平成19(ワ)2691 賃金支払請求事件(通称 学樹社割増賃金請求)

裁判年月日・裁判所
平成21年7月23日 横浜地方裁判所
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判決文本文11,969 文字)

主文 1 被告は,原告P1に対し,252万6203円及びこれに対する平成19年6月1日から支払済みに至るまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 2 被告は,原告P1に対し,252万6203円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 3 被告は,原告P2に対し,240万3590円及びこれに対する平成19年4月1日から支払済みに至るまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。 4 被告は,原告P2に対し,240万3590円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みに至るまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は全部被告の負担とする。 6 この判決は,第1項及び第3項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,被告の経営する受験予備校に勤務していた原告らが,平成17年2月分から平成19年2月分までの時間外手当,深夜時間外手当及び休日手当(以下「時間外手当等」という。)並びにこれらに対する支払日の後の日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条による年14.6パーセントの割合による遅延利息の支払を求めるとともに,労働基準法114条に基づく付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定年5パーセントの割合による遅延損 害金の支払を求めたのに対し,被告が,原告らは労働基準法41条2号の管理監督者に該当するなどと主張して,その支払義務を争っている事案である。 1 前提事実(証拠によって認定した事実は各項末尾のかっこ内に認定に供した証拠を摘示し,その記載のない事実は当事者間に争いのない事実である。)(1) 被告は,進学教室の っている事案である。 1 前提事実(証拠によって認定した事実は各項末尾のかっこ内に認定に供した証拠を摘示し,その記載のない事実は当事者間に争いのない事実である。)(1) 被告は,進学教室の経営及び運営等を目的として昭和61年に設立された株式会社で,小学生・中学生・高校生を対象とする受験予備校を東急田園都市線,横浜線沿線に開設している。 (2) 原告P1は,平成6年10月1日に被告との間で非常勤講師として雇用契約を締結し,平成8年3月1日に正社員となった後,平成15年4月1日にP3校校長となり,同日サブマネージャー(SB)に,平成16年4月1日マネージャー(KM)にそれぞれ昇格し,平成19年4月末日に退職した。 原告P2は,平成15年3月1日に被告との間で契約社員(準専任講師)として雇用契約を締結し,平成16年4月1日に正社員となった後,平成17年4月1日にP4校主任講師となり,サブマネージャー(SB)に昇格し,さらに,平成18年4月1日にP4校校長代理となり,マネージャー(M)に昇格し,平成19年2月末日に退職した。 (3) 被告における賃金には,「基準賃金」として基本給(本給・職能給・勤続給),管理職手当,家族手当,住宅手当が,「基準外賃金」として時間外勤務手当,深夜時間勤務手当,休日勤務手当,特殊勤務手当があり(甲3・4条),賃金の支払時期は,毎月末締め翌月末払いである(甲5の1 及び2 並びに11)。また,原告らの月間所定労働時間数は,169.3時間である。 原告P1は,被告から,平成17年2月から平成19年2月までの間,毎月,基本給として29万4550円,住宅手当として1万6000円,役職手当として5万円を受け取っていた(甲5の1)。 原告P2は,被告から,平成17年2月から平成19年2月まで 9年2月までの間,毎月,基本給として29万4550円,住宅手当として1万6000円,役職手当として5万円を受け取っていた(甲5の1)。 原告P2は,被告から,平成17年2月から平成19年2月までの間,毎月,基本給として21万9200円(平成17年2月),27万4000円(同年3月から平成18年2月までの間),29万4550円(同年3月から平成19年2月までの間),役職手当として1万円(平成17年2月),3万円(同年3月から平成18年2月までの間),5万円(同年3月から平成19年2月までの間),教専手当(兼務手当)として6000円(平成17年2月から平成18年2月までの間)を受け取っていた(甲5の2)。 (4) 平成17年2月から平成19年2月までの間,原告P1は別紙1のとおり,原告P2は別紙2のとおり時間外労働,深夜労働及び休日労働をした。原告らが,同月,被告に対し,平成17年2月以降の時間外手当等の支払を求めたところ(甲6及び8),被告は,同時間外手当等として,平成19年6月29日,原告P1に対し2万5378円,原告P2に対し7万7133円をそれぞれ支払ったが,その余の支払をしない。 2 争点(1) 原告P1につき,住宅手当を割増賃金の算定の基礎となる賃金に算入すべきか。 (2) 原告らは労働基準法41条2号の管理監督者に該当するか。 3 当事者の主張(1) 争点(1)についてア原告P1の主張労働基準法37条4項,労働基準法施行規則21条3号により 割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外される住宅手当とは,「住宅に要する費用に応じて算定される手当をいう」のであり,住宅の形態(賃借,持ち家等)ごとに一律定額で支給されるものや,扶養家族の有無等住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給され 宅手当とは,「住宅に要する費用に応じて算定される手当をいう」のであり,住宅の形態(賃借,持ち家等)ごとに一律定額で支給されるものや,扶養家族の有無等住宅以外の要素に応じて定率又は定額で支給されるものなどは,除外される住宅手当に当たらない。 被告における住宅手当は,賃借と持ち家とを問わず,扶養家族の有無で一律定額で定められていることから,上記除外される住宅手当に当たらず,原告P1につき,住宅手当を割増賃金の算定の基礎となる賃金に算入すべきである。 イ被告の主張原告P1につき,住宅手当を割増賃金の算定の基礎となる賃金に算入すべきではない。 (2) 争点(2)についてア被告の主張原告P1は,平成15年4月から校長という管理監督者の地位にあり,基本給のポイントが高く,役職手当がマネージャー(M1)で5万円となっていること,原告P2は,平成17年3月1日から平成18年2月までサブマネージャー(SB-1)職として校長補佐(対外的には主任講師),同年3月から平成19年2月までは,校長代理,個別指導部門の責任者として,他の講師職員に対する管理監督者の地位にあり,基本給のポイントが上がり,役職手当も1万円から5万円に上がっていることから,原告らはいずれも労働基準法41条2号の「管理監督者」に該当する。 よって,被告は,原告P1に対し,平成17年3月から平成19年2月までの間の深夜割増手当6万8782円,原告P2に対し,平成17年3月から平成18年2月までの間の深夜割増手当7万 5168円,同年3月から平成19年2月までの間の深夜割増手当8万9225円の合計16万4393円の限度で支払義務があるほかは,時間外手当等の支払義務はない。 イ原告らの主張「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号 間の深夜割増手当8万9225円の合計16万4393円の限度で支払義務があるほかは,時間外手当等の支払義務はない。 イ原告らの主張「監督若しくは管理の地位にある者」(労働基準法41条2号)とは,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいい,名称にとらわれず,実態に即して判断すべきである。 原告P1は,P3校校長であったが,被告における決定事項は原則としてすべて本部で行われ,被告代表者が決裁・決定しており,校長が本部及び被告代表者の決裁なしに各校としての方針等を決定することはないこと,出退勤等,労働時間に関する自由はないこと,年収が400万円台前半で管理監督者としての処遇がされていたとは到底いえないことから,原告P1が管理監督者に該当しないことは明らかである。 原告P2は,校長代理にすぎず,校長会議へ出席したこともないこと,個別指導プロジェクトに深く関与していたことをもって管理監督者性を基礎付けるものではないこと,出退勤等,労働時間に関する自由はないこと,年収が400万円にとどまっており,管理監督者としての処遇がなされていたとはいえないことから,原告P2が管理監督者に該当しないことは明らかである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(割増賃金の算定基礎賃金)について労働基準法37条1項は,割増賃金の算定の基礎となる賃金を,「通常の労働時間又は労働日の賃金」と規定し,同条4項及び労働基準法施行規則21条で割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外される手 当を規定しているところ,これらの手当は制限的に列挙されているものであるから,これらの手当に該当しない「通常の労働時間又は労働日の賃金」はすべて算入しなければならず,これらの除外される手当は名称にかかわらず,その実質によって判断す 当は制限的に列挙されているものであるから,これらの手当に該当しない「通常の労働時間又は労働日の賃金」はすべて算入しなければならず,これらの除外される手当は名称にかかわらず,その実質によって判断すべきであると解される。 そして,労働基準法37条4項及び労働基準法施行規則21条3号により割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外される住宅手当とは,住宅に要する費用に応じて算定される手当をいい,住宅の賃料額やローン月額の一定割合を支給するもの,賃料額やローン月額が段階的に増えるにしたがって増加する額を支給するものなどがこれに当たり,住宅に要する費用にかかわらず一定額を支給するものは,除外される住宅手当に当たらないと解するのが相当である。 被告の給与規程(甲3)37条では,「住宅手当は本人(職員当人)の名義でアパート等の賃貸契約を結んでいる者及び家(マンション)を購入し,現在支払い継続中の者を対象とする。扶養家族がある者月額12,000円,扶養家族がない者月額16,000円」と規定され,住宅に要する費用にかかわらず,扶養家族の有無で一律定額で支給されていることからすれば,被告における住宅手当が,労働基準法37条4項,労働基準法施行規則21条3号により割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外される住宅手当に当たらないと解するのが相当である。 よって,原告P1について,住宅手当は割増賃金の算定の基礎となる賃金に含まれるというべきであり,この点についての被告の主張は理由がない。 2 争点(2)(管理監督者の抗弁)について(1) 労働基準法41条2号が管理監督者に対して労働時間,休憩及び休日に関する規定を適用しないと定めているのは,管理監督者がそ の職務の性質上,雇用主と一体となり,あるいはその意を体して,その権限の一部を行使 1条2号が管理監督者に対して労働時間,休憩及び休日に関する規定を適用しないと定めているのは,管理監督者がそ の職務の性質上,雇用主と一体となり,あるいはその意を体して,その権限の一部を行使するため,自らの労働時間を含めた労働条件の決定等について相当程度の裁量権を与えられ,報酬等その地位に見合った相当の待遇を受けている者であるからであると解される。 したがって,同号にいう管理監督者とは,労働条件の決定その他労務管理につき,雇用主と一体的な立場にあるものをいい,同号にいう管理監督者に該当するか否かは,①雇用主の経営に関する決定に参画し,労務管理に関する指揮監督権限を有するか,②自己の出退勤について,自ら決定し得る権限を有するか,③管理職手当等の特別手当が支給され,待遇において,時間外手当及び休日手当が支給されないことを十分に補っているかなどを,実態に即して判断すべきである。そこで,以下検討する。 (2) 第2・1記載の事実に,証拠(甲2,4及び5の各1・2,9の1ないし8,10の1 ないし3,11ないし21,乙1の1 及び2,2,3,4の1 及び2,5,13,証人P5並びに原告P1及び原告P2各本人)を総合すれば,以下の事実が認められる。 ア被告は,小学生・中学生・高校生を対象とする受験予備校を東急田園都市線,横浜線沿線に開設していた。被告の組織は,本部として,代表取締役を筆頭に,その下に運営部,教務部,受験情報部,総務部が置かれ,各校舎として,川崎北部ブロックに5校舎,横浜北部ブロックに6校舎,港北ブロックに4校舎があった。代表取締役及び各部の部長である取締役4名が役員(B),本部に勤務する課長5名,各校の校長のうちブロック長3名及びその他の校長10名がマネージャー(M),校長代理及び副校長がマネージャー(M)又はサブ 締役及び各部の部長である取締役4名が役員(B),本部に勤務する課長5名,各校の校長のうちブロック長3名及びその他の校長10名がマネージャー(M),校長代理及び副校長がマネージャー(M)又はサブマネージャー(SB),雇用期間の定めのない正社員である一般職員がワーカー(W)に分類され,その他,雇用期間1年の 契約社員である準専任講師,非常勤講師・パート職員がいる。被告は,雇用期間の定めのない正社員48名のうち,サブマネージャー以上の地位にある社員38名に対して,時間外手当等を支払っていない(以上の各数字は,いずれも平成18年2月当時のものである。)。 イ被告には,役員全員が出席する役員会議,役員,課長及びブロック長が出席する経営会議,役員及びブロック長が出席するブロック長会議,役員,課長及び校長が出席する校長会議,サブマネージャー以上の職員全員が出席する責任職会議があるほか,教務部会,進路指導会議,プロジェクト会議等があり,担当職員が出席している。なお,校長会議は平成18年度から開催されるようになった。 被告における経営方針,活動計画は,役員会議又は経営会議において決定され,校長会議及び責任職会議では,役員会議,経営会議等で決定された事項が伝達されるだけであり,原告らが校長会議及び責任職会議で発言する機会はほとんどなかった。 ウ被告における決定事項は,すべて被告代表者が決裁して決定しており,校長が被告代表者の決裁なしに当該予備校としての方針を決めたり,新たに費用を出捐したり,職員の採用,昇格,昇給,異動を決定することはなかった。非常勤講師,パート事務員の採用面接及びその決定は,本部が行って,被告代表者が決裁しており,また,各校に配属された職員に対する査定は,校長が第一時的に行ったものを基に,ブロック長会議において った。非常勤講師,パート事務員の採用面接及びその決定は,本部が行って,被告代表者が決裁しており,また,各校に配属された職員に対する査定は,校長が第一時的に行ったものを基に,ブロック長会議において決定し,査定による賞与の決定(昇給),昇格,契約更新等の最終的な決裁は本部において行っていた。 なお,証人P5は,この点に関し,校長には非常勤講師の採用及び解雇の権限があった旨証言するが,同証人の証言によっても,被 告と非常勤講師との間に交わされた雇用契約書に,校長も配属校の担当者として,雇用主欄の被告代表者と併記して判を押しているにすぎず,また,校長が職員に対し解雇を言い渡すことがあったとしても,本部で決定した事項を校長が伝達機関として伝えていたとみるのが自然であり,校長に職員の採用及び解雇の権限があったとまでは認めることはできない。 エ校長の職務としては,①本部との間で契約された勤務時間に基づき,非常勤講師,パート職員の出勤日,出勤時間の割振りを本部に報告する,②本部で決定された授業内容,カリキュラムに基づき,時間割を作成し,担当講師を割り振る,③校長会議及び責任職会議へ出席する,④生徒数を本部へ報告する,⑤保護者・生徒からの要望に対応する,⑥専任職員の勤務記録表を管理するなどがある。⑥については,被告が,一般職員に対する年間150時間を超える分の時間外手当等の支払を制限していたことから,校長は,職員の要望を踏まえ150時間の限度で時間外労働等の時間を機械的に配分していたにすぎず,校長に職員の時間外労働時間等の承認や時間外手当等の支払に関しての特段の裁量があったとは認められない。 また,各校に配属された職員に対する指示は,ファクシミリ文書等で本部から直接行われ,校長が職員に対し具体的な指示を出すことはほとんどなかった。 等の支払に関しての特段の裁量があったとは認められない。 また,各校に配属された職員に対する指示は,ファクシミリ文書等で本部から直接行われ,校長が職員に対し具体的な指示を出すことはほとんどなかった。 オ校長代理の職務は,校長が不在の場合に,校長に代わって校長業務を行うことであるが,校長が長期間休むなど特別な事情がない限り,校長業務を代理することはなく,校内で校長代理が直接他の職員に指示を出すこともなかった。また,校長代理は,責任職会議に出席するものの,校長会議の出席者ではなかった。 原告P2は,個別指導プロジェクトのメンバーとして,同プロジ ェクト会議で積極的に発言,提案を行っており,また,P6校についての個別指導の担当講師の割振りと調整,指導内容の決定を行い,さらに,個別指導の講師の採用手続,研修指導の一部に立ち会っていたが,同プロジェクトの内容の決定は,責任者である役員のP7が同プロジェクト会議の結論を役員会議に諮り,最終的に被告代表者が決定しており,講師の採用の決定も本部が行っていた。 カ原告らの労働時間は,原則として午後2時から午後10時までとされ(就業規則(甲2)9条(2)),また,他の職員と同様,出退勤時間については,「専任職員勤務記録表」(甲4の1 及び2)への記入が義務付けられ,被告は,同記録表により原告らの出退勤時間を管理していた。 キ平成17年2月から平成19年2月までの間,原告P1は,マネージャーとして,毎月,基本給29万4550円,役職手当5万円を受け取っており,また,原告P2については,サブマネージャー昇格時に基本給が21万9200円から27万4000円に,役職手当が1万円から3万円に増額し,マネージャー昇格時にさらに基本給が29万4550円に,役職手当が5万円に増額している。 こ ージャー昇格時に基本給が21万9200円から27万4000円に,役職手当が1万円から3万円に増額し,マネージャー昇格時にさらに基本給が29万4550円に,役職手当が5万円に増額している。 このように,被告の賃金体系によれば,ワーカーからサブマネージャーに昇格すると,個人差はあるものの,基本給が5万円程度上がり,役職手当が2万円程度付与されることにより,合計7万円程度の昇給になり,サブマネージャーからマネージャーに昇格すると,さらに基本給が2万円程度,役職手当が2万円増額されることとなる。 もっとも,サブマネージャー以上の社員に対しては時間外手当等が支給されなくなるため,原告P1の年収は,正社員になった後の平成11年から平成14年までが407万5994円から436 万1517円,サブマネージャーに昇格した平成15年から退職するまでが433万1400円から457万8195円といずれも400万円台前半から半ばまでにとどまっており,P3校の準専任講師の中には校長であった原告P1に匹敵する年収を得ている者もいた。また,原告P2の年収は,正社員になった平成16年が335万1646円,サブマネージャーに昇格した平成17年が356万8061円,マネージャーに昇格した平成18年が403万5750円と増額しているものの,マネージャー昇格後も約400万円にとどまっていた。 (3) 以上の認定事実によれば,原告P1は,校長として校長会議及び責任職会議への出席,時間割作成,配属された職員に対する第一次的査定等を行っていたものの,被告における決定事項は,すべて被告代表者が決裁して決定し,校長会議及び責任職会議では,役員会議,経営会議等で決定された経営方針,活動計画を伝達されるだけであり,校長が被告代表者の決裁なしに当該予備校としての方針 事項は,すべて被告代表者が決裁して決定し,校長会議及び責任職会議では,役員会議,経営会議等で決定された経営方針,活動計画を伝達されるだけであり,校長が被告代表者の決裁なしに当該予備校としての方針を決めたり,費用を出捐したり,職員の採用,昇格,昇給,異動を決定することはなく,その職務,権限,責任の内容等からして,被告の経営に関する決定に参画したり,労務管理に関する指揮監督権限を有していたとは認められず,また,他の職員と同様,出退勤時間が定められ,勤務記録表により出退勤時間を被告に管理されていたのであって,出退勤について自ら自由に決定し得る権限があったとはいえず,さらに,年収がいずれも400万円台前半から半ばまでにとどまっており,サブマネージャーに昇格後も従前より年収が下がっている年度もあって,P3校の準専任講師の中には校長であった原告P1に匹敵する年収を得ている者がいた事実を併せ考慮すると,給与等の待遇において,時間外手当及び休日手当が支給されな いことを十分に補っているとまではいえない。 次に,原告P2は,校長代理として責任職会議に出席していたものの,責任職会議では,役員会議,経営会議等で決定された経営方針,活動計画を伝達されるだけであり,特別な事情がない限り校長業務を代理することはなく,直接他の職員に指示することもないから,その職務,権限,責任の内容等からして,被告の経営に関する決定に参画したり,労務管理に関する指揮監督権限を有していたとは認められず,また,他の職員と同様,出退勤時間が定められ,勤務記録表により出退勤時間を被告に管理されていたのであって,出退勤について自ら自由に決定し得る権限があったとはいえず,給与についても,年収がマネージャーへ昇格後も約400万円にとどまっており,給与等の待遇において,時間外 を被告に管理されていたのであって,出退勤について自ら自由に決定し得る権限があったとはいえず,給与についても,年収がマネージャーへ昇格後も約400万円にとどまっており,給与等の待遇において,時間外手当及び休日手当が支給されないことを十分に補っているとまではいえない。 被告は,原告P2が,個別指導部門の責任者として,他の講師職員に対する管理監督者の地位にあったと主張するが,原告P2は,個別指導プロジェクトのメンバーとして会議で積極的に発言・提案を行い,また,担当校の講師の割振りと調整,指導内容の決定を行っていたほか,個別指導の講師の採用手続,研修指導の一部に立ち会ったことがあるにすぎず,最終的なプロジェクトの内容の決定は,同プロジェクトの責任者である役員が役員会議に諮った上で被告代表者が行っており,講師の採用も本部が決定していることからすれば,同プロジェクトの運営に原告P2が携わっていたことをもって,雇用主の経営に関する決定に参画し,労務管理に関する指揮監督権限を有すると評価することはできない。 そもそも,被告における雇用期間の定めのない正社員48名のうちサブマネージャー以上の地位にある社員は38名(平成18年2 月当時)であり,サブマネージャー以上の地位にある社員がいずれも管理監督者であるとする被告の主張は到底採用できない。 よって,原告らは,労働条件の決定その他労務管理につき,雇用主と一体的な立場にあるものとはいえず,労働基準法41条2号にいう管理監督者に該当するとは認められない。 3 時間外手当等の計算(1) 原告P1(平成17年2月から平成19年2月まで)基本給,住宅手当及び役職手当の合計36万0550円を月間所定労働時間数169.3時間で控除した1時間当たりの賃金は,2130円である。別紙1の 原告P1(平成17年2月から平成19年2月まで)基本給,住宅手当及び役職手当の合計36万0550円を月間所定労働時間数169.3時間で控除した1時間当たりの賃金は,2130円である。別紙1のとおり,原告P1の時間外労働時間は707時間,深夜労働時間は164時間,休日労働時間は50.5時間であるから,時間外手当等は以下の計算式のとおり,時間外手当が188万2388円,深夜手当が52万3980円,休日手当が14万5213円であり,時間外手当等は合計255万1581円であると認められる。 時間外手当 2130 円×707×1.25=188 万2388 円(四捨五入)深夜手当 2130 円×164×1.5=52 万3980 円休日手当 2130 円×50.5×1.35=14 万5213 円(同上)よって,時間外手当等として既払金2万5378円を控除した252万6203円の支払を求める原告P1の請求には理由がある。 (2) 原告P2ア平成17年2月基本給,役職手当及び教専手当の合計23万5200円を月間所定労働時間数169.3時間で控除した1時間当たりの賃金は,1389円である。別紙2のとおり,原告P2の時間外労働時間は4. 5時間,休日労働時間は10時間であるから,時間外手当等は以下 の計算式のとおり,時間外手当が7813円,休日手当が1万8752円であり,時間外手当等は合計2万6565円であると認められる。 時間外手当 1389 円×4.5×1.25=7813 円(四捨五入)休日手当 1389 円×10×1.35=1 万8752 円(同上)イ平成17年3月から平成18年2月まで基本給,役職手当及び教専手当の合計31万円を月間所定労働時間数169.3時間で控除した1時間当たり 9 円×10×1.35=1 万8752 円(同上)イ平成17年3月から平成18年2月まで基本給,役職手当及び教専手当の合計31万円を月間所定労働時間数169.3時間で控除した1時間当たりの賃金は,1831円である。別紙2のとおり,原告P2の時間外労働時間は260.5時間,深夜労働時間は174時間,休日労働時間は26時間であるから,時間外手当等は以下の計算式のとおり,時間外手当が59万6219円,深夜手当が47万7891円,休日手当が6万4268円であり,時間外手当等は合計113万8378円であると認められる。 時間外手当 1831 円×260.5×1.25=59 万6219 円(四捨五入)深夜手当 1831 円×174×1.5=47 万7891 円休日手当 1831 円×26×1.35=6 万4268 円(同上)ウ平成18年3月から平成19年2月まで基本給及び役職手当の合計34万4550円を月間所定労働時間数169.3時間で控除した1時間当たりの賃金は,2035円である。別紙2のとおり,原告P2の時間外労働時間は252時間,深夜労働時間は185.5時間,休日労働時間は39.5時間であるから,時間外手当等は以下の計算式のとおり,時間外手当が64万1025円,深夜手当が56万6239円,休日手当が10万8516円であり,時間外手当等は合計131万5780円であると認められる。 時間外手当 2035 円×252×1.25=64 万1025 円深夜手当 2035 円×185.5×1.5=56 万6239 円(四捨五入)休日手当 2035 円×39.5×1.35=10 万8516 円(同上)エよって,平成17年2月から平成19年2月までの間の原告P2の時間外手当等は合計248 万6239 円(四捨五入)休日手当 2035 円×39.5×1.35=10 万8516 円(同上)エよって,平成17年2月から平成19年2月までの間の原告P2の時間外手当等は合計248万0723円であり,同時間外手当等として既払金7万7133円を控除した240万3590円の支払を求める原告P2の請求は理由がある。 4 付加金について被告は,原告らを含め雇用期間の定めのない正社員の約8割に該当するサブマネージャー以上の地位にある社員がいずれも管理監督者であるとして,時間外手当等を支払っていないところ,原告らが労働基準法41条2号にいう管理監督者に該当するとは認められないことは前記2で認定したとおりであり,被告の行為が労働基準法37条に違反することは明らかである。 よって,本件については,労働基準法114条に基づき,被告に対し,原告らの時間外手当等の認容額と同額の付加金の支払を命じるのが相当である。 5 結論以上のとおり,原告らの請求は,いずれも理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官深見敏正 裁判官立野みすず 裁判官稲田康史

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