- 1 - 主文 1 原告の第2事件に係る訴えのうち、令和5年3月2日から同年12月4日まで甲拘置所の監視カメラ付き居室に収容されたことを理由として損害賠償を求める部分を却下する。 2 被告は、原告に対し、40万円及びこれに対する令和5年10月3日 から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、全事件を通じ、これを7分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 第1事件被告は、原告に対し、100万円及びこれに対する令和5年10月3日から支払済みまで年10%の割合による金員を支払え。 2 第2事件 被告は、原告に対し、100万円を支払え。 3 第3事件被告は、原告に対し、30万円を支払え。 4 第4事件被告は、原告に対し、60万円及びこれに対する令和5年9月27日から支 払済みまで年10%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、令和5年3月2日から甲拘置所に未決拘禁者として勾留されていた原告が、その勾留中に甲拘置所長(以下「所長」という。)や甲拘置所職員(以下「職員」といい、「処遇首席」など役職名で表記することもある。)から下 記①ないし④の違法行為を受けたと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、 - 2 - 被告に対し、上記第1の各項記載の請求をする事案である(なお、第1事件及び第4事件の請求に係る遅延損害金の起算点は、各事件の訴状送達の日の翌日である。)。 ① 第1事件(慰謝料100万円及びその遅延損害金)所長が、令和5年3 案である(なお、第1事件及び第4事件の請求に係る遅延損害金の起算点は、各事件の訴状送達の日の翌日である。)。 ① 第1事件(慰謝料100万円及びその遅延損害金)所長が、令和5年3月2日から同年12月4日までの間、原告を甲拘置所 の監視カメラ付き居室(以下「本件カメラ室」という。)に収容したこと(以下「本件カメラ室収容」という。また、刑事施設内の監視カメラ付き居室のことを「カメラ室」といい、カメラ室に収容されることを「カメラ室収容」ということがある。)。 ② 第2事件(慰謝料100万円) 所長による本件カメラ室収容のほか、職員が、本件カメラ室において頭部に座布団を被っていた原告に対し、座布団を取り上げる旨述べて原告を脅迫したこと③ 第3事件(慰謝料30万円)職員が、反則行為を理由に原告を保護室に収容した(以下「本件保護室収 容」という。)際、無抵抗であった原告に対し、必要もないのに、原告の着用していた衣服(革製ジャンパー)を強引に脱がせ、これにより、同衣服を破損させたほか、原告に不要の肉体的苦痛を故意に与えたこと④ 第4事件(慰謝料60万円及びその遅延損害金)職員が、本件カメラ室収容により精神的苦痛を受けていた原告に対し、更 なる精神的苦痛を与えるような言動や指導を故意にしたこと(原告が主張する違法行為の詳細は、別紙1「当事者の主張の要旨」の4(1)のとおり。)。 1 関係法令の定め(1) 刑事収容施設に係る居室の指定及び未決拘禁者の処遇の態様刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」 という。)4条1項は、被収容者は、①性別(同項1号)、②受刑者(未決 - 3 - 拘禁者としての地位を 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」 という。)4条1項は、被収容者は、①性別(同項1号)、②受刑者(未決 - 3 - 拘禁者としての地位を有する者を除く。)、未決拘禁者(受刑者又は死刑確定者としての地位を有する者を除く。)、未決拘禁者としての地位を有する受刑者、死刑確定者及び各種被収容者の別(同項2号)並びに③懲役受刑者、禁錮受刑者及び拘留受刑者の別(同項3号)に従い、それぞれ互いに分離するものとする旨規定し、同条3項は、同条1項の規定に関わらず、適当と認 めるときは、居室(被収容者が主として休息及び就寝のために使用する場所として刑事施設の長が指定する室をいう。以下同じ。)外に限り、上記③による分離をしないことができる旨規定する。 そして、刑事収容施設法35条1項は、未決拘禁者(刑事施設に収容されているものに限る。)の処遇(運動、入浴又は面会の場合その他法務省令で 定める場合における処遇を除く。)は、居室外において行うことが適当と認める場合を除き、昼夜、居室において行う旨規定し、同条2項は、未決拘禁者(死刑確定者としての地位を有するものを除く。)の居室は、罪証の隠滅の防止上支障を生ずるおそれがある場合には、単独室とし、それ以外の場合にあっても、処遇上共同室に収容することが適当と認める場合を除き、でき る限り、単独室とする旨規定する。 (2) 刑事施設の規律及び秩序刑事収容施設法73条1項は、刑事施設の規律及び秩序は、適正に維持されなければならない旨規定し、同条2項は、同条1項の目的を達成するため執る措置は、被収容者の収容を確保し、並びにその処遇のための適切な環境 及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはなら 旨規定し、同条2項は、同条1項の目的を達成するため執る措置は、被収容者の収容を確保し、並びにその処遇のための適切な環境 及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならない旨規定する。 (3) 被収容者の遵守事項刑事収容施設法74条1項は、刑事施設の長は、被収容者が遵守すべき事項(以下「遵守事項」という。)を定める旨規定し、同条2項は、遵守事項 は、被収容者としての地位に応じ、同項各号に掲げる事項を具体的に定める - 4 - ものとする旨規定するところ、同項8号は、「金品について、不正な使用、所持、授受その他の行為をしてはならないこと」を掲げる。 (4) 身体の検査等刑事収容施設法75条1項は、刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、被収容者について、その身体、着衣、所持品 及び居室を検査し、並びにその所持品を取り上げて一時保管することができる旨規定する。 (5) 保護室の収容要件等刑事収容施設法79条1項は、刑務官は、被収容者が同項各号のいずれかに該当する場合には、刑事施設の長の命令により、その者を保護室に収容す ることができる旨規定するところ、同項1号は、「自身を傷つけるおそれがあるとき」とし、同項2号は、「次のイからハまでのいずれかに該当する場合において、刑事施設の規律及び秩序を維持するため特に必要があるとき」とし、同号イは「刑務官の制止に従わず、大声又は騒音を発するとき」、同号ロは「他人に危害を加えるおそれがあるとき」、同号ハは「刑事施設の設 備、器具その他の物を損壊し、又は汚損するおそれがあるとき」としている。 そして、刑事収容施設法79条6項は、保護室の構造及び設備の基準は、法務省令で定める旨規定 、同号ハは「刑事施設の設 備、器具その他の物を損壊し、又は汚損するおそれがあるとき」としている。 そして、刑事収容施設法79条6項は、保護室の構造及び設備の基準は、法務省令で定める旨規定するところ、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(以下「処遇規則」という。)39条柱書きは、保護室の構造及び設備の基準は、同条各号のとおりとする旨規定し、同条4号は、「室内の視察に 支障がない構造及び設備を有すること」としている。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 原告の収容経緯等(乙11)ア原告は、令和4年4月13日、原告に対する●●●●、●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●、●●●● - 5 - ●●●●、●●●●●、●●各被告事件(以下、併せて「本件刑事事件」という。)の未決拘禁者(被告人)として、乙拘置支所に入所した。 イ原告は、令和5年2月3日、●●地方裁判所において、本件刑事事件につき懲役22年の有罪判決(以下「本件有罪判決」という。)の言渡しを受けた。原告は、同月10日、本件有罪判決を不服として控訴し、同月1 1日、第一審の弁護人も同様に控訴した。 ウ原告は、令和5年3月2日、上記イの控訴に伴い、乙拘置支所から甲拘置所に移送され、同所に入所した(以下「本件入所」という。)。 エ ●●高等裁判所は、令和5年10月13日、前記イの控訴を棄却する旨の判決を言い渡したところ、控訴審の弁護人は、同月16日、上記控訴審 判決を不服として上告した。 オ本件有罪判決は、遅くとも令和6年6月3日までに確定し、原告は、同日までに、丙刑務所に収容され、その後丁刑務 、控訴審の弁護人は、同月16日、上記控訴審 判決を不服として上告した。 オ本件有罪判決は、遅くとも令和6年6月3日までに確定し、原告は、同日までに、丙刑務所に収容され、その後丁刑務所に移送された。 (2) 本件カメラ室収容(乙28、46、60)所長は、令和5年3月2日(本件入所の日)から同年12月4日までの間、 後記(3)の本件保護室収容の期間を除いて、原告を本件カメラ室(単独居室)に収容した(本件カメラ室収容)。 (3) 本件保護室収容(乙45、71)原告は、令和5年8月23日午後1時43分から、甲拘置所の保護室に収容され、その後、同月24日にその収容が中止されるまでの間、同室に収容 されていた(本件保護室収容)。 (4) 本件訴えの提起(顕著な事実)ア原告は、令和5年6月28日、大阪簡易裁判所に対し、第1事件に係る訴えを提起した。第1事件は、その後当庁に移送され、その訴状は、同年10月2日、被告に送達された。 イ原告は、当庁に対し、令和5年8月14日、第2事件に係る訴えを提起 - 6 - し、同年11月13日、第3事件に係る訴えを提起した。 ウ原告は、令和5年8月17日、大阪簡易裁判所に対し、第4事件に係る訴えを提起し、その訴状は、同年9月26日に被告に送達されたが、第4事件は、その後、被告からの移送申立てにより、当庁に移送された。 エ当裁判所は、令和6年1月18日までに、第1事件、第2事件及び第4 事件に係る口頭弁論を併合する旨の決定をし、同年3月15日、これらと第3事件に係る口頭弁論とを併合する旨の決定をした。 オ原告は、本件カメラ室収容につき、第1事件の当初は、そのうち令和5年3月2日から同年7月 併合する旨の決定をし、同年3月15日、これらと第3事件に係る口頭弁論とを併合する旨の決定をした。 オ原告は、本件カメラ室収容につき、第1事件の当初は、そのうち令和5年3月2日から同年7月10日までの部分につき、第2事件の当初は、そのうち同年3月2日から同年8月9日までの部分につき、それぞれ国家賠 償法上違法であるとして、被告に対し損害賠償を請求していたが、上記両事件につき令和6年1月9日付けで提出した準備書面により、上記両事件について、いずれも、原告が損害賠償を求める本件カメラ室収容の収容期間を本件カメラ室収容の全期間(令和5年3月2日から同年12月4日まで)に変更する旨の訴えの変更(請求原因の拡張)をした。 3 当事者の主張の要旨別紙1「当事者の主張の要旨」記載のとおり。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実のほか、各項掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実 が認められる。 (1) 甲拘置所におけるカメラ室収容の基準等ア甲拘置所においては、法務省の発出する通達(平成26年2月10日矯成第299号矯正局長通知「「自殺危険性判定表」について」〔乙1〕及び同日矯成第307号矯正局成人矯正課長通知「自殺危険性判定表の運用 について」〔乙2〕)に基づき、首席矯正処遇官が発出した指示(令和3 - 7 - 年12月15日首席矯正処遇官(処遇担当)指示第133号「自殺危険性判定表の取扱いについて」〔乙6〕)により、新たに入所する被収容者全員について、自殺の危険性を判定することとされていた。 具体的には、①新入調所担当職員は、新たに入所した被収容者につき、「自殺危険性判定表」(以下「判定表」という。)を作成し、これを新入 調所担当主任矯正処遇官に提 判定することとされていた。 具体的には、①新入調所担当職員は、新たに入所した被収容者につき、「自殺危険性判定表」(以下「判定表」という。)を作成し、これを新入 調所担当主任矯正処遇官に提出し、②同主任矯正処遇官は、入所時における当該被収容者の自殺の危険性を第一次的に判断し、判定表の「対応」欄の該当するレベルにチェックをした上で、これを当該被収容者を所管する主任矯正処遇官に回付し、③同主任矯正処遇官は、回付を受けた判定表の記載内容を確認・決裁した上、その内容を当該被収容者を所管する統括矯 正処遇官に報告し、④同統括矯正処遇官は、入所時における当該被収容者の自殺の危険性を第二次的(最終的)に判断し、その結果、当該被収容者につき、後記イの要注意者、要視察者等の指定の判断をし、判定表の決裁欄に押印することとされていた。(以上につき、乙1、2、6)イ甲拘置所においては、被収容者のうち、保安上及び処遇上特に注意を要 する者(以下「要注意者」という。)及び要注意者に指定するまでに至らないものの、処遇上注意を要する者(以下「要視察者」という。)につき、その指定、処遇要領等を定めるものとして、所長により、「甲拘置所要注意者等処遇規程」が定められていた(平成20年3月12日甲拘置所長達示第7号。乙7。以下「処遇規程」という。)。 処遇規程において、要注意者及び要視察者(以下、併せて「要注意者等」という。)の区分には、「自殺要注意者(要視察者)」が含まれ(同第2条(2))、要注意者等の指定及び解除は、指定基準表(同別紙1「要注意者等指定基準表」)に基づき、当該被収容者の処遇を担当する統括矯正処遇官がこれをすることとされていた(同第3条1項及び4項)。そして、上 記指定基準表は、「自殺要注意者」に係る指定の基準 注意者等指定基準表」)に基づき、当該被収容者の処遇を担当する統括矯正処遇官がこれをすることとされていた(同第3条1項及び4項)。そして、上 記指定基準表は、「自殺要注意者」に係る指定の基準につき、①過去に自 - 8 - 殺未遂の経験のある者(同1)、②うつ病等精神疾患により自殺のおそれのある者(同5)、③死刑又は長期刑の求刑、判決を受けた者(同7)、④自殺をほのめかす言動のある者(同8)等のいずれかに該当し、かつ自殺のおそれがある者とする旨定めていた。そして、処遇規程の定める要注意者等の処遇基準(同別紙3「要注意者等処遇基準表」)において、区分 「自殺」に係る「居室」に関する処遇基準は、「単独室(第二種単独室又はカメラ設置居室)」とする旨定められていた。(以上につき、乙7)ウ首席矯正処遇官が被収容者等の転室手続について発出した指示(令和4年5月18日首席矯正処遇官(処遇担当)指示第53号「被収容者等の転室手続について」。乙9)には、カメラ室に収容中の被収容者のうち、要 注意者、要視察者等に指定中の者に係る転室手続については、区長又は処遇主任が事前に当該被収容者と職権面接を実施し、指定要件が消滅したと認められた場合に限り、居室棟担当職員に指示し、転室伺簿をもって一般居室への転室を行うものとする旨定められていた(乙9)。 (2) カメラ室の構造等 甲拘置所のカメラ室は、居室中央の天井部分に監視カメラが設置され、これにより居室内全体が撮影できるようになっていることを除いては、その構造等(居室の広さ、窓の大きさ、設置備品等)は、他の居室(単独室)との間でおおむね差異はなく、居室内部は、その廊下側から手前4分の3程度が寝食等のための区画、奥側4分の1程度が洗面台や便器が設置された水回り の広さ、窓の大きさ、設置備品等)は、他の居室(単独室)との間でおおむね差異はなく、居室内部は、その廊下側から手前4分の3程度が寝食等のための区画、奥側4分の1程度が洗面台や便器が設置された水回り の区画となっていた。また、カメラ室に設置された監視カメラにより撮影された映像は、監視室に設置されたモニター上に映し出されることとなっているが、同モニターに表示された映像は、基本的には、複数の居室の映像が流動的に切り替わるようになっていた。 なお、甲拘置所の被収容者用居室には、用便状況を監視されることに対す る配慮の観点から、可動式の衝立が備え付けられており、被収容者は、これ - 9 - を自由に使用することができた。(以上につき、乙10、弁論の全趣旨)(3) 乙拘置支所における自殺企図行為及びカメラ室への収容等ア原告は、令和4年4月13日から、未決拘留者として乙拘置支所に収容されていたところ、同年10月18日、法テラスから原告宛てに送付されてきた信書に、原告に返送されるべき書類が封入されていなかったことな どを契機として、大声を発したり、部屋の壁や机を蹴ったり、乙拘置所の職員(以下「支所職員」という。)らに制止された後もさらに支所職員らを殴りつけようとしたりしたため、保護室に収容された(乙13、原告本人1~2頁)。 イ原告は、令和4年12月14日、居室において、支所職員らから、当時 原告が提起していた民事訴訟の期日への出廷を認めない旨告知されたのに対し、「人格権の侵害やぞ」「お前殺したるわ」などと大声を発したほか、同室の扉や窓を蹴ったり叩いたりするなどしたため、保護室に収容された。 その後、原告は、保護室内で、着用していたメリヤス下衣を脱ぎ、それを自己の頸部に巻き付け、その両端 わ」などと大声を発したほか、同室の扉や窓を蹴ったり叩いたりするなどしたため、保護室に収容された。 その後、原告は、保護室内で、着用していたメリヤス下衣を脱ぎ、それを自己の頸部に巻き付け、その両端を両手で左右に引っ張って自己の頸部 を締め付ける行為に及んだ(以下「本件自殺企図①」という。)。原告は、本件自殺企図①に及ぶ状況をモニター監視により現認した支所職員らに制止され、保護室収容を中止され、病院に救急搬送されたが、同病院の医師により、首の骨折等はなく、打ち身程度であり、経過観察で差し支えない旨の診断を受けたため、令和4年12月14日のうちに、乙拘置支所に帰 所した。(以上につき、乙12、14~18、原告本人1~3、19頁)ウ乙拘置支所長は、令和4年12月15日、原告につき、①本件自殺企図①があったこと、②原告の職権面接を実施したところ、原告は、「入所した時から死ぬつもりでいる。」、「ああいうところ(保護室)に入ったら、すると思います。」などと、希死念慮が常にあることや、理不尽に思うこ とがあれば自殺企図を繰り返すことを示唆する発言をしたこと、③原告に - 10 - はうつ病の精神疾患もあることなどから、今後、ささいな心情の変化及び原告の病状に起因して、突発的に自傷行為を惹起する可能性が認められるとして、原告を「要視察者(自殺・自傷)」に指定するとともに、原告の処遇要領につき、居室指定を「監視カメラ付の単独室」とすることを決定した(なお、居室内所持品については特段の制限はされていない。)。こ れにより、原告は、同日より乙拘置支所のカメラ室に収容された(以下「前件カメラ室収容」という。)。(乙19、原告本人4頁)エ原告は、令和4年12月30日、カメラ室に設置された監視カメラに紙様のも 、原告は、同日より乙拘置支所のカメラ室に収容された(以下「前件カメラ室収容」という。)。(乙19、原告本人4頁)エ原告は、令和4年12月30日、カメラ室に設置された監視カメラに紙様のものを貼り付けていたところ、支所職員らにこれを外すよう指示されたが、その指示に従わず、同室に入室した支所職員に対し、両手に箸やボ ールペンを持ちながら、「はよこい。殺すぞ」と言ったことなどから、保護室に収容された。 その後、原告は、保護室内で、輪状にしたマスクのゴム紐で自己の頸部を締め付ける行為に及び、これをモニター監視により現認して駆け付けた支所職員らに制止され、衣服を脱がされ身体検査をされた。原告は、その 後も、貸与された強化衣類(自殺・自傷行為を防止するための衣類)を着用するようにとの支所職員らの指示に応じず、全裸のまま同室内に横臥し続けていたことから、支所職員らが入室し、原告に対し、強化衣類を着用させた。しかし、原告は、その強化衣類を脱ぎ、全裸の状態で横臥する状態となったことから、支所職員らは、原告に対し、再度、強化衣類を着用 させた(以下、これらの保護室内での原告の行為を総じて、「本件自殺企図②」という。)。(以上につき、乙12、20~23、原告本人4~6、19~20頁)オ乙拘置支所長は、令和5年1月5日、原告につき、前記ウの①ないし③の各事情に加え、原告が本件自殺企図②に及んだことも踏まえると、今後 も原告の公判の進行状況による心情の乱れ、病状等に起因して、突発的、 - 11 - あるいは計画的に自殺・自傷及び暴行に及ぶ可能性が極めて高いとして、原告を「要注意者B(自殺・自傷及び暴行)」に指定し、原告の処遇要領についても、カメラ室への収容を継続するほか、新たに居室内所持品の制 いは計画的に自殺・自傷及び暴行に及ぶ可能性が極めて高いとして、原告を「要注意者B(自殺・自傷及び暴行)」に指定し、原告の処遇要領についても、カメラ室への収容を継続するほか、新たに居室内所持品の制限を実施することを決定した(乙24)。 カ本件刑事事件に係る第一審の弁護人であったC弁護士は、令和5年1月 9日付けで、乙拘置支所長に対し、同月7日時点で継続されているカメラ室への収容は、遅くとも同時点において、必要性及び相当性を欠くものであり、刑事施設の長の裁量を逸脱した違法の疑いも存するとして、これに厳重に抗議するとともに、カメラ室への収容を直ちに中止されるよう求める旨の申入書を送付した(乙63)。 キ乙拘置支所長は、令和5年2月1日、原告につき、前記オの要注意者指定から1か月経過した原告の動静については、自殺、自傷に及ぶなどの特異な動静も認められず、安定した生活を送っており、心情の安定がうかがわれ、その動静を厳重に視察するべき事情が認められないと思料されるなどとして、原告を「要視察者(暴行)」に指定することとし、その処遇要 領についても、カメラ室への収容及び居室内所持品の制限をいずれも解除することを決定した。これにより、原告は、カメラ室から、乙拘置支所の一般単独室へと転室した。(乙25、原告本人6頁)ク原告は、令和5年2月3日、本件有罪判決を受けた。原告と弁護人は、同月11日までに、これを不服として控訴し、その後、原告は、同年3月 2日、甲拘置所に移送され、同所に入所した(本件入所)。 原告は、上記キのとおり乙拘置支所の一般単独室へ転室した同年2月1日から、上記移送(同年3月2日)までの間に、乙拘置支所において自殺・自傷行為に及ぶことはなかった。(以上につき、原告本人8~9頁) は、上記キのとおり乙拘置支所の一般単独室へ転室した同年2月1日から、上記移送(同年3月2日)までの間に、乙拘置支所において自殺・自傷行為に及ぶことはなかった。(以上につき、原告本人8~9頁)(4) 本件入所時の原告の状況及び本件カメラ室収容の開始 ア主任矯正処遇官(処遇担当)は、本件入所の日(令和5年3月2日)、 - 12 - 原告と面接した(以下「3月面接」という。)。この際、原告は、①乙拘置支所においてした本件自殺企図①及び②の理由や態様等について尋ねられたのに対し、本件自殺企図①については、民事裁判への出頭願を不許可にされたため抗議したところ、保護室に収容され、誰にも助けを求めることができない絶望感から及んだものであり、職員へのあてつけという側面 もあったかもしれないが、当時は自暴自棄になっており、後先考えずに惹起したものである旨を、本件自殺企図②については、職員を傷つけようとしたとの理由で保護室に収容されたため、マスクの紐を使ってい首自殺を企図し、これを取り上げられたことから、凍死しようと思って全裸になった旨を述べ、②今でも死にたいとの気持ちを抱いているのかを尋ねられる と、今は死にたいといった気持ちは抱いていないと答えた一方で、理不尽なことをされれば、自暴自棄な状況に陥ると思うものの、説明さえしてくれれば、納得して文句をいうことはない旨を述べた。 主任矯正処遇官は、3月面接の結果を踏まえ、その面接簿に、要旨、①原告の口調は理屈っぽく、にやけながら淡々と自己の要望をあげつらえ、 初犯被収容者特有ともいえる独善的解釈を披露する様子から、原告に対して嫌悪感を抱く職員は少なくないと思料される、②施設側の対応が意に沿わない場合には、突飛な行動に出るおそれが多分に認められ、その 初犯被収容者特有ともいえる独善的解釈を披露する様子から、原告に対して嫌悪感を抱く職員は少なくないと思料される、②施設側の対応が意に沿わない場合には、突飛な行動に出るおそれが多分に認められ、その行動の一環として、自殺自傷行為に走るものと思料される、③現段階においては、自殺自傷のおそれは低いものと思料され、粗暴性等も認められないことか ら、乙拘置支所の判定基準に従い、特に所持品制限等を実施することなく、カメラ室における厳重な視察に留めるのが良策であると思料する、などと意見を記載した。(以上につき、乙12、原告本人7頁)イ原告は、本件入所の日(令和5年3月2日)、甲拘置所の勤務医(精神科医。以下「医師A」と仮称する。)による診察を受けた。この際、原告 は、医師Aに対し、自らの精神状態について、①現在は落ち着いているも - 13 - のの、20代前半から精神科を受診しており、これまでに、うつ病、不眠症、摂食障害、多重人格障害、解離性障害、離人症、A群パーソナリティ障害、視線恐怖症、適応障害及び拒食症などの診断を受けたことがあったこと、②症状につき、力の加減ができない、イライラすると止められない、気分の落ち込み、希死念慮がある、「死ねばいいのに」との幻聴がある、 拒食と過食を繰り返すなどといった症状があることを訴えた。 これを踏まえ、医師Aは、原告に対し、「パーソナリティ障害の疑い」と診断し、①睡眠薬(ネルロレン散)、②抗精神病薬(コントミン散)及び③抗不安薬(ジアゼパム及びランドセン)を頓服(①及び②については不眠時、③については落ち着かないときに服用)で処方した。(以上につ き、乙27・4~5頁、原告本人7~8頁)ウ職員は、本件入所の日(令和5年3月2日)、原告に係る「自殺 については不眠時、③については落ち着かないときに服用)で処方した。(以上につ き、乙27・4~5頁、原告本人7~8頁)ウ職員は、本件入所の日(令和5年3月2日)、原告に係る「自殺危険性判定表」(以下「本件判定表」という。)を作成した。その記載内容は、①「精神障害精神症状」欄については、「あり」とされた上で、「診断/症状」につき「うつ、多重人格」、「通院・投薬歴」につき「現在あり」 とされ、②「自殺未遂」欄については、「あり」とされた上で、本件自殺企図①及び②の概要が記載されているものの、「現在意思なし」とも記載され、③「自傷行為」欄については、「あり」とされた上で、「特定せよ」の欄には「多数回」とされ、詳細については「2年前からストレスで身体を爪で傷付ける」と記載され、④「喪失体験」欄については「なし」とさ れ、⑤「健康状態」欄については、「不眠」及び「持病(糖尿)」とされ、⑥「観察」欄については、「自殺したがっている・自殺したいと言う(口頭/文面)」や「自殺のことを考えている」といった項目も含め、いずれの項目にもチェックが付されておらず、⑦「備考」欄には、「乙拘支から控訴移入。一審懲役22年。保護室歴。苦情歴多数。懲罰歴。要注意者要 視察者歴あり。」と記載されていた。 - 14 - その上で、主任矯正処遇官は、原告の自殺の危険性につき、本件判定表の「対応」欄の「レベル2 視察と配慮が特に必要(複数該当項目がある場合を含む)」にチェックを付した。(以上につき、乙26)エ首席矯正処遇官(処遇担当)は、本件入所の日(令和5年3月2日)、原告につき、乙拘置支所において、本件自殺企図①及び②にそれぞれ及び、 要注意者や要視察者に指定されたことがあったこと、現在は希死念 席矯正処遇官(処遇担当)は、本件入所の日(令和5年3月2日)、原告につき、乙拘置支所において、本件自殺企図①及び②にそれぞれ及び、 要注意者や要視察者に指定されたことがあったこと、現在は希死念慮を明確に否定しているものの、うつ病に罹患していると申述していることなどから、「施設側の対応が意に沿わない場合には、乙拘置支所収容時と同様、突発的に自殺又は自傷行為等に及ぶおそれがないものとは言い切れない」として、原告を「要視察者(自殺及び自傷)」に指定するとともに、その 処遇基準につき、居室指定については、カメラ室とすることを決定した。 これにより、原告は、同日から、甲拘置所のカメラ室(本件カメラ室)に収容された(本件カメラ室収容)。(乙28)(5) 本件カメラ室収容開始から本件保護室収容に至るまでの経緯ア職員は、令和5年3月13日、原告の状況につき、本件判定表の「処遇 上の留意点」の欄に「現在までのところ落ち着いて生活しているが今後も突発的な動静の変化には注意を要する」と記載した(乙26)。 イ原告は、令和5年3月30日、医師Aの診察を受け、その際、怒ることはないものの、本件カメラ室において視線のストレスを感じること、処方された薬は頼れること、睡眠剤は飲んでいないものの、落ち着いていると 思うことなどを述べた。これを踏まえ、医師Aは、原告に対し、睡眠薬(ニトラゼパム)を頓服(不眠時)として追加処方した。 また、原告は、令和5年4月7日にも、医師Aの診察を受け、その際、心身ともにしんどい状態で、朝からうつ症状があり、吐きそうになるほか、食欲不振である旨を述べた。これを踏まえ、医師Aは、原告に対し、胃腸 薬(スルピリド)を処方した。 - 15 - さらに、原告は 朝からうつ症状があり、吐きそうになるほか、食欲不振である旨を述べた。これを踏まえ、医師Aは、原告に対し、胃腸 薬(スルピリド)を処方した。 - 15 - さらに、原告は、令和5年5月10日、医師Aの診察を受け、その際、眠れない時があるものの、ニトラゼパム(睡眠薬)は効果がないので服用していない旨や、ランドセン(抗不安薬)は効いており、比較的おだやかである旨を述べた。(以上につき、乙27・6~9頁)ウ原告は、令和5年5月12日から同月22日までの間、断続的に不食す る状況となった(その詳細な状況は、別紙2「原告が不食した各期間における喫食状況」の1のとおり。)。 原告は、令和5年5月17日、医師Aの診察を受け、その際、「12日より急に食事がとれなくなって、カメラ室で限界がきた」、「死にたくなるけど、死なない」、「頓服薬は効くけど」などと述べた。これを踏まえ、 医師Aは、原告につき、「反応性(ストレス性)不食」と診断した。(以上につき、乙27・10頁、29、30、原告本人9~10、21頁)エ本件刑事事件に係る原告の控訴審弁護人であったD弁護士(以下「D弁護士」という。)は、令和5年7月10日付けで、所長に対し、原告は、同年6月16日時点でカメラ室に収容されているところ、①原告が本件自 殺企図①及び②に及んでから既に7か月以上が経過しており、この間、原告は自傷行為に及んでいないことから、少なくとも、上記時点でカメラ室収容を継続する必要性及び相当性は認められない、②原告には視線等に対する恐怖症があり、カメラ室への収容そのものが強度のストレスとなって、原告の精神状態を不安定にさせる一因となっているなどとして、上記時点 における原告のカメラ室への収容は、刑事施設の 線等に対する恐怖症があり、カメラ室への収容そのものが強度のストレスとなって、原告の精神状態を不安定にさせる一因となっているなどとして、上記時点 における原告のカメラ室への収容は、刑事施設の長の裁量を逸脱した違法の疑いも存することから、厳重に抗議するとともに、カメラ室への収容を直ちに中止するよう求める旨の申入書を送付した(以下「7月申入れ」という。)(乙64)。 オ主任矯正処遇官(処遇担当)は、令和5年7月18日、原告と面接した (以下「7月面接」という。)。この際、原告は、本件自殺企図①及び② - 16 - に及んだ経緯やその際の心情等について話したほか、①同年5月12日から同月22日まで断続的に不食したきっかけについて尋ねられると、本件カメラ室内の監視カメラにより、常に見られているというストレスから、突然食事がとれなくなったこと、原告は、38歳の頃に通院していた精神科で「視線恐怖症」と診断されており、動いている監視カメラに対しては そこまでストレスは感じないものの、固定の監視カメラに対しては拷問と感じるほど嫌悪感を抱くこと、前件カメラ室収容の期間にも、ストレスが溜まって約20日間食事が喉を通らなかったことがあったことなどを述べ、②持病や服薬状況について尋ねられると、20歳代初め頃に弟分にあたる知人の死がきっかけとなってうつ病、不眠症、若年性健忘症、解離性 人格障害、拒食過食症などといった精神病を発症し、30歳代後半には、視線恐怖症も発症し、監視カメラに対して極度の嫌悪感を抱くようになったことなどを述べ、③在社会時に自殺企図や自傷行為に及んだことはあるかと尋ねられると、20歳代初め頃は、死にたくて仕方がなく、色々と自殺を企図したと思うものの、態様については覚えていないこと、自宅の部 述べ、③在社会時に自殺企図や自傷行為に及んだことはあるかと尋ねられると、20歳代初め頃は、死にたくて仕方がなく、色々と自殺を企図したと思うものの、態様については覚えていないこと、自宅の部 屋の中でそのような衝動にかられ、我に返ると部屋の壁に穴が開いていたこともあったことのほか、「感情の浮き沈みによって、衝動的に、突発的に、予想だにしないことを起こす可能性」はあることなどを述べ、④現在の心境を尋ねられると、本件カメラ室に設置された監視カメラにより、重度のストレスを負っていること、もはや拷問に近いと思っており、これに より理性を失い、感情や行動が制御できなくなるおそれがあること、現在は読書やノートへの筆記に集中し、監視カメラから気をそらすことに努めていること、乙拘置支所でも約7か月間は通常の居室で平穏に暮らしていた実績があるほか、甲拘置所でもこれまで規律違反はなくおとなしく生活しているので、これ以上本件カメラ室に収容する理由はないと思うことな どを述べ、⑤今でも希死念慮を有しているかを尋ねられると、「冤罪を晴 - 17 - らすまでは死ねません。今は一切死ぬ気はありません。」と述べた。 これを踏まえ、主任矯正処遇官は、上記面接の面接簿に、要旨、「視線恐怖症」という病態は一般的なものなのか判然としないが、それを措くとしても、原告は、うつ病をはじめとする各種精神疾患を有していると自称し、一旦パニックに陥ると、自分が何を言ったのか、何をやったのかにつ いてわからなくなるなどとも述べ、本件有罪判決が懲役22年もの長期に及ぶものであり、いまだ控訴審期日が未指定である現状に鑑みると、その心情は根本的に不安定であるといわざるを得ず、今後、施設側の対応が意に沿わなかったり、本件刑事事件が思うように進行しなかった 長期に及ぶものであり、いまだ控訴審期日が未指定である現状に鑑みると、その心情は根本的に不安定であるといわざるを得ず、今後、施設側の対応が意に沿わなかったり、本件刑事事件が思うように進行しなかったりした場合には、原告がいうところの「パニック」に陥り、突飛な行動に出るおそれ が多分に認められることから、当面の間、少なくとも控訴審期日が開始されるまでは、現在の処遇を継続すべきであると思料する、などと意見を記載した。(以上につき、乙31、原告本人10~11、21~22頁)カ原告は、令和5年8月4日の夕方から同月7日にかけて、本件カメラ室において、日中、座布団を頭部に被ったまま生活するようになり、職員ら により、座布団を頭部から外すよう再三指導を受けたものの、天井に設置されている監視カメラが気になって仕方がないなどと述べてこれに従わなかった。そのため、原告は、同日、反則行為(物品等不正使用)の疑いがあるとして調査に付され、同月8日には、原告に貸与されていた一般の被収容者用の座布団を、通常とは異なる規格の座布団に取り換えられた。し かし、原告は、その後も同様の行為を続け、同日から同月10日まで、同月14日から同月18日まで、同月21日及び同月22日の各日において、上記同様の反則行為(物品等不正使用)の疑いで調査に付された。 また、原告は、令和5年8月4日から同月30日にかけて、断続的に不食する状況となった(その詳細な状況は、別紙2「原告が不食した各期間 における喫食状況」の2のとおり。)。 - 18 - さらに、原告は、令和5年8月10日、医師Aの診察を受け、その際、最近カメラで見られているのがストレスであり、視線恐怖症でずっとイライラしている、ご飯を食べられないなどと訴えた。 - さらに、原告は、令和5年8月10日、医師Aの診察を受け、その際、最近カメラで見られているのがストレスであり、視線恐怖症でずっとイライラしている、ご飯を食べられないなどと訴えた。これを受け、医師Aは、原告に対し、抗不安薬(ジアゼパム)を、頓服から毎3食後の服用に切り替えて処方した。(以上につき、乙27・14頁、29、30、32~4 4、原告本人22~23頁)(6) 本件保護室収容に係る経緯原告は、令和5年8月23日の昼頃、本件カメラ室に設置された監視カメラに向けて書籍(模範六法)を投げつけてこれを損壊しようとする行為(以下「本件損壊行為」という。)に及び、職員らから、これをやめるよう指示 を受けた。これに対し、原告は、職員らに目掛けて上記書籍を投げつけようとする構えを示したことから、職員らに両腕を把持され(この際も、原告は、激しく四肢を動かすなどして抵抗した。)、保護室まで連行され、保護室に収容された(本件保護室収容)。その上で、職員らは、原告の身体検査を実施し(以下「本件身体検査」という。)、この際、原告が着用していた革製 ジャンパー(以下「本件ジャンパー」という。)の前チャックを開け、右袖、左袖の順で片袖ずつ脱がせる方法で、これを脱衣させた。 本件保護室収容は、令和5年8月24日、中止された。(以上につき、乙45、67、71、原告本人23~24頁)(7) 本件保護室収容の中止から本件カメラ室収容の終了に至るまでの経緯 ア首席矯正処遇官(処遇担当)は、令和5年8月23日、原告につき、本件損壊行為に及んだこと、前記(5)カのとおり、自己の頭部に座布団を載せて生活するといった特異動静を示し続けているほか、断続的に不食している状況があったことなどから、原告の心情 3日、原告につき、本件損壊行為に及んだこと、前記(5)カのとおり、自己の頭部に座布団を載せて生活するといった特異動静を示し続けているほか、断続的に不食している状況があったことなどから、原告の心情は極めて不安定であるとした上で、原告が本件カメラ室での生活に抵抗感を抱いていることに間違いなく、 自殺及び自傷の要視察者である原告を厳重に監視しなければならない必要 - 19 - 上、引き続きカメラ室に収容せざるを得ないが、自己の意に沿わない対応が執られ続けることによって不満を募らせ、自殺及び自傷行為はもとより、監視カメラの損壊をはじめとする粗暴行為をも頻発することが懸念されるとして、原告を「要視察者(自殺及び自傷、その他(粗暴性))」に指定し、その処遇基準等につき、本件カメラ室への収容を継続することのほか、 居室内所持物品も一部制限することを決定した(乙46)。 イ原告は、令和5年8月24日、医師Aの診察を受け、その際、視線恐怖症があり、カメラが気になり、精神的にまいって食事や水分をとらなくなっているなどと訴えたほか、同月31日、同様の診察を受けた際には、最近少し食べ始めたものの、肩こりやストレスがひどい、何も考えたくない などと訴えた(乙27・17~18頁)。 ウ D弁護士は、令和5年8月29日付けで、所長に対し、7月申入れで指摘した事情のほか、①原告は、同年8月4日以降、本件カメラ室収容によるストレスから幻聴・睡眠不良等にさいなまれ、食事もろくに取れない状態が続いている、②同月23日には、精神的ストレスが限界に達し、監視 カメラを壊してしまったところ、本件カメラ室収容を打ち切っていれば、このような事態にはならなかったのであって、これを理由に本件カメラ室収容を継続するのは本末転倒であるなどと 限界に達し、監視 カメラを壊してしまったところ、本件カメラ室収容を打ち切っていれば、このような事態にはならなかったのであって、これを理由に本件カメラ室収容を継続するのは本末転倒であるなどと指摘した上で、本件カメラ室収容は、必要性及び相当性を欠くものであり、刑事施設の長の裁量を逸脱した違法の疑いも存することから、厳重に抗議するとともに、本件カメラ室 収容を直ちに中止するよう求める旨の申入書を送付した(乙65)。 エ原告は、令和5年9月13日、医師Aの診察を受け、その際、調子がいいとはいえない、ランドセン(抗不安薬)及びロキソニンを食後にしてほしい、食べ物は味がしないが頑張って食べているなどと訴えた。これを受け、医師Aは、ランドセンを頓服から毎食後の服用に切り替えて処方した。 また、原告は、令和5年10月5日、医師Aの診察を受け、この際、ジ - 20 - アゼパム(抗不安薬)を減らしたかったものの、調子が悪いし、身体も精神面も落ちているなどと訴えた。(以上につき、乙57・1~2頁)オ原告は、令和5年10月13日、本件有罪判決に対してした前記(3)クの控訴を棄却する旨の判決を受けた。 主任矯正処遇官(処遇担当)は、令和5年10月13日、原告と面接し た(以下「10月面接」という。)。この際、原告は、①上記控訴審判決に対する感想を尋ねられると、同判決はとても納得できるものではないこと、裁判において、原告は被害者にとって都合の悪いことは一切喋らせてもらえなかったことから、裁判自体茶番であると考えていること、前回の公判期日で、裁判官は一切聞く耳を持たないという姿勢を示していたこと から、同判決は予想通りの内容であり、特にショックを受けていないことなどを述べ、②上告の 茶番であると考えていること、前回の公判期日で、裁判官は一切聞く耳を持たないという姿勢を示していたこと から、同判決は予想通りの内容であり、特にショックを受けていないことなどを述べ、②上告の意思があるかを尋ねられると、弁護人に原告の代わりに上告をしてもらうよう依頼している旨を述べ、③最近の睡眠、喫食状況を尋ねられると、処方されている睡眠薬には効き目がなく、眠りは浅く、毎晩、深夜と早朝に目が覚めること、現在は過食期に入っており、むしろ 食事は足りないくらいであることなどを述べ、④収容生活上のストレスについて尋ねられると、本件カメラ室の監視カメラにより、常に見られているというストレスから、心情不安が続いていること、座布団を頭上に載せることで何とか耐えているものの、時折、天井の監視カメラを壊してしまいたいといった衝動に駆られることがあり、面倒を起こしたくはないので 実行に移さないまでも、限界に達した場合には、再び壊してしまうかもしれないこと、現在の原告に対する処遇は、行きすぎたものであり、人権侵害だと考えていることなどを述べ、⑤今でも希死念慮を有しているかを尋ねられると、裁判が完遂していない以上、死ぬわけにはいかず、目の前にロープがあったとしても、首をくくる気にはなれないこと、もっとも、本 件カメラ室への収容が続けば、ストレスが高じて死にたくなるはずである - 21 - こと、監視カメラさえなければ、死にたくなったりはしないはずであること、本件有罪判決より、本件カメラ室での生活を続けざるを得ない現在の状況の方が高ストレスであることなどを述べた。 これを踏まえ、主任矯正処遇官は、上記面接の面接簿に、要旨、本件カメラ室からの転室が自身の心情に安定をもたらす旨の原告の主張は、独善 的なものであると トレスであることなどを述べた。 これを踏まえ、主任矯正処遇官は、上記面接の面接簿に、要旨、本件カメラ室からの転室が自身の心情に安定をもたらす旨の原告の主張は、独善 的なものであると解さざるを得ず、上記控訴審判決をはじめ原告を取り巻いている状況からは、本件カメラ室への収容が不要であるとはよもや明言できない、などと意見を記載した。(以上につき、乙58)カ原告は、令和5年10月20日、医師Aの診察を受け、その際、薬に頼りたくないが、座布団を被ってカメラを避けている、部屋(本件カメラ室) を変えてくれずストレスがあるなどと訴えた。 また、原告は、令和5年11月16日、医師Aの診察を受け、その際、カメラのストレスがひどくなってきている、食べ物についても、いつ食べられなくなるか心配である、カメラを壊したくなる衝動を抑える薬が欲しいなどと訴えた。これを受け、医師Aは、新たにうつ状態治療薬(アナフ ラニール)を毎3食後として処方した。(以上につき、乙57・3~4頁)キ主任矯正処遇官(処遇担当)は、令和5年11月22日、原告と面接した。この際、原告は、①現在上告中であることに間違いないか尋ねられると、弁護人を通じて上告していること、納得できるところまで争いたいなどと考え、上告したものの、望み通りの結果とならなくても、判決が確定 すれば素直に刑に服すること、刑務所に行く覚悟はできており、悲観はしていないことなどを述べ、②睡眠、喫食、服薬、外部交通の状況を尋ねられると、睡眠については、毎晩約5時間は眠っていると思うこと、喫食状況は良好であり、不食はしていないこと、服薬については、上記カのとおり、毎食後に服用している抗うつ剤の用量が増加したものの、効果のほど はわからないこと、外部交通 眠っていると思うこと、喫食状況は良好であり、不食はしていないこと、服薬については、上記カのとおり、毎食後に服用している抗うつ剤の用量が増加したものの、効果のほど はわからないこと、外部交通については、手紙のやり取りをしたり、面会 - 22 - に来てくれたりする人はおらず、孤独な毎日を過ごしていることなどを述べ、③現在の心境を尋ねられると、本件カメラ室から早く転室させてほしい、物品の使用制限を解いてほしいということに尽きること、監視カメラがあるゆえに心情を乱されるのであり、これがなければ心情は安定することなどを述べ、④居室に監視カメラがあるおかげで、自殺自傷行為をはじ めとする特異な言動を想起しないのではないか、再三の指導にかかわらず、座布団を頭上に載せ続けるのはなぜかなどと尋ねられると、何もしていないのに本件カメラ室に収容され続けたため、反則行為(座布団の不正使用)に至ってしまったのであり、監視カメラがなければ、平穏に生活できたはずであること、監視カメラがある限り、座布団を頭上に載せ続けることな どを述べ、⑤今後、自殺自傷行為はもとより、意に沿わない対応をされて急に暴れるなどの行為をしないと誓えるか、食事を長期間不食したりすることはないかと尋ねられると、そのような面倒くさいことは絶対にしないし、職員から不適切な対応を受けたとしても、冷静に対応するつもりであること、不食については、ストレスが高じると勝手に始まるものであって、 自分では制御できないこと、おかしな言動をしたり、感情の制御ができなくなったり、不食をし始めたりすれば、またカメラ室に戻しても一向に構わないことなどを述べた。 これを踏まえ、主任矯正処遇官は、上記面接の面接簿に、要旨、以前とは異なり、原告は、本件カメラ室での生活や物品制 し始めたりすれば、またカメラ室に戻しても一向に構わないことなどを述べた。 これを踏まえ、主任矯正処遇官は、上記面接の面接簿に、要旨、以前とは異なり、原告は、本件カメラ室での生活や物品制限のことに話が及んで も、抗議さえすれど、決して感情をあらわにせず、終始淡々と受け答えしている、原告の刑事裁判は、今や一区切りがつき、原告自身もこれを認め、刑務所での生活を直視できるようになっていることがうかがえ、自暴自棄になったり、突発的な行動に及んだりするおそれは低下したものとの印象を受けた、などと意見を記載した。(以上につき、乙59) ク首席矯正処遇官(処遇担当)は、令和5年12月5日、原告につき、上 - 23 - 記キの控訴審判決を受けた後も、日中、頭上に座布団を載せて生活する以外は動静に特段異常が認められない状況が続いていること、原告の職権面接を実施したところ、原告は、判決が確定すれば素直に刑に服する旨や、死にたい、暴れたいなどといった特殊な感情は生まれ得ない旨を述べる一方、依然として本件カメラ室での生活が心理的負担となっている旨を訴え たことなどを踏まえ、これらを勘案すると、原告については、本件刑事事件は今や一区切りがつき、いずれ到来する刑務所での受刑生活を直視できるようになっていることがうかがえるほか、再び不穏な動静を示したときは、カメラ室で監視されて構わない旨宣言していることからも、今や自暴自棄になったり、突発的な行動に及んだりするおそれは低下したものと評 価できるとして、原告に係る前記アの「要視察者(自殺及び自傷、その他(粗暴性))」の指定を解除し、前記アの処遇基準等についてもこれを廃止することを決定した。これを受け、原告は、本件カメラ室から、甲拘置所の一般居室に転室した。(乙60 要視察者(自殺及び自傷、その他(粗暴性))」の指定を解除し、前記アの処遇基準等についてもこれを廃止することを決定した。これを受け、原告は、本件カメラ室から、甲拘置所の一般居室に転室した。(乙60、原告本人11頁)ケ原告は、令和6年1月4日、医師Aの診察を受け、その際、部屋が変わ ってだいぶ気持ちが楽である、睡眠はまあまあであり、食事はとれている、現在は落ち着いており、薬を減らしたいなどと述べた(乙57・5頁)。 2 国家賠償法上の違法性に関する判断枠組み等国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加え たときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるから、公務員による公権力の行使に同項にいう違法があるというためには、当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要である(最高裁平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 原告は、別紙1「当事者の主張の要旨」のとおり、各事件につき職員らによ - 24 - る国家賠償法上違法な行為があった旨主張するので、以下、事件ごとに、原告の主張の当否につき上記判断枠組みに則して検討する。 3 第1事件について(1) カメラ室収容の適否に関する判断枠組みア被収容者に対するカメラ室収容の適否に係る判断枠組み 刑事収容施設法上、刑事施設における被収容者の居室は、被収容者が主として休息及び就寝のために使用する場所として刑事施設の長が指定する室をいう(4条3項参照)。そして、刑事収容施設法上、居室については、 事収容施設法上、刑事施設における被収容者の居室は、被収容者が主として休息及び就寝のために使用する場所として刑事施設の長が指定する室をいう(4条3項参照)。そして、刑事収容施設法上、居室については、未決拘禁者につき制限区分に応じた居室の形態が規定されており(35条2項)、特別の規定として、受刑者の隔離(76条)、保護室への収容(7 9条1項)、懲罰としての閉居罰(151条3項4号、152条)等があるものの、そのほかに居室の指定に係る具体的な規定はない(関係法令の定め(1)及び(5)参照)。そうすると、刑事施設における被収容者の居室の指定は、上記諸規定による制約を受けるほかは、刑事施設の実情に通暁する刑事施設の長の合理的な裁量に委ねられていると解される。 また、刑事収容施設法上、カメラ室について定めた規定はないが、居室内の監視のために監視カメラを設置することは、人的な制約の下において、刑務官による居室内の検査(75条1項。関係法令の定め(4)参照)や刑事施設の職員による巡回視察(処遇規則39条4号参照)を補う手段として、相応の必要性及び合理性を認め得るものということができ、刑事収容施設 法上、カメラ室を設置することは許容されているものと解される。そして、カメラ室に被収容者を収容すること(被収容者の居室としてカメラ室を指定すること)についても、上記のとおり、居室の指定に係る刑事施設の長の合理的な裁量に委ねられていると解される。 そうすると、刑事施設の長が被収容者をカメラ室に収容する判断や、そ の収容を継続する判断は、居室の指定に係る刑事施設の長の裁量権の行使 - 25 - として行われるものであって、これが国家賠償法上違法となるのは、当該判断が、重要な事実の基礎を欠くこととなる場 収容を継続する判断は、居室の指定に係る刑事施設の長の裁量権の行使 - 25 - として行われるものであって、これが国家賠償法上違法となるのは、当該判断が、重要な事実の基礎を欠くこととなる場合や、その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合であって、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものと認められるときに限られるというべきである。 イカメラ室の特性等を踏まえた考慮刑事収容施設法は、刑事収容施設の適正な管理運営を図るとともに、被収容者の人権を尊重しつつ、これらの者の状況に応じた適切な処遇を行うことを目的とするものであり(1条)、この目的の下、刑事施設の規律及び秩序は、適正に維持されなければならない旨を定める(73条1項)一 方、そのために執る措置は、被収容者の収容を確保しその処遇のための適切な環境及び安全かつ平穏な共同生活を維持するために必要な限度を超えてはならない旨も明記している(同条2項)(関係法令の定め(2)参照)。 甲拘置所に設置されたカメラ室は、天井中央に設置された監視カメラにより居室全体を上方から撮影し、これを録画記録するとともに、かかる映 像を職員が監視室に設置されたモニター上で確認するというものである(認定事実(2))。このようなカメラ室で行われる被収容者の監視は、居室内の監視範囲に死角がなく、排泄行為を含む日常生活の動静が24時間監視され得ることとなる点や、その映像が記録され一定期間保存される点からすれば、通常の居室について実施される職員の巡回視察に比して監視の 対象となる行動の範囲が拡大し、被収容者のプライバシー権の制限の程度が大きい上、それゆえに強度の圧迫感や拘禁感等の心理的負担を負わせるものであるといえる。 る職員の巡回視察に比して監視の 対象となる行動の範囲が拡大し、被収容者のプライバシー権の制限の程度が大きい上、それゆえに強度の圧迫感や拘禁感等の心理的負担を負わせるものであるといえる。 しかも、甲拘置所で行われる未決勾留は、逃亡又は罪証隠滅の防止という刑事司法上の目的のために必要やむを得ない措置として一定の範囲で個 人の自由を拘束するものであり、これにより拘禁される者(未決拘禁者) - 26 - は、当該拘禁関係に伴う制約の範囲外においては、原則として一般市民としての自由を保障されるべき者である(最高裁昭和58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁参照)。 これらによれば、甲拘置所に設置されているような、居室の監視範囲に死角がなく24時間監視され得るカメラ室に未決拘禁者を収容すること は、未決拘禁者のプライバシー権等を高度に制限するものであり、常時監視下に置かれるという相当な心理的負担を負わせるものであるから、刑事収容施設法1条、73条の趣旨に照らし、飽くまでも例外的な特別の措置として位置付けられるべきであって、その収容の開始に当たっては、カメラ室への収容を必要とする特別の事情(自殺自傷の具体的なおそれ等)が なければならないというべきであり、また、その収容の継続についても、その目的のため必要な限度で行われるべきものと解される。 そうすると、本件カメラ室のように、居室の監視範囲に死角がなく24時間監視され得るカメラ室に未決拘禁者を収容し又はこれを継続する判断については、上記のような例外的な特別の措置であることを踏まえ、カメ ラ室への収容を必要とする特別の事情(自殺自傷の具体的なおそれ等)があるかどうか、その目的のため必要な限度内のものであるかといった観点から、上記アの判断 な特別の措置であることを踏まえ、カメ ラ室への収容を必要とする特別の事情(自殺自傷の具体的なおそれ等)があるかどうか、その目的のため必要な限度内のものであるかといった観点から、上記アの判断枠組みに基づき、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の有無について慎重に検討すべきものと解される。 (2) 本件に関する具体的検討 ア本件カメラ室収容を開始することとした判断の適否について上記(1)で述べた判断枠組みに照らし、まず、原告に対し本件カメラ室収容を開始することとした所長の判断の適否について検討する。 前記1の認定事実によれば、原告は、甲拘置所への入所(本件入所)前に収容されていた乙拘置支所において、令和4年12月14日及び同月3 0日、それぞれ、職員らとのトラブルを発端として保護室に収容された際、 - 27 - 衣類やマスクのゴム紐で自己の頸部を締め付けたり、着せられた強化衣類を脱いで全裸になったりするなどの自殺企図行為(本件自殺企図①及び②)に及んでおり、これらにより、カメラ室に収容(前件カメラ室収容)された経歴を有していた(同(3)イ~エ)。 また、原告は、本件入所の日(令和5年3月2日)に実施された主任矯 正処遇官による面接(3月面接)に際しても、その時点での希死念慮については明確に否定した一方で、理不尽なことをされれば自暴自棄な状況に陥るなどとも述べ、今後も自己が理不尽と考える対応がされれば自殺企図や自傷行為に及ぶ可能性をうかがわせるような言動をしていた(認定事実(4)ア)。さらに、原告は、同日に実施された医師Aによる診察に際し、こ れまでにうつ病、不眠症、摂食障害及び多重人格障害等の多数の精神障害の診断歴を有していることや、具体的症状として、気分の落ち込みや 。さらに、原告は、同日に実施された医師Aによる診察に際し、こ れまでにうつ病、不眠症、摂食障害及び多重人格障害等の多数の精神障害の診断歴を有していることや、具体的症状として、気分の落ち込みや希死念慮、「死ねばいいのに」との幻聴などがあることを述べており、これらを受けて、医師Aは、原告に対し、「パーソナリティ障害の疑い」と診断した上で、抗精神病薬や抗不安薬等の処方を行っていた(同(4)イ)。 これらに加え、本件入所の時点で、原告は、新たに甲拘置所に入所したものであり、これまで収容されていた乙拘置支所とは環境が変わり、職員らとも新たに接することとなることも踏まえれば、同時点での原告の自殺自傷の危険性につき、首席矯正処遇官が、乙拘置支所での自殺未遂歴等を踏まえ、「施設側の対応が意に沿わない場合には、乙拘置支所収容時と同 様、突発的に自殺又は自傷行為等に及ぶおそれがないものとは言い切れない」と判断したこと(認定事実(4)エ)には合理性があったといえる。そうすると、原告については、本件入所の時点では、自殺企図を防止してその収容を確保するという観点から、その行動を綿密に観察する必要性(カメラ室への収容を必要とする特別の事情)があったといい得るから、本件カ メラ室収容を開始することとした所長の判断につき、重要な事実の基礎を - 28 - 欠くとか、その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとはいえず、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとは認められない。 したがって、所長が、本件入所の時点(令和5年3月2日)で原告を本件カメラ室に収容したこと(本件カメラ室収容を開始したこと)は、国家賠償法上違法とはいえない。これに反する原告の主張は、上述したところ に照らし、いずれも採用すること 和5年3月2日)で原告を本件カメラ室に収容したこと(本件カメラ室収容を開始したこと)は、国家賠償法上違法とはいえない。これに反する原告の主張は、上述したところ に照らし、いずれも採用することができない。 イ本件カメラ室収容を継続した判断の適否について(ア) 次に、所長が本件カメラ室収容を令和5年12月4日まで継続した判断の適否について、以下検討する。 なお、被告は、上記判断の適否について、令和5年8月9日の前後で 区別して主張しているが(別紙1「当事者の主張の要旨」の1(被告の主張)(1)参照)、これは、原告が、本件訴えの係属中に損害賠償請求の対象とする本件カメラ室収容の収容期間を拡張(延長)したことによるものであると解され(前提事実(4)オ参照)、上記判断の適否を検討するに際し、同日の前後で分けて検討する実益は乏しいから、以下の検討に おいては、特に同日の前後で区別することなく一括して検討する。 (イ) 前記1の認定事実によれば、原告は、乙拘置支所において本件自殺企図①及び②に及び、これらを契機として同所のカメラ室に収容されていた(前件カメラ室収容)ものの、収容開始から約1か月半後(令和5年2月1日)には、自殺や自傷等の特異な動静が認められないなどとして カメラ室への収容が解除され、一般居室に転室していたものであり、その後、本件入所(同年3月2日)までの間、同所において自殺企図や自傷行為に及ぶことはなく(同(3)キ及びク)、本件入所時に実施された3月面接の際にも、希死念慮を明確に否定していた(同(4)ア)。そうすると、前記アのとおり、本件入所の時点で、過去の自殺未遂歴等を考慮し、 原告をカメラ室に収容する必要性(特別の事情)があったとはいえるが、 - 29 確に否定していた(同(4)ア)。そうすると、前記アのとおり、本件入所の時点で、過去の自殺未遂歴等を考慮し、 原告をカメラ室に収容する必要性(特別の事情)があったとはいえるが、 - 29 - その時点で、原告が自殺企図や自傷行為に及ぶ可能性が差し迫った高度なものであったとはいい難い。このことは、主任矯正処遇官が、3月面接の結果を受けて、その面接簿に、現段階においては自殺自傷のおそれは低いものと思料されるとの意見を記載していること(同(4)ア)などからも裏付けられる。 そして、原告の控訴審弁護人であったD弁護士は、令和5年7月10日付けで、所長に対し、原告が本件自殺企図①及び②に及んでから、既に7か月以上(実際には6か月以上)が経過しており、この間、原告は自傷行為に及んでおらず、原告をカメラ室に収容する必要性及び相当性は認められないとして、原告に対して実施されている本件カメラ室収容 は、刑事施設の長の裁量を逸脱した違法の疑いも存することから、これを直ちに中止するよう求める旨の申入れを行っている(7月申入れ、認定事実(5)エ)。実際にも、原告が、本件カメラ室収容の開始(同年3月2日)から7月面接(同年7月18日)までの約4か月半の間に、甲拘置所において本件自殺企図①及び②と同様の自殺企図や自傷行為に及ん だり、自殺の可能性をほのめかすような言動に及んだりしたといった事情はうかがわれず、かえって、原告は、7月面接の際、希死念慮を有しているかを問われると、「冤罪を晴らすまでは死ねません。今は一切死ぬ気はありません。」と述べ、これを明確に否定している(同オ)。また、原告は、3月面接の際、本件自殺企図①及び②について、トラブル となった支所職員らへのあてつけという趣旨で、あるいは、保護室に収 ありません。」と述べ、これを明確に否定している(同オ)。また、原告は、3月面接の際、本件自殺企図①及び②について、トラブル となった支所職員らへのあてつけという趣旨で、あるいは、保護室に収容されて自暴自棄となって後先考えずに、敢行したものであると述べている(同(4)ア)ところ、証拠をみても、上記期間に、原告が、職員らとトラブルを生じたことを契機として反則行為に及んだり、保護室に収容されたりしたこともうかがわれない(かえって、職員は、同年3月13 日時点の原告の状況につき、「現在のところ落ち着いて生活している」 - 30 - との意見を述べている〔同(5)ア〕し、原告も、本件カメラ室収容の期間中、日常的に原告に接していた職員らはいい人たちであり、原告がそのような職員らに対して感情的になったことはない旨供述している〔原告本人27~28頁〕。)。 さらに、前記アのとおり、原告は、本件入所の時点で、医師Aに対し、 多数の精神疾患の診断歴やこれによる具体的症状がある旨の申告をしていたものの、①原告は、本件カメラ室収容の開始から7月面接までの間に、複数回医師Aの診察を受けた際、医師から処方された薬が効いているなどと述べており(認定事実(5)イ及びウ)、抗不安薬(ランドセン)を服用することで感情の起伏がかなり抑えられていた旨供述しているこ と(原告本人22、30~31頁)や、②「死ねばいいのに」との幻聴についても、日常的に聞こえてはいるものの、また聞こえてるわといった程度の感覚であったと供述しており(原告本人23頁)、上記幻聴は原告の行動を左右するほどの支配性を有するものではなかったと考えられることも踏まえれば、上記精神疾患等についても、医師Aによる診察 及び投薬治療を継続する限り、直ちに自殺企 3頁)、上記幻聴は原告の行動を左右するほどの支配性を有するものではなかったと考えられることも踏まえれば、上記精神疾患等についても、医師Aによる診察 及び投薬治療を継続する限り、直ちに自殺企図や自傷行為につながるほどにこれらの症状が悪化するおそれがあったとはいえない。 これらによれば、遅くとも、7月面接が実施された令和5年7月18日(本件カメラ室収容開始から約4か月半後)の時点において、原告の状態は客観的に見てそれほど不安定なものではなかったといえ、原告が 自殺企図や自傷行為に及ぶ危険性は、全くないとまではいえないとしても、抽象的なものにとどまり、監視カメラにより常時監視し続けることを要するほどに現実的で具体的なものではなかったというべきである。 (ウ) これに対し、被告は、本件カメラ室収容開始(令和5年3月2日)から7月面接(同年7月18日)までの間に生じた、原告の動静の綿密な 視察の必要性を基礎づける事情として、①原告が、7月面接の際、自身 - 31 - が視線恐怖症に罹患しており、ストレスが限界に達していることにより、パニックに陥ると、衝動的、突発的な行動に出ることを示唆する内容を述べたこと、②原告は、同年5月12日から同月22日までの間、断続的に不食を繰り返したほか、同月17日、医師に対し、急に食事がとれなくなって、カメラ室で限界が来たとか、死にたくなるけど死なないと 述べるなどしたこと、③原告の親族が面会に訪れないなど、原告の外部交通が途絶えていたことを指摘する。 しかし、上記①については、確かに、原告は、7月面接の際、本件カメラ室の監視カメラにより重度のストレスを負っており、もはや拷問に近く、これにより理性を失い、自身の感情や行動が制御できなくなるお しかし、上記①については、確かに、原告は、7月面接の際、本件カメラ室の監視カメラにより重度のストレスを負っており、もはや拷問に近く、これにより理性を失い、自身の感情や行動が制御できなくなるお それがあるなどと述べている(認定事実(5)オ)が、これは本件カメラ室収容によるストレスを強く訴えているものであり、原告は、このような発言をする一方で、読書やノートに集中し、監視カメラから気をそらすことに努めているとも述べている上、希死念慮については明確に否定している。また、原告は、7月面接の際に、一旦パニックに陥ると、自分 が何を言ったのか、何をやったのかについて分からなくなってしまうなどと述べているが、これは、原告が、主任矯正処遇官から、乙拘置支所在所中の出来事を覚えているかと尋ねられ、本件自殺企図①及び②を振り返って話をしている中で出た発言であり(乙31)、現在もそのような精神状態が続いているという趣旨のものではないし、上記(イ)で述べた とおり、本件カメラ室収容開始から7月面接までの間に、原告が、職員らとトラブルを生じたことを契機として反則行為に及んだり、保護室に収容されたりしたといった事情もうかがわれず、抗不安薬(ランドセン)を服用することで感情の起伏がかなり抑えられていた旨供述している。 これらによれば、原告が7月面接の際に被告が指摘する発言をしたこと をもって、7月面接の時点で、原告が自殺企図や自傷行為に及ぶ現実的 - 32 - で具体的な危険性があったとはいえず、むしろ、本件カメラ室収容を漫然と継続すること自体が原告の精神の安定を乱す主たる原因であったといえ、原告が上記発言をしたことを、本件カメラ室収容を継続する必要性を基礎付ける事情として重視することは相当でないというべきである。 ること自体が原告の精神の安定を乱す主たる原因であったといえ、原告が上記発言をしたことを、本件カメラ室収容を継続する必要性を基礎付ける事情として重視することは相当でないというべきである。 また、上記②については、確かに、原告は、令和5年5月12日から同月22日までの間、断続的な不食の状況となっていた(認定事実(5)ウ)ものの、食べたり食べなかったりというものであって、不食による自殺企図(餓死を意図した不食)といえないことはもとより、不食による生命への危険(極度の栄養失調等)が危惧される状況であったともいえな い。原告自身、医師Aに対し、そのような不食に至った理由について「カメラ室で限界が来た」と説明し、医師Aも、原告につき「反応性(ストレス性)不食」と診断していること(認定事実(5)ウ)も踏まえれば、原告の断続的な不食は、本件カメラ室収容の継続によるストレスを原因とするものとみて不自然ではなく、このことを本件カメラ室収容を継続す る根拠として重視することは、本件カメラ室収容によるストレス反応をもって本件カメラ室収容を正当化するものであり、相当でない。これらを措いても、7月面接の時点(同年7月18日)で、上記の断続的な不食が解消した時(同年5月22日)から既に2か月近くが経過していることも踏まえれば、上記断続的な不食につき、7月面接の時点における 原告の自殺企図や自傷行為の危険性を基礎付ける事情とみることはできない。 そして、上記③については、原告が、親族が面会に訪れないことや、親族との信書による連絡が思うようにいかないことにより、精神が不安定となったり、希死念慮を示したりしたことはうかがわれず、原告の外 部交通状況は、原告が自殺企図や自傷行為に及ぶ現実的で具体的な危険 - による連絡が思うようにいかないことにより、精神が不安定となったり、希死念慮を示したりしたことはうかがわれず、原告の外 部交通状況は、原告が自殺企図や自傷行為に及ぶ現実的で具体的な危険 - 33 - 性を基礎付けるものとはいえない。 したがって、被告が指摘する事情は、いずれも上記(イ)の認定判断を左右するに足りない。 なお、主任矯正処遇官は、7月面接に際し、原告が懲役22年もの長期に及ぶ本件有罪判決を受けていることや、いまだ本件刑事事件に係る 控訴審期日が未指定であることも考慮して、原告について、本件カメラ室収容の継続の必要性があるとの意見を述べている(認定事実(5)オ)。 しかし、長期刑の有罪判決を受けた未決拘禁者が前途を悲観するなどして自殺企図や自傷行為に及ぶ可能性があることは、一般論としてはそのとおりであるとしても、原告は、乙拘置支所において、前件カメラ室収 容を解除され、一般居室に転室した(令和5年2月1日)後の同月3日、本件有罪判決を受けているものの、その後甲拘置所への移送(同年3月2日)までの間に、乙拘置支所の一般居室において自殺企図や自傷行為に及ぶことはなかったこと(同(3)キ及びク)や、7月面接に際しても、「冤罪を晴らすまでは死ねません。」と述べて、希死念慮を明確に否定 していることにも照らせば、本件有罪判決や控訴審の進捗に係る上記事情は、原告が自殺企図や自傷行為に及ぶ現実的で具体的な危険性を基礎付けるものとはいえない。 (エ) 以上によれば、7月面接の実施時点(令和5年7月18日)において、原告が自殺企図や自傷行為に及ぶ危険性は、抽象的なものにとどまり、 客観的に見て、監視カメラにより常時監視し続けることを要するほどに現実的で具体的なもの 施時点(令和5年7月18日)において、原告が自殺企図や自傷行為に及ぶ危険性は、抽象的なものにとどまり、 客観的に見て、監視カメラにより常時監視し続けることを要するほどに現実的で具体的なものではなかったというべきである。しかも、原告は、視線恐怖症であることを申告し、本件カメラ室収容の強いストレスにより不食になったなどと述べ、医師Aや職員に対して繰り返しそのストレスや苦痛を訴えていたものであって、さらなる本件カメラ室収容の継続 は、当時未決拘禁者であった原告に相当な精神的苦痛を強いることが予 - 34 - 想された。そして、これらのことは、所長においても、本件入所以降の原告の言動等のほか、控訴審弁護人からされた7月申入れの内容や、同月18日に行われた7月面接の結果等を通じ、遅くとも同日(7月面接時)までには、十分に認識し又は認識し得たものというべきである。 これらの点に加え、7月面接の時点で、本件カメラ室収容の開始(令 和5年3月2日)から既に約4か月半もの期間が経過していたこと(なお、自殺企図①及び②の後に行われた乙拘置支所における前件カメラ室収容の期間は、約1か月半である。また、自殺企図①及び②から既に6か月以上が経過している。)や、医学的な見地から自殺企図等の危険性を指摘する医師の意見等も見当たらないことなども踏まえれば、7月面 接(同年7月18日)以降も原告に対する本件カメラ室収容を継続することは、過去の自殺未遂歴や精神疾患等を考慮しても、明らかに必要な限度を超えているというべきであり、同日以降も原告に対する本件カメラ室収容を継続することとした所長の判断は、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず、その裁量権の範囲を逸脱し又はこ れを濫用したものといわざるを得ない 降も原告に対する本件カメラ室収容を継続することとした所長の判断は、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものといわざるを得ず、その裁量権の範囲を逸脱し又はこ れを濫用したものといわざるを得ない。 そうすると、所長が7月面接(令和5年7月18日)後も原告に対する本件カメラ室収容を継続し、同年12月4日まで原告を本件カメラ室に収容したことは、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したものというべきであって、国家賠償法上違法であり、この点につき所長に過失も 認められる。 (3) 被告が指摘するその他の事情について被告は、7月面接時点(令和5年7月18日)以降に生じた、本件カメラ室収容の必要性を基礎付ける事情として、原告が、①同年8月4日以降に断続的な不食に及んだこと、②座布団を頭部に被ったり載せたりして職員によ る視察を妨害する異常行動に及んだこと、③同月24日以降、医師による診 - 35 - 察を複数回受けた際、精神的にまいっているとか、ストレスがひどいなどと訴え、抗精神病薬の処方が追加されるなど、不安定な状況であったこと、④10月面接の際、ストレスが限界に達することにより、自殺企図や自傷行為を含む衝動的、突発的な行動に及ぶおそれがあることを示唆する内容を述べていたこと、⑤原告の親族が面会に訪れないなど、原告の外部交通が途絶え ていたことを指摘する。 しかし、上記①については、令和5年5月の不食について前記(2)イ(ウ)で述べたところと同様に、原告が自殺企図や自傷行為として意図的に行ったものとみることはできないし、これも本件カメラ室収容によるストレスに起因するものとみて不自然ではないから、これを本件カメラ室収容を継続する根 拠として重視することは相当でない(かえって、原 たものとみることはできないし、これも本件カメラ室収容によるストレスに起因するものとみて不自然ではないから、これを本件カメラ室収容を継続する根 拠として重視することは相当でない(かえって、原告を一般居室に転室させていれば、原告は令和5年8月に不食に陥らなかった可能性が高い。)。 また、上記②については、座布団を頭部に被ったり載せたりすることは、自殺企図や自傷行為と直ちに結びつくものではないし、かえって、上記行為は、原告が、本件カメラ室収容による常時監視状態から生じるストレスを少 しでも避けようとして及んだものと考えられる(認定事実(7)オ)から、上記①と同様、原告を一般居室に転室させていれば、原告がこのような行為に及ぶことはなかった可能性が高い。 また、上記③については、前記1の認定事実によれば、原告は、令和5年8月24日以降、医師の診察を受けた際、「カメラが気になり、精神的にま いって」いるとか、「ストレスがひどい」とか、「調子がいいとはいえない」などと訴えていたことが認められる(同(7)イ及びエ)。しかし、これらは、原告が本件カメラ室収容による監視によってストレスを感じていることを強く訴えるものであるところ、原告が医師Aに対し「視線恐怖症」との診断歴がある旨を申告していたことも考慮すれば、原告は本当に本件カメラ室収容 により重大なストレスを感じていたものと考えられ、このことを、原告に対 - 36 - して本件カメラ室収容を継続する根拠として重視することは相当でない。 また、上記④については、原告が、10月面接に際し、社会に未練はない旨述べたことについては、原告が、本件刑事事件に係る控訴審判決につき上訴の意思があるのか尋ねられたのに対し、その回答の中で、「刑務所に行かざるを ついては、原告が、10月面接に際し、社会に未練はない旨述べたことについては、原告が、本件刑事事件に係る控訴審判決につき上訴の意思があるのか尋ねられたのに対し、その回答の中で、「刑務所に行かざるを得ない状況に追い込まれれば、素直に刑に服するつもりです」と述べ たのに続けて上記発言をしたものであって(乙58)、長期間社会に復帰できない状況を受け入れる心情をいうものであり、死にたいという趣旨をいうものではない。また、本件カメラ室への収容が続けば、ストレスが高じて死にたくなるはずである旨の発言についても、本件カメラ室収容により常時監視される辛さを強い表現で訴えているものであって、原告は、10月面接に 際し、裁判が完遂していない以上、死ぬわけにはいかず、目の前にロープがあったとしても、首をくくる気にはなれないとか、監視カメラさえなければ、死にたくなったりはしないはずであるなどと述べていること(認定事実(7)オ)も踏まえれば、被告の指摘する発言をもって、原告の自殺企図や自傷行為の現実的で具体的な危険性を基礎付ける事情と評価することはできず、本 件カメラ室収容の継続の必要性を基礎付ける事情ともいえない。 さらに、上記⑤については、前記(2)イ(ウ)で述べたところと同様に、原告の自殺企図や自傷行為のおそれを基礎付ける事情とみることはできない。 したがって、被告の指摘する上記の事情は、いずれも前記(2)イの認定判断を左右しない。 なお、原告は、令和5年8月23日に、本件損壊行為に及んだことを契機として本件保護室収容をされ、その後、同月24日には、これまでの「要視察者(自殺及び自傷)」の指定を「要視察者(自殺及び自傷、その他(粗暴性))」に変更されている(認定事実(6)、(7)ア)。しかし、本件損壊行為 室収容をされ、その後、同月24日には、これまでの「要視察者(自殺及び自傷)」の指定を「要視察者(自殺及び自傷、その他(粗暴性))」に変更されている(認定事実(6)、(7)ア)。しかし、本件損壊行為は、その態様からして、原告が、ストレスの原因となっている監視カメラを 損壊することを意図したものであり、原告が自殺企図や自傷行為に及ぶ危険 - 37 - 性を基礎付ける事情とはいえないし、本件カメラ室収容が本件損壊行為の主たる原因なのであるから、本件カメラ室収容の継続の必要性を基礎付ける事情ともいえない。 (4) 損害額について前記(2)イ(エ)のとおり、所長が、令和5年7月18日(7月面接時点)か ら同年12月4日まで、本件カメラ室収容を継続したことは、国家賠償法上違法である。そして、上記期間は約4か月半に及んでいるところ、この間、原告は、前記(1)イのとおり重大なプライバシー権の制限や心理的負担を伴うカメラ室への収容を余儀なくされているほか、実際にも、上記(3)のとおり、令和5年8月に断続的な不食の状態に陥り、その後も、医師に対し、監視カ メラにより常時監視されているストレスを訴え続けていることからすれば、原告に実際に生じた精神的苦痛の程度も相応に大きいものであったと考えられる。これらの事情に加え、その他本件に表れた一切の事情を勘案すれば、同年7月18日以降の本件カメラ室収容の継続により原告に生じた精神的損害に対する慰謝料としては、40万円をもって相当と認める。 (5) 第1事件についての小括以上によれば、原告の第1事件に係る請求は、被告に対し、40万円及びこれに対する令和5年10月3日(第1事件に係る訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による 以上によれば、原告の第1事件に係る請求は、被告に対し、40万円及びこれに対する令和5年10月3日(第1事件に係る訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない(なお、原告は、遅延損害金の割合を 年10%としているが、民法所定の年3%を超える部分については、法令上の根拠を欠くものであって、認められない。)。 4 第2事件について(1) 本件カメラ室収容を理由に損害賠償を求める部分について原告は、第2事件に関しても、本件カメラ室収容が国家賠償法上違法であ り、これにより精神的損害を被ったとして、被告に対し、損害賠償を求めて - 38 - いるところ、原告の第2事件の請求のうちかかる部分は、第1事件に係る請求と訴訟物が同一である。したがって、原告の第2事件に係る訴えのうち、本件カメラ室収容を理由に被告に対して損害賠償を求める部分は、二重起訴(民事訴訟法142条)であって不適法であり、却下を免れない。 (2) 座布団を取り上げる旨の脅迫を理由に損害賠償を求める部分について 原告は、令和5年8月4日以降、本件カメラ室収容によるストレスに耐えられず、少しでも監視カメラに映ることを避けるため、座布団を頭から被るようになり、同月9日時点(第2事件の訴状作成日)でも、同様の措置を執っていたところ、職員らは、原告に対し、頭部に被っている座布団を取るよう指示し、原告が座布団を外すためには監視カメラのない居室へ移室が必要 である旨を再三訴えているにもかかわらず、かえって、座布団を取り上げる旨述べて原告を脅迫したものであり、かかる行為は、国家賠償法上違法であると主張する。 そこで検討するに 室が必要 である旨を再三訴えているにもかかわらず、かえって、座布団を取り上げる旨述べて原告を脅迫したものであり、かかる行為は、国家賠償法上違法であると主張する。 そこで検討するに、前記1の認定事実によれば、原告は、令和5年8月4日以降、本件カメラ室において、日中、座布団を頭部に被ったまま生活する ようになり、職員らは、原告に対し、座布団を頭部から外すよう再三指導をしていたものの、原告が従わなかったことから、原告に対し、反則行為の疑いがあるとして調査に付したり、原告に貸与されていた座布団を通常とは異なる規格のものに取り換えたりしたことが認められる(同(5)カ)。 しかるところ、原告が、貸与された座布団を頭部に被った行為は、貸与物 品(座布団)を本来の用途とは異なる用途に用いる行為であるといえるから、甲拘置所において定められた遵守事項(物品等不正使用。乙3・3頁の項目21参照)に違反する反則行為といわざるを得ない(関係法令の定め(3)参照)。そうすると、職員らが、原告に対し、かかる行為をやめるよう指導したり、反則行為の疑いがあるとして調査に付したりしたことは、反則行為へ の対応として合理的な根拠を伴うものといえる上、仮に、上記指導の際、職 - 39 - 員らが、原告に対し、かかる行為を継続すれば貸与している座布団を取り上げる旨の発言をしていたとしても、かかる発言は、反則行為への指導ないし注意としてされたものといえ、著しく不相当なものとはいえず、原告に対する違法な脅迫行為と評価することはできない(なお、前述のとおり、令和5年7月18日以降の本件カメラ室収容の継続は違法というべきであるが、遵 守事項に違反する反則行為をやめるよう指導したり調査に付したりすることはこれとは別の問題であり、 なお、前述のとおり、令和5年7月18日以降の本件カメラ室収容の継続は違法というべきであるが、遵 守事項に違反する反則行為をやめるよう指導したり調査に付したりすることはこれとは別の問題であり、前者が違法と評価されるからといって、後者が同様に違法と評価されるべきものではない。)。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。そうすると、損害額について判断するまでもなく、被告は、原告に対し、上記主張に基づい て国家賠償法1条1項に基づく損害賠償義務を負うとは認められない。 (3) 第2事件についての小括以上によれば、原告の第2事件に係る訴えのうち、本件カメラ室収容を理由に損害賠償を求める部分については、不適法であるからこれを却下すべきであり、座布団を取り上げる旨の脅迫を理由とする損害賠償請求は、違法な 脅迫行為があったとは認められないから、理由がない。 5 第3事件について(1) 国家賠償法上違法な行為の有無について原告は、本件身体検査の際、職員らは、無抵抗の原告に対し、必要もないのに、当時原告が着用していた本件ジャンパーを強引に脱がせ、これにより、 本件ジャンパーの表面の右側ポケット部分を破損させた上、この際、原告の右腕を無理な方向に曲げ、これにより、原告は肉体的苦痛を味わったのであって、かかる行為は国家賠償法上違法である旨主張する。 刑事収容施設法75条1項は、刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、被収容者について、その身体、着衣、所持品 及び居室を検査することができる旨規定する(関係法令の定め(4)参照)。 - 40 - しかるところ、前記1(6)の認定事実によれば、原告は、令和5年8月23日の昼頃、本件 及び居室を検査することができる旨規定する(関係法令の定め(4)参照)。 - 40 - しかるところ、前記1(6)の認定事実によれば、原告は、令和5年8月23日の昼頃、本件カメラ室に設置された監視カメラに向けて書籍(模範六法)を投げつけてこれを損壊する行為(本件損壊行為)に及び、職員らから、これをやめるよう指示を受けたのに対し、職員らに目掛けて上記書籍を投げつけようとする構えを示したことから、保護室まで連行され、保護室に収容さ れた(本件保護室収容)。かかる経緯に照らせば、職員らが、上記連行の時点で、原告が着衣や身体に自傷他害行為等につながり得る保管私物等を隠匿している可能性があると判断したこともやむを得ないものであり、職員らが、本件保護室収容に際し、原告に対して本件身体検査を実施したことは、刑事収容施設法の上記規定に照らし、必要性及び相当性を欠くものであったとは 認められない。また、原告は、上記連行の際、激しく四肢を動かすなどして抵抗していたこと(認定事実(6))からすれば、職員らが、本件身体検査の際、原告の着用していた本件ジャンパーを脱がせたことも、身体検査実施のための有形力の行使として、必要性及び相当性を欠くものとはいえない。 そして、職員らが原告の着用する本件ジャンパーを脱がせる状況を撮影し た、ビデオカメラ映像を切り抜いた一連の画像(乙67の別紙2の写真52~89)を見ても、本件ジャンパーを脱がせる際の行為により、本件ジャンパーの破損(表面の右側ポケット部分の破損)が生じたことは確認できないし、右側ポケット部分やその周辺を強引に引っ張るような脱がせ方がされていたとも認められない。これに加え、①本件保護室収容がされる前の段階で、 本件ジャンパーがどのような状況であったか( きないし、右側ポケット部分やその周辺を強引に引っ張るような脱がせ方がされていたとも認められない。これに加え、①本件保護室収容がされる前の段階で、 本件ジャンパーがどのような状況であったか(破損は生じていなかったか)を認定し得る的確な証拠はないこと、②原告は、本件ジャンパーを脱がされる際、本件ジャンパーが破れた感覚があった旨供述している(原告本人15~16、24~25)ものの、かかる供述は、感覚的であいまいなものというほかなく(原告は、少なくとも、本件ジャンパーが破れた音を聞いたわけ ではない旨供述している。)、原告自身、本件身体検査の直後は本件ジャン - 41 - パーが破損したことに気付かず、直ちに職員らに対して苦情を申し入れていない旨供述していること(原告本人25~26頁)をも踏まえれば、本件身体検査の際に本件ジャンパーが破損したとは認めるに足りない。 また、上記ビデオカメラ映像の切抜き画像等を子細に検討しても、職員らが、本件身体検査や本件保護室収容に際し、本件ジャンパーを脱がせるため 又は原告が暴れるのを制止するために必要な限度を超えて、原告の右腕を無理な方向に曲げる行為をしたとは認められない。また、職員らが、原告に肉体的苦痛を与えるために、あえてそのような行為をしたとも認められない。 以上によれば、職員らが、本件身体検査に際し、原告の私物である本件ジャンパーを破損させたとは認められず、また、本件身体検査や本件保護室収 容の際に、必要な限度を超えて、原告の右腕を無理な方向に曲げる行為をしたとも認められない。したがって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (2) 第3事件についての小括以上によれば、第3事件に関し、職員らに国家賠償法上違法な行為があっ たとも認められない。したがって、原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (2) 第3事件についての小括以上によれば、第3事件に関し、職員らに国家賠償法上違法な行為があっ たとは認められないから、損害額について判断するまでもなく、原告の第3事件に係る請求は理由がない。 6 第4事件について(1) 国家賠償法上違法な行為の有無についてア原告は、処遇首席と名乗っていた職員は、令和5年8月10日、原告が 監視カメラを外すよう求めたのに対し、「カメラに透明のカバーを付ければよい」とか、「カメラ付きの別の居室に移室して、カメラがないと思い込めばよい」などと述べたものであり、かかる発言は、本件カメラ室に収容されたことで摂食障害に陥っている原告に対し、根本的な状況の解決を図る意識がないことを示すものであるとともに、人権意識が欠如したもの であるから、国家賠償法上違法である旨主張する。 - 42 - しかし、令和5年8月10日において、処遇首席(甲拘置所において当時処遇首席の役職にあった者)が原告と接触したとは認められず、処遇首席による上記発言があったとは認められない。 また、処遇首席以外の職員による上記発言があったかどうかは証拠上明らかでないが、仮にそのような発言があったとしても、発言の際の口調や 表情、前後の文脈を含むニュアンス、当該職員と原告との関係性等により受ける印象も変わり得るし、当該職員がその発言をした真意や意図も明らかでなく、その内容が差別的、侮辱的であるなど明らかに違法性を伴うものともいえないから、上記発言をもって直ちに国家賠償法上違法と評価すべきとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 辱的であるなど明らかに違法性を伴うものともいえないから、上記発言をもって直ちに国家賠償法上違法と評価すべきとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 イまた、原告は、処遇首席と名乗っていた職員は、令和5年8月14日の朝、原告に対し、「(食べられない)病気だと思っているだけだ」、「カメラ付きの別の居室に変わればよい」などと、原告の病気(視線恐怖症及びこれによる摂食障害)を理解する気が全くない発言をしたものであり、 かかる発言は、国家賠償法上違法である旨主張する。 しかし、令和5年8月14日において、処遇首席が原告と接触したとは認められず、処遇首席による上記発言があったとは認められない。 また、処遇首席以外の職員による上記発言があったかどうかは証拠上明らかでないが、仮にそのような発言があったとしても、上記アと同様、上 記発言をもって直ちに国家賠償法上違法と評価すべきとはいえない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 ウ原告は、処遇首席と名乗っていた職員は、令和5年8月14日の夕食時、摂食障害で食事を摂ることができない原告に対し、飲食を強要したほか、原告が嘔吐しているにもかかわらず、原告に対し、反則行為について懲罰 のための調査をする旨の告知をしたものであり、これらの行為は、原告に - 43 - 対する過剰な虐待的行為である上、原告の平穏な生活を侵害するものであるから、国家賠償法上違法である旨主張する。 しかし、令和5年8月14日の夕食時に、処遇首席が原告と接触したとは認められず、原告が主張するような行為(飲食の強要や調査の告知)をしたとも認められない。 また、処遇首席以外の しかし、令和5年8月14日の夕食時に、処遇首席が原告と接触したとは認められず、原告が主張するような行為(飲食の強要や調査の告知)をしたとも認められない。 また、処遇首席以外の職員による「飲食の強要」があったかどうかは証拠上明らかでないが、仮に原告がそのように受け取った発言等があったとしても、断続的な不食の状態にあった原告に対し、食事を摂るよう説得することが、直ちに「飲食の強要」として国家賠償法上違法であるとはいえない(原告も、食事を摂らない原告に対して無理やり食事を食べさせたと までは主張していない。原告本人18頁参照)。また、同日において、原告は、座布団を被っていることにつき、反則行為に当たる疑いがあるとして調査に付されたことが認められる(認定事実(5)カ)が、この際、原告が嘔吐していたことを認めるに足りる証拠はなく、仮に、嘔吐していた事実があったとしても、そのような原告に対して反則行為の調査に付する旨告 知することが、直ちに原告に対する違法行為となるものではない。 したがって、職員らに国家賠償法上違法と評価すべき行為があったとは認められない。原告の上記主張はいずれも採用することができない。 (2) 第4事件についての小括以上によれば、第4事件に関し、職員らに国家賠償法上違法な行為があっ たとは認められないから、損害額について判断するまでもなく、原告の第4事件に係る請求は理由がない。 第4 結論よって、原告の第2事件に係る訴えのうち、本件カメラ室収容を理由として被告に対して損害賠償を求める部分は不適法であるからこれを却下し、原告の 第1事件に係る請求は、被告に対して40万円及びこれに対する令和5年10 - 44 - 月3日から支払済みまで年3 告に対して損害賠償を求める部分は不適法であるからこれを却下し、原告の 第1事件に係る請求は、被告に対して40万円及びこれに対する令和5年10 - 44 - 月3日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその限度でこれを認容し、原告のその余の請求(①第1事件に係る請求のうち上記認容部分を除く部分、②第2事件に係る請求のうち上記訴え却下部分を除く部分、③第3事件に係る請求の全部、④第4事件に係る請求の全部)はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり 判決する。なお、仮執行宣言は相当でないから、これを付さないこととする。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地淳 裁判官中村雅人 裁判官牛濵裕輝 - 45 - 別紙1当事者の主張の要旨 1 第1事件について(原告の主張) (1) 本件カメラ室収容は国家賠償法上違法であること以下のとおり、所長が原告に対し本件カメラ室収容をしたことは、国家賠償法上違法である。 アカメラ室への収容に係る拘置所長の裁量は限定されていることそもそも、カメラ室に未決拘禁者を収容することは、刑事収容施設法に規 定されていないから、そのような措置を執ることは許されない。 また、未決拘禁者は、刑事施設に収容されているというだけで常時監視される立場にある訳ではなく、居室内というプライベートな空間における自由及びプライバシーは、未決拘禁者に対しても最大限尊重されなければならな 決拘禁者は、刑事施設に収容されているというだけで常時監視される立場にある訳ではなく、居室内というプライベートな空間における自由及びプライバシーは、未決拘禁者に対しても最大限尊重されなければならない。そして、カメラ室への収容は、用便時の姿態も含めて常時その行動を監 視されることも踏まえると、対象者の人格権及びプライバシー権の制約を伴うものであり、その制約とストレスの程度は刑務官による居室内の検査や巡回視察の場合よりも比較にならないほど大きなものである。そうすると、仮にカメラ室に未決拘禁者を収容することが許容されるとしても、厳格な要件の下でのみ許容されるべきであり、対象者の逃亡や自傷他害の現実的な危険 性を検討し、その必要性と許容性を十分に吟味した上で実施されなければならないというべきである。 イ原告を本件カメラ室に収容することとした所長の判断には裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があること原告は、乙拘置支所において、自殺未遂行為に及んだことはあったものの、 それは、職員らから原告の人権を大きく侵害される行為を受けたことによる - 46 - ものであり、本件入所の頃には、同様の行為に及ぼうとする気持ちはなかった。実際、原告は、乙拘置支所において、上記自殺未遂行為に及んだことにより、カメラ室に収容されたが、令和5年2月には、一般居室に転室しており、その後本件入所に至るまで、何ら問題行動を起こしていなかった。このような原告につき、本件入所の時点でカメラ室に収容する根拠はなかったと いうべきであり、自殺企図行為の防止のための措置を執る必要があったとしても、例えば、居室内における所持品の検査等をすれば十分であるし、原告の動静を把握する必要があるというのであれば、頻回に見回りをし、その情報を職員間で共 行為の防止のための措置を執る必要があったとしても、例えば、居室内における所持品の検査等をすれば十分であるし、原告の動静を把握する必要があるというのであれば、頻回に見回りをし、その情報を職員間で共有すれば足りるのであって、原告を本件カメラ室に収容することとは関連性がない。 また、原告は、本件入所の時点で、職員らに対し、原告が視線恐怖症(重度ストレス)に罹患していることを伝えていた。 これらによれば、所長は、原告につき、本件カメラ室収容のほかに採り得る手段が多数あったにもかかわらず、これらを具体的に検討することなく、しかも、原告が視線恐怖症に罹患していることを知りながら、安易に本件カ メラ室収容を決定したというべきである。そうすると、所長がした、原告に対し本件カメラ室収容を開始することとした判断は、重要な事実の基礎を欠き、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものであって、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してされたことが明らかである。 ウ本件カメラ室収容を令和5年12月4日まで継続することとした判断にも 裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があること原告は、本件カメラ室収容の期間中も、自殺をしようとしたことはなく、他の被収容者や担当職員に対して暴力を振るったこともなかった。 また、原告は、本件カメラ室収容の開始以降、毎日のように、職員に対し、監視カメラにより重大な苦痛を受けている旨訴え続けており、実際、収容期 間中、原告は、本件カメラ室に収容されたことにより、かえって、摂食障害 - 47 - を発症したり、精神的におかしくなったりし、令和5年8月23日には、限界がきて本件カメラ室に設置された監視カメラを壊す行動に至っている。なお、被告は、本件カメラ室収容の期間中に、原告が異常行動に及んでいる旨主張 精神的におかしくなったりし、令和5年8月23日には、限界がきて本件カメラ室に設置された監視カメラを壊す行動に至っている。なお、被告は、本件カメラ室収容の期間中に、原告が異常行動に及んでいる旨主張するが、これは、長期にわたり、原告が本件カメラ室に収容され、精神的ストレスが限界に達した結果である。 そうすると、所長は、本件カメラ室収容開始以降、その必要性を慎重に判断することなく、かつ、原告が監視カメラにより重大な精神的苦痛を受けていることを知りながら、同年12月4日までという長期にわたり、漫然と本件カメラ室収容を継続し、原告に過度の精神的苦痛を与え続けたものである。 かかる判断は、カメラ室収容の必要性・相当性を十分かつ慎重に判断すべき 義務を怠ったものであり、重要な事実を欠いた著しく妥当性を欠く処遇であることから、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がある。 (2) 損害額について上記(1)の所長による国家賠償法上違法な行為により、原告は精神的苦痛を受けたところ、その慰謝料は100万円が相当である。 (被告の主張)(1) 本件カメラ室収容は国家賠償法上違法であるとはいえないこと以下のとおり、所長が原告に対し本件カメラ室収容をしたことは、国家賠償法上違法であるとは認められない。 ア判断枠組み 被収容者の収容の確保は、刑事施設に要請される極めて重要な機能であり、刑事施設の規律及び秩序の根幹をなすものであるところ、被収容者によって自殺又は自傷が行われた場合には、捜査及び公判の遂行又は刑の執行等法令によって被収容者を拘禁する目的が著しく阻害されるから、自殺又は自傷を防止することについても、上記「収容の確保」に含まれる。 そして、刑事施設における被収容者の居室とは、被収 等法令によって被収容者を拘禁する目的が著しく阻害されるから、自殺又は自傷を防止することについても、上記「収容の確保」に含まれる。 そして、刑事施設における被収容者の居室とは、被収容者が主として休息 - 48 - 及び就寝のために使用する場所として刑事施設の長が指定する室をいう(刑事収容施設法4条3項参照)ところ、居室の形態については、未決拘禁者については刑事収容施設法35条2項が、制限区分に応じた居室の形態を定めているほかは、刑事収容施設法上に具体的な規定は置かれていない。また、刑事施設は、被収容者が集団で収容されている拘禁施設であり、被収容者の 収容を確保し、その処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するためには、被収容者の逃亡や自殺・自傷をはじめとする刑事施設の規律及び秩序の維持の妨げとなる行為を未然に防止し、又は早期に発見することが最も重要であるため、被収容者の動静を確認する必要性が高い一方で、一般社会とは異なり、被収容者の施設内における行動は、居室内外を 問わず相当程度制限されており、その制限に違反することは、懲罰等の対象ともなるため、その動静は基本的に常に巡回視察の対象となり得ることからすると、一般国民と比較して被収容者のプライバシーの保護の要請が後退することもやむを得ない。そして、監視カメラによる視察は、刑事施設の職員による巡回視察には人員的な側面からの限界がある中で、それを補完するも のであり、刑事施設の職員による巡回視察と比べて、視認の態様が間接的であることなどからも、被収容者の心理的負担が格段に増大するものではない。 これらによれば、刑事施設において、被収容者をカメラ室に収容することは、刑事施設の職員による巡回視察を補完する手段として必要かつ相当である上 らも、被収容者の心理的負担が格段に増大するものではない。 これらによれば、刑事施設において、被収容者をカメラ室に収容することは、刑事施設の職員による巡回視察を補完する手段として必要かつ相当である上、法令において特段これを禁止する規定もないことからすれば、刑事収容 施設法は、監視カメラによる監視も許容しているというべきである。 そして、被収容者の居室指定は、法令に反しない範囲内では、刑事施設の長の合理的な裁量に委ねられていると解すべきであるところ、カメラ室に被収容者を収容することについても、刑事施設の長の合理的な裁量に委ねられており、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著 しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の範囲の逸脱又は - 49 - その濫用があるとして、国家賠償法上違法となると解するのが相当である。 イ本件カメラ室収容を開始することとした所長の判断について一般に、長期の刑に処される可能性がある犯罪に係る刑事裁判を受けている刑事被告人は、大きな精神的不安を抱えているといえるところ、原告は、懲役22年に処する旨の本件有罪判決を受けており、長期の刑に処せられる 可能性がより高まっていたといえる。また、原告は、乙拘置支所において、令和4年12月に、2回にわたり、衣類で頸部を締め付けるなどの自傷行為に及び、カメラ室に収容されたことがあった。そして、原告は、本件入所に際し、職員との間で実施された面接において、理不尽なことをされれば自暴自棄な状況に陥るなどと、甲拘置所の対応が意に沿わない場合には突発的な いし衝動的に自殺・自傷行為に及ぶ可能性を示唆する言動をしていたところ、これらを踏まえ、同職員は、原告につき、自殺の危険性を「レベル2(視察と配慮 拘置所の対応が意に沿わない場合には突発的な いし衝動的に自殺・自傷行為に及ぶ可能性を示唆する言動をしていたところ、これらを踏まえ、同職員は、原告につき、自殺の危険性を「レベル2(視察と配慮が特に必要)」と評価する内容の自殺危険性判定表(乙26)を作成した。さらに、甲拘置所に所属する医師は、本件入所と同日(令和5年3月2日)に原告を診察し、その上で、原告につき、「希死念慮」が依然として 残存していると診断したほか、「パーソナリティ障害の疑い」と診断し、原告に対し、睡眠薬や抗精神病薬、抗不安薬等を処方した。 これらによれば、本件入所の時点(令和5年3月2日)で、原告の動静を綿密に視察する必要性が高いと判断される状況にあったことは明らかである。そして、所長は、これらの事情を踏まえつつ、処遇統括の意見をも考慮 し、原告につき、今後、突発的に自殺・自傷の異常行動に及ぶことが憂慮され、あるいは、自身の前途を悲観してささいなことで心情不安定に陥るなどして、突発的に自殺又は自傷行為等を惹起することが危惧されることから、原告の動静を綿密に視察する必要があると判断し、本件カメラ室収容を開始したのであって、かかる判断は、重要な事実の基礎を欠くものではなく、社 会通念上著しく妥当性を欠くものとも認められないから、かかる判断に裁量 - 50 - 権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。 ウ令和5年8月9日まで収容を継続した所長の判断について原告は、令和5年7月18日に職員と面接した際、自身が視線恐怖症に罹患しており、ストレスが限界に達していることにより、パニックに陥ると、衝動的、突発的な行動に出ることを示唆する内容を述べた。また、原告は、 同年5月12日から同月22日までの間、断続的に不食を繰り しており、ストレスが限界に達していることにより、パニックに陥ると、衝動的、突発的な行動に出ることを示唆する内容を述べた。また、原告は、 同年5月12日から同月22日までの間、断続的に不食を繰り返し、同月17日、原告の診察を実施した精神科医に対し、急に食事がとれなくなって、カメラ室で限界が来たとか、死にたくなるけど死なないと述べるなどしていたほか、同年8月4日から同月9日までの間も、断続的に不食を繰り返していた。これらによれば、原告の精神状態は著しく不安定であり、本件入所以 前よりも一層、突発的ないし衝動的な行動に注意を要する状況であった。そして、原告の外部交通状況をみても、同年3月2日(本件カメラ室収容の開始日)から同年8月9日までの間、刑事弁護人以外の者で原告との面会に訪れた者はおらず、信書の受発信についても、同日の時点で、原告と親族との交流が途絶えている状態であり、原告の精神的不安が軽減される契機も不見 当であった。さらに、原告は、反則行為を繰り返し、座布団を頭部にかぶったり載せたりして職員による視察を妨害する異常行動にも及んでおり、自身の意に沿わないことが起こった場合には、突発的かつ衝動的な行動に及ぶことが明らかとなっていた。 これらによれば、本件入所(令和5年3月2日)以降、原告の動静を綿密 に視察する必要性は、低下するどころか一層高まる状況であったといえる。 そのため、所長は、原告につき、原告の処遇状況等を把握する職員からの報告内容を踏まえた統括矯正処遇官等の意見をもって、適宜、監視カメラにより原告の動静を綿密に視察する必要性があるか否かを検討し、同年8月9日まで、本件カメラ室収容を継続していたのであって、かかる所長の判断は、 重要な事実の基礎を欠くものではなく、社会通念に照らし著しく妥当性を欠 密に視察する必要性があるか否かを検討し、同年8月9日まで、本件カメラ室収容を継続していたのであって、かかる所長の判断は、 重要な事実の基礎を欠くものではなく、社会通念に照らし著しく妥当性を欠 - 51 - くものとも認められないから、かかる判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。 エ令和5年12月4日まで収容を継続した所長の判断について原告は、令和5年8月24日以降、精神科医による診察を複数回にわたって受けた際、「視線恐怖症があり、カメラが気になり、精神的にまいって、 食事水分とらなくなってきてる。」(同日)、「ジアゼパムは効いていない。 ストレスがひどい。何も考えたくない。」(同月31日)、「調子がいいとはいえない。味がしない。」(同年9月13日)と述べるなどしており、抗精神病薬の処方が追加されるなど、不安定な状況であった。また、原告は、同年10月13日に実施された職員との面接において、「社会に未練はあり ません。」、「居室内の監視カメラにより、心情不安が続いています。」、「監視カメラ居室への収容が続けば、ストレスが高じて死にたくなるはずです」と述べるなど、ストレスが限界に達することにより、自殺自傷を含む衝動的、突発的な行動に及ぶおそれがあることを示唆する内容を述べていた。 さらに、原告の外部交通の状況についても、同年8月9日以降も、上記ウと 同様、刑事弁護人以外の者で原告との面会に訪れた者はおらず、信書の受発信についても、原告と親族との関係に修復がみられず、原告が精神的に不安定な状態に陥るおそれのある状況が認められた。そして、原告は、同月4日以降、日中、職員の指示に従わず、頭部に座布団を載せ、座布団を不正に使用する異常行動をし続けており、その行動は控訴審において判決 定な状態に陥るおそれのある状況が認められた。そして、原告は、同月4日以降、日中、職員の指示に従わず、頭部に座布団を載せ、座布団を不正に使用する異常行動をし続けており、その行動は控訴審において判決言渡しのあ った同年10月13日以降も続いていた。 以上のような状況に照らせば、原告については、令和5年8月10日以降も、同年12月4日までの間、突発的、衝動的な自殺自傷行為等に依然として注意を要する状況が認められたといえる。そのため、所長は、上記ウと同様、原告の処遇状況等を把握する職員からの報告内容のほか、監督職員が把 握する処遇状況等に基づき、原告の動静を綿密に視察する必要性があるかを - 52 - 検討し、同日まで、本件カメラ室収容を継続したものであって、かかる判断は、重要な事実の基礎を欠くものではなく、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとも認められないから、かかる判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。 (2) 損害額について 争う。 2 第2事件について(原告の主張)(1) 職員らによる国家賠償法上違法な行為があったことア本件カメラ室収容について 上記1(原告の主張)(1)に同じ。 イ職員らが原告に対して座布団を取り上げる旨脅迫したこと原告は、令和5年8月4日以降、本件カメラ室収容によるストレスに耐えられず、少しでも監視カメラに映ることを避けるため、座布団を頭から被るようになり、同月9日(第2事件の訴状作成日)にも、同様の措置を執って いた。しかるに、職員らは、原告に対し、頭部に被っている座布団を取るよう指示し、原告が座布団を外すためには監視カメラのない居室へ移室が必要である旨を再三訴えているにもかかわらず、かえ 執って いた。しかるに、職員らは、原告に対し、頭部に被っている座布団を取るよう指示し、原告が座布団を外すためには監視カメラのない居室へ移室が必要である旨を再三訴えているにもかかわらず、かえって、座布団を取り上げる旨述べて原告を脅迫した。 このような職員らの行為は、国家賠償法上違法である。 (2) 損害額について上記(1)の職員らによる国家賠償法上違法な行為により、原告は精神的苦痛を受けたところ、その慰謝料は100万円が相当である。 (被告の主張)(1) 国家賠償法上違法な行為があったとはいえないこと ア本件カメラ室収容について - 53 - 上記1(被告の主張)(1)に同じ。 イ職員らが脅迫に該当する行為をした事実はないこと原告は、本件カメラ室に収容されている際、職員らの指示に従わず、頭部に座布団をかぶり、座布団を不正に使用し続けており、職員による動静視察に支障が生じるおそれがあった。そのため、統括矯正処遇官は、原告に対し、 「動静視察に支障が生ずるおそれがあるため、頭部にかぶっている座布団を至急外すこと」、「これに従わないのであれば、当所の遵守事項に違反するものとして調査に付さざるを得ないほか、当該座布団の引上げや代替品との入替え等といった異なるアプローチで対処せざるを得ない」などと警告したものであり、かかる警告が「脅迫」に該当する余地はない上、かかる対応に 何らの法的義務違反を見出すこともできない。 (2) 損害額について争う。 3 第3事件について(原告の主張) (1) 本件保護室収容に際し国家賠償法上違法な行為があったこと本件保護室収容の開始時に実施された身体検査の際、職員らは、 争う。 3 第3事件について(原告の主張) (1) 本件保護室収容に際し国家賠償法上違法な行為があったこと本件保護室収容の開始時に実施された身体検査の際、職員らは、無抵抗の原告に対し、必要もないのに、当時原告が着用していた革製ジャンパーを強引に脱がせ、これにより、上記ジャンパーの表面の右側ポケット部分を破損させた。 上記身体検査時に上記ジャンパーが破損したことは、原告が、本件保護室収容 がされる前に、上記ジャンパーに破損がなかったことを確認していることや、上記身体検査の際、上記ジャンパーが明らかに破損した感覚があったことからも明らかである。 また、職員らは、上記ジャンパーを強引に脱がせる際、原告の右腕を無理な方向に曲げ、これにより、原告は肉体的苦痛を味わった。 これらの職員らの行為は、国家賠償法上違法である。 - 54 - (2) 損害額上記(1)の職員らによる国家賠償法上違法な行為により、原告は、私物である衣服(ジャンパー)を破損されたほか、精神的苦痛を受けたところ、その慰謝料は30万円が相当である。 (被告の主張) (1) 本件保護室収容に際し国家賠償法上違法な行為があったとはいえないこと本件保護室収容は、原告が、本件カメラ室に設置された監視カメラに書籍を投げつけてこれを損壊しようとする行為に及んだことなどにより行われたものであるところ、これによれば、本件保護室収容を開始するに際し、原告が保管私物等を着衣等に隠匿し、自傷他害行為に及ぶ危険性があったといえるか ら、職員らとしては、原告の身体等の検査を実施する必要性が高かったといえる。そして、職員らは、上記身体検査に際し、原告の着衣を脱がせているところ、これは、原告の当時の言動からして、自 えるか ら、職員らとしては、原告の身体等の検査を実施する必要性が高かったといえる。そして、職員らは、上記身体検査に際し、原告の着衣を脱がせているところ、これは、原告の当時の言動からして、自ら脱衣に応じることを期待することができず、職員及び原告の身体の安全を確保しつつ迅速に保護室への収容を完了させる目的で行ったものであって、必要かつ相当な措置であったといえ る。そうすると、本件保護室収容に際し、職員らに国家賠償法上違法な行為があったとはいえない。 この点を措いても、原告のジャンパーが上記身体検査の実施前にどのような形状であったかは、証拠上明らかにされていない。また、上記身体検査の一連の経緯の中で、職員らが、上記ジャンパーの破損部分(表面の右側ポケット部 分)をつかむなどの行為をしたとは認められない。さらに、原告も、本件保護室収容の中止後、上記ジャンパーの返戻を受けているが、その直後に本件ジャンパーが破損しているなどの申出をしていない。これらによれば、本件ジャンパーの破損が上記身体検査の際に生じたものであるとも認められない。 (2) 損害額について 争う。 - 55 - 4 第4事件について(原告の主張)(1) 職員らによる国家賠償法上違法な行為があったこと原告は、本件入所の日(令和5年3月2日)から本件カメラ室に収容されており、その精神的苦痛のため、同年8月4日から、ストレスによる摂食障害(拒 食症)の状態となっていた。職員らは、そのような状態の原告に対し、次のとおり、国家賠償法上違法な行為をした。 ア職員(処遇首席と名乗っていた者)は、令和5年8月10日、原告が本件カメラ室に設置された監視カメラを外すよう求めたのに対し、「カメラに透明のカバーを付け り、国家賠償法上違法な行為をした。 ア職員(処遇首席と名乗っていた者)は、令和5年8月10日、原告が本件カメラ室に設置された監視カメラを外すよう求めたのに対し、「カメラに透明のカバーを付ければよい」とか、「カメラ付きの別の居室に移室して、カ メラがないと思い込めばよい」などと述べた。かかる発言は、本件カメラ室に収容されたことで摂食障害に陥っている原告に対し、根本的な状況の解決を図る意識がないことを示すものであるとともに、人権意識が欠如したものである。 イ職員(処遇首席と名乗っていた者)は、令和5年8月14日朝、原告に対 し、「(食べられない)病気だと思っているだけだ」、「カメラ付きの別の居室に変わればよい」などと、原告の病気(視線恐怖症及びこれによる摂食障害)を理解する気が全くない発言をした。 ウ職員(処遇首席と名乗っていた者)は、令和5年8月14日の夕食時、摂食障害により食事を摂ることができない原告に対し、飲食を強要したほか、 原告が嘔吐しているにもかかわらず、原告に対し、反則行為について懲罰のための調査をする旨の告知をした。これらの行為は、原告に対する過剰な虐待的行為である上、原告の平穏な生活を侵害するものである。 (2) 損害額上記(1)の職員らによる国家賠償法上違法な行為により、原告は精神的苦痛 を受けたところ、その慰謝料は60万円が相当である。 - 56 - (被告の主張)(1) 国家賠償法上違法な行為があったとはいえないこと以下のとおり、職員らが国家賠償法上違法な行為をした旨の原告の主張は、事実の基礎を欠くものである。 アそもそも、令和5年8月10日において、処遇首席が原告の対応をした事 実はない上、他の職員らが、原告に対し、「カ 賠償法上違法な行為をした旨の原告の主張は、事実の基礎を欠くものである。 アそもそも、令和5年8月10日において、処遇首席が原告の対応をした事 実はない上、他の職員らが、原告に対し、「カメラに透明のカバーを付ければよい」とか、「監視カメラがないと思い込めばいい」などという発言をした事実もない。 イそもそも、令和5年8月14日において、処遇首席が原告の対応をした事実はない上、他の職員らが、原告に対し、「病気だと思っているだけだ」と か、「カメラ付きの別の居室に変わればよい」などという発言をした事実もない。 ウそもそも、令和5年8月14日において、処遇首席が原告の対応をした事実はない。また、原告は、不食する原告に対してできる限り食事を摂るよう指導する職員に対する不満を述べるにすぎず、職員らが飲食を「強要」した と評価し得るような具体的事実を全く明らかにしていない。さらに、職員らは、令和5年8月7日から同月14日にかけて、複数回、原告が頭部から座布団を被っている状況を認めたことから、原告に対し、反則容疑行為について調査に付する旨の告知をしたが、その際、原告が嘔吐した状況はなかった。 (2) 損害額について 争う。
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