- 1 -判決 主文 被告人を懲役8年に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1 火災保険金の支払を得る目的で,Aら10名が現に住居に使用し,かつ,同人ら3名が現にいる札幌市a区bc条d丁目e番f号所在のg(木・鉄筋コンクリート造亜鉛メッキ鋼板葺3階建)に放火しようと考え,令和2年8月17日午後4 時31分頃,前記gh号室当時の被告人方1階において,灯油をまいた上,何らかの方法で火を放ち,その火を同室の窓枠等に燃え移らせ,よって,同建物の一部を焼損(焼損面積合計約0.71115平方メートル)した。 第2 株式会社Bとの間で火災保険契約を締結していた前記gh号室について火災保険金(家財補償)をだまし取ろうと考え,真実は自己が同建物に放火して焼損 させたものであったのに,その事実を秘し,あたかも同焼損が原因不明の出火によるものであるかのように装い,同年9月8日頃,東京都港区にある株式会社B宛てに保険金請求書等を郵送し,同月11日,これを株式会社B損害サービス部に到達させて保険金の支払を請求し,同部部長らに同請求が正当な保険金請求である旨誤信させて株式会社Bから保険金の支払を受けようとしたが, 同人らが出火原因に不審を抱いて支払に応じなかったため,その目的を遂げなかった。 (証拠の標目)省略(争点に対する判断)第1 本件の争点 本件の争点は,①被告人が本件放火行為をしたか,②被告人が自らの放火行 - 2 -為を認識して火災保険金を請求し,これをだまし取ろうとしたか,③本件放火行為時の被告人の責任能力の程度,にある。 第2 前提事実証拠によれば,以下の事実が ②被告人が自らの放火行 - 2 -為を認識して火災保険金を請求し,これをだまし取ろうとしたか,③本件放火行為時の被告人の責任能力の程度,にある。 第2 前提事実証拠によれば,以下の事実が優に認められる。 1 被告人は,平成30年10月以降,生活保護を受給して暮らしていたところ, 令和2年8月16日(以下の月日は特に記載のない限り令和2年のものである。),携帯電話会社の担当者と交渉し,滞納していた携帯電話料金(7月請求分)の支払期限を9月1日まで延期してもらったが,8月請求分の支払期限(9月16日)は延期されず,支払がなければ利用停止になる旨告げられた。 なお,8月17日当時,向こう1か月間の収支は,固定費のみで赤字となる 状況にあった。 2⑴ 8月17日の午前中,被告人は,自宅周辺をウォーキングして帰宅すると,同日午後4時31分頃まで自宅に在室し,その間,「寝タバコ火事保険」「生活保護火災保険家財保険」等のキーワードでインターネット検索をし,家財保険や生活保護受給者の火災保険に関するサイトを閲覧したほか, LINEで,友人と近況についてやり取りをしたり,不動産業者と転居先の物件に関するやり取りをしたりした。 ⑵ 8月17日午後4時31分頃,被告人方の火災報知器が鳴動し,その頃,被告人は自宅を出てウォーキングを開始した。そのウォーキングの途中である同日午後4時54分頃から同日午後4時57分頃までの間,被告人は携帯 電話機のメモ機能に火災保険の証券番号等を保存し,同日午後5時5分頃,電話をかけてきた警察官から火災発生の事実を告げられて安否確認をされたことに対し,ウォーキングをしていたことや外出前に火を使っていないことなどを答えた。 3 本件火災後,メゾネットタイプである被告人方2階居間に敷かれ 官から火災発生の事実を告げられて安否確認をされたことに対し,ウォーキングをしていたことや外出前に火を使っていないことなどを答えた。 3 本件火災後,メゾネットタイプである被告人方2階居間に敷かれたじゅうた んから141㎝×197㎝の範囲で灯油を含有する液体が検出され,1階居間 - 3 -の4か所から採取した残焼物からは灯油が検出された。出火場所は1階と特定され,その付近の電気製品から出火した可能性やたばこから出火した可能性はいずれも低いと判断された。 4⑴ 8月18日,被告人は保険会社の窓口に電話をし,保険の適用について問合せをし,同月19日,同窓口の担当者に対し,電話で,火災の発生は午後 4時半頃で,午後4時前には外出していたことや,出火原因に心当たりがないことなどを説明した。 ⑵ 8月21日,被告人は,警察官による取調べの際,本件当日の行動状況について,午後3時半から午後4時くらいの間に午後のウォーキングに出かけ,いったん自宅に戻り,午後4時半の前には,自宅を出てウォーキングを開始 したなどと供述した。 ⑶ 8月27日頃,被告人は,外出中に火災が発生してその原因が不明である旨記載した保険金請求書を作成したほか,知人の協力を得て526点の損害品明細書を作成し,9月8日頃に保険金請求書を郵便で保険会社の窓口宛てに送付した。 第3 争点に対する判断 1 被告人が本件放火行為をしたかどうか(争点①)について⑴ 被告人方1階の複数箇所から灯油が検出されていることや,2階の比較的広い範囲から灯油が検出されていること,出火場所付近に,電気製品やたばこからの自然発火や失火の可能性を示唆する痕跡は認められなかったこと (前記第2の3)を考慮すると,何者かが故意に灯油をまいて火を放ったことが認められる。 こと,出火場所付近に,電気製品やたばこからの自然発火や失火の可能性を示唆する痕跡は認められなかったこと (前記第2の3)を考慮すると,何者かが故意に灯油をまいて火を放ったことが認められる。 ⑵ そして,本件現場は被告人方居室であり,被告人は,火災報知器が鳴動した8月17日午後4時31分頃まで,被告人方に在室していたと認められること(前記第2の2⑴及び同⑵)や,何者かが本件現場に侵入した可能性を うかがわせる証拠は一切見当たらないことからすると,被告人以外に火を放 - 4 -つことができた人物はいないといえる。 しかも,被告人は,経済的に余裕がなく,9月1日及び同月16日の各期限までに利用料金を支払うことができなければ,携帯電話が利用停止になるという状況下で(前記第2の1),火災発生前に火災保険に関する情報をインターネットで閲覧するなどし(前記第2の2⑴),火災発生直後に自宅を 出てウォーキングをし,警察官から安否確認の電話を受ける前に火災保険の証券番号等をメモし,火災発生当日からその後の保険金請求に至るまで,警察官や保険会社の担当者に対し,火災発生時に被告人方に不在であったかのように装っている(前記第2の2⑵,第2の4)。被告人が火災保険金の支払を受けようとして本件放火行為に及んだとすれば,こうした火災前後の一 連の行動を合理的に説明することができる。 ⑶ 以上によれば,被告人が放火行為をしたことに合理的な疑いを容れる余地はない。 2 被告人が自らの放火行為を認識して火災保険金を請求し,これをだまし取ろうとしたかどうか(争点②)について ⑴ 前記1で指摘したとおり,本件前日から保険金請求書を郵送するまでの一連の出来事は,被告人が,金銭が必要となってから,火災保険金の支払を受けようという明確 たかどうか(争点②)について ⑴ 前記1で指摘したとおり,本件前日から保険金請求書を郵送するまでの一連の出来事は,被告人が,金銭が必要となってから,火災保険金の支払を受けようという明確な意思の下,順を追って物事を進めていったものとみられる。火災保険金の請求手続を見ても,火災翌日から保険会社の担当者とやり取りを重ねつつ,詳細な明細書を作成するなどして請求書の提出に至って いる(前記第2の4⑴及び同⑶)。被告人が,自らの放火行為について,完全に記憶が欠落した状態で保険金の請求をしたとは通常考えられない。 ⑵アこの点について,弁護人は,被告人の供述等を基に,被告人は,本件火災に先立って睡眠薬等を多量に服用していたことから,本件火災時の記憶を保持することができていなかった疑いがあり,また,被告人は,解離性 健忘により,保険金請求時において,本件火災の原因について,記憶が欠 - 5 -落した状態にあった可能性があるなどと主張している。 イしかしながら,仮にそのような事情で放火行為を全く覚えていないのであれば,火災発生の直後から記憶がない旨の説明をするのが自然なことと思われる。しかし,被告人は,既に指摘したとおり,火災発生当日から保険金請求に至るまで,火災発生時には外出していた旨説明し,さらに,警 察官による取調べの際,午後の外出状況につき具体的に事実に反する説明をするなど(前記第2の4⑵),あたかも,本件火災当時の記憶を保持していることを前提にした言動をしている。このような被告人の言動だけでも,保険金請求時に本件放火に関する記憶がないというのは,かなり疑わしいものがある。 ウ弁護人の主張に関しては,被告人の精神鑑定を行ったC医師は,詐病の可能性も指摘しつつ,被告人の供述を前提とするならば,本件放 火に関する記憶がないというのは,かなり疑わしいものがある。 ウ弁護人の主張に関しては,被告人の精神鑑定を行ったC医師は,詐病の可能性も指摘しつつ,被告人の供述を前提とするならば,本件放火時には鎮静剤,睡眠薬中毒(以下では単に「睡眠薬中毒」という。)の状態にあった可能性がある旨や,保険金請求時には解離性健忘の症状が出ていた可能性がある旨を指摘している。 しかし,C医師は,被告人がその供述するように睡眠薬等を服用したと仮定すると,睡眠薬が作用していたと考えられる時間帯(服用した約30分後から6時間ないし8時間)に,被告人がLINEで従前の内容と整合性のあるやり取りを友人や不動産業者との間でしていること(前記第2の2⑴),室内に灯油をまくなどして放火するという行動をとっていること (前記1),放火した直後にウォーキングに出るなど偽装工作ともいえる行動をしていること(前記第2の2⑵),保険証券の番号を携帯電話機にメモするなどしていること(前記第2の2⑵)等からして,中度又は重度の中毒状態(昏睡状態,ひどいふらつき,ろれつが回らない,まとまった行動が取れず,意味不明な行動を取ってしまう)には至っておらず,軽度 の中毒状態にとどまる,軽度の中毒状態では,記憶力が少し低下するなど - 6 -して,多少記憶が断片的になったり,うろ覚えだったりする可能性はあるが,一連のまとまった時間経過のある行動について最初から最後まですっぽり記憶が抜けるというようなことは考えにくい,などと説明している。 また,C医師は,数時間から約半日にわたる本件放火に関わる一連の流れのある出来事(前記第2の2)について,理論上絶対にないとはいえな いものの,それだけの幅の時間の記憶が解離性健忘により完全になくなるという可能性は非常に低 日にわたる本件放火に関わる一連の流れのある出来事(前記第2の2)について,理論上絶対にないとはいえな いものの,それだけの幅の時間の記憶が解離性健忘により完全になくなるという可能性は非常に低い,解離性健忘の場合,数分から数十分という非常に短時間の記憶がなくなるということはあっても,一連のストーリーになるような,理にかなった行動で,数時間から半日の記憶が抜け落ちるというのは余りに不自然である,本人に関するエピソードで,短時間の中で, 覚えていることと覚えていないことがまだら状にあるというのは臨床的に見て余りない,などと説明している。 C医師は,精神医学の専門家として,十分な知見を備えており,司法精神鑑定の経験に不足もなく,鑑定に当たり本件に関する資料を幅広く検討するとともに,被告人の面接や各種検査を行っているところ,その医学的 考察の内容は尊重されるべきものであり,これらの説明内容も十分に信用できる。 そうすると,仮に睡眠薬中毒や解離性健忘があったとしても,C医師の考察結果によれば,被告人が保険金請求時に本件放火行為を全く覚えていないという合理的な疑いはないといえる。 エ弁護人は,ⓐ被告人が保険金を請求した時期に睡眠薬等を服用していたため,解離性健忘の症状が増幅していた可能性がある旨指摘するとともに,被告人が保険金請求時に本件放火行為の記憶を保持していなかったことを裏付ける事情として,ⓑ被告人が検索履歴やメモを消すことなく携帯電話機を警察官に提出していること,ⓒ8月18日の保険会社とのやり取りの 中でメモしていた保険証券の番号を伝えていないことを指摘する。 - 7 -しかしながら,上記ⓐについては,睡眠薬を服用することで,解離性健忘を起こす多少の後押しになるような側面があることは否定できない していた保険証券の番号を伝えていないことを指摘する。 - 7 -しかしながら,上記ⓐについては,睡眠薬を服用することで,解離性健忘を起こす多少の後押しになるような側面があることは否定できないにしても,C医師の説明する解離性健忘の症状からすれば,一連のストーリーになるような,理にかなった行動で,数時間から半日の記憶が抜け落ちるというのは余りに不自然であり,そのような著しい健忘が引き起こされて いた可能性は考え難い。 また,上記ⓑについては,自分への疑いを強めさせることにならないように,携帯電話機をそのまま提出せざるを得なかったとも考えられるし,上記ⓒについては,携帯電話機のメモ機能を利用して保存していたため,通話中にこれをあえて確認しようとまでしなかった可能性も考えられるか ら,いずれも,被告人が本件放火行為に関する記憶を保持していなかったことを裏付ける事情とは言えない。 ⑶ 以上によれば,被告人は,本件火災が自らの放火行為によるものであることを認識しながら,その事実を秘し,出火原因が不明であるなどとして,保険金請求をし,これをだまし取ろうとしたものと認められる。 3 本件放火行為時の被告人の責任能力の程度(争点③)について⑴ 精神障害の内容についてア C医師の説明によれば,本件放火行為時に存在した可能性がある被告人の精神障害としては,睡眠薬中毒に限られる(なお,解離性健忘は,飽くまで後から振り返って覚えていないというものであって,その性質上,本 件放火行為時に存在する精神障害ではない。)。 イ弁護人は,本件放火行為時に解離性障害が存在していたことを前提とした主張もしているが,C医師は,本件放火行為に影響を及ぼし得る精神障害として解離性障害を挙げておらず,この弁護人の主張は前提を欠いている。 は,本件放火行為時に解離性障害が存在していたことを前提とした主張もしているが,C医師は,本件放火行為に影響を及ぼし得る精神障害として解離性障害を挙げておらず,この弁護人の主張は前提を欠いている。 ⑵ 精神障害の程度及びその影響について - 8 -ア C医師は,本件放火行為時に存在した可能性のある睡眠薬中毒の程度は軽度のものであり(前記2⑵ウ),その影響としては,認知機能の低下,抑制が外れて衝動性が増し,ふだんなら自制したり,計画的に実行したりするところが,深く考えられずに行動に出てしまうといったものが想定される旨,軽度の中毒状態でふだんの本人であれば絶対思い付きもしないよ うなことが降って湧いてくることや,ふだんの本人と全く連続性がないようなことを起こすということは考えにくい旨,本件火災当日に被告人が睡眠薬を服用する前から,経済的に困っていたというストーリーがあって本件放火行為に至っているところ,軽度の中毒症状があったために,急に何もなかったところから動機が出てくるというのは考えにくい旨,本件放火 を思い立った被告人が実際にこれを行動に移すのを後押しする程度の影響はあったと考えられる旨の説明をしており,その医学的所見は十分信用することができる。 そうすると,軽度の睡眠薬中毒という精神障害があったとしても,本件放火の動機形成に影響を及ぼした可能性はなく,せいぜい,本件放火を思 い立った被告人が実際にこれを行動に移すのを後押しした程度にとどまるといえ,自分の行為が悪いことかどうかを判断する能力や,そのような悪いことをしないように自らをコントロールする能力にほとんど影響を及ぼしていなかったと認められる。 イ弁護人は,ⓐ睡眠薬中毒の影響に関し,睡眠薬と同時に服用した抗精神 病薬等の作用と相まって いことをしないように自らをコントロールする能力にほとんど影響を及ぼしていなかったと認められる。 イ弁護人は,ⓐ睡眠薬中毒の影響に関し,睡眠薬と同時に服用した抗精神 病薬等の作用と相まって,中毒症状が強まった可能性がある旨主張するとともに,ⓑ被告人は追い詰められた状況にあったわけではなく,生活保護を受けている中で,大切なもの全てを失うようなことを,保険金が収入認定されることにより手元にお金が残らない可能性が高いのに,あえて放火を行うとは考えられず,ⓒその犯行は,被告人の経歴や能力からしても余 りにずさんで稚拙なものであって,精神障害の影響がなければ説明が著し - 9 -く困難なものであると主張する。 まず,上記ⓐの主張について見るに,C医師によれば,抗精神病薬等は,睡眠薬と比べると,健忘,ふらつき等の影響は少なく,相互作用として若干効果が高まったとしても,主として眠気が強まることが想定されるというのである。被告人が本件放火前後で睡眠をとっている様子も見られず, 仮に被告人が睡眠薬中毒であったとしても,その症状が軽度であったとの評価に疑義は生じない。 次に,上記ⓑの主張を見るに,被告人が経済的に余裕がなく,向こう1か月のうちに携帯電話機の利用を止められたとしてもおかしくない状況に置かれていたこと(前記第2の1)からすると,まとまった金銭を手にす るために火災保険金目当てに放火をしたとしても特におかしくないといえる。また,損害品明細書の記載からしても,保険金を得て購入すれば代替可能なものが多いといえる。そして,保険金が収入認定される可能性があるとはいえ,まずは手元に保険金が入ること自体に意味がないわけではなく,収入認定から除外される物品を新しく購入することもできるのであり, 収入認定される可能性があ 金が収入認定される可能性があるとはいえ,まずは手元に保険金が入ること自体に意味がないわけではなく,収入認定から除外される物品を新しく購入することもできるのであり, 収入認定される可能性があるから犯行に及ぶはずがないなどとはいえない。 さらに,上記ⓒの主張については,本件は,経済的に余裕のない者が行う犯行として,了解可能であり,異常なほどにずさんで稚拙なものとはいえない。 以上によれば,本件放火行為時の精神障害の影響に関する弁護人の上記 主張はいずれも採用することができず,前記アの結論は揺らがない。 (法令の適用)罰条判示第1の所為刑法108条判示第2の所為刑法250条,246条1項 刑種の選択 - 10 -判示第1の罪有期懲役刑を選択する。 併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い判示第1の罪の刑に法定の加重をする。)未決勾留日数算入刑法21条訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書 (量刑の理由)本件は,被告人が,保険金目的で,燃料を使用して人が住む建物に放火し,実際に保険金の請求をした事案であり,それ自体,現住建造物等放火罪の中で重い責任を負うべきものである。 本件建物は住宅密集地に所在し,9世帯の入居する集合住宅であり,被告人は, メゾネットタイプの自宅の1階及び2階に灯油をまき,1階に放火している。本件火災による建物の焼損面積は,着火場所の1階の構造もあり,窓枠等の約0.7㎡にとどまっているが,1階の窓から火炎が立ち上るほどの勢いで室内が燃え広がり,壁紙や石膏ボード,床面の多くを黒こげにするほどの威力があったと認められ,現に約230 階の構造もあり,窓枠等の約0.7㎡にとどまっているが,1階の窓から火炎が立ち上るほどの勢いで室内が燃え広がり,壁紙や石膏ボード,床面の多くを黒こげにするほどの威力があったと認められ,現に約2300万円もの財産的被害が生じているほか,本件建物の他の住人にも多大 な迷惑を掛けるなどしている。被告人の放火行為は,現に多数の人の生命・身体・財産を危険にさらすものであり,幸いにも他者の活動により人身への被害は生じなかったが,その被害結果はかなり大きいといえる。 また,被告人は,犯行に先立ち,火災保険に関する検索をし,1階と2階の複数箇所に灯油をまき,放火直後に自宅を出てウォーキングをし,その間に,火災保険 の証券番号等を携帯電話機のメモ機能を使って保存したり,警察からの電話による問合せに対し,出火時には自宅に不在であったかのように装ったりし,火災翌日から保険会社に問合せをし,詳細な明細書を作成するなどして保険金請求を行うなど,目的の達成に向けた行動を順次とっていたのであり,被告人が明確かつ強い意思をもって一連の犯行に及んでいた様子が見て取れる。 以上のとおり,被告人が危険な放火行為等をこのような意思を持って行ったこと - 11 -を重視し,本件は,単独犯(組織的犯行以外)による燃料を使用した保険金目的の現住建造物等放火の事案の中でも重いものと位置づけた。 こうした本件の位置付けを前提に,被告人の前科関係や本件への受け止め方も考慮した上で,主文の刑をもって臨むのが相当であると判断した。 (求刑-懲役8年) 令和3年12月6日札幌地方裁判所刑事第2部裁判長裁判官中川正隆裁判官牛島武人裁判官豊富育 月6日札幌地方裁判所刑事第2部裁判長裁判官中川正隆裁判官牛島武人裁判官豊富育
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