平成11(行ウ)27 国民健康保険料の変更賦課決定処分取消請求

裁判年月日・裁判所
平成13年10月17日 神戸地方裁判所
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判決文本文23,032 文字)

判決平成13年10月17日神戸地方裁判所平成11年(行ウ)第27号国民健康保険料の変更賦課決定処分取消請求事件 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求被告が原告に対して平成10年9月8日付けでした,原告の平成10年度国民健康保険料の変更賦課決定処分(保険料13万6820円)のうち,保険料8万0180円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の骨子神戸市における一般被保険者に係る国民健康保険料額の算定は,神戸市国民健康保険条例(昭和35年神戸市条例第24号。以下「本件条例」という。)に基づき,その世帯に属する一般被保険者につき算定した所得割額,被保険者均等割額及び世帯別平等割額の合算額とされている(本件条例13条)。 本件は,原告が,本件条例の上記所得割額に係る規定が憲法14条,25条に違反するとして,被告が原告に対して平成10年9月8日付けでした,原告の平成10年度の国民健康保険料変更賦課処分(保険料は,所得割額5万6640円,均等割額4万9900円及び平等割額3万0280円の合計13万6820円。以下「本件処分」という。)のうち,8万0180円(均等割額4万9900円及び平等割額3万0280円の合計額)を超える部分の取消しを求めた事案である。 2 前提となる事実次の事実は,いずれも当事者間に争いがない。 (1) 当事者等ア原告は,国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「法」という。)5条に定める被保険者である。 イ神戸市(本件訴訟における,行政事件訴訟法15条に基づく被告変更前の被告) ア原告は,国民健康保険法(昭和33年法律第192号。以下「法」という。)5条に定める被保険者である。 イ神戸市(本件訴訟における,行政事件訴訟法15条に基づく被告変更前の被告)は,法3条1項に定める保険者である。そして,神戸市が保険者となっている国民健康保険の保険料の賦課処分については,神戸市(保険者)代表者である神戸市長にその権限があるところ,同権限は区長委任規則(昭和37年神戸市規則第20号)により区長に委任され(4条2項4号),その権限が委譲されている。 (2) 本件処分被告は,原告に対し,平成10年9月8日付けで,原告の平成10年度の国民健康保険料を13万6820円と変更して賦課する旨の本件処分を行い,同日ころ,同処分内容が記載された通知書を原告に送付し,同月9日ころ,原告はそれを受領した。 本件処分による国民健康保険料13万6820円は,所得割額5万6640円,均等割額4万9900円及び平等割額3万0280円の合計額であって,本件条例の基準に従って算定した金額である。 (3) 審査請求とこれに対する裁決原告は,平成10年10月19日付けで,兵庫県国民健康保険審査会に対して本件処分について審査請求を行ったところ,同審査会は,書面審理の結果,平成11年3月17日付けで,同審査請求を棄却する旨の裁決をした。 (4) 国民健康保険料の算定方式ア法は,第5章に定めるもののほか,賦課額,料率,賦課期日,納期,減額賦課その他国民健康保険料の賦課及び徴収等に関する事項は,政令で定める基準に従って条例又は規約で定める旨規定している(81条)。 それを受けて国民健康保険法施行令(昭和33年政令第362号。以下「法施行令」という。)が制定され,さらにそれを受けて 令で定める基準に従って条例又は規約で定める旨規定している(81条)。 それを受けて国民健康保険法施行令(昭和33年政令第362号。以下「法施行令」という。)が制定され,さらにそれを受けて本件条例が制定されている。 イ被保険者の所得割を算定する方法として,その基礎となる所得をどう捉えるか,法施行令(但し,条文は平成11年9月政令第262号改正前のもの。以下同じ。)は,次の各方式を規定している。 (ア) 旧但書方式総所得金額から基礎控除のみを控除した金額(基礎控除後の総所得金額等)を基準とする(法施行令29条の5第1項4号)。 (イ) 本文所得方式総所得金額から各種所得控除を控除した金額(各種控除後の総所得金額等)を基準とする(法施行令29条の5第1項7号イ)。 (ウ) 市町村民税所得割額方式前年中の所得にかかる市町村民税の所得割額(市町村民税所得割額)を基準とする(法施行令29条の5第1項7号ロ)。 (エ) 市町村民税額方式前年中の所得にかかる市町村民税の額(市町村民税額)を基準とする(法施行令29条の5第1項7号ハ)。 (オ) 合算方式前年中の所得にかかる都道府県民税額と市町村民税額の合算額を基準とする(法施行令29条の5第1項7号ニ)。 ウ神戸市は,上記イ(オ)の合算方式を採用している。すなわち,所得割額は,被保険者に係る当該年度分の市県民税額に所得割の保険料率を乗じて算定する(本件条例14条)。所得割の保険料率は,被保険者に係る保険料の賦課総額の100分の50に相当する額を,保険料算定の基礎となる市県民税の額の当該年度における見込総額で除して得た数である(本件条例15条1項1号)。 エ神戸市の 率は,被保険者に係る保険料の賦課総額の100分の50に相当する額を,保険料算定の基礎となる市県民税の額の当該年度における見込総額で除して得た数である(本件条例15条1項1号)。 エ神戸市の国民健康保険料は,所得割,被保険者均等割,世帯別平等割に分けられ,それぞれの比率が50%,30%,20%である(本件条例15条1項)。 オ神戸市の平成10年度の国民健康保険料の被保険者均等割額は被保険者一人につき2万4950円,同世帯別平等割額は一世帯当たり3万0280円であった。 (5) 原告の事務所所有原告は,平成10年1月1日当時,神戸市a区内に住居を有し,同市h区内に事務所を有することによって,h区,a区両方において市県民税の均等割額を賦課されていた。 (6) 本件保険料減額措置神戸市は,平成10年度に地方税の特別減税が行われ,所得割料率が708%と高くなった関係で,下記のような国民健康保険料の減額措置(以下「本件減額措置」という。)をとった。 記地方税の特別減税がなかったとした場合,平成10年度の国民健康保険の所得割率は374%となるところ,平成10年度の国民健康保険の所得割額(平成10年度の市県民税額×7.08)と上記料率で算出される金額(特別減税がないと仮定した市県民税額×3.74)とを比較して,後者が前者を上回る場合その差額を減額する(本件条例の附則10,11)。 3 争点本件処分(但し,8万0180円を超える部分)の適法性。主として,本件条例の所得割額に関する規定の適法性。 それを具体化すると,次のとおりとなる。 (1) 神戸市の国民健康保険料算定の基礎となる所得割率(所得割算定のための率)は高率に過ぎ,憲法25条に違反するか。 割額に関する規定の適法性。 それを具体化すると,次のとおりとなる。 (1) 神戸市の国民健康保険料算定の基礎となる所得割率(所得割算定のための率)は高率に過ぎ,憲法25条に違反するか。 (2) 神戸市の国民健康保険料は,政府管掌健康保険における被用者負担と比較して著しく負担が重く,憲法14条に違反するか。 (3) 本件条例が合算方式を採用し,国民健康保険料の所得割額の算定に市県民税の均等割額を含めていることは,憲法14条,25条に違反するか。 (4) 本件条例が事務所等に課税される市県民税均等割額を所得割額に含めていることは,憲法14条に違反するか。 (5) 被保険者が負担する国民健康保険料に地域格差があることは,憲法14条,25条に違反するか。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点(1)(所得割料率が高率であることの違憲性)について(原告の主張)以下のとおり,神戸市の国民健康保険料算定の基礎となる所得割率(所得割算定のための率)は高率に過ぎ,その結果,国民健康保険料の負担が重すぎ,憲法25条(生存権)に違反する。 (1) 神戸市の平成10年度の国民健康保険料は,一世帯当たり3万0280円(世帯別平等割),被保険者一人当たり2万4950円(被保険者均等割),世帯内の被保険者の市県民税額に708%又は374%を乗じた額(所得割)を合計した金額であり,その最高額は52万円である。 (2) そして,神戸市では,市県民税の708%又は374%を国民健康保険料の所得割額と算定しているので,例えば,夫婦二人(60歳以上65歳未満)の世帯を前提条件として試算すると,所得金額が1万円増加した場合の負担は次のとおりとなる。 ア課税所得100万円以下の場合市県民税 歳以上65歳未満)の世帯を前提条件として試算すると,所得金額が1万円増加した場合の負担は次のとおりとなる。 ア課税所得100万円以下の場合市県民税 5% 500円所得税 10% 1000円国民健康保険料(市県民税の708%)3540円総額 5040円可処分所得 4960円イ課税所得100万円超200万円以下の場合市県民税 5% 500円所得税 10% 1000円国民健康保険料(市県民税の374%)1870円総額 3370円可処分所得 6630円ウ課税所得200万円超214万円以下の場合市県民税 10% 1000円所得税 10% 1000円国民健康保険料(市県民税の374%)3740円総額 5740円可処分所得 4260円(3) すなわち,神戸市の平成10年度保険料減額措置(本件減額措置)の対象となるのは,課税所得金額100万円以上の世帯であって, 5740円可処分所得 4260円(3) すなわち,神戸市の平成10年度保険料減額措置(本件減額措置)の対象となるのは,課税所得金額100万円以上の世帯であって,同100万円未満の世帯はこの減額の対象とはならない。 しかも,1万円の収入増加に対し,課税所得100万円以下の世帯は4960円しか手元に残らず,課税所得100万円超200万円以下の世帯は6630円手元に残るが,課税所得200万円超214万円以下の世帯は4260円しか手許に残らないという不当な結果となる。 (4) そして,課税所得がわずかに213万7000円にすぎない夫婦二人の世帯で,次のとおり国民健康保険料額は一挙に最高額の52万円に達する。 ア市県民税額が11万3600円となり,当該金額に市県民税均等割を加えた額に所得割料率374%を乗じた金額が43万9824円となり,これが所得割額である。 イこれに,世帯別平等割額3万0280円,被保険者均等割額4万9900円を加算すると52万円以上になる。 (被告の反論)以下のとおり,神戸市の国民健康保険料の所得割率が高すぎ,負担が重すぎるということはなく,本件条例は憲法25条に違反しない。 (1) 神戸市は,前記第2の2(6)のとおり,平成10年度に特別減税の関係で本件減額措置をとった。 原告は,神戸市が実施した本件減額措置は課税所得が100万円未満の世帯には恩恵が及ばないと主張するが,誤っている。100万円未満の課税所得の世帯には特別減税によって市県民税額が減額となっているため,特別減税の恩恵によって国民健康保険料の所得割額が減額されている。すなわち,そのような世帯においては,特別減税相当分につき国民健康保険料の所得割額は賦課されないのである。 (2 なっているため,特別減税の恩恵によって国民健康保険料の所得割額が減額されている。すなわち,そのような世帯においては,特別減税相当分につき国民健康保険料の所得割額は賦課されないのである。 (2) 原告は,年間100万円以下の課税所得者について,平成10年度の国民健康保険料の所得割額は収入増加1万円につき3540円であり,可処分所得割合は49.6%であるなど,本件条例の下で課税所得の収入増加に占める可処分所得の割合が著しく低いと主張する。 しかし,100万円以下の課税所得であっても,課税所得45万円までは市県民税所得割は課税されず,したがって,国民健康保険料の市県民税所得割に応じた賦課はされない。課税所得45万円の場合,賦課されるのは市県民税の均等割の4000円と国民健康保険の均等割・平等割・所得割の合計10万8500円で,可処分所得割合は75%となる。 そもそも,可処分所得割合を,各所得控除前の収入金額(課税所得100万円〔夫婦二人〕は給与収入で388万2350円であり,収入金額に占める可処分所得割合は約91%となる。)を基準とせず,課税所得を基準とすることにさしたる意味はない。 2 争点(2)(政管健保と著しい負担格差があることの違憲性)について(原告の主張)以下のとおり,政府管掌健康保険における被用者負担分と比較して,国民健康保険は著しく保険料の負担が重いから,本件条例は憲法14条(法の下の平等)に違反する。 (1) 国民健康保険に加入している神戸市民の負担は次のアのとおりであり,政府管掌健康保険における被用者の負担は次のイのとおりである。政府管掌健康保険に加入できない零細企業の被用者と政府管掌健康保険に加入できる被用者との間には,約2.71倍(52万円÷19万1247円)もの負担格差が生じている 被用者の負担は次のイのとおりである。政府管掌健康保険に加入できない零細企業の被用者と政府管掌健康保険に加入できる被用者との間には,約2.71倍(52万円÷19万1247円)もの負担格差が生じている。 ア国民健康保険の負担夫婦二人の世帯で課税所得213万7000円の場合,神戸市の国民健康保険料は最高額の52万円となる(前記1の原告の主張(4))。この場合の給与収入額は523万2500円である。 イ政府管掌健康保険の負担ところが,上記アの場合,政府管掌健康保険に加入している被用者の平均的なボーナス比率が14%で,ボーナスを除いた86%の収入金額が健康保険料算定の基礎とされているから,523万2500円に86%を乗じ,使用者負担分を除く4.25%を乗ずると,被用者の負担すべき健康保険料は19万1247円となる。 (2) 上記(1)のように,政府管掌健康保険と国民健康保険との間には著しい負担格差があるにも拘わらず,被保険者が受ける医療給付にはほとんど差違がない。 上記のような負担格差の必要性,合理性は認められない。 (被告の反論)以下のとおり,政府管掌健康保険と比較して,国民健康保険料の負担が著しく重いとはいえないから,本件条例は憲法14条に違反しない。 (1) 原告は,政府管掌健康保険料と国民健康保険料との負担につき,2.71倍の格差があると主張する。しかし,原告は,国民健康保険料と健康保険料とを比較する際に,政府管掌健康保険の使用者負担分を除外して主張しており,失当である。 すなわち,国民健康保険も政府管掌健康保険も保険であることには変わりがなく,保険料額そのものにさしたる差異はない。政府管掌健康保険においては,被保険者が負担する保険料のうち半額を使用者が負担しているのであり,負 民健康保険も政府管掌健康保険も保険であることには変わりがなく,保険料額そのものにさしたる差異はない。政府管掌健康保険においては,被保険者が負担する保険料のうち半額を使用者が負担しているのであり,負担する使用者がいない国民健康保険においては,保険料を被保険者自身が負担せざるを得ないのである。それをもって不合理であるということはできない。 むしろ,使用者負担分を加えて保険料額を比較すると,国民健康保険料よりも健康保険料の方が高額となる。また,負担する保険料の最高額は,国民健康保険が52万円であり,政府管掌健康保険が48万2000円であって,その間にさしたる差異はない。 (2) さらに,例えば,夫婦二人(60歳以上65歳未満)で最高額の52万円の国民健康保険料が賦課される場合の所得は,地方税の課税所得で220万3000円であるが,その場合の控除前の給与収入は596万6500円(基礎控除33万円,配偶者控除33万円,配偶者特別控除33万円,給与所得控除167万9300円,社会保険料控除82万4200円〔国民年金30万4200円・国民健康保険52万円〕)となる。 その場合の国民健康保険料の所得に対する割合は9.12%であり,同額の給与収入の場合における政府管掌健康保険においては,使用者負担分を含めると,その保険料額の収入額に対する割合は8.45%である(健康保険法71条の4)。 以上のことからも,政府管掌健康保険と国民健康保険との間において,保険料の負担割合にさしたる差異はないといえる。 3 争点(3)(市県民税均等割額を所得割額に含めることの違憲性)について(原告の主張)合算方式は,市県民税の均等割額を保険料の所得割額に含めるため,以下のとおり,低所得者層に過酷な負担を強いるもので,憲法25条,14条に違 割額に含めることの違憲性)について(原告の主張)合算方式は,市県民税の均等割額を保険料の所得割額に含めるため,以下のとおり,低所得者層に過酷な負担を強いるもので,憲法25条,14条に違反する。 (1) 神戸市が国民健康保険料の所得割の算定に市県民税額を適用することは,市県民税に均等割額が含まれていることから問題である。 すなわち,市県民税中に所得割分がなく均等割分のみである世帯は,間違いなく低所得者層に該当する。しかるに,一部低所得者層に対して保険料減額の規定が適用されるものの,夫婦二人(60歳以上65歳未満)で前年度所得が55万4000円超から100万円(市県民税額の非課税限度額)という低所得者層にも均等割額(年額4000円)が課税される結果,最低年額国民健康保険料として10万8500円(世帯別平等割3万0280円,被保険者均等割4万9900円,所得割2万8320円)もの負担を強いられている。 したがって,国民健康保険料の所得割額の算定に市県民税の均等割額を含めることは,その結果として低所得者に対して著しく過酷な負担を強いることとなる。可処分所得に占める保険料の割合が,健康保険料の被保険者負担割合(年収入金額120万円に対して年額4万9980円)に比べ,国民健康保険料の負担割合が著しく高率である。かかる負担割合の格差についての必要性,合理性を認めることはできず,憲法14条及び25条に違反する。 (2) 所得割の保険料額を算定する方法としては,兵庫県下において旧但書方式が主流で,合算方式は神戸市,尼崎市,西宮市のみであるが,これは同方式が低所得層の段階で賦課限度額に到達するという不合理な方式であることの端的な現れである。 (被告の反論)(1) 神戸市は,国民健康保険料の所得割額を合算方式によっ のみであるが,これは同方式が低所得層の段階で賦課限度額に到達するという不合理な方式であることの端的な現れである。 (被告の反論)(1) 神戸市は,国民健康保険料の所得割額を合算方式によっており(本件条例14条),市県民税の均等割額(4000円)を含む市県民税額合計に対する一定割合(所得割料率)をもって,所得割額を算出するものである。 (2) しかし,次の点からすれば,合算方式は,低所得者層に過重な負担を強いるものでも不合理なものでもなく,本件条例が憲法25条,14条に違反しないことは明らかである。 ア低所得者には市県民税均等割額が課税されない(神戸市市税条例19条の2)。具体的には,均等割額は夫婦二人の場合88万円まで(障害者,寡婦,老齢者等は125万円まで)課税されない。 イ国民健康保険料については,次のような徴収猶予又は減免制度が存在し,それに加えてさらに各種免除措置が認められている。 (ア) 国民健康保険料の均等割額自体に減額の制度がある(本件条例18条の2第1項)。 (イ) 国民健康保険料の徴収猶予・減免の制度がある(本件条例22条,23条)。具体的には,国民健康保険料の被保険者均等割額及び世帯別平等割額については,低所得者層には70%から20%の減額措置が認められる。 4 争点(4)(事務所等に課税される均等割額を所得割額に含めることの違憲性)について(原告の主張)以下のとおり,神戸市が事務所等に課税される市県民税均等割額を保険料の所得割額算定の基礎に含めていることは,憲法14条に違反する。 (1) 原告は,神戸市a区に住所を有し,同市h区に事務所を有していることから,両区においてそれぞれ市県民税均等割を賦課され,国民健康保険料の所得割の算定基礎とされている。 に違反する。 (1) 原告は,神戸市a区に住所を有し,同市h区に事務所を有していることから,両区においてそれぞれ市県民税均等割を賦課され,国民健康保険料の所得割の算定基礎とされている。 もし,原告の事務所等が神戸市a区内又は神戸市に隣接する芦屋市若しくは明石市にある場合には,事務所等の数がいくら多数であっても,事務所等所在地で市県民税均等割は賦課されるが,それは国民健康保険料の算定基礎とはならない。 神戸市のこのような取扱いは,差別的であるといわざるを得ない。 (2) しかも,上記(1)の差別的取扱いに合理的な理由はない。 事務所等を有する場合に,地方税法24条1項2号によって課税される道府県民税均等割額,同法294条1項2号によって課税される市町村民税均等割額は,住民税としての課税である。この課税趣旨は,事務所等を有することによって受ける行政サービスに対する応益課税である。 このように,担税力の有無に関係のない応益課税の市県民税均等割を,応能割である国民健康保険料所得割の算定基礎とすることは不適切であり,国民健康保険料の所得割の制度趣旨から逸脱するものである。 (被告の反論)以下のとおり,神戸市が事務所等に課税される市県民税均等割額を所得割額に含めていることは,憲法14条に違反しない。 (1) 神戸市の国民健康保険料の所得割額は,都道府県民税額と市町村民税額の合算額方式によっている(本件条例14条)から,事務所等を有する者に課税される市県民税の均等割額(年額4000円)も含まれた税額に対する割合をもって,国民健康保険料の所得割額が算出される。 そして,生活の本拠の外に事務所等を有する者はそれを有しないものより支払能力を有するから,当該均等割額を含む市県民税の合算額を基準として国民 をもって,国民健康保険料の所得割額が算出される。 そして,生活の本拠の外に事務所等を有する者はそれを有しないものより支払能力を有するから,当該均等割額を含む市県民税の合算額を基準として国民健康保険料の所得割額を算定することには合理性がある。 (2) 原告は,市県民税の事務所等に課税される均等割額を国民健康保険料の基準とすることは,物税的性格を持つものであって,所得の有無に関わらず課税されるものであるから,それを国民健康保険料の所得割の基準とすることは,所得割の制度趣旨から逸脱したものであると主張する。 しかし,法施行令には,資産の所有にしたがって保険料を算定できる旨定められているばかりか,資産の保有は支払能力を判定する一基準であり,市県民税の事務所等に課税される均等割額を国民健康保険料算定の基礎としても,所得割の制度趣旨から逸脱するものではない。 5 争点(5)(国民健康保険料の地域格差の違憲性)について(原告の主張)以下のとおり,被保険者が負担する国民健康保険料に地域格差があるから,本件条例は憲法14条,25条に違反する。 (1) 平成10年度において,神戸市の所得割料率は市県民税の708%にも及んでいるところ,名古屋市の場合は267%にすぎない。全国同一の医療給付が受けられるにもかかわらず,このように保険料負担に著しい格差があるから,不平等で憲法14条に違反する。 (2) 兵庫県下の各自治体が採用している所得割の保険料額を算定する方法は,次のアないしウのとおりであり,兵庫県下においては旧但書方式が主流である。神戸市等が採用する合算方式は,低所得者でありながら最高額の保険料額を負担しなければならなくなる点で不適切な方式であり,このことが他の自治体が合算方式を採用しない一因となっている。 ア ある。神戸市等が採用する合算方式は,低所得者でありながら最高額の保険料額を負担しなければならなくなる点で不適切な方式であり,このことが他の自治体が合算方式を採用しない一因となっている。 ア市町村民税所得割額方式を採用している自治体は,伊丹市,川西市,宝塚市の3自治体である。 イ合算方式を採用している自治体は,神戸市,西宮市,尼崎市の3自治体である。 ウ旧但書方式を採用している自治体は,姫路市ほか14市とその他の70の自治体である。 (3) 兵庫県下の各自治体における,平成10年度の国民健康保険料賦課限度額に達する総所得金額(60歳以上65歳未満の夫婦世帯を前提)を算定すると,以下のようになり,保険料の負担に著しい格差がある。 ア合算方式採用の市では,尼崎市が総所得金額237万円,神戸市が総所得金額368万円,西宮市が総所得金額278万円で,それぞれ保険料最高額に達している。 イ旧但書方式を採用している姫路市その他の自治体について,保険料最高額になる所得者層は,最低額の姫路市で570万円の中堅所得者層であり,最高額の波賀町では1481万円もの高所得者層である。これは,これらの自治体が所得割の対象を所得金額とし,その料率が波賀町の3.2から赤穂市の8.1までとしている結果である。 (4) 被保険者が受ける医療給付は,生計を営む地域が異なってもほとんど差異のないものであり,少なくとも同一県内の自治体においては,所得に応じた同程度の保険料額の負担であるべきである。 (被告の反論)以下のとおり,被保険者が負担する国民健康保険料に地域格差があることは,憲法14条,25条に違反しない。 (1) 国民健康保険料の格差は,その地域における総医療費の額の相違と,その賦課方式の差異が原因で発生する 保険者が負担する国民健康保険料に地域格差があることは,憲法14条,25条に違反しない。 (1) 国民健康保険料の格差は,その地域における総医療費の額の相違と,その賦課方式の差異が原因で発生するものである。すなわち,一人当たりの医療費総額が多ければ,国民健康保険料は高くなり,均等割額を多くすれば,低所得者に実質的に重い負担を強いることとなる。 (2) 前記第2の2(4)イのとおり,法施行令は国民健康保険料の所得割を算出するにつき5方式を定めている。そのため,各地方公共団体がどの方式を採用するかによって,被保険者が負担する国民健康保険料に地域格差が生ずるのであり,これは法施行令が当然予定しているところである。 第4 当裁判所の判断 1 国民健康保険制度と憲法違反(1) 法の定めと違憲問題市町村が行う国民健康保険は,法6条各号所定の適用除外事由に該当する者を除き,当該市町村の区域内に住所を有する者を被保険者として強制的に加入させ(法5条),被保険者の属する世帯の世帯主が納付する保険料(法76条),国の負担金(法69条,70条),調整交付金(法72条)及び補助金(法74条),都道府県及び市町村の補助金及び貸付金(法75条),市町村の一般会計からの繰入金(法72条の2第1項)などを財源として,被保険者の疾病,負傷,出産又は死亡に関して必要な保険給付を行うものである(法2条)。 上記のような制度内容からみても明らかなとおり,国民健康保険は,相互扶助と社会連帯の精神に根ざした国民保健の向上を目的とする社会保険制度ということができるが(法1条参照),かかる社会保険制度の内容をどのようなものとするかについては,日本全体や地域社会の現在の経済状況や今後の見通し,国民全体や地域住民の医療費の動向,国民全体や地域住民の現 ことができるが(法1条参照),かかる社会保険制度の内容をどのようなものとするかについては,日本全体や地域社会の現在の経済状況や今後の見通し,国民全体や地域住民の医療費の動向,国民全体や地域住民の現在及び将来の年齢構成,医療費を必要とする者と医療費を負担する者の実態及びその経済力,国家や地方自治体の現在及び将来の財政状況等についての正確な資料を基礎とした,立法府の政策的かつ専門技術的な判断に委ねざるを得ないものであり,その制度内容の決定については,本来,立法府が広範な裁量権を有しているものというべきである。 したがって,その制度内容を定めた法の規定が,その立法目的に照らし著しく不合理であることが明らかでない限り,憲法違反の問題を生じないものというべきであるところ,法についてかかる事情があるとは認められない(原告もこの点を特に主張しているものではない)。 (2) 法81条,法施行令,本件条例と違憲問題法は,市町村が行う国民健康保険について,法第5章に定めるもののほか,賦課額,料率,賦課期日,納期,減額賦課その他保険料の賦課及び徴収等に関する事項については,政令で定める基準に従って条例又は規約で定めるものとし(法81条),当該事項の細目の定めを政令に委任している。そして,同条を受けて,上記基準について法施行令が制定され,さらに,神戸市においても,法施行令の定める基準に従って,上記の各事項について本件条例を制定している。 前示(1)のとおり,もともと立法府は国民健康保険の制度内容の決定について広範な裁量権を有しているものであり,法81条に規定する保険料の賦課及び徴収等に関する事項の決定についても,地域の実情に応じた各地方自治体の政策的かつ専門技術的な判断が不可欠であることを考えると,法81条による委任に基づき のであり,法81条に規定する保険料の賦課及び徴収等に関する事項の決定についても,地域の実情に応じた各地方自治体の政策的かつ専門技術的な判断が不可欠であることを考えると,法81条による委任に基づき法施行令で定める基準や,同基準に基づいて制定された地方公共団体の条例についても,その規定内容が法や施行令の規定に違反していない限り,法が法施行令に授権した範囲内で制定されたものとして,憲法違反の問題を生じないというべきである。 (3) 本件条例が定める合算方式,標準割合ア法施行令29条の5第1項2号は,「賦課総額に対する標準割合(市町村が保険料を賦課する場合に通常よるべき割合で,特別の必要があると認められる場合においてはこれによることを要しないものをいう。)」として,所得割総額50%,被保険者均等割総額35%,世帯別均等割15%と規定している。 そして,神戸市は,上記規定を踏まえて,本件条例15条1項1号ないし3号により,同各比率を所得割総額50%,被保険者均等割総額30%,世帯別均等割20%と定めており,この点で法施行令の基準に従っているものということができる。 イ次に,法施行令29条の5第1項は,前記第2の2(4)イ記載のとおり,国民健康保険料の所得割額について,①基礎控除後の総所得金額等(旧但書方式),②各種控除後の総所得金額等(本文所得方式),③市町村民税所得割額(市町村民税所得割額方式),④市町村民税額(市町村民税額方式),⑤市県民税額(合算方式)のいずれかを基にして算定すべきことを定めている。 この①ないし⑤の算定方式は,いずれも前年中の所得を対象として算定した総所得金額等を基にして保険料の所得割額を算定するもので,被保険者の負担能力に応じて保険料が支払われるべきである(応能主義)との考え方に基 いし⑤の算定方式は,いずれも前年中の所得を対象として算定した総所得金額等を基にして保険料の所得割額を算定するもので,被保険者の負担能力に応じて保険料が支払われるべきである(応能主義)との考え方に基づくものである。このような考え方自体には合理性が認められるものであるし,個々の被保険者の所得割額の算定を簡便に行うことによって保険料の賦課及び徴収を効率的に行うという観点からも,合理的なものということができる。 そして,神戸市が本件条例14条において採用する合算方式は,法施行令に規定する方式の一つであって,法施行令の基準に従っているものである。 2 争点(1)(所得割料率が高率であることの違憲性)について(1) 神戸市の平成10年度の国民健康保険料ア神戸市の平成10年度の国民健康保険料算定は,所得割,被保険者均等割,世帯別平等割をその基礎として,それぞれの比率を50%,30%,20%としている(本件条例15条1項1号ないし3号)。 平成10年度の所得割額は,平成10年度の市県民税額に所得割の保険料率を乗じて算定する(本件条例14条1項)。所得割の保険料率は,保険料の賦課総額の100分の50に相当する額を保険料算定の基礎となる市県民税の額の見込総額で除して得た数とする(本件条例15条1項1号)。その料率は708%である(当事者間に争いがない)。 イ前記第2の2(7)記載のとおり,神戸市は,平成10年度に地方税の特別減税があったことから,同年度の国民健康保険料の所得割料率が7.08と高率となったため,本件減額措置を採ることになった。 すなわち,特別減税の実施により被保険者の税総額が大きく落ち込んでおり,本件条例(法定)に基づく保険料算定方式では,平成10年度の所得割料率が従来に比べて大幅に高い 置を採ることになった。 すなわち,特別減税の実施により被保険者の税総額が大きく落ち込んでおり,本件条例(法定)に基づく保険料算定方式では,平成10年度の所得割料率が従来に比べて大幅に高いもの(7.08)になっている。この所得割料率で賦課すると,定額の特別減税であるため,世帯構成や税額の相違から減税率の差異が世帯毎に生ずることから,一部の被保険者において保険料負担が大幅に増大する(乙9の70頁)。 そのため,神戸市では,平成10年度の国民健康保険料について,保険料負担が増加する約4万世帯に対し,負担緩和策として下記のとおりの本件減額措置を実施した(当事者間に争いがない)。 記国民健康保険料の所得割額は,「市県民税額×7.08」と「特別減税がないと仮定した市県民税額×3.74」とを比較して,低い方を所得割額とする。 ウ以上の事実に照らせば,神戸市の平成10年度の国民健康保険料は,一部の被保険者の保険料負担が大幅に増加することを避け,負担の公平を図った妥当なものであるといえる。 (2) 100万円未満の課税所得世帯に関する主張の検討原告は,神戸市が実施した特別減税に伴う本件減額措置につき,100万円未満の課税所得の世帯には恩恵がない旨主張する。 確かに,課税所得が100万円未満の世帯には上記減額措置の適用はない。しかし,100万円未満の課税所得の世帯は,特別減税によって市県民税額が減額となっているため,特別減税の恩恵によって国民健康保険料の所得割額が減額されている。すなわち,そのような世帯においては,特別減税相当分につき国民健康保険料の所得割額は賦課されないのである。同世帯について,特別減税前と特別減税後の国民健康保険料を比較すると,特別減税後の国 れている。すなわち,そのような世帯においては,特別減税相当分につき国民健康保険料の所得割額は賦課されないのである。同世帯について,特別減税前と特別減税後の国民健康保険料を比較すると,特別減税後の国民健康保険料の方が低くなり,その範囲で特別減税による恩恵を受けている(乙9の70頁,弁論の全趣旨)。 以上によると,特別減税後の所得割料率は,課税所得が100万円未満の世帯に重すぎる負担を課したことにはなっておらず,原告の上記主張はその前提自体が誤っており採用できない。 (3) 収入増加に占める可処分所得割合の著しい低下の主張の検討原告は,60歳以上65歳未満の夫婦二人の世帯を前提条件として,課税所得100万円以下,同200万円超214万円以下の場合,所得金額が1万円増加した場合の可処分所得割合は49.6%,42.6%にすぎないなど,本件条例の下では収入増加に占める可処分所得の割合が著しく低くなると主張する。 しかし,100万円以下の課税所得であっても,課税所得45万円までは市県民税の所得割は課税されず,市県民税所得割に応じた国民健康保険料の賦課はされない。課税所得45万円の場合,賦課されるのは,市県民税の均等割4000円と国民健康保険の均等割・平等割・所得割の合計10万8500円だけであり,所得金額が1万円増加した場合の可処分所得割合は75%となる。100万円の課税所得の場合,国民健康保険料は28万1960円になり,市県民税2万8500円及び所得税2万8000円を加えても32万8180円にしかならないので,所得金額が1万円増加した場合の可処分所得割合は66.16%となる(乙9ないし11,弁論の全趣旨)。 しかし,翻って考えると、原告が可処分所得割合を所得金額が1万円増加した場合の可処分所得割合で主張し 1万円増加した場合の可処分所得割合は66.16%となる(乙9ないし11,弁論の全趣旨)。 しかし,翻って考えると、原告が可処分所得割合を所得金額が1万円増加した場合の可処分所得割合で主張していること自体に,論理の飛躍がある。当然のことながら,可処分所得割合は,各所得控除前の総収入金額を前提にして考えるべきだからである。60歳以上65歳未満の夫婦二人の場合,課税所得100万円の給与収入は388万2350円であり,可処分所得割合は約91%になる(乙9ないし12,弁論の全趣旨)。 以上によると,原告の前記主張はその前提自体に誤り,論理の飛躍があり,採用できない。 (4) 最高額の保険料になる所得金額の主張の検討原告は,神戸市の平成10年度の国民健康保険料は,夫婦二人の世帯で課税所得がわずか213万7000円にすぎないのに,一挙に最高額である52万円に達すると主張する。 しかし,夫婦二人(60歳から64歳)で最高額の国民健康保険料52万円が賦課されるのは,地方税課税所得で220万3000円である。その場合,基礎控除が33万円,配偶者控除が33万円,配偶者特別控除が33万円,給与所得控除が167万9300円,社会保険料控除が82万4200円(国民年金30万4200円と国民健康保険52万円の合計)であるので,控除前の給与収入は569万6500円である(弁論の全趣旨)。 このように,神戸市の平成10年度の国民健康保険制度では,60歳から64歳の夫婦二人で夫の給与収入が569万6500円である場合に,国民健康保険料が最高額の52万円となる。確かに,この収入では,国民健康保険料の負担が重いといえるが,それが生存権(憲法25条)が脅かされる位の加重負担とまではいえない。 (5) ま る場合に,国民健康保険料が最高額の52万円となる。確かに,この収入では,国民健康保険料の負担が重いといえるが,それが生存権(憲法25条)が脅かされる位の加重負担とまではいえない。 (5) まとめア原告は,神戸市の平成10年度の国民健康保険料算定の基礎となる所得割料率(所得割算定のための率)は高率に過ぎ,その結果,同保険料の負担が重すぎ,憲法25条に違反する旨主張する。 イしかし,前記1(国民健康保険制度と憲法違反),2(1)(神戸市の平成10年度の国民健康保険料),2(2)(100万円未満の課税所得世帯に関する主張の検討),2(3)(収入増加に占める可処分所得割合の著しい低下の主張の検討),2(4)(最高額の保険料になる所得金額の主張の検討)に照らせば,原告の上記アの主張は理由がないことが明らかである。 3 争点(2)(政管健保と著しい負担格差があることの違憲性)について(1) 原告は,政府管掌健康保険における被用者負担分と比較して,国民健康保険は著しく保険料の負担が重いから,本件条例は憲法14条(法の下における平等)に違反すると主張するので,以下検討する。 (2) 憲法14条1項は平等原則を定めたものであるが,国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく,合理的理由なくして差別することを禁止する趣旨である。それゆえ,国民各自の事実上の差異に基づく区別的な取扱いも,その区別が合理性を有する限り,憲法14条1項に違反するものではない(最高裁昭和25年10月11日大法廷判決・刑集4巻10号2037頁,最高裁昭和39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁等参照)。 (3) ところで,原告は,政府管掌健康保険の使用者負担分を除外して,健康保険料と国民健康保険料とを比較すべきであるとし,これを立論の 9年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁等参照)。 (3) ところで,原告は,政府管掌健康保険の使用者負担分を除外して,健康保険料と国民健康保険料とを比較すべきであるとし,これを立論の前提として,両制度間における保険料の負担額が不平等である旨主張する。 国民健康保険も政府管掌健康保険も保険であり,保険料額そのものにそれほど差異はないものの,政府管掌健康保険においては,労働政策上,法律(健康保険法72条,75条)をもって,被保険者が負担する保険料のうち半額を使用者に負担させている。他方,被保険者以外に負担する者がいない国民健康保険においては,保険の本来の原点に立ち返って,保険料全額を被保険者自身が負担せざるを得ない。 国民健康保険の保険料と政府管掌健康保険における被用者負担の保険料との間に上記のような差があることが,不合理なものであるとはいえない。そうすると,政府管掌健康保険の使用者負担分を除外して,政府管掌健康保険における被用者負担の保険料と国民健康保険の保険料とを比較すべきである旨の原告の主張は,その前提に誤りがあり,採用することができない。 (4) そして,政府管掌健康保険について,使用者負担の額を加えた保険料額で比較すると,保険料の最高額は,国民健康保険においては52万円(平成10年度の神戸市の場合)であり,政府管掌健康保険においては48万2000円(平成10年度)であって(弁論の全趣旨),両者の間に著しい格差があるとはいえない。 また,例えば,夫婦二人(60歳以上65歳未満)で最高額の52万円の国民健康保険料が賦課される場合の所得は,地方税課税所得で220万3000円であり,その場合の給与収入は569万6500円である(前記2(4))。その場合の国民健康保険料の所得に対する割合は9.12%で 健康保険料が賦課される場合の所得は,地方税課税所得で220万3000円であり,その場合の給与収入は569万6500円である(前記2(4))。その場合の国民健康保険料の所得に対する割合は9.12%であり,同額の給与収入の場合における政府管掌健康保険においては,使用者負担分を含めると,その保険料額の収入額に対する割合は8.45%である(健康保険法71条の4,弁論の全趣旨)。この点からも,政府管掌健康保険と国民健康保険との間において,保険料の負担割合に著しい格差があるということはできない。 (5) 以上の(2)ないし(4)の諸事情に,前記1(国民健康保険制度と憲法違反)を併せ考えると,政府管掌健康保険と比較して,神戸市の国民健康保険料の負担が著しく重く,本件条例が憲法14条に違反するなどとは到底いえず,原告の前記(1)の主張も理由がない。 4 争点(3)(市県民税均等割額を所得割額に含めることの違憲性)について(1) 神戸市の平成10年度の国民健康保険料の所得割神戸市は,国民健康保険料の所得割額につき,いわゆる合算方式を採っており(本件条例14条,15条1項1号),県民税の均等割額(年額1000円)と市民税の均等割額(年額3000円)が含まれた市県民税に対する一定割合(平成10年度は708%又は374%)をもって,国民健康保険料の所得割額を算出するものである(本件条例附則10,11)(当事者間に争いがない)。 (2) 低所得者層に対する配慮そして,神戸市の平成10年度の国民健康保険料については,次のとおり低所得者層に過酷な負担が及ばないように一定の配慮がされている。 ア低所得者には,市県民税均等割額自体が課税されない(神戸市市税条例19条の2)。具体的には,均等割額は夫婦二人の場合88万円まで( 得者層に過酷な負担が及ばないように一定の配慮がされている。 ア低所得者には,市県民税均等割額自体が課税されない(神戸市市税条例19条の2)。具体的には,均等割額は夫婦二人の場合88万円まで(障害者,寡婦,老齢者等は125万円まで)課税されない。 イ神戸市の国民健康保険料については,次のような徴収猶予又は減免制度が存在し,それに加えてさらに各種免除措置が認められている。 (ア) 国民健康保険料の均等割額自体に減額の制度がある(本件条例18条の2第1項)。 (イ) 国民健康保険料の徴収猶予,減免の制度がある(本件条例22条,23条)。具体的には,国民健康保険料の被保険者均等割額及び世帯別平等割額については,低所得者層には70%から20%の減額措置が認められている(弁論の全趣旨)。 ウ最低の国民健康保険料は,夫婦二人で年額2万4040円(被保険者均等割額4万9900円と世帯別平等割額3万0280円の合計額の30%)である。さらに保険料の徴収猶予や減免制度があり,その上さらに各種減免措置が認められている。したがって,神戸市の国民健康保険料は,低所得者層に過酷な負担を与えるものとはいえない。 (3) 旧但書方式との比較原告は,兵庫県下において旧但書方式が主流で,合算方式は神戸市,尼崎市,西宮市のみであるが,これは同方式が不合理な方式であることの端的な現れである旨主張する。 しかし,旧但書方式では,総所得金額から基礎控除額のみを控除した金額(基礎控除後の総所得金額等)を基準として,保険料の所得割額を賦課するため,住民税が賦課されない低所得者にも所得割額が賦課される欠点がある。これに対し,合算方式では,地方税には累進制がとられている関係で高所得者にはより高率の保険料が賦課されるため,低所得者層 課するため,住民税が賦課されない低所得者にも所得割額が賦課される欠点がある。これに対し,合算方式では,地方税には累進制がとられている関係で高所得者にはより高率の保険料が賦課されるため,低所得者層に配慮した結果となる。このように,旧但書方式では,合算方式よりも,保険料の最高限度額が賦課される層がより高所得者層となり,その分低所得者層に負担を強いることになる。 原告の前記主張は,低所得者にも負担加重にならないように一定の配慮をしている合算方式の利点に気付かず,低所得者層に負担を強いる旧但書方式を採用しない神戸市当局の対応を非難するものであり,その立論自体に明白な誤りがある。 (4) 保険制度本来の理念本来,保険制度というものは,被保険者が平等に利益を得ている以上,その保険料も平等に負担するのが理念であり,低所得者層も国民健康保険制度によって平等の利益を得ているので,税負担とは異なり,ある程度の保険料負担もやむを得ないといえる。 (5) まとめア原告は,神戸市の平成10年度の国民健康保険料の所得割は合算方式によっており,市県民税の均等割額を所得割額に含めるため,低所得者層に過酷な負担を強いるもので,憲法25条,14条に違反する旨主張する。 イしかし,前記1(国民健康保険制度と憲法違反),4(1)(神戸市の平成10年度の国民健康保険料の所得割),4(2)(低所得者層に対する配慮),4(3)(旧但書方式との比較),4(4)(保険制度本来の理念)に照らせば,原告の上記アの主張も理由がないことが明らかである。 5 争点(4)(事務所等に課税される均等割額を所得割額に含めることの違憲性)について(1) 原告は,原告の平成10年度の国民健康保険料の所得割額を算出するに当たっては,原告が住所地で課 。 5 争点(4)(事務所等に課税される均等割額を所得割額に含めることの違憲性)について(1) 原告は,原告の平成10年度の国民健康保険料の所得割額を算出するに当たっては,原告が住所地で課税される市県民税均等割額の外,神戸市h区に有している事務所所在地で課税される市県民税均等割額も保険料の所得割額算定の基礎に含められており,憲法14条に違反する旨主張するので,以下検討する。 (2) 神戸市は,国民健康保険料の所得割額につき合算方式を採用しているから,事務所等を所有する者に課税される市県民税の均等割額(地方税法24条1項2号,同法38条,同法294条1項2号,神戸市市税条例19条1項2号,同条例21条1項。年額4000円)も含まれた税額に対する割合でもって,国民健康保険料所得割額を算出することになる。 例えば,原告のように神戸市a区に住所を有し,同市h区に事務所を有する場合,両区においてそれぞれ市県民税均等割を賦課され(神戸市市税条例19条4項,同1項2(5)),国民健康保険料の算定基礎となる。ところが,仮に,原告の事務所が神戸市a区内又は神戸市に隣接する芦屋市若しくは明石市にある場合には,事務所の数がいくら多数であっても,事務所所在地で市県民税均等割は賦課されるが,それは国民健康保険料の算定基礎となることはない。 (3) そこで,国民健康保険料算定に当たって,上記例のような場合における区別が憲法14条1項に違反するか問題となるが,前示3(2)のとおり,国民各自の事実上の差異に基づく区別的取扱いも,その区別が合理性を有する限り,憲法14条1項に違反しない。 そして,所得割等によって算定される国民健康保険料は,各自治体が当該自治体に居住する住民に課すものであることからすると,たとえ当該自治体(例えば神戸市)内に ,憲法14条1項に違反しない。 そして,所得割等によって算定される国民健康保険料は,各自治体が当該自治体に居住する住民に課すものであることからすると,たとえ当該自治体(例えば神戸市)内に居住する住民が,隣接する他の自治体(例えば明石市や芦屋市)に事務所等があっても,それを所得割算定の基礎とすることはできず,その算定にあたってはその自治体内にある事務所のみを考慮することには,一応の合理性があるといえる。 (4) 原告は,事務所等に課税される市県民税の均等割額を国民健康保険料の基準とすることは,物税的性格を持つものであって,所得の有無に関わらず課税されるものであるから,それを国民健康保険料の所得割の基準とすることは,所得割の趣旨から著しく逸脱したものであると主張する。 しかし,法施行令には,資産の所有に従って保険料を算定できる旨定められているし,また,資産を保有するということは支払能力を判定する一基準となるから,事務所等に課税される市県民税の均等割額を国民健康保険料算定の一基準としても,合理性を欠くものとはいえない。 しかも,この場合における個人の均等割額は,わずか年間4000円(地方税法38条,神戸市市税条例21条1項)とごく低額であり,この均等割額を所得割額算定の一要素としたとしても,国民健康保険料負担の公平・均衡に反するものとはいえない。 (5) 以上の(2)ないし(4)の諸事情に,前記1(国民健康保険制度と憲法違反)を併せ考えると,本件条例による神戸市市税条例19条1項2号・4項を前提とする下記合算方式は,憲法14条1項に違反するなどとはいえず,原告の前記(1)の主張も理由がない。 記神戸市内に住所を有する者が住所地以外の神戸市内の他の区に事務所等を有 法14条1項に違反するなどとはいえず,原告の前記(1)の主張も理由がない。 記神戸市内に住所を有する者が住所地以外の神戸市内の他の区に事務所等を有する場合に,同事務所所在地に課税される市県民税均等割額(年間4000円)を所得割額算定の基礎とすること。 6 争点(5)(国民健康保険料の地域格差の違憲性)について(1) 原告は,被保険者が負担する国民健康保険料に地域格差があるから,本件条例は憲法14条,25条に違反する旨主張するので,以下検討する。 (2) 前示2のとおり,神戸市の国民健康保険料の負担が重すぎるということはないから,仮に,他の地方公共団体と比較して,神戸市の国民健康保険料が重いとしても,それだけでは憲法25条に違反することにはならない。 (3) そこで,原告の憲法14条違反の主張について判断する。 ア前記3(2)のとおり,国民各自の事実上の差異に基づく区別的取扱いは,その区別が合理性を有する限り,憲法14条1項に違反しない。 イ各地方自治体によって国民健康保険料の負担に格差が生じる原因の一つは,各自治体毎に住民一人当たりの年間医療費総額が異なることである。それは,国民健康保険が保険制度であって,国庫からの補助はあるものの,保険者である市町村に保険料の徴収を義務づけ(法76条),独立採算を求めている(法10条)ことから,不可避的に生じるものである(乙15の1・2参照)。 ウまた,前示第2の2(4)イのとおり,法施行令29条の5第1項は,被保険者の所得割を算定する方法として5方式を認めており,そのうちのいずれの方式を採用するかは,各自治体に委ねている。それゆえ,どの方式を採用するかによっても,各自治体の国民健康保険料の負担に格差が生じる。 定する方法として5方式を認めており,そのうちのいずれの方式を採用するかは,各自治体に委ねている。それゆえ,どの方式を採用するかによっても,各自治体の国民健康保険料の負担に格差が生じる。 さらに,法施行令29条の5第1項は,所得割,被保険者均等割,世帯別平等割の比率について,賦課総額に対する標準割合を定めているが,「特別の必要があると認められる場合においては,これによることを要しない」ものとしている。それゆえ,各自治体について,所得割は同じ方式を採用した場合でも,所得割,被保険者均等割,世帯別平等割の比率が異なれば,各自治体毎の国民健康保険料の負担に差が生じることになる。 エ以上のイ,ウの事情及び法81条の規定の仕方からすると,法81条は,国民健康保険料の賦課額,料率等について法施行令で基準を定めたうえ,各地方自治体が,条例又は規約によって,それぞれの地域の実情に応じた方式ないし割合をもって,国民健康保険料の賦課をすることを予定しているものである。 そして,神戸市における本件条例による合算方式は,法81条,法施行令に沿ったものであり,他の地方自治体との国民健康保険料の算定方式とは異なるが,その差異は法81条及びこれを受けた法施行令が当然予定した範囲内のものである。 (4) 以上の(2)(3)の諸事情に,前記1(国民健康保険制度と憲法違反)を併せ考えると,被保険者が負担する国民健康保険料に地域格差があるが,本件条例が憲法14条,25条に違反するなどとはいえず,原告の前記(1)の主張も理由がない。 第5 結論以上の次第で,本件条例の所得割額に係る規定が憲法14条,25条に違反するとは到底認められず,本件処分(保険料8万0180円を超える部分)は適法であり,原告の本訴請求は理由がないから棄却するこ 以上の次第で,本件条例の所得割額に係る規定が憲法14条,25条に違反するとは到底認められず,本件処分(保険料8万0180円を超える部分)は適法であり,原告の本訴請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二裁判官中村哲裁判官今井輝幸・

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