【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理 由 上告代理人上田誠吉、同佐藤義弥、同沢克巳(名義)、同山本正司、同前川信夫 の
主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理由 上告代理人上田誠吉、同佐藤義弥、同沢克巳(名義)、同山本正司、同前川信夫の上告理由第一点および第二点について。 論旨は、下級裁判所を任命権者とする職員に対する最高裁判所の懲戒権を肯定した原審の判断が、国家公務員法(以下たんに国公法という。)八四条二項、一七条および裁判所法八〇条の解釈・適用を誤り、判断遺脱、理由齟齬の違法をおかしたものである、と主張する。 よつて検討するのに、まず、国公法八四条二項によれば、他の法律に特別の定めのある場合を除いて、人事院は、任命権者が懲戒権を行使すべくしてこれを行使しない場合に、任命権者に代わつてみずから懲戒権を行使しうるものと解されるところ、同項にいう「懲戒手続に付することができる」とは、当該事案について、事実の認定、処分の種類ないし程度の決定、処分の実施等、懲戒処分に関する一連の手続をとることができることを意味するものと解すべきであり、以上の諸点は、同法八四条および八五条の文理および立法の沿革に徴して明らかである。 そして、人事院が右懲戒処分を行なうにあたつては、任命権者のする懲戒(八四条一項)におけると異なり、とくに同法所定の調査を経てなすべきもの(同条二項)とされているが、それは、国公法において、任命権者が懲戒処分を行なうにあたつては、その監督権の内容として、当然に、必要な事前調査をすることができ、それに基づいて懲戒処分をすることになるのに対し、人事院が懲戒処分を行なうにあたつては、当該職員につき直接の監督権を有しないため、とくに事前調査に関する規定を置くことを相当としたものであつて、具体的には、同法一七条に基づく調査が- 1 -主としてこれに該当するものと解される(論旨 、当該職員につき直接の監督権を有しないため、とくに事前調査に関する規定を置くことを相当としたものであつて、具体的には、同法一七条に基づく調査が- 1 -主としてこれに該当するものと解される(論旨は、同法九一条による調査のみが八四条二項にいう調査に該当すると主張するが、右九一条の調査は、任命権者から不利益処分を受けた職員の審査請求を前提とするものであるから、八四条二項により人事院がみずから懲戒処分を行なうに際して必要とされる事前の調査に適合しないことが明らかであり、また、九一条の調査において、別に懲戒すべき事案の発見されることがありうるとしても、もとより、その故をもつて同条の規定のみが八四条二項にいう調査にあたることの論拠とはなしえない。)。 ところで、裁判所職員臨時措置法により準用される国公法八四条二項によれば、最高裁判所は、任命権者たる下級裁判所が懲戒権を行使すべくしてこれを行使しない場合には、前記人事院におけると同様、みずから懲戒権を行使しうるのであるが、最高裁判所は、人事院と異なり、下級裁判所を任命権者とする職員についても、当該下級裁判所と並んで直接の監督権を有し(裁判所法八〇条一号)、その監督権の内容として、当然に、必要な事前調査をすることができ、これに基づいて、みずから懲戒処分を行なうこととなるのである。論旨は、かりに国公法八四条二項にいう調査が同法一七条の調査を指すものとすれば、そこに刑罰をもつて担保される調査の途が拓かれている点に重要な意味があり、これと内容および方法を異にする監督権に基づく調査をもつてしては、右一七条の調査に代えることができないと主張するが、右の所論によれば、そもそも任命権者の行なう懲戒処分について、国公法が八五条前段の規定を除いてなんらの規定を設けることなく、その事前調査が監督権に基づいてなされる 代えることができないと主張するが、右の所論によれば、そもそも任命権者の行なう懲戒処分について、国公法が八五条前段の規定を除いてなんらの規定を設けることなく、その事前調査が監督権に基づいてなされるのみで、右一七条による場合のような刑罰による担保のないこと、また、処分を受けた職員が審査請求をした場合の同法九一条の手続による調査においても、右一七条による場合のような刑罰による担保のないこと、との関係を説明しえないことになるものといわなければならない。 以上、要するに、最高裁判所は、下級裁判所を任命権者とする職員についても、- 2 -当該裁判所が懲戒権を行使すべくしてこれを行使しないときは、当該職員に対する直接の監督権に基づいて事前調査をしたうえ、みずから懲戒処分を行なうことができるのであつて、これと同趣旨に出た原判決(その引用する第一審判決を含む。)は相当というべく、その判断の過程にも所論の判断遺脱、理由齟齬の違法は認められない。論旨は、すべて採用できない。 同第三点について。 論旨は、最高裁判所がみずからした下級裁判所職員に対する懲戒処分について裁判を行なうことが、憲法三二条の保障する裁判を受ける権利を実質的に奪うものであるといい、ひいて本件処分自体の違憲・無効を主張する。 よつて検討するのに、憲法三二条は、すべて国民は、憲法または法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を有し、裁判所以外の機関によつて裁判をされることはないことを保障したものであつて、訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利を保障したものでないことは、すでに当裁判所の判例とするところであり(昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁)、かりに司法行政機関としての裁判官会議を組織した裁判官が、受訴裁 ないことは、すでに当裁判所の判例とするところであり(昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決、刑集三巻三号三五二頁)、かりに司法行政機関としての裁判官会議を組織した裁判官が、受訴裁判所の構成員として、当該裁判官会議の決議にかかる事項についての訴訟に関与するという事態が生じたとしても、これによつて提起される問題は、たんなる訴訟法違背のそれであつて、憲法三二条違背の問題でないことは、右判例の趣旨に徴して明らかなところといわなければならない。 もつとも、訴訟法は、裁判所職員について除斥・忌避の制度を設け、法定の資格要件を備えた裁判官であつても、一定の利害関係を有する具体的事件については、法律上当然に、または当事者の申立に基づいて、職務の執行から排除されるとしているのであつて、右は裁判権行使の公正とこれに対する国民の信頼を保持しようとする趣旨に出たものであるから、これに違背しないことが憲法三二条の法意にそう- 3 -ものであることはいうまでもないが、他面において、最高裁判所は、日本国憲法のもとにおける唯一の最終審裁判所であつて、憲法三二条が国民に裁判を受ける権利を保障したことは、同時に、裁判所が適式の訴に対して裁判を拒絶することの禁止を意味するものであるから、最高裁判所の裁判官にあつては、その全部または大部分のものについて除斥・忌避の事由があり、その結果、最高裁判所として裁判権を行使しえない事態が生ずる場合には、前記の訴訟法上の要請は、出訴の自由を保護する必要の前に譲歩を余儀なくされるものというべく、この理は、特別裁判所の設置を認めない憲法自体の容認するところといわなければならない(ちなみに、最高裁判所所属の職員について懲戒の問題を生じた場合は、最高裁判所みずから懲戒権を行使するほかないのであつて、最高裁判所が最終審裁判所で ない憲法自体の容認するところといわなければならない(ちなみに、最高裁判所所属の職員について懲戒の問題を生じた場合は、最高裁判所みずから懲戒権を行使するほかないのであつて、最高裁判所が最終審裁判所であるが故に、みずから懲戒権を行使すべきでないとする所論の採りえないことは明らかである。)。 以上説示のとおり、最高裁判所がみずからした下級裁判所の職員に対する懲戒処分について裁判することが、憲法三二条に違反するものとはいえず、本件処分自体の違憲・無効をいう論旨は、採用できない。 同第四点について。 論旨は、上告人らの受験妨害行為および職場離脱を認めた原審の判断に採証法則違背の違法がある、と主張する。 しかし、所論の点に関する原審の認定は、挙示の証拠により肯認することができ、その判断の過程にも所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、とうてい採用できない。 同第五点について。 論旨は、上告人A1を除くその余の上告人らの受験妨害行為が国公法三九条二号または四一条に違反するとした原審の判断が、憲法三一条および右各法条に違背し、理由不備、弁論主義違反の違法をおかしたものである、と主張する。 - 4 -しかし、原判決(その引用する第一審判決を含む。)は、右上告人ら全員について、同人らが受験を希望する裁判所職員に対して虚構の事実を申し向け、これを欺罔して受験の意思を放棄せしめた事実を認定し、また、上告人A2については、右のほか、受験希望の職員に対し、試験当日登庁してもさらに受験中止の説得を受ける旨を申し向け、これをも考慮してついに受験の意思を放棄せしめた事実を認定し、かかる事実が国公法三九条二号または四一条に違反すると判断したものであることが、判文上明らかであつて、同法三九条二号に ける旨を申し向け、これをも考慮してついに受験の意思を放棄せしめた事実を認定し、かかる事実が国公法三九条二号または四一条に違反すると判断したものであることが、判文上明らかであつて、同法三九条二号にいう「強制その他これに類する方法を用い」て試験の志望を撤回させるとは、相手方の意思を抑圧し、その意に反して受験の志望を撤回させることをいい、同法四一条にいう「受験を阻害」するとは、ひろく受験の意思ないし受験行為を妨害する一切の行為を指すものと解すべく、同条にいう「職員」が試験機関に属しない国家公務員を含むことは、その文理に照らして明らかである。したがつて、原審の前記判断は、その確定した事実関係のもとにおいては、相当として是認することができ、その判断の過程にも所論の違法は認められない。また、違憲をいう所論は、その実質において、右の法令違背を主張するものにすぎない。 よつて、論旨はすべて採用できない。 同第六点について。 論旨は、上告人A1、同A3の職場離脱を違法とする原判決に、理由不備、理由齟齬、採証法則違背、審理不尽の違法がある、と主張する。 所論の点に関する原判決の説示は、措辞必ずしも適切ではないが、その引用する第一審判決の理由を含めて、その判示の全体を通読すれば、けつきよく、右上告人らの本件職場離脱につき適法な許可がなかつたとする趣旨であることを認めるに十分である。論旨は採用できない。 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、- 5 -裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官田中二郎裁判官下村三郎裁判官松本正雄 廷裁判長裁判官田中二郎裁判官下村三郎裁判官松本正雄裁判官飯村義美- 6 -
▼ クリックして全文を表示