平成16(わ)621 住居侵入,現住建造物等放火,殺人被告

裁判年月日・裁判所
平成17年3月31日 水戸地方裁判所
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判決文本文8,594 文字)

主文 被告人を懲役14年に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,昭和58年ころから,肩書住居地所在の借家に内縁の夫と居住し,平成5年ころからは小川町から生活保護を受給していた。しかし,被告人は,内縁の夫が死亡した平成15年4月ころ以降,生活保護費を浪費して家賃をしばしば滞納するようになり,同年9月12日には,水戸地方福祉事務所の職員から家賃の滞納について注意され,そのころ,民生委員からも家賃を払わないと生活保護が取り消される旨注意された。 一方,貸主の被害者は,被告人から家賃を確実に徴収するため,被告人の友人である(A)に対し,被告人が生活保護費を受け取るために小川町役場まで行く際に被告人に付き添い,被告人が受け取った生活保護費の中から(A)が家賃分をその場で受け取り,被害者宅へ郵送するように求め,(A)からその旨了承を得た。そのため被告人は,平成16年4月30日,上記方法で家賃1万9000円を納めたものの,同年6月初めころ,息子の(B)から,6月分の生活保護費の中から5万円を渡すようにせびられ,断り切れずにこれを貸すことを約束した。そして,被告人は,同年6月4日,(B)とともに小川町役場に行き,同所で同年6月分の生活保護費8万2250円を支給されたが,前同様に,家賃と借金の返済分合計2万円を(A)に渡し,(A)において被害者宛の封筒に入れ,被告人がこれを小川町役場前のポストに投函した。 その後,被告人は,(B)に対し,手持ちの現金の中から3万円を渡すとともに,(A)が家賃として2万円を被害者に郵送したことや,残金は生活費なので渡せないことを説明した。ところが,(B)から約束どおりに金を渡すように要求されたため,被告人は,やむなく(B)とともに家賃等2万円を入れた上記封筒を上記ポスト内か 郵送したことや,残金は生活費なので渡せないことを説明した。ところが,(B)から約束どおりに金を渡すように要求されたため,被告人は,やむなく(B)とともに家賃等2万円を入れた上記封筒を上記ポスト内から取り戻した上,中の現金2万円を(B)に渡した。被害者は,同月8日,被告人からの家賃が届かないことから,(A)にその旨連絡すると,(A)から常陸小川郵便局に同月4日に投函した被害者宛の郵便物が届いていない旨が伝えられ,郵便局職員からの電話により被告人が郵便ポスト内から被害者宛の郵便物を取り出したことを知った。 被害者は,被告人の行動に強く怒り,同日午後1時ころ,被告人方に電話をかけ,被告人に対し,借家を退去するように要求した上,小川町役場にも家賃滞納の事実を告げる旨厳しく言った。これに対し,被告人は,5万円の現金を(B)に渡したために家賃を払えなかった旨弁解したが,被害者から「5万円も渡す奴があるか」などと更に厳しく叱責された。その後,被害者が(A)に電話をかけ,被告人への発言内容を伝えたところ,被告人が被害者を逆恨みして危害を加えかねないと思った(A)から,被告人を過度に責めない方がいい旨助言された。被害者は,その助言を受けて,被告人方に再度電話を掛け,被告人に対し,「今回は勘弁してやっから」などと言い,期限の猶予を与えるが来月は必ず家賃を支払うよう要求した。しかし,被告人は,再度家賃を滞納した場合には,借家を退去させられ,滞納の事実を小川町役場に報告されて生活保護が打ち切られることになると考え,家賃を請求する被害者を逆恨みし,さらに,被害者がかねてから被告人と犬猿の仲にある(C)と一緒になって被告人の悪口を言いふらしていると思い込んでいたことや,家賃を支払う際の被害者の態度も気に入らなかったことなどから,被害者に対する怒りを募らせるに至 ねてから被告人と犬猿の仲にある(C)と一緒になって被告人の悪口を言いふらしていると思い込んでいたことや,家賃を支払う際の被害者の態度も気に入らなかったことなどから,被害者に対する怒りを募らせるに至った。 被告人は,被害者に対する憎悪を抑えきれなくなって,同月10日午後11時ころ,同女を殺害することを決意し,その方法として被害者方にある包丁を用いて同人を刺殺することを企て,同人方へ歩いて向かった。被告人は,被害者方隣りの(D)方敷地を通り,(D)方と被害者方との間に設置されたブロック塀を乗り越えて被害者方敷地内に入った。 (罪となるべき事実)被告人は,上記の経緯から,被害者を殺害しようと決意し,平成16年6月10日午後11時10分ころ,茨城県東茨城郡小川町所在の同女が現に住居に使用している木造瓦葺平屋建家屋(床面積約237平方メートル)北東側木製ドアをくぎ抜きでこじ開け,同所から同家屋内に侵入し,同日午後11時20分ころ,同家屋南西側廊下において,同女(当時77歳)に対し,殺意をもって,その右背部等を果物ナイフ(刃体の長さ約12.5センチメートル)で多数回にわたって突き刺した上,同刺突により同女が死亡して同家屋が現に人が住居に使用せず,かつ,人が現在しない住居であると誤信して,罪証を隠滅するために同家屋を焼損しようと企て,そのころ,同家屋台所のガスコンロの上で,同家屋内にあったカタログ及び同女が家賃の出納状況を記録していたノートを炎上させて放火し,その火を同台所の壁等に燃え移らせ,よって,同家屋を全焼させるとともに,そのころ,上記廊下において,同女を背部刺傷後の焼死により殺害したものである。 (証拠の標目)省略(補足説明) 1 争点本件公訴事実の概要は,被告人が,被害者を殺害する目的で,同人方家屋内に侵入した上,被害者の背部 ,同女を背部刺傷後の焼死により殺害したものである。 (証拠の標目)省略(補足説明) 1 争点本件公訴事実の概要は,被告人が,被害者を殺害する目的で,同人方家屋内に侵入した上,被害者の背部等を果物ナイフで多数回突き刺し,その後,被害者が生存している可能性を認識しながら,罪証を隠滅するために同家屋を焼損しようと企て,同家屋に放火してこれを全焼させるとともに被害者を焼死させた,というものであるところ,弁護人は,(1)上記放火の犯行当時,被告人において被害者がすでに死亡したものと誤信していたから,現住建造物等放火罪の故意を欠き,同罪は成立しない,(2)被害者の死亡原因は客観的には焼死であるから,被告人の果物ナイフを用いた刺突行為と被害者死亡の結果との間には相当因果関係がなく,被害者死亡の結果について故意責任を問うことはできないとして,本件について殺人未遂罪,非現住建造物等放火罪,過失致死罪が成立するに過ぎない旨を主張し,被告人も当公判廷で「放火する時点ではすでに被害者は死んでいるものと思っていた」旨を供述している。そこで,これらの点について説明を補足する。 2 被告人が本件放火の時点で被害者生存の可能性を認識していた事実の有無についてまず,関係証拠によれば,以下のとおり認めることができる。 (1) 被害者の背部には,右上背部,左右腰部及び臀部などに少なくとも8か所の刺創が存在し,そのうち最も深い刺創は,右側胸部に創口を有するもので,右第9肋間から胸腔内に刺入し,右肺下葉に約4.1センチメートルの切痕を与え,第12胸椎右側に約3.1センチメートルの創を与えており,創洞の深さは約15センチメートルである。また,左腰部に創口を有するものについては,創洞は約11センチメートル滑走して腹腔内に達し,第12胸椎左側に刺入している。さらに, チメートルの創を与えており,創洞の深さは約15センチメートルである。また,左腰部に創口を有するものについては,創洞は約11センチメートル滑走して腹腔内に達し,第12胸椎左側に刺入している。さらに,臀部に深さ約4センチメートル,仙骨に切痕を与えて骨内に止まる刺創が存するほか,右腰部などに深さ約2.1センチメートルから約5.5センチメートルの複数の刺創が存する。 (2) 本件刺突に用いられた果物ナイフの刃体の長さは約12.5センチメートルであり,被告人は,これを逆手に持って,廊下で転倒した被害者に対し,その刃体全部が体内に没入するほどの力を込めて,かつ,右側胸部などの身体の枢要部を狙って多数回にわたって突き刺したものである。被告人は,刺突行為終了後,被害者が身動きしなくなったものと認識しており,その脈拍や呼吸の有無を調べるなどの死亡を確認する措置はとっておらず,また,被害者が声を出したり,身体を動かしたりするなどのその生存を示す兆候を被告人において見聞きした事実は一切なかった。 (3) その後,被告人は,自分の家賃滞納の事実を隠すために,その状況を記載したノートを探し,居間にあった同ノートとカタログ雑誌を持って台所に行き,ガスコンロでこれらを炎上させて家屋に放火したものであり,被害者を刺突した南西側廊下と,放火場所である北側台所のガスコンロ付近とは,東西方向に約10メートル,南北方向に約5メートルの距離があった。 以上のとおり,被告人は,強固な確定的殺意をもって,十分な殺傷能力を有するナイフで被害者の背部等を突き刺しており,その攻撃は身体の枢要部に対する執拗かつ強力なものであるから,関係証拠上うかがわれる被告人の知的能力にも照らすと,被害者が全く動かなくなったことなどにより被害者を死亡させたと被告人が誤信してもやむを得ないと考え の枢要部に対する執拗かつ強力なものであるから,関係証拠上うかがわれる被告人の知的能力にも照らすと,被害者が全く動かなくなったことなどにより被害者を死亡させたと被告人が誤信してもやむを得ないと考えられ,しかも,上記の刺突行為終了後,被害者生存の確認や,上記ナイフによる更なる攻撃を行うことなく,被害者の下から離れて台所での放火行為に専念していることは,当時,被告人において,被害者が死亡したものと思い込んでいた事実の有力な裏付けであると解される。 また,家屋に対する放火行為については,罪証隠滅のほかに被害者に対する攻撃行為となり得るものであるが,上記のような強固な殺意を有する被告人が被害者生存の可能性を認識していたのであれば,容易に実行できるナイフでの刺突行為を選択するのが合理的であり,さらに,殺害の手段として放火行為を選択したとしても,被害者が逃げ出す前に確実に焼死させるために,被害者の近辺で火を放つか,台所で放火する場合には火勢の強い方法を選択するのが合理的であると考えられるところ,被告人は,上記のとおりノートとカタログ雑誌をガスコンロ上で炎上させているだけであって,被害者生存の可能性を認識していた者の行動としては不自然,不合理さを払拭できないものというべきである。 そして,被告人は,当公判廷において,放火の時点ですでに被害者が死亡しているものと思っていた旨を明言しているほか,捜査段階においても,ほぼ同様の供述を維持していたものであるところ,これらの供述は,上記の諸点とよく符合するものであって,十分にその信用性を肯定することができる。 これに対し,被告人の検察官調書の中には,「もし,被害者がまだ生きていても,火事で死んでしまえ,というくらいの気持ちもあった」旨の放火の時点で被害者生存の可能性を認識していたことを認めるものが これに対し,被告人の検察官調書の中には,「もし,被害者がまだ生きていても,火事で死んでしまえ,というくらいの気持ちもあった」旨の放火の時点で被害者生存の可能性を認識していたことを認めるものがある(平成16年9月24日付け・乙25)が,同調書を子細に検討すると,「問君は,被害者を刺したとき,被害者が死んだと思ったか,それとも生きていると思ったか。答死んだと思いました。問なぜそう思ったか。答動かなくなったからです」など,検察官の問いに対して被害者が死亡したと思っていた旨を根拠を説明しながら供述し,「問間違いなく死んだと思ったか。答多分死んだと思いました。問家に火を点けることを決めたのはなぜか。答私が,被害者を刺したのを分からなくするためです」という問答の後,検察官の「そのとき,被害者がもしかしたらまだ生きているかもしれないと思わなかったか」との問いに対し,ようやく「ほとんど思いませんでした。でも,もし,被害者がまだ生きていても,火事で死んでしまえというくらいの気持ちはありました」と供述しているのであって,上記の被害者生存の可能性の未必的認識に関する部分については,取調べ検察官の誘導等に対し,被害者の生死を厳密には確認していない被告人が迎合的に供述したものに過ぎないとの評価も可能であって,同部分の信用性を直ちに肯定することは困難というべきである。 以上のとおり,被告人が,本件放火の時点で,被害者生存の可能性を認識していた事実を認めるには合理的な疑いがあるといわざるを得ない。したがって,被告人に現住建造物等放火罪の故意を認めることはできず,これと構成要件的に重なり合う非現住建造物等放火罪の限度で故意の存在が認められるに過ぎない。この点に関する弁護人の主張は理由がある。 3 因果関係の有無について関係証拠によ めることはできず,これと構成要件的に重なり合う非現住建造物等放火罪の限度で故意の存在が認められるに過ぎない。この点に関する弁護人の主張は理由がある。 3 因果関係の有無について関係証拠によれば,被告人は,被害者方南西側廊下において被害者の背部等を果物ナイフで突き刺し,その結果,被害者を身動きできない状態にしたが,刺突行為終了の時点では被害者はまだ生存していたこと,被告人は,刺突により被害者が死亡したものと思い込み,罪証隠滅のために被害者方家屋に放火したところ,被害者はその火が自己の周囲に回っても逃げることができずに焼死したことがそれぞれ認められる。 そして,被告人の刺突行為は,その態様に照らして,被害者の死亡という結果を発生させる蓋然性の高い行為であり,さらに,刺突によって被害者が身動きできないところを火に巻かれて焼死した点をも併せ考えると,その焼死という結果の発生に大きく寄与していることが明らかである。しかも,殺害の相手方が死亡したと思い込んでその犯人が罪証隠滅のために殺害現場となった家屋に放火するという経過事実については,その殺害行為と放火行為自体が密接な関連を有することに加え,一般人にとって予見可能なものと評価することができるのであって,これをもって格別異常な事態とまでいうことはできない。 以上の次第で,被告人の刺突行為と被害者の死亡との間には相当因果関係が存するものと認められ,被告人に対して殺人既遂罪の成立を肯定すべきものと判断される。この点に関する弁護人の主張は採用することができない。 (法令の適用)被告人の判示の所為のうち,住居侵入の点は刑法130条前段に,非現住建造物等放火の点は同法109条1項(刑の長期は,行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後 為のうち,住居侵入の点は刑法130条前段に,非現住建造物等放火の点は同法109条1項(刑の長期は,行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法12条1項に,裁判時においてはその改正後の刑法12条1項によることになるが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。)にそれぞれ該当し,殺人の点は行為時においては平成16年法律第156号による改正前の刑法199条に,裁判時においてはその改正後の刑法199条に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから刑法6条,10条により軽い行為時法の刑によることとし,この住居侵入と非現住建造物等放火及び殺人との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので同法54条1項後段,10条により1罪として最も重い殺人罪の刑で処断することとし,所定刑中有期懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役14年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中120日をその刑に算入することとし,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,生活保護を受給しながら,その浪費等により居住先借家の家賃を滞納していた被告人が,家賃の支払いを請求する大家の被害者を逆恨みし,深夜,ドアをこじ開けて被害者方家屋内に侵入し,逃走しようとする同人に対し,その背後からナイフで背部等を多数回突き刺し,同人が死亡したと誤信して同人方に火を放ち,同人を死亡させた住居侵入,殺人,非現住建造物等放火の事案である。 被告人は,被害者から,家賃の滞納を責められるとともに,町役場にも報告する旨告げられたため,生活保護の支給が停止されるかもしれないと怖れ,被害者が被告人の悪口を言っていると考えていたことなど る。 被告人は,被害者から,家賃の滞納を責められるとともに,町役場にも報告する旨告げられたため,生活保護の支給が停止されるかもしれないと怖れ,被害者が被告人の悪口を言っていると考えていたことなども相まって,被害者を逆恨みして判示殺人に至ったものであるところ,このような生活保護の支給が停止されかねない状況に陥ったのは,被告人自らの無計画な支出等が主な原因であって,いわば自業自得ともいえるのであり,一方,被害者は大家として当然の要求をしたものに過ぎず,被告人を叱責した後には,家賃支払いの猶予を申し出るなどしていることからも,格別の落ち度はないと認められる。このように殺人の動機・経緯は,誠に身勝手かつ理不尽なものというほかなく,同情の余地は乏しい。さらに,罪証隠滅のために被害者方家屋に放火した点についても,甚だ自己中心的な犯行であって,その動機等について酌量の余地はない。 また,住居侵入・殺人の犯行態様についてみると,深夜,くぎ抜きを用いて木製ドアをこじ開けて被害者方家屋内に侵入した上,台所から十分な殺傷能力を有する刃体の長さ約12.5センチメートルの果物ナイフを持ち出し,これを手にして就寝中の被害者に近付き,被告人に気が付いて不自由な足を引きずって必死に逃走する被害者を追いかけ,転倒した被害者の背中を同ナイフで8回にもわたって突き刺したもので,その攻撃の部位,回数,刺創の深さ等に照らし,強固な確定的殺意に基づく執拗かつ残虐極まるものということができる。 被害者は,被告人から就寝中にいきなり襲われ,障害のある足を引きずりながら逃走して転倒したところを,その背後からナイフで多数回にわたって突き刺され,動けないでいるところを炎に囲まれて絶命させられたのであって,その受けた肉体的苦痛,恐怖感等は想像を絶し,孫の成長する姿を見ることもなく突然生 ころを,その背後からナイフで多数回にわたって突き刺され,動けないでいるところを炎に囲まれて絶命させられたのであって,その受けた肉体的苦痛,恐怖感等は想像を絶し,孫の成長する姿を見ることもなく突然生命を奪われたその無念さも計り知れない。また,非現住建造物等放火の被害については,床面積約237平方メートルと広大で築100年以上経過した歴史的価値のある木造の被害家屋が全焼しており,損害額は約1億1000万円相当にも上るなど,その財産的損害は甚大というほかなく,さらに,被害家屋は東側隣地との境界まで5.2メートルの距離にあり,延焼の危険性も高かったと考えられる。 被害者の遺族は,被害者の喜寿を祝おうとしていた矢先に,突然被害者の生命を理不尽な形で奪われたのであるから,その精神的打撃は大きく,被告人に対して極刑を望むなど厳重処罰を求めているのも当然と思われるところ,被告人は,遺族に対し,何ら慰謝の措置を講じておらず,今後これがなされる具体的な見込みもない。 そして,賃貸人に対する殺人,その自宅に対する放火という凶悪な本件犯行が地域住民等に与えた衝撃や不安は大きく,本件の社会的影響は深刻である。 以上のとおり,被告人の刑事責任は重く,これが厳しく問われるのはやむを得ないところである。 他方,被告人が事実を素直に認めて,真相の解明に協力したこと,全般的に場当たり的な犯行であるとの印象が強く,特に非現住建造物等放火については突発的な犯行であること,家族関係に同情すべきものがあること,前科がないことなど被告人のために酌むことのできる事情も認められる。 以上を総合して,被告人に対し,主文のとおり量刑するのが相当と判断した。 (求刑懲役15年)水戸地方裁判所刑事部裁判長裁判官林正彦裁判官江口和 を総合して,被告人に対し,主文のとおり量刑するのが相当と判断した。 (求刑懲役15年)水戸地方裁判所刑事部裁判長裁判官林正彦裁判官江口和伸裁判官諸井明仁

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