平成18(行ウ)478 分限免職処分取消等請求事件(通称 東京都区立中学校教諭分限免職)

裁判年月日・裁判所
平成21年6月11日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-80415.txt

判決文本文26,161 文字)

- 1 -主文 本件訴えのうち,被告東京都に対する本判決確定日の翌日以降の給与支給請求に係る部分を却下する。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 東京都教育委員会が原告に対し,平成17年8月30日付けでした戒告処分及び平成18年3月31日付けでした分限免職処分をいずれも取り消す。 千代田区教育委員会が原告に対し,平成17年9月1日付け及び同月20日付けでした各研修命令処分がいずれも無効であることを確認する。 被告東京都は,原告に対し,平成18年4月1日から毎月15日限り46万0096円,毎年6月30日限り93万9636円,毎年12月10日限り96万9000円及びこれらに対する各支払日の翌日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。 被告らは,連帯して,原告に対し,50万円及びこれに対する平成18年3月31日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。 被告東京都は,原告に対し,250万円並びにうち50万円に対する平成17年8月30日から及びうち200万円に対する平成18年3月31日から各支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。 被告千代田区は,原告に対し,150万円及びこれに対する平成18年3月31日から支払ずみまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要原告は,東京都公立学校教員に採用され,千代田区立α中学校に勤務していた者であるが,東京都教育委員会(以下「都教委」という。)から平成17年8月30日付け戒告処分(以下「本件戒告処分」という。)を,千代田区教育委員会- 2 -(以下「区教委」という。)から同年9月1日付け及び同月16日付け各研修命令(以下,同月1日付け研修命令を「本件研修命令①」,同月16日付け 本件戒告処分」という。)を,千代田区教育委員会- 2 -(以下「区教委」という。)から同年9月1日付け及び同月16日付け各研修命令(以下,同月1日付け研修命令を「本件研修命令①」,同月16日付けのそれを「本件研修命令②」といい,両者を総称して「本件各研修命令」という。)を受け,平成18年3月31日付けで,都教委から地方公務員法28条1項3号に基づく分限免職処分(以下「本件分限免職処分」という。)を受けた。 本件は,原告が,本件戒告処分,本件各研修命令及び本件分限免職処分の違憲性,違法性を主張して,本件戒告処分及び本件分限免職処分の各取消(請求1)並びに本件各研修命令の無効確認を求め(請求2),併せて,被告東京都に対し,本件分限免職処分後の給与(各支給日の翌日からの遅延損害金。請求3)の支給並びに被告らに対し,国家賠償法に基づき,本件戒告処分,本件各研修命令及び本件分限免職処分による精神的損害に対する慰謝料(不法行為時からの遅延損害金。請求4~6)を請求した事案である。 第3前提事実(争いのない事実及び括弧内に挙示した証拠による認定事実) 原告は,昭和48年4月1日,東京都公立学校教員として採用され,平成9年4月1日~平成14年3月31日の間,足立区立β中学校,同年4月1日以降,千代田区立α中学校に勤務し,社会科の授業を担当していた。 原告に対する従前の懲戒処分等(1) 平成10年11月17日,原告は都教委から,減給10分の1,1月の懲戒処分(以下「第1次懲戒処分」という。)を受けた。この処分の対象となった事実は,以下の事実である。 第1に,平成9年6月,原告が在勤していた足立区立β中学校での社会科の授業について,生徒の母親が,同中学校長等に,原告の授業のやり方は一方的で偏りがあるとの苦情を伝えたことに関して,原告が同年7月の社 1に,平成9年6月,原告が在勤していた足立区立β中学校での社会科の授業について,生徒の母親が,同中学校長等に,原告の授業のやり方は一方的で偏りがあるとの苦情を伝えたことに関して,原告が同年7月の社会科の授業で生徒らに配布したプリント中に「あなた達の親の一人が教育委員会に密告(若者スラングで言う『チクリ』)電話や密告ファックスを送るというクラーイ情熱やエネルギーには敬意を覚えます」「親の自分の『思想』が,- 3 -教師の『憲法に忠実な思想』と合わないからと,教師の教育内容に介入しようなど笑止千万な,あまりにも『アサハカな思い上がり』と言うべきです。」との記載があったこと。 第2に,同月,原告は,上記の母親の子が在籍するクラスの社会科の授業において,上記プリントを生徒らに配布したこと。 第3に,同月,原告は,同校長から,生徒に配布する印刷物は管理職の許可を得るようにとの職務命令を受けたが,同年9月5日,社会科の授業で使用する予定の県名に関するプリントを同校長の机上に置いた後,社会科の授業でこのプリントを生徒に配布したこと。 (2) 平成11年7月28日,原告は,都教委から,減給10分の1,1月の懲戒処分(以下「第2次懲戒処分」という。)を受けた。この処分の対象となった事実は,以下のとおりである。 第1に,上記の生徒の母親と原告との間で,名誉侵害による損害賠償請求事件が係属したところ,原告が平成11年3月,足立区立β中学校の全生徒の保護者の自宅に,上記訴訟事件に関する文書を郵送し,同文書には,上記母親の実名が挙げられ,「原告(注上記母親のこと)の『虚言』人格,暴露さる!」「原告こそが恥知らずな虚偽事実を捏造した」「原告のウソつき人格が暴露され」「原告は,全く証拠がないと思いこんで,好き勝手,デタラメを裁判所提出の準備書面においても,全国 『虚言』人格,暴露さる!」「原告こそが恥知らずな虚偽事実を捏造した」「原告のウソつき人格が暴露され」「原告は,全く証拠がないと思いこんで,好き勝手,デタラメを裁判所提出の準備書面においても,全国雑誌『○○』においても,また口頭でも臆面もなく発表し」「東京地裁法廷において,原告はその『虚言』を弄んで恥じない人格を露呈した」等の記載があったこと。 第2に,原告は,上記文書を入れた封筒の裏面に,同中学校の所在地及び学校名を記載し,その下に自己の氏名を記載し,封筒に宛名を書くためにPTA会員名簿を利用し,許可を得ることなく,同校の印刷機を使用して上記文書の一部を印刷したこと。 (3) 都教委は,原告に対し,平成11年8月27日付けで,同年9月1日~平- 4 -成12年3月31日の間,「学習指導法の改善に関すること,教育公務員としての資質向上に関すること」等を内容とする研修を,同月27日付けで,同年4月1日~平成13年3月31日の間,上記同内容の研修を決定し,足立区教育委員会は,原告に対し,平成12年4月1日付けで,同日~平成13年3月31日の間の研修を,同日付けで,同日~平成14年3月31日の研修をそれぞれ命じた。 なお,原告は,第1次懲戒処分,第2次懲戒処分,上記都教委の7か月間の研修命令,1年間の研修決定及び足立区教育委員会の同期間の研修命令の違法性を主張した訴訟を東京地方裁判所に提起したが,いずれも棄却され,最終的に確定している。 本件戒告処分(1) 原告は,平成17年6月下旬ころ~同年7月上旬ころの間,千代田区立α中学校3学年における社会科公民の授業の際,生徒に対し,「3学年,紙上討論1」と題する資料(以下「本件資料」という。)を配布した。 原告は,従前から,一つのテーマについて生徒らの意見を紙上で交換し合う方式を紙上討論と名 社会科公民の授業の際,生徒に対し,「3学年,紙上討論1」と題する資料(以下「本件資料」という。)を配布した。 原告は,従前から,一つのテーマについて生徒らの意見を紙上で交換し合う方式を紙上討論と名付け,社会科の授業で行っていた。 本件資料は,生徒の意見とそれに対する原告のコメントが記載された内容であるが,そこには,原告が同年4月19日付けで韓国ノ・ムヒョン大統領に送ったとする手紙が掲載され,その中に以下の記載がある。 「情けないことでありますが,東京都議会文教委員会において,aという都議会議員(自民党)は言っています。『侵略戦争云々というのは,私は,全く当たらないと思います。じゃ,日本は一体どこを,いつ侵略したのかという,どこを,いつ,どの国を侵略したかということを具体的に一度聞いてみたいというふうに思います。』などと,国際的には恥を晒すことでしかない歴史認識を得々として嬉々として披露しているのが我が日本国の首都の議会なのです。侵略の正当化教科書として歴史偽造で有名な扶桑社の歴史教科- 5 -書を『生徒たちに我が国に対する愛国心を持たせる一番良い教科書』などと公言して恥じない人たちですから。」(2) 都議会議員aは,平成17年7月,都教委指導部義務教育心身障害教育指導課長bと面談し,本件資料を示して,原告の授業には問題がある等と指摘し,調査するよう依頼した。その後,千代田区立α中学校の生徒の保護者から,都教委あてに本件資料が郵送された。 これらを受けて,b課長は,区教委に対し,本件資料使用の事実等について文書で照会する等した結果,原告が本件資料を同中学校3学年の社会科公民の授業で生徒に配布し,使用したことが確認された。 (3) 都教委は,平成17年8月30日,原告の本件資料の作成,配布が地方公務員法33条に違反し,同法29条1項1号及 料を同中学校3学年の社会科公民の授業で生徒に配布し,使用したことが確認された。 (3) 都教委は,平成17年8月30日,原告の本件資料の作成,配布が地方公務員法33条に違反し,同法29条1項1号及び3号に該当するとして,原告に対し,本件戒告処分をした。 処分説明書には,処分の理由として,「社会科公民の授業を行った際,特定の公人名を挙げて,国際的には恥を晒すことでしかない歴史認識を得々として嬉々として披露している,歴史偽造主義者達という不適切な文言を記載し,また,特定の出版社名を挙げて,歴史偽造で有名なという不適切な文言を記載した資料を作成し,使用した。このことは,全体の奉仕者たるにふさわしくない行為であって,教育公務員としての職の信用を傷つけるとともに,職全体の不名誉となるものであり,地方公務員法33条に違反する。」と記載されている。 本件各研修命令(1) 区教委は,原告が第1次,第2次懲戒処分を受け,長期間の研修を受けたが,その後,本件資料を作成,配布して授業を行ったことにより3回目の懲戒処分となる本件戒告処分を受けたことから,原告には,指導方法に改善が見られず,教育公務員として適格性に疑問があり,研修によって指導方法を改善させ,教育公務員としての資質向上を図る必要があると判断した。そこ- 6 -で,区教委は,原告に対し,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)45条1項に基づき,平成17年9月1日付けで,同日~同月16日の間,本件研修命令①を命じた。 区教委は,上記の目的から,学習指導の改善,教育公務員としての資質向上及び生徒,保護者の個人情報保護に係る配慮事項の3つを研修の課題に設定し,これに関連した具体的な課題を毎日2題づつ与え,原告に論文を作成させ,指導担当職員が助言,指導を行うという方法で研修を行うことと び生徒,保護者の個人情報保護に係る配慮事項の3つを研修の課題に設定し,これに関連した具体的な課題を毎日2題づつ与え,原告に論文を作成させ,指導担当職員が助言,指導を行うという方法で研修を行うこととした。 (証人c,丙8,31,34)(2) 本件研修命令①に基づく研修は,毎日2題出題された課題に対し,原告が解答論文を作成するというもので,課題として「社会規範を身につけ,社会に貢献しようとする人間を育成するためにどのような教育をいままでしてきたかまとめなさい」「豊かな心を備え,国際社会で活躍できる人間を育成するために,どのような教育をしてきたかを論述しなさい」等が与えられ,これらに対する原告の解答の大半は,従前行った紙上討論授業の資料をそのまま転記したものであった。転記された紙上討論授業の資料中に,原告が一人又は数人の生徒に対して「君の厚顔無恥な言動」「自己の狭い利益しか考えられない人物である」「他人の揚げ足取り能力には非常に恵まれている」等と記載していた。 平成17年9月8日,研修担当者は,上記解答を踏まえ,原告に対し,紙上討論で生徒を厳しく指導して傷つく生徒はいないのか,その後の指導はどのようにしたのかと質問した。原告は,傷つくようなことはない,継続指導により生徒は分かっている,そのための紙上討論である旨答えた。 「千代田区の教員として,教科で取り組んできたことをまとめ,取組からの発見した課題をあげ,その課題解決の方策を論じなさい」との課題に対する原告の解答中には,非常に成果の上がっている紙上討論授業をつぶそうと,公然と干渉してくる某右翼都議,右翼新聞がある等の記載があった。「授業- 7 -で使用する教材,自作の教材について,どのような視点が大切となるか,留意点は何か,引用・著作権・個人情報の保護についてもふれて記述しなさい」との ,右翼新聞がある等の記載があった。「授業- 7 -で使用する教材,自作の教材について,どのような視点が大切となるか,留意点は何か,引用・著作権・個人情報の保護についてもふれて記述しなさい」との課題に対する解答には,教材等について,b課長は,何とか学習指導要領違反にしたいものと,熱望されて努力を傾注されたようだが,どうあがいてもその努力は報いられなかったようである,日本国家代表が内外に表明している歴史認識を否定する驚くべき妄言は,公人の,公の場においてなされ,公の記録に記載されている,というものは,必ず出典を明示する必要がある等と記載されていた。「特定の個人名,団体名を記述したり,それらについて教師の私見を加えた資料を授業で活用することについて,どのように考えているか記述しなさい」との課題に対しては,日本国家代表が内外に表明している歴史認識を真っ向,否定する驚くべき妄言は,都議会議員の発言であるというふうに,公人である個人名及び出典を必ず明示する必要がある,侵略正当化・歴史偽造教科書として,東アジア全体で問題にされ,生徒たちにも知られている公の出版社名は正確に記述しなければ不適切の謗りを免れない等と記載されていた。 (3) 区教委は,平成17年9月13日,本件研修命令①による研修の経緯によれば,十分な成果を上げられず,区教委では長期研修の実施に限界があると判断し,さらに根本的,専門的な研修が必要であるとして,都教委に対し,研修の実施を依頼した。 区教委の都教委に対する研修依頼書には,研修内容として,「(1) 学習指導法の改善に関すること,①中学校学習指導要領についての理解,②学習指導要領に基づいた指導内容,方法についての理解,③適切な教材等の選定及び作成,(2) 教育公務員としての資質向上に関すること,①教育公務員として求められる 中学校学習指導要領についての理解,②学習指導要領に基づいた指導内容,方法についての理解,③適切な教材等の選定及び作成,(2) 教育公務員としての資質向上に関すること,①教育公務員として求められる服務規律,②地方公務員法等に関する理解,③学校組織の一員として取り組む教育実践に対する基本的認識,(3) その他都教委が必要と認める研修,①保護者,地域社会の理解の下に進める教育実践のあり方②生徒,- 8 -保護者等の個人情報保護に係る配慮事項」等と記載されている。 都教委は,上記依頼を受け,同月16日,研修期間を同月20日~平成18年3月31日,研修時間を午前9時~午後5時45分(休憩時間は午後0時15分~午後1時,休息時間は午後0時~午後0時15分,午後3時~午後3時15分),研修場所を東京都目黒区所在の東京都教職員研修センター(以下「研修センター」という。)とする研修の実施を決定し,区教委は,原告に対し,平成17年9月16日付けで,実施者を都教委とする上記期間の本件研修命令②を命じた。 研修内容は,上記依頼書とほぼ同じであり,上記研修内容に即した各課題を与えられ,又は講師の講義を聴いた上で,解答論文を作成するというものである。 (証人d,同e,乙ロ25,26,丙27~29)(4) 研修初日である平成17年9月20日,原告は,「研修の実施について」と題する書面を配布された。それには,研修期間,研修場所等の他,遵守事項として,研修受講にあたっては研修に専念する,研修担当職員の指示に従う,録音,録画を行わない等と記載されていた。 原告は,同日,職員の制止にもかかわらず,持参した抗議文を約2分間読み続けた。同抗議文は,「f,東京都教職員研修センター所長に告ぐ」と題し,「あなたは私の個人情報を都議に漏洩するという非違行為を犯しました,もし,あな 制止にもかかわらず,持参した抗議文を約2分間読み続けた。同抗議文は,「f,東京都教職員研修センター所長に告ぐ」と題し,「あなたは私の個人情報を都議に漏洩するという非違行為を犯しました,もし,あなたが真に公務員たるの資質を持つものであれば,懲罰を本質とする本研修の強制は,まさしく日勤教育に等しいもので,許されざる人権侵害であることが理解できるはずです,この人権侵害懲罰研修については,教育基本法10条が厳禁する教育に対する不当な支配干渉に当たるものとして,市民,保護者,生徒,マスコミはもとより,真っ当な都議会議員や国会議員も重大な関心を持っていることを付言しておきます」等と記載されている。 原告は,同月22日,研修センターにおいて,研修時間中に,研修センタ- 9 -ー所長あての抗議文を作成し,担当者に手渡した。同抗議文には,「研修センターにおける人権侵害の実態」として,指導主事から,部屋を出るときは行き先を告げてくださいと言われたこと等が人権侵害に当たる等と記載され,これでは人権侵害常習センターであり,あまりに気持ち悪くて研修に専念できない等と記載されている。 原告は,同月27日,上記指導主事らの対応が人権侵害行為に当たるとして,同主事らに対し,原告に謝罪させるよう要求する旨のf所長にあてた抗議文を研修担当者に手渡した。 原告は,同年10月3日,上記指導主事らの対応が人権侵害に当たるとして,原告に謝罪させるよう要求する旨,統括指導主事から指示された週1回の研修センター立川分室での研修を拒否する旨が記載されたf所長あての抗議文を研修担当者に手渡した。 原告は,同年11月7日,別の指導主事から,部屋を出るときは必ず行き先を告げることになっていると言われたことが人権侵害に当たるとし,「もともとが都教委による嫌がらせ人権侵害研修として強制されて た。 原告は,同年11月7日,別の指導主事から,部屋を出るときは必ず行き先を告げることになっていると言われたことが人権侵害に当たるとし,「もともとが都教委による嫌がらせ人権侵害研修として強制されている本研修」等と記載した抗議文を作成し,研修担当者に手渡した。 同日,原告は,豊島区立勤労福祉会館で開催された集会において,千代田区立α中学校長から区教委にあてた服務事故報告書を原告が執行委員長を勤める団体が発行したビラと併せて配布した。上記服務事故報告書には,本件資料の作成,配布行為に関して,同中学校の生徒の特定の保護者について,姓及び肩書きが付された上で,この保護者が本件資料を問題視して原告と面談したこと等が記載されている。また,上記ビラは,本件戒告処分の不当性を訴える内容のものであり,その中に,「授業で公人や出版社の誤りを批判することが,なぜ悪いのか」「特異な史観を持つ保護者に悪のり」「たまたま保護者の一人に,戦時中の神がかり皇国史観の教祖であるgの信奉者がいて,息子から紙上討論プリントを出させ,都の教育委員会に送付した。それ- 10 -を利用しての処分なのである」と記載されていた。 原告は,同年12月7日,本件資料の作成,配布に関連して,「個人的見解で特定個人や団体等を誹謗中傷した箇所がある資料を生徒に配布して授業を行った理由及び教育公務員としてのあなたの考えを述べよ」との課題に対し,ごく当然の批判であって誹謗中傷では全くない,これを誹謗中傷と判断したのは教育公務員として侵略戦争の反省の上に立ってつくられた日本国憲法の理念を身につけていないことを意味している,このような判断力を持つものは教育公務員としての資質があまりにも不十分である等と記載した解答を提出した。 原告は,平成18年2月,本件資料の作成,配布に関連して,「あなたの主張 ことを意味している,このような判断力を持つものは教育公務員としての資質があまりにも不十分である等と記載した解答を提出した。 原告は,平成18年2月,本件資料の作成,配布に関連して,「あなたの主張を書いた資料を生徒に配布したが,今後もこのような認識のもと授業中に同様の資料を配布するつもりか」との課題に対し,私の主張は公の歴史認識に基づいた主張であり,処分は論外,本研修のような嫌がらせの懲罰研修など狂気の沙汰である,私は正しい主張を行ったわけであるから,本課題作成者には私に謝罪の上,直ぐ現場復帰させるべきである等と解答した。 そして,原告は,平成17年9月20日~同年12月9日の間,研修内容の説明及び講義の際,研修担当者から止めるよう再三,指示されたが,裁判資料にするとして12回にわたり,録音行為を行った。 原告は,同年9月26日~平成18年2月15日の間,研修中に,研修運営担当者に対し,厚顔無恥,木っ端役人等と発言したり,この研修は犯罪行為です,人権侵害です,都教委は犯罪者集団,人権侵害集団,人権侵害だから証拠を取る,強権を持って私を洗脳しようとしている等と発言したりした。 f所長は,平成18年3月17日付けの都教委教育長にあてた研修実施状況報告書の中で,原告の平成17年9月20日~平成18年2月28日の間の研修の総合的所見として,原告は,研修課題に対する論文の中で,自己と異なる主張に対しては極めて攻撃的な言葉で反論したり,課題に正対してい- 11 -ない内容を記述する等,自己の基本的な主張を変えることはなかった,研修センター運営担当者や研修の講師に対して,高圧的な態度を取り,嫌がらせ研修である,人権侵害研修である,教育に対する不当な支配,干渉でしかない等と不適切な発言を繰り返した,研修期間中の態度は,抗議文の作成,抗議文の読み上げ, 講師に対して,高圧的な態度を取り,嫌がらせ研修である,人権侵害研修である,教育に対する不当な支配,干渉でしかない等と不適切な発言を繰り返した,研修期間中の態度は,抗議文の作成,抗議文の読み上げ,禁止を無視した録音,研修場所からの無断離席等,不適切なものであった,このような研修課題に対する論述姿勢,研修受講態度は,研修開始時より何ら変わることはなかった旨報告している。 (証人d,同e,乙ロ4,5,25,26,39~42,49~55)(5) なお,本件研修命令①,②に基づく研修期間中,原告の千代田区立α中学校教諭としての身分及び給与に変動はない。 都教委及び区教委の対応等区教委は,原告の研修実施状況に関して,研修中の抗議文の読上げや録音等の事実,豊島区立勤労福祉会館でのビラ等の配布行為の報告を受け,区教委教育指導課長cが,平成18年1月27日,原告に事実確認をするため,研修センターに赴いたが,原告は,事情聴取を受けることを拒否した。 区教委は,原告の研修中の抗議文の読上げ等及び集会でのビラ配布行為は研修期間中の不適切な行為に当たると判断し,同年2月3日付けで都教委教育長にあてて,服務事故報告書を提出した。同報告書には,区教委の見解として,原告は懲戒処分を受けたのに何ら改善が見られず,研修期間中も個人的見解で特定個人や団体等の誹謗中傷を繰り返し,区教委が事実確認とともに弁明の機会を与えてもこれを拒否していることは,公教育に対する信頼を著しく失わせるものであり,教育の公正中立を損なうものである,原告に対し,都教委の厳正な処置を求めるという内容である。 都教委は,服務事故報告書を受け,事情聴取を行うこととし,同年3月2日と同月24日,東京都教育庁人事部職員課管理主事hらが研修センターに赴き,原告に事情聴取に応じるよう告げたが,原告はこれを拒 る。 都教委は,服務事故報告書を受け,事情聴取を行うこととし,同年3月2日と同月24日,東京都教育庁人事部職員課管理主事hらが研修センターに赴き,原告に事情聴取に応じるよう告げたが,原告はこれを拒否した。 - 12 -同月28日,都教委は,区教委から,原告の研修センターでの研修状況報告を踏まえ,継続した研修の実施などの適切な処置を取ることを求める内申書を受領した。 都教委は,区教委からの服務事故報告書,研修センターからの研修実施状況報告書,第1次,第2次懲戒処分に関する記録等を検討した結果,原告には教育公務員としての職務の遂行に支障があり,分限免職処分が相当であると判断し,同月29日の懲戒分限審査委員会の検討,同月30日の都教委における審議を経て,同月31日,本件分限免職処分を発令した。 (証人h,同i,乙ロ20,27,28,58,60,61) 本件分限免職処分都教委は,平成18年3月31日付けで,原告に対し,別紙のとおりの処分理由で,地方公務員法28条1項3号により本職を免ずるとの本件分限免職処分をした。 第4争点及び当事者の主張 本件戒告処分について(1) 懲戒事由該当性(被告東京都の主張)本件資料は,特定の都議会議員や出版社名を挙げた上でこれらの者を誹謗し,原告の個人的な歴史観を一方的に生徒に押し付ける内容のものであり,教師の立場を利用して,本件資料を授業の資料として生徒に配布した行為は,公正であるべき公教育に対する信用,信頼を損なう行為であり,教育公務員として職の信用を傷つけ,職全体に対する不名誉となる行為であるから,地方公務員法33条に違反し,同法29条1項1号,3号に該当する。 (原告の主張)a都議会議員の発言や扶桑社の教科書が憲法及び政府見解及び今日の歴史学の成果を真っ向から否定し,歴史を歪曲,偽造したもの 方公務員法33条に違反し,同法29条1項1号,3号に該当する。 (原告の主張)a都議会議員の発言や扶桑社の教科書が憲法及び政府見解及び今日の歴史学の成果を真っ向から否定し,歴史を歪曲,偽造したものであることは明ら- 13 -かであり,原告が公立中学校の社会科教師の責務として,このことを生徒らに教えることは,憲法及び教育基本法の趣旨に照らし正当なことであり,何ら不適切なものではないから,懲戒事由に該当しない。都議会議員は,公人であるから,批判に晒されるべきであるし,誤った歴史認識をもって憲法のありようを否定しようとする教科書製作会社があることを生徒に教えることは教師として当然のことである。 (2) 違憲性,裁量権の逸脱,濫用(原告の主張)原告の紙上討論は,憲法の精神に沿った平和主義,基本的人権の尊重,民主主義国家における主権者としての自覚を高めるために有益であり,高い教育的効果を上げていたのであるから,正当な授業である紙上討論に対する教育委員会の介入は,教育に対する不当な支配に該当し,憲法26条,教育基本法10条1項に違反するとともに,教師の教育に関する自律性を定めた学校教育法28条,40条に違反する。 本件戒告処分は,本来,懲戒処分の対象としてはならない事柄である授業内容に対するものであるから,裁量権の逸脱,濫用がある。 (被告東京都の主張)本件戒告処分は,特定の都議会議員及び出版社の実名を挙げて誹謗した本件資料の生徒らへの配布行為が処分理由であり,紙上討論授業そのものを問題にしておらず,憲法26条,旧教育基本法10条1項に違反しない。 本件各研修命令について(1) 無効確認訴訟の適法性(被告千代田区の主張)本件各研修命令は職務命令であり,原告の法律上の地位に直接影響を与えないから,処分性を欠く。本件各研修命令で命じた研修 本件各研修命令について(1) 無効確認訴訟の適法性(被告千代田区の主張)本件各研修命令は職務命令であり,原告の法律上の地位に直接影響を与えないから,処分性を欠く。本件各研修命令で命じた研修はいずれも終了し,本件各研修命令に続行する処分がされる余地はないから,確認の利益を欠く。 - 14 -(原告の主張)本件各研修命令は,その存在,期間中の原告の態度,言動が本件分限免職処分の理由の一つとされていること,本件分限免職処分が取り消されても,将来,本件各研修命令を理由とする新たな不利益処分や新たな研修命令等の不利益処分を科されるおそれがあるから,無効確認請求の訴えの利益がある。 (2) 違憲性,裁量権の逸脱,濫用の有無(原告の主張)本件各研修命令は,違憲,違法の本件戒告処分を前提とするから違法であるし,本件戒告処分と同一の理由に基づく二重処分に当たるから,憲法39条に違反する。 高い教育的効果を上げていた紙上討論に改善指導を強制することは,旧教育基本法10条1項の禁止する不当な支配に該当し,教師の教育の自律性を認めた憲法26条,学校教育法28条,40条に違反する。 原告の授業内容に対するメディアバッシングが繰り返され,都議会で議員らが原告を誹謗していた中で発令された本件各研修命令は,都教委が,政治的圧力に屈して行ったものである。 本件各研修命令は,年度途中の社会科教員の交替を余儀なくし,学年全体に及ぼす教育上の影響への配慮を欠いており,裁量権を逸脱している。 本件各研修命令による研修期間中,指導,助言と称して,原告に対し,教師としての信念を曲げることを強要し続けたことは,原告の思想及び良心に対する侵害である。また,研修期間中,原告を刑務所や強制収容所並みの監視体制下に置いたのは,人権侵害に当たる。本件各研修命令は,実質的には転任,停 げることを強要し続けたことは,原告の思想及び良心に対する侵害である。また,研修期間中,原告を刑務所や強制収容所並みの監視体制下に置いたのは,人権侵害に当たる。本件各研修命令は,実質的には転任,停職処分に相当し,挨拶や引き継ぎの機会を与えられず,校長の内申もない等,校長の意向を無視して強行されたので,憲法31条に違反する。 (被告千代田区の主張)本件各研修命令に違憲性,裁量権の逸脱,濫用はない。 - 15 -本件各研修命令には,必要性,相当性がある。また,本件各研修命令は,学習指導法の改善等の研修を受講するよう命じる職務命令であり,研修期間中の原告の身分,俸給に何らの不利益もないこと,研修期間は通算して1年間に満たず,研修場所は一般に使用されている研修会場であることから,不利益処分に該当せず,二重処分の問題は生じない。 本件各研修命令は,政治的圧力により発令したものではなく,原告の紙上討論授業自体を制止して,授業の主要な内容に干渉するものではないのであり,憲法26条,旧教育基本法10条1項,学校教育法28条,40条に違反しない。また,本件各研修命令は,職務命令であるから,憲法31条の適正手続違反の主張は,前提を欠く。 (被告東京都の主張)本件研修命令②の研修内容は都教委が中心となって決定し,実施したのであるが,研修中の人権侵害等の主張はすべて否認し争う。 本件分限免職処分について(1) 免職事由該当性(被告東京都の主張)原告は,生徒の保護者を誹謗する文書を授業中に配布する等の行為により,第1次,第2次懲戒処分を受けたが,特定の個人や法人を名指しで誹謗する内容の本件資料を授業中に配布するという同様の行為を繰り返し,本件戒告処分を受け,これを契機に学習指導法の改善を目的とした研修を受けたが,研修期間中,自己の正当性を主張し続けるだ を名指しで誹謗する内容の本件資料を授業中に配布するという同様の行為を繰り返し,本件戒告処分を受け,これを契機に学習指導法の改善を目的とした研修を受けたが,研修期間中,自己の正当性を主張し続けるだけで成果が上がらず,その期間中,生徒の保護者を誹謗する文書を集会で配布する等の行為をした。都教委は,原告のこれら一連の行為を評価し,原告は,自己の見解が絶対に正しく,それ以外はすべて間違っているとして授業を行い,自己の見解と対立する見解を有する者に対し,徹底的に誹謗する性向を有しており,この性向は,簡単に矯正できない持続性を有する素質,能力,性格であると判断した。公立- 16 -中学校の教師は,中学校の教育の目標の一つが公正な判断力を養うことにあること,未発達の段階にある生徒に対する教師の影響力が大きいこと,保護者の中には様々な世界観,価値観を持った者がいること等を配慮し,教師が生徒に偏った世界観,歴史観を押し付けているとの批判を受けないよう品格と節度を持って行動すべき立場にある。原告は,上記の性向から,このような配慮をする能力に欠け,公正であるべき公教育の円滑な遂行に支障があり,地方公務員全般,特に,教育公務員としての適格性を欠くと判断した。 (原告の主張)被告東京都主張の事実は,免職事由である「その職に必要な適格性を欠く場合」に当たらない。紙上討論を継続する中で生徒達の能力を向上させてきたという実績を有し,同僚から感謝され,生徒とも信頼関係を作ってきた原告が,教育公務員としての職の適格性を欠くとはいえない。原告の長年の教育実践,教育実績,同僚や生徒との信頼関係の有無等を考慮せず,第1次,第2次懲戒処分及び本件戒告処分の理由とされた事実だけを取り出して適格性がないと判断したのは誤りである。 (2) 違憲性,裁量権の逸脱,濫用(原告の主 や生徒との信頼関係の有無等を考慮せず,第1次,第2次懲戒処分及び本件戒告処分の理由とされた事実だけを取り出して適格性がないと判断したのは誤りである。 (2) 違憲性,裁量権の逸脱,濫用(原告の主張)違憲,違法な本件戒告処分,本件各研修命令を前提とする本件分限免職処分は,憲法26条,19条,旧教育基本法10条1項に違反する。 本件分限免職処分は,第1次,第2次懲戒処分を理由に挙げている。これら処分の違法性を認めなかった司法判断は間違っており,これら処分は本来,違法無効であるから,これらを理由とした本件分限免職処分は違法である。 a都議会議員は,平成12年11月,原告の教育実践を誹謗中傷する内容の本を出版し,名誉毀損に当たるとの司法判断がされていること,本件資料が都教委に発覚した発端に同都議会議員が関与し,都教委は,同都議会議員の意向を受けて執拗に原告の授業の資料の提出を求める等の行動に出ている- 17 -こと,都教委は,本件分限免職処分直前の時期に,いったんは原告の教育公務員としての適格性を認めて港区立γ中学校への転校を決定していたのに,突然,本件分限免職処分を下したという経緯があることから,本件分限免職処分は,原告の授業内容が現在の都政に反すると考えた右翼都議及び右翼メディアの政治的圧力によりされたものであり,憲法26条,19条,旧教育基本法10条1項に違反する。 違法無効な研修命令に基づく研修期間中の原告の抗議活動や証拠保全活動等は,正当な抗議活動及び証拠保全活動であり,免職処分の根拠となり得ない。また,研修期間中の勤務時間外の集会活動において配布した文書の内容は,個人のプライバシー情報は記載されず,個人を誹謗する内容でなく,違法な本件戒告処分,本件各研修命令に対する異議申立てであって,正当な行為だから,免職処分の根拠となり得な おいて配布した文書の内容は,個人のプライバシー情報は記載されず,個人を誹謗する内容でなく,違法な本件戒告処分,本件各研修命令に対する異議申立てであって,正当な行為だから,免職処分の根拠となり得ない。本件分限免職処分は,考慮すべきでない事項を考慮した裁量の逸脱がある。 本件分限免職処分は,他の事例と比して不当に重く,比例原則に違反する。 (被告東京都の主張)都教委は,政治的圧力により本件分限免職処分をしたのではない。原告は定期異動の対象者であったから異動が予定されていたのであり,その適格性とは関係がない。本件分限免職処分は,原告の思想や歴史観を理由とするものではなく,憲法19条に違反しないし,原告の憲法26条,旧教育基本法10条1項,学校教育法28条,40条に違反するとの主張は争う。 分限免職処分は,職場秩序維持の観点ではなく,公務の円滑な遂行という観点から,適格性の有無を判断してされるものだから,研修期間中や,勤務時間外の原告の言動を適格性欠如の徴表事実とすることに何ら問題はない。 上記の免職事由からみて,本件分限免職処分が重過ぎることはない。 (3) 手続的違法性(原告の主張)- 18 -都教委は,区教委の研修継続の内申を無視して本件分限免職処分を決めており,内申制度(地教行法38条1項)の趣旨に反している。 東京都の職員の分限に関する条例3条3項は,分限免職について「当該職員をその現に有する適格性を必要とする他の職に転任させることができない場合に限る」と規定しており,他の職への転任が可能であった原告に対し,都教委は,転任の可否を検討せずに免職処分にしているから,上記条例の規定に違反する。 分限免職処分には,適正手続の保障の要請から,行政手続法13条1項,15条,30条の趣旨が及ぼされるべきであるが,原告は,都教委から事情聴取を受 免職処分にしているから,上記条例の規定に違反する。 分限免職処分には,適正手続の保障の要請から,行政手続法13条1項,15条,30条の趣旨が及ぼされるべきであるが,原告は,都教委から事情聴取を受けていないから,同条項の趣旨に反し,違法である。 (被告東京都の主張)地教行法38条1項は,都教委を内申の内容に拘束するものではないし,区教委の内申をまってした本件分限免職処分は,同条に違反しない。東京都の職員の分限に関する条例3条3項は,同一任命権者による他の職種への水平異動を意味するが,県費負担教員である原告の他の職種への異動は不可能であるし,その性向から公務員として不適格だから,本件分限免職処分は,上記条例に違反しない。また,地方公務員法上の処分には,原告主張の行政手続法の規定は適用されないし,原告は,2度の事情聴取の機会を拒否した。 給与支給請求について(原告の主張)原告の平成17年度給与は,基本給月額46万0096円,夏季手当て93万9636円,冬季手当て96万9000円である。本件分限免職処分の取消により,原告は,平成18年4月1日以降毎月15日限り46万0096円,毎年6月30日限り93万9636円,毎年12月10日限り96万9000円及び各支給日の翌日からの遅延損害金の支払請求権を有する。 (被告東京都の主張)- 19 -原告の主張を争う。 国家賠償法に基づく損害賠償請求について(原告の主張)違憲,違法な本件戒告処分及び本件分限免職処分により原告が被った精神的損害は,各50万円及び200万円を下らない。違憲,違法な本件各研修命令により原告が被った精神的損害は200万円を下らないが,本件研修命令②は,都教委が中心となって研修内容を決定しているから,うち50万円の限度で被告らは不真正連帯債務の関係にある。 よって,原 修命令により原告が被った精神的損害は200万円を下らないが,本件研修命令②は,都教委が中心となって研修内容を決定しているから,うち50万円の限度で被告らは不真正連帯債務の関係にある。 よって,原告は,国家賠償法に基づき,被告らに対し連帯して50万円,被告東京都に対し250万円,被告千代田区に対し150万円及び各不法行為時からの遅延損害金の支払請求権を有する。 (被告らの主張)原告の主張を争う。 第5当裁判所の判断 本件戒告処分について(1) 懲戒事由該当性原告の本件資料作成,配布行為が,その職の信用を傷つけ,又は職員の職全体の不名誉になる行為(地方公務員法33条),全体の奉仕者たるにふさわしくない非行(同法29条1項3号)に該当するかを検討する。 上記前提事実によれば,本件資料の中には,特定の都議会議員及び出版社の名前を挙げて「国際的に恥を晒すことでしかない歴史認識を得々として嬉々として披露している」「歴史偽造主義者達」「侵略の正当化教科書として歴史偽造で有名な扶桑社の歴史教科書」との記載が含まれている。これらの表現は,ことさらに特定の個人及び法人を取り上げて,客観性なく決めつけて,稚拙な表現で揶揄するものであり,特定の者を誹謗するものであることは明らかである。 - 20 -中学校は,義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とし(平成19年6月27日法律第96号による改正前学校教育法35条),公正な判断力を養うことが目標の一つとして掲げられている(同法36条3項)。そして,原告は,生徒らに学校や教師を選択する余地の乏しい公立の普通義務教育において,教育を行う立場にある。原告が教育する対象である中学校の生徒らは,未発達の段階にあり,批判能力を十分備えていないため,教師の影響力が大きいことを考慮すれば,公正な判断力を養う 普通義務教育において,教育を行う立場にある。原告が教育する対象である中学校の生徒らは,未発達の段階にあり,批判能力を十分備えていないため,教師の影響力が大きいことを考慮すれば,公正な判断力を養うという上記目標のためには,授業が公正,中立に行われることが強く要請されるのであり,原告が,教師という立場で,特定の者を誹謗する記載のある本件資料を授業の教材として作成,配布することは,公正,中立に行われるべき公教育への信頼を直接損なうものであり,教育公務員としての職の信用を傷つけるとともに,その職全体の不名誉となる行為に当たるし,全体の奉仕者たるにふさわしくない非行であるといわなければならない。 原告は,歴史を歪曲,偽造しようとする公人や教科書出版社の存在を生徒に知らせることは,社会科教師の責務であり,正当な行為であると主張する。 しかし,本件資料の上記表現は,原告の見解を客観的に教えるというものではなく,自分と反対の見解を持つ者を教師の立場において誹謗するものであり,上記判断のとおり,そのことに対して信用失墜と評価されているのであるから,誹謗の対象者を論じる上記の原告の主張を採用する余地はない。 以上によれば,原告の本件資料の作成,配布行為は,地方公務員法33条に違反し,同法29条1項1号及び3号に該当し,懲戒事由該当性が認められる。 (2) 違憲性,裁量権の逸脱,濫用原告は,本件戒告処分は,紙上討論という授業内容に対する介入であるから,教育への不当な支配であり,教師の教育に関する自律性を侵害し,憲法26条,旧教育基本法10条1項等に違反すると主張する。しかし,本件戒- 21 -告処分は,紙上討論授業そのものではなく,上記の内容を含む本件資料の作成,配布行為を対象にしているのであるから,原告の上記主張は前提を誤っている。そして,憲法26条 る。しかし,本件戒- 21 -告処分は,紙上討論授業そのものではなく,上記の内容を含む本件資料の作成,配布行為を対象にしているのであるから,原告の上記主張は前提を誤っている。そして,憲法26条は,普通教育の教師が教師の立場において特定の者を誹謗することを保障していると解する余地はないから,原告の上記主張を採用することはできない。 なお,原告は,授業内容を対象とする本件戒告処分は裁量権を逸脱,濫用したものであると主張するが,上記のとおり,本件戒告処分は,授業内容を対象としたものではなく,特定の者を誹謗する内容を含む本件資料の作成,配布行為を対象にしているのであるから,前提を誤った原告の上記主張を採用することはできない。 (3) 以上によれば,本件戒告処分の取消請求には理由がない。 本件各研修命令について(1) 無効確認請求の適法性被告千代田区は,本件各研修命令の無効確認請求について,本件各研修命令は職務命令で処分性はなく,原告が研修を履行済みであることは争いがなく,続行処分の余地もないことから,確認の訴えの利益を欠くと主張している。 しかし,本件各研修命令は,通算して6か月余りの期間に及んでいて,研修場所が教育現場以外の場所であること,教育活動を行うものではなく,研修活動を行っていること,現実に,本件各研修命令及び研修中の言動が本件分限免職処分の理由とされ,平成11年9月~平成14年3月に研修を受けたことも本件分限免職処分の理由に取り上げられていることを考慮すれば,本件各研修命令に続く処分により損害を受けるおそれがあるとする無効確認請求訴訟を許容する余地は否定し難く,上記被告千代田区の主張は採用できない。 (2) 本件各研修命令の違法性の有無- 22 -都教委は,県費負担教職員である原告の任命権者として(地教行法37条1項 求訴訟を許容する余地は否定し難く,上記被告千代田区の主張は採用できない。 (2) 本件各研修命令の違法性の有無- 22 -都教委は,県費負担教職員である原告の任命権者として(地教行法37条1項),地方公務員法39条2項により,原告に対する研修の立案,実施をすることができ,区教委は,原告の服務監督者として(地教行法43条),同法45条により,原告に対し,職務命令として研修を命じることができる。 そして,地方公務員法39条2項及び地教行法45条は,いずれも研修の方法,内容,態様等について制限していないから,研修の必要性,具体的内容,期間等の判断は,都教委,区教委の合理的な裁量に委ねられており,裁量権の逸脱,濫用がない限り,違法の問題は生じないと解するのが相当である。 上記前提事実のとおり,原告は,公立中学校の教師の立場において,特定個人を誹謗する資料を配布する等の行為により2度の懲戒処分を受け,長期の研修を受けたにもかかわらず,特定個人及び法人を誹謗する内容を含む資料を作成,配布して3度目の懲戒処分である本件戒告処分を受けたのであるから,原告には,公教育の公正,中立性の維持の観点から,指導方法の改善,教育公務員としての資質向上を図る必要性が認められたものである。そして,本件各研修命令の目的は,原告の指導方法を改善させ,教育公務員としての資質向上を図ることにあり,研修内容及び方法は,この目的に即し,学習指導の改善,教育公務員としての資質向上及び生徒,保護者の個人情報保護に係る配慮事項の3つを課題として設定し,これらに関する具体的課題を出題し,解答論文を作成させ,指導,助言するというものである。また,本件各研修命令は,期間がそれぞれ16日間,6か月余であり,この間,千代田区立α中学校教諭としての原告の身分や給与等に変動はなく,研修場所は千代 論文を作成させ,指導,助言するというものである。また,本件各研修命令は,期間がそれぞれ16日間,6か月余であり,この間,千代田区立α中学校教諭としての原告の身分や給与等に変動はなく,研修場所は千代田区教職員が研修を受ける際に一般的に使用している東京都目黒区所在の研修センターであった。上記の各事情からすると,本件各研修命令の必要性の判断,研修内容及びその実施方法等について,裁量権の逸脱,濫用があったと認める余地は存しない。 原告は,本件戒告処分が違憲,違法であるから,本件各研修命令は違法で- 23 -あると主張するが,上述のとおり,本件戒告処分に違法性は認められないから,原告の上記主張は前提を欠いており,採用の余地はない。 また,原告は,本件各研修命令が,同一の非違行為に対し,本件戒告処分と重ねて懲戒処分を課すものと評価できるから,二重処分に当たると主張する。しかし,上記のとおりの原告の処分歴に鑑み,教育公務員としての資質向上を図ることを目的として発令された本件各研修命令が二重処分に当たると評価することはできない。 原告は,本件各研修命令は,紙上討論授業に対する不当な介入であり,憲法26条,旧教育基本法10条1項等に反すると主張する。しかし,本件各研修命令は,公教育の公正,中立性の維持の観点から,指導方法の改善,教育公務員としての資質向上を図る目的で発令されたものであるから,授業内容に対する不当な介入には該当せず,上記原告の主張もまた採用できない。 原告は,都議会議員との間の訴訟事件,都議会における原告批判の演説,原告の授業内容に対するメディアバッシング等を主張して,本件各研修命令は,政治的圧力によるものであると主張するが,上記のとおり,原告について,本件各研修命令を行う必要性が十分に認められる以上,原告主張の各事実が認められたからと バッシング等を主張して,本件各研修命令は,政治的圧力によるものであると主張するが,上記のとおり,原告について,本件各研修命令を行う必要性が十分に認められる以上,原告主張の各事実が認められたからといって,政治的圧力によるものと推認することはできないから,原告の上記主張は,裁量権の逸脱,濫用を根拠付ける事由とは認められない。 原告は,本件各研修命令に基づく研修によって,教師としての信念を曲げることを強要されたから,思想及び良心が侵害され,強制収用所並みの監視下に置かれたことが人権侵害に当たると主張する。しかし,上述のとおり,本件各研修の内容は,学習指導の改善,教育公務員としての資質向上及び生徒,保護者の個人情報保護に係る配慮事項の3つを課題とするもので,出題された具体的課題の内容は,上記目的に沿ったものであり,原告の内心の世界観,歴史認識を問題にして,それらを改めるよう要求するものでないし,- 24 -上記前提事実によれば,研修担当職員が原告の離席状況を把握するため,離席の際,行き先を告げるよう求めたことは認められるが,この事実から直ちに人権侵害があったと評価することは困難である。 原告は,本件各研修命令が実質上,転任ないし停職処分に相当するとして,挨拶や引き継ぎの機会を与えられず,校長の内申がなかったことが適正手続の保障の要請に反すると主張する。しかし,本件各研修命令を実質的に転任ないし停職処分と解する根拠は存しないから,この主張もまた採用できない。 (3) 以上のとおり,本件各研修命令の発令,実施方法に違憲性,違法性を認める根拠はないから,国家賠償法を適用すべき違法性は存在しないし,もとより,無効確認請求の原因となる重大かつ明白な違法等の無効事由を認める根拠はないから,本件各研修命令の無効確認請求には理由がない。 本件分限免職処 国家賠償法を適用すべき違法性は存在しないし,もとより,無効確認請求の原因となる重大かつ明白な違法等の無効事由を認める根拠はないから,本件各研修命令の無効確認請求には理由がない。 本件分限免職処分について(1) 分限免職事由該当性原告について,その職に必要な適格性を欠く場合(地方公務員法28条1項3号)の免職事由が存するかを検討する。その職に必要な適格性を欠く場合とは,当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質,能力,性格等に起因してその職務の円滑な遂行に支障があり,又は支障を生じる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解するのが相当であり,この適格性の有無は,当該職員の外部に現れた行動,態度等を相互に有機的に関連付けて評価し,当該職員の経歴や性格,社会環境等の一般的要素をも考慮し,これら諸般の事情を総合的に検討して判断する必要がある。 公務の能率の維持,その適正な運営の確保という分限制度の趣旨と同条項の分限事由が上記のような一般要素を含んだ諸般の事情を踏まえた上での一定の評価を内容としていることからすると,分限事由該当性の判断には,任命権者の裁量権が認められるが,考慮すべき事項を考慮せず,考慮すべきでない事項を考慮し,また,その判断が合理性の観点から許容される限度を超- 25 -えた不当なものである等,裁量権の逸脱,濫用が認められる場合には,違法性を帯びるというべきである。 上記前提事実によれば,原告は,平成10年と平成11年に,生徒の保護者を誹謗する内容の印刷物を授業の資料として作成して生徒に配布し,また,教師の立場から,生徒の保護者と係争中の訴訟事件について自己の一方的な主張を記載した文書を全校生徒の保護者あてに郵送する等の行為により,第1次,第2次懲戒処分を受け,これを契機に,学習指導法の改善及び教育公 から,生徒の保護者と係争中の訴訟事件について自己の一方的な主張を記載した文書を全校生徒の保護者あてに郵送する等の行為により,第1次,第2次懲戒処分を受け,これを契機に,学習指導法の改善及び教育公務員としての資質向上を目的とした研修を2年7か月間受けたが,その約4年3か月後に,特定個人及び法人名を挙げて誹謗する内容を含む本件資料を作成し,生徒に配布する行為により,本件戒告処分を受けたものである。 前述のとおり,義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とする中学校の教師の立場において,特定個人又は法人を誹謗する内容を含む資料を配布して授業を行うことは,教育の中立,公正さに対する信頼を直接損ねる行為なのであり,第1次,第2次懲戒処分と本件戒告処分は,誹謗の対象が生徒の保護者か都議会議員及び教科書出版社かという違いはあるものの,同種の非違行為であることは明らかである。原告は,第1次,第2次懲戒処分及びこれに引き続く長期研修を受けたにもかかわらず,同種の非違行為を繰り返したのであるから,中立,公正に教育を行うべき教育公務員としての自覚と責任感を欠くという問題点を有しているといわなければならない。 そして,この問題点を克服するために行われた本件各研修命令に基づく研修期間中の原告の解答論文の内容,研修態度等は,上記前提事実のとおりであり,公教育という見地からの本件資料の作成,配布行為の問題点を真摯に考察するどころか,その正当性を主張して,懲戒処分や研修を受けることへの不平,不満を訴え続け,集会で,本件資料を問題視していた保護者の姓等が明記された事故報告書とともに,同保護者を誹謗する記載のあるビラを配布したものである。これらの外部に現れた原告の一連の行動,態度を相互に- 26 -有機的に関連付ければ,原告は,自己の見解の正当性の主張に固執し, 告書とともに,同保護者を誹謗する記載のあるビラを配布したものである。これらの外部に現れた原告の一連の行動,態度を相互に- 26 -有機的に関連付ければ,原告は,自己の見解の正当性の主張に固執し,それと相容れない見解を持つと考える者を誹謗する傾向を有しており,この傾向は,原告のこれまでの3回にわたる懲戒処分,長期研修を経ても変わることがなかったと評価せざるを得ない。 そして,上記のような原告の研修期間中の言動,態度に照らせば,原告は,研修による指導を受け入れて,教育公務員としての自覚と責任感の下で,公正,中立に教育を行うという考えがなく,今後も,自己が正しいと信じる見解と相容れない見解を一方的に誹謗する資料配布等を行うという強い意思を有していると評価することが可能である。 そうすると,原告には,中立,公正に教育を行う教育公務員としての自覚と責任感が欠如しており,懲戒処分や研修を受けても,これを改善しようとする意思が全く認められないのであるから,教育公務員としての職務の円滑な遂行に支障が生じているし,今後も支障を生じる高度の蓋然性が認められる。そして,上述したところからすると,このような職務遂行上の支障は,簡単に矯正することのできない原告の素質,性格に起因するものというほかない。そうである以上,原告について,その職に必要な適格性を欠く場合に該当するとの判断に裁量権の逸脱,濫用はないという結論になる。 原告は,長年にわたる教育実践,教育実績,同僚や生徒との信頼関係等に照らせば,原告の教育公務員としての適格性に何ら問題はなく,3回の懲戒処分の理由とされた事実だけを取り出して適格性がないと判断したのは誤りであると主張する。しかし,原告が長年,教職に携わり,平成10年より前には処分歴が見当たらないとの原告の主張を考慮しても,上述のとおりの原告 された事実だけを取り出して適格性がないと判断したのは誤りであると主張する。しかし,原告が長年,教職に携わり,平成10年より前には処分歴が見当たらないとの原告の主張を考慮しても,上述のとおりの原告の状況を総合的に考慮すれば,教育公務員として必要な適格性を欠くとの判断に裁量権の逸脱,濫用は認めることはできない。 (2) 違憲性,裁量権の逸脱,濫用の有無原告は,本件戒告処分及び本件各研修命令が違憲,違法であるから,これ- 27 -らを前提とする本件分限免職処分は,違憲,違法であると主張するが,上記判断によれば,原告の主張は前提を欠くものであって採用できない。 次に,原告は,本件分限免職処分の理由とされた第1次,第2次懲戒処分は,本来,違法無効であるから,これらを理由とした本件分限免職処分は違法であると主張するが,上記前提事実のとおり,これらの懲戒処分に違法性は認められないとの判決が確定しており,この主張は失当である。 原告は,本件分限免職処分は,原告の授業内容を気に入らないと考える右翼都議会議員及び右翼メディアの政治的圧力によるもので,憲法26条,19条,旧教育基本法10条1項に反すると主張する。しかし,上述のとおり,原告のこれまでの処分歴,本件各研修命令による研修中の態度等を総合的に考慮すれば,本件分限免職処分をする根拠は十分に認められるのであるから,原告が主張する都議会議員との間で訴訟事件等の確執が存在し,本件戒告処分の理由となった本件資料の都教委への発覚の経緯に都議会議員が関与していたという事実から,本件分限免職処分の違法性を根拠付けることはできないのであり,原告の上記主張は採用できない。また,本件分限免職処分は,原告の素質,性格に起因して職務の円滑な遂行に支障があり,又は支障を生じる高度の蓋然性が認められるかという観点から行われた できないのであり,原告の上記主張は採用できない。また,本件分限免職処分は,原告の素質,性格に起因して職務の円滑な遂行に支障があり,又は支障を生じる高度の蓋然性が認められるかという観点から行われたものであり,原告の内心の思想や歴史認識とは関係がない。よって,憲法26条,19条,旧教育基本法10条1項に違反するとの原告の主張は採用できない。 原告は,違法無効な研修命令に基づく研修中の抗議及び録音は,正当な活動であり,集会における文書等の配布行為は,勤務時間外の行為である上,違法な本件戒告処分に対する正当な異議申立てであるから,分限免職処分の理由として考慮すべきでないと主張する。しかし,前述のとおり,本件戒告処分及び本件各研修命令に違憲性,違法性は認められないから,抗議や録音を正当な行為とする原告の主張は前提を欠いている。また,公務の能率の維持という観点から諸般の事情を考慮して適格性の有無を判断する分限制度に- 28 -おいて,研修期間中や勤務時間外の原告の言動を適格性欠如の徴表事実の一つとして勘案することに何ら問題はないから,上記主張は採用できない。 原告は,本件分限免職処分は,他の事例と比較して不当に重く,比例原則に違反すると主張するが,上記判断のとおり,本件分限免職処分が不当に重く,裁量権の逸脱,濫用があると評価する余地はない。 以上より,原告に対し,分限免職事由該当性を認めて本件分限免職処分をしたことに,裁量権の逸脱,濫用は認められない。 (3) 手続的違法性の有無原告は,都教委が区教委の内申どおりに継続した研修を実施せず,本件分限免職処分をしたことが,地教行法38条1項に違反すると主張する。しかし,同条項は,県費負担教職員が,市町村が設置する学校に勤務し,市町村の教育委員会の管理下に職務に従事することから,都道府県教育委員会の任 分をしたことが,地教行法38条1項に違反すると主張する。しかし,同条項は,県費負担教職員が,市町村が設置する学校に勤務し,市町村の教育委員会の管理下に職務に従事することから,都道府県教育委員会の任命権行使に際し,市町村教育委員会の意見を反映させるという制度であり,市町村教育委員会が都道府県教育委員会の任命権の行使を制限する制度ではない。上記前提事実によれば,区教委の内申は,原告に対してはさらに研修を施すことが必要であるという趣旨と解されるが,上述の理由によって,有効な研修の続行は不可能であるとして本件分限免職処分をした都教委の判断に,同条項違反の問題はなく,原告の上記主張を採用することはできない。 原告は,県費負担教員の中には,授業を受け持たずに勤務する教諭や事務職という職があり,原告はこれらへの転任が可能であったから,東京都の職員の分限に関する条例3条3項に違反すると主張する。しかし,上述のとおり,公正,中立に教育を行う教育公務員としての自覚と責任感が欠如した原告には,およそ教育公務員としての適格性がないとして,分限免職処分を決めた都教委の判断に,上記条例違反の問題は生じない。 原告は,事情聴取を受けていないから,手続保障の趣旨に反すると主張するが,地方公務員法上の処分である本件分限免職処分には,行政手続法の聴- 29 -聞,弁明の機会の付与の規定は適用されない(行政手続法3条1項9号)し,上記前提事実のとおり,原告は,都教委から与えられた2度の事情聴取の機会を拒否しているから,手続保障を欠くとの原告の主張は採用できない。 以上より,本件分限免職処分に手続的違法性は認められない。 (4) 以上によれば,本件分限免職処分の取消請求には理由がない。 給与支給請求の可否上記のとおり,本件分限免職処分に違法性は認められないから,原告の給与 限免職処分に手続的違法性は認められない。 (4) 以上によれば,本件分限免職処分の取消請求には理由がない。 給与支給請求の可否上記のとおり,本件分限免職処分に違法性は認められないから,原告の給与支給請求には根拠がない。なお,給与支給請求中,本判決確定日の翌日以降の支給を求める部分は,あらかじめその請求をする必要がある場合に当たらず,不適法な訴えであるから,却下を免れない。 国家賠償法に基づく損害賠償請求の可否上記のとおり,本件各研修命令の発令及び実施,本件戒告処分並びに本件分限免職処分に違憲性,違法性は認められないから,これらを理由とする国家賠償法に基づく損害賠償請求はいずれも理由がない。 第4 結論 以上によれば,本件訴えのうち,本判決確定日の翌日以降の給与支給請求に係る部分は不適法であるから却下し,原告のその余の各請求は,いずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第36部裁判長裁判官渡邉弘裁判官三浦隆志- 30 -裁判官秋武郁代

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る