【DRY-RUN】主 文 原決定及び原原決定を取り消す。 本件刑の執行猶予言渡取消請求を棄却する。 理 由 申立代理人弁護士山口紀洋の抗告趣意について 原決定の認定
主文 原決定及び原原決定を取り消す。 本件刑の執行猶予言渡取消請求を棄却する。 理由 申立代理人弁護士山口紀洋の抗告趣意について原決定の認定した事実によれば、申立人(被告人)は、昭和五四年一月二六日東京地方裁判所において、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反被告事件(以下「第一事件」という。)につき懲役二年六月の判決言渡を受け、申立人から控訴の申立がなされ、同五六年七月六日東京高等裁判所において、原判決破棄、懲役一年六月、三年間執行猶予の判決言渡を受け、右判決は上告申立期間の経過により同月二一日確定し、他方、申立人は、第一事件の控訴審係属中に犯した有印私文書偽造、同行使被告事件(以下「第二事件」という。)につき昭和五六年六月二二日東京地方裁判所において、懲役六月の判決言渡を受け、翌二三日申立人から控訴の申立があつたが、同年七月一一日申立人が在監中の東京拘置所係官に控訴取下書を提出し、これによつて右判決は同日確定するに至り、同取下書は、同月一三日東京地方裁判所に受理され、控訴取下通知書は、同裁判所から同月一五日東京地方検察庁に送付され、控訴取下により第二事件の裁判が確定した旨の通知書は同検察庁から同月二一日東京高等検察庁に送付され、同検察庁検察官が第二事件につき懲役刑の実刑判決が確定した事実を覚知するに至つたけれども、第一事件の執行猶予の判決に対しては、既に同月二〇日の経過とともに上告期間が満了していたため、上告の申立をすることができなかつた(なお、東京高等検察庁検察官は、第一事件の控訴審の審理において、第二事件が東京地方裁判所に係属中であることを明らかにしており、他方、第二事件の審理でも第一事件が東京高等裁判所に係属中であることが明らかとなつていた。)。というのである。 - の審理において、第二事件が東京地方裁判所に係属中であることを明らかにしており、他方、第二事件の審理でも第一事件が東京高等裁判所に係属中であることが明らかとなつていた。)。というのである。 - 1 -ところで、刑法二六条三号は、検察官が上訴の方法により違法に言い渡された執行猶予の判決を是正するみちがとざされた場合に、その執行猶予の言渡の取消をすることができるという趣旨であるが(当裁判所昭和三一年(し)第三二号同三三年二月一〇日大法廷決定・刑集一二巻二号一三五頁、同昭和四〇年(し)第七四号同四一年一月二八日第三小法廷決定・刑集二〇巻一号一頁参照)、前記事実によれば、申立人の第二事件についての控訴取下通知書は、第一事件につき東京高等裁判所が言い渡した執行猶予の判決に対する上告申立期間満了まで五日を残して東京地方検察庁に送付されており、第二事件が東京地方裁判所に係属していることを認識していた東京高等検察庁検察官としては、引き続き東京地方検察庁検察官と相互に連絡を取り合うなどの方法をとつていれば、第二事件につき懲役刑に処せられた事実を第一事件の執行猶予の判決に対する上告申立期間満了前に覚知することができたというべきである。このような場合には、東京高等検察庁検察官が第二事件につき懲役刑に処せられた事実を第一事件の執行猶予の判決に対する上告申立期間内に現実に覚知した場合と同様に、上訴によつて第一事件の執行猶予の判決がそのまま確定するのを阻止することができたものと解すべきであり、検察官はその取消請求権を失うものといわなければならない(当裁判所昭和五三年(し)第八七号同年一一月二二日第二小法廷決定・刑集三二巻八号二一四〇頁参照)。 そうすると、検察官の請求を許容して申立人に対する執行猶予の言渡を取り消した原原決定を是認した原決定には、刑法二六条三 し)第八七号同年一一月二二日第二小法廷決定・刑集三二巻八号二一四〇頁参照)。 そうすると、検察官の請求を許容して申立人に対する執行猶予の言渡を取り消した原原決定を是認した原決定には、刑法二六条三号の解釈を誤つた違法があるといわなければならない。 よつて、抗告趣意に対する判断をまつまでもなく、右の違法が原決定に影響を及ぼすことは明らかであり、かつ、原決定及び原原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認め、刑訴法四一一条一号、四三四条、四二六条二項により、原決定及び原原決定を取り消し、本件刑の執行猶予言渡取消請求を棄却することとし、- 2 -主文のとおり決定する。 この決定は、裁判官中村治朗、同谷口正孝の補足意見、裁判官団藤重光の意見、裁判官藤崎萬里の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見によるものである。 裁判官中村治朗の補足意見は、次のとおりである。 私は、法廷意見に同調するものであるが、なおこれに若干の意見を附加しておきたい。 本件においては、法廷意見に述べられているように、第一事件担当の東京高等検察庁検察官において第二事件が東京地方裁判所に係属していることを知つていたという事実が存在するが、たとえかかる事実がなかつたとしても、他方の東京地方検察庁検察官において第一事件が東京高等裁判所に係属していることを知つていたのであるから、第二事件の判決が確定したことを速かに東京地方検察庁検察官から東京高等検察庁検察官に通報することによつて第一事件の執行猶予の判決が確定することを阻止することができた案件なのである。そして、このように、同一被告人に対する複数の刑事被告事件が同時に別々の裁判所に係属していることがいずれかの検察庁の検察官に判明し、又は判明しうべき状況にあり、当該検察官において十分に注意し、他検察庁検察官との連絡を 同一被告人に対する複数の刑事被告事件が同時に別々の裁判所に係属していることがいずれかの検察庁の検察官に判明し、又は判明しうべき状況にあり、当該検察官において十分に注意し、他検察庁検察官との連絡を密接かつ迅速にとりさえすれば、上訴により違法な執行猶予の判決の確定を阻止することができるような事情が存する場合には、たとえ上訴権を行使する検察庁の検察官の現実の覚知がおくれ、そのために上訴の機会を失して右判決が確定するに至つたとしても、それは結局検察官の責に帰すべき事由によるものというべく、このような場合には、検察官は、もはや刑法二六条三号の規定による執行猶予取消請求権を行使することができないと解すべきではないかと考える。 がんらい、刑の執行猶予の言渡は、刑の言渡そのものではなく、その執行に関する処分というべきものであるが、刑を科せられた被告人の立場からみれば、それは- 3 -科せられた刑の内容そのものに比すべき重大な(時にはこれよりも更に重大な)影響ないし効果をもつものであるから、憲法三九条との関係においても、執行猶予の言渡の取消は言い渡された刑の内容そのものを被告人に不利益に変更するものと同視すべき面が存することを否定できず、その点において団藤、谷口両裁判官の意見に示されている違憲論には、傾聴すべきところが多い。しかし、刑の執行猶予の言渡に右のような性質が存在するとしても、他面において、それが、刑の言渡そのものとは別個の、被告人に対する一種の利益附与処分たる性質を帯有することを完全に払拭することはできず、この点は憲法三九条との関係においても考慮されてしかるべき要点といわなければならない。そしてこのような見地に立つて考えると、いつたん執行猶予の判決が確定した後におけるその取消についても、執行猶予制度の趣旨・目的に内在すると考えられる取消 されてしかるべき要点といわなければならない。そしてこのような見地に立つて考えると、いつたん執行猶予の判決が確定した後におけるその取消についても、執行猶予制度の趣旨・目的に内在すると考えられる取消事由以外の事由による取消は憲法三九条に違反するというところまでこれを刑の言渡そのものと同一視することは相当でなく、それ以外の事由であつても、犯罪者に対する適正な刑罰権の行使という公共の利益と確定判決に対する被告人の信頼という個人の利益との間の合理的な調整として、これを理由とする執行猶予の取消を許してしかるべき場合がありうると解すべきではないかと思う。刑法二六条二号、三号に規定する場合を考えてみると、執行猶予の判決を受けた被告人がその判決前に別罪を犯しており、それが結局懲役又は禁錮の実刑判決を受けるようなものであつたというような場合は、右被告人は客観的には執行猶予の利益を受けるに値しなかつた者というべきであり、他方、あらかじめ右別罪に関する事実を明らかにして被告人に対する執行猶予の言渡を阻止することを要求するのが検察官に難きを強いるものであつて、それができなかつたとしてもこれを検察官の責に帰することができないような場合には、適正な刑罰権の行使の利益を確定判決に対する被告人の信頼利益に優越せしめるに足りる合理的理由があるといつて差支なく、したがつて、この場合に確定判決における執行猶予の取消を- 4 -認めても、憲法三九条に違反するというには当らないように思われる。最高裁昭和二七年二月七日第一小法廷決定・刑集六巻二号一九七頁を起点とする当裁判所の一連の判例は、刑法二六条三号の場合についていわゆる上訴是正主義をとり、上訴によつて執行猶予判決の確定を阻止することができたのにこれをしなかつたときは右規定による執行猶予取消請求権を行使することができないと 例は、刑法二六条三号の場合についていわゆる上訴是正主義をとり、上訴によつて執行猶予判決の確定を阻止することができたのにこれをしなかつたときは右規定による執行猶予取消請求権を行使することができないとしているが、これらの判例は、その反面において上訴不提起による執行猶予判決の確定が検察官の責に帰することのできない事由による場合には執行猶予取消請求権を肯定すべく、そうしても憲法三九条に違反するものではないとする見解に立つているものと解されるのであり、そうであるとすれば、私もこれに賛同するものである。ただし、私は、右の解釈のもとにおいても、上訴の不提起が検察官の責に帰すべき事由によるものであるかどうかについては、さきに述べたような厳格な基準によつて判断すべきものであり、これによつてはじめて上記合憲論を肯定することができるのではないかと考える。 裁判官谷口正孝の補足意見は、次のとおりである。 一刑法二六条三号の規定が憲法三九条後段の規定に違反するかどうかについては、意見のわかれるところである。 ところで、刑法の右条規により執行猶予の取消請求の可否が問われている事件において、右規定の解釈上検察官のした執行猶予の取消請求は許されないとされる場合、更に進んで右規定の憲法適否の点についてまで立ち入つて判断を加える必要はない。 私は、最高裁昭和三一年(し)第三二号同三三年二月一〇日大法廷決定は、刑法二六条三号の規定が憲法三九条後段の規定に違反するかどうかの点については判断を留保し、検察官の当該執行猶予の取消請求の可否を専ら刑法解釈の場面で処理したものと理解している。従つて、その後の小法廷決定が右大法廷決定の趣旨とする- 5 -ところとしてこれを引用して、刑法二六条三号の規定は憲法三九条後段の規定に違反するものでないという判断を示していることは当を している。従つて、その後の小法廷決定が右大法廷決定の趣旨とする- 5 -ところとしてこれを引用して、刑法二六条三号の規定は憲法三九条後段の規定に違反するものでないという判断を示していることは当を得ないものと考える。 二ところで、右大法廷決定は、刑法二六条三号の規定は誤つて言渡された執行猶予の判決(誤判ということになる)の是正のための規定としてこれを理解した。 そして、そのような認識に立つたうえ、誤判の是正は先ずもつて刑訴法所定の上訴の方法によるべきであるから、刑法の右規定の働らくのは、「上訴の方法により、違法に言渡された執行猶予の判決を是正する途がとざされた場合」に限定されるという解釈を導いたのであつた。そして、検察官の当該執行猶予取消請求について、所与の場合、検察官において執行猶予の判決確定前執行猶予の要件の具備しないことを覚知していたのであるから、上訴の方法により執行猶予の判決を是正する途があつたものとして、当該執行猶予取消請求を棄却したのであつた。 私も、当該執行猶予の取消請求が刑法二六条三号の規定の解釈適用として許されないと判断される場合、特別抗告に対する応答としては、この判断のしかたで必要にして十分であつたと思う。 三本件の処理も又右大法廷決定の先例に従つたものである。問題を専ら刑法の解釈適用の場面で処理するわけである。この処理方法を是認する以上、本件の執行猶予の判決は客観的にみて執行猶予の要件を具備しない申立人に対し執行猶予の言渡をしたものであつて、誤つた判決というべきであるが、刑法二六条三号の規定により検察官の執行猶予取消請求を認めるかどうかは、検察官においてこの判決を上訴の方法により是正する途があつたといえるかどうかが先ず検討されるべきである。 私も本件の場合、執行猶予の判決確定前、上訴権者である東京高等検察庁検 消請求を認めるかどうかは、検察官においてこの判決を上訴の方法により是正する途があつたといえるかどうかが先ず検討されるべきである。 私も本件の場合、執行猶予の判決確定前、上訴権者である東京高等検察庁検察官は執行猶予判決をするについて障害となる実刑判決の存在することを容易に知ることができたものと認められるので、同検察官としてはその職責上上訴の方法によりその是正を求めるべきであつたのに、その任務の遂行を怠り、同判決を確定させたも- 6 -のであるから、検察官は本件執行猶予の取消請求権を失つたものと考える(最高裁同五三年(し)第八七号同年一一月二二日第二小法廷決定・刑集三二巻八号二一四〇頁参照)。 四以上のように、本件において、刑法二六条三号の規定の解釈適用として、検察官は本件執行猶予の取消請求権を失つたものとして本件を処理する以上、同規定が憲法三九条後段の規定に違反するかどうかについて判断を加える必要はない。しかし、敢てこの点について一言附加しておくと、私は、右二六条三号の規定は憲法三九条後段の規定に違反するのではないかと思う。けだし、右規定は、確定した執行猶予の判決について、その判決に執行猶予の欠格事由が存在していたのにこれを看過して誤つて執行猶予の言渡がなされたことを理由として、判決確定後その取消を認めるものであつて、該執行猶予判決に内在する瑕疵をその判決確定後検察官に主張させ、被告人の不利益に確定判決を変更することを認めることになるからである。 なるほど、執行猶予の判決は執行権の効果を一定の条件にかからしめた判決であつて、判決自体事後修正の余地を含んだものではある。しかし、事後修正の余地があるといつても、それは自ら執行猶予制度に由来するものでなければならない。刑法二六条三号の規定による執行猶予の取消は結果として執行猶予と実刑との 正の余地を含んだものではある。しかし、事後修正の余地があるといつても、それは自ら執行猶予制度に由来するものでなければならない。刑法二六条三号の規定による執行猶予の取消は結果として執行猶予と実刑との併立を避けようとするものではあるが、本来前記大法廷決定にいうように判決の瑕疵の是正を目的としたものであつて、執行猶予制度そのものに由来するものではない。 しかも、執行猶予の判決が確定した以上、被告人は自己の責に帰すべき事後の事情が加わらない限り刑の執行から解放されたものとの期待と信頼を抱く。そこに法的安定性が生ずる。それにも拘らず、既に確定した執行猶予の判決をその判決自体に内在していた瑕疵を理由として取消し被告人を実刑に服さしめるということは、この被告人の期待と信頼を裏切り法的安定性を害うものであつて、まさに被告人を- 7 -して二重の危険に陥入れるものというべきである。加えて、刑法の右規定により執行猶予の取消を認めることは、被告人の改過遷善という刑の執行猶予制度の本来の目的にも反することになろう。刑法二六条三号の規定は憲法三九条後段の規定に反すると考えるゆえんである。 裁判官団藤重光の意見は、次のとおりである。 憲法三九条の解釈については問題が多く、ここでは詳論を避けるが、有罪・無罪の確定判決に対して本人に不利益な再審をみとめることは、すくなくとも一般的には、この規定に反するものと解しなければならない。旧刑訴法に置かれていた本人に不利益な再審の制度が新憲法下で廃止されたのも、この見地に立つたものであるとおもう。 ところで、刑の執行猶予言渡の判決が確定したばあいに、本人のその後の行状のいかんによつて執行猶予言渡の取消をみとめることは、制度そのものに内在する当然の事柄であり、執行猶予ははじめからその趣旨において言い渡されるものであるから 決が確定したばあいに、本人のその後の行状のいかんによつて執行猶予言渡の取消をみとめることは、制度そのものに内在する当然の事柄であり、執行猶予ははじめからその趣旨において言い渡されるものであるから、なんら憲法三九条の問題を生じるものではない。これに反して、刑法二六条三号が「猶予ノ言渡前他ノ罪ニ付キ禁錮以上ノ刑ニ処セラレタルコト発覚シタルトキ」を執行猶予言渡の必要的取消の原由としているのは、判決の確定後にその誤り――執行猶予の要件を欠いていたこと――を発見してこれを本人の不利益に是正することをみとめるものにほかならず、上記の不利益な再審と性質を等しくするものであつて、同じく憲法三九条に反するものといわざるをえないのである。刑の執行猶予の言渡は法技術的・形式的には刑の言渡の附随的処分にすぎないが、実質的には両者は一体をなすものであつて、現に上訴審における不利益変更禁止(刑訴法四〇二条、四一四条)についても刑の執行猶予の関係での不利益変更は刑の不利益変更にあたるものとするのが判例・通説になつているのであり(最高裁昭和二六年八月一日大法廷判決・刑集五巻九号一七一五頁)、まして憲法の次元での問題を論じ- 8 -るにあたつて右のような法技術的な形式論を持ち出すことが許されないのは、なおさらのことというべきである。なお、刑法二六条三号の立法理由の中には、刑の執行猶予はもともと本人を自由な社会に置いてその行状をみるのが主眼であるから他の自由刑の執行と並行させるのは不合理である、という趣旨が含まれている。しかし、このことも、同号の規定を憲法三九条に反するものでないとする理由には、とうていなりえないものといわなければならない。 従来の判例は上訴是正主義として理解されているものであるが、この考え方によると、判決確定前に上訴によつて是正することが不可能であ ないとする理由には、とうていなりえないものといわなければならない。 従来の判例は上訴是正主義として理解されているものであるが、この考え方によると、判決確定前に上訴によつて是正することが不可能であつたものを、判決の確定を待ちさえすれば刑法二六条三号によつて是正することが可能になる、という結論に導かれる。これを端的に示しているのが、最高裁昭和四八年二月二八日第一小法廷決定(刑集二七巻一号七九頁)である。この事案においては、刑の執行猶予を言い渡した第一審判決に対して被告人のみが控訴を申し立て、事件が控訴審に係属中に検察官が被告人の前科を覚知したが、不利益変更の禁止があるために実刑への変更が不可能であつた。そこで、検察官は、判決の確定を待つて、この規定によつて執行猶予言渡の取消を請求したのであるが、この取消請求が右決定によつて是認されたのであつた。つまり、判決確定前は実刑への変更が許されなかつたのにもかかわらず、確定を待ちさえすれば、実刑にすることが許されるようになるというわけである。憲法三九条は被告人のための具体的法的安定性を重視することを趣旨とするものであるところ、これでは、その要請がより強かるべき判決確定の段階になつて、かえつて、これを無視することになる。これは上訴是正主義がもともと憲法三九条の本旨と相容れないことを示すものであるとおもう。 かようにして、わたくしは、刑法二六条三号の規定を合憲とする当裁判所の判例(昭和三三年二月一〇日大法廷決定・刑集一二巻二号一三五頁、同三五年一〇月四日第三小法廷決定・刑集一四巻一二号一五三三頁、同四一年一月二八日第三小法廷- 9 -決定・刑集二〇巻一号一頁、同四八年二月二八日第一小法廷決定・刑集二七巻一号七九頁)は変更されるべきものと考え、この規定による刑の執行猶予言渡の取消をみとめた原決定およ 二八日第三小法廷- 9 -決定・刑集二〇巻一号一頁、同四八年二月二八日第一小法廷決定・刑集二七巻一号七九頁)は変更されるべきものと考え、この規定による刑の執行猶予言渡の取消をみとめた原決定および原原決定はいずれも取消を免れず、検察官の本件請求は棄却されるべきものと考える。 裁判官藤崎萬里の反対意見は、次のとおりである。 私は、原決定が本件執行猶予取消請求を認容した原原決定を維持したのは、憲法及び刑法の関係条規からして正当であると考える。従つて、本件抗告は棄却されるべきものと思料する。 昭和五六年一一月二五日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官本山亨裁判官団藤重光裁判官藤崎萬里裁判官中村治朗裁判官谷口正孝- 10 -
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