平成29(ネ)204 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年5月30日 札幌高等裁判所 その他 札幌地方裁判所 平成23(ワ)1238
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判決文本文324,487 文字)

主文 1 控訴人番号7、同8、同11、同13、同14、同15及び同21-1ないし3の各控訴人の被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイに対する各控訴に基づき、原判決主文第4項中上記各当事者間の部分を次のとおり変更する。 ⑴ 上記各被控訴人は、上記各控訴人に対し、別紙2-1の各控訴人に対応する「認容額」欄記載の各金員及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払え。 ⑵ 上記各控訴人の上記各被控訴人に対するその余の請求をいずれも棄却する。 2 前項の各控訴人の別紙3の各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の前項 の各被控訴人を除く各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 3 控訴人番号1-1ないし3、同22-1及び2、同26-1ないし5並びに同28-1及び2の各控訴人の被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイに対する各控訴に基づき、原判決主文第4項中上記各当事者間の部分を次のとおり変更する。 ⑴ 上記各被控訴人は、上記各控訴人に対し、別紙2-2の各控訴人に対応する「認容額」欄記載の各金員及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を連帯して支払え。 ⑵ 上記各控訴人の上記各被控訴人に対するその余の請求をいずれも棄却する。 4 前項の各控訴人の別紙3の各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の前項 の各被控訴人を除く各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 5 控訴人番号5-1ないし3、同18-1ないし3及び同23の各控訴人の被控訴人エーアンドエーに対する各控訴に基づき、原判決主文第4項中上記各当事者間の部分を次のとおり変更する。 も棄却する。 5 控訴人番号5-1ないし3、同18-1ないし3及び同23の各控訴人の被控訴人エーアンドエーに対する各控訴に基づき、原判決主文第4項中上記各当事者間の部分を次のとおり変更する。 ⑴ 被控訴人エーアンドエーは、上記各控訴人に対し、別紙2-3の各控訴人に 対応する「認容額」欄記載の各金員及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起 算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 上記各控訴人の被控訴人エーアンドエーに対するその余の請求をいずれも棄却する。 6 前項の各控訴人の別紙3の各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の被控訴人エーアンドエーを除く各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 7 控訴人番号17-1ないし10及び同27の各控訴人の被控訴人ノザワに対する各控訴に基づき、原判決主文第4項中上記各当事者間の部分を次のとおり変更する。 ⑴ 被控訴人ノザワは、上記各控訴人に対し、別紙2-4の各控訴人に対応する「認容額」欄記載の各金員及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄 記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 上記各控訴人の被控訴人ノザワに対するその余の請求をいずれも棄却する。 8 前項の各控訴人の別紙3の各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の被控訴人ノザワを除く各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 9 控訴人番号3、同9、同16、同20、同24、同25並びに同29の1及び 2の各控訴人の別紙3の各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 10⑴ 第1項及び第3項の各当事者間の訴訟費用は,第1、2審を通じ、それぞれ別紙2-1及び同2-2の各控訴人に対応する「訴訟費用負担割合」 方」欄記載の各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 10⑴ 第1項及び第3項の各当事者間の訴訟費用は,第1、2審を通じ、それぞれ別紙2-1及び同2-2の各控訴人に対応する「訴訟費用負担割合」欄記載の割合を各控訴人の負担とし、その余をそれぞれ各項の各被控訴人の連帯負担と する。 ⑵ 第5項及び第7項の各当事者間の訴訟費用は,第1、2審を通じ、それぞれ別紙2-3及び同2-4の各控訴人に対応する「訴訟費用負担割合」欄記載の割合を各控訴人の負担とし、その余をそれぞれ各項の被控訴人の負担とする。 ⑶ 第2項、第4項、第6項、第8項及び第9項の各当事者間の控訴費用は、そ れぞれ各控訴人の負担とする。 11 この判決の第1項、第3項、第5項及び第7項の各⑴は、いずれも仮に執行することができる。 事実及び理由 第1章控訴の趣旨 1 原判決主文第4項を次のとおり変更する。 2 別紙3の「請求の相手方」欄記載の各被控訴人は、同欄に対応する「控訴人」欄記載の各控訴人に対し、連帯して、上記各控訴人に対応する「請求額」欄記載の各金員及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2章事案の概要 (以下、この判決において原判決を引用する場合、「,」を「、」と読み替え、また、「原告」を「控訴人」と、「被告企業」を「被控訴人」と読み替えることがある。)第1節事案の要旨第1 控訴人らは、主として北海道内で建物の建築、改修、解体の現場において建築作業に従事し、その際に石綿粉じんに曝露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮 腫等の石綿粉じんに曝露したことによって生ずる疾患(以下「石綿関連疾患」という。)に罹患したと主張する者又はその相続人 業に従事し、その際に石綿粉じんに曝露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮 腫等の石綿粉じんに曝露したことによって生ずる疾患(以下「石綿関連疾患」という。)に罹患したと主張する者又はその相続人である(以下、石綿粉じんに実際に曝露し、石綿関連疾患に罹患したと主張する者を「被災者」といい、被災者らを併せて「本件被災者ら」ということがある。)。 被控訴人らは,建築作業に用いられる建材(以下「建材」という。)を製造販売し ていた会社ないしその権利義務を承継した者である。 本件は、控訴人らが、被控訴人らに対し、被控訴人らが、石綿を含有する建材(以下「石綿含有建材」という。)から生ずる粉じんに曝露すると石綿関連疾患に罹患する危険があること等を表示することなく、石綿含有建材を製造販売したことにより、本件被災者らが石綿関連疾患に罹患したなどと主張して、被控訴人らに対し、不法 行為(民法719条1項後段の類推適用)に基づき、連帯して、被災者1人当たり慰 謝料3000万円及び弁護士費用300万円の合計3300万円(ただし、被災者A(石綿関連疾患について、被控訴人ニチアスから支払を受けている。)については、慰謝料1500万円及び弁護士費用150万円の合計1650万円)の損害賠償及びそれぞれこれに対する各被災者の石綿関連疾患の各診療開始日ないしその後の日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。) 所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する事案である(なお、控訴人らは、原審において、被災者1人当たり慰謝料3500万円及び弁護士費用350万円の合計3850万円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求していたが、当審において、上記のとおり請求を減縮した。)。 また、控訴人らは、本件の被控 人当たり慰謝料3500万円及び弁護士費用350万円の合計3850万円及びこれに対する遅延損害金の支払を請求していたが、当審において、上記のとおり請求を減縮した。)。 また、控訴人らは、本件の被控訴人らに対する訴えと共に、国に対し、本件被災 者らが石綿含有建材から生ずる粉じんに曝露することを防止するために規制権限を行使すべきであったのにこれを怠ったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被控訴人らと連帯して、同額の損害賠償を求める訴えを併せて提起していた。 第2 控訴人らは、原審において、被控訴人らに対し、民法719条1項後段の類推 適用に基づく請求に加え、同項前段や同項後段の直接適用を根拠とする請求や製造物責任法3条1項に基づく請求をしていたが、原審は、控訴人らの被控訴人らに対する請求をいずれも棄却した。これに対し、控訴人らがこれを不服として控訴した。 なお、控訴人らの国に対する訴えについて、原審は、控訴人らの請求を一部認容したところ、国及び控訴人らの一部がいずれも敗訴部分を不服として控訴したが、 当審において、控訴人らと国との間で和解に向けた協議を行うことになり、本件から分離された。 第3 控訴人らは、当審において、次のとおり、被控訴人らに対する請求の内容等を整理した。 控訴人らは、本件で主張する石綿含有建材を、各被災者の職種や稼働時期等から みて、各被災者の下に到達した相当程度の可能性のある建材に絞り込み、各被災者 が石綿関連疾患に罹患したのは主として当該建材が原因であるとして(以下、この建材を「主要原因建材」という。)、主要原因建材を製造販売した被控訴人らのみを各被災者との関係で請求の相手方とし、その他の被控訴人らに対する訴えを取り下げるとともに、請求の内容とし して(以下、この建材を「主要原因建材」という。)、主要原因建材を製造販売した被控訴人らのみを各被災者との関係で請求の相手方とし、その他の被控訴人らに対する訴えを取り下げるとともに、請求の内容としては、民法719条1項後段の類推適用により、第1順位として、各被災者との関係で請求の相手方とされた被控訴人らが各被災者に 生じた損害の全部を連帯して賠償するよう求め、第2順位及び第3順位として、上記損害のうち少なくとも一部を連帯して賠償するよう求めるに至った。 また、控訴人らは、前記の原審段階における民法719条1項前段や同項後段の直接適用を根拠とする主張を撤回し、製造物責任法3条1項に基づく請求の訴えを取り下げた。 第2節前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠(枝番のあるものは、特記しない限り、すべての枝番を含む。以下同じ。)又は弁論の全趣旨によって容易に認めることができる事実)第1 当事者 1 控訴人ら 控訴人らは、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露したことにより、石綿関連疾患に罹患したと主張する者(被災者)又はその相続人(当該相続人の相続人を含む。)である。 2 被控訴人ら⑴ 被控訴人らは、「石綿(アスベスト)含有建材データベース(平成25年2 月版)」(国土交通省と経済産業省が連携し、建設事業者、解体事業者や住宅・建築物所有者等が、解体工事等に際し、使用されている建材の石綿含有情報に関する情報を簡便に把握できるようにすることを目的とし、建材メーカーが過去に製造した石綿含有建材の種類、名称、製造時期、石綿の種類・含有率等の情報及びその検索システムとして構築したもの。以下「国交省データベース」 という。甲C29、30)に、石綿含有建材を製造販売していた企業として掲 載 時期、石綿の種類・含有率等の情報及びその検索システムとして構築したもの。以下「国交省データベース」 という。甲C29、30)に、石綿含有建材を製造販売していた企業として掲 載された株式会社又はその地位を承継した株式会社であり、控訴人らが、各被災者らとの関係で、主要原因建材を製造販売した旨主張している者である。 ⑵ 被控訴人らの商号変更等ア被控訴人AGCは、平成30年7月、旧商号旭硝子株式会社から現商号に商号変更した。 イ被控訴人エーアンドエーは、平成12年10月、株式会社アスク(以下「アスク」という。)と浅野スレート株式会社(以下「浅野スレート」という。)が合併して設立された会社である。アスクは、朝日石綿工業株式会社(以下「朝日石綿工業」という。)が、昭和62年4月、株式会社アスクに商号変更した会社である。 (甲A1256の2)ウ被控訴人クボタは、平成2年、旧商号株式会社久保田鉄工から現商号に商号変更した。被控訴人クボタは、平成15年12月、屋根材事業及び外壁材事業並びにこれに関する権利及び義務の全部を会社分割により被控訴人ケイミューに移転した。 (甲A1260)エ被控訴人ケイミューは、平成15年12月、被控訴人クボタと松下電工株式会社の屋根材事業及び外壁材事業並びにこれに関する権利及び義務の全部を会社分割により承継したクボタ松下電工外装株式会社が、平成22年10月、現商号に商号変更した会社である。 オ被控訴人日鉄ケミカルは、新日鐵化学株式会社が、平成24年10月、新日鉄住金化学株式会社に商号変更し、平成30年10月、新日鉄住金マテリアルズ株式会社を合併し、現商号に商号変更した会社である。 カ被控訴人太平洋セメントは、秩父小野田株式会社(小野 0月、新日鉄住金化学株式会社に商号変更し、平成30年10月、新日鉄住金マテリアルズ株式会社を合併し、現商号に商号変更した会社である。 カ被控訴人太平洋セメントは、秩父小野田株式会社(小野田セメント株式会社と秩父セメント株式会社が平成6年に合併)と日本セメント株式会社が平 成10年に合併して設立された会社である。 (甲A1256の1)キ被控訴人ニチアスは、昭和56年10月、旧商号日本アスベスト株式会社から現商号に商号変更した会社である。 (甲C3の2)ク被控訴人日本インシュレーションは、平成元年4月、旧商号株式会社大阪 パツキング製造所から現商号に商号変更した会社である。 (甲A1305)ケ被控訴人バルカーは、平成30年10月、旧商号日本バルカー工業株式会社から現商号に商号変更した会社である。 コ被控訴人エム・エム・ケイは、三好石綿工業株式会社が、合併や事業譲渡 を通じて三菱セメント石綿工業株式会社となり、昭和48年、同社が三菱セメント建材株式会社に商号変更し、さらに合併を経て三菱マテリアル建材株式会社になり、平成27年10月、現商号に商号変更した会社である。 (甲C2)第2 石綿の概要 1 石綿の種類及び性質次のとおり補正するほか、原判決書18頁19行目から19頁14行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書18頁20行目及び21行目の「蛇文石」を「蛇紋石」と改める。 ⑵ 原判決書18頁20行目の「角閃石系」の後に「(アンフィボール)」を加え る。 ⑶ 原判決書19頁2行目末尾を改行して「(甲A4、394)」を加える。 ⑷ 原判決書19頁14行目末尾を改行して「(甲A4)」を加える。 2 石綿の用途 フィボール)」を加え る。 ⑶ 原判決書19頁2行目末尾を改行して「(甲A4、394)」を加える。 ⑷ 原判決書19頁14行目末尾を改行して「(甲A4)」を加える。 2 石綿の用途我が国においては、石綿の工業的な利用としては、明治時代の後半に保温材や シール材などの生産が開始され、大正時代に建築材料の生産が始まった。特に、 第二次世界大戦後、戦後の経済復興の時期に、重要な資材として工業的に各分野で使用されるようになった。石綿製品は、石綿工業製品(自動車用摩擦材、ジョイントシートなど)と建材製品とに大きく分けられるが、我が国における石綿消費量の多くは建材製品が占めていた。 (甲A4、394) 第3 石綿含有建材の概要等 1 石綿含有建材の概要次のとおり補正するほか、原判決書19頁17行目から20頁9行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書19頁17行目の「上記⑵のとおり」を削る。 ⑵ 原判決書19頁22行目の「被告国」を「国」と改め、以下同様とする。 ⑶ 原判決書20頁9行目末尾を改行して、次のとおり加える。 「 石綿含有建材は、次のような種類に分類できる。なお、各建材の冒頭に付した『①』等の番号は、国交省データベースの別表1『石綿(アスベスト)含有建材名(一般名)リスト』の建材名の冒頭に付された番号と対応しており、以 下、各建材の冒頭に上記番号を付すことがある。 ⑴ 吹付け材①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール、③湿式石綿含有吹付け材、④石綿含有吹付けバーミキュライト及び⑤石綿含有吹付けパーライト⑵ 保温材 ⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材、⑨石綿含有パー ④石綿含有吹付けバーミキュライト及び⑤石綿含有吹付けパーライト⑵ 保温材 ⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材、⑨石綿含有パーライト保温材及び⑩石綿保温材⑶ 耐火被覆材⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種及び⑫石綿含有耐火被覆板 ⑷ 断熱材 ⑬屋根用折板石綿断熱材及び⑭煙突用石綿断熱材⑸ その他石綿含有建材(成形板等)⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグ せっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉕石綿含有せっこうボード、㉖石綿含有パーライト板、㉗石綿含有その他パネル・ボード、㉘石綿含有壁紙、㉙石綿含有ビニル床タイル、㉚石綿含有ビニル床シート、㉛石綿含有けい酸カルシウム床材、㉜石綿含有ソフト巾木、 ㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレート、㉞石綿含有ルーフィング、㉟石綿含有窯業系サイディング、㊱石綿含有建材複合金属系サイディング、㊲石綿含有スレート波板・大波、㊳石綿含有スレート波板・小波、㊴石綿含有スレート波板・その他、㊵石綿セメント管、㊶石綿セメント円筒及び㊷石綿発泡体⑹ 以上のほか、国交省データベースに含まれていない石綿含有建材として、 混和材がある。混和材は、モルタルに練り混ぜる方法で多くの建築現場で使用されてきた建材である(以下混和材については、便宜上『㊸混和材』とする。)。 (甲A36の1及び2、116の1、396 混和材がある。混和材は、モルタルに練り混ぜる方法で多くの建築現場で使用されてきた建材である(以下混和材については、便宜上『㊸混和材』とする。)。 (甲A36の1及び2、116の1、396、1248の2、5、6、甲C29の1ないし2154、30の1)」 2 日本工業規格(JIS)次のとおり補正するほか、原判決書21頁7行目から24行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書21頁20行目の「後記5⑹アのとおり」及び21行目から22行目の「後記5⑹エのとおり」を削る。 ⑵ 原判決書21頁24行目末尾を改行して「(甲A125、149、173)」 を加える。 3 代表的な業界団体次のとおり補正するほか、原判決書21頁26行目から22頁24行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書21頁26行目冒頭の「」を「⑴」と改める。 ⑵ 原判決書22頁13行目冒頭の「」を「⑵」と改める。 ⑶ 原判決書22頁24行目末尾を改行して「(甲C1、2)」を加える。 4 「a」マーク原判決書23頁23行目末尾を改行して「(甲A377、甲C1の523)」を加えるほか、原判決書22頁26行目から23頁23行目までに記載のとおり であるからこれを引用する。 第4 建築工事の概要等 1 建物の種類建物は、その構造を構成する材料によって、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などに分類できる。 木造建物は、柱や梁等の主要構造部に製材(木材を角材や板材にしたもの)や木質材料(合板、集成材などの木材を素材として作られた材料)を用いる建物である。鉄骨造建物は、主要構造部に鉄骨材を用いる建物である。鉄筋コンクリート造建物は、主要構造部に鉄筋コンクリート(棒鋼 )や木質材料(合板、集成材などの木材を素材として作られた材料)を用いる建物である。鉄骨造建物は、主要構造部に鉄骨材を用いる建物である。鉄筋コンクリート造建物は、主要構造部に鉄筋コンクリート(棒鋼を組み立てて作った鉄筋の周囲にコンクリートを打設し、一体に働くようにしたもの)を用いる建築物である。 (甲A113の2、370、371) 2 建築工事の概要原判決書37頁11行目末尾を改行して「(甲A113の2、366、370、371)」を加えるほか、原判決書36頁24行目から37頁11行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 3 建築作業従事者の概要 原判決書35頁6行目末尾を改行して「(甲A375、378、379)」を加えるほか、原判決書35頁1行目から6行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 第5 石綿関連疾患の概要等 1 前提 石綿関連疾患には、石綿肺、肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚がある。本件被災者らは、石綿肺、肺がん又は中皮腫の罹患者である。 石綿曝露の指標となる医学的所見として、胸膜肥厚斑(胸膜プラーク)がある。 胸膜肥厚斑とは、壁側胸膜に生じる両側性の不規則な白板状の限界性線維性肥厚をいう。胸膜肥厚斑は、石綿曝露によってのみ発生すると考えられており、かつ、 石綿曝露によって発生する胸膜病変の中で最も頻度が高いことから、重要な指標とされている。なお、胸膜肥厚斑それ自体では肺機能障害を伴わず、良性病変と考えられている。 2 主な石綿関連疾患次のとおり補正するほか、原判決書30頁17行目から34頁24行目までに 記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書31頁1行目の「され、」の次に「一般的には、」 連疾患次のとおり補正するほか、原判決書30頁17行目から34頁24行目までに 記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書31頁1行目の「され、」の次に「一般的には、」を、3行目の「場合には、」の次に「当該曝露の開始から10年以上経過してから、」をそれぞれ加える。 ⑵ 原判決書32頁18行目の「(胸膜プラーク」から19行目の「以下同じ。)」 までを削る。 ⑶ 原判決書32頁24行目の「後記⑶の」を「後記の」に改める。 ⑷ 原判決書32頁25行目末尾を改行し、「石綿関連疾患としての肺がんは、石綿への曝露の開始から20年以上経過してから発症することが多く、30年以上経過すると発症する率が高くなると言われている。」を加える。 ⑸ 原判決書34頁8行目末尾を改行し、「胸膜中皮腫を始めとする中皮腫につ いては、石綿への曝露からその発症までの潜伏期間は、多くの場合、40年前後である。」を加える。 ⑹ 原判決書34頁24行目末尾を改行して「(甲A106、107、156、乙アA35、1002)」を加える。 第6 粉じん濃度の評価基準 1 粉じん濃度の測定粉じん濃度の測定については、①作業者の個人曝露濃度を測定するという考え方と②作業場(単位作業場)における粉じん濃度を測定するという考え方の2種類がある。 ①作業者の個人曝露濃度を測定する考え方は、個々の労働者に着目したもので、 1日の作業時間中に労働者が曝露する平均粉じん濃度、すなわち時間荷重平均濃度を知るための測定である。②作業場(単位作業場)における粉じん濃度を測定する考え方は、作業場(単位作業場)の環境全体に着目したもので、作業場(単位作業場)における平均濃度及び違いを知るための測定である。 (乙アA7 ある。②作業場(単位作業場)における粉じん濃度を測定する考え方は、作業場(単位作業場)の環境全体に着目したもので、作業場(単位作業場)における平均濃度及び違いを知るための測定である。 (乙アA78(6から7頁)) 2 許容濃度次のとおり補正するほか、原判決書28頁2行目から22行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書28頁7行目の「学術団体」の次に「であり、昭和47年までの名称を日本産業衛生協会という。以下、この名称変更の前後を通じて『日本産業 衛生学会』という。」を加える。 ⑵ 原判決書28頁16行目の「許容濃度を」を「気中許容濃度を、時間荷重平均として、5㎛(マイクロメートル)以上の繊維で」と改める。 ⑶ 原判決書28頁22行目を改行し、次のとおり加える。 「 日本産業衛生学会は、平成13年、リスクアセスメントの手法を導入し、石 綿を発がん物質と分類した上で、過剰発がん生涯リスクレベル10-3、10-4 に対応する評価値として、クリソタイルのみのときは、1ml当たり0.15本、1ml当たり0.015本、クリソタイル以外の石綿繊維を含むときは、それぞれ1ml当たり0.03本、1ml当たり0.003本を勧告した。 (甲A95、98、乙アA172~178、乙ケ1~3)」 3 抑制濃度 次のとおり補正するほか、原判決書28頁24行目から29頁19行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書29頁5行目の「(後記5⑵ウ)」を削る。 ⑵ 原判決書29頁13行目の「成るものをいう。」の次に「局所排気装置は、機械力によって計画どおりに換気をすることができ、また、有害物質の発散源 の近くに置いて有害物質による汚染空気が周 ⑵ 原判決書29頁13行目の「成るものをいう。」の次に「局所排気装置は、機械力によって計画どおりに換気をすることができ、また、有害物質の発散源 の近くに置いて有害物質による汚染空気が周囲の一般空気中に混合分散する前にこれを補足するものであるため、有害物質の拡散を有効に防止し得る装置とされる。」を加える。 ⑶ 原判決書29頁17行目の「後記5のとおり」を「後記第7のとおり」と改める。 ⑷ 原判決書29頁18行目から19行目までの「(後記5⑵ウ、⑶ウ、カ、ケ)」を削る。 ⑸ 原判決書29頁19行目末尾を改行して「(乙アA45、22、50、59、60)」を加える。 4 管理濃度 次のとおり補正するほか、原判決書29頁21行目から30頁12行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書29頁26行目の「(上記ア)」を削る。 ⑵ 原判決書30頁9行目の「後記5のとおり」を「後記第7のとおり」と改める。 ⑶ 原判決書30頁12行目の「(後記5⑷イ、キ、⑸イ)」を削る。 ⑷ 原判決書30頁12行目末尾を改行して「(乙アA78、137、138、乙アB54、55)」を加える。 第7 関係法令等の概要 1 労働安全衛生関係の規制措置の概要次のとおり補正するほか、原判決書47頁5行目から81頁17行目までに記 載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書47頁24行目末尾を改行し、「(乙アB2)」を加える。 ⑵ 原判決書48頁4行目の「という。」の次に「同年11月1日施行」を加える。 ⑶ 原判決書48頁11行目末尾に「(172条)」を加える。 ⑷ 原判決書48頁13行目の「局所排気装置」から14行目の「吸引排出」 いう。」の次に「同年11月1日施行」を加える。 ⑶ 原判決書48頁11行目末尾に「(172条)」を加える。 ⑷ 原判決書48頁13行目の「局所排気装置」から14行目の「吸引排出」までを「局所における吸引排出」と改める。 ⑸ 原判決書48頁15行目の「義務」の次に「(173条)」を加え、同行目の「。なお」から19行目末尾までを削る。 ⑹ 原判決書48頁22行目末尾に「(175条)」を、24行目末尾に「(1 79条)」を、49頁1行目末尾に「(181条)」を、3行目末尾に「(184条)」をそれぞれ加える。 ⑺ 原判決書49頁26行目末尾を改行し、「(乙アB3)」を加える。 ⑻ 原判決書50頁10行目末尾を改行し、「(乙アB4、5)」を加える。 ⑼ 原判決書51頁20行目末尾を改行し、「(乙アB6から8)」を加える。 ⑽ 原判決書52頁4行目末尾を改行し、「(乙アB9)」を加える。 ⑾ 原判決書52頁15行目末尾を改行し、「(乙アB10)」を加える。 ⑿ 原判決書53頁16行目末尾を改行し、「(乙アB12、13)」を加える。 ⒀ 原判決書54頁1行目末尾を改行し、「(乙アB14、15)」を加える。 ⒁ 原判決書54頁20行目末尾を改行し、「(乙アB16から18)」を加え る。 ⒂ 原判決書55頁6行目末尾を改行し、「(乙アB11)」を加える。 ⒃ 原判決書55頁15行目末尾を改行し、「(乙アB19)」を加える。 ⒄ 原判決書56頁7行目末尾を改行し、「(乙アB20)」を加える。 ⒅ 原判決書56頁10行目の「昭和46年」の次に「4月28日」を加える。 ⒆ 原判決書56頁11行目の「制定した」を「制定し、同規則は、一部を除き、 を改行し、「(乙アB20)」を加える。 ⒅ 原判決書56頁10行目の「昭和46年」の次に「4月28日」を加える。 ⒆ 原判決書56頁11行目の「制定した」を「制定し、同規則は、一部を除き、 昭和46年5月1日施行された」と改める。 ⒇ 原判決書56頁13行目の「旧特定化学物質等障害予防規則」を「旧特化則」と改め、以下同様とする。 原判決書56頁15行目の「有害物質」を「有害物等」と改め、以下この項において同様とする。 原判決書56頁21行目の「あるから」から24行目の「指摘した。」までを「あり、そのためには、作業環境内に有害物等が発散することを防止するための施設の整備を進めるべきであり、それに関連する抑制の濃度(抑制濃度)が必要になるとした。」と改める。 原判決書56頁25行目の「(上記2⑸ア)」を削る。 原判決書57頁7行目の「第二類物質」の次に「(2条2号、別表第2)」を、13行目末尾に「(4条1項、2項)」をそれぞれ加える。 原判決書57頁26行目の「性能として、」の次に「そのフードは、石綿の粉じんの発散源ごとに設けられることなどの要件に適合するものでなければならず、また、」を加える。 原判決書58頁2行目の「負う」の次に「(6条1項、2項)」を加える。 原判決書58頁3行目の「昭和46年」の次に「4月28日」を加える。 原判決書58頁7行目の「負う」の次に「(8条)」を、18行目の「負う」の次に「(25条1号)」を、22行目の「負う」の次に「(26条1項、2項)」を、26行目の「負う」の次に「(29条)」を、59頁4行目の「負 う」の次に「(30条)」を、7行目の「負う」の次に「(31条)」を、1 0行目の「 に「(26条1項、2項)」を、26行目の「負う」の次に「(29条)」を、59頁4行目の「負 う」の次に「(30条)」を、7行目の「負う」の次に「(31条)」を、1 0行目の「負う」の次に「(32条、34条)」を、15行目の「負う」の次に「(28条)」をそれぞれ加える。 原判決書59頁24行目末尾を改行し、「(乙B21から24、85)」を加える。 原判決書60頁3行目の「第57号」の次に「。以下『安衛法』という。」 を、4行目の「第318号」の次に「。以下『安衛令』という。」を、6行目の「第32号」の次に「。以下『安衛則』という。」を、7行目の「第39号」の次に「。以下『特化則』という。」をそれぞれ加える。 原判決書60頁15行目の「労働安全衛生法」を「安衛法」と、16行目の「同法施行令」を「安衛令」と、18行目の「労働安全衛生規則」を「安衛則」 と、同行目から19行目の「特別化学物質等障害予防規則」を「特化則」とそれぞれ改め、以下同様とする。 原判決書60頁19行目末尾に「これらの法令は、いずれも、一部を除き、昭和47年10月1日から施行された。」を加える。 原判決書60頁20行目から62頁19行目までを以下のとおり改める。 「安衛法及び安衛令の概要安衛法は、労働基準法とあいまって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境(平成4年法律第55号 による改正後は『職場環境』)の形成を促進することを目的としており(1条)、次の内容の規定が設けられた。また、安衛法22条、23条等の を確保するとともに、快適な作業環境(平成4年法律第55号 による改正後は『職場環境』)の形成を促進することを目的としており(1条)、次の内容の規定が設けられた。また、安衛法22条、23条等の規定により事業者が講ずべき措置及び26条の規定により労働者が守らなければならない事項は、省令に委任された(27条1項)。 a 事業者は、労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で 定めるものについては、作業主任者を選任し、その者に作業に従事する労 働者の指揮その他の省令で定める事項を行わせなければならない(14条)。 b 事業者は、粉じん等による健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない(22条)。 c 事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、換気等 に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない(23条)。 d 労働者は、事業者が22条、23条等の規定に基づき講ずる措置に応じて必要な事項を守らなければならない(26条)。 e 黄りんマッチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者 に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、譲渡し、提供し、又は使用してはならない(55条)。 なお、安衛法の施行時において、石綿は上記規定で定めるものではなかった(安衛令16条)。 f ベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずる おそれのある物で政令で定めるもの等を譲渡し、又は提供する者は、省令で定めるところにより、その容器又は包装に、名称並びに人体に及ぼす作用及び貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならない(以下『警告表示義務』という。)(57条)。 なお、安衛法の施行時に 省令で定めるところにより、その容器又は包装に、名称並びに人体に及ぼす作用及び貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならない(以下『警告表示義務』という。)(57条)。 なお、安衛法の施行時において、石綿は上記規定で定めるものではなか った(安衛令18条)。 g 事業者は、労働者を雇い入れたとき及び労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない(59条1項、2項)。 h 事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定め るものについて、労働省令で定めるところにより、空気環境その他の作業環境について必要な測定をし、及びその結果を記録しておかなければならない(65条。以下、この義務に基づく測定を『作業環境測定』という。)。 安衛則の概要安衛法22条、23条、26条に基づき、次の内容の規定が設けられた。 a 事業者は、粉じん等を発散するなど有害な作業場においては、その原因を除去するため、代替物の使用、作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない(576条)。 b 事業者は、粉じん等を発散する屋内作業場においては、空気中の粉じん等の含有濃度が有害な程度にならないようにするため、局所排気装置又は 全体換気装置を設けるなど必要な措置を講じなければならない(577条)。 c 事業者は、有害物を含む排気を排出する局所排気装置その他の設備については、当該有害物の種類に応じて、集じんその他の有効な方式による排気処理装置を設けなければならない(579条)。 d 事業者は、粉じんを著しく飛散する屋外又は坑内の作業場においては、注水その は、当該有害物の種類に応じて、集じんその他の有効な方式による排気処理装置を設けなければならない(579条)。 d 事業者は、粉じんを著しく飛散する屋外又は坑内の作業場においては、注水その他の粉じんの飛散を防止するため必要な措置を講じなければならない(582条)。 e 事業者は、粉じん等を発散する有害な場所等に関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない (585条)。 f 事業者は、粉じん等を発散する有害な場所における業務等においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない(593条)。 g 事業者は、593条に規定する保護具については、同時に就業する労働 者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない (596条)。 h 593条に規定する業務に従事する労働者は、事業者から当該業務に必要な保護具の使用を命じられたときは、当該保護具を使用しなければならない(597条)。 特化則の規定 特化則では、旧特定化学物質等障害予防規則と同様、石綿は第二類物質とされ(2条4号、安衛令別表第3第3号2)、第二類物質に係る作業に関し、次の内容の規定が設けられ、従来の規制がほぼそのまま引き継がれた。 a 事業者は、第二類物質の粉じん等が発散する屋内作業場について、当該発散源に局所排気装置を設けなければならず、局所排気装置の設置が著し く困難であること等により局所排気装置を設けない場合には、全体換気装置を設けるなど労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講じなければならない(5条1項、2項)。 b 事業者は、第二類物質を製造し、又は取り より局所排気装置を設けない場合には、全体換気装置を設けるなど労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講じなければならない(5条1項、2項)。 b 事業者は、第二類物質を製造し、又は取り扱う作業場に、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなけれ ばならない(24条1号)。 c 事業者は、第二類物質の運搬又は貯蔵のために使用する容器又は包装の見やすい箇所に当該物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しなければならない(25条2項)。 d 事業者は、第二類物質を製造し、又は取り扱う作業場に、当該物質の粉 じん等を吸入することによる労働者の健康障害を予防するため必要な呼吸用保護具を備えなければならない(43条)。 e 事業者は、43条の保護具について、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない(45条)。 (乙アA140、乙アB25から28)」 原判決書62頁23行目末尾を改行し、「(乙アA180)」を加える。 原判決書62頁25行目の「昭和48年」の次に「7月11日」を、63頁4行目の「当面、」の次に「5㎛以上の繊維で」をそれぞれ加え、5行目の「とする旨を示した」から8行目末尾までを「とするよう指導することを指示した。 通達発出の理由としては、作業環境気中濃度基準を繊維数で表示することが医学的により適切であることのほか、最近、石綿が肺がんおよび中皮腫等の悪性 新生物を発生させることが明らかとなったこと等により、各国の規制においても気中石綿粉じん濃度を抑制する措置が強化されつつあることがあげられていた。」と改め、同末尾を改行し、「(乙アB51)」を加える。 原判決書6 明らかとなったこと等により、各国の規制においても気中石綿粉じん濃度を抑制する措置が強化されつつあることがあげられていた。」と改め、同末尾を改行し、「(乙アB51)」を加える。 原判決書63頁14行目の「後記8⑶アのとおり、」を削り、17行目末尾を改行し、「(甲B32、乙アB33)」を加える。 原判決書63頁21行目の「昭和50年、ILO」を「昭和47年にILO(国際労働機関)」と改め、22行目の「踏まえ、」の次に「関係政省令の改正を検討し、昭和50年、」を加える。 原判決書63頁26行目末尾に「安衛令及び安衛則は、一部を除き、同年4月1日に施行され、特化則は、一部を除き、同年10月1日に施行された。」 を加える。 原判決書64頁1行目から2行目の「昭和50年改正労働安全衛生法施行令」を「昭和50年改正安衛令」と、2行目から3行目の「昭和50年改正労働安全衛生規則」を「昭和50年改正安衛則」と、4行目の「昭和50年改正特定化学物質等障害予防規則」を「昭和50年改正特化則」とそれぞれ改め、以下 同様とし、同行目の「石綿」を「石綿等」と改める。 原判決書64頁6行目冒頭から67頁5行目末尾までを次のとおり改める。 「昭和50年改正安衛令及び昭和50年改正安衛則の内容石綿及び石綿を含有する製剤その他の物(ただし、石綿の含有量が重量の5%以下のものを除く。以下、石綿と安衛令、安衛則又は特化則が規制対象 とする石綿を含有する製剤その他の物とを併せて「石綿等」ということがあ る。)が、安衛法57条に基づく表示義務の対象となり、名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意等を表示すべきこととなった(昭和50年改正安衛令18条2号の2、同条39号、昭和50年改正安衛則3 る。)が、安衛法57条に基づく表示義務の対象となり、名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意等を表示すべきこととなった(昭和50年改正安衛令18条2号の2、同条39号、昭和50年改正安衛則30条、32条2号の2、33条、別表第2第2号の2。ただし、昭和50年4月1日において現に存するものについては、同年9月30日までの間は、安衛法57条の規 定は適用しないとの経過措置が設けられた。)。 国は、昭和50年3月27日付けで、労働省通達『労働安全衛生法第57条に基づく表示の具体的記載方法について』(同日基発第170号。以下『表示方法通達』という。)を発出し、石綿等についての安衛法57条に基づく表示の具体的記載方法を、『注意事項多量に粉じんを吸入すると健康をそ こなうおそれがありますから、下記の注意事項を守つて下さい。1.粉じんが発散する屋内の取扱い作業場所には、局所排気装置を設けて下さい。2. 取扱い中は、必要に応じ防じんマスクを着用して下さい。』などと示した。 昭和50年改正特化則の内容上記の改正のうち、石綿等に関するものの主な内容は、次のとおりである。 a 石綿のほか、石綿を含有する製剤その他の物(ただし、石綿の含有量が重量の5%以下のものを除く。)も、第二類物質とされ、事業者の呼吸用保護具を備える義務の対象とされるなどした(昭和50年改正安衛令別表第3第2号4、37、昭和50年改正特化則2条1項2号、2項、別表第1第4号)。 b 事業者は、石綿等を含む特別管理物質を製造し、又は取り扱う作業場には、特別管理物質の名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具に係る事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならないとされた(昭和50年改正特化則38条 業場には、特別管理物質の名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具に係る事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならないとされた(昭和50年改正特化則38条の3。以下、この規定を『本件掲示義務規定』という。)。 c 事業者は、原則として、石綿等を吹き付ける作業に、労働者を従事させ てはならないとされた(昭和50年改正特化則38条の7第1項)。 d 事業者は、石綿等の切断、穿孔、研磨等の作業、石綿等を塗布し、注入し、又は張り付けた物の破砕、解体等の作業、粉状の石綿等を容器に入れ、又は容器から取り出す作業及び粉状の石綿等を混合する作業のいずれかに労働者を従事させるときは、石綿等を湿潤な状態のものとすることが著 しく困難なときを除き、石綿等を湿潤な状態のものとしなければならず、これらの作業を行う場所に、石綿等の切りくず等を入れるための蓋のある容器を備えなければならないとされた(昭和50年改正特化則38条の8第1項、2項)。 e 石綿等を取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業を除く。)が、安 衛法14条の作業主任者の選任を要する作業とされた(昭和50年改正安衛令6条18号、別表第3第2号4、37、昭和50年改正特化則2条2項、別表第1第4号)。 f 事業者は、化学物質等による労働者のがん、皮膚炎、神経障害その他の健康障害を予防するため、使用する物質の毒性の確認、代替物の使用、作 業方法の確立、関係施設の改善、作業環境の整備、健康管理の徹底その他必要な措置を講じ、もつて、労働者の危険の防止の趣旨に反しない限りで、化学物質等に曝露される労働者の人数並びに労働者が曝露される期間及び程度を最小限度にするよう努めなければならないとされた(昭和50年改正特化則 じ、もつて、労働者の危険の防止の趣旨に反しない限りで、化学物質等に曝露される労働者の人数並びに労働者が曝露される期間及び程度を最小限度にするよう努めなければならないとされた(昭和50年改正特化則1条)。 国は、昭和50年10月1日付けで、労働省通達『特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令の施行について』(同日基発第573号。以下『573号通達』という。)を発出した。この中で、特化則の改正は、最近特に大きな関心事となっている職業がん等職業性疾病の発生状況等に鑑み、特化則の充実を図ったものであるとされ、『特別管理物質』は、人体に対す る発がん性が疫学調査の結果明らかとなった物、動物実験の結果発がんの認 められたことが学会等で報告された物等人体に遅発性効果の健康障害を与える、又は治癒が著しく困難であるという有害性に着目し、特別の管理を必要とするものを定めたものであるとされた。また、573号通達は、本件掲示義務規定の掲示事項のうち、特別管理物質の名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意事項については、表示方法通達の当該部分と同一内容として差 し支えないとした。 (乙アB30ないし32、171、172)」 原判決書67頁9行目の「(上記2⑸イ)」を削る。 原判決書67頁10行目の「ところを、」の次に「5㎛以上の繊維で」を加える。 原判決書67頁13行目末尾を改行し、「(乙アB52)」を加える。 原判決書67頁16行目及び20行目の「アa」を「アh」と改める。 原判決書67頁21行目末尾を改行し、「(乙アB53、118)」を加える。 原判決書68頁22行目末尾を改行し、「(乙アB34)」を加える。 原判決書68頁24行目 原判決書67頁21行目末尾を改行し、「(乙アB53、118)」を加える。 原判決書68頁22行目末尾を改行し、「(乙アB34)」を加える。 原判決書68頁24行目の「(上記2⑸イ)」を削る。 原判決書69頁3行目末尾を改行し、「(乙アB34)」を加える。 原判決書69頁9行目末尾を改行し、「(乙アB46)」を加える。 原判決書69頁11行目冒頭から17行目末尾までを次のとおり改める。 「 国は、作業環境測定による作業環境の評価に基づく作業環境管理が労働衛生 管理の重要な部分を占めるとの考えに基づき、『作業場の気中有害物質の濃度管理基準に関する専門家会議』を設け、作業環境の評価方法について検討を進め、その提言を踏まえて、昭和59年2月13日付けで労働省通達『作業環境の評価に基づく作業環境管理の推進について』(同日基発第69号)を発出した。同通達では、作業環境測定の結果についての評価方法及びこれに基づく事 業者の自主的対策の進め方について、『作業環境の評価に基づく作業環境管理 要領』として、その手順を示したが、その中で、学会等の示す曝露限界及び各国の曝露の規制のための基準の動向を踏まえつつ、作業環境管理技術の実用可能性その他作業環境管理に関する国際的動向等をもとに、作業環境管理の目的に沿うように行政的な見地から、管理濃度を設定した。石綿の管理濃度については、2本/㎤と定めた。 (乙アB54)」 原判決書71頁9行目末尾を改行し、「(乙アB43)」を加える。 原判決書72頁17行目末尾を改行し、「(甲B30)」を加える。 原判決書74頁14行目末尾を改行し、「(乙アB44)」を加える。 原判決書74頁20行目末尾を改行し、「(乙アB48)」 原判決書72頁17行目末尾を改行し、「(甲B30)」を加える。 原判決書74頁14行目末尾を改行し、「(乙アB44)」を加える。 原判決書74頁20行目末尾を改行し、「(乙アB48)」を加える。 原判決書74頁23行目の「作業環境評価」を「作業環境測定の結果の評価(以下「作業環境評価」という。)」と改める。 原判決書75頁4行目の「同様に」の次に「5㎛以上の繊維で」を加える。 原判決書75頁14行目末尾を改行し、「(乙アB55ないし59)」を加える。 原判決書76頁22行目の「(上記⑶オ)」及び「(上記2⑶オ)」を削る。 原判決書76頁26行目末尾を改行し、「(乙アB45)」を加える。 原判決書77頁7行目の「第3号」の次に「。いずれも一部を除き同年4月1日施行」を加える。 原判決書77頁13行目の「(上記⑶アd)」、20行目の「(後記7⑵)」、22行目の「(後記第6の1⑴ナ)」を削る。 原判決書79頁12行目末尾を改行し、「(乙アB37ないし39)」を加える。 原判決書79頁15行目の「平成15年」の次に「10月16日」を加える。 原判決書79頁20行目の「(上記⑶アd)」を削り、21行目末尾を改 行し、「(乙アB40)」を加える。 原判決書79頁23行目の「平成16年」の次に「10月1日」を、「第369号」の次に「(以下『平成16年厚生労働省告示』という。)」をそれぞれ加え、24行目の「(上記2⑸ウ)」を削り、同行目から25行目の「よって」の次に「5㎛以上の繊維で」を加える。 原判決書79頁26行目の「改めた。」を「改め、平成17年4月1日から適用された。」と改め、同行目末尾を改行し、「(乙アB62)」を加える。 の次に「5㎛以上の繊維で」を加える。 原判決書79頁26行目の「改めた。」を「改め、平成17年4月1日から適用された。」と改め、同行目末尾を改行し、「(乙アB62)」を加える。 原判決書80頁4行目の「号」の次に「。平成17年7月1日施行」を加える。 原判決書80頁11行目の「(以下、」から12行目の「ともいう。)」ま で、15行目の「(上記⑸イ)」をいずれも削る。 原判決書81頁12行目末尾を改行し、「(乙アB41)」を加える。 原判決書81頁15行目の「257号」の次に「。同年9月1日施行」を加える。 原判決書81頁17行目の「(上記⑶アd)」を削り、同行末尾を改行し、 「(乙アB42)」を加える。 2 建築関係法令の概要原判決書86頁20行目から91頁3行目までのとおりであるからこれを引用し、同行目末尾を改行し、「(甲B4ないし9、12、15、17、18、20、21、22、24、25、35、36、乙アB78、110、111)」を 加える。 第8 条約等次のとおり補正するほか、原判決書84頁26行目から86頁18行目に記載のとおりであるからこれを引用する。 1 原判決書85頁15行目末尾を改行し、「(乙アB29)」を加える。 2 原判決書85頁18行目の「石綿条約は」から19行目末尾までを削る。 3 原判決書86頁12行目末尾を改行し、「(乙アA55)」を加える。 4 原判決書86頁18行目末尾を改行し、「(甲A324)」を加える。 第3節争点及びこれに関する当事者の主張第1 控訴人らの主張 1 被控訴人らの責任 ⑴ 被控訴人らが負うべき義務及びその発生時期等ア被控訴人らの予見可 )」を加える。 第3節争点及びこれに関する当事者の主張第1 控訴人らの主張 1 被控訴人らの責任 ⑴ 被控訴人らが負うべき義務及びその発生時期等ア被控訴人らの予見可能性、認識等我が国においては、石綿肺に係る医学的知見は、どんなに遅くとも、保険院調査勧告が公表された昭和15年3月末に確立した。 石綿の危険性は戦前から知られており、石綿含有製品の製造過程におけ る危険性は企業が自社工場で直面する問題であったから、被控訴人らは、どんなに遅くとも昭和30年代には、石綿の危険性を現実に認識していた。 また、工場内での石綿含有建材の切断、研磨等の加工作業が危険であるのに、建築現場で同様の加工作業をすることが危険でないわけがないから、被控訴人らは、建築現場における石綿含有建材の危険性も容易に認識する ことが可能であった。 加えて、被控訴人らは、海外の情報や自社の商品の施工現場の実態の認識等から、遅くとも昭和40年には、建築現場における石綿含有建材の危険性を現実に認識していた。 イ被控訴人らの警告義務 被控訴人らは、石綿含有建材の生産者として、石綿含有建材の使用者に対して高度の安全性を確保すべき義務を負い、その具体的内容として、危険を予見すべき義務と危険を除去すべき義務を負うところ、被控訴人らは、かかる義務の一態様として、石綿含有建材の使用者に対し、石綿含有建材に内在する危険の内容及び回避手段について警告する義務を負う。そして、石綿含 有建材のもたらす危険の大きさと被害の重大性からすれば、被控訴人らに求 められる上記予見義務や上記危険性除去義務の程度は、極めて高度なものである。 以上に照らせば、被控訴人らは、吹付け材及びその他の石綿含 大きさと被害の重大性からすれば、被控訴人らに求 められる上記予見義務や上記危険性除去義務の程度は、極めて高度なものである。 以上に照らせば、被控訴人らは、吹付け材及びその他の石綿含有建材について、UICC報告が公表された昭和40年、国が旧特化則を制定した昭和46年、また、どんなに遅くとも、石綿粉じんへの曝露と肺がん及び中皮腫 の発症との因果関係についての医学的知見が確立するなどした昭和47年には、上記警告義務を負っていた。 ウ屋外における作業者に対する警告義務微量な石綿粉じんへの曝露でも中皮腫が発症する可能性があること、屋外であっても石綿含有建材の切断等によって石綿粉じんへの曝露が生じるこ とからすると、被控訴人らは、屋外で使用される石綿含有建材についても、昭和47年IARC報告によって微量の石綿粉じんへの曝露による中皮腫発症の危険性が明らかとなった昭和47年、遅くとも国が屋外における作業の危険性を認識して特化則を改正した昭和50年には、上記警告義務を負っていた。 仮に同年時点における警告義務が認められないとしても、同年以降の医学的知見の進展や、労働省専門家報告、AIA勧告が出されるなどしたことに照らせば、被控訴人らは、昭和54年の時点で、上記警告義務を負っていた。 また、仮に同年の時点における警告義務が認められないとしても、同年以降の海外における規制の強化等に照らせば、被控訴人らは、遅くとも昭和6 2年には、上記警告義務を負っていた。 さらには、被控訴人らは、どれだけ遅くとも、日本産業衛生学会が許容濃度の引下げを勧告した平成13年の時点では、上記警告義務を負っていた。 エ成形板等の取付け後に作業する建築作業従事者(以下「後続作業者」という。)に対する警告義務 後続 会が許容濃度の引下げを勧告した平成13年の時点では、上記警告義務を負っていた。 エ成形板等の取付け後に作業する建築作業従事者(以下「後続作業者」という。)に対する警告義務 後続作業者の危険の回避については、前記イ及びウの警告表示によって伝 達された情報を契機に、事業者による安全配慮義務の履行によって確保される関係にあるから、後続作業者も上記警告義務の対象となる。 オ改修、解体作業者に対する警告義務石綿含有建材は、建物の新築時のみならず、改修、解体時においても使用又は接触されることが当然に想定される製品なのであるから、改修、解 体作業者も、被控訴人らが負う前記イ及びウの警告義務の相手方に含まれる。 また、石綿粉じんは人の生命、健康という最も尊重されるべき法益を侵害する重大な危険性を有していることから、被控訴人らは、石綿含有建材の使用者に対し、厳しい安全性確保義務を負っていた。具体的には、被控 訴人らは、上記義務として、石綿含有建材から飛散する石綿粉じんの生命、健康に対する危険性に関する医学的知見の進展等を継続的に研究、調査する義務、石綿含有建材の販売に当たって販売先や建材の種類、数量、石綿含有率等の情報を記録、保存する義務、既に流通している石綿含有建材の使用状況の変化等を追跡、監視する義務を負うのであり、これを前提に、 既に流通している石綿含有建材に関しても、石綿含有建材の危険性や被害防止のための対策等を警告する義務(販売後の警告義務)を負う。そして、改修、解体作業者の被害発生を防止するためには、石綿含有建材の販売時のみに警告すれば足りるものではないから、被控訴人らは、石綿含有建材の販売後も、改修、解体作業者に対して販売後の警告義務を負い続ける。 被 防止するためには、石綿含有建材の販売時のみに警告すれば足りるものではないから、被控訴人らは、石綿含有建材の販売後も、改修、解体作業者に対して販売後の警告義務を負い続ける。 被控訴人らは、吹付け材かその他の石綿含有建材かを問わず、昭和40年頃から販売時の警告義務を負い、仮にその時点では上記義務を負っていなかったとしても、昭和46年頃には販売時の警告義務及び販売後の警告義務を負っていた。さらに、昭和62年にはいわゆる学校パニック(後記第3章第1節第1の5)によって石綿含有建材の危険性が社会問題化した のであるから、被控訴人らは、この時点では、既に製造、販売された石綿 含有建材についても、一層厳しい警告義務を負っていた。 カ警告方法等具体的な警告方法としては、販売時の警告義務については、成形板、保温材等の成形された石綿含有建材については、個々の建材の表面又は裏面に警告表示を直接印字又は貼付することなどが考えられる。また、吹付け材につ いては、施工した吹付け材の表面に警告表示を記載したラベル、プレート等を設置する、危険性についての情報を記載した取扱説明書を作成して施工者、建材店等に交付する、建築士等に設計図書に石綿含有建材の使用の有無を記載するよう指示する、建築士等に設計図書に上記取扱説明書を添付するよう指示することなどが考えられる。 販売後の警告義務については、自社の石綿含有建材が使用された建物の所有者に対して直接情報を提供する、官庁、解体業界団体等へ石綿含有建材の危険性や改修、解体時の飛散防止対策の必要性等の危険性についての情報を提供する、マスメディアを通じて、改修、解体工、建物所有者、改修、解体事業者等に情報を提供することなどが考えられる。 キ石綿含有建 、解体時の飛散防止対策の必要性等の危険性についての情報を提供する、マスメディアを通じて、改修、解体工、建物所有者、改修、解体事業者等に情報を提供することなどが考えられる。 キ石綿含有建材の製造、販売の中止又は停止義務被控訴人らは、早くから石綿含有建材の危険性、とりわけ石綿の発がん性を認識し、又は、容易に認識することができたのであるから、警告表示を徹底しても建築作業従事者の安全を確保できないのであれば、石綿含有建材の製造、販売を中止又は停止すべき義務(以下「石綿不使用義務」という。) を負っていた。 被控訴人らは、前記イと同様、昭和40年又は昭和46年頃において石綿不使用義務を負っていたし、遅くとも、肺がん、中皮腫に関する医学的情報が集積し、昭和50年改正特化則により石綿の代替化についての努力義務が制定された昭和50年には、石綿不使用義務を負っていた。また、平成7年 までには、全種類の石綿含有建材が無石綿化されて相当程度普及していたこ とや、石綿規制法案が国会に提出されたこと、同年1月の阪神淡路大震災の際に、災害時の復旧、解体等の工事や廃棄物の処理等に伴う石綿の飛散の問題がクローズアップされ、石綿を禁止すべきとする社会的基盤が確立されていたことなどの具体的事情に鑑みれば、被控訴人らは、どんなに遅くとも同年には、石綿不使用義務を負っていた。 ク被控訴人らが以上の義務を履行していれば、本件被災者らは、石綿関連疾患に罹患することがなかった。 ⑵ 被控訴人ら間の共同不法行為の成否ア控訴人らの請求の概要控訴人らは、従前、被災者の職種から想定される作業内容や、被災者本人 からの聴き取り、被災者が従事した建物の種類(木造建物、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物)等から、本件被 らの請求の概要控訴人らは、従前、被災者の職種から想定される作業内容や、被災者本人 からの聴き取り、被災者が従事した建物の種類(木造建物、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物)等から、本件被災者らが当該建材から生じた石綿粉じんに曝露する可能性の高い建材の種類を特定し、これに加え、被災者の就労時期及び建築作業に従事した建物の種類(戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所、劇場・百貨店等、工場、倉庫)と被控訴人らが製 造販売した個々の石綿含有建材についての情報(建材の種類、製造期間、上述の各種建物のうち当該建材が施工されることが想定されているものなど)を照合することで、上記建材の範囲を絞り込み(以下、かかる絞り込みを行った後の建材を当該被災者の「直接取扱い建材」という。)、これに基づき、被控訴人らのうち当該被災者に係る請求の相手方となるべき者を限定した。 控訴人らは、現在、直接取扱い建材に基づく主張を撤回しているが、これに代わるものとして、ある被災者にとっての共同行為者となる被控訴人らの範囲を「当該被災者が当該建材に含有された石綿に相当程度曝露した可能性が高く、当該被災者に石綿関連疾患を発症させる原因となった可能性のある石綿含有建材を製造、販売し、市場に流通させた者」に限定する観点から、 さらに、直接取扱い建材を絞り込み(以下、かかる絞り込みを行った後の建 材を「原因建材」という。)、加えて、ある被災者についての上記共同行為者の範囲を当該被災者に到達した可能性が高い石綿含有建材を製造、販売した企業のみに限定する観点から、原因建材のうち各被災者への到達可能性の高い建材を抽出し(以下、かかる抽出を経た後の建材を「主要原因建材」という。)、上記共同行為者を更に絞り込んだ。 控訴 た企業のみに限定する観点から、原因建材のうち各被災者への到達可能性の高い建材を抽出し(以下、かかる抽出を経た後の建材を「主要原因建材」という。)、上記共同行為者を更に絞り込んだ。 控訴人らは、第1順位として、各被災者の主要原因建材を製造販売した被控訴人らは、当該被災者に対し、民法719条1項後段の類推適用に基づき、当該被災者に発生した損害の全部について連帯責任を負うとの主張をするが、これが認められない場合には、第2順位として、上記損害のうち当該被災者への加害者と認められる被控訴人らの集団的寄与度が認められる範囲 について連帯責任を負うとの主張をする。 そして、上記の一部連帯責任すら認められない場合に備え、控訴人らは、主要原因建材の選別による被控訴人らの絞り込みの結果を前提として、当該被災者が当該建材からの石綿粉じんに曝露した可能性の高い建材に使用された石綿消費量の総量(市場全体の意味)と被控訴人らが製造した当該建材 の石綿消費量の比率を用いるなどして被控訴人らの責任割合を算出した。控訴人らは、上記の一部連帯責任すら認められない場合には、第3順位として、被控訴人らは、民法719条1項後段の類推適用に基づき、上記責任割合の限度での一部連帯責任を負うとの主張をする。 イ主要原因建材の選別方法 国交省データベースに掲載された石綿含有建材は、本件被災者らとの関係で、主要原因建材となり得る石綿含有建材をほぼ網羅しているといえる。 ただし、上記42種類には、左官工が用いる㊸混和材が含まれていない。 ㊸混和材は、モルタルの伸びを良くして作業効率を上げるためにモルタルに練り混ぜる方法で多くの建築現場で使用されてきた建材であり、本件被 災者らにとっての主要原因建材になり得る。また、このような使用方法に ルの伸びを良くして作業効率を上げるためにモルタルに練り混ぜる方法で多くの建築現場で使用されてきた建材であり、本件被 災者らにとっての主要原因建材になり得る。また、このような使用方法に 鑑みれば、㊸混和材は、モルタルを使用するあらゆる建物に使用されると考えられ、また、混和材ごとに建物における使用部位が異なるとも考え難いので、混和材を取り扱う職種は、あらゆる混和材を取り扱うと考えて差し支えない。これらの43種類の建材は、別紙4-1の「No.」欄及び「建材名(一般名)」欄に記載のとおりである。 控訴人らは、国交省データベース及び㊸混和材について自ら調査した結果を基に、市場に流通した石綿含有建材をほぼ網羅した一覧表を作成した。 この際、国交省データベース上の製造期間のデータに欠損がある場合には、1900年から2013年まで製造されたものとし(ただし、被控訴人らからこの点についての情報の開示があれば、原則としてそれを使用する。)、 使用部位、使われ方、建物の種類等のデータに欠損がある場合には、全ての部位等に使用されたものとした。 控訴人らは、主要原因建材を選定するに当たり、上記一覧表に記載された43種類の石綿含有建材のうち、被災者らが当該建材からの石綿粉じんに曝露する可能性が低い(到達可能性が高いとはいえない)と考えられる 建材を建材の種類単位で除外し、また、個々の建材についても、各被災者の就労時期から曝露可能性が低いと考えられる時期に製造、販売された製品を除外し、職種ごとに想定される作業内容及び被災者の記憶等から上記曝露可能性の高い建材を特定してそれ以外の建材を除外し、個々の被災者の従事した建物の種類(木造建物、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物 の別)から当該被災者が従事していない 者の記憶等から上記曝露可能性の高い建材を特定してそれ以外の建材を除外し、個々の被災者の従事した建物の種類(木造建物、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物 の別)から当該被災者が従事していない建物にのみ使用されている建材を除外し、個々の被災者の従事した建物の種類(戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所、劇場・百貨店等、工場、倉庫)から当該被災者が従事していない建物にのみ使用されている建材を除外し、国交省データベースの使用部位及び使われ方に掲載された各製品の特徴からして 当該被災者との関係で上記曝露可能性が低いと考えられる製品を除外し た。 これらのうち、各被災者の就労期間と製品の製造期間との関係では、新築工事については、当該建材の製造、販売期間と各被災者の就労期間とに1年以上の重なりのある建材のみを主要原因建材とし、それ以外の建材は除外した。他方、改修、解体工事の場合は、当該建材の製造、販売が終了 した後に就労を開始した被災者も当該製品を取り扱う可能性があるため、上記重なりがない場合でも主要原因建材から除外していない。 同様に、控訴人らは、被控訴人らの注意義務の始期を便宜上昭和40年とし、同年までに製造を終了した石綿含有建材を除外し、また、用途を同じくする建材においておおむね10%以上の市場占有率(以下、市場占有 率を「シェア」という。)を有する建材メーカーが販売した建材であれば被災者らに到達した可能性が高いと考えられるので、シェアがかかる規模に達しない企業が製造、販売した建材も原則として除外した。この際、全国でのシェアが10%に満たない企業が製造した建材を除外するとともに、控訴人らが主として北海道で稼働していたなどと主張する被災者との 関係では、北海道におけるシェアが1 て除外した。この際、全国でのシェアが10%に満たない企業が製造した建材を除外するとともに、控訴人らが主として北海道で稼働していたなどと主張する被災者との 関係では、北海道におけるシェアが10%に満たない企業が製造した建材についても主要原因建材から除外した。 さらに、控訴人らが、被控訴人らの個別の主張立証に基づいて各被災者に到達する可能性がないと判断した建材についても主要原因建材から除外した。 前記の絞り込みの結果から、さらに、①昭和50年より前に製造を終了したもの、②推計計算によりシェアが10%以上となる建材(⑩石綿保温材を除く。)を除外した残りの建材について、予備的に主要原因建材であると主張する。 ウ責任割合の考え方、算出方法等 控訴人らは、前記第1の1⑵アのとおり、集団的寄与度の範囲で一部連帯 責任を負う旨の主張が認められない場合に備え、第3順位の主張として、被控訴人らの責任割合の限度で一部連帯責任を負う旨主張するところ、石綿含有建材の製造、販売によって排出された石綿の量が多いほど各被災者らが当該石綿に曝露する機会が増えるのであり、石綿の消費量(市場への排出量)は、被控訴人らのリスク寄与度を考える上で重要な要素となる。各被災者に 対する被控訴人らの責任割合は、主要原因建材となり得る石綿含有建材の石綿消費量の総量に占める被控訴人らが製造、販売した主要原因建材における石綿消費量の割合と考えるのが合理的である。 控訴人らは、石綿含有建材の種別ごとに、年度ごとの市場全体の石綿消費量を、資料に基づいて算出し、又は、年度ごとの全国で消費された石綿消費 量を示す資料がない場合には石綿輸入量から推定する、各主要原因建材のうち年度ごとの石綿消費量が不明なものについては上 消費量を、資料に基づいて算出し、又は、年度ごとの全国で消費された石綿消費 量を示す資料がない場合には石綿輸入量から推定する、各主要原因建材のうち年度ごとの石綿消費量が不明なものについては上記推定値を当該年度において製造、販売されていたことが判明している石綿消費量が不明の建材の間で均等に割り付けるなどの方法で推定計算した。また、控訴人らは、被控訴人らの主要原因建材ごと、年度ごとの石綿消費量を算出するため、石綿含 有建材の種類別の各被控訴人らのシェアを、客観的資料から算出し、又は、かかる客観的資料がない場合にはシェアが判明している年度から推定する、当該建材を製造、販売していたと認められる被控訴人らの数に応じて等分の割合で割り付けるなどの方法で推定計算した。そして、これらを基に、控訴人らは、各主要原因建材別に、被控訴人らの年度ごとの上記責任割合を算出 した。 エ共同不法行為についての考え方等 a 民法719条1項後段の趣旨は、因果関係が不明の場合に被害者が全く救済されなくなることの不公平から政策的な救済を図る点にあり、同項後段は、いわゆる択一的競合の場面において、共同行為者の全員につ いて因果関係のいわゆる法律上の推定を定めた規定である。 被控訴人らの行為のうち本件において同項後段の加害行為とされるべきものは、被控訴人らが石綿含有建材を製造し、これを販売して流通に置いた行為であり、その後被害者に当該建材からの石綿粉じんに曝露させたことまでが上記加害行為に含まれるものではない。同項後段は、かかる加害行為が被害者に到達したか否かという意味における因果関 係を法律上推定したものである。同項後段が適用されるために上記建材が被害者に到達したことの立証や到達したことの高度の蓋然性の立証 かかる加害行為が被害者に到達したか否かという意味における因果関 係を法律上推定したものである。同項後段が適用されるために上記建材が被害者に到達したことの立証や到達したことの高度の蓋然性の立証が必要と考えるのは背理であり、到達の相当程度の可能性の立証があれば足りると考えるべきである。 また、同項後段が適用されるための要件として他に加害行為を行った 可能性がある者が存在しないこと(いわゆる十分性の要件)を求めるのは不当であり、本件における当事者間の衡平及び証拠の偏在からすると、同項後段を類推適用する際には、上記要件は不要とし、この点は被控訴人らが連帯責任を免れるための反証の問題とすべきである。 b 複数の加害者が競合して損害を発生させる類型には、民法719条1 項後段の択一的競合のほかに、少なくとも、①単独でも一部の損害が発生し得る複数の行為が累積することで損害が全部発生した場合(累積的競合)、②一定の影響(権利侵害)はあるが単独では直ちに損害が顕在化するとは限らない複数の加害行為が累積することで損害が全部発生した場合(重合的競合。上記①と併せて累積的競合又は重合的競合と呼 ばれることもある。)、③加害行為のいずれもが損害の発生の必要条件である(1つでも欠けると損害が発生しない)場合(必要的競合)、④全部惹起力のある複数の加害行為が競合して損害を与えた場合(重畳的競合)、⑤全部惹起力のある加害行為と全部惹起力のない加害行為とが競合して1つの損害を与えた場合(部分的重合的競合)、⑥累積的競合 か択一的競合かが不明な場合(累積的競合・択一的競合不明型)の各類 型がある。同項後段の類推適用は、上記①ないし⑥のいずれの類型においても認められるべきである。本件は少なくとも累積的競合(上記① 合かが不明な場合(累積的競合・択一的競合不明型)の各類 型がある。同項後段の類推適用は、上記①ないし⑥のいずれの類型においても認められるべきである。本件は少なくとも累積的競合(上記①、②)か寄与度不明(上記②、④ないし⑥)のいずれかには該当するといえるから、被控訴人らには同項後段の類推適用に基づく共同不法行為が成立する。 a ある建材の到達の可能性を検討するに当たり、当該建材のシェアを1つの考慮要素とすることには、十分な合理性がある。また、前記のとおり、控訴人らが主張立証すべきものは、到達の相当程度の可能性で足りるのであり、シェアはあくまでもその判断材料の1つなのであるから、シェアの数値に厳密な正確さは要求されない。 b 同じメーカーが複数の種別の製品を製造する場合、1つの種別の製品を同じ数だけ製造するのに比して、効率が悪く、コストを大幅に要する。 それにもかかわらず、あえて別の種別の製品を製造、販売していたということは、これらの種別の製品が異なる需要を有していたと考えるべきである。したがって、これらの建材の到達の可能性を検討するのであれ ば、種別ごとのシェアを検討すべきである。 単に別の建材に代替性があるというだけでは、シェアを合算させる必然性はない。当該建材が使用される場合、同じ建物に別の建材が使用されないという関係性が成り立つ場合に限り、シェアを合算させる合理性があるから、このような場合に限って合算が認められるべきである。 2 本件被災者らの損害等⑴ 損害額についてア控訴人らは、被控訴人らに対し、被災者1人当たり慰謝料3000万円及び弁護士費用300万円の合計3300万円(ただし、被災者Aについては、慰謝料1500万円及び弁護士費用150万円の合計1650万円 控訴人らは、被控訴人らに対し、被災者1人当たり慰謝料3000万円及び弁護士費用300万円の合計3300万円(ただし、被災者Aについては、慰謝料1500万円及び弁護士費用150万円の合計1650万円)の損害 賠償を請求する。この3000万円の慰謝料額が謙抑的、合理的であること は、石綿関連疾患による被害の重大性、被控訴人らの加害行為の悪質性、これまでのじん肺訴訟判決などにみる慰謝料額の到達点、被控訴人らの救済金制度や企業と労働組合とのじん肺補償協定との比較、一般不法行為事件である交通事故訴訟における慰謝料額との比較等の観点から十分に根拠付けられる。特に、石綿関連疾患による被害の重大性については、石綿関連疾患の 罹患により、本件被災者らは、①身体的被害として、ⅰ息切れ・呼吸困難、ⅱ咳・痰、ⅲ激しい痛みや胸水・腹水、ⅳ抗ガン剤・放射線治療による副作用、ⅴ悪性腫瘍の転移・再発、ⅵ幻覚や幻聴その他の様々な苦痛を受け、②日常生活への支障等としても、ⅰ就労の困難、ⅱ経済的困窮、ⅲ歩行、移動の自由の喪失、ⅳ食事が摂れなくなる辛さ、ⅴ会話の困難さ、ⅵ睡眠の困難 さ、ⅶ入浴の困難さその他の生活上の様々な負担を強いられ、③精神的被害としても、ⅰ死への恐怖、ⅱ仕事を断念しなければならない辛さ、ⅲ将来に対する不安、ⅳ尊厳の喪失、ⅴ趣味や楽しみの剥奪、ⅵ抑うつ状態その他の様々な苦痛を受けた。それのみならず、④本件被災者らの家族も、ⅰ生活の困窮、ⅱ介護の肉体的・精神的苦痛、ⅲ被災者の症状の増悪、死亡に至る不 安及び苦痛、ⅳ被災者の壮絶な最期を看取る苦痛、ⅴ被災者の死による喪失感その他の様々な苦痛を受けた。このように、本件被災者ら及びその家族の被害は極めて甚大であり、3000万円の慰謝料額が謙抑的、合理的であることは十分に根拠 な最期を看取る苦痛、ⅴ被災者の死による喪失感その他の様々な苦痛を受けた。このように、本件被災者ら及びその家族の被害は極めて甚大であり、3000万円の慰謝料額が謙抑的、合理的であることは十分に根拠付けられる。 イ控訴人らの請求は、本件での請求のほかに財産的損害の請求をする別訴を 提起しないことを前提とする、いわゆる包括一律請求である。したがって、慰謝料算定にあたっては、この点を考慮すべきである。 ⑵ 喫煙歴に基づく修正について原判決は、国に対する関係で、肺がんに罹患した被災者らのうち喫煙歴のある者について、喫煙が石綿への曝露を原因とする肺がんの発症リスクを高める 原因となることを理由として、本件被災者らの慰謝料の基準とすべき額(以下 「基準慰謝料額」という。)の1割に相当する額を減額するのが相当であると判断している。しかし、たばこの影響はあくまでも疫学的なものにとどまり、本件被災者らについての個別具体的な立証はされていないし、たばこの影響は相加的ではなく相乗的なものであり、粉じんに曝露していない喫煙者との比較でも発症のリスクが高まることは明らかである。このような状況において、上 記減額を認めた原判決の判断は不当であり、減額されるべきではない。 ⑶ 被控訴人らの寄与度等について控訴人らは、前記第1の1⑵アのとおり、第1順位として、被控訴人らが、本件被災者らに発生した損害の全部について連帯責任を負う旨主張し、第2順位として、被控訴人らの集団的寄与度が認められる範囲について連帯責任を負 う旨主張するところ、被控訴人らの寄与度は、証拠の総合的な判断によって裁判所が裁量的に判断することが許されているものと解すべきであるが、最低でも2分の1を超える割合とするべきである。控訴人らは う旨主張するところ、被控訴人らの寄与度は、証拠の総合的な判断によって裁判所が裁量的に判断することが許されているものと解すべきであるが、最低でも2分の1を超える割合とするべきである。控訴人らは、被災者ごとにその主要な取扱建材を精査して絞り込みを行っている以上、職種等によりある程度の差異は発生し得るとしても、被控訴人らの寄与度が3分の1などという低い割 合として評価されるべきことはあり得ない。 ⑷ 被控訴人らの責任割合について控訴人らは、前記第1の1⑵アのとおり、第2順位の寄与度の範囲で一部連帯責任を負う旨の主張が認められない場合に備え、第3順位の主張として、被控訴人らの責任割合の限度で一部連帯責任を負う旨主張するが、被災者ごとの 責任割合及び請求額は、別紙4-2-1ないし別紙4-2-23のとおりである。 3 本件被災者らの就労状況、石綿粉じんへの曝露状況、主要原因建材等⑴ 被災者A(番号1。この各被災者に付する番号は、控訴人番号に対応する。 以下同じ。) ア被災者Aは、昭和40年春頃から平成15ないし16年頃まで、内装工と して金属内装の作業に従事し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Aは、内装工として、主として鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事したが、木造建物の建築作業には従事しなかった。また、被災者Aは、内装工として、国交省データベースの7分類の建物のうち、 店舗・事務所の建築作業に従事したが、戸建て住宅の建築作業に従事したことはなく、共同住宅、学校・幼稚園等、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事したことはあるものの、その数は少なかった。 被災者Aは、内装工として、新築工事のみならず改修工事の したことはなく、共同住宅、学校・幼稚園等、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事したことはあるものの、その数は少なかった。 被災者Aは、内装工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Aは、内装工として、北海道だけでなく他の地方でも建築作業に従事していたが、主に北海道で稼働していた。 ウ被災者Aは、一般の内装工と同様、建築作業において、①鉄骨造建物の間仕切り、躯体内壁の下地の取付工事、②天井の下地の取付工事、③内装仕上げ工事、④天井の仕上げ工事に従事した。被災者Aは、上記①において、吹 付けによる耐火被覆が施工されている個所では吹付け剤を削り取ってからボルト打ち、釘打ちなどの作業をし、耐火被覆板により施工されている箇所では、耐火被覆板に電動ドライバーでビス止めをすることから、これらの作業の際に大量に落ちてくる耐火被覆用の吹付け材や耐火被覆板からの石綿粉じんなどに曝露し、上記②において、天井の躯体に吹付け工が吹付け材を 吹き付ける前に養生のために吊りボルトにビニール袋をかぶせるところ、吹付け後の天井の下地の取付作業の際には、当該ビニール袋を取り外すことから、その際、当該ビニール袋から落ちてきた耐火被覆用の吹付け材に曝露し、また、インサート(吊りボルトを取り付けるために天井の躯体に設置するねじ)の付け忘れや変更工事があると、天井の躯体にアンカーボルトを打ち込 んだり、吊りボルトを溶接したりするところ、その前に、天井の躯体の吹付 け材を削り取るので、この際に大量に落ちてくる耐火被覆用の吹付け材に曝露し、上記③において、ボードの切断、ビス止めの際や、せっこうボード、ラスボード、けいカル板を手折りした後、切断面を鉄やすりでならし、電動ドライ で、この際に大量に落ちてくる耐火被覆用の吹付け材に曝露し、上記③において、ボードの切断、ビス止めの際や、せっこうボード、ラスボード、けいカル板を手折りした後、切断面を鉄やすりでならし、電動ドライバーでビス止めをする際に発生する石綿粉じんに曝露し、また、フレキシブル板、大平板については昭和45年頃から電動丸のこで切断するよう になったため、その際に舞い上がる粉じんに曝露し、上記④においては、天井材のボードの切断面の研磨、上を向いた状態でのビス止め及び照明器具の開口作業の際に発生した石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Aは、金属内装工事において、鉄骨を切断し、溶接をして組み立てる際に、鉄骨に既に吹き付けられた耐火被覆材としての吹付け材を剥 離するなどの作業をし、同作業後に吹付け工に施工箇所に再度吹付け材を吹き付けてもらう現場に居合わせることもあり、耐火被覆用の吹付け材の粉じんに高頻度で曝露した。さらに、被災者Aは鉄骨付近の作業をすることが多く、耐火被覆材を直接扱っていた可能性が高く、また、間仕切り工事を多くしており、壁材や天井材を多く扱っていたことから、各種内装材が主要原因 建材となる。加えて、被災者Aは、床工事にも従事しており、床材も主要原因建材になり得る。 以上を始めとする被災者Aの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Aの主要原因建材は、別紙5-1の表のとおりとなる(なお、前提事実のとおり、同表の「日本バルカー工業(株)」は被控訴人バル カーを、「三菱マテリアル建材(株)」は被控訴人エム・エム・ケイをそれぞれ意味する。以下、その余の別紙5において同じ。)。 前記1⑵イの予備的に主張する主要原因建材は、上記の表に記載された建材から別紙5-24の表に記載された 控訴人エム・エム・ケイをそれぞれ意味する。以下、その余の別紙5において同じ。)。 前記1⑵イの予備的に主張する主要原因建材は、上記の表に記載された建材から別紙5-24の表に記載された建材を除外したものである(以下、⑵ないしにおいて同じ。)。 ⑵ 被災者B(番号3) ア被災者Bは、昭和45年1月から昭和47年5月まで、配管工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露したイ被災者Bは、配管工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。また、被災者Bは、配管工として、国交省データベースの7分類の建物全ての建築作業に従事した。 被災者Bは、配管工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Bは、配管工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Bは、一般の配管工と同様、建築作業において、躯体、間仕切りな どへ給排水管を通すための建材の切断、貫通作業(スリーブ工事)をし、この際に発生した石綿粉じんに曝露し、配管を設置した後これに保温材を切断、加工して設置し、この際に当該保温材から発生した石綿粉じんに曝露し、鉄骨造建物の配管工事では天井や躯体に用いられた鉄骨に支持金具や吊りボルトを取り付けるが、耐火被覆材として吹付け材が吹き付けられているため、 吹付け材をへらなどで剥離、除去しながら設置する作業をするところ、この際、吹付け材からの石綿粉じんに曝露し、また、石綿セメント円筒を切断、加工する作業をし、この際に同円筒から発生した石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Bの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると んに曝露し、また、石綿セメント円筒を切断、加工する作業をし、この際に同円筒から発生した石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Bの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Bの主要原因建材は、別紙5-2の表のとおりとなる。 ⑶ 被災者C(番号5)ア被災者Cは、昭和35年秋頃から昭和54年7月まで大工として稼働し、また、昭和57年6月から昭和58年7月までトイレ水洗化工事に従事し、これらの際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Cは、大工として、木造建物の建築作業に従事していた。被災者C は、大工として、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業にも従 事していたが、被災者Cの全体の作業の中では1割強にすぎなかった。被災者Cは、大工として、国交省データベースの7分類の建物のうち、主に戸建て住宅、共同住宅の建築作業に従事したが、学校・幼稚園等、店舗・事務所、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事しなかった。 また、被災者Cは、トイレ水洗化工事については、木造建物を対象に行っ ていた。被災者Cは、トイレ水洗化工事についても、国交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅の建築作業に従事したが、その他の建物の建築作業には従事しなかった。 被災者Cは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。また、被災者Cが従事した上記トイレ水洗化工事は、改修工事に当 たる。 被災者Cは、大工としての就労期間中は、北海道及び東京(関東地方)でのみ作業に従事していた。また、被災者Cは、トイレ水洗化工事については、北海道で就労していた。 ウ被災者Cは、一般の大工と同様、木造建物の建築作業に ての就労期間中は、北海道及び東京(関東地方)でのみ作業に従事していた。また、被災者Cは、トイレ水洗化工事については、北海道で就労していた。 ウ被災者Cは、一般の大工と同様、木造建物の建築作業において、墨付け、 きざみ、建て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂場の天井、台所のガス台背面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をする際に生じた石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Cは、トイレが水洗化されていない既存建物につき、改修工 事としてトイレ水洗化工事を行っていた。被災者Cは、地面を掘って配水管を引き込み、トイレの床、壁、天井を外して便器を設置する作業をしていたのであり、この際、被災者Cは、解体工事の場合と同様に、トイレ水洗化工事に従事した建物のトイレで使用されるあらゆる石綿含有建材からの石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Cの作業内容を前提に、前記7⑵イの選別を踏 まえると、被災者Cの主要原因建材は、大工については別紙5-3-1、トイレ水洗化工事については5-3-2の表のとおりとなる。 ⑷ 被災者D(番号7)ア被災者Dは、昭和40年から平成15年5月15日まで、大工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Dは、大工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。また、被災者Dは、大工として、国交省データベースの7分類の建物のうち、戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所の建築作業には従事したが、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事しなかった。 、国交省データベースの7分類の建物のうち、戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所の建築作業には従事したが、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事しなかった。 被災者Dは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Dは、大工としての就労期間全般にわたり、北海道釧路市周辺でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Dは、一般の大工と同様、建築作業において、墨付け、きざみ、建 て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂場の天井、台所のガス台背面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をする際に生じた石綿粉じんに曝露し、また、鉄骨造建物での建築作業においては、以上に加え、上記⑴ウの内装工と同様の作業に従事し、そぎ落とした耐 火被覆用の吹付け材から生じた石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Dは、一般的な大工が必ずしも従事することのない、外装材であるサイディングの組立て、加工の作業も行っており、この際、サイディングから生じた石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Dの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Dの主要原因建材は、別紙5-4の表のとおりとなる(な お、前提事実のとおり、同表の「旭硝子(株)」は被控訴人AGCを、「新日鉄住金化学(株)」は被控訴人日鉄ケミカルをそれぞれ意味する。以下、その余の別紙5において同じ。)。 ⑸ 被災者E(番号8)ア被災者Eは、昭和47年7月から平成18年9月まで大工として稼働して 建築作業に従事し、また、昭和49年5月から平成18年9月まで、 5において同じ。)。 ⑸ 被災者E(番号8)ア被災者Eは、昭和47年7月から平成18年9月まで大工として稼働して 建築作業に従事し、また、昭和49年5月から平成18年9月まで、上記建築作業の前提として、従前建てられていた建築物の解体作業に従事し、これらの際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Eは、大工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。被災者Eは、大工として、国交省データベース の7分類の建物のうち、戸建て住宅、学校・幼稚園等の建築作業に従事したが、その他の建物の建築作業については、従事した経験がないものが多く、また一時期従事していたとしてもその数は少なかった。 また、被災者Eが解体作業を行った建物は、ほとんどが木造建物であった。 被災者Eは、解体工として、国交省データベースの7分類の建物のうち、戸 建て住宅、共同住宅、店舗・事務所の解体作業に従事したが、それ以外の建物の解体作業には従事した経験がないか、あったとしてもその数は少なかった。 被災者Eは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Eは、大工、解体工としての就労期間全般にわたり、ほぼ北海道釧路市周辺でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Eは、一般の大工と同様、建築作業において、墨付け、きざみ、建て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂場の天井、台所のガス台背 面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をす る際に生じた石綿粉じんに曝露し、また、鉄骨造建物での建築作業においては、以上に加え、前記 台所のガス台背 面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をす る際に生じた石綿粉じんに曝露し、また、鉄骨造建物での建築作業においては、以上に加え、前記⑴ウの内装工と同様の作業に従事し、そぎ落とした耐火被覆用の吹付け材から生じた石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Eは、一般的な大工が必ずしも従事することのない、外装材であるサイディングの組立て、加工の作業も行っており、この際、サイディ ングから生じた石綿粉じんに曝露した。 さらに、被災者Eは、一般の解体工と同様、建築作業において、屋根材や内装材を剥がす、叩き壊す、切断する作業、外壁を引き倒して解体する作業を行い、この際、解体作業に従事した建物に使用されるあらゆる石綿含有建材から生じる石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Eの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Eの主要原因建材は、大工については別紙5-5-1、解体作業については別紙5-5-2の表のとおりとなる。 ⑹ 被災者F(番号9)ア被災者Fは、昭和49年6月から昭和54年12月まで左官工として稼働 し、また、昭和55年5月から平成18年12月までとびとして稼働し、これらの際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Fは、とびとして、主として鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。また、被災者Fは、とびとして、国交省データベースの7分類の建物のうち工場、倉庫の建築作業にはいずれも数件しか従事 していない。 被災者Fは、とびとしての就労期間中、北海道でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Fは、とびとして、建築作業において、足場組み、養生シート も数件しか従事 していない。 被災者Fは、とびとしての就労期間中、北海道でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Fは、とびとして、建築作業において、足場組み、養生シートの設置、除去、足場上の清掃の作業に従事し、また、平成3年4月からは主に建 物の解体現場で同様の作業に従事した(解体作業自体には従事していない。)。 この際、被災者Fの頭上では吹付け作業が行われていたところ、被災者Fは、被災者Fの頭上から落ちてきた吹付け材の石綿粉じんに曝露し、また、一般の解体工と同様に、被災者Fがとびとしての作業に主に従事した建物で使用される全ての石綿含有建材から生じる石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Fの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Fの主要原因建材は、別紙5-6の表のとおりとなる。 ⑺ 被災者G(番号11)ア被災者Gは、平成元年6月から平成20年3月まで、配管工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Gは、配管工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート 造建物の建築作業に従事した。また、被災者Gは、配管工として、国交省データベースの7分類の建物のうち、学校・幼稚園等、工場を始め、規模の大きな建物である共同住宅、店舗・事務所、劇場・百貨店等、倉庫の建築作業に従事していた。 被災者Gは、配管工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも 従事した。 被災者Gは、配管工としての就労期間全般にわたり、北海道でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Gは、一般の配管工と同様、建築作業において、躯体、間仕切りなどへ給排水管を通すための建材の切断、貫 Gは、配管工としての就労期間全般にわたり、北海道でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Gは、一般の配管工と同様、建築作業において、躯体、間仕切りなどへ給排水管を通すための建材の切断、貫通作業(スリーブ工事)をし、こ の際に発生した石綿粉じんに曝露し、配管を設置した後これに保温材を切断、加工して設置し、この際に当該保温材から発生した石綿粉じんに曝露し、鉄骨造建物の配管工事では天井や躯体に用いられた鉄骨に支持金具や吊りボルトを取り付けるが、耐火被覆材として吹付け材が吹き付けられているため、吹付け材をへらなどで剥離、除去しながら設置する作業をするところ、この 際、吹付け材からの石綿粉じんに曝露し、また、石綿セメント円筒を切断、 加工する作業をし、この際に同円筒から発生した石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Gの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Gの主要原因建材は、別紙5-7の表のとおりとなる。 ⑻ 被災者H(番号13)ア被災者Hは、昭和28年5月から平成20年12月まで、大工として稼働 し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Hは、大工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。また、被災者Hは、大工として、国交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所の建築作業に従事し、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従 事しなかった。 被災者Hは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Hは、大工としての就労期間中、北海道でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者H 被災者Hは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Hは、大工としての就労期間中、北海道でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Hは、一般の大工と同様、建築作業において、墨付け、きざみ、建て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂場の天井、台所のガス台背面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をする際に生じた石綿粉じんに曝露し、また、鉄骨造建物での建築作業において は、以上に加え、前記⑴ウの内装工と同様の作業に従事し、そぎ落とした耐火被覆用の吹付け材から生じた石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Hの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Hの主要原因建材は、別紙5-8の表のとおりとなる。 ⑼ 被災者I(番号14) ア被災者Iは、昭和42年10月から平成21年3月まで、配管工として稼 働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Iは、配管工として、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。また、被災者Iは、配管工として、国交省データベースの7分類の建物のうち、共同住宅、店舗・事務所、学校・幼稚園等の建築作業には従事したが、戸建て住宅、工場の建築作業にはほとんど従事せず、劇 場・百貨店等、倉庫の建築作業には一切従事しなかった。 被災者Iは、配管工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Iは、配管工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Iは、一般の配管 、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Iは、配管工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Iは、一般の配管工と同様、建築作業において、躯体、間仕切りなどへ給排水管を通すための建材の切断、貫通作業(スリーブ工事)をし、この際に発生した石綿粉じんに曝露し、配管を設置した後これに保温材を切断、加工して設置し、この際に当該保温材から発生した石綿粉じんに曝露し、鉄骨造建物の配管工事では天井や躯体に用いられた鉄骨に支持金具や吊りボ ルトを取り付けるが、耐火被覆材として吹付け材が吹き付けられているため、吹付け材をへらなどで剥離、除去しながら設置する作業をするところ、この際、吹付け材からの石綿粉じんに曝露し、また、石綿セメント円筒を切断、加工する作業をし、この際に同円筒から発生した石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Iの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Iの主要原因建材は、別紙5-9の表のとおりとなる。 ⑽ 被災者J(番号15)ア被災者Jは、昭和47年3月頃から平成14年12月まで大工として稼働し、また、昭和51年から平成14年12月まで解体工として稼働し、これらの際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Jは、大工、解体工のいずれとしても、木造建物及び鉄骨造建物の 建築作業に従事した。被災者Jは、鉄筋コンクリート造建物の建築作業にはほとんど従事しなかった。 被災者Jは、大工として、国交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所の建築作業に従事したが、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従 た。 被災者Jは、大工として、国交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所の建築作業に従事したが、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事しなかった。また、被災者 Jは、解体工としては、上記建物のうち戸建て住宅、共同住宅の解体作業に従事したが、学校・幼稚園等、店舗・事務所、劇場・百貨店等、工場、倉庫の解体作業には従事しなかった。 被災者Jは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Jは、大工、解体工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Jは、大工として稼働した際は、一般の大工と同様、建築作業において、墨付け、きざみ、建て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂 場の天井、台所のガス台背面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をする際に生じた石綿粉じんに曝露し、また、鉄骨造建物での建築作業においては、以上に加え、前記⑴ウの内装工と同様の作業に従事し、そぎ落とした耐火被覆用の吹付け材から生じた石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Jは、一般的な大工が必ずしも従事することのない、外装材であるサイディングの組立て、加工の作業も行っており、この際、サイディングに含有された石綿の粉じんに曝露した。 さらに、被災者Jは、解体工として稼働した際は、一般の解体工と同様、建築作業において、屋根材や内装材を剥がす、叩き壊す、切断する作業、外 壁を引き倒して解体する作業を行い、この際、上述の被災者Jが解体作業に 従事した建物に使用されるあらゆる石 建築作業において、屋根材や内装材を剥がす、叩き壊す、切断する作業、外 壁を引き倒して解体する作業を行い、この際、上述の被災者Jが解体作業に 従事した建物に使用されるあらゆる石綿含有建材から生じる石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Jの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Jの主要原因建材は、大工については別紙5-10-1、解体工については別紙5-10-2の表のとおりとなる。 ⑾ 被災者K(番号16)ア被災者Kは、昭和42年から平成4年12月まで板金工として稼働し、また、昭和42年から平成14年3月まで解体工として稼働し、これらの際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Kは、板金工、解体工のいずれとしても、木造建物、鉄骨造建物及 び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。また、被災者Kは、板金工としては、国交省データベースの7分類の建物のうち、数の多い戸建て住宅、共同住宅、店舗・事務所の建築作業に従事していたが、学校・幼稚園等、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事していなかった。被災者Kは、解体工としては、上記建物全ての解体作業に従事していた。 被災者Kは、板金工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Kは、板金工、解体工としての就労期間中、北海道でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Kは、板金工として稼働した際は、一般の板金工と同様、建築作業 において、主に屋根用化粧スレート板等を用いる屋根の取付作業や、サイディングを中心とした外壁の取付作業を行い、これらの建材を切断、穿孔する作業を行った。この際、被災者Kは、これらの建材から生じた石綿 において、主に屋根用化粧スレート板等を用いる屋根の取付作業や、サイディングを中心とした外壁の取付作業を行い、これらの建材を切断、穿孔する作業を行った。この際、被災者Kは、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Kは、解体工として稼働した際は、一般の解体工と同様、建 築作業において、屋根材や内装材を剥がす、叩き壊す、切断する作業、外壁 を引き倒して解体する作業を行い、この際、上記建物に使用されるあらゆる石綿含有建材から生じる石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Kの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Kの主要原因建材は、板金工としては別紙5-11-1、解体工としては別紙5-11-2の表のとおりとなる。 ⑿ 被災者L(番号17)ア被災者Lは、昭和25年4月から平成20年まで、塗装工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Lは、塗装工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築の建築作業に従事した。また、被災者Lは、塗装工として、国 交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所、劇場・百貨店等、工場の建築作業に従事したが、倉庫では作業をしたことはない。 被災者Lは、塗装工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Lは、塗装工として、東京都を中心とした関東地方で稼働したことがあるが、昭和40年以降は北海道内で建築作業に従事していた。 ウ被災者Lは、一般の塗装工と同様、建築作業において、下地調整、掃除等の作業を行い、下地調整の際には素地の表面をラインサンダーや耐水ペーパーを使 年以降は北海道内で建築作業に従事していた。 ウ被災者Lは、一般の塗装工と同様、建築作業において、下地調整、掃除等の作業を行い、下地調整の際には素地の表面をラインサンダーや耐水ペーパーを使って平らに滑らかにする際に、モルタル壁から生じた石綿粉じんに曝 露し、掃除の際にはほうきとちり取りを使うために発生する石綿粉じんに曝露した。また、天井の耐火被覆用の吹付け材がむき出しのままの建築現場の改修工事において配管の塗装をする際には、天井から落ちて配管に積もった石綿粉じんに直接触れることもあり、この際に石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Lの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Lの主要原因建材は、別紙5-12のとおりとなる。 ⒀ 被災者M(番号18)ア被災者Mは、昭和35年7月から昭和40年12月までダクト工として、昭和40年12月から平成11年12月までダクト工及び保温工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Mは、ダクト工、保温工のいずれとしても、鉄骨造建物及び鉄筋コ ンクリート造建物の建築作業に従事した。被災者Mは、木造建物の建築作業には従事していない。また、被災者Mは、ダクト工、保温工のいずれとしても、国交省データベースの7分類の建物のうち、共同住宅、店舗・事務所、劇場・百貨店等の建築作業に従事し、また、平成2年から平成11年にかけては学校・幼稚園等、工場の建築作業にも従事したが、戸建て住宅、倉庫の 建築作業には従事しなかった。 被災者Mは、昭和40年12月までは改修工事を行っていなかったが、同月以降は、ダクト工及び保温工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 建築作業には従事しなかった。 被災者Mは、昭和40年12月までは改修工事を行っていなかったが、同月以降は、ダクト工及び保温工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Mは、ダクト工及び保温工として、主として北海道地方において建 築作業に従事したが、平成2年から平成11年にかけては関東地方において建築作業に従事した。 ウ被災者Mは、ダクト工として稼働した際は、一般のダクト工と同様、建築作業において、天井スラブにアンカーボルトを取り付ける作業や、ダクトを吊り込む作業を行い、この際、耐火被覆として吹き付けられた吹付け材を剥 がし、削る作業を行ったが、これにより、上記吹付け材から生じる石綿粉じんに曝露した。また、被災者Mは、改修工事において、鉄骨造建物に既設された耐火被覆用の吹付け材を剥がし、既設のダクトを取り外す作業を行う場合にはダクトに巻き付けてある保温材を剥がし、この際に生じる石綿粉じんに曝露した。 さらに、被災者Mは、保温工として稼働した際は、一般の保温工と同様、 建築作業において、パイプ等に保温材を巻き付けて被覆するために保温材をその形状に適合するように切断する作業を行い、この際、上記切断に際して大量に発生する石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Mの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Mの主要原因建材は、別紙5-13の表のとおりとなる。 ⒁ 被災者N(番号20)ア被災者Nは、昭和45年6月から昭和63年11月まで、はつり工及び解体工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Nは、はつり工及び解体工として、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造 月から昭和63年11月まで、はつり工及び解体工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Nは、はつり工及び解体工として、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。被災者Nの木造建物における建築作業は、 極めて少数である。また、被災者Nは、はつり工及び解体工として、国交省データベースの7分類の建物全ての建築作業に従事したが、このうち工場、倉庫の建築現場に従事した件数はいずれも少ない。 被災者Nは、はつり工及び解体工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Nは、一般のはつり工及び解体工と同様、建築作業において、屋根材や内装材を剥がす、叩き壊す、切断する作業を行い、外壁を引き倒して解体する作業を行い、この際、上述の被災者Nが解体作業に主として従事した建物に使用されるあらゆる石綿含有建材から生じる石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Nの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Nの主要原因建材は、別紙5-14の表のとおりとなる。 ⒂ 被災者O(番号21)ア被災者Oは、昭和39年4月から平成17年2月まで、大工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Oは、大工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造 建物の建築作業に従事していた。また、被災者Oは、大工として、国交省デ ータベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、学校幼稚園等、店舗・事務所の建築作業に従事したが、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事していなかった。 被災者Oは、大工として、新築工事のみならず改修 うち戸建て住宅、共同住宅、学校幼稚園等、店舗・事務所の建築作業に従事したが、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事していなかった。 被災者Oは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Oは、大工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Oは、一般の大工と同様、建築作業において、墨付け、きざみ、建て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂場の天井、台所のガス台背 面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をする際に生じた石綿粉じんに曝露し、また、鉄骨造建物での建築作業においては、以上に加え、上記⑴ウの内装工と同様の作業に従事し、そぎ落とした耐火被覆用の吹付け材から生じた石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Oの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Oの主要原因建材は、別紙5-15の表のとおりとなる。 ⒃ 被災者P(番号22)ア被災者Pは、昭和37年から平成17年まで、大工及びはつり工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Pは、大工、はつり工のいずれとしても、木造建物、鉄骨造建物及 び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事していた。また、被災者Pは、大工、はつり工のいずれとしても、国交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、店舗・事務所の建築作業に従事したが、その他の建物の建築作業には従事しなかった。 被災者Pは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従 事した。 共同住宅、店舗・事務所の建築作業に従事したが、その他の建物の建築作業には従事しなかった。 被災者Pは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従 事した。 被災者Pは、大工及びはつり工としての就労期間中、北海道でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Pは、大工として稼働した際は、一般の大工と同様、建築作業において、墨付け、きざみ、建て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂 場の天井、台所のガス台背面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をする際に生じた石綿粉じんに曝露し、また、鉄骨造建物での建築作業においては、以上に加え、前記⑴ウの内装工と同様の作業に従事し、そぎ落とした耐火被覆用の吹付け材から生じた石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Pは、はつり工として稼働した際は、一般のはつり工と同様、建築作業において、既設建材の解体工事に従事し、この際、石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Pの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Pの主要原因建材は、大工については別紙5-16-1、 はつり工については別紙5-16-2の表のとおりとなる。 ⒄ 被災者Q(番号23)ア被災者Qは、昭和53年6月から昭和54年8月まで、平成2年6月1日から同年12月25日まで、及び、平成4年5月1日から平成6年12月24日までは大工として稼働し、また、昭和55年6月から昭和59年5月ま で保温工として稼働し、これらの際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Qは、大工として、木造建物の建築作業 として稼働し、また、昭和55年6月から昭和59年5月ま で保温工として稼働し、これらの際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Qは、大工として、木造建物の建築作業に従事した。被災者Qは、大工としては、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業には従事していなかった。被災者Qは、大工として、国交省データベースの7分類の 建物のうち戸建て住宅の建築作業に従事したが、これ以外の建物の建築作業 には従事しなかった。 また、被災者Qは、保温工として、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。被災者Qは、保温工としては、木造建物の建築作業には従事していなかった。被災者Qは、保温工としては、国交省データベースの7分類の建物のうち共同住宅、学校・幼稚園等の建築作業に従事した が、工場の建築作業には従事しなかった。 被災者Qは、大工及び保温工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Qは、大工及び保温工としての就労期間中、北海道でのみ建築作業に従事した。 ウ被災者Qは、大工として稼働した際は、一般の大工と同様、建築作業において、墨付け、きざみ、建て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂場の天井、台所のガス台背面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をする際に生じた石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Qは、保温工として稼働した際は、一般の保温工と同様、建築作業において、パイプ等に保温材を巻き付けて被覆するために保温材をその形状に適合するように切断する作業を行い、この際、上記切断に際して大量 者Qは、保温工として稼働した際は、一般の保温工と同様、建築作業において、パイプ等に保温材を巻き付けて被覆するために保温材をその形状に適合するように切断する作業を行い、この際、上記切断に際して大量に発生する石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Qの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Qの主要原因建材は、大工については別紙5-17-1、保温工については別紙5-17-2の表のとおりとなる。 ⒅ 被災者R(番号24)ア被災者Rは、昭和41年4月から平成20年12月まで、はつり工及び解体工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Rは、はつり工及び解体工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋 コンクリート造建物の解体作業に従事した。被災者Rは、はつり工及び解体工として、国交省データベースの7分類の建物全ての解体作業に従事した。 被災者Rは、はつり工及び解体工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Rは、一般のはつり工及び解体工と同様、建築作業において、屋根 材や内装材を剥がす、叩き壊す、切断する作業、外壁を引き倒して解体する作業を行い、この際、上記建物に使用されるあらゆる石綿含有建材から生じる石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Rの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Rの主要原因建材は、別紙5-18の表のとおりとなる。 ⒆ 被災者S(番号25)ア被災者Sは、昭和58年6月から平成6年3月まで、解体工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Sは、解体工とし ⒆ 被災者S(番号25)ア被災者Sは、昭和58年6月から平成6年3月まで、解体工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Sは、解体工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の解体作業に従事した。被災者Sは、解体工として、上記国交省デー タベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所、工場、倉庫の解体作業に従事したが、劇場・百貨店等の解体作業には従事しなかった。 被災者Sは、解体工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Sは、一般の解体工と同様、建築作業において、屋根材や内装材を剥がす、叩き壊す、切断する作業、外壁を引き倒して解体する作業を行い、この際、上述の被災者Sが解体作業に従事した建物に使用されるあらゆる石綿含有建材から生じる石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Sの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Sの主要原因建材は、別紙5-19の表のとおりとなる。 ⒇ 被災者T(番号26)ア被災者Tは、昭和49年4月頃から昭和58年11月頃まで、及び、平成7年12月頃から平成8年4月頃まで、大工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Tは、大工として、木造建物の建築作業に多く従事し、また、鉄骨 造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業にも相当数従事した。被災者Tは、大工として、国交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、店舗・事務所の建築作業には従事したが、学校・幼稚園等、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事してい した。被災者Tは、大工として、国交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、店舗・事務所の建築作業には従事したが、学校・幼稚園等、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事していないか、一時期従事していたとしてもその数は少なかった。 被災者Tは、大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Tは、大工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Tは、一般の大工と同様、建築作業において、墨付け、きざみ、建 て方、屋根や外壁の下地、外部造作及び内部造作の各作業全般を行い、その中で軒天材、和室のせっこうボード、洋室、風呂場の天井、台所のガス台背面等のボード等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工をする際に生じた石綿粉じんに曝露し、また、鉄骨造建物での建築作業においては、以上に加え、前記⑴ウの内装工と同様の作業に従事し、そぎ落とした耐 火被覆用の吹付け材から生じた石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Tの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Tの主要原因建材は、別紙5-20の表のとおりとなる。 被災者U(番号27)ア被災者Uは、昭和52年9月から平成25年8月まで、塗装工として稼働 し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Uは、塗装工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。また、被災者Uは、塗装工として、国交省データベースの7分類の建物全ての建築作業に従事した。 被災者Uは、塗装工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 した。また、被災者Uは、塗装工として、国交省データベースの7分類の建物全ての建築作業に従事した。 被災者Uは、塗装工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業にも従事した。 被災者Uは、塗装工として、一時期仙台で稼働していたものの、主には北海道内で建築作業に従事していた。 ウ被災者Uは、一般の塗装工と同様、建築作業において、下地調整、掃除等の作業を行い、下地調整の際には素地の表面をラインサンダーや耐水ペーパーを使って平らに滑らかにする際に、モルタル壁から生じた石綿粉じんに曝 露し、掃除の際にはほうきとちり取りを使うために発生する石綿粉じんに曝露した。また、天井の耐火被覆用の吹付けがむき出しのままの建築現場の改修工事において配管の塗装をする際には、天井から落ちて配管に積もった石綿粉じんに直接触れることもあり、この際に石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Uの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏 まえると、被災者Uの主要原因建材は、別紙5-21の表のとおりとなる。 被災者V(番号28)ア被災者Vは、昭和29年10月から平成12年12月まで、内装大工として稼働し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Vは、内装大工として、木造建物、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリー ト造建物の建築作業に従事した。また、被災者Vは、内装大工として、国交省データベースの7分類の建物のうち戸建て住宅、共同住宅、学校・幼稚園等の建築作業に従事したが、店舗・事務所、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事しなかった。 被災者Vは、内装大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業に も従事した。 、店舗・事務所、劇場・百貨店等、工場、倉庫の建築作業には従事しなかった。 被災者Vは、内装大工として、新築工事のみならず改修工事の建築作業に も従事した。 被災者Vは、内装大工としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Vは、内装大工として、建築作業において、建築現場で建具を削り、建具等をビスなどで固定する際に電動ドリルで内装等のボード等に穴を開け、また、共に作業している大工を手伝う際にボードを押さえ、切りくずを 掃除し、また、自らボードを切断することもあり、これらの際に、石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Vの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Vの主要原因建材は、別紙5-22の表のとおりとなる。 被災者W ア被災者Wは、昭和40年2月から平成18年7月まで、配管工又は施工管理者として、配管工事及び空調設備工事等に従事し、この際、石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 イ被災者Wは、配管工又は施工管理者として、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の作業に従事した。被災者Wは、木造建物の建築作業には従事し なかった。また、被災者Wは、配管工又は施工管理者として、国交省データベースの7分類の建物のうち、大規模な建物である劇場・百貨店等や、共同住宅、学校・幼稚園等、店舗・事務所、工場、倉庫の建築作業に従事したが、戸建て住宅の建築作業には従事しなかった。 被災者Wは、配管工又は施工管理者として、新築工事のみならず改修工事 の建築作業にも従事した。 被災者Wは、配管工又は施工管理者としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 又は施工管理者として、新築工事のみならず改修工事 の建築作業にも従事した。 被災者Wは、配管工又は施工管理者としての就労期間全般にわたり、北海道内でのみ建築作業に従事していた。 ウ被災者Wは、一般の配管工と同様、建築作業において、躯体、間仕切りなどへ給排水管を通すための建材の切断、貫通作業(スリーブ工事)をし、こ の際に発生した石綿粉じんに曝露し、配管を設置した後これに保温材を切断、 加工して設置し、この際に当該保温材から発生した石綿粉じんに曝露し、鉄骨造建物の配管工事では天井や躯体に用いられた鉄骨に支持金具や吊りボルトを取り付けるが、耐火被覆材として吹付け材が吹き付けられているため、吹付け材をへらなどで剥離、除去しながら設置する作業をするところ、この際、吹付け材からの石綿粉じんに曝露し、また、石綿セメント円筒を切断、 加工する作業をし、この際に同円筒から発生した石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Wは、配管工、施工管理者のいずれの立場であるかにかかわらず、常に同様の配管、空調、衛生設備工事の現場で稼働していたのであり、施工管理者としても、配管工として曝露する石綿粉じんとほぼ同じ種類の石綿粉じんに曝露した。 以上を始めとする被災者Wの作業内容を前提に、前記1⑵イの選別を踏まえると、被災者Wの主要原因建材は、別紙5-23の表のとおりとなる。 4 まとめよって、控訴人らは、第1順位として、別紙3の「請求の相手方」欄記載の各被控訴人に対し、同欄に対応する「控訴人」欄記載の各控訴人に、連帯して、上 記各控訴人に対応する「請求額」欄記載の各金額の損害賠償金及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害 各控訴人に、連帯して、上 記各控訴人に対応する「請求額」欄記載の各金額の損害賠償金及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求め、第2順位として、連帯して、被控訴人らの集団的寄与度が認められる範囲の各金額の損害賠償金及びそれぞれこれに対する上記と同様の遅延損害金を支払うよう求め、第3順位として、被控訴人ら の責任割合の限度で一部連帯して、別紙4-2-1ないし別紙4-2-23の「請求額」欄記載の各金額の損害賠償金及びそれぞれこれに対する上記と同様の遅延損害金を支払うよう求める。 第2 被控訴人らの主張(被控訴人らは、いずれも控訴人らの主張を争うとともに、他の被控訴人らの 主張を、自己に有利な又は矛盾しない範囲で援用するなどとしており、喫煙歴及 び防じんマスク不着用の主張、消滅時効の主張(援用)並びに除斥期間の主張については、これらを援用するものと解される。) 1 被控訴人AGC⑴ア被控訴人AGCが製造、販売していた㉟石綿含有窯業系サイディングは、屋外で使用される建材である。屋外で使用される建材の施工に伴う粉じん濃 度の各種測定結果や、日本産業衛生学会が平成13年に発表した評価値は相当安全に配慮した数値であることからすると、屋外で用いられる建材については、石綿関連疾患の発症の予見可能性はない。したがって、被控訴人AGCは、上記建材に関し、そもそも当該建材が石綿を含有することや、がんや中皮腫等重篤な石綿関連疾患に罹患する危険があることを具体的に明示す べき注意義務を負っていない。 専ら屋外で使用する建材を製造、販売している企業に対して、室内における作業についての粉じん濃度の測定結果を把握 罹患する危険があることを具体的に明示す べき注意義務を負っていない。 専ら屋外で使用する建材を製造、販売している企業に対して、室内における作業についての粉じん濃度の測定結果を把握しておくべきであったとするのは無理がある。 イ解体作業に従事した者については、仮に被控訴人らが警告表示をしたとし ても結果回避可能性がない。したがって、控訴人らは、石綿含有建材について、当該建材が石綿を含有することや、肺がんを含む重篤な石綿関連疾患に罹患する危険性があることを表示するほか、修理、解体の際に解体工事の受任者が石綿の有無について調査するよう呼び掛けるなどの注意喚起をし、当該調査の結果、解体建物に石綿建材が使用されていることが判明した場合に は、受任者が解体作業者に対して上記表示を一読して理解できるように表示することを求めるなどの呼び掛けをする義務がある旨主張するが、被控訴人AGCは、このような義務を負っていない。 ⑵ア共同不法行為を主張する場合は、共同不法行為に特有の要件はもとより、個々の被告の行為について個別的な因果関係を除く不法行為の要件が主 張立証されなければならない。したがって、不法行為責任を問うためには、 控訴人らにおいて、具体的な加害行為、すなわち、個々の被害者がその権利ないし法益を侵害されたとする、その時、場所における加害行為(本件に即していえば、ある時間、場所において被害者に生じた当該健康被害を惹起した製品はどの製品であるかが特定され、その製品により被害者の権利が侵害されたこと)が特定されなければならない。 民法719条1項後段は、複数の行為者が被害者に対して不法行為を行い、その不法行為がいずれも被害者に結果を発生させるに足りるものであった場合 たこと)が特定されなければならない。 民法719条1項後段は、複数の行為者が被害者に対して不法行為を行い、その不法行為がいずれも被害者に結果を発生させるに足りるものであった場合に、他の行為者の不法行為があったゆえに、因果関係が認められないとして不法行為責任が否定されるという不都合を回避するために、共同行為者の行為について、個別的因果関係を推定するものとしたものであ る。 このような同項後段を、重合的競合の場合(共同行為者の複数の行為が競合して被害を発生させたが、その寄与度が明確でない場合)に類推適用することについては、損害の発生に対する寄与があったことの立証が本来必要なはずであり、少なくとも、対象となる建材が被災者の建築現場に到 達したことの立証が必要である。上記の到達は、上述のとおり本来立証が必要な寄与を置き換えたものであるから、その証明の程度を軽減する理由はない。 民法719条1項後段は、共同行為者という要件の下、個別的因果関係を推定し、被告に個別的因果関係がないことの主張立証を求める(立証責 任の転換)ものであり、民法の原則を修正するものである。同項後段は、個別的因果関係がないことの立証に成功しない限り、現実には個別的因果関係がない被告にも全損害についての責任を負わせるものである。そうすると、共同行為者の防御等のためには、控訴人らが共同行為者の他に加害者がいないことを立証することが不可欠である。そして、同項後段の類推 適用は、上記の寄与の程度が不明な場合に因果関係の立証責任を転換する ために用いられているのであるから、この場合にも、上述の共同行為者が特定され他に加害者が存在しないことは不可欠の要件である。 イシェアは、その時点におけ 立証責任を転換する ために用いられているのであるから、この場合にも、上述の共同行為者が特定され他に加害者が存在しないことは不可欠の要件である。 イシェアは、その時点における日本全国での販売割合等を表すものにすぎず、各被災者との関係でシェアの割合で石綿含有建材が到達していたことを表すものではない。 被控訴人らが製造した各建材の用途は様々であり、建材の種類が同じであれば同一の用途に使用されるということはできないこと、同じ作業に使用される建材であってもその種類は異なり得ること、取引関係の実態からすれば、各職人が各現場において使用した建材を製造、販売したメーカーは、当該施工を行う工事店や当該工事店と取引のある工務店や建材店と取 引関係にあるメーカーに限られることなどからすると、シェアが高ければ高いほど被災者が当該建材を取り扱う可能性が高くなるわけではない。 シェアから建材の到達を認定するには、あるシェアの下での現場での建材の出現頻度が均等であり、かつ、建築作業従事者が建築現場に赴く行為が独立な試行であるという前提を満たす必要があるが、建築作業従事者が いかなる建材を使用するかは、現場ごとの偶然的な要素によって左右されるものではなく、流通経路や建築を請け負ったゼネコン、下請業者らの取引関係等の様々な個別的要因によって左右されるものである。独立でない試行を多数回繰り返しても上記前提が満たされるわけではないし、上記前提は数学的な確率計算を許容する前提事情であるから、その反対事情が被 控訴人らにおいて反証すべき特別な事情に当たるものでもない。 到達の高度の蓋然性をシェアを用いて判断する場合には、少なくとも、同じ作業で使用される建材(無石綿製品も含む。)は全て考慮 控訴人らにおいて反証すべき特別な事情に当たるものでもない。 到達の高度の蓋然性をシェアを用いて判断する場合には、少なくとも、同じ作業で使用される建材(無石綿製品も含む。)は全て考慮に入れるべきである。木造戸建て住宅の外装材としては、サイディングのほか、モルタル、木、カラー鉄板、ALC等、多様な建材が存在し、上記住宅の外装 は1990年代中頃まではモルタル施工が多かった。 ウ被控訴人AGCが製造、販売した㉟石綿含有窯業系サイディングは、粘性が高いことなどから施工の際に粉じんが発生、飛散することはないか、あってもごく微量に限られていたこと、上記建材は被控訴人AGCが指定した建材店(トップショップ)のみを通じて販売されており、被災者らの勤務していた工務店等においてトップショップとの取引がない場合、当該被災者が上 記建材を使用した可能性は低いこと、改修工事においては建物内に施主が居住する中で施工されることが通常であり慎重に釘又は金具を取り外す方法がとられるため粉じんが発生することはほぼないことなどを踏まえると、上記建材は本件被災者らの石綿関連疾患の原因となり得ない。 2 被控訴人永大産業 ⑴ 石綿には大きく分けてクロシドライト、アモサイト、クリソタイルの3種類があるところ、これらは組成や性質を異にする別種類の鉱石であり、各国においてもそれぞれについて別個に規制等が行われている。そうすると、石綿関連疾患への罹患の危険性に対する知見についても、上記3種類の鉱物ごとに議論すべきである。 被控訴人永大産業は昭和46年から昭和51年まで(被控訴人永大産業が他社の石綿含有建材を仕入れて販売していた期間を含めても昭和55年まで)クリソタイルを使用した石綿含有建材を製造、販売していた。 し 控訴人永大産業は昭和46年から昭和51年まで(被控訴人永大産業が他社の石綿含有建材を仕入れて販売していた期間を含めても昭和55年まで)クリソタイルを使用した石綿含有建材を製造、販売していた。 しかし、昭和47年のIARCによる報告、昭和48年に発行されたIARCのモノグラフ集、平成元年のWHO報告書のいずれにおいてもクリソタイル が石綿関連疾患を惹起するリスクが極めて小さいと判断されていること、各国におけるクリソタイルの使用規制は昭和58年まで一切行われていないことからすれば、上記期間にクリソタイルによる石綿関連疾患への罹患の危険性についての知見が確立していた事実はない。 また、被控訴人永大産業の石綿含有製品からは石綿を含有する粉じんが全く 又は僅かしか発生しないところ、昭和46年の「石綿取扱い事業場の環境改善 等について」(昭和46年基発第1号)の内容や、昭和50年改正特化則における吹付け石綿の原則禁止等からすると、これらの時点においてはあくまでも石綿粉じんへの大量曝露による危険性についての知見しか存在しなかったのであり、上記期間において、クリソタイルへの少量曝露によって石綿関連疾患に罹患する危険があるとの知見は確立していなかった。 したがって、被控訴人永大産業が、上記期間において、クリソタイルの使用について注意義務を負うことはない。 ⑵ア民法719条1項後段は、因果関係以外の不法行為の要件を備えた複数の加害者がいずれもそれのみで権利ないし法益侵害の結果を惹起し得る行為を行ったにもかかわらず、複数の加害行為が介在することで個々の加 害行為と損害との間の因果関係の立証が困難となり、結果としていずれの行為者との関係でも加害行為と損害との間の因果関係の立証ができなくなるという不都合性を回避す 害行為が介在することで個々の加 害行為と損害との間の因果関係の立証が困難となり、結果としていずれの行為者との関係でも加害行為と損害との間の因果関係の立証ができなくなるという不都合性を回避すべく、因果関係の立証責任を加害者側に転換して、加害者各人が自らの行為と損害との間に因果関係のないことを立証しない限り連帯して損害賠償責任を負わせるという趣旨であると解され る。この際に前提となるのは、加害者の1人とされている者が当該被害者に対して実際に加害行為を行ったという事実であり、この事実は、同項後段の適用ないし類推適用の前提となるものである以上、損害賠償を請求する被害者側において主張立証すべきである。 したがって、控訴人らは、個々の被災者との関係で請求の相手方として いる被控訴人らが当該被災者に対して加害行為を行ったこと、すなわち、被控訴人らが製造、販売した石綿含有建材が当該被災者に到達したことを主張立証する必要がある。 民法719条1項後段の適用ないし類推適用については、複数の加害行為者に対して被害者に発生した損害の全てを賠償させる以上、加害行為者 として挙げられている者以外に加害行為者がいないことが必須であり、こ のことは損害賠償を請求する被害者側において主張立証すべきである。 イある製品が一定のシェアを有することから当該製品が建築作業従事者の下に到達した又はその可能性が高いと直ちにいうことはできず、ある製品が一定以上のシェアを持って相応の期間にわたって継続して製造、販売されて初めて当該建材の建築作業従事者への到達の可能性が高まるものである。被 控訴人永大産業の㉔石綿含有ロックウール吸音天井板は昭和47年から昭和51年までの5年間しか製造、販売されていないのであり、このような短い期 築作業従事者への到達の可能性が高まるものである。被 控訴人永大産業の㉔石綿含有ロックウール吸音天井板は昭和47年から昭和51年までの5年間しか製造、販売されていないのであり、このような短い期間では、上記建材が建築作業従事者の下に到達した可能性が高いとはいえない。 ウ被控訴人永大産業が製造していた石綿含有建材は、製造、販売された期間 が約40年前の数年間に限定されている、戸建て住宅等の一般住宅でのみ使用され鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物では使用されない、販売量が僅少で使用部位も限定されていた、施工、解体に伴う粉じんの発生量が僅少であったなど、被災者らとの接触可能性を否定する事情が数多く存在する。 したがって、被控訴人永大産業の石綿含有建材が被災者らの石綿関連疾患の 発症に寄与したとは考えられない。 ⑶ 被控訴人永大産業は、大阪地方裁判所において、昭和53年5月1日、会社更生手続開始決定を受けた。したがって、仮に控訴人らが被控訴人永大産業に対して損害賠償請求権を有するとしても、そのうち上記決定日より以前の行為を原因とする部分は更生債権となり、控訴人らはこれについて届出をしていな かったのであるから、当該損害賠償請求権は更生計画の認可をもって消滅した。 ⑷ 被控訴人永大産業は、石綿含有建材の製造を昭和51年に終了し、石綿含有建材の仕入れ、販売も昭和55年に終了しているところ、本件の訴え提訴までに同年から31年が既に経過している。仮に被控訴人永大産業に共同不法行為責任が認められる場合でも、かかる責任は除斥期間の定め(民法724条後段) により免責されるべきである。 3 被控訴人エーアンドエー⑴ア取引の相手方当事者が危険物であることを知っている場合に、相手方当事者において通常 め(民法724条後段) により免責されるべきである。 3 被控訴人エーアンドエー⑴ア取引の相手方当事者が危険物であることを知っている場合に、相手方当事者において通常尽くすべき調査によりその危険性の内容、程度等の取扱上の注意事項を知り得るときは、当該危険物の製造業者及び販売業者は、取引の相手方当事者に対し、危険性の内容等までを告知する義務を負わない(最高 裁平成元年(オ)第649号平成5年3月25日第一小法廷判決・民集47巻4号3079頁)。 建築作業従事者に対して安全配慮義務を負う使用者(直接の雇用関係がなく特別な社会的接触関係にある元請事業者等を含む。)は、石綿の危険性についての知見が確立していた時期においては、石綿含有建材であることさえ 認識できれば、通常尽くすべき調査により、その危険性の内容、程度及び取扱上の注意事項を知り得たことになる。そして、石綿含有建材の直接の購入者であるゼネコン等の元請業者、その下請業者又は建材商社等の専門業者は、被控訴人エーアンドエーのパンフレット(乙キ11、12)の記載によって、被控訴人エーアンドエーの製品に石綿が含有されていることを認識した上 で、石綿含有建材を選択して購入していたのであるから、被控訴人エーアンドエーには、上記パンフレットの記載以上に、石綿の危険性の内容までを警告する義務はなかった。 イ建材がその新規使用時に加工され、他の建材と一体となって建築物の構成部分となることに照らせば、ラベルや表示シール等の施工が完了した部位に 貼付する警告表示材料を用いた警告表示をすることは物理的に不可能である。また、石綿含有建材の出荷から補修、解体による撤去、廃棄まで長期間が経過することに照らせば、当該石綿含有建材に関する注意書とこれを建物 る警告表示材料を用いた警告表示をすることは物理的に不可能である。また、石綿含有建材の出荷から補修、解体による撤去、廃棄まで長期間が経過することに照らせば、当該石綿含有建材に関する注意書とこれを建物所有者に交付するよう依頼する文書とを建材に添付する方法による警告表示は、結果回避可能性を欠く。したがって、被控訴人エーアンドエーは、建 物の改修、解体工事に従事する建築作業従事者との関係では警告義務を負わ ない。 ⑵ア民法719条1項後段の類推適用が認められる前提としては、少なくとも、被控訴人エーアンドエーの製品に係る石綿粉じんが当該被災者に到達したという到達の因果関係が証明されることが不可欠である。因果関係の立証については、相当程度の蓋然性の立証では足りず、高度の蓋然性の立証が必要 なところ、そのためには、他原因の可能性を原告が高度の蓋然性をもって否定する必要がある。本件の被災者らは自己が直接取り扱った建材以外の建材に含まれる石綿にも、複合的、間接的、累積的に曝露しているところ、これは上記他原因が存在することにほかならず、本件において石綿粉じんが被災者らに到達したという到達の因果関係が高度の蓋然性をもって証明された と評価することはできない。 イシェアを石綿含有建材の粉じんの到達可能性の根拠とする場合、シェアを算出する前提となる市場は販売(出荷)数量を基礎に算出されなければならない。日本国内における対象建材の販売(出荷)数量の総数を把握するためには、日本国内の全ての建材メーカーから当該数量にかかる正確な 情報開示がされていなければならないが、そのような情報開示は行われていない。したがって、正確なシェアを算出することは不可能である。 シェアを基礎とする到達の認定は、被災者が就労現場におい 情報開示がされていなければならないが、そのような情報開示は行われていない。したがって、正確なシェアを算出することは不可能である。 シェアを基礎とする到達の認定は、被災者が就労現場において特定の建材に到達する確率が当該建材のマーケットシェアに等しいことを前提した確率計算に依拠するものであるが、これはあるシェアの下での現場での 建材の出現頻度が均等であることを前提としている。しかし、あるシェアの下での現場での建材の出現頻度が均等ということは、現実には起こり得ない。そもそも、建設業界が多重的下請構造にあることは広く知られているところ、これに比例して、建材の取引にも製造工場から建設現場で使用されるまでの間に多数の商社や卸業者が介在するのが通例であり、これら の階層的事業者は、それぞれの経営判断によって、在庫を増減させ、仕入 先や販売先を変更している。したがって、製造メーカーがある年に出荷した石綿含有建材が、同時期に、同一シェアを保ったまま全国の建設現場に等しく流れ着くことはない。 上記確率計算は、被災者自身が当該現場を作為、無作為に選ぶ確率を反映していない。そもそも、被災者は特定の工務店とつながりがあるなどす るため、無作為に当該現場を選ぶことはない。 控訴人らは、本件の各被災者が作業に従事した個々の建築現場や使用建材を特定できず、各メーカーの石綿含有建材から生じた石綿粉じんへの曝露を具体的に証明できていない。このような状況の下で、建材メーカーが、石綿含有建材の販路、物流、出荷先等を特定できる帳票が廃棄された後に なって、上記確率計算にかい離を生じさせる個別事情を反証することは不可能であるから、被控訴人らが上記確率計算の誤りを反証する責任を負うものではないと解すべきである。 被災 れた後に なって、上記確率計算にかい離を生じさせる個別事情を反証することは不可能であるから、被控訴人らが上記確率計算の誤りを反証する責任を負うものではないと解すべきである。 被災者への到達可能性を議論する際は、石綿含有建材に限ることなく、無石綿建材も含めた競合建材の生産量や出荷量を議論しなければならな い。 ⑳石綿含有スラグせっこう板と㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種とは内装用途として競合しており、かかる競合を看過して建材の到達を議論することはできない。 保温材のシェアを認定する際には、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材 及び⑩石綿保温材のみならず、保温保冷耐火用のパーライトが出荷されているのであるから、これを除外して到達を議論することはできない。 ウ建材の用途によって区別されるべきマーケットを同一視して建材の到達を議論することはできない。 被控訴人エーアンドエーの前身である浅野スレートや朝日石綿工業は、 製造したスレート波板を全量市場に出荷していたわけではなく、自社施工 によって消費していた。かかる消費分については、被控訴人エーアンドエーの施工員しか曝露せず、本件の被災者らが曝露する可能性はない。 被控訴人エーアンドエーの昭和50年以降の吹付けロックウールのシェアの大部分は、石綿を含有しない製品のものである。 ⑶ア複数ないし多数の企業が製造、販売した石綿含有建材に起因する石綿粉じ んの曝露の蓄積による損害について民法719条1項後段の類推適用を認める場合には、被控訴人らの基本的寄与割合については、事業者の責任、国の責任による各寄与を考慮すれば、多くとも3分の1を超えるものではない。 イ共同不法行為者とされる被控訴人らの上記基本的寄与割合は当該共同不法行為者以 の基本的寄与割合については、事業者の責任、国の責任による各寄与を考慮すれば、多くとも3分の1を超えるものではない。 イ共同不法行為者とされる被控訴人らの上記基本的寄与割合は当該共同不法行為者以外からの石綿粉じんへの曝露を考慮する必要があり、その割合は、 前記アによって調整された後の被控訴人らの基本的寄与割合の3分の1とされるべきであり、どんなに多くとも上記基本的寄与割合の5分の4を超えるものではない。 4 被控訴人クボタ被控訴人クボタは、被控訴人ケイミューに対し、屋根材及び外壁材事業等並び にこれらに関する権利及び義務の全部を、平成15年12月1日を分割期日とする吸収分割により移転した。被控訴人クボタの製品として商品化された屋根材及び外壁材等については、被控訴人ケイミューの主張を援用する。 5 被控訴人ケイミュー⑴ア石綿は繊維状で産出される鉱物の総称にすぎず、石綿のうちクリソタイ ルは蛇紋石族に分類されるのに対し、クロシドライト及びアモサイトは角閃石族(アンフィボール)に分類され、クリソタイルとそれ以外の石綿とではその性質は全く異なる。アンフィボール原因説とは、角閃石族(アンフィボール)に属する石綿のみが肺がん及び中皮腫の原因となるという考え方であり、平成2年頃から提唱されている。アンフィボール原因説は、 クリソタイルが肺がんを発症させるリスクが無視できる範囲内である(有 意でない)、又は、角閃石族(アンフィボール)と比較して有意に低いという2つの考え方を含む。アンフィボール原因説には合理性があり、また、アンフィボール原因説は現状でも積極的に否定されているわけではない。 そうすると、クリソタイルに肺がんリスクがあるとの知見は確立していないと考えるべきである。仮にアンフィボー には合理性があり、また、アンフィボール原因説は現状でも積極的に否定されているわけではない。 そうすると、クリソタイルに肺がんリスクがあるとの知見は確立していないと考えるべきである。仮にアンフィボール原因説の中のクリソタイルに 何らかの肺がんの超過リスクがあるという考え方によるとしても、そのリスクは他の石綿と比較して極めて低く、低濃度での曝露、さらには微量の曝露については、上記肺がんのリスクはもはやないと評価すべきである。 被控訴人ケイミューが製造した石綿含有建材は、クリソタイルのみを使用したものであり、また、被控訴人ケイミューの上記建材により作業者に 生ずる石綿曝露は、極めて微量であり、労災認定基準等とされる25本/ml・年の累積曝露をもたらすものではない。しかも上記基準は、クリソタイルとの関係では、労働者の救済を目的に設定されたものにすぎず、医学的な知見を前提として定められたものではない。そうすると、上記基準等を満たす可能性のない製品を製造、販売した被控訴人ケイミューには、注 意義務の前提となる肺がんのリスクに関する予見可能性はない。なお、石綿肺についても25本/ml・年の累積曝露量が閾値とされていることなどに照らすと、石綿肺との関係でも予見可能性はないというべきである。 個々の被控訴人らが石綿含有建材を製造、販売するに当たってどのような注意義務を負うかは、当該企業がどのような建材を製造、販売している かによって左右される個別の判断事項である。警告義務の前提としては、被控訴人らに、自らが製造、販売する石綿含有建材が施工されることによって発生する石綿粉じんを吸引した建築作業従事者が石綿関連疾患に罹患する危険性についての予見可能性があることが必要であり、裁判所は証拠によってかかる個別具体的な予見可能 含有建材が施工されることによって発生する石綿粉じんを吸引した建築作業従事者が石綿関連疾患に罹患する危険性についての予見可能性があることが必要であり、裁判所は証拠によってかかる個別具体的な予見可能性を認定しなければならない。 知見を有しておらず、コントロールすることもできない他社の製品によ る曝露をも踏まえて予見可能性を判断するのは、過失責任の原則を無視するに等しいものである。 イ被控訴人ケイミューが製造、販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板のうち、商品名「パーマトン」、「フレキシブルボード」は、プレカットされるパネル建材であり、内装用途で使用される場合、基本的には現 場で加工されないため、石綿粉じんが発生しない。したがって、被控訴人ケイミューには、これらの建材から発生する石綿粉じんが被災者らの石綿関連疾患を発症させることについての予見可能性がなく、これらの建材については警告義務を負わない。 ウ被控訴人ケイミューが製造、販売した㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレー ト及び㉟石綿含有窯業系サイディングについて、前者は屋根(仕上)材であり、後者は外壁材であって、いずれも屋外で施工されていた。また、被控訴人ケイミューが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板のうち、商品名「パーマトン」、「フレキシブルボード」以外のものは、実態としては、本来は㉟石綿含有窯業系サイディングに分類されるべ き外壁材であった。 被控訴人ケイミューの㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートの押し切りカッターによる切断等の作業時の個人曝露濃度の測定結果を基に、保守的に見積もった標準発じん時間を用いて計算すると、被控訴人ケイミューの㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートの施工時の時間加重平均個人曝露 カッターによる切断等の作業時の個人曝露濃度の測定結果を基に、保守的に見積もった標準発じん時間を用いて計算すると、被控訴人ケイミューの㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートの施工時の時間加重平均個人曝露濃 度は、日本産業衛生学会が平成13年に公表した、50年間曝露しても平均寿命に到達するまでに石綿に起因する肺がん又は中皮腫で死亡する者が1000人に1人の割合で生じる場合の評価値(0.15本/ml)はもとより、平均寿命に到達するまでに石綿に起因する肺がん又は中皮腫で死亡する者が1万人に1名の割合で生じる場合の評価値(0.015本/m l)すら下回る0.0017本/mlにすぎなかった。また、被控訴人ケイミ ューの㉟石綿含有窯業系サイディングの施工時の時間加重平均個人曝露濃度は、前者の評価値を下回る0.098本/mlであった。したがって、被控訴人ケイミューの上記各建材には科学的に見て実質的危険性がなく、被控訴人ケイミューには、上記各建材から発生する石綿粉じんによって石綿関連疾患が発症することについての予見可能性がない。 そもそも、上記評価値は、安全を重視した極めて厳格な基準であり、発がん物質の労働衛生管理の要否及びその内容を検討する前提としての参考値として位置付けられており、これを直ちに法的責任の基準として用いるのは適切とはいい難い。また、その実際の計算も安全側に偏っており、この点からも法的責任の基準としては厳しすぎる。 また、許容濃度及び評価値は、時間加重平均個人曝露濃度を想定したものであり、短時間での曝露濃度と許容濃度又は評価値とを比較することには意味がない。 各種の客観的な曝露濃度実験の結果を踏まえれば、屋内で使用される建材と屋外で使用される建材とでは危険性に であり、短時間での曝露濃度と許容濃度又は評価値とを比較することには意味がない。 各種の客観的な曝露濃度実験の結果を踏まえれば、屋内で使用される建材と屋外で使用される建材とでは危険性に明確な違いがあるから、屋外で 使用される建材には類型的に警告義務がないというべきである。 エ被控訴人ケイミューは、遅くとも昭和53年から販売店、工事店等に対して文書を配布し、遅くとも昭和61年から施工者に対して小冊子を配布し、遅くとも昭和59年から施工説明書による警告をし、遅くとも昭和61年から端面保護材への警告表示をし、建築作業従事者に対し、直接又は間接に、 必要かつ相当な警告表示を行ってきた。 前記アないしウのとおり、被控訴人ケイミューの製品には実質的危険性がないのであり、そのことからすれば、必要にして十分な警告内容が上記端面保護材に記載されていたと評価し得る。 ⑵ア民法719条1項後段の趣旨は、単独で発生した場面であれば問題なく因 果関係を立証できたはずであるところ、偶然同種行為が発生した場合(択一 的競合の場面)における立証の困難からの被害者の保護である。かかる趣旨からすると、同項後段が適用されるためには共同行為者間に当該権利、法益侵害についての択一的関係が存在しなければならないから、共同行為者とは、上記侵害を惹起する危険性を含んだ全ての者という関係で捉えられる複数の行為者である必要がある。したがって、共同行為者は、上記侵害を単独で 惹起する危険がある(単独惹起力と称する。)行為を行った者である。 また、加害者の立場からすれば、自らの行為が被害者に当たっていない可能性があるにもかかわらず被害者に生じた全損害の賠償責任が推定されることになるのは不当であり、共同行為者と認められるためには、 また、加害者の立場からすれば、自らの行為が被害者に当たっていない可能性があるにもかかわらず被害者に生じた全損害の賠償責任が推定されることになるのは不当であり、共同行為者と認められるためには、その特定された者以外の者によって損害がもたらされたものではないこと(他原因者の 不存在)が主張立証されなければならない。 前記アのとおり、同項後段は、被害者の保護の要請から、因果関係の推定を認める一方で、共同行為者の要件を要求することで、全損害との間で因果関係が推定される効果との調和を図るものである。同項後段の適用の場合の効果と同項後段の類推適用の場合の効果とは同様であるから、同項後段を類 推適用するに際しては、上述の同項後段の趣旨及び要件を踏まえた立論をする必要がある。同項後段の類推適用の場面においても、具体的な損害に直接向けられた行為を行った者でなければ共同行為者とはなり得ない。すなわち、同項後段の類推適用に際しては、具体的な損害に向けられた危険性の存在の立証が必要である。そのためには、各被控訴人が製造、販売した石綿含有建 材が、各被災者が建築作業に従事した建築現場に現実に到達したことの証明が必要である。 また、同項後段の類推適用の場面においても共同行為者に全損害との因果関係を推定するという法律効果を発生させる以上、同項後段の類推適用の場面においても単独惹起力は必須の要件であり、また、他原因者の不存在の要 件が撤廃される理由はない。仮に単独惹起力のない場面で同項後段の類推適 用を認めるとしても、到達が認められない場合に曝露が発生することはあり得ないから、到達は必須の要件である。 さらに、同項後段の類推適用を認める場合には、加害行為が当該損害の発生に寄与したことが証明されるか又は経験則上推認 が認められない場合に曝露が発生することはあり得ないから、到達は必須の要件である。 さらに、同項後段の類推適用を認める場合には、加害行為が当該損害の発生に寄与したことが証明されるか又は経験則上推認されることが必須の要件であり、寄与したこと自体は同項後段の推定の対象ではない。この際、到 達は寄与の前提として必要となるのであり、到達のみで寄与が認められるわけではない。損害発生の可能性が低い行為については、要件としての寄与(損害の一部との因果関係)の証明の問題として考えることになり、石綿の被害が発生する確率が非常に低い建材については、寄与の証明はそれだけ難しくなるはずである。 イ建築作業従事者が実際にどのような建材を施工するかは、建築を請け負ったゼネコンや下請業者らの取引関係、メーカーが出荷した後の流通経路(特約店、販売店、工事店、ハウスメーカー等)、建築物の性質及び用途、建築費用(建材の価格)、具体的な建築現場と建材の製造工場ないし保管場所との距離(運搬の容易さ)等の様々な個別的要因に主として依存する。 そのため、ある建材の市場におけるシェアをもって、被災者らの作業従事期間中どこかの建築現場に当該建材が到達していたかもしれないという抽象的な可能性の程度を超えて、当該建材が被災者らが作業していた特定の建築現場に現実に到達したことを推認することはできない。 石綿含有建材が建築現場に到達したとしても、当該石綿含有建材から石 綿粉じんが発生し、被災者がこれに曝露しなければ、被災者に石綿関連疾患は発症しない。そして、ここで問題となるのは上記曝露と上記石綿関連疾患の発症との因果関係の有無であるから、曝露の有無自体ではなく、曝露の量が問題となる。曝露量を検討する際には、現場数のみならず作業年数又は作業 。そして、ここで問題となるのは上記曝露と上記石綿関連疾患の発症との因果関係の有無であるから、曝露の有無自体ではなく、曝露の量が問題となる。曝露量を検討する際には、現場数のみならず作業年数又は作業日数を無視してはならず、また、石綿含有建材の種類(含有す る石綿の種類、含有量、飛散性の有無及び飛散性リスクの程度)、主な作 業場所、使用箇所、加工の要否、頻度等を検討すべきである。 また、中皮腫については、石綿粉じんへの曝露から発症まで20年から50年以上の潜伏期間があるから、中皮腫の発症との因果関係のある曝露は、発症時から遡って20年ないし50年程度のものが問題とされるべきである。 シェアを算出するには、問題とされる地域における、各建材メーカーの石綿含有建材の出荷量の全てと、自社建材と用途を同じくする建材の全出荷量とを把握する必要があるが、本件訴訟においては上記事情は明らかではない。したがって、適切なシェアの認定は不可能である。 仮にシェアに基づく到達の立証が許容されるとしても、代替性のある建 材がある場合、これを考慮に入れてシェアを算定する必要がある。上記代替性は、特定の種類の建材の中における石綿含有製品との代替性だけなく、建築現場における用途から検討する必要がある。 ㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートは屋根材であり、コンクリート系洋風瓦、粘土瓦、セメント瓦、厚型スレート、着色鉄板(金属系屋根材)と 競合しており、これらは㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートの代替建材である。 ㉟石綿含有窯業系サイディング及び㊱石綿含有建材複合金属系サイディングは外壁材であり、モルタル、カラー鉄板、プリント鋼板、ALCパネル等と競合しており、これらは㉟石綿含 建材である。 ㉟石綿含有窯業系サイディング及び㊱石綿含有建材複合金属系サイディングは外壁材であり、モルタル、カラー鉄板、プリント鋼板、ALCパネル等と競合しており、これらは㉟石綿含有窯業系サイディング及び㊱石 綿含有建材複合金属系サイディングの代替建材である。 北海道地区で用いられる屋根材は、主として、雪を滑らせやすい金属製の屋根材であり、被控訴人ケイミューの㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートが用いられることはまれであった。したがって、日本全国における㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートのシェアをもって上記建材の北海道地区 における建築現場への到達を認めることはできない。 ウ被控訴人ケイミューが製造、販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板のうち、商品名「カラートップ」、「パーマトン」、「レックストン」、「フレキシブルボード」、「無地トップ」以外のものは、そのほとんどが小規模住宅(戸建て住宅等)に用いられていた。また、被控訴人ケイミューの㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレート及び㉟石綿含有窯業 系サイディングも、実際は、そのほとんどが小規模住宅(戸建て住宅等)に用いられていた。 前記の5種類の建材はプレカットされたパネル建材であり、これらについては建築現場での切断等の加工作業は通常は行われない。したがって、上記建材については、建築作業従事者の石綿関連疾患の発症への実質的な 寄与はない。 被控訴人ケイミューの㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートの加工には専用工具である押し切りカッターが使用され、押し切りカッターによる施工においては粉じんはほとんど飛散しない。したがって、上記建材については、建築作業従事者の石綿関連疾患の発症への実質的な寄与 工には専用工具である押し切りカッターが使用され、押し切りカッターによる施工においては粉じんはほとんど飛散しない。したがって、上記建材については、建築作業従事者の石綿関連疾患の発症への実質的な寄与はない。 ⑶ 労災認定は、被災者の救済という政策的な目的に基づいてされる判断であるから、石綿関連疾患について労災認定がされたことをもって不法行為法上の因果関係を認めることはできない。 6 被控訴人倉敷紡績⑴ア不法行為責任を問うためには、まず、被害者において、故意又は過失によ る権利ないし法益の侵害行為(加害行為)を特定して主張立証しなければならない。控訴人らが共同不法行為を理由として損害賠償を請求する以上、被控訴人らの本件の個々の被災者に対する加害行為及び他の共同不法行為者の本件の個々の被災者に対する加害行為を具体的に特定して主張しなければならない。 そして、上記加害行為については、本件の個々の被災者に対する不法行為 を問題にする以上、本件の個々の被災者がその権利ないし法益が侵害されたとする、その時、場所における加害行為が問題とされるのであり、このような加害行為(共同不法行為の場合は、共同不法行為者全員の加害行為)が特定されて初めて共同不法行為の要件の存否を検討することができる。 イ民法719条1項後段は、複数の行為者が被害者に対して不法行為を行い、 その不法行為がいずれも被害者に結果を発生させるに足りるものであった場合に、他の行為者の不法行為もあったことによって、因果関係が認められないとして不法行為責任が否定されることを回避するために、そのような行為者の行った不法行為について個別的因果関係を推定する規定である。 そうだとすれば、同項後段による立証責任の転換が認められるのは、賠償 行為責任が否定されることを回避するために、そのような行為者の行った不法行為について個別的因果関係を推定する規定である。 そうだとすれば、同項後段による立証責任の転換が認められるのは、賠償 責任の対象者のいずれもが損害の全てを惹起するに足りる可能性のある行為を行っている者であるという場合でなければならず(しかも、その中の誰かの行為が全ての損害を発生させたことが明らかである必要がある。)、このような場合であれば、加害行為による損害の発生との関係で見た場合における重大性のレベルとの対比において、加害者が負うこととなる被害者の損 害についての負担割合が過大であるとことにはならないのであり、この点で上記立証責任の転換による加害者の不利益と被害者の救済との均衡が保たれる。 したがって、同項後段を適用するためには、因果関係を除く不法行為の要件を具備していることを前提として、少なくとも、択一的競合、すなわち、 対象とされる被控訴人の行為がそれだけで損害を発生させる原因力を持っていること、一方で控訴人らが加害者(この者について因果関係を除く不法行為の要件を具備していることが必要である。)として特定した他の者も同様の原因力を有しており、損害の発生がいずれの行為者の行為によるものであるか不明であること、加害者として特定された誰か一人の不法行為によっ て損害が生じたことが明らかであり、それ以外の原因によって損害が発生し たものではないと認められることが必要である。 同項後段の類推適用については、同種事件の裁判例もある中、本件においてこれがいかなる要件で認められるかは必ずしも明瞭とはいい難いが、個別の被災者との関係で、単体で損害発生の原因となり得る力を持っているか否かはともかく(上述のとおり、同項後 判例もある中、本件においてこれがいかなる要件で認められるかは必ずしも明瞭とはいい難いが、個別の被災者との関係で、単体で損害発生の原因となり得る力を持っているか否かはともかく(上述のとおり、同項後段の適用の場合はこれが必要である。)、 被害者において加害者として特定した複数行為者の行為の結果として損害が発生したことが明らかであり、特定した上記複数行為者以外の者の行為を原因として損害が発生していることはない、ということが控訴人らにおいて主張、立証されなければならない。 ⑵ 用途ごとの石綿含有建材市場などという市場は存在せず、また、用途を同じ くする建材には無石綿建材等も含まれ、無石綿製品等の存在する製品市場においては、石綿含有製品は無石綿製品と競合関係にある。石綿含有製品を使用した可能性(確率)の判定のためにシェアを認定するに当たっては、無石綿建材を含めた代替建材の存在を考慮する必要がある。 また、被控訴人倉敷紡績が製造、販売した㉟石綿含有窯業系サイディングは 外装化粧材であり、戸建て住宅やアパート(低層集合住宅)の外装に意匠を加飾するためのものであって、戸建て住宅等において必須の建材ではない。戸建て住宅等の建設現場で専ら作業を行った被災者について、戸建て住宅等に使用されたかもしれない石綿含有建材を使用した可能性(確率)を判定するために、当該製品が属する1つの種類の石綿含有建材のシェアのみを取り上げても、当 該可能性を判定することはできない。 ⑶ア被控訴人倉敷紡績の㉟石綿含有窯業系サイディングは、戸建て住宅やアパート(低層集合住宅)の破風や窓飾りなどに用いられる外装化粧材であり、その用途からして、1戸の住宅に使用される量は極めて少ないこと、上記建材から粉じんが発生するのはその切断時のみであること、切断は上 ート(低層集合住宅)の破風や窓飾りなどに用いられる外装化粧材であり、その用途からして、1戸の住宅に使用される量は極めて少ないこと、上記建材から粉じんが発生するのはその切断時のみであること、切断は上記建材の 長さを調節する必要がある場合に限られることなどからすると、建築作業従 事者が上記建材から生じた粉じんに曝露することは考えられない。 また、戸建て住宅等以外の建築作業現場にしか従事していない被災者は、被控訴人倉敷紡績が製造、販売した上記建材から飛散する石綿粉じんを吸引することはあり得ないし、これに従事したことがある被災者についても、同人がおよそ破風や窓飾りの部分に関わらないこともあることからすれば、戸 建て住宅等の建築作業現場に従事したとの点のみをもって、上記建材から飛散する石綿粉じんに曝露したことにはならない。 イ被控訴人倉敷紡績が過去に製造、販売していた石綿含有建材の製造、販売量は、非常に少なかった。 7 被控訴人神島化学工業 ⑴ア被控訴人神島化学工業が製造した㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の多くは、被控訴人大建工業のOEM製品である。かかる製品については、被控訴人神島化学工業が市場に直接置くものではなく、被控訴人神島化学工業が特定の被災者に石綿含有建材を到達させるという行為を行っていたわけではない。被控訴人神島化学工業が上記建材を市場に置かない以上、被控 訴人神島化学工業が警告義務を履行すべき立場にあるとはいえない。 イ成形板等の屋外で使用されることが予定されている建材については、粉じんの測定結果等からみて、当該建材から生じる石綿粉じんの濃度が許容濃度を超えることが少なく、上記粉じんは作業中に滞留することなく外気によって希釈されると考えられることから、建築作業従事者 ては、粉じんの測定結果等からみて、当該建材から生じる石綿粉じんの濃度が許容濃度を超えることが少なく、上記粉じんは作業中に滞留することなく外気によって希釈されると考えられることから、建築作業従事者が石綿粉じんに曝露し、 更に石綿関連疾患を発症することまでの予見可能性があったとはいい難い。 したがって、被控訴人神島化学工業の外装材については、警告義務違反はない。 ウ後続作業者については、同作業は新築工事においても既に設置されている建材に対する作業となるところ、当該建材のメーカーが当該建材に警告表示 を行ったとしても、これを上記作業者に了知させることはできない。したが って、建材メーカーには結果回避可能性がなく、上記作業者に対する警告義務を負うことはない。この点は、むしろ、事業者による安全配慮義務の履行によって対策が採られるべきものである。 エ改修、解体工事に従事する者については、同人に了知させ得る警告表示がなく、建材メーカーには結果回避可能性がないから、建材メーカーの警告義 務の対象外である。この点については、上記工事を行う事業者が必要な対策を採るべきである。 ⑵ア民法719条1項の共同不法行為責任が成立するためには、被控訴人らの行為が個々の被災者との関係で侵害行為であることが主張立証されることが前提となるところ、控訴人らは、上記侵害行為として、単に石綿含有建材 を製造、販売した事実を主張しており、当該建材が各被災者の下に到達したことを主張立証していない。被控訴人らの上記行為は、各被災者との関係で、上記侵害行為であるとすらいえない。 ある建材が被災者に到達していなければ、当該建材はそもそも当該被災者の石綿関連疾患の発症に対する危険性を有しないから、当該建材を製造、販 売した被控訴 、上記侵害行為であるとすらいえない。 ある建材が被災者に到達していなければ、当該建材はそもそも当該被災者の石綿関連疾患の発症に対する危険性を有しないから、当該建材を製造、販 売した被控訴人に対して不法行為責任を負わせる基礎を欠く。したがって、控訴人らは、民法719条1項後段の類推適用を主張するのであれば、特定の被控訴人が製造、販売した石綿含有建材が本件の特定の被災者に到達したことを立証することが必要である。 民法719条1項後段の類推適用の効果として被控訴人らの全部連帯責 任を導くためには、各被控訴人らが全損害を惹起し得る可能性が高いことを前提とし、かつ、損害に寄与した行為者を全て特定することが必要である。 イ特定の企業の建材が特定の被災者に到達したという事実については、まずは具体的な証拠をもって立証すべきであり、シェアのみに依拠して建材の到達を立証することは原則として許されない。 仮にシェアに依拠して建材の到達可能性を論じるにしても、相互に代替 可能な建材については、それぞれ個別にシェアを検討するのではなく、全体として検討しなければ、到達の可能性を判断することはできない。 ⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種については、同製品のシェアのみで主要原因建材か否かを論じるのは不当であり、考慮すべきは、同製品の耐火被覆材全般におけるシェアである。 ㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種については、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板が相互に代替可能な建材であり、少なくともこれらについては全体としてシェアを検討する必要がある。また、㉕石綿含有せっこうボードや床材等も全体として 綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板が相互に代替可能な建材であり、少なくともこれらについては全体としてシェアを検討する必要がある。また、㉕石綿含有せっこうボードや床材等も全体としてシェアを検 討する対象とする必要がある。 ㉟石綿含有窯業系サイディングについては、外壁材としての競合品としてモルタル壁や金属系サイディング、無石綿化された炭酸カルシウム系のサイディング等を到達可能性を判断する前提となるシェアの分母に加える必要がある。 別件訴訟の工事におけるアスベスト建材一覧表(乙ト201)、販売台帳(乙シ105)、設計図書(乙ト204)からすると、その被災者が担当した現場のうち、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が用いられた現場は、1年に1度あるかないかという程度にすぎない。 被控訴人神島化学工業が製造した被控訴人大建工業の㉟石綿含有窯業 系サイディングのうち、商品名「真打Eシリーズ」、「真打Gシリーズ」は主として西日本向けの商品であり、これらが北海道で使用された可能性は著しく低い。 ウ被控訴人神島化学工業の㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である商品名「プライシリカ」、「ダイケンラックス」(被控訴人大建工業のOEM 製品)は、専用カッターで切断する建材であり、上記切断の際に粉じんはほ とんど発生しない。 ⑶ 仮に被控訴人神島化学工業が製造、販売した石綿含有建材が主要原因建材であると認定されたとしても、事業者の安全配慮義務違反が被災者に及ぼした影響は大きいから、自らの建材が主要原因建材であると認定された被控訴人らの責任は多くとも3分の1にとどまる。 8 被控訴人昭和電工建材⑴ア建材は直接人体に影響を及ぼすことはなく、建材の加工等をすることで 自らの建材が主要原因建材であると認定された被控訴人らの責任は多くとも3分の1にとどまる。 8 被控訴人昭和電工建材⑴ア建材は直接人体に影響を及ぼすことはなく、建材の加工等をすることで初めて人体に対する危険性が生じる。そして、加工等の際に防じんカッター、防じんマスクを使用していれば、上記加工等の際に発生する粉じんへの曝露を防ぐことができる。 被控訴人昭和電工建材は、設計施工説明書に、被控訴人昭和電工建材の石綿含有建材の加工に際して防じんマスク、防じんカッターを使用することを明記しており、警告義務を果たしている。 イ建材は建築物の構成部分となるため、当該建築物にどのような建材が使用されているかは外部からは明確でない場合もあり、新築時には広く使わ れていた材料が時代の進展に伴って使用禁止となることもあるから、改修、解体工事を行う事業者において、石綿含有建材の使用状況を確認した上で必要な対策を採るのが実際的であり、当該建材を製造した企業が解体、改修業者に対しても警告義務を負うとするのは実効性を著しく欠き、また、当該企業に不当な負担を生ぜしめるものである。 建物の建築施工から解体までには通常は数十年以上を要するのであるから、建材メーカーが建材店等に対して建材の販売時に当該建材の危険性に関する情報を記載した取扱説明書等を交付しても、これが当該建物の所有者に交付され、当該建物の改修、解体時に作業者に交付されるというのは現実的でない。また、建築士はどの建材メーカーの製品を採用するかの 決定権を持つのであり、建材メーカーがかかる建築士に対して設計図書の 記載内容や設計図書に上記取扱説明書等を添付することを指示することはできない。 ⑵ア共同不法行為における加害行為とは、権利 つのであり、建材メーカーがかかる建築士に対して設計図書の 記載内容や設計図書に上記取扱説明書等を添付することを指示することはできない。 ⑵ア共同不法行為における加害行為とは、権利侵害の危険を生じさせる行為であるところ、建材は現場における加工を前提としているという点で言わば半製品であり、石綿粉じんへの曝露の有無は、当該建材の切断等の加工におけ る防じん対策の有無によって決まる。したがって、石綿含有建材の危険性は、現場における安全管理によって決まるものであり、石綿含有建材を製造、販売し、市場に流通させる行為に、上記加害行為性はない。 イある被災者の稼働先で、市場シェアが低い建材を頻繁に使用することもあり得、その逆もあり得るのであって、建材のシェアと当該建材の被災者 への到達の可能性とは別の問題である。建材は様々な経路を経て被災者に到達するのであり、被災者への到達が立証できたというためには、現場や建材を特定する個別具体的な主張を欠くことはできない。シェアは、あくまで、被災者への到達を認定するための間接事実の1つにすぎず、到達の認定のための直接証拠にはなり得ない。 被控訴人昭和電工建材の建材は、ラムダ会に属する特定の施工代理店に販売されていたので、一般の工務店、大工等が取り扱うことはなかったから、被控訴人昭和電工建材については、被控訴人昭和電工建材の建材のシェアとその被災者への到達の可能性とは関係がない。 改修、解体工との関係では、建材の市場シェアが当該建材の同人への到 達可能性にそのまま対応するわけではない。耐久性が高く、長期間の使用が前提とされている建材は、当該建材のシェアが高くとも、改修、解体の対象となる頻度は低いであろうし、逆に、耐久性が低く、使用サイクルの短い建材について 応するわけではない。耐久性が高く、長期間の使用が前提とされている建材は、当該建材のシェアが高くとも、改修、解体の対象となる頻度は低いであろうし、逆に、耐久性が低く、使用サイクルの短い建材については、改修、解体の対象となる頻度は高いと考えられる。 また、建物の種類や部位によっても、改修、解体の対象となる頻度は異な る。 被控訴人昭和電工建材の建材は、製品自体の強度が一般のサイディング材の数倍あり、耐久性が高く、長期にわたって使用される建造物に使用されていたのであり、上記建材が改修、解体の対象となる頻度は、一般のサイディング材に比べて低かった。 ウ被控訴人昭和電工建材の切断に使用するカッターはダイヤモンドブレ ードと呼ばれるコンクリート切断用のホイール状のカッターであり、通常の大工はかかるカッターを所持していない。したがって、一般の大工が被控訴人昭和電工建材の建材を切断することはなかった。また、被控訴人昭和電工建材の建材は、ラムダ会での特殊な教育を受けた職人しか施工することができず、施工の際には集じんカッターの使用及び防じんマスクの着 用が要求されていた。 被控訴人昭和電工建材の建材は非常に硬いため、これが使用された建物の改修工事の際は、建材を叩き割るのではなく、ビスを緩め、金具を外す方法を採るのであり、このようなことはラムダ会の職人でなければすることができない。 以上のとおり、被控訴人昭和電工建材の建材は、耐久性が高く、長期にわたる使用を前提としているから、改修、解体工事の対象となる可能性は低く、被災者らが上記建材から生じた粉じんに曝露する可能性は低い。 ⑶ 被控訴人昭和電工建材は、被災者らのうち石綿関連疾患認定日から本件訴訟の提起までに3年を経過している者に 事の対象となる可能性は低く、被災者らが上記建材から生じた粉じんに曝露する可能性は低い。 ⑶ 被控訴人昭和電工建材は、被災者らのうち石綿関連疾患認定日から本件訴訟の提起までに3年を経過している者につき、消滅時効を援用する。 9 被控訴人日鉄ケミカル⑴ 被控訴人らに石綿含有建材の製造、販売に関して何らかの警告義務違反が認められることがあったとしても、その時期は、国の規制権限不行使が認められる時期と比較して、相当程度遅い時期になる。具体的には、フランスでは昭和53年、西ドイツでは昭和54年に吹付け材の使用がそれぞれ禁止されたこと、 ILOは昭和61年に石綿吹付け作業を原則禁止としたことなどから、上記義 務が認められる時期は、早くとも昭和53年より後である。 ⑵ 被控訴人日鉄ケミカルは、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種を自ら製造しておらず、あくまでも顧客からの希望を受けた場合の調達のために被控訴人日本インシュレーションに上記建材の製造を委託し、被控訴人日本インシュレーションが製造した上記建材を被控訴人日鉄ケミカルのブランドとして販売 していたにすぎない。被控訴人日鉄ケミカルには上記建材の出荷数量等についての記録さえ残っていないのであり、被控訴人日鉄ケミカルの上記建材の出荷数量は微々たるものであった。 10 被控訴人大建工業⑴ア被控訴人大建工業の㉔石綿含有ロックウール吸音天井板に使用されてい る石綿は、他の石綿より危険性が少ないクリソタイルであり、かつ、上記建材の石綿含有率は他の石綿含有建材のそれよりも低く、また、上記建材の切断にはカッターを用いることが前提とされており、上記切断の際の粉じん発生量は少なく、その切断等による石綿粉じん濃度は日本産業衛生学会の勧告における許容濃度以下である。 よりも低く、また、上記建材の切断にはカッターを用いることが前提とされており、上記切断の際の粉じん発生量は少なく、その切断等による石綿粉じん濃度は日本産業衛生学会の勧告における許容濃度以下である。したがって、中皮腫の場合を含め、被災者ら の石綿関連疾患罹患について、被控訴人大建工業の過失はない。 イ被控訴人大建工業が改修、解体工事に従事する者に対して実効性のある警告をすることは困難であり、これらの者については、改修、解体工事を行う事業者において、必要な対策を採るべきである。また、後続作業者についても、事業者による安全配慮義務の履行によって対策が採られるべきである。 したがって、被控訴人大建工業について、解体工や塗装工といった施工後の建材を取り扱う職種に対する警告義務違反を観念することはできない。 ⑵アある被控訴人の石綿含有建材が本件の被災者らの下に到達しなければ、そもそも当該被控訴人が被災者らの石綿関連疾患の発症という損害発生について危険を惹起したとはいえず、当該被控訴人に不法行為責任を負わせるだ けの非難可能性がない。控訴人らは、被控訴人の建材が本件の各被災者に到 達したことを立証しなければ、民法719条1項後段に基づいて被控訴人の責任を追及することはできない。 イ特定の企業の建材が特定の被災者に到達したことについては、まずは具体的な証拠をもって立証すべきであり、シェアのみに依拠して建材の到達を立証することは原則として許されない。 仮にシェアに依拠して建材の到達可能性を論じるにしても、相互に代替可能な建材については、それぞれ個別にシェアを検討するのではなく、全体として検討しなければ、到達の可能性を判断することはできない。 ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板と化粧せっ も、相互に代替可能な建材については、それぞれ個別にシェアを検討するのではなく、全体として検討しなければ、到達の可能性を判断することはできない。 ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板と化粧せっこうボード、インシュレーションボード、石綿板、パルプセメント板等は相互に代替可能な建材で あるから、それぞれ個別にシェアを検討するのではなく、全体として検討しなければ、到達の可能性を判断することはできない。 別件訴訟の工事におけるアスベスト建材一覧表(乙ト201)、販売台帳(乙シ105)、設計図書(乙ト204)からすると、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板が全ての現場で用いられているわけではないし、その 使用面積も、用途を同じくする建材、特に天井用化粧せっこうボードの使用面積より大幅に少ない。 北海道における㉔石綿含有ロックウール吸音天井板の使用量は、他地域におけるそれと比較して約6分の1と大幅に少ない。 ウ被控訴人大建工業の㉔石綿含有ロックウール吸音天井板の加工にはボー ドカッターが用いられ、電動工具は用いられない。また、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板にやすり掛けを行うことは例外的である。さらに、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板には穿孔、くぎ打ち、ビス打ちの作業はなく、オーソドックスな工法においては、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板の開口作業は行われないし、穴を開ける場合でも作業は発じん量の少ない手のこ によって行うものである。加えて、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板の石 綿含有率は低い。したがって、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板からの石綿粉じんの発生量は、他の建材のそれと比較して相当少ない。 ⑶ア仮に被控訴人大建工業が製造、販売した石綿含有建材が主要原因建材であると認定され したがって、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板からの石綿粉じんの発生量は、他の建材のそれと比較して相当少ない。 ⑶ア仮に被控訴人大建工業が製造、販売した石綿含有建材が主要原因建材であると認定されたとしても、事業者の安全配慮義務違反が被災者に及ぼした影響は大きいから、自らの建材が主要原因建材であると認定された被控訴人ら の責任は多くとも3分の1にとどまる。 イ被災者Cは、天井の建材を切るときはくぎをくわえながら作業をするためマスクを付けられないと供述するが、被控訴人大建工業の㉔石綿含有ロックウール吸音天井板はのり付け後に建築用ホッチキスでステープルを打ち込むものであり、釘を口に加える必要はないため、マスクの着用は可能である。 したがって、少なくとも被控訴人大建工業の㉔石綿含有ロックウール吸音天井板との関係では、マスクの不着用は、大幅な過失相殺の対象となる。 11 被控訴人太平洋セメント⑴ア過失に係る予見可能性は、加害行為が行われた当時の具体的状況の下において、被害発生を防止するための対策を講じるべきであるとの判断を可 能ならしめる程度に具体的な危険性を認識し得たか否かによって判断すべきである。 クリソタイルについては近年まで管理使用をすることができるとの理解が主流であり、石綿含有吹付け材についても、平成17年に石綿障害予防規則が制定されるまでは、作業者が防じんマスクや保護具を使用すれば 施工が可能とされていたから、平成18年9月1日に我が国で石綿含有建材の製造等が法令上禁止されるまでは、吹付け材を含めた石綿含有建材の製造等の禁止について社会的合意が形成されることはなかった。 また、被控訴人太平洋セメントが②石綿含有吹付けロックウールの販売を開始した昭和46年当時において、国は、石綿 めた石綿含有建材の製造等の禁止について社会的合意が形成されることはなかった。 また、被控訴人太平洋セメントが②石綿含有吹付けロックウールの販売を開始した昭和46年当時において、国は、石綿による健康被害を防止す るため、上記建材の販売先であり建設作業従事者の使用者である建設業者 や、建築作業従事者に対して各種の義務を課しており、その後も、国は、その時々の知見に応じ、以上のような施策を順次強化していた。そのため、被控訴人太平洋セメントは、建設業者及び建築作業従事者が法令が定める安全管理等を行うのであるから、建築作業従事者に石綿関連疾患が生ずることはないと認識していた。そして、被控訴人らの調査及び情報収集能力 は、国のそれらに比して高かったとはいえないのであり、被控訴人らが、被害の発生を防止するための対策を講じるべきであると判断することを可能ならしめる程度に、具体的な危険性を認識し得たとはいえなかった。 仮に、昭和50年頃までに、被控訴人らにおいて上記の危険性を予見可能になったといえるとしても、現実に警告表示を行うにあたっては、一定 の調査及び同調査の結果に基づき注意事項の具体的内容を変更することに伴う建材、包装等の作成の期間を要するはずであり、とりわけ包装に警告表示をするだけでは無意味な吹付け材については、検討に時間を要することが避けられない。被控訴人らは、国と比して調査及び情報収集能力が高かったとはいえないから、被控訴人らに警告義務違反が認められる余地 があるとしても、国の規制権限不行使の違法が認められる昭和50年10月1日以降のことであり、これ以上に早まることはあり得ない。 ②石綿含有吹付けロックウールを含む耐火被覆材は、建物の耐火性能を確保するために建築基準法に従って施工され められる昭和50年10月1日以降のことであり、これ以上に早まることはあり得ない。 ②石綿含有吹付けロックウールを含む耐火被覆材は、建物の耐火性能を確保するために建築基準法に従って施工される必要がある建材である。したがって、吹付け材が剥がされると本来予定した耐火性能が得られなくな るのであるから、一度吹き付けられた吹付け材がその後に剥がされることは予定されておらず、むしろ剥がされないことが予定されていた。そのため、被控訴人太平洋セメントは、吹付け工以外の職工が吹付け材を剥がしていることを想定していなかった。また、建築現場は建設業者が管理する事業所であって他社であり取引の相手方である建材メーカーが容易に調 査できる場所ではなく、被控訴人太平洋セメントは建設業者から粉じんの 防止に関する要望、情報提供を受けたことはなかったから、被控訴人太平洋セメントには吹付け材を剥がすことに伴う粉じんの発生やその対策について検討する契機すらなかった。 イa 控訴人らが主張する被控訴人らに課せられる警告義務は、民法709条の過失を根拠付けるものであるから、被控訴人ごとに個別に判断され る必要がある。建材メーカーに警告義務が一律に課せられ、その違反が一律に認められることはあり得ない。 元方事業者等は、建材の選定、発注、現場への搬入の際に吹付け材の包装を視認することはないから、元方事業者が現場監督を通じて包装に触れる機会のない者(すなわち、吹付け工以外の者)に警告表示の内容 を認識させることはできない。したがって、被控訴人太平洋セメントには吹付け工以外の者に対する警告表示による結果回避可能性がなく、被控訴人太平洋セメントにこれらの者に対する警告義務はない。これらの者に対する警告義務違反を問うのであ がって、被控訴人太平洋セメントには吹付け工以外の者に対する警告表示による結果回避可能性がなく、被控訴人太平洋セメントにこれらの者に対する警告義務はない。これらの者に対する警告義務違反を問うのであれば、元方事業者ら建設業者の警告義務違反が問われるべきである。 b 被控訴人太平洋セメントは、②石綿含有吹付けロックウールに関し、建材だけが流通することは想定せず、販売先の系列化を図り、施工の安全性を確保する体制をとっていたのであり、これにより、元請事業者の安全配慮義務の履行の契機となる情報は元請事業者に伝達されていた。 したがって、仮に被控訴人太平洋セメントに上記警告義務があるとして も、被控訴人太平洋セメントはこれを適切に履行していた。 仮に被控訴人らに警告義務違反が認められる場合があるとしても、被控訴人らが建材の出荷時に行う警告表示によって改修、解体工事に従事する職種に対して実効性のある警告をするのは困難であること、これらの者には現場監督らからの指揮監督により警告表示の内容が伝達されることも 期待できないことなどからすると、警告義務違反が認められるのは新規工 事における建築作業との関係に限られ、少なくとも、改修、解体工事における建築作業との関係で警告義務違反が認められる余地はない。 ウ被控訴人らの調査及び情報収集能力が国のそれらに比して高かったとはいえないこと、国が講じる規制措置が守られれば建築作業従事者の石綿関連疾患の発症を予防することができると考えても不合理とはいえないことな どからすれば、被控訴人らに前記ア、イの警告義務よりも制約の大きい石綿不使用義務はなかった。 ⑵ア民法719条1項後段は、加害者と思われる者が単独であれば通常は因果関係が推認される事実を証明して れば、被控訴人らに前記ア、イの警告義務よりも制約の大きい石綿不使用義務はなかった。 ⑵ア民法719条1項後段は、加害者と思われる者が単独であれば通常は因果関係が推認される事実を証明しているのに、加害者と思われる者が複数となると一切救済されないのでは妥当ではないため、被害者保護の要請に 加えて経験則に基づく蓋然性を根拠に法律上の推定を認めた規定である。 このような趣旨からすれば、同項後段の適用において特定される必要がある共同行為者とは、単独であれば通常は因果関係が事実上推定される程度に損害発生に向けて危険な行為を行った者であり、換言すれば、当該加害行為は、当該結果を発生させる現実的危険性を有する行為でなければなら ない。 仮に同項後段が択一的競合以外の場合に類推適用される場合があるとしても、類推適用である以上、上記の同項後段の直接適用の場面の解釈論から導かれる限界に照らしてその要件等が検討されなければならない。同項後段の類推適用の場面においても、同項後段の直接適用の場合と同様、 加害行為に個別具体的な結果の発生についての現実的危険性があることが必要であり、共同行為者はかかる現実的危険性のある行為を行った者として特定される必要がある。 前記の個別具体的な結果発生の現実的危険性が認められるためには、加害行為が当該結果の発生に寄与したことが証明されることが必要であ る。本件に即していえば、少なくとも、特定の企業が製造、販売した建材 が当該権利侵害を生じさせ得るものであり、同建材が特定の被災者が建設作業に従事した現場で使用されて石綿粉じんの曝露が生じたこと(到達)が立証されることが必要である。 被害者の損害の発生に他の原因が存在する場合に、被害者によって 建材が特定の被災者が建設作業に従事した現場で使用されて石綿粉じんの曝露が生じたこと(到達)が立証されることが必要である。 被害者の損害の発生に他の原因が存在する場合に、被害者によって特定された共同行為者グループの行為が被害者の全損害に対して因果関係を 有していることはあり得ない。それにもかかわらず当該グループが連帯責任を負うとするのは、責任主義に反する。 イある現場において特定の建材が使用されるか否かは、建材市場への流通量(シェア)と被災者らの現場数や作業従事期間の長さなどに主として依存するものではなく、建築を請け負ったゼネコンや下請業者らの取引関係、 メーカーが出荷した後の流通経路(特約店、販売店、工事店、ハウスメーカーなど)、当該建築物の性質及び用途、建築費用(建材の価格)、具体的な建築現場と建材の製造工場ないし保管場所との距離(運搬の容易さ)などの様々な個別的要因に主として依存するのであって、市場における全体的なシェアが当該現場における建材ごとの到達の可能性にそのまま反 映されるという経験則はそもそも成り立ち得ない。シェアを確率と同視して数学的に計算するためには、あるシェアの下での現場での建材の出現頻度が均等であり、かつ、建築作業従事者が建築現場に赴く行為が独立な試行であるという前提を満たす必要がある。 また、例えば、当該事象が発生する確率が90%であるということは、 無限に試行を繰り返せば当該事象が90%の割合で発生するということを意味するにすぎず、確率と実際の到達の頻度とが直ちに結びつくものではない。このような事実としての確率と心証の程度を直結させると、実際には建材の到達がなく結果の発生に一切寄与していないことを高度の蓋然性をもって排斥できないにもかかわらず、被 が直ちに結びつくものではない。このような事実としての確率と心証の程度を直結させると、実際には建材の到達がなく結果の発生に一切寄与していないことを高度の蓋然性をもって排斥できないにもかかわらず、被控訴人らに対する請求を認 容するという誤判につながる。自由心証主義に内在する要請として、確率 的な証拠に加えて、加害者の行為と結果との間に直接的な証拠が必要とされるべきである。 a ある建材の特定の被災者への到達の可能性は、当該建材のシェアから漠然と計算できるものではなく、当該被災者が当該建材が使用される可能性のある建築現場での作業に何回従事したかを特定しなければ、これ を評価することはできない。 b 到達の可能性が認められるかが問題とされる以上、建材のシェアを検討するに当たっては、当該建材に代替製品が存在する場合には、これも考慮に入れた上でシェアを算定する必要がある。したがって、耐火被覆用途の吹付け材については、せっこう、バーミキュライト(ひる石)、 セラミックなどを主原料とする吹付け材、石灰質原料(消石灰等)やけい酸質原料(けいそう土等)を主原料とし、石綿やロックウール等を補助剤とするけい酸カルシウム板(耐火被覆板)、マット状のセラミックファイバーやロックウール、鉄網モルタル(ラスモルタル)の施工面積や施工量等を考慮に入れる必要がある。 c 被控訴人太平洋セメントは、昭和49年に無石綿の吹付けロックウールを開発し、昭和50年にはこれを商品化していた(完全に無石綿となったのは、昭和53年10月である。)。したがって、被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールの施工量として示される数値には、無石綿の吹付けロックウールの施工量も相当量含まれている。 ウ 、昭和53年10月である。)。したがって、被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールの施工量として示される数値には、無石綿の吹付けロックウールの施工量も相当量含まれている。 ウ耐火被覆用に用いられる②石綿含有吹付けロックウールは鉄骨造建物のうち耐火建築物にのみ使用されるのであり、鉄骨造建物で作業を行ったというだけでは被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールから生じた石綿粉じんに曝露した可能性があるとはいえない。 前記イbのとおり、耐火被覆材には②石綿含有吹付けロックウール以 外にも多くの建材があるから、耐火建築物である鉄骨造建物であっても被 控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールが使用されているとはいえない。 被控訴人太平洋セメントと同系列に属さない建築作業従事者が被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールを一般的に取り扱うことは基本的になかったし、被控訴人太平洋セメントが②石綿含有吹付け ロックウールを販売していた吹付け施工業者においては、安全衛生パトロールが行われ、養生の設置や防じんマスクの着用に不備がないかなどについて厳しく指導されていたから、被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールから石綿関連疾患に罹患する程度に石綿粉じんに直接曝露することはなかった。 被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールの施工時には、同じ階において他の職工が同時並行作業を行うことはなく、また、施工階に立ち入ってはならないこととされていたから、吹付け工以外の職工が被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールの施工階や施工区画に立ち入って被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロッ クウールに含まれる石綿粉じんに曝露するこ 吹付け工以外の職工が被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールの施工階や施工区画に立ち入って被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロッ クウールに含まれる石綿粉じんに曝露することはなかった。 一度吹き付けられた吹付け材を施工後に剥がすことは建築基準法上許されない違法行為であること、ビニールでの養生や仮ボルトに付着した吹付け材以外の吹付け材を剥がすことはないこと、仮ボルト等の設置ミスや吹付け作業後の設計変更等によって吹付け材を剥がす必要が生じるのは 例外的な事態であること、被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールは吹き付けられた直後は湿った状態であり、上記の剥がす作業の際には湿ったロックウールがぼとぼとと落下するだけであり、粉じんがもうもうと舞うという状態にはならないことなどからすると、上記の吹付け材を剥がす作業によって多量の石綿粉じんに曝露することはない。 以上に加え、被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウール の石綿使用量が少なかったことなどに鑑みれば、建築作業従事者が被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールによって石綿粉じんに曝露することはなかった。 被控訴人太平洋セメントの③湿式石綿含有吹付け材についても前記と同様である。特に、被控訴人太平洋セメントの③湿式石綿含有吹付け材 は、昭和50年2月に完成した都庁第三本庁舎建築工事において崩落事故が発生した後はほとんど販売されておらず、また、施工費用が高額であることなどから大型の鉄骨造建物にしか採用されず、施工例が限られていた。 さらに、湿式工法は特殊な技術を要する工法であったため、被控訴人太平洋セメントの③湿式石綿含有吹付け材の施工業者は全国で数社しかなか どから大型の鉄骨造建物にしか採用されず、施工例が限られていた。 さらに、湿式工法は特殊な技術を要する工法であったため、被控訴人太平洋セメントの③湿式石綿含有吹付け材の施工業者は全国で数社しかなか った。加えて、被控訴人太平洋セメントの③湿式石綿含有吹付け材は、吹付け機の先からロックウールと石綿とセメントと水が練り混ぜられている状態で射出されるため、吹付け作業時に粉じんが舞うことはないし、吹付け後にはコンクリート状に凝固するため削り取ることなどはそもそも不可能である。したがって、建築作業従事者が被控訴人太平洋セメントの ③湿式石綿含有吹付け材によって石綿粉じんに曝露することはなかった。 ⑶ 仮に被控訴人太平洋セメントに共同不法行為が成立するとしても、本件の被災者らに発症した石綿関連疾患への被控訴人太平洋セメントの寄与度は極めて低いから、被控訴人太平洋セメントの損害賠償責任は減免されるべきである。 12 被控訴人東レACE ⑴ア屋外作業においては、発生した粉じんは霧散するため、屋内作業の場合のように粉じんが充満するということは考え難い。そのため、屋外で切断される外装材については、石綿関連疾患を発症することの予見可能性、ひいては警告義務はない。 仮に㉟石綿含有窯業系サイディングを製造、販売する企業に警告義務が認 められるとしても、客観的な測定結果からすれば、その発生時期は平成14 年1月1日からとすべきである。 イ建築物の改修工事(破砕部分)及び解体工事に関与する建築作業従事者に対しては、建材メーカーが建材の出荷時に行う警告表示によって実効性のある警告をするのは困難である。また、建材の購入者に対して危険性が正しく伝達されている限り、建物の完成後の改修、解体時への危険性の伝達につい 建材メーカーが建材の出荷時に行う警告表示によって実効性のある警告をするのは困難である。また、建材の購入者に対して危険性が正しく伝達されている限り、建物の完成後の改修、解体時への危険性の伝達につい ては、購入者以降の者からされることが可能であるし、改修、解体工事における建築作業従事者の石綿粉じんへの曝露からの保護は、改修、解体工事を行う事業者が行う対策によって図られることが予定されている。したがって、石綿含有建材を製造、販売する企業は、上記建築作業従事者に対しては警告義務を負わない。 ⑵ 被災者への到達という観点からシェアを検討するに当たっては、主要原因建材以外の無石綿建材を含めた代替製品を考慮に入れるべきであり、その際には、建材の性質、施工部位や使用目的において共通性の高いものを考慮すべきである。㉟石綿含有窯業系サイディングの競合商品としては、金属サイディング、金属カラー板、ALC板、木質系他、モルタル壁があり、これらは住宅用外壁 材という使用目的を共通にするものである。 ⑶ 建築現場以外の現場(石炭炭鉱、トンネル、自動車関連、造船関連、アスベスト鉱山)における作業による粉じんへの曝露歴を有する被災者については、その粉じんへの曝露の寄与度も考慮すべきである。 13 被控訴人ナイガイ ⑴ 被控訴人ナイガイは、工事の施工業者であって、自らが使用するためにのみ石綿含有建材を製造していた。被控訴人ナイガイは上記石綿含有建材を他社に販売していないから、被控訴人ナイガイが製造した石綿含有建材は、被控訴人ナイガイが受注した工事の現場以外には流通しない。したがって、被控訴人ナイガイは、我が国の市場に石綿含有建材を流通させた者ではなく、市場におけ る流通を前提とした責任を負うことはない。 ⑵ 民 事の現場以外には流通しない。したがって、被控訴人ナイガイは、我が国の市場に石綿含有建材を流通させた者ではなく、市場におけ る流通を前提とした責任を負うことはない。 ⑵ 民法719条1項後段の類推適用の場合においても、控訴人らは、被控訴人らの固有の行為について、本件の被災者らに向けられた権利侵害を惹起する具体的危険性がある行為であることを主張立証する必要がある。 ⑶ ①吹付け石綿と②石綿含有吹付けロックウールとは同じ用途に使用される建材であるため、これらの建材は合算してシェアを検討されるべきである。 14 被控訴人ニチアス⑴ア被控訴人ニチアスは、耐火被覆構造としての吹付け工事の品質を確保するため、全ての吹付け工事を被控訴人ニチアスの責任施工とし、特定の下請会社を指定して同社に施工を発注していた。被控訴人ニチアスの吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材) を施工する業者はニチアスが指定した業者に限られ、それ以外の業者が被控訴人ニチアスから上記吹付け材だけを購入して施工することは一切なかった。したがって、被控訴人ニチアスの警告義務違反はない。 イ被災者が直接取り扱う前に取り付けられた建材については、当該被災者は当該建材の警告表示を目にする機会がない。したがって、当該被災者につい ては、警告義務違反と当該被災者の損害の発生との間に因果関係がない。 ウ石綿含有建材の出荷時に行われる警告表示によって、改修、解体工事に従事する作業者に実効性のある警告をするのは困難であること、同人については、改修、解体工事を行う事業者が石綿含有建材の使用状況を調査した上で必要な対策を採るのが実際的であることなどからすると、石綿含有建材を製 造、販売する企業には上記 難であること、同人については、改修、解体工事を行う事業者が石綿含有建材の使用状況を調査した上で必要な対策を採るのが実際的であることなどからすると、石綿含有建材を製 造、販売する企業には上記作業者に対する警告義務はない。 ⑵ア一般に、民法719条1項後段に基づく共同不法行為責任の請求原因事実としては、行為者らによる被害者の権利又は法律上保護される利益に対する加害行為を主張する必要があるが、本件において、個々の被控訴人の石綿含有建材の製造、販売行為が個々の被災者の生命、身体に対する具体的、現実 的な加害の危険性を有する行為であるといえるためには、各被災者が就労し た個別の建築現場で実際に使用された石綿含有建材を製造、販売する行為である必要がある。したがって、控訴人らは、各被災者が就労した個別の建築現場及びそこで実際に使用された個別の石綿含有建材を特定して主張する必要がある。 イある建材のシェアとは我が国の建材市場全体をマクロ的にみた場合に 特定の石綿含有建材が市場に存在する数量的な割合を示すものにすぎず、建材市場の一部をミクロ的にみた場合に当該建材がどのように存在(分布)しているかを示すものではない。たとえある建材のシェアが建材市場全体において10%であったとしても、このことは、例えば、特定の20か所の建築現場のうちの1か所で当該建材が使用されていることを保証する ものではない。したがって、建材のシェアを当該建材がどの建築現場で使用されているかの問題と同視することは誤りである。 また、個々の建築現場においては、当該建築現場に建材を供給する販売業者(卸売業者、特約店、建材販売業者等)が誰であったかによって、同現場で使用された建材に顕著な傾向があり、かつ、この販売業者の選定も、 々の建築現場においては、当該建築現場に建材を供給する販売業者(卸売業者、特約店、建材販売業者等)が誰であったかによって、同現場で使用された建材に顕著な傾向があり、かつ、この販売業者の選定も、 建築現場と近接した場所に営業所等が位置し、建材の運搬が容易であったか否か、当該建築工事に携わるゼネコンや下請業者等の工事関係者が誰であったか、などに顕著に影響を受ける。他にも、当該建築物の性質及び用途、建築予算と建材価格等の兼ね合いなどの様々な個別的要因によって、当該建築物に使用される建材に偏りが存在することが想定される。本件被 災者らも、通常は特定の地域に本拠を定め、単一又はせいぜい複数の事業主に雇用され又は自ら事業を営んでいたのであるから、各被災者が就労した建築現場には地域的に著しい偏りがあり、かつ、建材を当該建築現場に供給した販売業者やゼネコン等の工事関係者が誰であったかも相当程度偏っていたものと推測される。 したがって、これらを適切に考慮することなく加害行為の到達を確率論 によって認定することは、不当である。 ⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑨石綿含有パーライト保温材及び⑩石綿保温材は代替性が高く競合関係にあるから、到達を推認するためには、これらの4種類の建材全体における被控訴人らの製品のシェアを検討する必要がある。この際、無石綿化され たパーライト保温材を上記検討の対象外とすることはできない。 ⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種は、⑫石綿含有耐火被覆板とともに耐火被覆材に分類されるから、これらのシェアを通算して判断すべきであるし、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種の耐火被覆材全体の中でのシェアは非常に低い。 ⑮石綿含 覆板とともに耐火被覆材に分類されるから、これらのシェアを通算して判断すべきであるし、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種の耐火被覆材全体の中でのシェアは非常に低い。 ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、用途や使用部位に共通性が高く、相互に代替可能であるから、到達の推認に当たっては、これらのシェアを通算して判断すべきである。 ウ被控訴人ニチアスの③湿式石綿含有吹付け材のうち、商品名「トムウェ ット」については、高層建物等の大規模な現場において湿式工法専用の特殊な噴射機を用いなければ施工することができなかったこと、被控訴人ニチアスが指定する少数の業者しか取り扱うことができない建材であったこと、施工中及び施工後を通じて湿潤化されているためほとんど発じんしなかったことなどから、上記建材から生じる石綿粉じんに地方で曝露する 機会はほぼ存しなかった。 被控訴人ニチアスの③湿式石綿含有吹付け材のうち、商品名「ATM-120」は、上記「トムウェット」と同一の素材を用いたものであり、「トムウェット」を耐火被覆工事において使用する場合に並行して間仕切り壁を設置できる点に施工上の合理性がある。したがって、「ATM-120」 が「トムウェット」を使用しない現場で用いられることはほとんどなかっ た。 被控訴人ニチアスの⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材及び⑩石綿保温材は、耐熱温度の高い保温材であり、単なる空調や排水等の配管ではなく、工場の中でも数百度の高温となる配管に用いられる。これらは、専門の保温工 が取り扱う製品であり、 ュライト保温材及び⑩石綿保温材は、耐熱温度の高い保温材であり、単なる空調や排水等の配管ではなく、工場の中でも数百度の高温となる配管に用いられる。これらは、専門の保温工 が取り扱う製品であり、一般的な配管工が取り扱う製品ではなかった。 a 被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種については、その販売ルート上の特約店がゼネコンや設計事務所への販売に強みを持っていることから、その出荷先の90%が非住宅(中高層建築物)であり、住宅等への出荷は10%にとどまる。したがって、被控訴人ニ チアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、戸建て住宅等ではほとんど使用されなかった。 b ㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、その硬さや厚みなどから、カッターで切断することができ、このことが他の建材との比較において上記建材の施工上の優位性となっていた。そのため、上記建材の主要な 切断方法はカッターを用いる方法であり、少なくとも、電動丸のこで切断する方法が一般的であったことはない。上記建材をカッターで切断する場合には、粉じんはほとんど発生しない。 被控訴人ニチアスの㊶石綿セメント円筒の使用部位は煙突のみであり、また、生産年数も短いため、上記建材が実際に使用された現場は少ない。 15 被控訴人日東紡績⑴ア被控訴人日東紡績は、各時代における法令の規制に従って石綿含有建材を製造していたのであるから、被控訴人日東紡績には何らの義務違反も存在しない。 イ解体工、はつり工、改修工事については、警告表示による結果回避可能性 が否定されることから、被控訴人日東紡績の責任はない。 ⑵ア民法719条1項後段の類推適用については、そもそもかかる類推適用自体が認められるべきではない。 結果回避可能性 が否定されることから、被控訴人日東紡績の責任はない。 ⑵ア民法719条1項後段の類推適用については、そもそもかかる類推適用自体が認められるべきではない。民法719条1項後段は、択一的競合(加害者が全て特定され、それ以外に加害者が存在しないこと)を前提としており、かかる択一的競合の場面から救済対象を拡大することは、もはや立法論であって、法令解釈として許されるべきではない。 イ建材のシェアについては、単なる確率論にすぎず、当該建材が現実に各被災者に到達したかどうかを立証するものとしては不十分である。 被控訴人日東紡績が製造、販売していた②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材については、被控訴人日東紡績が製造、販売していた吹付けロックウール製品には耐火被覆材、断熱、内装材という用 途の異なる複数の建材があるのであり、これらを1つにまとめたシェア及び出荷量を算出しても意味がない。 被控訴人日東紡績が製造、販売していた②石綿含有吹付けロックウールは昭和51年以降は無石綿化されており、被控訴人日東紡績の②石綿含有吹付けロックウールのシェアとして示される数値はかかる無石綿の吹付 けロックウールの分を含む。 被控訴人日東紡績の㉔石綿含有ロックウール吸音天井板について、被控訴人日東紡績はロックウール吸音天井板製品として、商品名「ミネラートン」、「マリントーン」、「ソラール」という無石綿の製品も販売していた。被控訴人日東紡績の㉔石綿含有ロックウール吸音天井板のシェアとし て示される数値はこれらの無石綿製品の分を含む。 天井に使用される建材としては、数多くの建材が存在し、すべての現場において毎回使用される建材ではないから、㉔石綿含 天井板のシェアとし て示される数値はこれらの無石綿製品の分を含む。 天井に使用される建材としては、数多くの建材が存在し、すべての現場において毎回使用される建材ではないから、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板のみのシェアを算出しても、同建材が現場に到達した事実が認められるとはいえない。 ウ被控訴人日東紡績が製造、販売していた②石綿含有吹付けロックウール 及び③湿式石綿含有吹付け材には、有害性の低いクリソタイルが使用されていた。 被控訴人日東紡績の②石綿含有吹付けロックウールは、吹付け後にコテ押さえという作業がされ、これにより、吹付け材の表面が平滑になり飛散しにくい状態となるため、上記建材から生じた石綿粉じんに曝露する可能 性は低い。また、被控訴人日東紡績の③湿式石綿含有吹付け材についても、左官工によるコテ作業により、モルタル、セメント仕上げのようなカチカチの硬化状態となり、飛散しにくい状態となるため、上記建材から生じた石綿粉じんに曝露する可能性は低い。 被控訴人日東紡績の③湿式石綿含有吹付け材は、工事金額が高額になり、 吹付けのために高額かつ特殊な機械が必要となり、高度の技術を持った左官工でないと施工が困難であることから、ほとんど市場に流通することがなく、上記建材の施工数も1年に数件程度であった。 被控訴人日東紡績が製造、販売していた㉔石綿含有ロックウール吸音天井板には、有害性の低いクリソタイルのみが使用されていた。また、上記 建材の切断の際には主にカッターナイフで切断する方法を採るため、粉じんはほとんど発生しない。 ⑶ 本件の被災者らのうち、石綿関連疾患の療養開始日後本件訴訟の提起までに3年を経過している者については、不法行為に基づく損害賠償請 ーナイフで切断する方法を採るため、粉じんはほとんど発生しない。 ⑶ 本件の被災者らのうち、石綿関連疾患の療養開始日後本件訴訟の提起までに3年を経過している者については、不法行為に基づく損害賠償請求権は時効によって消滅している。被控訴人日東紡績は、上記消滅時効を援用する。 16 被控訴人日本インシュレーション⑴ア安衛法57条に基づく警告表示は、粉じんが発散する場合や、多量に粉じんを吸入する場合を前提とするものであるところ、被控訴人日本インシュレーションの製品については、建築作業現場等において、粉じんが発散する、多量に粉じんを吸入するとの危険性は想定されない。すなわち、被控訴人日 本インシュレーションの建材には石綿の含有量が重量の5%を超えるもの は少なく、また、同建材の性状や施工方法からして、含有する石綿の粉じんが発生、飛散する可能性はほとんどなかった。 イ仮に被控訴人日本インシュレーションに警告義務違反があったとしても、前記アの被控訴人日本インシュレーションの製品の特性からすれば、警告表示による情報提供の必要性はなく、また、かかる情報の第一次的な受け手は 事業主であり、かつ、自らが雇用する現場作業員の健康、安全に配慮すべき第一次的な責任を負うのも事業主であるところ、かかる事業主は使用する製品の特性等について相当程度の知識を有し、昭和50年には石綿一般の危険性、有害性も知っていたから、このような事業主に対して改めて警告表示によって情報を提供する必要性に乏しい。さらに、建築作業現場において実際 に作業に従事する作業員も、石綿の危険性を知りつつも、作業に慣れてしまい、息苦しい、あせもになるなどの理由から防じんマスクを使用する割合が低かったのである。 このような実情に鑑みれば、 際 に作業に従事する作業員も、石綿の危険性を知りつつも、作業に慣れてしまい、息苦しい、あせもになるなどの理由から防じんマスクを使用する割合が低かったのである。 このような実情に鑑みれば、被控訴人日本インシュレーションが上記警告表示をする意味は乏しく、被控訴人日本インシュレーションが上記警告表示 をしなかったことと被災者の損害との間には因果関係はない。 ウ改修、解体作業者に対する警告義務については、解体工の作業内容や石綿粉じんへの曝露の態様に照らせば、結果回避可能性がおよそない。 石綿含有建材の容器又は包装に警告表示をすることは、建材自体の性質を変更するものでも、特段の技術を要するものでもなく、建材メーカーは これを容易に行うことができる。これに対し、マスメディアへの公表は、容易に行い得るとはいえず、仮にそのような方法を採ったとしても、個々の解体現場における石綿粉じんへの曝露の防止対策として実際に有効なものとは考えられない。 エ前記イ、ウのとおり、警告表示や防じんマスク着用義務付けなどの対策 をすれば石綿粉じんへの曝露の対策は確保できたのであるから、より制約の 大きい石綿含有建材の製造中止をする必要はなかった。 ⑵ア民法719条1項後段は、複数の行為のいずれもがそれのみで損害を発生させる危険性を持ち、被害者に生じた損害が当該複数の行為者の行為のいずれかによって発生したことは明らかであるが、現実に発生した損害がそのいずれによってもたらされたかを特定することができないという択 一的競合の場合についての規定である以上、同項後段の類推適用に際しては、損害を発生させる危険性があるといえるために、被控訴人らが製造、販売した石綿含有建材が被災者らの就労した建築現場に到達し 一的競合の場合についての規定である以上、同項後段の類推適用に際しては、損害を発生させる危険性があるといえるために、被控訴人らが製造、販売した石綿含有建材が被災者らの就労した建築現場に到達したことが立証されることが必要である。 民法719条1項後段を適用する際の要件として、他に加害行為を行っ た可能性がある者が存在しないことが必要であるところ、かかる要件は同項後段の類推適用の場合にも同様に必要となる。かかる場合に前記の要件を不要とするのは、被害者の救済の要請のみを理由とする恣意的なものであり、不法行為の一般原則を逸脱している。 イシェアの高い建材が被災者への到達の確率が高いことを前提にシェア によって到達を認定することは、確率計算が成立する前提(特定の建築作業従事者にとって、あるシェアの下での現場での建材の出現頻度が均等であり、かつ、建築作業従事者が建築現場に赴く行為が独立な試行であるという前提)を欠く場合には、疑似的なものにすぎない。そして、使用する建材には、施主、設計事務所、元請、一次下請、建材商社等によって偏り があるはずである。 現場数とシェアによる確率計算によって到達を認定するのであれば、用途が同じ建材については、用途を同じくする建材全体でのシェアを基礎としなければならない。 ⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種は、⑫石綿含有耐火被覆板と用途 が同じであり、耐火被覆材に分類することができるところ、耐火被覆材の 施工実績の88.5%は吹付けロックウールである。 保温材は多種多様であり、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材については、⑥石綿含有けいそう土保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材、⑨石綿含有パーライト保温材及 けロックウールである。 保温材は多種多様であり、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材については、⑥石綿含有けいそう土保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材、⑨石綿含有パーライト保温材及び⑩石綿保温材と用途が同じである。 ウ被控訴人日本インシュレーションが製造、販売していた石綿含有建材は、 工場においてプレカットされたもので現場における加工の必要がないか、加工が必要な場合であっても手のこなどによる切断、切り抜き、穴開けの加工がされる程度であって、石綿粉じんの発生、飛散の可能性はほとんどなかった。 被控訴人日本インシュレーションの⑪石綿含有けい酸カルシウム板第 2種は、建物の躯体である鉄骨の耐火被覆として躯体の一部を構成しており、鉄骨を除去しない限り、改修工事で取り外されることはない。 17 被控訴人バルカー⑴ 被控訴人バルカーは過去に石綿含有建材を製造、販売したことは一切ないから、被控訴人バルカーが本件の被災者らに対して責任を負うことはない。かか る建材を製造、使用していたのは、被控訴人バルカーの関連会社である日本リンペット工事株式会社(以下「日本リンペット工事」という。)である。 ⑵ 被控訴人バルカーは日本リンペット工事に対して吹付け石綿の工事に係る実施権を付与していたところ、仮にかかる事実によって被控訴人バルカーに責任が生じ得るとしても、以下の理由から被控訴人バルカーに責任はない。 ア日本リンペット工事は自ら又は受注先を通じて施工するために石綿含有建材を製造、使用したのであり、日本リンペット工事が、石綿含有建材を、流通を目的として製造し、また、市場を介して販売したことはない。 日本リンペット工事が工事を受注していた受注先は、主として大手ゼネコンやエンジニアリング会 リンペット工事が、石綿含有建材を、流通を目的として製造し、また、市場を介して販売したことはない。 日本リンペット工事が工事を受注していた受注先は、主として大手ゼネコンやエンジニアリング会社であった。 建築の元請業者であるゼネコンは、日本リンペット工事による工事が完 了した後は、自らの責任で、建築作業従事者の健康被害を防止する措置を採る責務があった。すなわち、日本リンペット工事は耐火被覆材の設置に限定して請負契約を締結し、その限度で石綿含有建材を使用してきたのであり、それ以外の作業は日本リンペット工事の上記作業とは関係がなく、当該ゼネコンが別途他の会社との間で請負契約を締結して上記それ以外 の作業を行わせていたのであるから、その際に石綿粉じんへの曝露の可能性があるのであれば、当該ゼネコンに適切な曝露の予防措置を講ずる義務があったのであって、日本リンペット工事にはかかる措置についての責任はない。 また、元請業者は発注者に対して建物が完成した際に建築図書等を交付 するところ、上記ゼネコンは、上記書類に石綿含有建材の使用の有無や健康被害の可能性を明記することができ、発注者(建物所有者)は、当該建物の改修、解体工事を行う際には、上記書類を当該工事を行う業者に交付、閲覧させることができる。 したがって、少なくとも、主要な受注先がゼネコンである日本リンペッ ト工事が、吹付け作業後の建築作業への従事者や改修、解体作業に従事する者に対してまで警告義務を負担することはない。 日本リンペット工事は、石綿の危険性に関する知見、医学水準の変遷に応じ、また、国が定めた法令を遵守し、さらにはそれを上回る形で、石綿の取扱いに細心の注意をもって対処してきたから、日本リンペット工事に 責任はない。 綿の危険性に関する知見、医学水準の変遷に応じ、また、国が定めた法令を遵守し、さらにはそれを上回る形で、石綿の取扱いに細心の注意をもって対処してきたから、日本リンペット工事に 責任はない。 特に、国ですら石綿の危険性を予知してこれに対する対策を実施してこなかった措置については、個々の民間企業がどこまで最善を尽くすことを期待することができたのか、疑問がある。このような観点からすれば、日本リンペット工事は、その時々の国の法令、通達等に従って石綿含有建材 を製造してきたのであるから、日本リンペット工事には注意義務違反はな いと考えるべきである。 イ民法719条1項後段は、加害者らが特定されることを前提に、加害者のいずれかの行為を原因として結果が発生していることを要求しているのであって、加害者とされた者以外の他の者の行為によって結果が生じた可能性のある場合においても加害者とされた者に連帯責任を負わせる趣 旨ではない。したがって、同項後段を適用するに当たっては、最小限、共同行為者(加害の可能性のある行為をした者)の範囲が特定されなければならない。このような観点からすれば、加害者とされた者のいずれが製造、販売した石綿含有建材によって被害者が健康被害を負ったかは不明であるとしても、被害者が加害者とされた者以外の他の者の行為によって健康 被害を被ったものではないことを主張立証する必要があると解すべきである。 単独では被害を発生させない石綿粉じんへの曝露について、いわゆる弱い関連共同性がない場合に同項後段を類推適用するとしても、この場合にも、共同行為者に当たるといえるためには、少なくとも加害者である可能 性のある者の全員が特定されていることが必要である。 a 企業の中には、 に同項後段を類推適用するとしても、この場合にも、共同行為者に当たるといえるためには、少なくとも加害者である可能 性のある者の全員が特定されていることが必要である。 a 企業の中には、その製造、販売する石綿含有建材について全国的に一定のシェアを有している企業もあれば、企業の経営政策的観点やその他の理由によって、特定の地域に限って高いシェアを保持している企業もある。このような事情を考慮しないで全国的なシェアを唯一の根拠とし て企業の責任を論ずることは、相当でない。 日本リンペット工事が工事を行った地域は、関東、関西が中心であった。北海道については、日本リンペット工事は、札幌市に2名程度の担当者を置いていたにすぎず、日本リンペット工事が手掛ける案件は、年に3件程度であった。 b 建材のシェアをもって企業の責任を問うのであれば、当該企業が少な くとも一定の期間にわたって継続的に高いシェアを有していたことが立証されなければならない。ある企業がある一時期において高いシェアを有していたとしても、当該企業が他の時期にも同様の高いシェアを有していたと考える必然性はない。 c 日本リンペット工事が製造、販売していた②石綿含有吹付けロックウ ールについて、日本リンペット工事は、昭和50年以降は、石綿を含有していない製品を使用している。したがって、日本リンペット工事の②石綿含有吹付けロックウールの施工量として示される数値には無石綿の建材の施工量が含まれている。 a 日本リンペット工事は、自ら又は受注先を通じて施工するために石綿 含有建材を製造、使用していたところ、日本リンペット工事が受注した工事に従事した会社は10社程度の協力会社に限定されていた。そして、日本リンペット 、自ら又は受注先を通じて施工するために石綿 含有建材を製造、使用していたところ、日本リンペット工事が受注した工事に従事した会社は10社程度の協力会社に限定されていた。そして、日本リンペット工事は、吹付け工事を施工するに当たっては、立入禁止の措置や、局所排気装置の設置、作業主任者の選任、防じんマスクの着用の措置を講じていた。 b 日本リンペット工事は、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物の工事のみを行っていたのであり、木造建物の工事は一切行っていない。 c 日本リンペット工事が使用した石綿の量は微々たるものであり、また、日本リンペット工事の北海道における石綿の使用量は、日本リンペット工事の北海道における案件が1年間に2、3件程度であったことから更 に少なくなる。本件の被災者らが、日本リンペット工事が製造した石綿含有建材から出た石綿を原因として石綿関連疾患に罹患した可能性はない。 ウ被災者らには石綿粉じんに曝露しないようにして自らの健康を管理する義務があり、被災者らがこれを怠った場合には、被災者らには損害の発生、 拡大について過失がある。したがって、被災者らの損害の額は、過失相殺に よって減額されるべきである。 18 被控訴人ノザワ⑴ア昭和50年に、石綿含有量が重量比で5%を超える建材につき、事業場及び製品(容器)に警告表示をすることが公法上義務付けられたが、そのことから直ちに、石綿含有建材を製造又は販売する被控訴人らに、私法上も一律 に警告義務が課せられ、同義務に違反する過失があるものと解することはできない。 なぜなら、被控訴人らに課せられる上記警告義務が民法709条の過失を根拠付けるものである以上、被控訴人らごとに、その事業規模(調査及び情報収集能力)の 失があるものと解することはできない。 なぜなら、被控訴人らに課せられる上記警告義務が民法709条の過失を根拠付けるものである以上、被控訴人らごとに、その事業規模(調査及び情報収集能力)の程度、製造又は販売している石綿含有建材の種類、石綿の含 有率及び石綿の建材への固化の方法、建材の加工方法とその飛散性の有無、建材の販売量の多寡及び販売方法の内容(販売の系列化の有無)、当該建材を取り扱う職種の作業実態、石綿含有建材が取り扱われる建築現場における使用者の安全配慮義務の履行の程度等の諸事情を総合考慮して、被災者らの法益侵害の危険に対する具体的予見可能性の有無及び程度を確定し、その法 益侵害の具体的危険性の程度とこれを回避するためのコストとを比較衡量して、警告義務の存否並びに程度及び内容を判断し、さらに、被控訴人らが行っていた研修や指導の内容に照らして、その警告義務違反の有無を個別に判断する必要があるからである。 昭和50年以降の石綿の代替化の状況、石綿業界の自主規制の状況、海外 における石綿(特にクリソタイル)の危険性の評価についての知見の集積状況、海外における石綿製造に対する規制状況等に鑑みると、仮に被控訴人らに石綿含有建材の製造又は販売に関して何らかの警告義務違反が認められることがあったとしても、その始期は、国の規制権限不行使が認められる始期である昭和50年10月1日と比較して、相当程度遅い時期になる。 イ後続作業者との関係においては、警告表示は、それによって伝達された情 報を契機に、事業者による安全配慮義務の履行によって危険を回避することが事実上期待されるものにすぎない。 また、事業者や元方事業者は、当該建材の発注時や現場への搬入時に警告表示を視認し、建築作業従事者に対し 、事業者による安全配慮義務の履行によって危険を回避することが事実上期待されるものにすぎない。 また、事業者や元方事業者は、当該建材の発注時や現場への搬入時に警告表示を視認し、建築作業従事者に対し、現場監督らを通じて、当該建材が石綿を含有するかどうか、当該建材からの石綿粉じんへの曝露の危険性とその 対策を具体的に認識させ、上記曝露の防止対策の実効性を確保することが当然に予定されているわけではない。 安全配慮義務と警告義務とは別個独立した義務であり、前者は後者を履行の前提とするものではなく、後続作業者との関係では、警告表示により事業者の安全配慮義務の履行が事実上期待されるにすぎず、これが事実上の期待 にすぎない以上、被控訴人らごとに、被災者らに対する結果回避可能性の有無を個別に検討しなければならない。 ウ改修、解体の作業者については、建材の新規の使用時に当該建材が加工され、他の建材と一体となって建物の構成部分となることや、石綿含有建材の出荷から改修、解体による撤去、廃棄までに長期間が経過することなどから すると、被控訴人らが石綿含有建材の出荷時に行う警告表示によって実効性のある警告をするのは困難である。むしろ、完成後の建築物における石綿含有建材の使用状況は、個々の建築物によって異なり、複数の種類の石綿含有建材が出荷時と異なる形態で使用されていることも一般的であると考えられることからすると、上記作業者については、改修、解体工事を行う事業者 において石綿含有建材の使用状況を調査した上で必要な対策を採るのが実際的である。 エしたがって、仮に被控訴人らに何らかの警告義務が認められるとしても、その対象は石綿含有建材の新規使用時に当該建材を直接取り扱う作業者に限られ、それ以外の作業者は上記対象には含まれない。 エしたがって、仮に被控訴人らに何らかの警告義務が認められるとしても、その対象は石綿含有建材の新規使用時に当該建材を直接取り扱う作業者に限られ、それ以外の作業者は上記対象には含まれない。 ⑵ア民法719条1項後段は、被害者による個別的因果関係の立証の困難を救 済するため、共同行為者として特定された者の加害行為と損害との間の個別的因果関係を推定する規定であるから、その推定を働かせる前提としては、被控訴人らが同項後段の共同行為者であること、すなわち、その製造又は販売に係る石綿含有建材が被災者らが作業に従事する建築現場に現実に到達したこと(加害行為)の証明が必要になるものと解される。また、加害行為 は結果発生の現実的危険性を有する行為と解されることからしても、加害行為の到達を加害行為の要件と解するのが相当である。 そして、仮に、共同行為者の複数の行為が競合して被害を発生させたがその寄与度が明確ではない場合に、同項後段を類推適用して因果関係を推定すると考えるのであれば、少なくとも、上記共同行為者が全損害を惹起し得る 可能性が高いこと、つまり、単独惹起力を有する行為を行ったことを前提として、かかる損害の発生に寄与した行為者が特定され、そのような者が他には存在しないことが要件とされるべきである。 また、仮に共同行為者以外に行為者として考えられる者がいないことが要件にならないとしても、共同行為者以外に損害に寄与した行為者が他にも存 在する蓋然性があるのであれば、共同行為者の行為と全損害との間の因果関係は認められず、控訴人らは共同行為者に対して共同行為者以外の行為者が寄与した損害分を除いた残りの損害分についてしか損害賠償を請求し得ないはずである。 イ建材のシェアとは当該建材が特定の市 係は認められず、控訴人らは共同行為者に対して共同行為者以外の行為者が寄与した損害分を除いた残りの損害分についてしか損害賠償を請求し得ないはずである。 イ建材のシェアとは当該建材が特定の市場において占める割合であって、 当該建材が建築現場に到達する蓋然性そのものではない。そのため、建材のシェアがどんなに高くても、これにより上記到達の蓋然性を立証することはできない。 建材のシェアを検討するに当たっては、地域ごとの生産量、出荷量等の差異が考慮されるべきである。北海道への出荷量とそれ以外の地域への出 荷量には差異があるのであり、このような地域差を捨象して全国における シェアのみを根拠に北海道におけるシェアを算定することには、合理的な根拠がない。 ウ被控訴人ノザワの製造販売していた㊸混和材については、単独惹起力を欠くから、そのシェアを検討するまでもなく、主要原因建材にはあたらない。また、単独惹起力に関する議論は措くとしても、被控訴人ノザワが製 造販売した㊸混和材のシェアに関する客観的な証拠はない。 被控訴人ノザワの製造販売したその他の石綿含有建材についても、控訴人らの主張するシェアを認めることはできず、被災者らの従事した建築現場への到達を認めることはできない。 ⑶ 仮に控訴人らの被控訴人らに対する請求が認められるとしても、被控訴人ら の責任は、国の責任、現場の監督責任を負う事業者の責任、シェアの高くない建材メーカー、建材商社の責任があることを考えると、少なくとも全体の3分の1を超えるものではない。そこから、肺がんを発症した被災者の喫煙歴による減額、主要原因建材以外の建材からの曝露を踏まえた減額、主要原因建材販売期間に応じた減額を行うべきである。 ⑷ 塗装工が㊸混和 るものではない。そこから、肺がんを発症した被災者の喫煙歴による減額、主要原因建材以外の建材からの曝露を踏まえた減額、主要原因建材販売期間に応じた減額を行うべきである。 ⑷ 塗装工が㊸混和材に曝露する作業は、①モルタル壁を素地調整のためサンダーや紙やすりで平滑にする作業、②パテを紙やすりやサンダーで平滑にする作業であるが、モルタル壁やパテに混和材が含まれているかどうか明らかではないことや、仮に含まれていたとしても、発生する粉じんは少量であるから、塗装工にとって、㊸混和材は主要原因建材ではない。 19 被控訴人エム・エム・ケイ⑴ア一般に、企業には当該企業の製品の利用者に対する安全に配慮する義務があるとしても、公共の安全を守る行政機関による警告や規制措置がないにもかかわらず、企業に私法上の義務としての警告義務が発生するとは考えられない。 被控訴人エム・エム・ケイは、古くから、製品のパンフレットにおいて、 各種の石綿含有建材に石綿が含有されていることを表示し、また、一定の時期以降は、製品に添付する検査票の様式に、切断や研磨等の作業の際に粉じんを吸入すると健康被害を及ぼすおそれがあることや取扱注意事項等を表示し、さらに、平成元年以降は、石綿が含まれることを示す「a」マークを製品に表示してきたのであり、必要な表示、警告を行ってきた。 イ公共の安全を守る行政機関による規制措置がないにもかかわらず、企業に私法上の義務として石綿を含んだ製品の製造中止義務が発生するとは考えられない。したがって、被控訴人エム・エム・ケイに石綿を含んだ製品の製造中止義務が発生していたとはいえない。 ⑵ア民法719条の趣旨は、複数行為者による権利侵害においては各人の行 為が他人の行為と相互に関連 、被控訴人エム・エム・ケイに石綿を含んだ製品の製造中止義務が発生していたとはいえない。 ⑵ア民法719条の趣旨は、複数行為者による権利侵害においては各人の行 為が他人の行為と相互に関連し影響し合うことが多いことから、各人の行為を切り離して各人ごとに結果との因果関係を立証することが困難な場合に、被害者をかかる立証の困難から救済するために、関連共同性が存在することを要件として、各人の行為と結果との間の個別の事実的因果関係の立証を緩和する点にあるものと解される。このような趣旨からすると、 共同不法行為制度によって個別の事実的因果関係の立証の緩和という恩恵を受けるのは、被害者に対する関係で具体的に加害行為を行ったと認められる者、すなわち、本件についていえば、自らの製品と被災者との間に具体的な接触関係がある企業についてである。したがって、本件においても、加害行為の到達、すなわち、被災者が特定の被控訴人の建材に由来す る石綿粉じんに曝露したことが主張立証されることが、共同不法行為の成否を検討する前提となる。 民法719条1項後段の類推適用の場合にも、同様に、控訴人らは、被控訴人らの本件の各被災者に対する具体的な加害行為を主張した上、当該加害行為の当該被災者への到達を主張立証する必要がある。 民法719条1項後段の趣旨は、被害者の権利ないし法益を侵害した可 能性のある者として複数の行為者を観念できるが、そのうちの誰の行為によって権利ないし法益の侵害が発生したのか不明な場合(択一的競合)について、どの行為者の行為(個別行為)から権利ないし法益の侵害(損害)が生じたのかという個別的因果関係に関する立証の困難から被害者を保護するために、個別的因果関係についての主張立証責任を行為者側に転換 の行為者の行為(個別行為)から権利ないし法益の侵害(損害)が生じたのかという個別的因果関係に関する立証の困難から被害者を保護するために、個別的因果関係についての主張立証責任を行為者側に転換 する点にある。そのため、同項後段の適用に当たっては、被害者は択一的競合関係にある行為者を特定し、かつ、その特定された行為者以外の者によって当該権利、法益侵害がもたらされたものではないこと、すなわち、加害者はこの数人のうちの誰かであり、この数人以外に疑いをかけることのできる者は1人もいないことを主張立証する必要がある。このような立 証の困難性を強調して因果関係の推定が認められる範囲を無限定に拡張すると、加害者とされる者に上記立証責任の転換による過大な不利益を課すこととなり、均衡を失する。 本件において、被災者が自ら取り扱い、石綿粉じんへの曝露の原因となった主要な建材の製造企業を特定することが容易でないとしても、石綿含 有建材を製造、販売した企業が被災者が罹患した石綿関連疾患の原因が自らが製造、販売した建材ではないことを立証することは、より一層不可能に近い。被害者側での他原因者の不存在等の立証の困難性から救済を図るために、その立証が不十分な状態で加害者とされる者に対して損害賠償責任を認める場合には、加害者とされる者が減免責の主張立証をする上での 防御の手掛かりが付与されることが必要不可欠である。このように、実質的な観点からしても、他に加害行為者となり得る者が存在しないことが同項後段の類推適用の要件とされなければならない。 イ被災者が従事した建築作業現場においていかなる建材が用いられたのかについては、建材の種類、製造販売期間、販売先、販売地域といった被控訴 人ら側の事情だけではなく、どのような元請事業者の下で活 被災者が従事した建築作業現場においていかなる建材が用いられたのかについては、建材の種類、製造販売期間、販売先、販売地域といった被控訴 人ら側の事情だけではなく、どのような元請事業者の下で活動し、どのよう な建材取扱業者(材木店等)との取引をしてきたのかといった被災者側の事情にも大きく左右される。したがって、特定の被災者が従事した建築現場における特定の企業が製造した建材の出現頻度が、当該建材のシェアに基づく計算上の確率と一致するとは考えにくい。 第3章当裁判所の判断第1節認定事実第1 被控訴人らの注意義務違反に関する事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 1 石綿関連疾患に関する医学的知見の集積状況等 ⑴ 海外における医学的知見次のとおり補正するほか、原判決書91頁17行目から109頁10行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決書91頁26行目末尾を改行し、「(甲A39、101、140、199)」を加える。 イ原判決書92頁10行目末尾を改行し、「(甲A140、428)」を加える。 ウ原判決書92頁18行目の「耐侯」を「退行」と改める。 エ原判決書93頁5行目末尾を改行し、「(甲A307の1、309、311)」を加える。 オ原判決書93頁18行目の「上記総会は、」の次に「今後も注目する必要はあるが、」を加える。 カ原判決書93頁19行目の「発症率」を「罹患率」と改める。 キ原判決書93頁20行目末尾を改行し、「(甲A28、307の1、310、313)」を加える。 ク原判決書94頁9行目末尾を改行し、「(甲A43)」を加える。 ケ原判決 改める。 キ原判決書93頁20行目末尾を改行し、「(甲A28、307の1、310、313)」を加える。 ク原判決書94頁9行目末尾を改行し、「(甲A43)」を加える。 ケ原判決書94頁15行目末尾を改行し、「(甲A77、307の1)」を加える。 コ原判決書95頁2行目末尾を改行し、「(甲A140)」を加える。 サ原判決書95頁22行目の「昭和29年(1954年)」を「昭和28年 (1953年)」と改める。 シ原判決書96頁14行目末尾を改行し、「(甲A77、1005の2、乙アA8)」を加える。 ス原判決書96頁23行目末尾を改行し、「(甲A146、307の1、317)」を加える。 セ原判決書97頁22行目末尾を改行し、「(乙アA98)」を加える。 ソ原判決書98頁9行目末尾を改行し、「(甲A29、140、307の1)」を加える。 タ原判決書98頁17行目末尾を改行し、「(甲A307の1及び2、314)」を加える。 チ原判決書98頁18行目及び19行目の「セリコフ」並びに同行目の 「I.J.Selikoff」の次に「ら」をそれぞれ加える。 ツ原判決書99頁8行目の「1522人」を「632人」と改める。 テ原判決書99頁14行目末尾を改行し、「(甲A140、204、315)」を加える。 ト原判決書99頁26行目の「ドールや」を削る。 ナ原判決書100頁6行目末尾を改行し、「(甲A7、140)」を加える。 ニ原判決書100頁21行目末尾を改行し、「(甲A29、206、307の1)」を加える。 ヌ原判決書100頁26行目の「45人」を「40人」と改める。 ネ原判決書103頁8行目末尾を改行し、「(甲A207、307の1、乙ア 、「(甲A29、206、307の1)」を加える。 ヌ原判決書100頁26行目の「45人」を「40人」と改める。 ネ原判決書103頁8行目末尾を改行し、「(甲A207、307の1、乙ア A90)」を加える。 ノ原判決書103頁16行目末尾を改行し、「(乙アA40、97)」を加える。 ハ原判決書103頁22行目末尾を改行し、「(乙アA40)」を加える。 ヒ原判決書103頁23行目の「セリコフ」の次に「ら」を加え、「昭和39 年(1964年)から昭和48年(1973年)」を「昭和35年(1960 年)から昭和46年(1971年)に改める。 フ原判決書104頁2行目末尾を改行し、次のとおり加える。 「 また、セリコフらは、昭和47年(1972年)、『米国及びカナダの建設業における断熱作業労働者のがんの危険度』と題する発表をした。同発表では、米国及びカナダの断熱作業労働者1万7800人の昭和42年 (1967年)から昭和46年(1971年)までの肺がんと胸膜中皮腫による死亡者数について、石綿ばく露の開始からの年数に応じて分析がされ、肺がんによる死亡はばく露開始後15~19年で有意に増加し、肺がんによる死亡者数が最も多いのはばく露開始後30~39年であり、ばく露開始から少なくとも40年間観察しないと石綿ばく露による影響を評 価するのは困難であるとされた。 (甲A390の2、乙アA40)」ヘ原判決書104頁5行目の「ワグナー」の次に「ら」を加える。 ホ原判決書104頁12行目末尾に「(乙アA40)」を加える。 マ原判決書104頁24行目末尾に「(乙アA40、97、111)」を加え る。 ミ原判決書105頁2行目の「相乗的に」を削る。 ム原判決書105頁4行目末尾に アA40)」を加える。 マ原判決書104頁24行目末尾に「(乙アA40、97、111)」を加え る。 ミ原判決書105頁2行目の「相乗的に」を削る。 ム原判決書105頁4行目末尾に「(乙アA40、97)」を加える。 メ原判決書105頁13行目末尾を改行し、「(甲A307の1、乙アA3)」を加える。 モ原判決書105頁17行目の「(1972年)」の次に「10月」を加える。 ヤ原判決書105頁18行目から19行目の「昭和48年(1973年)」を削る。 ユ原判決書105頁20行目の「昭和48年IARC報告」を「昭和47年IARC報告」と改め、以下、同様とする。 ヨ原判決書105頁21行目の「を公表した。」を「を作成して、昭和48年 (1973年)に公表した。」と改める。 ラ原判決書105頁23行目の「研究論文集」の次に「(モノグラフ集の第2巻)」を加える。 リ原判決書108頁18行目末尾を改行し、「(甲A307の1、316、乙アA1、97)」を加える。 ル原判決書109頁10行目末尾を改行し、「(乙アA4)」を加える。 ⑵ 我が国における医学的知見次のとおり補正するほか、原判決書109頁12行目から123頁14行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決書109頁16行目の「『職業病と工業中毒』で、」の次に「ILO けい肺会議の内容等を紹介し、」を加える。 イ原判決書109頁17行目の「それぞれ」及び同行目から18行目の「や海外における石綿関連疾患の症例報告」を削る。 ウ原判決書109頁20行目末尾を改行し、「(甲A10、11、乙アA20、21、93)」を加える。 エ原判決書113頁2行目末 外における石綿関連疾患の症例報告」を削る。 ウ原判決書109頁20行目末尾を改行し、「(甲A10、11、乙アA20、21、93)」を加える。 エ原判決書113頁2行目末尾を改行し、「(甲A12)」を加える。 オ原判決書113頁22行目末尾を改行し、「(甲A16)」を加える。 カ原判決書114頁5行目末尾を改行し、「(甲A164)」を加える。 キ原判決書114頁12行目末尾を改行し、「(甲A165)」を加える。 ク原判決書114頁18行目末尾を改行し、「(甲A167、168)」を加え る。 ケ原判決書117頁19行目末尾を改行し、「(乙アA23、24)」を加える。 コ原判決書117頁26行目末尾を改行し、「(甲A76の1)」を加える。 サ原判決書118頁7行目末尾を改行し、「(甲A78)」を加える。 シ原判決書118頁14行目末尾を改行し、「(甲A18)」を加える。 ス原判決書118頁17行目末尾を改行し、「(乙アA28)」を加える。 セ原判決書119頁18行目末尾を改行し、「(甲A145)」を加える。 ソ原判決書120頁7行目末尾を改行し、「(甲A140、147、169、171)」を加える。 タ原判決書120頁18行目末尾を改行し、「(甲A23)」を加える。 チ原判決書121頁1行目末尾を改行し、「(甲A140、147)」を加える。 ツ原判決書121頁21行目末尾を改行し、「(甲A79の1及び2)」を加える。 テ原判決書122頁15行目末尾を改行し、「(甲A8)」を加える。 ト原判決書123頁14行目末尾を改行し、「(甲A8)」を加え、同末尾を改行し、次のとおり加える。 「テ昭和47年度環境庁公害研究委 2頁15行目末尾を改行し、「(甲A8)」を加える。 ト原判決書123頁14行目末尾を改行し、「(甲A8)」を加え、同末尾を改行し、次のとおり加える。 「テ昭和47年度環境庁公害研究委託費によるアスベストの生体影響に関する研究報告坂部は、上記の報告書において、昭和47年までの世界におけるアスベ ストの生物学的影響に関する研究や、海外における石綿肺、石綿による肺癌及び中皮腫等に関する研究報告等を紹介する(前記⑴で引用して説示したチのセリコフらによる1972年(昭和47年)の発表も紹介している。)とともに、昭和47年IARC報告の内容を記載した。 (甲A31) ト労働省専門家報告総説労働省は、昭和51年、瀬良を座長とする『石綿による健康障害に関する専門家会議』に対し、石綿曝露を原因とする健康障害に関する検討を委嘱した。この専門家会議は、昭和53年9月、検討結果の報告書と して、『石綿による健康障害に関する専門家会議検討結果報告書』(以下 『労働省専門家報告』という。)を労働基準局長に提出した。 概要労働省専門家報告の概要は、以下のとおりである。 a 石綿肺への肺がん合併(石綿肺合併肺がん)については研究報告が多く、石綿曝露と石綿肺合併肺がん発生との関連が明らかにされてい る。 b 最近の疫学調査結果から、石綿曝露量が大となるにつれて肺がん発生の超過危険が大きくなる傾向がみられ、症例としては石綿曝露期間がおおむね10年を超える労働者に発生したものが多い。しかし、高濃度で比較的短期間に曝露を受けた作業者や若しくは一時的に高濃 度の石綿曝露を受ける作業が間欠的に行われる業務に従事した労働者に肺がん発生がみられたこともあるので、これらの症例における肺癌と石 度で比較的短期間に曝露を受けた作業者や若しくは一時的に高濃 度の石綿曝露を受ける作業が間欠的に行われる業務に従事した労働者に肺がん発生がみられたこともあるので、これらの症例における肺癌と石綿曝露との関係については、個別に詳細な検討が加えられるべきである。 c 中皮腫については、石綿肺合併肺がんの場合と異なり、例数が少な いため石綿曝露との量-反応関係を考察することが難しい。中皮腫の症例報告からみた石綿曝露期間は10年以上の場合が比較的多いが、5年未満といった短い例もある。また、石綿粉じん濃度が低くても中皮腫が発生した例もあり、肺がんを発生するに必要な曝露量よりも少量で発生する可能性がある。 d クロシドライトはアモサイトやクリソタイルに比して中皮腫発生により強く関与していると考えられるが、一般に単一の繊維のみの曝露を受けている例は少ないので結論は難しい。また、アンソフィライトでは中皮腫は発生しないという見解もあるが、現時点における知見では、特定の石綿繊維の中皮腫発生に関する影響を否定することは困 難である。 (乙アA40)」 2 建築現場における石綿粉じん曝露の実態に関する事実⑴ 石綿の輸入量及び建材への使用状況次のとおり補正するほか、原判決書20頁11行目から21頁5行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決書20頁13行目冒頭に「我が国における石綿の輸入量は、別紙6-1のとおりである。」を加える。 イ原判決書21頁3行目「減少し、」の後に、「平成16年に8186t、平成17年に110tとなり、」を追加する。 ウ原判決書21頁5行目末尾を改行し「(甲A4、19、394、甲C16、 乙アA19)」を加える。 ⑵ の後に、「平成16年に8186t、平成17年に110tとなり、」を追加する。 ウ原判決書21頁5行目末尾を改行し「(甲A4、19、394、甲C16、 乙アA19)」を加える。 ⑵ 石綿含有建材の種類等ア石綿含有吹付け材石綿含有吹付け材は、熱に強い石綿繊維とバインダー(セメント)を機械により吹付け施工するものであるが、いかなる形状の箇所にも施工が可能で あるほか、吸音、断熱、結露防止、耐火などの諸性能に優れ、かつ、施工後は継ぎ目のない平滑な仕上がりとなることから、我が国では、昭和30年頃、イギリスから導入された。 環境省による調査検討の依頼を受けて社団法人日本作業環境測定協会が設置した「建築物の解体等における石綿飛散防止検討会」が平成17年に作 成した「建築物の解体等における石綿飛散防止対策の強化について」(以下「環境省検討会報告」という。甲A396)によると、石綿含有吹付け材には、吹付け石綿、石綿含有吹付けロックウール(乾式)、石綿含有吹付けロックウール(湿式)、石綿含有ひる石吹付け及び石綿含有パーライト吹付けがある(それぞれ、国交省データベースに掲載された①吹付け石綿、②石綿含 有吹付けロックウール、③湿式石綿含有吹付け材、④石綿含有吹付けバーミ キュライト及び⑤石綿含有吹付けパーライトに対応する。)。それぞれの石綿の種類、使用時期及び含有率は、別紙6-2のとおりである。 ①吹付け石綿は、昭和31年頃から、学校、ビルなどに、吸音、断熱、耐火、結露防止のために広く吹き付けられ、昭和42年頃から、建築物の高層ビル化と鉄骨構造が進展し、その鉄骨に耐火被覆のために吹き付けられた。 しかし、吹付け石綿は、昭和50年の特化則の改正により、石綿含有率が5%を超える石綿含有 れ、昭和42年頃から、建築物の高層ビル化と鉄骨構造が進展し、その鉄骨に耐火被覆のために吹き付けられた。 しかし、吹付け石綿は、昭和50年の特化則の改正により、石綿含有率が5%を超える石綿含有製品等を吹き付ける作業が原則として禁止されたことから、昭和50年以降は使用されていない。吹付け石綿の施工が行われていた期間は、吸音断熱用として昭和31年頃から昭和50年まで、耐火被覆用として昭和38年頃から昭和50年までである。昭和30年から昭和49年ま での吹付け石綿の施工量は、別紙6-3のとおりである。 石綿含有吹付けロックウール(②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)は、上記のとおり吹付け石綿の使用が原則として禁止された昭和50年以降、代替製品として広く利用された。ロックウール(岩綿)は、天然の鉱物を高炉で溶融して製造された人工の鉱物繊維である。用途は、 吸音断熱用と耐火被覆用がある。その工法には、乾式、湿式、半湿式(半乾式)がある。乾式工法は、ロックウールとセメントを工場の工程で混合し、それを施工現場まで圧送して、噴射機のノズルの先端で水と混ぜ合わせて吹き付ける工法である。湿式工法は、混和剤を用いて、工場の過程でロックウール、セメントなどを混合し、それを現場で水と混ぜて練り込んだ後、ポン プにより施工現場まで圧送して圧縮空気で吹き付ける工法である。半湿式(半乾式)工法は、セメントと水を混ぜたセメントスラリー及びロックウールを施工現場まで別々に圧送し、スラリーホースをロックウールホース内に挿入してノズルで吹き付ける工法である。吹付けロックウールに含有される石綿については、昭和55年以降、ロックウール工業会の自主規制により、 乾式及び半湿式の吹付けロックウール製品には石綿がほぼ使用されないこ き付ける工法である。吹付けロックウールに含有される石綿については、昭和55年以降、ロックウール工業会の自主規制により、 乾式及び半湿式の吹付けロックウール製品には石綿がほぼ使用されないこ とになり、平成元年以降、湿式の吹付けロックウール製品にも石綿がほぼ使用されないことになった。昭和43年から昭和54年までの吹付けロックウール(乾式)の施工面積は、別紙6-4のとおりであるが、これは石綿を含まない製品の施工面積を含んだものである。 ④石綿含有吹付けバーミキュライトは、断熱、吸音、結露防止を目的とし て、天井等の仕上げ材として用いられた。⑤石綿含有吹付けパーライトは、吸音を目的として、天井等の仕上げ材として用いられた。 (甲A4、36の2、同394、395、396、甲C29の1から42、同30の3、乙アA35)イ石綿含有保温材等 環境省検討会報告によると、石綿含有保温材には、石綿保温材、けいそう土保温材、パーライト保温材、けい酸カルシウム保温材及び水練り保温材がある(国交省データベースに掲載された⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材、⑨石綿含有パーライト保温材及び⑩石綿保温材に対応する。)。それぞれに 使用された石綿の種類、使用時期及び含有率は、別紙6-5の石綿含有保温材の欄に記載のとおりである。 石綿含有保温材は、ボイラー、タービン、化学プラント、焼却炉等、熱を発生する部分、熱を搬送するためのダクト、エルボ部分の保温を目的として使用された。 環境省検討会報告によると、石綿含有断熱材には、屋根折版(折板)用断熱材、煙突断熱材がある(国交省データベースに掲載された⑬屋根用折板石綿断熱材、⑭煙突用石綿 して使用された。 環境省検討会報告によると、石綿含有断熱材には、屋根折版(折板)用断熱材、煙突断熱材がある(国交省データベースに掲載された⑬屋根用折板石綿断熱材、⑭煙突用石綿断熱材に対応する。)。それぞれに使用された石綿の種類、使用時期及び含有率は、別紙6-5の石綿含有断熱材の欄に記載のとおりである。 石綿含有断熱材は、屋根裏の結露防止及び断熱、煙突の断熱を目的とし て使用された。 環境省検討会報告によると、石綿含有耐火被覆板には、耐火被覆板及びけい酸カルシウム板第2種がある(国交省データベースに掲載された⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種及び⑫石綿含有耐火被覆板に対応する。)。それぞれに使用された石綿の種類、使用時期及び含有率は、別紙6 -5の石綿含有耐火被覆板に記載のとおりである。 石綿含有耐火被覆板は、吹付け材の代わりに、鉄骨の耐火被覆を目的として使用された。 (甲A36の2、同396、甲C29の43から110、同30の3)ウ石綿含有成形板 環境省検討会報告によると、石綿含有成形板には、石綿含有スレート波板、同スレートボード、同けい酸カルシウム板第1種、同押出成形セメント板、同パルプセメント板、同スラグせっこう板、同サイディング、同住宅屋根用化粧スレート、同ロックウール吸音天井板、同せっこうボード、同セメント円筒、同フリーアクセスフロア及び同ビニル床タイルがあり、 それぞれに使用された石綿の種類及び使用時期は別紙6-6、年代ごとの石綿含有率の代表的な値(推定値)は別紙6-7、出荷量は別紙6-8のとおりである。 石綿含有スレート波板は、国交省データベースに掲載された㊲石綿含有スレート波板・大波、㊳ 、年代ごとの石綿含有率の代表的な値(推定値)は別紙6-7、出荷量は別紙6-8のとおりである。 石綿含有スレート波板は、国交省データベースに掲載された㊲石綿含有スレート波板・大波、㊳石綿含有スレート波板・小波及び㊴石綿含有スレ ート波板・その他に対応する。外装材として、工場などの屋根や壁に使用された。 石綿含有スレートボードは、国交省データベースに掲載された⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フ レキシブル板及び⑲石綿含有スレートボード・その他に対応する。 ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板は、スレートボードの代表的な製品で、高い強度と弾力性があり、防火性能が高く、加工性もよい。 不燃材料として、内装材としては壁材、天井材等に、外装材としては軒天井に使用された。また、湿度による変化が少ないことから、浴室の壁や天井、台所の壁などにも使用された。 ⑯石綿含有スレートボード・平板は、大平板とも呼ばれるスレートボードの普及品である。性能は⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板に準じるもので、軽量防火材として、内装及び外装に使用された。 ⑰石綿含有スレートボード・軟質板は、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板と同様に加工性のよい内装材であるが、湿度による伸縮があ ることから、外部や浴室、洗面所などの湿気の多い部屋には使用できない。 ⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板は、化粧加工用の不燃基材として開発された材料で、加工性、可とう性(変形しやすさ)に優れている。化粧板メーカーの各種加工用基材としての需要が大多数である。 ⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板は、化粧加工用の不燃基材として開発された材料で、加工性、可とう性(変形しやすさ)に優れている。化粧板メーカーの各種加工用基材としての需要が大多数である。 化粧加工を施した製品は、内装材や軒天井を中心とした外装材として使用 されている。 ⑲石綿含有スレートボード・その他は、上記の4つの石綿含有スレートボードに分類されないスレートボードである。 ㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、軽量で耐火性、断熱性に優れている。一般建築物の天井材、壁材として使用され、住宅では、火気使用 室を中心に内装材として使用されている。外装材としては、軒天井材とその関連部材や準防火地域での軒裏などに使用されている。 ㉒石綿含有押出成形セメント板は、一般的には非耐力壁用材料として、外壁材や間仕切壁材に用いられる。 ㉑石綿含有パルプセメント板は、防火性、遮音性、吸音性等に優れ、軽 量で加工性も良い。耐水性が低いので、主として内装材として使われるが、 外装材として軒天井に使用される例もある。 ⑳石綿含有スラグせっこう板は、加工性のよい材料である。表層材の種類によって外装材、軒天井材、下地材、内装材など、施工部位、使われ方が異なる。多くは居室の内装工事の仕上げ材として使用されている。 石綿含有サイディングは、国交省データベースに掲載された㉟石綿含有 窯業系サイディング及び㊱石綿含有建材複合金属系サイディングに対応する。 ㉟石綿含有窯業系サイディングは、セメントに繊維材料を混入するなどして成形された建材であり、防火・耐火性能、耐震性、耐久性が高く、一般的には、外壁材として使用されている。 ㊱石綿含有建材複合金属系サ 窯業系サイディングは、セメントに繊維材料を混入するなどして成形された建材であり、防火・耐火性能、耐震性、耐久性が高く、一般的には、外壁材として使用されている。 ㊱石綿含有建材複合金属系サイディングは、金属製の表面材に、断熱性、耐火性に必要な性能を持つ裏打材を併せて成形された建材であり、軽量で凍害に強いなどの特徴があり、一般的には、外壁材として使用される。 ㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートは、セメントに補強材として、各種の繊維材料を混入し、平板状等に成形した屋根材である。ほとんどが屋根 材として使用されている。 ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板は、ロックウールに少量のバインダー等を混ぜて成形した原板に模様加工と化粧塗装を施し、製品化したものである。軽量であり、不燃性、吸音性能に優れている。一般建築物・事務所、学校、講堂、病院等の医療施設等の天井に不燃・吸音天井板として多 く使用されている。 ㉕石綿含有せっこうボードは、事務所、病院、公共施設等の天井や内壁に多く使用されている。外装材として使用される例は乏しく、内装材としても、水や湿気の多い箇所には適さない。 石綿含有セメント円筒は、国交省データベースに掲載された㊶石綿セメ ント円筒に対応する。 ㊶石綿セメント円筒には、繊維モルタル成形の外管に硬質塩化ビニルを内在させた耐火二層管がある。住宅では、換気用円筒材、煙突、雑排水管、し尿・汚物排水管などの遮音性が要求される部分の排水管等に使用されている。 石綿含有フリーアクセスフロアは、国交省データベースに掲載された㉛ 石綿含有けい酸カルシウム床材に対応するものと考えられる。 ㉛石綿含有けい酸カルシウム床材は、取り外し可能な床 。 石綿含有フリーアクセスフロアは、国交省データベースに掲載された㉛ 石綿含有けい酸カルシウム床材に対応するものと考えられる。 ㉛石綿含有けい酸カルシウム床材は、取り外し可能な床パネルであり、学校・幼稚園等、店舗・事務所等の床材として使用されている。 ㉙石綿含有ビニル床タイルは、Pタイルと呼ばれており、事務所、病院、公共施設などの床に多く使用されている。住宅の場合は、洗面所や台所の 床に使用されていることが多い。 (甲A36の2、同396、甲C29の111から1082、1373から1431、1459から1461、1463から1575、1588から2075、2078から2151、同30の3、乙アA35)エその他の石綿含有建材 国交省データベースには、上記⑴ないし⑶の各建材のほか、㉗石綿含有その他パネル・ボード、㉘石綿含有壁紙、㉚石綿含有ビニル床シート、㉜石綿含有ソフト巾木、㉞石綿含有ルーフィング、㊵石綿セメント管及び㊷石綿発泡体が掲載されている。 ㉗石綿含有その他パネル・ボードは、ボードを構成する原料の石綿、セ メント、けい酸カルシウム、パルプ、せっこう、パーライト等に、さらに炭酸カルシウム、有機繊維等を混合したもので、素材のままの使用法と塗装したもの、セラミック加工したもの、プリントしたもの、無機質材で表面化粧したもの、製品原料に着色材料を混入したもの等がある。ボードは、内壁や天井等に使用されている。パネルは、各ボードの組合せにより異な るが、主に外壁及び内壁に使用されることが多い。 ㉘石綿含有壁紙は、石綿紙にビニルフイルムを合わせたもので、不燃材料を要求される避難階段、通路、エレベーターホール等の壁面、天井等に使用され 壁に使用されることが多い。 ㉘石綿含有壁紙は、石綿紙にビニルフイルムを合わせたもので、不燃材料を要求される避難階段、通路、エレベーターホール等の壁面、天井等に使用されている。 ㉚石綿含有ビニル床シートは、防水性能が高いことから水回りに多く使用されている。住宅の場合は、合板等の木質系下地面に接着剤を用いて施 工するのが一般的である。 ㉜石綿含有ソフト巾木は、壁と床の納まりに設けられた横材で、足の当たりやすい壁の下部を保護する役割と部屋の装飾を兼ねる。戸建住宅では、一般的に木製巾木が多用され、ソフト巾木が使われることは少ない。 ㉞石綿含有ルーフィングは、屋根防水材として、主に鉄筋コンクリート 造の建物の屋上に施工されるアスファルト防水層の構成材料として用いられている。 ㊵石綿セメント管は、給排水管として主に昭和20年代後半から使用されていた。強度が低いことから、昭和60年には製造されなくなった。 ㊷石綿発泡体は、板状のスポンジである。軽量で弾力・柔軟性、低発じ ん性、不燃性、耐熱性、断熱性、吸音性、耐振性、撥水性、加工・施工性が高い。ビル外壁の耐火目地材に使用されている。 (甲A36の2、同396、甲C29の1083から1372、1432から1458、1462、1576から1587、2076、2077、2152、2153、同30の3、乙アA35) 国交省データベースに含まれていない石綿含有建材として、㊸混和材がある。㊸混和材は、左官工事の現場で、モルタル塗りの際に、モルタルの伸びを良くして作業効率を改善するために、モルタルに混合して使用される粉末の建材である。 (甲A116、1248の2、5、6) ⑶ 建築業界の特質 の際に、モルタルの伸びを良くして作業効率を改善するために、モルタルに混合して使用される粉末の建材である。 (甲A116、1248の2、5、6) ⑶ 建築業界の特質 原判決書36頁21行目末尾を改行して「(甲A128、130、134、173の1、212、213、255、375、378、379)」を加えるほか、原判決書35頁8行目から36頁21行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑷ 建築工事の工程 次のとおり補正するほか、原判決書37頁12行目から44頁13行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決書37頁12行目の「イ」を「ア」と改める。 イ原判決書38頁3行目の「及び梁に溶接をし」を「を梁に溶接し」と改める。 ウ原判決書38頁20行目の「(後記8⑶)」を削る。 エ原判決書41頁16行目の「ウ」を「イ」と、19行目の「上記イ」を「上記ア」と改める。 オ原判決書41頁21行目の「新築工事」を「躯体工事」と改め、22行目の「異なり、」の次に「鉄筋工事、型枠工事、コンクリート工事が中心とな り、」を加え、同行目の「上記イ」を「上記ア」と改める。 カ原判決書41頁23行目の「他方で、」から24行目末尾までを「もっとも、鉄筋コンクリート造建物においても、防音、結露防止、天井面の装飾などのために、吹付工事が行われることがある。」と改める。 キ原判決書41頁25行目の「エ」を「ウ」と改める。 ク原判決書42頁11行目末尾に「大工が屋根下地工事をしている間に、とびがその後の外壁工事などのために足場を組み、その外側の全体にネットを張る。ネットは、建物の建築中に近隣の家や道路に材料などを落下させないためのものであり、建物が竣工するま 地工事をしている間に、とびがその後の外壁工事などのために足場を組み、その外側の全体にネットを張る。ネットは、建物の建築中に近隣の家や道路に材料などを落下させないためのものであり、建物が竣工するまで張られている。」を加える。 ケ原判決書43頁16行目の「オ」を「エ」と、44頁1行目の「カ」を「オ」 と、4行目の「上記オ」を「上記エ」とそれぞれ改める。 コ原判決書44頁13行目末尾を改行して「(甲A113、118、231、366、370、371、385)」を加える。 ⑸ 建築工事における石綿粉じんの発散等ア建築現場では、建築作業従事者が、以下の作業をする際などに、石綿含有建材から石綿粉じんが発散するなどした。 木造建物の建築現場大工や内装工が、内装下地工事、天井工事、内装仕上工事等において、石綿含有スレートボードや石綿含有けい酸カルシウム板第1種などの内装材、天井材等として用いられる石綿含有成形板の切断、やすり掛け、釘打ち等の固定作業を行う際などに、石綿粉じんが発散した。 大工、板金工、屋根工等が、石綿含有スレート波板や石綿含有住宅屋根用化粧スレートなどの外装材として用いられる石綿含有成形板の切断や釘打ち等の固定作業を行う際などに、石綿粉じんが発散した。 配管工が、石綿含有成形板の間仕切り壁等に配管のための穴を開ける工事(スリーブ工事)を行う際や、配管の長さを調整するために石綿セメン ト円筒を切断する際に、石綿粉じんが発散した。 塗装工が、塗装作業前に、下地調整作業として、モルタル壁やボード壁の表面を電動サンダー等を使って平らに滑らかにする際に、モルタルやボードに含有される石綿粉じんが発散した。また、塗装工が、塗装前の掃除を行う際には、他の職人の作業により発散 て、モルタル壁やボード壁の表面を電動サンダー等を使って平らに滑らかにする際に、モルタルやボードに含有される石綿粉じんが発散した。また、塗装工が、塗装前の掃除を行う際には、他の職人の作業により発散した石綿粉じんが舞い上がった。 左官が、モルタルを作る際に、石綿を含有する混和材を加えてかくはんすることにより、石綿粉じんが発散した。 電工が、設備工事において、配線や照明器具の取付け作業等のために、石綿含有成形板を切断・穴開けしたり、固定作業を行う際などに、石綿粉じんが発散した。 鉄骨造建物や鉄筋コンクリート造建物の建築現場 上記の木造建物の建築現場と同様の作業によって石綿粉じんが発散したほか、鉄骨造建物の建築工事では、吹付け工が行う吹付け作業の際に、ノズルから放出された吹付け材の石綿粉じんが周囲に飛散した。 また、大工、内装工、配管工等は、吹付け作業後に自らの作業を行う際に、吹き付けられた石綿等を削り取る作業が必要になることがあり、この 作業や削り取られた吹付け材から石綿粉じんが発散した。 上記のほか、保温工等が行う石綿含有保温材の取付けや取替え等の作業において、石綿粉じんが発散した。 イ解体工事の建築現場では、解体される建物に使用されていた石綿含有建材が破壊されることにより、当該建材から石綿粉じんが発散した。 改修工事の建築現場では、既存の建物の一部を取り壊す際に、解体工事と同様に、破壊される石綿含有建材から石綿粉じんが発散した。また、取り壊し後に行われる作業では、新築工事と同様の作業によって、石綿粉じんが発散した。 ウ建築現場では、前記⑶及び⑷のとおり、様々な職種の建築作業従事者が同 時並行で作業を行っていることから、建築作業従事者は、自らが行った作業 様の作業によって、石綿粉じんが発散した。 ウ建築現場では、前記⑶及び⑷のとおり、様々な職種の建築作業従事者が同 時並行で作業を行っていることから、建築作業従事者は、自らが行った作業により発散し、飛散した石綿粉じんに直接的に曝露するほか、同じ建築現場で並行して他の者が行った作業によって発散し、飛散した石綿粉じんに間接的に曝露することもあった。 (甲A35、113、114、116から120、230、231) ⑹ 電動工具の普及状況原判決書129頁21行目末尾を改行して「(甲A239、437)」を加えるほか、原判決書129頁4行目から21行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑺ 防じんマスクの着用状況 ア名古屋大学医学部衛生学教室の久永直見(以下「久永」という。)らは、昭 和63年、雑誌「労働衛生」に「アスベストに挑む三管理環境管理と作業管理-建築業の現場を中心に-」と題する論文を発表した。その中には、全京都建築労働組合と三重県建設労働組合によるアンケート調査が紹介されており、それによると、石綿粉じんの吸入が「よくある」と回答したのは、京都はアンケート回答者数6500人(アンケート回答率60%)中8.9%、 三重は同7411人(同79.3%)中13.7%であり、「時々ある」と回答したのは京都で29.1%、三重で26.4%であった。そして、石綿粉じんの吸入が「よくある」と「時々ある」と回答した者のうち、粉じん曝露時に防じんマスクを使用する者は、「毎回」が京都で0.8%、三重で2. 4%、「時々」が京都で6.8%、三重で7.5%であり、同様に、ガーゼマ スクは、「毎回」が京都で0.7%、三重で3.8%、「時々」が京都で8. 4%、三重で17.5%、タオ .8%、三重で2. 4%、「時々」が京都で6.8%、三重で7.5%であり、同様に、ガーゼマ スクは、「毎回」が京都で0.7%、三重で3.8%、「時々」が京都で8. 4%、三重で17.5%、タオル類で代用は、「毎回」が京都で1.3%、三重で7.2%、「時々」が京都で30.1%、三重で24.8%であり、何もしない者が半数以上であったとされている。その上で、同調査結果に関して、「呼吸用保護具の使用は根本的な解決ではないが現状では重要である。」な どと記載されている。 (甲A430)イ千田忠男(杏林大学医学部衛生学教室)ほかは、平成元年、月刊いのちに「町場建築のアスベスト作業」と題する論文を発表した。その中には、昭和63年に、全建総連東京都連に加盟する組合員のうち同年7月度と8月度の いずれかに組合の機関会議等に参加する者を調査対象として実施したアンケート(回答者数424名、うち361名分を集計)の結果として、①回答者の大半(352名、97.5%)は、石綿含有建材があることを「よく知っている」又は「少し知っている」とし、この1年間に石綿含有建材を使ったことがあるかについても「ある」とする者が262名(72.6%)と多 数に上ったこと、②木造建築で「粉じんの出る所で作業する時にマスクをつ けている」と回答した者は157名(47.6%)であったが、着用しているマスクが「防じんマスク」であると回答した者は86名(28.4%)であり、木造建築に従事する者(330名)の約4分の1のみが効果のあるマスクをつけていることになること、③鉄骨建築に従事する者のうち、粉じんの出る所で作業する時にマスクを「いつもつけている」者はわずかに2名(1. 9%)であり、「ひどいときだけつける」とする者(33名)と けていることになること、③鉄骨建築に従事する者のうち、粉じんの出る所で作業する時にマスクを「いつもつけている」者はわずかに2名(1. 9%)であり、「ひどいときだけつける」とする者(33名)とあわせてマスクを着用する者は3割前後であり、しかも効果のあるマスクをつける者だけをみるとわずか21名(20.0%)にしかすぎなかったことなどが記載されている。その上で、調査結果の特徴として、石綿粉じんを吸入しないようにするための対策をみると、効果のあるマスクを着用する例はわずか2割前 後と少なく、大部分は無防備のままで粉じん作業に従事していることが判明したと記載されている。 なお、当該アンケートの回答者は全て男性であり、50歳以上が6割前後と高齢層にかたよっており、また、職種は、「大工」が239名(66.2%)と大半を占め、「鳶」が26名(7.2%)、「左官」、「塗装」、「板金」の順で あった。 (乙アA248)ウ建設じん肺研究会「はつり労働者の健康調査-52の事例の解析-」(平成15年5月)には、はつり労働者に関し、各年代における防じんマスクの着用状況について、1960年代ではごく一部の職場を除き着用されておら ず、1970年代でも着用率は「常時」「時々」「稀」をあわせて過半数に届かない状況であったが、1980年代では着用率は80%と高くなり、1990年代ではほぼ全職場で着用されるに至っていた。1970年代と1980年代の着用率の大きな違いは、1979年に粉じん障害予防規則が施行されて、はつり作業は「粉じん作業」として扱われることになり、事業者に「呼 吸用保護具の使用」等が最低義務として課せられたことが影響していると考 えられると記載されている。 (乙アA247) ん作業」として扱われることになり、事業者に「呼 吸用保護具の使用」等が最低義務として課せられたことが影響していると考 えられると記載されている。 (乙アA247)エ東が平成18年に公表した「日出ずる国の産業保健石綿から見た世界⑷:加工現場調査1985-1986」には、昭和60年から昭和61年の建築作業に関し、「現場の加工で大きな問題がある建材に壁材があります。 日本の家屋はハウスメーカーによって基本規格が異なり、どうしても寸合わせが必要となります。例えば、1メートルは102cmから98cmまで各社によって規格が異なり、畳のサイズは100種類を超えています。壁材は厚みがあり、ボードとしての密度も異なり、長い面を切断することもあり、きれいな断面とすることが必要で、切断加工では屋根材のように割断するこ とは出来ません。このため、電気ノコギリによる切断が最も作業効率がよく、一方、ノコギリに吸引装置や粉じん発生抑制装置を装着すると効率が落ちることから、歩合制で働く大工など現場作業者はこうした発じん防止対策を採用しませんでした。また、個人曝露保護具の着用についても、息苦しい、短時間作業では励行しにくい、面倒であるなどから実施率は低いものでした。 建屋内の作業では曝露が高くなることの他、屋外でも周辺を汚染する発じんが起こり得ることから問題が大きいと考えられました。」との記載がある。 (甲A319)⑻ 建築作業時における石綿粉じん濃度の測定結果ア労働科学研究所の木村菊二(以下「木村」という。)は、昭和46年、雑誌 「労働の科学」26巻9号において、「作業現場の石綿粉塵」と題する論文を発表した。同論文では、昭和40年頃から昭和45年頃までに行われた工場における石綿板切断 という。)は、昭和46年、雑誌 「労働の科学」26巻9号において、「作業現場の石綿粉塵」と題する論文を発表した。同論文では、昭和40年頃から昭和45年頃までに行われた工場における石綿板切断に係る石綿粉じん濃度の測定の結果は、除じん装置がない場合で10.8~16.2本/㎤(以下、石綿粉じん濃度における本数は石綿の繊維数である。)、除じん装置がある場合で7.4~10.0本/㎤で あったとされている。 また、木村は、昭和51年、第49回日本産業衛生学会・第20回日本産業医協議会において、「アスベスト粉塵の測定法についての検討」と題する講演を行った。同講演では、最近の2、3年間に行われた作業場における石綿粉じん濃度の測定の結果は、大型の石綿板を電動のこぎりで切断した場合において、吸じん装置作動中のときは2.89~25.08本/㎤、吸じん 装置休止中のときは147.03~391.50本/㎤であり、吸じん装置を作動中に大型の石綿板を切断速度の速い電動丸のこで切断した場合は、33.74~90.17本/㎤、13.3~391.5本/㎤であり、小型の石綿板を手動のこで吸じん装置のない状態で切断した場合において、0.31~2.55本/㎤あるいは0.11~0.38本/㎤で、この場合の切断 面の掃除が17.23~162.40本/㎤あるいは8.36~18.75本/㎤であったなどとされている。 (甲1132、1208)イ昭和51年労働省通達に添付された労働衛生課作成の「石綿関係資料」では、建設工事における石綿含有量50%の吹付け材の吹付け作業中の粉じん 濃度の測定結果(15箇所平均)は、乾式吹付け作業については37.66~41.76㎎/㎥であり、湿式吹付け作業については12.11~17. 28㎎/㎥ 量50%の吹付け材の吹付け作業中の粉じん 濃度の測定結果(15箇所平均)は、乾式吹付け作業については37.66~41.76㎎/㎥であり、湿式吹付け作業については12.11~17. 28㎎/㎥であったとされている(この測定結果について、2㎎/㎥=33本/㎤として換算し、石綿含有率50%を乗ずると、それぞれ310.7~344.5本/㎤、99.90~142.6本/㎤となる。)。 (甲A390)ウ労働省専門家報告には、1973年(昭和48年)の英国労働省工場監督庁による建設現場における石綿粉じん濃度の測定結果が示されている。その測定結果は、石綿吹付け作業において、推奨されている湿潤化の機器を使用した場合で5~10本/㎤、同機器を使用しない場合で100本/㎤以上で あり、解体作業(保温材を剥ぐ作業)において、乾燥状態で行った場合で2 0本/㎤以上であり、石綿含有のセメントのシートとパイプの電動の丸のこによる切断作業において、有効な局所排気装置を用いない場合で10~20本/㎤であり、石綿含有の断熱板の電動の丸のこによる切断作業において、有効な局所排気装置を用いない場合で20本/㎤以上であったなどとされている。 (甲A1158、乙アA40)エ慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の桜井治彦(以下「桜井」という。)、東らは、昭和62年、「一般家屋壁材施工時の発塵状況調査結果」を公表した。この調査結果では、同年、一般個人用住宅建設時に、屋外で電動のこぎりないし丸のこを使用して被控訴人クボタの製品である防火サイディ ングの切断作業をする者につき測定時間を約2~3分として石綿粉じんの個人曝露濃度を測定した結果は、以下のとおりであったとされている。 作業内容 ①吸引型集 品である防火サイディ ングの切断作業をする者につき測定時間を約2~3分として石綿粉じんの個人曝露濃度を測定した結果は、以下のとおりであったとされている。 作業内容 ①吸引型集塵機付き電動ノコギリ及び発塵防止用マット(人工芝)を使用した場合 ②吸塵袋(袋式集塵器)付き電動ノコギリ(C4Y4)及び発塵防止用マットを使用した場合③集塵ボックス付き電動ノコギリ(C4Y4)を用い、発塵防止用マットを使用しない場合作業現場作業内容個人曝露濃度(繊維/㏄)発塵点近傍(繊維/cc)①0.080.04②サンプル不良0.04~0.08③2.050.14~0.50④1.160.3~0.52①0.170.04②0.270.21~0.76③0.270.22~0.72④0.200.27~0.63町田読売ランド ④電動丸のこ(マキタの6型)を用い、発塵防止用マットを使用しない場合(乙アA206)オ医師の海老原勇(以下「海老原」という。)は、平成19年、「建設作業者の石綿関連疾患-その爆発的なひろがり-」と題する書籍を出版した。同書 籍では、昭和62年、屋外の木造住宅の建設現場において、防じん電動丸のこ、電動丸のこ又は手動のこぎりを使用して外壁材の切断及び張付けの作業をする者につき測定時間を129~203分として石綿粉じんの個人曝露濃度を測定した結果は、4件で0.94~1.58本/㎤であり、防じん電動丸のこを使用して外壁材の切断を中心とする作業をする者につき測定時 間を11~15分として個人曝露濃度を測定した結果は、3件で2.3~6. 7本/㎤であったとされている。 (甲A108)カ久永ら 使用して外壁材の切断を中心とする作業をする者につき測定時 間を11~15分として個人曝露濃度を測定した結果は、3件で2.3~6. 7本/㎤であったとされている。 (甲A108)カ久永らは、昭和63年、雑誌「労働衛生」に「アスベストに挑む三管理環境管理と作業管理-建築業の現場を中心に-」と題する論文を発表した。同 論文では、同年、石綿含有建材を取り扱う建築現場において、建築作業従事者の鼻先の気中石綿濃度を測定し、測定結果を公表した。その測定結果は、原判決書132頁4行目から134頁4行目までに記載のとおりであるからこれを引用する(上記引用中、①から⑪までの測定結果は屋内での作業に関するものであり、⑫及び⑬の測定結果は屋外での作業に関するものであ る。)。 (甲A430)キ平成4年労働省通達に添付された資料「石綿含有建築材料の施工業務従事者に対する労働衛生教育実施要領」には、通風の不十分な屋内作業場において、フレキシブル板を除じん装置の付いていない電動丸のこを使用して25 分間切断作業を行った場合の測定結果について、①切断作業者は、採取時間 15分で、4.46(本/㎤)、②切断作業作業室内の小運搬作業者は、採取時間30分で、4.09(本/㎤)、③切断作業室内の施行作業者は、採取時間30分で、3.75(本/㎤)であったとされている。 また、除じん装置付き電動丸のこ使用時の測定結果は、以下のとおりであったことが記載されている。 (乙アB45)ク建設業労働災害防止協会による石綿濃度の測定結果については、次のとおり補正するほか、原判決書129頁24行目から131頁16行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 原判 建設業労働災害防止協会による石綿濃度の測定結果については、次のとおり補正するほか、原判決書129頁24行目から131頁16行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 原判決書131頁9行目冒頭から16行目末尾を次のとおり改める。 「a 昭和62年から昭和63年にかけての測定結果として、屋外で除じん装置の付いていない電動丸のこ又はバンドソーを使用してスレート等の切断、葺上げ、張付け等の作業をする者について石綿粉じんの個人曝露濃度を測定した結果は、以下の表1のとおりである。 b 昭和62年の測定結果として、屋外で除じん装置付き電動丸のこを使区分使用石綿含有建築材料作業概要採取時間個人曝露濃度(本/㎤)施工作業120分0.025施工作業120分0.032作業指揮者120分0.007施工作業120分0.012施工作業120分0.006作業指揮者120分0.002施工作業90分0.180施工作業90分0.236作業指揮者90分0.086施工作業60分0.290施工作業60分0.370作業指揮者60分0.377屋外屋内大波スレート板小波スレート板フレキシブル板石綿けい酸カルシウム板 用して押出成形板の切断、葺上げ、張付け等の作業をする者について石綿粉じんの個人曝露濃度を測定した結果は、以下の表2のとおりである。 c 上記マニュアルには、屋外での石綿含有建材の切断作業に際しては、大気の拡散効果により、除じん装置を使用していなくても、風向き、天候によっては石綿粉じんの管理濃度の5分の1以下となり、作業者に対 しては曝露抑制となっている旨が記載されている。 (表1) 工事名使用石綿含 していなくても、風向き、天候によっては石綿粉じんの管理濃度の5分の1以下となり、作業者に対 しては曝露抑制となっている旨が記載されている。 (表1) 工事名使用石綿含有建築材料作業者番号作業概要採取時間(分)個人曝露濃度(本/㎤)電動丸ノコによる切断 0.02小運搬・葺上げ 0.01バンドソーによる切断 0.04葺上げ 0.01電動丸ノコによる切断 0.25葺上げ 0.11電動丸ノコによる切断 0.04バンドソーによる切断 0.21小運搬・葺上げ 0.18バンドソーによる切断 0.02電動丸ノコによる切断(午前) 0.20電動丸ノコによる切断(午後) 0.31張付け(午前) 0.09張付け(午後) 0.08工場屋根・外壁フレキシブルボード大波スレート(屋根)小波スレート(外壁)けいカル板(屋根下地)ABCDEF大波スレート工場屋根葺替ビル外装 (表2) (甲A248)」ケドイツ産業職業協同組合連合本部は、1997年(平成9年)、石綿のばく露歴からばく露量を推定し、石綿原因の肺がんの労災認定を行う際のマニュ アルとしてBKレポートを出版した。BKレポートでは、屋外で電動のこぎりを使用して行う配管工事において、管の切断10回、積み上げ、積み下ろし等々の作業をした場合の繊維濃度90パーセンタイル値は2本/㎤、外壁化粧張り(小サイズ)の作業をした場合の繊維濃度90パーセンタイル値は0.4本/㎤であったとされている (甲A492)コ平成17年に行われた第45回日本労働衛生工学会・第26回作業環境測定研究発表会の抄 をした場合の繊維濃度90パーセンタイル値は0.4本/㎤であったとされている (甲A492)コ平成17年に行われた第45回日本労働衛生工学会・第26回作業環境測定研究発表会の抄録集には、外山尚紀(以下「外山」という。)らによる建設現場における石綿含有建材加工時の気中石綿濃度に関する研究の報告が掲載されている。同報告では、屋根上でサンダーを使用して屋根用化粧スレー トを加工する作業又は屋外で電動丸のこを使用してスレート若しくはサイディング材を加工する作業をする者につき採取時間を10~15分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果(幾何平均)は、0.11本/作業者番号作業概要採取時間(分)個人曝露濃度(本/㎤)切断加工 0.016葺上げ・張付け 0.002切断加工 0.011葺上げ・張付け 0.004葺上げ・張付け 0.091葺上げ・張付け 0.075切断加工 0.043葺上げ・張付け 0.017切断加工 0.029葺上げ・張付け 0.006ABCD ㎤、0.14本/㎤、0.17本/㎤、0.25本/㎤であったとされている。 (乙イウ2005)サ厚生労働省が設置した「石綿に関する健康管理等専門家会議」のマニュアル作成部会は、相談の場で働く保健師等やエックス線検査等を行う健診機関 の職員等を対象に、「石綿ばく露歴把握のための手引~石綿ばく露歴調査票を使用するに当たって~」を平成18年10月に発行した。 同手引には、吹付け石綿除去工事後の再飛散に関する実験結果として、高さ2m強にあった2.5㎡の吹付け石綿を除去した翌日に床を箒(ほうき)で15分掃除した際、掃除直後の室内における石 月に発行した。 同手引には、吹付け石綿除去工事後の再飛散に関する実験結果として、高さ2m強にあった2.5㎡の吹付け石綿を除去した翌日に床を箒(ほうき)で15分掃除した際、掃除直後の室内における石綿濃度は、20本/㎖とい う高濃度であったこと、それにもかかわらず、肉眼的には、空気は掃除する前と変わらずキラキラもせず、無臭であり、吹付け石綿に関連する作業を行う労働者等が気づかずに高濃度曝露を受けることが理解できる光景であったこと、また、石綿は、空中に留まって浮遊する時間が長いため、床掃除作業4時間後の高さ1.5m地点での石綿濃度は7本/㎖であり、8時間後で も3本/㎖、12時間後には1本/㎖を示し、飛散開始14時間後に床に落下していったこと、床に落下後であっても、実験室内を歩くと、床に落ちていた石綿が再飛散し、3本/㎖という石綿濃度を示したこと、宇宙服に似た姿で作業をする必要がよく理解できるデータといえること等が記載されている。 (甲A35)⑼ 建築作業従事者の石綿関連疾患への罹患状況ア昭和46年の石綿取扱い事業場の監督指導結果昭和46年1月から3月までの石綿取扱い事業場の監督指導結果(監督事業場数は、鉱業2、建設業12、製造業174。石綿取扱い労働者数は、鉱 業3、建設業134、製造業3657)によれば、じん肺の有所見者率は、 全体では6.5%、業種別では、鉱業0%、建設業3.5%、製造業6.6%であった。 (甲A82、472)イ海老原による調査結果原判決書47頁3行目末尾を改行して「(甲A108、109)」を加える ほか、原判決書44頁15行目から47頁3行目までに記載のとおりである 、472)イ海老原による調査結果原判決書47頁3行目末尾を改行して「(甲A108、109)」を加える ほか、原判決書44頁15行目から47頁3行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ウ建設業労働者のじん肺症及びじん肺合併症発生件数等国は、労働者災害補償保険法に基づく保険給付等に基づき、平成16年度 以前においては、じん肺症又はじん肺症及びじん肺合併症の発生件数について、平成17年度以降は、それに加えて産業別の石綿関連疾患の発生件数について統計を取っている。その内容は、以下のとおりである。 建設業労働者のじん肺症発生件数(昭和53年度以前)又はじん肺症及びじん肺合併症発生件数(昭和54年度以降)は、別紙6-9-1のとお りである。なお、建設業の中にはずい道工事も含まれている。 平成17年度から平成26年度までの建設業労働者の石綿関連疾患の発生件数は、別紙6-9-2のとおりである。 (乙アA1054) ⑽ 建築現場における石綿粉じん曝露に関するその他の公表資料ア労働省専門家報告 労働省専門家報告(昭和53年9月)には、以下の記載がされている。 石綿曝露作業の従事者の数が最も多い業種は、石綿の消費量全体の約4分の3が建材に使用されている建設業である。石綿セメントの混練や断熱 材の吹付け等の作業は、石綿粉じんを空気中に発散させやすく、これらの 建設作業に従事する労働者の曝露濃度が労働衛生上の問題となるが、一般に1日の作業における石綿曝露作業の時間は短い。1日の作業時間中の石綿曝露作業の時間が比較的長いのは、織布等の製造その他石綿を原料として取り扱う作業であり、イギリスや米国で古くから石綿曝露を原因とする肺がん 業における石綿曝露作業の時間は短い。1日の作業時間中の石綿曝露作業の時間が比較的長いのは、織布等の製造その他石綿を原料として取り扱う作業であり、イギリスや米国で古くから石綿曝露を原因とする肺がんなどの健康障害が注目されてきたのは、石綿紡織作業であり、最近、 米国で調査の対象とされているのは、建築現場における断熱材等の取扱作業である。 また、労働省専門家報告には、前記⑻アないしウの石綿粉じん濃度の測定結果が掲載されている。 (甲A5、乙アA40) イ AIAによる勧告原判決書137頁末尾を改行して「(甲C1の405)」を加えるほか、原判決書136頁8行目から137頁25行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 3 石綿代替繊維に関する事実 次のとおり補正するほか、原判決書151頁12行目から168頁10行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書151頁14行目の「(前提事実5⑶オ)」、16行目の「前提事実5⑶ク)」を削り、17行目の「(前提事実5⑶オ)」を「(石綿を含有せず石綿代替繊維のみを含有する無石綿化製品又は石綿代替繊維を含有するが従前 の石綿含有率を低減させた石綿低減化製品)」と改め、同行目から18行目の「(前提事実5⑶オ)」を「(石綿繊維に代替し得る他の繊維)」と改める。 ⑵ 原判決151頁24行目末尾を改行し、「(甲A108、390の1、乙アB28、30、34)」を加える。 ⑶ 原判決152頁1行目冒頭から12行目末尾までを次のとおり改める。 「 環境庁は、昭和62年11月から昭和63年1月まで、アスベスト(石綿) 代替品の開発及び普及状況に関する調査を実施した。その調査結果の報告書 までを次のとおり改める。 「 環境庁は、昭和62年11月から昭和63年1月まで、アスベスト(石綿) 代替品の開発及び普及状況に関する調査を実施した。その調査結果の報告書である『アスベスト代替品のすべて』には、石綿代替繊維による代替化の状況について、次のように記載されている。①石綿セメントシート(石綿スレート、けい酸カルシウム板、屋根ふきスレート等)に関する石綿含有率を低下させた製品の製造、販売は、昭和50年代後半に開始され、このうち主と して建築物の内装に用いられるけい酸カルシウム板については、無石綿化製品が昭和61年から製造、販売されている。石綿スレート協会に加盟するメーカーの昭和61年度における無石綿化されたけい酸カルシウム板の製造割合は石綿を含むけい酸カルシウム板の1%に満たないが、今後需要の増大に伴い上昇することが予想される。代替原料の価格は一般に石綿より高く、 また代替原料は石綿と比較してセメントとの親和性が低い、分散性が劣るなどの理由により製造効率が低下することから、代替品の価格は石綿含有製品と比較して、おおむね20ないし50%高くなっている。②外装材については、旭硝子が、石綿含有率を製品の重量比で6%から3.5%に低下させた石綿低減化製品(商品名『ほんばん』)を昭和58年から製造、販売してお り、同社は、昭和63年4月には完全無石綿化した製品の生産を開始した。 また、他の業者も、倉庫、工場等の屋根材等として用いられることの多い大波板、建築物の内外装材及び化粧板基材として用いられるフレキシブルボードなどを無石綿化したものについて、それぞれ昭和59年度、昭和61年度から試験生産を行っている。③住宅用屋根ふき材については、大きなシェア を有する久保田鉄工が製品の無石綿化の研究 シブルボードなどを無石綿化したものについて、それぞれ昭和59年度、昭和61年度から試験生産を行っている。③住宅用屋根ふき材については、大きなシェア を有する久保田鉄工が製品の無石綿化の研究を行っているとされているが、販売には至っていない。 (甲A152、乙アA1036)」⑷ 原判決書152頁18行目の「(前提事実5⑶オ)」を削る。 ⑸ 原判決書153頁3行目末尾を改行し、「(乙アA108)」を加える。 ⑹ 原判決書153頁7行目の「建築物」を「構築物」と、16行目の「石綿化 粧セメント板」を「化粧石綿セメント板」と改める。 ⑺ 原判決書153頁17行目末尾を改行し、「(乙アA121)」を加える。 ⑻ 原判決書153頁21行目の「(上記1⑴ツ)」を削る。 ⑼ 原判決書154頁3行目末尾を改行し、「(乙ア111)」を加える。 ⑽ 原判決書154頁5行目の「(上記1⑴ト)」を削る。 ⑾ 原判決書154頁9行目末尾を改行し、「(乙アA1、1009)」を加える。 ⑿ 原判決書154頁19行目末尾を改行し、「(乙アA111)」を加える。 ⒀ 原判決書156頁18行目末尾を改行し、「(乙アA114の1及び2)」を加える。 ⒁ 原判決書159頁19行目の「胸膜内」を「胸膜腔内」と改める。 ⒂ 原判決書160頁6行目末尾を改行し、「(乙アA5、113)を加える。 ⒃ 原判決書160頁10行目の「アスベスト代替品の全て」を「アスベスト代替品のすべて」と改める。 ⒄ 原判決書162頁1行目の「サイズ(直径、長さ)や形状等」を「大きさ、形状、組成等」と改める。 ⒅ 原判決書162頁2行目末尾を改行し、「(甲A123、152、乙アA 改める。 ⒄ 原判決書162頁1行目の「サイズ(直径、長さ)や形状等」を「大きさ、形状、組成等」と改める。 ⒅ 原判決書162頁2行目末尾を改行し、「(甲A123、152、乙アA1036)」を加える。 ⒆ 原判決書162頁11行目の「胸膜肉腫の増加」を「胸膜肉腫の発生率に僅かな増加」と改める。 ⒇ 原判決書162頁17行目冒頭から18行目の「されてきた。」までを削る。 原判決書164頁7行目末尾を改行し、「(乙アA130)」を加える。 原判決書165頁6行目の「中皮腫が発生し」を「中皮腫の有意な増加が生じ」と改める。 原判決書165頁15行目冒頭から17行目末尾までを「グラスウールに曝露する米国の労働者を対象とする最近のコホート研究は、全ての原因又は全て のがんについて、地域死亡率に対する過剰死亡の証拠を示さなかった。」と改 める。 原判決書166頁4行目冒頭から6行目末尾までを「ロックウール及びスラグウールに曝露する米国及び欧州の労働者を対象とする最近の複数のコホート内症例対照研究は、ロックウールへの曝露に関連する肺がん又は中皮腫の発症リスクの上昇を示さなかった。」と改める。 原判決書167頁7行目末尾を改行し、「(乙アA6、129)」を加える。 原判決書167頁9行目の「中災防」を「中央労働災害防止協会(以下「中災防」という。)」と、「平成15年、」を「平成16年、」と改める。 原判決書168頁10行目末尾を改行し、「(乙アA128)」と改める。 4 海外における石綿規制のあり方とその経緯 次のとおり補正するほか、原判決書81頁19行目から84頁24行目までに記載のとおりであるからこれを引用す し、「(乙アA128)」と改める。 4 海外における石綿規制のあり方とその経緯 次のとおり補正するほか、原判決書81頁19行目から84頁24行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書83頁9行目の「昭和60年」から10行目の「禁止し、」までを「また、昭和62年(1987年)までに石綿吹付け作業等を禁止することとした。EUは、」と改める。 ⑵ 原判決書84頁24行目末尾を改行して次のとおり加える。 「⑹ カナダカナダは、クリソタイルの主要な生産国である。カナダは、平成元年(1989年)、クロシドライトを含む製品の広告、販売、輸入を原則として禁止した。他方、クリソタイルについては、一貫して、管理して使用すれば 安全であるという立場を採っている。なお、カナダは、アモサイトを含む製品の広告、販売、輸入については、一般消費用品等の特定の製品についてのみ禁止している。 (甲A67、乙アA115)」 5 我が国における石綿の製造等の禁止を巡る動向 次のとおり補正するほか、原判決書26頁13行目から27頁22行目までの とおりであるからこれを引用する。 ⑴ 原判決書26頁13行目冒頭の「イ」を「⑴」と、27頁2行目冒頭の「ウ」を「⑵」とそれぞれ改める。 ⑵ 原判決書27頁5行目の「上記イ」を「前記⑴」と改める。 ⑶ 原判決書27頁22行目末尾を改行して「(甲A67の1、同1436の2 8、同1471の2、同1476、乙アA126、1006、乙アB109)」を加える。 第2 本件被災者らの稼働状況、発症した石綿関連疾患、相続等後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 1 被災者A(番号1) アB109)」を加える。 第2 本件被災者らの稼働状況、発症した石綿関連疾患、相続等後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。 1 被災者A(番号1) ⑴ 稼働状況被災者Aは、昭和40年春頃から平成15ないし16年頃まで、内装工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Aは、石綿関連疾患である石綿肺(じん肺法4条2項のじん肺管理区 分(以下「管理区分」という。)の管理四)を発症し、平成18年2月23日が療養開始日とされた。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Aは、令和2年5月22日、前記⑵の石綿関連疾患を原因とする肺炎によって死亡した。 イ控訴人A1、控訴人A2、控訴人A3、A4及びA5は、いずれも、被災者Aの子ないし養子である。 ウ A4は、控訴人A1に対し、令和2年7月21日、A4が有する被災者Aの相続に係る相続分を譲渡した。 エ A5は、控訴人A1に対し、令和2年8月24日、A5が有する被災者A の相続に係る相続分を譲渡した。 (甲D1) 2 被災者B(番号3)⑴ 稼働状況被災者Bは、昭和45年1月から昭和47年5月まで、配管工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Bは、石綿関連疾患である悪性胸膜中皮腫を発症し、平成21年11月18日からその治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Bは、平成23年9月9日、前記⑵の疾患によって死亡した。 イ控訴人B1は、被災者Bの死亡時における被災者Bの妻であり、B2及びB3は、いずれも、被災者Bの子 続等ア被災者Bは、平成23年9月9日、前記⑵の疾患によって死亡した。 イ控訴人B1は、被災者Bの死亡時における被災者Bの妻であり、B2及びB3は、いずれも、被災者Bの子である。 (甲D3) 3 被災者C(番号5)⑴ 稼働状況 被災者Cは、昭和35年頃から昭和54年頃まで、大工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Cは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成17年7月22日からその治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Cは、平成30年12月28日、腹膜偽粘液腫によって死亡した。 イ控訴人C1は、被災者Cの死亡時における被災者Cの妻であり、控訴人C2及び控訴人C3は、いずれも、被災者Cの子である。 (甲D5) 4 被災者D(番号7) ⑴ 稼働状況被災者Dは、昭和40年頃から平成15年11月29日まで、大工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Dは、石綿関連疾患である胸膜中皮腫を発症し、右胸水貯留、低酸素 血症のため釧路市医師会病院に入院し、平成19年12月17日から釧路総合病院での治療を開始した⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Dは、平成22年1月24日、前記⑵の胸膜中皮腫によって死亡した。 イ控訴人D1は、被災者Dの妻であり、D2及びD3は、いずれも、被災者Dの子である。 ウ控訴人D1、D2及びD3は、平成24年1月31日、被災者Dに係る石綿粉じんへの曝露を原因とした疾病に基づく損害賠償請求権について、控訴人D1がこれを相続する旨の遺産分割協議をした。 (甲D7 人D1、D2及びD3は、平成24年1月31日、被災者Dに係る石綿粉じんへの曝露を原因とした疾病に基づく損害賠償請求権について、控訴人D1がこれを相続する旨の遺産分割協議をした。 (甲D7) 5 被災者E(番号8)⑴ 稼働状況被災者Eは、昭和47年7月から平成18年9月まで、大工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Eは、石綿関連疾患である胸膜中皮腫を発症し、平成18年10月18日にはその検査のため医療機関を受診した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Eは、平成20年10月14日、前記⑵の胸膜中皮腫によって死亡 した。 イ控訴人E1は、被災者Eの死亡時における被災者Eの妻であり、E2は、被災者Eの養子である。 ウ控訴人E1及びE2は、平成24年2月3日、被災者Eに係る石綿粉じんへの曝露を原因とした疾病に基づく損害賠償請求権について、控訴人E1がこれを相続する旨の遺産分割協議をした。 (甲D8) 6 被災者F(番号9)⑴ 稼働状況被災者Fは、昭和49年6月から昭和54年12月まで、左官工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。また、被災者Fは、とびとして、昭 和55年5月から平成16年9月30日まで、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Fは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成21年5月14日からその治療を開始した。 (甲D9) 7 被災者G(番号11)⑴ 稼働状況被災者Gは、平成元年6月から平成20年3月まで、配管工として建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石 した。 (甲D9) 7 被災者G(番号11)⑴ 稼働状況被災者Gは、平成元年6月から平成20年3月まで、配管工として建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Gは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成15年3月11日からその治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Gは、平成24年2月18日、前記⑵の肺がんによって死亡した。 イ控訴人G1は、被災者Gの妻であり、G2、G3及びG4は、いずれも、 被災者Gの子である。 ウ控訴人G1、G2、G3及びG4は、平成24年3月25日、被災者Gに係る石綿粉じんへの曝露を原因とした疾病に基づく損害賠償請求権について、控訴人G1がこれを相続する旨の遺産分割協議をした。 (甲D11) 8 被災者H(番号13)⑴ 稼働状況被災者Hは、昭和29年から平成20年12月まで、大工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日 被災者Hは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成21年11月20日からその治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Hは、平成23年8月25日付け自筆証書によって、被災者Hの全部の遺産を控訴人H1に相続させる旨の遺言をした。 イ被災者Hは、平成23年9月16日、前記⑵の肺がんによって死亡した。 (甲D13) 9 被災者I(番号14)⑴ 稼働状況被災者Iは、昭和42年10月から平成21年3月まで、配管工として、建 築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Iは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平 は、昭和42年10月から平成21年3月まで、配管工として、建 築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Iは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成21年7月31日からその治療を開始した。 (甲D14) 10 被災者J(番号15) ⑴ 稼働状況被災者Jは、昭和47年3月から昭和48年頃まで職業訓練所で大工の実地研修を受け、昭和51年から平成14年12月まで、大工ないし解体工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日 被災者Jは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成15年9月4日からその治療を開始した。 (甲D15) 11 被災者K(番号16)⑴ 稼働状況 被災者Kは、昭和42年から平成14年頃まで、板金工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Kは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成14年3月7日からその治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Kは、平成16年4月3日、前記⑵の肺がんによって死亡した。 イ控訴人K1は、被災者Kの妻であり、K2及びK3は、いずれも、被災者Kの子である。 ウ控訴人K1、K2及びK3は、平成24年1月20日、被災者Kが就労中 の石綿粉じん吸入により肺がんに罹患して死亡したことによる損害賠償請求権について、控訴人K1がこれを相続する旨の遺産分割協議をした。 (甲D16) 12 被災者L(番号17)⑴ 稼働状況 被災者Lは、昭和25年4月から平成12年まで、塗装工として、建築作業 に従事し、石綿粉じんに曝露 。 (甲D16) 12 被災者L(番号17)⑴ 稼働状況 被災者Lは、昭和25年4月から平成12年まで、塗装工として、建築作業 に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Lは、石綿関連疾患である石綿肺(管理区分の管理四)を発症し、平成22年10月18日にはその治療を受けていた。 ⑶ 死亡日及び相続等 ア被災者Lは、令和元年9月29日、前記⑵の石綿関連疾患を原因とする低酸素脳症によって死亡した。 イ控訴人L9は、被災者Lの妻であり、控訴人L6は、被災者Lの姉であり、控訴人L10は、被災者Lの妹であり、控訴人L1及びL2は、いずれも被災者Lの兄である亡L11の子であり、控訴人L3、控訴人L4及び控訴人 L5は、いずれも被災者Lの姉である亡L12の子であり、控訴人L7及び控訴人L8は、いずれも被災者Lの姉である亡L13の子である。 (甲D17) 13 被災者M(番号18)⑴ 稼働状況 被災者Mは、昭和35年7月から平成11年12月まで、ダクト工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Mは、石綿関連疾患である肺がんを発症したところ、平成20年12月3日には、上記肺がんの原因となった石綿肺についての検査を受けていた。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Mは、平成29年7月4日、前記⑵の肺がんによって死亡した。 イ M4は、被災者Mの死亡時における被災者Mの妻であり、控訴人M1は、被災者Mの子である。 ウ M4は、令和2年1月19日、死亡した。 エ控訴人M1、控訴人M2及び控訴人M3は、いずれも、M4の子である。 訴人M1は、被災者Mの子である。 ウ M4は、令和2年1月19日、死亡した。 エ控訴人M1、控訴人M2及び控訴人M3は、いずれも、M4の子である。 (甲D18) 14 被災者N(番号20)⑴ 稼働状況被災者Nは、昭和45年6月から昭和63年11月まで、はつり工及び解体工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Nは、石綿関連疾患である石綿肺(管理区分の管理三イ)及びその合併症としての続発性気管支炎を発症し、平成22年5月7日からその治療を開始した。 (甲D20) 15 被災者O(番号21)⑴ 稼働状況被災者Oは、昭和39年4月から平成17年2月まで、大工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日 被災者Oは、石綿関連疾患である石綿肺(管理区分の管理二)及びその合併症としての続発性気管支炎を発症し、平成20年4月8日からその治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Oは、平成27年11月26日、前記⑵の石綿肺を原因とする肺炎 によって死亡した。 イ控訴人O1は、被災者Oの妻であり、控訴人O2及び控訴人O3は、いずれも、被災者Oの子である。 (甲D21) 16 被災者P(番号22) ⑴ 稼働状況 被災者Pは、昭和37年から平成17年1月まで、大工及びはつり工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Pは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成21年11月10日にはその治療を受けていた。 ⑶ 死亡 築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Pは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成21年11月10日にはその治療を受けていた。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Pは、平成23年4月15日、前記⑵の肺がんによって死亡した。 イ控訴人P1及び控訴人P2は、いずれも、被災者Pの子である。 (甲D22) 17 被災者Q(番号23) ⑴ 稼働状況被災者Qは、昭和53年6月から昭和54年8月まで及び平成2年6月から平成6年12月まで、大工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Qは、昭和55年6月から昭和59年5月まで、保温工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Qは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成20年3月26日にはその治療を受けていた。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Qは、平成22年4月22日、前記⑵の肺がんによって死亡した。 イ控訴人Q1は、被災者Qの妻であり、Q2及びQ3は、いずれも、被災者Qの子である。 ウ控訴人Q1、Q2及びQ3は、平成24年4月9日、被災者Qに係る石綿粉じんへの曝露を原因とした疾病に基づく損害賠償請求権について、控訴人Q1がこれを相続する旨の遺産分割協議をした。 (甲D23) 18 被災者R(番号24)⑴ 稼働状況被災者Rは、昭和41年4月から平成20年12月まで、はつり工及び解体工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日 被災者Rは、石綿関連疾患である石綿肺(管理区分の管理三ロ)及びその合 12月まで、はつり工及び解体工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日 被災者Rは、石綿関連疾患である石綿肺(管理区分の管理三ロ)及びその合併症としての続発性気管支炎を発症し、平成23年8月3日にはその治療を受けていた。 (甲D24) 19 被災者S(番号25) ⑴ 稼働状況被災者Sは、昭和58年6月から平成6年3月まで、解体工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Sは、石綿関連疾患である石綿肺(管理区分4)を発症していること が平成23年10月27日には確認されている。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Sは、平成31年1月10日、前記⑵の肺がんによって死亡した。 イ控訴人S1は、被災者Sの妻であり、S2及びS3は、いずれも、被災者Sの子である。 ウ控訴人S1、S2及びS3は、令和2年5月6日、被災者Sに係る石綿粉じんへの曝露を原因とした疾病に基づく損害賠償請求権について、控訴人S1がこれを相続する旨の遺産分割協議をした。 (甲D25) 20 被災者T(番号26) ⑴ 稼働状況 被災者Tは、昭和49年4月頃から昭和58年11月頃まで及び平成8年1月から同年3月まで、大工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Tは、石綿関連疾患である胸膜中皮腫を発症し、平成24年1月28日からその治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Tは、平成24年8月28日、前記⑵の胸膜中皮腫によって死亡した。 イ控訴人T1は、被災者Tの妻であり、控訴人T2、控訴人T3、控 治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Tは、平成24年8月28日、前記⑵の胸膜中皮腫によって死亡した。 イ控訴人T1は、被災者Tの妻であり、控訴人T2、控訴人T3、控訴人T4及び控訴人T5は、いずれも、被災者Tの子である。 (甲D26) 21 被災者U(番号27)⑴ 稼働状況被災者Uは、昭和52年9月から平成25年まで、塗装工として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Uは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成21年3月12日からその治療を開始した。 (甲D27) 22 被災者V(番号28) ⑴ 稼働状況被災者Vは、昭和29年頃から平成12年12月まで、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Vは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成16年4月16日か らその治療を開始した。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Vは、平成29年12月23日、急性心筋梗塞によって死亡した。 イ控訴人V1は、被災者Vの妻であり、控訴人V2は、被災者Vの子である。 (甲D28) 23 被災者W(番号29) ⑴ 稼働状況被災者Wは、昭和40年2月から平成18年7月まで、配管工又は施工管理技士として、建築作業に従事し、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 石綿関連疾患名及び療養開始日被災者Wは、石綿関連疾患である肺がんを発症し、平成25年2月19日に はその検査を受けた。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Wは、平成26年11月30日、前記⑵の肺がんを原因とする放射性肺臓炎によって死亡した。 イ控 25年2月19日に はその検査を受けた。 ⑶ 死亡日及び相続等ア被災者Wは、平成26年11月30日、前記⑵の肺がんを原因とする放射性肺臓炎によって死亡した。 イ控訴人W1は、被災者Wの妻であり、控訴人W2は、被災者Wの子である。 (甲D29) 第2節被控訴人らの注意義務違反第1 被控訴人らの負う注意義務ある製品を製造又は販売する者(以下「製造販売者」という。)は、その危険性を含め製品の特性や原料に関する情報等を入手しやすく、欠陥の発生や欠陥による被害の発生を防止しやすい立場にあって、製品の危険性を予見し、これを管理 する手段と能力を十分に有しているといえるのに対し、市場に流通する製品を使用する者(以下「使用者」という。)は、一般に、当該製品に内在する危険を認識し、これを防ぐ手段を十分に有していないから、製品の製造販売者は、製品の使用者に対し、製品について社会通念上当然に具備すると期待される安全性を確保すべき注意義務を負っているというべきである。特に、使用者等の生命、身体の 安全に関わる事柄については、侵害される法益の重大性や、これが侵害された場合に、取り返しがつかないものであったりすることに鑑みれば、最高、最新の学問、技術水準に基づいて当該製品から発生する危険を予見し、被害発生を防止するために必要かつ相当な対策を適時かつ適切に講ずべき高度の注意義務を負っているというべきである。また、大量生産され、市場に流通する製品については、 製造販売者は、一般的に、自らの利益を上げるために自己の製品の宣伝活動を行っており、製品の使用者は、このような宣伝活動等を通じた当該製品及びその製造販売者に対する安全性を含めた信頼に基づいてこれを使用するものであり、こ 、自らの利益を上げるために自己の製品の宣伝活動を行っており、製品の使用者は、このような宣伝活動等を通じた当該製品及びその製造販売者に対する安全性を含めた信頼に基づいてこれを使用するものであり、このことによっても上記のような高度の注意義務を負うべきことが相当とされるものである。 第2 被控訴人らの予見可能性 1 石綿関連疾患に関する医学的知見⑴ 石綿肺ア石綿粉じん曝露と石綿肺の発症に関する医学的知見が確立したのは、昭和32年度報告が公表された昭和33年3月31日頃であると認められる。そ の理由は、次のとおり補正するほか、原判決書170頁7行目から171頁 18行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 原判決書170頁7行目の「上記1⑴」を「前記第1節第1の1⑴」と、17行目の「上記1⑵」を「前記第1節第1の1⑵」と、171頁14行目の「上記1」を「前記第1節第1の1」と改める。 原判決書171頁17行目の「の時期」を「3月31日頃」と改める。 イこの点、控訴人らは、保険院調査報告が公表された昭和15年の時点で医学的知見が確立した旨主張する。しかし、前記アのとおり、海外における石綿肺の症例報告等の紹介はあったものの、保険院調査が行われた頃までに、我が国における症例報告はなかったこと、保険院調査報告が我が国において初めて行われた本格的な調査であったこと、保険院調査報告においても、同 調査は石綿肺の概観の報告にすぎず、今後更に深く掘り下げる必要がある旨述べられていたように、他の研究者による更なる検証や研究が必要であるとされていたことからすると、同時点をもって、医学的知見が確立したとまでは認めることができず、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 ⑵ いたように、他の研究者による更なる検証や研究が必要であるとされていたことからすると、同時点をもって、医学的知見が確立したとまでは認めることができず、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 ⑵ 肺がん及び中皮腫 石綿粉じん曝露と肺がん及び中皮腫の発症に関する医学的知見が確立したのは、昭和47年頃であると認められる。その理由は、次のとおり補正するほか、原判決書171頁20行目から176頁6行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 ア原判決書171頁20行目、172頁19行目及び173頁12行目の 「上記1⑴」を「前記第1節第1の1⑴」と改める。 イ原判決書173頁23行目の「セリコフ」の次に「ら」を加え、同行目から24行目までの「昭和39年から昭和48年まで」を「昭和35年から昭和46年まで」に改める。 ウ原判決書174頁5行目の「昭和48年IARC報告」を「昭和47年I ARC報告」と改める。 エ原判決書174頁17行目の「上記1⑵」を「前記第1節第1の1⑵」と改める。 オ原判決書176頁2行目の「上記1」を「前記第1節第1の1」と、3行目の「昭和48年IARC報告」から4行目の「までには」を「昭和47年IARC報告により石綿と肺がん及び中皮腫の発症との間の因果関係が認 められ、その内容が坂部によって紹介された昭和47年頃には」と改める。 ⑶ 小括以上のとおり、石綿肺の医学的知見は昭和33年3月31日頃、肺がん及び中皮腫の医学的知見は昭和47年頃に確立したところ、その根拠となる研究報告は、公刊されており、誰でも入手可能なものであった。肺がん及び中皮腫の 医学的知見の根拠となった昭和47年IARC報告やその内容を踏まえた研究論文集であるIAR ところ、その根拠となる研究報告は、公刊されており、誰でも入手可能なものであった。肺がん及び中皮腫の 医学的知見の根拠となった昭和47年IARC報告やその内容を踏まえた研究論文集であるIARC論文は、昭和48年には公表されている。 また、国は、昭和48年労働省通達において、石綿の抑制濃度を5本/㎤と定めたが、通達発出の理由として、石綿が、肺がん、中皮腫等を発生させることが明らかとなったこと等により、各国の規制においても気中石綿粉じん濃度 を抑制する措置が強化されつつあることが挙げられていた。 前記第1のとおり、被控訴人らは、石綿含有建材の製造販売者として高度の注意義務を負っていることからすると、昭和47年IARC報告及びIARC論文の内容や昭和48年労働省通達の内容は、当然認識すべきものであったといえる。 したがって、被控訴人らは、遅くとも昭和48年の時点において、石綿粉じんに曝露することにより、石綿関連疾患に罹患する危険があることを認識することが可能であったと認められる。 2 建築作業従事者における石綿関連疾患罹患の危険性⑴ 建築現場における石綿粉じん曝露の危険性 ア前記認定事実によれば、建築現場における石綿粉じん曝露の危険性に関し、 以下の事情があったものということができる。 我が国における石綿の輸入量は、昭和30年代後半に10万トンを超えた後、昭和40年代に入って飛躍的に増加し、昭和49年には35万2110トンに達して輸入量のピークを迎えた。その後は減少したものの、平成5年までの間、毎年20万トン以上の大量の石綿が輸入されており、そ の約7割が建材に使用された。(前記第1節第1の2⑴)石綿含有建材には、多くの種類があり、建築物の様々な箇所で使用されていた。 までの間、毎年20万トン以上の大量の石綿が輸入されており、そ の約7割が建材に使用された。(前記第1節第1の2⑴)石綿含有建材には、多くの種類があり、建築物の様々な箇所で使用されていた。石綿含有建材のうち、吹付け石綿は、石綿含有量が60%から70%と高く、著しく発じん量の多い製品であったが、昭和40年代に施工量が飛躍的に増加し、昭和44年には1万トンを超え、昭和47年には2 万0987トンに達して施工量のピークを迎えた。その後、昭和50年には、5%を超える石綿含有率の石綿吹付け作業が禁止されたが、同年までの間に、施工量合計約12万7000トンの大量の吹付け石綿が使用された。また、石綿含有成形板は、建築現場での使用について切断、穿孔、研磨等の加工が予定されているものであり、加工の際に石綿粉じんが発散す るものであるが、昭和40年代以降、その加工に用いる電動工具の販売台数が急増した。石綿含有成形板の加工時に電動工具を用いると、発散する石綿粉じんの量が増加することから、電動工具の普及に伴い、加工時に発散する粉じんの量も増加した。(前記第1節第1の2⑵、⑸、⑹、⑻)建築作業は、複数の種類の作業を同時又は異時に配列して一つの工事を 完成させるものであることから、建築現場では、様々な職種の建築作業従事者が、同時に並行して作業を行うことが多い。そして、石綿は、空中に留まって浮遊する時間が長く、落下後も容易に再飛散し、肉眼的にはキラキラもせず、無臭でも、高濃度曝露を受けることがあるものである。そのため、建築作業者は、自らが直接取り扱う石綿含有建材から発散した石綿 粉じんに曝露するだけではなく、他の建築作業者の作業により発生する石 綿粉じんにも曝露する状況にあった。(前記第1節第1の2⑶、⑷、 接取り扱う石綿含有建材から発散した石綿 粉じんに曝露するだけではなく、他の建築作業者の作業により発生する石 綿粉じんにも曝露する状況にあった。(前記第1節第1の2⑶、⑷、⑻サ)新築工事の建築現場では、当初、屋外作業として着手されるが、木造建物においては屋根下地工事や外壁下地工事がなされた後、鉄骨造建物や鉄筋コンクリート造建物においては躯体工事がなされた後には、周囲を囲まれた状態になり、さらに、その周囲にも養生シートが張られる場合が多く、 屋内の建築現場における気密性が増していき、石綿含有建材から発散した石綿粉じんが滞留していた。(前記第1節第1の2⑷、⑸)イ以上の事情に照らすと、昭和40年代以降、屋内の建築現場は、石綿含有建材から発散される石綿粉じんに曝露する危険性の高い作業環境であったと認められる。 ⑵ 建築作業従事者における粉じんマスクの着用状況昭和60年代の建築現場では、吹付け工や一部のはつり工を除き、大半の建築作業従事者は効果のある防じんマスクを着用していなかったが、その理由は、息苦しい、短時間作業では励行しにくい、面倒であるからといったものであり、その他の作業が「粉じん作業」と認識されていなかったことも影響していると 考えられる(前記第1節第1の2⑺)。 このような防じんマスクを着用しなかった理由等からすると、それより前の昭和40年代、昭和50年代においても、少なくとも昭和60年代と同様に、あるいはそれ以上に、大半の建築作業従事者が防じんマスクを着用していなかったものと推認することができ、これに反する証拠はない。 ⑶ 建築作業時における石綿粉じん濃度の測定結果昭和46年に発表された木村の論文に掲載された工場における石綿板切断に係る石綿粉じん濃度の測定 することができ、これに反する証拠はない。 ⑶ 建築作業時における石綿粉じん濃度の測定結果昭和46年に発表された木村の論文に掲載された工場における石綿板切断に係る石綿粉じん濃度の測定結果(前記第1節第1の2⑻ア)、昭和51年労働省通達に添付された「石綿関連資料」に掲載された建設工事における石綿含有量50%の吹付け材の吹付け作業中の石綿粉じん濃度の測定結果(同⑻イ)、 英国労働省工場監督庁による測定結果(同⑻ウ)をみると、その数値は、昭和 48年労働省通達において示された石綿の抑制濃度である5本/㎤を超えるものであった。 ⑷ 建築作業従事者の石綿関連疾患への罹患状況ア昭和46年における石綿取扱作業場のじん肺罹患状況に関する調査において、建設業の有所見者率は3.5%であったが(前記第1節第1の2⑼ア)、 これは、石綿製造業の次に高いものであった。 イ海老原による昭和57年から昭和62年における建築作業従事者の胸膜肥厚斑の発生状況に関する調査によると、事務系作業従事者に胸膜肥厚斑の所見が認められた者が一人もいなかったのに対し、建築作業従事者の0.82%(47人)に胸膜肥厚斑の所見が認められ、平成9年の調査によると、 建築作業従事者の1.62%(92人)、平成17年及び平成18年の調査によると、建築作業従事者の6.75%(423人)に胸膜肥厚斑の所見が認められた(前記第1節第1の2⑼イ)。このように、海老原の調査によると、建築作業従事者には、高い割合で石綿曝露の指標となる胸膜肥厚斑の所見が認められ、その所見率も年々増加していることが認められる。 ウ建設業労働者のじん肺症発生件数(昭和53年度以前)又はじん肺症及びじん肺合併症発生件数(昭和54年度以降)は、昭和45 所見が認められ、その所見率も年々増加していることが認められる。 ウ建設業労働者のじん肺症発生件数(昭和53年度以前)又はじん肺症及びじん肺合併症発生件数(昭和54年度以降)は、昭和45年度には77件であったが、昭和46年度に100件を、昭和49年度に200件を、昭和51年度に400件をそれぞれ超え、昭和52年度に516件に達した。その後、平成15年度に至るまで増減を繰り返したが、多い年度では700件を 超え、少ない年度でも200件を下回ることはなかった。建設業の中にはずい道工事も含まれることから、この件数が全て石綿肺の発生件数ということはできないものの、石綿肺の発生件数がかなりの割合を占めるものと推測される。(前記第1節第1の2⑼ウ)。 また、産業別の石綿関連疾患発生件数の統計のある平成17年度以降、建 設業労働者の石綿関連疾患の発生件数は、同年度が299件、平成18年度 が1105件であり、平成19年度から平成26年度までは500件台又は600件台で推移した。(前記第1節第1の2⑼ウ)。 エ以上の事情に加え、前記の石綿関連疾患の発症時期を併せ考えると、建築作業従事者において、昭和40年代以降の石綿粉じん曝露を原因とする石綿関連疾患の発症が増加したことが推察される。 ⑸ 小括以上によれば、昭和40年代以降の建築現場は、石綿含有建材から発散される石綿粉じんに曝露する危険性が非常に高い作業環境であったが、そこで建築作業に従事する大半の作業者は、このような危険な現場であることの認識がなく、そのため効果のある防じんマスクを着用していなかったことが認められる。 したがって、昭和40年代以降、建築作業従事者には、石綿含有建材から発散する石綿粉じんに曝露することにより、石 識がなく、そのため効果のある防じんマスクを着用していなかったことが認められる。 したがって、昭和40年代以降、建築作業従事者には、石綿含有建材から発散する石綿粉じんに曝露することにより、石綿関連疾患に罹患する広範かつ重大な危険が生じていたということができる。このことは、建築作業従事者の石綿関連疾患への罹患状況によっても裏付けられている。 3 前記2(建築作業従事者における石綿関連疾患罹患の危険性)に関する被控訴 人らの予見可能性⑴ 屋内の建築現場における建築作業従事者についてア前記2⑴及び⑵に記載した事情、すなわち、昭和40年代以降、石綿含有建材の使用量が増加し、電動工具の普及とあいまって、石綿含有建材から発散する石綿粉じんが増加したこと、建築作業者は、自らが直接取り扱う石綿 含有建材から発散した石綿粉じんに曝露するだけではなく、他の建築作業者の作業により発生する石綿粉じんにも曝露する状況にあったこと、建築工事の進行に伴い、屋内の建築現場は、気密性が増し、石綿粉じんが滞留していたこと、大半の建築作業従事者は、危険な現場であることの認識がなく、防じんマスクを着用していなかったことなどは、いずれも被控訴人らの製造販 売する石綿含有建材の建築現場における使用状況に関する事実である。そし て、石綿含有建材は、出荷された状態のまま、そっと飾られるようなものではなく、建築資材として使用されていくものであって、被控訴人らは、前記第1のとおり、使用者の生命、身体に対する危険性を有する石綿含有建材の製造販売者として、その使用者に対し、製品の安全性についての高度の注意義務を負っているのであるから、自ら製造販売した石綿含有建材が、建築現 場でどのように使用されているかを把握し、具体的な使用状 製造販売者として、その使用者に対し、製品の安全性についての高度の注意義務を負っているのであるから、自ら製造販売した石綿含有建材が、建築現 場でどのように使用されているかを把握し、具体的な使用状況における安全性を確保するために、上記の各事情を当然に認識しておくべきであったし、かつ、これらを認識することが可能であったと認められる。 また、前記2⑶の昭和46年に発表された木村の論文に掲載された工場における石綿板切断に係る石綿粉じん濃度の測定結果(前記第1節第1の2の ⑻ア)は、昭和48年労働省通達において定められた石綿の抑制濃度である5本/㎤を超えるものであったが、この論文が掲載された雑誌は、公刊されており、誰でも入手可能なものであったから、被控訴人らにおいては、遅くとも上記通達の発出された昭和48年には、屋内での建築現場において、通達で定められた抑制濃度を超える石綿粉じん濃度が測定されていることを 認識しておくべきであったし、かつ、認識することが可能であったと認められる。 そして、被控訴人らは、石綿関連疾患に関する医学的知見の点においても、前記第1のとおり、遅くとも昭和48年の時点で、石綿粉じんに曝露することにより、石綿関連疾患に罹患する危険があることを認識することが可能で あったと認められる。 以上によれば、被控訴人らは、遅くとも昭和48年の時点で、屋内の建築現場における建築作業従事者について、石綿含有建材から発散される石綿粉じんに曝露し、石綿関連疾患に罹患する危険性が生じていたことを認識しておくべきであったし、かつ、認識することが可能であったと認められる。 イなお、石綿吹付け作業に従事する者については、前記アで説示した内容に 加え、前記第1節第1の2で引用して説示する昭和 、認識することが可能であったと認められる。 イなお、石綿吹付け作業に従事する者については、前記アで説示した内容に 加え、前記第1節第1の2で引用して説示する昭和46年に発表された瀬良の論文において、石綿吹付け作業については、強力な予防指導が必要であると思われる旨の報告がなされていたとの事情が認められ、より早い時期において予見可能であったとも考えられるが、本件被災者らには、石綿吹付け作業に従事する吹付け工は含まれていない。 ⑵ 屋外の建築現場における建築作業従事者についてア屋外における石綿粉じん濃度の測定結果としては、前記第1節第1の2⑻エの桜井、東らによる測定結果(以下「測定結果①」という。)、同⑻オの海老原らの測定結果(以下「測定結果②」という。)同⑻カの久永らによる測定結果(以下「測定結果③」という。)、同⑻キの平成4年労働省通達に添付さ れた資料の測定結果(以下「測定結果④」という。)、同⑻クの建設業労働災害防止協会による測定結果(以下「測定結果⑤」という。)、同⑻ケのBKレポートの測定結果(以下「測定結果⑥」という。)、同⑻コの外山らによる測定結果(以下「測定結果⑦」という。)、がある。 イ国は、石綿粉じんの濃度について、前記第1章第2節第7の1のとおり、 昭和48年労働省通達で、抑制濃度の規制値を5本/㎤と指導することを指示し、昭和50年労働省告示で、抑制濃度の規制値を5本/㎤と定め、昭和51年労働省通達で、当面、2本/㎤(クロシドライトにあっては0.2本/㎤)以下の環気中粉じん濃度を目途とするように指導することを指示し、昭和59年労働省通達で、管理濃度を2本/㎤とし、昭和63年労働省告示 で、管理濃度を2本/㎤と定め、平成16年10月1日、平 ㎤)以下の環気中粉じん濃度を目途とするように指導することを指示し、昭和59年労働省通達で、管理濃度を2本/㎤とし、昭和63年労働省告示 で、管理濃度を2本/㎤と定め、平成16年10月1日、平成16年労働省告示で、管理濃度を0.15本/㎤と定めた。前記の測定結果①から⑦のうち、2本/㎤を超える測定結果は、測定結果①及び測定結果②にあるが、測定結果②は平成19年に出版された書籍に記載されたものであり、平成16年労働省告示が発出される前に、被控訴人らが認識し得なかったものである。 測定結果①については主に石綿含有建材の切断作業をする者につきその作 業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したものであり、この測定結果をもって、屋外建築作業に従事する者が就業時間を通じて当該濃度の石綿粉じんにばく露していたということはできない。 ウ日本産業衛生協会は、平成13年、石綿を発がん物質と分類し、評価値として0.15本/㎤を勧告したが、その意味は、労働者が1日8時間、週4 0時間程度、50年間にわたり0.15本/㎤のクリソタイルのみの石綿粉じんにばく露したときに、1000人に1人、過剰発がんリスクが発生するというものである。そうすると、上記の数値以上の濃度の石綿粉じんに短時間ばく露することにより、直ちに上記の過剰発がんリスクが発生するというものではない。また、測定結果①、②、⑤、⑥、⑦には0.15本/㎤以上 のものが相当数あるが、測定結果①及び⑤については主に石綿含有建材の切断作業をする者につきその作業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したものであり、測定結果⑥については測定時間等の測定条件の詳細が明らかでないから、これらの測定結果をもって、屋外建築作業に従事する者が就業時間を通じて当該濃度の 限られた時間の個人ばく露濃度を測定したものであり、測定結果⑥については測定時間等の測定条件の詳細が明らかでないから、これらの測定結果をもって、屋外建築作業に従事する者が就業時間を通じて当該濃度の石綿粉じんにばく露していたということはで きない。測定結果②は平成19年に出版された書籍に記載されたものであり、測定結果⑦は平成17年に報告されたものであって、いずれも平成16年労働省告示が発出される前に、被控訴人らが認識し得なかったものである。そして、測定結果③及び④は、いずれも0.15本/㎤を下回るものである。 エ前記アの屋外建築作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果は、全体として屋 内の作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果を大きく下回るところ、これは、屋外の作業場においては、屋内の作業場と異なり、風等により自然に換気がされ、石綿粉じん濃度が薄められるためであることがうかがわれる。 オ以上によれば、前記アの石綿粉じん濃度の測定結果に0.15本/㎤を上回る測定結果があることをもって、被控訴人らが、屋外建築作業に従事する 者に石綿関連疾患に罹患する危険が生じていることを認識することができ たということはできない。 第3 警告義務 1 警告義務の内容及び履行方法⑴ 被控訴人らの製造販売する石綿含有建材は、加工等の際に石綿粉じんを発散し、石綿関連疾患に罹患する危険性のある製品である。このことから、被控訴 人らは、前記第1の注意義務の一環として、人体に対する有害な影響を防止するために、石綿含有建材に内在する危険性の内容及び回避手段について警告する義務(以下「警告義務」という。)を負うものと認められる。 具体的には、①石綿含有建材には石綿が含有されていること、②石綿含有建材の加工等により発散する石綿粉 険性の内容及び回避手段について警告する義務(以下「警告義務」という。)を負うものと認められる。 具体的には、①石綿含有建材には石綿が含有されていること、②石綿含有建材の加工等により発散する石綿粉じんに曝露すると、石綿肺、肺がん、中皮腫 等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること、③そのような危険を回避するためには、石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業を行う際に、必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを警告する必要があるものと認められる。 警告の履行方法としては、石綿含有建材の建築現場への通常の搬入方法に応 じ、容器に入れられて又は包装された状態で搬入される製品については、個々の容器又は包装の上に、容器に入れられたり包装されたりすることなく搬入される製品については、個々の建材の上に、それぞれ表示するのが相当である(とりわけ石綿含有建材の容器又は包装に警告表示をすることは、建材自体の性質を変更するものでも、特段の技術を要するものでもないから、石綿含有建材を 製造販売する者がごく容易に行うことができるのであって、被控訴人らの中にも、同趣旨の主張をしている者がいる。)。 ⑵ このような警告義務は、石綿含有建材を使用する者に対する私法上の義務であり、石綿含有建材の製造販売者が安衛法57条に基づいて負う公法上の義務である警告表示義務とは異なるものである。そのため、これらの義務の内容は 必ずしも一致するものではなく、公法上の警告表示義務を遵守していたことを もって、上記の私法上の警告義務を履行していたといえるものではないから、これをもって義務違反がなかったといえるものでもない。 2 警告義務の相手方⑴ 被控訴人らは、建築工事において、石綿含有建 て、上記の私法上の警告義務を履行していたといえるものではないから、これをもって義務違反がなかったといえるものでもない。 2 警告義務の相手方⑴ 被控訴人らは、建築工事において、石綿含有建材を当初に取り扱う者に対し、警告義務を負うことはもとより、石綿含有建材が一旦使用された後に当該工事 において当該建材に配線や配管のため穴を開ける作業等をする後続作業者や、当該工事においてこれらの作業等とその付近において並行して作業等をする者に対しても、警告義務を負うものと解する。なぜなら、建物工事の現場において、石綿関連疾患を発症する危険があることは、石綿含有建材に付された表示を契機として、当該工事を監督する立場にある者等を通じて、後続作業者等 にも伝達されるべきものであるところ、そもそも、上記の表示がされていなければ、当該工事を監督する立場にある者等が当該建材に石綿が含有されていることや作業等の危険性、回避の必要性等を知る契機がなく、上記の危険があることを後続作業者等に伝達することができないからである。 ⑵ 他方で、被控訴人らは、改修工事又は解体工事において、既存の石綿含有建 材の撤去、廃棄作業に従事する者に対しては、警告義務を負うものではないものと解される。なぜなら、新築工事において使用された石綿含有建材は、他の建材と一体となって建築物の構成部分となることや、石綿含有建材の出荷から、その使用後の撤去、廃棄までには長期間が経過することなどからすると、石綿含有建材の製造販売者が出荷時に行う警告表示によって、これらの作業者に実 効性のある警告をするのは困難であるからである。改修工事又は解体工事に従事する者の石綿粉じんへの曝露については、昭和61年労働省通達、労働省通達「石綿除去作業、石綿を含有する建設用資材の加工等の 効性のある警告をするのは困難であるからである。改修工事又は解体工事に従事する者の石綿粉じんへの曝露については、昭和61年労働省通達、労働省通達「石綿除去作業、石綿を含有する建設用資材の加工等の作業等における石綿粉じんばく露防止対策の推進について」(昭和63年基発第200号)や平成7年改正後の安衛則、特化則にあるとおり、改修工事又は解体工事を行う事業 者が、その防止に必要かつ実効的な対策をとるべきものである。 なお、上記のことは、既存の石綿含有建材の撤去、廃棄についていえるものであるから、改修工事においても、撤去、廃棄される既存の石綿含有建材ではなく、そこで新規に使用される石綿含有建材との関係では、これを使用等する者に対し、前記1の警告義務が認められるものである。 3 警告義務の始期等 ⑴ 被控訴人らは、前記第2の3⑴のとおり、昭和48年の時点で、屋内の建築現場で建築作業に従事する者が石綿関連疾患に罹患する危険性について認識することができたということができる。そして、被控訴人らが、警告義務の履行として、前記1⑴の表示を行うことは、石綿含有建材の性質を変更するものではなく、特段の技術を要するものでもないから、極めて容易であったという ことができる。そうすると、被控訴人らは、屋内の建築現場での使用、加工等が予定されている石綿含有建材について、同作業に従事する建築作業従事者に対し、遅くとも昭和49年1月1日から、前記1⑴の内容及び方法による警告義務を負うものと認められる。 ⑵ 他方で、前記第2の3⑵のとおり、被控訴人らは、屋外での建築作業に従事 する者が石綿関連疾患に罹患する危険性を認識することができたということはできない。そうすると、予見可能性があったとは認められない以 前記第2の3⑵のとおり、被控訴人らは、屋外での建築作業に従事 する者が石綿関連疾患に罹患する危険性を認識することができたということはできない。そうすると、予見可能性があったとは認められない以上、被控訴人らは、屋外での使用、加工等が予定されている石綿含有建材(㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレート、㉞石綿含有ルーフィング、㉟石綿含有窯業系サイディング、㊱石綿含有建材複合金属系サイディング、㊲石綿含有スレート波板・大 波、㊳石綿含有スレート波板・小波及び㊴石綿含有スレート波板・その他)については、同作業に従事する建築作業従事者に対し、前記1⑴の内容及び方法による警告義務を負っていたということはできない。 4 被控訴人らにおける警告義務違反被控訴人らは、屋内の建築現場での使用、加工等が予定されている石綿含有建 材について、同作業に従事する建築作業従事者に対し、昭和49年1月1日から 石綿含有建材の販売終了時まで、前記1⑴の内容及び方法による警告義務を負うところ、被控訴人らが、上記義務を履行していたと認めるに足りる証拠はない。 したがって、被控訴人らには、いずれも昭和49年1月1日(石綿含有建材の販売開始日がそれ以降である場合は販売開始日)から石綿含有建材の販売終了時まで、警告義務違反が認められる。 そして、被控訴人らが、上記義務を履行していれば、屋内の建築現場で建築作業に従事していた被災者らは、石綿含有建材の危険性を認識することができ、十分な対策を行うことができたから、石綿関連疾患に罹患することがなかったものと認められる。 5 控訴人らの主張について ⑴ア控訴人らは、屋内の建築現場における建築作業従事者に対し、UICC報告が公表された昭和40年の時点で、警告義務違反が認められるべ のと認められる。 5 控訴人らの主張について ⑴ア控訴人らは、屋内の建築現場における建築作業従事者に対し、UICC報告が公表された昭和40年の時点で、警告義務違反が認められるべきである旨主張する。 しかし、UICC報告では、石綿曝露と肺がん及び中皮腫との関連が証明されているとはしたが、因果関係があるとまでは述べられておらず、更なる 調査報告が必要である旨述べられていること、その後、動物実験などの調査研究が積み重ねられ、昭和47年IARC報告がなされていることを考慮すると、昭和40年の時点をもって、直ちに石綿粉じん曝露と肺がん及び中皮腫の発症に関する医学的知見が確立したと解することはできないから、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 イ控訴人らは、国が旧特化則を制定した昭和46年、どんなに遅くとも、石綿粉じんへの曝露と肺がん及び中皮腫の発症との因果関係についての医学的知見が確立するなどした昭和47年には、警告義務違反が認められる旨主張する。 しかし、前記のとおり、IARC会議は昭和47年10月に開催されてお り、その頃、坂部による報告が行われているとしても、昭和47年IARC 報告及びその内容を踏まえたIARC論文が公表された時期が昭和48年であることを踏まえると、被控訴人らにおいて、昭和47年の時点でその内容を認識しておくべきであり、かつ、認識することが可能であったとまではいうことができないから、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 ⑵ 控訴人らは、屋外の建築現場における建築作業従事者に対し、昭和47年、 昭和50年、昭和54年、昭和62年、平成13年の時点で警告義務違反が認められる旨主張する。しかし、前記第2の3⑵に記載のとおり、上記の各時点に 現場における建築作業従事者に対し、昭和47年、 昭和50年、昭和54年、昭和62年、平成13年の時点で警告義務違反が認められる旨主張する。しかし、前記第2の3⑵に記載のとおり、上記の各時点において、被控訴人らが、屋外における建築作業従事者について、石綿関連疾患に罹患する危険が生じていると認識することができたということはできないから、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 ⑶ 控訴人らは、被控訴人らが石綿含有建材の販売に当たって販売先や建材の種類、数量、石綿含有率等の情報を記録、保存する義務や、既に流通している石綿含有建材の使用状況の変化等を追跡、監視する義務を負うことを前提に、被控訴人らは既に流通している石綿含有建材に関しても石綿含有建材の危険性や被害防止のための対策等を警告する義務(販売後の警告義務)を負う旨を主 張する。 しかし、販売後であっても製品の危険性が明らかであれば、一般的にその危険性等を周知させることが望ましいことは明らかであるものの、控訴人らの上記主張の内容を前提とすれば、被控訴人らは、自らが販売した石綿含有建材の全ての販売先を記録し、かつ、当該建材が使用された全ての建築現場を把握し てその状況を継続的に監視すべきことになるが、被控訴人らにかかる義務を課す具体的な法令のない中で、また、前記のとおり、改修、解体工事に従事する者の石綿粉じんへの曝露については当該工事を行う事業者がその防止に必要かつ実効的な対策を採ることが可能である中で、被控訴人らが上記のような負担を伴う義務を負うものとまでは解することができない。したがって、この点 に関する控訴人らの主張は理由がない。 6 被控訴人らの主張について⑴ 被控訴人らの中には、知見を有しておらず、コントロー ることができない。したがって、この点 に関する控訴人らの主張は理由がない。 6 被控訴人らの主張について⑴ 被控訴人らの中には、知見を有しておらず、コントロールすることもできない他の企業の製品による曝露をも踏まえて予見可能性を判断するのは過失責任の原則を無視するに等しい旨を主張する者がある。 しかし、予見可能性は、被控訴人らが製造販売した石綿含有建材が実際にど のように使用されているかといった客観的事実や、これについての被控訴人らの認識ないし認識可能性を前提に判断されるべきものであって、このような考慮の下に、被控訴人らの製造販売した石綿含有建材が人の生命、身体に危険を及ぼし得ることを予見することが可能であると判断された場合に、被控訴人らが自ら製造販売した石綿含有建材について法的な責任を負い得ると考えるこ とは、過失責任の原則に反するものではない。また、被控訴人らは、他の企業も、自己のものと同様の製品を販売していることを十分に認識していたと認められるのであって、他の企業を含む業界全体として考えたとしても、石綿含有建材が人の生命、身体に重大な危険を及ぼし得ることを予見することが可能であったといえるのであって、自ら製造販売した石綿含有建材についての責任を 免れることはできないものである。したがって、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 ⑵ 被控訴人らの中には、石綿のうちクリソタイルについては石綿関連疾患への罹患の危険性が少ないなどとして、クリソタイルについては、前記の危険性についての知見が確立していなかった旨の主張をする者がある。 しかし、昭和47年IARC報告により、市販されている主な石綿の一種であるクリソタイルが肺がん、中皮腫を惹起し得る旨の医学的知見が国際機関に 知見が確立していなかった旨の主張をする者がある。 しかし、昭和47年IARC報告により、市販されている主な石綿の一種であるクリソタイルが肺がん、中皮腫を惹起し得る旨の医学的知見が国際機関によって示されているのであるから、クリソタイルの惹起力が他の種類の石綿と比べて低かったとしても、予見可能性がなかったといえるものではなく、このような知見が示されていることをもって、クリソタイルについても警告義務の 発生に必要な危険性の予見が可能であったものというべきである。また、クリ ソタイルの危険性についてアンフィボール原因説といった上記と異なる見解が示され、クリソタイルの危険性について一部に論争が生じていたとしても、かかる論争の結果としてクリソタイルの上記危険性は否定されるべきであるといった見解が支配的となったなどの事情を認めるに足りる証拠はないのであって、かかる見解や論争の存在によって、上記の判断が左右されるものでは ない。したがって、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 ⑶ 被控訴人の中には、被控訴人らに警告義務が課せられるとしても、国が安衛法に基づく規制権限等を行使しなかったことが違法となる昭和50年10月1日と比較して、相当程度遅い時期である旨主張する者がある。 しかし、国の責任は、規制権限をもって、製品の製造販売者を監督するとい う第二次的なものである。これに対し、被控訴人らの負う警告義務は、前記第1のとおり、危険な製品の製造販売者が、自ら製造販売したことによって社会内を流通するに至った危険な製品の使用者に対して負う高度の注意義務に基づくものであり、第一次的なものというべきであるから、被控訴人らに警告義務が課せられる時期が、国の権限不行使が違法となる時期よりも遅いなどとは 険な製品の使用者に対して負う高度の注意義務に基づくものであり、第一次的なものというべきであるから、被控訴人らに警告義務が課せられる時期が、国の権限不行使が違法となる時期よりも遅いなどとは 到底解することができないものである。したがって、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 ⑷ 被控訴人らの中には、被控訴人らが製造販売した石綿含有建材に石綿が含まれることを示す「a」マークを平成元年以降表示していた旨を主張する者がある。 しかし、被控訴人らの上記主張によっても、「a」マークは平成元年以降に表示されることとなったものにすぎない。また、「a」マークについては、表示されるのは「a」という文字の意匠だけであり、このような表示を見ただけではその意味ないし危険性やこのような表示がされた製品の取扱上の注意について具体的に認識することができるものではなかった(甲A1319)。また、 「a」という文字の意匠は、これだけを見て逆に優れていることを示すものと も理解されかねないものであるし、少なくとも危険性の表示として到底十分なものといえないことは明らかである。 以上によれば、「a」マークの表示によって、警告義務が履行されたとはいえない。したがって、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 第4 石綿不使用義務 1 前記第2章第2節第8、前記第3章第1節第1の1、3及び4の認定事実によれば、昭和47年IARC報告やIARC論文が石綿の発がん性を指摘し、我が国でも、昭和53年に労働省専門家報告が具体的な石綿粉じんの濃度に係る測定結果を示すなどしつつ石綿の発がん性を指摘したが、昭和47年IARC報告やIARC論文を受けて石綿の製造等の禁止措置を直ちに採った国はない。また、 昭和47年IARC報 粉じんの濃度に係る測定結果を示すなどしつつ石綿の発がん性を指摘したが、昭和47年IARC報告やIARC論文を受けて石綿の製造等の禁止措置を直ちに採った国はない。また、 昭和47年IARC報告、IARC論文、労働省専門家報告の各内容をもって、石綿の製造等を直ちに禁止すべきとの考え方が示されたともいえない。かえって、ILOが昭和61年に採択した石綿条約の内容は、石綿の代替化については技術的に可能である場合に石綿代替製品を使用すべきとの留保を付し、また、石綿含有製品又はその容器への適切な表示、石綿濃度の基準の遵守やこれを減少させる 措置の実施、上記基準を遵守できない場合の呼吸用保護具の使用を定めているのであり、これらは石綿含有製品の製造、使用等が今後も行われることを前提としたものと考えられる。さらに、平成元年のWHO報告の内容は、少なくともクリソタイルについて石綿曝露の程度を管理しつつ使用を継続することができるとの考え方を採っていることが認められる。 2 石綿の代替化については、昭和50年改正特化則によってその努力義務が定められた後、代替製品の価格や性能の問題に対処しつつ、上記代替化が漸次進められてきたといえるが、平成8年の時点においてもなお代替化が未了の建材もあったのである。そして、石綿代替繊維の安全性については、昭和47年頃にはその調査、研究の必要性が認識され、以後、この点に関する知見が集積されていった が、この中で、昭和63年IARC報告は、人造鉱物繊維であるグラスウール、 ロックウール、スラグウールがいずれも人に対して発がん性があるかもしれないと評価し、また、森永が平成元年に天然鉱物繊維であるワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライトについても人に対する発がん性があるなどと判定され ウールがいずれも人に対して発がん性があるかもしれないと評価し、また、森永が平成元年に天然鉱物繊維であるワラストナイト、アタパルジャイト、セピオライトについても人に対する発がん性があるなどと判定される可能性を指摘していたのである。そして、以上の各繊維のうち、断熱用のグラスウール、ロックウール、スラグウールについては、平成14年IARC報告に よって、人に対する発がん性の有無については分類することができないと評価が改められたが、平成16年の中災防報告では、上記3繊維についてなお発がん性の潜在的な能力を有する旨の知見が示されていたのである。 3 諸外国における石綿の規制の在り方等については、上記各主要先進国のうち、ドイツにおいては平成5年にはクリソタイルを含む石綿及び石綿含有製品の製 造等が原則として禁止されていたものの、フランスにおいては平成9年から、イギリスにおいては平成11年から、クリソタイルを含有する製品の供給、使用等がいずれも段階的に禁止されていったのであり、EUにおいては、平成11年に、平成17年までにクリソタイルの使用を禁止することとされたのである。また、現在でも、米国においては石綿含有製品の製造や使用等が全面的には禁止されて いないし、カナダはクリソタイルについては管理して使用すれば安全であるとの立場を採っているのである(ただし、カナダはクリソタイルの主要な生産国である。)。 4 以上によれば、控訴人らが指摘する昭和47年、昭和50年、昭和53年、昭和62年、平成3年、平成7年の各時点においては、クリソタイルについては管 理使用が可能であるとの考え方が相当程度残っていたものと認められるし、石綿の代替化には価格、性能等の技術的な難点がなお残っていた上、主要な石綿代替繊維の人体に対する危険性も指摘されて ては管 理使用が可能であるとの考え方が相当程度残っていたものと認められるし、石綿の代替化には価格、性能等の技術的な難点がなお残っていた上、主要な石綿代替繊維の人体に対する危険性も指摘されていたのである。また、主要先進国においても、上記各時点においては、クリソタイルを含む石綿の使用を全面的に禁止していた国はなかったか、あったとしても少数であったと考えられる。このような 中で、控訴人ら主張の上記各時点において、被控訴人らが、直ちに石綿不使用義 務を負っていたとまでいうことはできない。 第3節被控訴人らの間における共同不法行為の成否第1 民法719条1項後段の類推適用について 1 前記前提事実及び認定事実によれば、本件被災者らは、いずれも、一定の期間、複数の建築現場において建築作業に従事し、それぞれの建築現場において石綿含 有建材を取り扱い、当該建材から生じた石綿粉じんに曝露し、このような曝露が累積的に蓄積される中で、石綿関連疾患を発症したものと認められる。 他方で、建築現場においては複数の石綿含有建材が使用されることが想定されるところ、個々の建築現場において何種類のどのような石綿含有建材が使用されるかの組合せは、当該建築現場において建築される建築物の種類や施工事業者の 違いなどによって多岐にわたると考えられる。また、本件被災者らは、個々の建築現場において、自らが直接取り扱った石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露する場合もあれば、他の者が取り扱った石綿含有建材から生じた石綿粉じんに間接的に曝露する場合もあったと考えられる。そのため、本件においては、本件被災者らの個々の建築現場における石綿含有建材からの石綿粉じんへの曝露と 本件被災者らが石綿関連疾患を発症したこととの間に因果関係があ る場合もあったと考えられる。そのため、本件においては、本件被災者らの個々の建築現場における石綿含有建材からの石綿粉じんへの曝露と 本件被災者らが石綿関連疾患を発症したこととの間に因果関係があるか否かは、必ずしも直ちに明らかであるとはいえない。 このような中で、控訴人らは、被控訴人らについて、民法719条1項後段の類推適用による不法行為責任(共同不法行為責任)を主張しているところ、上記のような場面において、同項後段の類推適用が認められるか否かについて、以下 検討する。 2 民法719条1項は、「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。」と規定するところ、同項後段は、複数の者がいずれも被害者の損害をそれのみで惹起し 得る行為を行い、そのうちのいずれの者の行為によって損害が生じたのかが不明 である場合に、被害者の保護を図るため、公益的観点から、因果関係の立証責任を転換して、上記の行為を行った者らが自らの行為と損害との間に因果関係が存在しないことを立証しない限り、上記の者らに連帯して損害の全部について賠償責任を負わせる趣旨の規定であると解される。そして、被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が 存在しないことは、民法719条1項後段の適用の要件であると解するのが相当である。本件では、前記1のとおり、建築現場の実情等からして、特定の被控訴人が製造販売した石綿含有建材から発散される石綿粉じんが、被災者の石綿関連疾患の発症にどの程度の影響を与えたのか明らかではないことや、被災者が特定の被控訴人以外の者の製造販 等からして、特定の被控訴人が製造販売した石綿含有建材から発散される石綿粉じんが、被災者の石綿関連疾患の発症にどの程度の影響を与えたのか明らかではないことや、被災者が特定の被控訴人以外の者の製造販売した石綿含有建材から発散される石綿粉じんに も曝露している可能性があることなどから、民法719条1項後段を適用するのは困難である。 しかし、被控訴人らは、前記第2節のとおり、いずれも石綿含有建材を製造販売する際に、当該建材が石綿を含有しており、当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があるこ と等を当該建材やその包装に表示する警告義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行していなかったことが認められる。また、前記1のとおり、本件の被災者らは、一定の期間、複数の建築現場において建築作業に従事し、それぞれの建築現場において複数の企業が製造販売する石綿含有建材から生じた粉じんに曝露し、かかる曝露が累積的に蓄積される中で、石綿関連疾患を発症したとこ ろ、被控訴人らは、前記第2節第2のとおり、石綿含有建材を製造販売する企業として、いずれもこのような事態を想定することが可能であったということができる。以上の事情に照らすと、本件被災者らが、ある石綿含有建材を取り扱っており、かつ、当該石綿含有建材のうち特定の被控訴人の製造販売したものが、当該被災者らが稼働する建築現場に相当回数にわたり到達して用いられていると の事情が認められる場合には、当該被災者らが、特定の被控訴人の製造販売した 石綿含有建材から生じた粉じんに曝露しており、ひいては、被控訴人らは、当該被災者らの石綿関連疾患の発症に少なくとも何らかの寄与をしているということができるのであるから、被 した 石綿含有建材から生じた粉じんに曝露しており、ひいては、被控訴人らは、当該被災者らの石綿関連疾患の発症に少なくとも何らかの寄与をしているということができるのであるから、被害者保護の見地から、民法719条1項後段が適用される場合との均衡を図って、同条後段の類推適用により、因果関係の立証責任が転換されると解するのが相当である。もっとも、前記1のとおり、特定の被控 訴人の製造販売する石綿含有建材を取り扱ったことによる石綿粉じんの曝露量は、被災者らの石綿粉じん曝露量の一部にとどまるといった事情等があることから、特定の被控訴人は、こうした事情等を考慮して定まるその行為の損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で損害賠償責任を負うものと解すべきである。(最高裁平成30年(受)第1447号、第1448号、第1449号、第1451 号、第1452号令和3年5月17日第一小法廷判決参照) 3 被控訴人らの中には、民法719条1項後段を類推適用する場合においても、同項後段を適用する場合と同様に、加害者の行為が単独で被害者に生じた損害の全部を惹起する危険性のあるものであることが必要である旨や、被害者について他に加害者となり得る者が存在しないことが必要である旨を主張する者がある。 しかし、前記2のような理由によって同項後段を類推適用するのが妥当と考えられることや、その場合に、加害者が寄与度に応じた範囲でのみ損害賠償責任を負う(複数の場合には、連帯して損害賠償責任を負う)のが相当であるといった点に鑑みると、同項後段を適用するのではなく、これを類推適用する場合には、加害者の行為が単独で被害者に生じた損害の全部を惹起する危険性のあるもので あることや、他に加害者となり得る者が存在しないことは必要ないものと解するのが ではなく、これを類推適用する場合には、加害者の行為が単独で被害者に生じた損害の全部を惹起する危険性のあるもので あることや、他に加害者となり得る者が存在しないことは必要ないものと解するのが相当である。したがって、この点に関する被控訴人らの主張はいずれも理由がない。 4 控訴人らは、第1順位の主張として、民法719条1項後段を類推適用する場合にも、被控訴人らが、本件被災者らに発生した損害の全部について連帯責任を 負う旨主張する。 しかし、前記のとおり、特定の被控訴人の製造販売する石綿含有建材を取り扱ったことによる石綿粉じんの曝露量は、被災者らの石綿粉じん曝露量の一部にとどまるといった事情等があること、同項後段の類推適用により、因果関係の立証責任が転換されることなどに鑑みると、当該被控訴人に損害の全部について連帯責任を負わせるのは相当でなく、当該被控訴人は、その行為の損害の発生に対す る寄与度に応じた範囲で損害賠償責任を負う(複数の場合には、連帯して損害賠償責任を負う。)ものと解するのが相当であるから、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 また、被控訴人らが寄与度に応じた範囲で損害賠償責任を負う(複数の場合には、連帯して損害賠償責任を負う。)ものと解する以上、それが認められない場合 に備えて主張された控訴人らの第3順位の主張については判断を要しない。 第2 被控訴人らの製造販売した石綿含有建材が、被災者らの稼働する建築現場に相当回数にわたり到達したことの立証について 1 前記前提事実及び認定事実によれば、本件被災者らは、長期間にわたり多数の建築現場において様々な種類の石綿含有建材(自らが取り扱ったもの、他の者が 取り扱ったものの双方を含む。)から生じた石綿粉じんに曝露したもの 定事実によれば、本件被災者らは、長期間にわたり多数の建築現場において様々な種類の石綿含有建材(自らが取り扱ったもの、他の者が 取り扱ったものの双方を含む。)から生じた石綿粉じんに曝露したものと考えられることや、石綿関連疾患が、石綿粉じん曝露から長期間の潜伏期間を経て発症するものであることなどの事情から、控訴人らにおいて、被災者らが作業をしていた個々の建築現場で取り扱われていた石綿含有建材を個別に立証することは、現実的に困難であるといわざるを得ない。 このような中、控訴人らは、前記第2章第3節第1の1⑵のとおり、国交省データベースを基に、国交省データベースに掲載された石綿含有建材を42種類の種別に分類し、これに掲載されていない石綿含有建材である㊸混和材を加えた43の種別のうち、各被災者の職種から想定される作業内容等を踏まえ、本件被災者らが当該建材から発散する石綿粉じんに曝露する可能性の高い直接取扱い建 材を選定し、そこから、各被災者が建築作業に従事した建物の種類、就労期間等 に照らし、各被災者に到達した可能性が低いものを除外し、さらに、各被災者が建築作業に従事した期間とその建材の製造期間との重なりが1年未満である建材を除外するなどし、このようにして被災者ごとに特定した石綿含有建材のうち用途を同じくする建材において概ね10%以上のシェアを有するものについては、各被災者が建築作業に従事した建築現場に到達した蓋然性が高いとして、こ れを各被災者に係る主要原因建材として、各被災者との関係で主要原因建材とされた石綿含有建材を製造販売したとされる特定の被控訴人らを相手に損害賠償を請求している。 控訴人らは、本件訴訟の口頭弁論終結に至るまでに、主張の修正等を通じ、各被災者について、概ね、主要原因建材を適 た石綿含有建材を製造販売したとされる特定の被控訴人らを相手に損害賠償を請求している。 控訴人らは、本件訴訟の口頭弁論終結に至るまでに、主張の修正等を通じ、各被災者について、概ね、主要原因建材を適切に選定するに至ったものと評価する ことができる。また、上記の主要原因建材の選定方法に鑑みれば、現時点で各被災者について主要原因建材として選定されている建材については、これが各被災者の作業する建築現場に到達していた可能性が相応に高いと評価することができる。そうすると、特定の被控訴人の製造販売した石綿含有建材が特定の被災者の作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実(以下「現場到達 事実」という場合がある。)については、主要原因建材のシェアや各被災者が就労した建築現場の数に鑑み、確率論的な見地からの考慮を加味することで、立証できる場合があり得ると解するのが相当である。(最高裁平成31年(受)第596号令和3年5月17日第一小法廷判決参照)なお、個々の主要原因建材のうち、各被災者との関係で主要原因建材となり得 るかどうかについて疑義があるものについては、前記のシェア等からの検討とは別に、当該疑義について個別に検討した上で、各被災者が当該建材から生じた石綿粉じんに曝露したと認められるか否かを判断するのが相当である。 2⑴ 前記の主要原因建材の市場におけるシェアを用いた確率論的な見地からの考慮は、ある用途に用いられる建材について、当該建材が用いられ得る建築現 場に到達する確率をPとし、当該建材のシェアをs、建築現場の数をnとする と、上記確率Pは、以下の式で求めることができる。 P=1−(1−s)n例えば、上記建材のシェアsが10%である場合には、以下の計算により、 nとする と、上記確率Pは、以下の式で求めることができる。 P=1−(1−s)n例えば、上記建材のシェアsが10%である場合には、以下の計算により、上記建材は20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性があるものと考えられる。 1−(1−0.1)20≒0.87842また、上記建材のシェアsが20%である場合には、以下の計算により、上記建材は10件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性があるものと考えられる。 1−(1−0.2)10≒0.89263 さらに、上記建材のシェアsが30%である場合には、以下の計算により、上記建材は6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性があるものと考えられる。 1−(1−0.3)6≒0.88235⑵ ある石綿含有建材に代替製品(他の種別の石綿含有建材及び無石綿製品)が 存在する場合には、ある用途に用いられる建材の現場到達事実を認定するための検討であることに鑑みれば、シェアを検討するに際しては、当該代替製品の存在を考慮する必要があるものといえる。そこで、後記第3において、各石綿含有建材のシェアを検討するにあたっては、代替製品の存在を踏まえた上で、代替製品と合算したシェアを算出する必要があるか否か、また、シェアを用い た手法により現場到達事実を認定することが相当であるか否かについて、石綿含有建材ごとに検討することとする。ただし、被災者らは、石綿関連疾患に罹患しているのであるから、例えば、被控訴人らに警告義務違反が認められる期間内にだけ、特定の種類の建材のみを使用していて、他の時期や他の種類の石綿含有建材からの石綿粉じん曝露が考えられない場合などには、当該被災者が 当該期 、被控訴人らに警告義務違反が認められる期間内にだけ、特定の種類の建材のみを使用していて、他の時期や他の種類の石綿含有建材からの石綿粉じん曝露が考えられない場合などには、当該被災者が 当該期間において使用していた特定の種類の石綿含有建材のいずれかからの 曝露しか考えられないし、石綿関連疾患を発症するのに十分なだけその種類の石綿含有建材から石綿粉じんを曝露していることになるから、このような場合には、代替製品の存在を考慮する必要はないものといえる。 ⑶ 本件被災者らは、各人ごとに、就労期間や就労した建築現場数に大きな差異がある。そこで、後記第4においては、現場到達事実が認められるかどうかに ついて、各被災者が就労した建築現場の数に鑑み、確率論的な見地から、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることができるか否かを検討することとする。 3 控訴人らの主張について控訴人らは、ある建材に代替製品があるというだけではシェアを合算させる必 然性はなく、当該建材が使用される限り同じ建物に別の建材が使用されないという関係性が成り立つ場合に限り、シェアを合算させる合理性が認められる旨を主張する。 確かに、控訴人らの主張するとおり、ある建物に用途を同じくする複数の同種の建材が使用される場合もあり得ると考えられるが、そのような場合がどの程度 あるのかは明らかでない。また、そのような場合であっても、到達が検討される建材とは別のこれに代替される建材が使用されれば、その分、当該建物において到達が検討される建材が使用される確率は少なくとも相当程度低くなる関係にはあるということができる。そうすると、確率論的な見地からの検討をするにあたっては、代替製品をも考慮した上で上記建材のシェアを算出する方が、より実 れる確率は少なくとも相当程度低くなる関係にはあるということができる。そうすると、確率論的な見地からの検討をするにあたっては、代替製品をも考慮した上で上記建材のシェアを算出する方が、より実 態に即した判断が可能になるものというべきであるし、また、代替製品を考慮しないとすると、上記到達が実態よりも広範に認定されてしまうおそれがあるものといえる。したがって、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 4 被控訴人らの主張について⑴ 被控訴人らの中には、国交省データベースの掲載内容の信用性が低い旨を指 摘する者がある。 しかし、証拠(甲A1030、甲C30の1、2)によれば、国交省データベースの作成目的は、建築物等の解体工事等に際し、使用されている建材の石綿含有状況に関する情報を簡便に把握し得るようにすることを目的として作成されたものであり、そうであれば、その掲載情報は、建築物等の解体作業者が石綿粉じんに曝露することを防止することなどのために非常に重要なもの であるから、その確度を高めるための措置がとられてしかるべきである。そして、国交省データベースは、官公庁、業界団体、建材メーカー等が公表していたデータを収集し、また、それらから保有するデータの提供を受けるなどの協力を得て構築され、平成18年度に初めて公表されたものであり、公表以降、おおむね1年に1回、追加、修正、削除等の更新がされており、その掲載情報 は、石綿含有建材のメーカーの従業員、国交省及び経産省の担当部局の職員、大学の研究者等により構成される石綿(アスベスト)含有建材データベース構築委員会で審議され、決定されているのである。これらによれば、国交省データベースは、官公庁、業界団体、建材メーカー等が公表又は保有していたデータ等を収 される石綿(アスベスト)含有建材データベース構築委員会で審議され、決定されているのである。これらによれば、国交省データベースは、官公庁、業界団体、建材メーカー等が公表又は保有していたデータ等を収集して構築された後、相当期間にわたり専門家らにより逐次更新がさ れてきたものであって、少なくとも石綿含有建材の名称、製造者、製造期間等に係る掲載情報については相応の信用性があるということができる。したがって、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 ⑵ 被控訴人らの中には、建材のシェアに関する資料の信用性が低い旨を指摘する者がある。 しかし、上記資料の作成目的は、業界関係者が市場の動向を探るための参照の便宜に供することを目的として作成されたものであるから、上記資料は、相応の信用性を確保する必要があり、その作成目的に沿った相応の確度を有することが期待されていたということができる。そして、上記資料には、その作成時期に近い年度のシェアが記載されていることがうかがわれるから、その作成 者らは、当時、報道、公刊等がされていたデータを収集し、業界団体、建材メ ーカー等から聞き取りをするなどの調査によって、相応の根拠を有する建材のシェアを算出することが可能であったし、このような調査を経たものであるということができる。そうすると、上記資料それぞれの具体的な記載内容を検討した上、被控訴人らから、上記資料に記載された自社の建材に係る情報に誤りがあることについて具体的な根拠に基づく指摘がされていない場合にはその ことも踏まえて、上記資料により建材のシェアを認定することは可能であると考えられる。したがって、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 ⑶ また、被控訴人らの中には、石綿含有建材の流通の仕方や建築現 まえて、上記資料により建材のシェアを認定することは可能であると考えられる。したがって、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 ⑶ また、被控訴人らの中には、石綿含有建材の流通の仕方や建築現場においてある建材が使用される頻度、被災者が赴く建築現場等には、現実には、建築工事に関わる元請業者等の考えや地域性、当該元請業者等と当該被災者との人的 関係等の様々な個別的要因によって偏りが生じ得るものであるから、到達の事実を推認することができない旨を指摘する者がある。 しかし、控訴人らは、前記のとおり、本件の各被災者に係る主要原因建材を上記各被災者に到達する可能性が高いといえる建材のみに絞り込んでいる。そのことを前提とすると、特定された石綿含有建材の同種の建材の中でのシェア が高ければ高いほど、また、特定の被災者がその建材の製造期間において作業をした建築現場の数が多ければ多いほど、特定の被控訴人らの製造販売した石綿含有建材が、特定の被災者の作業する建築現場に到達したことが認められる蓋然性が高くなることは経験則上明らかである。そうすると、少なくとも被控訴人らから他に考慮すべき個別的要因が具体的に指摘されていないときには、 前記のシェア及び建築現場の数を踏まえた確率計算を考慮して、建築現場への建材の到達を認定することができるというべきである。したがって、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 第3 石綿含有建材のシェアを用いた手法による現場到達事実の認定の可否 1 控訴人らが本件被災者らの主要原因建材として主張する石綿含有建材は、吹付 け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け 材)、保温材(⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿 材は、吹付 け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け 材)、保温材(⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材及び⑩石綿保温材)、耐火被覆材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種及び⑫石綿含有耐火被覆板)、断熱材(⑬屋根用折板石綿断熱材及び⑭煙突用石綿断熱材)、石綿含有成形板等(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有ス レートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板、㉛石綿含有けい酸カルシウム床材、㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレート、㉟石綿含有窯 業系サイディング、㊱石綿含有建材複合金属系サイディング、㊲石綿含有スレート波板・大波、㊳石綿含有スレート波板・小波及び㊴石綿含有スレート波板・その他)、㊶石綿セメント円筒、㊷石綿発泡体及び㊸混和材である。以下、各石綿含有建材について、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができる場合があるといえるかどうかについて検討する。 2 吹付け材⑴ 控訴人らが、吹付け材について、本件被災者らの主要原因建材として主張するのは、①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材である。これらは、主に鉄骨造建物における耐火被覆等という用途が共通しており、相互に代替性、競合性があるといえるから、上記各建材のシェア を検討するに当たっては、これらを合算して検討するのが 材である。これらは、主に鉄骨造建物における耐火被覆等という用途が共通しており、相互に代替性、競合性があるといえるから、上記各建材のシェア を検討するに当たっては、これらを合算して検討するのが相当である。 ⑵ 昭和40年代のシェア①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材は、いずれも昭和40年代には製造、販売されていたことから、上記各建材の昭和40年代におけるシェアについて検討する。 この点、鉱石質建材市場要覧(甲A1149)の25頁には、昭和44年1 0月頃の被控訴人ら(合併前、商号変更前の企業を含む。以下同じ。)の①吹付け石綿の月間の生産、施工状況が掲載されているが、これらはいずれも幅をもった数値として記載されており、かつ、同時点における同建材の我が国全体における出荷量に関する記載がない。また、無機繊維系建材と石膏ボード(甲A1139)の24頁には、昭和45年当時の被控訴人らの①吹付け石綿に係る 月間の生産能力が掲載されているが、同時点における上記建材の出荷量についての記載はなく、同時点における上記建材に係る我が国全体での生産能力についての記載もない。そして、この当時においては、鉄骨耐火被覆材は歴史が新しく、施工技術も高くかつ施工上の責任も重いため、ほとんどのメーカーが、直接責任施工体制(メーカーによっては、工事部門を独立させているところも あるが、体質としては変わらない。)をとっていた(甲A1139(26頁)、1149(26頁))。そうすると、上記の各時点においては、そこに記載されているメーカー以外には、当該建材を生産している者は存在しないか、存在したとしてもその生産量は上記メーカーの中で最も生産量の少ない者より相当少なく、その数も少なかったと考えられるか 、そこに記載されているメーカー以外には、当該建材を生産している者は存在しないか、存在したとしてもその生産量は上記メーカーの中で最も生産量の少ない者より相当少なく、その数も少なかったと考えられるから、シェアに対する影響はほとん どないといってよい。また、上記のような実情からすれば、生産量と出荷量はほぼ一致しているとみてよいし、少なくともシェアを検討するに当たっては、生産能力(月間)に応じた生産量及び出荷量であったと認めるのが相当である。 ただし、上記各証拠には、いずれも上記各建材を合算したシェアに関する記載はなく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、上記各証拠によ っても、同時点における上記各建材を合算したシェアを認定することはできない。 また、上記各証拠により、昭和44、45年頃における①吹付け石綿のシェアは認定できるものの、前記のとおり、①吹付け石綿の施工量が、昭和46年から48年までの間にはほぼ倍増したが、昭和49年には施工量が激減してい るといったように、施工量の変動が非常に大きいことや、昭和46年以降、① 吹付け石綿の製造販売を中止する企業が複数出てきていることなどを考慮すると、昭和44、45年頃における①吹付け石綿のシェアをもって、直ちにその後の①吹付け石綿のシェアを推認することはできない。 その他、昭和40年代における上記各建材を合算したシェアを認めるに足りる証拠はない。 以上によれば、被控訴人らについて、本件被災者ら(吹付け工は含まれていない。)に対する警告義務違反の始期である昭和49年当時における上記各建材のシェアを認めることはできない。 ⑶ 昭和50年以降のシェアア ①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け 材につい 期である昭和49年当時における上記各建材のシェアを認めることはできない。 ⑶ 昭和50年以降のシェアア ①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け 材についての昭和50年以降のシェアを検討するが、石綿の含有量が製品の重量比で5%を超える吹付け材の吹付け作業は昭和50年改正特化則によって同年10月1日以降は原則として禁止されたところ、①吹付け石綿の石綿含有率は5%以上と推認されること、同日以降①吹付け石綿が製造、販売されたことを認めるに足りる証拠はないことから、同年以降については、② 石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材のシェアを合算して検討するのが相当である。 イ証拠(甲A1150(108頁)、1176(126頁)、1177(119頁))によれば、公刊された文献に、別紙7-1のとおりのシェアに関する記載があること(「シェア」欄の各数値は、当裁判所が上記記載の内容を前提 に算出したものである。)が認められる。なお、上記各証拠には、いずれも、無石綿の吹付け材を含めた推計値が記載されている。また、上記各証拠のうち、昭和52年に発行された「昭和52~53年版建材用途・部位別需要動向と競合性」(甲A1150)、昭和55年に発行された「建材用途・部位別需要動向と競合性」(甲A1176)には、いずれも、吹付け材のうち耐火 被覆用途のものと吸音断熱用途のものとを区別せず、吹付け材のうち乾式と 湿式とを区別しないで推計した推計値が記載されている。他方、昭和55年に発行された「日本の建材産業」(甲A1177)には、吹付け材のうち耐火被覆用途のもののみについて、乾式と湿式とを区別して推計した推計値が記載されている。 上記の各証拠はいずれも公刊された文 5年に発行された「日本の建材産業」(甲A1177)には、吹付け材のうち耐火被覆用途のもののみについて、乾式と湿式とを区別して推計した推計値が記載されている。 上記の各証拠はいずれも公刊された文献であり、その内容に照らせば、上 記各証拠に掲載された各データは、上記各文献の発行者が、被控訴人らを始めとする石綿を扱う業界に属する企業が見ることも想定した上で、独自の調査によって得た情報等の相応の根拠を基に推定した値であると考えられる。 また、上記各データはいずれも上記各証拠が公刊された年に近い年次のものであることに鑑みれば、上記発行者が上記調査において必要な資料等を入手、 参照することも十分に可能であったし、このような調査を経たものであると考えられる。以上によれば、上記各データの信用性に疑義を生じさせるような特段の事情のない限りは、上記各証拠に掲載されたデータの内容を前提に、被控訴人らが製造、販売した建材に係るシェアを認定することができるものというべきである。 ウ本件被災者らとの関係で、自らが製造又は販売した②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材の一方又は双方が主要原因建材とされている被控訴人ら(他社が製造又は販売した上記主要原因建材について損害賠償責任が認められた場合に、当該責任を共に負うとも主張される被控訴人企業を含む。以下、同様である。)は、被控訴人エーアンドエー、 被控訴人太平洋セメント、被控訴人ナイガイ、被控訴人ニチアス、被控訴人日東紡績、被控訴人バルカー及び被控訴人ノザワである。以下、これらの企業について、個別に検討する。 被控訴人ニチアスは昭和49年に、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人日東紡績は昭和50年に、それぞれ、耐火被覆用の②石綿含有吹付けロ ックウールの製造、 の企業について、個別に検討する。 被控訴人ニチアスは昭和49年に、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人日東紡績は昭和50年に、それぞれ、耐火被覆用の②石綿含有吹付けロ ックウールの製造、販売を終了している。 他方、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人日東紡績は、上記各年以降も、③湿式石綿含有吹付け材の製造、販売を継続している。しかし、証拠(甲A1177(119頁)、乙ニ3(3、4頁)、9(4、5、13、14頁)、42(6頁)、乙マ1016(2頁)、1019、乙ム10(8、9頁)、11(4、5頁))によれば、一般に、③湿式石綿 含有吹付け材の施工には、水と原料を混錬するための設備等の大型かつ高額な設備が必要であり、その施工費用は他の乾式の吹付け材の施工の場合と比較して2倍程度となることが認められる。また、証拠(甲A1177(119頁)、乙ニ16(4頁)、34(6頁)、42(6頁))及び弁論の全趣旨によれば、③湿式石綿含有吹付け材の用途には吸音断熱はなく、上 記建材の用途は耐火被覆のみであるところ、昭和52年度の吹付けロックウール(湿式)の施工実績推定は合計で59万㎡、耐火被覆用途の吹付けロックウール(乾式)の施工実績推定は合計で682万㎡であり、前者は後者の1割に満たないものであったことが認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人日東紡績が施工した ③湿式石綿含有吹付け材の量は僅かであり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人日東紡績の昭和50年以降の吹付けロックウールのシェアの大部分は、無石綿の吹付け材が占めていたものと考えられる。 以上によれば、前記イに記載した各証拠によって被控訴人エーアンドエ ー、被控訴人ニ 績の昭和50年以降の吹付けロックウールのシェアの大部分は、無石綿の吹付け材が占めていたものと考えられる。 以上によれば、前記イに記載した各証拠によって被控訴人エーアンドエ ー、被控訴人ニチアス及び被控訴人日東紡績が、自らが製造、販売した②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材について、一定の期間にわたって一定の規模のシェアを継続的に有していたと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 被控訴人太平洋セメントは、昭和46年から昭和53年まで②石綿含有 吹付けロックウールを製造、販売していたところ、証拠(甲A1167(7 2頁))及び弁論の全趣旨によれば、昭和51年に刊行された文献に、ロックウール吹付け材の主要メーカーとして被控訴人太平洋セメント(日本セメント株式会社)が挙げられ、昭和49年における上記ロックウール吹付け材の施工量推定として、我が国全体での上記施工量推定の合計が7万㎡であるところ、被控訴人太平洋セメントの上記施工量推定は1万3000 ㎡である旨が記載されていることが認められる。そうすると、被控訴人太平洋セメントは、遅くとも昭和50年以降、別紙7-1のとおり、吹付けロックウール(乾式、湿式)全体の約15%、耐火被覆用の吹付けロックウールに限定すれば約25%のシェアを有していたものと認められる。 そして、被控訴人太平洋セメントは昭和48年から平成元年まで③湿式 石綿含有吹付け材を製造、販売していたところ、前記アのとおり、③湿式石綿含有吹付け材は一般的に施工されることが少ない。また、証拠(乙ニ7、9(5、6頁)、16(7、8頁)、34(7頁)、42(6頁))によれば、昭和50年に、被控訴人太平洋セメントが施工した③湿式石綿含有吹付け材の施工箇所にお されることが少ない。また、証拠(乙ニ7、9(5、6頁)、16(7、8頁)、34(7頁)、42(6頁))によれば、昭和50年に、被控訴人太平洋セメントが施工した③湿式石綿含有吹付け材の施工箇所において大規模な崩落事故が発生し、これ以降、被控 訴人太平洋セメントが③湿式石綿含有吹付け材を耐火被覆用の吹付け材として販売することはほとんどなく、被控訴人太平洋セメントは上記建材を専ら補修材として少量のみ販売していたことが認められる。 以上によれば、被控訴人太平洋セメントは、自らが製造、販売する耐火被覆用の②石綿含有吹付けロックウールについて、昭和50年から昭和5 3年まで、約25%のシェアを有していたものと認めるのが相当である。 被控訴人バルカー及び被控訴人ノザワについては、前記イの各証拠上に単年分しか記載がなく、本件全証拠を精査しても、被控訴人バルカーが、自ら製造、販売した②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材について、被控訴人ノザワが、自ら製造、販売した②石綿含有吹付 けロックウールについて、一定の期間にわたって一定のシェアを継続的に 有していたことを認めるには足りない。 被控訴人ナイガイについては、前記イの各証拠上に記載がなく、その他、被控訴人ナイガイが、自ら製造、販売した②石綿含有吹付けロックウールについて、一定期間にわたって一定の規模のシェアを継続的に有していたと認めるに足りる証拠はない。 ⑷ 被控訴人らの主張についてア被控訴人らの中には、前記のシェアを考慮するに際しては、耐火被覆用途の吹付け材の代替製品であるせっこう、バーミキュライト(ひる石)、セラミックなどを主原料とする吹付け材、石灰質原料(消石灰等)やけい酸質原料(けいそう土等)を主原料とし、石綿や しては、耐火被覆用途の吹付け材の代替製品であるせっこう、バーミキュライト(ひる石)、セラミックなどを主原料とする吹付け材、石灰質原料(消石灰等)やけい酸質原料(けいそう土等)を主原料とし、石綿やロックウール等を補助剤とするけい 酸カルシウム板(耐火被覆板)、マット状のセラミックファイバーやロックウール、鉄網モルタル(ラスモルタル)の施工面積や施工量等を考慮に入れる必要がある旨を主張する者がある。 しかし、被控訴人らが主張する上記各建材のうち、吹付け材については、④石綿含有吹付けバーミキュライトの用途は主として内装であることが認 められ、また、その他の吹付け材や、マット状のセラミックファイバーやロックウール、鉄網モルタル(ラスモルタル)についてはこれらの施工量等を認めるに足りる的確な証拠も見当たらない。さらに、けい酸カルシウム板(耐火被覆板)については、例えば、昭和52年の耐火被覆材全般の施工実績推定は837万2000㎡であるところ、耐火被覆材としてのけい酸カルシウ ム板の施工実績推定は69万㎡とされている(甲A1177(119頁))のであり、かえって、同年における耐火被覆用の吹付け材の施工実績推定は吹付けロックウール(乾式)だけでも682万㎡とされている(甲A1177(119頁))こと、一般論としても、耐火被覆については耐火機能やコストの観点から吹付けロックウールが推奨されることが多い(乙ニ46(398 頁))ことをも勘案すれば、耐火被覆材のシェアの大半はロックウール吹付 け材が占めていたものと考えられ、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種(耐火被覆材)や⑫石綿含有耐火被覆板を考慮に入れたとしても、前記⑶の判断が左右されるものではない。 イ被控訴人太平洋セメントは、昭和49年に無石綿の 考えられ、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種(耐火被覆材)や⑫石綿含有耐火被覆板を考慮に入れたとしても、前記⑶の判断が左右されるものではない。 イ被控訴人太平洋セメントは、昭和49年に無石綿の吹付けロックウールを開発し、昭和50年にはこれを商品化していたから、被控訴人太平洋セメン トの②石綿含有吹付けロックウールの施工量として示される数値には無石綿の吹付けロックウールの施工量が相当量含まれている旨を主張する。 しかし、証拠(乙ニ50)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人太平洋セメントは同年1月頃には無石綿の吹付けロックウールを製造していたことが認められるものの、これを超えて、被控訴人太平洋セメントが無石綿の吹 付けロックウールをどの程度販売していたのかといった事実関係を認めるに足りる的確な証拠はない。この点、被控訴人太平洋セメントの元従業員であるX3は、その陳述書(乙ニ49)において、被控訴人太平洋セメントは昭和49年の当時上記建材をかなりの数量販売していた旨を述べる(3頁)ものの、上記陳述書の内容によってもその具体的な数量は明らかではない。 かえって、上記陳述書においては、上記建材には接着強度の問題で顧客からのクレームが多く、石綿を含有する製品を指定する顧客も依然として存在していた旨が述べられており(3頁)、かかる内容に照らせば、被控訴人太平洋セメントは上記無石綿の吹付けロックウールの販売を一旦は開始したものの、その後、顧客のクレーム等のために上記建材を全く又はほとんど販売し なくなった可能性もあるものというべきである。以上によれば、この点に関する被控訴人太平洋セメントの主張により、前記⑶の判断が左右されるものではない。 ⑸ 小括以上によれば、被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールに ある。以上によれば、この点に関する被控訴人太平洋セメントの主張により、前記⑶の判断が左右されるものではない。 ⑸ 小括以上によれば、被控訴人太平洋セメントの②石綿含有吹付けロックウールに ついては、相応の建築現場数を前提とする場合には、シェアを用いた手法によ り、現場到達事実を認めることができる場合があるといえる。 3 保温材⑴ 控訴人らが、保温材について、本件被災者らの主要原因建材として主張するのは、⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材及び⑩石綿保温材の4つの建材である。なお、 国交省データベースには、保温材として、この4つの建材に加え、⑨石綿含有パーライト保温材が掲載されている。上記各建材は、いずれも保温を目的とするものであり、相互に代替性、競合性があると考えられることから、これらを合算したシェアを検討すべきである。 ⑵ 証拠(甲A1171(93頁)、1407(100頁))によれば、公刊され た文献に、被控訴人らの昭和50年から昭和53年にかけての⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材について、別紙7-2のとおりの出荷量及びシェアに関する記載(なお、「シェア」欄の数値の一部は、当裁判所が上記記載の内容を前提に算出したものである。)があることは認められる。上記各データの信用性に疑義を生じさせるような特段の事情のない限りは、上記各証拠に掲載されたデ ータの内容を前提に、被控訴人らが製造、販売した建材に係るシェアを認定することができるのは、前記2⑶イに記載のとおりである。 ⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材は、保温材の中で、過去の使用量が最も多い保温材であること(甲A1334の1(33頁)、乙アA35(34頁))、そのシェアは、被 、前記2⑶イに記載のとおりである。 ⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材は、保温材の中で、過去の使用量が最も多い保温材であること(甲A1334の1(33頁)、乙アA35(34頁))、そのシェアは、被控訴人ニチアスが約30%、被控訴人エーアンドエーが約2 0%という大きなシェアを占めていたこと、⑧石綿含有バーミキュライトを製造販売していたのは、被控訴人ニチアスであり、⑩石綿保温材を製造販売していた企業は、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人ニチアスであり、他の企業がこれらを製造販売していたことをうかがわせる証拠はないこと(甲C29の59、61から63)から、⑥石綿含有けいそう土保温材及び⑨石綿含有パー ライト保温材の製造販売が終了した昭和50年以降については(甲C29の4 3、60)、被控訴人ニチアス及び被控訴人エーアンドエーが、上記各建材を合算したシェアにおいて、比較的大きな割合を占めていたことがうかがわれる。 そして、⑧石綿含有バーミキュライト及び⑩石綿保温材の出荷量は不明であるが、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材に⑧石綿含有バーミキュライト及び⑩石綿保温材を合算しても、被控訴人ニチアス及び被控訴人エーアンドエーの 2社を合わせたシェアは50%を下ることはない。また、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材の被控訴人ニチアスと被控訴人エーアンドエーのシェア(被控訴人ニチアスが約30%、被控訴人エーアンドエーが約20%)を大きく動かすほど両者の⑧石綿含有バーミキュライト及び⑩石綿保温材の出荷量に開きがあったことを認めるに足りる証拠はない。そうすると、昭和50年以降の⑦ 石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト及び⑩石綿保温材を合算したシェアは、被控訴人ニチアスが約30%、被控訴人エーアン に足りる証拠はない。そうすると、昭和50年以降の⑦ 石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト及び⑩石綿保温材を合算したシェアは、被控訴人ニチアスが約30%、被控訴人エーアンドエーが約20%と認めるのが相当である。 もっとも、断熱材市場の全貌(甲A1171(5、7、88、90頁))によれば、保温、保冷、耐火用のパーライト(無石綿製品と考えられる。)が、昭和 52年に7万5400㎥(パーライトの密度(200㎏/㎥)で換算すると1万5080トン)出荷されていたことが認められる。昭和52年の⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材の出荷量が1万9000トンであることからすると、上記各建材のシェアを認定するにあたっては、無石綿製品のパーライトの出荷量を踏まえた検討をする必要があるところ、前記証拠によれば、パーライトの シェアは、三井金属工業が72.1%、被控訴人太平洋セメント(日本セメント)が14.6%、宇部産業が13.3%であったことが認められることから、無石綿製品を考慮した場合における被控訴人ニチアス及び被控訴人エーアンドエーのシェアは、相当低下するものと認められるが、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材の出荷量のほうが多いことから、保温、保冷、耐火用のパーライ トを合算しても、上記認定のシェアを半分以下に低下させることはない。 そうすると、昭和50年以降、被控訴人ニチアスのシェアは少なくとも15%、被控訴人エーアンドエーのシェアは少なくとも10%はあったものと認められる。ただし、被控訴人ニチアスが⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材を製造販売していたのは昭和55年までであり、被控訴人エーアンドエーが⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材を製造販売していたのは昭和53年までであ るから、上記 スが⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材を製造販売していたのは昭和55年までであり、被控訴人エーアンドエーが⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材を製造販売していたのは昭和53年までであ るから、上記シェアを認めることができるのは、被控訴人ニチアスについては昭和55年まで、被控訴人エーアンドエーについては昭和53年までに限られるものと考えるのが相当である。 ⑶ 以上によれば、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人ニチアスの⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト及び⑩石綿保温材につ いては、相応の建築現場数を前提とする場合には、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができる場合があるといえる。 4 耐火被覆材⑴ 国交省データベースには、耐火被覆材として、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種及び⑫石綿含有耐火被覆板の2つが掲載されており、控訴人らは、い ずれについても主要原因建材であると主張する。これらは、いずれも鉄骨の耐火被覆に用いられる板状の建材であり、その用途、形状に照らし、相互に代替性、競合性があるといえる。したがって、上記各建材の建築現場への到達を検討するに際して上記各建材のシェアを検討するに当たっては、これらを合算して検討する必要がある。 また、吹付け材と耐火被覆材は、いずれも主に鉄骨造建物における耐火被覆という用途が共通しており、相互に代替性、競合性があるものと認められる。 したがって、耐火被覆材のシェアを用いた方法による現場到達事実の認定にあたっては、この点についても考慮する必要がある。 ⑵ 「無機繊維系建材と石膏ボード」(甲A1139(24頁))には、上記各建 材の生産状況についての記載があり、同記載は昭和45年当時の被控訴人らの 上記各建材 がある。 ⑵ 「無機繊維系建材と石膏ボード」(甲A1139(24頁))には、上記各建 材の生産状況についての記載があり、同記載は昭和45年当時の被控訴人らの 上記各建材に係る月間の生産能力についてのもので、同時点における上記各建材の出荷量についての記載はなく、同時点における上記各建材に係る我が国全体での生産能力についての記載もないが、前記2⑵のとおり、シェアを検討するに当たっては、生産能力(月間)に応じた生産量及び出荷量であったと認めるのが相当である。また、「断熱材市場の全貌-断熱材市場の実態と商品競合 分析」(甲A1171・93頁。なお、92頁も参照)には被控訴人らの昭和50年から昭和52年までの⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種の出荷量が記載されている。なお、上記証拠(甲A1171)における上記各年の出荷量の合計は、「アスベスト含有廃棄物の処理技術調査」(甲A1024)の3-5頁に記載された上記各年の出荷量とかい離しているが、これは、平成17年度 に行われた調査であり、出荷量が上記証拠(甲A1171)より少ないことからすると、約30年の経過により十分な調査ができなかった可能性が高く、上記証拠(甲A1171)の記載の信用性を減殺させるものではない。 しかし、前記2⑷アのとおり、耐火被覆材のシェアの大部分は②石綿含有吹付けロックウール等のロックウール吹付け材が占めていたことを考慮すると、 耐火被覆用途の建材全般における⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種及び⑫石綿含有耐火被覆板のシェアは、相当低いものと考えられる。 ⑶ 以上によれば、耐火被覆材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種及び⑫石綿含有耐火被覆板)については、吹付け材(特にロックウール吹付け材)について考慮する必要があり、個々の被災者 と考えられる。 ⑶ 以上によれば、耐火被覆材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種及び⑫石綿含有耐火被覆板)については、吹付け材(特にロックウール吹付け材)について考慮する必要があり、個々の被災者が主として上記各建材を使用していた などの事情がない限り、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることはできない。 5 ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種⑴ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・ 平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、いずれも防火性や耐火性が あり、外装材としては軒天井材等として、内装材としては壁材、天井材等として使用され、特に、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板と㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、いずれも、浴室、台所等の火気、湿気のある箇所に用いられることが多い(甲C30の3、甲C1001の2、10)。このように、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボー ド・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、上記建材の性質、施工部位等において共通性が高く、相互に代替性、競合性があるものというべきである。したがって、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種のシェアを検討するに当たっては、これらを合算して検討する必要があるというべきである。 ⑵ア証拠(甲A1138(23頁))によれば、公刊された文献に、前記⑴の3つの建材のうち⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板について、別紙7-3-1のとおりの昭和43年から昭和45年 23頁))によれば、公刊された文献に、前記⑴の3つの建材のうち⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板について、別紙7-3-1のとおりの昭和43年から昭和45年までのシェアに関する記載があること(なお、「シェア」欄の各数値は、当裁判所が上記記載の内容を前提に算出したものである。)が認めら れる。 また、証拠(甲A1150(48頁)、1167(48頁)、1176(44頁))及び弁論の全趣旨によれば、公刊された文献に、前記⑴の3つの建材に関し、別紙7-3-2のとおりの昭和49年、昭和51年及び昭和53年のシェアに関する記載があること(なお、「シェア」欄の各数値は、当裁判所 が上記記載の内容を前提に算出したものである。)が認められる。 さらに、証拠(甲A1150(50頁)、1167(50頁)、1176(47頁))によれば、公刊された文献に、前記⑴の3つの建材のうち㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種に関し、別紙7-3-3のとおりの昭和49年、昭和51年及び昭和53年のシェアに関する記載があること(なお、「シェ ア」欄の各数値は、当裁判所が上記記載の内容を前提に算出したものである。) が認められる。 「セメント系不燃建材」(甲A1138)は昭和46年に、「建材用途・部位別需要動向と競合性」(甲A1167)は昭和51年に、「昭和52~53年版建材用途・部位別需要動向と競合性」(甲A1150)は昭和52年に、「建材用途・部位別需要動向と競合性」(甲A1176)は昭和55年に、 それぞれ発行された文献であることが認められるところ、前記2⑵で述べたとおり、上記各データの信用性に疑義を生じさせるような特段の事情のない限りは、上記各証拠に掲載されたデータの内容を前提に、 それぞれ発行された文献であることが認められるところ、前記2⑵で述べたとおり、上記各データの信用性に疑義を生じさせるような特段の事情のない限りは、上記各証拠に掲載されたデータの内容を前提に、被控訴人らが製造、販売した建材に係るシェアを認定することができるものというべきである。 イまた、これらの資料は、昭和53年までのものであるが、昭和50年以降 は、短期間でシェアが激変する事態が生じていたとは考え難いことから、特段の事情のない限り、昭和54年以降のシェアを推認する資料となるものである。ただし、別紙7-3-1ないし3に記載された被控訴人らのうち、被控訴人ニチアスは平成4年に㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の製造、販売を終了し、また、被控訴人エム・エム・ケイは、平成5年に⑯石綿含有 スレートボード・平板の製造、販売を終了し、かつ、平成3年以降は無石綿のけい酸カルシウム板第1種の製造、販売を開始し、平成5年以降は上記無石綿製品が被控訴人エム・エム・ケイによるけい酸カルシウム板第1種の出荷量の9割超を占めるようになったことが認められる(乙ワ10(4、5頁))。 そうすると、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、別紙7- 3-1ないし3の1つないし複数において相応のシェアがあったことが記載されていることを勘案すると、前記アの各証拠に基づいてシェアの推認をすることができるのは、平成4年までに限られるものと考えるのが相当である。 ⑶ア本件被災者らとの関係で、自らが製造又は販売した⑮石綿含有スレートボ ード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有け い酸カルシウム板第1種の1つないし複数が主要原因建材とされている被控訴人ら(上記各主要原因建材について損害賠 ド・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有け い酸カルシウム板第1種の1つないし複数が主要原因建材とされている被控訴人ら(上記各主要原因建材について損害賠償責任が認められた場合に、当該責任を承継する被控訴人企業を含む。)は、被控訴人エーアンドエー、被控訴人クボタ、被控訴人ケイミュー、被控訴人神島化学工業、被控訴人ニチアス、被控訴人日東紡績、被控訴人ノザワ及び被控訴人エム・エム・ケイで ある。以下、これらの被控訴人らにつき、個別に検討する。 イ被控訴人エーアンドエー 被控訴人エーアンドエーは、昭和30年代以前から、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板を製造、販売しており、昭和46年以降は㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種も製 造、販売していた(甲C29の111ないし129、136ないし145、215ないし229、233、234、248、655ないし671、673ないし676、684、685)。 被控訴人エーアンドエーは、昭和43年から昭和45年にかけて、別紙7-3-1のとおり、自らが製造、販売する⑮石綿含有スレートボード・ フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板について、朝日石綿工業分で約19ないし24%、浅野スレート分で約18ないし27%、両社の合計分で約36ないし51%のシェアを継続的に有していたものと認められる。 また、被控訴人エーアンドエーは、昭和49年から昭和53年にかけて、 別紙7-3-2及び3のとおり、石綿スレートボードとけい酸カルシウム板との合計で、朝日石綿工業分で約18ないし21%、浅野スレート分で約13ないし15%、両社の合計で約33ないし37%のシェアを継続的に有しており、かつ、石 り、石綿スレートボードとけい酸カルシウム板との合計で、朝日石綿工業分で約18ないし21%、浅野スレート分で約13ないし15%、両社の合計で約33ないし37%のシェアを継続的に有しており、かつ、石綿セメントけい酸カルシウム板についても、朝日石綿工業分で約19ないし22%、浅野スレート分で約6ないし9%、両 社の合計分で約25ないし30%のシェアを継続的に有していたことが 認められる。そして、別紙7-3-2の出荷量推定の数値から別紙7-3-3に記載された石綿セメントけい酸カルシウム板の出荷量推定の数値を控除して求めた数値は石綿スレートボードのみの出荷量推定に近似する数値となるものと考えられるところ、上記のように控除した結果は別紙7-3-4のとおりとなり、被控訴人エーアンドエーは、昭和49年から 昭和53年にかけて、石綿スレートボードについても、朝日石綿工業分で約18ないし22%、浅野スレート分で約16ないし18%、両社の合計で約34ないし40%のシェアを継続的に有していたものと考えることができる。上記石綿スレートボードには⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板以外の石綿含有スレート ボードが含まれていると考えられるところ、石綿含有スレートボードの大半は⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板が占めていたことからすれば(甲1519の1ないし4)、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板のみのシェアも同様であったものと考えられる。 なお、別紙7-3-2及び4の昭和53年の各数値はいずれもドライ製品等を含むものである。証拠(甲A1503(6、7、74、75頁))及び弁論の全趣旨によれば、業界団 ったものと考えられる。 なお、別紙7-3-2及び4の昭和53年の各数値はいずれもドライ製品等を含むものである。証拠(甲A1503(6、7、74、75頁))及び弁論の全趣旨によれば、業界団体である石綿スレート協会が把握していた平成2年に出荷された上記ドライ製品のほとんどは屋根材が占めていたこと、上記ドライ製品の全てが被控訴人クボタの製品であったこと、被 控訴人クボタは屋根材として使用される建材として㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートを古くから販売していたことが認められる。他方、これらの建材について、被控訴人エーアンドエーの製品は国交省データベースに掲載されていない。そうすると、上記各別紙の昭和53年の各数値からドライ製品分を控除した場合、被控訴人エーアンドエーの上記シェアは、少 なくとも大きく低下することはなく、むしろ増加する可能性が高いものと 考えられる。 また、後記⑸エのとおり、上記石綿セメントけい酸カルシウム板の出荷量推定の大部分は㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が占めるものと考えられることから、前記の石綿セメントけい酸カルシウム板のシェアは、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種のシェアに近似するものと考えら れる。したがって、被控訴人エーアンドエーの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種のシェアは、上述の被控訴人エーアンドエーの石綿セメントけい酸カルシウム板のシェアに近似するものということができる。 環境省の依頼によって社団法人日本作業環境測定協会に設置された建築物の解体等における石綿飛散防止検討会が平成17年11月に作成し た環境省検討会報告には、別紙6-8のとおり、石綿含有建築材料(成形板)の出荷量についての記載がある(甲A396(5頁))。上記環境省検討会報告が作成され 止検討会が平成17年11月に作成し た環境省検討会報告には、別紙6-8のとおり、石綿含有建築材料(成形板)の出荷量についての記載がある(甲A396(5頁))。上記環境省検討会報告が作成された時期が、国交省データベースが公表された時期に近いことに照らせば、別紙6-8の表の最上段に記載された石綿含有建材の種別と国交省データベースの建材の種別とは対応しているものと考えら れる。そして、石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の各出荷量として別紙6-8の「石綿含有スレートボード」欄及び「石綿含有けい酸カルシウム板第一種」欄に対応する昭和49年から平成4年までの数値をそれぞれ合計すると、石綿含有スレートボードについては6億9154万7000㎡、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種に ついては3億9287万㎡となる。 そこで、このような石綿含有スレートボードと㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の各出荷量累計と、別紙7-3-3、4に記載した被控訴人エーアンドエーの石綿スレートボード及び石綿セメントけい酸カルシウム板の昭和49年以降の各シェアのうち最小値(石綿スレートボードにつ き、朝日石綿工業分は昭和49年の17.5%、浅野スレート分は同年及 び昭和53年の16.1%。石綿セメントけい酸カルシウム板につき、朝日石綿工業分は昭和51年の18.8%、浅野スレート分は同年の5.8%)に基づき、被控訴人エーアンドエーについての石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合算したシェアを控えめに算出すると、以下の計算式のとおり、被控訴人エーアンドエーは、昭和49 年から平成4年まで、石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合わせたシェアとして、朝日 アを控えめに算出すると、以下の計算式のとおり、被控訴人エーアンドエーは、昭和49 年から平成4年まで、石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合わせたシェアとして、朝日石綿工業分で17.9%(小数点第2位以下切捨て)、浅野スレート分で12.3%(同上)、両社の合計で約30%のシェアを有していたものと認められる。 (計算式) 朝日石綿工業分:(6億9154万7000×0.175+3億9287万×0.188)÷(6億9154万7000+3億9287万)≒17.9%浅野スレート分:(6億9154万7000×0.161+3億9287万×0.058)÷(6億9154万7000+3億9287万) ≒12.3%以上によれば、被控訴人エーアンドエーは、昭和49年から平成4年まで、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合わせて約30%のシェアを有していたものと推認することができる。そうすると、前記第 2の2⑴のとおり、被控訴人エーアンドエーの上記各建材は、6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性があると考えられる。 ウ被控訴人クボタ及び被控訴人ケイミュー 別紙7-3-2のとおり、証拠(甲A1176(44頁))には、昭和53年の石綿スレートボードの出荷量推定として、久保田鉄工(前提事実に よれば、被控訴人クボタを意味するものと解される。)につき700万枚 との記載がある。しかし、前記イで認定したとおり、被控訴人クボタは古くから㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートを製造、販売しており、業界団体である石綿スレート協会が把握していた平成2年に出荷されたドライ製品の全て 。しかし、前記イで認定したとおり、被控訴人クボタは古くから㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートを製造、販売しており、業界団体である石綿スレート協会が把握していた平成2年に出荷されたドライ製品の全てが被控訴人クボタの製品であり、同年のドライ製品のほとんどは屋根材が占めているのであるから、これらを勘案すれば、被控訴人ク ボタは、平成2年より前から、屋根材としてのドライ製品を多く製造、販売していたことが認められる。これらの事実に、別紙7-3-2の昭和53年のデータはドライ製品を含むものであることを併せ考えれば、上記700万枚との出荷量推定のデータの全部ないしほとんどは被控訴人クボタが製造、販売した㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートの出荷量推定が占 めているものと認められる。したがって、証拠(甲A1176(44頁))の記載をもって、被控訴人クボタが、自らが製造、販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板につき、別紙7-3-2に記載したシェアを有していたことを認めることはできない。その他、被控訴人クボタが、自らが製造、販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板につき、 一定の期間にわたって一定のシェアを継続的に有していたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、被控訴人クボタの⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板について、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認定することはできない。 被控訴人クボタは、前記前提事実のとおり、平成15年12月、被控訴 人ケイミューに対し、被控訴人クボタの屋根材及び外壁材事業等並びにこれに関する権利及び義務の全部を会社分割によって移転したことが認められる。したがって、被控訴人クボタが自ら製造、販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板について本件の被災者らに対して びにこれに関する権利及び義務の全部を会社分割によって移転したことが認められる。したがって、被控訴人クボタが自ら製造、販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板について本件の被災者らに対して損害賠償責任を負う場合には、被控訴人ケイミューも同責任を負うこととなるが、 前記のとおり、被控訴人クボタの⑮石綿含有スレートボード・フレキシ ブル板について、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認定することはできないから、これについて、被控訴人ケイミューが責任を負うと認めることもできない。 エ被控訴人神島化学工業被控訴人神島化学工業が製造した㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1 種の多くは被控訴人大建工業向けのOEM製品であるところ、これを前提に、控訴人らは、上記建材については、被控訴人大建工業に対してではなく、被控訴人神島化学工業に対して損害賠償責任を追及していることから、証拠(甲A1167(50頁)及び甲A1150(50頁))にある被控訴人大建工業についての記載は、被控訴人神島化学工業についての記載と読 み替えることとする。 別紙7-3-3のとおり、被控訴人神島化学工業は、自らが製造、販売した石綿セメントけい酸カルシウム板について、昭和49年には12. 1%、昭和51年には9.4%の各シェアを有していたことが認められる。 しかし、このほかに被控訴人神島化学工業が上記建材について一定の期間 にわたってかかるシェアを継続的に有していたことを認めるに足りる証拠はない。また、上記各シェアはいずれも10%前後であるところ、被控訴人神島化学工業が石綿含有スレートボードについて一定のシェアを有していたことを認めるに足りる証拠はない。これを前提に、前記アと同様の考慮を行うと、⑮石綿含有スレー も10%前後であるところ、被控訴人神島化学工業が石綿含有スレートボードについて一定のシェアを有していたことを認めるに足りる証拠はない。これを前提に、前記アと同様の考慮を行うと、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿 含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合算すれば、被控訴人神島化学工業が自ら製造、販売した㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種について有するシェアは、上記10%前後よりも相当程度小さくなるものと考えられる。他に、被控訴人神島化学工業が、自らが製造、販売する㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種につき、一定の期 間にわたって一定のシェアを継続的に有していたことを認めるに足りる 証拠はない。したがって、被控訴人神島化学工業の㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種について、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認定することはできない。 オ被控訴人ニチアス被控訴人ニチアスは、昭和30年代から、㉓石綿含有けい酸カルシウム 板第1種を製造、販売していた(甲C29の774、775、781ないし796)。 被控訴人ニチアスは、昭和49年から昭和53年にかけて、別紙7-3-3のとおり、石綿セメントけい酸カルシウム板について、35%前後のシェアを継続的に有していたものと認められる。 以上を前提に、前記イにおけると同様に、別紙7-3-3に記載した被控訴人ニチアスの石綿セメントけい酸カルシウム板の昭和49年以降の各シェアのうち最小値(昭和53年の32.5%)を基に、被控訴人ニチアスについての石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合算したシェアを控えめに算出すると、以下の計算のとお り、被控訴人ニチアスは、昭和49年から を基に、被控訴人ニチアスについての石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合算したシェアを控えめに算出すると、以下の計算のとお り、被控訴人ニチアスは、昭和49年から平成4年まで、石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種とを合わせたシェアとして、11.7%(小数点第2位以下切捨て)のシェアを有していたものと認められる。 (計算式) 3億9287万×0.325÷(6億9154万7000+3億9287万)≒11.7% 以上によれば、被控訴人ニチアスは、昭和49年から平成4年まで、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合わせて約10%のシ ェアを有していたものと推認することができる。そうすると、前記第2の 2⑴のとおり、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性があると考えられる。 カ被控訴人日東紡績被控訴人日東紡績について、控訴人らは㉓石綿含有けい酸カルシウム板第 1種を主要原因建材として主張しているが、これについて前記⑵の各証拠には記載がなく、その他、被控訴人日東紡績の㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種のシェアを認めるに足りる証拠はない。したがって、被控訴人日東紡績の㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種について、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認定することはできない。 キ被控訴人ノザワ被控訴人ノザワは、昭和43年から昭和45年にかけて、別紙7-3-1のとおり、自らが製造、販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板につ キ被控訴人ノザワ被控訴人ノザワは、昭和43年から昭和45年にかけて、別紙7-3-1のとおり、自らが製造、販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板について、15%程度のシェアを継続的に有していたことが認められる。 しかし、被控訴人ノザワは、別紙7-3-2のとおり、石綿スレートボードとけい酸カルシウム板との合計で、昭和49年は9.2%、昭和51年から昭和53年にかけては、5%程度のシェアしか有しておらず、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種については、別紙7-3-3のとおり、相応のシェアを有していたとは認められない。 したがって、被控訴人ノザワの⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種については、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認定することはできない。 ク被控訴人エム・エム・ケイ 被控訴人エム・エム・ケイは、昭和30年代から⑮石綿含有スレートボ ード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板を製造、販売しており、昭和47年以降は㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種も製造、販売していた(甲C29の209ないし212、276、277、811ないし819)。 被控訴人エム・エム・ケイは、別紙7-3-1のとおり、自らが製造、 販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板につき、昭和45年には14.2%のシェアを有していたことが認められる。 また、被控訴人エム・エム・ケイは、別紙7-3-2、3のとおり、昭和49年から昭和53年にかけて、石綿スレートボードとけい酸カルシウ ム板との合計で、約12%のシェアを継続的 が認められる。 また、被控訴人エム・エム・ケイは、別紙7-3-2、3のとおり、昭和49年から昭和53年にかけて、石綿スレートボードとけい酸カルシウ ム板との合計で、約12%のシェアを継続的に有しており、かつ、石綿セメントけい酸カルシウム板についても、約9ないし12%のシェアを継続的に有していたことが認められる。 そして、前記イにおけると同様の検討から、別紙7-3-4のとおり、被控訴人エム・エム・ケイは、石綿スレートボードについても、約12な いし14%のシェアを継続的に有していたものと考えることができ、被控訴人エム・エム・ケイの⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板及び⑯石綿含有スレートボード・平板のみのシェアも以上と同様であったものと考えられる(なお、別紙7-3-2、4の昭和53年の各数値はいずれもドライ製品等を含むものであるが、㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレート については被控訴人エム・エム・ケイの製品は国交省データベースに掲載されていないことは、被控訴人エーアンドエーの場合と同様である。)。また、前記アにおけると同様の検討から、被控訴人エム・エム・ケイは、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種のシェアについても、上述の石綿セメントけい酸カルシウム板のシェアと近似するシェアを継続的に有して いたものということができる。 このような石綿含有スレートボードと㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の各出荷量累計と、別紙7-3-3、4に記載した被控訴人エム・エム・ケイの石綿スレートボード及び石綿セメントけい酸カルシウム板の昭和49年以降の各シェアのうち最小値(石綿スレートボードにつき昭和53年の11.5%。石綿含有けい酸カルシウム板につき昭和51年の9. 4%)に基づき、被 及び石綿セメントけい酸カルシウム板の昭和49年以降の各シェアのうち最小値(石綿スレートボードにつき昭和53年の11.5%。石綿含有けい酸カルシウム板につき昭和51年の9. 4%)に基づき、被控訴人エム・エム・ケイについての石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合算したシェアを控えめに算出すると、以下の計算式のとおり、被控訴人エム・エム・ケイは、昭和49年から平成4年まで、石綿含有スレートボード及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合わせたシェアとして、10.7%(小数点第 2位以下切捨て)のシェアを有していたものと認められる。 (計算式)(6億9154万7000×0.115+3億9287万×0.094)÷(6億9154万7000+3億9287万)≒10.7%以上によれば、被控訴人エム・エム・ケイは、昭和49年から平成4年 まで、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を合わせて約10%のシェアを有していたものと推認することができる。そうすると、前記第2の2⑴のとおり、被控訴人エム・エム・ケイの⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含 有けい酸カルシウム板第1種は、20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性があると考えられる。 ⑷ 控訴人らの主張についてア控訴人らは、現場到達事実を検討するにあたり、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板と⑰石綿含有スレー トボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板及び⑲ 石綿含有スレートボード・その他とを一体として取り扱 ⑯石綿含有スレートボード・平板と⑰石綿含有スレー トボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板及び⑲ 石綿含有スレートボード・その他とを一体として取り扱った上、スレート統計年報(甲A1503、1517の44ないし46、53)に基づいて、上記各建材の北海道ないし全国におけるシェアを算出すべき旨を主張するものとも解される。 しかし、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレー トボード・平板と⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板及び⑲石綿含有スレートボード・その他との間に、シェアの合算が必要となるといえる程度の代替性、競合性があることを認めるに足りる的確な主張立証はない。この点、控訴人らは、上記5つの建材につき、一般に「スレートボード」として流通すること、いずれも内装材 (壁、天井材)として用いられること、上記5つの建材を使用する職種が同一であることを指摘するが、仮にこれらの事実を前提としたとしても、代替性、競合性があることが直ちに裏付けられるものとはいえない。これに加え、上記のスレート統計年報ないしこれを前提とする控訴人らの主張に関しては、時期によって㉟石綿含有窯業系サイディングが上記スレート統計年報の どの項目においてどのように考慮されているのかが明らかではなく、上記スレート統計年報の各項目に対応する建材の種別が必ずしも明確とはいえないといった点や、控訴人らは上記スレート統計年報から上記5つの建材のシェアを算出するに当たって上記スレート統計年報における「その他」欄、「ドライ製品」欄の各数値も考慮しているところ、これらの数値は上記5つの建 材とは異なる建材(ドライ製品のほとんどは、㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレー 上記スレート統計年報における「その他」欄、「ドライ製品」欄の各数値も考慮しているところ、これらの数値は上記5つの建 材とは異なる建材(ドライ製品のほとんどは、㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレートのような屋根材であると認められる。)に関するものである可能性が高いといった問題がある。 以上によれば、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 イ控訴人らは、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種のシェアを「日本の建 材産業」(甲A1177)を用いて算出すべき旨を主張するものとも解され る。 「日本の建材産業」(甲A1177(48頁))によれば、石綿セメントけい酸カルシウム板の昭和53年の月間の生産枚数として、被控訴人ニチアスにつき25万2000枚、朝日石綿工業につき23万枚、浅野スレートにつき4万2000枚、被控訴人神島化学工業につき15万7000枚、三菱セ メント建材株式会社(以下「三菱セメント建材」という。)につき11万5000枚との記載があることが認められるところ、これらを年間の生産枚数に換算すると、それぞれ、302万4000枚、276万枚、50万4000枚、188万4000枚、138万枚となる。これらを別紙7-3-3の昭和53年の各数値と比べると、被控訴人ニチアス、三菱セメント建材及び浅 野スレートについてはおおむね同じ水準であると評価することができるものの、被控訴人神島化学工業及び朝日石綿工業については大きなかい離が生じている。そして、被控訴人神島化学工業及び朝日石綿工業がいずれもけい酸カルシウム保温材を製造、販売していることに鑑みれば、上記かい離は「日本の建材産業」(甲A1177)に記載されたデータに上記保温材等の他の 建材の生産数量が含まれているために生じたものではないかとの疑義 保温材を製造、販売していることに鑑みれば、上記かい離は「日本の建材産業」(甲A1177)に記載されたデータに上記保温材等の他の 建材の生産数量が含まれているために生じたものではないかとの疑義が生じ、この疑義を払拭するに足りる証拠はない。この点に関し、控訴人らは、上記甲A1177の48頁の外装用、内装用といった用途部位の記載や、49頁に掲載された製品がいずれも国交省データベース上は㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種に分類されていることなどを指摘するが、これらの記 載があることによって上述のような他の建材の混入が必ずしも回避されるものとはいえないから、控訴人らの上記指摘の点をもって上記疑義が払拭されるとはいえない。 以上によれば、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 ⑸ 被控訴人らの主張について ア被控訴人らの中には、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、ひいては、 ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種との関係で、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板及び㉕石綿含有せっこうボード、床材等のシェアも合算して検討すべき旨を主張する者がある。 しかし、⑳石綿含有スラグせっこう板は、前記認定事実(第1節第1の2 ⑵ウ)のとおり、表層材の種類により、内装材、外装材、軒天井材等、施工部位や使われ方が異なり、多くは居室の内装工事の仕上げ材として使用されるのであるから、⑳石綿含有スラグせっこう板と⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種との間に、シェアの合算が必要な程度の代替性、競合 性があるとはいえないものというべきである。 ボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種との間に、シェアの合算が必要な程度の代替性、競合 性があるとはいえないものというべきである。 また、㉑石綿含有パルプセメント板は、前記認定事実(第1節第1の2⑵ウ)によれば、外装材として軒天井に使用される例はあるが、耐水性が低いため、主として内装材として使われるものであることに照らせば、㉑石綿含有パルプセメント板と⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石 綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種との間に、シェアの合算が必要な程度の代替性、競合性があるとはいえないものというべきである。 さらに、㉕石綿含有せっこうボードについては、前記認定事実(第1節第1の2⑵ウ)によれば、事務所、病院、公共施設等の天井がその使用箇所 として多く挙げられており、水や湿気の多い箇所に適さないこと(乙キ19)からすれば、㉕石綿含有せっこうボードと⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種との間に、シェアの合算が必要な程度の代替性、競合性があるとはいえないものというべきである。この点、被控訴人エーアンドエーは、 ㉕石綿含有せっこうボードには、防水ボードもある旨主張するが、㉕石綿含 有せっこうボードの中で防水ボードの占めた割合は明らかではなく、大きな割合を占めたことを窺わせる証拠もないから、この点に関する主張は、上記判断を左右するものではない。 床材については、これが具体的にどのような建材を意味するのかが必ずしも明らかではないことに加え、床材は床に施工されるのが通常であると考え られることに鑑みれば、床材と⑮石綿含有 ものではない。 床材については、これが具体的にどのような建材を意味するのかが必ずしも明らかではないことに加え、床材は床に施工されるのが通常であると考え られることに鑑みれば、床材と⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種との間に代替性、競合性があるとはいえないものというべきである。 以上によれば、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 イ被控訴人らの中には、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種のシェアに関 し、「建材用途・部位別需要動向と競合性」(甲A1167)に記載された昭和49年の数値と「防火建材の市場性と成長性-開発・流通・施工関連企業戦略と市場性-」(甲A1313)の6頁に記載された数値とのかい離を指摘する者がある。 しかし、被控訴人らの上記主張は、証拠(甲A1313)の6頁及び7頁 に記載された生産量の記載について、実績量が集計されているのは昭和49年1月から同年5月までであり、同年全体の生産量については昭和48年の実績量と比較して算出された推定量であることを前提としているところ、仮にかかる前提が成り立つとしても、上述のような推定量にすぎない数値とのかい離があることをもって、証拠(甲A1167)に記載された各数値の信 用性に疑義が生じるということはできないし、証拠(甲A1313)の推定値に信用性を認めてそのとおりのシェアを認定することもできない。 以上によれば、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 ウ被控訴人らの中には、建材のシェアをもって企業の責任を問うのであれば、当該企業が少なくとも一定の期間にわたって継続的に高いシェアを有して いたことが立証されなければならず、ある企業がある一時期において らの中には、建材のシェアをもって企業の責任を問うのであれば、当該企業が少なくとも一定の期間にわたって継続的に高いシェアを有して いたことが立証されなければならず、ある企業がある一時期において上述の ような高いシェアを有していたとしても、当該企業が他の時期にもかかる高いシェアを有していたと考える必然性はない旨を主張する者がある。 しかし、前記⑶の推認に疑義を生じさせるような事情を認めるに足りる的確な証拠はない。かえって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイについては、証拠(甲A1520(34、35 頁)、乙シ205の1ないし5)及び弁論の全趣旨によれば、公刊された文献には、㉟石綿含有窯業系サイディングを含むものではあるが、けい酸カルシウム板の企業別のシェアの推移につき、被控訴人ニチアス(日本アスベスト)、朝日石綿工業、三菱セメント建材、浅野スレートが、昭和54年、昭和55年の各年において、それぞれ約30%、約18%、約10%、約6%の各シ ェアを有しており、上記各シェアは、けい酸カルシウム板のメーカー中、それぞれ第1位、第2位、第3位、第5位であり、かつ、昭和56年についても同様の見込みである旨が記載されていること、公刊された文献には、平成7年から平成10年頃にかけての繊維混入けい酸カルシウム板(けいカル板)の推定シェアとして、被控訴人ニチアスにつき35%、浅野スレートにつき 25%、アスクにつき20%との記載があり、かつ、上記建材の主要メーカーとして、被控訴人エム・エム・ケイが平成27年10月1日に商号変更をする前の商号である三菱マテリアル建材株式会社が記載されていること、の各事実が認められる。これらの事実に照らせば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス ム・ケイが平成27年10月1日に商号変更をする前の商号である三菱マテリアル建材株式会社が記載されていること、の各事実が認められる。これらの事実に照らせば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、少なくとも㉓石綿含有 けい酸カルシウム板第1種については、昭和54年以降も昭和53年以前と同様のシェアを継続的に有していたことがうかがわれる。 以上によれば、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 エ被控訴人らの中には、証拠(甲A1167及び甲A1150)の各データには、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、輸入板及びフネンカ等の他の 企業のけい酸カルシウム板の各出荷量が含まれており、上記各データはこれ らを加味して修正される必要がある旨を主張する者がある。 しかし、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種の昭和50年ないし昭和53年における各出荷量は、昭和50年につき16万9000㎡、昭和51年につき59万2000㎡、昭和52年につき30万5000㎡、昭和53年につき17万9000㎡である(甲C16(10頁))。他方で、㉓石綿含有 けい酸カルシウム板第1種の上記各年における各出荷量は、昭和50年につき666万2000㎡、昭和51年につき995万9000㎡、昭和52年につき1061万6000㎡、昭和53年につき1198万1000㎡であり(甲C16(9頁))、上記各年のいずれにおいても、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の出荷量は、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種の出荷 量に比べてはるかに多かったものである。この点に鑑みれば、上記各データに⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種の出荷量が含まれていたとしても、そのことによって、前記⑶の認定ないし判断が左右されるものではない 比べてはるかに多かったものである。この点に鑑みれば、上記各データに⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種の出荷量が含まれていたとしても、そのことによって、前記⑶の認定ないし判断が左右されるものではない。 また、被控訴人らが輸入板として指摘する建材である製品名「グラサル」、「タイラックス」については、上記甲A1167及び甲A1150のいずれ においても指摘されており(甲A1150(50頁)、1167(50頁))、上述の他の企業の出荷分とともに上記各頁における「その他」として考慮されているものと考えられるところ、これについて修正が必要と認めるに足りる証拠はない。 以上によれば、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 オ被控訴人らの中には、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の主要な切断方法はカッターを用いる方法であり、電動丸のこで切断する方法が一般的であったことはなく、建材をカッターで切断する場合には石綿粉じんはほとんど発生しない旨を主張する者がある。 確かに、証拠(乙シ3、乙マ1022(5、14頁)、1026(1頁)、 1027の1(1頁)、2(3頁)、3(1頁)、4(1頁)5(2頁)、乙マ 1039の1(16、17頁)、2(122、123頁)、3(33頁)、4(22頁)、5(68頁))によれば、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は、木材や合板と同様にのこびき、カッター等で切断できる建材で、薄ければカッターで切り込みを入れ、当該切り込みに沿って手で折り曲げることで切断することができ、厚さが5ないし6mmのものについてはカッターを用いて 切断されることも、それなりに多かったものと認められる。 しかし、他方で、証拠(乙シ3、乙マ1022(14頁)、1026(1、2頁))及び弁論の全趣旨によ mmのものについてはカッターを用いて 切断されることも、それなりに多かったものと認められる。 しかし、他方で、証拠(乙シ3、乙マ1022(14頁)、1026(1、2頁))及び弁論の全趣旨によれば、業界団体であるせんい強化セメント板協会が公刊した技術資料には上記建材の切断方法として、スレートのこ、電動のこを使用する方法が記載されていること、特に上記建材のうち厚さが8 mmを超えるものの切断や、切断面が外に見える施工については丸のこが用いられていたことが認められ、これらの事実に照らせば、上記建材が電動丸のこなどによって切断されることは、少なくとも相応にあったものというべきである。また、被控訴人らが提出する証拠は、石綿粉じんの飛散が社会的に問題とされ、本件のような紛争が生じた後に作成されたものが多く、本件 の被災者らが建築作業に従事していた当時の実情が直ちにそこに記載されているとおりのものであったといえるものでもない。 以上によれば、この点に関する被控訴人らの主張は理由がないし、そもそも㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種等のボード類が、被控訴人らが主張するようにカッターで切断されるもので、石綿粉じんを発生させるものでは なかったとすれば、これらの建材以外からは石綿粉じんを曝露する可能性が低い、主として木造建物を建築していた大工が石綿関連疾患に罹患することはなかったはずであり、このことからしても被控訴人らの上記主張が理由のないものであることは明らかというべきである。 カ被控訴人エーアンドエーは、建材の用途によって区別されるべきマーケッ トを同一視して建材の到達を議論することはできない旨を主張する。被控訴 人エーアンドエーの上記主張は、被控訴人エーアンドエーが製造、販売する⑮石綿含有スレー べきマーケッ トを同一視して建材の到達を議論することはできない旨を主張する。被控訴 人エーアンドエーの上記主張は、被控訴人エーアンドエーが製造、販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板は、居住専用か否かを含めて、用途別にマーケットが区別されており、上記建材が住宅用に用いられることは少ない旨を指摘するものとも解される。 これについて、被控訴人エーアンドエーは、証拠として、不燃建材の流通 と市場(抜粋)(乙キ16(42、51、54頁))を指摘するが、上記乙キ16の51、54頁の記載の内容は、それ自体明確とはいい難く、かつ、被控訴人エーアンドエーの⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板についてのものであるかどうかも明らかとはいえないもので、これにより被控訴人エーアンドエーの上記主張に係る事実関係を認めることはできず、他にこれ を認めるに足りる証拠はない。。 以上によれば、この点に関する被控訴人エーアンドエーの主張は理由がない。 ⑹ 小括以上によれば、被控訴人エーアンドエーの⑮石綿含有スレートボード・フレ キシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、被控訴人エム・エム・ケイの⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種については、相応の建築現場数を前提とする場合には、シェアを用いた手法によって、 その建築現場への到達を認定することができる場合があり得るものというべきである。 6 ㉒石綿含有押出成形セメント板㉒石綿含有押出成形セメント板は、前記認定事実(第1節第1の2⑵ウ)によれば、一般的には非耐力壁用材料として、 とができる場合があり得るものというべきである。 6 ㉒石綿含有押出成形セメント板㉒石綿含有押出成形セメント板は、前記認定事実(第1節第1の2⑵ウ)によれば、一般的には非耐力壁用材料として、外壁材や間仕切壁材に用いられる建 材である。また、証拠(乙アA1022(55から57頁))によれば、㉒石綿含 有押出成形セメント板は、メーカーの工場でプレカットした上で、現場へ直送しており、プレカット率は約90%であること、施工には、特殊工具を必要とするなど、専門工事業者以外に取り扱うのは難しいものであることが認められる。さらに、別紙6-8によれば、㉒石綿含有押出成形セメント板の出荷量は、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓ 石綿含有けい酸カルシウム板第1種などと比べて相当少ないものであることが認められる。これらの事情に照らすと、専門工事業者以外の者が、屋内の作業現場において、㉒石綿含有押出形成セメント板を新規に取り扱う機会は、ほとんどなかったものと考えられる。そうすると、㉒石綿含有押出形成セメント板については、各被災者の具体的な事情を踏まえた上で現場到達事実の認定を行うことが 相当な建材であるというべきである。 したがって、㉒石綿含有押出形成セメント板については、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることはできない。 7 ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板⑴ 証拠(甲A1150(72頁)、甲1174(75頁)、甲A1176(80 頁)、甲A1177(122頁))によれば、公刊された文献に、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板について、シェアに関する記載があることが認められる。 ⑵ しかし、公刊された文献である「昭和52~53年版建材用途・部位別需 頁))によれば、公刊された文献に、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板について、シェアに関する記載があることが認められる。 ⑵ しかし、公刊された文献である「昭和52~53年版建材用途・部位別需要動向と競合性」(甲A1150(165頁))において、昭和51年における住宅用天井材の出荷面積について、出荷面積合計12万2290千㎡のうち、 天井用合板が32.7%、セミハードボードが10.6%、インシュレーションボードが9.2%、せっこう化粧板が15.0%を占めるところ、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板は5.3%にすぎないこと、上記の出荷面積に係るシェアは昭和51年のものであり、その後はせっこう化粧板のシェアが急激に上昇していることから、シェアの割合は変化することが予想される旨の記載が あること、昭和51年における非住宅用天井材の出荷面積については、出荷面 積合計2万9430千㎡のうち、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板は22. 0%を占める旨の記載があることが認められる。 また、別紙6-8のとおり、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板が出荷されていたのは昭和62年までであり、かつ、その出荷量の合計は2億1676万5000㎡であるところ、かかる出荷量の合計は、天井材として使用されるこ ともある石綿含有スレートボードや㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の出荷量の合計(前者につき、9億5787万3000㎡。後者につき、4億3001万2000㎡)と比べて少ないものであることが認められる。 このように、天井材については、代替製品が多く、天井材全体における㉔石綿含有ロックウール吸音天井板の占める割合が、かなり低いものであることを 踏まえると、たとえ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板の出荷量の中で高いシェアを有 代替製品が多く、天井材全体における㉔石綿含有ロックウール吸音天井板の占める割合が、かなり低いものであることを 踏まえると、たとえ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板の出荷量の中で高いシェアを有していたからといって、天井材として用いられる機会が多かったと直ちに推認することはできない。そうすると、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板については、各被災者の具体的な事情を踏まえた上で現場到達事実の認定を行うことが相当な建材であるというべきである。 ⑶ 以上によれば、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板については、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることはできない。 8 ㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレート、㉟石綿含有窯業系サイディング、㊲石綿含有スレート波板・大波、㊳石綿含有スレート波板・小波及び㊴石綿含有スレート波板・その他 ⑴ 前記第2節第3の3⑵のとおり、被控訴人らは、屋外での使用、加工等が予定されている上記各建材について、屋外での建築作業に従事する者に対し、警告義務を負っていたものとは認めることができない。したがって、上記各建材については、シェアを用いた手法による現場到達事実が認められるか否かにかかわらず、控訴人らの主張は理由がない。 ⑵ これに対し、控訴人らは、北海道においては特に冬期には外装材や屋根材を 屋内に持ち込んで加工することが多い旨を主張し、証拠として、X1の証言をあげている。 X1は、その尋問において、騒音、粉じんなどによる近所への迷惑や天候との関係でサイディングボードを車庫に持ち込んで切断することがあった旨を証言している(証人X1(31、32頁))。しかし、他方で、当該証言の前後 に、上記切断作業は屋外で行われることが多い旨、サイディングボードの切断は屋外 車庫に持ち込んで切断することがあった旨を証言している(証人X1(31、32頁))。しかし、他方で、当該証言の前後 に、上記切断作業は屋外で行われることが多い旨、サイディングボードの切断は屋外で行うのが通常である旨を証言し(証人X1(31、51頁))、また、木造建物の新築工事において車庫があったのは、X1が棟梁をした14ないし15件のうち3ないし4件であった旨を述べている(証人X1(51頁))。そうすると、X1においても、サイディングボードを車庫に持ち込んで切断する のは例外的な場合であったものと認められる。 また、被災者Jは、その尋問において、サイディングを切断するのは屋外である旨を供述し(被災者J本人(5、35頁))、その理由としてサイディングの長さが3m以上あることを挙げている(被災者J本人(35頁))。 さらに、一例として、写真撮影報告書(乙フ9)によれば、被控訴人東レA CEの㉟石綿含有窯業系サイディングは、長さが3mあるもので、同報告書にあるように、住宅の中に運び込もうとしても搬入は極めて困難であり、仮に中に入れることができたとしても、通常平面に置くスペースがないため、上記建材は通常は屋外で保管され、切断されるもので、屋内での切断が行われることは通常はないものと認められる。 加えて、北海道における冬期の建築作業について、本件と同種の訴訟の原告であるX2は、同訴訟における尋問において、北海道では冬には仕事がなかった旨を述べている(甲A2245(15、23頁))。 そうすると、控訴人らが主張するような作業を、具体的に繰り返し行っていたという場合はともかく、一般的にこのような事実関係を認めることはできな いといわざるを得ない。 以上によれば、この点に関する控訴人らの主張は理 具体的に繰り返し行っていたという場合はともかく、一般的にこのような事実関係を認めることはできな いといわざるを得ない。 以上によれば、この点に関する控訴人らの主張は理由がない。 9 その他の石綿含有成形板等(⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材) 上記各建材については、被控訴人らが一定の期間にわたって一定のシェアを継続的に有していたことを認めるに足りる証拠はない。したがって、上記各建材については、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることはできない。 10 ㊶石綿セメント円筒⑴ 証拠(甲A2203(139、140頁)、2204(86頁))によれば、 公刊された文献に、別紙7-4のとおりの㊶石綿セメント円筒のうちの耐火被覆塩ビ管のシェアに関する記載があること(昭和56年から昭和59年までの「シェア」欄の各数値は、当裁判所が上記記載の内容を前提に算出したものである。)が認められる。上記の各証拠はいずれも公刊された文献であり、前記2⑵のとおり、上記各データの信用性に疑義を生じさせるような特段の事情のな い限りは、上記各証拠に掲載されたデータの内容を前提に、被控訴人らが製造、販売した建材に係るシェアを認定することができるものというべきである。 ⑵ 本件被災者らとの関係で、自らが製造又は販売した㊶石綿セメント円筒が主要原因建材とされている被控訴人らは、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人ニチアスである。 ア 「昭和61年度版特殊管材市場の総点検と展望(上巻)」(甲A22 した㊶石綿セメント円筒が主要原因建材とされている被控訴人らは、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人ニチアスである。 ア 「昭和61年度版特殊管材市場の総点検と展望(上巻)」(甲A2203)の139から140頁及び「配管材市場のマーケット・マニュアル」(甲A2204)の86頁によれば、被控訴人エーアンドエーは、昭和57年から耐火被覆塩ビ管の販売を始め、販売実績に基づくシェアは、昭和59年に10%を超え、昭和61年には20%を超えたことが認められる。そして、証 拠(甲A2203)には、耐火被覆塩ビ管の昭和60年度の市場規模につい て、昭和57年当時と比較して130%の伸びを示しており、今後もその傾向は続くものと考えられる旨(142頁)、被控訴人エーアンドエーの商品である「浅野耐火パイプ」については、販売量が昭和57年当時よりもかなり増えており、北海道地方では、市営住宅で採用されている旨が記載されている(147頁)。他方で、証拠(甲C29の2088)によれば、「浅野耐 火パイプ」は、製造期間が昭和63年までである旨が記載されている。以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエーは、㊶石綿セメント円筒のうちの耐火被覆塩ビ管について、昭和59年から昭和60年までは10%以上のシェアを有しており、昭和61年から昭和63年までは20%以上のシェアを有していたものと認めることとができる。 イ被控訴人ニチアスについては、前記⑴の各証拠上に記載がなく、その他、被控訴人ニチアスが、㊶石綿セメント円筒について、一定期間にわたって一定の規模のシェアを継続的に有していたと認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 以上によれば、被控訴人エーアンドエーの㊶石綿セメント円筒については、相応の建築現場数を前提とする場合 て、一定期間にわたって一定の規模のシェアを継続的に有していたと認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 以上によれば、被控訴人エーアンドエーの㊶石綿セメント円筒については、相応の建築現場数を前提とする場合には、シェアを用いた手法により、現場到 達事実を認定することができる場合があるといえる。 11 ㊸混和材⑴ 証拠(甲A1248の1ないし4)及び弁論の全趣旨によれば、左官工事の現場では、古くからセメントモルタル塗りの際、セメントに砂を混合し、これに混和材として消石灰などのほかにアスベスト粉末を混合して作業性改善を 図るという習慣があったこと、被控訴人ノザワは、「テーリング」との商品名で、昭和31年から平成15年まで、混和材を製造、販売していたこと、アスベスト系混和材として、「テーリング」との名称の商品が特に有名である旨の複数の意見が存在することが認められる。また、証拠(乙ニ12、14、17)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人太平洋セメントは平成4年にモルタル混 和材の販売を開始したところ、その当時にはモルタル混和材の分野では被控訴 人ノザワの上記テーリングが90%以上の圧倒的なシェアを占めていると認識されていたこと、被控訴人太平洋セメントの上記モルタル混和材はその販売期間を通じて毎年1%程度のシェアに低迷し続け、被控訴人太平洋セメントは平成12年には上記モルタル混和材事業が不採算事業であると判断して同事業から撤退したことが認められる。 以上の事情に照らすと、被控訴人ノザワの上記テーリングは、その上記販売期間を通じ、㊸混和材において、極めて高いシェアを有しており、少なくとも30%以上のシェアを有していたものと認められる。そうすると、被控訴人ノザワの上記建材は、6件の建築現場のうち少なくとも1件に 期間を通じ、㊸混和材において、極めて高いシェアを有しており、少なくとも30%以上のシェアを有していたものと認められる。そうすると、被控訴人ノザワの上記建材は、6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性があると考えられる。 ⑵ 以上によれば、被控訴人ノザワの㊸混和材については、相応の建築現場数を前提とする場合には、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができる場合があるといえる。 12 その他の石綿含有建材(⑬屋根用折板石綿断熱材、⑭煙突用石綿断熱材及び㊷石綿発泡体) これらの建材は、改修工事又は解体工事における主要原因建材として挙げられているところ、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事又は解体工事において、石綿含有建材の撤去、廃棄作業に従事する者に対し、警告義務を負っていたものとは認めることができない。したがって、上記各建材については、シェアを用いた手法による現場到達事実が認められるか否かにかかわらず、 控訴人らの主張は理由がない。 第4 各被災者に対する共同不法行為の成否(個々の被災者について検討する場合、その場合の「控訴人ら」及び「被控訴人ら」は、それぞれ別紙3の各被災者に対応する控訴人欄記載の各控訴人及び請求の相手方欄記載の各被控訴人である。以下同じ。) 1 被災者A(番号1) ⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の1)のほか、証拠(甲A119、甲D1の2・3、被災者A本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Aの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Aは、昭和40年春頃から平成15ないし16年頃まで、内 旨によれば、被災者Aの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Aは、昭和40年春頃から平成15ないし16年頃まで、内装工として、金属内装の作業に従事した。被災者Aは、被控訴人らが石綿含有建材について警告義務を負うに至った昭和49年1月以降、昭和55年頃までは、パンの型などを製作するステンレス溶接の仕事を並行して行っており、その仕事のほうが儲かっていたので、金属内装の仕事よりも、ステ ンレス加工の仕事の割合ほうが多かった(被災者A本人(54、55、59頁))。また、平成2年頃までは、個人又は自らが設立した会社の営業活動も行っていたが、現場での作業も行っていた。 被災者Aは、主として鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物で建築作業に従事し、木造建物の建築作業に従事したことはなかった。 被災者Aは、金属内装の内装工として、まず、間仕切りや内壁の下地を、ボルトの打ち込み、鋲打ち、溶接(ただし、被災者A自身は溶接せず、長男等に行わせていた。)などにより固定し、次に、天井の下地や床の下地を取り付け、その後、壁、天井の仕上げとして、壁材や天井材などに切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらを張るといった作業を行っていた。設 備工事や電気工事は行っていなかったが、電気工に頼まれて、ボード類にドリルなどを用いて穴を開ける作業を行うことがあった。鉄骨造建物では、耐火被覆のための吹付け材や耐火被覆板が施工された直後に、作業の妨げとなる部分の吹付け材を削り取るなどして金属内装の作業を行うことになるが、吹付け工が吹付け作業を行うのと並行して同じ部屋で内装作業を することもあった。 イ建築現場数 被災者Aは、昭和 て金属内装の作業を行うことになるが、吹付け工が吹付け作業を行うのと並行して同じ部屋で内装作業を することもあった。 イ建築現場数 被災者Aは、昭和49年から昭和55年頃までの間、ステンレス加工の仕事が多かったものの年間15件程度の建築工事に従事しており、新築工事の割合が全体の1割程度、残りの9割程度が改修工事であった。建築工事に従事した建物の種類は、鉄骨造建物が約5割、鉄筋コンクリート造建 物が約5割であった。 被災者Aは、昭和55年頃から平成元年頃までの間、年間20件程度の建築工事に従事し、新築工事の割合が9割程度、残り1割程度が改修工事であった。建築工事に従事した建物の種類は、鉄骨造建物が約7割、鉄筋コンクリート造建物が約3割であった。平成2年以降は、会社の経営を自 らの長男に引継ぎ、長男の手伝いとして営業活動、集金や図面を書く仕事などを行っていたことから、被災者A自身が上記建築作業に従事した割合は、仕事量全体の半分以下であった。 被災者Aは、平成7年から平成10年まで、阪神淡路大震災の復旧工事に従事し、年間30件程度、概ね鉄筋コンクリート造建物の改修工事に従 事した。 被災者Aは、平成10年から平成15年まで、年間5、6件程度の建築工事に従事し、新築工事の割合が8割程度、残り2割程度が改修工事であった。建築工事に従事した建物の種類は、鉄骨造建物が約7割、鉄筋コンクリート造建物が約3割であった。 (甲D1の3の4(47頁・別紙「年間の作業現場数(特定できる作業現場を含む。)」)ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Aは、壁や天井などの下地の取付工事では、吹付け材を削り取ってからボルト打ちや溶接を行うので、吹付け材を削り取る際に 現場数(特定できる作業現場を含む。)」)ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Aは、壁や天井などの下地の取付工事では、吹付け材を削り取ってからボルト打ちや溶接を行うので、吹付け材を削り取る際に飛散した石綿粉 じんに曝露した。また、壁や天井の仕上げなどの際に、壁材や天井材などの 建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施すので、その際に、これらの建材から発散した石綿粉じんに曝露した。また、建築現場では、吹付け工の作業の前後に金属内装の作業を行うことや、他の職人が同時並行で作業を行っていることがあり、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。 エ補足説明前記アないしウに関し、被災者Aは、労災保険の申請手続において、厚生労働事務官からの聴取に際し、内装工としての建築作業への従事については述べておらず、かえって、被災者Aが従事した石綿に関する作業は、昭和29年から昭和30年にかけての夏休み、冬休み期間中に、アルバイトをして 保温材を巻く作業などに従事したことである旨述べるほか、昭和58年3月から平成2年6月まで、Y1工業を設立し、営業活動、銀行関係など経営者としての仕事を行っており、現場での仕事は全く行っていなかったこと、平成2年8月からは、息子の会社の営業を手伝ったり、何もしていない時期があったこと、平成10年4月から平成15年7月までは、工事見積もり、集 金などの業務に従事していたことなどを述べている(甲D1の2(4ないし8頁))。 しかし、被災者Aは、その理由について、尋問において、労災認定を得たかったからであると述べ、陳述書(甲Dの1の3の4(24頁))にも、上記のアルバイト作業以外に内装工として稼働していたことが労災認定に悪い 影響を及ぼすと困ると 、尋問において、労災認定を得たかったからであると述べ、陳述書(甲Dの1の3の4(24頁))にも、上記のアルバイト作業以外に内装工として稼働していたことが労災認定に悪い 影響を及ぼすと困ると思ったので、内装工としての作業内容を過少に申告した旨記載している。このような被災者Aの説明内容は、労災保険の関係では不相当なものであるものの、円滑に認定を受けたいことから上記のような説明を行ってしまうことも十分あり得ることで、理解することのできる内容であることから、上記の厚生労働事務官に対する供述内容をもって、直ちに前 記アないしウの認定は左右されない。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、別紙5-1の「No.」欄に記載のとおり、被災者Aに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石 綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材を主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含 有吹付けロックウ 付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含 有吹付けロックウールのみであり、そのシェアは約25%である。 被災者Aは、前記⑴イのとおり、上記期間内に、年間15件程度の建築工事に従事していたが、そのうち新築工事の割合が全体の1割程度であり、かつ、吹付け作業が行われる鉄骨造建物の建築工事に従事した割合は約5割であったことが認められる。そうすると、被災者Aが上記期間内に 鉄骨造建物の新築工事に従事した件数は、4年間で3件程度であり、相当少ないものといえる。 また、被災者Aは、鉄骨造建物の改修工事については、年間6ないし7件程度、4年間で27件程度の建築工事に従事したことが認められる。しかし、改修工事は、その規模や工事の箇所、工事の具体的な内容が大きく 異なるものであり、常に、耐火被覆を目的とする吹付け材が新たに施工さ れたかどうかは、必ずしも明らかではない。その上、被災者Aは、上記期間中、金属内装よりもステンレス加工の仕事の割合が多かったことを踏まえると、規模の大きな改修工事にはあまり携わっていなかったことも十分に考えられる。 以上の事情に照らすと、上記建材の現場到達事実について、シェアを用 いた手法による確率論的な見地から検討できる前提を欠いているものといわざるをえない。したがって、被控訴人太平洋セメントの上記建材が、上記期間内に、被災者Aの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 その他の被控訴人らの製造販売する①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含有吹付け材については、被災者Aの従事した建 たり到達していたとの事実を認めることはできない。 その他の被控訴人らの製造販売する①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含有吹付け材については、被災者Aの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠がない。 なお、被災者Aは、前記のとおり、改修工事において、鉄骨造建物に施工された耐火被覆用の吹付け材を剥がしたことがあることは認められるが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、 石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Aによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウ ム板第1種である(なお、被災者Aは、被控訴人ニチアスを相手とする訴 えを取り下げているので、被控訴人ニチアスに関する検討は行わない。)。 被災者Aは、前記⑴イのとおり、昭和49年から昭和55年までの7年間、年間15件程度、合計105件程度の建築工事に従事したことが認められる。そのうちの約9割は改修工事であるが、上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨 等の加工を施すことがあったものと 築工事に従事したことが認められる。そのうちの約9割は改修工事であるが、上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨 等の加工を施すことがあったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に17回程度(105件÷6)、被災者Aの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェ アが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に5回程度(105件÷20)、被災者Aの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 また、被災者Aは、前記⑴イのとおり、昭和56年から平成元年までの9年間、年間20件程度の建築作業に従事し、そのうち新築工事は9割 程度であったことから、年間18件程度(20件×0.9)、合計162件程度(18件×9)の新築工事に従事したものと認められる。そうすると、新築工事の建築現場に限ったとしても、被控訴人エーアンドエーの上記建材は27回程度(162件÷6)、被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は8回程度(162件÷20)、被災者Aの従事した建築現場に到達した高 度の蓋然性がある。 他方で、被災者Aは、前記⑴イのとおり、平成2年から平成4年までの間、長男の手伝いとして営業活動などを行っており、建築現場で建築作業に従事する件数は、仕事量全体の半分以下になったから、被災者Aが従事した建築工事の件数は必ずしも明らかではなく、当該建材の現場到達事 実について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討でき 事する件数は、仕事量全体の半分以下になったから、被災者Aが従事した建築工事の件数は必ずしも明らかではなく、当該建材の現場到達事 実について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討できる前 提を欠いているものといわざるをえない。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から平成元年までの間に製造販売していた上記建材は、別紙8-1に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つない し複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Aの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カ ルシウム板第1種が、被災者Aの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ウその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉒石綿含有押出成形セメ ント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材)上記各建材については、前記第3のとおり、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Aの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はな い。 ⑶ 小括前記⑴で認 用いた手法により現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Aの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はな い。 ⑶ 小括前記⑴で認定した被災者Aの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボ ード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Aの従事した建 築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Aが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Aが石綿関連疾患に罹患したことに寄与しているものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Aに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する 寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う(なお、寄与度については、後記第4節第3において検討する。以下同じ。)。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Aに対し、損害賠償責任を負わない。 2 被災者B(番号3) 前記第1節第2の2の認定事実によると、被災者Bは、吹付け工ではなく配管工であり、被控訴人らが石綿含有建材について警告義務を負うに至った昭和49年1月1日以降、建築現場で就労していたことが認められない。そうすると、被控訴人らには、被災者Bに対する警告義務違反が認められない。 したがって、被控訴人らは、被災者Bに対し、損害賠償責任を負わない。 3 被災者C(番号5)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の3)のほか、証拠(甲A113、119 被控訴人らは、被災者Bに対し、損害賠償責任を負わない。 3 被災者C(番号5)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の3)のほか、証拠(甲A113、119、甲D5の2・3、被災者C本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Cの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Cは、昭和35年頃から昭和54年頃まで、大工として、木造建物、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建て込み)、屋根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、外壁下地工事、 内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わり、また、鉄骨造建 物及び鉄筋コンクリート造建物の新築工事では、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事に携わった。その中で、各種ボード類等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。改修工事では、改修部分を撤去するために取り壊した後、新築工事と同様、各種ボード類等の切断、穿孔、研磨等の加工をするなどした。 被災者Cは、昭和57年6月から昭和58年7月まで、トイレ水洗化工事に従事した。地面を掘って配水管を引き込み、トイレ内の従前の床、壁、便器等などを外して、新たな床、壁、便器等を設置する作業を行った。 イ建築現場数 被災者Cは、被控訴人らが警告義務を負うに至った昭和49年1月以降、 同年5月から11月頃までの約7か月間、1件の鉄筋コンクリート造建物の新築工事、1件の木造建物の新築工事、10件程度の木造建物の改修工事に従事した。 被災者Cは、昭和49年12月 同年5月から11月頃までの約7か月間、1件の鉄筋コンクリート造建物の新築工事、1件の木造建物の新築工事、10件程度の木造建物の改修工事に従事した。 被災者Cは、昭和49年12月頃から昭和50年3月頃までの約4か月間、木造住宅の建築工事に従事し、2件の新築工事及び20件程度の改修 工事に従事した。 被災者Cは、昭和50年4月頃から同年12月までの約9か月間、木造住宅の建築工事に従事し、4件程度の新築工事、10件程度の改修工事及び2件程度の解体工事に従事した。 被災者Cは、昭和51年6月から昭和52年12月までの約1年7か月 間、木造住宅の新築工事、改修工事を合わせて合計5件くらいの建築作業に従事した。 被災者Cは、昭和54年1月から同年7月までの約7か月間、鉄筋コンクリート造りのマンションや学校など3か所程度の新築工事の建築作業に従事した。 被災者Cは、昭和57年6月から昭和58年7月までの1年2か月間、 約20件の戸建て住宅、約2件のアパートで、トイレ水洗化工事に従事した。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Cは、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボード類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材から生じた石 綿粉じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際にも、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。 トイレ水洗化工事においては、トイレ内の床、壁、便器などを破壊して撤去する際などに、これらの建材から発散した石綿粉じん を行う際にも、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。 トイレ水洗化工事においては、トイレ内の床、壁、便器などを破壊して撤去する際などに、これらの建材から発散した石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等(大工関係)ア控訴人らは、被災者Cが大工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-3-1の「No.」欄に記載のとおり、⑮石綿含 有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石 綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材を主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンド エー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Cは、前記⑴イないしのとおり、昭和49年から昭和54年 までの間のうちの3年10か月間で、合計11件程度の新築工事、改修工事を含めると合計56件程度の工事に従事していたものと認められる 災者Cは、前記⑴イないしのとおり、昭和49年から昭和54年 までの間のうちの3年10か月間で、合計11件程度の新築工事、改修工事を含めると合計56件程度の工事に従事していたものと認められる。そして、上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30% (建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に9回程度(56件÷6)、被災者Cの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。また、被災者Cは、被控訴人エーアンドエーの建材(浅野のスレート)を多く使用していたことを具体的に述べている(被災者C本人・6ないし8頁)。 他方で、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアがいずれも約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるところ、前記のとおり、被災者Cの従事した工事件数は、合計56件程度であることからすると、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしたとしても、当該建材が、 被災者Cの作業する建築現場に相当回数にわたり到達したとは認め難い。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエーが昭和50年から昭和53年までの間(被災者Cは昭和49年5月から昭和54年7月までの間に稼働していることから、昭和49年及び昭和54年については除外している。)に製造販売していた上記建材は、別紙8-2に記載のとおりであ ると認められるところ、これらの建材のうち1つないし複数については、 シェアを用いた手法により、被災者Cの従事した建築現場に相当 た上記建材は、別紙8-2に記載のとおりであ ると認められるところ、これらの建材のうち1つないし複数については、 シェアを用いた手法により、被災者Cの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Cの従事した建築現場に相当回数にわたり到 達したことを認めるに足りる証拠はない。 ウその他の建材(⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板 及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材) 上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Cの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 この点、被災者Cは、住宅の建築工事において、天井材に被控訴人大建工業の建材を使っており、「テックス」という名称の建材を使っていた旨陳述書に記載し、供述する(甲D5の3の1(12、14頁)、甲D5の3の4(11、12、14頁)、甲D5の3の5、被災者C本人(6、7、34、35頁))。しかし、他方で、被災者Cは、「テックス」は東洋ボードが 作っていたなどとも供述しており(被災者C本人(8頁))、被控訴人大建工業の製造販売した㉔石綿含有ロックウール吸音天井板に「テックス」という名称等のも 被災者Cは、「テックス」は東洋ボードが 作っていたなどとも供述しており(被災者C本人(8頁))、被控訴人大建工業の製造販売した㉔石綿含有ロックウール吸音天井板に「テックス」という名称等のものは見当たらず(甲C29の825ないし1021)、上記の陳述及び供述をもって、被控訴人大建工業の製造販売する㉔石綿含有ロックウール吸音天井板が、被災者Cの従事した建築現場に相当回数にわ たり到達していたとの事実を認めることはできない。 また、被災者Cは、昭和44年から昭和55年まで製造販売されていた被控訴人大建工業の「バラード」という名称の建材(甲C29の920)を使用していたと記憶している旨供述する(被災者C本人(9、35頁))。 この供述は、花の模様の天井であるとか、箱を車から落として角が全部傷ついたので買いにいったなどと具体的な内容に触れるものであり、その内 容は信用できる。しかし、被災者Cは、他方で、使う頻度の多い建材ではない旨述べている(被災者C本人(35頁))。また、被災者Cが、昭和35年頃から大工として稼働していること、「バラード」が製造販売されたのは昭和44年から昭和55年までであることを踏まえると、被災者Cが当該建材を用いた時期が、被控訴人大建工業が石綿含有建材について警告 義務を負うに至った昭和49年1月以降であるかについては、必ずしも明確ではない。これらの事情に照らすと、上記供述をもって、被控訴人大建工業の製造販売する㉔石綿含有ロックウール吸音天井板が、昭和49年1月以降に、被災者Cの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 さらに、被災者Cは、昭和49年5月から同年12月までにおける個人宅の改修工事において、被控訴人永大 した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 さらに、被災者Cは、昭和49年5月から同年12月までにおける個人宅の改修工事において、被控訴人永大産業のプリント合板を使った記憶がある旨供述する(甲D5の3の1(6、15頁)、被災者C本人(8頁))。 また、被控訴人永大産業は、昭和46年から昭和55年まで㉑石綿含有パルプセメント板を製造販売していたこと(甲C29の504ないし50 9)、昭和48年から昭和51年まで、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板を製造販売していたこと(甲C29の823、824)が認められる。 しかし、この被災者Cの供述等によっても、その商品名等は明らかでなく、当該建材が、石綿含有建材であるのか否か、いかなる区分の石綿含有建材に該当するのかなど明確でない上に、その内容は、1か所の建築現場で一 度使用したというものにすぎないのであるから、上記供述等をもって、被 控訴人永大産業の製造販売する石綿含有建材が、被災者Cの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 ⑶ 共同行為者の特定(トイレ水洗化工事関係)控訴人らは、被災者Cが、トイレ水洗化工事において、解体工事の場合と同様に、トイレ水洗化工事を行う床、壁、天井などに使用されるあらゆる石綿含 有建材からの石綿粉じんに曝露したとして、主要原因建材として、別紙5-3-2に記載された各建材を主張する。 しかし、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Cによる上記作業については、被控訴人らにおける警告義務違反は認め られない。 ⑷ 小括前 いて、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Cによる上記作業については、被控訴人らにおける警告義務違反は認め られない。 ⑷ 小括前記⑴で認定した被災者Cの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエーが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい 酸カルシウム板第1種が被災者Cの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Cが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Cが石綿関連疾患に罹患したことに寄与をしたものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエーは、被災者Cに対し、民法719条1 項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Cに対し、損害賠償責任を負わない。 4 被災者D(番号7) ⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況 前記認定事実(第1節第2の4)のほか、証拠(甲A113、362、1330、甲D7の2・3、控訴人D1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Dの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容被災者Dは、昭和40年頃から平成15年11月29日まで、冬期の約2 か月間を除く季節雇用の大工として、木造建物、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。 被災者Dは、昭和40年から昭和63年2月までは、一般木造住宅工事、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物の造作、公営住宅の造作の各建築作業に従事し 物、鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。 被災者Dは、昭和40年から昭和63年2月までは、一般木造住宅工事、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物の造作、公営住宅の造作の各建築作業に従事した。昭和63年5月以降は、公営住宅の建築、造作が中心であり、 一般住宅の建築は年2件程度であった。 被災者Dは、木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建て込み)、屋根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、外壁下地工事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わり、また、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の新築工事では、壁、天井、床 の下地工事及び仕上げ工事に携わった。その中で、各種ボード類等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。改修工事では、改修部分を撤去するために取り壊した後、新築工事と同様、各種ボード類等を加工するなどした。鉄骨造建物の建築工事では、上記の作業に加え、グラスウールやロックウールを削ったりする作業なども行った。 イ建築現場数一般的な大工は年間6件程度の新築工事のほか、改修や応援、手伝いなども考慮すると年間16件程度の工事に従事していたものと認められる(甲A362、1330(11ないし14頁))。被災者Dは、前記アのとおり、冬期間に稼働していなかったことを除いて、一般的な大工と稼働状況が異なる 事情は見当たらない。そうすると、被災者Dは、1年のうち冬期の約2か月 間稼働していなかったことを前提に、年間5件程度(6÷12×10)の新築工事に従事し、上記改修等を考慮すると年間13件程度(16÷12×10)の建築工事に従事していたものと認められる。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Dは、壁、天井、床の下地工事 10)の新築工事に従事し、上記改修等を考慮すると年間13件程度(16÷12×10)の建築工事に従事していたものと認められる。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Dは、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボー ド類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。鉄骨 造建物の建築工事では、吹付け材を削り取る作業を行うことがあり、その際に飛散した石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、別紙5-4の「No.」欄に記載のとおり、被災者Dに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウー ル及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿 含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板、㉛石綿含有けい酸カルシウム床材及び㉟石綿含有窯業系サイディングを主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿 含有吹付け材) ム床材及び㉟石綿含有窯業系サイディングを主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿 含有吹付け材) 前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントの製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 被災者Dは、前記⑴アのとおり、上記期間内に、一般木造住宅工事、鉄 骨造建物、鉄筋コンクリート造建物の造作、公営住宅の造作の各建築作業に従事しており、鉄骨造建物の建築作業に従事することもあったものと考えられるが、仮に鉄骨造建物の占める割合が全体の半分程度であったとしても、被災者Dが鉄骨造建物の新築工事に従事したの件数は、年間2ないし3件程度(5件×5割)、4年間で10件程度(2.5件×4年)で改修 工事を含めても年間6ないし7件程度(13件×5割)、4年間で26件程度(6.5件×4年)となるに過ぎないし、鉄骨造建物の割合が半分程度まであったと認めるに足りる証拠はない。このような被災者Dの従事した建築現場の件数を踏まえると、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアが約25%(8件の建築現場のうち少なくとも1件に到達し た高度の蓋然性がある)であったことからシェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしても、4回(26件÷8)に満たないものであったといわざるを得ず、被災者Dの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売する①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含 Dの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売する①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Dの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Dは、前記のとおり、改修工事においても、鉄骨造建物に施工された耐火被覆用の吹付け材を削る作業をしていたことが窺われるが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、 石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないか ら、被災者Dによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Dは、昭和49年から平成4年までの19年間、年間5件程度、合計95件程度(5件×19年)の新築工事に従事し、改修等を考慮すると年間13件程度、合計247件程度(13件×19年)の建築工事に従事したことが認められる。上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあ ったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンド 従事したことが認められる。上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあ ったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみで15回程度(95件÷6)、改修工事等を考慮した場合は41回程度(247件÷6)、被災者Dの従事した建築現場に到達した高度の 蓋然性があり、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみでそれぞれ4回程度(95件÷20)、改修工事等を考慮した場合はそれぞれ12回程度(247件÷20)、被災者Dの従事した建 築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から平成4年までの間に製造販売していた上記建材は、別紙8-3に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数、被控訴人ニチアスが製造販売した各建材のう ちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Dの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フ レキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及 築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フ レキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Dの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 エ㉟石綿含有窯業系サイディング被控訴人らは、前記第2節第3の3⑵のとおり、屋外での使用、加工等が 予定されている上記建材について、警告義務を負っていない。また、被控訴人らが、被災者Dとの関係で、上記建材について警告義務を負うべき特段の事情があると認めるに足りる証拠はない。したがって、被控訴人らには、被災者Dに対する警告義務違反は認められない。 オその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被 覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材) 上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法に より、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Dの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 被控訴人らの主張被控訴人ニチアスは、被災者Dが建築作業に従事したのは一般住宅又は公営 住宅のみであるところ、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種はその9割が中高層の非住宅の建物向けのものであるから、被控訴人ニ は、被災者Dが建築作業に従事したのは一般住宅又は公営 住宅のみであるところ、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種はその9割が中高層の非住宅の建物向けのものであるから、被控訴人ニチアスの上記建材が被災者Dに到達した蓋然性は認められない旨を主張し、これに沿う証拠として、「次の飛躍期をねらう石綿けい酸カルシウム板」(ヤノ・レポート昭和50年2月24日332号19頁)(乙マ1029)及び「繊維強 化セメント板」市場の動向(ヤノ・レポート2007年11月25日1239号52頁)(乙マ1030)を提出する。 この点、証拠(乙マ1029・21頁)及び弁論の全趣旨によれば、公刊された文献に、昭和50年当時の被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の出荷先は非住宅が90パーセントを占める旨、上記建材について は中高層の建築物における需要が圧倒的に多い旨の記載があることが認められる。他方で、証拠(乙マ1030・52頁)には、平成17ないし18年当時の被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種の用途はビル用(工場、マンションを含む。)が80パーセント、住宅用が20パーセントである旨の記載があることをも勘案すれば、被控訴人ニチアスの上記建材は、マ ンション等の比較的規模の大きな住宅においても使用されていたことがうかがわれる。また、証拠(甲D7の2(32、107頁))によれば、被災者Dは、木造等の一般住宅の工事に加え、鉄骨造建物の造作の工事、公営住宅の建築、造作の工事や、道営住宅の建築、造作の工事をしていたことや、被災者Dが昭和63年5月以降に従事した一般住宅の建築工事は年間2件程度であったこ とが認められる。そうすると、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウ ム板 たことや、被災者Dが昭和63年5月以降に従事した一般住宅の建築工事は年間2件程度であったこ とが認められる。そうすると、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウ ム板第1種が、被災者Dの従事した建築現場に到達する可能性は相応にあったものと考えられる。したがって、この点に関する被控訴人ニチアスの主張は理由がない。 ⑷ 小括前記⑴で認定した被災者Dの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前 記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Dの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Dが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者 Dが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Dに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Dに対し、損害賠償責 任を負わない。 5 被災者E(番号8)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の5)のほか、証拠(甲A113、362、1330、甲D8の2・3、控訴人E1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Eの 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容被災者Eは、昭和47年7月から平成18年9月まで、冬期の4か月間を除く季節雇用の 災者Eの 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容被災者Eは、昭和47年7月から平成18年9月まで、冬期の4か月間を除く季節雇用の大工として、主に個人住宅の建築作業に従事した。昭和58年7月から平成元年12月までの間は、体育館、学校、公園トイレの営繕工 事にも従事した。 被災者Eは、木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建て込み)、屋根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、外壁下地工事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わり、また、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の新築工事では、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事に携わった。その中で、各種ボード類等を取り扱 い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。改修工事では、改修部分を撤去するために取り壊した後、新築工事と同様、各種ボード類等を加工するなどした。また、建築作業の前提として、従前建てられていた建築物の解体作業にも従事した。 イ建築現場数 一般的な大工は年間6件程度の新築工事のほか、改修や応援、手伝いなども考慮すると年間16件程度の工事に従事していたものと認められる(甲A362、1330(11ないし14頁))。被災者Eは、前記アのとおり、冬期間に稼働していなかったことを除いて、一般的な大工と稼働状況が異なる事情は見当たらない。そうすると、被災者Eは、1年のうち冬期の4か月間 稼働していなかったことを前提に、年間4件程度(6件÷12か月×8か月)の新築工事に従事し、上記改修工事等を考慮すると年間10件程度(16件÷12か月×8か月)の建築工事に従事していたものと認められる。 ウ石綿粉じん曝露の状況被 件程度(6件÷12か月×8か月)の新築工事に従事し、上記改修工事等を考慮すると年間10件程度(16件÷12か月×8か月)の建築工事に従事していたものと認められる。 ウ石綿粉じん曝露の状況被災者Eは、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボー ド類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。さら に、被災者Eは、建築作業の前提として、従前建てられていた建築物の解体 作業にも従事し、撤去されるなどした石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等(大工関係)ア控訴人らは、被災者Eが大工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-5-1の「No.」欄に記載のとおり、吹付け材 (①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこ う板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板、㉛石綿含有けい酸カルシウム床材及び㉟石綿含有窯業系サイディングを主張す ㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板、㉛石綿含有けい酸カルシウム床材及び㉟石綿含有窯業系サイディングを主張するので、以下、これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿 含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 前記⑴アによれば、被災者Eが、上記期間内に、鉄骨造建物の建築作業に従事していたことを認めるに足りる証拠はない。 この点、証拠(甲D8の2(7、16、17頁))によれば、被災者Eは昭和47年7月から同年8月までの約1か月間、長野県所在の会社で、鉄骨造建物の建築作業に従事したこと、その際に、同じ作業場所で耐火被覆 材の吹付けが行われていたことは認められる。しかし、被災者Eは、その 後、北海道釧路市に転居し、昭和49年5月以降、上記会社とは異なる会社で就労していること(甲D8の2(7、30頁))、被災者Eは、昭和49年5月から昭和53年までの間、個人住宅の建築作業に従事していたこと(甲D8の2(7、17頁))に鑑みると、被災者Eが、前記の昭和49年5月から昭和53年までの間、鉄骨造建物の建築作業に従事していたと 認めることはできない。 したがって、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしても、被災者Eの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることはできない。 その て、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしても、被災者Eの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることはできない。 その他、被控訴人らの製造販売する①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Eの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Eは、昭和49年から平成4年までの19年間、年間4件程度、合計76件程度(4件×19年)の新築工事に従事し、上記改修工事等を考慮すると年間10件程度、合計190件程度(10件×19年)の工事に従事していたことが認められる。上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施す ことがあったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの 上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみで12回程度(76÷6)、上記改修工事等を考慮した場合は31回程度(190÷6)、被災者Eの従事した建築現場 とも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみで12回程度(76÷6)、上記改修工事等を考慮した場合は31回程度(190÷6)、被災者Eの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイ の上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみでそれぞれ3回程度(76÷20)、上記改修工事等を考慮した場合はそれぞれ9回程度(190÷20)、被災者Eの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から平成4年までの期間においてそれぞれ製造、販売していた上記建材は、別紙8-4に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数、被控訴人ニチアスが製造 販売した各建材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Eの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フ レキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Eの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Eは、前記期間中に解体作業にも従事していることが認められるが、前記⑴アのとおり、この解体作業は被災者Eが大工として建築 作業に従事 到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Eは、前記期間中に解体作業にも従事していることが認められるが、前記⑴アのとおり、この解体作業は被災者Eが大工として建築 作業に従事する前段階として行われたものであるから、被災者Eが解体作 業に従事していたことにより、被災者Eが大工として建築作業に従事する機会が減ったものとは考え難く、前記認定を妨げるものではない。 エ㉟石綿含有窯業系サイディング被控訴人らは、前記第2節第3の3⑵のとおり、屋外での使用、加工等が予定されている上記建材について、警告義務を負っていない。また、被控訴 人らは、被災者Eとの関係で、上記建材について警告義務を負うべき特段の事情があると認めるに足りる証拠はない。したがって、上記建材について、被控訴人らには、被災者Eに対する警告義務違反は認められない。 オその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟 質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材)上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法に より現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Eの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 共同不法行為者の特定等(解体工関係)控訴人らは、被災者Eが解体工として解体作業に従事していたことに係る主 要原因建材として、別紙5-5-2に記載された各建材を主張す 拠はない。 ⑶ 共同不法行為者の特定等(解体工関係)控訴人らは、被災者Eが解体工として解体作業に従事していたことに係る主 要原因建材として、別紙5-5-2に記載された各建材を主張する。 しかし、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事や解体工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Eによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ⑷ 小括 前記⑴で認定した被災者Eの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Eの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被 災者Eが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Eが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Eに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Eに対し、損害賠償責任を負わない。 6 被災者F(番号9)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の6)のほか、証拠(甲D9の2・3、被災者F 本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Fの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 第2の6)のほか、証拠(甲D9の2・3、被災者F 本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Fの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容被災者Fは、昭和49年6月から昭和54年12月まで、左官工として建築作業(モルタルを練る作業等)に従事した。 被災者Fは、昭和55年5月から平成2年12月まで、とびとして、主に鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の新築工事の現場において、足場の設置や組み替え、撤去等、足場の上や下の清掃、足場にシートを張るなどといった建築に従事した。また、平成3年4月から平成18年12月まで、とびとして、主として建物の解体作業が行われる建築現場において、 前記と同様の建築作業に従事した。 イ建築現場数被災者Fは、とびとして、昭和55年から平成2年まで、約40件から45件の新築工事の現場で建築作業に従事し、平成3年から平成18年まで、100件以上の解体工事の現場で建築作業に従事した。 ウ石綿粉じんの曝露状況 被災者Fは、とびとして、新築工事では、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんに曝露した。解体工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、被災者Fがとびとして建築作業に従事していたことに係る主 要原因建材として、別紙5-6に記載された各建材を主張するので、以下被災者Fが上記各建材から生じた石綿粉じんに曝露した態様ごとに検討する。 イ控訴人らは、被災者Fが、とびとして建築作業に従事していた際、被災者Fの頭上で行われていた吹付け作業から生じた吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含 生じた石綿粉じんに曝露した態様ごとに検討する。 イ控訴人らは、被災者Fが、とびとして建築作業に従事していた際、被災者Fの頭上で行われていた吹付け作業から生じた吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)の石綿粉じ んに曝露した旨主張する。 前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 しかし、被災者Fは、前記⑴アのとおり、とびとして建築作業に従事したのは昭和55年5月以降であるから、被控訴人太平洋セメントの製造販売した②石綿含有吹付けロックウールが、被災者Fの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Fの従事した建築現場 に相当回数にわたり到達していたことを認めるに足りる証拠はない。 この点、被災者Fは、頭上で行われていた吹付け作業から生じた吹付け材の石綿粉じんに曝露した旨主張する。しかし、被災者Fは、吹付け作業について、ノズルの先から霧のようなものが出ており、吹付けられた後は、綿が固まったような手で穴があくようなものであったなどと供述してい ることからすると(尋問調書29から30、32頁)、被災者Fの頭上で行われていた吹付け作業は、③湿式石綿含有吹付け材を用いたものではなく、乾式工法で吹付け材が用いられていたものと推認されるところ(第1節第1の2⑵ア)、耐火被覆用の②石綿含有吹付けロックウールは、昭和55年 た吹付け作業は、③湿式石綿含有吹付け材を用いたものではなく、乾式工法で吹付け材が用いられていたものと推認されるところ(第1節第1の2⑵ア)、耐火被覆用の②石綿含有吹付けロックウールは、昭和55年の時点では、製造販売を終了しており、石綿を含有しない吹付けロック ウールを用いた吹付作業であった可能性が高いことから、被災者Fの供述は、上記判断を左右するものではない。 ウ被災者Fが、とびとして、主に鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の新築工事の現場において、足場の設置や組み替え、撤去等、足場の上や下の清掃、足場にシートを張るなどといった建築に従事したことは認められる。 しかし、そのような作業内容をもって、被災者Fが、新規に又は後続作業者として、特定の石綿含有建材を直接取り扱ったとは認めることができず、前記第1の民法719条1項後段を類推適用する場合にはあたらない。 エ控訴人らは、被災者Fが、平成3年4月以降は主に建物の解体現場で作業に従事しており、解体工と同様に、当該建物で使用される全ての石綿含有建 材から生じる石綿粉じんに曝露した旨を主張する。 しかし、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、解体工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Fによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 オなお、被災者Fが左官として建築作業に従事していたことに係る主要原因 建材については、控訴人らの主張によっても特定されていない(令和2年10月20日付け控訴審準備書面(原告各論)7頁)。 ⑶ 小括以上によれば、被控訴人らは、被災者Fに対し、損害賠償責任を負わない。 7 被災者G(番号11) 定されていない(令和2年10月20日付け控訴審準備書面(原告各論)7頁)。 ⑶ 小括以上によれば、被控訴人らは、被災者Fに対し、損害賠償責任を負わない。 7 被災者G(番号11) ⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の7)のほか、証拠(甲A120、365、1330、甲D11の2・3、控訴人G1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Gの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Gは、平成元年6月から平成20年3月まで、配管工として、建築作業に従事した。 被災者Gは、新築工事や改修工事において、配管を通すための穴を開けるため、各種ボード類の切断、貫通作業を行い(スリーブ工事)、配管の長さを調整するために、配管の切断、加工を行うなどした。改修工事では、保温材 や断熱材が巻き付けてある古い配管を撤去するために、断熱材や古い配管を切断する作業を行った。鉄骨造建物の配管工事では、吹付け材を剥がしたりしながら、鉄骨に支持金具や吊りボルトを取り付けることもあった。 イ建築現場数被災者Gが従事した建築現場の現場数については、約20年間の就労期間 のうち、被災者Gの記憶に残っている作業現場は38か所であり、そのうち新築は20件であるが、小さな商業ビルやマンションなどの記憶に残らない小さな現場が多数存在すること(甲D11の3の1、3)、別件訴訟における配管工が、一人親方などは、大きな建物以外は、新築工事で2日ないし10日、改修工事で1日ないし7日は現場で作業し、複数の現場を掛け持ちする ことがある旨陳述していること(甲A365、1330)等を考慮すると、 被災者Gは、少なくとも年間30件以上の新築 で1日ないし7日は現場で作業し、複数の現場を掛け持ちする ことがある旨陳述していること(甲A365、1330)等を考慮すると、 被災者Gは、少なくとも年間30件以上の新築工事に従事していたものと認められる。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Gは、上記アのとおり、スリーブ工事を行う際に、各種ボード類から生じる石綿粉じんに曝露した。改修工事では、保温材等が巻き付けられて いる古い配管を切断する作業を行う際に、保温材や配管(石綿セメント円筒)から生じる石綿粉じんに曝露した。その他、鉄骨造建物の改修工事では、吹付け材を剥がす際や、石綿が飛散する現場で作業を行い、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等 ア控訴人らは、別紙5-7の「No.」欄に記載のとおり、被災者Gに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材、⑩石綿保温材、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレート ボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉖石綿含有パーライト板及び㊶石綿セメント円筒を主張するので、以下これらについて個別に検討す る。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和 53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含 有吹付けロックウールのみである。 しかし、被災者Gは、前記⑴アのとおり、配管工として建築作業に従事したのは平成元年からであるから、被控訴人太平洋セメントの製造販売した②石綿含有吹付けロックウールが、被災者Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Gは、改修工事において、既設の吹付け材を剥がしたことがあることは認められるが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人ら は、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Gによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ウ保温材(⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材) 前記第3の3のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人ニチアスが昭和50年から昭和55年までに製造販売した建材及び被控訴人エーアンドエーが昭和50年から昭和53年までに製造販売した建材である。 しかし、被災者Gが配管工として稼働を始めた平成元年6月の時点で、被控訴人らによる⑦石綿含有け 製造販売した建材及び被控訴人エーアンドエーが昭和50年から昭和53年までに製造販売した建材である。 しかし、被災者Gが配管工として稼働を始めた平成元年6月の時点で、被控訴人らによる⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材 の製造販売はいずれも終了していることが認められるから(甲C29の44ないし47、57、58、61ないし63)、上記建材が、被災者Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 なお、前記⑴ウによれば、被災者Gは、改修工事において、既設の保温 材を切断する作業に従事していたことは認められるが、前記イと同様、 被災者Gによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 エ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの間に製造販売した建材である。 被災者Gは、前記⑴ウのとおり、スリーブ工事を行う際に、上記建材から生じた石綿粉じんに曝露したものと認められるところ、改修工事では、 新規に使用されたボード類ではなく、既設のボード類にスリーブ工事を行う可能性もあることから、新築工事に限ったとしても、前記⑴イのとおり、年間30件以上の新築工事に従事しており、平成元年6月から平成4年までの約3年半の間、合計105件程度(30件×3.5年)の建築工事に従事したことが認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記 上の新築工事に従事しており、平成元年6月から平成4年までの約3年半の間、合計105件程度(30件×3.5年)の建築工事に従事したことが認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記 建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、17回程度(105件÷6)、被災者Gの従事した新築工事の建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも 1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、5回程度(105件÷20)、被災者Gの従事した新築工事の建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが平成2年から平成4年までの間(被災者G は平成元年6月から稼働していることから、平成元年については除外して いる。)に製造販売していた上記建材は、別紙8-5に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数、被控訴人ニチアスが製造販売した各建材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手 法により、被災者Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到 記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到 達したことを認めるに足りる証拠はない。 オ㊶石綿セメント円筒 前記第3の10のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和59年から昭和63年までの間に被控訴人エーアンドエーが製造販売したものである。 しかし、被災者Gは、前記⑴アのとおり、配管工として建築作業に従事したのは平成元年からであるから、被控訴人エーアンドエーの製造販売した㊶石綿セメント円筒が、被災者Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 その他、被控訴人らの製造販売する上記建材が、被災者Gの従事した建 築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、前記⑴ウによれば、被災者Gは、改修工事において、既設の石綿セメント円筒を切断する作業に従事していたことは認められるが、前記イと同様、被災者Gによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 カその他の建材(⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレート ボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板及び㉖石綿含有パーライト板)上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者 Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを 上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者 Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 小括前記⑴で認定した被災者Gの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・ エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Gの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Gが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Gが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Gに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Gに対し、損害賠償責任を負わない。 8 被災者H(番号13)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の8)のほか、証拠(甲A113、362、1330、甲D13の2・3、控訴人H1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Hの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Hは、昭和29年から昭和58年頃まで、冬期を除く季節雇用(おおむね4月から11月まで)の大工として、一般住宅や市営住宅の新築工事、学校の新築、増改築工事に従事した 容 被災者Hは、昭和29年から昭和58年頃まで、冬期を除く季節雇用(おおむね4月から11月まで)の大工として、一般住宅や市営住宅の新築工事、学校の新築、増改築工事に従事した。同年頃から平成20年12月まで、従前から行っていた大工の仕事を請負で行うようになったが、ほとんどは従前の勤務先の下請をしていた。 被災者Hは、一般住宅といった木造建物の建築作業に従事していたのみならず、病院の地下の改装工事の際に被災者Hの周りで他の作業員が吹付けを行っていた旨(甲D13の2(17頁))、学校の新築工事では体育館等で石綿の吹付け作業が行われており、粉じんがもうもうと立ち込める中での床貼り作業や、鉄骨に吹き付けられている石綿を剥がしてから棚を作る作業に従 事したことがある旨(甲D13の2(24頁))を述べていることから、鉄骨造建物の建築作業に従事することも相応にあったことが認められる。 被災者Hは、木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建て込み)、屋根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、外壁下地工事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わり、 また、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の新築工事では、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事に携わった。その中で、各種ボード類等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。改修工事では、改修部分を撤去するために取り壊した後、新築工事と同様、各種ボード類等を加工するなどした。 イ建築現場数一般的な大工は年間6件程度の新築工事のほか、改修や応援、手伝いなども考慮すると年間16件程度の工事に従事していたものと認められる(甲A362、1330(11ないし14頁))。被災者Hは、前記アのとおり、季節 は年間6件程度の新築工事のほか、改修や応援、手伝いなども考慮すると年間16件程度の工事に従事していたものと認められる(甲A362、1330(11ないし14頁))。被災者Hは、前記アのとおり、季節雇用として建築作業に従事していたことを除いて、一般的な大工と稼働状 況が異なる事情は見当たらない。そうすると、被災者Hは、1年のうち冬期 の4か月間稼働していなかったことを前提に、年間4件程度(6件÷12か月×8か月)の新築工事に従事し、上記改修等を考慮すると年間10件程度(16件÷12か月×8か月)の工事に従事していたものと認められる。 ウ石綿粉じん曝露の状況被災者Hは、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボー ド類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。鉄骨 造建物の建築作業では、吹付け材を削る作業を行う際などに、吹付け材から発散する石綿粉じんに曝露することがあった。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、別紙5-8の「No.」欄に記載のとおり、被災者Hに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウー ル及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含 板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿 含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材を主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材) 前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントの製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 被災者Hは、前記⑴アのとおり、上記期間内に、一般住宅や市営住宅の新築工事、学校の新築、増改築工事に従事しており、鉄骨造建物の建築作 業に従事することが相応にあったものと認められるが、仮に鉄骨造建物の占める割合が全体の半分程度であったとしても、被災者Hが鉄骨造建物の新築工事に従事した件数は年間2件程度(4件×5割)、4年間で8件程度(2件×4年)、改修工事を入れても年間5件程度(10件×5割)、4年間で20件程度(5件×4年)となるに過ぎないし、鉄骨造建物の割合 が半分程度はあったと認めるに足りる証拠はない。このような被災者Hの従事した建築現場の件数を踏まえると、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアが約25%(8件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性があ 足りる証拠はない。このような被災者Hの従事した建築現場の件数を踏まえると、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアが約25%(8件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であることから、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしても、3回(20件÷8)に満たないもの であったといわざるを得ず、被災者Hの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Hの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Hは、前記⑴ウのとおり、改修工事においても、鉄骨造建物に施工された耐火被覆用の吹付け材を削る作業をしていたことが窺われるが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Hによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務 違反は認められない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年か ら平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Hは、昭和49年から平成4年までの約18年間、年間4 間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Hは、昭和49年から平成4年までの約18年間、年間4件程度、合計76件(年間4件×19年)程度の新築工事に従事し、改修等を考慮 すると年間10件程度、合計190件(10件×19年)程度の建築工事に従事していたことが認められる。上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも 1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみで12回程度(76件÷6)、改修工事等を考慮した場合は31回程度(190件÷6)、被災者Hの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なく とも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみでそれぞれ3回程度(76件÷20)、改修工事等を考慮した場合はそれぞれ9回程度(190件÷20)、被災者Hの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及 び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から平成4年までの期間におい てそれぞれ製造、販売していた上記建材は、別紙8-6に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数、被控訴人ニチアスが製造 れぞれ製造、販売していた上記建材は、別紙8-6に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数、被控訴人ニチアスが製造販売した各建材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた 手法により、被災者Hの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Hの従事した建築現場に相当回数にわたり到 達したことを認めるに足りる証拠はない。 エその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、 ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材)上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Hの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証 拠はない。 ⑶ 小括前記⑴で認定した被災者Hの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石 綿含有スレートボード・平板 の曝露の状況や、前記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石 綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災 者Hの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことが認められることからすると、被災者Hが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Hが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・ エム・ケイは、被災者Hに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Hに対し、損害賠償責任を負わない。 9 被災者I(番号14) ⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の9)のほか、証拠(甲A120、甲D14の2・3、控訴人I本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者の稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Iは、昭和42年10月から平成21年3月まで、主に北海道で、配管工として、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物において、建築作業に従事した。 被災者Iは、給排水管を通すための穴を開けるため、コンクリートや各種ボード類の切断、貫通作業を行い(スリーブ工事)、配管の長さを調整するた めに、配管の切断、加工を行い、その後、開けた穴に配管を通し、流しや便所などの器具を取り付けるなどした。鉄骨造建物では、鉄骨に支持金具や吊りボルトを取り付けるため、吹付け の長さを調整するた めに、配管の切断、加工を行い、その後、開けた穴に配管を通し、流しや便所などの器具を取り付けるなどした。鉄骨造建物では、鉄骨に支持金具や吊りボルトを取り付けるため、吹付け材をへらなどで剥離、除去した。改修工事では、天井板や壁板を剥がす作業や、保温材が巻いてある状態の古い配管を電動ノコで切断する作業を行った。 被災者Iは、周囲で吹付け作業が行われる中で、配管作業に従事すること があったが、一般的には、吹付け作業と一緒に配管作業に従事することはなかった(被災者I本人(17頁))。 イ建築現場数被災者Iは、昭和42年10月から平成14年6月までの間、新築工事として、鉄筋コンクリート造建物における建築工事に従事することがほとんど であり、鉄骨造建物は1割に満たず、木造建物はほとんどなかった。新築工事の現場数は年間2、3か所で、約35年間に100か所近くになり、1か所の建築現場につき、概ね2ないし3か月を要したこと、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物の新築工事の合間に、改修工事や木造建物の新築工事を手掛けていたが、新築工事より少なかったことといった事情を考慮すると、 年間4件程度の新築工事及び1ないし2件程度の改修工事に従事していたものと認められる。(甲D14の2(17、49頁)、甲D14の3の3(1ないし3頁)、控訴人I本人(16、30ないし32頁))、ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Iは、上記アのとおり、スリーブ工事を行う際に、各種ボード類か ら発散する石綿粉じんに曝露した。また、配管の切断、加工を行う際に、配管から発散する石綿粉じんに曝露した。さらに、他の者の作業から発生したものも含め作業終了時の清掃の際にも石綿粉じんに曝露した。鉄骨造建物における建築工事 露した。また、配管の切断、加工を行う際に、配管から発散する石綿粉じんに曝露した。さらに、他の者の作業から発生したものも含め作業終了時の清掃の際にも石綿粉じんに曝露した。鉄骨造建物における建築工事では、吹付け材をへらなどで剥離、除去したり、周囲で吹付け作業を行う中で作業を配管作業に従事した際に、石綿粉じんに曝露した。 改修工事では、新築工事と同様の作業を行って石綿粉じんに曝露したのに加え、天井板や壁板を剥がす作業や、保温材が巻いてある状態の古い配管を電動ノコで切断する作業を行い、このような作業でも上記建材から発散する石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等 ア控訴人らは、別紙5-9の「No.」欄に記載のとおり、被災者Iに係る主 要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑩石綿保温材、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石 綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉖石綿含有パーライト板及び㊶石綿セメント円筒を主張する。以下、これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿 含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロッ のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 しかし、前記⑴イのとおり、被災者Iが従事した新築工事の現場数は年間4件程度である上、鉄筋コンクリート造建物がほとんどであったことを考慮すると、上記期間内に被災者Iが鉄骨造建物の新築工事に従事した建築現場の数は相当少なかったものと認められる。このような被災者Iの従事した建築現場の件数を踏まえると、シェアが約25%(8件の建築現場 のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であった被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な見地からの検討によっても、被災者Iの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Iの従事した建築現場 に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Iは、改修工事において、既設の吹付け材を剥がしたことがあることは認められるが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Iによる上記作業について、被控訴人ら における警告義務違反は認められない。 ウ保温材(⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材) 前記第3の3のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人ニチアスが昭和50年 綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材) 前記第3の3のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人ニチアスが昭和50年から昭和55年までに製造販売した建材及び被控訴人エーア ンドエーが昭和50年から昭和53年までに製造販売した建材である。 前記⑴イのとおり、被災者Iが従事した新築工事及び改修工事の現場数は年間5件程度であることを考慮すると、昭和50年から昭和55年までの工事件数は30件程度(5件×6年)である。また、被災者Iは、作業内容について、別件訴訟の当事者が提出した陳述書(甲A120の1)と ほぼ同内容であるが、冷媒配管を扱ったことはない旨述べているところ(甲D14の3の3(3頁))、同陳述書では、保温工事を行うのは冷媒配管工事である旨記載されている(甲A120の1(6頁))。北海道内では、冷媒配管以外にも保温材が使用されることが考えられるものの、被災者Iが従事した新築工事の現場は、大きな現場が多かったことから(甲D14 の3の3(2頁))、保温工事については、保温工が相当数を行っていた可能性もある。 以上の事情に照らすと、上記建材の現場到達事実について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討できる前提を欠いているものといわざるを得ない。したがって、シェアを用いた手法により、被控訴人ニ チアス及び被控訴人エーアンドエーの上記建材が、被災者Iの従事した建 築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 その他の被控訴人らの製造販売する⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材が、被災者Iの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はな とはできない。 その他の被控訴人らの製造販売する⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材が、被災者Iの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、前記⑴ウによれば、被災者Iは、改修工事において、既設の保温材を切断する作業に従事していたことは認められるが、前記イと同様、被災者Iによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 エ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・ 平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシ ブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Iは、前記⑴ウのとおり、スリーブ工事を行う際や清掃作業時に、上記建材から生じた石綿粉じんに曝露したものと認められるところ、前記⑴イのとおり、年間5件程度の新築工事及び改修工事に従事しており、昭 和49年から平成4年までの19年間、年間5件、合計95件程度(5件×19年)の新築工事及び改修工事に従事したことが認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、16回程度(95件÷6)、被災者Iの従事した 新築工事及び改修工事の建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴 人ニチ た高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、16回程度(95件÷6)、被災者Iの従事した 新築工事及び改修工事の建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴 人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、5回程度(95件÷20)、被災者Iの従事した新築工事及び改修工事の建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの期間においてそれぞれ製造、販売していた上記建材は、別紙8-7に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数、被控訴人ニチアスが製 造販売した各建材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Iの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フ レキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Iの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 オ㊶石綿セメント円筒 前記第3の10のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により 現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和59年から昭和63年までの5年間に被控訴人エーアンドエーが製造販売した㊶石綿セメント円筒である。 しかし、被 ェアを用いた手法により 現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和59年から昭和63年までの5年間に被控訴人エーアンドエーが製造販売した㊶石綿セメント円筒である。 しかし、被災者Iが、その間に従事した建築現場の件数は、前記⑴イのとおり、年間5件程度、合計25件程度(5件×5年)である。また、被 控訴人エーアンドエーの製造販売する上記建材のシェアについては、昭和 61年以降の3年間は約20%(建材が10件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるが、それ以前の2年間は約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であることから、シェアを用いた手法による確率論的な検討をしても、3回に満たないものであったといわざるを得ない。したがっ て、被控訴人エーアンドエーの上記建材が、上記期間内に、被災者Iの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 その他、被災者Iの供述によっても、上記建材に関し、トーアトミジ株式会社のトミジパイプを用いていたことは窺われるが(被災者本人11か ら12頁)、被控訴人らの製造販売した上記建材を用いたことを認めるに足りる証拠はない。 なお、前記⑴ウによれば、被災者Iは、改修工事において、既設の石綿セメント円筒を切断する作業に従事していたことは認められるが、前記イと同様、被災者Iによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義 務違反は認められない。 カその他の建材(⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、 い。 カその他の建材(⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板及び㉖石綿含有パーライト板) 上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Iの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 小括 前記⑴で認定した被災者Iの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前 記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Iの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Iが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者 Iが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Iに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Iに対し、損害賠償責 任を負わない。 10 被災者J(番号15)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の10)のほか、証拠(甲A113、362、1330、D15の2・3、控訴人J本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者 の稼働状況 況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の10)のほか、証拠(甲A113、362、1330、D15の2・3、控訴人J本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者 の稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容被災者Jは、昭和47年に大工としての研修を受け、昭和51年から平成14年12月まで、1年のうち冬期の約2か月間を除き、大工として、建築作業に従事した。個人の木造住宅のほか、市営住宅、事務所、消防署、小学 校、工場等の建築工事に従事した。 被災者Jは、木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建て込み)、屋根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、外壁下地工事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わり、また、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の新築工事では、壁、天井、床 の下地工事及び仕上げ工事に携わった。その中で、各種ボード類等を取り扱 い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。 また、被災者Jは、上記期間内に、建築物の解体作業にも従事した。 イ建築現場数 被災者Jは、従事した建築作業の件数について、陳述書(甲D15の3の4)やアンケート(甲D15の3の3)において、一般的な大工が従事 する工事の件数と比べると、非常に多い件数の工事に従事した旨記載している。 しかし、被災者Jの記載には、多数、数百といった相当幅のある表現が用いられていることや、その尋問において、記憶が必ずしもはっきりしない旨、ちょっと多いかもわからない旨を供述していること(控訴人J本人 (24、25、30、31頁))を考慮すると、被災者Jの陳述書やアンケートにおける記載を直ち て、記憶が必ずしもはっきりしない旨、ちょっと多いかもわからない旨を供述していること(控訴人J本人 (24、25、30、31頁))を考慮すると、被災者Jの陳述書やアンケートにおける記載を直ちに採用することはできない。 他方で、被災者Jは、前記アのとおり、少なくとも一般の大工と同様の建築作業に従事していたこと、解体工事にも従事していたが、その比率は、稼働期間を通じて、1割ないし2割程度であること、新築工事と改修工事 の比率は、昭和57年3月から昭和63年5月までの間は、改修工事の比率が9割程度であったが、それ以外の期間は、概ね同程度であったこと、冬期間は働いていない時期もあったが、失業保険の50日分の一時金の支給を受けたらすぐに仕事をしていたことが認められる(甲D15の3の3、控訴人J本人)。 これらの事情に照らすと、被災者Jが、一般の大工と比べて、現場数が多かったとはいえるが、稼働状況が大きく異なるとまでは認められないから、一般の大工の従事する工事の件数に基づき、被災者Jの従事した工事の件数を認定するのが相当である。 一般的な大工は年間6件程度の新築工事、改修や応援、手伝いなども考 慮すると年間16件程度の工事に従事するものと認められる(甲A362、 1330(11ないし14頁))。そうすると、被災者Jは、現場数が多かったことから、1年のうち冬期の2か月弱稼働していなかったことを前提にしても、少なくとも年間6件程度の新築工事に従事し、上記改修等を考慮すると年間16件程度の工事に従事していたものと認められる。 ただし、昭和57年3月から昭和63年5月までの期間については、前 記のとおり、改修工事の比率が9割程度であり、従事した建築工事の件数が増加すると考えられることから、年間2 のと認められる。 ただし、昭和57年3月から昭和63年5月までの期間については、前 記のとおり、改修工事の比率が9割程度であり、従事した建築工事の件数が増加すると考えられることから、年間20件程度の改修工事に従事していたものと認められる。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Jは、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボー ド類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。加え て、被災者Jは、建築物の解体作業にも従事しており、撤去されるなどした石綿含有建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定(大工関係)ア控訴人らは、被災者Jが大工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-10-1の「No.」欄に記載のとおり、吹付け 材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこ う板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石 綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板、㉛石綿含 う板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石 綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板、㉛石綿含有けい酸カルシウム床材及び㉟石綿含有窯業系サイディングを主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材) 前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 しかし、証拠(甲15の3の1)によれば、被災者Jは、その間、1件 の鉄骨造の市営住宅の新築工事に従事したが、それ以外は木造建物の建築工事に従事しており、個人の木造住宅の新築工事が大半であったことが認められる。そうすると、被災者Jは、上記期間内に、鉄骨造建物の新築工事にはほとんど従事していなかったものと認められる。このような被災者Jの従事した建築現場の件数を踏まえると、被控訴人太平洋セメントの上 記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしても、被災者Jの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Jの従事した建築現場 に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、 したことを認めるに足りる証拠はない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンド エー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から 平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Jは、前記⑴イのとおり、昭和51年から平成4年までの約17年間において、昭和57年3月から昭和63年5月までの約6年間を除き、 年間6件程度、合計66件程度(6件×約11年)の新築工事に従事し、改修等を考慮すると、昭和57年3月から昭和63年5月の間は年間20件程度、それ以外の期間は年間16件程度、合計296件程度(20件×約6年+16件×約11年)の工事に従事していたものと認められる。上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、 切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみで11回程度(66件÷6)、改修工事等を考慮した場合は49回程度(293件÷6)、被災者 Jの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然 Jの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみでそれぞれ3回程度(66件÷20)、改修工事等を考慮した場合はそれぞれ15回程度(2 93件÷20)、被災者Jの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和51年から平成4年までの期間においてそれぞれ製造、販売していた上記建材は、別紙8-8に記載のとおり であると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエ ーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数、被控訴人ニチアスが製造販売した各建材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Jの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Jの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 エ㉟石綿含有窯業系サイディング 被控訴人らは、前記第2節第3の3⑵のとおり、屋外での使用、加工等が予定されている上記建材について、警告義務を負っていない。また、被控訴人らが、被災者Jとの関係で、上記建材について警告義務を負うべき特段の事情があると認めるに足りる証拠はない。したがっ 用、加工等が予定されている上記建材について、警告義務を負っていない。また、被控訴人らが、被災者Jとの関係で、上記建材について警告義務を負うべき特段の事情があると認めるに足りる証拠はない。したがって、上記建材について、被控訴人らには、被災者Jに対する警告義務違反は認められない。 オその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含 有けい酸カルシウム床材)上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Jの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 共同不法行為者の特定(解体工関係) 控訴人らは、被災者Jが解体工として解体作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-10-2に記載された各建材を主張する。 しかし、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Jによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認めら れない。 ⑷ 被控訴人らの主張被控訴人ニチアスは、被災者Jが建築作業に従事したのは大半が戸建て住宅又は共同住宅であるから、前記4⑶で主張したとおり、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Jに到達した蓋然性は認められ アスは、被災者Jが建築作業に従事したのは大半が戸建て住宅又は共同住宅であるから、前記4⑶で主張したとおり、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Jに到達した蓋然性は認められ ない旨主張する。 しかし、前記4⑶のとおり、被控訴人ニチアスの上記建材は、マンション等の比較的規模の大きな住宅においても使用されていたことがうかがわれるところ、前記⑴アのとおり、被災者Jは、個人の木造住宅のほか、市営住宅、事務所、消防署、小学校、工場等の建築工事に従事したことが認められる。そう すると、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Jの従事した建築現場に到達する可能性は相応にあったものと考えられる。したがって、この点に関する被控訴人ニチアスの主張は理由がない。 また、被控訴人ニチアスは、被災者Jが主にカッターを用いてボードを切断していたと述べていることをもって、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は 主要原因建材ではない旨主張する。しかし、被災者Jは、大工として、ボード類を切断するほかに、ボード類に穿孔、研磨等の加工も施していることや、カッター以外の工具を使用していないとは認められないこと等に鑑みると、この点に関する被控訴人ニチアスの主張は理由がない。 ⑸ 小括 前記⑴で認定した被災者Jの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前 記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Jの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Jが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露し 綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Jの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Jが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者 Jが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Jに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Jに対し、損害賠償責 任を負わない。 11 被災者K(番号16)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の11)のほか、証拠(甲D16の2・3、控訴人K1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者の稼働状況及び石綿粉じんへの曝 露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容被災者Kは、昭和42年から平成14年頃まで、板金工として建築作業に従事し、木造建物、鉄骨造建物、鉄筋コンクリート造建物において、屋根張り、壁の張り替え、ラス張りなどの作業を行った。 また、被災者Kは、昭和42年から平成14年頃まで、解体工として、建物の解体作業に従事した。 イ石綿粉じんの曝露状況被災者Kは、板金工として、屋根材や外壁材に切断、穿孔等の加工を施し、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 また、被災者Kは、解体工として、撤去されるなどした石綿建材から生じ た石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、被災者Kが板金工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-1 建材から生じ た石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、被災者Kが板金工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-11-1の「No.」欄に記載のとおり、㉝石綿含有住宅屋根用化粧スレート及び㉟石綿含有窯業系サイディングを主張 する。 しかし、被控訴人らは、前記第2節第3の3⑵のとおり、屋外での使用、加工等が予定されている上記建材について、警告義務を負っていない。また、被控訴人らは、被災者Kとの関係で、上記建材について警告義務を負うべき特段の事情があると認めるに足りる証拠はない。 したがって、上記建材について、被控訴人らには、被災者Kに対する警告義務違反は認められない。 イ控訴人らは、被災者Kが解体工として解体作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-11-2に記載された各建材を主張する。 しかし、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事におい て、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Kによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ⑶ 小括以上によれば、被控訴人らは、被災者Kに対し、損害賠償責任を負わない。 12 被災者L(番号17)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の12)のほか、証拠(甲A117、1330、甲D17の3、被災者L本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Lの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Lは、昭和25年4月から平成12年まで、塗装工として、一般の塗装工と同様に、清掃 綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Lは、昭和25年4月から平成12年まで、塗装工として、一般の塗装工と同様に、清掃、下地調整を行った上で、塗装を行うといった建築作業に従事した。被控訴人らが石綿含有建材について警告義務を負うに至った昭和49年1月以降における被災者Lの具体的な就労状況は、以下のとおりである。 被災者Lは、昭和49年1月から昭和56年10月まで、主に木造住宅のモルタルやボードを使用した外壁や内壁の塗装を行っていた。新築工事が大半であった。 被災者Lは、昭和56年11月から平成2年4月まで、上記と同様、木造住宅の塗装を行っていたが、その他に、鉄骨造建物のボードやモルタ ルを使用した外壁や内壁の塗装も行った。新築工事が大半であった。 被災者Lは、平成2年5月から同年12月まで、20から30件程度の現場に従事したが、そのうち75%程度は、木造住宅の改修工事で塗装を行った。 被災者Lは、平成3年から平成12年まで、木造住宅のサイディングボ ードやボードを使用した外壁や内壁の塗装を行った。新築工事が9割程度であった。 イ建築現場数被災者Lは、昭和49年から平成12年までの27年間に、多数の新築建物の建築現場で塗装作業に従事した(被災者Lは、アンケート(甲D17の 3の2)に、新築工事及び改修工事について、いずれも数百件程度の建築工事に従事した旨記載している。)。その件数は、別件の同種訴訟における塗装工の平均年間現場数が32件であることを踏まえて、年間平均30件と考えたとしても、合計810件(30件×27年)程度であり、その大半は新築工事であったものと認められる。 ウ石綿粉じんの 工の平均年間現場数が32件であることを踏まえて、年間平均30件と考えたとしても、合計810件(30件×27年)程度であり、その大半は新築工事であったものと認められる。 ウ石綿粉じんの曝露状況 被災者Lは、下地調整では、ラインサンダー等を使って素地の表面を平らに滑らかにする際に、モルタルやボードから発散した石綿粉じんに曝露した。 掃除の際には、掃除機で粉じんを吸い取ったり、ほうきで粉じんを掃いたりするときに、舞い上がった石綿粉じんに曝露した。また、天井の耐火被覆用の吹付け材がむき出しのままの建築現場で塗装をする際には、天井から落ち て配管に積もった石綿粉じんに直接触れることもあり、この際に石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定ア控訴人らは、別紙5-12の「No.」欄に記載のとおり、被災者Lに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウ ール及び③湿式石綿含有吹付け材)及び㊸混和材を主張するので、以下、これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 被災者Lは、前記⑴アのとおり、上記期間内に、主に木造住宅に従事していたのであり、鉄骨造建物の新築工事に従事していないか、あるいは、 従事していたとしても、その従事した建築現場の件数はわずかであったものと認められる。このような被災者Lの従事した建築現場の件数を踏まえると、被控訴人太平洋セメン 従事していないか、あるいは、 従事していたとしても、その従事した建築現場の件数はわずかであったものと認められる。このような被災者Lの従事した建築現場の件数を踏まえると、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしても、被災者Lの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Lの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ウ㊸混和材前記のとおり、混和材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和49年から平成15年までの間 に被控訴人ノザワが製造販売した㊸混和材である。 被災者Lは、前記⑴イのとおり、昭和49年から平成12年までの27年間、塗装工として、年間30件程度、合計810件程度(30件×27年)の建築工事に従事し、その大半が新築工事に従事であったことが認められる。 そして、被控訴人ノザワは、上記期間を通じて、㊸混和材において極めて高 いシェアを有しており、そのシェアは、少なくとも30パーセント(6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)を超えていたものと認められる。そうすると、被控訴人ノザワの上記建材は、新築工事の建築現場数を全体の約8割である648件程度と考えたとしても、上記期間内に、少なくとも108回程度(648件÷6)、被災者Lの従事した建築 現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人ノザワが昭和49年から平成12年までの期間において製造販売してい とも108回程度(648件÷6)、被災者Lの従事した建築 現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人ノザワが昭和49年から平成12年までの期間において製造販売していた上記建材は、別紙8-9に記載のとおりであると認められるところ、被控訴人ノザワが製造販売した当該建材については、シェアを用いた手法により、被災者Lの従事した建築現場に相当回数に わたり到達したとの事実を認めることができ、被災者Lが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認められる。 ⑶ 被控訴人ノザワの主張被控訴人ノザワは、塗装工がモルタル壁に混和材が含まれていることを確認していないことや、左官工が常に混和材を使用するわけではないことから、モ ルタル壁に混和材が含まれているかどうか明らかではなく、㊸混和材は、塗装 工である被災者Lの主要原因建材に該当しない旨主張する。 しかし、前記⑴ウのとおり認定した被災者Lの建築現場における石綿粉じん曝露の状況に加え、前記第3の11のとおり、左官工事の現場では、古くからセメントモルタル塗りの際、セメントに砂を混合し、これに混和材として消石灰などのほかにアスベスト粉末を混合して作業性改善を図るという習慣があ ったこと、被控訴人ノザワによる混和材の製造販売期間は、昭和49年以降に限ったとしても、被災者Lが稼働を終える平成12年までの間、27年もの長期間に及ぶものであったこと、被災者Lは、昭和49年以降、648件程度という非常に多数の新築工事に従事していることといった事情に照らすと、㊸混和材は、被災者Lにおける石綿関連疾患の発症に寄与しているものと考えるの が合理的である。したがって、㊸混和材については、被災者Lの主要原因建材に該当するものと認める った事情に照らすと、㊸混和材は、被災者Lにおける石綿関連疾患の発症に寄与しているものと考えるの が合理的である。したがって、㊸混和材については、被災者Lの主要原因建材に該当するものと認めるのが相当であり、被災者Lが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認められるから、この点に関する被控訴人ノザワの主張は理由がない。 ⑷ 小括 以上によれば、被控訴人ノザワは、被災者Lに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Lに対し、損害賠償責任を負わない。 13 被災者M(番号18)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の13)のほか、証拠(甲A225、甲D18の2・3、被災者M本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Mの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容 被災者Mは、昭和35年7月から平成11年12月まで、空調用のダクト管を設置するダクト工として、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。木造建物の建築作業には従事しなかった。 一般のダクト工と同様、ダクトを作成し、建物に取り付ける作業を行っていた。ダクトを取り付ける際には、天井スラブにアンカーボルトを取り付け る作業や、ダクトを吊り込む作業を行い、この際、耐火被覆として吹き付けられた吹付け材を剥がし、削る作業を行った。新築工事では、基本的には、吹付け作業とは別の区画で作業を行っていたが、同じ作業現場で、吹付け作業が並行して行われていることもあった。また、被災者Mは、ダクトに保温材を巻く保温工としての を行った。新築工事では、基本的には、吹付け作業とは別の区画で作業を行っていたが、同じ作業現場で、吹付け作業が並行して行われていることもあった。また、被災者Mは、ダクトに保温材を巻く保温工としての作業を行うこともあった。 改修工事では、鉄骨造建物に既設された耐火被覆用の吹付け材を剥がし、既設のダクトを取り外す作業を行う際に、ダクトに巻き付けてある保温材を剥がす作業も行った。 イ建築現場数被災者Mは、新築ビルなどの大きな現場では、3、4か月間、建築作業 に従事した。小さな現場では、1週間単位で建築作業に従事する場合もあれば、1日で建築作業が終わる場合もあった。被災者Mが新築工事に従事した時期は、昭和35年7月頃から平成11年12月頃までであるが、その件数は210件程度(平均すると年間5件程度)であった。また、被災者Mが改修工事に従事した時期は、昭和40年12月頃から平成11年1 2月頃までであるが、その件数は230件程度(平均すると年間6件程度)であった。(甲18の3の1(8から9頁)) 昭和47年11月から昭和49年12月までは、会社にダクト工として勤務し、大きなビルの新築工事が6割、マンションの新築工事が4割程度であり、従事した現場数は、全期間を通じて、15件程度であった。この 会社は小さな会社であったので、ダクト工が保温材の巻き付けを行うこと が多かった。 昭和50年1月から昭和52年3月までは、被災者Mを含む4人の共同経営でダクト取付工事を行っていた。大規模な現場を担当しておらず、テナントの改修工事と新築マンションの工事を半分ずつの割合で行っていた。ダクト工が保温材の巻き付けを行うことが多かった(甲D18の3の 2・11頁)。 昭和52年4 を担当しておらず、テナントの改修工事と新築マンションの工事を半分ずつの割合で行っていた。ダクト工が保温材の巻き付けを行うことが多かった(甲D18の3の 2・11頁)。 昭和52年4月から昭和61年7月までは、会社に勤務し、新築ビルのダクト取付工事が8割程度、既存テナントの改修工事が2割程度であった。 新築ビルの大きな工事を年4、5件やっていた。この時期は、ダクト設置後の保温材の巻き付けは専門の保温工が行っていた。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Mは、前記アのとおり、耐火被覆として吹き付けられた吹付け材を剥がし、削る作業を行ったが、これにより、上記吹付け材から生じる石綿粉じんに曝露した。また、ダクトに保温材を巻く作業を行う際に、保温材から生じる石綿粉じんに曝露した。また、改修工事において、鉄骨造建物に既設 された耐火被覆用の吹付け材を剥がし、ダクトに巻き付けてある保温材を剥がす際に生じる石綿粉じんにも曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、別紙5-13の「No.」欄に記載のとおり、被災者Mに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウ ール及び③湿式石綿含有吹付け材)及び保温材(⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材及び⑩石綿保温材)を主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材) 前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントの製造販売した②石綿含有吹 け材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントの製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 被災者Mは、前記⑴イ及びによれば、年平均5件程度の新築工事に従事していたこと、前記⑴イによれば、昭和52年4月以降は、年4、 5件の新築工事に従事していたことが認められる。このことから、被災者Mが上記期間内に従事した新築工事の件数は、多くても20件程度であったと考えられる。もっとも、新築工事には、鉄骨造建物のみならず、吹付け材の用いられない鉄筋コンクリート造建物の新築工事が含まれていると考えられるから、鉄骨造建物の新築工事の件数は、合計20件を下回る ものであったと考えられる。また、被災者Mは、上記期間内に改修工事にも従事したことが認められるが、改修工事は、その規模や工事の箇所、工事の具体的な内容が大きく異なるものであり、耐火被覆を目的とする吹付け材が新たに施工されたかどうかは、必ずしも明らかではない。以上の事情に照らすと、上記建材の現場到達事実について、シェアを用いた手法に よる確率論的な見地から検討できる前提を欠いているものといわざるをえない。 その他、被控訴人らの製造販売する①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Mの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Mは、前記のとおり、改修作業において、鉄骨造建物に施工された耐火被覆用の吹付け材を剥がしたことがあることは認められるが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者 業において、鉄骨造建物に施工された耐火被覆用の吹付け材を剥がしたことがあることは認められるが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Mによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反 は認められない。 ウ保温材(⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材及び⑩石綿保温材)前記第3の3のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人ニチアスが昭和50年から昭和55年までに製造販売した建材及び被控訴人エーア ンドエーが昭和50年から昭和53年までに製造販売した建材である。 被災者Mは、前記⑴イ及びのとおり、昭和50年1月から昭和52年3月までの2年3か月間については、テナントの改修工事と新築マンションの工事を半分ずつの割合で行っていたのであるから、新築工事に従事した件数が年平均5件程度、改修工事に従事した件数が年6件程度である とすると、合計24件程度の建築工事に従事したことが認められる。しかし、被災者Mは、前記⑴イのとおり、昭和52年4月以降については、ダクト設置後の保温材の巻き付けを行っていなかったことが認められる。 このような被災者Mの従事した建築現場の件数を踏まえると、上記建材の現場到達事実について、シェアを用いた手法による確率論的な見地からの 考慮を行うための前提を欠いているものといわざるを得ない。 もっとも、前記⑴イ及びによれば、被災者Mは、昭和49年1月から昭和52年3月までの間、ビルやマンションの新築工事やテナントの改修工事において、ダクトの を欠いているものといわざるを得ない。 もっとも、前記⑴イ及びによれば、被災者Mは、昭和49年1月から昭和52年3月までの間、ビルやマンションの新築工事やテナントの改修工事において、ダクトの作成、取付け等を行っていたが、ダクトに保温材を巻き付ける作業を行うことが多かったことが認められる。そして、被 災者Mは、自らの用いたことのある保温材の名称が「シリカ」である旨供述しており(被災者M本人(13、38、39頁))、このように具体的名称が記憶に残っているのは、これを相当回数使用していたからであると考えられる。上記建材のうち名称に「シリカ」の文字が入ったものには、被控訴人エーアンドエーが昭和53年まで製造販売していた「シリカカバー」 及び「シリカボード」(甲C29の44ないし47)並びに被控訴人ニチア スが昭和55年まで製造販売した「シリカライト」(甲C29の57)があるが、店舗・事務所、劇場・百貨店等で用いられていたのは、被控訴人エーアンドエーの「シリカカバー」及び「シリカボード」である(被控訴人ニチアスの「シリカライト」は工場で用いられている。)。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエーが昭和49年から昭和 52年3月までの期間において製造販売していた別紙8-10に記載の建材は、被災者Mの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したものと認めることができ、被災者Mが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認められる。 その他、被控訴人らの製造販売する上記建材が、被災者Mの従事した建 築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、前記⑴ウによれば、被災者Mは、改修工事において、既設の保温材を切断する作業に従事していたことは認められるが、前記イと同 築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 なお、前記⑴ウによれば、被災者Mは、改修工事において、既設の保温材を切断する作業に従事していたことは認められるが、前記イと同様、被災者Mによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ⑶ 小括以上によれば、被控訴人エーアンドエーは、被災者Mに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Mに対し、損害賠償責 任を負わない。 14 被災者N(番号20)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の14)のほか、証拠(甲A118、甲D20の2・3、被災者N本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者の稼働状況及び石 綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおり認定できる。 ア就労期間及び作業内容被災者Nは、昭和45年6月から昭和63年11月まで、はつり工及び解体工として、主に、鉄筋コンクリート造建物の建築作業に従事した。 被災者Nは、建物の解体工事の際に、天井、壁、床といった内装材の撤去が行われた後に、壁や床等のコンクリートを砕くなどして撤去する作業など を行っていた。昭和50年頃までは、内装材の撤去も被災者Nの仕事であったが、それ以降は、別に雇われた人夫が行うようになり、被災者Nが内装材の解体を直接行うことは少なくなった。鉄骨造建物の解体を行うときは、鉄骨に吹付けられている吹付け材を撤去した後に、鉄骨をガスバーナーで切断して撤去していた。木造建物の解体を行うときは、主に、内装材や外装材を バールで叩いて壊していた。 被災者Nは、建物の改修工事の際に、窓や いる吹付け材を撤去した後に、鉄骨をガスバーナーで切断して撤去していた。木造建物の解体を行うときは、主に、内装材や外装材を バールで叩いて壊していた。 被災者Nは、建物の改修工事の際に、窓やドアなどを取り付ける開口部が狭い場合に、不要なコンクリートを削ぎ落とすはつり作業や内装材の解体作業を行っていた。新築工事の際の作業内容も、改修工事の場合と同様であった。 イ建築現場数被災者Nは、解体工事については、1件につき3か月から10か月程度の長期間にわたって同じ現場で作業をすることが多かった。改修工事については、増改築の期間は現場により大きく異なり、1日に複数の現場で作業することもあった。年間の現場数は、解体工事が3件程度、改修工事が30件以 上であった。新築工事に携わることもあったが、あまり件数はなかった。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Nは、解体工事では、撤去された内装材や吹付け材などから生じる石綿粉じんに曝露した。また、改修工事では、被災者Nが作業をしている付近で、内装材を解体する作業、板状や管状の建材を切断する作業などが行わ れており、それらの石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、被災者Nがはつり工及び解体工として、解体作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-14に記載された各建材を主張するので、以下検討する。 イ被災者Nは、はつり工として、新築工事や改修工事に従事し、コンクリー トを削る作業を行っており、その際に粉じんに曝露したことが認められる。 しかし、はつり作業で削っていたコンクリート(新設のもの)にアスベストを含む㊸混和材が使用されていたか否かは明らかでなく、その際に曝露した粉じん ており、その際に粉じんに曝露したことが認められる。 しかし、はつり作業で削っていたコンクリート(新設のもの)にアスベストを含む㊸混和材が使用されていたか否かは明らかでなく、その際に曝露した粉じんにアスベストが含まれていたか否かも明らかではないから、上記のような作業内容をもって、被災者Nが、新規に又は後続作業者として、特定 の石綿含有建材を直接取り扱ったとは認めることができない。したがって、前記第1の民法719条1項後段を類推適用する場合にはあたらない。 ウまた、被災者Nは、はつり工及び解体工として、既存建物の改修工事や解体工事に従事したことは認められる。しかし、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事や解体工事において、石綿含有建材の撤去等の 作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Nによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ⑶ 小括以上によれば、被控訴人らは、被災者Nに対し、損害賠償責任を負わない。 15 被災者O(番号21) ⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の15)のほか、証拠(甲A113、362、1330、甲D21の2・3、被災者O本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Oの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容 被災者Oは、昭和39年4月から平成17年2月まで、大工として、建 築作業に従事した。 被控訴人らが石綿含有建材について警告義務を負うに至った昭和49年1月以降、同年4月から昭和51年11月までは、冬期の4か月程度を除き、主に木造の1戸建て住宅の新築工事に従事した。 木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁など 義務を負うに至った昭和49年1月以降、同年4月から昭和51年11月までは、冬期の4か月程度を除き、主に木造の1戸建て住宅の新築工事に従事した。 木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建て込み)、屋 根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、外壁下地工事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わった。その中で、各種ボード類等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。 昭和52年4月から昭和60年10月までは、冬期の3か月程度を除き、 主に札幌市教育委員会から受注する学校の営繕工事に従事した。バールなどを使って、壁や天井などの既設の建材を叩き壊して撤去し、新たに各種ボード類に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、壁や天井を新たに設置する作業などを行った。また、学校の鉄骨に吹付けられている吹付け材を除去する作業に従事したこともあった。 昭和61年6月から平成17年2月までは、冬期の3か月程度を除き、主に木造の1戸建て住宅の新築工事に従事した。作業内容は、前記と同様であった。 イ建築現場数 被災者Oは、昭和49年4月から昭和51年11月まで、年間4件程度 の建築現場で新築工事に従事した。 この点、被災者Oは、現場数が年間15か所くらいであった旨述べるが、この時期に被災者Oが従事していたのが主に木造の1戸建て住宅の新築工事であることを考慮すると、被災者Oの供述する現場数は過大である可能性があり、直ちに採用することはできない。しかし、一般的な大工は年 間6件程度の新築工事、改修や応援、手伝いなども考慮すると年間16件 程度の工事に従事するものと認められる(甲A362、1330(11ないし14頁))ところ、被 大工は年 間6件程度の新築工事、改修や応援、手伝いなども考慮すると年間16件 程度の工事に従事するものと認められる(甲A362、1330(11ないし14頁))ところ、被災者Oにおいて、冬期間に稼働していない点を除いて、一般的な大工と稼働状況が大きく異なる事情は見当たらないことや、被災者Oは、昭和61年6月以降、年間5棟ないし7棟の一戸建て住宅の新築工事に従事した旨述べていることを考慮すると、少なくとも年間5件 程度の木造の一戸建て住宅の新築工事に従事したものと認めるのが相当である。 被災者Oは、昭和52年4月から昭和60年10月まで、主に学校の営繕工事に従事したが、その件数は、約8年半で合計20件程度であった。 その他、1件の学校で吹付け材の撤去作業を行った。 被災者Oは、昭和61年6月から平成17年2月までは、年間5件程度の一戸建て住宅の新築工事に従事した。その他に、年間1、2件の増改修工事もあった。 この点、被災者Oは、年間5棟ないし7棟の一戸建て住宅の新築工事に従事した旨供述するが、冬期間の約3か月程度は稼働していないことを考 慮すると、前記と同様に、年間5件程度の新築工事に従事したものと認めるのが相当である。 ウ石綿粉じん曝露の状況被災者Oは、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボード類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材から生じた石綿粉 じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。これに加えて、被災 、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。これに加えて、被災者Oは、昭和52年4月から昭和60年10月までの間、学 校の営繕工事に従事した際に、既設のボード類や吹付け材などを撤去する際 に、当該建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定ア控訴人らは、別紙5-15の「No.」欄に記載のとおり、被災者Oに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、 ⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含 有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材を主張するので、以下、これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールである。 被災者Oは、前記⑴ア及びのとおり、昭和49年4月から昭和51年11月まで、もっぱら木造の1戸建建物の建 までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールである。 被災者Oは、前記⑴ア及びのとおり、昭和49年4月から昭和51年11月まで、もっぱら木造の1戸建建物の建築作業に従事しており、昭 和52年4月以降、主に学校の営繕工事に従事している。このことから、被災者Oは、上記期間内に、鉄骨造建物の新築工事に従事していないか、あるいは、従事していたとしても、その数は相当少なかったものと認められる。このような被災者Oの従事した建築現場の状況等を踏まえると、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確 率論的な見地から検討できる前提を欠いており、被災者Oの作業する建築 現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Oの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したと認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Oは、学校の鉄骨に吹付けられた吹付け材の撤去作業を行 ったことがある旨供述するが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Oによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・ 平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシ ブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Oは、上記⑴イのとおり、昭和49年から昭和51年までの3年間、年間5件程度、合計15件程度(5件×3年)の新築工事、昭和52年から昭和60年までの間に合計20件程度の学校の営繕工事、昭和61 年から平成4年までの7年間、年間5件程度、合計35件程度(5件×7年)程度の新築工事及び合計10件程度(1.5件×7年)の増改修工事、合計80件程度の建築工事に従事していることが認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるか ら、上記期間内に13回程度(80件÷6)、被災者Oの従事した建築現場 に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみでそれぞれ4回程度(80件÷20)、被災者Oの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 この他にも、被災者Oは、上記期間を通じて、新築工事の合間に、一定程度の木造住宅の改修工事に従事し、新規で上記建材の加工等を行っていたことが窺われるところ、上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使 、上記期間を通じて、新築工事の合間に、一定程度の木造住宅の改修工事に従事し、新規で上記建材の加工等を行っていたことが窺われるところ、上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあったものと認められる。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和50年から平成4年までの間(被災者Oは、昭和49年については、同年4月から稼働していることから、同年については除外している。)に製造販売していた上記建材は、別紙8-11に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控 訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数、被控訴人ニチアスが製造販売した各建材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Oの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Oの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 エその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被 覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟 質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有 板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材)上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法に より、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Oの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 被控訴人らの主張被控訴人ニチアスは、被災者Oが電動丸のこで切断したと供述していないこ とから、㉓石綿含有けい酸カルシウム板は主要原因建材ではない旨主張する。 しかし、被災者Oは、大工として、ボード類に穿孔、研磨等の加工も施していること、フレキシブルボードを電動丸のこで切断したとしか供述していないことをもって、直ちに㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種は電動丸のこで切断していないとはいえないこと、電動丸のこ以外による切断時にも石綿粉じんは 発散すること等に鑑みると、この点に関する被控訴人ニチアスの主張は理由がない。 ⑷ 小括前記⑴で認定した被災者Oの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・ エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Oの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Oが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Oが石綿関連疾患に罹患したことに寄与をしたものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び 記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Oが石綿関連疾患に罹患したことに寄与をしたものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・ エム・ケイは、被災者Oに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Oに対し、損害賠償責任を負わない。 16 被災者P(番号22) ⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の16)のほか、証拠(甲A113、362、1330、甲D22の2・3、控訴人P1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者の稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容 被災者Pは、昭和37年から平成16年まで、冬期間の4か月程度を除き、大工及びはつり工として、主に一般住宅の建築作業に従事し、古い住宅の解体や住宅の新築工事を行った。 被災者Pは、木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建て込み)、屋根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、 外壁下地工事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わった。 その中で、各種ボード類等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。改修工事では、改修部分を撤去するために取り壊した後、新築工事と同様、各種ボード類等を加工するなどした。 また、被災者Pは、はつり工としては、住宅の基礎部分の型枠を外した後 に、ピックやサンダーを使って、はつり作業を行ったり、既存建物の解体工事を行うなどした。昭和49年4月から昭和51年12月までの期間は、と 、はつり工としては、住宅の基礎部分の型枠を外した後 に、ピックやサンダーを使って、はつり作業を行ったり、既存建物の解体工事を行うなどした。昭和49年4月から昭和51年12月までの期間は、とりわけ解体作業が多かった。 イ建築現場数一般的な大工は年間6件程度の新築工事、改修や応援、手伝いなども考慮 すると年間16件程度の工事に従事するものと認められる(甲A362、1 330(11ないし14頁))。しかし、被災者Pには、一般的な大工とは異なる点として、前記アのとおり、冬期間に稼働していないこと、昭和49年4月から昭和51年12月までの期間は解体工事が多かったこと、はつり工としても勤務していたことが認められる。以上の事情に照らし、被災者Pは、昭和52年以降、一般的な大工の半分程度、すなわち、年間3件程度の新築 工事に従事し、上記改修等を考慮すると年間8件程度の工事に従事したものと認める。 ウ石綿粉じん曝露の状況被災者Pは、大工として、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボード類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材 から生じた石綿粉じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。 これに加え、被災者Pは、はつり工として解体工事にも従事し、撤去されるなどした石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露した。 なお、被災者Pは、労災申請に際し、厚生労働事務官からの事情聴取や自ら作成した陳述書等において、石綿を直接吸って仕事をしたのは、昭和 れるなどした石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露した。 なお、被災者Pは、労災申請に際し、厚生労働事務官からの事情聴取や自ら作成した陳述書等において、石綿を直接吸って仕事をしたのは、昭和46年から昭和51年12月15日まで働いていたY2工務店での作業 の際である旨等を繰り返し供述するなどしている(甲D22の2(12、13、17、18、23、24、80、85頁))。しかし、被災者Pは、石綿粉じんに曝露したのがY2工務店における建築作業のみであると認識している理由については、何ら説明していない。そして、被災者Pは、昭和52年から平成17年1月まで、大工として古い住宅の解体及び住宅 の新築工事に従事しており、その際に、解体した建物や新築工事の際に取 り扱った建材に石綿が全く含まれていなかったとは考え難い。したがって、この点に関する被災者Pの供述は上記認定を左右しない。 ⑵ 共同不法行為者の特定(大工関係)ア控訴人らは、被災者Pが大工として建築作業に従事していたことに係る別主要原因建材として、別紙5-16-1の「No.」欄に記載のとおり、吹付 け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせ っこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材を主張する 、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材を主張するので、以下、これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿 含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールである。 しかし、被災者Pは、前記⑴アのとおり、上記期間中に、主として一般住宅の建築工事に従事しており、鉄骨造建物の新築工事の建築作業に従事したことを認めるに足りる証拠はない。また、被災者Pは、昭和49年4月から昭和51年12月までの間、石綿が吹き付けられた建築物、工作物の解体の作業をしていた旨を述べている(甲D22の2(17、18頁)) が、この供述は解体作業について述べたものであり、この供述をもって、 被災者Pが、大工として、鉄骨造建物の新築工事に従事していたと推認することはできない。 以上の事情に照らすと、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討できる前提を欠いており、被災者Pの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実 を認めることはできない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Pの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したと認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Pは、前記のとおり、石綿が吹き付 け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Pの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したと認めるに足りる証拠はない。 なお、被災者Pは、前記のとおり、石綿が吹き付けられた建築物、工作 物の解体作業を行ったことがある旨供述するが、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Pによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・ 平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシ ブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Pは、前記⑴イのとおり、昭和52年から平成4年までの16年間に、年間3件程度、合計48件程度(3件×16年)の新築工事に従事し、改修等を考慮すると年間8件程度、合計128件程度(8件×16年) の建築工事に従事したことが認められる。上記建材は、改修工事において も、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場 と認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみで8回程度(48件÷6)、改修工事等を考慮し た場合は21回程度(128件÷6)、被災者Pの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみでそれぞれ2回程度(48÷20)、改修工事等を考慮した場合はそ れぞれ6回程度(128÷20)、被災者Pの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和52年から平成4年までの期間においてそれぞれ製造、販売していた上記建材は、別紙8-12に記載のとおりであると認められる ところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Pの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 他方で、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種については、前記4⑶のとおり、その出荷先の9割程度は非住宅向けであったことが認められるところ、被災者Pは、主に一般住宅の建築作業に従事していたことが認められる。以上によれば、被控訴人ニチアスが製造販売した上記建材の現場到達事実については、シェアを用いた手法による確率論 的な見地から検討できる前提を欠い 住宅の建築作業に従事していたことが認められる。以上によれば、被控訴人ニチアスが製造販売した上記建材の現場到達事実については、シェアを用いた手法による確率論 的な見地から検討できる前提を欠いているものといわざるを得ない。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Pの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 エその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被 覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材) 上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Pの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 共同不法行為者の特定(はつり工関係) ア控訴人らは、被災者Pがはつり工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-16-2に記載された各建材を主張するので、以下検討する。 イ被災者Pは、はつり工として、新築工事にも従事し、コンクリートを削る作業を行っていたことは認められる。しかし、被災者Pが削ったコンクリー トに石綿が含有されていたことを認めるに足りる証拠はなく、そのような作業内容をもって、被災者Pが、新規に又は リートを削る作業を行っていたことは認められる。しかし、被災者Pが削ったコンクリー トに石綿が含有されていたことを認めるに足りる証拠はなく、そのような作業内容をもって、被災者Pが、新規に又は後続作業者として、特定の石綿含有建材を直接取り扱ったとは認めることができない。したがって、前記第1の民法719条1項後段を類推適用する場合にはあたらない。 また、被災者Pは、はつり工として、既存建物の解体工事に従事している が、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事や解体工事に おいて、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Pによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ⑷ 小括前記⑴で認定した被災者Pの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前 記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Pの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Pが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Pが石綿関連疾患 に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Pに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Pに対し、損害賠償責 任を負わない。 17 被災者Q(番号23)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Pに対し、損害賠償責 任を負わない。 17 被災者Q(番号23)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の17)のほか、証拠(甲A113、362、1330、甲D23の2・3、控訴人Q1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者 Qの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容被災者Qは、昭和53年6月から昭和54年1月までの8か月間、昭和54年6月から同年8月までの2か月間、平成2年6月から同年12月までの7か月間、平成4年5月から同年12月までの8か月間、平成5年5 月から同年12月までの8か月間、平成6年5月から同年12月までの8 か月間、合計41か月間、大工として、木造建物(戸建て住宅)の建築工事に従事した。 被災者Qは、木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建て込み)、屋根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、外壁下地工事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に 携わった。その中で、各種ボード類等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。改修工事では、改修部分を撤去するために取り壊した後、新築工事と同様、各種ボード類等を加工するなどした。 被災者Qは、昭和55年6月から昭和59年5月まで、保温工として稼働し、暖房及び冷房の配管を取り扱う業務に従事していたが、具体的に従 事した作業内容は、体くらいの大きさの円筒状の物に関わっていたということ以外には、本件全証拠によっても、明らかではない。 イ建築現場数一般的な大工は年間6件程度の新築工事、改修や応援、手伝いなども考慮すると年 くらいの大きさの円筒状の物に関わっていたということ以外には、本件全証拠によっても、明らかではない。 イ建築現場数一般的な大工は年間6件程度の新築工事、改修や応援、手伝いなども考慮すると年間16件程度の工事に従事するものと認められる(甲A362、 1330(11ないし14頁))。被災者Qは、前記アのとおり、木造の戸建て住宅の建築作業に従事しており、一般的な大工と稼働状況が異なる事情は見当たらない。そうすると、被災者Qは、昭和53年6月から昭和54年8月までのうちの10か月間に合計5件程度(6件÷12×10)、上記改修等を考慮すると合計13件程度(16件÷12×10)の 建築工事に従事した。また、被災者Qは、平成2年6月から平成6年12月までの間、1年のうち8か月稼働していることから、年間4件程度(6件÷12か月×8か月)の新築工事に従事し、上記改修等を考慮すると年間11件程度(16件÷12か月×8か月)の建築工事に従事した。 被災者Qは、前記アのとおり、保温工として稼働しているが、具体的 な作業内容が明らかであるとはいえない上に、その間に、治療に相当な期 間を要するほどの骨折をして、仕事を休んでいたことが認められるから(控訴人Q1・21から22頁)、保温工として稼働した建築現場数を認定することはできない。 ウ石綿粉じん曝露の状況被災者Qは、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボ ード類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材 曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝 露した。 被災者Qは、前記のとおり、保温工として建築作業に従事し、その際に、石綿粉じんに曝露した。 被災者Qは、昭和32年7月から昭和40年1月まで、自動車整備員として稼働しており、自動車のブレーキライニング研磨作業に従事し、石綿 粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等(大工関係)ア控訴人らは、被災者Qが大工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-17-1の「No.」欄に記載のとおり、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、 ⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材を主張するの で、以下これらについて個別に検討する。 イ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から 平成4年まで 、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から 平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Qは、前記⑴イによれば、昭和53年から昭和54年までの間、合計5件程度(6件÷12×10)、改修工事等を考慮すると合計13件 程度(16件÷12×10)の建築工事に従事したこと、平成2年から平成4年までの間、合計12件程度(4件×3年)、改修工事等を考慮すると合計33件程度(11件×3年)の建築工事に従事したこと、両期間を併せると合計45件程度の建築工事に従事したものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6 件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に8回程度(45件÷6)、被災者Qの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 他方で、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアがいずれも約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1 件に到達した高度の蓋然性がある)であるところ、前記のとおり、被災者Qの従事した工事件数は、合計45件程度であることからすると、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしたとしても、当該建材が、被災者Qの作業する建築現場に相当回数にわたり到達したとは認め難い。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエーが昭和53年から平成 4年までの間に製造販売していた上記建材は、別紙8-13に記載のとお りで わたり到達したとは認め難い。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエーが昭和53年から平成 4年までの間に製造販売していた上記建材は、別紙8-13に記載のとお りであると認められるところ、これらの建材のうち1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Qの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カ ルシウム板第1種が、被災者Qの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ウその他の建材(⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形 セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材)上記各建材については、シェアを用いた手法により現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Qの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 共同不法行為者の特定等(保温工関係)控訴人らは、被災者Qが保温工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-17-2の「No.」欄に記載のとおり、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材を主張する。 しかし、前記⑴ア及びイのとおり、被災者Qが保温工として従事した作業内 容や建築現場の件数を認定することができず、被控訴人らの製造販売する上記建材が、被災者Qの従事した建 保温材を主張する。 しかし、前記⑴ア及びイのとおり、被災者Qが保温工として従事した作業内 容や建築現場の件数を認定することができず、被控訴人らの製造販売する上記建材が、被災者Qの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑷ 小括前記⑴で認定した被災者Qの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前 記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエーが製造販売した⑮石綿含有スレートボ ード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Qの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Qが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Qが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエーは、被災者Qに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Qに対し、損害賠償責任を負わない。 18 被災者R(番号24)⑴ 就労状況前記認定事実(第1節第2の18)のほか、証拠(甲D24の2・3、被災者R本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Rの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容被災者Rは、昭和41年4月から平成20年12月まで、はつり工及び解体工として稼働した。建築作業に従事した建物の多くは、鉄筋コンクリート造建物であったが、鉄骨造建物や木造建物の個人住宅の解体作業を行うこともあった。 被災者Rは、はつり工として、設計とずれてしまった部分や設 。建築作業に従事した建物の多くは、鉄筋コンクリート造建物であったが、鉄骨造建物や木造建物の個人住宅の解体作業を行うこともあった。 被災者Rは、はつり工として、設計とずれてしまった部分や設計変更があった部分のコンクリートを、電動ピックやグラインダーなどを使用して、削って調整する作業を行った。また、解体工として、バールやハンマーなどを使用して、天井、壁、床などの内装材を剥がすなどして、撤去する作業を行った。 イ建築現場数 被災者Rは、はつり工として、新築工事に少なくとも100件以上、改修工事に少なくとも200件以上は従事した。また、解体工として、少なくとも100件以上の解体工事に従事した。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Rは、はつり作業や解体作業において、石綿含有建材を剥がしたり、 破壊したりする際に生じる石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、被災者Rがはつり工及び解体工として建築作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-18に記載された各建材を主張するので、以下検討する。 イ被災者Rは、はつり工として、新築工事に従事し、コンクリートを削る作業を行ったことは認められる。しかし、はつり作業で削っていたコンクリートにアスベストを含む㊸混和材が使用されていたか否かは明らかでなく、その際に曝露した粉じんにアスベストが含まれていたか否かも明らかではないから、上記のような作業内容をもって、被災者Rが、新規に又は後続作業 者として、特定の石綿含有建材を直接取り扱ったとは認めることができない。 したがって、前記第1の民法719条1項後段を類推適用する場合にはあたらない。 ウまた、被災者Rは、はつり工及び解体工として、既存建物 特定の石綿含有建材を直接取り扱ったとは認めることができない。 したがって、前記第1の民法719条1項後段を類推適用する場合にはあたらない。 ウまた、被災者Rは、はつり工及び解体工として、既存建物の改修工事や解体工事に従事したことは認められる。しかし、前記第2節第3の2⑵のとお り、被控訴人らは、改修工事や解体工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Rによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務違反は認められない。 ⑶ 小括以上によれば、被控訴人らは、被災者Rに対し、損害賠償責任を負わない。 19 被災者S(番号25) ⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の19)のほか、証拠(甲D25の2・3、被災者S本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者の稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容 被災者Sは、昭和58年6月から平成6年3月まで、解体工として稼働した。解体工事では、建物内で、工具を利用して、壁に穴を空けたり、ボードを剥がす作業や、鉄筋コンクリート造の建物の壁を壊す作業などを行った。 1件程度の改修工事には従事したが、新築工事に従事することはなかった。 イ建築現場数 被災者Sは、230件程度の解体工事に従事した。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Sは、解体作業で撤去される石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等 控訴人らは、被災者Sが解体工として解体作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-19に記載された各建材を主張する。 しかし、前記第2節第 ⑵ 共同不法行為者の特定等 控訴人らは、被災者Sが解体工として解体作業に従事していたことに係る主要原因建材として、別紙5-19に記載された各建材を主張する。 しかし、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事や解体工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に対し、警告義務を負わないから、被災者Sによる上記作業について、被控訴人らにおける警告義務 違反は認められない。 ⑶ 小括以上によれば、被控訴人らは、被災者Sに対し、損害賠償責任を負わない。 20 被災者T(番号26)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況 前記認定事実(第1節第2の20)のほか、証拠(甲A113、362、1 330、甲D26の2・3、控訴人T1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者の稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容被災者Tは、昭和49年4月頃から昭和58年11月頃まで、概ね冬期の4か月程度を除き、大工として、建築作業に従事した。昭和49年4月から 昭和50年12月までは、主に木造建物の個人住宅の建築作業に従事した。 昭和51年5月以降は、専ら木造建物の個人住宅の建築作業に従事しており、鉄骨造建物及び鉄筋コンクリート造建物の建築工事には従事していなかった。 被災者Tは、木造建物の新築工事では、土台工事、建方(柱、梁などの建 て込み)、屋根下地工事、筋交い、間柱入れ、胴貫、床工事、軒天井張り工事、外壁下地工事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わった。 その中で、各種ボード類等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。改修工事では、改修部分を撤去するために取り壊した後、 事、内装下地工事、内部仕上げ工事などの作業全般に携わった。 その中で、各種ボード類等を取り扱い、これらの建材に切断、穿孔、研磨等の加工を施した。改修工事では、改修部分を撤去するために取り壊した後、新築工事と同様、各種ボード類等を加工するなどした。 イ建築現場数一般的な大工は年間6件程度の新築工事、改修や応援、手伝いなども考慮すると年間16件程度の工事に従事するものと認められる(甲A362、1330(11ないし14頁))。被災者Tは、前記アのとおり、冬期間に稼働していなかったことを除いて、一般的な大工と稼働状況が異なる事情は見当 たらない。そうすると、被災者Tは、1年のうち冬期の約4か月間稼働していなかったことを前提に、年間4件程度(6÷12×8)の新築工事に従事し、上記改修等を考慮すると年間10件程度(16÷12×8)の建築工事に従事していた。 ウ石綿粉じんの曝露状況 被災者Tは、壁、天井、床の下地工事及び仕上げ工事等の際に、各種ボー ド類等に切断、穿孔、研磨等の加工を施し、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。また、新築工事の現場では、他の職人も同時並行で建築作業に従事していたことから、他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。さらに、改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行う際に、当該建材から発散する石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、別紙5-20の「No.」欄に記載のとおり、被災者Tに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、 因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石 綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸 カルシウム床材を主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和 53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールである。 被災者Tは、前記⑴アのとおり、上記期間中、主として木造建物の一般住宅の建築工事に従事していたのであるから、鉄骨造建物の新築工事に従事していないか、あるいは、従事していたとしても、その従事した建築現 場の件数は相当少なかったものと認められる。このような被災者Tの従事 した建築現場の件数を踏まえると、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討をしたとしても、被災者Tの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式 としても、被災者Tの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロ ックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Tの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したと認めるに足りる証拠はない。 ウ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの間に製造販売した建材である。 被災者Tは、前記⑴イのとおり、昭和49年から昭和58年までの10年間、年間4件程度、合計40件程度(4件×10年)の新築工事に従事 し、改修等を考慮すると年間10件程度、合計100件程度(10件×10年)の建築工事に従事していたことが認められる。上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあったものと認められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場 のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみで6回程度(40÷6)、上記改修工事等を考慮した場合は16回程度(100÷6)、被災者Tの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件 に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新 場に到達した高度の蓋然性があり、被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件 に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の 建築現場のみで2回程度(40÷20)、上記改修工事等を考慮した場合はそれぞれ5回程度(100÷20)、被災者Tの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和50年から昭和57年までの間(被災者Tは昭和49年4 月から昭和58年11月までの間に稼働していることから、昭和49年及び昭和58年については除外している。)においてそれぞれ製造、販売していた上記建材は、別紙8-14に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した各 建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Tの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 他方で、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種については、前記4⑶のとおり、その出荷先の9割程度は非住宅向けであった ことが認められるところ、被災者Tは、主に木造建物の一般住宅の建築作業に従事していたことが認められる。以上によれば、被控訴人ニチアスが製造販売した上記建材の現場到達事実については、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討できる前提を欠いているものといわざるをえない。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード る確率論的な見地から検討できる前提を欠いているものといわざるをえない。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が、被災者Tの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 エその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被 覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟 質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材)上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法に より、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Tの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑶ 小括前記⑴で認定した被災者Tの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前 記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Tの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Tが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Tが石綿関連疾患 に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Tに対し、民法719条 曝露したことは、被災者Tが石綿関連疾患 に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Tに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Tに対し、損害賠償責 任を負わない。 21 被災者U(番号27)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の21)のほか、証拠(甲A117、1330、甲D27の2・3、被災者U本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Uの 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア作業期間及び作業内容被災者Uは、昭和52年9月から平成25年まで、塗装工として、一般の塗装工と同様に、清掃、下地調整を行った上で、塗装を行うといった建築作業に従事した。具体的な就労状況は、以下のとおりである。 被災者Uは、昭和52年9月から昭和57年6月まで、主に木造住宅(戸 建て、共同住宅)の塗装を行った。新築工事及び改修工事のいずれにも従事した。 被災者Uは、昭和57年7月から同年12月まで、鉄筋コンクリート造建物(zの下水処理場、網走刑務所)及び木造住宅の塗装を行った。新築工事及び改修工事のいずれにも従事した。 被災者Uは、昭和58年から昭和59年まで、冬期間を除き、鉄骨造建物と木造造建物の塗装を行った。主に新築工事に従事した。 被災者Uは、昭和60年から昭和63年5月まで、冬期間を除き、鉄筋コンクリート造建物、鉄骨造建物、木造建物の塗装を行った。最も多かったのは、鉄筋コンクリート造の建物であった。新築工事及び改修工 被災者Uは、昭和60年から昭和63年5月まで、冬期間を除き、鉄筋コンクリート造建物、鉄骨造建物、木造建物の塗装を行った。最も多かったのは、鉄筋コンクリート造の建物であった。新築工事及び改修工事のい ずれにも従事した。 被災者Uは、昭和63年6月から平成12年6月まで、平成2年7月から平成5年12月まで及び冬期間を除き、鉄筋コンクリート造建物、鉄骨造建物、木造建物の塗装を行った。割合は、鉄筋コンクリート造建物が大半であり、鉄骨造建物は1割程度、木造建物は数件であった。 被災者Uは、平成2年7月から平成5年12月までは、冬期間を除き、橋梁の塗装を行った。 被災者Uは、平成13年5月から平成25年8月まで、冬期間を除き、主に木造建物の新築工事や改修工事の現場で塗装を行った。 イ建築現場数 被災者Uは、昭和52年9月から平成25年8月までのうち、上記アの 期間を除く約33年半の間に、多数の建築現場で塗装作業に従事した。その件数は、別件の同種訴訟における塗装工の平均年間現場数が32件であること(甲A1330(23頁から24頁))を踏まえて、年間平均30件と考えたとしても、合計1000件程度(30件×33.5年)である。 ウ石綿粉じんの曝露状況 被災者Uは、下地調整では、ラインサンダー等を使って素地の表面を平らに滑らかにする際に、モルタルやボードから発散した石綿粉じんに曝露した。 掃除の際には、掃除機で粉じんを吸い取ったり、ほうきで粉じんを掃いたりするときに、舞い上がった石綿粉じんに曝露した。また、工期に余裕がないときには、大工などが近くで建材を切断する作業を行っており、そこから飛 散した石綿粉じんに曝露した。改修工事では、解体作業を行って きに、舞い上がった石綿粉じんに曝露した。また、工期に余裕がないときには、大工などが近くで建材を切断する作業を行っており、そこから飛 散した石綿粉じんに曝露した。改修工事では、解体作業を行っている付近で作業をすることがあった。その他にも、吹付け材がむき出しになっている場所で作業をしたり、吹付け材の飛散を防止するために、シーラーを吹き付ける作業を行ったことがあり、その際に、飛散した石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定 ア控訴人らは、別紙5-21の「No.」欄に記載のとおり、被災者Uに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)及び㊸混和材を主張するので、以下、これらについて個別に検討する。 イ吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿 含有吹付け材)前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から昭和53年までの間に被控訴人太平洋セメントが製造販売した②石綿含有吹付けロックウールのみである。 被災者Uは、前記⑴アのとおり、稼働を開始した昭和52年9月から 昭和53年までの間、主に木造住宅の建築工事に従事していたのであり、鉄骨造建物の新築工事に従事していないか、あるいは、従事していたとしても、その従事した建築現場の件数は相当少なかったものと認められる。 このような被災者Uの従事した建築現場の件数を踏まえると、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な 見地から検討できる前提を欠いており、被災者Uの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることがで 訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアを用いた手法による確率論的な 見地から検討できる前提を欠いており、被災者Uの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 その他、被控訴人らの製造販売した①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Uの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ウ㊸混和材前記のとおり、混和材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和49年から平成15年までの間に被控訴人ノザワが製造販売した㊸混和材である。 被災者Uは、上記⑴イのとおり、昭和52年から平成15年までの27年 間のうち、上記アの約3年半を除く約23年半の間、塗装工として、年間30件程度、合計700件程度(30件×23.5年)の建築工事に従事しており、新築工事の割合が相当程度を占めていたことが認められる。そして、被控訴人ノザワは、上記期間を通じて、㊸混和材において極めて高いシェアを有しており、そのシェアは、少なくとも30パーセント(6件の建築現場 のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)を超えていたものと認められる。そうすると、被控訴人ノザワの上記建材は、新築工事の建築現場数を全体の7割程度である490件程度と考えたとしても、上記期間内に、少なくとも82回程度(490件÷6)、被災者Uの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性がある。 以上の事情に照らすと、被控訴人ノザワが昭和52年から平成15年まで の期間に製造販売していた上記建材は、別紙8-15に記載のとおりであると認められるところ、被控訴人ノザワが製造販売した当該建材 すと、被控訴人ノザワが昭和52年から平成15年まで の期間に製造販売していた上記建材は、別紙8-15に記載のとおりであると認められるところ、被控訴人ノザワが製造販売した当該建材については、シェアを用いた手法により、被災者Uの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができ、被災者Uが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認められる。 ⑶ 被控訴人ノザワの主張被控訴人ノザワは、塗装工がモルタル壁に混和材が含まれていることを確認していないことや、左官工が常に混和材を使用するわけではないことから、モルタル壁に混和材が含まれているかどうか明らかではなく、㊸混和材は、塗装工である被災者Uの主要原因建材に該当しない旨主張する。 しかし、前記⑴ウのとおり認定した被災者Uの建築現場における石綿粉じん曝露の状況に加え、前記第3の11のとおり、左官工事の現場では、古くからセメントモルタル塗りの際、セメントに砂を混合し、これに混和材として消石灰などのほかにアスベスト粉末を混合して作業性改善を図るという習慣があったこと、被控訴人ノザワによる混和材の製造販売期間が、昭和52年以降に 限ったとしても、27年もの長期間に及ぶものであったこと、被災者Uは、昭和52年以降、490件程度という多数の建築工事に従事しており、新築工事の割合が相当程度を占めていたことといった事情に照らすと、㊸混和材は、被災者Uにおける石綿関連疾患の発症に寄与しているものと考えるのが合理的である。したがって、㊸混和材については、被災者Uの主要原因建材に該当す るものと認めるのが相当であるから、この点に関する被控訴人ノザワの主張は理由がない。 ⑷ 小括以上によれば、被控訴人ノザワは、被災 については、被災者Uの主要原因建材に該当す るものと認めるのが相当であるから、この点に関する被控訴人ノザワの主張は理由がない。 ⑷ 小括以上によれば、被控訴人ノザワは、被災者Uに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、損害賠償責任 を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Uに対し、損害賠償責任を負わない。 22 被災者V(番号28)⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の22)のほか、証拠(甲D28の2・3、被災 者V本人)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Vの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容被災者Vは、昭和29年頃から平成12年12月まで、季節雇用の内装大工として、主に個人住宅の建築作業に従事した。昭和63年7月以降は、 個人住宅のほか、マンション等の建築作業にも従事した。 被災者Vは、被控訴人らが石綿含有建材について警告義務を負うに至った昭和49年1月から平成12年までの間、大工による建物本体の工事がほぼ終了した後に、ドアなどの建具や家具を設置する作業を行っていたが、建具等をビスなどで固定するために、内装等のボード等に電動ドリルで穴 を開ける作業などをしていた。また、大工による建物本体工事が終了しないと作業に取り掛かれないので、大工を手伝うことがあったが、その際には、ボードを押さえたり、切りくずを掃除したり、自らボードを切断するなどした。両者の割合としては、内装大工の仕事が7割程度、大工の手伝いが3割程度であった。 イ建築現場数被災者Vは、30坪の住宅であれば3ないし4日程 したり、自らボードを切断するなどした。両者の割合としては、内装大工の仕事が7割程度、大工の手伝いが3割程度であった。 イ建築現場数被災者Vは、30坪の住宅であれば3ないし4日程度、それより小さい個人の住宅であれば2ないし3日程度で仕上げ、1か月に10ないし15件程度の建築工事を請け負っていた。ただし、50室程度のマンションについては、1か月以上の期間を要した。そのため、被災者Vの従事した建築現場数 は、昭和45年6月から平成12年12月頃までの約30年半の間、新築工 事は330件程度、改修工事は300件程度であった。以上から、被災者Vは、昭和50年1月から平成4年までの間、新築工事のみで年間10件程度、改修工事を合わせると年間20件程度の建築作業に従事していた。(甲D28の3の1(3頁)、甲D28の3の2(7、8頁)、被災者V本人(18頁))ウ石綿粉じんの曝露状況 被災者Vは、内装大工として、就労期間を通じて、建具等をビスなどで固定するため、ボード類に電動ドリルで穴を開ける作業をしていた際に、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。また、ボード類を切断するなど大工の仕事を手伝う際に、これらの建材から生じた石綿粉じんに曝露した。 また、建築現場では、他の職人が同時並行で作業を行っていることがあり、 他の職人の取り扱う石綿含有建材から発散する石綿粉じんにも曝露した。改修工事では、既設の石綿含有建材を撤去する作業を行い、その際に生じる石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等ア控訴人らは、別紙5-22の「No.」欄に記載のとおり、被災者Vに係る 主要原因建材として、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード 者の特定等ア控訴人らは、別紙5-22の「No.」欄に記載のとおり、被災者Vに係る 主要原因建材として、⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形 セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材を主張するので、以下これらについて個別に検討する。 イ ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種 前記第3の5のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現 場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイが、昭和49年から平成4年までの間に製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種である。 被災者Vは、前記⑴イのとおり、昭和49年から平成4年までの間、新築工事のみで合計190件程度(10件×19年)、改修工事を合わせると合計380件程度(20件×19件)の建築作業に従事していたものと認められる。上記建材は、改修工事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあったものと認 められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6 事においても、壁材や天井材などとして新規に使用され、切断、穿孔、研磨等の加工を施すことがあったものと認 められる。そうすると、被控訴人エーアンドエーの上記建材は、シェアが約30%(建材が6件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみで31回程度(190件÷6)、改修工事等を考慮した場合は63回程度(380件÷6)、被災者Vの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があり、 被控訴人エム・エム・ケイの上記建材は、シェアが約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるから、上記期間内に、新築工事の建築現場のみでそれぞれ9回程度(190件÷20)、改修工事等を考慮した場合はそれぞれ19回程度(380件÷20)、被災者Vの従事した建築現場に到達した高度の蓋然性があ る。 以上の事情に照らすと、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイが昭和49年から平成4年までの間においてそれぞれ製造、販売していた上記建材は、別紙8-16に記載のとおりであると認められるところ、これらの建材のうち、被控訴人エーアンドエーが製造販売した各建 材のうちの1つないし複数及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した 各建材のうちの1つないし複数については、シェアを用いた手法により、被災者Vの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したとの事実を認めることができる。 他方で、被控訴人ニチアスの㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種については、前記4⑶のとおり、その出荷先の9割程度は非住宅向けであった ことが認められる。そして、被災者Vは、上記期間のうち昭和49年1月から昭和62年12月まで、主に個人住宅の建築 板第1種については、前記4⑶のとおり、その出荷先の9割程度は非住宅向けであった ことが認められる。そして、被災者Vは、上記期間のうち昭和49年1月から昭和62年12月まで、主に個人住宅の建築作業に従事しており、非住宅向けの建築作業に従事したのは、昭和63年7月以降であるところ、証拠(甲D28の3の2(2ないし5頁))によれば、被災者Vは、昭和63年7月頃から平成12年12月頃までの間、共同住宅につき30件程度 (年平均2ないし3件程度)、学校、幼稚園等につき5件程度の建築作業に従事したことが認められる。このことから、昭和63年7月頃から平成4年までの期間に非住宅向けの建築作業の従事した件数は十数件であり、20件に満たない(シェアが10%であっても1件に到達した高度の蓋然性は認められない。)ことが認められる。このような被災者Vの従事した 非住宅の建築現場の件数を踏まえると、上記建材の現場到達事実について、シェアを用いた手法による確率論的な見地からの検討を行ったとしても、これを認めることができないものといわざるを得ない。 前記以外の被控訴人らの製造販売する⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カ ルシウム板第1種が、被災者Vの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ウその他の建材(⑪石綿含有けい酸カルシウム板第2種、⑫石綿含有耐火被覆板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグ せっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、 ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト 有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグ せっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、 ㉔石綿含有ロックウール吸音天井板、㉖石綿含有パーライト板及び㉛石綿含有けい酸カルシウム床材)上記各建材については、前記第3に記載のとおり、シェアを用いた手法により、現場到達事実を認めることができない。他に、上記各建材が、被災者Vの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる 証拠はない。 ⑶ 小括前記⑴で認定した被災者Vの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況や、前記⑵のとおり、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイが製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボ ード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種が被災者Vの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたことからすると、被災者Vが上記石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露したことは、被災者Vが石綿関連疾患に罹患したことに寄与したものと認めるのが相当である。 したがって、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被 災者Vに対し、民法719条1項後段の類推適用により、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で、連帯して損害賠償責任を負う。 また、以上によれば、その余の被控訴人らは、被災者Vに対し、損害賠償責任を負わない。 23 被災者W(番号29) ⑴ 稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況前記認定事実(第1節第2の4)のほか、証拠(甲D29の2・3、控訴人W1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Wの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容 被災者Wは、昭和40年2月か 甲D29の2・3、控訴人W1)及び弁論の全趣旨によれば、被災者Wの稼働状況及び石綿粉じんへの曝露の状況は、以下のとおりである。 ア就労期間及び作業内容 被災者Wは、昭和40年2月から平成18年7月まで、配管工又は施工 施行管理技士として、建築作業又は建築現場における建築作業員の管理に従事した。 被災者Wは、被控訴人らが石綿含有建材について警告義務を負うに至った昭和49年1月から昭和63年4月までの間及び平成6年2月から平成18年7月までの間、設備施工管理技士として、大型建築物の新設に伴 う空調、換気、給排水、衛生設備全般や既設建築物の設備の修理や交換の工事について、工程表を作り、現場で職人の管理をする仕事していた。被災者Wは、自らが直接石綿含有建材を取り扱う作業は行ってはおらず、常に工事現場に立ち会っていたものではないが、毎日、建築工事の進捗状況を確認するために、建築工事の現場に立ち入っていた。 被災者Wは、平成3年7月から平成5年10月までの間、配管工として、プラント工場などで、中型ボイラーの設置、交換、修理等に伴う配管設備工事の作業に従事しており、この中で、配管の切断等のほか、躯体、間仕切りなどへ給排水管等を通すために石綿含有ボードの交換、切断、貫通等の作業を行った。 イ建築現場数 被災者Wは、設備施工管理技士として、具体的な記憶があるものだけでも、昭和43年から昭和63年までの間に12件、平成6年から平成18年までの間に23件の建築現場において、上記アの作業に従事した。そして、証拠(甲D29の2(37ないし49頁))によれば、平成7年から 平成18年までの間に被災者Wが担当した現場として33件が挙げられていることからすると、昭和43年から昭和63 事した。そして、証拠(甲D29の2(37ないし49頁))によれば、平成7年から 平成18年までの間に被災者Wが担当した現場として33件が挙げられていることからすると、昭和43年から昭和63年までの間及び平成6年から平成18年までの間に少なくとも年3件程度の建築現場を担当していたものと認められる。(甲D29の2、3の1及び2)被災者Wは、平成3年7月から平成5年10月までの約2年間、配管工 として、具体的な記憶があるものだけでも16件(年間8件程度)の建築 工事に従事した(甲D29の3の1及び2)。 ウ石綿粉じんの曝露状況被災者Wは、設備施工管理技士であり、直接、石綿含有建材を取り扱ってはいなかったが、毎日、石綿粉じんの飛散する現場に立ち入っており、また、改修工事において、配管や配線を確認するために、劣化した吹付け 材が舞い上がる屋根裏に登り、吹付け材を削ぎ落とすなどしており、これらの際に、石綿粉じんに曝露した。 被災者Wは、配管工として、配管や石綿含有ボードの切断等を行う際に、石綿粉じんに曝露した。 ⑵ 共同不法行為者の特定等 ア控訴人らは、別紙5-23の「No.」欄に記載のとおり、被災者Wに係る主要原因建材として、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)、⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材、⑩石綿保温材、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレート ボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成 ド・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種、㉖石綿含有パーライト板及び㊶石綿セメント円筒を主張するので、以下検討する。 イ設備施工管理技士の時期について吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)a 前記第3の2のとおり、吹付け材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和50年から 昭和53年までの4年間に被控訴人太平洋セメントの製造販売した② 石綿含有吹付けロックウールのみである。 被災者Wは、前記⑴アのとおり、昭和49年1月から昭和63年4月までの間及び平成6年2月から平成18年7月までの間、設備施工管理技士として、職人の管理や建築工事の進捗状況の確認を行っていたが、担当していた建築現場数は、年3件程度、4年間で12件程度(3件× 4年)であり、鉄骨造建物の割合が多かったことを認めるに足りる証拠もない。このような被災者Wの建築現場数を踏まえると、仮に鉄骨造建物の割合が高かったとして、被控訴人太平洋セメントの上記建材について、シェアが25%であったことからシェアを用いた手法による確率論的な検討をしても、2回(12件÷8)に満たないものであったといわ ざるを得ず、被災者Wの作業する建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実は認めることができない。 b その他、被控訴人らの製造販売する①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Wの従事した建築現場に相当回数にわ 達していたとの事実は認めることができない。 b その他、被控訴人らの製造販売する①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材が、被災者Wの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。 保温材(⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材)a 前記第3の3のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、被控訴人ニチアスが昭和50年から昭和55年までに製造販売した建材及び被控訴人エーアンドエーが昭和50年から昭和53年までに製造販売した建材 である。 しかし、前記⑴アのとおり、被災者Wの担当していた建築現場数は、年3件程度であることから、昭和50年から昭和55年までの工事件数は18件程度(3件×6年)にすぎない。このような被災者Wの従事した建築現場の件数を踏まえると、上記建材の現場到達事実について、シ ェアを用いた手法による確率論的な見地から検討できる前提を欠いて いるものといわざるを得ない。したがって、シェアを用いた手法により、上記建材が、被災者Wの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 b その他、被控訴人らの製造販売する⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材及び⑩石綿保温材が、被災者Wの従事した建築現場に相当回数にわた り到達したことを認めるに足りる証拠はない。 ⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板、⑰石綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形 セ 綿含有スレートボード・軟質板、⑱石綿含有スレートボード・軟質フレキシブル板、⑲石綿含有スレートボード・その他、⑳石綿含有スラグせっこう板、㉑石綿含有パルプセメント板、㉒石綿含有押出成形 セメント板、㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種及び㉖石綿含有パーライト板a 被災者Wは、前記⑴アのとおり、年3件程度、昭和49年1月から昭和63年4月までの約14年間で、42件(3件×14年)程度の工事に従事したものと認められる。しかし、被災者Wの職務内容は、大型建 築物の新設に伴う空調、換気、給排水、衛生設備全般の管理を行う設備施工管理技士として、職人の管理や建築工事の進捗状況の確認を行うことであり、上記建材の切断等の作業に直接関わる機会や当該切断等の作業時にその周辺で作業する機会が多かったものとは認めることができない。また、毎日、建築工事の現場に立ち入っていたことは認められる が、建築現場に常時立ち会っていたものではない。このような被災者Wの事情を踏まえると、上記建材が被災者Wの主要原因建材にあたるものとは認めることができない。 b その他、被控訴人らの製造販売する上記建材が、被災者Wの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はな い。 ㊶石綿セメント円筒a 前記第3の10のとおり、上記建材のうち、シェアを用いた手法により現場到達事実を認定することができる場合があるのは、昭和59年から昭和63年までの5年間に被控訴人エーアンドエーが製造販売した㊶石綿セメント円筒である。 しかし、被災者Wが、その間に従事した建築現場の件数は、前記⑴アのとおり、年間3件程度、合計15件程度(3件×5年)でしかない。 また、被控訴人エーアンドエーの製造販売する上記建材のシェアに しかし、被災者Wが、その間に従事した建築現場の件数は、前記⑴アのとおり、年間3件程度、合計15件程度(3件×5年)でしかない。 また、被控訴人エーアンドエーの製造販売する上記建材のシェアについては、昭和61年以降の3年間は約20%(建材が10件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)であるが、それ以 前の2年間は約10%(建材が20件の建築現場のうち少なくとも1件に到達した高度の蓋然性がある)にすぎない。 以上の事情に照らすと、上記建材の現場到達事実について、シェアを用いた手法による確率論的な見地から検討できる前提を欠いているものといわざるを得ない。したがって、シェアを用いた手法により、被控 訴人エーアンドエーの上記建材が、上記期間内に、被災者Wの従事した建築現場に相当回数にわたり到達していたとの事実を認めることはできない。 b その他、被控訴人らの製造販売する上記建材が、被災者Wの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はな い。 なお、被災者Wは、改修工事において、配管や配線を確認するために、劣化した吹付け材が舞い上がる屋根裏に登り、吹付け材を削ぎ落とすなどしたことが認められる。しかし、前記第2節第3の2⑵のとおり、被控訴人らは、改修工事において、石綿含有建材の撤去等の作業に従事する者に 対し、警告義務を負わないから、被災者Wによる上記作業について、被控 訴人らにおける警告義務違反は認められない。 また、被災者Wが、工期に間に合わないおそれが出てきた場合に、建築工事の手伝いを行ったことは認められる(甲D29の3の2(9頁)、控訴人W1本人(20頁))。しかし、被災者Wは、大半は、自ら石綿含有建材を使用した作業を直接行 合わないおそれが出てきた場合に、建築工事の手伝いを行ったことは認められる(甲D29の3の2(9頁)、控訴人W1本人(20頁))。しかし、被災者Wは、大半は、自ら石綿含有建材を使用した作業を直接行っていたわけではなかったことからすると、石綿 含有建材の現場到達事実について、シェアを用いた手法による確率論的な見地からの考慮を行うための前提を欠いているものといわざるを得ない。 他に、被災者Wが、その際に、特定の石綿含有建材を相当回数にわたり直接取り扱っていたことを認めるに足りる証拠はない。 ウ配管工の時期について 被災者Wは、上記⑴ア及びイのとおり、平成3年7月から平成5年10月までの間、配管工として稼働していたが、建築工事に従事した件数は、約2年間で合計16件程度(年間8件程度である)である。このような被災者Wの従事した建築現場の件数を踏まえると、特定の建材の現場到達事実について、シェアを用いた手法による確立論的な見地からの考慮を行う ための前提を欠いているものといわざるを得ない。 その他、被控訴人らの製造販売した石綿含有建材が、被災者Wの従事した建築現場に相当回数にわたり到達したことを認めるに足りる証拠はない。なお、吹付け材(①吹付け石綿、②石綿含有吹付けロックウール及び③湿式石綿含有吹付け材)及び保温材(⑥石綿含有けいそう土保温材、⑦ 石綿含有けい酸カルシウム保温材、⑧石綿含有バーミキュライト保温材及び⑩石綿保温材)については、平成3年の時点でいずれも製造販売が終了している。 改修工事における石綿粉じん曝露については、前記イで述べたとおり、被控訴人らに警告義務違反は認められない。 ⑶ 小括 以上によれば、被控訴人らは、被災者Wに対し、損害賠償責任を負わ 石綿粉じん曝露については、前記イで述べたとおり、被控訴人らに警告義務違反は認められない。 ⑶ 小括 以上によれば、被控訴人らは、被災者Wに対し、損害賠償責任を負わない。 第4節控訴人らの損害額第1 包括一律請求に基づく慰謝料額の算定 1 包括一律請求の適否控訴人らは、本件の損害賠償請求の内容は財産的損害を含まず慰謝料のみを一 律に請求するものであること、控訴人らは本件における請求のほかに財産的損害の請求をする別訴を提起しないことを明らかにした上で、本件被災者らについては1人当たり慰謝料3000万円及び弁護士費用300万円の合計3300万円(ただし、被災者A(石綿関連疾患について、被控訴人ニチアスから支払を受けている。)については、慰謝料1500万円及び弁護士費用150万円の合計 1650万円)及びこれに対する遅延損害金の支払を求めている。 控訴人らの上記請求においては、その実質として、財産的損害分が控訴人らの主張する慰謝料の額の中に含まれているものというべきであるが、このような請求には、控訴人らが個々の被災者に係る多くの損害費目についての主張立証をする必要がなくなり、訴訟の遅延を避けることができるなどの点において、本件の ような事案においては、一定の合理性があるものというべきである。したがって、このような請求は、慰謝料の額という裁判所が不法行為に関する諸般の事情に即して判断すべき事項につき、裁判所に対し、本件被災者らに共通すると認められる被害の性質や、程度等を踏まえて合理的な裁量の下に判断することを求めるものとして、許容され得るものであるということができる。 このような特徴を有する上記請求に関し、各被災者に係る慰謝料の額を諸般の事情に即して判断するに際 裁量の下に判断することを求めるものとして、許容され得るものであるということができる。 このような特徴を有する上記請求に関し、各被災者に係る慰謝料の額を諸般の事情に即して判断するに際しては、控訴人らが上記のような内容の請求をした趣旨に鑑み、被災者らの間に共通する損害について被害の性質や程度から基準となるべき慰謝料の額(基準慰謝料額)を観念した上で、各被災者に係る個別的な事情を必要に応じて考慮し、基準慰謝料額を修正することによって、各被控訴人が 各被災者に対して実際に支払うべき慰謝料の額を算定するのが相当である。 2 基準となる慰謝料額⑴ 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、石綿肺、肺がん、中皮腫の症状等について、以下の各事実を認めることができる。 ア石綿肺石綿肺の主要な症状は、労作時や階段、平地での急ぎ足での歩行の際の息 切れ、せき、たんであり、時に頑固なせきに胸痛や血の混じったたんを伴うこともある。石綿肺の症状が進行すると、肺機能の著しい低下等が生じ、日常生活上の支障が生じることもある。したがって、石綿肺を発症した被災者らは、多大な肉体的・精神的苦痛を被ったものと認められる。(乙アA35(137頁)、156(18頁)) 石綿肺は、短期間で死に至るような重篤な疾患ではないが、石綿肺の治療法としては、せき、たんに対する対症療法しかない。(乙アA156(18頁))石綿肺の予後は他のじん肺と比べてはるかに悪いとされ、182人の石綿肺要療養患者認定患者に対する調査においては、じん肺法4条1項のエック ス線写真の像の第三型に該当する所見を有する者の実測生存率は、5年で25%、10年で12%、上記像の第二型に該当する所見を有する者の実測生存率は、5年で においては、じん肺法4条1項のエック ス線写真の像の第三型に該当する所見を有する者の実測生存率は、5年で25%、10年で12%、上記像の第二型に該当する所見を有する者の実測生存率は、5年で50.5%、10年で30.7%、上記像の第一型に該当する所見を有する者の実測生存率は、5年で75.6%、10年で48.7%であった。そして、このような予後に対する不安も、被災者らの精神的苦痛 を高めるものといえる。(乙アA35(107頁))イ肺がん石綿関連疾患としての肺がんの症状は、血の混じったたん、慢性的な激しいせき、喘鳴、胸痛、体重の減少、食欲の不振、息切れなどであり、一般の肺がんの症状と異なるものではない。したがって、肺がんを発症した被災者 らは、多大な肉体的・精神的苦痛を被ったものと認められる。(甲A107 (12、13頁))石綿関連疾患としての肺がんの治療法には、一般の肺がんと同様に、化学療法、放射線療法、手術療法等があり、原則的には当該肺がんの病期に応じてその治療法が決定される。早期の病変は手術療法で治癒可能であるが、石綿肺が進展している場合等には呼吸機能障害の問題で手術ができない場合 もあり、また、石綿肺を合併している場合には放射線療法が制限される場合もある。(甲A107(15頁)、乙アA1002(62頁))石綿関連疾患としての肺がんは、上記のとおりその治療手段が一般の肺がんよりも制限される場合があるなど、予後は不良であるとされる。非小細胞がんで手術をした場合の術後の5年生存率は、当該がんの病期に応じて8 0%から10%であり、放射線治療の場合には上記より悪い割合となる。小細胞がんでは、限局型で放射線療法と化学療法の合併療法を受けた場合、2年生存率は約 5年生存率は、当該がんの病期に応じて8 0%から10%であり、放射線治療の場合には上記より悪い割合となる。小細胞がんでは、限局型で放射線療法と化学療法の合併療法を受けた場合、2年生存率は約50%、3年生存率は約30%、5年生存率は約25%であり、進展型で化学療法を受けた場合、3年生存率は約10%である。そして、このような予後に対する不安も、被災者らの精神的苦痛を高めるものといえる。 (甲A107(15頁)、乙アA1002(62頁))ウ胸膜中皮腫胸膜中皮腫の症状としては、胸水の貯留や気胸による息切れ、胸痛、せきが多く、上記胸痛は、特定の部位に限局せず、持続的である。胸膜中皮腫の進展とともに、せきや胸痛はひどくなり、肺や心臓を圧迫して呼吸困難を伴 うこともある。したがって、胸膜中皮腫を発症した被災者らは、多大な肉体的・精神的苦痛を被ったものと認められる。(甲A107(16頁)、乙アA35(155頁))胸膜中皮腫を始めとする中皮腫の治療法には、外科療法、化学療法、放射線療法、温熱化学療法、タルク注入法、遺伝子治療等があるが、研究段階の ものが多い。胸膜中皮腫は、発見されたときには末期状態であることが多く、 通常は治療の対象にならない。(甲A107(18頁)、乙アA35(167頁))中皮腫の予後は、良くない、ないしは、非常に不良であるとされる。胸膜中皮腫の予後については、平均余命の中央値が15.2か月、2年生存率を29.6%、5年生存率を3.7%とする報告がある。そして、このような 予後に対する不安も、被災者らの精神的苦痛を高めるものといえる。(甲A107(18頁)、乙アA35(154、155頁))⑵ 前記⑴のとおり、石綿関連疾患としての石綿肺、肺がん このような 予後に対する不安も、被災者らの精神的苦痛を高めるものといえる。(甲A107(18頁)、乙アA35(154、155頁))⑵ 前記⑴のとおり、石綿関連疾患としての石綿肺、肺がん、胸膜中皮腫にはいずれにも進行性があり、それぞれの予後は総じて不良であって、特に肺がん及び胸膜中皮腫はこれらの発症後数年内に死亡することも少なくない重篤な疾 患であることが認められる。 そうすると、石綿肺を発症した被災者に係る慰謝料の額については、管理区分(管理区分は管理一から管理四までに区分されており、管理四が最も重い。)に応じてこれを定めるのが相当であるというべきであり、また、肺がん又は中皮腫を発症した被災者に係る慰謝料の額については、管理区分の管理四に準じ てこれを定めるのが相当というべきである。 さらに、上述の石綿肺、肺がん、胸膜中皮腫の1つないし複数を発症した被災者がこれらを原因として死亡した場合には、当該被災者に係る慰謝料の額は、上述の石綿肺、肺がん、胸膜中皮腫の1つないし複数を発症したもののいまだ生存している被災者に係る慰謝料の額と比べ、高くするのが相当である。 ⑶ 他方、本件の被災者らないしその遺族らは労災保険給付等を受給しており、その合計額は、平成29年2月末の時点で、7億2870万8969円であるところ、かかる事情は、上述のような一律の慰謝料請求がされている本件においては、基準慰謝料額を検討するに当たって総合的に考慮されるべきである。 ⑷ 以上に照らせば、本件の被災者らに係る基準慰謝料額は、以下のとおりとす るのが相当である。 ア石綿肺(管理区分の管理四に該当するもの)を発症した者2500万円イ肺がんを発症した者2500万 、以下のとおりとす るのが相当である。 ア石綿肺(管理区分の管理四に該当するもの)を発症した者2500万円イ肺がんを発症した者2500万円ウ石綿肺、肺がん又は中皮腫によって死亡した者 2800万円第2 被控訴人らが賠償すべき損害額 1 損害の発生に対する寄与度⑴ 被控訴人らは、前記第3節第1の1のとおり、民法719条1項後段の類推適用により、損害賠償責任を負う場合においては、その行為の損害の発生に対 する寄与度に応じた範囲で損害賠償責任を負い、複数の場合には、寄与度に応じた範囲で連帯して損害賠償責任を負うというべきである。 そして、本件被災者らは、前記第3節第4の被災者ごとの検討によれば、建築工事に従事した建築現場において、損害賠償責任を負うものとされた特定の被控訴人が製造販売した石綿含有建材を自ら取り扱うなどした際に発散した 石綿粉じんに曝露し、同じ建築現場で作業する自分以外の者が取り扱ったことから発散し、又は飛散した石綿粉じんに間接的に曝露していることが認められるが、他方で、他の企業が製造販売した石綿含有建材を自ら取り扱うなどした際に同建材から発散した石綿粉じんにも曝露していることが認められる。 そうすると、被控訴人らの寄与度については、基本的には、以下のとおり考 えるのが相当である。 ⑵ア大工、内装大工及び内装工(以下「大工等」という。)については、建築作業において、主要原因建材の中でも⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種に切断、穿孔、研磨等の加工を施す機会が頻繁にあったものと認めら れる。他方で、大工等は、共同不法行為責任を負わ シブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種に切断、穿孔、研磨等の加工を施す機会が頻繁にあったものと認めら れる。他方で、大工等は、共同不法行為責任を負わないシェアが小さく個々 の被災者との関係では到達を認めることができない企業が製造販売した⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種から発散した石綿粉じんにも曝露していることが明らかであるし、他の石綿含有成形板についても、一定程度取り扱っていた可能性もあることや、自分以外の職人が同時並行的に作 業することにより他の石綿含有建材から発散ないし飛散した石綿粉じんにも間接的に曝露していた可能性があることが認められる。これに加え、大工等は、一定数の改修工事に従事することがあり、そのような場合には、既設の石綿含有建材を撤去するために取り壊す際に生じた石綿粉じんにも曝露していたことが認められる。 以上の事情に照らすと、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を製造販売し、大工等の本件被災者らに対する共同不法行為責任を負う被控訴人らの寄与度は、基本的には50%とするのが相当である。 ただし、大工等のうち解体工事に従事した件数が多い者については、既設 の石綿含有建材を取り壊す際に生じた石綿粉じんに曝露した量が一般的な大工よりも多いものといえるので、寄与度を減らすことを検討するのが相当である。また、大工等のうち鉄骨造建物の建築工事に従事する比率が特に高い者については、吹付け材から発散又は飛散する石綿粉じんに曝露した量が一般的な大工等よりも多いものといえるので、寄与度を減らすこ である。また、大工等のうち鉄骨造建物の建築工事に従事する比率が特に高い者については、吹付け材から発散又は飛散する石綿粉じんに曝露した量が一般的な大工等よりも多いものといえるので、寄与度を減らすことを検討す るのが相当である。なお、逆に木造建物の新築工事のみに従事していたなど他の建材からの曝露の可能性が低い場合には、寄与度を増やすことも考えられる。 イ配管工については、スリーブ工事を行う際に、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カ ルシウム板第1種に加工を施す機会があったものと認められ、基本的には前 記アのとおりであるが、その頻度は、前記アの大工等よりも低かったものと認められる。また、配管工は、配管を切断、加工する際や、支持金具や吊りボルトを鉄骨に取り付けるために吹付け材を剥がす際などにも、石綿粉じんに曝露していることが認められる。これに加え、配管工は、一定数の改修工事に従事しており、既設の石綿含有建材にスリーブ工事を行ったり、配管を 撤去する際に、既設の保温材や配管から発散する石綿粉じんに曝露していたことが認められる。 以上の事情に照らすと、⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種を製造販売し、配管工の本件被災者らに対する共同不法行為責任を負う被控訴 人らの寄与度は、基本的には40%とするのが相当である。 ウ塗装工については、モルタル壁を塗装する際の下地調整を行う際に、モルタルに練りこまれた㊸混和材に含まれる石綿粉じんに曝露したものと認められる。他方で、塗装工は、塗装前に清掃を行う際に、舞い上がった他の石綿含有建材から生じた石綿粉じんにも曝露した 整を行う際に、モルタルに練りこまれた㊸混和材に含まれる石綿粉じんに曝露したものと認められる。他方で、塗装工は、塗装前に清掃を行う際に、舞い上がった他の石綿含有建材から生じた石綿粉じんにも曝露したこと、石綿含有成形板を塗装 する際の下地調整を行う際に発散した石綿粉じんに曝露したことも相当程度あったものと認められる。 以上の事情に照らすと、㊸混和材を製造販売し、本件被災者らに対する共同不法行為責任を負う被控訴人の寄与度は、基本的に40%とするのが相当である。 エ前記アないしウのほか、各被災者について、被控訴人らの寄与度を増減させるべき個別の事情が認められる場合には、その点を考慮した上で、被控訴人らの寄与度を定めることとする。 オなお、被災者Mについては、シェアを用いた手法による確率論的な見地からの検討により責任原因建材の到達を認定したものではないから、被災者M の個別事情を踏まえて寄与度を定めることとする。 2 本件被災者らが罹患した石綿関連疾患及び稼働期間に応じた寄与度の修正⑴ 石綿肺、肺がんア前記のとおり、石綿肺については、一般に、石綿粉じんへの曝露が始まってから10年以上経過してから発症するものとされている。 肺がんについては、ある肺がんが石綿への曝露を原因とするものであると みなすことができるのは肺がんの発症リスクを2倍以上に高める量の石綿への曝露があった場合であると考えられることを前提に、上述の曝露の量は累積で25本/ml・年以上と考えるべきところ、上記累積曝露量があったとみなすことができるのは、胸膜プラーク等の石綿への曝露の所見が認められ、石綿に曝露する作業におおむね10年以上従事した場合であると考えられ ている(乙アA156(28、 記累積曝露量があったとみなすことができるのは、胸膜プラーク等の石綿への曝露の所見が認められ、石綿に曝露する作業におおむね10年以上従事した場合であると考えられ ている(乙アA156(28、29頁))。 イこのことから、被控訴人らの義務違反が認められる期間(以下「責任期間」という。)内において、建築作業に10年以上従事して、被控訴人らの製造販売した石綿含有建材から発散した石綿粉じんに曝露した被災者については、責任期間内の石綿粉じんへの曝露のみで石綿肺又は肺がんを発症する危険 性が高かったものというべきである。したがって、このような被災者については、責任期間内における石綿粉じんへの曝露のみで石綿関連疾患を発症させるのに十分であったと評価することができるから、責任期間以外の期間に石綿粉じんに曝露していたとしても、そのことによって、被控訴人らの当該被災者に対する責任が否定又は軽減されるものではない。 ウこれに対し、責任期間内において建築作業に従事した年数が10年未満の被災者については、責任期間以外の期間における石綿粉じんへの曝露が、石綿関連疾患の発症に一定程度寄与しているものと認められる。したがって、責任期間内において建築作業に従事した期間が10年未満の場合には、10年から上記期間を控除して10年に足りない年数を算出(1年未満は切捨て) した上で、当該年数の1年ごとに、当該被災者に係る基準慰謝料額を10% ずつ減額するのが相当である。 ⑵ 胸膜中皮腫中皮腫については、そのほとんどが石綿への曝露に起因するものと考えられるところ、胸膜中皮腫が職業曝露によるものであるとみなすことができるのは、おおむね1年以上の石綿曝露作業への従事歴が認められた場合であると考え られてい どが石綿への曝露に起因するものと考えられるところ、胸膜中皮腫が職業曝露によるものであるとみなすことができるのは、おおむね1年以上の石綿曝露作業への従事歴が認められた場合であると考え られている(乙アA156(28頁))。 このことから、責任期間内において建築作業に1年以上従事していた被災者については、責任期間内の石綿粉じんへの曝露のみで中皮腫を発症する危険性が高かったものというべきである。したがって、このような被災者については、責任期間内における石綿粉じんへの曝露のみで石綿関連疾患を発症させるの に十分であったと評価することができるから、責任期間以外の期間に石綿粉じんに曝露していたとしても、そのことによって、被控訴人らの当該被災者に対する責任が否定又は軽減されるものではない。 本件被災者らのうち胸膜中皮腫を発症した者については、被控訴人らの責任が認められない被災者Bを除き、責任期間内において、建築作業に1年以上従 事していることが認められる。 3 喫煙歴に基づく減額肺がんの発症における喫煙と石綿との関係は相乗的なものであると考えられており、国際的な知見として、喫煙歴も石綿への曝露歴もない者の発がんリスクを1とすると、喫煙歴があって石綿への曝露歴がない者では当該リスクは10. 85倍、喫煙歴がなく石綿への曝露歴がある者では当該リスクは5.17倍、喫煙歴も石綿への曝露歴もある者では当該リスクは53.24倍となるといわれている(乙アA157(4頁))。 前記のとおり、石綿自体に発がん性があること、また、肺がんの発症における喫煙と石綿との関係は相乗的なものであると考えられていることに照らせば、石 綿粉じんに一定程度曝露した者が肺がんを発症した場合、曝露と発症との間には 相当因果関係が おける喫煙と石綿との関係は相乗的なものであると考えられていることに照らせば、石 綿粉じんに一定程度曝露した者が肺がんを発症した場合、曝露と発症との間には 相当因果関係があるものというべきであり、同人に喫煙歴があることによって、因果関係が直ちに否定されるものではないというべきである。他方で、上記知見に照らせば、石綿関連疾患としての肺がんを発症した被災者に喫煙歴がある場合には、当該喫煙は当該肺がんの発症を相乗的に促進するものであって、当該喫煙も当該発症に有意の影響を与えているものというべきである。 以上に照らせば、本件の被災者らのうち肺がんを発症した者で、かつ、有意の喫煙歴がある者については、民法722条2項を類推適用し、当該被災者に喫煙歴があることを斟酌して当該被災者に係る慰謝料の額を減額するのが相当である。ただし、喫煙の害悪は上記のとおり石綿の害を上回るもので、非常に重大なものであることが明らかではあるものの、少なくとも以前の時期においては、受 動喫煙防止のための分煙さえされることがなく、喫煙自体は社会的に許容されたものであったというべきことや、喫煙の健康に対する危険性についても、一般的な警告がされていたにとどまり、害悪の告知も不十分であったものというべきことに鑑みれば、被災者らにおいて、喫煙を控える契機が乏しかったといえるのであって、上記減額は控えめに、かつ、一律に行うのが相当であり、具体的には、 当該被災者に係る慰謝料額を10%減額するのが相当である。 4 防じんマスクの不着用との関係本件の被災者らには防じんマスクを着用していなかった者がいるが、特に労働者については、防じんマスク等の呼吸用保護具を使用すべき義務は、事業者からその使用を命じられることを前提とするものである(安衛則59 の被災者らには防じんマスクを着用していなかった者がいるが、特に労働者については、防じんマスク等の呼吸用保護具を使用すべき義務は、事業者からその使用を命じられることを前提とするものである(安衛則597条)ところ、 本件の被災者らが同人らの使用者から上記呼吸用保護具の使用を指示されたにもかかわらずあえて上記呼吸用保護具を使用しなかったといった事実関係を認めるに足りる証拠はない。 また、前記の検討に照らせば、本件の被災者らは、被控訴人らを始めとする石綿含有建材を製造、販売する者らが上記警告義務を怠るなどしたため、防じんマ スクを着用しなかったものと認められる。 以上に照らせば、本件の被災者らが防じんマスクを着用しなかったことを理由として、本件の被災者らに係る各慰謝料の額を減額することは相当ではないというべきである。 5 国及び事業者の責任との関係等⑴ 被控訴人らが民法719条1項後段の類推適用により各被災者に対して負 う損害賠償責任は、自ら危険な製品を製造販売して広く社会に流通させ、これによって利益を得るのに伴い、被災者に損害を与えていたことによるものであって、最も重要な法益である人の生命、身体の安全を図るという観点からも、第一次的なものというべきである。また、被控訴人らが警告義務を履行しなければ、事業者による十分な対策は期待できないものといえる。したがって、国 及び事業者の責任を踏まえた慰謝料額の修正を行うことが相当でないことは明らかであり、このような修正は行わない。 ⑵ なお、控訴人らは、国に対する訴えについて口頭弁論を分離する前に、控訴人らに対し、国及び被控訴人らが、連帯して慰謝料等を支払うよう求めていた。 しかし、前記第3節第3の6⑶でも説示したとおり、被控訴人らの責任は第一 は、国に対する訴えについて口頭弁論を分離する前に、控訴人らに対し、国及び被控訴人らが、連帯して慰謝料等を支払うよう求めていた。 しかし、前記第3節第3の6⑶でも説示したとおり、被控訴人らの責任は第一 次的なものというべきであるのに対し、国の責任は第二次的なものというべきであるから、被控訴人らにおける警告義務違反行為と国の権限不行使について、共同して他人に損害を生じさせるような一体性があるとはいえず、共同不法行為は成立しない。 6 弁護士費用 本件訴訟の性質等にかんがみれば、各控訴人が本件訴訟において被控訴人らから賠償されるべき弁護士費用の額は、各控訴人がそれぞれ被控訴人らから賠償されるべき慰謝料の額の概ね1割であると認めるのが相当である。 第3 各控訴人の損害 1 被災者A(番号1) ⑴ 被控訴人らの寄与度 ア被災者Aは、前記第3節第4の1のとおり、昭和49年から平成元年までの間、金属内装工として、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1 ⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるが、被災者Aについては、木造建物の建築工事に従事しておらず、鉄骨造建物における建築工事に従事した際に吹付け材から発散又は飛散する石綿粉じんに曝露した量が、一般的な大工等と比べて多いことが推認される。 また、後記⑶の昭和31年までに被控訴人ニチアスのアルバイト従業員とし て石綿粉じんに曝露する作業を行っていることが認められ、後記⑶アの経緯もあって、上記各建 等と比べて多いことが推認される。 また、後記⑶の昭和31年までに被控訴人ニチアスのアルバイト従業員とし て石綿粉じんに曝露する作業を行っていることが認められ、後記⑶アの経緯もあって、上記各建材のシェアが約10%である被控訴人ニチアスに対する訴えは取り下げられている。これらの事情を考慮すると、被控訴人らの寄与度は、30%とするのが相当である。 イまた、被災者Aは、石綿肺を発症し、これが原因で死亡したことが認めら れるところ、昭和49年から平成元年までの間に、建築作業に10年以上従事していたことが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Aが石綿関連疾患に罹患したことにつき、30%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 慰謝料840万円(計算式)2800万円(石綿肺により死亡)×0.3(寄与度)⑶ 被控訴人ニチアスからの金銭受領ア証拠(甲D1の2、乙マ1、2)によれば、被災者Aは、昭和29年7月 15日から同年8月20日まで、昭和30年7月15日から同年8月20日 まで及び昭和30年12月20日から昭和31年1月20日までの間に被控訴人ニチアスが行う工事にアルバイトとして、石綿含有のケイ酸カルシウム保温材(石綿含有1~4%)や石綿織布(石綿含有80~90%)などを配管や加熱炉のカバーに巻き付けたり貼り付けたりする作業に従事したことについて、被控訴人ニチアスとの間で、平成19年6月15日、被控訴人ニ チアスが被災者Aに対して被災者Aが罹患した労働者災害補償保険法に定める業務災害の認定を受けた石綿関連疾患による損害等の補償として1500万円を支払う旨を合意し、被災者Aは、上記合意に基づき、被 チアスが被災者Aに対して被災者Aが罹患した労働者災害補償保険法に定める業務災害の認定を受けた石綿関連疾患による損害等の補償として1500万円を支払う旨を合意し、被災者Aは、上記合意に基づき、被控訴人ニチアスから上記1500万円を受領したことが認められる。 イ被災者Aが被控訴人ニチアスから受領した1500万円は、被災者Aが石 綿関連疾患を発症したことによって被った被災者Aの損害の全体に対する補償であるとも考えられることに照らせば、公平の観点から、被控訴人らが被災者Aに対して賠償すべき額から一定の控除をすることも考えられないわけではないが、前記アのとおり、被控訴人らの責任期間の始期より約20年前である昭和29年7月から昭和31年1月までの合計して約3か月の アルバイト従業員としての作業に対する補償であること、前記⑴アの寄与度において既に考慮していることからすると、さらなる控除を行うことは相当でない。 ⑷ 認容額ア控訴人A1(相続分3/5) 555万円(内訳:慰謝料504万円、弁護士費用51万円)イ控訴人A2(相続分1/5)185万円(内訳:慰謝料168万円、弁護士費用17万円)ウ控訴人A3(相続分1/5)185万円(内訳:慰謝料168万円、弁護士費用17万円) 2 被災者C(番号5) ⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Cは、前記第3節第4の3のとおり、昭和49年から昭和54年までの間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエーの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉 じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのと 有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉 じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるが、被災者Cについては、上記建材の現場到達事実が認められた企業が被控訴人エーアンドエーのみであり、損害賠償責任を負わない企業の製造販売した上記建材から発散した石綿粉じんにも相当程度曝露していることが考えられることから、被控訴 人エーアンドエーの寄与度は40%とするのが相当である。 イまた、被災者Cは、肺がんを発症したことが認められるところ、責任期間内の稼働期間は約3年10か月である。このことから、10年から3年10か月を控除して10年に足りない年数(1年未満は切捨て)である6年に対応する60%を前記アから減額することとする。なお、被災者Cは、平成3 0年12月28日、腹膜偽粘液腫によって死亡したが、肺がんと死亡との間の相当因果関係を認めるに足りる証拠はない。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエーは、被災者Cが石綿関連疾患に罹患したことにつき、16%(0.4×(1-0.6))の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額証拠(甲D5の2(7、27頁))によれば、被災者Cには、喫煙歴があると認められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料360万円 (計算式)2500万円(肺がん)×0.16(寄与度)×0.9(喫煙歴に よる減額)⑷ 認容額ア C1(相続分1/2)198万円(内訳:慰謝料180万円、弁護士費用18万円)イ C2(相続分1/4) 99万円( .9(喫煙歴に よる減額)⑷ 認容額ア C1(相続分1/2)198万円(内訳:慰謝料180万円、弁護士費用18万円)イ C2(相続分1/4) 99万円(内訳:慰謝料90万円、弁護士費用9万円)ウ C3(相続分1/4)99万円(内訳:慰謝料90万円、弁護士費用9万円) 3 被災者D(番号7)⑴ 被控訴人らの寄与度 ア被災者Dは、前記第3節第4の4のとおり、昭和49年から平成4年までの間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認め られる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるところ、被災者Dについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の存在は認められない。 イまた、被災者Dは、胸膜中皮腫を発症し、これが原因で死亡したことが認められるところ、昭和49年から平成4年までの間に、建築作業に1年以上 従事していたことが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Dが石綿関連疾患に罹患したことにつき、50%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 慰謝料 1400万円 (計算式)2800万円(胸膜中皮腫により死亡)×0.5(寄与度)⑶ 認容額控訴人D11540万円(内訳:慰謝料1400万円、弁護士費用140万円) 4 被災者E(番号8) ⑴ )2800万円(胸膜中皮腫により死亡)×0.5(寄与度)⑶ 認容額控訴人D11540万円(内訳:慰謝料1400万円、弁護士費用140万円) 4 被災者E(番号8) ⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Eは、前記第3節第4の5のとおり、昭和49年から平成4年までの間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含 有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるところ、被災者Eについては、建築作業に従事する前段階として、従前建てられていた建築物の解体作業に従事していたことが認められるから、この点を考慮して、被控訴人らの寄与度は、45%とす るのが相当である。 イまた、被災者Eは、胸膜中皮腫を発症し、これが原因で死亡したことが認められるところ、昭和49年から平成4年までの間に、建築作業に1年以上従事していたことが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人 エム・エム・ケイは、被災者Eが石綿関連疾患に罹患したことにつき、45%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 慰謝料1260万円(計算式)2800万円(胸膜中皮腫により死亡)×0.45(寄与度) ⑶ 認容額 控訴人E11386万円(内訳:慰謝料1260万円、弁護士費用126万円) 5 被災者G(番号11)⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Gは、前記第3節第 認容額 控訴人E11386万円(内訳:慰謝料1260万円、弁護士費用126万円) 5 被災者G(番号11)⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Gは、前記第3節第4の6のとおり、平成元年6月から平成4年ま での間、配管工として稼働し、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵イのとおり、配管工についての被控訴人らの寄 与度は、基本的に40%であるところ、被災者Gについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の存在は認められない。 イまた、被災者Gは、肺がんを発症し、これが原因で死亡したことが認められるところ、責任期間内の稼働期間は約3年半である。このことから、10年から3年半を控除して10年に足りない年数(1年未満は切捨て)である 6年に対応する60%を前記アから減額することとする。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Gが石綿関連疾患に罹患したことにつき、16%(0.4×(1-0.6))の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額 証拠(甲D11の3の3(3頁))によれば、被災者Gには、喫煙歴があると認められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料403万2000円(計算式)2800万円(肺がんにより死亡)×0.16(寄与度) ×0.9(喫煙歴による減額) ⑷ 認容額控訴人G1444万 403万2000円(計算式)2800万円(肺がんにより死亡)×0.16(寄与度) ×0.9(喫煙歴による減額) ⑷ 認容額控訴人G1444万2000円(内訳:慰謝料403万2000円、弁護士費用41万円) 6 被災者H(番号13) ⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Hは、前記第3節第4の8のとおり、昭和49年から平成4年までの間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含 有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるところ、被災者Hについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の存在は認められない。 イまた、被災者Hは、肺がんを発症し、これが原因で死亡したことが認めら れるところ、昭和49年から平成4年までの間に、建築作業に10年以上従事していることが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Hが石綿関連疾患に罹患したことにつき、50%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額証拠(甲D13の2(20、22頁))によれば、被災者Hには、喫煙歴があると認められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料1260万円 (計算式)2800万円(肺がんにより死亡)×0.5(寄与度) ×0.9(喫煙歴による減額) 、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料1260万円 (計算式)2800万円(肺がんにより死亡)×0.5(寄与度) ×0.9(喫煙歴による減額)⑷ 認容額控訴人H11386万円(内訳:慰謝料1260万円、弁護士費用126万円) 7 被災者I(番号14) ⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Iは、前記第3節第4の9のとおり、昭和49年から平成4年までの間、配管工として稼働し、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿 含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵イのとおり、配管工についての被控訴人らの寄与度は、基本的に40%であるところ、被災者Iについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の存在は認められない。 イまた、被災者Iは、肺がんを発症したことが認められるところ、昭和49 年から平成4年までの間に、建築作業に10年以上従事していたことが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Iが石綿関連疾患に罹患したことにつき、40%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額証拠(甲D14の3の3(9頁))によれば、被災者Iには、喫煙歴があると認められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料900万円 (計算式)2500万円(肺がん)×0.4(寄与度)×0.9(喫煙歴によ る減額)⑷ 認容額 記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料900万円 (計算式)2500万円(肺がん)×0.4(寄与度)×0.9(喫煙歴によ る減額)⑷ 認容額控訴人I(被災者I本人)990万円(内訳:慰謝料900万円、弁護士費用90万円) 8 被災者J(番号15) ⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Jは、前記第3節第4の10のとおり、昭和51年から平成4年までの間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿 含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるところ、被災者Jについては、稼働期間を通じて、全体の1割ないし2割程度は解体工事に従事していたことが認められるから、この点を考慮して、被控訴人らの寄与度は、45%とするのが相当で ある。 イまた、被災者Jは、肺がんを発症したことが認められるところ、昭和51年から平成4年までの間に、建築作業に10年以上従事していることが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人 エム・エム・ケイは、被災者Jが石綿関連疾患に罹患したことにつき、45%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 慰謝料1125万円(計算式)2500万円(肺がん)×0.45(寄与度) ⑶ 認容額 控訴人J(被災者J本人)1238万円(内訳:慰謝料1125万円、 1125万円(計算式)2500万円(肺がん)×0.45(寄与度) ⑶ 認容額 控訴人J(被災者J本人)1238万円(内訳:慰謝料1125万円、弁護士費用113万円) 9 被災者L(番号17)⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Lは、前記第3節第4の12のとおり、昭和49年から平成12年 までの間、塗装工として稼働し、被控訴人ノザワの製造販売した石綿含有建材(㊸混和材)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵ウのとおり、塗装工についての被控訴人の寄与度は、基本的に40%であるところ、被災者Lについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の存在は認められない。 イまた、被災者Lは、石綿肺を発症し、これが原因で死亡したことが認められるところ、昭和49年から平成12年までの間に、建築作業に10年以上従事していたことが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人ノザワは、被災者Lが石綿関連疾患に罹患したことにつき、40%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 慰謝料1120万円(計算式)2800万円(石綿肺により死亡)×0.4(寄与度)⑶ 認容額(慰謝料額の1円未満の端数は切り捨てた。)ア控訴人L1(相続分1/40) 30万8000円(内訳:慰謝料28万円、弁護士費用2万8000円)イ控訴人L2(相続分1/40)30万8000円(内訳:慰謝料28万円、弁護士費用2万8000円)ウ控訴人L3(相続分1/60)20万5666円(内訳:慰謝料18万6666円、弁護士費用1万90 00円) エ控訴人L4(相続分1/60)20万5666円(内訳:慰謝料18万6666円、弁 20万5666円(内訳:慰謝料18万6666円、弁護士費用1万90 00円) エ控訴人L4(相続分1/60)20万5666円(内訳:慰謝料18万6666円、弁護士費用1万9000円)オ控訴人L5(相続分1/60)20万5666円(内訳:慰謝料18万6666円、弁護士費用1万90 00円)カ控訴人L6(相続分1/20)61万6000円(内訳:慰謝料56万円、弁護士費用5万6000円)キ控訴人L7(相続分1/40)30万8000円(内訳:慰謝料28万円、弁護士費用2万8000円) ク控訴人L8(相続分1/40)30万8000円(内訳:慰謝料28万円、弁護士費用2万8000円)ケ控訴人L9(相続分3/4)924万円(内訳:慰謝料840万円、弁護士費用84万円)コ控訴人L10(相続分1/20) 61万6000円(内訳:慰謝料56万円、弁護士費用5万6000円) 10 被災者M(番号18)⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Mは、前記第3節第4の13のとおり、ダクト工として稼働する際に、保温材を巻き付ける作業を行い、被控訴人エーアンドエーの製造販売し た保温材(⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。他方で、被災者Mは、ダクトを取り付ける際に、耐火被覆として吹き付けられた吹付け材を剥がし、削る作業を行う際に石綿粉じんに曝露したことが認められる。また、改修工事において、鉄骨造建物に既設された耐火被覆用の吹付け材を剥がし、ダクトに巻き付けてある保温 材を剥がす際に生じる石綿粉じんにも曝露したことが認められる。 以上の事情に照らすと、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材を製 の吹付け材を剥がし、ダクトに巻き付けてある保温 材を剥がす際に生じる石綿粉じんにも曝露したことが認められる。 以上の事情に照らすと、⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材を製造販売した被控訴人エーアンドエーの寄与度は40%とするのが相当である。 イまた、被災者Mは、肺がんを発症したことが認められるところ、被控訴人エーアンドエーの製造販売した⑦石綿含有けい酸カルシウム保温材が到達したことが認められる期間は、昭和49年1月から昭和52年3月までの約 3年3か月である。このことから、10年から3年3か月を控除して10年に足りない年数(1年未満は切捨て)である6年に対応する60%を前記アから減額することとする。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエーは、被災者Mが石綿関連疾患に罹患したことにつき、16%(0.4×(1-0.6))の割合で寄与したもの と認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額証拠(甲D18の2(11頁))によれば、被災者Mには、喫煙歴があると認められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料 403万2000円(計算式)2800万円(肺がんにより死亡)×0.16(寄与度)×0.9(喫煙歴による減額)⑷ 認容額ア控訴人M1(相続分2/3) 295万8000円(内訳:慰謝料268万8000円、弁護士費用27万円)イ控訴人M2(相続分1/6)74万円(内訳:慰謝料67万2000円、弁護士費用6万8000円)ウ控訴人M3(相続分1/6) 74万円(内訳:慰謝料67万2000円、弁護士費用6万8000円) 11 被災者O(番号21)⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Oは、前記第3節第4の15のとおり 74万円(内訳:慰謝料67万2000円、弁護士費用6万8000円) 11 被災者O(番号21)⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Oは、前記第3節第4の15のとおり、昭和49年から平成4年までの間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレ ートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるところ、被災者Oについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の存在は認められない。 イまた、被災者Oは、石綿肺及びその合併症を発症し、これが原因で死亡したことが認められるところ、昭和49年から平成4年までの間に、建築作業に10年以上従事していたことが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Oが石綿関連疾患に罹患したことにつき、50% の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 慰謝料1400万円(計算式)2800万円(石綿肺により死亡)×0.5(寄与度)⑶ 認容額 ア控訴人O1(相続分1/2)770万円(内訳:慰謝料700万円、弁護士費用70万円)イ控訴人O2(相続分1/4)385万円(内訳:慰謝料350万円、弁護士費用35万円)ウ控訴人O3(相続分1/4) 385万円(内訳:慰謝料350万円、弁護士費用35万円) 12 被災者P(番号22)⑴ 被控訴人らの寄 護士費用35万円)ウ控訴人O3(相続分1/4) 385万円(内訳:慰謝料350万円、弁護士費用35万円) 12 被災者P(番号22)⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Pは、前記第3節第4の16のとおり、昭和49年から平成4年までの間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキ シブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるところ、被災者Pについては、はつり工としても勤務しており、はつり作業を行ったり、既存建物の解体工事を行うなどしていたことが認め られるから、この点を考慮して、被控訴人らの寄与度は、25%とするのが相当である。 イまた、被災者Pは、肺がんを発症し、それが原因で死亡したことが認められるところ、昭和49年から平成4年までの間に、建築作業に10年以上従事していたことが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Pが石綿関連疾患に罹患したことにつき、25%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額証拠(甲D22の2(11頁))によれば、被災者Pには、喫煙歴があると認 められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料630万円(計算式)2800万円(肺がんにより死亡)×0.25(寄与度)×0.9(喫煙歴による減額) ⑷ 認容額 ア控訴人P1(相続分1/2)347万円 630万円(計算式)2800万円(肺がんにより死亡)×0.25(寄与度)×0.9(喫煙歴による減額) ⑷ 認容額 ア控訴人P1(相続分1/2)347万円(内訳:慰謝料315万円、弁護士費用32万円)イ控訴人P2(相続分1/2)347万円(内訳:慰謝料315万円、弁護士費用32万円) 13 被災者Q(番号23) ⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Qは、前記第3節第4の17のとおり、昭和53年から昭和54年まで及び平成2年から平成4年の間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエーの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム 板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるが、被災者Qについては、上記建材の現場到達事実が認められた企業が被控訴人エーアンドエーのみであり、損害賠償責任を負わない企業の製造販売した上記建材から発散した石綿粉じんにも相当程度曝露していること が考えられることから、被控訴人エーアンドエーの寄与度は40%とするのが相当である。 イまた、被災者Qは、肺がんを発症したことが認められるところ、責任期間内の稼働期間は合計約2年1か月である。このことから、10年から2年1か月を控除して10年に足りない年数(1年未満は切捨て)である7年に対 応する70%をアから減額することとする。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエーは、被災者Qが石綿関連疾患に罹患したことにつき、12%(0.4×(1-0.7))の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエーは、被災者Qが石綿関連疾患に罹患したことにつき、12%(0.4×(1-0.7))の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額 証拠(甲D23の2(25頁))によれば、被災者Qには、喫煙歴があると認 められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料302万4000円(計算式)2800万円(肺がんにより死亡)×0.12(寄与度)×0. 9(喫煙歴による減額) ⑷ 認容額Q1333万4000円(内訳:慰謝料302万4000円、弁護士費用31万円) 14 被災者T(番号26) ⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Tは、前記第3節第4の20のとおり、昭和49年から昭和58年11月までの間、大工として稼働し、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カ ルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるところ、被災者Tについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の存在は認められない。 イまた、被災者Tは、胸膜中皮腫を発症し、これが原因で死亡したことが認 められるところ、昭和49年から昭和58年11月までの間に、建築作業に1年以上従事していたことが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Tが石綿関連疾患に罹患したことにつき、50%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 慰謝料 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Tが石綿関連疾患に罹患したことにつき、50%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 慰謝料 1400万円(計算式)2800万円(胸膜中皮腫により死亡)×0.5(寄与度)⑶ 認容額ア控訴人T1(相続分1/2)770万円(内訳:慰謝料700万円、弁護士費用70万円) イ控訴人T2(相続分1/8)193万円(内訳:慰謝料175万円、弁護士費用18万円)ウ控訴人T3(相続分1/8)193万円(内訳:慰謝料175万円、弁護士費用18万円)エ控訴人T4(相続分1/8) 193万円(内訳:慰謝料175万円、弁護士費用18万円)オ控訴人T5(相続分1/8)193万円(内訳:慰謝料175万円、弁護士費用18万円) 15 被災者U(番号27)⑴ 被控訴人らの寄与度 ア被災者Uは、前記第3節第4の21のとおり、昭和52年から平成15年までの間(ただし、平成2年7月から平成5年12月までを除く。)、塗装工として稼働し、被控訴人ノザワの製造販売した石綿含有建材(㊸混和材)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵ウのとおり、塗装工についての被控訴人らの寄与度は、基本的に40%であるところ、 被災者Uについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の存在は認められない。 イまた、被災者Uは、肺がんを発症したことが認められるところ、昭和52年から平成15年までの間に、建築作業に10年以上従事していることが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人ノザワは、被災者Uが石綿関連疾 、肺がんを発症したことが認められるところ、昭和52年から平成15年までの間に、建築作業に10年以上従事していることが認められる。 ウ以上によれば、被控訴人ノザワは、被災者Uが石綿関連疾患に罹患したこ とにつき、40%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額証拠(甲D22の2(11頁))によれば、被災者Uには、喫煙歴があると認められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料 900万円(計算式)2500万円(肺がん)×0.4(寄与度)×0.9(喫煙歴による減額)⑷ 認容額控訴人U(被災者U本人) 990万円(内訳:慰謝料900万円、弁護士費用90万円) 16 被災者V(番号28)⑴ 被控訴人らの寄与度ア被災者Vは、前記第3節第4の22のとおり、昭和49年から平成4年までの間、内装大工として、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ ケイの製造販売した石綿含有建材(⑮石綿含有スレートボード・フレキシブル板、⑯石綿含有スレートボード・平板及び㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種)から生じた石綿粉じんに曝露したことが認められる。前記第2の1⑵アのとおり、大工等についての被控訴人らの寄与度は、基本的に50%であるところ、被災者Vについて、当該寄与度を増減させるべき個別の事情の 存在は認められない。 イまた、被災者Vは、肺がんを発症したことが認められるところ、昭和49年から平成4年までの間に、建築作業に10年以上従事していたことが認められる。なお、被災者Vは、平成29年12月23日、急性心筋梗塞により死亡したが、肺がんと死亡との間の相当因果関係を認めるに足りる証拠はな い。 年以上従事していたことが認められる。なお、被災者Vは、平成29年12月23日、急性心筋梗塞により死亡したが、肺がんと死亡との間の相当因果関係を認めるに足りる証拠はな い。 ウ以上によれば、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイは、被災者Vが石綿関連疾患に罹患したことにつき、50%の割合で寄与したものと認めるのが相当である。 ⑵ 喫煙歴による減額被災者Vは、若いときにたばこを吸ったことはあるが、1日に何本も吸って おらず、すぐに吸うのをやめたので、喫煙歴がない旨供述する。しかし、証拠(甲D28の2(45頁))によれば、平成16年5月頃に作成された被災者Vに係る退院時要約と題する書面に、医師が被災者Vから聴取した内容として、15歳から35歳まで、1日当たり3ないし4本のたばこを吸っていた旨が記載されていることが認められる。そして、被災者Vは、尋問において、医師に 対し、喫煙について、上記内容を説明したことを認める旨供述している(被災者V本人(33頁))。そうすると、被災者Vには、喫煙歴があると認められるので、前記⑴から10%を減額する。 ⑶ 慰謝料1125万円 (計算式)2500万円(肺がん)×0.5(寄与度)×0.9(喫煙歴による減額)⑷ 認容額ア控訴人V1(相続分1/2)619万5000円(内訳:慰謝料562万5000円、弁護士費用57 万円)イ控訴人V2(相続分1/2)619万5000円(内訳:慰謝料562万5000円、弁護士費用57万円)第4 消滅時効及び除斥期間 1 消滅時効 被控訴人らは、本件のある被災者が当該被災者の石綿関連疾患について労災認定を受けた日から当該被災者ないし 万円)第4 消滅時効及び除斥期間 1 消滅時効 被控訴人らは、本件のある被災者が当該被災者の石綿関連疾患について労災認定を受けた日から当該被災者ないしその遺族らが本件訴えを提起するまでの間に3年が経過している場合、当該被災者の不法行為に基づく損害賠償請求権につき、民法724条前段に基づく消滅時効の主張をし、これを援用しているものと解される(被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス、被控訴人ノザワ及び被 控訴人エム・エム・ケイは、いずれも、他の被控訴人らの主張のうち自らに有利な又は矛盾しないものを援用する旨主張しており、消滅時効の主張をし、これを援用しているものと認められる。)。 しかし、民法724条にいう被害者が加害者を知った時とは、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知った時を 意味するものと解される(最高裁昭和45年(オ)第628号同48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)。そして、本件被災者らが石綿関連疾患について労災認定を受けた時点やその前後において、本件被災者らに対する加害者を特定して損害賠償を請求することが事実上可能な程度にこれを認識していたことを認めるに足りる証拠はない。かえって、控訴人らが本件 訴訟において本件被災者らに係る主要原因建材を特定するに至った経緯に鑑みても、前記の労災認定を受けた時点やその前後において、本件被災者らが加害者を特定して認識するのは非常に困難であったものというべきである。すなわち、被控訴人らは、本件において、現時点においてさえ、自らが製造販売した石綿含有建材が本件被災者らの作業する建築現場に到達したことについて、いずれもこ れを認めることなく、他社の建材で すなわち、被控訴人らは、本件において、現時点においてさえ、自らが製造販売した石綿含有建材が本件被災者らの作業する建築現場に到達したことについて、いずれもこ れを認めることなく、他社の建材であったなどと種々主張して、強く争っているのであるから、少なくとも労災認定がされた当時において、個々の本件被災者らに対する加害者を特定することなど到底できなかったことは明らかである。 以上によれば、この点に関する被控訴人らの主張は理由がない。 2 除斥期間 被控訴人らは、本件被災者らの不法行為に基づく損害賠償請求権に関し、民法 724条後段の除斥期間の経過を主張する。 同条後段所定の除斥期間は、不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時から進行すると解すべきである(最高裁平成13年(受)第1760号同16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号103 2頁、最高裁平成13年(オ)第1194号、第1196号、同年(受)第1172号、第1174号同16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁、最高裁平成16年(受)第672号、第673号同18年6月16日第二小法廷判決・民集60巻5号1997頁参照)。 本件において、本件被災者らに上記損害の全部又は一部が発生したのは、当該 被災者らが石綿関連疾患をそれぞれ発症した時であると解されるところ、本件被災者らについて、上記各時点から同条後段所定の期間が経過したと認められる者はいない。 したがって、本件被災者らが有する不法行為に基づく損害賠償請求権が同条後段によって消滅したものとはいえず、被控訴人らの上記主張は理由がない。 段所定の期間が経過したと認められる者はいない。 したがって、本件被災者らが有する不法行為に基づく損害賠償請求権が同条後段によって消滅したものとはいえず、被控訴人らの上記主張は理由がない。 第5節結論第1 控訴人らの各請求について 1 控訴人番号7、同8、同11、同13、同14、同15及び同21-1ないし3の各請求について上記各控訴人の被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エ ム・エム・ケイに対する各請求については、前記第4節第3の3ないし8及び11のとおり、別紙2-1の各控訴人に対応する「認容額」欄記載の各金額及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄に記載の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める限度で理由があり、その余の請求はいずれも理由がない。また、上記各控訴人の別紙3の上記各控訴人に対 応する「請求の相手方」欄記載の被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及 び被控訴人エム・エム・ケイを除く各被控訴人に対する請求については、前記第3節第4の4、5、7ないし10及び15のとおり、いずれも理由がない。 よって、上記各控訴人について、原判決主文第4項中、被控訴人エーアンドエー、被控訴人ニチアス及び被控訴人エム・エム・ケイに関する部分を主文第1項⑴及び⑵のとおり変更し、その余の各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 2 控訴人番号1-1ないし3、同22-1及び2、同26-1ないし5並びに同28-1及び2の各請求について上記各控訴人の被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイに対する各請求については、前記第4節第3の1、12、14及び16のとおり、別紙2-2の各控訴人に対応する「認容額」欄記載の各金額及びそ 記各控訴人の被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイに対する各請求については、前記第4節第3の1、12、14及び16のとおり、別紙2-2の各控訴人に対応する「認容額」欄記載の各金額及びそれぞれこれに対す る「遅延損害金起算日」欄に記載の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める限度で理由があり、その余の請求はいずれも理由がない。また、上記各控訴人の別紙3の上記各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイを除く各被控訴人に対する請求については、前記第3節第4の1、16、20及び22の とおり、いずれも理由がない。 よって、上記各控訴人について、原判決主文第4項中、被控訴人エーアンドエー及び被控訴人エム・エム・ケイに関する部分を主文第3項⑴及び⑵のとおり変更し、その余の各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 3 控訴人番号5-1ないし3、同18-1ないし3及び同23の各請求について 上記各控訴人の被控訴人エーアンドエーに対する各請求については、前記第4節第3の2、10及び13のとおり、別紙2-3の各控訴人に対応する「認容額」欄記載の各金額及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄に記載の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める限度で理由があり、その余の請求はいずれも理由がない。また、上記各控訴人の別 紙3の上記各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の被控訴人エーアンドエ ーを除く各被控訴人に対する請求については、前記第3節第4の3、13及び17のとおり、いずれも理由がない。 よって、上記各控訴人について、原判決主文第4項中、被控訴人エーアンドエーに関する部分を ーを除く各被控訴人に対する請求については、前記第3節第4の3、13及び17のとおり、いずれも理由がない。 よって、上記各控訴人について、原判決主文第4項中、被控訴人エーアンドエーに関する部分を主文第5項⑴及び⑵のとおり変更し、その余の各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 4 控訴人番号17-1ないし10及び同27の各請求について上記各控訴人の被控訴人ノザワに対する各請求については、前記第4節第3の9及び15のとおり、別紙2-4の各控訴人に対応する「認容額」欄記載の各金額及びそれぞれこれに対する「遅延損害金起算日」欄に記載の日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うよう求める限度で理由があ り、その余の請求はいずれも理由がない。また、上記各控訴人の別紙3の上記各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の被控訴人ノザワを除く各被控訴人に対する請求については、前記第3節第4の12及び21のとおり、いずれも理由がない。 よって、上記各控訴人について、原判決主文第4項中、被控訴人ノザワに関す る部分を主文第7項⑴及び⑵のとおり変更し、その余の各被控訴人に対する控訴をいずれも棄却する。 5 控訴人番号3、同9、同16、同20、同24、同25、同29の1及び2の各請求について上記各控訴人の別紙3の上記各控訴人に対応する「請求の相手方」欄記載の各 被控訴人に対する各請求については、前記第3節第4の2、6、11、14、18、19及び23のとおり、いずれも理由がない。 よって、上記各控訴人の控訴をいずれも棄却する。 第2 仮執行宣言及び仮執行免脱宣言について 1 控訴人らの請求を認容する部分(主文第1項、第3項、第5項及び第7項の各 ⑴)については、控訴人らの申立てに基づき、いずれも仮 れも棄却する。 第2 仮執行宣言及び仮執行免脱宣言について 1 控訴人らの請求を認容する部分(主文第1項、第3項、第5項及び第7項の各⑴)については、控訴人らの申立てに基づき、いずれも仮執行宣言を付する。なお、訴訟費用については、相当でないから、いずれもこれを付さない。 2 被控訴人エーアンドエー及び被控訴人ニチアスは、仮執行免脱宣言の申立てをしているが、相当でないから、いずれもこれを付さない。 札幌高等裁判所第2民事部 裁判長裁判官 長谷川恭弘 裁判官 豊田哲也 裁判官片山信は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官 長谷川恭弘

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