云はねばならないのである。被告人の信頼して自ら選任した弁護人伊藤博夫をして同被告人を弁護せしむる機会を奪ふと共に同被告人のためには却つて不利益なる弁護人宮沢武七をして同被告人を弁護せしめる叙上原審の処置は正に弁護権の制限に該当するものと云はねばならないのである。而かも斯る不当な処置の下に第一回公判期日に於て被告人Aに対する基本的事実審理を終了して居るのであつて、その後は只形式的に更新手続を反覆して居るに過ぎないから右不法処置は致命的であるのである。」というにある。 原審第一回公判期日に際し、所論のように、被告人Aの弁護人伊藤博夫が期日変更申請書を提出しておいて同期日に出頭しなかつたところ、原審は同公判期日に公判廷において右の期日変更申請を却下し、同被告人のため相被告人Bの私選弁護人宮沢武七を被告人Aのための弁護人に官選し、同弁護人の立会いで審理を行つたことは、該期日の公判調書によつて明かである。ところが、被告人Aと、原審相被告人Bとはもともと本件強盗の共犯者として共に起訴されたものであるが、被告人Aは第一審以来その公訴事実を認めていたのに反し、Bは第一審以来自己に対する公訴事実を否認していたことが明かであるから両名は本件において利害相反する立場にあつたものというべく、従つて原審が被告人Aのために弁護人宮沢武七を選任し- 4 -たのは、刑事訴訟法第四十三条第二項に違反する違法の処置であつたといわなければならない。しかしながら、原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手続は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新さ 項に違反する違法の処置であつたといわなければならない。しかしながら、原審は右第一回公判期日において審理を終結したのではなく、その後公判手続は第二回及び第三回各公判期日においてその都度適法に更新され、第二回公判期日には被告人Aの私選弁護人伊藤博夫が、又第三回公判期日には同様同被告人の私選弁護人桑名邦雄がそれそれ出頭して審理に立会つていることが記録上明かであるから、右第一回公判期日における前記瑕疵は右審理更新の結果原判決に影響を及ぼさないものというべきである。又、原審が、右のように第一回公判期日において被告人、Aの弁護人伊藤博夫から提出した所論期日変更申請を却下し、同弁護人不出頭のまゝ同期日の審理を行つたことは所論のとおりであるが、その後第二回公判期日は同弁護人にも適法に通知され、同期日には同弁護人出頭の上、公判手続が更新されたこと前示のとおりであるから、結局原審手続は不当に弁護権を制限した違法のものということはできない。論旨は理由がない。 同第二点は「原判決には証拠に依らずして事実の認定を為した違法があるものと考へる。原判決はその事実理由の部に於て「被告人は……中略……原審相被告人B竝に其の輩下であるJ外五名と会合の際、右Bの主唱で嘗つて被告人が太物の取引及米の買出で知つて居る新潟県南蒲原郡a町の染物商E方には多額の現金がある様子に付き同家に押入つて金品を強奪しようとの共謀を為し、一同即夜(昭和二十一年十一月三十日)同市(大阪市)を汽車で出発し翌十二月一日右a町に着き、被告人は他の七名を案内して午後十時頃同町大字b町c番地のE方に行つたが、被告人はEや其の家人等と面識があるので、其の家の外で待機し、他の七名は玄関及裏口の二個所から同家に押入りE及其の家人に或ひは拳銃を擬し又或ひは短刀を突付けながら「五万円や十万円はあるだらうから出せ」 人はEや其の家人等と面識があるので、其の家の外で待機し、他の七名は玄関及裏口の二個所から同家に押入りE及其の家人に或ひは拳銃を擬し又或ひは短刀を突付けながら「五万円や十万円はあるだらうから出せ」、「金は何処だ、声を出すと殺すぞ」等申向けて脅迫し、且つ同人等を縛り上げる等の暴行を加へて全く其の抵抗を抑圧した上、E外二名所有に係る現金二千八百円、衣類其の他約八十点(価格合計- 5 -約二万七千円)及クローム側懐中時計一個を強奪したが、被告人はその際前記Bの指図に従ひ玄関から屋外に右奪取物件を搬出したものである」と摘示して挙示の証拠に依つて之を認定して居る。然るに挙示の証拠を以てしては到底判示事実を認定することは不可能である。先づ奪取の方法及奪取物件に付ては証人Jの判示供述記載、証人E、同C、同F、同Gの判示供述記載、判示強盗被害申告書の記載に徴して之を認めることが不可能ではないけれども「被告人はEや其の家人等と面識があるので、其の家の外で待機し」たと云ふ事実(之が所謂見張として共同正犯の罪責を問はれた最重要な点である!)に付ては挙示の証拠中孰れにも全然之を認定し得べきものが存在しないのである。否却つてその反対の証拠即ち右見張の事実を否定する証拠が存在するのである。原審公判調書に依れば 「Bハ手下六人ト共ニLノ案内デEノ家ニ入ツタ」(五五二丁)のであつて、被告人Aは「Eノ家へ近付イタラ体ヤ足ガ慄エ、強盗スルコトガ怖カツタノデソレヲ止メ帰ラウト思イマシタが旅費ハナシ、Eノ家カラ十米位離レタ小屋ノ中ニ隠レテ居ツタ」(五五二丁)のである。原審裁判長は此の点に付き念を押して訊問して居る。―問見張ヲシテ居タノデハナイカ答違ヰマス(五五二丁表)、問家ノ者ノ顔ヲ知ツテ居リ家ノ中ニ入ルコトハ具合ガ悪カツタノデ被告ハ外デ見張ヲシタノガ事実デハナイカ、答左 此の点に付き念を押して訊問して居る。―問見張ヲシテ居タノデハナイカ答違ヰマス(五五二丁表)、問家ノ者ノ顔ヲ知ツテ居リ家ノ中ニ入ルコトハ具合ガ悪カツタノデ被告ハ外デ見張ヲシタノガ事実デハナイカ、答左様デハアリマセン。問其処へ行ツテカラ強盗ヲ止メ帰ラウト思ツタト云フガソノ様ナ気持ニナツタノハ本当カ、答本当デアリマス」(五五二丁裏)、斯くの如く被告人Aは判示見張をした事実は全然ないのに拘らず、原審は斯かる事実あることを認定したのであるが、併しその認定した事実を証明する証拠は全然挙示して居ないのである。即ち原判決は被告人の判示見張の点に付き証拠に依らずして事実を認定したものと云はねばならない。加之原審相被告人B等が判示暴行脅迫を為して判示物件を強奪した事実に付ても被告人Aには毫も認識がなかつたのである。此の点に付き予審に於ては被告人にその認識があつた様な記載もあるけれども、それは公判に於ける被告- 6 -人の供述に照し到底措信し得ざる所である。即ち原審公判調書に依れば被告人は予審第一七問答を読み聞かされての裁判長の問に対して「私ハ隠レテ居リ物音ヲ聞キオ読聞ケノ様ニ想像シテ居タノデ其ノ様ニ申シタノデアリマス」と答へ(五五三丁)、又原審公判に於て問家ノ中ニ入ツテ行ツタB等ハ其ノ家人に対シ挙銃ヤ短刀ヲ突付テ脅シ又ハ家人ノ手足ヲ縛ツタ上現金二千八百円ト衣類其ノ他約八十点ヲ強奪シタト云フ事デアルガ共ノ事ハ知ツテ居ルカ、答私ハ見テ居ナカツタノデ判りマセン」旨(五五三丁)被告人が供述して居る所から見れば被告人には判示暴行脅迫強奪の事実に付き全く認識がなかつたものと云はねばならない。而も被告人にその点に付き認識があつたと云ふ積極的証拠は毫も存在しないのであつて、又挙示の証拠を綜合しても右事実を証明することは出来ないのである。挙示の証拠はB等が判示暴行脅迫 と云はねばならない。而も被告人にその点に付き認識があつたと云ふ積極的証拠は毫も存在しないのであつて、又挙示の証拠を綜合しても右事実を証明することは出来ないのである。挙示の証拠はB等が判示暴行脅迫強奪を為した事実を証明するものであるけれども、被告人Aが此の事実を認識して居つたと云ふ事実を証明するものではない。彼れと是れとを混同してはならない。要之被告人Aの判示所為を証明するに足る証拠は十分と云ふことは出来ないのである。」というにある。 しかし、原判決が「被告人はEやその家人等と面識があるのでその家の外で待機し」と認定判示したのは、被告人、Aが積極的に自らは屋外で見張を担当する意思で内に入らず屋外にいて見張をしたという趣旨ではなく、単に同被告人はE及びその家人等と面識があるので、屋内に入らず外で待つていたことを判示したものであることは、原判決に引用されているこの点に関する証拠すなわち被告人、Aの原審公判廷における供述と原判示事実とを対照して明瞭であるから、原判決をもつて、被告人が判示犯行に際し見張をしたと認定したものと誤解してこれを非難する論旨は当を得ないものである。又原審判決が、被告人、Aは相被告人Bにおいて判示被害者宅内で判示暴行脅迫を行つた現場には居合わせず屋外にいたと認定したからといつて直ちに被告人、Aは、右暴行脅迫の事実について認識していなかつたとはい- 7 -えないのみならず、同被告人が暴行脅迫行為を現認しないからとて、共犯者中の他の者が暴行脅迫を加えて財物を奪取している以上強盗の共犯としての責任を免れ得るものでもない。論旨は理由がない。 同第三点は「原審の採証には違法がある。即ち証拠として採用すべからざるものを採用して事実認定に供して居るのである。(一)原審公廷に於ける被告人Aの自白は証拠力がない。憲法第三十八条に依れ がない。 同第三点は「原審の採証には違法がある。即ち証拠として採用すべからざるものを採用して事実認定に供して居るのである。(一)原審公廷に於ける被告人Aの自白は証拠力がない。憲法第三十八条に依れば「……不当に永く抑留若くは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることは出来ない」。(応急措置法第十条同旨)。 被告人は昭和二十一年十二月十九日勾留せられて以来今日に至るまで一年二ケ月拘禁生活をして居る。証拠湮滅又は逃亡の虞なきに拘らず保釈を許さない。その不当に長期に亘る拘禁たること明らかであり、原審の公廷に於ける自白は此の長期不当拘禁後の自白であるから、それが証拠として採用することの出来ないことは疑の余地がないのである。之を採用した原判決は正に憲法の条文に違反する不当不法あるものと云はざるを得ない。(二)原審証人Cの供述を証拠として採用したのは違法である。Cは当時数へ年十一年の幼童である。満九才余りの子供である。刑事訴訟法第二百一条第一号に「十六歳未満ノ者」に「宣誓ヲ為サシメスシテ之ヲ訊問ス」ることを許したのはもう少し大きくなつて事の善悪是非を識別する能力知識ある者を指して居るのである。九つや十の子供を問題にして居るのではない小学校の二年生か三年生にそんな知識判断能力はない。斯くの如き頑是ない子供の供述は全然証拠価値なきものと云はねばならない。それにも拘らず之を採用した原判決は不法である。(三)証人Fの供述を採用したのは違法である。同証人を訊問するに当つては先づ刑事訴訟法第二百一条に該当するか否かをたしかめた上、之に該当せぬと認めたときは「宣誓」を為さしむべく、又その前に「偽証ノ罰ヲ告」げなければならない(同法第百九十九条、第二百条)。之れだけの準備工作をした上でなければ証人を訊問してはならないし、又仮りに訊問しても之を証拠として採用すること さしむべく、又その前に「偽証ノ罰ヲ告」げなければならない(同法第百九十九条、第二百条)。之れだけの準備工作をした上でなければ証人を訊問してはならないし、又仮りに訊問しても之を証拠として採用することは出- 8 -来ないのである。然るに証人Fの訊問調書を査閲すると此の手続を履んで居ない(記録六七〇丁)。尤もその調書の後に宣誓書はくつ付けてあるが。訴訟手続を適式に履践したか否かは調書に依つて之を証明する外ない (刑事訴訟法第六十四条)。 従つて公判調書に何等の記載がない以上は公判期日に於て前記証拠調に関する訴訟手続を履んだと云ふことは出来ないわけである。故に証人Fの供述を証拠として採用した原判決は違法である。原審の採用した証拠中少くとも以上の三は違法のもので証拠力を有しない。之を採用して事実認定を為した原判決は不当である。而かも此の三証拠を除外しても尚ほ且つ判示事実を認定することを得と云ふわけには行かない。それは一つには此の三を除外しては到底判示事実を認定し得ないこと勿論であるのみならず、二つには仮りに認定し得るとしてもその認定し得るや否やと云ふこと自体は事実誤認の問題として従前上告理由たり得たものであるが(刑事訴訟法第四百十四条)、今や之を上告理由とすることを排除されたから(措置法第十三条)、之の規定に対する対抗条件(均衡観念)として、事実認定が出来るか出来ないかと云ふことをたてに取つて不当不法の判決を維持する理由とすることは許されないものと思惟する。換言すれば不法なる証拠を除外しても爾余の証拠で以て事実認定が出来ると云ふ理由を以てしては不法なる証拠を採用した原判決を維持することは許されないものと考へるのである。此の意味に於ては上告裁判所は事実認定をすることから除外されて居るのである。即ち刑事訴訟法第四百十一条の規定は事実誤認や量刑不当 証拠を採用した原判決を維持することは許されないものと考へるのである。此の意味に於ては上告裁判所は事実認定をすることから除外されて居るのである。即ち刑事訴訟法第四百十一条の規定は事実誤認や量刑不当等の理由に依る上告排除の限度に於て改正されたものと云はなければならない。要之原判決は証拠として採用することの出来ないものを以て事実認定に供した不法あるものと云はねばならない。」 というのであるが、その(一)について、被告人、Aが勾留されたのは所論のとおり昭和二十一年十二月十九日であり、又同被告人の原審における自白は昭和二十二年六月五日の第一回公判以後同年八月三十日の第三回公判を通じてなされているのであつて、右勾留後第一回公判期日迄に約- 9 -六ケ月、第三回公判期日迄には二百五十日余を経過していること明かではあるが、本件事案の内容、取調の経過、相被告人の供述内容等諸般の事情に鑑み、右程度の勾留は、未だ不当に長い拘禁とはいえないから、被告人、Aの右の自白を証拠とすることができないものということはできない。所論(二)の原審証人Cが原審における取調べを受けた当時十一年(昭和十二年三月生)の小学児童であつたことは同証人訊問調書の記載から明かであるが、この程度の年令の者は絶対に証人たる資格がないとはいえないのであつて、同調書記載の同証人の供述内容から見ても同人は本件強盗の被害当時の状況について、詳細に記憶しているその実験事実を順序良く訊問に答えて陳述報告しているのであつて、事理を弁識する能力を備えていた者と認めるべく、かゝる年令の証人の供述を証拠として採用するか否かは事実審たる原審の自由になし得るところであるから、原審が同証人の右証言を判断の資料に供したとて無効の証拠を罪証に供した違法があるということはできない。次に、所論(三)について見るのに、記録 か否かは事実審たる原審の自由になし得るところであるから、原審が同証人の右証言を判断の資料に供したとて無効の証拠を罪証に供した違法があるということはできない。次に、所論(三)について見るのに、記録によれば、原審は所論証人Fの訊問に際し、同証人が刑事訴訟法第二百一条各号に該当するかしないかについて特に取調を行つた旨の記載がなされていないこと所論のとおりであるけれども、同調書の末尾には同証人の自署した宣誓書が綴られているから、原審が同証人をして宣誓させたことは明かであるといわなくてはならない。而して、同証人は本件において被害者の妻であつて刑事訴訟法の右の規定の各号のいずれにも該当しない者であることが同証人の供述内容その他一件記録によつて明かであるから、同人は宣誓をなさしむべき証人であり、これに宣誓をなさしめた上訊問しているのであるから右証人訊問調書に前記のような記載がないからという一事を以つて、該調書が違法であつて、これを証拠に採ることができないものであるということはできない。又該調書によれば、同証人に対しては宣誓前に偽証の罰を告げた旨の記載もないこと論旨に指摘するとおりであるけれども、元来刑事訴訟法第百九十九条は、証人にその供述をなす前あらかじ- 10 -めその注意を促し、良心に従つてありのまゝにその実験した事実を供述させるとともに、偽証罪に問われることのないようにさせるため設けられた訓示的規定であるから、証人に宣誓をなさしめた上供述させている以上、たとえ宣誓前に偽証の罰を諭示しなかつたからといつて、宣誓の効力には何ら影響がなく、その証人の証言を無効と考える必要は少しもないから、論旨は理由がない。 同第四点は「原判決中訴訟費用全部を被告人及第一審相被告人Bの連帯負担とした部分は不当不法である。訴訟費用に関する判決も被告人に対する不利益 を無効と考える必要は少しもないから、論旨は理由がない。 同第四点は「原判決中訴訟費用全部を被告人及第一審相被告人Bの連帯負担とした部分は不当不法である。訴訟費用に関する判決も被告人に対する不利益なる裁判たること勿論である。原審に於て被告人Aは大体に於て事実を争つて居ない。事実は相違ないと云つて居る。事実を極力争ひ、全面的に否認したのは実に第一審相被告人Bであつた。Bは原審第一回公判の当初から事件に付き否認する態度を明かにして来た。そして散々裁判所を手古ずらせて、種々証拠申請を為し、検証やら証人訊問やら施行するように仕向けたのである。原審に於ける新しい証拠調は全部右Bのために施行せられたと云つても少しも云ひ過ぎではない。而かも彼れBは昭和二十二年九月一日に至つて突如として控訴を取下げて第一審の刑に服したのである。 此のBのために支出した訴訟費用を被告人Aは何が故に負担せねばならないのであらうか? 訴訟費用て共同被告人の総ての場合に全部連帯負担せしむる立前ではない筈である。不可分的な場合又は真実に於て共通的な訴訟費用は勿論連帯負担とすべきであるが共同被告人の中或る特定の被告人のため支出した費用なることが判明して居る場合にはその特定被告人をして単独に之が負担を命ずべきである。本件の場合に於ては殆んど全部Bのため支出した費用であるから、須らく彼をして之を負担せしむべきである(刑事訴訟法第二百四十三条)。要之訴訟費用を全部被告人AをBと連帯負担せしめた原判決は不法且つ不当である」というにある。 しかしながら共同被告人中のある者か公訴事実を認め、他の者がこれを否認している場合に、裁判所がその公訴事実の審理のため証人を喚問するのは、結局真実を- 11 -発見するためであるから、かような証人に支給した旅費日当などの訴訟費用を、その共同被告人をして これを否認している場合に、裁判所がその公訴事実の審理のため証人を喚問するのは、結局真実を- 11 -発見するためであるから、かような証人に支給した旅費日当などの訴訟費用を、その共同被告人をして連帯して負担させるか又はその中のある者のみに負担させるかは、裁判所が自由に定めることのできる問題であつて、従つて、審理の結果右の公訴事実が証明され、判決において認定された場合には右の費用は、公訴事実を否認していた被告人のみに負担させるべきであつて当初からこれを認めていた被告人には負担させてはいけないという理由はない。本件原審において、被告人、Aは公訴事実を大体において自白し、相被告人Bは極力これを否認していたこと、原審が被告人、A及び同人の弁護人からの申請に基ずいて証人を喚問し、なお、職権によつて決定した証人をも喚問した後、右被告人、A及び原審相被告人Bの共謀強盗の事実を認定する原判決において、これ等の証人に支給した訴訟費用を、右両名の連帯負担とする言渡をしたのは、何等違法ではない。のみならず刑事訴訟法第二百四十二条によれば、訴訟費用の負担を命じる裁判に対しては本案の裁判について上訴する場合に限り不服を申立て得るものであつて、本案の裁判と独立して上告の申立をすることはできないものである。従つて、本案の裁判に対する上告が理由があるときは、訴訟費用の負担を命じた裁判に対する不服もこれを維持することができるけれども、本案の裁判に対する上告が理由がないときは、これと離れて、訴訟費用の負担を命じた裁判に対する不服のみを維持することはできないものと解するのが相当である。しかるに本件において本案の裁判に対する上告が少しも理由がないものであることは上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。 よつて刑事訴訟法 である。しかるに本件において本案の裁判に対する上告が少しも理由がないものであることは上に説明したとおりであるから、結局論旨は上告適法の理由とならないものといわなければならない。 よつて刑事訴訟法第四百四十六条に従い、主文のとおり判決する。 以上は裁判官全員の一致した意見によるものである。 検察官十蔵寺宗雄関与昭和二十三年四月十七日- 12 -最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重- 13 -

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