1 令和2年12月10日判決言渡令和2年(行コ)第96号 公文書非公開決定処分取消請求控訴事件(原審 大阪地方裁判所令和元年(行ウ)第121号) 主 文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 及 び 理 由第1 控訴の趣旨1 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記取消部分に係る被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1審,2審とも,被控訴人の負担とする。 第2 事案の概要1 事案の要旨被控訴人は,A市情報公開条例(平成15年A市条例第18号。以下「本件条例」という。)上の情報公開の実施機関であるA市消防長に対し,本件条例5条1項1号に基づき,「救急活動記録票の電磁的記録のうち搬送先をB病院,C病院,D病院,E病院,F病院,G病院,H病院,I病院またはJ病院とするもの(平成25年度から令和元年度分)」(以下「本件記録」という。)の公開を請求したところ(以下,同請求を「本件公開請求」という。),A市消防長が,令和元年6月27日付けで,被控訴人に対し,上記公文書は本件条例6条1項1号に該当する非公開情報であるとして全部を公開しない旨の決定(○○○第○○○号。以下「本件決定」という。)をしたため,本件決定のうち,原判決別紙2「取消請求対象部分目録」記載の部分(以下「本件非公開部分」という。)には,本件条例6条1項各号所定の非公開とすべき情報は記録されていない旨を主張して,本件決定のうち,本件記録について本件非公開部分を公開しない2 とした部分の取消しを求めた(なお,本件決定により,原判決別紙2「取消請求対象部分目録」記載の①②の各欄に係る情報は非公開とされたが,被控訴人は,本件訴訟において,その部分については本件決定の取消しを求めていな 消しを求めた(なお,本件決定により,原判決別紙2「取消請求対象部分目録」記載の①②の各欄に係る情報は非公開とされたが,被控訴人は,本件訴訟において,その部分については本件決定の取消しを求めていない。)。 原審は,本件決定のうち,原判決別紙1「請求認容部分目録」記載の部分を公開しないとした部分を取り消し,その余の請求を棄却した。 これに対し,控訴人は,前記第1の裁判を求めて本件控訴を提起した。 2 本件条例の定め(甲2)原判決「事実及び理由」第2の1を引用する。 3 前提事実原判決「事実及び理由」第2の2を引用する。 4 争点原判決「事実及び理由」第2の3を引用する。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所も,原判決と同様に,被控訴人の請求は,本件決定のうち,原判決別紙1「請求認容部分目録」記載の部分を公開しないとした部分の取消しを求める限度において理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却すべきであると判断する。 その理由は,後記2のとおり説明を付加するほか,原判決「事実及び理由」第3の1ないし3記載のとおりであるから,これを引用する。 2 付加説明⑴ 控訴人は,原審において開示の対象とされた個別の項目は,各項目だけをみれば個人識別情報といえない場合であっても,救急車が出場した現場に居合わせて日時,出場隊名等を記憶していた者や夫婦間又は親子間の虐待事案の加害者等であれば,その記録が特定個人のものであると認識することが十分可能であり,特定の個人との紐づけは可能であるから,これらの情報は個3 人識別情報又は利益侵害情報に当たる,ことに,夫婦間又は親子間の虐待事案において,加害者に被害者の入院先を知らせることは,被害者の生命身体に対する害を及ぼす可能性があることになり,不当であるなどと 人識別情報又は利益侵害情報に当たる,ことに,夫婦間又は親子間の虐待事案において,加害者に被害者の入院先を知らせることは,被害者の生命身体に対する害を及ぼす可能性があることになり,不当であるなどと主張する。 ⑵ しかし,個人識別情報とは,個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより,特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいうところ,本件記録中,前記引用に係る原判決において開示の対象とされたのは,下記の各欄に係る情報が記載された部分(以下「本件開示対象部分」という。)であり(なお,開示対象には,「決裁」及び「審議」欄に係る情報も含まれているが,これらの欄は空欄である。),他の情報と照合しても,これらの情報により特定の個人を識別することができるものとは認められないことは,原判決が説示するとおりである。これに反する控訴人の主張(上記照合する「他の情報」には,特定範ちゅうの者(当該個人の近親者や周辺住民など)において入手し得る情報も含まれることを前提とした主張等)は,採用できない。 記ア 「覚知日」,「指令日時」(救急活動の指令時刻),「覚知」(傷病者の覚知時刻),「出場」,「現着」(傷病者の所在する現場への到着時刻),「接触」(傷病者との接触時刻),「車内収容」(傷病者の救急車内への収容時刻),「現発」(現場からの出発時刻),「病院着」及び「帰署」の各欄イ 「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄ウ 「場所区分」(「住宅」,「公衆の場所」,「仕事場」等)及び「出場先概要」(救急隊が出場した場所の性 署」の各欄イ 「出場隊名」,「隊長名」,「機関員名」,「隊員名」及び「救命士」の各欄ウ 「場所区分」(「住宅」,「公衆の場所」,「仕事場」等)及び「出場先概要」(救急隊が出場した場所の性質)の各欄4 エ 「搬送・不搬送」,「不搬送理由」(「緊急性なし」,「傷病者なし」,「酩酊」,「死亡」等)の各欄オ 「連携活動」(救急活動を行うに当たり,連携を行った「他救急隊」,「消火隊」,「ヘリ」等)の欄カ 「搬送先」欄傷病者が搬送された医療機関の「市区」,「科目」及び「医療機関別」(国立・公立,病院・診療所等の医療機関の種別)の各欄(ただし,搬送先をI病院とする場合の「科目」欄は非開示)キ 「現場携行資器材」(「気道確保器材」,「酸素」等)⑶ また,利益侵害情報とは,特定の個人を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益を害するおそれがあるものであるところ,本件開示対象部分が利益侵害情報に当たるものと認めることができないことは,原判決が説示するとおりである。 控訴人は,原判決は精神科等とそれ以外の診療科目とを区別して要保護性につき差異を設けているが,どの診療科目にかかっているかは誰もが他人に知られたくない情報であって,殊更精神疾患のみが保護に値するとすることは到底是認できない旨主張する。しかし,精神科等を除く特定の診療科目を受診したという情報をもって,当該傷病者の個別具体的な傷病や同人が受けた医療措置等の内容を推測することはできず,個人の人格と密接に関連する情報として保護に値するものとはいえないことは,原判決が説示するとおりである。控訴人の上記主張は採用できない。 ⑷ なお,控訴人は,夫婦間等の虐待事案の加害者等であれば,「搬送先」欄に記載される情報が開示されると,特定の個人と いえないことは,原判決が説示するとおりである。控訴人の上記主張は採用できない。 ⑷ なお,控訴人は,夫婦間等の虐待事案の加害者等であれば,「搬送先」欄に記載される情報が開示されると,特定の個人との紐づけが可能となるから,同情報は公開されるべきではない旨主張する。しかし,原判決が説示するとおり,A市における救急出動件数・搬送人数からすると,「事故種別」欄に記載されている情報を除く救急活動の日時や場所に係る情報等を照合しても,5 傷病者個人を特定することは困難であるというべきであるから,控訴人の上記主張は採用できない。 また,控訴人は,E病院においては,精神科が標榜科目とされているから,少なくとも搬送先をE病院とする場合の「搬送先」欄のうち「科目」欄を非開示とすべきであると主張するが,本件全証拠をもっても,E病院に精神科の救急外来が存することを認めるに足りず,控訴人の上記主張も採用できない。 ⑸ その他,控訴人の当審及び原審の主張を十分踏まえ,一件記録を精査しても,上記1の判断を左右するに足りない。 3 結論以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第11民事部 裁判長裁判官 植 屋 伸 一 裁判官 髙 松 宏 之 裁判官 細 野 な お み
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